アレックス・カー × 徳島県・祖谷「千年のかくれんぼ」と称される秘境・祖谷を巡る旅。
東洋文化研究家、作家として活躍するアレックス・カー氏が、徳島・祖谷の地に魅せられ、住居を構えたのは40年以上前のこと。深緑の山あいに佇む別世界は桃源郷さながら、悠久の時を閉じ込めたかのようにひっそりと人々が暮らすこの地は「千年のかくれんぼ」とも称され、古き良き原風景は訪れる人に感動を与え続けています。
2020年9月、アレックス氏自らがナビゲーターとなり、知られざる祖谷の風景や魅力をご紹介する「祖谷の旅」が幕を開けます。これまでに数多くの『DINING OUT』のホストを務め、『ONESTORY』とも親交の深い彼が、今だからこそ伝えたい祖谷の姿、そして、今だからこそ追求したい観光の意味に触れる旅とは、どのようなものなのでしょうか。
アレックス・カー × 徳島県・祖谷知られざる祖谷の魅力が、心に深く浸透する旅を届けたい。
「第一は、古くからの景観を美しく維持していることです」
心から素晴らしいと感じる地域の条件とは?との問いに、こう答えたアレックス氏。
中でも祖谷は一般的な日本の風景と大きく異なり、田んぼがほとんどなく、山の傾斜地に住居が建つ、全国でもあまり例がない場所だといいます。
「茅葺きの家が点々と建ち、畑が斜面に流れ、遠く眼下に川を眺められるという別世界――険しい山々が創る雲の上の「秘境」という言葉がふさわしい、世間からかけ離れた雰囲気を持ちあわせています」
傾斜地に人が住んでいる村はイタリアなどにもあるといいますが、深い渓谷に沿って密集するジャングルのような木や苔、川といった自然に囲まれた祖谷の風景は、日本特有の自然環境だからこそもたらされたもの。その深緑こそが、世界でも類を見ない神秘性を感じさせるのです。
アレックス・カー × 徳島県・祖谷「奥」にこそ、本当に美しい場所がある。
第二の故郷として、長く祖谷と関わりを持ってきたアレックス氏。自然農業や古民家、風習の保存といった事業にユニークかつ前進的に取り組んだ結果、祖谷は知る人ぞ知る名地として知名度を上げていきました。
「祖谷を特徴付けるもののひとつが、保存された古民家の数々です。古材を活かしながらも水回りなどは整備し、快適に滞在できるようにしています」
アレックス氏が語るように、落合の8つの古民家は比較的モダンなスタイルで修復した一方で、彼の心を強烈に揺さぶり、自身で購入するに至った「篪庵(ちいおり)」は、時代の古さをそのままに、ディープで古典的な感覚が残されています。
「今回のツアーの目的は、まず旅行者に祖谷のありのままを知っていただくこと。観光名所を回るのではなく、茅葺きの家、山、霧が、深く心の中に浸透する旅になってほしいと考えています。
発見こそが旅の本来の目的であるはずなのに、決まったルートばかりを歩み、「奥」の魅力的な場所を追求しない……そうならないように、今回は一般的に知られている祖谷を敢えて紹介せず、奥に秘められた美しい場所にみなさまをお連れします」
アレックス・カー × 徳島県・祖谷幻の味をもう一度。ツアーのハイライトは「祖谷ヌーヴェルランチ」。
祖谷の旅をさらなる高みへと昇華させるのが、地域の美味を知り尽くした地元の料理人が作るコース料理です。
供されるのは、郷土の歴史や文化を表現した「祖谷ヌーヴェルランチ」。世界農業遺産認定の、急傾斜地の畑で穫れる食材を贅沢に使用した料理の数々は、この場所でしか味わうことはできません。
「2013年に開催された『DINING OUT IYA』、その革新的な取り組みから7年の間に進化を重ねたプレミアムな祖谷の味覚を、どうぞお楽しみください」
アレックス・カー × 徳島県・祖谷コロナ禍で気付いた観光の本質。心を揺さぶる未知の体験を。
近年は「観光(ツーリズム)」そのものが自身における重要なテーマだと語るアレックス氏。過疎と高齢化に苦しむ祖谷は観光こそが命綱であり、だからこそ篪庵(ちいおり)と落合の家の修復を通じて、地域の活性化を目指してきたという背景があります。
「お客様をどこにお連れすれば、祖谷の自然が静かに吟味できるのか。どう説明すれば祖谷の美しさが伝わるのか。料理もとても大事で、だからこそどこでも食べられる『温泉懐石』ではなく、地元の素材を使った新しい料理に力を入れています。
コロナ禍により大勢の人が集まるような場所を避けたくなるご時世ですが、それがきっかけとなり、これまでに当たり前に思っていた観光の意味を考え直す機会になりました。特別感こそが旅の醍醐味だと、今はそう考えています」
古民家を「快適で美しく直した」と同時に、観光も快適で美しく立て直したい、それがアレックス氏の思いです。
アレックス・カー × 徳島県・祖谷未知の自然環境と出合うことによって、人生の発見が待っている。
「交通や通信が発展し、身近になった現代人にとって、旅行は簡単なものになりました。そのために特別感は失われ、SNSで知り得た有名な観光スポットで写真を撮れればそれでお終い、という旅が一般化していることを憂慮しています。
祖谷を訪れるということは、全くの別世界、未知の自然環境と出会うということです。下から湧きあがる幻想的な霧は、本当に美しく心揺さぶられるもの。日常から離れ、自然の静けさ、済んだ空気の中に、旅の魅力、ひいては人生の新たな発見が待っているかもしれません」
未知の秘境に立ち、その風景を眺める時、何を感じ、何を思うのか。
この旅でしか出合うことのできない祖谷に、ぜひ身を委ねてみてはいかがでしょうか。
※2020年7月16日時点では実施を予定しておりますが、今後、更なる新型コロナウイルスの感染拡大や災害の危険性などにより、本ツアーが延期及び中止の可能性もございます。参加申し込みをされるお客さまには、事前にご連絡をさせて頂きますが、あらかじめご了承のほど何卒宜しくお願い致します。
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1952年にアメリカで生まれ、1964年に初来日。イエール、オックスフォード両大学で日本学と中国学を専攻。1973年に徳島県東祖谷で茅葺き屋根の民家(屋号=ちいおり)を購入し、その後茅の葺き替え等を通して、地域の活性化に取り組む。1977年から京都府亀岡市に在住し、ちいおり有限会社を設立。執筆、講演、コンサルティング等を開始。1993年、著書『美しき日本の残像』(新潮社)が外国人初の新潮学芸賞を受賞。2005年に徳島県三好市祖谷でNPO法人ちいおりトラストを共同で設立。2014年『ニッポン景観論』(集英社)を執筆。現在は、全国各地で地域活性化のコンサルティングを行っている。