でんくしふろりふたりの職人技が光る。料理を更においしくする、究極の相方。
今回、『でんくしふろり』の器全般は、ふたりが手がけます。
末村氏は陶器やご飯炊き鍋を、柳瀬氏は器を。両者とも『傳』からの付き合いになります。
「長谷川さんとは、有田焼創業400年事業がきっかけで出会いました。いつも笑顔が素敵で元気をもらっています」とは、末村氏。特にこだわるご飯炊き鍋は、「火の通りが良く、ご飯がふっくら炊けます!」と長谷川氏も絶賛。
『傳』に訪れたた方ならすぐにわかると思いますが、あの土鍋ご飯の美味たるや。お腹だけでなく、心も満たしてくれる優しい味には、ファンも多いはず。
柳瀬氏は、小鹿田焼陶工歴20年目、柳瀬家14代目の異名を誇ります。「仰々しい肩書きですが、一般人です(笑)」
とにこやかに話すも、日々『傳』で使用する器を通し、その実力のほどは長谷川氏が一番良く知っています。
「まだ制作中ですが、自分の作品は常に自然がテーマ。主張が強すぎてもいけませんし、器はあくまで脇役。お店や料理の一部として馴染めることが最良かと思っています」と柳瀬氏。
「長谷川さんは、源泉みたいな人(笑)。長谷川さんと川手さん、スタッフの皆様の手によって器がどんな風に様変わりを見せてくれるのか、自分自身が一番ワクワクしています!」。
器は単体でも美しいですが、料理を迎えることで様々な表情に変化します。
「これから進むべき行方は、長谷川さんと川手さんが歩んできた道に続いていくことを心から願います。そして、お客様へ感謝のおすそ分けをしていただけるようなお店になることを期待しています」と柳瀬氏。
「世界中に元気を届けてもらえるようなお店になってもらえることを願います! ふたりならできるはずですから!」と末村氏。
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でんくしふろり無意識にゲストの心を掻き立てる、見る旬。食材だけでなく、植物を通して季節を彩る。
アーティスティックな空間の『Florilage』を彩る、ダイナミックな生け込み。それは単なる装飾のみならず、知らず知らずのうちにゲストの高揚を誘い、花の彩りや緑の濃淡を通して旬を知らせてくれます。
今回、『でんくしふろり』も同じ人物が手がけます。それは「piLi flower design works」のフラワーデザイナー・大類淳子さんです。
「『Florilage』の生け込みを手がけさせて頂き、そのご縁で川手さんに声をかけてもらいました。『でんくしふろり』では、植物に関わる装飾全てに携わります」。
と言っても、これから決めていく料理のコンセプトやコース内容、ドリンクなどと同様、装飾も『でんくしふろり』のスタッフたちとディスカッションしていきたいため、現状はまだイマジネーションの段階になります。
「現在は、一部ですがデザインに着手しています。確かに未確定要素はありますが、それでも何か手掛かりにして形にしていくのが、今回は自分の役目だと思っていています。ドキドキしますが、やり甲斐も感じています」。
現段階でわかっていることは、空間の主役がおくどさんということです。
「おくどさんを植物で装飾するコンセプトはお題として頂戴しているので、そこをメインにどうストーリーを組み立ててデザインしていくのかがポイントだと思っています。全体としては、独創的な世界観にふさわしいパワーのある楽しい空間をイメージしつつ、おくどさんへの敬意を表せたらと思っています」。
ふたりからのリクエスト、それは「フレッシュな植物」の起用です。
「時にその場で時間の経過を感じたり、季節の移ろいを感じたり。メッセージを植物に込めたいと思っています。『でんくしふろり』で過ごすゲストの感受もこだわりのポイントにできればと思っています」。
語弊を恐れずに言えば、命ある植物は、常に優雅なわけではありません。花びらや葉が落ちゆく様もまた美しく、生き物として当然の姿でもあるのです。
「『でんくしふろり』は、おいしい料理をいただく以上の何かをすでに感じており、私自身、早くお客として行きたいです!」。
でんくしふろり右手でちょいとかき分け、暖簾をくぐる。そこから「でんくしふろり」の世界は始まる。
諸説ありますが、暖簾の文化は奈良時代だと言われているそうです。
主には屋号、商標、はたまた取り扱い商品を記すところもありますが、お客様目線で言うと、暖簾の役目はお店が営業中か否かのサインでもありました。
『でくしふろり』にも暖簾が下がります。手がけるのは、江戸型染作家・小倉充子さんです。
「実家が神保町で履物屋をやっている関係で、神保町時代に『傳』の長谷川さんと知り合いました。それがご縁で、お店の暖簾と手ぬぐいなどを製作させて頂き、今回は『でんくしふろり』でも同じく暖簾と手ぬぐいを手がけさせていただきます」。
小倉さんは、大学でデザインを学んだ後、型染職人のもとで江戸文化と型染めを学び、独立。以降、江戸の町人文化、風俗をテーマに、浴衣や手ぬぐい、下駄の花緒、暖簾など、型染の作品を製作してきた人物です。特筆すべき点は、図案、型彫り、染めまで、ほぼ全ての工程を一貫して手がけていることにあります。
「暖簾はお店にとって第一印象になります。今回は、入口の重厚なアンティークの木戸と共鳴するように暗めの藍色のグラデーションを施しました。柄はオープニングということで、シンプルに『でんくしふろり』の酔っ払いおじさんワンポイントで! これもおじさんが徐々に酔っ払っていく様子を赤のグラデーションで表現しました。今後は季節によって違う素材、色柄でも展開していきたいと企んでいます!」。
手ぬぐいは、『傳』と『Florilage』が初めてコラボレーションした際に制作した手ぬぐいを改めて染めます。丸紋がモチーフのそれにあらゆる食材をぎゅっと詰め込み、混沌としている中から見たこともないような楽しい何かが生まれるイメージでデザイン。注染の本染めで染めています。
「長谷川さんは、いつお会いしても小学5年生男子のようで楽しそう! 昔から全く変わりません。いや、歳を重ねるごとに子供に戻っていっているような気が……(笑)」。
そして、川手氏もまた、「長谷川さんとそっくりだなあと思いました」。
そんなふたりの新たな門出『でんくしふろり』は、ぴかぴかの○年生♪の誕生か!?
「“でんくしふろり”の印象は、ふたりのぴかぴかの一流料理人のおもちゃ箱。今後に期待することは特にありません。きっと期待なんか裏切って、いつも驚かせてくれるお店になると思いますから!」。
暖簾に腕押し、暖簾に誘われ、ふと一杯。愛さればまた訪れ、そうでなければ立ち去る。布一枚だからこそできる技であり、粋な境界線。
未来の暖簾分けはあるのか!?を考えるのは時期早々ですが、まずは暖簾を守るところからスタートします。
『でんくしふろり』を長谷川氏と川手氏以外の視点で聞き取りした「くしでつながる仲間の声!」Part.1&2。登場していただいた建築家、インテリアデザイナー、左官職人、有田焼焼陶工、小鹿田焼陶工、フラワーデザイナー、染色家は、皆プロフェッショナルなミッションを創造することはもちろん、共通していることは、関係者としてではなくゲストとしての高い期待。
仲間が「行きたい!」と思わせる『でんくしふろり』の世界。
※『でんくしふろり』の住所も公開! 予約も開始しました!
Text:YUICHI KURAMOCHI