旅の再開は、再会の旅へ。学びは忘れず、常に進化し続ける。それは難局の渦中にあっても変わらない。
標高450m、総面積3,500㎡に対し、客室はわずか7部屋。天然温泉も有するそこは、本館、別館から成り、その全てが規格外。
瀬戸内が持つ風光明媚を独占できる『瀬戸内リトリート青凪』を手がけたのは、日本を代表する建築家、安藤忠雄氏です。
『ONESTORY』が出会ったのは、遡ること2018年。その後、数々の快挙を成し遂げますが、新型コロナウイルスによって迎える試練は、例外なく訪れています。
「2015年の開業から2020年にかけ、我々『瀬戸内リトリート青凪』はお客様と優秀なスタッフ、地域のサポーター様に恵まれ、順調に成長を重ねて参りました。(『ONESTORY』の)取材後の2018年には、国内系ホテル初のミシュラン最高評価やワールドホテルアワード3冠、40ヶ月連続売上増などの記録を得ることができました。しかしながら、新型コロナウイルスによって緊急事態宣言が発令され、我々も4月から2ヶ月の休業を余儀なくされてしまいました」と話すのは、総支配人の吉成太一氏です。
吉成氏は、以前の取材でこんな言葉を残しています。
「同価格クラスなら“良い宿”であることは当然。その中でいかに突出した宿になれるか」。
「安藤忠雄建築だけではダメ。僕たちは安藤先生に勝ちたい」。
『瀬戸内リトリート青凪』は作品なのか、ホテルなのか。
もちろん答えは後者ですが、安藤建築はそれほどまでに圧倒的存在感を放ちます。
当時、「安藤忠雄建築を入り口として泊まりに来るゲストがほとんど。しかし大事なことは、その中でサービスがずば抜けている、あるいは料理が抜群に美味しいという理由でお客様にリピートしてもらうこと。安藤忠雄建築というウリ文句にあぐらをかいていては、決して“スペシャル”にはなり得ないのです」と吉成氏は話を続けていました。
ゆえに、休業中も努力の歩みは止めず、更に進化したスペシャルをお客様に提供できる日に備え、できることを一丸となってしてきました。
「新型コロナウイルスによって止むを得ず迎えた休業中は、チーム全体で毎日のようにオンライン研修で学びを深めてきました。 新しいマーケティングや財務スキルなど、普段はホテルオペーレーション以外で接する機会が少なかったことにも積極的に向き合い、知識を深めてきました」。
2020年5月に緊急事態宣言は解除。6月から再始動した『瀬戸内リトリート青凪』は、その力を存分に発揮します。
「スタッフ皆で得た学びを再オープンと同時にアウトプットし、アートイベントなどの新企画を多数スタートさせてまいりました。もともと3密が発生しない構造の『瀬戸内リトリート青凪』は、GoToトラベルのスタートと同時に非常に多くのお客様がお戻りになり、大変ありがたいことに8月以降は過去最高の稼働が続いています」と吉成氏。周囲の様子も訪ねると「インバウンドのお客様も多かった道後温泉や松山城など、主力の観光地は、例に漏れず一時ゴーストタウンのような状態と化してしまいました。しかしながら、ローカルのパワーと結束力は力を増し、今は多くの国内の観光客で賑わいを取り戻しています」と言葉を続けます。
しかし、終息を迎えたわけではありません。両手を上げて喜べない件もあり、表裏一体の日々。
「政府の施策により旅行者が多くなったことは喜ばしい反面、もしGoToトラベル起因によって我々のホテルで感染者が出てしまった場合どうしたら良いのか……という心配も抱えています。実際に瀬戸内内ホテルでも感染者が出てしまい、休業を余儀なくされてしまいました」。
経済の再開は必要とされるも、それによって新たに生まれる懸念への補償が約束されているかと言えば、そうではありません。注意深くするも目に見えない相手ゆえ、一刻も早く「日常」が戻る日を願うばかりですが、美点の「非日常」が広がるのが『瀬戸内リトリート青凪』の最大の魅力。
「我々は、ホテルが提供する“非日常体験”にこそ大きな価値があると信じています。コロナ禍において、我々の日常は大きく変化してしまいした。しかしながら『瀬戸内リトリート青凪』は、今もこれからも圧倒的な“非日常体験”をお客様にご提供できればと思っています。体験した全てのお客様が、この宿泊体験によって何かを感じ、それがその方の人生にとってより良いものとなれば、それに勝る喜びはありません。皆様の再開の旅で、お目にかかれますよう、ホテルスタッフ一同、お待ち申し上げております」。
住所: 〒799-2641 愛媛県松山市柳谷町794-1 MAP
電話: 089-977-9500
http://setouchi-aonagi.jp/
Text:YUICHI KURAMOCHI