ふたりが新潟で出会った、おけさ柿とヨーグルト。注目のオンラインクッキングイベントはほっこりおいしく、幸せな時間に。[NIIGATA PREMIUM LIVE KITCHEN vol.1/新潟県]

新潟各地をまわって得たインスピレーションをオリジナルレシピに表現します。

新潟プレミアムライブキッチン限定5名が受講。新潟の「おけさ柿」を使った菓子作り教室。

11月7日(土)、「新潟ウチごはんプレミアム」とONESTORYのコラボレーション企画第1弾として、フードエッセイスト・平野紗季子さんと菓子研究家・長田佳子さんによるオンライン・クッキングイベント『NIIGATA PREMIUM LIVE KITCHEN vol.1』が開催されました。参加したのは、応募総数200名以上から約40倍の応募抽選を勝ち抜いた幸運な5名。スタジオと参加者5名の自宅キッチンをオンラインでつないで行われました。

新潟ウチごはんプレミアム」は、自宅で新潟の食材を楽しむためのポータルサイト。レシピ動画の公開のほか、さまざまなオンラインイベントを紹介しています。今回の料理教室では、終始インスタライブのような和やかな空気を共有でき、全員がリラックスしてお菓子作りに取り組むことができました。受講者が使い慣れたいつものキッチンと道具で調理できるのも、オンライン教室の魅力です。

平野さんと長田さんは新潟特産の「おけさ柿」に注目しました。ふたりにとって、柿は果物の中でもずっと気になっていた存在だったと言います。
「最近の果物屋さんは、本当にいろんなフルーツがあって華やかですよね。そんな中で、柿ってちょっと地味じゃないですか。でも、ものすごくおいしいし、あの心地いい甘さとすっきりした後味って、ほかに代わるモノないって思うんですよ。新潟ではいろんなおいしい果物が穫れるけど、長田さんのやさしいお味のお菓子には柿が合うんじゃないかなと思って」と平野さんは話します。
「私も柿は大好きだけど、お菓子の材料として選ぶことは少なかったんです。。柿っておもしろい果物で、パリパリいうくらい硬いものも、じゅくじゅくになった完熟のものも、それぞれにおいしいですよね。そんな熟し方の違いもお菓子で表現できたらおもしろいなと思っていたので」と長田さん。二人の興味がピッタリ合ったのが柿だったのです。

今回、新潟で見学した畑で大きく実った旬の「おけさ柿」を用意しました。そして、工場を訪ねた「ヤスダヨーグルト」の製品を使って、長田さんはふたつのレシピを用意してくれました。

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抽選を勝ち抜いた5名が自宅のキッチンからオンラインで参加しました。

材料に選ばれたのは新潟名産のおけさ柿とヤスダヨーグルト、そしてヤスダヨーグルト社が製造している発酵バター。必要な材料とレシピは、事前に参加者へ届けられました。

全員で「柿のタルト」と「柿のネクター」の2品のクッキングに挑戦しました。

新潟プレミアムライブキッチン現地の人も気付いていない素材の魅力を引き出す。

ひとつ目のレシピは「柿のタルト」。ヘーゼルナッツが香ばしい生地にキャラメリゼした柿をたっぷりとのせた贅沢な一品。ローズマリーの香りと、サワークリームのほのかな酸味があるクロテッドクリームが、全体を華やか、かつまろやかに調和します。

ふたつ目のレシピは「柿のネクター」。ネクターとは果実をすりつぶして作るドリンクのこと。ヤスダヨーグルトに柿のピューレをたっぷりと加え、カスタードクリームでアクセントをつけています。このカスタードクリームは、牛乳の代わりにヤスダヨーグルトを使い、ハーブティーなどに使われるエルダーフラワーで香りづけをしているのが特徴です。

これらのレシピは、「おけさ柿」の原木を取材した際のインスピレーションから生まれたとのこと。平野さんは、スマホで現地の写真を見せながら振り返ります。
「おけさ柿の原木は柿の木としてはものすごい大木なんだけど、普通の住宅地に1本だけすっくと立ってるんですよ。老木なのに、枝振りは力強くて、ちゃんと実もなっていて。どこか神秘的で、ふたりでずっと見とれちゃったんだよね。すると、どこからかローズマリーと金木犀の香りが漂ってきて……」(平野さん)
「あのなんとも言えない不思議で心地いい体験をレシピに表現できたらいいね、なんてことを帰り道で話したりして。そんなわけで、今回、ローズマリーと金木犀のニュアンスが感じられるエルダーフラワーを加えてみることにしたんです」(長田さん)

長田さんのお菓子は、身体への負担がなるべく少ない配合と調理法によって、素材の持ち味が引き出されています。素材を生かすために引き算されているから、工程もシンプルでお菓子作りのビギナーでも無理なくチャレンジ可能。5名の参加者も、見事に完成させることができました。

そして、試食タイム。
「柿のタルト」をほおばった平野さんは、おいしさにしばし唸ったあと「佳子さん、天才!」と一言。「よく柿を焼こうと思ったね。農家の人にもあれだけ熱を加える調理はご法度だと言われたにもかかわらず、に」
渋柿である「おけさ柿」は渋抜きの工程を経てから出荷されています。渋抜きといっても、じつは渋味成分であるタンニンは柿の中に残ったままで、人間の舌が感じないような処理がされているだけ。言わば、人間の舌を騙す状態になっているだけであり、熱を加えるとその渋味が戻ってしまうということを、ふたりは現地取材で学んでいたのでした。

長田さんはあえて渋柿に熱を加えるというチャレンジをしました。
「熱を加えても渋くならないギリギリ大丈夫な線があるはず、と思ったんです。逆に君はまだ甘いよって柿を騙せるギリギリのところが(笑)。実際に調理して、ここまではOKという線を見つけられたので」と長田さんは飄々としています。
このレシピには、柿農家の方たちもきっと驚くことでしょう。

「柿のネクター」を味わった平野さんは、またもや興奮しています。
「これ、すんごいヤスダヨーグルトに柿、カスタードクリーム、そしてエルダーフラワー! ワタシ、材料名しか言っていない(笑)。それぞれ単体でおいしいものが、一緒になって何十倍も美味しくなってるの」

参加者からも新鮮な体験になったという声が上がりました。参加者のひとり、新潟出身の方のコメントが印象的でした。
「長岡の出身なので、おけさ柿もヤスダヨーグルトもとてもなじみ深い食材でしたが、そのまま味わったことしかありませんでした。ずっと親しんできた食材が思いもよらないおいしいお菓子になって、とても楽しい体験になりました。そして、地元出身者として、本当にうれしかったです」

新潟の食を再発見し、その魅力を料理体験を通して分かち合ったひととき。みんなの笑顔がその充実ぶりを物語っていました。

現地で実際に体験したエピソードを紹介しながら、調理は和やかに進んでいきます。

旅の話をもっと聞きたいという参加者に「牛とふれあう神々しい佳子さんを見て」とスマホの写真を見せる平野さん。とっておきのエピソードが食材への愛着を一層深くします。

完成後、みんなで試食。直接会うことはできなくても、楽しさ、うれしいという体験を共有することはできます。

新潟プレミアムライブキッチン【柿のタルト】

材料
《タルト生地》
*米油30g(菜種、ひまわり油などでも可)
*水5g ※水と油を一緒に小さなボウルにはかっておく。
*きび砂糖15g
*薄力粉75g
*天然塩ひとつまみ
*皮付きヘーゼルナッツ20g ※170度で8分焼き皮をむきミキサーで細かく砕いておく

《クロテッドクリーム》
*サワークリーム45g
*生クリーム15g

《デコレーション》
*柿1個(固めのもの)
*バター5g (同封済み)
*きび砂糖5g
*フレッシュローズマリー1枝

手順
1.タルトをつくる。ボウルに薄力粉、きび砂糖、塩、ヘーゼルナッツを入れ、軽くゴムベラで混ぜる。
2.別のボウルに水と米油をいれ、1に加えたらゴムベラでひとまとまりになるまで混ぜる。
3.2の生地をクッキングシートにおき、めん棒で12cm程度の円形に平らにのばしたら生地の真ん中にフォークで穴を開け、鉄板にうつし170度で28分~30分を目安に焼きよく冷ましておく。
4.柿の皮をむき、ヘタもとったら12等分にカットし、フライパンにきび砂糖、バターを入れて溶けたらローズマリーと柿を入れて表面をキャラメリゼするように焼く。
5.クロテッドクリームをつくる。ボウルにサワークリームと生クリームを入れゴムベラでなじませたら、星の口金をつけた絞り袋にいれてタルトに絞る。
6.5の真ん中に4の柿を並べたら完成。

タルト生地を円形に平らにのばす。クッキングシートの上だと作業しやすい。

バターを溶かし、きび砂糖、ローズマリーを入れて、柿の表面をキャラメリゼするようにしっかり焼く。

長田さんがクロテッドクリームを絞り袋で絞っていく技を伝授。絞り袋を持っていない人には、スプーンで飾り付ける方法をアドバイスした。

「おけさ柿」の豊かな甘みを存分に味わえる一品が完成。

新潟プレミアムライブキッチン【柿のネクター】

材料
*完熟柿1個
*ヨーグルト200g程度
*エルダーフラワーひとつまみ
*卵黄1個
*薄力粉5g
*黄色系のエディブルフラワー

手順
1.柿を洗い、皮をむき、ミキサーでピューレにし冷蔵庫で冷やす。
2.ヨーグルトカスタードをたく。鍋にヨーグルト100gとエルダーフラワーをいれ弱火で温める。
3.ボウルに卵黄をいれ、薄力粉を加え、ホイッパーでよくかき混ぜ、2を加えたらしっかりかき混ぜ、鍋にこしながら戻す。
4.3を弱火で、プルンとするテクスチャーになるまでたき、たけたらボウルに入れて冷蔵庫で少し冷やす。
5.器に、残りのヨーグルト、柿のピューレ、カスタードソースを加え、最後にエディブルフラワーを飾る。

カスタードクリームは弱火で焦がさないようにかき混ぜながらたく。こっそり味見して、あまりのおいしさに手が止まる。

完熟したおけさ柿のピューレはツヤツヤのトロトロ。ヤスダヨーグルトにたっぷりと加える。

ネクターはスプーンで混ぜながらいただく。ヤスダヨーグルトの爽やかな酸味、柿の上品な甘み、カスタードクリームのコクが渾然一体に。

登場した商品は、こちらから購入できます。

※おけさ柿の出荷時期が毎年10月上旬〜11月上旬のため、現在は加工品のみ購入可能です。 (時期によって取り扱いしていない場合もございますのでご了承ください。)

1991年福岡県生まれ。小学生時代から食日記をつけ続け、大学生時代に日常の食にまつわる発見と感動を綴ったブログが話題になり文筆活動をスタート。雑誌等で多数連載を持つ他、イベントの企画運営・商品開発など、食を中心とした活動は多岐にわたる。著書に『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。最新作は『私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。』(マガジンハウス)。Instagram:@sakikohirano

レストラン 、パティスリーなどでの修業を経て、現在は「foodremedies」(「レメディ」とは癒しや治療するという意味)という屋号で活動。ハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『foodremediesのお菓子』『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある 。Instagram:@foodremedies.cac


Photographs:JIRO OOTANI
Text:KOH WATANABE

(supported by 新潟県観光協会)