旅の再開は、再会の旅へ。お客様との距離感は変われど、つながりは深く。
「湯を汲む」、「茶を淹れる」。
一滴の液体に価値を付加し、思考を促す場。 茶と茶菓と、酒を等しく扱うこれまでになかった場。
それが『万yorozu』です。
主人は、徳淵 卓氏。
「1服の玉露、あまりに衝撃的だったその美味しさに導かれ、“茶”を自らの進む道と決めました」と話します。
現代の茶室とも形容できるそこは、カウンター中心の茶酒房。そのあり様は、かつて存在した「日本茶カフェ」とも「バー」とも異なります。
深い知識と日々のたゆまぬ研鑽が生む味わい、それを決して前には出さぬおもてなし。『万yorozu』には、そんな日本の美意識が凝縮されています。
2012年、福岡市中央区赤坂に開業以降、その評判は徐々に広まり、国内外から炉を囲むカウンターにゲストが集います。
しかし、2020年、誰もが予想しなかった新型コロナウイルスにより、世界的に日常は奪われてしまいました。自由に旅ができなくなってしまったことをはじめ、自粛や緊急事態宣言。視野を広げばロックダウン……。
その間、『万yorozu』はどう過ごしていたのでしょうか。その答えは、実に前向きでした。
「リモートやオンラインショップなど、お客様との関わり方は変わりましたが、コミュニケーションはより人と人の繋がりが深く、親密になった様に感じます。ありがたいお言葉を頂戴することが多く、感謝しかありません」。
以前、『万yorozu』は午後3時から営業していましたが、現在(2020年12月)は、正午からオープンし、24時閉店。 また、オンラインショップを開設し、茶葉の購入も可能としました。
そんな『万yorozu』が人を惹きつけてやまない最大の魅力は、やはり集い。用意されたメニューの最初のページがそれを物語っています。
「人々が集い、出逢う茶屋でありたい。人々が語らい、愉しむ、酒場でありたい」。
この言葉通り、酒もまた茶同様に、この場に訪れた人々をもてなす大切なもののひとつ。
シャンパーニュをはじめとするワイン、日本酒、スピリッツ類と幅広く揃い、それぞれのセレクトに徳淵氏の審美眼と提案が光ります。更に「茶酒」の提案も用意。読んで字のごとく、それは茶を使ったカクテルのことです。玉緑茶のマティーニ、野草茶のカクテル、更には炒りたての焙じ茶で作るハイボール……。どれもとびきりの茶が使われているのは言うまでもないことですが、甘みの効かせ方、アルコールのボリューム感と香りのバランスなどからカクテルメイキングの技術の高さも感じさせてくれます。
1日も早く、それをもう一度体験したい。そう願う人は世界中にいます。
「一服、一煎、一献のお茶とお酒で不安な日々を忘れさせるよう、ごくわずかな時でも皆さまにより豊かなお茶の時間を過ごして頂けたらと常に考えて模索しております」。
以前の取材では、「必要最低限の道具さえあれば、どこでも茶が点てられる。茶の魅力を、そして日本の心を海外の方に知って頂ける機会があるのならば、どこにでも出かけていきたい」と徳淵氏は話していました。
「どこでも茶が点てられる」、「どこにでも出かけていきたい」。どこでも……という日常はいつ戻ってくるのか、まだ知る人はいません。
「誰もがはじめてのことで情報収集や対応に追われて正確な答えは未だ手探りだと思います。誰かに頼ることよりもまずは自分たちでできることから考えて行動していき、お客様へより安全な商品を提供できたらと思います。まだまだ不安な日常が続きますが、『万yorozu』が微力ながら皆様により良い時間をお過ごし頂けるよう努めてまいりますので引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます」。
住所:〒810-0042 福岡県福岡市中央区赤坂2-3-32 MAP
電話:092-724-7880
http://www.yorozu-tea.jp/
Text:YUICHI KURAMOCHI