やむないフードロスを宝に変える! 壱岐の豊かさを知った若きホテルマンが焼酎蔵にジン造りを依頼する。[IKI’S GIN PROJECT/長崎県壱岐市]

写真右が今回のキーパーソン『壱岐リトリート 海里村上』のホテルマン・貴島健太郎氏。左はもうひとりのキーパーソン『壱岐の蔵酒造』代表・石橋福太郎氏。焼酎貯蔵タンクの上から、眼下に深江田原平野を望む。

壱岐ジンプロジェクトOVERVIEW

壱岐の焼酎メーカーが、クラフトジンを造る。
そんな話が編集部に届いたのは、国内で新型コロナウイルス感染第二波が押し寄せていた2020年8月でした。クラフトジン造りだけならば、今や世界中で一大ムーブメントが起きており、別段珍しい話でもありません。
そんな状況ですから、編集部では「今回のネタは流れる可能性が高いね」と話していました。しかしその後、編集部がわざわざ壱岐を訪れてまでジンを追いたいと思ったのは、ひとりのキーパーソンの熱意にほだされたからかもしれません。その人物とは、約1年半前にホテルへの就職が決まって壱岐を訪れることになった、壱岐とは無縁の20代のホテルマン・貴島健太郎氏。
「壱岐がとても豊かな土地だと感じて、ただ純粋にその素晴らしさを伝えたいと思ったんです。ですが、地元の人には壱岐の豊かさは日常。普通すぎて、僕の言葉にピンときてもらえないんです。この溝こそが、日本中の地方が抱えている問題だと思ったんですよね。そこをなんとかしなければと」と貴島氏は語ります。
ジンについての話を聞きに来たのですが、貴島氏は島の魅力について熱弁。そんな壱岐の豊かさこそが、今回のジン造りの原点。彼の熱意が伝播し島の人々を徐々に動かしていくことになるのです。そんな彼の熱量に動かされた人物が、今回のもうひとりのキーパーソン『壱岐の蔵酒造』代表・石橋福太郎氏です。
「今回のジン造り。2年前ならばたぶん断っていた。ですが、ここ数年のマーケットの変化に危機感を募らせていました。島の人口流出、雇用の減少、高齢化など、目を背けられない島の問題にも直面し、今やらなければいつやるんだと思ったんです」と石橋氏。
かくして若きホテルマンと、壱岐を代表する焼酎蔵の代表がタッグを組んだことで、今回のジン造りは大きく動き出すことに。ご法度・タブーの連続かもしれない焼酎蔵によるジン造り。しかし、常識にとらわれない若者の情熱こそ地域の課題を魅力に変える新たな装置にもなり得るのです。我々『ONESTORY』編集部もまた、地域の抱える問題への光明を見てみたいと、2021年に「Made in 壱岐」のジンができるまでを、追っていこうと考えたのです。

住所:長崎県壱岐市芦辺町湯岳本村触520 MAP
電話:0120-595-373
http://ikinokura.co.jp/

住所:長崎県壱岐市勝本町立石西触119-2 MAP
電話:0920−43−0770
https://www.kairi-iki.com/

Photographs:YUJI KANNO
Text:TAKETOSHI ONISHI