旅の再開は、再会の旅へ。
日本本州のほぼ中央に位置する岐阜県。その中心部である岐阜駅からごく数分の商店街に、全国から肉マニアが足を運ぶ焼肉店があります。
『焼肉 旬やさい ファンボギ』です。
店主の高橋伸由企(のぶゆき)氏は、自身の肩書きに「熟成師」の冠を付けるほか、「MANIAC BEEF LABO」という屋号でディープな精肉販売の業務も行っています。このふたつの件からわかるよう、いわゆる普通の焼肉店ではありません。
しかし、新型コロナウイルスによって自由に行き来できる旅は奪われてしまい、全国からのゲストが激減してしまった状況は、今なお続いています。
ニュースでは様々な報道がされていますが、必ずしも皆当てはまるわけではありません。補償制度もしかり、地域の数だけ、人の数だけ、問題視される状況は異なるのです。
「思うような仕込みと仕入れが出来ず、熟成の計画とリズムが崩れてしまい、大変困惑しております」。
しかし、高橋氏が一番困惑する理由は、扱う「命」に対して。飛騨牛を始め、鶏、馬、羊はもちろん、狩猟シーズンを迎える冬季以降は、猪、鹿、熊、鴨、野鳥……。それらはすべて、その時々に完璧なピーク状態を迎えるよう、適切な熟成とカットが施されています。おいしく、というのは、大前提としてありますが、「命」をいただく限り、「命」を全うさせなければいけません。
そんな高橋氏は、「生産者になる準備を進めている」と言います。
「5年後は自社生産の牛を出荷する予定です。家畜としての天命を全うする中、家畜としての幸せを考えた生産をするつもりです」。
以前の取材時、高橋氏は、「感謝の気持ちは、思いだけでなくカタチにも替えて実践する」と話しています。
今、高橋氏が実践すべきカタチが「生産者」なのかもしれません。
また、お店に関しても「何もしなければ前には進めない」と歩を進め、思い切ってリニューアル。
「新たな空間では、カウンターの在り方がかわり、カウンターに来店のお客様は肉を焼くことなく、目の前で焼かれた肉を召し上がれます。そのスタイルは“焼肉”から“肉料理”となり、色々な味付けのスタイルをお楽しみいただけるよう、今後も進化を進める予定です」と高橋氏。同時に、店頭では小売りやランチのテイクアウト、オンラインでは取り寄せや贈答品の販売も開始。(https://fanbogi.stores.jp)
「『焼肉 旬やさい ファンボギ』として、高橋伸由企として、生きた証を残したい」。
「熟成師」と「生産者」の肩書を持った高橋伸由企氏になれたあかつき、より「岐阜愛」は増し、「使い切る」だけではなく「生き切る」を全うした情熱の肉と出合えることでしょう。
住所:岐阜県岐阜市住田町2-4 南陽ビル1F MAP
電話: 058-213-3369
https://fanbogi.stores.jp
Text:YUICHI KURAMOCHI