水に癒やされ、アートに触れ、食を楽しむ。多彩な魅力がつまった信濃大町の歩き方。[湧水とアートがうるおす町/長野県大町市]

写真でめぐる、信濃大町の豊富な見どころ。

北アルプスの雪解け水が河川となり、湧水となり、やがて街をうるおす。あちこちから湧き出す水は清冽で、大小無数の川には澄んだ水が流れる。長野県大町市の魅力の根底には、この豊かな水にあります。

しかし、いくら“水が豊か”といっても、現地での具体的な楽しみは想像しにくいかもしれません。そこで今回は豊かな水が織りなす大町市のさまざまな魅力を、写真とともにご紹介してみます。

折しも大町市では2021年11月21日(日)まで『北アルプス国際芸術祭2020-2021』も開催中。これからご紹介する町の魅力を知るごとに、きっと大町市に足を運んでみたくなることでしょう。

『北アルプス国際芸術祭』では40以上のアート作品が町の各所で鑑賞できる。(蠣崎 誓/種の旅)

町の魅力の根幹を支える、北アルプスの清冽な水。

豊富な水。その重量感、水底まで見える透明感、ひんやりとした温度、心地よい水音は、ただそこにあるだけでも心癒されるもの。大町市には水に触れ合えるスポットが多数存在しています。

たとえば『国営アルプスあずみの公園』は、自然そのままの地形を活かしながら、楽しみ、学び、くつろげる拠点。とくに園内の渓流クリエーションゾーンと名付けられたエリアでは、北アルプスの3000m級の山々から流れ出る水を身近に感じることができます。遊歩道の散策やピクニックなど楽しみ方はいろいろ。園内にはほかにデイキャンプ場やクラフト体験ができる施設なども揃っています。

さらに水の質量を感じたければ、ダムや湖を目指してみるのがおすすめです。大町市は「大町ダム」「七倉ダム」「高瀬ダム」という3つの大規模なダムを擁し、どれも見学可能。「高瀬ダム」は土や岩を盛り上げてつくる“ロックフィルダム”と呼ばれる構造で、偉大な人工物という観点からも見学の価値あり。さらに北へ向かうと「黒部ダム」へと続くルートに繋がります。

自然の湖も負けてはいません。大町市には二科三湖と呼ばれる3つの湖があります。湖底から清水が湧き出す巨大な「青木湖」、水上アクティビティが充実した「木崎湖」、フィッシングエリアとして知られる「中綱湖」。湖畔キャンプやSUP、ホタル観賞クルーズなど、楽しみもいろいろ揃っています。

市街地に戻り商店街を散策しても、水の豊かさに気づきます。町のあちこちには水路が通り、水をテーマにしたオブジェなども点在。道路一本挟んで硬度の異なる水が湧く「男清水」と「女清水」も、大町の水の豊かさの象徴です。

『国営アルプスあずみの公園』の渓流クリエーションエリア。雪解け水が渓流となって流れる。

自然そのままの姿を守る『国営アルプスあずみの公園』には、さまざまな野生動物も暮らす。

『大町ダム』の雄大な眺め。ダム周辺は芸術祭の会場にも指定されている。

二科三湖のひとつ「青木湖」には、芸術祭の作品も展示されている。

「男清水」と「女清水」は道路を挟んで正面。ぜひ両方を飲み比べてみたい。

水質の良さを証明する、透明感あるおいしい名物たち。

食の観点でも、水の存在は欠かせません。雪解け水をたっぷり蓄える野菜や果物、澄んだ水で育つ川魚をはじめ、大町名物の多くは水によって支えられています。

たとえば市内で十数件の店が味を競うそば。使用するそば粉や技術はさまざまですが、共通するのは透明感のある味わいと喉越しの良さ。古くから“水の良い場所のそばは旨い”と言われますが、大町市も例外ではありません。

水が決め手となる酒も同様。市内には3つの酒蔵があり、それぞれが高い評価を得ています。さらに近年は、市内初のクラフトビール醸造所『北アルプスブルワリー』もオープン。「地元の水の魅力を伝えるため、あえて水質調整をせずにそのままの水でつくる」というクラフトビールは、水の甘みが感じられるような素晴らしい出来栄えです。

お土産物も充実しています。日本屈指のフィッシングスポットとして多くのファンがいる『鹿島槍ガーデン』では、信州サーモンや希少なイワナの卵などを販売中。鹿島川の流れをそのまま利用した養殖場で育つ魚の、驚くほど臭みのない味わいを楽しめます。

『キハダ飴本舗』で販売中の「キハダ飴」は、キハダという木の実を煮出したエキスでつくる飴。ほろ苦く、香り豊かな飴は、一度味わうとクセになりそうな独特なおいしさ。『キハダ飴本舗』の敷地内でのびのびと育つキハダの木も、雪解け水によって支えられています。

名物のそばは、市内各所で味わえる。水の豊かさがおいしさの肝。

地元住民はそれぞれ贔屓のそば屋がある。写真は老舗そば処『タカラ』のざるそば。

フィッシングスポット兼養殖場の『鹿島槍ガーデン』。鹿島川から直接水を引いている。

「キハダ飴」は大町市以外では「七十七歳飴」として販売されている。

『キハダ飴本舗』の敷地内の沢。大町市内では随所でこのような光景が見られる。

町全体が巨大な美術館に。北アルプス国際芸術祭の見どころ。

さて、ここまで大町市の水の豊かさをご紹介してきましたが、もうひとつの柱であるアートも見逃せません。そもそも大町市には、赤い屋根が印象的な信濃大町駅の駅舎をはじめ、フォトジェニックなスポットがたくさん。

さらに現在開催中(2021年10月2日〜11月21日)の『北アルプス国際芸術祭』により、さながら街全体がひとつの美術館のような様相を呈しています。

伝統的な古民家や博物館を舞台にした作品、施設の壁や地面に描かれた作品、そして道路脇にそのまま展示される作品。町を歩くだけで、そこかしこでアートが目に飛び込んできます。作家の個性が光るさまざまな芸術作品が、古い家屋や山々の景色と調和する、いわばアートと自然の融合は、この町でしか楽しめない景観です。

作品数は絵画、立体物、建築、インスタレーション、パフォーマンスなど計42作品。会期中はシャトルバスも運行され、効率よくアートを鑑賞することができます。

自然との色彩のコントラストが美しいJR信濃大町駅の駅舎。

路上に直接展示されている作品も。(ジミー・リャオ/私は大町で一冊の本に出逢った)

古民家などを舞台にした体験型の作品もある。(ニコラ・ダロ/クリスタルハウス)

既存の建築物を活用したこの土地ならではの作品も多い。(淺井裕介/土の泉)

【期間限定】大町市の天然食材を五感で感じるディナーメニュ

大町の魅力を満喫したら、宿泊は北アルプスの懐に抱かれる『ANAホリデイ・インリゾート信濃大町 ホテルくろよん』へ。

400年以上の歴史を誇る「葛温泉」を贅沢にかけ流した露天風呂・大浴場、フィットネスジムや屋内温水プールなどの設備が充実。小さなお子様から大人までゆったりとお過ごしいただけるでしょう!

さらに10月末日までは、東京・青山の人気レストラン『HATAKE AOYAMA』神保佳永シェフとコラボしたスペシャルディナーが登場。

大町の野菜の魅力に惚れ込み、地元産食材を吟味してつくり上げた全5品のディナーコースは、『鹿島槍ガーデン』のイワナのオードブル、地元産椎茸パウダーが決め手のパスタ、レアに仕上げた信州サーモンのインパナート、地元が誇る信州黄金シャモの胸肉を低温調理したメインディッシュ。さらに、大町のそば粉100%のガレットと地場産リンゴのデザートという内容。

巧みなアイデアが組み合わさり生み出される逸品を、マウンテンリゾートという非日常の空間で、ご家族や大切な方と一緒にご満喫ください。

豊かな水に癒やされ、アートを愛で、食を楽しむ。長野県大町市でのひとときは、きっと誰しもの心に確かな足跡を残す体験となることでしょう。

暖炉を囲みながら感じる”非日常のリゾートステイ”

​自然の景色を見渡せるバルコニー付きデラックスツインルーム

限定ディナーコースの一品「大町産信州サーモンのインパナート 大町野菜のタルタル添え」。レアに揚げた信州サーモンの旨味と食感がポイント。

希少な信州黄金シャモを使うメインディッシュ「信州黄金シャモの低温調理 旬野菜のサルサ」。

デザート「倉科製粉所のそば粉のガレット 大町産リンゴキャラメルソース」。ほろ苦いソースが、香り豊かなそば粉のガレットと響き合う。


Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA
(supported by 大町市)