統括編集長・倉持裕一が振り返る、2021年の『ONESTORY』。

想像以上に長いコロナ禍。メディアを沈滞させた決断。

2020年2月。この時期を皮切りに、新型コロナウイルスという言語が一気に日本中を騒がせました。当時、まだその実態が分からず、死に追いやる感染病として国民の恐怖心は加速し、同時に経済も破綻。『ONESTORY』も例外ではなく、『DINING OUT』を含め、さまざまなプランは全て白紙に。

コロナ禍以前に取材した記事も遅延に遅延を重ねる結果になってしまいました。『エタデスプリ』、『グラン・ブルー・ギャマン』、『レヴォ』などがそれです。

すでに取材したのであれば、痺れを切らして公開する選択もありましたが、日本は緊急事態宣言や自粛の真っ只中。これらの記事をきっかけに、県をまたぐ移動の加担やそれによって感染者を出してしまったら、はたまたもっと最悪の事態を招いたらというメディアとしての責任を強く感じました。

誰もが情報発信できる今だからこそ、メディアの役割は重大だと認識しています。個人とメディアは、異なるものだと考えます。大袈裟に言えば、日本だけでなく世界が難局と対峙する中、活発な記事の更新は、社会に不要だと思ったのです。結果、メディアを沈滞させる決断をしました。

過去の振り返り記事において、自分は取材で出会った方々をこのように綴っていました。

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「働く姿」ではなく「生きる姿」、「仕事」ではなく「人生」を目の当たりにしてきたような気がします。
―――

今まさに我々において、それが問われている。そう感じました。

メディアやイベントではない別のカタチを持って自分たちにできることは何か。地域に貢献できることは何か。社会の一員になれることは何か。

それに向かって走り続けた1年となりました。
 

「ハレ」だけではない。「ケ」と向き合う覚悟。

前述、自分は過去の振り返り記事において、このようにも綴っています。

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まだここでは発表できないプロジェクトを水面下で進めています。それもまた、イベントでもメディアでもないカタチのものです。
『ONESTORY』は、既成概念にとらわれることなく、時代と目的に合った表現をより強固にしていきます。カタチのないカタチ、その活動体が『ONESTORY』です。
―――

そのカタチのひとつは、2021年に発表できた長野県塩尻市の奈良井宿における『杉の森酒造』プロジェクトでした。

中山道に位置する奈良井宿は、「木曽の大橋」のかかる「奈良井川」沿いを約1kmにわたって形成している日本最長の宿場です。そんな風景の中に200年以上も町のシンボルとして存在し続けていた場所が『杉の森酒造』でした。長い歴史に幕を下ろしたのは、2012年。以降、時は止まったままでしたが、2021年に『BYAKU -Narai-』として新たに息吹を取り戻しました。

酒蔵も復活させ、宿泊施設、温浴施設を備える中、我々はかつて蔵だった場所をレストランとバーにするプロジェクトに参画。そこでは、さまざまな学びがありました。

地域との共生、その魅力を伝えるなどは、これまでメディア及びイベントでも実践してきましたが、大きな違いはカタチとして「場」が残り続けるということです。

例えば、『DINING OUT』であれば、2日(準備期間を除く)。言わば「ハレ」の日です。しかし、1年を通して見れば、残り363日「ケ」の日があるのです。

カタチとして、「場」として、残り続ける関わりには、この「ケ」といかに向き合うかが大事になってきます。

そして、もうひとつのカタチは、銀座『和光アネックス』地階グルメサロンのリニューアルプロジェクトへの参画です。『ONESTORY』は、本件のプロデュース及び商品のキュレーションに携わりました。

日本全国に眠る知られざる名品の発掘や商品開発、季節の商材、ソムリエや唎酒師たちとの企画などを展開。その好例は、酒職人・松本日出彦氏による「武者修業」シリーズでした。発売当日に完売という結果を残すこともできましたが、やはり本件においても重要なことは「ケ」との対峙。

完売した1日ではなく、残りの364日。イベントのあった1週間ではなく、残りの358日。「カタチ」のある場、地域、もの、こと、人と向き合うことは、そんな日々と向き合い「続ける」ことなのです。

それぞれ準備期間に数年を有し、ようやく具現できた2021年。弊社代表・大類知樹と一番議論したテーマが、この「ハレ」と「ケ」でした。
 

ONESTORYのやり方でONESTORYらしく。

未だコロナ禍の尾を引いたまま2022年を迎える。

我々もさまざまな変化に順応していかなければいけません。テクノロジーの進化も手伝い、そのスピードは、日に日に加速しています。

しかしながら、大地や海から生まれるものや植物、季節の訪れなど、地球の動きに時短や効率はなく、一足飛びに何かを成し得ることはできません。

つまり、物事が生まれる正しい時間の見極めが必要だと考えます。「命」の時間です。

我々は、表現者として、活動体として、何ができるのか。そして、人としてどう生きるべきなのか。

その解は、そう易々と得ることはできませんが、波に呑まれず、『ONESTORY』のやり方で『ONESTORY』らしく、自分たちにできる最良の道を歩んでいきたいと思います。

そして、2021年も多くの読者様、取材先及び地域の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて、出会った全ての方々に深く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

どんなに時代が変わろうとも、『ONESTORY』は、まだ見ぬ日本の感動を探し続けます。

それでは、日本のどこかでお会いしましょう。画面上ではなく、どこか大切な場所で。

2022年、そんな出会いが叶う一年になることを願います。

『ONESTORY』統括編集長・倉持裕一

“わさび”といえばこの料理。わさび菜のピリ辛を生かす簡単ちらし寿司。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・わさび菜/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダム辛味、食感、色味。全てを引き立てるシンプルな料理。

茨城県行方市を訪ねた『HATAKE AOYAMA』の神保シェフが、今回出合った食材はわさび菜。現地のハウスで採れたてを試食したシェフは、「シャキシャキの食感、鮮やかな色、ピリッとした辛さの全てが生きるメニューを考えたい」と決意していました。

その後、神保シェフのもとには試作用のわさび菜が到着。改めて試食し、「葉はもちろん、茎も美味しいですね。この食感と辛味は、やはり“あの料理”で生きるでしょう」とにやり。そして教えてくれた料理は、ちらし寿司でした。

「やっぱり“わさび”といえば寿司ですからね。少し工夫することで、わさび菜の魅力を引き出します」と自信をみせるシェフ。そのポイントは、葉と茎に分けてそれぞれ下処理をすること。これにより軽やかな食感を生かしつつ、わさび菜の魅力である辛味を引き出すのだとか。ではさっそくレシピを見てみましょう。

【関連記事】歴史は浅くも、こだわりは強い。シャキっと食感でピリッと辛い、行方市のわさび菜。

材料はいたってシンプル。ただし梅肉は塩辛すぎない南高梅、ごはんは炊きたてを揃えたい。

なめがた ベジタブルキングダムわさび菜とツナのちらし寿司

材料(2人分)
わさび菜 1パック
ツナ缶 1缶
たたいた梅肉 50g
炊き上げた白米 2合分
(A)
 米酢 大さじ3杯
 砂糖 大さじ2杯
 塩 小さじ4分の1杯
 白炒りゴマ 少々
 刻み海苔 適量

手順
1.  わさび菜は水で洗って葉と茎に分け、葉は5分ほど水に漬けてから千切りに、茎は薄くスライスしてひとつまみの塩(分量外)で塩もみし、5分ほど置いておく
2.  塩もみした茎の塩気を水で洗い流す
3.  (A)を合わせてすし酢を作り、炊きたてのごはんに入れて切るように混ぜ、酢飯を作る
4.  3.の粗熱が取れたらたたいた梅を入れて混ぜ、続いてツナ缶を汁ごと入れて混ぜる
5.  更に冷めてから2.のわさび菜の茎を入れて混ぜ、次に葉を2回に分けて投入し、しっかりと混ぜる
6.  器に盛り付け、白ゴマ、刻み海苔をふりかけて完成
わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。 わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。

わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。

水から上げた葉はしっかりと水分を取り、空気を含ませるように刻んでいく

わさび菜を混ぜるのは酢飯の粗熱が取れてから。温かいままだと食感が損なわれてしまう。

シャキシャキの食感と鮮やかな緑が目を引くちらし寿司が完成。もちろんお好みの刺し身などを合わせても美味しい。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

歴史は浅くも、こだわりは強い。シャキっと食感でピリッと辛い、行方市のわさび菜。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・わさび菜/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

茨城県行方市は、年間80品目以上の野菜をはじめ、肉や魚まで、幅広い食材を産出する食材王国。我々ONESTORYは、その秘密や魅力的な食材を探るため、いばらき食のアンバサダーを務める『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフとともに、行方市を訪ねました。

今回のターゲットは、わさび菜。
アブラナ科の葉物で、その名の通りわさびのような爽やかな香りと、ピリッとした辛味が特徴。数々の野菜を生産する行方市ですが、実はわさび菜の歴史はそう長くなく、高齢者や兼業農家向けの作物として2005年に導入されたことが起源。しかしそこから行方市特有の温暖な気候や、研究熱心な生産者の努力が実を結び、わずか15年ほどで行方市を代表する農産物のひとつとなったのです。

産地を訪ねた神保シェフも、行方市のわさび菜を絶賛。「この爽やかな香りと食感を活かすメニューを考えてみたいですね」と、すでに頭の中でレシピの構想を練り始めた様子でした。そんな神保シェフと訪ねたわさび菜産地巡礼の様子をお伝えします。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

日常の延長線上にある穏やかな時間。暮らすように滞在する、新潟の古民家宿。[里山十帖 THE HOUSE/新潟県南魚沼市]

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築150年の古民家は、まるでもうひとつの邸宅。『里山十帖 THE HOUSE』での「暮らし」を楽しみたい。

里山十帖 THE HOUSE何もしない時間を楽しむ。そんな過ごし方を肯定する宿。

多くの場合、旅のプランの第一歩は宿を決めることから始まります。つまり旅の目的地は宿です。しかし考えてみると、旅において宿に滞在する時間は思うよりも短いもの。ならば宿には、何が求められるのでしょうか。

今回ご紹介する宿は、そんな疑問に答えを出してくれるかもしれません。宿の名は『里山十帖 THE HOUSE』。名宿『里山十帖』の離れとして誕生した1日1組限定の古民家宿です。 

南魚沼の市街を過ぎて街道を折れ、山道をしばし進むと、現代的な装いの中に積み重ねた時間の長さを隠す古民家が現れます。築150年。長い間、豪雪に耐えてきた重厚感は、モダンなリノベーションを経ても褪せることはありません。 

室内に入り荷をほどいたら、まずは窓に向いたチェアで一息。窓外に見えるのは、先ほど走ってきた街道です。この景観と、それを眺める時間こそが、この古民家宿の醍醐味のひとつ。遠くに望む道路に車が行き交う。車は誰かの人生を乗せて、走る。その人生に思いを巡らせながら、時間が過ぎる。無為な時間のようでいて、実は豊かな時間。「せっかくの旅だから何かをしなくては」という思い込みは、この宿には無縁です。 

夕食は迎えの車に乗って、本館である『里山十帖』まで。木の温もり溢れるダイニングで、これもまた豊かな食事が始まります。

「魚沼の四季の移ろい、七十二候に寄り添う料理を心がけています」という料理長の桑木野恵子氏。新潟の山海の幸で織りなす八寸、旬のキノコの葛寄せ、子持ち鮎と自家製梅干しを添えた蕎麦粥。料理には、桑木野氏の思いが込められています。

「せっかく山まで来て頂いたから、本当は山の中で食べて欲しいくらい。だからそれができない分、景色が浮かぶ料理だといいなと思っています。ここに来るまでの道中の風景が浮かぶような」。

そんな気持ちがこもっているからこそ、『里山十帖』の料理は、心に深く刻み込まれるのでしょう。

遠くに望むのは南魚沼の町並み。市街地と田園が自然に調和した現代の里山。

椅子に座り、外を眺めるためだけに設えられたような一室。この部屋の存在が、宿での滞在をゆるやかに彩る。

重厚な梁と柱、囲炉裏とモダンな家具や快適な設備。新旧がバランス良く調和した心地よい室内。

『里山十帖』で味わう夕食の一例。子持ち鮎と自家製梅干しを添えた蕎麦粥。

 地元の素材、地元の調理法をふんだんに取り入れる八寸。料理長・桑木野氏の思いが込められた一品。

南瓜の葛寄せを合わせた茸の椀。郷土の季節感を表現する滋味深い味に、料理長・桑木野氏の思いが宿る。

発酵にも造詣が深い料理長・桑木野恵子シェフ。郷土料理のアイデアも積極的に取り入れる。

里山十帖 THE HOUSE朝日とともに目覚め、炊きたての米を食べる。そんな里山の暮らしを体験。

部屋へ戻ったら、満点の星空を眺めながら露天風呂。絶景のダイニングやテラスも魅力ですが、眠気が訪れたらすぐに寝てしまっても良いでしょう。この宿では、何も特別なことをする必要はありません。

翌日の朝食は部屋食。

しかし部屋にやってくるのはお盆に乗った朝食ではなく、朝食を作る料理スタッフです。部屋に設えられたキッチンで食事の準備。土鍋でごはんが炊ける音、漂う出汁の香り。部屋は幸せな気配で満たされます

「ご飯は炊きたてが一番ですから」スタッフの松浦由奈氏は、さも当然のように笑います。部屋での調理というわずかな時間の差、そこから生まれる満足感を、この宿は何より大切にしているのでしょう。

つまりこの宿が提供してくれる時間は、特別な非日常ではなく、日常の延長線上にある穏やかさなのです。そして旅人が宿に求めるのはきっと、そんな当たり前の時間なのです。

何もしない時間を過ごすことも、すぐに眠ってしまうことも、当たり前のように許せること。心穏やかに、まるで暮らすように滞在する宿。それは旅の目的地としての宿の、正しい形なのかもしれません。

「朝食は、炊きたてのご飯が一番のご馳走。ぜひ、ご堪能ください」と話す、スタッフの松浦由奈氏。

露天風呂からもこの絶景。天気が良い日は見事な星空も眺められる。

 ベッドルーム。古民家の骨格を活かしつつ、快適に過ごせる空間にリノベーションされている。

室内の一角に設えられたダイニング。このキッチンで朝食が準備される。

部屋で調理される朝食の一例。米はもちろん、魚沼産のコシヒカリ。

住所:新潟県南魚沼市天野沢家森山671-1 MAP
TEL:0570-001-810
https://satoyama-jujo.com/thehouse/

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(supported by SUBARU)

自然とともに生きる昔ながらの生活を垣間見る。絶景の棚田を一望するツリーハウス。[星峠宿/新潟県十日町市]

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

星峠の棚田を目下に臨むロケーション。朝、昼、夕、夜、刻一刻と表情を変える自然芸術の絶景に身を興じる時間は、感動を超えた体験となる。

星峠宿300年続く集落に誕生した樹上のキャンプ場。

かの有名な星峠の棚田。

朝靄に煙る情景、柿色の夕焼け、紫の残照に照らされる日没。さまざまなメディアに登場する新潟県十日町市を代表する景観です。そんな星峠に、1日1組限定のツリーキャンプ施設ができました。美しい景色を眺めながらコーヒーを飲み、食事を食べ、眠りにつき、目覚めたることができるという素晴らしい施設をご紹介しましょう。

十日町の市街地を過ぎ山道をしばし進むと、やがて星峠に到着します。最初に目に入るのは、噂に違わぬ絶景です。 高台から見渡す一面の棚田。匂いがあり、音があり、肌に触れる空気がある。写真だけではわからないリアルな絶景です。 

受付に訪れた『星峠宿CHAYA』で、施設のオーナーである粂井貴志氏が出迎えてくれました。学生時代の同級生にここ出身の友人がいた縁で訪れてみて惹きつけられ、やがてこの地に暮らすようになった人物。もちろん、山間の集落に余所者が受け入れられるまでには、幾多のハードルもあったことでしょう。

「もちろん簡単ではありませんでした。最初の数年は“自分がここで何をやりたいか”ではなく、“自分がここのために何ができるか”だけを考えていました」。 と粂井氏は振り返ります。

粂井氏の晴れやかな笑顔は、その迷いのない生き方の象徴。彼との会話も、この施設を訪れる楽しみのひとつ。

星峠の棚田を舞台にツリーキャンプを堪能出来る『星峠宿』。ここでは、移りゆく景色の変化をただ望むことが何よりも特別な体験になる。

200枚の田圃がある星峠だが、手掛けるのは粂井氏を含め9名だけ。2022年には、7名まで減少する。

ツリーハウスの受付を兼ねた『星峠宿CHAYA』。コーヒーやグッズのほか、目の前の田で育った米も販売されている。

4mの樹上に作られたウッドデッキ。道路の一段上から星峠を見渡す、宿泊者のためだけの特等席だ。

粂井氏が精魂込めて育てた星峠の棚田米。品種はコシヒカリ。ミネラル豊富な雪解け水とこの地の土壌により甘み豊かに育つ。

棚田を眺めながら、その地で育った米を炊きたてで味わう。この地の住人にとっては当たり前のことでも、遠来のゲストにとっては何よりのご馳走。

宿泊者専用の風呂小屋も完備。湯船に浸かりながら里山を望むことができる。

星峠宿観光地ではなく住民が暮らす里山だからこその、生きた絶景。

観光地として脚光を浴びた星峠の棚田ですが、ここはあくまで地元住民の生活の場。年々増加する観光客に困っている部分もあったといいます。実は駐車場も公衆トイレも整備された道路も、すべて地元の方の土地を切り取ったもの。道路の整備やトイレの清掃をしても、地元には一銭の収益にならぬばかりか、手間ばかりがかかる。その解決策を次々に提示するうち、やがて粂井氏は集落に受け入れられていったのです。今ではこの棚田に土地を持ち、米も育てる粂井氏。いわば正式に住人として迎えられたのです。

そんな話をしながら粂井氏が、ツリーハウスのデッキへと導いてくれました。 

「集落の人と話し合って、一番の絶景ポイントにツリーハウスを建てました」。

4mの木の上で目に飛び込んできたのは、日本の原風景のようでいて既視感のない、まっさらな里山の風景です。

ただ美しい景色という以上に、この風景に今も血が通い、動き続けている事実が胸に迫ります。300年前の先祖が開墾し、代々それを守り続けているという住民の誇り。記録画像ではなく、進行形で動き続ける生きた絶景。施設では眼の前の棚田で収穫された米も販売されています。この景色を前に、その場所で収穫された米を味わう。それはどれほど豊かで、貴重な経験でしょう。

12月に入るとここは4mもの雪に閉ざされ、施設は雪解けまで閉鎖となります。そんな自然の成り行きに任せる姿も、またこの地の魅力。自然とともに生きる豊かな暮らし。このキャンプ場での体験は、そんな遠い世界のほんの一端を垣間見せてくれます。

雨、風、霧、雪。山間だけに自然の厳しさもあるが、それもまたこの地の魅力。

住所:新潟県十日町市峠728 MAP
TEL:025-594-7600
https://hoshitoge.jp

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

(supported by SUBARU)

日本を走る。日本を旅する。グランドツーリングNIPPON[Grand Touring NIPPON]

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

Main Pageすべての移動を感動に変えるクルマ。

『ONESTORY』は、日本の自動車メーカー『SUBARU』とともに、日本を巡るオウンドメディア「グランドツーリングNIPPON」を立ち上げました。

本企画は、架空の旅人が日本に潜むまだ見ぬ感動を探す旅。忘れがたい旅の紀行を記録に書き留めるツーリングエッセイです。

それは、最果てにある宿かもしれません。
山間で営む小さなレストランかもしれません。
はたまた、目的なく走った先に出合う絶景かもしれません。

ここでは、そんな旅から得た出合いを本メディアより抜粋し、ご紹介します。
 

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

(supported by SUBARU)

水風呂は、日本海。海水浴場の跡地に誕生したサウナで味わう究極の開放感。[サウナ宝来洲(ホライズン)/新潟県柏崎市]

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

日本の渚百選に入選した風光明媚な鯨波海水浴場。天気が良い日は海の向こうに佐渡ヶ島を望む。

サウナ宝来洲サウナで温まり、浜辺を走り、海に飛び込む。

新潟に海が見えるサウナがある。

そんな噂を聞きつけ、向かった先は、新潟県柏崎市。施設の名は『サウナ宝来洲(ホライズン)』。訪れてみるとそこは、“海が見える”どころではありませんでした。いうなれば海そのもの。道路を挟んで向かいにある『小竹屋旅館』で水着に着替え、水着のまま道路を渡れると、そこがサウナです。

サウナ室に入ると、目線の高さの窓から海を一望。時計とにらめっこしながら「あと5分、あと3分」と我慢するのではなく、ただ海に見惚れていると時間が過ぎていきます。体が十分温まったら、サウナ室を出て浜辺へ。このサウナに水風呂はありません。代わりにあるのが海です。

サウナ室を出て浜辺を走り、そのまま海に飛び込む。火照った肌を冷たい日本海が冷やします。皮膚がきゅっと収縮し、心が溶ける。海水の浮力に任せ、海の上に大の字に浮かべば、波が体をやさしく揺らします。その贅沢な開放感こそ、このサウナの醍醐味です。

体が冷えたら、サウナ室の屋上にあるデッキへ。無論、ここからも海を望みます。施設すべての中心に据えられるのは、海。海辺の適地があったからサウナを作ったのではなく、この海を見せるためにサウナという手段を選んだような、海中心の施設です。

サウナ室には目線の高さから海を望む窓がある。ストーブには300kgのサウナストーンを設置した。

熱を逃さない建て付けや給排気のシステム、メンテナンスの利便性など、見えない部分にまでこだわりが溢れる。

浜辺や施設屋上のデッキチェアや浜辺に設置されたハンモックなど、思いお思いの場所で外気浴ができる。

サウナ宝来洲海辺の旅館で育ったオーナーの思いの結晶。

このサウナへの思いを、オーナー・杤堀耕一氏に伺ってみました。

栃堀氏の祖父と両親がこの地に海の家を開き、その後『小竹屋旅館』を開いたのは今から半世紀以上前のこと。その家に生まれ、賑わう海水浴場を見て育った栃堀氏ですが、やがて時代が流れます。価値観の多様化が、人々の興味を少しずつ海から逸していったのです。
一度は故郷を離れていた栃堀氏はこの地に戻り、さまざまな手を打ちました。しかし天候や海況など自然の力には抗うことはできず、夏の海水浴客減少も止まりません。
それでも杤堀氏は、この海を、ただ寂れさせたくはなかったといいます。「何かしないと、何か」そう考え抜いた栃堀氏の目に、偶然「サウナ」の文字が飛び込んできました。「これしかない」栃堀氏の心は決まりました。 

人気のアウトドアサウナを見学に行き、勢いのままそのオーナーに施設のプロデュースを直談判し、地元工務店と話し合い、日々サウナについて学び、最上級のサウナ専用薪ストーブを準備し、フィンランドからサウナストーンを取り寄せる。思いついてから施設のオープンまで、わずか9ヶ月の出来事でした。

まるで一遍の物語のように開業秘話を聞かせてくれた杤堀氏。その端々から伝わる、この海への思い。これだけの施設を作るのだから、大きな決断だったことでしょう。しかし杤堀氏の言葉からは、先への不安ではなく、新たなことを始めるキラキラとした高揚が伝わってきます。

「自然が相手ですから、0点の日もあれば200点の日もあります」。

秋の日本海を見ながら、杤堀氏は言いました。そして「だからこそ面白い」と笑いました。そして最後に「どの海も大好きだけど、とりわけ海に夕日が沈んでいく時間が好き」と言いました。

日本海を赤く染めながら海に沈む夕日。その壮絶なまでの絶景も、このサウナの財産のひとつなのでしょう。

オーナー・栃堀氏の言葉の端々には、この海への愛着がにじむ。

住所:新潟県柏崎市鯨波2-3-6 小竹屋旅館敷地内 MAP
TEL:0257-41-6270
https://www.odakeya.com/sauna/ 
 

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

(supported by SUBARU)

2022デニムカレンダー

今年も出ました!2022年デニムカレンダー!

     
  • 今年はプレゼントではなく販売となりました!
  •  
  • 21oz生地の【 BB 】ブラック×ブラックの生地です!
  • 全世界200枚限定販売です!
  • 無くなり次第終了
  •  
  • 製品にはならない生地を使って作っておりますので生地に細かなキズや筋が入ってしまっている場合がございます。
  • 白い筋は濡れたタオル等でふき取って頂ければ目立たなくなります
  • お一人様1点でお願い致します。

サイズ

  • 約縦102センチ×横84センチ

ドリンク、調味料、お菓子……。2021年を締めくくるベストギフト12選。[和光アネックス/東京都中央区]

年末年始は、ギフトを贈る側、贈られる側の機会も多い季節。センスの利いた品選びとワンランク上のギフト提案をぜひ。

WAKO ANNEXアルコールとノンアルコール。届けたい相手やシーンを配慮する、TPOのようなギフト選び。

年末年始は、各所へのご挨拶の時期でもあり、集いの時期でもあります。そんな時、少し気の利いたギフト選びをぜひ。

中でも、ドリンクは万能選手です。まずは、ひと味変わったアルコール3種。秋元商店「籠屋ブルワリー和轍」、完熟屋「ミサキミード」、吉田酒造店「手取川 Sparkling dot」です。

ビール、ミード、日本酒。種類の異なるアルコールは、こだわりのある独特な造りとそれによって豊かな味わいが生まれるブランドを選択。中でも、「籠屋ブルワリー和轍」は「和光」限定店舗販売、「手取川 Sparkling dot」は数量限定販売のため、希少性の高い逸品になります。

次は、ノンアルコール3種。宮崎茶房「みねかおり白茶」、茶縁むすび「政所茶・古樹番茶」、カネロク松本園「燻製紅茶 りんご」です。

宮崎、滋賀、静岡。茶の産地としても名高い各地の品は、ただの茶にあらず。こだわりの素材と味のアプローチは、おいしさだけでなく健康にも配慮しています。「政所茶・古樹番茶」においては、都内初 数量限定店頭販売のため、そんなエピソードとともにギフトを贈れば、その集いも盛り上がること間違いなしでしょう。

※今回、ご紹介した商品の一部は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナー及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内させていただいております

秋元商店「籠屋ブルワリー和轍」は、杉の香りとモルトの旨みが凝縮された木桶仕込みのジャパニーズビール。木桶は国産材ブランドである吉野杉を使用。木桶は呼吸し、住み着く微生物が時間をかけて発酵を進め、木桶でしか出せない深い味わいを生み出す。生産量も極端に少ない貴重な国産麦芽を使用し、繊細できめ細かく優しい味わいが特徴。※「和光」限定店舗販売

完熟屋「ミサキミード」は、愛媛・佐多岬の蜂の蜜のみを使用し、非加熱で製造。ミードとは蜂蜜から作るお酒であり、人類最古のお酒とも言われている。蜂蜜のお酒とは思えない深い味わいの秘密は、蜂蜜の含有量が60%も含まれていることにある。高品質な素材に加えて、しっかりとした酸が感じられる味わいの仕上がりに。

モダン山廃造りのナチュラルで優しいお酒を瓶内二次発酵させたスパークリング日本酒、吉田酒造店「手取川 Sparkling dot」。口に含むと優しく弾ける泡感は、全て天然のもの。優しい酸味でスッキリ爽やかな味わいのため、食前・食中酒にも最適。※数量限定販売

宮崎茶房「みねかおり白茶」の素材は、宮崎県五ヶ瀬町で育てる。農薬や化学肥料などを使用せず、有機栽培をしながら多くの品種を育て、お茶の香りを追求。様々あるお茶の中でも白茶はスッキリとした味わいと熟成された深みのあるハチミツのような香味が特徴。ティーポットに2~3gの茶葉を入れ、150ccのお湯を注いで2~3分抽出していただくのがお勧め。

 茶縁むすび「政所茶・古樹番茶」。滋賀県琵琶湖の東部、鈴鹿山系の渓谷に位置する政所は、古くから「宇治は茶所、茶は政所」と謳われた銘茶の最高峰であり、豊臣秀吉が生涯最も愛したお茶所。全国で2%以下となった在来種の茶樹の中、樹齢100年の古樹を葉だけでなく幹や枝までまるごと薪の火でじっくりと焙煎加工し、スモーキーな香りと口に広がる甘さを引き出す。※都内初 数量限定店頭販売

カネロク松本園「燻製紅茶 りんご」は、環境保全に貢献し、世界農業遺産に登録された「静岡の茶草場農法」を継承。有機肥料を中心に土作りにこだわった栽培で、これまでの日本茶の世界にはなかった薫香が漂うお茶。燻製材は林檎の樹木を燃料に、品種はブラムリーアップルの木材を使用。スモーキーな中に林檎の優しい香りを楽しめる紅茶。

WAKO ANNEX利用頻度の高い品だからこそ喜ばれる。プライベートに贈りたい、日常の特別。

お味噌やオリーブオイル、ジャムなど、日常において頻繁に使われる品々だからこそ、嬉しいギフトであり、人気のギフト。そこに、少しのセンスと上質な素材にこだわった品をセレクトすることによって、ワンランク上の贈り物になるのです。

まずは、調味料など3種。井上味噌醤油の「常盤味噌」と「白味噌」。アグリオリーブ小豆島「小豆島産100 %エキストラバージンオリーブオイル」。

いつもの料理で使用するお味噌を「井上味噌醤油」に、いつもかけるオリーブオイルを「アグリオリーブ小豆島」にするだけで、その味は見違えるほど、リッチに変わります。「井上味噌醤油」は、「和光」限定店舗販売のため、中々お目にかかれない品になります。

また、パン食派のお相手であれば、ジャムやはちみつなどもお勧め。

ビーハッピー/タケイファーム「アーティーチョークはちみつ」や楽農研究所「SOIL TABLE 苺のコンポート」は、朝の時間に豊かさをもたらすでしょう。もちろん、日常のお料理にも最適です。今回のタケイファームの品は、「和光」限定販売。加えて、ミシュランの星獲得店やトップシェフ、食通も唸る品として注目もされています。

また、この2品とともに楽しめる、NORTH FARM STOCK/白亜ダイシン「北海道クラッカー プレーン」のような品を添えて贈るギフトもまた、ホスピタリティーに長け、相手の記憶に残るに違いありません。

贈る側、贈られる側。両立場の機会も多くなる季節ですが、どちらにしても、喜ばせたいギフト、嬉しいギフトであれば、幸福と口福の連鎖が生まれると思います。

年末年始に向け、良きギフト選びをぜひ。

井上味噌醤油は、明治8年創業より変わることのない手造りにて麹菌を生育。「常磐味噌」をはじめ、使用しているのは「生味噌」のため、酵素・酵母が活動状態にあり、味噌が持つ本来の風味を楽しめる。約150年仕込み続けた「木樽」にて天然醸造されることにより、奥深い発酵も表現される。※「和光」限定店舗販売

上記と同様、井上味噌醤油の「白味噌」。伝統製法「もろぶた糀」が持つ天然の甘みのみを風味高く仕上げた淡色味噌。※「和光」限定店舗販売

穏やかな瀬戸内海に囲まれた小豆島の農園で造られた、アグリオリーブ小豆島の「小豆島産100 %エキストラバージンオリーブオイル」。燦々と降り注ぐ太陽をしっかりと浴びて育った希少なオリーブ果実を丁寧に手摘みし、一番搾り。新鮮なうちに採油することで、若草の香りと風味豊かな味わいが楽しめる。

ビーハッピー/タケイファーム「アーティーチョークはちみつ」は、ミシュラン取得店舗など数々のトップレストランに認められる逸品。日本最大級のアーティーチョーク畑を保有するタケイファームが「日本にもっとアーティーチョークを普及させたい」という想いから造ったアーティーチョークのはちみつは、品質はもちろん、稀少性も高い。※「和光アネックス」限定店舗販売

楽農研究所「SOIL TABLE 苺のコンポート」のいちごは、愛媛県の「あかまつ農園」のあまおとめ・レッドパール・紅ほっぺの3種類をブレンド。炊き上げ、瓶詰めなどすべて手作り。※都内初 数量限定店頭販売

NORTH FARM STOCK/白亜ダイシン「北海道クラッカー プレーン」は、北海道産の小麦を使ったワインを楽しむためのクラッカー。自社工場で一枚一枚丁寧に焼き上げ、サクッとした食感を追求。

※今回、ご紹介した商品の一部は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナー及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内させていただいております

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KUAMOCHI

(Supprtted by WAKO)

年末年始のテーブルを特別に彩る、新たな提案型ギフト5選。[和光アネックス/東京都中央区]

新しい提案型のギフトは、合わせの妙をぜひ。食べる味と飲む味に加え、交わる味も楽しめる品々は、おいしい発見の連続。

WAKO ANNEX大切な人たちと過ごす、一年の節目には、特別なギフトをぜひ。

未だ様々ある昨今ですが、年末年始はゆっくりと過ごしたい。そう思う人は多いと思います。

家族との集い、大切な人や気が置けない仲間との再会……。

シーンは様々ありますが、その時間を華やかに彩るのは、食事の時間です。

そんな時にお勧めしたいギフトは、ぜひ提案型のペアリングを。紹介してくれるのは、日本酒ソムリエ・『GEM by moto』店主・第14 代酒サムライの千葉麻里絵さんと調布市『Maruta』のドリンクディレクターを務める外山博之氏です。

両者に共通しているのは、これまでに類を見ない「食べ合わせ」のプレゼンテーション。それぞれに理論と哲学を持った合わせには、美味しいだけではない、楽しい発見が待っています。

クリスマスや年末年始、パーティーなど、ゲストを喜ばせる新たな提案型のギフト5選をご紹介します。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

外山氏がペアリングにおいて重視しているのは、香り。それも主観的な印象で判断するのではなく、科学的な香りの成分を紐解きます。「一緒に口に含むことで広がる香り、増加する旨味。そんな未知なる発見を楽しんでください」。

「造り手の想いが込もったお酒や食品が単品でおいしいのは当然です。それを状況に応じて合せること で、シーンにマッチした楽しみやサプライズを楽しめるのがペアリングだと思います」と千葉さん。

WAKO ANNEX外山博之が勧めるペアリングの軸は、ノンアルコール。香りや成分などを分析し、哲学的に結実させる。

外山氏が勧めるペアリングは、3種。まずひとつ目は、「弘前シードル工房kimori」のkimoriシードル(ドライ)と「GOOD MORNING FARM」愛媛野菜のミックスピクルスです。

シードルが持つリンゴの青い香りとピクルスの原料であるローリエの青い香りがマッチするペアリングは、香りと味わいが絶妙。「シードルが持つ発酵の香りは、ピクルスの酸味であるお酢との相性が良く、香りと味わいが交互に重なり、口の中で広がります」と外山氏。

ふたつ目は、「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」ブラッドオレンジジュースと「アサヤ食品」バルサミコ(Vintage2013)です。

ブラッドオレンジとバルサミコ酢の香りは、「同系統のため、非常に相性抜群」と外山氏。それを更に美味しくいただくためにお勧めするのは、「サラダ」にバルサミコ酢をかけて合わせること。

「例えば、バジル、チーズ、イチゴのサラダにバルサミコ酢をかけ、ジュースの酸味と旨みを合わせるのもお勧めです。6年熟成・純国産の無添加バルサミコ酢は、これだけでも本当に貴重な1本です」。

3つ目は、「かたすみ」いちごのフルーツティー3種セットと「トリ風土研究所」河内鴨もも肉コンフィです。

「いちごのフルーツティーの優しい酸味が、河内鴨もも肉コンフィの旨みをバランス良く中和します。更にこだわりたい方への提案は、ややぬるめのお湯で淹れてみていただければ、より香りと味わいの輪郭をお楽しみいただけると思います。お肉の旨みとの調和が拡張し、美味しさが倍増するはずです」。

「弘前シードル工房kimori」のkimoriシードル(ドライ)と「GOOD MORNING FARM」愛媛野菜のミックスピクルス。「『弘前シードル工房kimori』は、りんご畑の中にあるちいさな醸造所です。若いりんご農家たちが、自ら育てたりんごを持ち寄り、シードルを造っています。 果実感を損なわない自然な無ろ過製法を採用しているので、にごりや澱(おり)も含めたりんごそのものの味をお楽しみください。合わせるピクルスは、愛媛の旬野菜がぎゅっと詰められています。温暖で土地に高低差のある愛媛は、様々な食材の宝庫。春夏秋冬、豊かな味と出合えます」。

 「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」ブラッドオレンジジュースと「アサヤ食品」バルサミコ(Vintage2013)。「イタリア原産の赤いオレンジ、「ブラッドオレンジ100%の国産ジュースはとても希少です。中でも、愛媛・宇和島は、全国で数少ない産地のひとつです。合わせるバルサミコ酢においても希少。地元素材と向き合って半世紀以上。ワインビネガー専門メーカーの『アサヤ食品』さんが、2013年のヴィンテージを特別に100本限定で提供してくださいました。これは、2013年から6年樽で熟成後さらにビンで1年熟成したプレミアムなバルサミコ酢です」。

「かたすみ」いちごのフルーツティー3種セットと「トリ風土研究所」河内鴨もも肉コンフィ。「砂糖・香料・着色料を一切使用せずに仕上げたシンプルなフルーツティーですが、丁寧な仕事が成された逸品です。ドライフルーツはすべて国産。低温で丁寧に乾燥し、うまみを凝縮しています。合わせる河内鴨は、2019年に大阪で開催されたG20の晩餐会でも公式メニューに採用された食材。そのもも肉の旨味をさらに凝縮するために時間をかけてコンフィしたものは、大量生産こそ難しいですが、お肉好きの方にはぜひ召し上がっていただきたいです」。

WAKO ANNEXまさに千葉さんらしい日本酒との合わせ。食中から食後まで、シーンも楽しいペアリング。

千葉さんが勧めるペアリングは2種。

ひとつ目は、「木戸泉酒造」木戸泉 Afrugem 2016 afs×貴醸酒×スコッチ樽 GEM別誂と「和光」チョコレート ヴァレンシアです。

「日本酒をピート香の効いたスコッチ樽で熟成させた貴醸酒は、まるでバーのような時間を演出してくれます。合わせるチョコレートは、カカオだけでなくオレンジも主役となり、食べ口によって変化する味とペアリングの妙も楽しめます」。

ふたつ目は、「美吉野醸造」花巴 樽丸“水酛×水酛” 手漉き和紙ラベル 寺田克也画 千葉麻里絵オリジナルと「和光」うにからすみ。

年末はもちろん、年始にいただけば縁起も良さそうなそれは、上質なばふんうにの食材がリッチな世界へ誘います。加えて、合わせるお酒は、千葉さんがコラボレーションしたオリジナル。

「『美吉野醸造』花巴は、吉野杉を使った樽丸シリーズになります。杉の香りを纏っているため、身体と五感で美味しさを感じることができます。水の代わりに酒で仕込んだ貴醸酒は、濃厚で旨みたっぷり。合わせるうにからすみは、乾燥させずに仕上げた優しい食感が魅力です。生からすみと、とろけるようなばふんうにが織りなす調和とともにお楽しみください」。

ペアリングを選んだ理由やストーリーとともにギフトをプレゼンテーションできれば、そのテーブルは、もっと楽しくなるでしょう。

物語のあるギフトは、ただ美味しいだけでなく、誰かを幸せにする力があるのです。

「木戸泉酒造」木戸泉 Afrugem 2016 afs×貴醸酒×スコッチ樽 GEM別誂と「和光」チョコレート ヴァレンシア。「この日本酒は、バーで飲むイメージで、日本酒をピート香のきいているスコッチ樽に入れて熟成させた貴醸酒です。合わせるチョコレートは、カカオだけでなくオレンジも主役となり、食べる場所によって味が変わるので、時間の流れを感じながらお酒とともにお楽しみください。

「美吉野醸造」花巴 樽丸“水酛×水酛” 手漉き和紙ラベル 寺田克也画 千葉麻里絵オリジナルと「和光」うにからすみ。「樽丸とは、原木を年輪に沿って割って削る加工をした樽をつくる側板を集め丸く束ねたものです。杉の香りが纏っているので身体で感じるおいしさです。ここに、うにからすみの旨みが加わり、口の中は旨 味でいっぱいになります」。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
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岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエへ転向。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』」)」のマネージャーに就任。2018年より調布『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KUAMOCHI​​​​​​
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ブランド豚の旨味を引き出す、イタリアンシェフが作る魯肉飯。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・美明豚/茨城県行方市]

とろける食感と濃厚な旨味の魯肉飯。台湾の人気料理をイタリアンのシェフが作るとどうなるのか。

なめがた ベジタブルキングダムまさかの台湾料理は、まかない料理の人気メニュー。

茨城県行方市を訪ねた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフが、今回出合った食材は、ブランド豚・美明豚。さっそく「赤身と脂のバランスが良く、肉質も脂身も上質」と絶賛するその豚を活かすメニューを考えてくれました。

今回の料理は、なんと魯肉飯(ルーローハン)。イタリアンの神保シェフのイメージとは異なりますが、実は店のまかない料理でスタッフに大好評のメニューなのだとか。

「脂がおいしい美明豚は、とくにバラ肉がおすすめ。今回はそんなバラ肉の魅力を引き立てるメニューとして魯肉飯を選びました。肉は大きめにカットして、本来のおいしさを際立てます」

という逸品。今回はそんな肉の魅力を前面に打ち出すために、本場の魯肉飯では必須の香辛料・五香粉は使用せず、シンプルな調味料だけで仕立てるといいます。ではさっそく、イタリアンシェフが作る台湾料理のレシピを見ていきましょう。

【関連記事】NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/きめ細かい赤身と口溶けの良い脂。一貫生産へのこだわりが生んだ最高峰のブランド豚。

使う調味料はやや多いが、どれも家庭にあるものが中心。香りの決め手の八角はぜひ取り入れたい。

特別な材料やテクニックなしに極上の味に仕上がるのは、シェフならではの細やかな下処理から。

なめがた ベジタブルキングダム美明豚バラ肉の簡単魯肉飯

材料 (2人分)
豚バラ肉 400g
玉ねぎ 1/2個
生姜すりおろし 小さじ1杯
ニンニクすりおろし 1片分
ごま油 大さじ1杯
八角 1個
ちんげん菜 4束
刻み万能ネギ 適量
目玉焼き 卵2個分
炊き上げたご飯 2膳分
★醤油、酒、みりん 各大さじ3杯
★黒砂糖・米酢・オイスターソース 各大さじ1杯
水2カップ

手順
1.  豚バラ肉を一口大にカットしてフォークで刺して筋を切り、軽く塩コショウをしておく
2.  熱したフライパンに胡麻油をひき、中火で豚バラ肉を焼く。焼き上がったらバットに取り出しておく
3.  手順2のフライパンでスライスしたタマネギを中火で2分ほどソテーする
4.  フライパンに2の豚肉を戻し、ニンニク、しょうがを加えて合わせながら中火で炒める。全体に絡んだら★の調味料と水 1カップ、バットにある肉汁も入れ、強火でひと煮立ちさせる
5.  八角を加え、香りが立ってきたら弱火にし、蓋をして15〜20分煮込む
6.  煮詰まってきたらちんげん菜を手で割いて、肉を覆うように入れ、再度蓋をして弱火で2分半ほど蒸し焼きにする
7.  器に持ったご飯に6を盛り、目玉焼きを乗せたら完成

フォークで刺すことで味が染みやすくなり、かつ短時間で柔らかくなる。

炒めた際に出る豚の旨味をしっかりとタマネギに吸わせてから煮込んでいく。

ちんげん菜は豚肉を覆うようにして蒸し焼きに。手間がかからず洗い物も減るひと工夫。

半熟の目玉焼きを盛り付けて完成。しっかり味と八角の香り、美明豚の旨味がベストマッチ。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

きめ細かい赤身と口溶けの良い脂。一貫生産へのこだわりが生んだ最高峰のブランド豚。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・美明豚/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

全国圏屈指の野菜王国として数々の野菜を産出する茨城県行方市。我々ONESTORYは、一年に渡りこの行方市を繰り返し訪れ、生産者の話を伺ってきました。そしてたどり着いたひとつの仮説。行方市の野菜がおいしいのは、恵まれた気候や風土以上に、作り手の粘り強く、負けず嫌いな“行方気質”に由来するのではないか。そしてその説が正しいのなら、野菜以外の生産物もまた素晴らしいものなのではないか。

そんな説を証明するために訪れたのは、ブランド豚・美明豚を育てる『中村畜産』。同行者は、昨年一年間行方市の野菜を追いかけ続け、その魅力を引き立てる数々のレシピを考案してくれた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフです。

美明豚は、『中村畜産』がお産から出荷まで一貫して育てる特定病原菌を持たないSPF豚。肥育環境や飼料にこだわり、ストレスなく育てる豚は、各所から高い評価を得ています。果たして現地を訪れた神保シェフは美明豚と『中村畜産』にどんな感想を抱き、どんな料理のアイデアを練るのでしょう? その詳細をお伝えします。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

21oz セルビッチストレッチスリムストレート

666はスリムストレートカット!

666-sstはごく少量のため2サイズ発送ができません!

  • 634(ストレート)と比べ、股上がやや浅目で腰周りから裾まで細くしたストレートシルエットです。

サイズスペック

  ウエスト 前ぐり 後ぐり ワタリ ヒザ巾 裾巾 股下
W28 72.5 20.0 31.0 26.7 19.5 17.5 91.0
W29 75.0 20.5 31.5 27.4 20.0 18.0 91.0
W30 77.5 21.0 32.0 28.2 20.5 18.5 91.0
W31 80.0 21.5 32.5 29.1 21.0 19.0 91.0
W32 82.5 22.0 33.0 23.0 21.5 19.5 91.0
W33 85.0 22.5 33.5 30.7 22.0 20.0 91.0
W34 87.5 23.0 34.0 31.5 22.5 20.5 91.0
W36 92.5 24.0 35.0 32.0 23.5 21.5 91.0
W38 97.5 25.0 36.0 34.7 24.5 22.5 91.0
  • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。
  • 前ぐり、後ぐりはベルト巾を含みません。

素材

  • 綿:98% ポリウレタン:2%

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サイズスペック

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W28 72.5 20.0 31.0 26.7 19.5 17.5 91.0
W29 75.0 20.5 31.5 27.4 20.0 18.0 91.0
W30 77.5 21.0 32.0 28.2 20.5 18.5 91.0
W31 80.0 21.5 32.5 29.1 21.0 19.0 91.0
W32 82.5 22.0 33.0 23.0 21.5 19.5 91.0
W33 85.0 22.5 33.5 30.7 22.0 20.0 91.0
W34 87.5 23.0 34.0 31.5 22.5 20.5 91.0
W36 92.5 24.0 35.0 32.0 23.5 21.5 91.0
W38 97.5 25.0 36.0 34.7 24.5 22.5 91.0
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  ウエスト 前ぐり 後ぐり ワタリ ヒザ巾 裾巾 股下
W28 72.5 20.0 31.0 26.7 19.5 17.5 91.0
W29 75.0 20.5 31.5 27.4 20.0 18.0 91.0
W30 77.5 21.0 32.0 28.2 20.5 18.5 91.0
W31 80.0 21.5 32.5 29.1 21.0 19.0 91.0
W32 82.5 22.0 33.0 23.0 21.5 19.5 91.0
W33 85.0 22.5 33.5 30.7 22.0 20.0 91.0
W34 88.0 23.5 34.0 31.4 22.5 20.5 91.5
W36 93.0 24.5 35.0 33.0 23.5 21.5 91.5
W38 98.0 25.5 36.0 34.6 24.5 22.5 91.5
W40 103.0 26.5 37.0 36.2 25.5 23.5 91.5
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  • 前ぐり、後ぐりはベルト巾を含みません。

素材

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「国産 Non-Chemical レモン」×「クラウドファウンディング」。あるレモン農家の熱き挑戦。[CITRUSFARMS TATEMICHIYA/広島県尾道市]

「citrusfarms たてみち屋」の園主・菅秀和氏。広島県生口島で無農薬・無化学肥料のレモンを栽培している。

citurusfarms たてみち屋

孤高のレモン農家・菅氏がクラウドファウンディングにチャレンジ

レモン、好きですか?
レモンの、どんなところが好きですか?

ちょっと考えてしまった人は、もしかすると、まだ本当に美味しいレモンに出合ったことはないのかもしれません。食事に、ドリンクにと用途が広がり、身近になっているようで、意外と知られていないレモンという果物。

そう、料理人やバーテンダーら食のプロフェッショナルの間では、レモンを果物と捉え直し、積極的にレシピに採り入れる動きが広がっています。
そして、一流の食材にこだわるプロたちにレモンの話を聞くと、「菅さんのレモン」と耳にすることが多くなってきました。

「菅さん」とは、「DINING OUT ONOMICHI」の食材チームにも参加した菅秀和氏。
広島県尾道市と愛媛県今治市を連絡する瀬戸内しまなみ海道のほぼ中央に位置する生口島で、レモン農園「citrusfarms たてみち屋」を営むレモン農家です。

「食べて美味しいレモン」。菅氏が心血を注ぎ続けてきたのは、そんな、みんなの固定概念を覆すレモンです。菅氏のレモンの美味しさは、食のプロたちの間でクチコミで広がり、多くのファンを獲得してきました。


そんな菅氏は今年、クラウドファウンディングに挑戦するとのこと。その狙いを聞くために、菅氏を訪ねました。

燦々と陽光がふりそそぎ、凪の真っ青な海を見下ろす斜面に、強面で偉丈夫の菅氏はプロレスラーのように立っていました。5年前の「DINING OUT ONOMICHI」の時よりも貫禄がついています。


リスボンという品種のレモンの木が、深緑色の肉厚な葉を茂らせ、ラグビーボール型よりもぷっくりとした実をつけています。菅氏は鮮やかな黄色になった実をもぎとると、「かじってみませんか?」と勧めます。農薬や除草剤も、もちろんワックスも使っていないから、そのまま安心してかぶりつけます。

歯応えのある皮を突き破ると、一気に果汁があふれ出します。すっぱい。
けれど、嫌なすっぱさではありません。爽快な香りが鼻を抜け、心地よいほろ苦さの奥に甘味を感じます。これがレモンの味なのか……実に骨太。素直に、美味しい。

「レモン栽培に取り組み始めた時、素朴な疑問が生まれました。スーパーでレモンを探したけれど見つからない。果物売り場にも、野菜売り場にもなかった。ようやく見つけた場所は、奥の薬味のコーナーでした。薬味や添え物としてしか扱われていない果物って何なんだって。レモンはれっきとした果物。よし、食べて美味しいレモンを作ってやろうと心に決めたんです」と菅氏は2014年当時を振り返ります。

日本ではあまり目にすることの無いグリーンレモン。イエローレモンより糖度は低いが、そのキリっとした香りと酸味にはファンも多い。

citurusfarms たてみち屋「身土不二」の考え方を軸に、ひたすら土の健康状態を適切に保つ。

生口島の隣、大三島出身の菅氏は、食品流通などの仕事を経て、柑橘事業に乗り出す会社の一員として生口島に移住してきました。古民家の空き家を借りたところ、その家主から手に負えなくなってしまった約3,000坪のレモン農園の管理を頼まれました。空き家に思いがけずレモン農園が付いてきたカタチです。柑橘事業の撤退が決まったこともあり、菅氏はそのレモン農園主として独立を決意。翌年、40歳の時でした。

菅氏の農業の軸にあるのは、「身土不二(しんどふじ)」の考え方です。人間の身体と土の働きは同質であり、風土に育まれる命をいただくことは土を食べることに等しい、といった意味があります。レモンの木に美味しく健康的な実をつけてもらうには、土の健康状態を適切に保つことが大切と考えて、農薬や化学肥料を使わず、有用菌の働きを活かす土づくりに徹しています。

創業から使い続ける堆肥ヒューマスのほか、厳選した天然ミネラルや酵素をブレンドした天然液肥を散布します。雑草はシロツメクサなど土にとって有益な種類がはびこるように数種類播種し、除草剤に頼ることもありません。菅氏は鉄の杭を土に刺してみせます。他の園だった耕作放棄地の土には、菅氏が体重をかけても杭は20cmほどしか入りません。一方、菅氏の農園に杭を刺してみると、すうっと100cm近く入りました。土がやわらかく、ふかふかな証拠。土中に有用菌が多く、しっかり呼吸しているおかげなのです。

この土壌で育ったレモンは農薬・化学肥料不使用の「ノンケミカル・レモン」として出荷されています。皮まで丸ごと味わえる「食べて美味しいレモン」です。

自ら独自ブレンドした天然液肥。配合や散布量に菅氏の腕が光る。

地面に杭を刺して見せる菅氏。有用菌が働くやわらかな土には、力をかけずとも杭はすうっと入っていく。

citurusfarms たてみち屋レモンサワーの概念を覆す一杯。

取材班が訪ねたこの日、菅氏の農園にはもう一人のゲストがいました。東京・新宿にある「Mixology & Elixir Bar Ben Fiddich」(バー ベンフィディック)のバーテンダー・鹿山博康氏です。同氏は自ら農場で薬草を栽培し、養蜂をして蜂蜜を採取し多彩なカクテルを生み出すミクソロジストとして知られ、店は世界のバーランキングで常に上位にランクインするなど世界中にファンを抱えています。

数年来「菅さんのレモン」を店で使い、プライベートでも菅氏と交流のあった鹿山氏は、はるばる農園の見学に訪れていたのです。
「菅さんのレモンは香りのフレッシュさが違います。そして、完熟レモンは果汁の酸味と甘味、皮の苦味のバランスが絶妙」と鹿山氏。バーの七つ道具を持参した同氏は、その場でレモンサワーをつくってくれました。

香り、味わい、共に圧倒的なレモンの存在感。それでいて、全体的にまとまりがあり、すっきりと穏やかな後味。思わず笑顔になる旨さ。レモンサワーの概念が180度転換された思いです。

嬉々としてカクテルを作る鹿山氏。彼を見守り、頬を緩める菅氏。昼下がりの農園には、海風にのってレモンの香りがそよいでいました。

さて、菅氏は、一体どんなクラウドファウンディングに挑戦するというのでしょう?

菅氏のレモン農園「citrusfarms たてみち屋」で、もぎたてのレモンをレモンサワーに。鮮烈な美味しさ。

瀬戸内海を見渡せる絶好のロケーションで、採りたてレモンを使ったカクテルを振舞う鹿山氏。

citurusfarms たてみち屋国産 Non-Chemical レモンを未来へつなげていくために。

菅氏は枯れ草に覆われた畑に案内してくれました。ここは、耕作放棄地となって久しい畑。昨年、菅氏はこの土地を購入しました。多額の借入が伴う大きな決断でした。順調なレモン栽培を続けているように見える菅氏ですが、大きな危機感を覚えるようになったと話します。

危機感とは、第一に、気候変動による凍害の頻度が上がっていること。そして第二に、柑橘栽培を諦める農家が増え、耕作放棄地が広がっていることです。

「Non-Chemical レモンの美味しさを広く知っていただき、レモンを丸ごと味わうことが食文化の一部になることを目指して取り組んできました。ところが、そのためには一般消費者の方にまで届けるための絶対的な収量が不足しているという問題に直面しました。とはいえ、手間ひまのかかるNon-Chemical レモンの栽培は、収量を増やそうと無闇に耕作面積を増やしてしまうと、品質の低下や支出過多に陥ってしまいます。私はこれまで既存の柑橘園を譲り受け、その畑の土壌を改良することによってNon-Chemical レモンを栽培してきました。しかし、耕作放棄地のように土壌の改良だけではNon-Chemical レモンの栽培が難しい土地においては、伐採伐根と造成整地をしてから新しい苗木を植える必要があります。これは、野菜の様にすぐに収穫ができない果樹は最初の数年は経費ばかりがかかってしまい、とても効率が悪いのです。さらに、国産レモンの収穫は10月から4月までと、一番需要の高い夏場に収穫ができません。これらの課題を解決するために、大きな投資をしてでも理想的なレモン畑を一から作る必要がある、という結論に達したのです」

理想のレモン畑を作りたい。菅氏の熱意は、年々広がっていく耕作放棄地を自分の手でどうにかしたいという想いともつながりました。

「レモン畑のモデルケースを耕作放棄地に作り上げ、次世代のレモン栽培のあり方を示すことができれば、美しい生口島に虫喰いあとのように広がっている耕作放棄地を緑のレモン畑に変えていけるかもしれない」

菅氏は、その新たな取り組みのスタートにあたり、Non-Chemicalレモン栽培への賛同者を増やし、壮大なプロジェクトの着手資金を調達するために、クラウドファウンディング実施の決断をしました。

菅氏は約2,400坪の耕作放棄地を購入。さらに高品質なレモンを広く安定的に提供するべく、ハウスやラボを併設した園の整備に取り組んでいくという。

住所:広島県尾道市瀬戸田町福田796
FAX:0845-27-0861
http://www.tatemichiya.com/

Photographs:MINA MICHISHITA
Text:KOH WATANABE

2021年度 年末年始休業のお知らせ

平素は格別のお引き立てをいただき、厚く御礼申し上げます。

誠に勝手ながら下記期間を年末年始休業とさせていただきます。

2021年12月30日(木) ~ 2022年1月4日(火)まで

※ 2022年1月5日(水)より、通常業務を開始します。

※ 休暇中のお問合せにつきましては、2022年1月5日(水) 以降に対応させていただきます。

大変ご迷惑をお掛けいたしますが、 何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

バイクチェーンタイプ シルバーキーホルダー

  • 21oz.デニムとの相性を考えて作り上げた完全アイアンハート仕様です。
  • すべてのパーツの型起こしから始まり、一番のポイントであるチェーンのコマの理想のゆるみを実現するまで約1年近くの時間をかけて作り上げた完全オリジナル。
  • 一人の職人が、細かなパーツの磨きからロウ付け、そして仕上げまで行っています
  • ベルトループにひっかけるナスカンタイプ

生産国

  • 日本