なめがた ベジタブルキングダム生産量全国トップ。約20年前にはじまった茨城県のみず菜栽培。
冬場の鍋からパスタ、サラダまで幅広い用途で人気のみず菜。古くから愛される伝統的京野菜ですが、現在の生産量日本一は茨城県。とくに行方市は、いちはやく大量栽培に取り組み、関東へのみず菜普及に多大な役割を果たしてきました。
そんな関東におけるみず菜のトップランナーという誇りから、行方産みず菜が広く知れ渡った現在でも、生産者の間では日々品質の維持、向上のための試行錯誤が繰り返されています。
そんな生産の現場を、いばらき食のアンバサダーを務める『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフとともに訪ねました。
取材班を出迎えてくれた野原浩氏は、2005年に市町村合併により行方市が誕生する以前、この地が北浦町だった頃からみず菜栽培に取り組む生産者。みず菜栽培のパイオニアとして、試行錯誤を繰り返しながら品質向上に努めてきました。
「すべては土。栄養もおいしさも、土が決めるんです」
と野原氏。水耕栽培もできるみず菜ですが、やはり良い土にしっかりと根を張って栄養を汲み上げることで、おいしさや食感が変わってくるのだといいます。
「別に普通のことやってるだけだよ」
そう笑う野原氏ですが、これはきっと口下手でシャイな行方気質から。その証拠に、畑で採れたてのみず菜を試食した神保シェフが「うまい!」と漏らすと、我が子を褒められたかのように相好を崩しました。
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なめがた ベジタブルキングダムおいしさの決め手は土。味も見た目も左右する繊細な土づくり。
まず神保シェフが注目したのは、抜いたみず菜の根。
「これだけ根が長いのは、土が柔らかいから。エグみがなく、うまみがあるのも、よっぽど丁寧に土づくりをされている証だと思います」
そんな称賛を寄せる神保シェフに、野原氏は土づくりの詳細を説明します。曰く、マッシュルームと籾殻を混ぜた堆肥を使用すること。農薬は極力使わないこと。窒素を減らすこと。
神保シェフの的を射た質問が、野原氏の口を滑らかにするのでしょう。専門的なみず菜栽培の話で盛り上がります。
みず菜の収穫は年に約6回。夏場は30日ほどで成長しますが、2作に一度は堆肥を入れて、いつでも同じ品質になるよう努めているのだとか。収穫後は袋詰めの作業ですが、見た目の美しさもみず菜の大切な要素。折れた茎を除け、サイズを揃え、丁寧に袋詰めしてから、真空予冷をかけてようやく出荷に至ります。
大きな体の野原氏ですが、みず菜栽培は非常に繊細な作業。行方産みず菜は評価が高く、売れ行きも良いことから、みず菜部会の平均年齢は比較的若く、後継者も育っているのだといいます。
なめがた ベジタブルキングダム行方産みず菜のおいしさを、手軽なレシピで引き出す。
「みず菜はアブラナ科の京野菜で、シャキッとした食感と爽やかな風味が特徴。クセが少なく、生でもおいしい。さまざまな料理に使える野菜です」
すでに自身の店で行方産みず菜を使用している神保シェフにとって、このみず菜は慣れ親しんだ味。
「カニと合わせたトマトパスタに使用しています。カラスミとの相性も良いですね。葉はサラダに、茎は浅漬けにしてもおいしい」
とさまざまな調理法を教えてくれました。
そこで今回は、家庭でも作りやすい手軽なレシピをオーダー。手軽さの中にもシェフの技が光る絶品みず菜レシピ、その詳細は次回の記事をお楽しみに。
Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA
(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))