Destination Restaurantsあえて大都市を除外するかつてないレストランセレクション。
2022年6月末。東京・白金にて華やかなレセプションパーティが開催されていました。
壇上には富山『L’evo』の谷口英司氏や和歌山『villa aida』の小林寛司氏など、『ONESTORY』でもおなじみのシェフたちの姿。この日のレセプションは、ジャパンタイムズが主催するレストランセレクション『Destination Restaurants』発表の場でした。
『Destination Restaurants』は、「日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト」として2021年に発足。その最大の特徴は、選考対象が“東京23区と政令指定都市を除く”場所にあるあらゆるジャンルのレストランという点にあります。
日本のレストランセレクションにおいて、世界一ミシュランの星の数が多いといわれる東京、そして個性的な名店が点在する大都市を除外するのは、きっと難しい決断だったことでしょう。
しかし、既存のレストランセレクションとの差別化のみならず、訪日外国人の目を地方に向け、日本各地のまだ見ぬ魅力を伝えるという視点からも、唯一無二かつ有意義なセレクション。そして選ばれた店も、その土地の文化を紐解き、その魅力を伝えるような名店揃いです。
レセプションはコロナ禍の影響で開催が見送られた2021年の発表会も兼ね、2021年度受賞店10店、2022年度受賞店10点、そして各年のベストオブ・ザ・イヤーが発表されました。受賞盾の授与とともに壇上でコメントを求められた受賞店のシェフたち。その口から多く述べられていたのは「地方に光を当てるこのようなセレクションができてうれしい」という言葉でした。その言葉に、そして和やかに会話して互いに交流をはかるシェフたちの姿に、これからの地方創生の在り方が垣間見えるようでした。
『Destination Restaurants 2022』選定店
villa aida(和歌山)、余市 SAGRA(北海道)、山菜料理 出羽屋(山形)、里山十帖(新潟)、ドン ブラボー(東京)、鎌倉北じま(神奈川)、ラトリエ・ドゥ・ノト(石川)、茶懐石 温石(静岡)、AKAI(広島)、ヴィッラ デル ニード(⻑崎)
『Destination Restaurants 2021』選定店
L’evo(富山)、チミケップホテル(北海道)、日本料理 たかむら(秋田)、とおの屋 要(岩手)、Restaurant Uozen(新潟)、片折(石川)、すし処めくみ(石川)、日本料理 柚木元(長野)、Pesceco(長崎)、Restaurant État d'esprit(沖縄)
Destination Restaurantsセレクション創設の背景にある、メディアとしての使命。
レセプションの翌日、『ジャパンタイムズ』の代表取締役会長兼社長である末松弥奈子さんはこう振り返ります。
「1897年に創刊されたジャパンタイムズは、日本でもっとも長い歴史を持つ英字新聞になります。その創刊の哲学は“外国人が外国人の目で見た日本を伝える英字新聞では日本が伝えたい情報が発信されていない”という点にありました。この『Destination Restaurants』も同様に、日本人が選び、伝えたい日本のオーセンティックな食文化の発信です。そこでしか味わえないもの、そのシェフにしか成し得ないこと。地域のショーケースとしての役割や、サイドストーリーにも思いを馳せながら選定しています」。
そしてもうひとつ末松さんが強調するのが、このセレクションが「ランク付け」ではない点です。
「ただ素晴らしいお店のリストを作っている、という感覚。10年かけて100軒のリストを作っていきたい」。末松さんは、にこやかにそう話しました。
選考にあたったのは、国内外のレストラン事情に精通する辻調理師専門学校校長の辻 芳樹氏、日本を代表する美食家である本田直之氏と浜田岳文氏の3名。
「浜田さんはグローバルな視点で日本の食を見極める方。本田さんは日本の地域へ本当に足繁く通いさまざまなお店を訪ね歩いています。そして辻先生はシェフのことから経営的なことまで多角的な視点をお持ちです。そして何よりお三方とも、レストラン文化を愛してやまない方々です」。
『ジャパンタイムズ』の理念とグローバルな視点、そして地域に思いを馳せる美食家たちの思い。それらが形となった『Destination Restaurants』。このセレクションが地方のシェフたちのモチベーションとなり、日本のレストラン文化そのものが底上げされていく原動力となりそうです。
住所:北海道札幌市中央区大通西1-12 MAP
電話:011-208-1555
Text:NATSUKI SHIGIHARA