瀬戸内海の離島で、廃校になった小学校で眠る。懐かしくも新しい不思議な宿泊体験。[大三島 憩の家/愛媛県今治市]

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旧宗方小学校の建物をリノベーションした「大三島 憩の家」。別棟の個室のほか、和室タイプもあり。

大三島 憩の家離島の木造校舎に泊まるという非日常の体験

瀬戸内海に浮かぶ大三島は、愛媛県側の今治からしまなみ海道に入って3番目の島。日本総鎮守とされる大山祇神社があることから、神の島として大切にされてきました。聖地ゆえに周辺の魚も守られ、漁業よりも農業が盛ん。柑橘王国・愛媛にあって有数の柑橘の産地です。

そんな大三島に、廃校になった小学校の木造校舎をリノベーションした宿泊施設「大三島 憩の家」ができたのは2018年のこと。瀬戸内海の離島にある小学校に泊まる。そんな非日常を体験できる宿です。

大三島ICから20分ほど島景色のドライブを愉しむと、目的地に到着。案内看板には宿の名前もありますが、敷地内には「宗方小学校」の名もそのまま残されています。廊下は広い中庭に向けて開いていて、いかにも島の学校という開放感が感じられます。

きっと多くの人が、この建物を見て懐かしさを感じることでしょう。それは自身が通った学校に似ているからではなく、もっと根源的な“学校”の持つイメージに近いからかもしれません。

ほぼ小学校の頃のままの建物に入り、受付へ。客室名は「1の1」といったクラス名のまま。しかし引き戸を開くとそこには、想像と違う空間が広がります。

ゆったりしたソファと大きなベッドが置かれた室内を、間接照明が柔らかく照らす。洗面所やバス、トイレも清潔で広々。しかし窓枠や床やドアを見ると、明らかに小学校の面影が残っています。その不思議なギャップが、ほかにはない特別感を醸し出しているのです。

長い廊下の先には娯楽室がある。中には卓球台があり、壁の書架には小学校時代から残ったと思われる蔵書。食堂はシックですが、やはり往時の面影が残ります。中庭には朝礼台の跡。その向こうにある建物が、新たに作られた海を望む展望風呂です。

すべてが懐かしく、そして新鮮。この建物のリニューアルは、伊東豊雄氏が率いる伊東建築塾が監修したといいます。この島に縁の深い巨匠には、何を残し、何を変えるべきかが、はっきりと見えていたのでしょう。

小学校時代の面影を色濃く残す内観。板張りの廊下や引き戸など、懐かしい雰囲気が漂う。

客室はラグジュアリー。ゆったりとした空間にソファやベッドが配置されている。

ウェルカムドリンクやアメニティなども上質。物珍しいだけでなく、宿泊施設としてのクオリティも高い。

長い廊下、右手は校庭。開放的な造りは、ここで子どもたちが学んでいた往時のまま。

娯楽室には卓球台や本のほか、学校時代の配布物なども展示されている。

海を臨む展望風呂は、宿のオープンに合わせて新設されたもの。

大三島 憩の家近海の海の幸をふんだんに使う料理も見事

夕食までに時間があれば、近くを散策してみるのも良いでしょう。砂浜までは校舎を出て1分とかからない距離。瀬戸内海の穏やかな海を見渡す、静かでのんびりした浜が広がります。砂浜の横にある堤防では、釣りを楽しむ人の姿も。すべてがのんびりとした島時間に彩られた光景です。

夕食も圧巻です。

ハモ、セトダイ、イサキ、サザエ、タイ、オコゼ。このコースのために一体何尾の魚を使っているのでしょう。どれも新鮮で脂が乗り、何より素材を活かす調理が見事です。

料理を担当するこの宿の主人は、大三島にある料理旅館に生まれた和食一筋の人物だそう。和食の粋を知り、この地の魚を知り尽くす。魚づくしでありながら、変化に富んだおいしさにも納得です。

食事を終えて部屋に戻り、満たされた気分のまま眠りに。学校で眠るという体験は、心が沸き立つような非日常のひとときを演出してくれることでしょう。

プライベートビーチまで徒歩10秒。静かな海を独占することができる。

夕食の一品、お造り盛り合わせ。鮮度や質はもちろん、包丁の入れ方も抜群。

この日の小鉢は鱧。その他、煮魚、揚げ魚など、食べきれないほどの魚が登場する。

食事は鯛の釜飯。上品な出汁の風味が、鯛の旨みを引き立てる。

夜はミステリアスな雰囲気に包まれる。花火や夜の散歩に出かけるのも良い。

住所:愛媛県今治市大三島町宗方5208-1 MAP
TEL:0897-83-1111
https://www.ikoinoie.co.jp/

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木曽平沢の漆器巡り。歴史と伝統、そして美しさに触れる旅。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

『石本玉水』の石本則男氏、愛子さん夫妻。ともに漆器職人として木曽漆器を支え続ける。

DINING OUT KISO-NARAI伝統の木曽漆器を見て、触れて、体験するツアー。

2022年7月末に開催され、大盛況で幕を下ろした『DINING OUT KISO-NARAI』。約2年半の時を越えて開催された『DINING OUT』は、ただ地元を伝えるのではなく、地元の人や文化に触れ、深く地元と繋がることを目指しました。

興奮覚めやらぬその翌日。より深く地元文化を体験してもらうべく、木曽を代表するふたつの文化体験ツアーが企画されました。

ひとつは木曽の霊峰・御嶽を神聖視する御嶽信仰の修行である滝行の体験。そしてもうひとつは、木曽を代表する工芸品・木曽漆器を学ぶツアーです。

【関連記事】山に触れ、山を知り、山に学ぶ。中山道34番目の宿場・奈良井宿を舞台にした19回目の「DINING OUT」速報。
【関連記事】御嶽信仰の聖地で滝に打たれ、やがて心は自然と一体になる。

各地の旅館やホテルで見られる座卓や脇息にも、木曽漆器が多く使用されている。

DINING OUT KISO-NARAI木曽の漆器を支える漆掻きという仕事。

木曽は、良質な木材の産地。木曽漆器のルーツは、そんな木曽の木材を使って作る木製品をさらに丈夫にするために漆を塗ったことが起源です。木製品に漆を重ね塗りする漆器は、庶民の生活用品としても親しまれていました。

そこに変化が訪れたのは明治時代。奈良井の川で漆と混ざりやすい粘土質の良質な土が見つかり、より堅牢で美しい漆器が作れるようになったこと。そこから庶民の道具だけではなく、高級調度品も生産され、木曽は漆器の産地として発展していきます。

『DINING OUT KISO-NARAI』の舞台となった奈良井宿の隣町、木曽平沢。ここは木曽漆器の伝統を色濃く受け継ぐ、漆器の街です。街道が町中を貫く小さな集落に、漆器関連の事業所が100軒以上、漆器店だけでも50〜60軒。そう聞けば、この街と漆器の密接な関係がわかることでしょう。

そんな木曽平沢で行われた漆器体験ツアー。その最初の目的地は漆器ではなく、その元となる漆作りの現場です。

一行を出迎えてくれた竹内義浩氏は、長野県内で唯一、全国でも40〜50人しか居ないという漆掻き(うるしかき)。漆掻きとは、苗木から育てた漆の木に切れ目を入れて漆を採取する職人のことで、竹内氏はそこから精製、調合も手掛けます。その仕事は、漆器職人に渡る前の漆をゼロから生産する仕事。漆の全消費量の1割未満という国産漆を支える、大切な生産者なのです。

竹内氏の仕事場は、木の香りと見たこともない仕事道具の数々に囲まれる不思議な場所。しかし竹内氏の仕事と、漆に対する真摯な想いを伺うにつれ、木曽漆器がより深く、美しく見えてくるのです。

苗木を植え、育て、漆を抽出、精製、調合するのが竹内義浩氏の仕事。漆産業の根本を支える職人だ。

樹皮をひっかくように傷をつけると、その場所を守るように漆が染み出す。木一本から採れる漆は、1回わずか15g。年間でも1本あたり200gほどしか採れない。

木曾漆器工業協同組合の精漆工場。かつては手作業で天日にさらしながら精製していたが、現在は機械で撹拌して水分量を調整する。

漆の苗が成木になるまでは15年。「木も職人も育つまで時間がかかる。それが漆の難しいところ」と竹内氏。

DINING OUT KISO-NARAIそれぞれ個性豊かな3軒の工房を訪れる。

続いては木曽平沢にある、3軒の漆工房へ。

最初に訪れた『うるし工房 石本玉水』は、漆器職人・石本則男氏が奥様の愛子さんとともに営む工房。石本氏は木曽漆器工業協同組合の理事長を務める人物であり、今回の『DIINNG OUT KISO-NARAI』でゲストにプレゼントされた漆器制作においても中心的な役割を担った人物。

得意とするのは、蛋白を混ぜた漆で刷毛目を残して、やや艶を消す松明塗です。刀の鞘に塗られた技法が起源で「カジュアルに普段遣いしてもらいたい」と言います。一方で愛子さんの得意分野は、漆を接着剤として金やプラチナ、顔料などを沈め、そこからノミで削り出すことで図柄を浮かび上がらせる沈金という技法。こちらは絵画のような色彩で、芸術品としての美しさを秘めています。日用品と芸術品。漆の奥深さを改めて感じる工房です。

次に訪れたのは、漆器職人・巣山定一氏の工房『漆芸 巣山定一』。ここでは巣山氏の作品に加え、漆器作りの準備段階の話も聞かせてもらいました。

「漆は特殊な世界で、専用の道具がほぼありません。だから漆器作りのスタートは、まず道具を作るところから」。

そう言って鉋(かんな)を取り出す巣山氏。見事な手さばきで木を削り、作るのは漆に使うヘラや刷毛など。つまりスタート地点に向かうための作業です。しかしこれも、漆器職人の大切な仕事。そんな道具を使って仕上げる巣山氏の作品は繊細でいながら頑強で、末永く愛用できる品ばかりです。

最後の一軒は『伊藤寛司商店』。4代目店主・伊藤寛茂氏の案内で漆器を見学します。ここで目を引くのは、古代あかね塗というオリジナルの漆器。

「塗ったばかりの漆は暗い色。それが使い込むごとに、艶が出て明るくなります。この変化のために、7〜8回重ね塗りする最後の一回に、貴重な国産漆を使用しています」と伊藤氏。

展示されていた経年変化を経た古代あかね塗の器は、鮮やかな朱と見事な艶を放っていました。さらに伊藤氏は工房である築110年の土蔵も案内してくれました。荘厳ささえ感じるような静謐な蔵で繰り返される漆器づくり。改めて、この地の漆器に込められた思いの強さを感じる光景です。

石本則男氏と松明塗。使い込むほどに艶が増す木曽漆器の特性が如実に表れる。

愛子さんと沈金の作品。背後にある額装された作品も、すべて顔料を混ぜた漆を削り出すことで描かれている。

『DINING OUT KISO-NARAI』では、オリジナルの漆器を『木曽漆器工業組合』と制作。とうじそばを入れたそれを、ゲストにサプライズでプレゼント。

『漆芸 巣山定一』の巣山氏。実用性と芸術性を兼ね備えた作品に定評がある。

巣山氏の代表作である姫枡重市松三段は、現在7年待ちの人気ぶり。

「軽さ、持ちやすさ、口当たりの良さ、洗いやすさ、重ねやすさ、という5つの“さ”を重視しています」と巣山氏。道具も自ら製作する。

日用品から高級品まで幅広い品ぞろえに定評がある『伊藤寛司商店』の4代目店主・伊藤寛茂氏。

工房である蔵は築110年で、現役の塗蔵として木曽で最古のもの。作業道具を上げ下げできるように窓が大きく取られているのが特徴。

古代あかね塗の椀。仕上げに希少な国産漆を使用することで、使うほどに艷やかに、丈夫になる。

DINING OUT KISO-NARAI漆とともに木曽の地に受け継がれる、おもてなしの心。

ツアーで巡った漆器の街・木曽平沢には、いくつか特徴的な風習もあります。ひとつは、店にスタッフが居ないこと。

間口の広さで税率が決められていた木曽平沢の建物は、入り口が狭く、奥に細長いうなぎの寝床。通りに面した側に店舗やギャラリーがあり、中庭を挟んで奥に工房がある造りが一般的です。

そして、職人たちは基本的に工房で作業をしているため、店舗部分は無人なのです。客は街道からふらりと店に入り漆器を見学、用があれば呼び鈴を押して工房にいる人を呼び出すというスタイル。不用心なようにも思えますが、これが工房と店舗を併設する木曽平沢らしさなのです。

もうひとつの特徴は、どの工房にもおもてなしの心が溢れていること。職人の方々に漆について尋ねれば、丁寧に教えてくれるのはもちろん、お茶やお茶菓子を出して、座って話し込んでしまうこともしばしば。古くから旅人を迎えた街道の文化なのでしょうか。

「せっかく遠くから来ていらしたからね。ただ“来てくれてありがとう”という気持ちです」。『石本玉水』の石本愛子さんはそう笑いました。

ツアーの締めくくりは、昭和6年(1931年)築の『日々別荘』にてランチ。ここは地域おこし協力隊の近藤沙紀氏が家主を務める施設で、週末に近藤氏主催のカフェがオープンするなど、さまざまな企画で地域活性化の拠点となる場所。

そんな『日々別荘』でこの日は、地元の郷土料理である朴葉寿司と、手打ち蕎麦が供されました。もちろん、器や箸は木曽漆器。器と料理を担ってくれたのは、『漆工房 野口』の野口義明氏と野口早苗さん。さらにこの蕎麦を打ったのは、先にご紹介した漆器職人・巣山定一氏。最後までおもてなしの心にあふれていました。

漆工房で漆の成り立ちを知り、石本夫妻の工房でその奥深さを知り、巣山氏に道具としての漆器のこだわりを伺い、伊藤氏のもとで伝統的な作業を見学し、そして最後に実際に漆器で食事をする。わずか半日の間に、木曽漆器に親しみ、漆器を深く学ぶことができるツアーでした。

漆器は職人の手で塗り直され、丁寧に修復されながら、長く愛用するもの。木曽平沢では毎年、多くの人で賑わう漆器市も開催されますので、何度でもこの街を訪れ、愛用の漆器を塗り直しながら、このおもてなしの文化と、木曽漆器の伝統を体感してみてはいかがでしょうか。

『日々別荘』は、ゲストハウスとしても利用可能なため、1日を通して町を楽しむこともおすすめです。また、より木曽漆器の伝統に触れたければ、ぜひ『木曽くらしの工芸館』へ。奈良井、平沢の職人の作品にも出合うことができます。

人、もの、こと。さまざまな体験をすることによって、この町の魅力は初めて享受できるのです。ですが、一度では、まだ足りないかもしれません。なぜなら、その全てが深く、奥ゆかしいからです。だから、皆、再訪を誓うのかもしれません。

おもてなしは特別なことではなく、ただ感謝の気持ち。それが木曽平沢に共通する人々の思い。

漆器ツアー最後には、『日々別荘』にて食事を。『漆芸 巣山定一』の巣山氏は、蕎麦打ちも行う。左より、『一般社団法人 塩尻・木曽地域地場産業振興センター』太田洋志氏、巣山氏。そして、『日々別荘』にて器と料理を担った『漆工房 野口』の野口義明氏と野口早苗さん、巣山とし子さん。ここにはいないが、今回のツアーは、近藤沙紀さんが構成。多くの地元の方々が参画したからこそ内容の濃い体験につながった。

住所:長野県塩尻市木曽平沢1692 MAP
電話:0264-34-2106

住所:長野県塩尻市木曽平沢1634-35 MAP
電話:0264-34-2254

住所:長野県塩尻市木曽平沢1607 MAP
電話:0264-34-2034

住所:長野県塩尻市木曽平沢1587 MAP
電話:0263-88-8530

住所:長野県塩尻市木曽平沢2272-7(道の駅 木曽ならかわ内) MAP
電話:0264-34-3888

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

宇和島名物・太刀魚巻。時代を越えて愛される唯一無二の味。[河合太刀魚巻店/愛媛県宇和島市]

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秘伝のタレに潜らせながらじっくりと焼くことで、香ばしく、味わい深いおいしさになる太刀魚巻。

河合太刀魚巻店海産資源の宝庫・愛媛県で異彩を放つ名店。

北の瀬戸内海、南の太平洋、伊予灘、宇和海、豊後水道と豊富な漁場を抱える愛媛県。実際に訪れてみると、魚それぞれの鮮度や脂の乗りに加え、魚種の多彩さに驚かされます。街の食堂にも、魚屋にも、見たこともないようなさまざまな魚が並んでいます。

そんな愛媛県の宇和島に、少し変わった店があります。
店名は『河合太刀魚巻店』。その名の通り、太刀魚巻の店です。これほど魚種が豊富な愛媛で、太刀魚一本勝負。そこにはどんな物語が隠されているのでしょう。

「河合太刀魚巻店」の外観。かつては魚屋で賑わったエリアだが、いま賑わうのはこの店のみ。

河合太刀魚巻店名物はなくても訪れたくなる看板娘の人柄。

「ごめん!今日は太刀魚ないんだよ」

それが取材班を出迎えた『河合太刀魚巻店』の看板娘・河合京子さんの第一声でした。相手は自然。無いものは、無い。

「あるときは週に4〜5日はあるんだけど、無いときはめっきり。5回来て外れて、6回目でようやく、って人もいたよ」

快活で聞くだけで元気がもらえるような京子さんの声に惹かれ、店先でもう少し話を伺ってみました。

聞けば名物・太刀魚巻を考案したのは、京子さんの祖父。まだ冷蔵庫も普及していない時代、大量に揚がる太刀魚を活かすために青竹に巻いてチクワの焼台で焼いたのが始まりでした。

「このあたりは魚棚という地名で、この通りはみんな魚屋だったんだよ」

というが、現在、この店のほかに開いている店はありません。時代の流れを感じると同時に、その次代を越えて愛される太刀魚巻にいっそう興味が湧きます。

「コロッケはあるよ。これもおいしいよ」

それはこの店のもうひとつの名物、アジのすり身のコロッケ。ぎっしりと凝縮されたアジの旨みと、弾力、ピリッと効いたスパイス。素材が良いからか、魚の臭みとは一切無縁。味わい深く、ジューシーで、後を引く絶品です。

さらに京子さんの話は続きます。祖父と父のこと、近年の太刀魚の水揚げのこと、宇和島のこと、テレビの取材で大好きな俳優と中継で話し夢が叶ったこと。まるで昔からの友達と話すような時間。さすがは看板娘。名物の太刀魚巻がなくとも、訪れる価値がある愉しい時間を過ごせるはずです。

「河合太刀魚巻店」の看板娘・河合京子さん。その明るい人柄にファンも多い。

店のもうひとつの名物アジのすりみコロッケ。アジ100%で魚の旨みを凝縮。

プリッとした弾力と旨みに加え、スパイスの刺激もあり、酒の肴にもぴったり。

店の内観。客席などはないが、ここで名物を肴に一杯飲んでいく常連客も多い。

河合太刀魚巻店2日目にして出合えた名物・太刀魚巻。

翌日、取材班はもう一度店を訪れてみました。迎えてくれたのは昨日と同じ京子さんの笑顔。

「今日はあるよ!」

あたりに漂うタレが焦げる香ばしい匂い。焼台では見事な照りを放つ太刀魚巻が焼かれています。これが名物・太刀魚巻です。

淡白な太刀魚の身に絡む濃厚な甘辛のタレ。外側はパリッと香ばしく、中はふっくら柔らかで、ボリュームもたっぷりだ。一本あたり一尾半から二尾の太刀魚を使っているのだといいます。いまや高級魚となった太刀魚の、なんと贅沢な食べ方でしょう。

時代を越えて愛される名物・太刀魚巻。確かにこれはここにしかない、世界でひとつの味でしょう。

遠方から訪れる客も多いというこの店。それはもちろん太刀魚巻とアジのコロッケのおいしさのためでしょう。しかし話すだけで元気がもらえるような京子さんの存在もまた、『河合太刀魚巻店』の価値のひとつであることは間違いありません。

焼台から漂う、タレの焦げる香ばしい匂いは、角を曲がって表通りまで漂う。

外はカリッと香ばしく、中はふんわり。太刀魚の淡白な味わいが、タレとベストマッチ。

住所:愛媛県宇和島市吉田町魚棚28 MAP
TEL:0895-52-0122
http://www.tachiuomaki.com/

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山形・庄内の一流料理人や農家とともに開発したコーラシロップ。[和光アネックス/東京都中央区]

タイポグラフィの美しいデザインボトル。1本で約10杯のクラフトコーラを楽しめる。

WAKO ANNEX出羽三山の麓から生まれた、山形発のクラフトコーラ。

コリアンダー、シナモン、カルダモン、クローブなど、10種のスパイスが織り成す芳醇な香り、ブドウ糖、果糖、黒糖の3種の糖類のキレの良い甘味、レモン、ライム果汁の2種の柑橘のスッキリ爽快感。

それぞれのバランスが絶妙に良い飲み口のクラフトコーラが『YATA COLA』の特徴。製造しているのは、山形県鶴岡市の『ティーズファクトリー』です。

「山形・庄内に住むわたしたちが作る山形を楽しみ味わう、山形発のクラフトコーラ」は、山形・庄内の一流フレンチシェフや農家が集まり、独自のレシピを開発。たっぷりのミネラルと豊富な栄養価も含み、健康にも配慮。老若男女問わず支持を得ています。

前述、スパイスをしっかりと感じることができる一方、クセもなくレシピ派生もしやすく、炭酸割りをはじめ、お湯割り、牛乳割り、いずれも1(『YATA COLA』):3がおすすめ。加えて、料理の調味料としても利用できるため、ぜひお試しを。

様々な飲み方を楽しめるのがコーラシロップの利点。本文中に記したよう、氷で冷やしたグラスに『YATA COLA』とソーダを割るスタンダードをはじめ、『YATA COLA』と冷たい牛乳を注いだアイスチャイや『YATA COLA』と水を鍋で温めたホットコーラもおすすめ。お好みに合わせてぜひ。(全て1:3の割合が目安)

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

アイアンハートキャンプ7th (出店業者および関係者様専用)チケット

こちらは事前にご登録いただいた出店業者様および関係者様 専用チケット購入ページです

アイアンハートキャンプ7th 概要

イベント名 IRON HEART CAMP 7th
場 所 〒369-1304 埼玉県秩父郡長瀞町大字本野上 363 フォレストサンズ長瀞
主催 株式会社アイアンハート
日程 2022年11月12日(土)〜13日(日)  雨天決行
料金 大人 ¥15,000(税込¥16,500) ※宿泊・BBQ代込み
小学生以下のお子様0円(税込0円)
備考 例年は、初日のBBQのみのご参加が可能でしたが、今回は不可となります。
2日目のみのご参加は、例年通り、無料開放となりますのでチケットのご購入は必要ありません。

参加方法

  • キャンプチケットをお一人様一枚ご購入ください。複数名でご参加の場合は代表者の1名様がまとめて人数分をご購入いただきますようお願い致します。
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  • 支払い方法は『PayPay』『クレジットカード決済』『代金引換(ヤマトコレクトサービス)』のみとさせていただきます。
  • ※『代金引換(ヤマトコレクトサービス)』をご選択頂いた場合、チケット発送の際に決済となります。
  • チケット発送は10月1日より順次配送予定です。

参加にあたってのご注意

  • * 参加者の皆様には、自動的にイベント保険(あいおいニッセイ同和存外保険会社国内旅行傷害保険)に加入していただくこととなります(保険料は参加費込み。別途料金はかかりません。)
  • ※チケットをご購入いただいた方には、イベント保険の関係上、後日、ご参加の方全員のお名前とご住所、生年月日をお知らせいただきます。

  • 宿泊施設はフォレストサンズ長瀞さんの『トレーラーハウス』『コテージ』『カームベアー』のいずれかとなります。
  • 部屋割りなどは、ご購入時にお選び頂く事は出来ません。当日にアイアンハートスタッフがご案内致しますので、予めご了承下さい。
  • 宿泊施設内は、一部ベッドスペースに仕切りはありますが、基本的に男女関係なく混合の相部屋となります。
  • ご家族や団体様でお申し込みいただいた場合はできる限り同じトレーラーとなるよう配慮させていただきますが、1台で収まりきらない団体様の場合は、分割させていただき、他グループの方と相部屋になる場合がございますので、あらかじめご了承いただきますようお願い致します

購入の仕方について

※複数名でご参加の場合は代表者の1名様がまとめて人数分をご購入いただきますようお願い致します。

【例】大人2名 子供3名様でご参加の場合

  • 表の大人15000円(税込16500円)にチェックが入っていることを確認し、数量を2にして『カートに入れる』ボタンを押す
  • カート画面になったら、大人 15000円(税込16500円) 2点 になっていることを確認し、その下の『> ショッピングを続ける』をクリックして元の商品ページに戻る
  • 続けて、表の小学生以下のお子様 無料 にチェックが入っていることを確認し、数量を3にして『カートに入れる』ボタンを押す
  • カート画面になったら、大人 15000円(税込16500円) 2点、小学生以下のお子様 無料 3点 になっていることを確認し、お届け先の情報を入力、購入手続きにお進みください。
  • 事前に会員登録をしている場合は、ログインして頂くと、登録情報が自動的に入力されますので、お買い物がスムーズです。(※まれに、お買い物画面でログインしていても、カート画面でログインになっていない場合がございます。その場合は、お手数ですが、再度カート画面からログインしてください。)

約300年の成果。土作りから食材に向き合う、絶品ジャム。[和光アネックス/東京都中央区]

一本一本、丁寧に育てられた植木からできた『夏みかんマーマレード』。味わいは甘さ控えめ。皮も残しているため、食感も楽しい。

WAKO ANNEXみんなに味わっていただきたいことは、植木の美味しいところ。

東京都三鷹市の植木農家『天神山須藤園』は、戦国時代の城跡が残る天神山にて14代300年以上にわたり土を耕してきました。

そんな歴史ある農園が「植木をもっと身近に」と展開しているのが畑に実った果物を活かしたジャム類。中でも『夏みかんマーマレード』は、人気の品です。

皮をしっかり残し、甘さは控えめに。苦味と甘味のバランスが絶妙な食べ応えのあるマーマレードは、畑仕事同様、手間ひまをかけ、ひとつひとつ丁寧に作られています。

冬に採った夏みかんは、そのままでは酸味が強いため、収穫後に貯蔵。酸を抜き、春まで待って加工しています。もちろん、化学調味料や合成保存料は一切使用せず、無添加。素材の味を大事にしています。

おすすめは、やはりトーストとご一緒に。塗れば、たちまち夏みかんの香りが立ち、凝縮された味を楽しむことができます。また、ソーダや紅茶ともお試しあれ。上質さが増し、ワンランク上のひと時を満喫できるでしょう。

都市農家として、植木生産農家として、農地の魅力や役割を伝えながら、まちなかに根付き、生きている『天神山須藤園』の姿は、実に清々しく、『夏みかんマーマレード』にも似ます。

名は体を表すごとく、生き方は味を表すのかもしれません。

そんな想いを馳せながら『夏みかんマーマレード』とトーストの朝を迎えれば、爽快な一日が約束されるでしょう。

たっぷりと『夏みかんマーマレード』をパンに載せてぜひ。味だけでなく、フレッシュな香りも魅力。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

御嶽信仰の聖地で滝に打たれ、やがて心は自然と一体になる。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県王滝村]

『御嶽神社』新滝での滝行。一般体験は『一般社団法人・木曽おんたけ観光局』に問い合わせを。

DINING OUT KISO-NARAI「DINING OUT」翌日。地元の文化を肌で感じるふたつのツアー。

2022年7月末に長野県奈良井宿で開催された『DINING OUT KISO-NARAI』。

約2年半ぶりの開催となった19回目の『DINING OUT』は、地元婦人会や伝統工芸品組合、地元小中学校の生徒たちに支えられ、ゲストにただ地元の魅力を伝えるだけでなく、この先も長く地元との繋がりを生みました。

【関連記事】山に触れ、山を知り、山に学ぶ。中山道34番目の宿場・奈良井宿を舞台にした19回目の「DINING OUT」速報。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

さらに地域と繋がり、理解を深めるために、晩餐の翌日には、地元文化に触れるふたつのツアーが組まれました。ひとつは、『御嶽山信仰』の一貫である滝行、もうひとつは、この地に伝わる木曽漆器の工房巡り。

この記事ではそんなツアーのひとつ、滝行の様子をお伝えします。

滝行の場へと向かう山道。夏日だが登るにつれて空気はひんやりと変わっていった。

DINING OUT KISO-NARAI「御嶽山」を敬い、信仰する「御嶽信仰」の歴史。

土地や歴史、伝統や由縁を知り、その上で見て、感じ、経験する。それが本当の意味の体験となって、心に刻まれるもの。今回のツアーではそんな知識を学びつつ、バスに乗って滝へと向かいます。

ガイドは、木曽の文化や歴史を紹介する輿幸信氏。バスの中では、この地に育ち、『御嶽信仰』を身近に感じてきた輿氏による解説が繰り広げられました。

『御嶽山』は標高3,067m。独立峰としては富士山に次いで日本で二番目の高さを誇り、その悠然とした姿から古くから山岳信仰の対象とされてきました。ただしその信仰は、厳しい修行により悟りを開こうとする修験道。一般の人には、遠い世界の話でした。

それが変わったのが江戸時代末期。「講」と呼ばれる、地域のコミュニティ単位で信仰するグループが誕生します。講の中で集めた資金で代表者が参拝するこの講で御嶽信仰は身近になり、一説によると、一時期にはその数60万人近くまで信者を増やしたと言われています。

滝行のスタイルも、そのときに変化。修験道では1日4回の滝行を100日間続けてようやく山に入ることができた、という滝行。それが徐々に緩和され現在では、日帰りなどもできる比較的体験しやすいものになっています。

しかし、先人たちが命を賭して挑んできた滝行と、その背景は同じ。山に触れ、自然と一体化し、雑念を払い、体に自然のエネルギーを取り込む。それがこの地の滝行の目的です。

窓の外の景色や自らの実体験を交えながら、おもしろく、わかりやすい解説を続ける輿氏。

「私も滝行は何度も経験しています。人生観が変わるような体験です」。

そんな言葉でツアー参加者たちの気持ちを盛り上げます。

ガイドの輿氏(左)と参加者たち。輿氏の話により、ただの山景色が霊山としての意味を持ち始めた。

『御嶽神社』第22代宮司である滝 和人氏のお祓いを受け、正式参拝する希少な体験。

里宮内に飾られる信者に奉納された天狗の面。島崎藤村の『夜明け前』内にも、この面の精密な描写がある。

山の中に無数にある石は墓ではなく霊神碑という信仰の証。『御嶽信仰』では人は亡くなると『御嶽山』に引き寄せられ神の眷属になると信じられている。

DINING OUT KISO-NARAI滝に打たれ、自然に溶け込む。滝行の本質を見たゲストたち。

まず『御嶽神社』で宮司による正式参拝を終えた一行が、いよいよ滝へと向かいます。

普通、一般向けの滝行では「清滝」という滝で行われるところを、今回のツアーでは修験道の修行の場であり、より荘厳な「新滝」へ。水量が多く、流れも強いこの神聖な場所で滝に打たれるのです。

白装束に着替え、次いで準備運動を兼ねた禊。舟を漕ぐような動作と独特の祈りの言葉で山の神を呼び込みます。

禊を終え、水の落ちる轟音に圧倒されつつ、滝の中へ。斜めから日が差し、水しぶきが虹を作る荘厳な風景です。

それぞれ滝に打たれたツアー参加者たち。その顔は一様に、体験前よりすっきりとしているように見えました。
「やる前は不安でしたが、いまは清々しい気持ち」。
「水は冷たかったけれど、だんだんそれを感じなくなり、自分が自然と一体化したような気分になりました」。
「大自然のなかで、自分が、人間が自然の一部なのだと感じられました」。

参加者たちからはそんな感想が飛び出し、輿氏はうれしそうにそれを聞いていました。

「自分が生まれ育った木曽の、他にはない部分を伝えることが私の役目。今日という日の体験で、そんな何かを感じ取ってもらえたら。峠の古道歩きのツアーもやっているので、ぜひまた木曽に来てください」。

輿氏はにこやかにそう話し、参加者たちを見送りました。

轟音とともに水が流れ落ちる新滝。修験者たちが修行の場とした聖地。

準備運動を兼ねた禊の儀。大声を出し、体を動かすことで体の中の悪いものを出し、滝に打たれて新たに良いものを取り入れる。

滝に向かう参加者。大迫力の新滝だが、清浄な空気と水しぶきが心を洗う。

「行けるところまで行き、自然と一体になったと思ったら戻る」との指示。どの参加者も体験後は、その言葉を深く理解していた。

住所:長野県木曽郡王滝村3315 MAP
TEL:0264-48-2637
https://www.ontakejinja.jp/

住所:長野県木曽郡木曽町福島2012-5 MAP
TEL:0264-25-6000
営業:8:30~17:30(年末年始休業)
http://www.kankou-kiso.com/

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

大人気のディップシリーズ。クセになるピリ辛ソースは、高いリピート間違いなし![和光アネックス/東京都中央区銀座]

人気の高い『NORTH FARM STOCK』のディップシリーズの『北海道野菜のディップ(トマト・チリ)』。60gの食べきりサイズは、いつも鮮度良く食べることができる。※本製品は蜂蜜を使用しているため、1歳未満の乳幼児には与えないでください。

WAKO ANNEXこのひと瓶さえあれば、誰もが料理上手に! 付けるだけで料理の美味しさに。

北海道産トマトと人参の旨みをギュッと凝縮させたピリ辛クリーミーなマヨネーズタイプの『北海道野菜のディップ(トマトチリ)』は、北海道岩見沢市『白亜ダイシン』の大人気シリーズ、『NORTH FARM STOCK』の品。

どこにもない上質な味。そして、四季のはっきりした北海道ならではのピュアなおいしさを届けることにこだわり、北海道発のナチュラルブランドを誕生させました。

地元の意欲ある農家とも連携を計り、岩見沢の、北海道の、おいしいものを全国に発信。愛する北海道をますます元気にするため、商品を展開し続けています。その中でも人気を博しているのが、前述の『NORTH FARM STOCK』ディップシリーズなのです。

クラッカーやカリカリに焼いたトースト、スティック野菜、サンドイッチのベース、ソーセージ、フライドポテトなど、一緒に食べれば、たちまち上質な料理に!

美味しい理由は様々あれど、特筆すべきは、素材と環境、そして人。新鮮な空気、綺麗な水、太陽の恵みなど、日本屈指の良質な風土を持つ北海道からは、同じく良質な農産物が育ちます。それだけでなく、「北海道のおいしいものを蔵出しで」を大事に、自分たちの目の行き届く範囲で産地や生産者とも繋がり、レシピもできる限りオリジナルを追求。瓶詰めから出荷まで、全て手作業で行います。

そんな想いが詰まった逸品は、一度食べればリピートすること間違いなし! 自身の食卓はもちろん、ギフトにもおすすめです。

おすすめは、シンプルな焼き野菜に添えてぜひ。ビールや赤ワインにも合う万能ディップ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

「百万石の極み」に20品目を認定。全国に誇る至高の石川食材、統一ブランド化スタート。

百万石の極み知る人ぞ知る逸品食材がラインナップ。

豊かな里山里海に恵まれた能登半島、深い原生林が清冽な水を育む霊峰白山、肥沃な穀倉地帯を形成する手取川扇状地……。南北約200kmに細長く伸びる石川県は、実に多彩な表情を持っています。

その県土の各地で獲れる農作物、港に揚がる水産物は、量が多くはないために県外に流通する機会は少なく、全国的な知名度は決して高いとは言えません。しかし近年は、卓越した品質がゆえに一流の料理人たちがこぞって愛用し、一般人にもその名と唯一無二の美味しさが知られるようになった農林水産物も数多く存在します。

石川県は今年8月、県独自の優れた農林水産物を「百万石の極み」と認定し、統一ブランド化すると発表しました。ブランド化の専門家や生産流通関係者らでつくる有識者委員会により第一弾として選出されたのは、ルビーロマンや能登牛、加能ガニなど20品目です。

【認定基準】

  1. 一般的な品種と比較して形状・機能が優れているなどの「差別化」があること
  2. 品質管理体制が確立されているなど「生産体制」の充実
  3. 高い初競り価格やトップブランドと同等以上の価格など「市場性」の高さ
  4. 生産量が維持・拡大する見込みであるなど「生産量」の充足

第一弾の20品目は、いずれも一流シェフや美食家たちを唸らせる逸品ばかりです。

「百万石の極み」認定品目
ルビーロマン
能登牛
ひゃくまん穀
百万石乃白
能登とり貝
加賀しずく
のとてまり
エアリーフローラ
能登大納言小豆
能登志賀ころ柿
高松紋平柿
五郎島金時
加賀太きゅうり
加賀れんこん
加賀丸いも
源助だいこん
輪島海女採りあわび
輪島海女採りさざえ
加能ガニ
香箱ガニ
※「百万石の極み」の食材に関する情報はこちら

【関連記事】生産者の想いは熱く、その味は洗練の極みに。珠玉の石川食材、めくるめく。

『レスピラシオン』オーナーシェフの梅達郎氏。

『SHÓKUDŌ YArn』オーナーシェフ兼ソムリエの米田裕二氏。

『片折』主人の片折卓矢氏。

百万石の極み卓越した食材が生み出される背景をつぶさに見つめて。

これまでONESTORYでは、石川県のさまざまな食材に注目し、取材を重ねてきました。料理の世界の第一線で活躍するトップシェフ、パティシエ、ソムリエの方々と一緒に、時には生産者の元を共に訪ね、日々の生産における秘密や苦労についてうかがってきました。現地を直接肌で感じ、生産者の生の声を聞くことで、逸品食材が持つ魅力を理解したい。そして、そのポテンシャルをより良い使い方、調理の工夫やアイデアによってさらに高めたい。優れた食材に対する感謝と畏敬の念がそこにはありました。

今回、「百万石の極み」に認定されたいくつかの食材もONESTORYで取り上げ、大きな反響を呼びました。

ローカルガストロノミーの最前線に綺羅星の如く登場した金沢のスパニッシュレストラン『respiración(レスピラシオン)』。そのオーナーシェフのひとりである梅達郎氏と七尾湾に出て、海に浮かぶ養殖筏の現地取材を敢行したのは「能登とり貝」。一般的なものの2倍もある大きく肉厚なとり貝を育む里山里海の豊穣さ、手間を厭わず環境変化に弱いとり貝を大切に育てる漁師の方々に直接ふれることで、類まれな美味しさの背景を知ることができました。

能登町の高台に広がる「能登牧場」では、黒毛和牛である能登牛の飼養の様子をつぶさに見学しながら、能登牛の圧倒的な美味しさの秘密に迫りました。さらに、小松市のイノベーティブレストラン『SHÓKUDŌ YArn(ヤーン)』では、オーナーシェフ兼ソムリエの米田裕二氏に能登牛を使った料理を作っていただきました。「牛すじ煮込み」と「牛ヒレカツとじ」と銘打つ2皿でしたが、そんななじみ深い料理名からのイメージをいい意味で期待を完全に裏切る斬新なレシピと新感覚の美味しさに、取材班一同感服したことを思い出します。

能登のブランド原木椎茸「のと115」。そのプレミアム規格「のとてまり」の生産地を訪ねたのは片折卓矢氏。そう、今や日本を代表する和食の一店となった金沢の日本料理店『片折』の親方です。毎日最高の食材を求め、早朝からスタッフ総出で県内各地の漁港をまわり、天然水を汲み、山に分け入って山野草を摘んで……と東奔西走する同店。さすがの片折氏も極めて希少とされる、のとてまり級の巨大な椎茸が原木についているのを見るのは初めて。「鳥肌が立ってしまう」と、興奮しながら収穫を手伝う姿が印象的でした。

石川県七尾市出身の世界的なパティシエ・辻口博啓氏と訪ねたのは、県内のとあるブドウ畑。石川県が長年かけて開発した奇跡のブドウ「ルビーロマン」がちょうど収穫の時を迎えていました。2011年の初競りでは、辻口氏が一房50万円の当時最高値で落札し、東日本大震災で被災した中学生に振る舞ったという経緯もあり、同氏にとってひときわ思い入れの強いフルーツです。ブドウ棚からもいだばかりのルビーロマンを味わった辻口氏。この年、畑でのインスピレーションからルビーロマンを使った新作がお店で出されましたが、一体どのようなスイーツに仕上がったのでしょうか?

2020年から本格的に醸造に使われるようになった石川県生まれの新品種酒米「百万石乃白」。全国有数の酒どころとして知られる石川県で長年切望されてきた吟醸用の酒米です。当時百万石乃白で醸された全銘柄21種を取り寄せ、日本のトップソムリエのひとりである大越基裕氏が一挙に唎酒を実施。1本1本を緻密に分析していただきました。そこで特に気になった「手取川」にフォーカスし、造り手である白山市の酒蔵「吉田酒造店」を訪ねました。さらに、新品種の開発に取り組んだ研究所、未知の米作りにチャレンジした農家を訪ね、新しい日本酒が誕生するストーリーをたどりました。

どの取材でも現場でひしひしと感じられたのは、生産者の作物に対する大きな愛情と、最高のものを生み出そうという気概です。最高峰の食材たちを、やはり料理界最高峰のキーマンたちと共に取材できたことは、メディアとしてもこの上なく幸せなことでした。

『レスピラシオン』梅達郎氏による能登とり貝の一皿。

『SHÓKUDŌ YArn』のコースに登場することもある能登牛の「牛ヒレカツとじ」。

『片折』では、のとてまりをシンプルに出汁醤油を塗って焼き上げた。

ルビーロマンの畑を視察する『Mont St. Clair(モンサンクレール)』の辻口博啓氏。

辻口博啓氏が考案し期間限定で商品化したルビーロマンのスイーツ、その名も「ルビーロマン」。

百万石乃白を使った日本酒の全銘柄を、大越基裕氏は丹念に唎いた。

百万石の極み鈴のロゴマークは最高峰級の証。

「百万石の極み」のロゴマークは、枝にぶら下がる果実のようであり、漢字の「百」も思わせるデザイン。「鈴のようにたわわに実って継続的に未来へとつながってほしい」という願いが込められているといいます。

認定された20品目は販売促進が強化されていくとのことで、今後は県外でも目にする機会が増え、買い求めやすくなっていくかもしれません。なかには高価なものもありますが、少し背伸びすれば手が届くものがほとんど。身近に楽しめる最高峰級の食体験と言えます。

せっかくの一流の素材なら、プロの料理人に料理してもらったものを味わいたい。そう考える向きもあるでしょう。今後は石川県内の飲食店のみならず、県外にも「百万石の極み」素材を提供する店が増えていくはずですから、お目当ての食材をメニューに見つけたらぜひ味わってみましょう。

今後、「百万石の極み」のラインナップはさらに拡充されていく予定。石川の逸品食材はますます輝きを放っていきそうです。



Photographs:SHINJO ARAI, DAICHI MIYAZAKI
Text:KOH WATANABE
(supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

石川県食のポータルサイト
いしかわ百万石食鑑
https://ishikawafood.com/

地域の想いが込もった木造校舎で学ぶ。「塩尻市立楢川小中学校」。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

1991年に作られた『塩尻市立楢川小中学校』の校舎。2022年度に小中学校に移行するにあたり改築されたばかり。

DINING OUT KISO-NARAI「DINING OUT」の骨格的存在。レセプションの舞台となった、義務教育学校。

2022年7月末に長野県奈良井宿で開催された『DINING OUT KISO-NARAI』。そこで最初にゲストを迎えるレセプションの場に選ばれたのは、『塩尻市立楢川小中学校』(以下、楢川小中学校)でした。

『DINING OUT』のレセプションに学校施設が使われるのは異例のこと。それでもこの学校こそ木曽の文化や歴史をゲストに伝え、体験してもらうための最適な場所として選ばれたのです。では『楢川小中学校』とは、いったいどのような学校なのでしょうか?

平成3年に木造校舎を新築。地元のひのきをふんだんに使用した、木の香り漂う空間は、音を吸収したり、湿度を調整する働きもある。

DINING OUT KISO-NARAI希少な木曽ヒノキをふんだんに使う木造校舎。

『木曽楢川小学校』と『楢川中学校』が統合され、小、中一貫教育の義務教育学校『楢川小中学校』となったのは今年度から。現在は1年生から9年生まで、約100名の児童生徒がここで学んでいます。

校舎は旧『木曽楢川小学校』の建物を増改築。約30年前に建築された、木曽ヒノキをふんだんに使った木造校舎です。これが、この地を伝える最初のポイント。土壌が固く、地中に深く根を張ることができない木曽地方のヒノキは成長が遅く、それゆえに年輪が濃密になり非常に硬い木材。寺社仏閣の建立や文化財の補修に使われるという希少な木材でもあります。

そんな木曽ヒノキをふんだんに使っているという事実は、この地が山や森といかに密接につながっているかを伝えます。

校内のいたるところにたっぷりと木材が使われる温かみのある雰囲気。

校舎1階にある教室。左手の窓の外は校庭。

DINING OUT KISO-NARAI偉大な芸術家の言葉とともに給食をいただく時間。

校舎に入り、木の温かみがある廊下を歩くと、突き当りはランチルームと呼ぶ給食会場。児童生徒たちは全員揃ってこのランチルームで昼食をとり、学年の垣根を越えた交流を図ります。そんなランチルームの入り口上には、大きな書が飾られています。

「山中に学ぶ」。

これは、この地に縁の深い芸術家・池田満寿夫氏の揮毫。山に触れ、山の恵みに感謝し、山とともに生きる。そんなこの地らしい言葉とともに、児童生徒たちは毎日食事を食べているのです。この言葉はそのまま、『DINING OUT KISO-NARAI』のテーマともなりました。

廊下を歩く児童生徒たち。生徒たちは奈良井宿のガイドなどもしながら地域との繋がりを学ぶ。

ランチルームに掲げられた池田満寿夫氏の揮毫による書。1992年にこの地を訪れた池田氏によって書かれたもの。

DINING OUT KISO-NARAI日々使う給食食器も、伝統工芸品・木曽漆器。

昼食の時間。ランチルームに併設された厨房で作る給食が食器に盛られます。その食器は、なんと木曽漆器。

この地に伝わる美しい漆の器で、児童生徒たちは毎日の食事をいただいているのです。この素晴らしい取り組みは、伝統文化や食事を大切にするための食育の一貫。地元漆器生産者の協力のもとでこの食器が使われているのです。

漆器は大切に扱えば何百年も使用できますが、乱暴に扱えば傷がつくことも割れることもあります。漆器のこと、歴史のこと、地元文化への誇り、物を大切にする心。生徒たちは食事を通して、さまざまなことを学ぶことができるのです。

そして、この精神性もまた、この学校をレセプションの場とすることでゲストに伝えたいことのひとつでした。

「地域の方の想いが詰まった学校です。だから地域を大切にしながら、この地だからできる教育をしていきたい」。山本秀樹校長は、そう話します。

児童生徒たちは3年生から漆の技法を学び、6年生になるとその集大成として、作った漆器を地元の漆器まつりで販売。コロナ禍でまつりが中止になっていた時期には、「ならにこ」というこども会社を立ち上げました。

あのランチルームに掲げられた言葉「山中に学ぶ」は、コロナの逆境にあってもこうして力強く、ポジティブに貫かれているのです。

そんな楢川小中学校をレセプションの舞台にした『DIINNG OUT KISO-NARAI』。奈良井宿の文化や歴史、地域への思いは、この校舎を通して、ゲストたちへと伝えられました。

漆器を日常的に使うことで、地域の伝統文化や物を大切にする心を育む。使うほどに艶が増すのは木曽漆器の特徴。

『楢川小中学校』の山本秀樹校長。『DINING OUT KISO-NARAI』ではゲストを前に学校説明も行った。

目標は「楢川から未来にはばたく」。9年間の一貫教育はさまざまな効果があり注目が集まっている。

https://www.fureai-cloud.jp/narakawa-ej

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

食の祭典『ドリームダスク ファイナル』が、心に残してくれたもの。[DREAM DUSK FINAL/福岡県福岡市]

コースの口開けは、参加者全員でドン・ペリニヨンで乾杯。歓声が響く中、次々にスマホでパシャリ。久々の大型食イベントの再開を皆が心待ちにしていた瞬間だった。

ドリームダスク ファイナル各界のトップシェフが一堂に集う、食イベントが復活!

「もし、自分が大好きなお店の料理をハシゴして食べられたら最高だな。実際には1日では絶対にありえない名店のハシゴ。東京だけだとしてもハシゴなんてできるはずもないのに、今回でいえば大阪や金沢のシェフもいればミラノのシェフもいる。そんな僕の夢を形にしたところからドリームダスクは始まった……」
イベントの総合プロデューサーを務めた本田直之氏は、そう話しながらイベントの成り立ちを思い出します。2016年の第一回を皮切りに、毎回、日本各地、時には世界に散らばる日本人シェフまで、予約困難店のシェフがその日限りのチームを組んでひとつの晩餐を作り上げる。和食・フレンチ・イタリアン・中華・鮨など、コースを彩るシェフの人選も功名で「この人が前菜担当? この人がデザートなの?」と驚きの連続。通常はイベントなどへの参加を拒んでいるシェフや海外からの参戦など、『ドリームダスク』でしかなし得ない、シェフの編成も多くの耳目を集めてきたのです。実は2020年の第5回をもってファイナルとすることを決断したときには、次なる開催を惜しむ声が鳴り止まず、いつしか、最後の『ドリームダスク』のチケットは、食のプラチナチケットと呼ばれるほどに。

それが、新型コロナの蔓延……

『ドリームダスク ファイナル』として大々的に告知された2020年の最終回は、2度の延期を余儀なくされてしまうのです。
「大勢のお客様を一度にもてなす食の祭典なので、苦渋の決断であってもストップするしかなかった。お客様は本当に長い期間お待たせしてしまったし、シェフやスタッフには何度も何度もスケジュールの都合をつけてもらい、本当に申し訳なかった。2年以上の時を経て、ようやくなんです」と本田氏。この“ようやく”という言葉がイベントをレポートする間、取材班の耳にはずっと印象的に残ったのです。

ようやくの乾杯
ようやくの集い
ようやくの共演
ようやくの再会

今回、ONESTORYでは、7月に行われた『ドリームダスク ファイナル』の伝説の1日をレポート。コロナの影響で2度の延期を経てようやく実現した、食イベントが残した軌跡と奇跡を伝えていきます。

共演を果たしたのは写真右二人目より『すし処めくみ』山口尚享氏、『宮坂』宮坂展央氏、『ShinoiS』篠原裕幸氏、『LaCime』高田裕介氏、『Ristrante TOKUYOSHI』徳吉洋二氏のシェフ5名、ドリンクディレクター『AnDi』大越基裕氏

開演前、150名以上のフルコースディナーのテーブルセットも抜かりなし。今か今かと静かに開演の時を待つ。

ドリームダスク ファイナルあえての、あり得ない料理の連続が、唯一無二のコースに。

5名の錚々たる顔ぶれのシェフがひとり2品ないしは3品を作り、ひとつのコース仕立てで楽しませてくれる『ドリームダスク』。これだけでもあり得ない夢のコースであることは重々理解できるのですが、このイベントの凄みは実は数にあるのです。今回、定員は150名。最終日には参加希望の声が殺到し、会場のキャパシティの許せる限り、なんと180名が一度に食事をともにしたというのです。
それが熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに。できたてが次々とサービスマンによりテーブルにサーヴされ、気がつけばペアリングのドリンクも寄り添うようにセット。この量を一度に手掛ける料理人の技術と熱意はもちろんのこと、会場となった『ザ・ルイガンズ.リゾート & スパ』を運営するプランドゥシーのサービスマンのスピードと手際の良さ、シェフをサポートするキッチンスタッフのチームワークが三位一体となり高次元のクオリティを実現。ゲストはストレスなく、料理と美酒に酔いしれ、至福のときを楽しめていたのです。
開始前「厨房はすごいことになっていますよ」とミラノから参戦の徳吉シェフが話していたのですが、“徳吉シェフはゲストをお出迎えするほどに、随分余裕があるのかな?”と思いきや、茹でたてのパスタを絶妙のタイミングで提供したいがために、あえてコースの途中まではぐっと耐えに耐え、ここぞのタイミングでパスタを茹で、茹で上がった180名分のパスタをフライパンで返し次々とソースを絡めていたのです。10人前のパスタでもベストなタイミングで出すのは至難。それを180人前、シェフがタイミングを図って動き出すと聞き、このイベントの凄まじさを実感。パスタが運ばれたと思いきや総合ディレクター本田氏を含めたスタッフ自らがひと皿ずつトリュフを削るパフォーマンスもゲストに待ち時間を感じさせない絶妙のパフォーマンスだったのかもしれません。
石川県野々市市に店を構える『すし処めくみ』の山口氏はコース中盤、ウニちらしを披露したのですが、なんと180人前の酢飯とウニを舞台上で混ぜ合わせてくれたのです。しかも驚くべきはウニの量と質。酢飯と同等ないしはそれ以上のウニが投入され、混ぜれば混ぜるほど、光り輝くオレンジ色のウニご飯になっていくのです。聞けば、ウニの形を崩したくないと山口氏は石川県から自ら車を11時間も走らせ福岡に会場入り。最高の状態でウニを提供したといいます。
さらに「皆さんに石川県のウニの美しさと質の高さを感じてもらいたくて、車で運びました。でも、結局は見せた後は混ぜちゃうんですけどね」と会場を驚きと笑顔に包みます。
『ShinoiS』篠原氏は前菜、スープ、ごはんまで、最多の皿数3品の広東料理を作り上げ、『宮坂』の宮坂氏は胡麻豆腐に椀物で日本の夏の粋を表現。『LaCime』高田氏はコースのトップバッターとして店の名物・ブータンドックと、魚のメイン・鯵のエスカペシュを提供しフランス料理ならではの深みある味わいを披露してくれました。
それぞれのシェフが思い思いの仕事で個性ある料理を披露していくのですが、個性ある点と点が、一本の線になっていくのも『ドリームダスク』。そこにはドリンクディレクター・大越氏のコースを通した、ペアリングのセレクトが脇を固めているのでしょう。
「まったく異なる料理が順々に提供されるので、コースを通じて気をつけたのは、個性あるベストなペアリングではなく、コース全体を壊さないセレクト。そうしないと、ひとつのコースとしての体裁が壊れてしまいますから」と大越氏。
ひと品ひと品の個性を大切にしながらも、コース全体を影でコントロールする。さらにお酒で物語を紡いでいく。そんなドリンクディレクターの存在もこの5つの個性をひとつのディナーに成立させる影の立役者だったのです。

山口氏が披露した「ウニちらし」。米の量より多い、石川県産のウニのきれいな旨味に酔いしれた。

150人前のウニを一気に酢飯と混ぜる。壇上で披露した山口氏のパフォーマンスに、カメラを持つ人だかりが幾重にも行列を作る。

コース中盤から終盤、一気にパスタを作り出す徳吉シェフ。次から次にフライパンを返し、できたてを食膳へと運んでいく。

総合プロデューサーの本田氏もトリュフ削りに参加。チーム一丸となって晩餐を盛り上げるのが印象的であった。

見事なまでにアルデンテのパスタ。ハマグリと牛脂を使ったソースにトリュフがたっぷりと削られた。

篠原氏が提供した一品。「三味鮮露筍 ジェットファームのアスパラガス」。3つの味わいを食べ比べ。

「冬瓜燉魚翅」、フカヒレ冬瓜上湯蒸しスープを仕込む篠原シェフ。

猛暑の福岡に涼を運んだのが宮坂氏の「胡麻豆腐 車海 枝豆 出汁ジュレ」。一口味わうと夏の恵みと、ひんやりとした食感が時を忘れさせてくれる。

冷製の賀茂なすと鱧のお椀を仕込む宮坂氏。150人以上の鱧切りも一気に行うなど想像を絶する厨房での仕事がコースを支える。

揚げ焼きした鯵を酸味の効いたソースで味わう「鯵のエスカペシュ」。

チームで協力しながら美味を生み出す「LaCime」高田氏。

ドリームダスク ファイナルシェフ、スタッフ、ゲストが一丸となって楽しんだ食の祭典の意義とは?

それぞれがそれぞれの立場から、ベストの力を尽くしイベントを盛り上げる。そんな使い古された言葉を、すべてのスタッフが肝に銘じて動く。それがひとつの形となったとき、180名のゲストも含め、歓喜の輪は生み出されました。これは『ドリームダスク』を称賛したのではなく、体験談。コースを終了した後に、シェフたちは舞台に上がり感謝の言葉、喜び、難しさ、楽しさ、五人五色に色々と伝えてくれました。それらを楽しんだゲストより自然と心からの拍手が送られたのですが、鳴り止まない拍手は『ドリームダスク』が訪れたゲストの心に残したもの、そのものだったのではないでしょうか。
皆で分かち合った感動、会話とコミュニケーションで生まれる笑顔、同じ時間を共有する喜び、久しぶりの時間……
そのすべての想いが会場を包み込んでいたのです。
本田氏がこぼした“ようやく”。
それは大好きな仲間でこんな時間を共有したかったという、切なる願いそのものだったのかもしれません。
ディナーとディナーの間となる2日目ランチには、海を目前にした『ザ・ルイガンズ.』の屋外スペースを使ってのスペシャルランチが行われ、一般にも開放。地元福岡の人気店が屋台を出し、気軽に名店の味を食べ歩くこともできました。多くの来場者が通常ではありえない名店ハシゴを一般でも体験できたのです。

イベント開催の2日を通して感じたのは、食は楽しく、楽しい時間は幸せを生む。コロナによって難しくなったイベントのありかたとありがたさ。

とにかく、楽しい時間がなければ、人は弱ってしまう。食は人を楽しませ、強くする。そんな分かりきったはずの喜びでした。

「今回でドリームダスクは一区切りですが、たぶんまた何かやりたくなる。ようやく、こんなに楽しい時間が生み出せたんだから。期待してていいよ」

本田氏の最後の言葉は、次への期待と喜びに。『ドリームダスク』が心に残してくたものは、きっとこのドキドキなのでしょう。
『ドリームダスク』を経験した人はきっと、この響きを聞いたらならば、自然とドキドキせずにはいられません。次に『ドリームダスク』という言葉を再び聞ける日を、我々は楽しみに待つことでしょう。

『餃子のラスベガス』『三原豆富店』『藁焼 みかん』『めしや コヤマパーキング』『二加屋長介』『清喜』『大重食堂』『スナックアポロ』など、ランチに行われたイベントでは福岡の名店が集合。

ユーモラスな表情が印象的な福岡土産・にわかや煎餅のお面をかぶる本田氏と大越氏。

『ドリームダスク ファイナル』を盛り上げたドリームチーム。

Text:TAKETOSHI ONISHI

 

DREAM DUSK Encoreの開催が決定!

もう一度だけ、最高の形を目指して……
ファイナルを終えた直後に発表されたのが、2回のリスケを余儀なくされたファイナルへの思い残し。
2023年6月10・11日の開催予定でドリームダスクが再び帰ってきます。

https://www.luigans.com/dreamdusk/

開催詳細および予約開始日時につきましては、決定次第ザ・ルイガンズ.公式HP、Instagramにてご案内させていただきます。

実も、種も、皮も。ひと瓶にひと房丸ごと入った食べるジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

『食べるぶどうジュース』は、シャインマスカットが丸ごとひと房入っているため、液はトロトロ。ジュースだが食べ物のような味わいと充実感を堪能できる。

WAKO ANNEX食べておいしい、身体に優しい、美容にうれしい、ぶどうジュース。

「種も皮も丸ごとは、『食べるぶどうジュース』だけ」。そう語るのは、製造元の山梨県南アルプス市の『ジット』です。

ジュースなのに、なぜ食べる? そう思う人もいるかもしれませんが、一度口にしたことがある人ならば、この表現に頷くはず。

原料は、シャインマスカット。採れたてのぶどうをすぐに自社加工し、実はもちろん、種も皮も丸ごと使用。それを可能にするのは、改良に改良を重ねた独自の破砕製法にあります。

丸ごと使用することによって、ぶどうそのものの味わいをダイレクトに満喫できることはもちろん、一般のぶどうジュースには入っていないビタミンEやオレイン酸、リノール酸が含まれているのが特徴。美肌やアンチエイジングにも効果が期待できます。

冷やして飲むだけでなく、凍らせてシャーベットにするも良し、ヨーグルトにかけたり、パンに塗るも良し。万能に美味しくいただけるため、様々なシーンにぜひ。

新鮮な味をそのまま表現するために、何度も試作を繰り返し完成した『食べるぶどうジュース』。水も砂糖も一切使わず、完全無添加。ひと瓶飲んでも77kcal。美容と健康にもこだわる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)