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大三島 憩の家離島の木造校舎に泊まるという非日常の体験
瀬戸内海に浮かぶ大三島は、愛媛県側の今治からしまなみ海道に入って3番目の島。日本総鎮守とされる大山祇神社があることから、神の島として大切にされてきました。聖地ゆえに周辺の魚も守られ、漁業よりも農業が盛ん。柑橘王国・愛媛にあって有数の柑橘の産地です。
そんな大三島に、廃校になった小学校の木造校舎をリノベーションした宿泊施設「大三島 憩の家」ができたのは2018年のこと。瀬戸内海の離島にある小学校に泊まる。そんな非日常を体験できる宿です。
大三島ICから20分ほど島景色のドライブを愉しむと、目的地に到着。案内看板には宿の名前もありますが、敷地内には「宗方小学校」の名もそのまま残されています。廊下は広い中庭に向けて開いていて、いかにも島の学校という開放感が感じられます。
きっと多くの人が、この建物を見て懐かしさを感じることでしょう。それは自身が通った学校に似ているからではなく、もっと根源的な“学校”の持つイメージに近いからかもしれません。
ほぼ小学校の頃のままの建物に入り、受付へ。客室名は「1の1」といったクラス名のまま。しかし引き戸を開くとそこには、想像と違う空間が広がります。
ゆったりしたソファと大きなベッドが置かれた室内を、間接照明が柔らかく照らす。洗面所やバス、トイレも清潔で広々。しかし窓枠や床やドアを見ると、明らかに小学校の面影が残っています。その不思議なギャップが、ほかにはない特別感を醸し出しているのです。
長い廊下の先には娯楽室がある。中には卓球台があり、壁の書架には小学校時代から残ったと思われる蔵書。食堂はシックですが、やはり往時の面影が残ります。中庭には朝礼台の跡。その向こうにある建物が、新たに作られた海を望む展望風呂です。
すべてが懐かしく、そして新鮮。この建物のリニューアルは、伊東豊雄氏が率いる伊東建築塾が監修したといいます。この島に縁の深い巨匠には、何を残し、何を変えるべきかが、はっきりと見えていたのでしょう。
大三島 憩の家近海の海の幸をふんだんに使う料理も見事
夕食までに時間があれば、近くを散策してみるのも良いでしょう。砂浜までは校舎を出て1分とかからない距離。瀬戸内海の穏やかな海を見渡す、静かでのんびりした浜が広がります。砂浜の横にある堤防では、釣りを楽しむ人の姿も。すべてがのんびりとした島時間に彩られた光景です。
夕食も圧巻です。
ハモ、セトダイ、イサキ、サザエ、タイ、オコゼ。このコースのために一体何尾の魚を使っているのでしょう。どれも新鮮で脂が乗り、何より素材を活かす調理が見事です。
料理を担当するこの宿の主人は、大三島にある料理旅館に生まれた和食一筋の人物だそう。和食の粋を知り、この地の魚を知り尽くす。魚づくしでありながら、変化に富んだおいしさにも納得です。
食事を終えて部屋に戻り、満たされた気分のまま眠りに。学校で眠るという体験は、心が沸き立つような非日常のひとときを演出してくれることでしょう。
住所:愛媛県今治市大三島町宗方5208-1 MAP
TEL:0897-83-1111
https://www.ikoinoie.co.jp/
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