自然資源の保護と利用の好循環を目指すネイチャーポジティブ経済とは。国立公園の未知なるポテンシャルを紐解き、自然と人の未来を語る。

左から、「NewsPicks Re:gion」編集長・呉 琢磨氏、環境省職員の山﨑 大輔氏、森川 政人氏、服部 優樹氏、岡野 隆宏氏。

環境省 国立公園満喫プロジェクト官民の枠組みを超え、国立公園は変わろうとしている。

環境省が中心となり、日本の国立公園を世界水準のナショナルパークとしてブランド化することを目指す『国立公園満喫プロジェクト』。自然資源の「保護」に加え、官民の垣根を超えた「利用」、そのふたつの好循環がもたらす「ネイチャーポジティブ経済」の実現に向け、様々な取り組みが行われています。

国立公園の名を冠することが許されるのは、圧倒的な自然と景観を有すること。それらの保護に徹するのがこれまでの環境省の立場であった中で、今、どんな変化を遂げようとしているのでしょうか。去る2023年6月、「NewsPicks Re:gion」編集長の呉 琢磨氏が聞き役となり、環境省職員を招いたトークセッションが行われました。

トークセッションは、2023年6月24日(金)、25日(金)の二日間にわたり開催された一般向けの展示イベント「北アルプス×尾瀬National Park Mountain Fes」に先駆けて行われた。

環境省 国立公園満喫プロジェクトネイチャーポジティブ経済の確立、それは前人未到のアクション。

「美しい自然や生物多様性を守る“保護”、最高の自然体験フィールドやコンテンツによる“利用”、このふたつの好循環により、訪問者には上質なツーリズム体験を、周辺地域は経済活性できるよう、広く繋がり、ぜひ一緒に新しい未来を作っていきたい」そう語るのは、環境省 自然環境局国立公園課 国立公園利用推進室 室長の岡野 隆宏氏です。

ネイチャーポジティブ(Nature Positive)とは、生物多様性の損失を止め、反転させるという考え。国際的な合意のもと、2030年までの気候変動対策や循環経済移行を、社会経済活動総動員のミッションとして掲げています。国内においては、125兆円の経済効果、43兆円のビジネス機会の創出、930万人の雇用効果を目標に、全国に34箇所ある国立公園がそれぞれに創意工夫を凝らしながら、官民の垣根を超えて大きなうねりを起こしていくという、前人未到のアクションです。

「日本の国立公園の特徴は、自然の中に地域の人の暮らしが息づいていること。自然とともに歩んできたからこそ形成された、地域独自の歴史・文化がそこにはあります。多様な自然風景と生活・文化・歴史が凝縮された物語を知ることで、唯一無二の感動体験ができる、私たちのブランドメッセージである“その自然には、物語がある。”にも通じる、日本にしかない魅力です」。

上質なツーリズム体験とは、自然にもう一歩踏み込み、自身の目で見て学ぶこと。アドベンチャートラベルやロングトレイルなど、各国立公園ごとの個性豊かな自然を余すことなく楽しみ尽くすコンテンツの提供を目指す。

「自然自体が守りづらくなる中で、地域と協力しながら新しい考えを取り込んでいきたい」と岡野氏。国立公園のメリットは、ハイクオリティな自然環境に加え、職員が現場におり人的リソースがあることで、地域の声が届きやすく、コーディネーションもしやすくなることだという。ハードとソフトの掛け合わせがあるからこそ、トップレベルの自然体験提供の可能性が高まる。

環境省 国立公園満喫プロジェクト世界中の旅人に選ばれる存在になるために。

全世界が競合となるインバウンドに選ばれるためには、日本独自の優位性が必須。しかしその実現方法として、保存と利用、ともすれば相反するようにも思えるふたつの要素を掛け合わせるのはなぜなのでしょうか。「生物多様性のダウントレンドを上向きにするときに、人が入ることでその機会が減ってしまうのではないか?」という呉氏による指摘は、もっとものように思えます。

「利用の数ではなく、質を変えること。例えば人数を限定し、長期滞在で楽しんでもらいながら地域の価値を伝えていく。さまざまな体験を通して地域のファンになっていただくような利用のあり方、経済効果も生みながら保全につながる仕組みを考えていければ」。
国立公園という開かれたフィールドでマネタイズに踏み込んでいくことが、結果的に全体としてよい環境、地域活性に繋がる。そんな考えのもと、すでに11の国立公園では、宿泊、土産、飲食、交通、そして観光と、地域に根差した企業と連携し、協議会やコンテンツ醸成、ツアーの企画といった取り組みが始まっています。

「地域の資産を遠方の会社が運営しても、地域に経済循環は起きない。国立公園が地域と連携してマネタイズに取り組むことで、経済地域の資産として新しい地域経済圏の循環を作っていくためのひとつの拠点になっていく、そんな変化が起こせるんじゃないか」と呉氏。

環境省 国立公園満喫プロジェクト「松本高山Big Bridge構想」の事例から見る、国立公園のポテンシャル。

セッション後半では、呉氏、岡野氏に加え、国立公園事務所所属の自然保護官3名を交え「ネイチャーポジティブ経済の実現に向けてのハードルは何か」をテーマにトークが繰り広げられました。

「国立公園はネイチャーポジティブ経済が実践できる最適のフィールド」と語るのは、環境省 中部山岳国立公園管理事務所 所長の森川 政人氏です。

生物多様性の損失や過疎化による文化消滅の危機といった、国立公園の価値が問い直されるような状況、かつコロナ禍という逆境の中、約80kmのロングルートを自由に楽しめる「松本高山Big Bridge構想」のキーマンとして、岐阜・長野の2県を跨いだ地域連携による、新たな観光圏の確立に力を注いでいます。

「中部山岳国立公園が位置する上高地は、元々は点の魅力でも成り立っていた場所。しかしコロナ禍で来訪者数がガタンと落ち、未来を考えると県境関係なく連携すべきという意識がありました」と森川氏は続けます。

歴史的な街並みに3000m級の山岳、温泉、里山……。北アルプスと松本高山という2つの中都市が集結したエリアという地の利を最大限に生かしながら、アドベンチャートラベルやゼロカーボンパークの設立など、総合的に循環する観光源の実現を目指しています。

2020年、コロナ禍の只中で中部山岳国立公園に着任した森川氏。「やるからには一番を取りたい」と高いモチベーションを抱きながら、プロジェクトを推進している。

環境省 国立公園満喫プロジェクト「新・尾瀬ビジョン」のファンベース戦略に見る、現代のニーズに寄り添った価値創造。

一方、過疎や設備の老朽化、シカによる植物の食害といった深刻な課題と向き合い、これからアクションを起こそうとしているのが「尾瀬国立公園」です。「歴史の長い尾瀬は、過去のオーバーツーリズムや開発行為において、地元が一丸となり自然を守り続けてきたという自負があります」とは、環境省 関東地方環境事務所 桧枝岐自然保護管事務所の山﨑 大輔氏。

ネイチャーポジティブ経済のためのアクションプラン『新・尾瀬ビジョン〜「あなた」と創る「みんな」の尾瀬〜』でもファンベース戦略を基盤としており、そこには深い絆で地域や人と関わりたいという強い意志が垣間見えます。

「かつては教科書にも載っていた尾瀬ですが、来訪者数は1996年をピークに3分の1程度に減少し、今の若い世代に知ってもらう機会がありません。楽しくないと来てもらえないですし、経済効果を考えるとロングツーリズムの視点も必要。多くの人に尾瀬の魅力に気づいてもらうこと、確実に楽しいと感じてもらうこと。そのためには尾瀬の価値を伝えるプラットフォームを整備し、現状は4県にわたり分散している情報を集めたり、人や企業をつないだりできる仕組みを作っていきたいですね」と、環境省 関東地方環境事務所 片品自然保護管事務所の服部 優樹氏も語ります。

世界中の来訪者から選ばれる存在になるために。収入源だけの話でいえば、入山料を徴収するという方法もあるでしょう。しかし他に大切にしていくべきことがあると服部氏は続けます。
「老朽化が深刻な尾瀬の木道の保全でいえば、まずは管理者側で最適化を図り、コストを削減することを考えます。その上でどうしても皆さんの支援が必要となったときに、入園料や協力金の議論をさせていただくのかなと」。

自然の恩恵を全力で体感し、楽しみ、消費したお金を使ってまた自然を守り育てていく。「日本の過疎地の基幹産業になりうるポテンシャルを感じた」という呉氏の言葉の通り、保護と利用の循環がもたらす明るい未来の姿を想像できる時間となりました。
理想のまま終わらせてはいけない。国立公園の今後に注目が集まります。

尾瀬は生物多様性の課題が山積し、維持も難しくなっている現状だが、長い歴史の中で蓄積された知恵やルールは確固たる指標として受け継がれている。楽しい体験コンテンツだけでなく、保全活動にも気軽に参加できる受け皿、体制作りが急務となる。

レンジャーとも呼ばれる自然保護官の3名。自然と人に丁寧に向き合いながらプロジェクトを推進する姿が印象的だ。「職員はビジネスの経験はないが、自然が好きで、その楽しみ方や感動は知っている。民間事業者の方達と一丸となり、お互いの得意・不得意を組み合わせ、パートナーシップを大切にしていけたら」とは岡野氏の弁。

2023年度 夏季休業のお知らせ

平素は格別のお引き立てをいただき、厚く御礼申し上げます。

誠に勝手ながら下記期間を夏季休業とさせていただきます。

2023年8月13日(日) ~ 8月15日(火)まで

※ 2023年8月16日(水)より、通常業務を開始します。

※ 休暇中のお問合せにつきましては、2023年8月16日(水) 以降に対応させていただきます。

大変ご迷惑をお掛けいたしますが、 何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

The post 2023年度 夏季休業のお知らせ first appeared on 藍染坐忘 AIZOMEZABO.

2023年度 夏季休業のお知らせ

平素は格別のお引き立てをいただき、厚く御礼申し上げます。

誠に勝手ながら下記期間を夏季休業とさせていただきます。

2023年8月13日(日) ~ 8月15日(火)まで

※ 2023年8月16日(水)より、通常業務を開始します。

※ 休暇中のお問合せにつきましては、2023年8月16日(水) 以降に対応させていただきます。

大変ご迷惑をお掛けいたしますが、 何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

The post 2023年度 夏季休業のお知らせ first appeared on 藍染坐忘 AIZOMEZABO.

8/12(土)~15(火)水上タクシー期間限定便「るりいろクルーズ」運行のお知らせ【阿波十郎兵衛屋敷】

阿波十郎兵衛屋敷では、8/12(土)〜15(火)の期間、計4回の定期公演を実施しています。

演 目 傾城阿波の鳴門 順礼歌の段
時 間 ①10:00 ②11:00 ③14:00 ④16:00

定期公演の観覧は、ひょうたん島水上タクシー期間限定便「るりいろクルーズ」に乗ってお越しください。
雄大な吉野川の景観を楽しみながら阿波十郎兵衛屋敷へ!

展示室でスタッフの解説を聞いたあとは、16:00からの公演をご鑑賞ください。
14:00開始の公演観覧後、15:00の帰りの便に乗船してお帰りいただくことも可能です。

るりいろクルーズ詳細

運行期間 2023年8月12日(土)~  15日(火)※要予約
運行
スケジュール
・行き
(出発)両国橋ボートハウス 14:30(14:20集合)
(到着)阿波十郎兵衛屋敷前 15:00・帰り
(出発)阿波十郎兵衛屋敷前 15:00
(到着)両国橋ボートハウス 15:30

※「13日帰りの便」は予約済みの為、募集しておりません

乗船料 大人 1,000円、小学生以下 500円
定員 12名

阿波十郎兵衛屋敷ホームページ

お申込・お問合せ

特定非営利活動法人 阿波農村舞台の会
TEL:088-661-6057 メール:info@hyoutanjima.tokushima.jp

※下記「必要事項」を添えてお申込ください。

☆必要事項
①氏名 ②携帯番号 ③年齢 ④在住市町村 ⑤人数(大人と小学生以下の各人数)
※船の保険加入のため
※①〜④は代表者のみでOK

★悪天候や強風のため休航となる場合は、当日12:00までに代表者の携帯電話までご連絡いたします。

野菜と果物の恵みを一滴残らず体に取り入れる、話題のコールドプレスジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

鮮やかなビタミンカラーの『ピーターオレンジ』は、やさしい甘みとすっきりとした後味で初心者でも取り入れやすい。

WAKO ANNEX健やかな毎日の第一歩に。ジュースで始める健康習慣。

兵庫県宝塚市にある人気店「LA SANTE(ラサンテ)」の味をそのまま冷凍し閉じ込めた『健康マルシェ』のコールドプレスジュース。スロージューサーという専用の機械で野菜や果物の水分だけを絞り出したジュースは、低温低圧圧縮という方式で摩擦や熱を極力加えずに作るため、酵素やビタミンなどの栄養を極力失わず、体内に取り入れることができるといわれています。その味わいは、野菜や果物そのもの。数あるお味の中でもクセが少なくバランスのとれた『ピーターオレンジ』は、コールドプレスジュースが初めての方にもおすすめです。

鮮やかなオレンジ色は、ベースとなる人参とオレンジ由来。まる絞りした人参のほのかな甘みとコクに、キウイとレモンの酸味がすっきりとした後味に仕上げています。

人参に含まれるβカロテンは、粘膜や皮膚を維持し、免疫力を向上させるといわれています。またオレンジ、キウイ、レモンにはビタミンCも豊富に含まれるため、毎日の健康づくりや、美肌を保ちたい方にも。1本に含まれる野菜と果物は、約1〜1.5kg。美味しく、体の中からきれいになる一石二鳥の健康習慣、あなたも始めてみては。

果物や野菜は旬のものを国内からセレクト。自然の力を楽しみながら、健康で豊かに過ごしてほしいという思いが込められている。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

秋の阿波おどり~徳島の魅力が盛り沢山の祭典~

11月3日(金・祝)・4日(土)の2日間、入場無料で阿波おどりを楽しむことができます。

有名連による豪華共演や、学生連の演舞、海外連も参加予定の「世界阿波おどりコンテスト」などの阿波おどり加え、

スペシャルゲストの「NHK Eテレ おかあさんといっしょ21代目うたのおねえさん 小野 あつこさん」や「人気お笑いタレント 森三中さん」が会場を盛り上げます!

会場には県内のキッチンカー約10台が集結する「キッチンカーマルシェ」や、子どもから大人まで楽しめる「体験コーナー」なども登場し、徳島の魅力がたくさん詰まったお祭りです♪

プログラムの詳細等が決まり次第、順次お知らせいたしますので、どうぞお楽しみに!!

有名連による迫力のある演舞~阿波おどり大絵巻~

秋の阿波おどり~阿波おどり大絵巻~

有名連による迫力のある演舞「阿波おどり大絵巻」

総勢100名を超える優雅な演舞「阿波おどり大絵巻」

海外からも初参戦!!~世界阿波おどりコンテスト~

第6回全国阿波おどりコンテスト表彰式

スペシャルゲスト参加決定

11月3日(金・祝)13時15分~13時45分

「NHK Eテレ おかあさんといっしょ21代目うたのおねえさん」

小野 あつこ さん

11月4日(土)13時30分~14時00分

「吉本興業所属 人気お笑いタレント」

森三中 さん

※出演者・内容については、変更の可能性があります。

 

開催日程

2023年11月3日(金・祝)・4日(土)10:00~16:00

開催場所

徳島市山城町東浜傍示1-1 アスティとくしま

お問合せ

アスティとくしま ​Tel:088-624-5111

アスティとくしまホームページ

鮮烈な記憶を焼きつけて終わった夢の時間。食の祭典『DREAM DUSK』の堂々たるフィナーレ。[DREAM DUSK ENCORE/福岡県福岡市]

当初は100席から始まったが翌年に150席に増席、3年目からは2日開催と拡大。今回の最終日は180席が即完売となった。

ドリームダスク アンコールやがて伝説として語り継がれる晩餐の幕開け。

「DREAM DUSK」、それは美食家たちの夢を叶える食の祭典。

国内最高峰の料理人たちが集まり、今宵のためだけの、たったひとつのコースを作り上げる。それはまるで、時間や距離の制約を越えて名店をハシゴするような、この上なく贅沢なコースとなる−−。

2016年、博多のリゾートホテル『ザ・ルイガンズ』を舞台にプロデューサーである本田直之氏の夢とともに始まった『DREAM DUSK』は、コロナ禍での延期を経ながら2022年の第5回『DREAM DUSK FINAL』をもって幕を下ろしました。

「回を重ねるごとに期待値が高まる中、常に前年を上回る内容を目指してきました。そして“これ以上はない”という場所まで到達した。すべてやり切った、と言える内容です」
本田氏は、惜しまれながらの閉幕をそう説明します。

しかしカーテンコールの拍手は、いつまでも鳴り止みませんでした。

その願いはただひとつ「アンコール!」。忘れ得ぬ美食の記憶を胸に、口々に再演を願うゲストたち。そしてついにその熱い期待に応え、『DREAM DUSK』が本当に最後の一度だけ、『DREAM DUSK Encore』として帰ってきたのです。

最高潮に達したゲストのボルテージ。開演はまもなくです。

『DREAM DUSK ENCORE』は、まさにファンたちのアンコールに応えて開催にこぎつけた。

ドリームダスク アンコール食べる前から期待が膨らむ、錚々たるシェフの顔ぶれ。

『ザ・ルイガンズ』のリゾートムード漂うエントランスを抜け、ウェルカムドリンクで乾杯。開場の合図とともに開かれた扉を抜けてダイニングに移り、席に着き、卓上に置かれたメニューに目を通す。

正確には“目を通す”ことは叶いませんでした。メニューリストのシェフの欄、その最上段に記された名に、目を奪われてしまったから。

天寿し 天野 功

それは“日本一”との呼び声も高い小倉の寿司店と、稀代の寿司職人の名。限られた席を多くの食通が奪い合う人気店であり、その親方がこのようなイベントに登場するとは、耳にしたことがありません。

驚きも冷めやらぬままメニューの続きを見ると、続く名にも驚きの連続。焼き鳥界のレジェンドである目黒『鳥しき』池川義輝氏、京都の気鋭店『肉料理かなえ』の北口亮佑氏、圭奈笑氏の兄妹、パリで日本人シェフ初となるミシュラン二つ星を獲得した『Blanc』の佐藤伸一氏、薪を使った前衛的イタリアンで食通を唸らせる『TACUBO』の田窪大祐氏。ドリンクディレクターには日本を代表するソムリエ・大越基裕氏。

これぞまさにドリームチーム。

一度ファイナルを迎え、アンコールとして再び相まみえることで最高潮まで高まっていた客の期待を、軽々と上回るような顔ぶれです。

乾杯のドリンクは、磨き抜かれたグラスに注がれるドン・ペリニヨン。シェフの顔ぶれもあって緊張が高まるなか、会場にシェフたちが登場しました。しかもあの名だたるシェフたちが、にこやかに手を繋いで会場に入ってきたのです。

会場は一気に和やかなムードに変わります。食は楽しむためのもの。コロナ禍を経て改めて確認された、人生を豊かに彩るための食の価値。その素晴らしさが伝わる演出です。

ウェルカムドリンクはシャンパン、グレンモーレンジィのハイボール、そしてエビアンスパークリング。

ペアリングの数に合わせ、用意されたグラスも7脚。ゴージャスなテーブルセットに胸が踊る。

会場の緊張感をほぐすように、手をつなぎ、笑顔で登場したシェフたち。

左からプロデューサー本田直之氏、『天寿し』天野功氏、『鳥しき』池川義輝氏、『肉料理かなえ』北口圭奈笑氏、『TACUBO』の田窪大祐氏、『Blanc』の佐藤伸一氏、『肉料理かなえ』北口亮佑氏、ドリンクディレクター大越基裕氏。

「九州中のドンペリニョンを集めた」という言葉通り、乾杯のシャンパンはおかわりができるほどふんだんに用意された。

ドリームダスク アンコールすべての料理が記憶に残る、奇跡のようなコース。

ひとり2〜3品の料理を作るコース。

寿司と焼き鳥と肉料理とフランス料理とイタリア料理。しかもそれぞれが強い個性で美食界を牽引してきた名店ですから、果たしてコースとして成立するのか、という疑問も浮かびます。

しかし心配は杞憂でした。シェフ同士が事前に何度も打ち合わせし、コースを綿密に練り上げる。それぞれが自身のベストを尽くしつつ、コースとしてのバランスも崩さないのは、全員が一流だからこそなし得たチームワークなのでしょう。

佐藤氏による前菜は、牡蠣のアイスクリーム仕立てにソローニュ産キャビアを贅沢に添えた逸品。続いては天寿しを代表するネタであるイカを小丼仕立てで。

「ホテル内で炭火が使えないことで、かえって鶏の新たな魅力を伝えられる」と気合を見せた池川氏は、2種類のタコスを考案しました。田窪氏渾身のボロネーゼは、本田氏が夏トリュフたっぷりとすりおろす演出も。北口氏のタン煮込みは、大振りなタンを目の前で捌くことで会場を湧かせました。

後に本田氏は振り返りました。

「ラグジュアリーが正装である時代は終わりました。いまのラグジュアリーとは、記憶に残る体験を心から楽しむこと」

ゲストもシェフたちも心から楽しみ、おいしければ“おいしい!”と大きなリアクションとともに伝える。それは型にはまり、決まったルールに則るこれまでのラグジュアリーとは一線を画す体験です。

さて続いてのメニューは握り寿司。

本田氏の合図で両開きの扉が開くと、そこには特設の板場が設けられ天野氏をはじめとした寿司職人の姿が並んでいます。そこに居た職人たちは『鮨よし田』『寿司つばさ』『鮨 唐島』、いずれも福岡でトップクラスに君臨する名店ばかり。これほどの猛者たちが一同に集まる、奇跡のような光景です。

しかし、ゲストたちは、またしても我が目を疑いました。

天野氏の隣に立つ、染の作務衣の人物。それは『四谷すし匠』で江戸前鮨に革命を起こし、ハワイ、そしてNYへと鮨の文化を伝える巨匠・中澤圭二氏その人でした。

天野氏と中澤氏。鮨の2大レジェンドが並び立つ光景にゲストはカメラを手に板場を囲みます。たしかに今日を逃せば二度と見ることができないかもしれない、まさに歴史的な瞬間。2日目のディナーには福岡の『 鮨近松』、東京の『鮨しゅんじ』も参加し、連日盛り上がりを見せました。

サプライズで湧いた会場の熱は、その後も冷めることはありません。田窪氏が得意の薪火でサーロインを焼き、池川氏は鶏の天むすで盛り上げ、北口氏の黒毛和牛の辣油和えそばで満足感も十分。

大越氏がセレクトしたドリンクも秀逸でした。それは一貫したベースラインを奏で続ける通奏低音のように、幅広い料理にそっと寄り添い、ひとつのコースという範囲に繋ぎ止める役割。目立ちすぎず、控えすぎずのセレクトは、料理を引き立てるペアリングの力を改めて感じさせました。

佐藤氏のアカシアの蜂蜜のアイスクリーム、そして田窪氏のフィナンシェで心地よい余韻とともに終わったこの日のコース。その味と演出は、ゲストの心に忘れ得ぬ記憶として刻まれたことでしょう。

『DREAM DUSK』、夢のような夕暮れ。その夢の時間は、いま幕をおろしました。

佐藤氏の一品目は牡蠣の旨みを凝縮した「Glace aux huîtres,Caviar imperial de Sologne.」

フランス仕込みの繊細かつエスプリのきいた料理が佐藤氏の真骨頂。得意の牡蠣料理を今日のためにアレンジした。

『天寿し』の「イカの小丼」。歯切れ良く、甘み豊かなイカをシンプルに味わう天野氏の真骨頂。

厨房ではその神業から学ぼうとする若き職人たちに囲まれる天野氏。このような交流が生まれるのも、食イベントの魅力。

『鳥しき』の「2 Tori Tacos」。炭火が使えない中で鳥の旨みを引き出す池川氏の技とアイデアが光る。

威勢のよい兄貴肌。池川氏の存在感が会場も厨房も賑やかに盛り上げた。

『TACUBO』の「ハタヤリン ボロネーゼ 夏トリュフ」。芳醇なトリュフがコクのあるボロネーゼと響き合う。

100人前以上のパスタを見事な手際で仕上げる田窪氏。味はもちろん、仕上げるタイミングにもシェフの技量が垣間見える。

『肉料理かなえ』の北口兄妹。にこやかな二人だが、心には肉にかける真摯な思いが潜む。

『肉料理かなえ』の「タン煮込み 季節のソース」。

天野氏と中澤氏の共演に、カメラを構えるゲスト。誰もが、この瞬間がいかに奇跡的なのかを理解していた。

生ける二人の伝説を前に、ひるむことのない次世代の寿司職人たちの姿も心強い。

大越氏のドリンクセレクトやサービスもこの日の大切な柱。ペアリングの持つ力を、改めて知らしめた。

ドリームダスク ファイナル惜しまれながらの閉幕と、見事なまでの有終の美。

一夜明けた翌日、『ザ・ルイガンズ』の野外スペースでスペシャルランチが開催されました。昨夜の晩餐が、和やかな中にも特別な体験を楽しむラグジュアリーな時間であったのに対し、このランチはまさにお祭り。晴れ渡る空の下、紙コップのドリンクと紙皿の料理を手に、思い思いのスタイルで食事を楽しみます。

ただひとつ、普通のお祭りと異なるのは、紙皿の上の料理が、名だたる名店、人気店の特別メニューだったこと。

ひときわ長い行列ができていたのは、東京『鳥しき』『鍈輝』、大阪『市松』『えんや』、福岡『ひょご鳥』六三四』の6名店が揃った『焼鳥達人の会』。ラーメン、餃子、ハンバーガー、ワイン、日本酒、クラフトビール。素晴らしいロケーションのもと、気軽に、楽しく美食をハシゴする最高の時間が続きました。

「福岡は、サン・セバスティアン以上の美食の町だと思っています。九州の最高の食材と腕の良い料理人が揃い、屋台の伝統からハシゴの文化もある。コンパクトシティに美食の要素が凝縮されているのです」

とプロデューサー本田直之氏は話します。

「当初“ありえない食のイベント”のテーマで立ち上がったDREAM DUSK。テーマは予約の取れない店ばかりを、ひとつのコースにすること。続けるうちに開場の一体感も高まり、想像以上のイベントになりました。僕はあらすじを作っただけ。この素晴らしい時間は、ゲストが作りあげたものだと思います」

それでも、これほど惜しまれながらも終わりを迎えるのは、日本の食文化に新たな可能性を提示するという責務を果たしたから。そして「記憶に残るうちに、夢のように終わるのが良い」という本田氏の願いから。

たしかに『DREAM DUSK』という夢の時間は、参加したゲストにも、そしておそらくシェフたちにも、忘れ得ぬ記憶となって刻まれたことでしょう。

翌日の福岡は、気持ちの良い晴天。ラフな姿のゲストやシェフたちが思い思いに楽しんだ。

ようやく炭火の前に戻った池川氏も、このリラックスムード。食の楽しさをゲストに伝えた。

入場制限のないランチはあっという間に大混雑。各料理の窓口の前には長蛇の列が伸びていた。
アウトドアランチは『HASHIGO: Restaurant Crawl  -人気店を一日で食べ歩く-』という名で拡大継続を予定。今後の展開にも期待したい。

アンコール、そして終幕。伝説的イベントのトリを飾るにふさわしい今回のシェフたち。

Text:NATSUKI SHIGIHARA

今、食すべき地方の才能。人生の岐路は、料理人を強くする。

2023年、「Destination Restaurant of the year」を受賞した福島県いわき市の「HAGI」。オープンキッチンの店内では、料理の温度や香りも楽しめる。「強く見えるけれど、優しい火」と萩氏。(公式HPより一部抜粋)

ディスティネーションレストラン日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト。

まず始めに、これを読んでいただいている方にお伺いしたいことがあります。

世界中に多くのレストランアワードがありますが、何を参考にしていますか?

老舗のものから流行のもの、料理ジャンルに特化したもの、昨今ではサスティナブルな視点のものまで様々です。ワインや日本酒、焼酎など、ドリンク専門のものも少なくありません。

「ONESTORY」においては、2016年の創業より「DINING OUT」という表現を通し、そういったものに左右されない独自の思想を大切にし、地域と向き合い続けています。それは、2017年から展開したメディアにおいても同様です。

そんな中、共感を持つアワードに出合いました。「Destination Restaurants」です。「The Japan Times」が運営するそれは、日本発信のレストランセレクション。もう少し噛み砕くと、「日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト」です。選考者は3名。学校法人辻料理学館理事長兼辻調グループ代表の辻 芳樹氏、レバレッジコンサルティング代表CEOの本田直之氏、アクセス・オール・エリア代表の浜田岳文氏です。本田氏と浜田氏は、この肩書きよりも、国内外を巡るフーディーと伝える方が納得かもしれません。本田氏は、毎日のように屋台、B級からレストランまでの食を極め、自らシェフイベント「Dream Dusk」なども主催。浜田氏は、約120カ国・地域を踏破し、「OAD Top Restaurants」レビュアーランキング5年連続世界一。本業ではないその活動は、「好き」が昂じたものだったのかもしれませんが、今となっては「使命」すら感じるのは自分だけでしょうか。

そんな「Destination Restaurants」は、今年で3回目を迎えます。2021年に発足するも、世界中がコロナ禍に。2022年に2021年度と合同の受賞式が初開催でき、本当の意味で産声を上げました。2023年の模様をお伝えする前に、まず、2021年、2022年を少し振り返りたいと思います。

2023年「Destination Restaurants」の受賞者(後列)と、(前列左より)主催者の「The Japan Times」代表取締役会長兼社長の末松弥奈子さん、選考者のアクセス・オール・エリア代表の浜田岳文氏、学校法人辻 料理学館理事長兼辻 調グループ代表の辻 芳樹氏、レバレッジコンサルティング代表CEOの本田直之氏。

ディスティネーションレストラン選考基準の先にある尊さ。それは、美味やホスピタリティを凌駕する、人生の物語。

「Destination Restaurants」の選考基準もご紹介したいと思います。まず、その対象は東京23区と政令指定都市を覗く日本にあるあらゆるレストランだということ。それをもとに、「日本の風土の実像は都市よりも地方にある」、「地方で埋もれがちな才能の発掘を目指す」、「既存のレストランセレクションとの差別化を図る」という3つの点を重視し、毎年10店のレストランが選出されます。

2021年には、富山県南砺市の「L’evo」。2022年には、和歌山県岩出市の「villa aida」が各年の「Destination Restaurants of the year」を受賞しました。

「ONESTORY」においても両レストランとの親交は深く、「villa aida」のシェフ・小林寛司氏においては「DINING OUT HIEIZAN」の記憶も新しいです。そのほかも親和性の高いレストランが多く受賞されています。

2021年「Destination Restaurants」の詳細はこちら
2022年「Destination Restaurants」の詳細はこちら
2023年「Destination Restaurants」の詳細はこちら


「L’evo」と「villa aida」は、地方を極めた好例と言って良いでしょう。スタイルも風土も異なる独自の2店に共通することは、レストランだけではないこと。

「L’evo」は、ホテルも併設。これを両輪できるレストランは日本全国を探しても稀有。本田氏も「どんなに良いレストランがあっても、宿やホテルがない地域が多い」とコメントを残しています。容易ではありませんが、両立を成せれば、辺境の地ですら旅先として成立できることを証明しました。

このアワードの通り、レストランを目的地にする旅は近年では珍しくはありません。ただ、旅はレストランだけで完結しません。レストランで過ごす前後の時間も含め、旅の質は決まります。

一方「villa aida」は、自身で畑も耕し、一次産業も担う農から始まるレストラン。

2店を価値化しているのは、レストランの「中」の時間だけではなく、レストランの「外」の時間。つまり、営業時間外。受賞式では、辻氏、本田氏、浜田氏のトークイベントも開催され、この話題の中心となるのも、外の時間のように感じます。

生産者との関係構築、地元の食材を活かしているだけに留まらない風土の理解度、IターンやUターン、家業ゆえの苦悩……。受賞店のほとんどが、5年、10年、20年かけて、今のスタイルにたどり着いています。

例えば、2023年受賞の沖縄本島から離れた古宇利島の「レストラン6(シス)」のシェフ・小杉浩之氏は、流通や食材の難しさを語ります。
「沖縄といえば、一年を通してすごい夏かちょっと夏(苦笑)。塩害も多く、食材が限られています」。

小杉氏は、名古屋の名店「イレテテュヌフ」から移転。全く異なる環境で再スタートを切る形となりました。「以前の環境は、市場に行けば食材が豊富で、それを見てメニューを決めていました。ある意味、食材に逃げていた。ですが、今の環境は食材が極めて限られています。食材から逃げることができない」。

選択肢の少ない環境は、技術向上はもちろん、強い精神力も備わったのではないでしょうか。

また、同年に受賞した新潟県新発田市の「登喜和鮨」の職人・小林宏輔氏は、東京で修行を積んだ後、家業を継いだ3代目。

「戻って来た当初、漁師さんから直接魚を仕入れようと思い、色々な漁港を回ったのですが、口も聞いてもらえませんでした。それからは、気になる船を見つけては会いに行っての繰り返し。少しずつ信頼を積み重ね、今では良好な関係を築けています」。本人は笑い話のように振り返るも、その苦労は計り知れない。帰郷後16年目の言葉は重く深い。

視点を変え、2021年に受賞した東京都調布市の「ドン・ブラボー」もまた、このアワードらしさが出ていると思います。調布という絶妙!?な地域は、地方に行くよりも足が遠のく微妙!?な距離感も孕み、「地方で埋もれがちな才能の発掘を目指す」指針の着眼そのものではないでしょうか。

美味しい料理やホスピタリティ、気の利いたサービスも重要ですが、「Destination Restaurants」は、それよりも、人間としての深さを感じるレストランが受賞されているのではないでしょうか。

その一番を物語っているのが、2023年「Destination Restaurant of the year」を受賞した福島県いわき市の「HAGI」です。

2021年「Destination Restaurant of the year」を受賞した富山県南砺市の「L’evo」。「ONESTORY」においても2017年に取材。当時、「奇抜なテクニックを駆使しているわけでも、世界の高級食材を使用しているわけでもありません。ただ富山に寄り添い、食材のあるべき姿の料理に仕立てる。そこでしか食べられない料理とはつまり、土地の恵みを最大限に生かした料理のことなのです」とシェフの谷口英司氏は語る。

2022年「Destination Restaurant of the year」を受賞した和歌山県岩出市の「villa aida」。「ONESTORY」においても2017年に取材。2022年には「DINING OUT HIEIZAN」のシェフも務める。

今回、普段では聞くことのできない苦悩の一部を話してくれた2023年受賞店「登喜和鮨」と「レストラン 6(シス)」。2021年受賞店の「ドン・ブラボー」の立地は、シェフの平 雅一氏が生まれ育った町であり、料理人だった父親の店の跡。全てに理由はあるのだ。

「ONESTORY」では、2021年の受賞10店中、「L’evo」、「Restaurant UOZEN」、「レストラン エタデスプリ」、「とうの屋 要」、「ペシコ」、「すし処 めくみ」、「日本料理 高村」、「片折」の8店を過去に取材。親和性の高さが伺える。

2022年の受賞店「ラトリエ ドゥ ノト」は「ONESTORY」でも過去に取材。シェフの池端隼也氏は、「DINING OUT WAJIMA」の協力者でもある。また、「里山十帖」を率いる岩佐十良氏は、2023年に「新潟ガストロノミーアワード」も発足。両店は、先ごろコラボイベントも開催し、県を超えたつながりも強固に。

2023年受賞店「カーサ デル チーボ」は「ONESTORY」でも過去に取材。青森県八戸市の住宅街に潜むそこは、知る人ぞ知る名店。料理の実力もさることながら、シェフの池見良平氏は、「地元の食材への信頼、地元への誇り」を持ち続ける。

ディスティネーションレストランだから白衣にこだわる。この喜びは、一緒に泣き続けた生産者に届けたい。

「HAGI」のある福島県は、言わずもがなコロナ禍以前より、難局の連続でした。

2011年3月11日には未曾有の大地震、津波、その後、2012年には原発事故による放射能問題。その後、数年をかけて除染されたとはいえ、世間のイメージを払拭するのは難しかったでしょう。

シェフの萩 春朋氏の受賞スピーチはこんな言葉から始まりました。

「福島県は、海も山もある箱庭のような美しい町です。ですが、3.11以降、全てが変わってしまいました。限界都市や消滅都市と呼ばれる地域のように、私たちの目の前にあったものは、一瞬にして蒸発してしまいました。そこで料理を続けて良いのか、悪いのか、本当に悩みました。ですが、ここで私たち料理人や生産者が歩みを止めてしまっては、福島の食文化がなくなってしまう、残さなければいけない、そう思いました。だから、継いできました」。

あれから、12年。萩氏は生産者たちと「50年分を10年でやった」と話すそうです。

「今は目の前に美味しい食材がある。それを料理できる喜びを感じています」と言葉を続け、ここで初めて萩氏は笑みを浮かべたのが印象的でした。

2011年の震災時、復興に参加したシェフは全員東京の方だったそうです。それはなぜか。

「福島にシェフがいなかったからです」。

以降、萩氏は、「福島にシェフがいる」ことを伝えるかのように、表舞台に出る際は必ず白衣を着ると言います。今回においても、他のシェフはスーツの中、白衣で参加していたのは萩氏ひとり。

「地元にもシェフがいる。地方にもシェフがいる。田舎にもシェフがいる。それをひとりでも多くの人に認知してもらえたら嬉しいです。今、料理を目指している人たちは、世界や東京で修行を積むシェフが多いと思います。ですが、最後には地元に戻ってレストランを営む。そんな文化が根付いてくれたら、日本のレストランはもっと良くなると思います」。

計り知れない逆境を乗り越え、己を鼓舞し、諦めなかった12年の時間が込められたスピーチは約4分。この短い時間の中に凝縮されたメッセージは、胸に熱く突き刺さった。

最後に、この喜びを誰と分かち合いたいかという問いに対し、萩氏は「生産者の方です」と答えました。長く苦しい、先の見えない暗いトンネル。途方にくれ、一緒に涙を流し続けた同志です。

「ある日、生産者の方が赤い服を着て、畑仕事を再開したんです。俺は畑の太陽になるんだ! そう言いながら、毎日、毎日、汗を流している姿に胸が熱くなりました」。前出、萩氏にとっての白衣のごとく、この赤い作業着もまた、生産者の強い想いが込められているのだと思います。

「生産者の方々には、感謝してもしきれない」と話す萩氏の料理は、食材を育てる肥料などの成分も理解した上で、その味を壊さず、引き出すもの。お客様はもちろん、生産者も幸せにしたい」と言葉を噛み締めます。

「福島には本当に良い食材が集まっている。今の福島は元気です。自分も料理の力でこの町に貢献したいと思っています」。

鮮度にこだわる「HAGI」の料理。鮮度とは命の時間を表す。「鮮度と命は巻き戻しが効かないため、だからこそそれに出会っていただきたい」。(公式HPより一部抜粋)

「HAGI」の料理たち。「時間をおくことによって生まれる旨味は土によって補います。 何か月も土の中の旨味であるミネラルを吸って育った野菜たち。 それでも不足する旨味があり、そこは薪によって補います。 薪は素材の水分を奪わない性質があります。また、焦げることもありません」。(公式HPより一部抜粋)

「自然と生きる生産者の食材は、いつも一定とは限りません。いい時もそうでない時も生産者とともに、日々の食材と向き合い、寄り添う中で料理をしていきたい」と「HAGI」の萩氏。(公式HPより一部抜粋)

ディスティネーションレストラン日本のレストランが向かう、次なるステージ。しかし、何があろうとも、かけた「時間」は裏切らない。

「先日、海外のフーディーたちとの集いがスペインのマドリードであったのですが、世界中を食べ歩いている人が一番行きたい国はどこか、それは日本です。そして、世界で活躍しているシェフが一番行きたい国はどこか、それも日本です。これは間違いありません」。世界と目線を合わせた際、浜田氏は、こう話します。実体験ゆえ、説得力も絶大。さらには日本に対するレストランの印象も変わってきていると言葉を続けます。

「例えば、以前であれば、日本に来たら、和食、鮨という印象がありましたが、今は違います。日本の食材で日本人が作る料理に注目が集まっています。つまり、日本食だけではない日本のレストラン。例えば、京都「ノーマ」のポップアップ(2023年3月15日〜5月20日)のために世界中のフーディーが旅をするわけですが、その後どこに行くかと聞けば、和歌山の「villa aida」という答えが返ってくるわけです。日本のレストランは次のステージに向かっている」。

一方、本田氏は、地方でレストランを営むシェフ像について持論を話します。

「料理がライフスタイルになり、それが憧れになるような存在になると、もっと地方でレストランをやりたいというシェフも増えるのではないでしょうか。純粋に格好良いなって思えるヒーローみたいな。ただ、日々営業もしていますし、中々、外の世界を知ることも難しい。そんな苦労もあると思います。ですので、今回のような場を通して、シェフ同士につながっていただき、共有の場にもなってもらえればと思っています」。冒頭、本田氏は、経営者でもあり、フーディーでもありますが、あえてもうひとつ加えるならば、人と人をつなぐ専門家でもあるのではないでしょうか。

共有というワードにおいては、浜田氏も追います。「その昔、サンセバスチャンでは、町として楽しめるようにレストランが集い、協力し、レシピなども開示し、共有し、シェフたちが切磋琢磨ていたそうです。レストラン1店だけでは、一般的な人たちの旅として成立させるには難しい。同じ地域に数店を回遊できたりすると、ゲストの満足度はもちろん、経済としても好転するのではないでしょうか。日帰りが1泊になり、さらに2泊になる。そういう意味では、やはり宿泊施設も大切。レストランだけでなく、地域全体で観光促進のビジョンを共有し、協力し合うことで盛り上がっていくことを願いたいです」。

「Destination Restaurants」に選ばれたレストランは、そのきかっけや起点になる可能性を秘めているのかもしれません。

辻氏においては、社会や雇用についての課題とこれからについて話します。

「一番思うことは、女性の雇用を増やしたいと考えています。また、今後、規制を緩和させ、海外の誘致者の雇用も視野に共創させたい。そうすれば、もっと才能を増やせ、もっと日本の食文化は上がる。そのための努力もしていきたいです」。

星をつけるわけでもない、ランキングするわけでもない、投票するわけではない。それが「Destination Restaurants」。選考者が、たった3名ということも、アワードの志を明確にさせ、それを個性としているのかもしれません。

また、東京や都市を経由せず、地方からダイレクトで海外へ発信できることもこのアワードの大きな魅力。「The Japan Times」主催の意義は、そこにあると考えます。

とはいえ、全てにおいて時間がかかることは、地方と向き合う絶対条件。しかし、「この時間こそが武器となる」と、2023年の受賞式にも参列していた「L’evo」のシェフ・谷口氏は言います。

「やっぱり、地方でレストランをやることは、大変なことだらけ。でも、それを一つひとつ解決していけば、きっと武器になる。かけた時間は裏切らない。きっとそれは価値になる。だから、例えどんなレストランやシェフが進出してきても怖くないです」。

どんなにテクノジーが発達しようとも、かけた時間を一足飛びに追い抜くことはできない。それが地方で生きるレストランなのです。人生の岐路を繰り返してきた料理人たちは、常に自身と向き合い、挑戦し、時に恐怖に怯え、不安や苦悩に押しつぶされそうになっても、強い意志を持って選択を繰り返し、戦ってきたのです。

味は技術にあり、感動は人にあり。

現在、「Destination Restaurants」は30店。「日本の食文化の地形を作っていく」辻氏、本田氏、浜田氏の旅は終わらない。

「東京と比べ、地方のレストランの方が生き生きしている」と浜田氏。「日本の地方には良いレストランが本当に増えました。まだまだ行かなければいけないお店がたくさんある」と本田氏。「6次産業化したガストロノミーの時代」と辻氏。「まだ始まったばかり、100店まで続けたい」と3名。

Text:YUICHI KURAMOCHI

健康食材としても注目される、北海の幸「がごめ昆布」をふんだんに。[和光アネックス/東京都中央区]

これ1本で味が決まる、簡単便利な調味料の代表格である白だしを、こだわりの食材で作り上げました。

WAKO ANNEX素材を活かした料理に幅広く活躍。希少な昆布の魅力にフォーカス。

北海道の函館近海から室蘭市沿岸でのみ生育し、生産量が非常に少ない貴重な「がごめ昆布」。籠の目ような凹凸模様のルックスや、高級な真昆布に混じって採れることからやっかい者扱いされた歴史を経て、強い粘り、とろみの中に栄養成分が豊富に含まれていることが分かった近年は、健康、美容によい食材として世界的に注目されるようになりました。

そんながごめ昆布の健康食材としてのポテンシャルに着目した『医食同源』が手がける『がごめ昆布の白だしつゆ』は、がごめ昆布やかつおから丁寧に出汁をひきつくられた万能調味料。白だしならではの上品な色と、まろやかな味わいが素材本来の味わいを引き立てます。

煮物、鍋物のつゆとしてはもちろん、食材本来の色を活かしたいふろふき大根やおでん、茶碗蒸しなどにもお勧めです。薄めて麺のつけつゆやめんつゆにしたり、浅漬けに利用したり、もちろんそのまま冷奴などにかけてもおいしくいただけます。

毎日の料理のお供に香り高い白だしを選んでみてはいかがでしょうか。

つゆのうま味をダイレクトに味わうなら直がけで。和食だけでなく洋食などにも合う、守備範囲の広さも魅力です。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

宮城の特産品「ミヤギシロメ」を主役に、滋味に富んだプレミアムなスープ。[和光アネックス/東京都中央区]

たくさんの食材を効率よく手軽に摂取できるのはスープだからこそ。

WAKO ANNEX大粒大豆と30種以上の野菜が織りなす、奥行きのある1杯。

できるだけ多くの野菜を手軽に、効率よく。そんな思いから誕生した『Maazel Maazel』オリジナルの食べるスープスムージー。

全ての商品のベースとなるのは、国産野菜34種類と米こうじをブレンドしたオリジナルのMM.ペースト。100種類以上含まれる米こうじの酵素は熱に強く、スープで手軽に摂ることができます。

今回ご紹介する『ふっくらミヤギシロメ大豆と黒ごま豆乳スープ』は、宮城県の特産品を贅沢に使用したプレミアムなひと品。大粒の中にうま味の凝縮した食べ応えある大豆に、香ばしい黒ごまとなめらかな豆乳が調和した、奥行きのある味わいです。

主役は、宮城県のみの優良品種である大豆「ミヤギシロメ」。胚芽が白い白目大豆で、豆が非常に甘いのが特徴で、国産大豆の中でもワンランク上と称されています。

調味料(アミノ酸)・増粘剤不使用。普段の食卓に彩りや特別感を与えてくれる贅沢なスープを、自身や大切な人の健康を願い、食卓やギフトに選んでみませんか?

ふっくらとした大豆の満足感に加え、黒ごまのセサミンや豆乳のサポニンといった健康効果も魅力。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

栽培、製法に妥協なし。老舗農園によるあんず尽くしのワイン。[和光アネックス/東京都中央区]

歴史ある農園がじっくりと手がけるあんずワイン。酵母にまであんずを使用し、まさにあんずの魅力を凝縮した1本です。

WAKO ANNEXあんずの魅力を再発見。フルーティーな香りと酸味が広がる。

安心安全への理念を礎に創業50余年、自社農園での徹底した低農薬栽培にこだわる『横島あんず農園』のあんずを100%使い、丹精込めて作られたワイン。ふっくら引き締まった色艶のよい実を厳選し、さらに自家製の「あんず酵母」で醸した珍しい逸品です。

あんずは美と健康のフルーツと称され、年間生産量1位の長野県では古くから盛んに栽培されてきました。特に『横島あんず農園』のある森地区は年間降水量が少ない地域として知られ、千曲川東岸の山塊のひとつ、五里ヶ峯より流れる沢山川から運ばれた砂や礫などが堆積した土壌です。この気候風土が、乾燥した気候を好むあんずを育みます。

丁寧に醸されたワインをグラスに注げばゴールド色の輝きが美しく、口に含めばあんずの程よい酸味と爽やかな香りの調和をお楽しみいただけます。冷やすことでスッキリとキレ良く、常温では滑らかな口当たりと、さまざまな味わいが楽しめる奥深さもまた、このワインの魅力。氷や炭酸で割ってアレンジするのもおすすめです。

華やかな印象のためお祝いの乾杯の席や食前酒にもぴったり、内祝の記念のお品にも喜ばれる珠玉の1本、ぜひご賞味ください。

あんず本来の果実味はしっかり、それでいて爽やかな味わい。アルコール度数10度以上11度未満で、さらりと飲みやすい。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)