愛好家を唸らせるウイスキー『HIGHLAND PARK』。最北の蒸溜所のスコッチと、薪火料理が響き合う夜。[HIGHLAND PARK presents WILD HARMONY SESSION in Maruta/東京都調布市]

 最北の蒸溜所から届いたスコッチウイスキー。

スコットランドの北端、大小70の島々で構成されるオークニー諸島。

そのなかのひとつであるメインランド島に、最北端のスコッチウイスキー蒸溜所、ハイランドパーク蒸溜所があります。

かつてヴァイキングの拠点であったこの島でヴァイキングの子孫によって受け継がれる、変わらぬウイスキーの製法と島の誇り。

ロマンあふれるシングルモルト・スコッチウイスキー「HIGHLAND PARK」は、世界中のウイスキー愛好家から高い評価を得ています。

常に強風が吹き荒れ、木々すらも生き残れないというオークニー島の厳しい自然の中、200年以上も変わらぬ製法が貫かれている『HIGHLAND PARK』。

しかし伝統とともに受け継がれるヴァイキングの魂は、“ただ守り続けること”を許しません。その誇り高き魂が目指すのは、常に戦い、挑戦し続けること。

さて、そんな『HIGHLAND PARK』をさらに楽しむために、ある夜、開かれたイベント。会場となったのは、調布『Maruta』。環境重視の店づくり、ローカルファーストの食材調達、そして薪火という調理法を通して、常にレストランの新たな可能性を模索し続ける名店です。

果たしてそんな『Maruta』のスピリットは、『HIGHLAND PARK』の哲学とどう共鳴するのか。まだ見ぬコラボレーションに期待が尽きない一夜限りのスペシャルディナー『HIGHLAND PARK presents WILD HARMONY SESSION in Maruta』の開幕です。

2018年のオープン以来、食通の支持を集める『Maruta』の薪火料理。ウイスキーとのペアリングに期待が高まる。

会場となった『Maruta』は、木々が生い茂る庭園を併設。料理やカクテルに使われるハーブの多くも、この庭園で育つ。

火の通りが柔らかく、燻製のような香りもまとう薪火料理。原始的だが、可能性に満ちた調理法。

 まずはテイスティングで、シングルモルト本来の味と香りを堪能。

さて、いよいよ幕を開けたスペシャルディナー。

ウイスキーと薪火料理のペアリングへの期待が高まりますが、その前にまずはテイスティングでシングルモルト・スコッチウイスキーそのものの味を確かめます。

ゲストの前に用意されたのは、『HIGHLAND PARK』12年、15年、18年の3種のヴィンテージ。それぞれの特長を、ブランドマネージャーである藤井氏が解説します。グラスを掲げて色を見て、鼻を近づけて香りを感じ、そして口に含んで味と余韻を確かめる。そうして正面からしっかりと向き合うことで、改めて『HIGHLAND PARK』の魅力が見えてきます。力強いのに角のない味わい、ほのかにスモーキーな独特のピート香、ハチミツを思わせる柔らかな甘み。それぞれのヴィンテージによる個性も、藤井氏の言葉とともに実感を伴って染み込みます。厳しい自然環境と悠久の歴史が作り上げた、唯一無二のフレーバー。その独自性は、勇敢に挑み続け積み重ねた伝統の証。そんな重厚な物語を身近に感じられた瞬間でした。

続いてはいよいよ料理の登場です。

『Maruta』のシェフ・石松一樹氏とマネージャー・外山博之氏が最初に用意したのは、12年、15年、18年の『HIGHLAND PARK』それぞれに合わせるフィンガーフードでした。

香りを起点にしたペアリングに定評がある外山氏の今回の狙いは、ウイスキーの香りにクローズアップすること。12年のオレンジのような軽やかさには、香草を加えた干し柿で作ったサラミ、15年にはパイナップルのような甘みにはイチゴのアイスクリーム、18年はナッツやチョコレートを思わせる風味と熟成感には牛脂のクッキー。調和するのではなく、ウイスキーの個性を伸ばすことを意識した素晴らしいペアリングでした。

ブランドマネージャーの藤井氏。地理や歴史、製法など、『HIGHLAND PARK』のあらゆる情報を知る人物。

左から12年、15年、18年。じっくりと向き合うことで味や香りはもちろん、色味や粘度の違いも見えてきた。

「自由に楽しむ、という前提ですが」と前置きしつつ藤井氏がプロのテイスティング方法もレクチャー。ウイスキーの楽しみ方の幅を広げてくれた。

香りの中から柑橘やバニラなどの要素を感じとると、ウイスキーはいっそう味わい深くなる。ただし度数が高いため、鼻の近づけ過ぎに注意。

テイスティングから静かに幕を開けたイベントは、時間の経過とともに徐々に和やかな雰囲気に。

それぞれのヴィンテージに合わせた3種のフィンガーフード。香りを起点に、ウイスキーの個性を引き出した。

「HIGHLAND PARKのストーリーとMarutaの料理に高い親和性を感じた」というマネージャーの外山氏。

 炎で仕上げる料理と、ヴァイキングの魂を継いだウイスキーの調和。

続く料理の前に、ここからは趣向を変えてスタンディング形式に。大皿の料理をブッフェスタイルで取り分け、『HIGHLAND PARK』はバーカウンターで好みの飲み方を注文するスタイルです。

カウンターに立つのは、『Maruta』の外山氏と、ゲストバーテンダーである世田谷代田『Quarter Room』の野村空人氏。2人のドリンクのプロフェッショナルが、アレンジを加えてさらなる『HIGHLAND PARK』の魅力を引き出します。12年ならソーダ割り、15年は水割り、18年はロック。そこに自家製の発酵飲料や『Maruta』の庭に茂るハーブを加えて、仕立てるさまざまな味わい。力強い味わいの『HIGHLAND PARK』にハーブの香りが加わって生み出される軽やかさ、奥深さ、まろやかさが、改めてウイスキーの無限の可能性を感じさせます。

合わせるのは石松シェフの真骨頂である薪火料理。

薪火で炙った枝豆に、薪の香りをまとわせたクリームを合わせる一品。神経締めの鯛は香草たっぷりのリゾットとともに。焼き茄子とともに味わうスープ、経産牛の熟成感に薪火で香ばしさを加えたステーキ。薪火でカラメリゼした洋酒のケーキは『Maruta』のスペシャリテですが、今日は特別に『HIGHLAND PARK』を使用して香りをつけています。

薪火という原始的な調理法で仕立てられた野趣あふれる料理と、最北の蒸溜所で生まれたウイスキー。それらが響き合い、混ざり合い、『HIGHLAND PARK』と『Maruta』の料理それぞれに、さらなるポテンシャルを引き出させたのでしょう。

「料理人の使命は、常に新たなことに挑戦し続けること。今回もウイスキーを起点に料理を考案する、という未知への挑戦でした。スモーキーなHIGHLAND PARKと薪火料理の相性は想像以上。そのなかで料理とウイスキーそれぞれをどう記憶に残すかを心がけました」

と振り返る石松シェフ。

「料理との共鳴、そしてハーブを加えた新たな飲み方。HIGHLAND PARKは歴史とロマンの酒。200年以上も変わらぬ製法を続けているにも関わらず、今回のように新たな発見があることに驚きました。“ウイスキーはロックで飲むもの”という時代は終わりました。これからは今回のように、より自由に楽しめる酒として広く伝えていきたい」

藤井氏もそんな言葉で、今回のイベントを振り返りました。

時間の経過とともに、賑やかな雰囲気に包まれる会場。背後に薪火が燃えるその様子は、ヴァイキングの伝統である火祭りを彷彿とさせるよう。受け継がれる伝統を守りつつ、新たな挑戦も続ける『HIGHLAND PARK』と、革新を続ける『Maruta』。そんな両者の哲学が響き合い、未知なる魅力へと昇華された稀有なる夜でした。

和やかな雰囲気に包まれたブッフェスタイルの第二部。この雰囲気を醸成するのもウイスキーの魅力のひとつ。

炭酸割りや水割りの仕上げに、ハーブなどを追加。加える素材により、『HIGHLAND PARK』は実にさまざまな表情を見せる。

野菜料理は豪快に薪で炙った枝豆。クリームにも薪の香りをまとわせている。

旨味が濃厚な経産牛。表面をクリスピーに焼き上げ、旨味を内部に凝縮するのは、石松シェフの技術の賜物。

ウイスキーで香りをつけるスペシャリテのケーキ。今回は贅沢に『HIGHLAND PARK』を使用。

ゲストバーテンダーの野村氏。見事な手際で、次々とドリンクを仕上げた。

扱いが難しい薪火の熱を自在に操る石松シェフ。オープンキッチンでのシェフの巧みな調理にも注目が集まった。

炎、自然、伝統。さまざまな要素が絡み合い、相乗効果を発揮した『HIGHLAND PARK』と『Maruta』の料理。

住所:東京都調布市深大寺北1-20-1
電話:042-444-3511
営業:ランチ11:30〜、ディナー17:30〜
休日:ランチ土曜・日曜・月曜、ディナー土曜・日曜のみ営業
URL:https://www.maruta.green/

Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SHIGIHARA
(supported by 三陽物産)