3名のシェフが滋賀県産食材を調理。個性豊かな料理が伝える琵琶湖が育む透明なおいしさ。[SHIGA FINE FOOD DINING/東京都港区]

ローカルファインフードフェア滋賀3名のシェフによる夢のコラボレーションディナー。

琵琶湖の水と豊かな自然に囲まれた滋賀県は、食材の宝庫。古くから京都の美食を支えた伝統もあり、自然、文化、歴史のあらゆる面において上質な食材を生み出す環境が整っているのです。近江牛や近江鴨に代表される肉、肥沃な土壌と水に育まれる野菜、豊かな水が育む湖魚とバリエーションも多彩で、近年は多くのプロ料理人たちも滋賀県に熱い視線を注いでいます。

2023年8月某日。

そんな滋賀県産食材の魅力をさらに広く伝えるため『SHIGA FINE FOOD DINING』が開催されました。3名のトップシェフが滋賀県産食材を使い、それぞれの料理を披露するコラボレーションディナーイベントです。

今回はディナー本番を前にインフルエンサーを招いて開催されたダイジェスト版の様子とともに、それぞれのシェフの料理と滋賀県産食材の魅力を紐解いてみましょう。

左から『酛TOKYO』佐久間氏、『ニルヴァーナ ニューヨーク』引地氏、『Opuses』十楚氏。

ダイジェストイベントに参加したインフルエンサーの皆様。それぞれの視点で料理を堪能した。

ローカルファインフードフェア滋賀ビワマスの透明感ある味わいをダイレクトに伝える握り寿司。

最初に登場したシェフは『酛TOKYO』の料理長・佐久間佑吾氏。素材の持ち味を引き出す繊細な技術に定評がある佐久間氏が選んだ食材は、滋賀県産のビワマスです。

その名の通り、日本中で琵琶湖にしか生息しないビワマスは、サケ科に属する魚。鮮やかなサーモンピンクの身にしっとりと適度な脂をまとい、なめらかで口溶けの良いおいしさが魅力です。

「滋賀県を訪れてもっとも感動したのが、このビワマス。澄んだ水のような透明な味わいで、脂のキレも抜群」

と佐久間氏も絶賛します。

さらに佐久間氏はこのビワマスの魅力を最大限に引き出すため、現地で魚体の鮮度を守る“神経抜き”をしてもらうよう依頼。その熱意に生産者が応え、これまで以上に状態の良いビワマスが届くようになったのです。

「何をしてもおいしくて料理人がいらないくらいです(笑)」

そう笑う佐久間氏がビワマスの味わいを伝えるために仕立てたのは、シンプルな寿司。赤酢を使って米の旨味を引き出し、かつまろやかな酸味で、ビワマスの透明感をいっそう際立てる。シンプルな中に細やかな計算が潜んだ寿司は、佐久間氏が言う“透明感”を饒舌に伝えてくれました。

ゲストの前で料理を仕上げる佐久間氏。丁寧に食材を引き立てる技術が光る。

身の厚み、赤酢を使うシャリの塩梅、全体のバランス。シンプルな中にさまざまな技が込められる。

脂にクドさがないため「いくつでも食べられる」との声が会場から聞こえた。

ローカルファインフードフェア滋賀一羽まるごと使用して鴨の魅力を伝える料理。

2人目のシェフは、『ザ ロイヤルパークキャンバス銀座8』のオールデイダイニング『Opuses』の十楚武志氏。フレンチベースのモダンシーフードグリルを得意とする十楚氏が、この日は近江鴨の料理を披露しました。

近江鴨は、琵琶湖沿岸の高島市で育てられる滋賀県初のブランド鴨。水、餌、環境、細部にまでこだわり抜いて育てられた鴨には、多くの料理人が絶大な信頼を寄せています。近江鴨の魅力はそれだけではありません。

「処理や梱包といった細やかな点が本当に丁寧。それだけで生産者の思いが伝わります」

と十楚氏。手塩にかけた食材を、消費者の手元に届くまで大切に扱う。そんな基本を真摯に守り続けることも、近江鴨の魅力となっています。もちろん、味も一級品。

「国産鴨はいろいろ使ってきましたが、これは良い意味で“獣っぽさ”が少ない。雑味がなく食べやすく、それでいて味わいはしっかりとあります」

そんな鴨への敬意も込めて、十楚氏は鴨のすべてを使い切る料理を考案しました。

胸肉はキャラメルビネガーでじっくりとローストし、近江鴨の豊かな味わいを引き出します。添えられるソースや付け合せも、テロワールを感じる滋賀県産食材。濃厚な風味と酸味を持つ発酵黒蜜葡萄のソースが鴨肉の旨味を輝かせ、滋賀県伝統のみずくぐり味噌が、アクセントを加えます。

さらに料理はもう一品。モモ肉、ハツ、レバー、砂肝のラビオリです。鴨の風味が溶け込んだコンソメと、もっちりとした皮の中に鴨の複雑な旨味を凝縮したラビオリ。まるごと余すことなく使用することで、近江鴨のポテンシャルを最大限に引き出した十楚氏らしい料理でした。

熟練の技術はもちろん、その明るい人柄でも厨房内で存在感を示した十楚氏。

近江鴨を2種の調理法で提供。胸肉のキャラメルビネガーロースト(左)と、もも肉・ハツ・レバー・砂肝のラビオリとコンソメ(右)

近江鴨以外の食材も滋賀県産にこだわった十楚氏。ゲストの前に立ち、その思いを伝えた。

ローカルファインフードフェア滋賀絶妙なスパイス使いで引き出す野菜のポテンシャル。

最後はイベントの会場となった『ニルヴァーナ ニューヨーク』を率いる若き料理長・引地翔吾シェフの登場です。引地氏の持ち味は、本場のインド料理に対抗するのではなく、スパイスの力で日本の繊細な食材の持ち味を引き出すこと。魔法のようなスパイス使いで、食材の透明感を保ちながら香り豊かな料理を仕上げます。この日の引地氏の料理の主役は、杉谷なすびです。

杉谷なすびは、滋賀県甲賀市で育てられる野菜。丸々と大きな形と緻密で甘みある味わいで、古くから地元で愛されている伝統野菜です。不思議なことに甲賀市杉谷地区以外ではこのサイズに育たないという特性を持っています。地区の特性と伝統を引き継ぎながら、大切に育てられている野菜です。

現地の甲賀市を何度も訪れ生産者とも交流のある引地氏が作るのは、そんな生産者の思いまでを伝える料理。

「皮が薄く、中はトロリと柔らかい。そんな野菜の持ち味がスパイスを越える料理を意識しました」

そう話す引地氏は、杉谷なすびをじっくりと焼き上げ、絶妙な調味料と合わせた焼きなすのカレー・ベイガンバルタを仕上げました。複雑なスパイスの香り、ほのかにスモーキーなフレーバーが広がりながら、杉谷なすびの甘みと風味もはっきりと感じられる味わい。カレーという枠の中で食材が持ち味を光らせる技ありの逸品です。

合わせたのはスパイスが香る滋賀県産チーズを使うチーズナン。単なる足し算ではなく、味の広がりや余韻までを計算したスパイス料理が、杉谷なすびの可能性をさらに感じさせました。
3名のシェフそれぞれの個性と技術で、3種の滋賀県産食材の魅力を伝えた『SHIGA FINE FOOD DINING』。3名のシェフが口を揃えたのは、滋賀県産食材に共通する「透明感ある味わい」でした。琵琶湖の豊かな水が育む、クリアなおいしさの滋賀県産食材。どんな調理法にもマッチし、かつ明確な存在感を示すその上質なおいしさを改めて感じるイベントでした。

イベントでご紹介した料理や、その他のトップレストランでも『SHIGA FINE FOOD DINING』を首都圏で開催中。
詳しくはこちら

「SHIGA FINE FOOD DINING」の公式インスタグラムにて随時情報を更新中。
公式インスタグラム

食材への理解と、その食材を活かす技術の幅。引地氏の感性が冴え渡る。

杉谷なすびの一般的なインドカレーとは一線を画すクリアなベイガンバルタ。

滋賀県『古株牧場』のスパイスチーズ・ハードエピスを使ったチーズナン。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by 滋賀県)

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