見たことがあるようで、ここにしかない絶景と美味。太平洋一望のグランピング場で感じた想い。[高知県芸西村]

 最大限に海と語り合う時間。それこそがこの施設の醍醐味。

眼前には遮るもののない太平洋の大海原。
風はどこまでも穏やかで、聞こえるのは潮騒と鳥のさえずりのみ。
彼方に走る外国船籍まで見える水平線。
きらめく陽光は次第に光を強めて西の海へと沈みゆく。

一度は見たことがある太平洋が、この高台から望むとこんなにもドラマチックに感じるのか。見飽きることのない、絶景とはまさにこんな場所のことを指すのではないか。

11月某日、高知県芸西村で産声を上げた『NAMITERRACE GEISEI (ナミテラス芸西)』は、思う存分、海と会話を楽しむグランピング施設として生まれました。

オープニングレセプションパーティ当日、ONESTORY取材班は、朝の準備から参加し、昼のパーティから、夕景、夜の部まで1日を通して変わりゆく景色を目の当たりにし、冒頭のように感じたという訳です。

全国津々浦々、さまざまな地域で海を見て、撮影してきましたが、時間とともにこれほどまでに表情を変える海はなかなか出合うことがありません。

時に活力を与えてくれ、時に穏やかに寄り添ってくれる。
大海原の力を感じる場所……

「そうなんです。この海とともに大人が集える隠れ家が作れたらなぁと。そんな想いでプロジェクトはスタートしました」とはプロジェクトの共同代表を務める和建設の中澤陽一氏。
「施設のシンボルであるフランス船籍のヨットを購入したのが始まりだったんですよね。いやー、ワクワクしたけど構想から3年以上は長かった」とはもうひとりの共同代表・石川共栄不動産の石川泉氏。

ヨット購入をきっかけに友人であったふたりのひらめきと企ては、いつしか周りを巻き込み大きな夢になっていきます。宿泊用コンテナやサウナを計画し、離れの一軒家も増築するなど次々にアイデアは膨らみ、いつしか穏やかな海沿いの村に海外リゾートを彷彿させる施設の誕生が期待され始めたのです。さらに話は広がり、地元・芸西村までを巻き込み、クラウドファンディングのプロジェクトとしてグランピング場という形に落ち着きます。そうして3年以上の月日をかけて完成したのが、太平洋を望むグランピング施設『NAMITERRACE GEISEI』なのです。

話は膨らむ一方で、プロジェクトの骨子である“雄大な海を望む大人の隠れ家”は代表のお二人の強い希望で、いつも変わらずに守られていきました。

そう、この場所は海と語らう場所。
いよいよオープンした、新たな大人の隠れ家の誕生を、ONESTORYではいち早くお伝えできればと思います。

オープニングパーティは海を望む芝生の広場が舞台。この日のために、旅する料理家・大塚瞳チームが料理を担当した。

コンテナを繋げて構築したとは思えない、ラグジュアリーなデザインの客室。

広大な太平洋を一望する高台に誕生したグランピング施設『NAMITERRACE GEISEI』。

朝昼晩、四季折々、さまざまな表情が移ろう太平洋は目前に。

共同代表の和建設の中澤陽一氏(左)と石川共栄不動産の石川泉氏(右)の挨拶からパーティは幕を開けた。

 この日のための旅する料理家・大塚瞳チームによる一期一会のコース料理

『NAMITERRACE GEISEI』のオープニングパーティには、地元の名士はもちろん、国会議員やアーティスト、全国の食いしん坊など、さまざまな人々が駆けつけました。お目当ては、旅する料理家・大塚瞳さんによるこの日のためだけに用意された特別料理のフルコース。

今までに畑の中や断崖、サーキット、列車に、登り窯跡と、国内外問わず、その土地の料理を数日限りの特別な食空間でもてなしてきた彼女。食空間演出家でもある大塚さんがこの海をどう楽しませるか? 来場者の期待は自ずと高鳴ります。

ゲストがいきなり驚かされたのが、施設の中央に位置する芝生広場を大胆に使ったタープ型の屋外テーブルだったのです。さらに目を凝らすと彼女が用意したのは、海と並行するように伸びる一本になったビッグテーブルだったのです。これはさながら屋外のターブルドット。フランスなどでホテルや宿の主人が、客人を自らの料理でもてなすスタイルで、大きなテーブルを囲みつつ、皆が同じ料理と時間を共有するというもの。海を望むこの空間で、全員が同じテーブルを囲む、ひとつの大きな輪を作り出したのです。

生シラス、土佐の通称“どろめ”を使ったブルスケッタは、ダジャレで“ドロスケッタ”と名付けるほか、季節の野菜やキノコを使った5種類のアペタイザーからスタート。

30名のゲストがひとつのテーブルを囲むスタイルで料理は提供された。この日のために設計された炭台付きテーブル。銘々に置かれた白い球体は料理の盛られた3段重になっており特別に製作されたもの。

食材名だけが記されたメニューを配る大塚さん。このメニューは彼女独自のもの。たまに読み方の難しい漢字などが書かれていて、隣に座った知らない人同士でも質問しあったりして、話すきっかけづくりのひとつになればという。

屋外に作られたキッチン。外の厨房のほとんどがキャンプ用のギアでまかなってしまった。

 絶景までも料理の一部。大塚瞳が高知で表現したかったのは?

世界中を旅して、その地で出会った風土や歴史、そこに根付く食文化を掘り下げてメニューに落とし込む大塚瞳さん。
高知での屋外パーティーでも、やはりこの地で出会った食材とそれを生み出す人達がメニューを彩ってくれました。

「まずいつも思うことですが、この場所でごはんが食べられたら嬉しいかなという空間づくり。今回も海が見える素敵な立地を思う存分味わってほしくて屋外を選びました。料理は高知の皆様が普段食べている食材や郷土料理が中心。それを私流のいつもとは少し違う味付けでご用意しました。いっぱい食べて、絶景とともに楽しんでくださいね」

そう言って始まった酒宴は、昔ながらの製法で作られる堅豆腐を紹興酒漬けにしてチーズのように楽しませたり、四方竹と菊芋のピリ辛炒めだったり、チャンバラ貝を燻製にした前菜からスタート。確かに地元で根付いた食文化を取り入れながらも、食べたことのない味わいばかり。驚いたのは、見知らぬゲスト同士もお互い目で確かめ合いながら食べたことのない美味に驚き、自然と会話に花が咲いている光景でした。

さらに、食事中にドラム缶を使い藁でいぶしたカツオのたたきは麻辣の味付け、うなぎの白焼は水キムチやターサイ、サンチュで巻いて味わう韓国スタイル。締めのご飯は、米の専門家、古田さんとの出会いによって決定したというすきやき丼。こちらは炭火で焼いた土佐のあか牛をすき焼き丼のスタイルで提供してくれたのですが、あか牛のジューシーさもさることながら、会場から上がった声は「ごはんがおいしい!」「卵が濃厚!おかわりしたい」と脇を固める食材たち。
そうなのです。大塚さんはこの日のために、あか牛のすき焼きに合うお米を食べ比べ、ヒノヒカリ、にこまる、コシヒカリの3種類を、精米したて、1週間後、2週間後と選びに選んでいたというのです。食べ合わせが決まるまで、古田さんが惜しみなく協力してくれたと言います。さらには平飼いの土佐ジローの生卵が追い打ちを。すき焼きの甘辛タレとあか牛のエキスが、これでもかとご飯と卵を誘います。

気がつけば焼き芋のデザートまで怒涛の2時間30分。ゲストは大いに食べて語り合い、この絶景と美味を享受したのです。
2日間に亘り開催された『NAMITERRACE GEISEI』のオープニングパーティはこうして無事に幕を閉じました。

最後に感じたのは、絶景までも料理に取り入れる大塚瞳さんの凄みと、旅する料理家を魅了したこのグランピング施設の絶景。おいしい料理と絶景があれば、人は知らずに幸福に包まれているのです。

『NAMITERRACE GEISEI』の今後が益々楽しみに!

テーブルに置かれた陶器の丸い球体は三段重。一の段は、郷土料理と地元に根付く食材を中心の前菜に。

二の段はうなぎの白焼きを、サンチュやアマランサス、ターサイなど高知の野菜と水キムチ、自家製の山椒味噌のペーストで巻いて味わう。

空の状態で提供される三の重。ここに羽釜で炊いたにこまる、炭火で焼き上げたあか牛のヒレとサーロイン、土佐ジローの卵を乗せてすきやき丼に。

大塚さんが地元の福岡から連れてきたスタッフは3名のみ。残りのその他大勢は、地元の学生や主婦、建築業者などが即席でチームを結成。

NAMI TERRACE GEISEI
住所:高知県安芸郡芸西村西分乙59-2
電話:070-4433-2859
営業:2024年1月グランドオープン予定
休日:なし
URL:https://namiterrace-geisei.com
 

Photographs:KENTA YOSHIZAWA
Text:TAKETOSHI ONISHI
(supported by 合同会社芸西プロジェクト)