阿蘇くじゅう国立公園内の大自然と絶景のもと、特別な食体験を味わう2日限りの絶景レストラン「Skyward Party」開催レポート。[DRUM TAO✕ONESTORY/大分県久住町]

阿蘇くじゅう国立公園内の標高1036mに位置する「野外劇場TAOの丘」の舞台が、2日間限りのレストランに!

野外劇場の舞台がレストランに!?

和太鼓で世界中の人々を魅了する「DRUM TAO」。1993年に結成され、1995年には「阿蘇くじゅう国立公園」を有する大分県竹田市久住町に拠点を移し、国内外での活動を展開してきました。2000年には「阿蘇くじゅう国立公園」の中央に位置する4万平米の土地に、音楽制作や舞台制作を行なう複合施設「TAOの里」を建設。そして2020年9月、約5年間の準備期間を経て、阿蘇五岳の絶景をバックに「DRUM TAO」のライブが楽しめる野外劇場「TAOの丘」がオープンしました。

「阿蘇くじゅう国立公園」と「TAOの丘」。この場所を、この舞台を、世界中の人々にもっと知って欲しいという想いから、今回、TAO文化振興財団の森藤麻記さんがホストとなり、2023年11月7日と9日の2日間、「Skyward Party」が開催されました。今回は、その様子をレポートします。

竹田市出身の大久保シェフ(写真中央)にとって、ここは子どもの頃からこの周辺の山に登ったり、ピクニックをしたりしていた思い出の残る場所なのだそう。

2014年に開催された「DINING OUT TAKETA」を受け継ぐ

「絶景レストラン」のシェフを務めたのは、ここ竹田市出身で、現在は「TOMO Clover」(大分市)のオーナーシェフである大久保智尚氏。2014年にここ竹田市で開催された「DINING OUT TAKETA」にもサポートメンバーとして参加した経験の持ち主です。実は、このときの「DINING OUT TAKETA」では、「DRUM TAO」もパフォーマンスを行なっており、「DRUM TAO」とも縁のある方です。

「生まれ育った竹田という土地で、それも素晴らしい絶景が望める「TAOの丘」で開催されるこのような企画にお声掛けいただき、とても光栄でした。今回のチームには、「DINING OUT TAKETA」を経験したメンバーが3人いましたが、それ以外のメンバーは経験していないので、LINEグループを作って数ヶ月に渡り情報や想いを共有しながら準備を進めました」と、大久保さん。

大分は海や山に囲まれており、肉も野菜も魚も豊富に揃う豊かな土地。その食材や生産者を知り尽くした大久保シェフによって、どのようなコースが繰り広げられるか、自ずと期待が高まります。

受付を済ませたゲストたちはTAO HOUSE内のウエルカムスペースに案内され、ウエルカムドリンク&フードを楽しみました。

フィンガーフードは大分産のすっぽんのエキスと白きくらげで作った「コンソメコラーゲンゼリー」、椎茸の旨みが追いかけてくる「しいたけのパイ(産山村のしいたけ)、大久保シェフが営む「TOMO Clover」の定番となっている「グジェール」(竹田の豆・にんにく・トリュフオイル)の3品。ペアリングには八鹿酒造の日本酒スパーリング「虹」を合わせました。

晴天に恵まれ、11月にしては温かい絶好のシチュエーション。TAO HOUSEから、ランチ会場となる野外劇場へと向かいます。

阿蘇五岳を背景にした天空の舞台。

竹田出身のシェフによる地域の食材を味わうコースを堪能

「私たちにとって舞台は神聖な場所。舞台を公演以外の用途で使うことに、当初は心理的なハードルがあったことも事実です。けれど、この『阿蘇くじゅう国立公園』の絶景を皆さんに見て欲しいという想いで舞台にテーブルを置き、食事をしていただくことを決めたんです。調理環境も十分ではない中で、大久保シェフ率いるチームの皆さんがあれだけのクオリティのコースを提供してくださり、ゲストの皆さんも大変満足されていましたし、ここですることを決断してよかったと想いましたね」と、森藤さん。

それでは、そのコースを振り返ってみましょう。

1皿目のスープとして供されたのは「さつまいものスープ」。

「竹田は水がとてもキレイなところ。その名水を使ってつくる豆腐をどこかで使おうと思っていました。一方、フランスでの修行時代、フランスでのさつまいもの認知度がまだ低かったものの、さつまいものスープを作ったら評判が良くて。このスープをメインに、今回、ここに来る直売所で野菜を購入した季節の野菜を使ってさまざまな食感が楽しめる一皿に仕上げました」。

日頃からお付き合いのある阿蘇郡産山村の生産者に用意してもらったエディブルフラワーが華やかな印象を演出。

2皿目の前菜は、「大葉のシート 竹田名水のヤマメ」、「大根の竹田田楽 ゆずの香り 大分の伊勢海老」、「大分冠地どり ラタトゥイユペースト トマトファルシー」の3品。

「大分でヤマメはエノハとも呼ばれます。私自身、子どもの頃から釣って遊んでいましたし、身近な川魚です。竹田のキレイな湧き水で育っているので、生でも食べられるんですよ。数年前、フランス料理で大葉がブームになったことがあって、三ツ星のシェフたちがこぞって使っていたりもしたものです。

2014年に行なわれた「DINING OUT TAKETA」で、シェフを務めた「ESqUISSE(エスキス)」(東京・銀座)のリオネル・ベカ氏も使っていたこともあって、リスペクトを込めてヤマメを使いました。

田楽に使った柚子は父が採ってくれたもの。また、9月から11月にかけて、大分県佐伯市から宮崎県延岡市の街道沿いでは、「伊勢えび祭り」を開催しています。そこで、山や川の食材だけでなく、海の食材も使おうと考えたんです。

また、ラタトゥイユは南フランスの郷土料理。現地では菜津に食べられる料理ではありますが、大分の夏は暑すぎて、ラタトゥイユに使うトマトやナス、ズッキーニは秋に入ってから美味しくなってきます。大分においてラタトゥイユは秋の食べ物なんですよね」

阿蘇くじゅう国立公園は紅葉シーズン真っ只中。その風景を一皿に表現しました。

そして、メインディッシュは「久住高原大地の牛のトリロジー」、「芳醇なコンソメ出汁」、「名水の里 竹田の産山のお米 日本一のサフランライス」です。

トリロジーとは、元々フランス語の“三部作”という意味。産山村で育ったあか牛の頬肉、久住高原牛のカイノミとミスジという3つの部位を使用した一皿です。

「高原の気候は変わりやすく、ときに強風も吹くので、温かい料理をそのまま温かいままにお召し上がりいただくことは難しいと思っていました。また、竹田は日本一のサフランの生産地。今回、スタッフとして参加してくれたメンバーの一人は米農家なのですが、その土地の湧き水で炊いたお米をサフランライスにしました。そこに注ぐコンソメは、SDGsも意識してこの日使った食材の端っこをすべて使って出汁をとったものなんですよ」。

温かい料理を温かいままに提供できるよう、さまざまな工夫が施された一皿です。

阿蘇くじゅう国立公園の絶景を眺めながら、その土地の豊かな食材を存分に楽しめるこの日のコースにゲストの皆さんは大満足! 最後に大久保シェフが登場すると、自然にスタンディングオベーションが起こり、会場は温かな雰囲気に包まれました。

「スタンディングオベーションを受けたのは人生で2回目。1回目はフランス時代でしたから、日本でしていただいたのは初めてでした。生まれ育ったこの土地でこのようなことができたことはとても嬉しかったですし、天候にも恵まれ、正直ホッとしましたね。「DINING OUT TAKETA」のときに言われていたのが、「大人の文化祭」。あのときの「大人の文化祭」を再び!という気持ちで挑みました」。

この後、再び場所を移し、「絶景茶会」を開催。この茶会は竹田市を拠点に活動を展開する美術ユニット「オレクトロニカ」が企画を担当、大分市生まれの尾込真貴子さんが茶亭主を務め、竹田の湧水で淹れた3杯のお茶と茶菓子を提供しました。

「絶景茶会」の会場の背景はくじゅう連山が。この素晴らしい大自然の中で、静寂と自然の調和を楽しみました。

「絶景茶会」を楽しんでいる間に、それまでレストランになっていた舞台が整えられ、最後はDRUM TAOのライブが繰り広げられました。約800名を収容する野外劇場で、たった20名のゲストのためだけに演奏され、そのスペシャルな体験にゲストの皆さんは感動しっぱなし。終演後には、DRUM TAOのメンバーと会話をしたり、記念撮影をしたりといった時間が設けられ、余韻を楽しんでいました。

たった20名のゲストのために演奏をする特別な時間。

終演後、舞台上にてDRUM TAOアーティストの皆さんとのふれあいの時間。感動もひとしおです。

「DRUM TAOは、3〜12月初旬までこの野外劇場「TAOの丘」でライブを開催しています。屋外に劇場が常設しているのは世界的にも珍しいですし、多くの皆さんにお越しいただきたいですね。また、今回のようにライブだけではない特別な体験をしていただけるよう、今後もさまざまな企画をカタチにしながら、地域の皆さんと「阿蘇くじゅう国立公園」を盛り上げていきたいと思っています」と、ホストの森藤さん。

これからのさまざまな活動に、期待が高まります。

Photographs:SAKURA TAKEUCHI、YASUKA FUJISHIMA
Text:AYUKO TERAWAKI
協力:竹田市、産山村、環境省阿蘇くじゅう国立公園管理事務所