現代の文脈で蘇る、滅亡した王国のおもてなしの心。[DINING OUT RYUKYU-SHURI/沖縄県那覇市]

1879年に滅亡するまで、約450年にわたり存在した琉球王国。首里城はその政治、経済、文化の中心地。

DINING OUT RYUKYU-SHURI再建の途にある「首里城」を舞台にした晩餐。

不思議なほどに、静かな夜でした。

それは音がないのではなく、心に波が立つような不協和音のない時間。2月の沖縄の風は優しく、暗闇に浮かび上がる首里城・瑞泉門は厳かに佇む。厨房から漂うスパイスの香りさえも、まるで自然の一部のようにすんなりと受け入れられます。あらゆる要素が、腑に落ちる感覚。これこそが最上級のおもてなしである、と誰もが確信できるような素晴らしい晩餐でした。

2024年2月、沖縄、「首里城」。

正殿が焼け落ちた数年前の火災の記憶も新しいこの場所で、なぜいま「DINING OUT」が開かれたのか。そしてこの日の晩餐は何を伝え、何を残したのか。

「DINING OUT RYUKYU-SHURI」の意味と意義を、その模様とともにお伝えします。

首里城・瑞泉門の前に設えられた野外レストラン。那覇の2月の平均気温は約17.5℃。

DINING OUT RYUKYU-SHURI郷土史研究家の案内でたどる、琉球王国のおもてなしの意味。

2019年10月31日、炎に包まれて焼け落ちた「首里城」。

その衝撃的な映像が記憶に残っている人も多いことでしょう。

沖縄の人々の多くは、失ってはじめて首里城がいかに心の支えとなっていたのかに気付かされたといいます。それゆえに首里城はすぐさま、再建の準備が進められました。現在の首里城は2026年の再建に向けた工事の最中にあります。

今回の「DINING OUT」の舞台は、そんな首里城でした。

レセプション会場でウェルカムドリンクを傾けるゲストの前に琉球史研究家の上里隆史氏が登場し、静かにこの王宮の歴史を語り始めました。

首里城の一帯を巡りながら上里氏が語るのは、琉球王国の歴史、文化、信仰、そして精神性。点在する御嶽(うたき)と呼ばれる聖地を前に、琉球王国の信仰の一端を垣間見ます。城壁の内部を巡り、最後にゲストが到着したのは「歓会門」の前。ここはかつての琉球王国が他国からの特使を王宮に迎えた門。その木の扉が厳かに開かれます。夕暮れに浮かぶ城壁、閉園時間を過ぎ静まり返ったこの場所が、本日の晩餐の会場です。

「軍事力を持たぬ琉球王国にとって、他国の特使をもてなし、良い条件を引き出すことは必要なことでした。つまりおもてなしは琉球王国の文化そのものなんです」。

上里氏はそう語ります。そして琉球王国にとってとりわけ大切な存在であった中国の特使を迎えるとき、最上級のおもてなしとして地元の食材を中国料理の技法で調理する膳が供されたのだといいます。

いま、その伝統を再現するのに、彼ほどふさわしい人物が他にいるでしょうか。「和魂漢才」、すなわち「日本人ならではの心と技術で表現する中国料理」を哲学とする稀代の料理人、「茶禅華」川田智也氏その人です。

木曳門前のレセプション会場。ウェルカムドリンクとアペリティフでゲストを迎えた。

分解した皮蛋に海ぶどうを重ねて手渡すアペリティフ、ウェルカムドリンクは川田シェフが「沖縄でもっとも印象深い食材のひとつ」というカラキのお茶。

上里氏の案内で巡る「首里城」。ここは海の向こうにあるニライカナイから神々が訪れるといわれる聖域・御嶽が点在する京の内。

京の内の展望台。那覇の街を一望のもとに見渡すことができる。

正殿前に鎮座する首里森御嶽は、七大御嶽のひとつに数えられる聖域。この御嶽があるからこそ、この場所に首里城が建立されたという。

DINING OUT RYUKYU-SHURI琉球王国の伝統と響き合う「和魂漢才」の哲学。

日本で唯一、中国料理でのミシュラン三つ星獲得。

そんな栄誉に輝いてもなお、川田シェフの物静かな佇まいは変わりません。南麻布『茶禅華』は、中国料理と日本料理の修業を重ねた川田智也シェフが、日本人らしい精神性、美意識、世界観のなかで中国料理を組み立てる店。シェフが哲学とする「和魂漢才」とは、和の心で仕立てる中国料理を意味しています。つまり、地元の食材と歓迎の心で賓客を迎えた琉球王国のおもてなしの伝統と、この上ない親和性を持っているのです。

川田シェフは今回の場所とテーマを聞いたとき「ぜひともやらせて頂きたい」と即答したといいます。そして多忙の合間を縫って沖縄を訪れ、地元の食材、そして琉球王国の歴史と文化をインプットしていったのです。

そのインプットの集大成として完成したこの日の料理。コースの皿数は15品にも及びました。地元の伝統料理や郷土料理を丁寧に紐解き、「その料理になった必然性」を考察し、要素を抽出し、自身の技とともに中国料理に昇華する。そんな地道な作業を繰り返した末の、この皿数なのでしょう。

地元では刺し身で食べられることが多い夜光貝は、紹興酒漬けやスープ、肝のリゾットで部位による味や食感の違いを表現、汁にするのが一般的なヤギは揚げて、四川料理の伝統的なソースとともに、海ぶどうは台湾の高山茶を使った出汁でお茶漬けに。

どれも意表を突くようなプレゼンテーションでありながら、口に運ぶと納得させられる味わい。それはこの地の自然や、この地で大切にされてきた食材への敬意が貫かれているからでしょう。

「外からのお客様を出迎えるにあたり、やはり自然というものは一番大切な要素。それらの自然を尊重し、最低限のそっと背中を押すような料理を目指しました」。

それこそが、川田シェフが「琉球王国式のおもてなし」として出した答えでした。

それは、王国に伝わるものをそのままの姿で見せることではありません。現代の気候、環境、社会、文化。それらに合わせて再構築された、現在のおもてなし。もし現在も琉球王朝が続いていたら、このような晩餐で賓客をもてなしたのだろう。そんな確信めいた想像が湧き上がる料理です。

メニュー表には、沖縄独特の芭蕉(バナナ)を使った手漉き和紙・芭蕉紙を使用。海外からのゲストもいた今回の「DINING OUT」。メニューは英語併記、レセプションやディナー中にも通訳が帯同した。

乾杯のグラスはシャンパーニュの貴婦人ことコント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン。「クラシカルな哲学を守り続けるシャンパン」と「茶禅華」ソムリエの上野和寛氏。

「共通するミネラル感、そして貝の食感と泡のリズムが調和する」とソムリエ上野氏が太鼓判を押す夜光貝とコント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブランのペアリング。

沖縄のビールといえば、やはりオリオンビール。オリオンザ・プレミアムの澄んだ旨味は、このスパイスをまぶしたマッドクラブの春巻きのような機微に富んだ料理とも響き合う。

鮮烈な苦みを中華の白湯でまろやかにまとめあげた夜光貝の肝のリゾット。

ゲストの視線の先には、ライトアップされた城門。普段は見ることのできない貴重な眺めが食事に彩りを加えた。

使用する食材を見せるためにテーブルをまわるのも、食材や地元文化への敬意の表れ。

沖縄の食材を知り尽くした地元のミクソロジスト・中村智明氏のカクテルが料理に寄り添う。写真は唐辛子風味のハリセンボンの唐揚げに合わせた自家製ベルモットのカクテル。

客席横に設えられたオープンキッチンで腕を振るう川田シェフ。約20名の「茶禅華」チームのチームワークも見事。

ディナー中盤に披露された琉球舞踊と歌三線。これも琉球王国が賓客をもてなすときの伝統。

琉球王朝時代に中国から伝わった発酵食・豆腐よう。伝統的な酒器であるカラカラで味わうのは、首里城瑞泉門から命名された酒蔵・瑞泉酒造の泡盛「おもろ18年」。豊かに醸成した古酒の香りが深みある豆腐ようと好相性。

沖縄県産ミルキークイーンと海ぶどう、台湾茶をあわせたお茶漬け。

DINING OUT RYUKYU-SHURI時代に合わせて進化する伝統。

「伝承というものは元の姿のまま一言一句変えることなく伝えていくこと。対して伝統というものは時代に合わせ、その瞬間で最高のものを統一して次に伝えていくことだと考えています。自分が目指しているのは、この伝統の部分。常に変化している人々にアジャストし、楽しませ、喜ばせることです」。

終演後、川田シェフはそんな言葉で、今回の「DINING OUT」を振り返りました。滅んでしまった王国、焼失してしまった王宮。いま再び建て直している首里城だからこそ、未来へ向けて伝える言葉が力強い現実感を帯びています。

2026年に再建される「首里城」正殿は、以前とまったく同じ姿で復元されるわけではありません。新たに見つかった資料、新たに発見された塗料、新たに使用される木材、作業を手掛ける沖縄の若き職人たち。そうして少しずつ変わりながら、「首里城」は沖縄とともに在り続けるのです。

そして同時に沖縄の人々は、やんばるの森にイヌマキの木を植樹しました。この木の成長に、未来への願いを託して。その木が育つのは100年後か200年後か。きっといま生きている人々は、その生育を見届けることはできません。それでも植えるのです。これから生まれてくる子どもたちに、沖縄の歴史を、文化を、想いを伝えるために。

正殿再建の様子は見学が可能。今しか見ることができない貴重な場面でもある。

キッチンとサービスは、東京からやってきた総勢約20名の「茶禅華」チーム。その仲間たちへと伝えたかったことも、言葉にせずとも伝わった。

終演後の疲労感と達成感のなかで想いを語る川田シェフ。穏やかな言葉の中に、揺るがぬ哲学が潜む。

主催:沖縄県文化観光スポーツ部 観光振興課
企画・プロデュース:ONESTORY
協力:沖縄美ら島財団
販売:ハレクラニ沖縄
協賛:オリオンビール、CHAMPAGNE TAITTINGER、瑞泉酒造、T GALLERIA、ホシザキ沖縄  *五十音順

Photographs:RYO ITO
Text:NATSUKI SHIGIHARA

徳島「新グルメ」キャンペーンの開催について


徳島県では、“新たな人の流れ”を生み出すことを目指して、徳島県で生まれ育ったおいしい食材を使った「新グルメ」キャンペーンを開催いたします。
徳島県内の協力飲食店にて「新グルメ」メニュー【とくしま串刺しグルメ】【YUSANBAKOグルメ】【なると金時スイーツ】が期間限定で登場します!
対象メニューを食べてキャンペーンに参加いただくと、抽選で県産食材の詰め合わせをプレゼント♪
ぜひ「新グルメ」への皆様のご意見をお聞かせください。

徳島「新グルメ」キャンペーン参加方法

(1)対象メニューを食べてアンケートに回答(チラシQRコードより参照
(2)対象メニューの写真をハッシュタグをつけてInstagramにポスト
※ハッシュタグは「#徳島新グルメ」「#グルメ名 ※とくしま串刺しグルメ/YUSANBAKOグルメ/
なると金時スイーツ」

上記の(1)(2)いずれかを実施いただいた方の中から、抽選で5名様に、県産食材の詰め合わせ
(阿波牛・阿波尾鶏・さくらももいちご1万円相当)をプレゼントします。

キャンペーン期間

令和6年3月5日(火)から令和6年3月19日(火)まで

新グルメ候補

とくしま串刺しグルメ

県産の阿波尾鶏や香酸かんきつ、野菜など徳島の「美味しい」を串刺しにしたグルメです。
【メニュー紹介(一部店舗)】

YUSANBAKOグルメ

県産食材をふんだんに使用したグルメを徳島の伝統文化「遊山箱」で提供します。
【メニュー紹介(一部店舗)】

なると金時スイーツ

県産の美味しい「なると金時」を使用したスイーツグルメです。
【メニュー紹介(一部店舗)】

徳島「新グルメ」キャンペーンHP

協力飲食店や提供メニューの詳細は、こちらからチェックしてください!
https://tokushima-new-gourmet-campaign2024.com/

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徳島県農林水産部 もうかるブランド推進課 ブランド企画担当
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