4人の知性が重なり合う、新たな茶の湯の世界。

今回行われる「栗林大茶会」を創造する主要メンバー4人。左上より時計回りに、茶道ディレクター・武井宗道氏、「ファロ」シェフパティシエ・加藤峰子氏、バーテンダー・南雲主于三氏、建築家・永山祐子氏。

栗林大茶会一歩一景。特別名勝「栗林公園」に創造される大茶会。

高松松平家が五代百年をかけて作り上げた世界があります。それは、香川県高松市にある特別名勝「栗林公園」です。75万平方メートルの広さを有し、1世紀にもわたる開発を経て、1745年に静養地及び散策地として完成されました。

日本の自然感と美意識がそこかしこに潜む名勝は、国内では知る人ぞ知る地。むしろ、国外の方が注目されているかもしれません。

この庭園の存在は、日本のさまざまな領域を最終的に一つの国に統一した有名な将軍、徳川家康の孫である松平頼重の保護によるところが大きいでしょう。松平は茶道を含む文化と芸術の愛好家であり、パトロンでもあったとも言われています。

今回は、そんな背景に想いを馳せ、この土地ならではの茶会を現代的に解釈し、「栗林大茶会」を開催します。

では、何が現代的なのか? 何が大茶会なのか? それをもう少し紐解きたいと思います。

まず、現代的という点では、参画するメンバーにあります。

茶道ディレクターは、武井宗道氏。武家茶道の茶人であり、日本を訪れた各国の国家レベルの賓客をもてなした茶会の主催をするほか、日本、東南アジア、ヨーロッパの観光地での来賓茶会の司会を務めてきた人物です。武井氏監修のもと、このイベントでは、格式ある伝統的な茶道を表現した「真」、伝統性と現代性がミクストした「行」、そして茶道の哲学を現代風に再解釈した「草」の3つの空間に、3つの異なる茶道のスタイルが提供展開されます。この空間デザインにおいては、数々の賞を受賞した建築家であり、武蔵野美術大学の客員教授でもある永山祐子氏監修のもと、三井嶺氏、VUILD、KASAの3名の若手建築家が設計します。

和菓子の監修は、「ファロ」のシェフパティシエ・加藤峰子氏が務めます。2024年アジアの最優秀パティシエ賞を受賞した菓子職人であり、独創性に富んだ才能に目を見張るものがあります。

また、今回の茶会は、茶だけにあらず。「FOLKLORE」のほか、都内やシンガポールにバーを展開するバーテンダー・南雲主于三氏が、特別名勝「栗林公園」の様々な景色を表現したテーマ別のカクテルのラインナップを考案し、茶人・武井氏の振る舞いのもと、お楽しみいただけます。

過去には、加藤氏はイタリア、南雲氏はイギリスでの活動経験を持つふたり。それぞれの感性が武井氏を中心にピボットし、新たな茶会の姿を描きます。

伝統的な体験はもちろん、ファッショナブルで革新的なものからポップで前衛的ものまで、大胆に再解釈した茶道を満喫いただけるでしょう。

特別名勝「栗林公園」のような魅惑的な会場で、これらのユニークな先見性と逸品が一堂に会すことは、これまでに類を見ない壮大な試み。まさに、大茶会。

「一歩一景」とは、この場所を称する言葉です。

文字通り「一歩ごとに眺望あり」という意ですが、「栗林大茶会」では、それに加え、一分、一秒ごとに、刺激的な体験、味わいを堪能できるに違いありません。目で、舌で、耳で、鼻で。心身に訴えかけるアヴァンギャルドな感性に触れることによって、参加者は新たな茶の湯の世界の証人となるでしょう。

一歩一景と称される園内の景色と和菓子のマリアージュを味わえる、現代的な茶会を演出。

芙蓉峰(ふようほう)」から北湖を望むと紅の橋である「梅林橋(ばいりんきょう)」の姿が。特別名勝「栗林公園」の絶景のひとつでもある。

香川県高松市にある特別名勝の日本庭園「栗林公園」は、17世紀前半に築庭が始まったとされ、長期間の庭作りと様々な変革を経て現在の形になったと言われる。

歴代の藩主が愛したと言われている茶屋「掬月亭」は、四季折々の表情を見せ、園内の風情も特に感じられる。

会場:特別名勝「栗林公園」
住所:香川県高松市栗林町1-20-16
期間:2024年10月15日(火)〜10月22日(火)
時間:9:00〜/13:30〜
料金:33,000円(和菓子・飲料×5セット・呈茶体験)
主催:ONESTORY
共催:香川県
後援:公益社団法人 香川県観光協会

「栗林大茶会」の詳細やご予約は下記をご覧ください。

力強く、澄んだ味わい。滋賀県産食材の魅力を伝える豪華ブッフェイベント、夏の陣。[SHIGA FINEFOOD DINING/東京都港区]

滋賀県産食材が主役のブッフェ、好評に応え再び開催。

食材の宝庫・滋賀県。

肥沃な土壌、豊かな自然、真摯で妥協なき生産者たち、そして琵琶湖の膨大な水資源。さまざまな要因に支えられた滋賀県産食材の質は高く、近年はプロの料理人たちも滋賀県の食材を積極的に取り入れています。

そんな滋賀県の食材の魅力をさらに知ってもらうため、『Dynamic Kitchen & Bar 響 品川店』を舞台にした限定ブッフェイベント「響×滋賀県 in SHINAGAWA」が開催されたのは、昨冬のこと。会場には超満員のゲストが詰めかけ、多彩な食材を使用したブッフェに舌鼓を打ちました。

前回の様子はこちら

そんなグルメイベントが、再び帰ってきました。2024年夏、第二回「響×滋賀県 in SHINAGAWA」が開催されたのです。

限定だったイベントが再度開催された理由は、一度では滋賀県の食材を伝えきれなかったから。いくらバラエティに富んだブッフェイベントであっても、季節や地域によってまだまだ眠る滋賀県の魅力を一度で伝えきることは困難。

そこで今回は「滋賀県の食材の魅力をブッフェで伝える」というテーマはそのままに、前回にはなかった食材や料理が多数登場しました。

今回も満員御礼となったそんなイベントの詳細をお伝えします。

大迫力の尾頭付きの刺し身盛り合わせ。艷やかなオレンジ色の刺し身が、主役のビワマス。

振る舞い酒に選ばれた、滋賀県の銘酒・萩乃露 プラチナラベル 純米大吟醸 原酒。

永源寺こんにゃくは、味噌田楽で。きめ細かく弾力のある食感と臭みのないおいしさに驚きが広がった。

多彩な料理で味わい尽くす滋賀の夏

さて、まずは気になる献立からご紹介しましょう。

ブッフェ台の中央で目を引くのは、旬を迎えたビワマスを中心とした刺し身盛り合わせ。ビワマスはとろける味わいと程よい歯応えが特徴の琵琶湖の固有魚。そのおいしさは地元で知られていましたが、近年、流通や保存技術の発達により他県でも味わえるようになってきました。

大鍋の中で湯気を上げているのは、滋賀県東近江市永源寺地域の特産品・こんにゃく。きめ細かく、プリッとした弾力があるこんにゃくですが、今回はなんと蒟蒻芋の生産から一貫して行うこだわりの生産者「もみじ農園 こんにゃく工房」の逸品が届きました。

シェフが切りたてをサーブしているのは、きめ細かい赤身と黒毛和牛の旨味を併せ持った「げんさん牛」のローストビーフ。近江牛を扱う老舗・元三フードが自信をもって送る、ローストビーフにぴったりの肉質です。

旬を迎えた琵琶湖の鮎のコンフィ、伊吹山麓の伏流水で育ったきんたろうしいたけのフリット、下田なすと海老の麻婆、旬野菜のサラダ。夏においしさの盛りを迎えるさまざまな食材が、彩り豊かな料理になって並びます。

さらに長浜地方の伝統食である焼き鯖そうめんや、えび豆、湖魚佃煮といった郷土料理も登場。滋賀の食材とともに、その食文化の豊かさも伝えるラインナップとなりました。

琵琶湖の夏の風物詩である鮎を、頭まで食べられるコンフィに。写真奥はげんさん牛のローストビーフ。

田楽味噌、柚子味噌を合わせた永源寺こんにゃくと、生ハムと「みなくちファーム」の野菜のサラダ。

焼き鯖とそうめんを炊き合わせてつくる焼き鯖そうめんは、滋賀県長浜地方の郷土料理。

会場を訪れた生産者も学びと発見の連続。

今回の料理の主役のひとつは、石釜で炊いたごはん。昨秋にデビューした滋賀県近江米の新品種「きらみずき」です。

艷やかで大粒でふっくらとした「きらみずき」は滋賀県が13年もの歳月をかけて開発した品種で、すっきりみずみずしい甘さがあり、噛むほどに豊かな甘味が広がるのが特徴。佃煮や漬物とともに味わうだけで、これ以上ないほど贅沢なごちそうです。

滋賀県からやってきたスタッフの熱意あるPRに、会場を埋めたゲストたちもしばし手を止めて聞き入っていました。

このように生産者と消費者を直接つなぐこともまた、今回のようなイベントの大きな使命。今回の会場には生産者も駆けつけ、ゲストと熱心に対話をしていました。

銀行を早期退職して蒟蒻芋の生産からはじめたという「もみじ農園 こんにゃく工房」の端修吾氏、信子氏の夫妻。挨拶では夫婦漫才のような掛け合いで会場をわかせながらも、その真摯な視線は料理とゲストに向かいます。

「今日のシェフは滋賀にまで来てくれて、こんにゃくづくりも体験してくれた。そういう思いが料理にこもっているんですね。勉強になることばかりでした」と、今日の日の収穫を語りました。

きんたろうしいたけの生産者である川村光世氏も、法被を着込んで会場を回りました。

「プロの手にかかると、知っている食材がこんな料理、盛り付けになるのかと驚きました。手塩にかけて育てた食材は、自分の子供みたいなもの。これほど素晴らしい料理にしてもらい感激です」

とこちらも大きな発見があった様子でした。

一升瓶を持って振る舞い酒で会場を回ったのは銘酒「萩乃露」で知られる福井弥平商店の蔵人・水野孝之氏。陽気な人柄でゲストとも気さくに話す水野氏ですが、やはりその内は真剣。

「萩乃露は県内流通が主体でしたが、現在は県外へも徐々に広がっています。こういった滋賀の食材と合わせるイベントでは、食事と酒のテロワールがうまく伝わってくれると思います」と今回の手応えを語りました。

大粒でさっぱりとした甘みがある「きらみずき」。食味テストではコシヒカリと同等の評価を受けている。

きんたろうしいたけの生産者・川村氏。シェフ謹製のしいたけフリットに「大事に育てた娘がシンデレラになりました」と感激。

「もみじ農園 こんにゃく工房」の端夫妻。こんにゃくづくりの苦労話も、笑いを交えて明るく紹介した。

蔵元のこだわりを話しながら各テーブルで酒を振る舞った水野氏。

生産者と消費者をつなぐ飲食店の大切な役割。

こうして大盛況のうちに幕を下ろした「響×滋賀県 in SHINAGAWA」。満足げな笑顔を浮かべて会場を後にしたゲストはもちろん、料理人にも大きな収穫をもたらしました。

「滋賀の食材は味が強い。それはただ主張があるのではなく、うまく料理に乗ってくるような強さです」

そう話すのはシェフ・三島真人氏。事前に滋賀県を訪れ、こんにゃくづくりや畑の見学などで食材と向き合いました。

「強さのある食材に対して、どうバランスを取って料理にするか。私にとっても大切な学びになりました」と、今回の収穫を語ります。

ホールを取り仕切った店長・高野基之氏も今回の成功の立役者のひとり。シェフとともに滋賀県を訪れ、生産者の生の声を聞いたことが、今回に活かせたといいます。

「滋賀県の生産者は皆、人柄があたたかい。そんな方々から生産の苦労話などを伺っていたため、お客様への説明も熱がこもりました」と振り返ります。生産者と消費者をつなぐ飲食店の役割を、より強く実感したことで、『Dynamic Kitchen & Bar 響』は、さらに食材の力をゲストに伝える名店になっていくことでしょう。

さて、このように滋賀県の食材の魅力を存分に伝えたイベント。この記事を読んでいる皆様も、ぜひご自身で体感したく思われることでしょう。もちろん、可能です。首都圏各地にて、滋賀県の食材を使用したレストランは続々増加中。さらに今後も続々とイベントも開催される予定です。気になる方はぜひ「SHIGA FINEFOOD DINING(リンク:https://shigafinefooddining.com/)をチェックしてみてください。

現地訪問が食材理解の深化に繋がったという三島シェフ。ゲストの質問にも淀みなく対応した。

店長の高野氏は、水野氏とともに振る舞い酒も担当。生産者の思いを代弁した。

会場内の特設コーナーでは、滋賀県の特産品の販売も行われた。

https://shigafinefooddining.com/

住所:東京都港区高輪4-10-18 京急第1ビル1F
電話:050-3199-1675
URL:https://www.dynacjapan.com/brands/hibiki/shops/shinagawa/



Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SHIGIHARA