地域の想いが込もった木造校舎で学ぶ。「塩尻市立楢川小中学校」。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

1991年に作られた『塩尻市立楢川小中学校』の校舎。2022年度に小中学校に移行するにあたり改築されたばかり。

DINING OUT KISO-NARAI「DINING OUT」の骨格的存在。レセプションの舞台となった、義務教育学校。

2022年7月末に長野県奈良井宿で開催された『DINING OUT KISO-NARAI』。そこで最初にゲストを迎えるレセプションの場に選ばれたのは、『塩尻市立楢川小中学校』(以下、楢川小中学校)でした。

『DINING OUT』のレセプションに学校施設が使われるのは異例のこと。それでもこの学校こそ木曽の文化や歴史をゲストに伝え、体験してもらうための最適な場所として選ばれたのです。では『楢川小中学校』とは、いったいどのような学校なのでしょうか?

平成3年に木造校舎を新築。地元のひのきをふんだんに使用した、木の香り漂う空間は、音を吸収したり、湿度を調整する働きもある。

DINING OUT KISO-NARAI希少な木曽ヒノキをふんだんに使う木造校舎。

『木曽楢川小学校』と『楢川中学校』が統合され、小、中一貫教育の義務教育学校『楢川小中学校』となったのは今年度から。現在は1年生から9年生まで、約100名の児童生徒がここで学んでいます。

校舎は旧『木曽楢川小学校』の建物を増改築。約30年前に建築された、木曽ヒノキをふんだんに使った木造校舎です。これが、この地を伝える最初のポイント。土壌が固く、地中に深く根を張ることができない木曽地方のヒノキは成長が遅く、それゆえに年輪が濃密になり非常に硬い木材。寺社仏閣の建立や文化財の補修に使われるという希少な木材でもあります。

そんな木曽ヒノキをふんだんに使っているという事実は、この地が山や森といかに密接につながっているかを伝えます。

校内のいたるところにたっぷりと木材が使われる温かみのある雰囲気。

校舎1階にある教室。左手の窓の外は校庭。

DINING OUT KISO-NARAI偉大な芸術家の言葉とともに給食をいただく時間。

校舎に入り、木の温かみがある廊下を歩くと、突き当りはランチルームと呼ぶ給食会場。児童生徒たちは全員揃ってこのランチルームで昼食をとり、学年の垣根を越えた交流を図ります。そんなランチルームの入り口上には、大きな書が飾られています。

「山中に学ぶ」。

これは、この地に縁の深い芸術家・池田満寿夫氏の揮毫。山に触れ、山の恵みに感謝し、山とともに生きる。そんなこの地らしい言葉とともに、児童生徒たちは毎日食事を食べているのです。この言葉はそのまま、『DINING OUT KISO-NARAI』のテーマともなりました。

廊下を歩く児童生徒たち。生徒たちは奈良井宿のガイドなどもしながら地域との繋がりを学ぶ。

ランチルームに掲げられた池田満寿夫氏の揮毫による書。1992年にこの地を訪れた池田氏によって書かれたもの。

DINING OUT KISO-NARAI日々使う給食食器も、伝統工芸品・木曽漆器。

昼食の時間。ランチルームに併設された厨房で作る給食が食器に盛られます。その食器は、なんと木曽漆器。

この地に伝わる美しい漆の器で、児童生徒たちは毎日の食事をいただいているのです。この素晴らしい取り組みは、伝統文化や食事を大切にするための食育の一貫。地元漆器生産者の協力のもとでこの食器が使われているのです。

漆器は大切に扱えば何百年も使用できますが、乱暴に扱えば傷がつくことも割れることもあります。漆器のこと、歴史のこと、地元文化への誇り、物を大切にする心。生徒たちは食事を通して、さまざまなことを学ぶことができるのです。

そして、この精神性もまた、この学校をレセプションの場とすることでゲストに伝えたいことのひとつでした。

「地域の方の想いが詰まった学校です。だから地域を大切にしながら、この地だからできる教育をしていきたい」。山本秀樹校長は、そう話します。

児童生徒たちは3年生から漆の技法を学び、6年生になるとその集大成として、作った漆器を地元の漆器まつりで販売。コロナ禍でまつりが中止になっていた時期には、「ならにこ」というこども会社を立ち上げました。

あのランチルームに掲げられた言葉「山中に学ぶ」は、コロナの逆境にあってもこうして力強く、ポジティブに貫かれているのです。

そんな楢川小中学校をレセプションの舞台にした『DIINNG OUT KISO-NARAI』。奈良井宿の文化や歴史、地域への思いは、この校舎を通して、ゲストたちへと伝えられました。

漆器を日常的に使うことで、地域の伝統文化や物を大切にする心を育む。使うほどに艶が増すのは木曽漆器の特徴。

『楢川小中学校』の山本秀樹校長。『DINING OUT KISO-NARAI』ではゲストを前に学校説明も行った。

目標は「楢川から未来にはばたく」。9年間の一貫教育はさまざまな効果があり注目が集まっている。

https://www.fureai-cloud.jp/narakawa-ej

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

食の祭典『ドリームダスク ファイナル』が、心に残してくれたもの。[DREAM DUSK FINAL/福岡県福岡市]

コースの口開けは、参加者全員でドン・ペリニヨンで乾杯。歓声が響く中、次々にスマホでパシャリ。久々の大型食イベントの再開を皆が心待ちにしていた瞬間だった。

ドリームダスク ファイナル各界のトップシェフが一堂に集う、食イベントが復活!

「もし、自分が大好きなお店の料理をハシゴして食べられたら最高だな。実際には1日では絶対にありえない名店のハシゴ。東京だけだとしてもハシゴなんてできるはずもないのに、今回でいえば大阪や金沢のシェフもいればミラノのシェフもいる。そんな僕の夢を形にしたところからドリームダスクは始まった……」
イベントの総合プロデューサーを務めた本田直之氏は、そう話しながらイベントの成り立ちを思い出します。2016年の第一回を皮切りに、毎回、日本各地、時には世界に散らばる日本人シェフまで、予約困難店のシェフがその日限りのチームを組んでひとつの晩餐を作り上げる。和食・フレンチ・イタリアン・中華・鮨など、コースを彩るシェフの人選も功名で「この人が前菜担当? この人がデザートなの?」と驚きの連続。通常はイベントなどへの参加を拒んでいるシェフや海外からの参戦など、『ドリームダスク』でしかなし得ない、シェフの編成も多くの耳目を集めてきたのです。実は2020年の第5回をもってファイナルとすることを決断したときには、次なる開催を惜しむ声が鳴り止まず、いつしか、最後の『ドリームダスク』のチケットは、食のプラチナチケットと呼ばれるほどに。

それが、新型コロナの蔓延……

『ドリームダスク ファイナル』として大々的に告知された2020年の最終回は、2度の延期を余儀なくされてしまうのです。
「大勢のお客様を一度にもてなす食の祭典なので、苦渋の決断であってもストップするしかなかった。お客様は本当に長い期間お待たせしてしまったし、シェフやスタッフには何度も何度もスケジュールの都合をつけてもらい、本当に申し訳なかった。2年以上の時を経て、ようやくなんです」と本田氏。この“ようやく”という言葉がイベントをレポートする間、取材班の耳にはずっと印象的に残ったのです。

ようやくの乾杯
ようやくの集い
ようやくの共演
ようやくの再会

今回、ONESTORYでは、7月に行われた『ドリームダスク ファイナル』の伝説の1日をレポート。コロナの影響で2度の延期を経てようやく実現した、食イベントが残した軌跡と奇跡を伝えていきます。

共演を果たしたのは写真右二人目より『すし処めくみ』山口尚享氏、『宮坂』宮坂展央氏、『ShinoiS』篠原裕幸氏、『LaCime』高田裕介氏、『Ristrante TOKUYOSHI』徳吉洋二氏のシェフ5名、ドリンクディレクター『AnDi』大越基裕氏

開演前、150名以上のフルコースディナーのテーブルセットも抜かりなし。今か今かと静かに開演の時を待つ。

ドリームダスク ファイナルあえての、あり得ない料理の連続が、唯一無二のコースに。

5名の錚々たる顔ぶれのシェフがひとり2品ないしは3品を作り、ひとつのコース仕立てで楽しませてくれる『ドリームダスク』。これだけでもあり得ない夢のコースであることは重々理解できるのですが、このイベントの凄みは実は数にあるのです。今回、定員は150名。最終日には参加希望の声が殺到し、会場のキャパシティの許せる限り、なんと180名が一度に食事をともにしたというのです。
それが熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに。できたてが次々とサービスマンによりテーブルにサーヴされ、気がつけばペアリングのドリンクも寄り添うようにセット。この量を一度に手掛ける料理人の技術と熱意はもちろんのこと、会場となった『ザ・ルイガンズ.リゾート & スパ』を運営するプランドゥシーのサービスマンのスピードと手際の良さ、シェフをサポートするキッチンスタッフのチームワークが三位一体となり高次元のクオリティを実現。ゲストはストレスなく、料理と美酒に酔いしれ、至福のときを楽しめていたのです。
開始前「厨房はすごいことになっていますよ」とミラノから参戦の徳吉シェフが話していたのですが、“徳吉シェフはゲストをお出迎えするほどに、随分余裕があるのかな?”と思いきや、茹でたてのパスタを絶妙のタイミングで提供したいがために、あえてコースの途中まではぐっと耐えに耐え、ここぞのタイミングでパスタを茹で、茹で上がった180名分のパスタをフライパンで返し次々とソースを絡めていたのです。10人前のパスタでもベストなタイミングで出すのは至難。それを180人前、シェフがタイミングを図って動き出すと聞き、このイベントの凄まじさを実感。パスタが運ばれたと思いきや総合ディレクター本田氏を含めたスタッフ自らがひと皿ずつトリュフを削るパフォーマンスもゲストに待ち時間を感じさせない絶妙のパフォーマンスだったのかもしれません。
石川県野々市市に店を構える『すし処めくみ』の山口氏はコース中盤、ウニちらしを披露したのですが、なんと180人前の酢飯とウニを舞台上で混ぜ合わせてくれたのです。しかも驚くべきはウニの量と質。酢飯と同等ないしはそれ以上のウニが投入され、混ぜれば混ぜるほど、光り輝くオレンジ色のウニご飯になっていくのです。聞けば、ウニの形を崩したくないと山口氏は石川県から自ら車を11時間も走らせ福岡に会場入り。最高の状態でウニを提供したといいます。
さらに「皆さんに石川県のウニの美しさと質の高さを感じてもらいたくて、車で運びました。でも、結局は見せた後は混ぜちゃうんですけどね」と会場を驚きと笑顔に包みます。
『ShinoiS』篠原氏は前菜、スープ、ごはんまで、最多の皿数3品の広東料理を作り上げ、『宮坂』の宮坂氏は胡麻豆腐に椀物で日本の夏の粋を表現。『LaCime』高田氏はコースのトップバッターとして店の名物・ブータンドックと、魚のメイン・鯵のエスカペシュを提供しフランス料理ならではの深みある味わいを披露してくれました。
それぞれのシェフが思い思いの仕事で個性ある料理を披露していくのですが、個性ある点と点が、一本の線になっていくのも『ドリームダスク』。そこにはドリンクディレクター・大越氏のコースを通した、ペアリングのセレクトが脇を固めているのでしょう。
「まったく異なる料理が順々に提供されるので、コースを通じて気をつけたのは、個性あるベストなペアリングではなく、コース全体を壊さないセレクト。そうしないと、ひとつのコースとしての体裁が壊れてしまいますから」と大越氏。
ひと品ひと品の個性を大切にしながらも、コース全体を影でコントロールする。さらにお酒で物語を紡いでいく。そんなドリンクディレクターの存在もこの5つの個性をひとつのディナーに成立させる影の立役者だったのです。

山口氏が披露した「ウニちらし」。米の量より多い、石川県産のウニのきれいな旨味に酔いしれた。

150人前のウニを一気に酢飯と混ぜる。壇上で披露した山口氏のパフォーマンスに、カメラを持つ人だかりが幾重にも行列を作る。

コース中盤から終盤、一気にパスタを作り出す徳吉シェフ。次から次にフライパンを返し、できたてを食膳へと運んでいく。

総合プロデューサーの本田氏もトリュフ削りに参加。チーム一丸となって晩餐を盛り上げるのが印象的であった。

見事なまでにアルデンテのパスタ。ハマグリと牛脂を使ったソースにトリュフがたっぷりと削られた。

篠原氏が提供した一品。「三味鮮露筍 ジェットファームのアスパラガス」。3つの味わいを食べ比べ。

「冬瓜燉魚翅」、フカヒレ冬瓜上湯蒸しスープを仕込む篠原シェフ。

猛暑の福岡に涼を運んだのが宮坂氏の「胡麻豆腐 車海 枝豆 出汁ジュレ」。一口味わうと夏の恵みと、ひんやりとした食感が時を忘れさせてくれる。

冷製の賀茂なすと鱧のお椀を仕込む宮坂氏。150人以上の鱧切りも一気に行うなど想像を絶する厨房での仕事がコースを支える。

揚げ焼きした鯵を酸味の効いたソースで味わう「鯵のエスカペシュ」。

チームで協力しながら美味を生み出す「LaCime」高田氏。

ドリームダスク ファイナルシェフ、スタッフ、ゲストが一丸となって楽しんだ食の祭典の意義とは?

それぞれがそれぞれの立場から、ベストの力を尽くしイベントを盛り上げる。そんな使い古された言葉を、すべてのスタッフが肝に銘じて動く。それがひとつの形となったとき、180名のゲストも含め、歓喜の輪は生み出されました。これは『ドリームダスク』を称賛したのではなく、体験談。コースを終了した後に、シェフたちは舞台に上がり感謝の言葉、喜び、難しさ、楽しさ、五人五色に色々と伝えてくれました。それらを楽しんだゲストより自然と心からの拍手が送られたのですが、鳴り止まない拍手は『ドリームダスク』が訪れたゲストの心に残したもの、そのものだったのではないでしょうか。
皆で分かち合った感動、会話とコミュニケーションで生まれる笑顔、同じ時間を共有する喜び、久しぶりの時間……
そのすべての想いが会場を包み込んでいたのです。
本田氏がこぼした“ようやく”。
それは大好きな仲間でこんな時間を共有したかったという、切なる願いそのものだったのかもしれません。
ディナーとディナーの間となる2日目ランチには、海を目前にした『ザ・ルイガンズ.』の屋外スペースを使ってのスペシャルランチが行われ、一般にも開放。地元福岡の人気店が屋台を出し、気軽に名店の味を食べ歩くこともできました。多くの来場者が通常ではありえない名店ハシゴを一般でも体験できたのです。

イベント開催の2日を通して感じたのは、食は楽しく、楽しい時間は幸せを生む。コロナによって難しくなったイベントのありかたとありがたさ。

とにかく、楽しい時間がなければ、人は弱ってしまう。食は人を楽しませ、強くする。そんな分かりきったはずの喜びでした。

「今回でドリームダスクは一区切りですが、たぶんまた何かやりたくなる。ようやく、こんなに楽しい時間が生み出せたんだから。期待してていいよ」

本田氏の最後の言葉は、次への期待と喜びに。『ドリームダスク』が心に残してくたものは、きっとこのドキドキなのでしょう。
『ドリームダスク』を経験した人はきっと、この響きを聞いたらならば、自然とドキドキせずにはいられません。次に『ドリームダスク』という言葉を再び聞ける日を、我々は楽しみに待つことでしょう。

『餃子のラスベガス』『三原豆富店』『藁焼 みかん』『めしや コヤマパーキング』『二加屋長介』『清喜』『大重食堂』『スナックアポロ』など、ランチに行われたイベントでは福岡の名店が集合。

ユーモラスな表情が印象的な福岡土産・にわかや煎餅のお面をかぶる本田氏と大越氏。

『ドリームダスク ファイナル』を盛り上げたドリームチーム。

Text:TAKETOSHI ONISHI

 

DREAM DUSK Encoreの開催が決定!

もう一度だけ、最高の形を目指して……
ファイナルを終えた直後に発表されたのが、2回のリスケを余儀なくされたファイナルへの思い残し。
2023年6月10・11日の開催予定でドリームダスクが再び帰ってきます。

https://www.luigans.com/dreamdusk/

開催詳細および予約開始日時につきましては、決定次第ザ・ルイガンズ.公式HP、Instagramにてご案内させていただきます。

実も、種も、皮も。ひと瓶にひと房丸ごと入った食べるジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

『食べるぶどうジュース』は、シャインマスカットが丸ごとひと房入っているため、液はトロトロ。ジュースだが食べ物のような味わいと充実感を堪能できる。

WAKO ANNEX食べておいしい、身体に優しい、美容にうれしい、ぶどうジュース。

「種も皮も丸ごとは、『食べるぶどうジュース』だけ」。そう語るのは、製造元の山梨県南アルプス市の『ジット』です。

ジュースなのに、なぜ食べる? そう思う人もいるかもしれませんが、一度口にしたことがある人ならば、この表現に頷くはず。

原料は、シャインマスカット。採れたてのぶどうをすぐに自社加工し、実はもちろん、種も皮も丸ごと使用。それを可能にするのは、改良に改良を重ねた独自の破砕製法にあります。

丸ごと使用することによって、ぶどうそのものの味わいをダイレクトに満喫できることはもちろん、一般のぶどうジュースには入っていないビタミンEやオレイン酸、リノール酸が含まれているのが特徴。美肌やアンチエイジングにも効果が期待できます。

冷やして飲むだけでなく、凍らせてシャーベットにするも良し、ヨーグルトにかけたり、パンに塗るも良し。万能に美味しくいただけるため、様々なシーンにぜひ。

新鮮な味をそのまま表現するために、何度も試作を繰り返し完成した『食べるぶどうジュース』。水も砂糖も一切使わず、完全無添加。ひと瓶飲んでも77kcal。美容と健康にもこだわる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

食べ終わった瞬間、また来たくなる店。北の大地で人気を集めるうどん店。[名水うどん野々傘/北海道虻田郡]

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グリルチキンうどん。「とり天や唐揚げよりも、なるべくヘルシーに」との思いから生まれた人気メニュー。

名水うどん 野々傘シーズンオフでも行列ができる人気店。

雄大な大地に、見渡す限り広がる麦畑。
北海道はシェア60%以上で独走する日本一の小麦の生産地にも関わらず、蕎麦やラーメンのイメージに押され、うどんの印象は強くないかもしれません。そんな北海道・羊蹄山の麓に知る人ぞ知る人気うどん店があることをご存知でしょうか。名は「名水うどん 野々傘」。周辺のシーズンオフである夏の間でも行列ができる人気店です。

店内でまず目を引くのは、そのメニュー。
「ぶっかけうどん」などの定番に加え、「グリルチキンうどん」や「山わさび香る肉ぶっかけ」といった個性派メニューも並んでいます。そしてどのメニューにも添えられている丁寧な説明。きっと店主が気配りの行き届いた人物なのでしょう。

さらに店内を見渡してみると、民芸調の店内に古道具が配置されているのに気づきます。格子窓の向こうには蝦夷富士・羊蹄山を一望。どれだけ待っても苦にならないような、ゆったりとした穏やかさに満ちた空間です。

うどんはやや細めですががモチモチとしたコシがあり、小麦の風味が豊か。出汁のほのかな甘み、手のこんだ具材のバランスも絶妙で、たっぷりのボリュームもうれしいところ。決して市街地からのアクセスが良好な場所ではないにも関わらず、連日の盛況ぶりも納得の味です。

メニューを見るだけで内容が想像できるような親切な説明書きが添えられている。

室内は民芸調の風情ある空間。窓の外には羊蹄山の雄姿を一望。

人気のちく玉天ぶっかけ。玉子天の半熟の黄身をうどんに絡めて味わうのもおすすめ。

名水うどん 野々傘「お客さんの笑顔のため」。店主の人柄も店の魅力。

おいしさの秘密を、店主の野々田耕一郎氏に伺ってみました。
穏やかな笑顔とやさしい語り口が印象的な人物です。

「お客さんを喜ばせることだけが、ここをやっている目的。だからお客さんの笑顔が一番うれしい」

それだけで人柄が伝わるような、素敵な言葉です。

聞けば野々田氏は、岐阜生まれの大阪育ち。北海道の大学で酪農を学んだ後、大学事務員として務めていた。そして30代の後半で脱サラを思い立ちました。
「脱サラのセオリーといえばラーメン屋ですが、研究のために食べ歩いている間に、うどんも良いなと思い始めたんです」

それから独学で製麺を学び、地方から来た学生に試食してもらっては感想を聞いて腕を磨く日々。そしてついに、学生から「まあまあおいしい」の声。
しかし野々田氏の修業は、まだ終わりではありません。

39歳で退職し、今度は大阪にあるうどんの名店で本格的なうどん作りと経営を学ぶ。そして2005年、満を持して羊蹄山の麓に、この店を開いたのです。

店主の野々田氏。「職人気質ではない」と笑うが、ゲストを思い味を追求する真摯な姿は職人的。

山わさび香る肉とろたまぶっかけ。山わさび、醤油漬け卵黄、とろろ、肉の贅沢なハーモニー。

名水うどん 野々傘食べる人を気遣う小さな工夫がいろいろ。

「僕は職人気質ではないので、自分が打ちたいうどんよりも、お客さんが喜ぶうどんを作っていきたい」

そう話す通り、野々田氏のうどんには、食べる側のことを考えた気遣いが満ちています。

たとえばうどんは圧力鍋で茹でることで、独特のもっちりした食感を出しつつ、提供時間を短縮。待たせすぎないようにとの配慮が、良い形で味にも作用しています。肉うどんの肉は、最後に炙って香ばしさをプラス。グリルチキンを乗せるのは、「少しでもヘルシーなものを」との想いから。

食べ終わった瞬間に、また来たくなるようなうどん。
それはおいしさだけでなく、店主の人を幸せな気分にさせる優しさがメニューに反映されているからでしょう。
まだ見ぬ誰かのことを想像し、その幸せを願えること。それはひとつの才能であり、そしてものづくりの原点でもあります。

ちなみに店名の「野々傘」は大学事務員時代に学生たちから「野々さん」と呼ばれていたことに由来するとか。その親しみを込めた呼び方からも、当時から変わらぬ野々田氏の人柄が垣間見えます。

ゲストを待たせないため、という思いからスタートした圧力釜による湯で上げは、うれしいおいしさへの効果も。

細めだがしっかりとコシがあり食べごたえがある。具材や出汁との絡みも絶妙。

炙る、焼く、冷やすなど細かな作業のひとつひとつが丁寧。その積み重ねがおいしさにつながっている。

住所:北海道虻田郡京極町更進466-5 MAP
電話:0136-42-2381
https://www.facebook.com/nonodasan/

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ニセコの一棟貸しコテージ。夫婦の青春が詰まった、カタツムリの家。[Tree Shell Niseko/北海道虻田郡]

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蓄熱するモルタルと呼吸する丸太の効果で室内を快適に保つというコードウッドメイソンリー工法。

Tree Shell Niseko丸太とモルタルを積み上げた独特な工法。

整備されたゲレンデ周辺に高級ホテルが並び、外国人観光客向けの英語の看板が連なる−−まるで外国の避暑地のような、おしゃれな町・北海道ニセコ。
そんなリゾートの印象が強いニセコですが、大半は大自然に囲まれる閑静な場所。
それはいわば “何もない方のニセコ”。そんなエリアの一角に、一棟貸しのコテージ『Tree Shell Niseko』はあります。壁に無数の丸太の断面が見える不思議な建物。“Tree Shell(カタツムリ)”の名の通り、曲線が描く渦巻きが不思議な穏やかさを醸し出します。

宿泊施設としてのオープンは昨年とのことですがが、建物はもっと古いもの。それは傷んでいるのではなく、大切に使いこまれてむしろ魅力を増している印象があります。この建物に潜む物語を、オーナーに伺ってみました。

「丸太をモルタルとともに積み上げるコードウッドメイソンリーという工法です。木はこの地に生えていたカラマツを使っているんですよ」

そう教えてくれたのはオーナー・工藤三智子氏。

夫婦二人のセルフビルドだといい「たいへんだったけど、愉しかったな」と明るく笑いました。

ニセコのシンボル・羊蹄山を見渡す絶景もこのコテージの魅力のひとつ。

Tree Shell Niseko部屋の中心に据えられた重厚なヒーター。

「開拓ごっこがしたい」そんな動機のもと、本州出身の工藤氏がご主人とともにこの地に移ってきたのは、20年ほど前。胸まで伸びた草と木々があるだけの1300坪の土地に、小さな小屋を建てたのが始まりです。

「冬には10m以上の雪が降る地。週末だけ来て作業するのでは、なかなか進みません。それで退路を断つ意味でアパートを引き払い、ここに建てた小屋に住み始めたのです」

ログハウスビルダーだったご主人はさらに電気工事を学び、工藤氏は職業訓練校で左官を身に着けた。さあいよいよ建物の着工、かと思うとそうではありません。

「セルフビルドの本を読んでいて、とあるヒーターが気になって。それでアメリカにそのヒーターの勉強をしに行きました」

そういって工藤氏が指差したのは、建物の中心にある重厚なレンガのストーブ。メイソンリーヒーターという蓄熱型のストーブで、重量は3tもあるといいます。

「戻ってきて、まずこのヒーターを作りました。だから建物よりも先に、ヒーターができていたんです」

一度火を入れると本体に熱を蓄え、薪が燃え尽きたあとも、じんわりと穏やかな暖かさが続く。この穏やかな空間を象徴するようなヒーターです。

写真左が蓄熱式薪ストーブ、メイソンリーヒーター。レンガ造りで重量は3トンにも及ぶ。

オーナーの工藤氏。職業訓練校で左官を学び、セルフビルドに役立てた。

Tree Shell Niseko駆け抜けた青春が詰まった、思い出の建物。

そしてようやく建物の建築がスタート。デザインのイメージは、カタツムリ。

「幼稚園の頃かな。私が画用紙にカタツムリの絵を描いたら、母がそれをカバンにキレイに刺繍してくれたんです。きっとそれが心に残っていたんでしょうね」

5歳の頃に撒いた種が、20年の時を越えて実を結ぶ。若き夫婦は小さな小屋に住みながら、カタツムリの家を作りはじめました。モルタルとともに丸太を積む工法は二人がかりで一日作業をしても数十cmしか進まない、まるでカタツムリの歩み。草を払い、木を切り、家を建てる。それはまさに開拓と呼べるような日々だったのでしょう。

「本当に愉しかった」工藤氏は再びそう言いました。それは、毎日が風のように過ぎていく、夫婦ふたりの青春だったのかもしれません。

工藤氏の話の後で、改めて室内を見回してみます。
中心に堂々と佇むストーブ、その横には金属製のストーブがもうひとつ。上から見るとカタツムリの殻に見えるという建物は曲線が中心で、穏やかな開放感に満ちています。柱や梁やハンドメイドだという木製の家具は、丁寧に、大切に使いこまれて輝いています。

ふと窓の外をキタキツネが横切りました。それは特別なことではなく、このコテージの日常なのでしょう。

インテリアもセルフビルド。自然木の優しさを活かした穏やかな空間。

寝室は2箇所あり、4名まで宿泊可能。写真はシングルベッド2台を備えたロフト。

ウッドデッキには本格的なピザ窯も。キッチンには食器や調理器具も完備されている。

住所:北海道虻田郡ニセコ町ニセコ310-44 MAP
電話:090-9085-2766
https://treeshellniseko.com/

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アジア・パシフィック予選突破。いよいよ本選へ向けてエンジン全開。

左から浜田統之シェフ、コミ(当日のアシスタント)の候補生、石井友之シェフ、長谷川幸太郎シェフ。見事『アジア・パシフィック大会』を突破し、これから本大会へ向けて本格始動する。

ボキューズ・ドール 2023急遽のアジア大会開催。異例の審査方法。いかなる環境においても、国として戦い抜く。

『ボキューズ・ドール』のフランス本選に出場するためには、各エリアの大会を勝ちぬかなければならないことは、前回も記した通りですが、今年のアジア・パシフィック大会は、異例での開催となりました。

4月の初旬までは、コロナ禍のためアジア大会は中止。直近の大会の順位を踏襲するというものでした。つまり、前々回一位だった日本は、自動的に世界大会の本選に進める予定だったのです。

それが突如、4月の半ばに、アジア大会が行われる通知がありました。しかも、これまでは、開催国へ出向き、世界大会と同じように実技が行われ、出場国の審査シェフが評価を決めるという、本選同様のスタイルをとっていたのですが、今回は、コロナ禍の影響も大きく、作品となる料理写真とレシピ、さらに2分間のイメージ動画(上記)をフランス本国に送り、ジェローム・ボキューズ氏、レジス・マルコン氏などの重鎮審査員が採点を行うという方式に決まったのです。

つまり、調理の様子や味の評価ができないのです。見た目の美しさや斬新さ、いかに細かに仕事をしているかの印象、そして説得力のあるレシピが必要となります。動画は、各国の伝統や独自性を加味しつつ、ボキューズ・ドールをいかに世界に普及させるかを見せるためのプロモーションだそうです。締め切りは6月15日。つまり2か月弱でそれらをクリアしなければいけないということになったのです。

テーマ素材は「豆腐」。

アジア大会ならではともいえる食材であると同時に、ビーガンやマクロビなどのニーズの高まり、環境問題への影響などが配慮されてのことでしょう。同時に、動物性の食品(乳製品は除く)の使用も不可というのがルールです。生まれたときから豆腐を口にしてきた日本人にとって、そうした素材を正面切ってフランス料理に仕立てるのはある意味、難題とも言えます。

無事、期日前に、すべての素材を提出し終えましたが、本部から連絡がきたのは、1か月をすぎた、7月21日の夜。結果は見事突破。順位は発表されていませんが、入賞国は日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5か国。まずは、石井シェフに大きな拍手をおくりたいものです。

テーマ素材が決まり、過去のさまざまな資料を読み込みながら、アイディアを膨らませる石井シェフ。

彩な素材と豆腐を組み合わせながら、相性や完成度を予想して一皿の組み立てを考える石井シェフ。右はコーチの長谷川幸太郎シェフ。

ボキューズ・ドール 2023豆腐というテーマの難題と挑戦。たどり着いた豆腐は、ゼロから作ること。

さて、どのようにして、厳しいアジア・パシフィック予選をくぐり抜けたのか、その様子を振り返りましょう。

お題が豆腐と決まった時点で、石井シェフは、まず、県のアンテナショップを巡り、各地の豆腐を購入し、キッチンにさまざまな野菜を並べ、スタッフ全員で豆腐との組み合わせを試し、どんな野菜に相方として適性があるかを試していきました。結果、選ばれたのは茸類でした。鍋の具材を考えれば、豆腐との相性の良さは、自明かもしれません。

しかし、そこには難題が。市販の豆腐では、どうしても茸の旨味に負けてしまうのだそうです。そこで、自家製の豆腐を作ることを考えたのですが、市販の豆乳では濃度が足りません。そこで、知人の紹介で、逗子で豆腐店を営んで90年の老舗「とちぎや」を訪れました。

「市販の豆乳は大豆の固形分が14%くらいまでしかないのですが、とちぎやさんのものは、20%以上。早速、その豆乳を送ってもらい、自家製の豆腐を作ることに決めました。豆腐の作り方に関しても改めて勉強させてもらいました」と石井シェフは言います。

実は、石井シェフの考えは、豆腐そのものに茸の香りをつけることが狙いだったのです。豆乳にセップ茸とにがりを加え、真空にして、40℃で20分間加熱。その後1~2時間おき、さらによく水気をきって、かための豆腐に仕上げます。これだと、加工がしやすいうえに、きのこの香りを重ねていくなどの、メインディッシュとしての完成度が高くなるというのが、その理由です。

老舗豆腐店『とちぎや』の出き立ての木綿豆腐は、味はもちろん、目にも美しい。まだほの温かいおぼろ豆腐を試食する石井シェフは、濃厚な豆乳を試食用に分けてもらう。

ボキューズ・ドール 2023

食べられないからこそ、伝えるための戦略。

こうして土台となる豆腐ができたものの、完成までには、紆余曲折があったといいます。写真による審査だけに、見た目のインパクトや美しさ、いかに緻密に構成された一皿であるかが重要であるかということは、先述の通りです。真っ白な豆腐にスプーンを入れると中が複雑に構成されているというサプライズは写真では伝わらないのです。

実は、石井シェフが最初に仕上げた料理は、アジア大会に表現した料理とは別物でした。これには、メンターである浜田氏、長谷川氏から、「アジア予選を通らないぞ」という厳しい評価がくだったそうです。

試行錯誤の末に出来上がった一皿は、豆腐と茸の美しい層がアーチをなして重なり、4種のガルニチュール(付け合わせ)が華やかさを盛り上げています。

「実は、写真撮影(6月10日)の前日に、今のままではだめだと思い立ち、合羽橋へ行って樋型を買い、試してみて、ようやく納得のいくものができ上がったんです」という石井シェフ。最終形は、その樋型を使用してかためたものです。

「樋型の中に薄くスライスした自家製の豆腐を敷き、トリュフのシートをのせ、また豆腐を重ね、次にジロール茸のペーストを塗り、また豆腐をのせるというように、豆腐と茸を層にし、表面だけを凍らせてカットしたものが、メインとなるアーチ型の豆腐です。周囲には数種のガルニチュールを配しました。燻製をかけたサントモール(山羊のチーズ)の上に絹ごし豆腐のピューレを絞り、キヌアを散らしたものや、青りんごのジュースを流したタルトにパースニップのピューレを絞り、グリーンピースをあしらったもの、黒にんにくを詰めたモリーユ茸を煮詰めた酒でからめたものなどです」と料理の説明をしてくれました。ひとつ一つのガルニチュールにも、高度に緻密な考えがめぐらされ、心がこめられていることがよくわかります。

 石井シェフは、「浜田さんのひと言があってよかった」と言います。実は、今回、常勝国である、タイ、シンガポールが落選しているのです。そして、インスタに上がった、タイの出品写真を見てみると、石井シェフの初期段階の作品のように、白いムース状なのです。やはり、料理の構想が伝わらなかったということなのでしょう。今の段階では、順位が出ていないのでわかりませんが、アジアパシフィック予選がいかに厳しい戦いであったかということは、想像に難くありません。

本選は、プレート料理(一皿料理)とプラッター(大皿盛り)の2種で競われます。

プレートのテーマが9月末、プラッターのテーマが11月末に決まるというのがおおまかな予定だそうです。ついこの間までは、本選まであと10か月という気持ちだったのが、あっという間に半年を切ってしまいました。心がはやります。テーマ食材が出るまでに、やるべきことは何なのでしょうか?

「アジア大会は見た目の勝負でしたが、逆に本選は、見た目の美しさや斬新さはもちろんですが、とにかく美味しくて、熱々でないとダメなのです。にんじん、じゃがいも、玉ねぎなど、必ず使う野菜を、ガルニチュールとして使う場合、またはある程度のメイン素材として使う場合などをシュミレーションして、加工方法、味の決め方、温度の調整などの実験を繰り返します。なにしろ、テーマ素材が決まったら、その一か月後にレシピを提出することになると思いますので、それからでは全く時間がなくなってしまいますから」と石井シェフ。

まだまだ課題は山積み。それらを乗り越え、本戦に備え、日本を勝利へ導く。

試作段階のひと皿。何度も何度も制作を繰り返し、料理をクリエイションしていく。

過去の各国の作品や、今回作ろうとしている作品をCG化したものなど、大量の資料を読み込みながら、作品を考案。

緊張感のあるキッチンにて「勝つ」ためのディスカッションを続けるチームジャパン。左から浜田シェフ、石井シェフ、コミの候補生、長谷川シェフ。

『アジア・パシフィック大会』に出品したひと皿。この料理で見事、通過を果たした。

上記の料理のデッサン。緻密に料理を構築し、イメージを固めてから表現する。

ボキューズ・ドール 2023

米田 肇、浜田統之、長谷川幸太郎。勝つために揃った最強の布陣、チーム日本。

いよいよ日本チームの布陣が決まりました。

三ッ星レストラン「HAJIME」米田 肇氏が、試食審査シェフに選ばれました。そして浜田統之氏が日本チームのコーチに。コーチの役目は、日本チームをまとめ上げることはもちろんですが、『ボキューズ・ドール』内でいわゆる「顔がきく」といいうことが大切であり、その点、2013年の3位入賞以来、『ボキューズ・ドール』に関わり続けている浜田氏は最適です。そして、長谷川幸太郎氏は、キッチン審査シェフに任命されました。これは大会当日、舞台上の各キッチンを回り、キッチンを清潔に保っているか、素材の無駄を出していないか、などをチェックする役目です。同時に、出場選手そのものも、試食審査員に顔を知られたほうがいいとも言われています。

私情をはさむとまではいいませんが、人間ですから、やはり、顔を知っているかどうかに左右される部分がないとはいえないのだそうです。そのため、石井シェフは、ヨーロッパ大会に視察に行き、日本チームのTシャツを配るなど、ロビー活動に励みました。

こうして組まれた、最強の布陣、日本チーム。あとは、本番へ向けて努力を積み重ねるのみです。次号からは大会へ向けての進捗に加え、関係者と石井シェフの対談をお届けいたします。

Text:HIROKO KOMATSU

北の大地のチーズ工房が目指すのは、旅の土産ではなく、旅の目的になるチーズ。[ニセコチーズ工房/北海道虻田郡]

日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』はこちらから

『ニセコチーズ工房』オーナー近藤裕志氏。発酵室で状態をチェックするのは、1日たりとも欠かせない毎日の日課。

ニセコチーズ工房観光地ニセコで異彩を放つチーズ工房の黒い建物。

北海道・ニセコにある、世界的な評価も高いチーズ工房の噂をご存知でしょうか。
場所はニセコ町の一角、羊蹄山のふもと。北海道らしい雄大な自然の中に佇む黒い建物が、その『ニセコチーズ工房』です。

工房とショップが併設された建物でショップ部分のガラスのショーケースの中には、チーズが20種ほど並ひ、奥にはイートイン用のカウンターも併設されています。

そんな店内をひとまわりしてみて、まず目を引くのは、店内のあちこちに置かれたメダルや賞状。手近なひとつを見てみると「WORLD CHEESE AWARDS」という世界最大級のチーズコンテストの名。その下には最高賞である「SUPER GOLD」。つまりそれは世界が認めたチーズを意味します。

賞状は他にも多数。額に入れずにそのままであったり、数枚が重なっていたり、いわば無造作とも思える様子で置かれています。きっとすべてを額装して飾るには、スペースが足りないのでしょう。それほど、ここのチーズは認められているのです。

ショーケースとイートインスペースがあるショップ。広大な北海道にあって意外に思えるほどコンパクトな店内。

ショーケースには常時20種ほどのチーズが並ぶ。一部、この店舗でしか購入できない限定品も。

無造作に置かれた賞状やメダル、盾。決して栄誉ある賞に無頓着なわけではなく、「ただスペースの問題」という。

ニセコチーズ工房先代との衝突を越え、やがて誕生したここだけのチーズ。

工房のオーナーの近藤裕志氏に話を伺ってみましょう。

聞けばここは裕志氏の父である先代が脱サラしてはじめた工房。北見で酪農を営む家に生まれたが大企業に務めていた先代が、思い立ってチーズ作りに挑戦。倶知安とニセコの生乳を使い、この地ならではのチーズを作る工房を2005年に開いた。その5年ほど後に、やはり別企業で働いていた裕志氏もチーズの世界へ。レシピ開発で先代と衝突しながらも、少しずつ独自の味を築き上げてきた。そんなストーリーを聞かせてくれた裕志氏。そしてこんなことを言いました。

「最初は観光地のチーズをやっていたんです」

観光地のチーズとは、つまりニセコに観光に来た人が買って帰るチーズのこと。観光地でやっているのですから、それで良いような気もします。しかし裕志氏は続けます。

「私が作りたいのは来た人が買っていくチーズではなく、それを買うためにニセコに来るようなチーズなんです」

その言葉には、決意と自信が満ちていました。

自然体で穏やかな話し方が印象的な近藤裕志氏。しかしその内には、熱いチーズへの情熱を秘めている。

基本は丁寧な手作業。量産はできないが、ひとつひとつの状態を見極めることで質を高める。

原料は北海道産ミルク。近隣の新鮮なミルクが、コクがあるのにクセのない上質なチーズになる。

ニセコチーズ工房それぞれのチーズの個性が際立つ、多彩なラインナップ。

仕事に戻る裕志氏を見送り、イートイン用のチーズプレートをオーダーしてみました。この日の内容は、ブルーチーズ、さけるチーズ、フルーツをあわせたクリームチーズ、12ヶ月熟成のミモレットチーズの4種。ブルーチーズは穏やかな風味でクセが強すぎず、食べやすいおいしさ。さけるチーズはフレッシュなミルクの味わい。クリームチーズは爽やかでコクがあり、それだけでスイーツとして味わえるほど。そしてミモレットは、濃厚で凝縮された旨味が圧巻だ。どれもチーズの個性が際立ちながら、主張が強すぎないやさしい味。穏やかでありながら記憶に残る、ここだけの味です。

次いで裕志氏が「自信作」と言っていたカマンベールチーズのソフトクリーム。これも驚きの完成度でした。しっかりと熟成をかけたカマンベールチーズをたっぷりと混ぜ込んだ濃厚な味わいで、チーズ屋の本気が垣間見える出来栄え。

「それを買うためにニセコに来るようなチーズ」

先程の裕志氏の言葉が思い出されます。
ニセコはチーズのために訪れるには、あまりに遠い場所です。しかし裕志氏の想いは、形になりつつありました。ニセコにしかない、ニセコらしいチーズ。ここは札幌から200kmの距離を越え、訪れる価値のある場所です。

チーズプレート。左から、12ヶ月熟成のミモレットチーズ、さけるチーズ、フルーツをあわせたクリームチーズ、ブルーチーズ。

濃厚な味わいとカマンベールチーズの香りが特徴のオリジナルソフトクリーム。

住所:北海道虻田郡ニセコ町近藤425-6 MAP
電話:0136-44-2188
https://www.niseko-cheese.co.jp/

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(supported by SUBARU)

手軽に一流の味を。ふっくら、とろける、あなごの缶詰。[和光アネックス/東京都中央区]

「木の屋石巻水産」の缶詰「三陸産あなご醤油煮」。中には、ふっくらしたあなごの醤油煮がぎっしりと詰まっている。使用目安は、ひと缶約2食分。

WAKO ANNEXファン待望のあなご醤油煮。震災を乗り越え、2020年に復活。

東北・三陸産で獲れたあなご(イラコアナゴ)をじっくりと煮込んだ「木の屋石巻水産」の缶詰「三陸産あなご醤油煮」。

丁寧な仕込みのため、あなご特有の臭みはなく、小骨まで柔らか。少し甘めの上品な味が染みた醤油煮です。地元宮城県のメーカーの醤油や喜界島の粗糖、隠し味に国産山椒を使用しており、脂がのったあなごはふっくらでとろけるような食感が食欲をそそります。

「木の屋石巻水産」は、三陸沖の海の幸を原料に仕込む水産加工メーカーです。特筆すべきは、そのスピード感。朝に水揚げされた魚は、昼には缶詰になっていることも。創業から約60年、常に海と向き合い、魚と向き合い、「うまい魚を、うまいうちに」をずっと守り続けています。

しかし、2011年3月11日の東日本大震災によって、工場や倉庫を失う事態に。生産などはストップされてしまいましたが、2013年に再スタート。人気を博していた沖穴子醤油味付」も名前を「三陸産あなご醤油煮」に改め、2020年に9年ぶりの復活を果たしました。

様々な想いが込められた缶詰は、ファン待望の逸品。ご飯のお供としてはもちろん、お寿司やたまご焼きなどにして美味しくお召し上がり頂けます。

やはり定番の食べ方は、ご飯に乗せてぜひ。湯煎で温めることによって、より美味しく、ふっくらした食感に。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

山に触れ、山を知り、山に学ぶ。中山道34番目の宿場・奈良井宿を舞台にした19回目の「DINING OUT」速報。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

DINING OUT KISO-NARAI2年半の時を越え、帰ってきた「DINING OUT」。

去る2022年7月23日、24日。約2年半ぶりに『DINING OUT』が開催されました。

舞台となったのは、古の宿場町の面影が色濃く残る奈良井宿。中山道34番目の宿場であり、深い山々に囲まれる木曽路の街に、二晩限りのレストランが現れました。

料理を担当するのは、「ミシュランガイド東京」2つ星、「ゴ・エ・ミヨ東京」3トック、「アジアのベストレストラン50」1位、「世界のベストレストラン50」20位など、数々の賞に輝いた『傳』の長谷川在佑氏。常に産地や食材へ深い敬意を示す長谷川氏が、この地の食文化を紐解き、自身の感性に重ね合わせます。

新型コロナウイルス感染拡大によって世界中が翻弄され、繰り返された緊急事態宣言、自粛。飲食店においては、時短営業、酒類提供禁止……。コミュニケーションは遮断され、日常や当たり前は一変。様々な時代の節目を経て、人々の価値観が大きく変わる今、19回目となる『DINING OUT』もまた、新たなステージに進みます。それは、ただ土地の魅力を伝えるだけでなく、食を通してより深く地域に踏み込み、地元と深く繋がること。それではさっそく『DINING OUT KISO-NARAI』の様子をお届けします。

2015年に静岡で開催された『DINING OUT NIHONDAIRA』、2017年にパリで開催された『JAPAN PRESENTATION』のシェフを担ってきた長谷川氏。「『DINING OUT KISO-NARAI』は、それらとは全く別物。自分自身も本当に大事なことを知る機会となりました」と長谷川氏。

『DINING OUT』のホストを今回で通算10回務めるコラムニストの中村孝則氏。披露される土地への深い知識が、料理に彩りを添える。

DINING OUT KISO-NARAIテーマは「山中に学ぶ」。山深い木曽の地に受け継がれる伝統を紐解く。

「木曽路はすべて山の中」。

島崎藤村の代表作『夜明け前』は、そんな言葉で始まります。木曽を訪れてみると、その言葉が腑に落ちることでしょう。山々に囲まれ、冬は雪に閉ざされるこの地。ここには、保存食を中心とした独特な食文化が育まれました。今回の『DINING OUT』では地域に触れ、人に触れながら、そんな食文化を体験します。

ゲストが乗り込んだバスがまず向かったのは、レセプション会場である『塩尻市立楢川小中学校』(以下、楢川小中学校)。「小中学校」とは、小中一貫で9年間学ぶ義務教育学校で、この重厚な木造校舎では約100名の児童生徒が学んでいます。

入り口でホストのコラムニスト・中村孝則氏と地元の「お母さん」たちが出迎えます。下駄箱を通り、廊下を歩いてまず向かったのは教室。ゲストが席に着くと、中村氏の挨拶と、『楢川小中学校』の山本秀樹校長による学校紹介がありました。山に学び、山とともに生きる暮らし。校長先生の興味深くウィットに富んだ話に、ゲストたちは笑いとともに聞き入っていました。

次いで中村氏にうながされ、向かった先はランチルーム。この学校には全生徒が一度に昼食をとるための食堂が完備されているのです。ランチルームの入り口頭上には大きな書が飾られていました。

「山中に学ぶ」。

芸術家・池田満寿夫氏によるこの言葉こそ、今回の『DINING OUT KISO-NARAI』のテーマ。山に囲まれ、山とともに生きるこの地の知恵を、食を通して学ぶこと。それはゲストにとっても開催地の人々にとっても、一夜限りの晩餐では終わらない総合的な体験となることでしょう。

このランチルームで生徒たちは、学年の垣根を越えて交流します。さらに毎日の食事に使用されるのは、地域の方々から提供された漆器の食器。

「地域の方がくださった大切な器で食事する。食の大切さを学ぶ教育です」。そんな校長先生の言葉が印象的でした。

いよいよレセプションの幕開けです。アペリティフには、信州の地酒『亀齢』と郷土料理。この料理を担うのが、前述の「お母さん」たち、「楢川地域おこし農家組合」です。

信州の伝統野菜・羽淵キウリの漬物、地元ではおやつの定番という餅菓子・お釈迦のおみみ、家庭ごとに味つけが違うという夕顔汁。この土地で古くから親しまれている味を入り口に、この地の食を巡る一夜の体験が始まりました。

『楢川小中学校』の校舎は築31年。2022年度から、新たに小中学校として再出発を果たした。

木曽楢川小学校と楢川中学校を統合して生まれた楢川小中学校。1991年に新築された木造校舎には、地元のヒノキがふんだんに使用されている。

出迎えたのは、エプロン姿の「楢川地域おこし農家組合」の方々。地域とのふれあいを通して、ゲストをこの地の食の世界へと誘う。

レセプションは、3年1組の教室にて開催。『楢川小中学校』の山本秀樹校長先生による学校の説明から。まるで学校説明会のようなスタイルと興味深い話に、これからの晩餐に期待が高まる。

『楢川小中学校』のランチルームの掲げられた「山中に学ぶ」の力強い毛筆は、池田満寿夫氏の揮毫。

「楢川地域おこし農家組合」のお母さんたちが手がけた郷土料理は、地元で親しまれ、素朴で滋味深いおいしさ。器や盆などは、もちろん漆器。

「このへんは交通の便が悪いからね、おやつも何もみんな手作り」とお母さんたち。地元で親しまれる伝統の味を、心をこめてサーブしてくれた。

「楢川地域おこし農家組合」の皆様。古くから旅人が行き交う宿場町だけに、おもてなしの心が脈々と受け継がれている。

乾杯のドリンクは、長野が誇る幻の銘酒・亀齡が選ばれた。

DINING OUT KISO-NARAI中山道の上に現れた前代未聞のディナー会場。

『楢川小中学校』を後にし、いよいよ会場である奈良井宿へ。到着したゲストが目にしたのは、街道の上に並べられたテーブルでした。そう、今回の会場は、奈良井宿の街道上。中山道の路上で食事をとるという前代未聞の晩餐です。

中村氏と長谷川氏からの挨拶の後、いよいよディナーがスタート。

一品目は信州名物のおやき、二品目は海のないこの地でタンパク源として親しまれた鯉、三品目にはシナノユキマスを木曽地域独特の漬物すんきとともに。次いで木曽地域で食されてきた雑穀を柔らかく煮込んだ信州牛と合わせた一皿。どれもこの地に伝わる伝統を、長谷川氏流にアレンジした料理ばかりです。

その料理とともにゲストの目を捉えたのは器。艶のある木曽漆器の器は、実はレセプションで訪れた楢川小中学校の給食食器。生徒たちが毎日使用する器を通し、この地の食文化をさらに深く体験します。

三品目の料理サーブは、そんな『楢川小中学校』の生徒たちが担当しました。やや緊張の面持ちで慎重に料理を運ぶ生徒たち。

「どうぞごゆっくりお楽しみください」。

そう話す言葉には、宿場町に伝わるおもてなしの心がこもっていました。

奈良井宿の路上を貸し切ってディナー会場に。古の風情漂う街に、上質なレストランが出現した。

中村氏と長谷川氏による乾杯の挨拶。キッチン含め、拠点になったのは、奈良井宿の『徳利屋(とくりや)』。普段は、手打ちそばや独自の三食五平餅も人気の名店。

一品目の鰻と茄子。信州名物のおやきを、脂の乗った鰻を使ってアレンジ。

長野県に伝わる鯉食文化。長谷川氏は鱧のように骨切りして羽淵キウリの餡と合わせた。楢川小中学校で日常的に使用される漆の給食食器が、長谷川氏の料理としっくりと馴染む。

楢川小中学校の生徒たちによるサーブ。「プロのサービスを間近で学ぶことができた」と、生徒たちにとっても良い経験となった。

やや緊張の面持ちの『楢川小中学校』の生徒たち。配膳とご挨拶の役割をしっかりと果たした。

DINING OUT KISO-NARAIただの食事で終わらない、一連の体験としての「DINING OUT」。

料理は続きます。

きのこや山菜を煮込んだ鍋の中で蕎麦を温めて味わう投汁蕎麦は、厳しい寒さの中で体を温める知恵。素朴な郷土料理にこめられたアイデアと技術が、木曽の食文化を伝えながら、新鮮な驚きと感動も伝えます。

投汁蕎麦に使われていたのは、ほかの食器とは少し趣の違う木曽漆器でした。木曽漆器工業組合の石本理事長が登壇し、木曽漆器の伝統と魅力について語ります。

「漆は使うほどに透明度が上がり、艶が増していくもの。どうぞ末永くお使いいただき、そして使う度に、この地を思い出して頂けたら」と石本理事長。そう、この器は今日の思い出として、ゲストへのサプライズプレゼントだったのです。

テーブルには信州特産のルバーブととうもろこしのデザートが届きました。ディナーコースは、これにて終了。しかし木曽の食体験はまだ終わりではありませんでした。

登場した「地元婦人会・桜香会」の皆さんから手渡されたのは、わっぱの折り詰めに入ったおにぎりと漬物。ホテルに戻ってから小腹を満たすお夜食です。地元の方が心をこめて握ったおにぎりは、きっと旅の余韻とともに深くゲストの心に刻まれることでしょう。

打ち立ての香りと素材の風味が生きた蕎麦。この日のために作られた漆器の椀はゲストへのプレゼント。

「木曽漆器工業組合」の石本則夫理事長が、木曽漆器の歴史と魅力を語った。

格子越しにしっとりと会場を彩る花は、奈良井宿の宿『花と休息 Wakamatsu』店主であり花道家の山本文弥氏の作。

心をこめておにぎりを握ってくれた「地元婦人会・桜香会」の皆様。

ひとつは辛味噌の焼きおにぎり、ひとつは大葉を添えた酢飯。どちらもこの地で親しまれるおにぎり。

DINING OUT KISO-NARAI食を通して伝える、人との繋がりの大切さ。

長谷川在佑氏による地元の食文化への敬意に満ちたディナーコースは、心地良い余韻を残して幕を閉じました。

「待ちに待った『DINING OUT』。この日を迎えられたことが何よりもうれしい。この2年半の間にいろいろなことが変わりましたが、人との繋がりは変わることはありません。多くの人に支えられたこの『DNING OUT』を通して、人と繋がっていくこと、会うことの大切さを再認識できました」。

そんな挨拶で結んだ長谷川氏。

趣向を凝らした料理はもちろん、レセプションでの郷土料理、子どもたちによる配膳、木曽漆器のサプライズプレゼント、地元の方の心づくしのお夜食と、地元の方々の協力に支えられた今回の『DINING OUT』。それはこの2日の特別な夜だけではなく、今後も長く続くような深い繋がりを生みました。

日本のどこかにある日突然現れ、数日で消えてしまう幻のレストラン。しかし山中の豊かな食文化と地元の方々との繋がりを感じた一夜の晩餐は、生涯忘れない記憶となってゲストの心に刻まれたことでしょう。

過去最大人数の地元の方々が携わった『DINING OUT』。開催を支えた大勢のスタッフたち。厨房では地元飲食店のシェフたちも活躍した。

開催日程:2022年7月23日(土)、24日(日)
開催地:長野県塩尻市
出演:シェフ 長谷川在佑『傳』
    ホスト 中村孝則(コラムニスト)
協賛: 一般社団法人塩尻市観光協会、サントリー株式会社、日本航空株式会社
協力: 一般社団法人木曽おんたけ観光局、木曽漆器工業協同組合、塩尻市、塩尻市立楢川小中学校、奈良井区、奈良井宿観光協会

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

フルーツ王国岡山の名品、清水白桃のコンポート。[和光アネックス/東京都中央区]

「角南製造所」の「フルーツコンポート 清水白桃」。桃の生産者と栽培を契約し、その年の清水白桃の生育状況を把握。一番美味しい時期に収穫し、一番美味しいものを厳選して加工する。

WAKO ANNEX目、鼻、手。手作業でなければ生むことができない美味しさ。

昭和10年創業。フルーツ王国岡山の老舗加工メーカー「角南製造所」が作る「フルーツコンポート 清水白桃」は、手作業にこだわった逸品です。

人の感性とも言うべき目、鼻、手で完熟度合いを判断し、最も美味しく加工できるタイミングを見極めます。中でも、特にこだわっているのが、湯剥き。その理由は、桃の果肉と皮の間の一番美味しいところを残すことができるからです。これは機械ではできず、「角南製造所」では、約60年続けているのです。

そんな岡山産の清水白桃を丁寧にシロップ漬けにしたものが「フルーツコンポート 清水白桃」なのです。そのままいただけば、素材そのものの甘さや食感を楽しめますが、ヨーグルトやケーキのトッピングとしてもお勧め。ぜひ、シーンに応じて様々な清水白桃の味をお楽しみいただきたい。

ひとつ一つ丁寧に手剥きし、シロップ漬けに。まろやかな風味をそのままに、とろけるような食感が特徴。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

スーパーフードとしても注目される、はだか麦の麦茶。[和光アネックス/東京都中央区]

「福岡正信自然農園」の「はだか麦茶」。はだか麦には豊富な栄養素が含まれ、スーパーフードとしても注目されている素材。

WAKO ANNEX自然を尊重したはだか麦の栽培。環境を配慮したはだか麦茶の品。

「はだか麦茶」を製造する「福岡正信自然農園」では、他の作物同様、自然の循環を尊重しながら植物の力を最大限に引き出す手法で、はだか麦を栽培しています。

はだか麦とは、世界最古の栽培植物のひとつとして知られ、愛媛県では古くから栽培されている麦の一種。プチっとした食感が特徴的であり、脱穀すると簡単に殻が取れることからその名が付いたと言われています。

そんなはだか麦を、もっと身近に楽しんでいただきたいという想いから生まれたお茶が「はだか麦茶」なのです。麦ならではの香ばしさが口いっぱいに広がり、ノンカフェインのため、お子さまや妊婦の方にも安心して楽しむことができます。

また、常に自然に敬意を示す「福岡正信自然農園」の想いは、パッケージや仕様にも反映され、包装は再生可能なとうもろこし由来の不織布を使用し、使い切りのテトラ型のティーパックを採用。

はだか麦を焦がさないよう、最初は低温でゆっくりと焙煎し、その後一気に火力を上げ、しっかり焙煎。この火加減とタイミングが誰でも美味しく淹れられるティーパックたる所以であり、熟練された職人技と感覚が成すもの。

日々の生活にはだか麦を取り入れることによって、健康にも健やかな美味しい日々をぜひ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

急須やティーポットにティーパックを入れ、約90℃のお湯を150~200ml注ぎ、3~5分蒸らしてからぜひ。夏場や暑い日は、氷を入れ、冷やした「はだか麦茶」がお勧め。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

金沢から新たな文化を。レストランという表現の地平を拓くシェフ・トリオ。[respiración/石川県金沢市]

レスピラシオンOVERVIEW

ローカルガストロノミーのディスティネーションとして注目を集める石川県金沢市。全国的にも指折りの名店ひしめくこの美食の地で、近年一気に輝きを増したレストランがあります。

『respiración(レスピラシオン)』。
スペイン語で「呼吸」を意味する言葉を冠するこのレストランは、2017年に金沢市の中心部である近江町市場近くに開業したモダンスパニッシュの店です。

開業からわずか4年で、ミシュランガイド北陸2021特別版にて二ツ星を獲得。環境への配慮や生産者支援などサステナブルな取り組みを評価するミシュラングリーンスターもダブル受賞し、その名は全国に知られることになりました。

『レスピラシオン』は3人のシェフにより設立されました。
梅 達郎氏。
北川悠介氏。
八木恵介氏。
彼らは揃って金沢市の隣の内灘町出身。そして同い年。梅氏と八木氏は幼稚園から一緒。小学校からは北川氏も加わり3人共にミニバスケ、バスケットボールに打ち込みながら中学時代までを一緒に過ごしました。家は梅氏と北川氏が歩いて1分の距離。八木氏の家もそこからわずか5分です。高校は北川氏だけが離れたものの、引き続きそれぞれの高校でバスケに取り組みながら、親密な付き合いは続きました。洋服の趣味も、音楽の趣味も同じ。興味のあるもの、好きなことを共有し、いつしか3人は一緒にいることが当たり前になっていました。

そんな3人は、高校卒業後、それぞれの道に進みます。
けれど、時を経て3人ともが自分の愛すべき家庭を持った30代後半、再び結集し、つくり上げたのが『レスピラシオン』です。

鉄の結束で同じ夢に向かって歩く3人。そこには、一体どんな物語があるのでしょう?

『レスピラシオン』の軌跡、そして今を見つめます。

住所:石川県金沢市博労町67
電話:076-225-8681
営業時間
   昼:12時一斉スタート
   夜:18時一斉スタート
 定休日:月曜日を中心に月6回
https://respiracion.jp/

日本初、50位以内に4店舗ランクインの大躍進を見せた「ワールドベスト50」。

アワード後に、全シェフが檀上に集まり、喜び合い、また来年への頑張りを誓う満たされたひと時。

世界のベストレストラン50世界一に輝いたのは、デンマーク・コペンハーゲン「ゲラニウム」。日本勢は、「傳」、「フロリレージュ」、「ラシーム」、「ナリサワ」が健闘。

世界27の国と地域の食の識者40人ずつの投票によって、文字通りベスト50位のレストランが決まる『The World’s 50 Best Restaurants awards 2022』(以下、ワールドベスト50)。このランキングシステムが創設されたのは2002年。栄えある1回目のベスト1に輝いたのは、かの伝説のレストラン『エルブリ』です。それから今年でちょうど20年、去る7月18日にロンドンで行われたアワードは、まさに20年の集大成となる、華やかなものとなりました。というのも、コロナ禍をはさんで、これだけ多くのシェフやメディアが集まれたのは3年ぶり(2020年中止、2021年小規模開催)だったからです。世界を代表するトップシェフたちが、また一同に顔を揃えられたということに、皆、喜びを爆発させていました。会場となった『オールドビリングスゲート』は、1980年代初頭まで魚市場だったビクトリア朝の歴史的建造物。ブラックタイにカクテルドレスの男女、赤いマフラーを巻いたノミネートシェフたちが、グラスを手に行きかい、あちらこちらでハグを交わす姿はなんとも艶やかでした。

今回のアワードの一番の注目は、1位の行方。2021年は、2位の『ノーマ』がスライドして1位になるだろうというのが大方の予想でしたが、今回に関しては2位のデンマーク『ゲラニウム』がくるのか、はたまたこの10年近く、5位前後を死守しているペルー『セントラル』(昨年は4位)が念願の1位に輝くか、予想が分かれるところだったからです。話が前後しますが、『ワールドベスト50』では2018年以降、一度1位にランクインしたら、ベスト オブ ザ ベストとして殿堂入りし、ランク外となるルールができたため、こうした予想が成り立つわけです。

果たして、1位の座を射止めたのは、ラスムス・コフォードシェフ率いるデンマーク『ゲラニウム』、2位にビルジリオ・マルチネスシェフ率いる『セントラル』がつけました。コフォード氏は、料理界のオリンピックとも言われる技能大会『ボキューズ・ドール』でも、金・銀・銅賞を受賞した実力者で、ミシュランの三ツ星も獲得しており、まさに、今回の1位で、料理界の真の帝王となったといっても過言ではありません。昨年からメニューのミートフリー宣言をするなど、時代に先駆けている点も注目です。また、ビルジリオ氏は、クスコの伝統文化を繋ぐ支店『ミル』の開店や、アマゾンの生態系の研究に力を入れるなどの社会貢献のほか、7月には日本に支店『マス』をオープンしたばかり。一層の高評価は、日本人である我々にとっても喜ばしい限りです。

『ゲラニウム』チーム。真中のベスト姿がシェフのラスムス・コフォード氏。その右隣りは、マネージャーのソレン・レデット氏

世界のベストレストラン50

日本勢も過去最高の4店舗のランクインと大健闘を見せました。その筆頭が20位の『傳』
で『The Best Restaurant in Asia』を獲得しました。昨年11位、悲願のベスト10入りはかないませんでしたが、コロナ禍でインバウンドが激減したなかではむしろ賞賛に値すると言えるでしょう。何より、これまで、タイ、シンガポール、香港に阻まれて、獲得できなかった、アジアNo1を手にしたわけですから、まさに傳の真価が発揮されたともいえます。長谷川在佑氏に喜びの声を聞くと、「順位はそれほど気にしていません。それより、何より嬉しかったのは、こうして世界のシェフたちとまた集まれたこと。久しぶりに彼らの顔を見て、おおいに刺激を受けましたし、また頑張ろうと思えました。僕にとっては、ワールドベスト50はカンフル剤みたいなものです」と話します。

『傳』の受賞が、表彰台の大スクリーンに映し出された瞬間。日本勢の中はトップにランクイン。

世界のベストレストラン50

次点が、39位から30位にジャンプアップした『フロリレージュ』。川手寛康氏は「インバウンドがほぼなかった中で、多くの評議員が訪れ、評価してくださったことは、本当に嬉しいです。けれど、コロナ渦中のこの結果は仮のものだと思い、これには甘えないようにします。本当の勝負は来年だなと。今年後半からは海外でのコラボレーションも増えていますし、自分らしく頑張りたいですね」と。そして、日本にとっての吉報は、大阪の『ラシーム』が41位にランクインしたことです。高田裕介氏の感想は「大阪というハンデがある中、正直、そんなに評議員がきてくださっていたのかと驚いていますが、こうして会場へ来て、海外のシェフたちに会うと、自分自身もっと変化を受け入れ、進化しなければいけないと、強く感じますね」と決意を新たにしていました。そして45位に『ナリサワ』がランクインしています。19位からランクを落としたのは残念ですが、もとより海外票の多い『ナリサワ』にとっては、この状況はいたしかたのないものでしょう。それより、2009年に、初めて『ワールドベスト50』にランクインして以来、一年も欠かさずランクインし続けている店は、2022年の50店舗のうちでもごく少数であり、その貢献には心から賞賛を送りたいものです。

『フロリレージュ』の受賞が映し出された瞬間(左)と『ラシーム』の受賞の瞬間(右)は、大いに湧いた。

『ナリサワ』の受賞が映し出された様子。右前方で立ち上がっているのが、成澤由浩氏。

世界のベストレストラン50

最終的に日本は、最多入賞6店舗のスペインとイタリアに次ぐ、多勢入賞国となったわけで、真の美食大国であることを、世界に知らしめるにいたりました。

アワードの前日に「シェフズトーク」という、メディア向けのセッションがあり、その年のテーマとなることをシェフが語るのですが、そのひとつが「ホスピタリティ」でした。世界が政治的に厳しい局面を迎え、殺伐とした世の中だからこそ、一層、おもてなしの心が大切になるということを考えてのことでしょう。ホスピタリティに定評のある『傳』(かつて、アジア、ワールド共に、アート オブ ホスピタリティ賞を受賞)の女将のビデオインタビューが流れ、個々のゲストが求めているものを汲み取る力の重要性を語り、賞賛を得ていました。長谷川氏も、「じきに海外のお客様が戻ってきてくれると思いますが、いつでも迎えられるように、日々、自分やスタッフをブラッシュアップしています。もちろんうちだけでなく、成澤さんはじめ、『フロリレージュ』、また、ニューエントリーした『ラシーム』も含め、チームジャパンで一丸となって、海外のお客様を迎えていきたいですね」と心意気をのぞかせてくれました。そして、ロンドンの街の賑わいにふれ、日本も一日も早く経済活動が活発になるようにと、切実に思ったとも。

最終的に日本は、最多入賞6店舗のスペインとイタリアに次ぐ、多勢入賞国となったわけで、真の美食大国であることを、世界に知らしめるにいたりました。

アワードの前日に「シェフズトーク」という、メディア向けのセッションがあり、その年のテーマとなることをシェフが語るのですが、そのひとつが「ホスピタリティ」でした。世界が政治的に厳しい局面を迎え、殺伐とした世の中だからこそ、一層、おもてなしの心が大切になるということを考えてのことでしょう。ホスピタリティに定評のある『傳』(かつて、アジア、ワールド共に、アート オブ ホスピタリティ賞を受賞)の女将のビデオインタビューが流れ、個々のゲストが求めているものを汲み取る力の重要性を語り、賞賛を得ていました。長谷川氏も、「じきに海外のお客様が戻ってきてくれると思いますが、いつでも迎えられるように、日々、自分やスタッフをブラッシュアップしています。もちろんうちだけでなく、成澤さんはじめ、『フロリレージュ』、また、ニューエントリーした『ラシーム』も含め、チームジャパンで一丸となって、海外のお客様を迎えていきたいですね」と心意気をのぞかせてくれました。そして、ロンドンの街の賑わいにふれ、日本も一日も早く経済活動が活発になるようにと、切実に思ったとも。

もう1点、日本にとって喜ばしいニュースは、旭酒造『獺祭』が国際スポンサーに参入したことです。これまで、日本が参加し始めた2007年から一社もスポンサーに手を上げる企業がなかったのです。世界的なレストランの大会で、各国の飲料・食品メーカーが華やかにブースを出し、いたるところでロゴマークを目にし、パーティでは、皆それらの美味を飲み、食べ、集う中、美食大国を自負する日本から、スポンサーが出ていないことは、大変に寂しいことでした。それが今年は、『獺祭』の墨文字も眩しい、真っ白なブースが入口の至近に出され、世界中のシェフやメディアが「SAKE please!」と、『獺祭』の「ニ割三分」を楽しんでいる姿は、誇らしいものでした。これでようやく、日本が国際市場に参入できた、そんな気になったほどです。桜井社長も「日本のシェフが世界で勝負する姿は、日本人として心が震えました。獺祭がその力添えになれればこんなに嬉しいことはありません」と感激を言葉にしてくれました。

凛とした『獺祭』のブースと、ゲストをお迎えする桜井一宏社長。

大変な盛り上がりを見せる、アフターパーティの様子。

世界のベストレストラン50

10年間日本のチェアマンを務める中村孝則氏に、今回のアワードで印象的な事象をあげてもらうと「新規のランクインが12軒、カムバックが2軒と、計14軒のリストが刷新されたことでしょう」と言います。「この入れ替わりの激しさは、例年にないもの。つまり、コロナ禍で海外へ出かけることができなかった地域(主にアジア、南米)の評議員には、通常は自国に6票、他国に4票投票するところ、全票を自国に投じてもよいという救済措置が施され、多くの人が、これまで入れなかった自国のレストランに投票したためだと思われます。これまで、自国では名店でも、世界的なリストには上がってこなかったような、ローカルガストロノミーが、土俵に上がってきた。こう考えるのが順当ではないかと思います」と話します。

実際、これまで美食の国ではありながら、それほど多くの票を獲得してこなかったイタリアが、6店舗のランクインと、スペインと並ぶ、トップの入店国になったことも、ひとつにはこの理由が上げられるでしょう。6店舗中の新店は2軒。中でも初ランクインの12位セニガリアの『ウリアッシ』は、アドリア海沿岸の伝統にインスピレーションを受けたモダンな料理で、ハイエストニューエントリー賞を受賞。もう1軒は29位のサンカッシアーノ『セント ヒューベルト』です。また、8店舗の入店と、今回強さが目立った南米も同じくで、32位のリマ『マイタ』、47位リオデジャネイロ『オテーク』2店舗の新店がランクインしています。

相対的にコロナ禍で海外旅行がままならないなか、地方のレストランを掘り起こすという作業が進んだということが言えますが、完全にコロナ前の世界に戻った時、この現象がもとへ戻るのかは定かではありません。しかし、一度動き始めた波は止まらないのではないだろうか、というのが私の考えです。ひと昔前の、地球の裏側から季節外の野菜を取り寄せることが最高の贅沢だった時代から、その地へ足を運ばなければ食べられないものを、体験しに訪れることこそ贅沢という考え方が進む限り、ローカルガストロノミーへの探求は止まらないはずです。世界一位のレストランを決める大会であるワールドベスト50のランキングを、デスティネーションレストランマップとおきかえて読み込めば、なんとも楽しい、世界の新しい地図が見えてくるはずです。

喜びを分かち合う日本チーム。左は、チェアマンの中村孝則氏。

Text:HIROKO KOMATSU

桃を丸かじりしているようなジュース。その名の通り、ご褒美な逸品。[和光アネックス/東京都中央区]

新潟県南魚沼の大地で農業に勤しむ「エル・グリーンファーム」の「gohoubiまるごと桃ジュース」。素材そのものの味がダイレクトに瓶詰めされ、味わいに力強さを感じる。

WAKO ANNEXとろりとした食感は、ジュースを超えたデザートのような味わい。

新潟県新潟市で栽培された桃だけを搾った「エル・グリーンファーム」の「gohoubiまるごと桃ジュース」。

ジュースの原料となる桃は、新潟県産の日の出(白鳳系統)。芳醇な香りと適度な甘さはもちろん、特筆すべきはそのテクスチャー。とろりとした食感は、まるでペーストやピューレのよう。グラスに氷を入れて飲むも良しですが、デザートや前菜感覚でカップに注ぎ、スプーンでいただくのも乙。リッチな味わいを堪能できるでしょう。

そのとろみの理由は、桃のフレッシュ感を損なわないよう丁寧に加工技術にあります。極限まで濃厚に仕上げることで桃を食べているような食感を再現。また、ジュースの味は、桃の品質に由来するため、生産年の違いによって味や濃厚さの変化が楽しめます。

自身はもちろん、誰かのgohoubi=ご褒美に、ギフトとしても喜ばれる逸品です。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

とろりとした食感は、飲むというよりも食べる感覚。よく冷やしてからいただけば、まるでデザートのような感覚も堪能できる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

美容と健康にも良い、自然の恵み。おいしいを超えたジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

迫力あるパイナップルの絵が印象的なパッケージ。「ケレス沖縄」の「石垣島産パインジュース100%」は、「やえやまファーム」や契約農家が育てたパイナップルを使用。糖度と酸味のバランスが取れた極上の原料のみをジュースにする。

WAKO ANNEX石垣島の太陽をいっぱい浴びた、濃厚な完熟パイナップル搾り。

ほどよい酸味と甘み、そしてみずみずしいパイナップル果汁が口いっぱいに広がる「ケレス沖縄」の「石垣島産パインジュース100%」。沖縄県石垣島で育ったパイナップルのジュースは、皮ごと搾汁し、砂糖や添加物などは一切使用せず仕上げています。

飲み方においても色々あり、ストレートはもちろん、サングリアやゼリーにしていただくのもおすすめ。ピナコラーダのようにカクテルにするのも上級者の楽しみ方です。

また、パイナップルには糖質の分解を助け、代謝を促すビタミンB1をはじめ、ビタミンB2、ビタミンC、B-カロチン、クエン酸、食物繊維など、美容と健康にも良い栄養素が含まれています。

「石垣島産パインジュース100%」は、ただおいしいだけでなく、美容と健康にも嬉しいジュースなのです。質の高い味と素材は多方面からも注目され、ご当地ドリンクグランプリにおける最高金賞も受賞。

自然豊かな海とサンゴに囲まれた南国、石垣島を想像しながら、ぜひお楽しみいただきたい一品です。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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砂糖、保存料、食品添加物を一切使用しない無添加のジュース。パイナップル果汁100%の濃厚な味を存分に堪能したければ、ストレートがおすすめ。暑い季節には、氷で冷やしてぜひ。

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Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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地域に眠る名店を世界に伝える「Destination Restaurants」。その創設の想いを探る。

「Destination Restaurants 2022」選定店のシェフたち。互いに顔見知りのシェフも多く、会場は終始和やかな雰囲気に包まれた。

Destination Restaurantsあえて大都市を除外するかつてないレストランセレクション。

2022年6月末。東京・白金にて華やかなレセプションパーティが開催されていました。

壇上には富山『L’evo』の谷口英司氏や和歌山『villa aida』の小林寛司氏など、『ONESTORY』でもおなじみのシェフたちの姿。この日のレセプションは、ジャパンタイムズが主催するレストランセレクション『Destination Restaurants』発表の場でした。

『Destination Restaurants』は、「日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト」として2021年に発足。その最大の特徴は、選考対象が“東京23区と政令指定都市を除く”場所にあるあらゆるジャンルのレストランという点にあります。

日本のレストランセレクションにおいて、世界一ミシュランの星の数が多いといわれる東京、そして個性的な名店が点在する大都市を除外するのは、きっと難しい決断だったことでしょう。

しかし、既存のレストランセレクションとの差別化のみならず、訪日外国人の目を地方に向け、日本各地のまだ見ぬ魅力を伝えるという視点からも、唯一無二かつ有意義なセレクション。そして選ばれた店も、その土地の文化を紐解き、その魅力を伝えるような名店揃いです。

レセプションはコロナ禍の影響で開催が見送られた2021年の発表会も兼ね、2021年度受賞店10店、2022年度受賞店10点、そして各年のベストオブ・ザ・イヤーが発表されました。受賞盾の授与とともに壇上でコメントを求められた受賞店のシェフたち。その口から多く述べられていたのは「地方に光を当てるこのようなセレクションができてうれしい」という言葉でした。その言葉に、そして和やかに会話して互いに交流をはかるシェフたちの姿に、これからの地方創生の在り方が垣間見えるようでした。

『Destination Restaurants 2022』選定店
villa aida(和歌山)、余市 SAGRA(北海道)、山菜料理 出羽屋(山形)、里山十帖(新潟)、ドン ブラボー(東京)、鎌倉北じま(神奈川)、ラトリエ・ドゥ・ノト(石川)、茶懐石 温石(静岡)、AKAI(広島)、ヴィッラ デル ニード(⻑崎)

『Destination Restaurants 2021』選定店
L’evo(富山)、チミケップホテル(北海道)、日本料理 たかむら(秋田)、とおの屋 要(岩手)、Restaurant Uozen(新潟)、片折(石川)、すし処めくみ(石川)、日本料理 柚木元(長野)、Pesceco(長崎)、Restaurant État d'esprit(沖縄)

『Destination Restaurants 2021』選定店のシェフたち。レセプションが開催できなかった昨年の選定店シェフたちも会場を訪れた。

2021年度ベストオブ・ザ・イヤー『L’evo』の谷口英司シェフ。「このような賞があると、地方のレベルがもっと上っていく。それが今から楽しみです」と語った。

2022年度のベストオブ・ザ・イヤー、和歌山『villa aida』の小林寛司シェフ。「すごくうれしい。海外の認知度も上がり、これからよりいっそうがんばれます」。

Destination Restaurantsセレクション創設の背景にある、メディアとしての使命。

レセプションの翌日、『ジャパンタイムズ』の代表取締役会長兼社長である末松弥奈子さんはこう振り返ります。

「1897年に創刊されたジャパンタイムズは、日本でもっとも長い歴史を持つ英字新聞になります。その創刊の哲学は“外国人が外国人の目で見た日本を伝える英字新聞では日本が伝えたい情報が発信されていない”という点にありました。この『Destination Restaurants』も同様に、日本人が選び、伝えたい日本のオーセンティックな食文化の発信です。そこでしか味わえないもの、そのシェフにしか成し得ないこと。地域のショーケースとしての役割や、サイドストーリーにも思いを馳せながら選定しています」。

そしてもうひとつ末松さんが強調するのが、このセレクションが「ランク付け」ではない点です。

「ただ素晴らしいお店のリストを作っている、という感覚。10年かけて100軒のリストを作っていきたい」。末松さんは、にこやかにそう話しました。

選考にあたったのは、国内外のレストラン事情に精通する辻調理師専門学校校長の辻 芳樹氏、日本を代表する美食家である本田直之氏と浜田岳文氏の3名。

「浜田さんはグローバルな視点で日本の食を見極める方。本田さんは日本の地域へ本当に足繁く通いさまざまなお店を訪ね歩いています。そして辻先生はシェフのことから経営的なことまで多角的な視点をお持ちです。そして何よりお三方とも、レストラン文化を愛してやまない方々です」。

『ジャパンタイムズ』の理念とグローバルな視点、そして地域に思いを馳せる美食家たちの思い。それらが形となった『Destination Restaurants』。このセレクションが地方のシェフたちのモチベーションとなり、日本のレストラン文化そのものが底上げされていく原動力となりそうです。

レセプションでは選定にあたった三名のトークセッションも。辻調グループ代表・辻 芳樹氏は「食文化のルネサンスが起こり始め、地方のシェフや地域の食材に目が向き始めている」と話した。

「まだ知られていない、日本の本当に良いところに行ってもらいたい」という株式会社アクセス・オール・エリア代表取締役の浜田岳文氏。膨大な数のレストランを食べ歩く食通としても有名。

レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長の本田直之氏。名店が多すぎる日本で「遠いという理由で埋もれてしまっていた店に光を当てたい」と創設の想いを語った。

住所:北海道札幌市中央区大通西1-12 MAP
電話:011-208-1555

Text:NATSUKI SHIGIHARA

3種の沖縄食材を新感覚でいただくアイス。[和光アネックス/東京都中央区]

沖縄県産のパイナップル、ハイビスカス、シークヮーサーを使用したソルベのアソート。パッケージデザインに採用されたリボンは、「ガトー・スヴニール」が約束する土産菓子の信頼の印と高品質、高付加価値であることの証。

WAKO ANNEX沖縄のおいしいに新しい価値を。食を通して旅をするフードトリップ。

瓶のまま凍らせていただく、食べる新感覚のシャーベット、「ガトー・スヴニール」の「ソルベ・トロピカルアソート」。3種ある品は、全て沖縄県産の素材。

1種目は、石垣島産のティダパインを使用したパイナップル果肉たっぷりのシャーベット。2種目は、宮古島産のハイビスカスを使用した南国の風のように爽やかな花のシャーベット。3種目は、沖縄県産のシークヮーサーを皮ごと搾り、酸味と苦味が凝縮されたシャーベット。

「ガトー・スヴニール」が展開する商品コンセプトは、「特別な贈りもの」。その想いはパッケージデザインに表れ、土産菓子の信頼の印としてリボンマークを採用しています。そして、そのデザインのファーストトライアルは、実は沖縄から始まりました。

そんな想いとともにいただけば、おいしいだけではない奥深さも感じられるはずです。

家族、友人、恋人、同僚……。大切な人への土産はもちろん、自分自身へのご褒美もぜひ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

瓶のまま8時間以上凍らせ、常温に戻して10分ほど経過してから食べごろ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

100年後にも続く農業を。静岡でオーガニック抹茶の生産を続ける若き生産者の挑戦。[MATCHA ORGANIC JAPAN/静岡県島田市]

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茶畑の中に突如現れるカフェ『MATCHA MORE』の看板。スタイリッシュなデザインでお茶のイメージを変える。

MATCHA MORE/MATCHA ORGANIC JAPAN茶畑の中に開かれたオーガニック抹茶のカフェ。

夏も近づく八十八夜。
茶摘みの情景を歌った“八十八夜”とは、5月初旬のこと。その新茶の時期から夏頃まで、お茶の収穫は続きます。つまりお茶王国・静岡がもっとも忙しくなる季節です。

静岡を旅していると、あちこちでお茶を振舞われることがあります。レストランや宿ではもちろん、ちょっと立ち寄った雑貨屋などでも「ゆっくり見ていってね」とお茶を一杯。昔は身近だった“お茶を淹れる”という文化の豊かさが、静岡には今も息づいているのです。

そんな静岡県の島田市に、オーガニックの抹茶だけを手掛け、カフェもプロデュースする若手グループがいます。そのカフェの名は『MATCHA MORE』。山の隙間に茶畑が広がり、視界の大半が緑色になるような、お茶の産地を訪ねます。

『MATCHA MORE』は、ラボのような雰囲気のカフェ。倉庫や工場のような大きな建物を、スタイリッシュにリノベーションしています。メニューを眺めると、一番目立つのは「本気の抹茶ラテ」なる一品。まずはその一杯を頂いてみましょう。

ひと口、味わってみると、素晴らしい抹茶の香りが鼻に抜けていきます。通常ならこの香りの後に苦味が来るはず。しかし「さあ、苦味が来るぞ」という予想に反し、口の中の抹茶は、豊かな余韻を残して消えていきます。

『MATCHA MORE』の「本気の抹茶ラテ」。注文が入ってから点てる濃厚で香り豊かな抹茶を、ミルクとともにまろやかにアレンジ。

カウンターで抹茶を点てる代表・田村氏。アパレル業界出身のおしゃれな雰囲気も、抹茶のイメージアップ戦略の一環。

MATCHA MORE/MATCHA ORGANIC JAPANいつしか芽生えた家業への誇りを胸に、若者は新たな一歩を踏み出す。

このカフェを手掛ける『MATCHA ORGANIC JAPAN』の社長である田村善之氏に話を伺ってみましょう。

田村氏はもともと、隣町の川根で13代続く茶農家の生まれ。しかし若い頃は家業を継ぐ気はなく「12代で終わるのだろうな」と思っていたといいます。東京の大学を出て、そのままアパレルメーカーに就職。その後、サービス業に興味がわき、介護などの仕事に携わっていました。

「東京にいるとまわりの人から“茶畑ってきれいだよね”とか“静岡のお茶はおいしい”とかいわれる。それまで当たり前だと思っていたことが、徐々に違う見え方になってきました」
と田村氏。そしてお茶に興味が湧き、調べていくうちに、問題も見えてきます。とくに茶農家の高齢化と、煎茶の価格下落は大きな課題。そこで田村氏は、海外でも需要が高い抹茶、それも完全オーガニック栽培に挑みます。最初はひとりきりで、そこから仲間が集まり、いまでは同年代の茶農家の後継ぎ5人とともに。

さらに隣に建つ加工場を特別に見せてもらえることに。加工場では機械がフル稼働中で、時折、摘みたてのお茶を満載した軽トラがやってきて、どさりと葉を落としていきます。

「煎茶が揉んで水分を押し出してから熱風で乾燥させるのに対して、抹茶は炙るように熱だけで乾かします。こうすることで香りと旨みが出てくるんです」

加工場の中に満ちるのは、熱気とお茶の香り。機械の音のなか、工程のひとつひとつを丁寧に説明してくれる田村氏は、お茶に対する誇りで満ちているようにみえます。

収穫真っ盛りの茶畑。斜面の多いこのエリアの茶畑は一枚当たりの面積が狭く、収穫作業も手がかかる。

摘んだばかりの茶葉を満載して工房へやってきた軽トラック。ここから蒸し、乾燥などの作業を経て抹茶になる。

煎茶との違いは揉まずに素早く乾燥させる点。加工場内は熱気とお茶の爽やかな香りに満たされる。

収穫の間、生産ラインは絶え間なく動き続ける。できあがった抹茶のチェックや出荷作業など、多忙を極める。

MATCHA MORE/MATCHA ORGANIC JAPAN7年後を見据えて、耕作放棄地に新たな種を蒔く。

茶畑を眺めながら、再びカフェに。茶畑や抹茶の加工工程を見ていたら、シンプルな抹茶が飲みたくなり、オーダーすると田村氏が丁寧に点ててくれました。

「跡継ぎのいない茶農家の耕作放棄地だった土地での栽培もはじめています。茶の木の植え替えもしているんですよ」
淹れたての抹茶を出しながら田村氏が話します。

「収穫は7年後ですが」
そう笑う田村氏。7年後のために、今日、苗を植えること。農業という、自然とともに歩む仕事のなかでも、それはとりわけ忍耐のいることでしょう。

「100年後も続く農業でありたい。お茶は静岡の誇りですから」
田村氏はそうも言いました。かつて「12代で終わる」と思っていたという茶農家の後継ぎは、誰よりも立派な13代目の顔でした。

『MATCHA MORE』ではオリジナルの抹茶も販売中。パッケージには生産者の顔のイラストがデザインされている。

忙しい時期にお茶について教えてくれた田村氏。その言葉の端々には、お茶への愛情と誇りが垣間見える。

植えたばかりのお茶の木。未来を見据えて今できることをする『MATCHA ORGANIC JAPAN』の象徴のような存在だ。

住所:静岡県島田市身成1476-2 MAP
info@matchaorganicjapan.com
https://matchaorganicjapan.com/

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(supported by SUBARU)

余市のナチュラルワインが集結。造り手との出会いが人生の一本となる。[Ru Vin CANVAS 余市右岸編/北海道札幌市]

『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』に参加した面々。左より、『上川大雪酒造』の吉島久晴氏、『ドメーヌ・イチ』の上田一郎氏、『山田堂』の山田雄一郎氏、『ドメーヌ タカヒコ』の曽我貴彦氏、『ドメーヌモン』の山中敦生氏、『モンガク谷ワイナリー』の木原茂明氏と奥様のゆうこさん、『ドメーヌ アツシスズキ』のサービスを担った『酒舗 七蔵』の丹羽規子さん

ル ヴァン キャンバス「ドメーヌ タカヒコ」を筆頭に、6つのワイナリーが集結。

去る2022年6月某日。北海道余市町の6ワイナリーが集う『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』が開催されました。

場所は、北海道札幌市の『ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園』。2021年10月に開業したそこは、『さっぽろテレビ塔』を見上げる好立地。しかし、特筆すべきは、北海道産木材を多用している高層ハイブリット型の木造建築であるということと、その構造材に使用する木材は国内最大規模だということにあります。中心市街であるも、エシカル&サスティナブルを体感できる空間は、大地から生まれたワインを迎えるには相性も良い。

参加したワイナリーは、『ドメーヌ タカヒコ』、『ドメーヌモン』、『山田堂』、『モンガク谷ワイナリー』、『ドメーヌ・イチ』、『ドメーヌ アツシスズキ』。皆に共通していることは、自然派にこだわる造りだということです。ゆえに、少量生産。

今回のイベントは、ワイナリー以外にも様々なメンバーが集結。『上川大雪酒造』に身を置きながらお酒の生産地として北海道のレベルアップに努める吉島久晴氏や地酒を中心に厳選したワインも揃える『酒舗 七蔵』の丹羽規子さんの参画、『木村硝子店』や『ヴィッセル』といったグラスメーカーの協力などによって、『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』は創造されました。

当日は、昨今の情勢を加味し、人数を制限した上で2部制にて実施。開始前から長蛇の列を作ったファンの目的は、ワインだけにあらず。造り手に出会えることこそ、『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』が特別たるゆえんなのです。

『ドメーヌ タカヒコ』では、「ナナツモリピノ・ノワール」2種(添加あり)、「ナナツモリブラン・ド・ノワール」、「ナナツモリピノ・ノワール」2種(添加なし)を提供。

『ドメーヌモン』では、「ドン・グリ」、「モンロー」、「ピノ・ノワールAK」を提供。

『山田堂』では、「Yoichi Rose Pinot Noir」を提供。

『モンガク谷ワイナリー』では、「栢(はく)」、「楢(なら)」、「桧(ひのき)」を提供。

『ドメーヌ・イチ』では、「ICHI +P+Cuvee Reserve Torelbon」を提供。

『ドメーヌ アツシスズキ』では、「Tomo Rouge」、「Passetoutgrain」を提供。

ル ヴァン キャンバス飲むイベントではない、出会うイベント。だから、そのワインは人生にとって特別になる。

「北海道ワインの素晴らしさを地元の方々に体験していただきたい。それが『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』の目的です」。

そう話すのは、『上川大雪酒造』の吉島氏です。吉島氏は、札幌で30年、東京で10年、ワインバーに従事していた知る人ぞ知るワイン界の重鎮であり、今回の立役者。初代を務めた『ワインバー・ランス』(札幌)の時代は、今なお語り継がれています。イベントを企画する際、吉島氏がまず始めに相談したのは、『ドメーヌ タカヒコ』の曽我貴彦氏でした。

「まず、余市を盛り上げたいという想いが第一にありました。余市は、原料供給の町ですが、ワイン生産のイメージはまだ弱い。ですが、良質なぶどうが造れる貴重な町だと思っています」と曽我氏。

「以前、自分はフランスのワイナリーを巡っていましたが、余市のワインを飲んで感動したのを今でも覚えています。2019年以降、北海道の気候が変わって非常にワインを造る環境として良くなった印象があります。とはいえ、そこから高品質のワインになるのはもう少し時間がかかるかと思ったのですが、一気に来た。造り手の努力の賜物です。それに、自然派にこだわるワイナリーが一堂に会している地域も貴重」と吉島氏。

「世界に通用するぶどうを造れる。世界が唸るワインを造れる。余市ならできる」。そう信じ続けていた曽我氏の想いが結実したのは、2020年。世界一と謳うに値するデンマークのレストラン『ノーマ』が『ドメーヌ タカヒコ』のワインを採用したことにあります。

「余市の水は柔らかく、だからこそ“旨味”が表現できる。これは、日本特有の感性であり、出汁文化に近いのかもしれません。まだまだ余市のワインは伸びる。そう信じています。それは、僕だけじゃなくて、今回、参加したワイナリーもみんな思っている。規模の大きな一社が大量生産する地域もありますが、僕らみたいな個人が営むワイナリーの地域は、少量でも高品質のワインを造る町にしたいと考えています。みんなでクラフト化したい。ドメーヌ化を大事にしたい。そして、余市を価値化したい。もしかしたら、それは僕が生きている間にはできないかもしれないけど、何か余市の未来にとって残せたらなと思っています」と曽我氏。

有名になる近道はコンクールや品評会などで賞を獲ることかもしれませんが、『ドメーヌ タカヒコ』を始め、余市のワインはそうでないのかもしれません。遠回りかもしれませんが、市場主義こそ余市のワイン。

今回の舞台となった『ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園』も市場であり、『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』も市場。レストラン、バー、そして、個人もまた市場。コツコツと市場に信頼されるよう努力する様は、まるでぶどうの木のよう。じっくりと時間をかけて根を張ることが、ゆるぎない幹となるのです。

なぜこのような味になっているのか。なぜこの造りにこだわるのか。そして、どんな想いを持ってワインに向き合っているのか。そんな言葉を造り手の口から聞けることは、希少な体験であり、貴重な価値。『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』は、飲むイベントではない、出会うイベント。だから、舌の上では得ることのできない感動を呼ぶのです。

ゲストは造り手との会話を楽しみに来場。希少なワインを飲めるだけでなく、なぜそのような味にたどり着いたのかやぶどうが育つ環境などを聞きながらいただく時間は、特別な体験に。

ル ヴァン キャンバス

テクノロジーが進化すればするほど、体験に勝るものはない。

実は、今回の6ワイナリーがイベントに参加することは、ほぼありません。ゆえに、ゲストが造り手と会うことは極めて稀有な機会であり、逆に造り手が飲み手と会うことも稀有な機会。

「複雑な味わいなのに、とても綺麗にまとまっていますね!」とゲストが話せば、「ありがとうございます! 私たちは、フィールドブレンドにこだわっており、酸味、苦味、香味を大事にして造っています」と応えるのは、『モンガク谷ワイナリー』の木原茂明氏と奥様のゆうこさん。はずんだ会話は、エチケットのデザインにまで及び、それは、娘さんが描いたものだと言う。もちろん、そのような情報はボトルには明記されていないため、出会いから生まれた物語は、その人の記憶に深く刻まれるに違いないでしょう。

また、隣のブースでは、「“1”はどんな意味があるんですか?」というゲストの声が。「実は、『ベリーベリーファーム&ワイナリー』という名前だったのですが、長いなと思って(笑)」と『ドメーヌ・イチ』の上田一郎氏は、はにかみながら応えます。「“1”の理由は、僕の名前が一郎なのと、余市の“イチ”から取りました」と言葉を続けます。造り手にとっては当たり前のあれこれも、ゲストにとっては発見の連続なのです。

「イベントにはあまり参加しないのですが、お客様と話せる機会は楽しいですね! 様々な状況から、人と人との触れ合いが遮断され、造る、買う、飲むなどの行為が“点”になってしまいました。今回のような“面”はこれから大事にしたいと改めて思いました」と『ドメーヌモン』の山中敦生氏。「“師匠”同様、器用な人間ではないので(笑)」と話す自身の性格ゆえか、ぶどう造りにおいては、ピノ・グリ一本。その師匠とは、『ドメーヌ タカヒコ』の曽我氏を指しています。

「僕は新人なので緊張しましたが、お客様とこうして会話できる機会はとても良い経験をさせていただきました。言葉を交わすから伝えられることがありますし、逆に教えてもらうこともある。こういう風に感じるんだとか、味をこんな風に例えるんだとか。これからのワイン造りにおける励みにもなりました」とイベント初参加の『山田堂』の山田雄一郎氏は、おそらく余市で最も新しいワイナリー。そんな山田氏もまた、『ドメーヌ タカヒコ』の元で修業した造り手です。

唯一、ワインのみ提供だった『ドメーヌ アツシスズキ』には、前述『酒舗 七蔵』の丹羽さんがサービス。今回は、会場構成以前までのやり取りのほとんどを担いました。

「久々のイベントだったので、このようなコミュニケーションを待ちわびていました。お客様はもちろん、造り手の想いが伝わる場は、もっと増えていったら良いなと思います」。曽我氏からのご指名によって参画した丹羽さんは、札幌で開催されている食の大イベント『さっぽろオータムフェスト 7丁目会場』において、ワインコーディネート(2010年~2017年)にも携わったイベントのベテランであり、ソムリエ。6人の生産者との親交も深く、酒屋&ソムリエだから語れる視点は、造り手とはまた違った会話の楽しみもありました。

昨今、テクノロジーの技術向上やインターネットの普及によって、流通も多様化。道内、道外、国内、国外とつながることは難しくなく、その恩恵を受けていることは間違いありません。しかし、だからこそ、体験に勝ることはないとも言えます。

自然派のぶどう造りやワイン造り、生態系や環境の営みにテクノロジーやインターネットは通用しません。現場が全てです。『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』は、それを再確認させてくれたのかもしれません。

「北海道は広い。まだまだ僕も知らない造り手がいると思っています。できる限り応援し、今回のように知ってもえらえるきっかけを作っていきたいです」と吉島氏。

「例えば、均一した形の野菜を漬け、綺麗に味を整えるお漬物もあれば、形は不揃いでちょっと虫食いがあるような野菜をそのまま漬けるお漬物もある。前者は人の力がなくては作れないですが、後者は自然に恵まれれば作れる。僕たちは、たまたま後者の人間で、余市の土壌に恵まれた造り手。ただそれだけなんです。造り手がすごいんじゃない。ぶどうがすごい、土地がすごい、余市がすごい。だから、全ては余市のために。これからも余市のためにワインを造り続けたい。余市に貢献できるように生きたい」と曽我氏。

ワインは、地域をつなぎ、国をつなぎ、人をつなぐ。次回は、ワイナリーを眺めながら杯を交わし、造り手と話の続きを楽しみたい。人生にとって大切な一本、一杯は、出会いから生まれるのです。

『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』の会場風景。ワイナリーごとにペアリングの料理も用意し、ゲストは食事と一緒にワインを楽しんだ。

館内においても木材を多用している『ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園』。「飲み手とお会いできるようなイベントを催していただけるのは、本当に感謝いたします」と、ホテルに向け各造り手が口を揃える。

今回の会場となった『ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園』では、『Ru Vin CANVAS 余市右岸編』を2フロアにて構成。人数を制限し、回遊できるように配慮。

住所:北海道札幌市中央区大通西1-12 MAP
電話:011-208-1555

Photographs:ERIKA KUSUMI
Text:YUICHI KURAMOCHI

理論と理想に支えられる循環。美しきサイクルでまわる日本最大のキウイ農園。[キウイフルーツカントリーJAPAN/静岡県掛川市]

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『キウイフルーツカントリーJAPAN』の園内はキウイが食べ放題。日によって品種は異なるが、この日は4種のキウイが食べごろを迎えていた。

キウイフルーツカントリーJAPANスプーン一杯の種から、やがて日本一の農園に。

日本最大のキウイ農園が静岡県にあることをご存知でしょうか。
その名は『キウイフルーツカントリーJapan』。キウイ収穫体験やBBQもできる体験型の農園です。キウイは収穫後に熟成が必要なため、もぎ取ったものが食べられるわけではありませんが、入園すれば園内で熟成されたキウイが食べ放題。さらに10ヘクタールに及ぶ園内は、ピクニック感覚で散策できます。

農園の二代目である平野耕志氏に案内を頼み、さっそく中を巡ってみましょう。
まずは受付やショップのある建物があり、続くのが巨大なハウス。そこは天井までぎっしりとキウイの枝が広がっていました。

「ここで全体の1割くらいです」
と平野氏。このハウスの一角にあるクーラーボックスにある熟成済みのキウイが食べ放題で楽しめます。

平野氏によればこの農園の起源は1976年。アメリカに農業研修に行った先代が友人からスプーン一杯のキウイの種をもらって帰ってきたことがはじまり。しかし当時はキウイ栽培のノウハウもない時代。きっとさまざまな苦労や試行錯誤があったことでしょう。そこから少しずつ木を増やし、現在ここにあるのは80種1000本以上のキウイの木。

「ここから生まれた新品種も10種類以上あるんですよ」

平野氏の言葉も誇りに満ちています。

『キウイフルーツカントリーJAPAN』の受付。内部にはショップやカフェも併設されている。

ショップにはキウイ柄のTシャツや小物など、キウイにまつわるアイテムがずらり。食べごろのキウイの直売もこちら。

入り口近くのハウスの中は天井までキウイの枝が這う異世界のような空間。BBQなどができるほか、ここで結婚式が行われることもあるという。

二代目の平野耕志氏。確かな知識と行動力、そして熱意を持って、循環型の農園づくりに挑む。

キウイフルーツカントリーJAPAN動物、植物、人、魚、雨。すべてが美しく循環するシステム。

「あれは花に花粉を付ける作業です」

農園で働くスタッフの姿を見て、平野氏が教えてくれました。

「ええ。形の良いキウイにするには、手作業でキレイに花粉を付ける必要があるんですよ」

受粉に適した時間は、朝露で雌しべが湿った朝方。しかし花は咲いたら3日で散ってしまう。毎朝スタッフ総出で、何十万とある花に花粉を付けるのです。

「種を植えてから実がなるまで最短でも7〜8年。根気のいる仕事だと思います」

平野氏はそう言います。

ハウスを出ると、さらに何倍も広いキウイ畑が広がります。平野氏に案内してもらった高台から、畑を見渡すと、まるで人が忘れかけていた豊かさが、この景色の中にあるような気がしてくることでしょう。

羊が草を喰んでいる。ニワトリやウサギも放し飼いされている。奥にある山からは、澄んだ湧水が流れ出ている。動物たちは雑草やキウイの皮を食べ、その糞尿は肥料になる。降った雨は湧水となり、地中のパイプを通って貯水池へ流れる。その貯水池では、魚が水を浄化する……。

先程のハウスでできるBBQ体験も実は意味があります。ハウスには害虫が出やすいため、そこでBBQや焚火をして煙を出すことで、燻煙処理の役割を果たすのです。BBQ用の薪は剪定して行き場のないキウイの枝。燃やした炭や灰は、今度は土をアルカリ性に保つための肥料になります。

この農園の中に組み込まれた、見事なサイクル。
きっとこの農園が美しく見えるのは、ただ整備が行き届いているからではなく、ここに命のサイクルが出来上がり、無駄なく、正しく循環しているから。きっと人間の本能として、そのあるべき姿を美しく感じるのでしょう。

受粉作業の様子。形の良い実にするためには花粉をまんべんなく付ける必要があるため、手作業で行われる。

開花期間が短く、受粉作業は時間との勝負。何十万と咲く花に丁寧に、かつ手早く花粉をつけていく。

キウイフルーツカントリーJAPANキウイという作物を通して、次世代に強い生き方を伝える。

平野氏はアフリカ・ザンビアに渡り、保健指導や農業指導に携わった後、日本に戻り大学院で農業経営を学んだ人物。そこで身を持って学んだこと。

「もしも世界全体で災害が起きたとしたら、生き延びるのは都市化された日本よりも、循環型のアフリカだと思いました」

そこで平野氏は考えました。子どもたちに楽しみながら生きる強さを伝えたい。キウイを通して、次世代にこれからの生き方を伝えたい、と。

「現在は太陽光でのエネルギー自給を考えています。世界中に100%エネルギーを自給している農園はひとつとしてありませんが、その最初の農園になることが今の目標です」

平野氏はキラキラとした目でそう話しました。

「年に一度実るキウイを、あと30何回か収穫したら引退の時期ですから、できることはどんどんやっていかないと」

そう言って平野氏は、爽やかな笑顔で笑いました。

園内の丘から見渡す農園全景。正しいサイクルが完成した様式美のような美しさがある。

放し飼いの羊たちは大切なスタッフ。雑草を食べ、その糞尿は肥料になる。これも農園内のサイクルの一環。

住所:静岡県掛川市上内田2040 MAP
電話:0537-22-6543(9:00〜17:00)
https://kiwicountry.jp/

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(supported by SUBARU)

“焼き”もろこしの新たな可能性を引き出した、ピクルスという選択。[和光アネックス/東京都中央区]

季節や旬に合わせ、地元愛媛産の野菜を中心にピクルスやジャム、オイル漬けを手作りしている「GOOD MORNING FARM」。夏の新作は、「焼きもろこしピクルス」。

WAKO ANNEX夏祭りに必須!? 暑い夏にぴったりの焼きとうもろこしをピクルスに。

愛媛県内子町を拠点に活動する「GOOD MORNING FARM」。ピクルス、ジャム、オイル漬け……。旬のおいしい野菜をたくさん食べてほしいという想いを込め、素材が持つ本来の味を生かしたひと瓶を作り続けています。

今回のひと瓶は、これからの季節にぴったりな「焼きもろこしピクルス」。夏祭りをイメージしたそれは、甘みのあるトウモロコシと焼き目の苦味がピクルスの酸味を交わり、絶妙な味わいに。液の中には刻んだ玉ねぎやにんにくも含まれているため、食べ応えのある一品となっています。保存料や着色料、香料などは一切使用していないため、自然が持つそのままの味を楽しめます。

メイン料理の付け合わせやおつまみ、 おやつなど、夏の食卓には万能選手として活躍してくれるに違いありません。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

一度食べるとついまた食べたくなる味にファンも多い。シンプルに見えるが、手間暇かけて丁寧に作られているため、その時間がおいしいを育んでいる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

“焼き”もろこしの新たな可能性を引き出した、ピクルスという選択。[和光アネックス/東京都中央区]

季節や旬に合わせ、地元愛媛産の野菜を中心にピクルスやジャム、オイル漬けを手作りしている「GOOD MORNING FARM」。夏の新作は、「焼きもろこしピクルス」。

WAKO ANNEX夏祭りに必須!? 暑い夏にぴったりの焼きとうもろこしをピクルスに。

愛媛県内子町を拠点に活動する「GOOD MORNING FARM」。ピクルス、ジャム、オイル漬け……。旬のおいしい野菜をたくさん食べてほしいという想いを込め、素材が持つ本来の味を生かしたひと瓶を作り続けています。

今回のひと瓶は、これからの季節にぴったりな「焼きもろこしピクルス」。夏祭りをイメージしたそれは、甘みのあるトウモロコシと焼き目の苦味がピクルスの酸味を交わり、絶妙な味わいに。液の中には刻んだ玉ねぎやにんにくも含まれているため、食べ応えのある一品となっています。保存料や着色料、香料などは一切使用していないため、自然が持つそのままの味を楽しめます。

メイン料理の付け合わせやおつまみ、 おやつなど、夏の食卓には万能選手として活躍してくれるに違いありません。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

一度食べるとついまた食べたくなる味にファンも多い。シンプルに見えるが、手間暇かけて丁寧に作られているため、その時間がおいしいを育んでいる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
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Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

数々の賞も受賞する名品。浜松の名店ブリューパブが造る「IPA」。[和光アネックス/東京都中央区]

アートのようなボトルデザインも味の期待値と高揚感を誘う。散りばめられた英語のコピーにひとつ一つ目を配りながら杯を進めるのも楽しい。

WAKO ANNEX何杯でもゴクゴク。リビングはもちろん、アウトドアで乾杯したい。

静岡県浜松市のブリューパブ「Octagon Brewing」の「ブレイクアウェイIPA」。

「IPA」は、ホップを大量に使用して作られているため、香りや味が一般的なビールより力強いことが特徴ですが、「ブレイクアウェイIPA」においては更に個性豊か。

華やかに香るシトラス、マンゴー、パインのホップアロマが心地良く口内を包み、 ライト~ミディアムボディの控えめな苦みに仕上げています。ホップのフレイバーをしっかり感じつつ、フィニッシュはすっきり。何杯でもゴクゴクいけます。

その高い品質は、多くの大会の受賞歴が物語っています。「ジャパングレートビアアワーズ2020」金賞受賞、「ジャパングレートビアアワーズ2021」銀賞受賞(2022年も受賞)、「インターナショナルビアカップ2020」銅賞受賞、「インターナショナルビアカップ2021」銀賞受賞、「OTOMONI BEST AWARD 2020」第1位など、その注目度が伺えます。

これからの季節は、太陽の下、アウトドアやテラスでの乾杯もおすすめ。ぜひ、ワンランク上のビールをお楽しみいただきたい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

栓を開けた瞬間から香りが広がる。喉越しも心地良く、柔らかい苦味も癖になる味わい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

人間に感動する「DINING OUT」。僕は、その世界を皆で創造したい。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

『DINING OUT KISO-NARAI』のシェフを担う『傳』長谷川在佑氏は、2021年8月に開業した『BYAKU Narai』のレストラン『嵓』の料理も監修。2022年版「アジアのベストレストラン50」において、見事No.1に輝いたことも記憶に新しい。

DINING OUT KISO-NARAI極端に言えば、味は二の次でいいんです。僕は体験価値を作りたい。それが記憶に深く刻まれるから。

これは、『DINING OUT KISO-NARAI』のシェフを務める『傳』の長谷川在佑氏の言葉です。

「料理はもちろん大事ですが、お客様には総合的な体験を堪能していただければと思っています。なぜなら、味の記憶は薄れていくからです。例えば、食べた料理の味よりも誰と行ったかやどんな環境で食べたかなどの方が記憶に残っていることが多いと思います。今回は、いかに街に触れ、土地に触れ、人に触れる体験をご提供できるかどうかが重要なポイントだと思っています。だから、地元の方々なくしては成立しない『DINING OUT』。僕も地元の人とつながりたい。人と人、ものともの、こととこと。様々を繋ぐ『DINING OUT』にしたいと思っています」。

今回、長谷川氏の考える『DINING OUT』は、あくまで通過点。終着点は、その後の「再訪」にあるのです。

味は一時、体験は一生。後者の感動を得るからこそ、長谷川氏は再訪のきっかけになると考えているのです。かくいう長谷川氏もまた、街に触れ、土地に触れ、人に触れている体験の最中。木曽・奈良井に幾度足を運んでいますが、その蓄積が町を特別な存在にしていることを肌で感じている当事者でもあります。

「『DINING OUT』は、2日間だけのイベントですが、お客様にはそれで終わってほしくありません。今回をきっかけに、その後も足を運んでもらえる体験をご提供できればと思っています。そのきっかけを作れるのは、やっぱり人と人との触れ合いだと思うんです」。そんな想いゆえの「味は二の次でいいんです」。

その背景には、「幸せのカタチ」の変化も手伝っているのかもしれません。

「様々な出来事を経て、身近な存在を大事にするようになったと思うんです。それは、環境、もの、自然、料理、そして人。日常やその延長にある幸せを再確認したんじゃないですかね。それは、僕も含め」。

「地域を知り、学び、人に触れることを大事にした『DINING OUT』にしたい」と語る長谷川氏。『BYAKU Narai』のレストラン『嵓』の料理を監修する時においても、生産者や食材が育つ環境に足を運ぶことから始まった。

DINING OUT KISO-NARAI「ダイニング」ではなく「食卓」。今だからこそ大事にしたい家庭料理。

「料理を考える上で僕が一番学びになったのは、お母さんたちの作るものでした。お漬物とか本当においしくて。一見、質素に思うかもしれませんが、お母さんたちが作るごはんは僕にとって最高のご馳走。もっと言えば、お母さんたちとの出会いや笑顔もご馳走。この体験こそ、旅の醍醐味であり、今回の『DINING OUT』が大事にすべきことなんじゃないかなと考えています。お母さんたちの料理は、ちゃんと文化を継ぎ、自然と寄り添い、素材を無駄にせず、食卓を彩り、家族を喜ばせています。僕の責務は、僕が体験したこの感動を伝えることだと思っています」。

「DINING OUT」というネーミングではあるものの、今回は、「DINING」ではなく「食卓」という表現のほうがしっくりくるかもしれません。ひとりで食べるごはんよりもみんなで食べるごはんの方がおいしい食卓。それを分かち合う食卓。ただいま、おかえり、いただきます、ごちそうさま、いってらっしゃい。そんな言葉が似合う食卓。

木曽・奈良井の環境は山の中。食卓に並ぶ山菜やきのこなどの食材は、長谷川氏の得意とする分野でもあります。加えて、『傳』よろしく、家庭料理は長谷川氏が最も大事にしている表現です。そして、家庭料理は、世界に通用することを2022年版「アジアのベストレストラン50」においてNo.1に輝いたことで証明しました。

『傳』のコンセプトでもある「お客さまにまた来てもらえるようなお店になること」同様、「お客さまにまた来てもらえるような地域になること」のきかっけこそ、長谷川氏が目指す『DINING OUT』なのです。

前回の開催から約2年半の空白には、様々な出来事がありました。世界中の難局によって、一時、人間はコミュニケーションを遮断されてしまいました。メールやSNSはコミュニケーションの主になってしまい、その習慣に歯止めは効かず、加速する一方です。

「おいしい料理や美しい風景を携帯のカメラで写真を撮ることはもちろん良いですが、肉眼に勝るものはないと思うんです。画面越しになった瞬間、仮想空間になってしまう。僕はやっぱりお客様とお話しすることが大好きだし、感じた想いは自分の言葉で伝えたい。良いことも悪いことも身体で感じたい。今までの『DINING OUT』は完璧を求められましたが、今回の『DINING OUT』は違う。完璧とはマニュアル通り。それでは誰がやっても同じになってしまう。突発的に起きる出来事も不完全な美しさも個性として受け入れたい。今回の『DINING OUT』では、そんな人間の根幹に訴えられるような時間にできたらなと思っています。僕自身、それをちゃんと再確認する意味も含め。そして、改めて、僕は人間に感動したい。だから、今回の『DINING OUT』は、その世界を皆で創造したいと思っています」。

昨今の事情や町の特性を踏まえ、どこまでできるかは明言できませんが、人に触れ、会話を楽しみ、土地を知る。食卓には笑い声が絶えず、みんなで喜びを分かち合い、感動をともにする。冒頭、それが今回作りたい「体験価値」なのです。

「もう一度、この町に旅したくなる『DINING OUT』にしたい」。

今までとは全く違った『DINING OUT』にぜひご期待ください。

開催日程:2022年7月23日(土)、24日(日)
開催地:長野県塩尻市
出演:シェフ 長谷川在佑『傳』
    ホスト 中村孝則(コラムニスト)
協賛: 一般社団法人塩尻市観光協会
協力: 一般社団法人木曽おんたけ観光局、木曽漆器工業協同組合、塩尻市、塩尻市立楢川小中学校、奈良井区、奈良井宿観光協会(五十音順)

Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​

勝つための戦い。美食のワールドカップ「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」。

12のキッチンが設営されたステージ。各キッチンの前に立っているのは、キッチン審査のシェフたち。

ボキューズ・ドール 2023今、改めて知るべき、「ボキューズ・ドール」。

「ボキューズ・ドール」とは、1987年に、現代フランス料理の父と称される、ポール・ボキューズが創設した、2年に一度行われる国際的な料理コンクールのこと。

世界67か国の代表シェフがアジア・パシフィック、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカの各大陸大会を経て、美食の都、リヨンで行われるフランス本選を目指します。日本では、その知名度は高くありませんが、世界的には3位以内に入賞すれば、一流料理人への扉が開かれる登竜門として、大変な重きがおかれています。ところが残念ながら、日本は初回から毎回参加しているにも関わらず、3位以内の入賞は、2013年の浜田統之氏(現『星のや東京』総料理長)のみ。あとは7位、9位、10数位などとふるわない。

日本人の舌と緻密なスキルをもってすれば、上位入賞の常連とも思えそうですが……。逆に近年の常勝国というと、デンマークなどの北欧勢とフランス。彼らにあって、日本にないものは何だろうか。その理由を明らかにしつつ、勝つための戦略を積み上げ、2023年1月の本戦で入賞を目指すという、ボキューズ・ドールチームに密着し、その逐一をレポートしていきたいと思います。

2013年に浜田統之氏が3位に入賞したときの表彰台の様子。ちなみに1位はフランス、2位はデンマーク。Photograph:GL events/Bocuse d’Or 2013 

2013年の入賞者と、審査員たち。前列右は、創始者であるポール・ボキューズ氏。その後ろは、「(株)ひらまつ総合研究所」代表の平松宏之氏。Photograph:GL events/Bocuse d’Or 2013 

2021年の表彰台。関係者や審査員と一緒に。1位フランス、2位デンマーク、3位ノルウェー。

客席では、みな、自国の旗をふり、歌や鳴り物を鳴らしての活気あふれる応援が会場を盛り上げる。

ボキューズ・ドール 20232023年、日本代表は、「アルジェント」の石井友之シェフに決定。

2023年1月の日本代表は、今年1月の国内大会で石井友之氏(株式会社ひらまつ『アルジェント』所属)に決定しました。果たして、日本において、どのようにして本線出場の資格を得られるのでしょうか。

まず書類審査があり、これを通ったものは、東日本、西日本地区に分かれ、準決勝となる実技審査。その後、国内大会決勝となる実技審査で、日本の代表が決まります。次にアジア大会が行われ(2022年はコロナ禍のため、前々回の順位を踏襲)、5位までが本線への権利を獲得すると、非常に狭き門です。もちろん世界それぞれの地域も同等の厳しい戦いを潜り抜けての参加となります。

石井シェフは「ボキューズ・ドール」に出場した経緯を、「先輩である株式会社ひらまつに在籍していた長谷川幸太郎シェフ(現『KOTARO Hasegawa DOWNTOWN CUISINE』オーナーシェフ)が出場したボキューズ・ドールを目の当たりにし、憧れたことが始まりです。どうしたらあの場所に立てるのか? 何すれば良いのか? 毎日の仕事を見直し、料理の引き出しを作る事に力を尽くしました。代表の座は、決しては自分一人の力では、到達できなかったと思います。関わっていただけた全ての方に感謝し、本戦を戦い抜きたいと思っています」と力強く宣言します。
 

浜田シェフも「石井シェフの代表が決定してすぐに、長谷川シェフを誘い、石井友之を中心にすえ、委員会を発足しました。これまでの敗戦を無駄にしないためにも今回はすっかり体制を変えて臨みます。前回までは、毎回がゼロイチで、そのイチがニやサンにつながってこなかったのです。その流れを断ち切り、これまでの経験を積み上げ、同時に新しい試みにもチャレンジしながら、なんとか入賞を勝ち取りたいですね。問題は山積ですが」と話します。

1月に行われた、ボキューズ・ドール代表選考会を終えて。右から二人目が、優勝した石井友之氏。左からメンターシェフを務める浜田統之氏、米田肇氏、右端が渡辺雄一郎氏。

2021年の日本チーム。右から二番目が戸枝忠孝氏。その左がコミの原野修輔氏。左端がコーチのジョスラン・ドゥミエ氏。右は浜田統之氏。

表彰式での日本チームの入場。各国、国旗を持ち、整列して入場する様子はまさにワールドカップと喩えるにふさわしい。

ボキューズ・ドール 2023

「ボキューズ・ドール」の理解を深め、直面した問題に向き合う。

今、どんなことが問題になっているのかを理解するためには、「ボキューズ・ドール」がどういった大会であるのか、概要を知る必要があります。

昨年2021年の様子を簡単に描写しよう。日本からは、軽井沢の『レストラントエダ』戸枝忠孝シェフが参戦。会場は世界一の食の見本市『シラ』の一部にあり、12のキッチンが設置されています。

24のシェフチーム(2021年は都合により21チームが参加)が2日にわかれて、審査員や観客の目の前で、5時間半の持ち時間で、芸術的なる料理を仕上げます。チームの編成は、代表、コミと言われるアシスタント、当日割り当てられる、地元の料理学校の学生の雑用係の3人。

テーマは常にふたつ用意され、世相を反映した新しい流れと、クラシックなもの。2021年は、コロナ禍をふまえ、トマトと海老がテーマのテイクアウェイボックス。もうひとつは、毎年定番のフランスの伝統的プラッター(大皿盛り)でした。また、キッチンまわりでは、常に、キッチン審査員シェフたちが、監視の目を光らせ、素材を無駄に捨てていないか、キッチンを清潔に保っているかなど、料理人や人間としての基本を採点。そんな緊張状態の中、出場シェフたちは、ひたすら集中して手を動かしていくのです。

その日の先頭のチームが残り1時間を切るころ、美しくセッティングされたロングテーブルに、試食審査員であるシェフたちが、列をなして入場し、席につく。彼らは、公平性を守るために、本線に出場する24か国から選出された24名で構成されています。プラッター審査12人、テイクアウェイ審査12名に分かれて試食審査。の中には、日本が2013年に3位入賞を果たした、浜田統之氏も参加しています。
 
持ち時間の数分前になると、スクリーンには仕上げの様子が大映しになり、会場には緊張感が走ります。ひとつずつボックスを男女のサービスマンに渡し、壇上を回って審査員の元へと届けられ、テイクアウェイボックスを開けたときの鮮やかな色や華やかな仕上がりがどの国も印象的。

採点は、見た目の美しさ、構成、味、食感、創意工夫など、細かく項目が分かれており、それぞれに、評価点を書きこんでいきます。途中、時間をずらして、プラッターの持ち時間が終了となりますが、今度はアシスタントシェフたちが、夢のように美しいプラッターをもって壇上を一周。主菜である牛肉のブレゼを彩るガルニの盛りつけは、各国の腕の見せどころです。切り分けられ、それぞれのプラッター審査員のもとに届けられ、同じく、細かな7~8項目に、点数を入れていきます。こちらは温かな料理のため、火入れや温度が重要なポイントです。

こうして、最終組までの審査が続き、3時間後にはお祭りのような表彰式が行われるのです。結果は1位フランス、2位デンマーク、3位ノルウェー。残念ながら、戸枝シェフは入賞とはいたらず、9位と善戦でした。

日本チームがテイクアウェイの盛り付けを仕上げ、ボックスにおさめるシーン。

プラッターの最後の組み立ての様子。軽井沢の森と清流を想起させるような、清々しいデコレーション。

ロングテーブルに試食審査シェフがずらりとならび、サービススタッフから料理がサーブされる。

戸枝氏の検討を称える大会実施委員。

ボキューズ・ドール 2023

審査員を担った浜田シェフだからわかる、過酷な審査基準。

プラッターの審査員だった浜田シェフは言います。「審査員はみな、一口ずつしか食べられないので、インパクトのあるおいしさが求められます。そして、やはり見た目。フランスのブレゼの温かさと美味しさには驚かされました。そしてガルニの繊細さにも。デンマークのテイクアウェイは見ただけですが、圧倒的な美しさでした。自分の審査得点も1~5位までは実際の順位と合致してました」。

それだけ審査員の評価は確かなのです。だからこそ、審査員にガツンと印象づける味と美しさがなければ勝てないのです。

審査員の多くはミシュランの星や、MOF(国家最優秀職人賞)を持った料理人で、過去に「ボキューズ・ドール」で優秀な成績を収めた人間が選ばれています。特に、3位以内に選出されたシェフはボキューズ・ドールウィナーズ アカデミーメンバーとも呼ばれ、こうしたイベントなどには、必ず立ち合い、トップシェフとしての扱いを受けるのです。もちろん、その後、星を獲得したり、MOFを取得する例は、枚挙にいとまがない。

つまり、一度入賞すれば料理界での活躍が保障されるという意味はまさにそういうことなのです。日本チームが悲願として入賞を願う理由もよくわかります。

審査の点数を、細かくわけられた項目ごとにタブレットに打ち込んでいく。手前から二番目が浜田統之氏。こちらのグループはプラッターの担当。

奥の木立の中に鎮座するのが、テーマ素材の牛肉のブレゼ。手前の落ち葉を入れたアクリルの上にのっているのはボタニカルタルトなどのガルニチュール。

ボキューズ・ドール 2023当事者だけでなく、料理界、レストラン界、国も含めて、戦うために。

では、現状、日本に何が不足しているのかを浜田シェフに聞いた。まず、第一に「資金」だという。

フランスなどでは国家の威信をかけてのイベントであるから、億単位のお金が投入されると言われています。それに比べ、日本は数百万単位。昨年の例でいえば、戸枝シェフは自己資金を持ち出さなければならなかったという。

では、どうやって資金を集めるのか。それはなんといっても、スポンサーだ。そのためにはスポンサーに出資させるメリットを感じさせなければいけないでしょう。例えばフランスが優勝すれば、使用した型が世界的に売れるといった具合でビジネスと直結しているように。

つまり、認知度も必要ということです。知名度を上げることに関しても、今回のボキューズ・ドール チームジャパンは、さまざまな秘策を考えています。

また、参加するシェフは半年なり、一年なり、休んでコンクールの準備に専念する必要があります。2021年に参加した『レストラントエダ』の戸枝シェフは個人店ながら、半年以上店を閉め、特訓を積んだと言います。また、前出のコミの仕事も実に重要で、あうんの呼吸で作業を進めていかなければいけません。ゆえに、やはり同じく半年近く仕事を休んで、専任とならなければならないのですが、日本ではなり手が見つかりにくい。どこの店も人手が足りず、若い人を供出したがらないのです。日本のレストラン業界の理解が求められるところでもあります。

料理に関する具体的なことでは、非常に重要視される温度帯。その際の保温のための道具や、またガルニをこれまでにない美しい形に仕上げるために型、これらも一から考えなければいけません。

こうした課題をひとつ一つ解決し次回、2023年の「ボキューズ・ドール」に勝つまでの道のりをぜひ見届けたい。

トロフィーとして授与される、ポール・ボキューズを象った、金銀銅の像。

Text:HIROKO KOMATSU
Photographs:GL events/Bocuse d’Or 2021

世界にも通用するお土産に選出された飲むお酢。[和光アネックス/東京都中央区]

『大橋さくらんぼ園』のさくらんぼを使用した「さくらんぼ酢」3種セット。左より、日本一の大玉「サミット」、さくらんぼの王様「南陽」、さくらんぼの女王「月山錦」。

WAKO ANNEX最高級品種のさくらんぼを贅沢に使ったさくらんぼ酢。

全国果樹コンクールにおいて「農林水産大臣賞」を受賞。観光庁主催の世界にも通用する究極の手土産115商品にも選出された『大橋さくらんぼ園』のさくらんぼを100%使用した「さくらんぼ酢」。

日本一の大玉「サミット」、さくらんぼの王様「南陽」、さくらんぼの女王「月山錦」の3種セットは、味比べもでき、おすすめの逸品です。

『大橋さくらんぼ園』は、約40年前から有機肥料栽培を採用。ミネラル豊富な海洋深層水も利用し、幾千年も前から北海道芦別に住み着いている有用な土着菌を培養した土壌を作り上げています。

栽培法にもこだわって生まれた贅沢な3品種のお酢は、オリゴ糖入りの果実酢のため、そのままドレッシングや酢の物にお使いいただけるのはもちろん、冷水や炭酸水、牛乳、ヨーグルト、アルコールなどに割っても美味しくいただけるのが特徴です。

ぜひ、様々なシーンでお楽しみを。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

さっぱりいただく時は、炭酸で割るのがおすすめ。酢1に対し、3〜4で割るとバランスが良い。サミット、南陽、月山錦、南陽の3種全て手作り。着色料、保存料は一切使用していない贅沢なさくらんぼ酢。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

金沢発、孤高のスペイン料理店『レスピラシオン』、希少な「能登とり貝」と出合う。[Bon appétit Ishikawa !/石川県]

全国の逸品が集まる豊洲市場で、日本一のとり貝との呼び声も高い「能登とり貝」。

とり貝今、注目される気鋭のシェフ。食材を求め、里海をめぐる。

石川県・能登半島の東岸、七尾市と穴水町の沿岸には、能登島をすっぽりと包み込むように七尾湾が広がっています。その北湾に位置する新崎(にんざき)漁港は、地元の人でも訪れることは滅多にない人里離れたところ。そこへ、気鋭の料理人として注目される人物がやってきました。金沢市のモダンスパニッシュ・レストラン『respiración(レスピラシオン)』のシェフ・梅達郎氏です。

2017年に金沢の中心部である近江町市場の近くに開業した『レスピラシオン』は、わずか4年でミシュランガイド北陸2021年特別版にて二ツ星を獲得。同時に、環境への配慮や生産者支援など持続可能性への取り組みを評価するミシュラングリーンスターにも輝いた、今日本で最も勢いのあるスペイン料理店の1店です。

『レスピラシオン』は3人のオーナーシェフが同格で運営するユニークな体制をとっています。そのひとりが梅氏。石川県産の食材を使ったオリジナルレシピ作りに努める同氏は、時間をつくっては意欲的な生産者の元へと足を運び、食材への理解を深めるために生産現場をその目で確認しています。今回、彼が着目した食材は、とり貝。七尾湾は知る人ぞ知る良質なとり貝の知る人ぞ知る産地。七尾湾では4地区の生産者が合計で年間約6万個の「能登とり貝」を生産しています。その中でも主力産地のひとつが、ここ新崎。沖合に設置された養殖筏を見せてもらいました。

『レスピラシオン』の梅達郎氏と能登とり貝生産組合長・小泉一明氏。梅氏はこれまでとり貝は剥き身を炭火で炙ったことがある程度の調理経験しかないと話す。

山からの栄養が豊富に流れ込み、風や波も比較的穏やかな七尾湾は、牡蠣をはじめとする貝類の養殖に適していると小泉氏は解説する。

新崎の漁師たちが能登とり貝を養殖する筏。この下の海中に能登とり貝が入った箱が吊り下げられている。

とり貝

案内してくれたのは、能登とり貝生産組合長・小泉一明氏。筏へと向かう船上で梅氏と小泉氏は話します。
「僕は金沢市の隣り、内灘町の出身。それでも最近まで、能登半島の東岸に広がるこの内浦の海をちゃんと見たこともなかったんです。先日は、ここからさらに北の九十九湾で、海藻のことについて専門家に教えていただきましたが、本当に全国でもめずらしい、恵まれた里海の環境であることがわかりました。能登半島の広大な広葉樹林が土地を育み、植物プランクトンのエサとなる栄養素が雪解け水に溶け込んで、湾に流れ込む。そして、湾の中の穏やかな環境で、植物プランクトンを栄養にしていろんな魚介が育まれると。お気に入りの食材に内浦の岩牡蠣がありますが、その旨さもなるほどこの自然環境の賜物なんだ、と。現地を見て腑に落ちたんです」(梅氏)

「能登とり貝の養殖ではエサはやりません。この海に自然に存在する植物プランクトンを食べて育っているんですわ。とり貝は太平洋側を中心に全国に産地がありますが、一般的な他産地のとり貝と比べて、能登とり貝の大きさはだいたい2倍。身も驚くほど肉厚です。そこまで大きく育つのを見ても、やっぱりこの七尾湾は特別な海なんだなと思いますね」(小泉氏)

養殖する箱の吊り下げ、引き上げは手作業。重い箱を海中から引き上げる作業は重労働であり、危険も伴う。

引き上げた箱から能登とり貝と砂状のアンスラサイトを取り出してキレイに洗浄する。能登とり貝の状況を確認し、サイズ別に分けた能登とり貝を再び箱に収めて、海中へと戻す。

とり貝無数の天敵から守り、手塩にかけて育む1年間。

ブイと木材を組みあわせて作られた筏のひとつでは、出荷とメンテナンス作業が黙々と行われています。縦横に張り巡らされた幅40cmほどの通路の間からは、美しい藍色の海面がのぞいています。ここに能登とり貝が入った箱がロープで吊り下げされています。最も深いところで水深15mほどに吊り下げられた箱を、ロープを手繰り寄せて引き上げます。大変な体力を要し、危険が伴う作業です。ようやくザバッと水面から顔を出した箱には、細かな粒状の無煙炭・アンスラサイトがびっしり。この中で能登とり貝が育っています。

毎年、新崎の漁師たちは石川県水産総合センターで育てられた稚貝を購入し、7月からこの箱で育成しています。能登とり貝は天敵が非常に多い生き物。タコやヒトデ、クロダイ、イシダイなどの天敵から守るために、海底の砂と同様の環境を再現するアンスラサイトと共に箱に入れ、ネットをかけて大切に育てます。定期的に箱を引き上げ、箱とアンスラサイトを洗浄。成長に応じて1箱に貝が20個程度入るように調整していきます。箱やネットにはフジツボ等がたくさん付着しています。これらの付着生物がネットの網目を塞いで箱の中の能登とり貝を酸素や餌の不足状態に陥らせないように、付着生物をキレイに落とすのも重要な作業です。

夏場は昼に高温になった表層の海水に能登とり貝をさらさないように、日が昇る前から作業することもしばしば。凍てつく冬場もこの作業は連日行われます。出荷は例年4月の終わりから7月上旬頃まで。七尾湾で1年間大切に育てられ、基本的に“活き”で流通する能登とり貝は、鮨店や日本料理店など魚介にとりわけこだわる全国の名店から引く手あまた。しかし、世に出回るのは春から初夏のみで、生産量が限られていることから、とても希少なとり貝なのです。

出荷する貝は、洗浄後、一つひとつ重さを測り重量サイズ別に5つの区分に分類する。港に戻ってからさらに仕上げの洗浄をして、再度厳密に計量してようやく出荷となる。

「特大」区分の貝で、この大きさ。殻の表面に付いているのが、貝の寝床となっているアンスラサイト。殻をよく見ると、貝の根元から同心円状の線が何本か付いているのがわかる。これは洗浄など貝にとって大きなインパクトがあったことが記録されたもの。それほどデリケートで傷つきやすい貝なのだ。

とり貝か弱い命を守り、安定した生産のために惜しまぬ手間と工夫。

とり貝の出荷量が多いのは、三重県、愛知県などで年間数百トンが出荷される年もあります。それに次いで多いのが年間数十トンを出荷する大阪府や兵庫県など瀬戸内海の産地。いずれも天然物です。それに対し、七尾湾産の天然とり貝は近年わずか数百キロ。養殖の能登とり貝も出荷量が過去最多となった2020年でも10トンには届きません。梅氏は、とり貝養殖のむずかしさについて疑問を投げかけます。

答えてくれたのは、新崎の能登とり貝漁師の若手として奮闘中の河端譲氏。
「とり貝は環境の変化にとても敏感な貝で、天然物は漁獲の豊凶の差が非常に激しいという特徴があります。獲れる時は大量に獲れるので、三重県や愛知県のように、数百トン程度の量になります。ところが、石川県では天然とり貝の漁獲量は1989年の約500トンをピークに急減し、1トンに満たないレベルにまで減少してしまいました。その原因は解明されていませんが、海水温や貧酸素などの環境変化によって、卵が産まれ親に育ちその親が卵を産むというサイクルが乱れたからと推測されています。そのため私たちは、能登とり貝を常に育成に最適な水深に吊るすことに細心の注意を払っています。2019年には石川県水産総合センターが七尾湾の2カ所に水温や酸素濃度と植物プランクトンの量をモニタリングする安定生産支援システムを設置し、海面から海底までの毎時のデータを可視化してくれています。我々は、そのデータを随時確認して、能登とり貝を適切な水深に移動させています」。

植物プランクトンは日光の届きやすい表層に多く発生する傾向があります。しかし、とり貝は高温に弱く、水温が28℃になると衰弱してしまいます。それでいて、深い海底近くは水温は低いものの、酸素が乏しいというジレンマがあります。
「殻が薄くて、とてもデリケートな貝です。いかにストレスなく、七尾湾の豊富な栄養分の恩恵を与えられるかが、出荷量を左右するんです」と小泉氏は話します。

牡蠣はかなりタフな環境でも力強く生き抜く一方、能登とり貝は繊細でか弱い存在。梅氏は、市場では得られなかった気づきに、感慨深げです。

七尾湾の2カ所で、海底までの水温や植物プランクトンの量をモニタリングしている安定生産支援システム。漁業者がこのデータを活用するようになり、出荷量は上昇傾向にある。

河端譲氏と小泉一朗氏。「小さいのも味は変わらん。あれはあれで旨いですよね」「そうよ、俺は案外、中くらいのが好きなんよ。もっとも貴重なプレミアムを我々が味わう機会なんかありゃせんけどもな」と、能登とり貝の話は尽きない。

1980年、石川県生まれ。和食店のホールでのアルバイトから料理の世界へ。東京・両国の『墨田』で本格的な修業を開始。27歳でスペイン・バルセロナへ渡り、ミシュラン一ツ星の『SAUC』で腕を磨く。都内のバルやレストランを経て、2017年に、幼なじみの盟友、八木恵介氏、北川悠介氏と共に、金沢市にモダンスパニッシュ・レストラン『rrespiración(レスピラシオン)』をオープンし、料理長に就任。ミシュランガイド北陸2021年特別版で二ツ星とミシュラングリーンスターを獲得。


Photographs:DAISHI MIYAZAKI
Text:KOH WATANABE
(supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

石川県食のポータルサイト
いしかわ百万石食鑑
https://ishikawafood.com/

七尾湾が育む奇跡の滋味。美食家を唸らせる「能登とり貝」の比類なき旨さ。[Bon appétit Ishikawa !/石川県]

『respiración(レスピラシオン)』の梅 達郎シェフが、能登とり貝で作った一皿。ごく浅くボイルした能登とり貝に、能登のワラビ、山ウドを合わせ、セリのオイルと貝出汁のソース、新玉ねぎのソース、柑橘の泡と共にいただく。

とり貝困難を極めた種苗生産研究を経て、本格的な養殖へ。

新崎漁港をあとにした『レスピラシオン』のオーナーシェフ・梅 達郎氏が向かったのは、能登半島屈指の良港である宇出津港の近くにある石川県水産総合センター。同センターは、石川県の資源管理型漁業の推進等を目的にした研究施設です。卵から出荷まで人の手で育てられる完全養殖で生産される能登とり貝は、こちらでの採卵と種苗生産に端を発します。

同センターの企画普及部長・濵上欣也氏は、能登とり貝養殖の黎明期から携わるひとり。豊凶の差が激しい天然とり貝資源の維持・安定を図るため1988年から、とり貝の種苗生産の研究がスタートしたと振り返ります。
「とり貝の卵は65ミクロン(ミクロンはミリの1/1000)しかなく、まず採卵や人工受精に高い技術を要します。とり貝はとても弱く、受精できても、2週間ほどの浮遊幼生期になぜか死んでしまってうまくいきませんでした。飼育する水温を微調整したり、餌の種類を変えたり、とにかく手探りでなんとか生き延びてもらうために試行錯誤しました。2晩徹夜して見守ったこともあります。プロジェクトの初年度から2年間担当した私はまだ24歳でしたから、とにかくがむしゃらにやっていましたね。そうして、なんとか1cm以上にまで稚貝を育てるまでに至り、数年間生産が行われました。しかし、その後、技術的な困難性や事業の効果を踏まえ、あえなく中断となってしまいました」

とり貝の漁獲低迷がさらに深刻化した頃、今度は出荷まで人の手で育てる完全養殖を目指したプロジェクトがスタートしました。2009年の予備試験で一定の成果があったので2010年から本格的に種苗生産試験と養殖試験が開始されました。漁業者への養殖技術指導などを経て、2015年についに本格出荷に漕ぎ着けます。漁業者へ10万個の稚貝の配布及び、6万個の市場出荷を目指したものの、数年は3万個台程度の出荷に留まります。研究を進めていくうちに、海水温と貧酸素、餌の量といった環境の影響が大きいことが分かり、とりわけ夏場の高水温を避けることの重要性が明らかになってきました。そこで、2019年には前出の安定生産支援システムを設置し、漁業者がいつでもスマートフォンで海中の状況を確認できるようにソフトウェアを稼働させました。これにより、出荷量が飛躍的に伸びたのです。

石川県水産総合センターにて。35年前、とり貝の種苗生産プロジェクトに若くして参画した企画普及部長・濵上欣也氏(右)。異動によってとり貝の事業から離れていたが、2009年から再びとり貝の完全養殖の推進に取り組んできた。

石川県水産総合センターの一角を借りて、能登とり貝のボイルと試食に取り組む梅氏。

茹で上がった能登とり貝。鳥のくちばしを連想させる黒く尖った身が特徴。

梅氏は食感や風味を入念にチェックしながら、本来の持ち味を最大限に引き出す調理法に思いをめぐらせる。

とり貝心地よい食感、強い甘み。その旨さ、完全に別物。

能登とり貝は、重量サイズ別に5つの区分(プレミアム・特大・大・中・小)で出荷されています。最大のプレミアムは殻付き重量で200g以上。出荷量全体のわずか1%未満と言われる希少品です。石川県水産総合センターで獲れたての能登とり貝を試食させていただきました。

プレミアムサイズの殻を自ら剥く梅氏は、その大きさもさる事ながら、ずしりとした重量感に驚きます。
「牡蠣もそうなんですが、殻の大きさに関係なく、中にどれだけ厚い身が入っているかが重要なんです。これは、手にしただけで身がいっぱいに詰まっていることがわかりますね」
内臓を取り、身を開くと、鮨ネタとしてよく見かける他産地のとり貝の倍はゆうにあろうかという一枚となりました。厚みも見るからに段違いです。

まずは定番のボイルから。濃度1%塩水を沸騰させ、1分間茹でて熱々を食べてみます。大胆に頬張った梅氏の口元からは、「ギュッ、ギュッ、ギュッ」と心地よい歯応えを感じさせる音が聞こえてきます。じっくりと身質や風味を確認しながら味わっていた梅氏は、「旨いですね」と破顔します。
「大きいからといって大味ではまったくない。むしろ甘みが強い。天然物と同じように自然の植物プランクトンで育つからでしょうね。そして、身が厚いから、一般的なとり貝のグニュっとした食感と違って、どちらかというとサクサクするような小気味よい食感を楽しめます。噛み締める美味しさがあって、噛み締めるほど甘みが増幅する。これは、普通のとり貝とは完全に別物ですね」と評価します。

次に同様にボイルした一片を冷やして試食した梅氏は、なるほど、と何か思いついた様子。鍋のお湯の温度を下げ、能登とり貝をゆっくりとくぐらせる程度に火を入れると、すぐに冷凍室へ入れて冷やしました。待つこと数分。しっかり冷えた茹で能登とり貝を頬張る梅氏は、丹念に噛み締めながら、うん、うんと頷く。さらに、クセがあるとされる生の一片もペロリ。「僕は生も好きですね、海の風味がダイレクトに来る」と微笑みました。

『レスピラシオン』の厨房にて、能登とり貝の調理に取りかかる。

調理のキモは茹で加減。試行錯誤の末にたどり着いた繊細な火入れのために、湯の温度と投入時間に注意を払う。

とり貝大地から海へと繋がる里山里海の恵みを一皿に。

後日、梅氏は能登とり貝を使った料理を用意してくれました。
「普段、僕は土地の風景を映し出すような料理はあまり作らないのですが、今回はあえてそうしてみました」と話す一皿は、いつもの『レスピラシオン』のミニマルでストイックな美しさが表現された料理とはうって変わって、能登とり貝が奔放に踊っているかのよう楽しげな印象。能登とり貝と共に皿を彩るのは、能登で旬の時期が重なる山菜であるワラビや山ウド。やはり能登の里山にも自生するセリのオイルも能登とり貝の出汁を合わせたソースに加え、新玉ねぎのソース、柑橘の泡が添えられています。

「クヌギやミズナラの林が広がる能登の里山。落ち葉やどんぐりが堆積する大地には、さまざまな動植物の命が育まれています。その土中の養分が溶け込んだ雪解け水が七尾湾に流れ込み、植物プランクトンに満ちた豊かな漁場ができる。七尾湾周辺で春から初夏にかけて旬となる山菜と合わせることで、大地から海へとつながる里山里海の風景を表現しました」と梅氏は話します。

能登とり貝を付け合わせのワラビと山ウド、ソースと共にいただきますーー。山菜特有の心地よい苦味と香り、新玉ねぎソースの自然な甘みと相まって、能登とり貝本来の旨味が単体で味わうよりも強く感じられます。海と山、それぞれに由来する個性的な味わいが調和し、響き合うような感覚。なるほど、能登とり貝の養殖筏から見た風景が、まるで味覚から再現されるかのようです。

そして、驚くのは、能登とり貝のみずみずしさ。プリンとしていて、歯応えもほどよく、上品な甘みと香りが華やかに広がります。

「70℃のお湯で10秒間の湯引きにしています。能登とり貝ならではの弾力と繊細な風味を引き出すためにたどり着いた火入れです。プレミアムサイズの場合ですから、もっと小さなものは数秒の投入でいいかもしれません。実際に調理してみて、他の貝にはない、能登とり貝の魅力を実感しました」。

今回、能登とり貝の生産地を訪ねた梅氏は、あらためて能登の里山里海が育む食材のポテンシャルの高さに驚いたと話します。
「石川の食材をもっと知りたいという思いが強くなりました。すぐれた食材の新たな魅力を発掘し、伝えるのは、料理人の大切な役割でもあります。自分の皿を通じて、発信していきたいです」。

能登とり貝と山野草を合わせ、七尾湾の里山里海の風景が一皿に表現された。

築150年の町家をリノベーションした『レスピラシオン』では、日々、石川県産食材の新たな魅力を引き出した食体験が繰り広げられている。

1980年、石川県生まれ。和食店のホールでのアルバイトから料理の世界へ。東京・両国の『墨田』で本格的な修業を開始。27歳でスペイン・バルセロナへ渡り、ミシュラン一ツ星の『SAUC』で腕を磨く。都内のバルやレストランを経て、2017年に、幼なじみの盟友、八木恵介氏、北川悠介氏と共に、金沢市にモダンスパニッシュ・レストラン『respiración(レスピラシオン)』をオープンし、料理長に就任。ミシュランガイド北陸2021年特別版で二ツ星とミシュラングリーンスターを獲得。

住所:石川県金沢市博労町67 MAP
電話:076-225-8681
営業時間
 昼:12時一斉スタート
 夜:18時一斉スタート
定休日:月曜日を中心に月6回
https://respiracion.jp/


Photographs:SHINJO ARAI, DAICHI MIYAZAKI
Text:KOH WATANABE
(supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

石川県食のポータルサイト
いしかわ百万石食鑑
https://ishikawafood.com/

拠点も名刺も持たず、ただ旬の食材だけを持って最高の料理を届ける。さすらいの料理人・カルロス。[出張料理人カルロス/広島県広島市]

日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』はこちらから

出張料理人・カルロス氏の料理の数々。「旬という時間軸が失われつつある現代で、その季節を楽しみに待つような料理をつくり続けたい」。

出張料理人カルロスカルロス×カルソッツで、目指す新たな広島名物。

広島には、地元を拠点に活躍する、一風変わった出張料理人がいます。

その名は、カルロス。

店もホームページも名刺さえも持たず、ただ縁のあった人の元へ赴き、そして最高の料理を作り上げる料理人。その風貌から屋号としてカルロスと名乗っていますが、広島育ちの日本人。ファッションも、料理も、生き方も、すべてが自己流である、魅力的な人物です。

そんなカルロス氏の話でとくに興味深いのは「カルソッツ」なる言葉。これはスペイン・カタルーニャ州の名物で、長ネギのように細長いタマネギのこと。これを直火で真っ黒になるまで焼いて、皮を剥いてディップにつけて味わう料理がカタルーニャ名物としてあるのだそう。家庭料理ではなく、BBQや祭りで味わうのが本場流。カルロス氏は、このカルソッツを、日本に広めたいのだといいます。しかし日本にはカルソッツという品種はありません。だから広島の生産者に依頼し、日本流のカルソッツを生産してもらっているのだといいます。

調理中のカルロス氏。幼い頃から外国人と間違われることが多く、現在はその経験を逆手に自らカルロスの屋号を名乗っている。

カルロス氏がカルソッツの生産を依頼する『夜明けのジョニー農園』の農園主・ジョニー氏。広島の里山の畑でジョニーとカルロスがネギについて語り合う、という不思議な光景だ。

出張料理人カルロス地元の、旬の食材で仕立てる、その日、その場所だけの料理。

とある春の一日、カルロス氏に出張料理を依頼してみました。

到着したカルロス氏が持っていたのは時期も終わりに近かったカルソッツと、いくつかの野菜、それに採れたての卵や米、地元の魚。

到着するやいなや、すぐに料理に取り掛かるカルロス氏。それは見惚れるような手際です。持参した器具と、現地の器具を無駄なく使い、初見の厨房でも、まるで戸惑う様子はありません。そして、目の前で調理をしているからこそ、話を聞く時間もいくらでもあります。

まず気になるのは、なぜ出張料理人なのか、ということ。その手際を見ていると、レストランを構えて人気を集めることだって簡単そうに思えます。

「自由な身でいることで、いろいろな人、いろいろな食材に出会いたいんです」。

カルロス氏の答えはシンプルでした。

「旬という時間軸が失われつつある現代で、その季節を楽しみに待つような料理をつくり続けたい。そのために何ができるか考えてみると、料理の過程やストーリーを伝え、体験として愉しんでもらうことが一番だと思いました」。

それは個性的なファッションに身を包み、フランクな物腰のカルロス氏の、揺るぎない哲学。

その後も調理は続き、やがて本日のディナーが完成しました。

ニンジンとミカンのマスタードソース和え、オリーブのソースを合わせた広島の鯛、蒸し鶏にはカルソッツの青い部分とジョニー農園の芽ニンニク。どれも直感的に「旨い!」と思える完成度。いわば子供が食べても、笑顔になって、おかわりを欲しがるような味です。もちろん大人が食べても、心から満足の吐息が漏れます。

肉料理は柑橘系のタレに漬け込んでからオーブンでじっくりと焼き上げた豚塊肉。里芋と牡蠣と芽キャベツとジャコのアヒージョは、汁まで飲み干したくなるようなおいしさ。炊きたての米は、新鮮な卵と塩で卵かけご飯に。

イベントでの調理経験も豊富なカルロス氏は炭火やBBQコンロを使った料理もお手の物。難しい炭火の火加減も見事にコントロールする。

ニンジンとミカンのマスタードソース和え。ニンジンの甘みとみかんの酸味の調和が絶妙。あえて食感を残すようなニンジンのサイズ感も見事。

近海産の新鮮な鯛の刺し身を、オリーブのソースで。淡白でクセのない鯛に、あえて存在感のあるソースを合わせることで、鯛そのものの魅力も引き出す。

しっとりと蒸しあげた鶏に、広島産タマネギ(カルソッツ)の青い部分と芽ニンニクのソースを合わせた一品。

里芋と牡蠣と芽キャベツとジャコをアヒージョ仕立てに。里芋のとろみと牡蠣の旨味が溶け出したスープは、それだけでツマミになるような濃厚なおいしさ。

出張料理人カルロスカタルーニャの伝統を、広島で再現。

仕上げは、やはりカルソッツ。網の上で真っ黒になるまで焼いた国産カルソッツを新聞紙に包んでしばし蒸らす。それから黒い部分を手で掴んで引っ張ると、つるりと皮が剥けます。ロメスコソースやアリオリソースにつけたら顔の上まで持ち上げて、下からかぶりつくのが正しい食べ方。

かぶりつくと熱い汁が口を満たし、それから甘み、そしてネギの風味と柔らかい甘みがソースと見事に絡み合います。そして何より、このお祭りのような愉しさ。大きな口を開けてカルソッツにかぶりつく行為は、まさにカルロス氏がいう「体験としての食」に違いありません。

その他の料理も同様に、ただ料理を食べるだけの食事ではなく、食材や調理法の背後にある物語まで追うような体験。知らなかった広島の食材に出合い、知らなかった異国の文化を知り、そしてそんな素敵な時間を届ける出張料理人の存在を知る。そんな出合いと発見が、食の感動を倍増させてくれるのです。
そして出張料理人として、希望の場所にこんな感動を届けてくれることこそ、カルロス氏が出張料理人としてさすらいの存在で居続ける理由なのでしょう。

カルロス氏の作り上げたディナー。「お腹いっぱいになってほしい」との思いから、食べきれないほどボリューム満点にするのがカルロス流。

外側の皮が真っ黒に焦げ、隙間から小さな泡が溢れ出したら焼き上がり。「できれば地元紙で」という新聞紙に包んで数分蒸らしてから味わう。

右手で黒い部分、左手で青い部分を掴んで上下に引くと、つるりと皮が剥ける。お好みのディップにつけてかぶりついて味わう。

https://www.instagram.com/sundayscarlos/


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さくらんぼの王様「佐藤錦」を、シンプルに、ダイレクトに。[和光アネックス/東京都中央区]

店名と同じさくらんぼを販売する『佐藤錦』の「さくらんぼ佐藤錦100%ジュース」(箱入り)。食通も唸るフレッシュなジュースは、ギフトにも最適。

WAKO ANNEX自信があるから余計なことは一切しないジュース。

山形のさくらんぼを代表する「佐藤錦」を生んだ佐藤栄助翁を祖先に持つ『佐藤錦』。

さくらんぼの王様と形容される「佐藤錦」を100%使用した贅沢な「さくらんぼ佐藤錦100%ジュース」は、さくらんぼが持つすっきりとしたキレのある酸味とほのかな甘みが特徴です。

まるでルビーのような色合いは、自然が生んだ素材そのものの美しさ。栽培には非常に手間暇と時間がかかり、農家の高い技術も必要とされます。

丁寧に育てられたさくらんぼをふんだんに搾ったジュースは、体にも良く、ストレートはもちろん、氷を入れて冷やしたり、レモンスライスを入れて飲むのもおすすめ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

美しいルビー色は、素材のさくらんぼ「佐藤錦」の品質の高さを物語る。ストレートで飲むことによって、果物の本来の味をダイレクトに堪能できる。

季節に応じて、夏などは氷を入れてオンザロックで飲むのも爽快。レモンスライスとの相性も良く、よりすっきりとした味わいに。ぜひお試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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大人が、全力で遊ぶために作られた秘密基地。瀬戸内の小島に佇む、海辺のヴィラ。[瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島/広島県東広島市]

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まるで地中海にあるような建築の『瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島』。長閑な大芝島にあって異質ではあるも、不思議と景色と馴染む。

瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島目的地は全周約7kmの小さな島。

広島で宿泊場所を探そうとすると、魅力的な施設が多いことに気付きます。

百万都市である広島市街には名だたる名門ホテルが並び、瀬戸内の島々にはオーベルジュからペンションまで、そして山間部には老舗の温泉宿も。選択肢が多すぎるのは、うれしい悩みでもあります。

絞り込みのために希望条件を追加してみましょう。瀬戸内の海を望むオーシャンビュー。波音が部屋まで届くような静かなロケーション。その雰囲気に浸れるような貸し切りの宿。条件を追加する度に候補は減り、最後に一軒のヴィラが残りました。それが『瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島』です。

所在地は周囲7km、島民はわずか100名。みかん栽培が盛んで、島内にはレストランも商店もないという小さな島、大芝島。それはきっと瀬戸内の凪いだ海のように静かな島なのでしょう。朝日で目覚め、日没で仕事を終えるような、昔ながらの生活が残っているのでしょう。そしてきっと、心震えるような美しい景色と出合えるのでしょう。少ない情報をつなぎ合わせて想像しながら、大芝島への道をたどります。

予想に反し、本土と大芝島を結ぶ橋は立派な造り。橋上の道幅は狭いものの、島民100名ほどの小さな島の入口としては橋自体の構造は重厚で、そして美しい姿をしていました。大芝島に寄せる期待も高まります。橋は大芝島の西端にあり、ヴィラは島内の東端。島の外周を走る道路を進むと、想像していた通りの景色が広がります。犬の散歩をしている人、海に釣り糸を垂らす人、軒先の椅子にただ座っている人。小さな港沿いにはガードレールもない細道。山の斜面の段々畑はみかん畑でしょうか。波音が生活のリズムを刻むような、浮世離れした離島です。

浅瀬の先に見える岩山の案内には『大芝島のモンサンミッシェル』とあります。言われてみれば、あの修道院とよく似た姿です。小さな発見のひとつひとつが、心を日常から非日常へと誘うような体験になります。

本州と大芝島を結ぶ大芝大橋。総橋長470mの重厚な橋で、優れた建造物に贈られる土木学会の賞も受賞している。

大芝島の外周を走る道路。一部はガードレールもなく、視界の先いっぱいに海が広がるような絶景が楽しめる。

『大芝島のモンサンミッシェル』。規模は小さいが、干潮のときにのみ陸と道で繋がる岩山は、本家とそっくりな景観。

瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島遊び尽くしたオーナーが、自身の夢を詰め込んだ場所。

小さな島を半周分、ゆっくり走って30分もかからぬ道中ですが、それは見どころが多く濃密なドライブとなりました。そしていよいよ目的地に到着です。

『戸内ヴィラ ダイアリー大芝島』は、海を望む道路に建っていました。地中海のような雰囲気の建築はこの長閑な島にあって異質ではありますが、不思議と景色と馴染んでいます。

海側は全面ガラス張り、館内全てがオーシャンビュー。寝室からも、バスルームからも、リビングからも、ダイニングからも、どこにいても海が見えます。白を基調にした室内に瀬戸内の光が差し込みます。それは眩しいほどの光量です。

その圧倒的な開放感は、一般的な宿泊施設とは一線を画します。すべての部屋が横一線に配置され、部屋を移動するためには別の部屋を通り抜ける必要があります。しかし、どこにいても海が見えるのです。つまり利便性や動線など商業施設ならば当然重視される部分よりも、瞬間的な景観を重視しているような施設なのです。便利であることよりも、楽しい場であること。それは言うなれば、振り切った遊び心のようなもの。

では果たしてどんな想いでこの宿をつくったのでしょうか。そこで出迎えてくれたオーナーの山田悟市氏に尋ねてみました。

聞けば山田氏はこの島でもう一軒同じようなヴィラを営んでいるといいます。しかし生まれはこの島ではありません。ただこの島、この海に惚れ込み、通い続けたのです。

「この大芝島に島外から移ってきた最初のひとりが私です」。そう山田氏は言いました。それはこのヴィラを開くためではなく、ただ「自分が遊ぶためですよ」と笑いました。

若き日の山田氏は、とにかく本気で遊び尽くしたといいます。冬は雪山、夏は海。大好きなハワイにも足繁く通いました。とくにウェイクボードはプロを目指すほど熱中。ただ好きなことに熱中する生き方に憧れていたのです。そうして自分でも「遊び尽くした」と思えたとか。やがて年齢を重ね、海遊びにはドクターストップがかかったとき、山田氏は考えました。

「自分が大好きなこの海を、もっと知ってほしい」。

自分の海遊びの拠点だった家を改築してヴィラにしました。そこだけでは足りなくなると、自分の理想を詰め込んだヴィラをもう一軒、ゼロから作り上げました。1日1組限定の、隠れ家のような貸し切りヴィラ。海を間近で見つめ、感じ、マリンスポーツをするにも、ただゆったりと過ごすにもぴったりの場所。それがこの『瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島』なのです。

窓の向こうは小路を挟んですぐに海。瀬戸内ブルーと呼ばれる明るい青の海が広がる。島の端にあるヴィラの前は通行人も少なく、視線も気にならない。

寝室にもこのサイズの窓。日が落ちると海の向こうの灯台の明かりや星あかり以外は何も見えないほど真っ暗になる。

ファッションやデザインも好きなオーナー山田氏の手により、構成するあらゆる要素がスタイリッシュ。まるで地中海にいるような気分に。

自身の半生を回顧する山田氏。自分で「遊び尽くした」といえるほど遊んだからこそ、自信を持ってこのヴィラを作り上げられたのだろう。

瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島体全体で海の存在を感じる、特別な時間。

テラスのデッキチェアに座ると、静かで、規則正しい波音が聞こえます。太陽の角度により、海の色は刻々と変化します。ダイニングで食事をするときも、リビングのソファに腰を下ろしても、海は見え続けます。やがて完全に日が落ちて、窓の外の景色は真っ黒になっても、波音は変わらずに届きます。

それはきっと、海育ちではない人が、もっとも海に近づける時間。常に海が見え、聞こえる。だんだんと海の存在に慣れ、その存在が当たり前になる。時折、目の前の海をフェリーが横切り、ふと高い波音が聞こえると、再び海に意識が向く。そんなことの繰り返しが、海を身近に感じさせてくれるのです。

旅という短い時間の中で、土地の人の生活や想いの一端に触れること。それは狙ってできることではありませんが、こうして実現できたとき、その旅はきっと誰しもにとって忘れがたい記憶となることでしょう。

ヴィラの中、どの場所にいても常に視界には海がある。その海との距離感が、非日常へと誘ってくれる。

焚火や花火やBBQなど、日が落ちてからの楽しみもいろいろ。一棟貸しのヴィラならではの贅沢な時間だ。

住所:広島県東広島市安芸津町風早2612-8 MAP
電話:0846-45-6251
http://y51.jp/

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最強の缶詰。酒との相性抜群の肴。[和光アネックス/東京都中央区]

京都府丹後半島網野町で魚屋一筋50数年、1950年創業『魚政』の「サザエの缶詰 京丹後産サザエの昆布オイル煮」。京丹後産のサザエを使用し、昆布オイルで仕上げたオリジナルの缶詰。

WAKO ANNEX歯ごたえ、旨味、濃厚エキスが凝縮されたサザエ。

京都丹後地方は日本の中心部に位置し、冬の松葉ガニ、春の定置網、夏の丹後とり貝、岩牡蠣、秋の底引網、のどくろなど、四季ごとに様々な海産物が水揚げされます。

そんな土地をお膝元に海の美味追求をしているのが『魚政』です。

「このような自然環境に恵まれた中から、旬を大切に、味を大切に、今までの豊富な経験と知識を活かし、皆様に喜んでいただける松葉ガニや海産物をお届けします。蟹や魚には“何故そのようになるのか、なったのか”“生態や姿”“季節”など、漁場や歴史など必ず必然性があります。そのことを理解し、魚や蟹の本質を大切にして取り扱います」とは、代表・谷次賢也氏の言葉。

「サザエの缶詰 京丹後産サザエの昆布オイル煮」においても同様。大粒のサザエは、独特な形状をし、歯ごたえ抜群で旨味が凝縮。一度に大量にボイルしてから、食べやすく剥き身にし、上質な昆布とオイルで煮込み、贅沢な缶詰に仕立てます。よく肥えた時期のサザエから滲み出てきた濃厚なエキスは、実に味わい深い逸品。

酒の肴や、おつまみに。そのほか、アヒージョなど アレンジして幅広く楽しめる万能選手な品です。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

そのままでも質の高い味わいだが、トマトの酸味をアクセントに合わせるのもバランスが良く、おすすめ。ローズマリーを添えればオイルに香りが移り、海と森の美味饗宴を果たす。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
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Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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新天地は、故郷・京都伏見。ここから新しい物語が始まる。

生まれ育った町、京都伏見にて『日々醸造』として酒造りを始める松本日出彦氏(中央)とその仲間たち。左より、山口和真氏 辻井 亮氏、上田幸治氏、松本氏、小柳 然氏、廣瀬里砂さん、関本梨央さん。左側の建物は、築100年以上の古屋を活かし、今後のコミュニケーションスペースに。右側の建物は、新設した蔵。

HIDEHIKO MATSUMOTO「武者修業」を終え、松本日出彦は、もう一度酒職人になった。

2022年4月、ついに『日々醸造』の蔵が完成。松本日出彦氏にとって、第二の酒人生が始まりました。

新天地は、故郷・京都伏見。お世辞でも広いとは言えない酒蔵は、松本氏曰く、「数センチ単位で無駄をなくした」空間。平面図から酒造りの動線をイメージし、何度も脳内でシミレーションを行い、今の配置に。

建物は、ステップ式の2層構造。まず1層目には、発酵させるタンク、搾り機、蒸し場と洗い場を置きます。2層目には、酒母室と麹室を置き、1層目で蒸したお米は、2層目に開口された床からリフトカーで上げる仕組み。酒造りの知恵と工夫が凝縮された空間構成です。

新設した蔵の二階部分。右側、床を抜いた部分より蒸米をリフトアップし、仕込む。奥の扉左側は酒母室、右側は麹室。

蔵の一階部分。洗い場と蒸し場、醸造タンク(下記)を配す。狭小ながら、考えられた緻密な設計。

蔵の一階部分。ステップ式に用意された醸造タンク。「今後は、木桶も仕込んでいこうと考えています」と松本氏。

重厚感のある梁や天井が歴史を感じる古屋。中二階には、事務スペースを設ける。「今後は、このスペースを使ってお客様とのコミュニケーションを計ったり、お酒の販売も検討しています」と松本氏。

2021年11月に訪れた時には、まだ蔵もなく、古屋を掃除し、整えるところから始まった『日々醸造』。造り手は、松本氏(中央)をはじめ、左より、山口和真氏、近野丞悟氏、松本氏、上田幸治氏、辻井 亮氏。

2021年11月時点では、今ある蔵の場所は、まだ更地だった。当時、古屋は物置と化し、足の踏み場もないような状態。『日々醸造』の酒造りの道具は、ほぼ全て手作りであり、その大半がこの時期に制作されたもの。建物入り口には、元々、この場所にあったお地蔵様を受け継ぎ、備える。 Photographs:YUICHI KURAMOCHI

HIDEHIKO MATSUMOTO

ファーストリリースされるお酒の米は、松本氏が以前より愛する兵庫の山田錦に加え、栃木『仙禽』の「武者修業」にて仕込んだ亀の尾。

『仙禽』さんで仕込みをご一緒させていただいた時、亀の尾が持つお米の力強さに驚かされました。『仙禽オーガニックナチュール』は、90%精米の無酵母無添加。荒々しいはずなのに、お米のネガティブな部分はなく、むしろポジティブな部分が引き出されている印象を抱きました。もちろん、(薄井)真人さんの技術が素晴らしいのだとは思いますが、とにかくお米のポテンシャルの高さに驚きを隠せませんでした」。

2021年6月。『仙禽』の「武者修業」にて畑を訪れている松本氏。この時は、まさか自分の蔵を持ち、そこで亀の尾を使用するとは知る由もなかった。

2021年10月。兵庫の田んぼに足を運んだ時の松本氏。この時には新たな蔵の準備も進み、米の仕入れと生育環境の確認を行う。「ここは、山々に囲まれ、風の通りも良い。山田錦が育つには最適な環境です」と松本氏。

上記、田んぼを巡回後、松本氏が大工さん(愛称)と呼ぶ農家の藤井氏との会話も。「ここは、前蔵よりお世話になっている田んぼと農家さん。米をただ仕込むだけでなく、育った環境や作り手を知ることが大事」と松本氏に対し、「また、酒造りができてよかったのぉ」と笑顔で返す藤井氏。

玄米調整をする田中氏は、松本氏が信頼する職人のひとり。ふたりの間には、納品準備が整った大きな米袋。「松本日出彦」と書かれているのは、「蔵の名前がまだ決まっていないから、何て書いて良いか分からんじゃろ!」と田中氏。様々な人の支えがあって今の松本氏があるも、それは、これまで真摯に米や人と向き合ってきた証と言える。

HIDEHIKO MATSUMOTO

もともと、「武者修業」を終えた後も「何か別のかたちで五蔵(新政仙禽冨田酒造白糸酒造花の香酒造)とつながりを持ちたかった」と話していた松本氏。その第一弾として結ばれたのが、『仙禽』で使用するお米・亀の尾でした。

『日々醸造』では、55%精米。同じく生酛造りではあるも、環境も水も造り手も違うため、当然味は異なります。加えて、松本氏はもちろん、「武者修業」の第二弾では、スタッフ全員も本家『仙禽』の酒造りにも参加しているため、どのような違いが現れるかは顕著に感じるでしょう。

「自分は、ずっと兵庫の山田錦に向き合ってきましたが、『武者修業』を通して、それぞれの蔵元の特性、造り手、農家さん、畑、環境などと出会い、学ぶことによって、別のお米に触ってみるのも良いと思う自己の変化がありました。そういう意味では、厳密に最初に触れたのは、『冨田酒造』の玉栄。ですが、今、玉栄を使って酒造りをしたら、 また違った味になると思います」。

それは、なぜか。答えは、経験の違いにあります。当時はお米のみを譲り受け、酒造りをしていたのに対し、今後であれば『冨田酒造』での酒造りを経ての酒造りになるためです。『仙禽』同様、本家の酒造りを共にした時間は、酒職人として生きる松本氏の人生を大きく変えたと言えるでしょう。

このような視点を持って見れば、『日々醸造』が仕込む玉栄のお酒が飲める日も近いかもしれません。

午前の仕込み後、松本氏とともに伏見を歩く。すると、蔵の近くに流れる川で立ち止まり、大きく深呼吸。

「濠川は、伏見城築城のために宇治川から引かれた水路なのですが、琵琶湖から流れてきてるんです。そう考えると、昔から冨田さんともつながっているんですよね」。

美味しいを超える先にあるものは何か。造り手の想い、地域への愛、素材の力。人それぞれ答えはあれど、それを探し当てるのは至難の業。なぜなら、目には見えないから。ラベルには書いていない物語は、飲み手が能動的に意識を働かせ、背景を得なければいけないのかもしれません。

何種類飲んだかは、重要ではありません。本当に価値あることは、人生における大切な一本や造り手と出会えるか否か。松本氏もまた、後者となれる一本に、酒職人になれるよう、日々、精進してます。

2022年4月。この日仕込んでいたのは、亀の尾。京都の水、造り手、蔵が変わることによってどんな味になるのか楽しみだ。

洗った米は、一晩寝かし、蒸し器に入れられる。少人数、小スペースで酒造りをしなければいけない条件は、知恵と工夫で解決する。

米が蒸しあげられる様は、圧巻。蔵内には、蒸した米の香りが広がり、いよいよ『日々醸造』は始動したのだという実感にもつながる。

丁寧に空気を含ませ、粗熱を取る。「再び、自分の蔵で米に触れることができて、本当にうれしく思います」と松本氏。

『日々醸造』としては、ファーストヴィンテージとなる米を切り返す松本氏とスタッフたち。工程のひとつ一つに気持ちが入る。

既にタンクにて醸造中の山田錦。プツプツ、ピシピシと静かに発酵音を奏で、生きた液体を感じる。

『日々醸造』のすぐ目の前に流れる濠川。琵琶湖とつながる水源は、「この川を通る度、冨田さんを思い出すんですよね(笑)」と松本氏。玉栄との出合いは、必然だったのかもしれない。

HIDEHIKO MATSUMOTO酒造りができる歓び。五蔵への想い。そして、父との約束。

『日々醸造』は、『新政』、『仙禽』、『冨田酒造』、『白糸酒造』、『花の香酒造』の五蔵で得たものの集積でできています。

「『新政』で学んだ生酛の想い、『仙禽』で得た酒蔵と地域の在り方、限られた環境で仕込む『冨田酒造』の知恵と工夫、『白糸酒造』が徹底する麹との向き合い方、『花の香』が大事にする水の扱いや産土の精神。ただ影響を受けたのではなく、酒造りを共にさせていただくことによって、本当に人生にとって大事なものを得られた時間でした」。

そんな五蔵の魂も込められた蔵の建つ場所は、冒頭の通り、松本氏の故郷・伏見。「伏見にとっても良い酒蔵でなければいけない。そして、この街にとって、どんな貢献ができるかもじっくり考えていきたいと思っています」。

前蔵のように代々受け継がれる蔵もあれば、ゼロから始まる今の蔵もまた蔵。もともと酒蔵があった風景ではなく、酒蔵のある新たな風景として馴染めるか馴染めないかは、『日々醸造』次第。歴史や伝統を受け継ぐ苦労もありますが、新しく始める苦労もまた財産となるでしょう。そんな歴史や伝統を継ぐはずだった最中、前蔵を去ったのは、松本日出彦氏だけではありませんでした。

松本氏の父・保博氏です。

「もう一度、父に酒造りをさせてあげたかった。その約束をようやく果たせそうです」。

「よう頑張ったと思います。自分も何かやらにゃあかんなぁ!」と話す保博氏は、御年77歳。「あと10年はやりますよ!」と笑うも、眼光は鋭い。それを横目で苦笑いする松本氏は、息子の顔でした。

「さぁ、午後の仕込みを始めますか! 毎日エキサイティングです(笑)」。

5月に山田錦のお酒がリリースされ、6月には亀の尾のお酒と自社田の特別仕様もリリース。

「武者修業」は、きっと松本氏にとって掛け替えのない時間だったに違いありません。酒造りとしてだけでなく、人として生きる上で、きっと大事な何かを得たのではないでしょうか。しかし、その「何か」は、今すぐに分からないかもしれません。なぜなら、長い人生をかけて、ようやく見えてくるものだと思うからです。

初志貫徹。「原動力は心。酒造りは生きること」。

酒造りの「武者修業」、完結。

松本氏が所有する兵庫の自社田の稲刈りを終えた2021年10月。この山田錦で仕込まれた特別仕様が6月にリリースされる。

2021年3月より始った「武者修業」より、ずっと使い続けている長靴。少しくたびれた様は、哀愁が漂う。松本氏と一番苦労をともにした道具かもしれない。

『日々醸造』としては、初めての酒造りのため、蒸米をはじめ、仕込みや作業工程を細かくチェックする松本氏。「型ができるまでにはまだまだ時間はかかりますが、それも含めて、楽しみたいと思います」。

蔵が完成する前、「武者修業」の第2弾として2022年1月からリリースされた『日日醸造』仕立ての日本酒。松本氏が使用する兵庫県東条の山田錦を持ち込み、(左より)『白糸酒造』、『冨田酒造』、『花の香酒造』、『仙禽』の4蔵にて酒を造らせてもらった品々。徐々に武者修業の文字が薄くなり、『日日醸造』のロゴが濃くなるというラベルデザインは、酒職人として自立する意志の表れでもある。Photograph:YUICHI KURAMOCHI

『日日醸造』オリジナルのファーストヴィンテージは、2022年5月にリリース。酒販店での流通はほぼなく、各飲食店で目にする機会を楽しみにいただきたい。Photograph:YUICHI KURAMOCHI

2022年6月上旬にリリースされる自社田の山田錦を醸した特別仕様は、これまでよりもより少数。ボトルにはラベルを貼らず、松本氏が自ら一本一本手書きし、真空パック状に。詳細は、公式HPにて随時更新。Photograph:YUICHI KURAMOCHI

松本氏(左)と父・保博氏(右)。2020年12月、保博氏もまた、前蔵を去らなくてはいけなくなった当事者。まだ残っていた酒造りへの想い、息子・日出彦氏の将来への想い、職人として、父として、「様々な気持ちが入り混じっていましたが、ようやく一歩を踏み出せて嬉しく思います」と感慨深い表情を浮かべるも、「また私も酒造りせにゃあかんなぁ!」と大きく笑う。「そして、本当によく頑張りました」。

住所:京都府京都市伏見区城通町628 MAP
https://sake.inc

1982年生まれ、京都市出身。高校時代はラグビー全国制覇を果たす。4年制大学卒業後、東京農業大学短期大学醸造学科へ進学。卒業後、名古屋市の『萬乗醸造』で修業。以降、家業に戻り、1791年(寛政3年)に創業した老舗酒造『松本酒造』で酒造りに携わる。2010年、28歳の若さで杜氏に抜擢される。以来、従来の酒造りを大きく変え、「澤屋まつもと守破離」などの日本酒を世に繰り出し、幅広い層から人気を集める。2020年12月31日、退任。2021年『日々醸造』を設立。2022年より本格的に酒造りを再開し、酒職人として第二の人生を歩む。


Photographs&Movie Direction:JIRO OHTANI
Text&Movie Produce:YUICHI KURAMOCHI

再開と再会。約2年半の時を経て、『DINING OUT』開催。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

ダイニングアウト 木曽・奈良井本当の価値とは何か、本当に大切なものは何か。その答えを導き出す。

新型コロナウイルスによって、繰り返された緊急事態宣言、自粛要請、ロックダウン。日本だけでなく、世界中が難局を迎え、約2年半が経ちました。

家にこもる生活、会社に行かない生活、リモートワークの生活、オンラインの生活。全てにおいてコミュニケシーションは遮断され、旅はおろか、人と会うことすらできない日々が続きました。

きっと、働き方だけでなく、生き方について、深く考えた人も少なくないでしょう。それは、『ONESTORY』も同じです。空白の時代は、我々にも大きな変化をもたらしました。

そんな変化を経て迎える、第19回『DINING OUT』。再開の地は、長野県の木曽・奈良井です。

木曽・奈良井は、日本有数の漆器の産地として知られる「木曽平沢」や「木曽の大橋」のかかる「奈良井川」沿いを約1kmにわたって形成している日本最長の宿場「奈良井宿」など、歴史と伝統を大切に受け継いできた土地です。暮らしにおいては水に恵まれ、厳冬を乗り越えるための知恵と工夫によって発酵文化も息づいています。

この土地に派手さはありません。むしろ素朴な土地です。山に囲まれ、山と生きてきた木曽・奈良井は、全てにおいて「山中に学ぶ」土地なのです。

ゆえに、今回の『DINING OUT』には、過剰な演出はありません。起用するシェフは、『傳』の長谷川在佑氏です。

長谷川氏は、2022年「ASIA'S 50  BEST RESTAURANTS」にて見事No.1に輝いたのは記憶に新しく、『DINING OUT NIHONDAIRA』(2015年)や『JAPAN PRESENTATION in PARIS』(2016年)でも協業してきた人物です。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、レストラン業界においては苦渋の日々が続きました。時短営業を余儀なくされ、アルコールの提供も禁止。レストランとは何か、シェフとは何かを考え続けたひとりです。

本当の価値とは何か、本当に大切なものは何か。

第19回『DINING OUT KISO-NARAI』は、その「何か」の「答え」を導き出す場であり、伝える場。是非、『ONESTORY』が出した「答え」を体感していただければと思います。

ある意味、初心に還った『DINING OUT』であり、ある意味、これまでとは全く違った『DINING OUT』。それは、「進化」ではなく、「深化」した『DINING OUT』です。

2日目には、感染症対策を踏まえ、選択制・分散型のプログラムも実施。本当の『DINING OUT KISO-NARAI』の体験は、ここまでを享受するからこそ、初めて何かを得ることができると言っても過言ではありません。その理由は、前述、素朴な土地だからこそ色濃く学ぶ必要があり、素朴な土地だからこそ易々と理解できないためです。

「進化」ではなく、「深化」した『DINING OUT』。皆様と再会できることを心より楽しみにしています。
 

江戸時代より続く「奈良井宿」は、かつては行き交う大勢の旅人で賑わっていたと言われる。その町並みは、「奈良井千軒」とも謳われ、今なお、旅籠の幹灯や千本格子などがその面影を残す。

中山道にある「奈良井宿」は、「木曽の大橋」のかかる「奈良井川」沿いを約1kmにわたって形成している日本最長の宿場。1978年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、以降、1989年には国土交通大臣表彰の「手づくり郷土賞」、2005年には「手づくり郷土大賞」、2007年には「美しい日本の歴史的風土百選」、2009年には公益社団法人日本観光協会「花の観光地づくり大賞」なども受賞。

長野県木曽郡木曽町・王滝村と岐阜県下呂市・高山市にまたがり、東日本火山帯の西端に位置する標高3,067 mの複合成層火山「御嶽山」。遠く平安・鎌倉・室町時代に興った民間信仰と山岳信仰が結びつき最初は修験道の場として独自の山岳信仰が栄えるようになった御嶽山信仰。

木曽平沢で作られている木曽漆器。『DINING OUT KISO-NARAI』においても活用。

山中で育まれた食文化を学び、料理する『傳』の長谷川在佑氏。奈良井宿『BYAKU Narai』に併設されたレストラン『嵓 kura』のメニュー監修も務める。

開催日程:2022年7月23日(土)、24日(日)
募集人数:各日程40名、計80名限定
開催地:長野県塩尻市
出演:シェフ 長谷川在佑『傳』
    ホスト 中村孝則(コラムニスト)
協賛: 一般社団法人塩尻市観光協会
協力: 一般社団法人木曽おんたけ観光局、木曽漆器工業協同組合、塩尻市、塩尻市立楢川小中学校、奈良井区、奈良井宿観光協会(五十音順)

世界に一石を投じた農の哲学から生まれた甘夏ジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

『日本総合園芸』の『福岡正信自然農園』が作る「甘夏ジュース」。こだわりの製法に加え、ラベルも手作り。活版印刷が商品に趣を演出する。

WAKO ANNEXシンプルの先にあるシンプル。ストレートでいただく農の味。

農薬や化学肥料を使用しない自然農法の提唱者であり、『わら一本の革命』の著者、故・福岡正信氏。世界に一石を投じた農の哲学は、多くの人の共感を呼び、ものではなく心を求めた若者が世界各地から訪れ、今もその足は途絶えません。

その思いを愚直に守り続けているのは、三代目の福岡太樹氏です。太樹氏は、愛媛県伊予市の広大な柑橘畑にある『福岡正信自然農園』で、日々自然と対峙しています。

そんな作物から生まれたのが「甘夏ジュース」なのです。

甘夏本来の爽やかな甘味が堪能できる、橙色が美しいストレートジュースは、農薬や化学肥料を使用せず、製造。丁寧に育てた木成り甘夏をまるごと使用し、ベルト式搾汁機で果実を丸ごと余すところなく搾りました。100%ストレートなジュースは、まるで果実そのもののような風味が味わえます。圧搾しただけの果汁ですが、皮のエグミがなく、瑞々しさが特徴です。

シンプルの先にあるシンプル。そのこだわりのごとく、飲み方においてもシンプルに、ストレートでぜひ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

自然農法の提唱者、故・福岡正信氏の「引き算の農法」を三代目大樹氏が継ぐ。その哲学をもとに育てた作物から生まれた「甘夏ジュース」は、甘夏本来の爽やかな甘味が堪能できる。美しい橙色もまた、自然農法で育った作物であることと添加物を一切使用していない証。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

世界に一石を投じた農の哲学から生まれた甘夏ジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

『日本総合園芸』の『福岡正信自然農園』が作る「甘夏ジュース」。こだわりの製法に加え、ラベルも手作り。活版印刷が商品に趣を演出する。

WAKO ANNEXシンプルの先にあるシンプル。ストレートでいただく農の味。

農薬や化学肥料を使用しない自然農法の提唱者であり、『わら一本の革命』の著者、故・福岡正信氏。世界に一石を投じた農の哲学は、多くの人の共感を呼び、ものではなく心を求めた若者が世界各地から訪れ、今もその足は途絶えません。

その思いを愚直に守り続けているのは、三代目の福岡太樹氏です。太樹氏は、愛媛県伊予市の広大な柑橘畑にある『福岡正信自然農園』で、日々自然と対峙しています。

そんな作物から生まれたのが「甘夏ジュース」なのです。

甘夏本来の爽やかな甘味が堪能できる、橙色が美しいストレートジュースは、農薬や化学肥料を使用せず、製造。丁寧に育てた木成り甘夏をまるごと使用し、ベルト式搾汁機で果実を丸ごと余すところなく搾りました。100%ストレートなジュースは、まるで果実そのもののような風味が味わえます。圧搾しただけの果汁ですが、皮のエグミがなく、瑞々しさが特徴です。

シンプルの先にあるシンプル。そのこだわりのごとく、飲み方においてもシンプルに、ストレートでぜひ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

自然農法の提唱者、故・福岡正信氏の「引き算の農法」を三代目大樹氏が継ぐ。その哲学をもとに育てた作物から生まれた「甘夏ジュース」は、甘夏本来の爽やかな甘味が堪能できる。美しい橙色もまた、自然農法で育った作物であることと添加物を一切使用していない証。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

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元祖カリカリ梅の梅干をシャキシャキ食べ比べ。[和光アネックス/東京都中央区]

『紀州本舗』の「食べるシャキシャキ梅 紀州うめノほし」のセットは、シソとカツオ。パッケージのイラストは、世界遺産熊野古道のふもと、富田川を表現。風合いのある和紙の箱には、梅カラーの赤い箔押しを施す。

WAKO ANNEX少し添えるだけで、素朴なひと皿をご馳走に仕上げる。

創業100年以上の歴史を誇る老舗梅干し屋『紀州本舗』が作り出すプレミアムギフトシリーズ「食べるシャキシャキ梅 紀州うめノほし」。

商品名の「うめノほし」は、形を変えた細やかな梅の姿が、星のように見えたことから命名。「食べるシャキシャキ梅」の“シャキシャキ”は、フレッシュさとみずみずしさ、そして食べた時の表現によるものです。

見て納得、食べて納得。シャキシャキ食感は、お隣さまにも聞こえるほど。

味は、シソとカツオの2種をセットに用意しているため、食べ比べが楽しめるのも魅力。おにぎりの具材としてはもちろん、うどんに添えて味のアクセントにするのもまた美味。

和洋問わず様々な料理に新たな味わいを生み出す調味料にもなり、ワンランク上のひと皿へと昇華させます。

ちょっと贅沢な自宅ご飯だけでなく、ギフトや手土産にもおすすめの品です。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

まずは、おにぎりの具材としてぜひ。「食べるシャキシャキ梅 紀州うめノほし」を入れることで、素朴なおにぎりが上質なご馳走に。シソとカツオの食べ比べを楽しんでいただきたい。

うどんのアクセントにも相性抜群。だしの効いた味付けからコンソメベースにもよく合い、食感と上品な酸味がクセになるひと皿に。つい追加で梅を足したくなること間違いなし。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

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元祖カリカリ梅の梅干をシャキシャキ食べ比べ。[和光アネックス/東京都中央区]

『紀州本舗』の「食べるシャキシャキ梅 紀州うめノほし」のセットは、シソとカツオ。パッケージのイラストは、世界遺産熊野古道のふもと、富田川を表現。風合いのある和紙の箱には、梅カラーの赤い箔押しを施す。

WAKO ANNEX少し添えるだけで、素朴なひと皿をご馳走に仕上げる。

創業100年以上の歴史を誇る老舗梅干し屋『紀州本舗』が作り出すプレミアムギフトシリーズ「食べるシャキシャキ梅 紀州うめノほし」。

商品名の「うめノほし」は、形を変えた細やかな梅の姿が、星のように見えたことから命名。「食べるシャキシャキ梅」の“シャキシャキ”は、フレッシュさとみずみずしさ、そして食べた時の表現によるものです。

見て納得、食べて納得。シャキシャキ食感は、お隣さまにも聞こえるほど。

味は、シソとカツオの2種をセットに用意しているため、食べ比べが楽しめるのも魅力。おにぎりの具材としてはもちろん、うどんに添えて味のアクセントにするのもまた美味。

和洋問わず様々な料理に新たな味わいを生み出す調味料にもなり、ワンランク上のひと皿へと昇華させます。

ちょっと贅沢な自宅ご飯だけでなく、ギフトや手土産にもおすすめの品です。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

まずは、おにぎりの具材としてぜひ。「食べるシャキシャキ梅 紀州うめノほし」を入れることで、素朴なおにぎりが上質なご馳走に。シソとカツオの食べ比べを楽しんでいただきたい。

うどんのアクセントにも相性抜群。だしの効いた味付けからコンソメベースにもよく合い、食感と上品な酸味がクセになるひと皿に。つい追加で梅を足したくなること間違いなし。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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まるで飲むじゃがいも。北海道食材にこだわった人気シリーズ。[和光アネックス/東京都中央区]

『白亜ダイシン』の人気シリーズ、「北海道野菜スープ」のじゃがいも。飲んだ瞬間、優しく広がるじゃがいもの香りと味わいは、心身も穏やかにする。

WAKO ANNEX一日の生活にほっとひと息。口福な味わいがもたらす幸福な時間。

北海道岩見沢市の『白亜ダイシン』は、1964年に創業。2003年より「NORTH FARM STOCK」を運営し、その名の通り、北の畑から採れた大地の恵みを素材にした食品を提供しています。

その代表ともいうべきひと品が「北海道野菜スープ」のシリーズ。中でも人気を博しているのは、北海道じゃがいもです。

まるで野菜を食べているかのようなスープは、濃厚な味わいを堪能できます。北海道じゃがいもがギュっと一袋に詰め込まれているような凝縮感は、高い満足度を得られるでしょう。飲んだ瞬間に広がる優しくも甘い素材の香りは、心地良い口福をもたらします。

そのまま飲んでも美味しいですが、小口切りのネギやフライドオニオンをトッピングし、アレンジを加えるのもおすすめ。自分だけのオリジナルのビシソワーズをお楽しみください。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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季節やその日の気分で冷静スープとしても温かいスープとしても楽しめる「北海道野菜スープ」。小口切りネギやペッパーを添えてぜひ。

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京都府産の柔らかい筍を贅沢に盛ったご飯の素。[和光アネックス/東京都中央区]

『香月庵』の「京都産・筍ご飯の素 二~三合炊き用」(化粧缶入り)。筍ご飯の素を京都乙訓の竹林の風情が漂う「竹缶」仕様にして用意。暗い空間でほんのり光る幻想的な竹缶は、竹取物語の光る竹をイメージ。ご贈答の品としてもぜひ。

WAKO ANNEX上質な味わいをより美味しく。召し上がり方は、ぜひ土鍋で。

京都西山・乙訓の里に伝わる伝統の「筍」は、江戸時代より約三百年の歴史があります。創意工夫と農家の努力が全国に名の知れた「乙訓の筍」を育み、春の風物詩として食卓を彩ってきました。

悠久の時の流れの中、絶えることなくそれを受け継いできた『香月庵』では、自家竹林を所有。約200年もの長い年月に渡り、京都式軟化栽培法の筍を作り続けています。

「京都産・筍ご飯の素 二~三合炊き用」は、一番おいしい時期に収穫した筍が原材料。醤油、酢、味醂、山椒などを加え、味を整え、筍本来の風味を存分に活かしました。

炊飯器で炊いてももちろん美味しくいただけますが、お勧めは、ぜひ土鍋で炊いた筍ご飯を。風味や香り、味わいも深くなり、底にできたおこげもより美味しさを引き立てます。

高い製造技術と伝統の栽培が息づいた京風味を是非お楽しみください。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

土鍋で炊けば、より美味しくなる「京都産・筍ご飯の素 二~三合炊き用」。お好みで三つ葉やネギ、刻み海苔などを加えていただくのもお勧め。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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ローカルガストロノミーの極み。エタデスプリ×ペシコ、最初で最後、宮古島でふたりが交わる。 [デスプリペシコ/沖縄県宮古島]

長崎県島原市『pesceco』井上稔浩シェフ(左)と沖縄県伊良部島『Restaurant État d'esprit』渡真利泰洋シェフ(右)。4月上旬に行われた2日間のコラボイベントに密着。

デスプリペシコ終わりの始まり。エタデスプリの最終章にペシコが参戦!

地域に根ざし、その地域でしか味わえない料理や時間を提供する、いわば今後の日本の未来を支えるシェフたちの活躍を追ってきたONESTORY。まだ地方ガストロノミーという言葉さえも曖昧だった時代から、各地で芽生えた若きシェフたちに光を当ててきたそのひとつの最適解とも言えるイベントが4月某日、宮古島で密かに行われました。

主催は『エタデスプリ』の渡真利泰洋シェフ。宮古島に生まれ育ち、その後フレンチの道を志すも、自身の店『Restaurant État d'esprit』では、宮古島でフランス料理を出す意味に自問自答を続け、いつしかそのスタイルは大きくフレンチの枠を外れ、ボーダレスになっていきました。

正統派フレンチ→琉球フレンチ→進化する沖縄料理→その先へ。会うたびに料理も考え方も、面白いほどアップデートを重ねる渡真利シェフから、「面白いイベントがあるので、遊びに来ませんか?」と連絡をもらったのが、今回の取材の発端。

彼から事前にもらった情報は『ペシコ』の井上稔浩シェフとのコラボレーション。さらに4月を持って、『エタデスプリ』は店を閉めるというものでした。

ここ数年で一躍人気店の仲間入りを果たし、『エタデスプリ』に行くために宮古島へ。そんなフーディーたちの動向も、辺境の地でレストランを開くという意思を、未来へ指し示したと思った矢先、それがなんと『エタデスプリ』の突然の閉店。それだけでも重大ニュースであり、渡真利シェフの真意が聞きたくなり、取材班は当然のこととして宮古島へ行くことを決意したのです。

宮古島の北西に浮かぶ伊良部島(いらぶじま)の片隅にあり、人気のホテル『紺碧 ザ・ヴィラオールスイート』のメインダイニングとして食通を唸らせてきた『エタデスプリ』。

イベント当日、厨房ではふたりの人気シェフが揃って仕込みの真っ最中。

デスプリペシコ深く理解する”ディスカッション“の真の意味はひと皿目から。

「おはようございます。おひさしぶりです」

イベント前の殺気立った厨房をイメージしていたものの、宮古島の4月の陽射しのように柔和な笑顔で迎えてくれたのは『ペシコ』の井上シェフ。前々日にイベントのためにひとりで宮古島入りし、その後もほとんど寝ていないと言うものの、「次はチーズいこうかな。耕平くん、お願いできる?」と『エタデスプリ』のスタッフとも和気あいあい。渡真利シェフとは二人揃って仕込みの真っ最中でも、横並びで冗談交じりに会話を重ね、実に楽しげなのです。

「メニューは、数ヶ月前から意見をぶつけて、一緒に作りあげました。いろいろなシェフがコラボレーションでイベントをしてますが、今回、僕らはディスカッションがテーマ。お互いの良さと生まれた環境があると思うのでぶつかるというより、話を重ねて深く理解することから始まりました」と井上シェフが話すと、「エタデスプリがペシコに寄せたんです笑」と渡真利シェフ。そんなふたりのやりとり。イベント1時間前、さらに仕込みは押し気味だというのに、なんとも微笑ましく、イベントへのカウントダウンは進んでいったのです。

いざ、イベントが始まると客席には大阪のあのシェフに、某大手出版社の編集者、さらには宮古島の人気店のシェフまで、食の関係者も多く駆けつけ、その期待のほどが伺えます。渡真利シェフは沖縄の離島・宮古島のさらにお隣の伊良部島。井上シェフは長崎県の有明海に面する島原。目前に海を持つシェフであり、アクセスに時間を擁する辺境の地に店があり、さらに同世代。まったく異なる環境の海を持つふたりが、この日交わったのです。

1品目に供された海辺の散歩。目にも美しいひと皿目は、ペシコのスタイルと、エタデスプリのお皿が交歓した構成に。

二皿目は「海のミルク×山のミルク」。井上シェフが島原半島で懇意にする漁師・原田 奨氏が養殖する牡蠣と、宮古島で取れたヤギのミルクのムース。見事にお互いの土地の豊かさが表現されたひと皿。

「蛸のブーケ」。井上シェフの料理のひとつ蛸のブーケを宮古島バージョンで。大神島で採れた蛸を使い、蛸の頭を燻製にしたオイルを下に敷いたキャベツに忍ばせ、宮古ゼンマイ、エタリ魚醤などで味付け。

デスプリペシコすべての料理に意味がある。ふたりだからこそのコース。

ふたりからの挨拶代わりのひと皿目は「海辺の散歩」。手で持って頬張れる一口サイズのフィンガーフード4品の構成でした。このメニュー名でピンとくる方もいるかと思います。こちらは『ペシコ』で供されるひと皿目のアレンジ。店で井上シェフは郷土の伝統保存食、カタクチイワシを塩漬けにした“エタリ”をタルトレットで提供するのですが、今回はカツオの酒盗を代役に。これは伊良部島にある佐良浜漁港がカツオ漁で盛んなことに由来。

ウニのメレンゲにはあえて島原よりウニを運んだといいます。なぜならば、現在宮古島周辺では近年ウニがほとんど捕れなくなってしまったから。さらにはペシコではタイラガネと呼ばれるワタリガニを使うパイを宮古島のマングローブガニでアレンジ、刺し身はあえてネガティブな味わいとされる沖縄の深海魚アカマチ(ハマダイ)で構成。

お互いの料理のスタイルを理解しながら、土地への理解を重ね合わせた4品。そこに個性が光る調理が加わり、味わうと自然と笑みがこぼれ出してしまいます。

訪れたゲストは最初の4品で、心を射抜かれたように喜んでいるだけですが、実はこの4品には裏のテーマも隠されていました。それは「失いつつあるもの、失ってしまったもの」。

ウニを代表するかつて宮古島で捕れていた海産物、マングローブガニやアカマチのように今まさに数を減らす希少種、地元の伝統漁で捕れるカツオと、もしかしたら今後数年でこの食材は宮古島からすべてなくなってしまう可能性もあるのです。

ふたりの郷土への想いと警鐘。今、自分たちに何ができるのか。そんな投げかけまでを、見事に表現したひと皿目だったのです。

最後は二人のシェフの挨拶とともに、オリオンビールで乾杯。

宮古島を代表する観光名所・伊良部大橋の夕景。穏やかに輝く海のきらめきと同様に、ふたりのシェフが輝いた4月の某日。

デスプリペシコふたりだからできた。ふたりにしかできなかった感動の魚尽くし。

すべてのコースが終わった時。充足感とともに感じたのは、海の恵み。いや、宮古島と島原、ふたつの海の豊かさ。今回のコースには肉料理は一切使われず、それでもこの満足感と多幸感。お互いの表情を出すというよりは、そこにあたかもあった二人のシェフの料理が現出されていたのです。

「魚だけでやれると思ったのは、ヴィラ・アイーダの小林寛二シェフが野菜だけでやれることを示してくれたことも大きかった。だったら自分たちは魚でいきたいと自然と思えた。今後の自分も楽しみです」と井上シェフ。

「島にいると料理人同士の交流は本当に少ない。でもこうやって繋がれたことに感謝しかない。今まで多くの料理人が築いてくれた道があり、ようやくローカルの価値が評価され始めた気がする」と渡真利シェフ。

脈々と受け継がれた料理を次世代へ。自分たちが生まれ育った郷土の文化や食材を絶やすことなく紡いでいく。シェフたちが点と点で終わらず線へ。島原と宮古島。今回のイベントは、ふたつの辺境のシェフが、新たな扉を開いた瞬間だったのかもしれません。

「感謝しかない」と口を揃えていうふたり。深夜の打ち上げで宮古島伝統の泡盛の酒宴の飲み方・オトーリで盛り上がった夜。参加者全員に杯を手渡し、乾杯し続けるふたりの姿が実に印象的でした。翌日、井上シェフは朝一番の飛行機に乗り島原へ。渡真利シェフは、次のチャレンジに向けて、浜辺のBBQを企画。

そう、ふたりが再びこの場所で、同じ料理を出すことはないでしょう。

ただ、新たな扉を開いたふたりの料理は点ではなく線へ。いつかまた繋がる。そんな予感を期待せずにはいられない、幻のようなコースが4月の宮古島で繰り広げられたのです。

1984年、宮古島生まれ。20歳で上京、イタリア料理を学ぶ。その後、数店のフレンチで修業を重ね、渡仏。外国人として最年少でフランス・ミシュランの星を獲得した松嶋啓介氏と共に『L’Ecole de Nice』の立ち上げに参画。『Joël Robuchon』をはじめとしたパリの名店にて研鑽を積み、帰国後は31歳で『Restaurant État d'esprit』総料理長に就任。

1986年、長崎県島原市生まれ。大阪の調理師専門学校を卒業後、寿司店などを経て、2008年に父親とともに居酒屋をオープン。2014年にオーナーシェフとして島原市内に開いた『pesceco』は、2018年に移転後、『ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎 2019 特別版』で一つ星を獲得。

住所:沖縄県宮古島市伊良部字池間添1195-1 MAP
電話:0980-78-6000
営業時間:18:00~22:00
定休日:不定休
http://www.konpeki.okinawa/

住所:長崎県島原市新馬場町223-1 MAP
電話:0957-73-9014(完全予約制)
営業時間
 昼:12時入店
 夜:19時入店(土曜日のみ)
定休日:月曜日、日曜日
https://pesceco.com/



Photographs:SHINJO ARAI
Text:TAKETOSHI ONISHI

ゼロからの物語はいらない。瀬戸内の文化を継ぐ船にしたかった。[guntû/広島県尾道市]

『ガンツウ』の設計を手掛けた建築家・堀部安嗣氏。「『ガンツウ』は、船に足を踏み入れてから地上に足を下ろすまでの全てが一連体験。瀬戸内とともに過ごす時間は、生きる上で大事な何かを気づかせてくれると思います」。

ガンツウ大事にしたかったことは風土。自分は、それを次世代に伝えるためのリレー走者。

「小さな頃から、乗り物が大好きだった。建築家になってからも、いつか乗り物の設計をしたいと思っていました」。そう話すのは、『ガンツウ』の設計を担った建築家・堀部安嗣氏です。

通常、建築は大地に根を張ることがほとんどですが、船である『ガンツウ』は海上ゆえ、言わば動く建築。違いはあれど、「大事にしていることは、どちらも変わらない」と堀部氏は言います。

それは、風土を生かすこと。

「瀬戸内には、文化、歴史、自然、地域、食、人。様々な風土があります。デザインやクリエイションは、今までにないものを生み出すことを期待されますが、既に存在しているものが良質であれば、それを継ぐものを作りたい。自分は、リレー走者のごとく、幸運にも出合った瀬戸内の風土を次の世代に伝えるための一翼を担わせていただいただけなのです。過去からの時間の流れを分断することなく、現代に継ぎ、未来にバトンをつなげたいと思っています」。

風土のひとつ、多島美が広がる瀬戸内の風景は、穏やかで静か。窓を多く配した船内では、どこにいてもそれとつながることができます。また、最上階にあるダイニングや鮨カウンター、ラウンジにおいては、壁面や天井の材に椹(さわら)を使用。木材が持つ色味も手伝い、自然光が優しく包み込む日中には特に美しい空間を形成します。

「自然の風景は、自然の中で見ることが心地良いと思い、船内には木をふんだんに採用しています。コンクリートや鉄、アルミなどのフレームから望む風景では、内と外の世界が分断されてしまいます。そんな瀬戸内の風景には、人の営みがあるということが大きな特徴だと感じています。世界中の多くに絶景はあれど、そのほとんどは自然のみ。暮らしはありません。瀬戸内は、この美しい自然を維持しながら人が介在している。つまり、共存された風景なのです。いつの時代においても文化を築いてきたのは人です。だからこそ、瀬戸内には歴史があるのだと思います。そんな背景を知れば、ただ美しいだけではない感慨が芽生えてくる。島、山、海など、見えるものだけで分析するのではなく、見えない物語を探ることによって旅に深みが出る。そんな大事なことへの気づきを与えてくれるのも『ガンツウ』の旅なのだと思います」。

「ダイニング」や「ラウンジ」を始め、最上階の材には椹(さわら)を使用。柔らかな印象は、木が持つ独特の色味だからこそ形成できる。

「瀬戸内の多島美は、見ていて飽きることはありません。常に変化をもたらせてくれる島々には人の暮らしも介在し、その営みが風景により深みを与えていると思います」と堀部氏。

ガンツウ「ガンツウ」の全ては、縁側から始まった。そこで過ごす時間が一番愛おしい。

「『ガンツウ』の中で一番好きな場所は、縁側です。あそこに座ってのんびりと晩酌しながら瀬戸内を望み、ゆっくりと過ごす……。島々の風景が流れていく様は、まるで絵巻物のようです。永遠に眺めていたいと思わせる縁側の時間は、様々な発見をもたらしてくれます」。

その発見とは何か。実にシンプルなことだが、奥が深く、答えはない。

「自分ってなんだろう、自然ってなんだろう、時間ってなんだろう。『ガンツウ』は、そんな大事な何かを発見するところなんじゃないかなと思うんです。とてもシンプルなことなんですが、それがまた難しい。この答えは、インターネットでは検索できません。昨今のテクノロジーの進化から得る情報収集と、見る、食べるなどの体験から得る情報収集は全く違います。自然の中に身を置くことによって、自分は、この地球の一部であり、生かされているって感じるんです。実は、以前乗船した際、あるお客様とお話しする機会があって。その方は、“自分の精神を再発見する旅”だとおっしゃっていました」。

まだ見ぬ何かを追い求めていく旅もあれば、既に知る何かを探求し、極めることもまた旅。答えは出なくとも、考え続けることが何かを見出す光明なのかもしれません。

そんな想いに没頭できるのは、心地良い空間あってこそ。『ガンツウ』の発想は、前述の通り、風土を大事にした建築様式ですが、堀部氏はその哲学を「日本料理に似る」と話します。

「瀬戸内は、素材が素晴らしいので、手を加え過ぎる必要はありません。料理においても良い素材であれば、ちょっとしたひと手間やそのままいただくのが一番美味しい」。

確かに、『ガンツウ』の料理に過度な演出はありません。しかし、目には見えない丁寧な仕込みがあるからこそ、素材は活きます。それは建築も同様。だからこそ心地良い空間を創造しているのです。堀部氏の建築は、まるで「出汁」のような設計が生むものなのかもしれません。

「『ガンツウ』にいると、世界を見る前に日本を見たい。そう思わせてくれるんです。風景においても、文化においても、日本においても、奥の奥まで探って、また表が見えてくる。限られた世界を旅することによって、より深いところを知り得ることができる。世界中を旅しても、『ガンツウ』が一番良い。そう思っていただけるような船になれればと思っています。そして、自分に還る場所のような存在でありたい。ただいまと思っていただけるような包容力のある場所になりたい。我々だけでなく、島の方々、お客様とともに、この船を育てていければ幸せです。」

建築家・堀部氏が一番好きな空間だと話す「縁側」。「縁側に座って、風を頬で感じ、波の音に耳を傾け、瀬戸内の景色を望みながら一杯。これが最高。是非、お客様にも体験いただきたいです」。

上記、縁側でいただける晩酌。ただ景色と対峙し、瀬戸内の食と酒に興じる時間こそ、『ガンツウ』にとって最高の贅沢。

『ガンツウ』は内装だけでなく、外装にもこだわる。瀬戸内の景色と馴染むような配色や三角屋根が特徴。

住所:広島県尾道市浦崎町1364-6(出港地・帰港地『ベラビスタマリーナ』) MAP
電話:0120-489-321(10:00〜18:00)
info@guntu.jp
https://guntu.jp

Text:YUICHI KURAMOCHI

瀬戸内は、地球からのギフト。我々は、その宝箱をまだ開けたばかり。[guntû/広島県尾道市]

船首に設けられたオープンデッキ。身体中で瀬戸内の景色と風を享受し、海上の時間を楽しみたい。「この景色が一番の宝物」と、『ガンツウ』総支配人・小林 敦氏。

ガンツウ瀬戸内は、日本のエーゲ海ではない。せとうちだ。

そう話すのは、『ガンツウ』総支配人・小林 敦氏です。

「『ガンツウ』が就航したのは、2017年。開業に至る経緯は、オーナーの想いからでした。せとうちの文化、歴史、芸能、自然、食、人。この魅力に溢れた瀬戸内をどこから見るのが一番綺麗なのか? そう考えた時、海から見る景色が一番綺麗だったと言います。では、この景色をどうすれば世界の人々に伝えられるのか? それには客船が必要だった。そのために『ガンツウ』は誕生しました」。

オーナーとは、広島県福山市に本社を置く造船・海運を主に展開している企業です。ゆえに、日々、瀬戸内を航海し、その魅力を一番知る当事者でもあります。

「ですが、当時、我々には、全く客船に対する知見がありませんでした。それだけでなく、食材を仕入れるために必要な漁師さんや農家さん、料理をするシェフやサービスマン、設計をする建築家さんたちとの関係も一切ありません。ゆえに、2年かけてじっくりと各所へ回り、お願いを繰り返しながら準備をしてきました。もちろん、最初から全てがうまくいくわけもなく、受け入れていただけないこともありました。それでも通い続け、通い続け、ご理解をいただきながら今では良い関係を築かせていただいております」。

なぜ、そこまでして関係を築くことが必要だったのか。それは、『ガンツウ』で体験する全てが瀬戸内でなければ意味がなかったからです。

「本当の意味での瀬戸内のポテンシャルは、まだ世に伝えきれていないと思っています。『ガンツウ』はただの客船ではありません。(前述の)オーナーの言葉通り、船旅を通して、瀬戸内の文化、歴史、芸能、自然、食、人を表現するために我々は活動しています」。

瀬戸内のポテンシャルを世に伝えきれていないと思う理由のひとつに、小林氏の実体験も重なっています。小林氏は、瀬戸内生まれ、瀬戸内育ち。ですが、『ガンツウ』に携わるまでは、「地元の魅力に気づけていなかった」と話します。

「瀬戸内は、日本のエーゲ海だと例えられることがあるのですが、私はそう思いません。瀬戸内は、せとうち」。

それだけ主語をすり替えられない場所が瀬戸内であり、その体験を供しているのが『ガンツウ』なのです。そのために船外体験も実施しています。

ある日は大三島の『大山祇神社』に訪れて歴史に学び、またある日は竹原の街散策や酒蔵に訪れ、文化に触れます。訪れた酒蔵は、創業150余年の『藤井酒造』。『ガンツウ』の客室に用意するミニバーやダイニングでも供している「夜の帝王」や「龍勢」を醸す蔵元です。

造り手に会い、話を伺い、その想いに触れ、船に戻る。客室やダイニングから竹原方面を眺めながら杯を交わす酒は、前出の体験前と後では、その感慨は大きく変わるでしょう。口に含めば、蔵の風景や造り手の顔が脳内を駆け巡ります。

これは、小林氏が話す「お客様と瀬戸内のつなぎ手になりたい」という言葉に集約されているのかもしれません。

瀬戸内海の景色に馴染むよう、船体の色はシルバーに。『ガンツウ』からの望む瀬戸内海の景色は、地上では得ることのできない感動を与えてくれる。

客室はもちろん、ダイニングやパブリックスペースなど、どの場所にいても景色とつながることができる船内。

ある日訪れた大三島では、『大山祇神社』へ。島々の歴史や文化など、知識豊富な『ガンツウ』クルーのガイドもあるため、多くの学びを得られる。

ある日訪れた竹原。竹原町並み保存地区の中央にある『西方寺』は、江戸時代中期に建てられたもの。高台からは、町全体の絶景を一望できる。

上記、『西方寺』のあとは、『ガンツウ』でも用意する日本酒「龍勢」を醸す『藤井酒造』へ。杜氏や造り手との出会いを経て飲めば、舌で感じる美味しさを超え、より深く心に染み渡る。

一部の船外体験へは、テンダーボートで移動することも。小型ながら迫力もあり、『ガンツウ』とはまた違った船の高揚を体験できる。

「瀬戸内は、地球からのギフトだと思います。この魅力を世界中の方に伝えていきたいです」と『ガンツウ』総支配人・小林 敦氏。

ガンツウ今がベストだとは思っていない。常に最良を求め、正解を探し続けている。

「『ガンツウ』が始まってから、まだ4年余り。今でも試行錯誤しています。ちゃんと瀬戸内を表現できているか。ほかにできることはないか。魅力を伝えきれているか。常に正解を探し続けています。お客様に愛されることはもちろん、瀬戸内からも愛されるような存在になりたいと思っています」。

その想いは、『ガンツウ』という名にも込められています。

「ガンツウ」とは、瀬戸内で獲れる小さなイシガニの備後地方の方言。昔から当たり前のように存在する小さなカニのごとく、永く愛される存在になれるよう命名されました。

「瀬戸内は、地球からのギフトだと思います。我々は、まだその宝箱を開けたばかり。更に、その価値を伝えるべく、研鑽していきたいと思います」。

『ガンツウ』は、高級・希少食材を提供することや豪華客船になることを目指してはいません。ただただ、瀬戸内の魅力を虚飾なしに伝え続ける船でありたいだけなのです。ゆえに、ライバルはいない。

「何かと比較することはありません。『ガンツウ』は、『ガンツウ』ですから。我々のやり方で、『ガンツウ』のやり方で、瀬戸内のやり方で、お客様にご満足ただけるよう、日々、努力を積み重ねていきます」。

美しい瀬戸内の景色。ゆっくりと、静かに、移りゆくそれは、ただ眺めているだけで心身を癒す。朝、昼、夕、夜、その全ての時間が美しい。

住所:広島県尾道市浦崎町1364-6(出港地・帰港地『ベラビスタマリーナ』) MAP
電話:0120-489-321(10:00〜18:00)
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Text:YUICHI KURAMOCHI

海と一体になった居住空間。体験をもってゲストは「ガンツウ」の真実を知る。[guntû/広島県尾道市]

わずか1室のみ用意される「ザ ガンツウスイート」。約90㎡の広さを有し、開放的な空間を演出するも、一番の特徴はその位置。船首に配されているため、進行方向の景色を一望できる。

ガンツウ常に風景が変化する、動く客室。地上を超えた、海上の楽園。

『ガンツウ』の客室は、全19室、4タイプ。

その内訳は、1室のみの存在する「ザ ガンツウスイート」をはじめ、「グランドスイート」2室、「テラススイート 露天風呂付き」2室、「テラススイート」14室です。

まず、「ザ ガンツウスイート」。約90㎡という快適な広さはもちろん、この客室における特別は、その場所にあります。客船には珍しく、船首側に配置。船長と同じ目線で旅をすることができるのです。1室のみのため、当然、進行方向の景色は独占。ベッド、露天風呂、ソファなど、全てを前方に置くため、どの空間にいても高揚感を切らすことはありません。景色の向きによってこんなにも別世界になるのかと驚愕するほど、特別を超えた唯一無二の「見る」体験。室内外おいて、船が進むスピードや風が可視化されたかのような錯覚すら覚える臨場感もまた、「ザ ガンツウスイート」に宿泊したゲストのみの特権です。

「グランドスイート」の特徴は、4タイプの中で最も広いテラスを有していることです。変化に富んだ瀬戸内の景色を一番ダイレクトに感じられる空間かもしれません。また、より一層、テラスを堪能したければ、整体の施術をぜひ。身体を撫でる優しい潮風、耳元で奏でる心地良い波音は、全身をリラックスさせる最高の環境。更に、人の手による技術も加われば、より良い効果を生むことは言うまでもありません。その源は、海から得るチャージ、地球から得るチャージ。例えるならば、ワインのビオディナミのごとく、自然の摂理と重なり合う健康促進を得られるのかもしれません。

そして、「テラススイート 露天風呂付き」の客室。その名の通り、露天風呂を配し、その材には檜を採用。晴れた日や暖かい季節には、ゆっくりと浸かりながら、瀬戸内の絶景を眺める贅沢を味わえます。ベッドの足元には大きな窓を配しているため、あえて就寝時にはブライドを閉めず、自然の光とともに目覚めるのも良いでしょう。

「テラススイート」においては、広さ50㎡とコンパクトながら、十二分に快適を堪能できます。ほかと同様、テラス、ソファルームも完備しているため、じっくり寛ぎたい。

全てに共通していることは、景色とつながっていること。また、ミニバーには、瀬戸内を中心としたお酒やジュースなど、オールインクルーシブなメニューを豊富に用意。

アメニティは、『Aesop(イソップ)』。そのほか、細かい設備やサービスに至るまで、センスが光ります。

しかし、残念ながら『ガンツウ』の体験は、どんなに語っても、言葉や活字、写真、映像においても伝わらないでしょう。それほどまでに、100%体験型の旅なのです。

高級ではなく上質。価格ではなく価値。そんな言葉が似合う旅こそ『ガンツウ』なのです。

船内において、最も多い14室を有す「テラススイート」。ベッドルームに加え、ソファを用意したリビング空間もあり、ゆったりと過ごすことができる。

2室用意された「テラススイート 露天風呂付き」の客室。海側に配された檜の露天風呂は、癒しだけでなく、海を間近に感じることができる。

4つの客室タイプの中、最も広いテラスを有する「グランドスイート」。ベッドの横になりながら、移りゆく島影や遠くを行き交う漁船の姿をただただ眺める贅沢を満喫したい。テラスでは、波音を聞きながらの整体の施術を受けることもできる。

わずか1室のみ用意する「ザ ガンツウスイート」。船首に位置するため、進行方向の景色を独占できる。

「ザ ガンツウスイート」には露天風呂も完備。ここもまた、船首に配置されているため、進む船によって迫り来る景色を望みながら湯に浸かることができる。唯一無二の贅沢だ。

住所:広島県尾道市浦崎町1364-6(出港地・帰港地『ベラビスタマリーナ』) MAP
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ガンツウ。それは、地球を旅する物語。[guntû/広島県尾道市]

ガンツウOVERVIEW

瀬戸内と生きる旅、瀬戸内だからこそできる旅。瀬戸内海に浮かぶ小さな宿、『ガンツウ』。

それは、広島県尾道市にある『ベラビスタマリーナ』より出港、帰港されます。

『ベラビスタマリーナ』へは、広島空港より車で約60分。電車であれば、JR福山駅から約40分、尾道駅から約50分。

いずれの場所からも、気配り、心配りが成されたお迎えが用意され、到着後の手続きにおいても、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンなどのヴィンテージ家具を配した美的空間にて行われます。

プロローグとも形容できるこれらの体験は、旅の高揚感、期待感を向上させる時間となるでしょう。

航路は、季節や出航日に合わせて用意。春夏秋冬によって表情を変える瀬戸内の景色は、見ていて飽きることはありません。むしろ、永遠に眺めていたいと思うでしょう。

そんな気持ちにさせてくれる最大の要因は、瀬戸内の島々の存在です。

はるか向こうには水平線。広大な海を航海する旅の美しさもありますが、常に風景に変化をもたらす限られた海域の航海もまた美しい。

『ガンツウ』の場合は、後者になります。

船内の拠点となる客室はもちろん、ダイニングやバー、浴場、スパ、ラウンジなど、全てにおいて、そんな風景とつながる建築設計もまた、この船旅を特別にする役割を担います。

船上の時間は、すべてが愛おしい。昇る朝日も、沈む夕日も、闇を照らす月も、煌めく星も。

船上の時間は、地球の時間。『ガンツウ』は、瀬戸内を享受する喜びだけでなく、生きる喜びも与えてくれるのです。

住所:広島県尾道市浦崎町1364-6(出港地・帰港地『ベラビスタマリーナ』) MAP
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Text:YUICHI KURAMOCHI

3分30秒の奇跡。老舗が届ける本格にゅうめん。[和光アネックス/東京都中央区]

江戸時代中期に創業して以来、三輪の手延べそうめんの伝統技法を受け継ぐ奈良県桜井市の老舗『三輪山本』が作る数量限定の即席にゅうめんの「雲丹・帆立 にゅうめん」(左)と「牛肉にゅうめん」(右)。コンロで沸騰させた湯に麺とスープを入れ、3分30秒で完成する。電子レンジ(500W)においても同分秒にて調理可能。

WAKO ANNEX自身でいただくのはもちろん、ギフトにも最適。通で粋な逸品を。

創業300年。1200年余りにも及ぶ手延べの伝統技法。

そう聞くだけで、高い壁と威厳に満ちた印象を持ちますが、その惜しみない努力と歴史の味を『三輪山本』では幅広く提案しています。

その味とは、そうめん。

こだわりのそれは、皇室にも献上されるほど。小麦粉、塩、水、少量の綿実油を使用し、気温や湿度に合わせて配合。熟練のそうめん師の絶妙な加減で寒期に約36時間かけ、細いそうめんに仕上げていきます。

今回、お勧めしたい品は、数量限定の「雲丹・帆立 にゅうめん」と「牛肉にゅうめん」。両者とも味は本格的ながら、即席というのが特徴です。

「雲丹・帆立 にゅうめん」は、雲丹と帆立の身がごろっと入った豪華な海鮮スープがにゅうめんの美味しさを引き立てます。エキスたっぷりの海の旨味は、コシのある麺とも相性が良く、最後の一口まで美味しくいただけます。

「牛肉にゅうめん」の牛肉は、実は自社のお食事処で人気の国産牛肉を使用したもの。ほんのりと生姜が香るコクのあるスープでいただくにゅうめんは、旨味が凝縮され、高級感さえ漂う。

いずれにしても、一度体験すれば、これが即席ということに驚きを隠せないでしょう。

お湯を沸かして、麺とスープを注ぐだけ。最後に付属のネギと七味を添えればでき上がり。3分30秒の奇跡。

長い年月をかけたからこそ創造できた味を限られた人にではなく、より多くの人に、より簡単に届けるのは、老舗たるゆえんと懐の大きさ。

ぜひ、この感動を体験していただきたい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

即席には似つかないしっかりとした具材の入った「雲丹・帆立 にゅうめん」。にゅうめんのコシと味わいだけでなく、豪華なスープも魅力的な品。

国産牛肉をたっぷりと使用した「牛肉にゅうめん」。牛肉の甘さと生姜のコクと香りがスープにも溶け込み、食べる毎に深みを帯びた味わいを楽しめる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

健やかな朝。体が喜ぶ、豊かなひと塗り。[和光アネックス/東京都中央区]

愛媛県内子町にて、ピクルス、ジャム、オイル漬けを手づくりする『GOOD MORNING FARM』の「ブラッドオレンジシロップ煮」。主になる原料は、地元愛媛産を使用。旬野菜であること、新鮮であること、もちろん美味しいことを大切に、野菜の栽培方法は農家に任せているのも特徴。ゆえに、慣行栽培、有機農法、自然農など、取り扱う野菜の栽培方法は様々。

「農業をもっとお洒落にカッコよく!」をモットーに、地元農家様の栽培する農作物の販路開拓・営業支援・地元農作物のブランド推進などを行う『楽農研究所』の「SOIL TABLE レインボージャム3層」(左)、「SOIL TABLE 神の島レモンシロップ漬け」(右)。

WAKO ANNEX目覚めの一杯もとい、目覚めの一口。

朝起きて食事をする前、コップ一杯の水を飲むと良いと言われています。

理由は、体内の余分なものを排出するデトックス効果と睡眠の間に失われた水分を補うという効果です。

1日の始まりに何を取り入れるか。それは体を目覚めさせる大事な行為なのかもしれません。

そう考えれば、水に限らず、朝食にも気を配りたいところ。そこでお勧めしたいのがジャム。忙しない時間にもちょっとひと塗りするだけで済むのはもちろん、それが国産の果物にこだわったものであれば、より体が喜ぶはず。

まず、貴重な国産ブラッドオレンジのスライスが入ったひと瓶、『GOOD MORNING FARM』の「ブラッドオレンジシロップ煮」。

素材のオレンジは、「タロッコ」という品種。中身は、真っ赤というより、赤とオレンジが、まだらに混ざり合っているのが特徴です。ひかえめな酸味と、コクのある甘みは、パンにひと塗りすれば、極上の朝食になるでしょう。

そのほか、お菓子の材料や紅茶、チーズと合わせても楽しめます。

ちょっと変わった合わせでは、ビールに入れるのも好相性。皮ごと漬けているため、果物の苦味とビールの苦味、そしてシロップの甘みが「別物」として杯が止まらない!?かもしれません。

『楽農研究所』の「SOIL TABLE レインボージャム3層」、「SOIL TABLE 神の島レモンシロップ漬け」もぜひ。

「SOIL TABLE レインボージャム3層」は、その名の通り、いちご、伊予柑、キウイフルーツそれぞれの果肉感をのこしたゴロゴロジャムを敷き詰め3層のジャムに仕上げられています。上から食べていくのも良し、全部をかき混ぜて食べるも良し、愛媛県の果実をギュッと詰めた一瓶になります。

「SOIL TABLE 神の島レモンシロップ漬け」のレモンの産地は、愛媛県今治市の大三島。「日本総鎮守」と称される『大山祇神社』があることから、古くから「御島」と呼ばれ、漁業を忌みし、農耕で生きてきた「神の島」です。聖なる島で大切に育てられた神の島レモンを使用し、『伊勢神宮』に奉納された蜂蜜に漬け込んだシロップ漬けになります。

朝の始まりは、ひと塗りから。ぜひ、3品とともに口福な目覚めを堪能していただければと思います。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

希少な国産ブラッドオレンジのスライスが入った『GOOD MORNING FARM』の「ブラッドオレンジシロップ煮」。オレンジは、宇和島の柑橘農家「ニノファーム」産を使用。

『楽農研究所』の「SOIL TABLE レインボージャム3層」(手前)、「SOIL TABLE 神の島レモンシロップ漬け」(奥)。「レインボージャム3層」は、各層によって味を楽しめるだけでなく、3層を混ぜることによって抜群の調和を堪能できる。「神の島レモンシロップ漬け」は、皮ごと漬けているため、甘みと苦味のコクと旨味を楽しめる。品の良いシロップの甘さも特徴。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

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果物と野菜の可能性を引き立てる。ノンアルコールだからこそ出せる味。[和光アネックス/東京都中央区]

佐賀県佐賀市『川原食品』(MIFUKAN)の「Yuzu Awa 10% ゆず果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」。佐賀県産の柚子と天山の天然水を使用した贅沢なノンアルコールスパークリング。1969年に柚子の自社栽培を開始し、農薬は一切使用せず、水や肥料も与えない自然農法にこだわる。

北海道虻田郡『デリシャスふろむ北海道』の「HAKKO GINGER STANDARD」。有機素材と情熱で造る発酵ヘルシードリンク。名前の由来はもちろん「発酵」だが、「発光」と「8個」(本文参照)という意味も含む。いつまでも若々しく輝き続ける「発光」、7つの有機原材料と作り手の情熱を加えて「8個」の原材料で完成する。

WAKO ANNEX美味しいを超えた共感とは何か? その応えがこの2本にはある。

まるでワインを選ぶように、ジュースなどのノンアルコールも選びたい。いや、こだわりたい。

ひとつは、佐賀に根付いて創業100年の『川原食品』(MIFUKAN)。伝統を守るだけでなく、新たな食の楽しみを創造し、佐賀の美味しいもの作りに努めています。中でも名産の柚子こしょうは、半世紀以上に渡って生産しており、著名なシェフたちからの信頼も厚い。

今回、お勧めしたい「Yuzu Awa 10% ゆず果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」においても、都内のラグジュアリーホテルやレストランにも採用され、人気を博している逸品。

ノンアルコールの柚子スパークリングの味わいは、スパークリングワイン風味に仕上げています。和のテイストである佐賀県産自社農園の「柚子」と天山の「天然水」を贅沢に使用。柚子の香りの癒しと白ワイン風の酸味が口の中に広がり、微炭酸の喉越しと上品な甘さがすっきりとした味わいを醸します。

もうひとつは、日本初国産ジンジャービア醸造所「HOKKAIDO GINGER Lab.」を設立した『デリシャスふろむ北海道』の「HAKKO GINGER STANDARD」。

場所は北海道虻田郡、ニセコにて醸造されるそれは、生姜、レモン、唐辛子など、国産原材料(栽培期間中農薬不使用)にこだわり、北海道に自生するエゾヤマザクラの酵母にて発酵。天然の華やかな香り、しっかりとした辛さ、やさしい甘みが特徴のヘルシードリンクです。

「HAKKO」とは「発酵」が由来ですが、実は、「発光」と「8個」の意味も持ちます。若々しく輝く「発光」、ジンジャー、レッドペッパー、レモン、レモンピール、水、野生酵母、糖蜜、そして作り手の情熱の「8個」から成るものこそ、「HAKKO GINGER STANDARD」。

「Yuzu Awa 10% ゆず果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」や「HAKKO GINGER STANDARD」の味はもちろん美味しいですが、本当に大切なことはそれ以外に多く含まれているのかもしれません。食材へのこだわり、丁寧な製造、地域への貢献、作り手の哲学……。舌の上では感じることのできない深き背景が共感を呼ぶのかもしれません。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

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1400年前から引き継がれる、もてなしの心。 九州の先端・シブシで料理人が出会う、とっておきの人と美味。[鹿児島県志布志]

志布志市の『東八重製茶』代表・東八重隼氏と一緒に茶畑を見学する、シェフとバイヤーたち。

志布志市食材ツアー海と山の幸に恵まれた豊穣なる場所・志布志

前面には紺碧の水面をたたえる志布志湾、また背後にはなだらかな丘陵が広がって、一年を通して燦々と陽光が降り注ぐ。鹿児島県の東部、大隈半島の付け根に位置する志布志市は、温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、さまざまな海と山の幸を抱えた場所です。

「志布志」という少し変わった地名は、およそ1400年前に天智天皇がこの地を訪れた際に、地元の民から贈られた手布を称賛したことに由来します。そう、この街には来訪する者を虜にする自然や美味、人々の笑顔が溢れているのです。今回東京から春の訪れを待つ3月の志布志を訪れた、シェフとバイヤーたち。海風と緑の芽吹きを感じながら、地元の美味や人々との出会いに大いなる感銘を受けたのでした。

志布志湾にて、『加治木水産』のしらす漁の様子。漁船2隻が平行に大きな網を引きながら魚群を追います。

志布志市食材ツアー志布志からはじまった、白イチゴのブーム。

まず志布志の恵みの「華」ともいうべき存在が、イチゴです。志布志は一年を通して晴天が多く日照時間が長いために、フルーツ作りが盛んな土地柄。なかでもイチゴの生産量は、鹿児島県内では志布志がトップなのです。多くの農家で全国に流通する品種「さがほのか」や新品種の「恋みのり」などが栽培されています。そして近年とくに注目を集めているのが、志布志が発祥の希少種「淡雪」。“幻のイチゴ”とも呼ばれる白イチゴで、こちら『農Life いちごの村』の看板商品です。代表の丸野恵美子さん曰く、淡雪は「さがほのか」が突然変異して生まれたそう。完熟しても外見は赤くならず、ピンク色のままといいます。

「これ、すごいですね。見た目は未完熟なのに甘く、熟したイチゴの香りもあります」。東京・六本木のモダン・インディアン・キュイジーヌレストラン『ニルヴァーナ ニューヨーク』シェフの引地翔悟氏は、そう唸ります。桃色のルックスが桜の花を想起させるため、春先のパフェの主役にしたいと、すでにメニューの構想が閃いた様子。

「淡雪のフリーズドライや、それを練り込んだチーズなど加工品もあるので、東京のシェフからの引き合いもありそうです」。青果バイヤーとしてレストランへの卸を担う栗山功氏の脳裏にも、淡雪のさらなる展開がよぎったようです。

実際に『農Life いちごの村』の淡雪は毎年シーズンになると、銀座『和光』でタルトの具材の主役に。「淡雪のタルト」の名前で販売されています。ここ志布志からすでに全国に誇るイチゴブランドが生まれていました。

『農Life いちごの村』の代表の丸野恵美子さん。

手入れの行き届いた『農Life いちごの村』のビニールハウス内を見学するシェフたち。

こちらは『農Life いちごの村』の「さがほのか」。この品種が突然変異したのが、淡雪。

『農Life いちごの村』のビニールハウス内の淡雪。5月までが収穫の盛りです。

淡雪の甘さと香りに感心する青果バイヤーの栗山功氏。

志布志市食材ツアー青空の下ですくすく育つ、目が覚めるような橙のニンジン

次に訪れたのが、『川崎農産』のニンジン畑。工場長・川崎隆央氏から、環境配慮型の減農薬農業について、お話を伺います。

自然を労りつつ、太陽の光を浴びて育てられたニンジンは、色鮮やかな橙(だいだい)に。シェフたちは自分で抜いたニンジンを用水路のせせらぎで洗ったら、そのまま齧り付いています。食の安全のために、ここ『川崎農産』では米の「なつほのか」も含めて自社で責任をもって加工、保管も担っています。

『川崎農産』工場長の川崎隆央氏。

「なるべくおいしそうなものを!」と畝を見ながら、ニンジンを抜くシェフとバイヤー。

愛紅にんじんという品種。「漬物にしても味が濃くておいしい」と川崎氏。

志布志市食材ツアー栽培量では全国第2位。知られざる茶どころ、志布志

昼食は、製茶メーカー『和香園』が営むレストラン『茶音の蔵』へ。ここでは、地元のお茶を使った創作料理のコースと、ティーペアリングを体験します。志布志市の位置する鹿児島県大隅地域は土壌の水はけがよく、また朝晩の寒暖差が大きいために、お茶の栽培に適した場所。なんと、荒茶(茶畑から獲れたままのお茶)の栽培量では静岡県に次ぐ全国第2位です(2020年度調査)。ここ『和香園』は70年以上も製茶業を営み、2021年にはSDGsのためにレインフォレストアライアンス認証も取得しています。

食前酒に提供されたのが、ウーロンブラックティーの炭酸割り。深い苦味とかすかな甘味が、身体に染み渡ります。他にも刺身に旨味を添える、粗挽き緑茶などもあって、新宿のイタリアンレストラン『クラウディア』でマネージャー兼ソムリエを務める浦田直人氏は、このティーペアリングの展開に興味津々です。前菜にほうじ茶、メインの魚に釜炒り茶、デザートに水出し緑茶など。志布志のお茶の奥深さを知れる昼餉となりました。

『和香園』が営むレストラン『茶音の蔵』のまわりにも、茶畑が広がっています。

蔵をリノベーションした店内。話しているのは、『和香園』副社長の堀口崇氏。

牛ももステーキは、ほうじ茶ソースで仕上げています。

ウーロンブラックティーの炭酸割りを楽しむ、『ニルヴァーナ ニューヨーク』のシェフ・引地翔悟氏。

志布志市食材ツアー郷土の英雄から受け継いだ釜炒り紅茶

昼食のあとに訪れたのが、紅茶づくりで強みを発揮する『東八重製茶』。害虫駆除などに難儀しながら、完全無農薬で「べにふうき」を栽培し、緑茶と紅茶を製造します。その看板商品が「武士の紅茶」。香りがいい春摘みの「べにふうき」を、郷土の英雄・五代友厚が残した製法で紅茶にしています。

「この紅茶、独特のうまみと香りがありますよね。細かく粉砕して、バニラアイスの塩分の代わりに使えば、面白いかもしれません」。東京・四ツ谷のフレンチビストロ『MARUGO YOTSUYA』の統括シェフ・竹田志郎氏はいいます。他に、東京・秋葉原『NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO』の山下晋太エグゼクティブシェフも、同じく調味料としての紅茶の可能性を感じた様子。

次に「志布志市観光特産品協会」へ移動して、市のさまざまな特産品に触れます。そのあとは、志布志湾の絶景を望む『志布志湾大黒リゾートホテル』にて懇親会がとりおこなわれました。そのなかでは、地元食材を使ってシェフが料理を振る舞う場面も。こうして1日目の夜は更けていきます。

『東八重製茶』代表・東八重隼氏。

「武士の紅茶」はホットで入れると、鼻に抜ける甘い香りが際立ちます。

こちらはべにふうきの緑茶。シェフたちは、茶葉をそのまま試食します。

「武士の紅茶」の虜になり、顔を近づけて香りをかぐ『MARUGO YOTSUYA』の統括シェフ・竹田志郎氏。

「志布志市観光特産品協会」での試食会の様子。艶やかな緑色の志布志産スナップエンドウ。

「志布志市観光特産品協会」の施設内にて、市の特産品をたっぷりを味わいました。

こちらは志布志湾に沈む夕日。「絶景!」の一言です。

『志布志湾大黒リゾートホテル』ではホテルの夕食をいただきながら、シェフも志布志の肉や魚介を使って即興で料理を振る舞います。

志布志の特産品の数々。「調味料として使えるから」と、甘酒やイチゴ酢がシェフの注目を集めました。

志布志市食材ツアー光り輝く志布志湾と、海の宝石・シラス

翌朝は早起きして、6時から“志布志湾クルーズ”。毎年3月から解禁になる『加治木水産』のしらす漁を見学します。漁船2隻が平行に大きな網を引きながら、しらすの魚群を追う伝統の猟法は、“ばちあみ漁”と呼ばれるもの。3時間ほど待って網が引き揚げられると、身の透き通ったキラキラのしらすがいました。急いで港へ戻ったら、今度は『加治木水産』の加工場に運んで釜揚げにします。

志布志湾のシラス漁は、4月がピーク。「大きなトラック2台で毎日3回、合計でバケツ40杯ほどのシラスを釜揚げするんですよ」と、副社長の加治木レイ子氏。茹であがったあとに天日干しを経たちりめんは、背が白くて苦味が少なく、旨味が強いのが特徴です。こうして志布志湾の真珠ともいうべきシラスは、全国の食卓に届けられていくのです。

朝の志布志湾。前方の船は“ばちあみ漁”の漁船。

漁船2隻で同時に、引っ張ってきた大きな網を揚げていきます。

海から揚がったばかりのシラス。背が白いために、キラキラの見た目です。

塩のみを加えた釜の湯でふっくらと茹であげていきます。

煙の向こうで、『ニルヴァーナ ニューヨーク』の引地シェフが試食中。

茹で上げたシラスは、すぐに天日干しにします。

できあがったチリメンは選別してパッキングします。

志布志市食材ツアー鹿児島伝統の芋焼酎の可能性を広げる蒸溜所

鹿児島といえば、焼酎は外せません。昨晩の懇親会でも、志布志の人たちは最初から最後まで焼酎を飲んでいました。ここ『若潮酒造』で蒸留される、芋焼酎「志燦蔵」は志布志、いや大隅地域の日常酒です。一方、新たなフラッグシップ「千刻蔵」は画期的な木樽蒸留を採用した芋焼酎で、杉の香りが特徴的。他にも新作として、焼酎の手法を生かしたジンやイチゴスピリッツを発売するなど、『若潮酒造』は薩摩隼人ゆずりのスピード経営。その独創性に、シェフもバイヤーも感心しきりでした。

正面に見えるのは、『若潮酒造』の販売所。

木樽の蒸留施設の前で、『若潮酒造』の吉井健一氏を挟んで記念撮影。

芋焼酎「千亀女」も、『若潮酒造』のフラッグシップです。

志布志市食材ツアー捨てられるものにこそ、価値がある

今回の旅もいよいよ終盤、春を感じさせる温かな日差しを浴びながら、身体にやさしい野菜、果物づくりに努める農家を訪問します。

『Farmers Villa Ume』は、12年前に群馬県から志布志にIターンした梅沢健太氏が営む農家。6月半ばまでは、ピーマンの出荷に大忙しの日々が続きます。減農薬に努めて栽培するピーマンは、肉厚で歯応え抜群。そしてシェフとバイヤーが興味を示したのが、成長しすぎて完熟した赤ピーマン。青いピーマンに比べて需要が薄いために廃棄されることも多いそうですが、独特の酸味に惹かれて、「ペーストやマリネにしたい」との声が続々と上がっていました。

『Farmers Villa Ume』代表の梅沢健太氏。

ピーマンの出荷は、10月〜6月頭が繁忙期。

収穫どきのピーマンを選別しようとする、『NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO』山下晋太エグゼクティブシェフ。

熟したピーマンは甘味と酸味がアップ。「インドのチャツネにするとおいしいはず」と『ニルヴァーナ ニューヨーク』の引地シェフ。

志布志市食材ツアー初春の陽光を燦々と浴びて、育つ果実

最後に訪れたのが、『ファームランド牧』。こちらでは、土壌の熱水消毒、また微生物を使って発酵させた堆肥を用いることで、化学肥料を使わずにメロンを育てています。苦労しても、なるべく自然農法にこだわるのは、「残留農薬の問題を解決しないといけないから」と代表の牧信一郎氏は言います。

また外観、食味、糖度などに独自の規格を設け、その基準を満たすのは上位5%しかないというのが、オリジナルブランドのメロン「秘蔵っ娘」。そのまるんとしたメロンがビニールハウスで気持ちよさそうに頭を垂れているのを眺めていると、旅の最後にシェフもバイヤーも、それだけで幸せな気分になってしまうのでした。

『ファームランド牧』代表の牧信一郎氏。

日光浴しながら、ハウス内を歩く『クラウディア』マネージャーの浦田直人氏。

『ファームランド牧』のメロン「秘蔵っ娘」。まるっとしたフォルムが愛らしく、見ていると、なんだか朗らかな気分に。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:KOJI OKANO

(supported by 志布志市)

スパイスを使って、地元食材を引き立てる。“カレー”という名の佐賀県郷土料理。[カレーのアキンボ/佐賀県佐賀市]

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古民家を店主自らの手で改装したという『カレーのアキンボ』。表には看板もなく、静かな佇まいでゲストを迎える。

カレーのアキンボ住宅街の古民家で味わう、郷土カレーの世界。

玄界灘の魚介、有明海の海苔や牡蠣、佐賀牛や豊富な野菜。豊かな食材に恵まれた佐賀県では、古くから滋味深く、味わい豊かな郷土料理が育まれてきました。そんな佐賀県の魅力を楽しみたいときに、おすすめのレストランがあります。その名は『カレーのアキンボ』です。

それは文字通りカレーとスパイスの店。もちろんカレーと郷土の味が結びつかない方もいることでしょう。スパイスとは、“たとえ新鮮でない素材でもおいしく味わうため”に発展してきたもの。かつて一粒の胡椒が黄金の価値を持ったのも、内陸部で香辛料の料理が生まれたのも、この実用的な利用価値のためでしょう。つまりスパイス料理の王道であるカレーとは、料理人の技術にのみ依存し、土地柄には関わりがないものだと思われがちです。

そんな先入観を『カレーのアキンボ』は覆します。店は佐賀市の市街地からは15分ほど離れた佐賀大和ICにほど近い、町外れの落ち着いたエリア。

看板も出ていない古民家が舞台です。ここで腕を振るう店主・川岸真人氏に見覚えがある方もいることでしょう。そう、川岸氏はかつて、東京で行列のできるカレー屋を営んでいました。人気絶頂の最中、突如閉店してしまった伝説の店。名は同じく『カレーのアキンボ』でした。

そんな川岸氏が東京を離れ故郷である佐賀に開いたのがこの店。

「東京でやっていた頃から、いつかは故郷で店を開きたいと思っていました」。

その言葉通り、この店こそが川岸氏が目指した夢の結実なのです。

佐賀県出身の店主・川岸真人氏。料理の合間ににこやかに声をかけてくれる、彼の作る料理と同様に穏やかな人柄。

コースのメインディッシュは野菜のカレー。野菜の持ち味が際立つピュアな味わい。柔らかく煮たレンズ豆やピクルスが添えられている。

カレーのアキンボ素材を吟味し、スパイスの力でその魅力を極限まで引き出す技。

完全予約制で、全8品のコースのみ。客席は最大でも4名まで。

ある日の料理は、ヤーコンと唐津のローゼルを鰹節と梅肉で和えた前菜からスタートしました。続く温菜は、芽キャベツと原木しいたけとカブのお椀。パクチーの風味がなければ、割烹で登場しそうな穏やかな味です。さらに葉物の食感と適度な苦味に、焼いたミカンの酸味とスパイスを聞かせた菊芋をあわせたサラダ、スパイスに漬け込んで焼いた鶏もも肉に地元のチーズを合わせた肉料理。どれも素材を活かした優しい味わいです。

コースを味わううちに、きっとスパイス料理への先入観を見直すことでしょう。川岸氏のスパイスは、食材の欠点を隠すためではなく、魅力を引き出すためのもの。そしてその期待に応える、力強い食材の味。とくに野菜は苦味、甘み、香り、食感などどこをとっても上質です。

「野菜はほぼすべては地場産です。野菜は多久の畑に毎週通って採ってくるんですよ」。

地元の素材を厳選し、その魅力を引き出すために少しのスパイスを借りる。それはインド料理の手段で表現された郷土料理です。

「畑に行ったり、港に行ったり、考えてみるといつも佐賀の食材を探しています。それはこの地の食材が、わざわざ予約してカレーを食べに来てくれるお客様を喜ばせてくれるから。それは私の中で揺るがない、佐賀の食材への信頼です」。

川岸氏はそんな考えのもと、素材を活かす引き算のカレーを作ります。

ヤーコンとローゼルを鰹節と梅肉で和えた一皿。爽やかな酸味が、口内をリセットする役割を果たす。

サラダは、スパイスをまぶして焼いた菊芋と焼きミカン。葉物の軽快な食感と苦味がほのかなスパイスの風味やミカンの酸味と響き合う。

ヨーグルトとスパイスに漬けてから香ばしく焼き上げる鶏もも肉。たっぷりとかけられたチーズも、地元佐賀県で作られているもの。

コース終盤の羊のカレーは、基本は東京時代から変わらぬレシピ。しかし「こっちに来てイメージに味が追いついた」という通り、味は進化を続けている。

カレーのアキンボ小さな古民家に流れる穏やかな時間と、再臨する伝説のカレー。

そして次なる料理は、ひと皿のカレー。

「これだけは東京の頃のままのレシピです」。

それは東京で、あの行列のできる店で出されていたカレーです。そして、メインディッシュは野菜のカレーが続きます。ピュアな野菜のおいしさを、カレーという形を通して表現する優しく、まろやかで、滋味深い一皿。その後の締めのデザートまで、コースすべてが佐賀県への愛を感じさせる内容です。

テーブルは川岸氏が立つキッチンのすぐ脇。料理を味わいながら、川岸氏との会話も無理なく楽しめます。もしかするとこれも、川岸氏がここでやりたかったことなのかもしれません。

「美大で油絵を学び、寿司屋に就職し、そこで3年修業を積んだ後、カレー屋として独立しました」。

そんな波乱万丈な川岸氏のストーリーも、この店のスパイス。

8品のコースが終わる頃には、きっと誰もがこの店の料理と、佐賀県の食材の魅力に惚れ込んでいることでしょう。

店主が県内を探し回り集める野菜が料理の根幹。とくに多久の『こがベリー園』は「ここがなければ僕の料理は成り立たない」というほど信頼する生産者。

この日のデザートはリンゴと干し柿をスパイスをきかせたみりんで煮込み、ブラウンチーズを振りかけた一品。最後の一皿まで、店主の熱意が宿る。

住所:佐賀県佐賀市大和町川上475 MAP
電話:080-6426-4170
https://www.facebook.com/カレーのアキンボ-要予約-581742741900758/

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スパイスを使って、地元食材を引き立てる。“カレー”という名の佐賀県郷土料理。[カレーのアキンボ/佐賀県佐賀市]

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古民家を店主自らの手で改装したという『カレーのアキンボ』。表には看板もなく、静かな佇まいでゲストを迎える。

カレーのアキンボ住宅街の古民家で味わう、郷土カレーの世界。

玄界灘の魚介、有明海の海苔や牡蠣、佐賀牛や豊富な野菜。豊かな食材に恵まれた佐賀県では、古くから滋味深く、味わい豊かな郷土料理が育まれてきました。そんな佐賀県の魅力を楽しみたいときに、おすすめのレストランがあります。その名は『カレーのアキンボ』です。

それは文字通りカレーとスパイスの店。もちろんカレーと郷土の味が結びつかない方もいることでしょう。スパイスとは、“たとえ新鮮でない素材でもおいしく味わうため”に発展してきたもの。かつて一粒の胡椒が黄金の価値を持ったのも、内陸部で香辛料の料理が生まれたのも、この実用的な利用価値のためでしょう。つまりスパイス料理の王道であるカレーとは、料理人の技術にのみ依存し、土地柄には関わりがないものだと思われがちです。

そんな先入観を『カレーのアキンボ』は覆します。店は佐賀市の市街地からは15分ほど離れた佐賀大和ICにほど近い、町外れの落ち着いたエリア。

看板も出ていない古民家が舞台です。ここで腕を振るう店主・川岸真人氏に見覚えがある方もいることでしょう。そう、川岸氏はかつて、東京で行列のできるカレー屋を営んでいました。人気絶頂の最中、突如閉店してしまった伝説の店。名は同じく『カレーのアキンボ』でした。

そんな川岸氏が東京を離れ故郷である佐賀に開いたのがこの店。

「東京でやっていた頃から、いつかは故郷で店を開きたいと思っていました」。

その言葉通り、この店こそが川岸氏が目指した夢の結実なのです。

佐賀県出身の店主・川岸真人氏。料理の合間ににこやかに声をかけてくれる、彼の作る料理と同様に穏やかな人柄。

コースのメインディッシュは野菜のカレー。野菜の持ち味が際立つピュアな味わい。柔らかく煮たレンズ豆やピクルスが添えられている。

カレーのアキンボ素材を吟味し、スパイスの力でその魅力を極限まで引き出す技。

完全予約制で、全8品のコースのみ。客席は最大でも4名まで。

ある日の料理は、ヤーコンと唐津のローゼルを鰹節と梅肉で和えた前菜からスタートしました。続く温菜は、芽キャベツと原木しいたけとカブのお椀。パクチーの風味がなければ、割烹で登場しそうな穏やかな味です。さらに葉物の食感と適度な苦味に、焼いたミカンの酸味とスパイスを聞かせた菊芋をあわせたサラダ、スパイスに漬け込んで焼いた鶏もも肉に地元のチーズを合わせた肉料理。どれも素材を活かした優しい味わいです。

コースを味わううちに、きっとスパイス料理への先入観を見直すことでしょう。川岸氏のスパイスは、食材の欠点を隠すためではなく、魅力を引き出すためのもの。そしてその期待に応える、力強い食材の味。とくに野菜は苦味、甘み、香り、食感などどこをとっても上質です。

「野菜はほぼすべては地場産です。野菜は多久の畑に毎週通って採ってくるんですよ」。

地元の素材を厳選し、その魅力を引き出すために少しのスパイスを借りる。それはインド料理の手段で表現された郷土料理です。

「畑に行ったり、港に行ったり、考えてみるといつも佐賀の食材を探しています。それはこの地の食材が、わざわざ予約してカレーを食べに来てくれるお客様を喜ばせてくれるから。それは私の中で揺るがない、佐賀の食材への信頼です」。

川岸氏はそんな考えのもと、素材を活かす引き算のカレーを作ります。

ヤーコンとローゼルを鰹節と梅肉で和えた一皿。爽やかな酸味が、口内をリセットする役割を果たす。

サラダは、スパイスをまぶして焼いた菊芋と焼きミカン。葉物の軽快な食感と苦味がほのかなスパイスの風味やミカンの酸味と響き合う。

ヨーグルトとスパイスに漬けてから香ばしく焼き上げる鶏もも肉。たっぷりとかけられたチーズも、地元佐賀県で作られているもの。

コース終盤の羊のカレーは、基本は東京時代から変わらぬレシピ。しかし「こっちに来てイメージに味が追いついた」という通り、味は進化を続けている。

カレーのアキンボ小さな古民家に流れる穏やかな時間と、再臨する伝説のカレー。

そして次なる料理は、ひと皿のカレー。

「これだけは東京の頃のままのレシピです」。

それは東京で、あの行列のできる店で出されていたカレーです。そして、メインディッシュは野菜のカレーが続きます。ピュアな野菜のおいしさを、カレーという形を通して表現する優しく、まろやかで、滋味深い一皿。その後の締めのデザートまで、コースすべてが佐賀県への愛を感じさせる内容です。

テーブルは川岸氏が立つキッチンのすぐ脇。料理を味わいながら、川岸氏との会話も無理なく楽しめます。もしかするとこれも、川岸氏がここでやりたかったことなのかもしれません。

「美大で油絵を学び、寿司屋に就職し、そこで3年修業を積んだ後、カレー屋として独立しました」。

そんな波乱万丈な川岸氏のストーリーも、この店のスパイス。

8品のコースが終わる頃には、きっと誰もがこの店の料理と、佐賀県の食材の魅力に惚れ込んでいることでしょう。

店主が県内を探し回り集める野菜が料理の根幹。とくに多久の『こがベリー園』は「ここがなければ僕の料理は成り立たない」というほど信頼する生産者。

この日のデザートはリンゴと干し柿をスパイスをきかせたみりんで煮込み、ブラウンチーズを振りかけた一品。最後の一皿まで、店主の熱意が宿る。

住所:佐賀県佐賀市大和町川上475 MAP
電話:080-6426-4170
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贅を尽くした空間が、穏やかな時間を生み出す。日本を代表する銘酒・鍋島の世界観を伝える宿。[御宿 富久千代/佐賀県鹿島市]

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『御宿 富久千代』の舞台は200年以上の歴史を刻んできた伝統的建造物。その重厚な屋根の下で眠ること自体が希少で贅沢な体験だ。

御宿 富久千代歴史的建造物をリノベーションしたラグジュアリーな酒蔵オーベルジュ。

旅における宿は、ただ体を休める場所ではありません。荷物を下ろし、服を着替え、リラックスした時間を過ごす。それは旅人が、もっともその地域に近づける時間です。

そんな時間を楽しむための宿が、2021年にオープンしました。その一日一組限定の宿の名は『御宿 富久千代』。かの銘酒「鍋島」で知られる富久千代酒造が手掛け、宿泊を通して銘酒の世界観に触れられる酒蔵オーベルジュです。

佐賀県鹿島市浜町、通称“酒蔵通り”。重厚な古民家が立ち並ぶ、歴史ある街の中に『御宿 富久千代』はあります。こんな素晴らしい街の中に宿泊できるという事実に、まず非日常感が湧き上がることでしょう。

その外観は、茅葺きの重厚な歴史的建造物。扉を開くと、予想以上にラグジュアリーな空間が広がります。リビング、2箇所の寝室、オーディオルーム、茶室などを備えた広々とした造りで、少人数で使用するのが惜しいほど。イタリア製のソファやチェアが10以上もあり、どこに腰を落ち着けるか悩んでしまうかもしれません。そして最奥にあるダイニング。木目の美しい一枚板のカウンター。棚の中のバカラやガレやラリックの酒器は、飾るためではなく、実際に使用するものです。

一言で言えば、豪華絢爛、贅を尽くしたきらびやかな内装。しかし、この時代を経た建物と豪華な内装は不思議に調和しています。ただ高級なものを詰め込んだようなちぐはぐさがなく、在るべきところに在るような落ち着きが感じられるのです。

注意して室内を見回してみると、その理由が見つかります。レセプションのカウンターは、酒を搾るために使われた木製の槽(ふね)。天井は茅葺き屋根が裏側から見えるように、わざわざスケルトンに。柱や梁は長い時間を積み重ねた傷が残されています。

「江戸時代の建築当初は酒蔵、それから味噌や醤油の蔵に、それから民家として使われていました。でも最後は、本当に荒れ放題の廃墟」。

代表の飯盛理絵氏にはそう言って、スマートフォンで撮影したリノベーション前の状態を見せてくれました。それは本当に廃墟としか言いようがない荒れた建物でした。

「鍋島は地元に支えられて続いてきたお酒。だから恩返しとして、この宿を通して再びこの街が発展してほしい」と理絵氏。

豪華な内装は、ただ見た目良く取り繕ったのではないのです。きっとこの建物の設計者は、この建物の歴史や重厚感に似合う家具や建具こそこれらだと確信した上で、選択したのでしょう。つまり根底にあるのは、この街、この古い建物への敬意。それに気づくと、さらにこの宿の居心地が良くなることでしょう。

佐賀県鹿島市肥前浜宿にある通称・酒蔵通りは江戸時代から酒や醤油などの醸造業で発展した街。重厚で美しい白壁の建築が立ち並ぶ。

酒蔵通りの中でもひときわ目を引く重厚な建築が『御宿 富久千代』。茅葺きの屋根をはじめとした外観は、ほぼ元の姿のままリノベーションされた。

たっぷりと空間を使った上がり框と奥のリビング。柱や梁などは元の意匠を残しつつ、快適に滞在できる姿に生まれ変わっている。

センスよく集められた画集や古書、重厚感あるイタリア製の家具などが、室内各所にごく自然に配されている。

リビング上部の天井はスケルトン仕様。防寒や清潔さを確保しながら茅葺屋根の裏側を仰ぎ見ることができる細やかな配慮。

バング&オルフセンのスピーカーが四方に配されたオーディオルーム。酒とともに極上の音楽に浸れるおすすめの空間だ。

窓の外には枯山水の庭。窓から臨むと陰影により美しさが際立つのは、日差しまで計算し尽くした設計の賜物なのだろう。

御宿 富久千代貴重な蔵見学を通して感じる銘酒・鍋島のおいしさの理由。

「ここは“鍋島”というお酒の世界観を体験してもらうための宿なんです」。

理絵氏はそうも言いました。それは古いものを大切にしながら、新たな上質を積み重ねること。そして、そんな価値観が守られるこの地で、自然体に過ごすこと。

富久千代酒造は普段は酒蔵を公開していませんが、ここの宿泊者限定で蔵見学も実施していると言います。案内人は鍋島人気の仕掛け人たる飯盛直喜氏。

そこでは直喜氏の酒米や酒づくり、鍋島の歴史の話を聞きながら、試飲が可能。酒蔵直営の宿だけの特権です。少年のような真っ直ぐな想いと、頑なな杜氏の実直さを併せ持つような直喜氏は自ら手掛ける酒を雄弁に語ります。「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」の日本酒部門最優秀賞、文字通り世界一の酒に選ばれた鍋島の、人気の秘密が見えてきます。

「わざわざ訪ねてきてくれた方に、鍋島のファンになってもらいたい」。

直喜氏はそう笑いました。

銘酒・鍋島が生まれて23年。その仕掛け人として走り続ける飯盛直樹氏の話は、ただの酒造り以上の示唆に富み、興味を惹く。

磨き、製法、原料、季節。さまざまな種類がある銘酒・鍋島だが、そのすべてにフレッシュで奥深いおいしさという“鍋島らしさ”は共通している。

卓上に用意されている小グラスや巾着には鍋島のロゴ入り。ほかでは手に入れることのできない、貴重な旅の記念品。

御宿 富久千代貴重な蔵見学を通して感じる銘酒・鍋島のおいしさの理由。

試飲の後は、夕食の時間。そう、ここはオーベルジュ。食事は滞在中の一大イベントです。カウンターには若き料理長・西村卓馬氏が立ちます。

「どこに行っても気に入られて、可愛がられちゃうの」。

理絵氏に料理長について尋ねると、まるで自分の息子を自慢するように笑って言いました。「東京の三ツ星店で腕を磨いた人物、若いけど腕は本物」とも。

そんな言葉通り、西村氏はどんなことにも全力でぶつかっていくような、知らないことは何でも貪欲に学んでいくような、真っすぐで気持ちの良い人物。好奇心にあふれる目がいつも少し微笑んでいて、見ている方もつられて笑顔になります。

「チェックインでお客様とお会いしてから夕食の時間まで、お客様についてイメージを膨らませる時間がたっぷりあります。そこでひとりひとりに合わせた作戦を練るんです」。

西村氏は言います。それはレストランではなく、オーベルジュであることの最大の利点。だから当然、満足度は高くなります。この日の料理は、有明海のワタリガニ・竹崎ガニの飯蒸し、蒸し鮑の茶碗蒸し、唐津の鯛と雲丹のお造り、対馬の穴子とふきのとうの揚げ物……。毎日3時間以上かけて集めて回った地元食材を使った全力投球の料理です。

「全部おいしいものを出したいんです」。

西村氏はそう笑います。ときに老練な料理人は、緩急をつけて主役を際立たせる構成にすることもありますが、西村氏の料理はすべてが全力。そしてその料理が、フレッシュ感が持ち味の鍋島と見事に噛み合うのです。
 
心地よい満腹感に満たされて部屋に戻れば、室内のワインセラーには希少な鍋島が並んでいます。もう少し飲むのも、オーディオルームでくつろぐのも、風呂に入って休むのも自由。どの選択をしようとも、きっと他に替えがたいくつろぎの時間が待っていることでしょう。

ダイニングの特等席はどっしりとしたカウンター。正統派日本料理と鍋島とのペアリングは、夢心地のひとときを演出してくれる。

若き料理長・西村卓馬氏は神楽坂『石かわ』で6年に渡り腕を磨いた人物。爽やかで快活な若者だが、その実力は折り紙つき。

ある日のコースの一例、有明海のワタリガニ・竹崎ガニと宮崎のキャビアを合わせた飯蒸し。無論、鍋島との相性は抜群だ。

トラフグの白子のすり流しを合わせた蒸し鮑の茶碗蒸し。最高の食材を吟味し、全力投球で直感的なおいしさを生み出すのが西村氏の流儀。

トラフグの白子のすり流しを合わせた蒸し鮑の茶碗蒸し。最高の食材を吟味し、全力投球で直感的なおいしさを生み出すのが西村氏の流儀。

料理長が惚れ込んだ対馬の穴子とふきのとうの揚げ物。全11〜12品のコースは、どれもが主役級の存在感を放っている。

住所:佐賀県鹿島市浜町乙2420-1 MAP
電話:0954-60-4668
https://fukuchiyo.com/

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一杯のお茶のために旅をする。嬉野で見つけた、茶の奥深さを伝える野外茶事体験。[Tea tourism/佐賀県嬉野市]

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『Tea tourism』の舞台は、嬉野市の茶畑の中に作られたオープンエアの茶室。ここで生産者自らが淹れるお茶を味わうのが体験の骨子。

Tea tourism茶畑の中の屋外茶室で、生産者自らが、自身のお茶を伝え、淹れる希少な体験。

茶葉は独特の丸みを帯びた形状で、味は旨味と香りが強い嬉野茶。その名の通り佐賀県嬉野市を中心に栽培される茶の呼称。そんな嬉野茶を楽しみ方として「Tea tourism」なる体験があるといいます。

それは『嬉野茶時』という団体が主催するそのセレモニーは、お茶の生産者が白い衣装に身を包み、自らお茶を淹れて客をもてなす体験。その舞台は茶畑のなかに作られたオープンエアの茶室。今回はそんな体験の魅力を紐解いてみましょう。

「Tea tourism」の舞台のひとつである「茶塔」という場所は、嬉野市街から20分ほど離れた山中。一面見渡す限り茶畑が広がるエリアの一角。一面緑の茶畑のなかに建てられた木製の高台は、茶畑の中で異質な存在のようで、まるで最初からそこにあったかのように馴染んでもいます。きっとさまざまなことを考えた上で、この場所、この形が選ばれたのでしょう。

この日の茶空間体験を担当した生産者は『永尾豊裕園』の永尾裕也氏。茶塔には白い傘の下、座布団とお膳が準備されています。オープンエアで生産者が淹れるお茶を愉しむ。その言葉から想起されるよりも、ずっと上質な設えがゲストを出迎えます。

セレモニーの構成は三茶二菓、つまり3杯のお茶と2つの菓子。この日の一杯目は和紅茶。永尾氏が丹精込めて育てた茶葉を発酵させ、金木犀の香りを加えた紅茶は、渋み、苦味がないまろやかな味わいと、ふわりと広がる香りが印象的。合わせるお菓子も地元のパティスリーで作られたもので、粉末状にした抹茶には永尾氏の茶葉が使われているとか。同じ土地から採れた茶葉同士、相性は抜群です。

さらに永尾氏のよどみない話も興味を惹きつけます。この地の茶の歴史や生産者の想いを交えながら、押し付けではない知識を伝えるのは、生産者だから可能なことでしょう。

次なる緑茶は、永尾氏の前に5つ並んだ磁器で湯を適温まで冷まして、じっくりと抽出された。出汁のような旨味とやさしい甘みが広がります。お茶とはこれほどにも深い味だったのか。そんな思いが湧き上がります。

もちろんこのおいしさには、この環境も重要な役割を果たしているのでしょう。一面の茶畑を眺めながら、その地で採れたお茶を味わう。それはたとえば米農家が畑で握り飯を食べるような、漁師が船上で穫れたての魚を食べるような、限られた人にだけ許された贅沢。それはお茶を飲む、という一元的な行為ではなく、体全体で享受する豊かな体験です。

湯の温度、水質、茶葉の量、タイミング。すべてを計算することで、お茶の旨味と香りが引き出される。それは従来のイメージを覆す極上のおいしさだ。

会場となる茶塔があるのは、嬉野市の山中、一面に広がる茶畑の中。見渡す限りの茶畑が、一杯のお茶にさらなる付加価値を加えてくれる。

茶塔は2mほどの木製の高台。壁も天井もない茶室は、景色、空気、香り、音など、茶畑の雰囲気ををそのまま伝えてくれる。

白い衣装に身を包み、お茶をサーブする生産者。お茶を知り尽くしたプロの技が、その実感の籠もった言葉とともに伝えられる。

嬉野市内のパティスリーで作られる茶菓子も楽しみのひとつ。お茶との相性を研究し、互いに引き立て合う味わいに仕上げられている。写真は抹茶のティラミス。

『永尾豊裕園』の永尾裕也氏がお茶の世界をナビゲート。お茶の生産者ではあるが、その語り口や所作からは確かなプロフェッショナリズムを感じる。

Tea tourism身近なお茶を通して感じる非日常と、お茶が伝える旅の新たな価値。

Tea tourismはこの茶塔のほか、別の2箇所でも体験できるのだとか。そのひとつ「天茶台」ではまた違った趣の時間が楽しめます。『きたの茶園』の北野秀一氏の案内でその魅力を探ってみましょう。

セレモニーの内容は茶塔と同じで、1時間ほど時間をかけて3種のお茶と2種の菓子を楽しむもの。しかしそのロケーションが大きく異なります。一面がフラットな茶畑だった茶塔に対し、この天茶台は段になった茶畑の向こうに市街地を遠望。遠くに望む町並みは興ざめになるどころか、かえってこの地の緑の濃さを際立てます。

無論、ここでも出されるのは、北野氏自身が育てたお茶。30年以上前、先代の頃から取り組んでいるという無農薬有機栽培のお茶は、浅炒りの焙じ茶でも、旨味の濃い緑茶でも、その澄んだおいしさが際立ちます。

茶畑を前に、地元生産者の話を聞きながら、そのお茶を味わう。その臨場感や希少性と、身近なお茶を通すことでかえって浮き彫りになる非日常感。それはお茶文化の奥深さとともに、旅の愉しさも再確認させてくれる時間です。

特産を味わい、名所を訪れるだけが旅ではない。

一杯のお茶のために旅をする。そんな贅沢こそが、日本各地の魅力をいっそう深く伝えてくれるのでしょう。そして日本にはきっと、まだ見ぬ旅の楽しみが無数に眠っているのでしょう。
 

天茶台でのもうひとつの体験。この日は『きたの茶園』の北野秀一氏が担当し、お茶の魅力を伝えてくれた。

抹茶のモンブランは、お茶と一緒にいただくことでいっそう風味が引き立つ。この菓子のセレクトも、お茶のエキスパートならでは。

精密に茶葉の量を計るために上皿天秤を使用。この細やかな配慮が、嬉野茶本来のまろやかで甘みあるおいしさを引き出す。

丁寧に、かつ迅速に。繰り返しお茶を淹れてきた生産者だからこその技術と、自身のお茶に対する愛情がおいしさの決め手。

天茶台から遠くに見渡すのは嬉野の市街地。温泉地として賑わう嬉野も、遠目で見るとコンパクトに見える。

手入れの行き届いた茶畑は、生産者の情熱の証。収穫の時期ではなくとも、その匂い立つような美しい眺めは、日本のお茶文化の大切さを教えてくれる。

https://www.tea-tourism.com/

https://nagaohoyuen.com/

https://kitanochaen.com/

日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』はこちらから

(supported by SUBARU)

「傳」長谷川在祐、アジアNo.1に輝く。2022年「アジアのベストレストラン50」の歓喜。[ASIA’S 50 BEST RESTAURANTS 2022/東京]

大活躍を見せた日本のシェフの面々。左より、『ヴィラ・アイーダ』小林シェフ、『ラ・メゾン・ドゥ・ナチュール・ゴウ』福山シェフ、『フロリレージュ』川手シェフ、『傳』長谷川シェフ、『チェンチ』坂本シェフ、『ラ・シーム』高田シェフ、『エテ』庄司シェフ、『セザン』ダニエルシェフ、『オード』生井シェフ。

アジアのベストレストラン50 202211店舗がランクイン。地方のレストランも快挙。

2022年3月、『アジアのベストレストラン50』のランキングが発表されました。

その形態は、今なお続くコロナ禍を配慮し、バンコク、マカオ、東京の3都市にて同時生中継。会場を熱狂させた最大のトピックは、日本にアジアNo.1 の座をもたらした『傳』。

今回、日本は11店舗がランクイン。中でも、「Hight Climber Award」や「Highest New Entry Award」、「New Entry」、「Asia’s Best Female Chef Award」など、ダブル受賞したレストランの活躍も注目すべき点です。

No.1 東京『』長谷川在有
No.3 東京『フロリレージュ』川手寛康
No.6 大阪『ラ・シーム』高田裕介
No.11 東京『茶禅華』川田智也
No.13 東京『オード』生井祐介(Hight Climber Award)
No.14 和歌山『ヴィラ・アイーダ』小林寛司(Highest New Entry Award)
No.15 東京『ナリサワ』成澤由浩
No.17 東京『セザン』ダニエル・カルバート(New Entry)
No.36 福岡『ラ・メゾン・ドゥ・ナチュール・ゴウ』福山 剛
No.42 東京『エテ』庄司夏子(Asia’s Best Female Chef Award)
No.43 京都『チェンチ』坂本 健(New Entry)
※全てのランキングは、公式ホームページよりご覧ください。

上記に加え、No.71には東京『レフェルベソンス』、No.78には東京『鮨さいとう』の2店舗が並びます。

今大会では、多くの「涙」が印象的でした。その涙は、自分の喜びではなく、仲間への賞賛。シェフからの支持が厚い『ヴィラ・アイーダ』のランキングがコールされた瞬間がそれを物語っています。

和歌山という地域で国内外から評価されるための苦労は計り知れません。

長く続くコロナ禍による緊急事態宣言、まん延防止処置、不要不急の外出、時短営業……。

「何度も辞めようと思う時もありましたが、その都度、シェフたちの励ましによって救われました」と小林シェフは話します。

No.14という順位に加え、「Highest New Entry Award」も受賞。ベテランと呼ぶに値する小林シェフへの「New」に当人は照れ笑いしますが、これまで歩んできたものが間違っていなかったことへの立証にもつながったのではないでしょうか。

シェフたちは、「見たかアジア! これが日本の小林寛司だ!」と言わんばかりの拍手喝采。皆、涙が止まりませんでした。

また、『ラ・シーム』、『ラ・メゾン・ドゥ・ナチュール・ゴウ』、『チェンチ』の貢献も特筆すべきランキング。『ヴィラ・アイーダ』同様、「レストランは旅の目的地になる」ことの定義付けにもなりました。

そして、見事1位に輝いた『傳』。天を仰ぐ長谷川シェフに駆け寄ったのは、『フロリレージュ』の川手シェフでした。ふたりは、共同経営する『デンクシフロリ』を2020年に開業。互いを「相方」と呼ぶ運命共同体の仲でもあります。

そんな両人が抱き合う姿もまた、感慨深いシーンとなりました。

「長谷川シェフにしか獲れなかった。長谷川シェフだから獲れた」と、相方を讃える川手シェフの目にも涙。

「1位は、純粋に嬉しい。ですが、複雑な気持ちもたくさんあります。本当に苦しかった。レストランは、生産者やスタッフ、お客様によって支えられています。改めて、感謝の気持ちを忘れずに、皆様に恩返ししていきたいです」と話す長谷川シェフの目にも涙。言葉に発したものは実にシンプルながら、込み上げてくる想いを行間に押し殺します。

それぞれ内容は違えど、長谷川シェフの言う「複雑な想い」は、今回、受賞したシェフ全員が抱いていると推測します。しかし、仲間を賞賛する歓喜がそれを凌駕したのかもしれません。

こらえていた涙がこぼれ落ちる『傳』長谷川シェフ。あらゆるタイトルを総なめにしてきたが、初めてアジアNo.1を手にした。

『ヴィラ・アイーダ』のコールの瞬間。小林シェフ(中央)よりも前に『傳』長谷川シェフ(手前)が我先にと立ち上がり、「おぉ!寛司さん、おめでとうございます!」と興奮。会場は大いに湧いた。

アジアのベストレストラン50 2022私的分析。別の角度から見た「アジアのベストレストラン50」論。

まず、このアワードは、アジア全域の20を超える国と地域のシェフ、ジャーナリスト、フーディの投票者によってランキングされます。その名は、明かされていません。

各人、持ち票は10票。一年半以内に訪れたレストランであれば自由に投票できるも、今回はコロナ禍によって渡航が困難だったため、居住国からは6票、他国からは4票だった数を2票に改定し、計8票に。

国内に特化されているため、インバウンドのゲストが多いレストランは、票を落とす可能性があり、逆に母国や地元に愛されているレストランは票を上げる可能性があります。加えて、この難局においても「予約が取れない」レストランは、物理的に投票者が伺えないため、実力=結果とはなりません。

日本における例では、2021年No.91から2022年No.43に初ランクインした『チェンチ』は、地元や国内、業界からのファンも多く、母国主体の投票スタイルは追い風になったのかもしれません。

一方、海外に目を向けた場合、『アジアのベストレストラン50』らしい!?発見も。No.46のバンコク・タイの『ラーン・ジェイ・ファイ』は、「超」が付くほどのローカル店かつ屋台スタイル。御年70を超えるジェイ・ファイシェフの熱気溢れる料理とライブな空間は、常に賑わいを見せています。

ランキングに目を戻せば、No.45に台中・台湾の『ジェーエル・スタジオ』、No.47にマカオ・中国の『ウィンレイ・パレス』が並びます。つまり、レストラン、屋台、ホテルという混沌の並びが成立してしまうのがこのアワードの特徴。

これは、星やトックの数で区分するガイドでは可視化できず、賛否はあるも、ランキング形式だからこそ生まれる『アジアのベストレストラン50』らしさ。並んだ順位は「隣の顔」を可視化し、その発見が大会の個性にもつながっています。

しかし、ランキングだからこそ素朴な疑問も浮かびます。もし同票だったら? それは、「投票の仕方」が影響するのかもしれません。

各人の投票は、順位を付けて行われているそうです。任意ではありますが、なぜ推奨するのかなどの理由も明記できると聞きます。投票者にとって1位の1票なのか、2位の1票なのか。同票の場合、優先順位の高い票数を集めたレストランが上位になるのかもしれません。ゆえに、順位においても僅差が生じているとも推測します。(「かも」や「推測」と明記している理由は、絶対ではないためです)

また、ランキング発表前に行われるトークセッションにおいては、ショービジネス色の強い『アジアのベストレストラン50』とは一変。社会性を追求します。

今回のテーマは、「サスティナビリティ」と「クリエイティビティ」。

「サスティナビリティ」テーマに登壇した『フロリレージュ』の川手寛康シェフは、「レストランやシェフにとって、どうSDGsや循環型の社会に関われるかは、利己主義ではなく利他主義になることが必要だと思います。自分以外の誰かにとって、どう向き合えるか。それが自分にとっては、生産者であり、食材であり、もちろんお客様。自分のレストランは、『ヴィラ・アイーダ』のような地方にはありませんし、目の前に畑がある環境でもない。自然と共存しているようなアピールはなく、当然、小林シェフのようにはなれない。しかし、東京だからこそやれること、発信できることはあると思っています」と話します。

この「サスティナビリティ」は、コロナ禍以前の2019年のトークセッションテーマにもなっており、「ヴァイタル・イングリーディエント(必要不可欠な食材)」においてもディスカッション。当時より環境問題についての関心の高さが伺えるも、本大会におけるそれを知る人は少ない。

「特別な食材、特別な体験をレストランとして求められますが、身近な食材、身近な体験を伝えることも大事だと思っています。また、日本の場合、サスティナビリティやオーガニックといった類のものは、安全であり健康的という印象ですが、ヨーロッパはそうではありません。違法な労働はなかったか、環境に負荷がない育て方をしているか、不正な取引がなかったかなど、健全にものを生み出すことをそう呼びます。世界と比べての認識や理解も必要だと思います」と話す『フロリレージュ』川手シェフ。

アジアのベストレストラン50 2022

「クリエイティビティ」テーマには、『里山十帖』の桑木野恵子シェフが登壇。

「暮らすことによって土地を理解することが私にとってのクリエイティビティの源。買った食材ではなく獲った食材で料理することが、表現につながっています」。

桑木野シェフの料理は、キッチンの外から始まっているのです。見た目の演出ではなく、食材が生きた環境から表現のヒントを得て、大事なものを見つけていくプロセスこそ、桑木野シェフのクリエイティビティなのかもしれません。

「私の今の暮らしには、里があって山がある。苦味、辛味、土臭さなど、この環境で生まれた食材の“良さ”を消さずに美味しいを生み出したい。命の源を生む土と水が私にとってのクリエイティビティの源です」と『里山十帖』の桑木野シェフ。

アジアのベストレストラン50 2022

「Asia’s Best Female Chef Award」を受賞した『エテ』庄司夏子シェフの言葉も深みを帯びていました。それは、「まず支えてくださった皆様に感謝申し上げます」と述べた後に続きます。

「正直、女性シェフということに注目を浴びていることに違和感を感じています。加えて、日本は、素晴らしい食材と素晴らしい職人魂があるはずなのに、料理人という職業は後継者不足の問題に直面しています。女性シェフに限っては、もっといないのが現状です。私のような小さなレストランでもやれる。これから料理人を目指す女性にも、それを伝えたかった。実証したかった。新しい扉が開くことを願っています」。

今回、ランキングされた50店舗のうち、女性シェフ(料理長及びオーナーシェフ)は1/10にも満たない。こういった問題は、他国も抱えているのかもしれません。

「料理やケーキは、アーティストやデザイナーたちが生み出す作品と同じ価値があると思っています。それを証明するために、どうしても『Asia’s Best Female Chef Award』が獲りたかった。女性シェフでも活躍できることを若い世代にも伝え、何か希望になってくれれば嬉しく思います」と『エテ』庄司シェフ。

アジアのベストレストラン50 2022

以前、本大会の日本評議委員長を務める中村孝則氏は、『アジアのベストレストラン50』にランキングされる要因を、このように紐解いています。

「『アジアのベストレストラン50』では、“ジョイフル”と“シェア”が大切なのかもしれません。各国の委員からも、この言葉をよく耳にします。美味しいだけでなく、楽しい。それを誰かと分かち合いたい。そんな気持ちにさせてくれるレストランに魅力を感じるのではないでしょうか。今回は、それに加えて“チャレンジ”が大きなポイントになったと感じています。この時代においても、いかに挑戦しているか。ランキングされた日本のレストランは、どこも常に進化しています。しかし、奇をてらい過ぎることや一時的な流行にばかり目を向けてしまうと、料理そのものの本質を見失ってしまうため、そこは危惧しながら、皆様とともに今後も大会を育てていければと思います」と総評します。

コロナ禍、世界が最も注目するコペンハーゲンのレストラン『ノーマ』が予約不要の店としてワインバー&バーガーとして再開したのは記憶に新しく、これもまた、オーナーシェフであるレネ・レゼピの挑戦。更に、この決断が新型コロナウイルス感染拡大の初期段階だったということも、シェフ力だけでない経営者としての手腕も感じざるを得ません。ちなみに、その店名は『POPL(ポプル)』。これはラテン語の「POPULUS(ポプルス)」に由来するもので、「人々の集い」や「共同体」を意味しており、当時のレネシェフの想いが凝縮されているようにも感じます。

2022年、『アジアのベストレストラン50』にランキングされた多くのレストランにおいてもオーナーシェフです。長く続く難局は、人気店ですら脅威に追い込んでいます。そういった時代背景を見ると、投票者はもちろん、ゲストにおいても「潰したくない」、「応援したい」、「支援したい」という気持ちの芽生えがあったのではないでしょうか。

前述、中村氏が話した「ジョイフル」、「シェア」、「チャレンジ」に加え、「サポート」もまた、票につながったのかもしれません。

2013年に1位に輝いた『ナリサワ』以降、見事、奪還を果たした2022年。長きにわたり、業界を牽引した中村氏にも敬意を評したいと思います。そして、今なおランクインし続けている『ナリサワ』においても、継続は1位を獲るよりも至難の技。常にトップランナーである成澤シェフは、常に挑戦者でもあるのかもしれません。

最後に。数々のレストランアワードがある中、『アジアのベストレストラン50』は、文化になるか!? それは、レストランやシェフだけでなく、その環境や周囲によるものなのかもしれません。

言うは易し行うは難し。かく言う『ONESTORY』(私)もまた、真摯に向き合っていきたいと考えます。

 「まず、1位を獲得した『傳』長谷川シェフをはじめ、日本のシェフの方々、本当におめでとうございます。今年の『アジアのベストレストラン50』は、色々な意味で歴史に残る回だったと思います。個人的に思うのは、エリアの広いワールドよりもエリアの狭いアジアの方が濃い内容だと感じています。加えて、コロナ禍による投票システムの変更などは、のちに振り返った時、時代背景も強く感じるのではないでしょうか。社会と親和性の高い大会こそ、『アジアのベストレストラン50』なのだと思います」と話す日本評議委員長の中村氏。

Photographs:THE WORLD'S 50 BEST RESTAURANTS
Text:YUICHI KURAMOCHI

味わうだけでなく地域を体験するワイン・ツーリズムに出かけよう。[つくばワイン/茨城県つくば市]

つくばのワインと食を旅するワイン・ツーリズムに出かけた真藤さん、大越氏、白土さん(左から)。筑波山の麓、なだらかな山裾に開かれた『つくばワイナリー』のブドウ畑を訪れるなど、都心から近いつくば市内で日帰り旅を楽しんだ。

つくばワイン日本を代表するソムリエをはじめ3人のワインのプロが「つくば市」へ。

茨城県つくば市をご存じでしょうか? 県南地域に位置する市で、都内なら秋葉原駅や北千住駅からつくばエクスプレスに乗ると、60分もあれば中心地にある「つくば駅」に到着します。

古代から名峰として信仰を集めた筑波山の麓に広がる田園地帯は、豊かな古の人々の生活を想起させる一方で、駅周辺は機能的に街が作られ、さながら近未来都市のような趣があります。さらに、つくば市が目指す未来型教育も注目され、移住者も増加。人口減少が問題視されている日本にあって、30年以上人口が増え続けている自治体でもあります。

また、住むだけでなく、旅やビジネスの目的地になっているのも、つくば市の特徴です。筑波山周辺で登山やキャンプなどのアウトドアを目的にくる人もいれば、JAXAをはじめ先端技術の研究・開発のために訪れる研究者や技術者がいる街は、日本でも珍しいのではないでしょうか。

住む人、訪れる人、さまざまな人が行き交う街、つくば。この街に、また新しい目的をもった人たちが集まり始めています。

近年、筑波山周辺につぎつぎに開園しているワイナリーをまわる人たちです。現在は、ワイナリーやヴィンヤード(ワイン用ブドウ園)が5つあり、これらを中心にした食の旅「ワイン・ツーリズム」に期待が寄せられているのです。

今回、つくば市のワイナリーやヴィンヤードを訪れたのはフランス料理の老舗『銀座レカンの元シェフソムリエで、現在はJALのワインディレクターとして活躍するソムリエの大越基裕(おおこし・もとひろ)氏と、人気酒販店『いまでや』に勤務しながらさまざまな活躍を展開する白土暁子(しらと・あきこ)さん、やまなし大使として山梨ワインの魅力を発信する料理家の真藤舞衣子(しんどう・まいこ)さんです。

ワイナリーやヴィンヤードだけでなく、市内の野菜の直売所やパン屋やチーズ屋などをめぐってワインに合うフードも購入しながら、テイスティングをしました。1日でめぐるつくばのワイン・ツーリズムの可能性を探っていきます。

日本を代表するソムリエの一人、大越基裕氏。第一線の飲食の舞台で活躍してきた知識と経験で、つくばワインの魅力を言葉にしてくれた。

料理家であり、フランスのリッツエスコフィエにてディプロマを取得しワインにも精通する真藤舞衣子さん。ワイン・ツーリズムを日本で先駆けて取り組んだ山梨県のワインにも詳しい。

白土暁子さんは、じつは茨城県出身。転勤の多い家庭だったこともあり、幼少期に関西へ。茨城県の記憶はほとんどないが、その後、仕事で数回訪れている。

つくばワイン筑波山周辺の土壌にあったハイブリッド品種でワインを造る。

つくばエクスプレスの「つくば駅」から旅をスタートさせた3人は、筑波山を目指して車で北上します。

はじめにたどり着いたのは、2013年からワイン用ブドウを育て、市内ではもっとも古いワイナリーである『つくばワイナリー』です。

筑波山麓の風光明媚な地、北条地区に開かれた圃場は、新年度のブドウ栽培の最初の仕事である剪定が終わったばかり。病気に強く筑波山麓の気候風土や土壌にも合うと、11年前に植えたヨーロッパ品種と日本の山葡萄品種をかけ合わせたハイブリッド品種である北天の雫(白ワイン用、行者の水×リースリング)や富士の夢(赤ワイン用、行者の水×メルロー)、ヨーロッパで注目を集めている黒ブドウ(赤ワイン用)のマルスランの樹が並んでいます。

圃場を案内するのは、岡崎洋司(おかざき・ようじ)氏。その後の試飲で3人が選んだのは北天の雫100%の「TSUKUBA BLANC プレミアム 2020」と富士の夢100%の「TSUKUBA ROUGE プレミアム 2020」でした。

「『TSUKUBA BLANC プレミアム 2020』は、フルーティでリースリングの遺伝子を感じるよね。野菜とか葉っぱもの、ハーブの感じと相性がいいかもね」と大越氏。
「もう1本の『TSUKUBA ROUGE プレミアム 2020』は、山葡萄特有の野性味とグレーピー(ブドウジュースのよう)な風味が特徴的。酸がしっかりとあり、濃い割りにはタンニンが少ないことがポイントになるので、油脂分はそこそこで、テクスチャー(質感)の柔らかな煮込み系の料理などが相性が良さそう。豚を角煮にしたり、プルーンを使って一緒に煮込んだりとかかな」と感じたようです。

真藤さんも「スモークチキンとか燻製したものとかにもあいそうだから、ターキーとクランベリーのソースとか良いかもしれないよね」と料理家の目線で家庭料理の提案もしてくれます。

『つくばワイナリー』の自家醸造所にはショップが併設されており、購入することもできる。営業時間13:00〜17:00(日・祝は10:00〜17:00)定休日なし。

『つくばワイナリー』では、ハイブリット品種の北天の雫や富士の夢のほか、ヨーロッパ品種のメルロー、シャルドネ、マルスランの合わせて5品種を1.5haの畑で育てている。

2019年には、つくば市初となる自家醸造所が完成。国内複数の醸造所での経験をもつ北村 工氏が醸造責任者に就任し、さらに高いクオリティのワイン造りを目指している。

『つくばワイナリー』の醸造所兼ショップの建物の前の庭で昼休憩。向かう途中にある「ベッカライ・ブロートツァイト」でパンを、「ラ・マリニエール」でヨーロッパチーズを購入してきた。

「ベッカライ・ブロートツァイトのパンは味がしっかりしているので、この『TSUKUBA BLANC プレミアム 2020』の樽を少し使用して作られている白の方が、テクスチャーもしっかりしているので良く合いますね」と大越氏。

つくばワイン霊峰・筑波山を仰ぎ見るブドウ栽培に適した場所。

続いて3人が向かったのは、同じく筑波山麓の沼田地区と臼井(六所)地区に圃場をもつ『ビーズニーズヴィンヤーズ』です。

今村(いまむら)ことよさんは、守谷市出身でもともとは製薬会社の研究員でした。40歳を期に脱サラし、筑波山周辺は、日本では珍しい花崗岩質の土壌だったこともありワイン造りをつくばで始めました。

ビーズニーズヴィンヤーズでは、2カ所の圃場を見学後、今村さんが用意したテント内で試飲を行った。快晴で汗ばむほどに晴れたこの日、筑波山から吹き降ろす風が心地よい、ヴィンヤード(ワイン用ブドウ園)ならではのロケーションです。

ティスティングはまず、「Episode 0 (zero) 2019」から。黒ブドウのシラーを3割、残りはシャルドネとセミヨンから造ったスパークリングワインです。そして栽培している白品種をすべて混醸して造った「Spiral 2020」と、シラーとヴィオニエを混醸した「Purple Peaks 2020」と続けて試飲していきます。Purple Peaksは、筑波山の山肌が斜陽で紫に染まることから「紫峰」と呼ばれているところからつけた名前だそうです。

そんな中、大越氏が気に入ったのはティスティングの最後に出された「Overdrive Oak 2018」、シラー、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、タナなどのヨーロッパ品種を2タンクに分けて発酵後、樫材のチップ(オークチップ)で樽の風味付けをしたものです。

「口のなかでアルコールやタンニンを総合的に感じたときのテクスチャー(質感)が好きです。凝縮感もあります。この年のようなスタイルが、ある程度コンスタントにできればいいですね」と、本格的なアドバイスを今村さんに送っていました。

標高877m、男体山と女体山の2つの峰を持ち、古くから信仰の山として崇拝されてきた筑波山。今回のツーリズムで訪れた圃場のうち、筑波山にもっとも近いのが『ビーズニーズヴィンヤーズ』の圃場だ。

白ワイン品種は、シャルドネ、セミヨン、ヴィオニエ、ヴェルデーリョ、赤ワイン品種は、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド、タナなど、多くの人が一度は聞いたことがあるようなヨーロッパを代表するワイン用ブドウの品種を2つの圃場で合計1.5haで育てている。

「いわゆる自然派ワインによくある、クセのある匂いが出ないように、きれいに醸造して素直に食事に合うワインを造りたい。ただ、今は委託醸造をしていて、委託先ごとに設備が違ってくるのでそこは仕方ないですね。将来的に醸造も自分でやるなら瓶詰め時の窒素置換は必須ですね」と今村さん。

つくばワインこの小さなエリアに、これだけの良い食のプロダクトが揃っているのは珍しい。

3つ目の訪問地『つくばヴィンヤードは、筑波山から12㎞ほど南にある栗原地区にあります。すこしだけ筑波山から遠くなりましたが、まだしっかりと山容を確認することができます。いつも旅人を筑波山が見守ってくれる、それもまたつくばを旅する特別な楽しみ方といえます。

つくばヴィンヤードでは、旅の合間に買ったワインに合うフードを食べながらの試飲会にしようと髙橋 学(たかはし・まなぶ)氏が炭火を起こして待っていてくれました。

髙橋氏が勧める白ブドウ品種、プティ・マンサン100%の「Tsukuba Series プティマンサン」やつくばワイナリーでも栽培している富士の夢100%の「Tsukuba Series Kurihara」などとともに、即席の野外レストランです。

3人が購入してきたのは、レンコンや原木椎茸、ハーブといったつくば市産の野菜に『手づくり工房ぴあらハム』と『筑波ハム』のハムやソーセージといった加工食品。さらに県外の人もわざわざ買いにくる人気のベーカリー『ベッカライ・ブロートツァイト』とチーズショップ『チーズ専門店 ラ・マリニエール』では、パンとチーズです。

「『筑波ハム』は、社会的な食のニーズや地元の声を聴く中で無添加のハムを作り始めたとおっしゃっていました。腐敗防止発色のために使われる硝酸不使用なので、時間をかけてていねいに作るのでまだ肉本来の風味や食感が残ってとてもおいしい。製造量は少ないそうですが、こういった取り組みが根付いていってほしいですね」というのは、白土さん。

「プティ・マンサンがきれいでおとなしい印象があるので、無添加で味が決まりきっていない肉本来のやさしい味わいのハムが、風味と味わいの強さとしても一緒に飲んでもおいしくいただけるよね」と大越氏もワインとの相性の良さを感じていました。

「『ラ・マリニエール』で買ってきた12カ月熟成のコンテや羊乳のシェーブルと食べてもいいですよね。とくにコンテを食べた後に飲むと、コンテにつられて、ワインのうま味も出てくるように感じます」(白土さん)。

「いろいろな地域でワイン・ツーリズムだったり、地域おこしをしていますが、これだけいい食のプロダクトが小さなエリアのなかに揃っているのは、珍しいですよね」(真藤さん)と、筑波山を遠望する気持ちのいい空間で、ざっくばらんにつくばワインと、つくばの食についての会話が続いていました。

筑波山を背景に、『つくばヴィンヤード』の圃場内で『つくばヴィンヤード』のワインの試飲とともに、購入してきた地元の食材といっしょに食べ飲みをしてみる。自然にあふれ開放感がある場所は、それだけでワインと料理の最高のスパイスになる。 

つくば市産の原木椎茸やレンコンのような地元の食材を、地元の調味料で食べながらその土地で作られたワインを飲む。「場所は畑の中や通りかかった公園などでも十分で、そういう楽しみ方ができるのがワイン・ツーリズムの良さですよね」と白土さん。

つくば市にワイン特区の申請を勧めたのは、髙橋氏。「僕のように一人でブドウを育てて醸造もしている人たちにとって、製造量が少ないところから始められるのが、すごくありがたい」と髙橋氏。

平日でも午前中からたくさんの人が集まる人気の直売所『みずほの村市場』では、カラフルトマト、レンコン、原木生椎茸、芽キャベツといったつくば市産の産直野菜のほか「ぴあらハム」のハムとソーセージを購入した。

ドイツパンの専門店『ベッカライ・ブロートツァイト』では、ドイツの田舎パン「バウアンブロート」(ホール、1,000円)と「レーズンパン」(ホール、1,300円)を購入。しっかりと焼かれてガリっと香り高い表面のテクスチャーとは対照的に中は、やわらかくうま味が強い。

『ベッカライ・ブロートツァイト』から歩いて3分ほどにある『チーズ専門店 ラ・マリニエール』。フランスやイタリアの輸入チーズをメインとした輸入食材を扱う。12カ月熟成のコンテ(950円)と、ブイゲット(山羊のチーズ、1,950円)を購入した。

1981年に創業した『筑波ハム』は、茨城県のブランド豚を使ったハムやベーコンを手造りで販売している。自然派志向のニーズを受けて発色剤や食品添加物を使わずに、ゆっくりと熟成させた無添加商品も開発している。無添加つくば豚ボンレスハム(5,642円)などを購入した。

つくばワイン突出した生産者の存在が、産地全体のレベルアップにつながる。

「ワイン・ツーリズム」という言葉は、1996年に初めて使われるようになった比較的新しい言葉であり概念です。

ワインのティスティングやワイン産地の気候風土を体験することが最大の動機になるような旅のことをいい、その訪問先は今回のようにワイナリーやヴィンヤードのほか、ワインフェスティバルやワイン展示会なども含まれます。日本では、2000年代になって使われるようになりました。

もちろん、ヨーロッパには、ワイン・ツーリズムという言葉で呼ばれなくとも、ワインを目的にした旅の楽しみは以前からありました。日本でも日本酒の銘醸地への旅や、旅先で地酒と地域の食を楽しむ旅のスタイルは昔からあり、ワイン・ツーリズムに近いものといえます。
ヨーロッパのワイン文化にどっぷりと浸かってきた大越氏にとってワイン・ツーリズムは、そもそもの「旅」の本質でもある「地域体験」にあると考えています。

「ワインは、『どこで作られているか』ということが最も大事です。この地に合っているから、このブドウを使っていますっていうのが本来のワインの姿。だからこそ地域のこともよく知る必要があり、総合的に土地の個性を打ち出すことができる存在になるのです」と、大越氏。

つくばのワイン生産者をまわり、それぞれが個性的で意欲的なワインを造っていることを感じとったという大越氏。なかでも土地の個性をより強くワインで表現していたのは、最後に訪れた『ル・ボワ・ダジュール』の青木 誠(あおき・まこと)氏だったといいます。

「試飲させてもらったシャルドネは、『ビーズニーズヴィンヤーズ』の今村さんから買い取ったブドウで青木氏が醸造したもの。もう1つのヒムロットも、借りている圃場に昔からあった樹齢50年という生食用のブドウ品種だといいます。その中でしっかり味わいののったワインを目指して補酸や補糖もせず、ナチュラルな味わいのバランスをアルコール度数に頼らず作り上げている。多くの人が『何のブドウ品種を使っているか』から話を始めるなか、根本的な考え方があると思いました」(大越氏)。

この意見に、白土さんも「一番『こういうワインを造りたい』というのが伝わってきたよね」と賛同します。

日本におけるワイン・ツーリズム発祥の地・山梨県でやまなし大使としてワイン・ツーリズムの取り組みを見つめてきた真藤さんは、「突出した生産者の存在が、産地全体のレベルをアップさせるのをみてきました。海外でしっかりとワイン醸造を学ばれてきた青木氏は、その生産者になる可能性がある」とも話してくれました。

つくばエクスプレスの「つくば」駅から車で10分ほどの住宅地にある『ル・ボワ・ダジュール』は、フランスのワインの銘醸地域であるジュラとブルゴーニュの4軒のワイナリーで3年半研修し2019年に帰国した、青木氏が2021年に開いたワイナリー。

フランスから帰国した青木氏は、2020年から実家のブドウ園に入って生食用の巨峰栽培を手伝いながら、ワイン用のブドウも栽培。ワイン造りをスタートさせた。

「酸を足した方がいいという人もいますが、僕はあえて酸を足すことを考えなくてもいいのかなと思っています。アルコールののったワインを作って、熟成させれば隠れた酸が出てくるのかなって思っているからです」と、自身の考えを伝える青木氏。

「シャルドネとヒムロットはとてもユニークです。とくにヒムロットのアロマティックな個性は、スパークリングにも向いてそうです。巨峰は、このように濁り系で作りあげるスタイルと、とてもよくあっていると思います。樽熟成でテクスチャーも加わり、厚みが感じられます。その分巨峰らしいアロマが控えめになりますが、バランスはいいです。ワインとしては、熟成というよりは早いうちに楽しむほうがあっていそうです」と大越氏。

つくばワインつくばが、ワインの銘醸地と世界から認められるために必要なこととは。

そして最後に3人が指摘したのは、ワイン生産者だけでない横のつながりを作っていくことだといいます。

「つくばのワイン・ツーリズムの可能性を探るということでまわりましたが、熱意あるワイナリーの方々とともに、『ベッカライ・ブロートツァイト』や『チーズ専門店ラ・マリニエール』、『筑波ハム』といった素晴らしい食べ物を作っている人たちがいるわけですから、そういう人たちともどんどんつながって意見交換をしていった方がいいと思うんです」(大越氏)。

「ワイン・ツーリズムにこだわりすぎないことも考えていいかもしれないですよね。つくばにワインを買いにくる人たちは、完璧なマリアージュとかペアリングを、必ずしも求めてないんじゃないですかね。今回私たちも、できるだけつくば市のものを食べたいって思ったし、別にそれは手の混んだ料理とかじゃなくて、地元の味噌とか郷土料理とか、今回でいえばレンコンやトマトといった普通の野菜だったりするんです」(白土さん)。

「都心から60分ちょっとで着く、近いのもいいですよね。どこからでも筑波山が見渡せるようなロケーションがすごくいいですよね。ワイン・ツーリズムとしてまわったときに楽しくできそうな気がする。収穫時期とか新酒の時期とかでもいいので、イベント化してワイン・ツーリズム用の巡回バスなんかがあると、都心からでも参加しやすいですよね」(真藤さん)。

今回はまわれませんでしたが、意識ある野菜や畜産の農家もつくばにはたくさんいます。そうした食にまつわるすべての人たちを、ワインという線で繋いでいくことがつくばらしいワイン・ツーリズムの姿かもしれません。

つくばのワイン・ツーリズムはまだまだ始まったんばかり。最適なルートも立ち寄りスポットもまだまだ確立されていませんが、今回紹介したワイナリーやフードショップで気になった"推しスポット"を2、3カ所まわってみてください。旅のガイドブックをたどるのとはひと味違う「地域体験」ができるはずです。

 

つくばワイナリーの圃場で、筑波山を背景に。

つくばエクスプレスの研究学園駅近くの「地酒本舗 美酒堂 研究学園店」は、つくば ワインを揃える地元のワインショップ。ワイン・ツーリズムの最後の目的地にピッタリだ。

1976年生まれ、北海道出身。国際ソムリエ協会認定 、International A.S.I. Sommelier DiplomaWSET Sake Level 3 Educator、モダンベトナム料理店「An Di」(外苑前)「An Com」(広尾)オーナー。渡仏し栽培、醸造の分野を学び、帰国後銀座レカンのシェフソムリエに就任。2013年6月ワインテイスター/ソムリエとして独立。IWC、IWCCのシニアジャッジとして国際的なワインと日本酒の品評会にも招待されており、日本酒や焼酎のペアリングで、和食以外のレストランで明確に提案したパイオニアの一人。

東京生まれ。主に発酵料理を得意とし、料理を通じて環境を考えた暮らし方や食育を提案。 IT関連の会社勤めを経て、京都の禅寺にて1年間生活をし、その後フランスのリッツエスコフィエにてディプロマを取得。レシピ開発やレシピ本の執筆、 料理教室、テレビ、ラジオ出演や、食育、ワイン、日本酒など酒と食との講演会などで活動。山梨との二拠点居住の後、現在は東京に拠点を戻し、やまなし農業6次産業化戦略会議アドバイザーや、日本各地の商品開発、メニューのアドバイザーなどで活動中。

営業企画部 前職で家具屋で働いていた時に仲良くなった酒蔵の社長の影響で飲食にまつわる仕事をしたいと思い転職。現在は海外・日本ワインの仕入れや、イベント企画を担当。 特に日本国内の造り手の元には頻繁に訪問し、現地で聞いた情報を飲食店や小売店のお客様に伝え、造り手と消費者を繋ぐ仕事を主に行っている。



Text:ICHIRO EROKUMAE
Photographs:JIRO OTANI
(Supported by シェフと茨城)
【問い合わせ先】
つくば市経済部農業政策課 農業政策係
Tel:029-883-1111

味わうだけでなく地域を体験するワイン・ツーリズムに出かけよう。[つくばワイン/茨城県つくば市]

つくばのワインと食を旅するワイン・ツーリズムに出かけた真藤さん、大越氏、白土さん(左から)。筑波山の麓、なだらかな山裾に開かれた『つくばワイナリー』のブドウ畑を訪れるなど、都心から近いつくば市内で日帰り旅を楽しんだ。

つくばワイン日本を代表するソムリエをはじめ3人のワインのプロが「つくば市」へ。

茨城県つくば市をご存じでしょうか? 県南地域に位置する市で、都内なら秋葉原駅や北千住駅からつくばエクスプレスに乗ると、60分もあれば中心地にある「つくば駅」に到着します。

古代から名峰として信仰を集めた筑波山の麓に広がる田園地帯は、豊かな古の人々の生活を想起させる一方で、駅周辺は機能的に街が作られ、さながら近未来都市のような趣があります。さらに、つくば市が目指す未来型教育も注目され、移住者も増加。人口減少が問題視されている日本にあって、30年以上人口が増え続けている自治体でもあります。

また、住むだけでなく、旅やビジネスの目的地になっているのも、つくば市の特徴です。筑波山周辺で登山やキャンプなどのアウトドアを目的にくる人もいれば、JAXAをはじめ先端技術の研究・開発のために訪れる研究者や技術者がいる街は、日本でも珍しいのではないでしょうか。

住む人、訪れる人、さまざまな人が行き交う街、つくば。この街に、また新しい目的をもった人たちが集まり始めています。

近年、筑波山周辺につぎつぎに開園しているワイナリーをまわる人たちです。現在は、ワイナリーやヴィンヤード(ワイン用ブドウ園)が5つあり、これらを中心にした食の旅「ワイン・ツーリズム」に期待が寄せられているのです。

今回、つくば市のワイナリーやヴィンヤードを訪れたのはフランス料理の老舗『銀座レカンの元シェフソムリエで、現在はJALのワインディレクターとして活躍するソムリエの大越基裕(おおこし・もとひろ)氏と、人気酒販店『いまでや』に勤務しながらさまざまな活躍を展開する白土暁子(しらと・あきこ)さん、やまなし大使として山梨ワインの魅力を発信する料理家の真藤舞衣子(しんどう・まいこ)さんです。

ワイナリーやヴィンヤードだけでなく、市内の野菜の直売所やパン屋やチーズ屋などをめぐってワインに合うフードも購入しながら、テイスティングをしました。1日でめぐるつくばのワイン・ツーリズムの可能性を探っていきます。

日本を代表するソムリエの一人、大越基裕氏。第一線の飲食の舞台で活躍してきた知識と経験で、つくばワインの魅力を言葉にしてくれた。

料理家であり、フランスのリッツエスコフィエにてディプロマを取得しワインにも精通する真藤舞衣子さん。ワイン・ツーリズムを日本で先駆けて取り組んだ山梨県のワインにも詳しい。

白土暁子さんは、じつは茨城県出身。転勤の多い家庭だったこともあり、幼少期に関西へ。茨城県の記憶はほとんどないが、その後、仕事で数回訪れている。

つくばワイン筑波山周辺の土壌にあったハイブリッド品種でワインを造る。

つくばエクスプレスの「つくば駅」から旅をスタートさせた3人は、筑波山を目指して車で北上します。

はじめにたどり着いたのは、2013年からワイン用ブドウを育て、市内ではもっとも古いワイナリーである『つくばワイナリー』です。

筑波山麓の風光明媚な地、北条地区に開かれた圃場は、新年度のブドウ栽培の最初の仕事である剪定が終わったばかり。病気に強く筑波山麓の気候風土や土壌にも合うと、11年前に植えたヨーロッパ品種と日本の山葡萄品種をかけ合わせたハイブリッド品種である北天の雫(白ワイン用、行者の水×リースリング)や富士の夢(赤ワイン用、行者の水×メルロー)、ヨーロッパで注目を集めている黒ブドウ(赤ワイン用)のマルスランの樹が並んでいます。

圃場を案内するのは、岡崎洋司(おかざき・ようじ)氏。その後の試飲で3人が選んだのは北天の雫100%の「TSUKUBA BLANC プレミアム 2020」と富士の夢100%の「TSUKUBA ROUGE プレミアム 2020」でした。

「『TSUKUBA BLANC プレミアム 2020』は、フルーティでリースリングの遺伝子を感じるよね。野菜とか葉っぱもの、ハーブの感じと相性がいいかもね」と大越氏。
「もう1本の『TSUKUBA ROUGE プレミアム 2020』は、山葡萄特有の野性味とグレーピー(ブドウジュースのよう)な風味が特徴的。酸がしっかりとあり、濃い割りにはタンニンが少ないことがポイントになるので、油脂分はそこそこで、テクスチャー(質感)の柔らかな煮込み系の料理などが相性が良さそう。豚を角煮にしたり、プルーンを使って一緒に煮込んだりとかかな」と感じたようです。

真藤さんも「スモークチキンとか燻製したものとかにもあいそうだから、ターキーとクランベリーのソースとか良いかもしれないよね」と料理家の目線で家庭料理の提案もしてくれます。

『つくばワイナリー』の自家醸造所にはショップが併設されており、購入することもできる。営業時間13:00〜17:00(日・祝は10:00〜17:00)定休日なし。

『つくばワイナリー』では、ハイブリット品種の北天の雫や富士の夢のほか、ヨーロッパ品種のメルロー、シャルドネ、マルスランの合わせて5品種を1.5haの畑で育てている。

2019年には、つくば市初となる自家醸造所が完成。国内複数の醸造所での経験をもつ北村 工氏が醸造責任者に就任し、さらに高いクオリティのワイン造りを目指している。

『つくばワイナリー』の醸造所兼ショップの建物の前の庭で昼休憩。向かう途中にある「ベッカライ・ブロートツァイト」でパンを、「ラ・マリニエール」でヨーロッパチーズを購入してきた。

「ベッカライ・ブロートツァイトのパンは味がしっかりしているので、この『TSUKUBA BLANC プレミアム 2020』の樽を少し使用して作られている白の方が、テクスチャーもしっかりしているので良く合いますね」と大越氏。

つくばワイン霊峰・筑波山を仰ぎ見るブドウ栽培に適した場所。

続いて3人が向かったのは、同じく筑波山麓の沼田地区と臼井(六所)地区に圃場をもつ『ビーズニーズヴィンヤーズ』です。

今村(いまむら)ことよさんは、守谷市出身でもともとは製薬会社の研究員でした。40歳を期に脱サラし、筑波山周辺は、日本では珍しい花崗岩質の土壌だったこともありワイン造りをつくばで始めました。

ビーズニーズヴィンヤーズでは、2カ所の圃場を見学後、今村さんが用意したテント内で試飲を行った。快晴で汗ばむほどに晴れたこの日、筑波山から吹き降ろす風が心地よい、ヴィンヤード(ワイン用ブドウ園)ならではのロケーションです。

ティスティングはまず、「Episode 0 (zero) 2019」から。黒ブドウのシラーを3割、残りはシャルドネとセミヨンから造ったスパークリングワインです。そして栽培している白品種をすべて混醸して造った「Spiral 2020」と、シラーとヴィオニエを混醸した「Purple Peaks 2020」と続けて試飲していきます。Purple Peaksは、筑波山の山肌が斜陽で紫に染まることから「紫峰」と呼ばれているところからつけた名前だそうです。

そんな中、大越氏が気に入ったのはティスティングの最後に出された「Overdrive Oak 2018」、シラー、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、タナなどのヨーロッパ品種を2タンクに分けて発酵後、樫材のチップ(オークチップ)で樽の風味付けをしたものです。

「口のなかでアルコールやタンニンを総合的に感じたときのテクスチャー(質感)が好きです。凝縮感もあります。この年のようなスタイルが、ある程度コンスタントにできればいいですね」と、本格的なアドバイスを今村さんに送っていました。

標高877m、男体山と女体山の2つの峰を持ち、古くから信仰の山として崇拝されてきた筑波山。今回のツーリズムで訪れた圃場のうち、筑波山にもっとも近いのが『ビーズニーズヴィンヤーズ』の圃場だ。

白ワイン品種は、シャルドネ、セミヨン、ヴィオニエ、ヴェルデーリョ、赤ワイン品種は、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド、タナなど、多くの人が一度は聞いたことがあるようなヨーロッパを代表するワイン用ブドウの品種を2つの圃場で合計1.5haで育てている。

「いわゆる自然派ワインによくある、クセのある匂いが出ないように、きれいに醸造して素直に食事に合うワインを造りたい。ただ、今は委託醸造をしていて、委託先ごとに設備が違ってくるのでそこは仕方ないですね。将来的に醸造も自分でやるなら瓶詰め時の窒素置換は必須ですね」と今村さん。

つくばワインこの小さなエリアに、これだけの良い食のプロダクトが揃っているのは珍しい。

3つ目の訪問地『つくばヴィンヤードは、筑波山から12㎞ほど南にある栗原地区にあります。すこしだけ筑波山から遠くなりましたが、まだしっかりと山容を確認することができます。いつも旅人を筑波山が見守ってくれる、それもまたつくばを旅する特別な楽しみ方といえます。

つくばヴィンヤードでは、旅の合間に買ったワインに合うフードを食べながらの試飲会にしようと髙橋 学(たかはし・まなぶ)氏が炭火を起こして待っていてくれました。

髙橋氏が勧める白ブドウ品種、プティ・マンサン100%の「Tsukuba Series プティマンサン」やつくばワイナリーでも栽培している富士の夢100%の「Tsukuba Series Kurihara」などとともに、即席の野外レストランです。

3人が購入してきたのは、レンコンや原木椎茸、ハーブといったつくば市産の野菜に『手づくり工房ぴあらハム』と『筑波ハム』のハムやソーセージといった加工食品。さらに県外の人もわざわざ買いにくる人気のベーカリー『ベッカライ・ブロートツァイト』とチーズショップ『チーズ専門店 ラ・マリニエール』では、パンとチーズです。

「『筑波ハム』は、社会的な食のニーズや地元の声を聴く中で無添加のハムを作り始めたとおっしゃっていました。腐敗防止発色のために使われる硝酸不使用なので、時間をかけてていねいに作るのでまだ肉本来の風味や食感が残ってとてもおいしい。製造量は少ないそうですが、こういった取り組みが根付いていってほしいですね」というのは、白土さん。

「プティ・マンサンがきれいでおとなしい印象があるので、無添加で味が決まりきっていない肉本来のやさしい味わいのハムが、風味と味わいの強さとしても一緒に飲んでもおいしくいただけるよね」と大越氏もワインとの相性の良さを感じていました。

「『ラ・マリニエール』で買ってきた12カ月熟成のコンテや羊乳のシェーブルと食べてもいいですよね。とくにコンテを食べた後に飲むと、コンテにつられて、ワインのうま味も出てくるように感じます」(白土さん)。

「いろいろな地域でワイン・ツーリズムだったり、地域おこしをしていますが、これだけいい食のプロダクトが小さなエリアのなかに揃っているのは、珍しいですよね」(真藤さん)と、筑波山を遠望する気持ちのいい空間で、ざっくばらんにつくばワインと、つくばの食についての会話が続いていました。

筑波山を背景に、『つくばヴィンヤード』の圃場内で『つくばヴィンヤード』のワインの試飲とともに、購入してきた地元の食材といっしょに食べ飲みをしてみる。自然にあふれ開放感がある場所は、それだけでワインと料理の最高のスパイスになる。 

つくば市産の原木椎茸やレンコンのような地元の食材を、地元の調味料で食べながらその土地で作られたワインを飲む。「場所は畑の中や通りかかった公園などでも十分で、そういう楽しみ方ができるのがワイン・ツーリズムの良さですよね」と白土さん。

つくば市にワイン特区の申請を勧めたのは、髙橋氏。「僕のように一人でブドウを育てて醸造もしている人たちにとって、製造量が少ないところから始められるのが、すごくありがたい」と髙橋氏。

平日でも午前中からたくさんの人が集まる人気の直売所『みずほの村市場』では、カラフルトマト、レンコン、原木生椎茸、芽キャベツといったつくば市産の産直野菜のほか「ぴあらハム」のハムとソーセージを購入した。

ドイツパンの専門店『ベッカライ・ブロートツァイト』では、ドイツの田舎パン「バウアンブロート」(ホール、1,000円)と「レーズンパン」(ホール、1,300円)を購入。しっかりと焼かれてガリっと香り高い表面のテクスチャーとは対照的に中は、やわらかくうま味が強い。

『ベッカライ・ブロートツァイト』から歩いて3分ほどにある『チーズ専門店 ラ・マリニエール』。フランスやイタリアの輸入チーズをメインとした輸入食材を扱う。12カ月熟成のコンテ(950円)と、ブイゲット(山羊のチーズ、1,950円)を購入した。

1981年に創業した『筑波ハム』は、茨城県のブランド豚を使ったハムやベーコンを手造りで販売している。自然派志向のニーズを受けて発色剤や食品添加物を使わずに、ゆっくりと熟成させた無添加商品も開発している。無添加つくば豚ボンレスハム(5,642円)などを購入した。

つくばワイン突出した生産者の存在が、産地全体のレベルアップにつながる。

「ワイン・ツーリズム」という言葉は、1996年に初めて使われるようになった比較的新しい言葉であり概念です。

ワインのティスティングやワイン産地の気候風土を体験することが最大の動機になるような旅のことをいい、その訪問先は今回のようにワイナリーやヴィンヤードのほか、ワインフェスティバルやワイン展示会なども含まれます。日本では、2000年代になって使われるようになりました。

もちろん、ヨーロッパには、ワイン・ツーリズムという言葉で呼ばれなくとも、ワインを目的にした旅の楽しみは以前からありました。日本でも日本酒の銘醸地への旅や、旅先で地酒と地域の食を楽しむ旅のスタイルは昔からあり、ワイン・ツーリズムに近いものといえます。
ヨーロッパのワイン文化にどっぷりと浸かってきた大越氏にとってワイン・ツーリズムは、そもそもの「旅」の本質でもある「地域体験」にあると考えています。

「ワインは、『どこで作られているか』ということが最も大事です。この地に合っているから、このブドウを使っていますっていうのが本来のワインの姿。だからこそ地域のこともよく知る必要があり、総合的に土地の個性を打ち出すことができる存在になるのです」と、大越氏。

つくばのワイン生産者をまわり、それぞれが個性的で意欲的なワインを造っていることを感じとったという大越氏。なかでも土地の個性をより強くワインで表現していたのは、最後に訪れた『ル・ボワ・ダジュール』の青木 誠(あおき・まこと)氏だったといいます。

「試飲させてもらったシャルドネは、『ビーズニーズヴィンヤーズ』の今村さんから買い取ったブドウで青木氏が醸造したもの。もう1つのヒムロットも、借りている圃場に昔からあった樹齢50年という生食用のブドウ品種だといいます。その中でしっかり味わいののったワインを目指して補酸や補糖もせず、ナチュラルな味わいのバランスをアルコール度数に頼らず作り上げている。多くの人が『何のブドウ品種を使っているか』から話を始めるなか、根本的な考え方があると思いました」(大越氏)。

この意見に、白土さんも「一番『こういうワインを造りたい』というのが伝わってきたよね」と賛同します。

日本におけるワイン・ツーリズム発祥の地・山梨県でやまなし大使としてワイン・ツーリズムの取り組みを見つめてきた真藤さんは、「突出した生産者の存在が、産地全体のレベルをアップさせるのをみてきました。海外でしっかりとワイン醸造を学ばれてきた青木氏は、その生産者になる可能性がある」とも話してくれました。

つくばエクスプレスの「つくば」駅から車で10分ほどの住宅地にある『ル・ボワ・ダジュール』は、フランスのワインの銘醸地域であるジュラとブルゴーニュの4軒のワイナリーで3年半研修し2019年に帰国した、青木氏が2021年に開いたワイナリー。

フランスから帰国した青木氏は、2020年から実家のブドウ園に入って生食用の巨峰栽培を手伝いながら、ワイン用のブドウも栽培。ワイン造りをスタートさせた。

「酸を足した方がいいという人もいますが、僕はあえて酸を足すことを考えなくてもいいのかなと思っています。アルコールののったワインを作って、熟成させれば隠れた酸が出てくるのかなって思っているからです」と、自身の考えを伝える青木氏。

「シャルドネとヒムロットはとてもユニークです。とくにヒムロットのアロマティックな個性は、スパークリングにも向いてそうです。巨峰は、このように濁り系で作りあげるスタイルと、とてもよくあっていると思います。樽熟成でテクスチャーも加わり、厚みが感じられます。その分巨峰らしいアロマが控えめになりますが、バランスはいいです。ワインとしては、熟成というよりは早いうちに楽しむほうがあっていそうです」と大越氏。

つくばワインつくばが、ワインの銘醸地と世界から認められるために必要なこととは。

そして最後に3人が指摘したのは、ワイン生産者だけでない横のつながりを作っていくことだといいます。

「つくばのワイン・ツーリズムの可能性を探るということでまわりましたが、熱意あるワイナリーの方々とともに、『ベッカライ・ブロートツァイト』や『チーズ専門店ラ・マリニエール』、『筑波ハム』といった素晴らしい食べ物を作っている人たちがいるわけですから、そういう人たちともどんどんつながって意見交換をしていった方がいいと思うんです」(大越氏)。

「ワイン・ツーリズムにこだわりすぎないことも考えていいかもしれないですよね。つくばにワインを買いにくる人たちは、完璧なマリアージュとかペアリングを、必ずしも求めてないんじゃないですかね。今回私たちも、できるだけつくば市のものを食べたいって思ったし、別にそれは手の混んだ料理とかじゃなくて、地元の味噌とか郷土料理とか、今回でいえばレンコンやトマトといった普通の野菜だったりするんです」(白土さん)。

「都心から60分ちょっとで着く、近いのもいいですよね。どこからでも筑波山が見渡せるようなロケーションがすごくいいですよね。ワイン・ツーリズムとしてまわったときに楽しくできそうな気がする。収穫時期とか新酒の時期とかでもいいので、イベント化してワイン・ツーリズム用の巡回バスなんかがあると、都心からでも参加しやすいですよね」(真藤さん)。

今回はまわれませんでしたが、意識ある野菜や畜産の農家もつくばにはたくさんいます。そうした食にまつわるすべての人たちを、ワインという線で繋いでいくことがつくばらしいワイン・ツーリズムの姿かもしれません。

つくばのワイン・ツーリズムはまだまだ始まったんばかり。最適なルートも立ち寄りスポットもまだまだ確立されていませんが、今回紹介したワイナリーやフードショップで気になった"推しスポット"を2、3カ所まわってみてください。旅のガイドブックをたどるのとはひと味違う「地域体験」ができるはずです。

 

つくばワイナリーの圃場で、筑波山を背景に。

つくばエクスプレスの研究学園駅近くの「地酒本舗 美酒堂 研究学園店」は、つくば ワインを揃える地元のワインショップ。ワイン・ツーリズムの最後の目的地にピッタリだ。

1976年生まれ、北海道出身。国際ソムリエ協会認定 、International A.S.I. Sommelier DiplomaWSET Sake Level 3 Educator、モダンベトナム料理店「An Di」(外苑前)「An Com」(広尾)オーナー。渡仏し栽培、醸造の分野を学び、帰国後銀座レカンのシェフソムリエに就任。2013年6月ワインテイスター/ソムリエとして独立。IWC、IWCCのシニアジャッジとして国際的なワインと日本酒の品評会にも招待されており、日本酒や焼酎のペアリングで、和食以外のレストランで明確に提案したパイオニアの一人。

東京生まれ。主に発酵料理を得意とし、料理を通じて環境を考えた暮らし方や食育を提案。 IT関連の会社勤めを経て、京都の禅寺にて1年間生活をし、その後フランスのリッツエスコフィエにてディプロマを取得。レシピ開発やレシピ本の執筆、 料理教室、テレビ、ラジオ出演や、食育、ワイン、日本酒など酒と食との講演会などで活動。山梨との二拠点居住の後、現在は東京に拠点を戻し、やまなし農業6次産業化戦略会議アドバイザーや、日本各地の商品開発、メニューのアドバイザーなどで活動中。

営業企画部 前職で家具屋で働いていた時に仲良くなった酒蔵の社長の影響で飲食にまつわる仕事をしたいと思い転職。現在は海外・日本ワインの仕入れや、イベント企画を担当。 特に日本国内の造り手の元には頻繁に訪問し、現地で聞いた情報を飲食店や小売店のお客様に伝え、造り手と消費者を繋ぐ仕事を主に行っている。



Text:ICHIRO EROKUMAE
Photographs:JIRO OTANI
(Supported by シェフと茨城)
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つくば市経済部農業政策課 農業政策係
Tel:029-883-1111

米と米。ごはんに合う、おにぎりに合う酒。[和光アネックス/東京都中央区]

「今回、ご紹介する『萩乃露槽場直汲み 中汲み無ろ過生 辛口特別純』は、ごはんに合う、おにぎりに合う旨味の強いお酒です。一粒一粒が大きい『有機JAS認証 滋賀旭』に『こな柚子こしょう(青)』を混ぜ込んで、合わせてお召し上がりください」と『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さん。

WAKO ANNEXおにぎりがおつまみのごとく、何度も口に。酒をひと口含めば、またおにぎりに手が伸びる。

これは食事か!? はたまた、おつまみか!? そんな不思議なペアリングが今回の面白いところ。

提案するのは、『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さんです。

まず、軸となるお酒は、『福井弥平商店』の「萩乃露槽場直汲み 中汲み無ろ過生 辛口特別純」。

1本のお酒の中でもとびきり美味しい「中汲み」だけを搾り、すぐに瓶詰め。発酵に由来する自然の炭酸ガスがお酒に含まれ、トロリと深い味わいに溶け合い、濃醇にして爽やかな辛口に仕上がっています。

そのままでも当然美味しいですが、「ぜひ、ごはんと!」と千葉さん。とはいえ、ただのごはんではありません。

『クサツパイオニアファーム』の「有機JAS認証 滋賀旭」のお米に『川原食品』の「こな柚子こしょう(青)」を和え、丸く握りパクリ。

冒頭、「これは食事か!? はたまた、おつまみか!?」という感覚になるでしょう。

「『萩乃露槽場直汲み 中汲み無ろ過生 辛口特別純』は、ごはんに合う旨味の強いお酒だと思います。『有機JAS認証 滋賀旭』のお米は、独特な香ばしさがあり、一粒一粒が大きいのが特徴。おにぎりにした時に噛み応え、食べ応えもあり、喉越しも抜群!」と千葉さん。

さらに、それをおつまみ化させているのが、ごはんに和えた「こな柚子こしょう(青)」。

「自社の柚子園にて自然栽培した柚子と地元佐賀の契約農家と協力し合い、毎年収穫された唐辛子から種を厳選し手間隙かけて育てたものを使用しています。柚子も唐辛子も農薬は一切使用しておりません。青い柚子皮と青唐辛子でできた青柚子こしょうを、フリーズドライ製法で乾燥させ使いやすい粉末状に仕上げました」。

そんな「こな柚子こしょう」は、一味やお塩のように、味の輪郭を際立たせます。そう、このおにぎりは、立派な料理なのです。

これぞ日本、米と米のペアリング。これで最後と思いながらも、ひと口飲んでは、ひと口パクリ。ある意味、困った口福に伸びる手が止まらないでしょう。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『福井弥平商店』の「萩乃露槽場直汲み 中汲み無ろ過生 辛口特別純」。槽場(ふなば)で直汲みした純米の無ろ過生原酒。口中に広がる吟醸香、やわらかで濃い旨味、後口のキレの良さ。直汲みだから味わえる、旨口の辛口純米。

『クサツパイオニアファーム』の「有機JAS認証 滋賀旭」。滋賀旭は、関西で昔から栽培されていたお米であり、日本の良質米の祖先。米粒は、しっかりとした大粒の晩生品種で食べごたえ充分。 粘りはほど良く、味はコシヒカリに似る。

『川原食品』の「こな柚子こしょう(青)」。なま柚子こしょうをそのままフリーズドライ製法で粉末にした逸品。今回は、おにぎりに和えるも、一味やお塩の代わりにも最適。お料理に振りかけるだけでも美味を演出する。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

にごり酒がカフェラテに!? これもまた、千葉流のペアリング。[和光アネックス/東京都中央区]

「濁りの貴醸酒は珍しく、『華鳩 貴醸酒の生にごり酒』は、甘いお米のクリームのようです。コーヒーを製氷皿に入れ、コーヒー氷を作っていただき、そこに注ぐと珈琲に甘味とクリーム感が足され、カフェラテのように! 時間の経過とともに味の変化もお楽しみください」と『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さん

WAKO ANNEXにごり酒に溶け出すのは、まさかの珈琲。さすが千葉さん!と唸るペアリング。

「にごり酒がカフェラテのようになります」。そう話すのは、『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さんです。

一体、何のことか分からない言葉の意味は、「それ」を差し出されて納得。「それ」とは、にごり酒の中に凍らせたコーヒーを入れた杯。選んだ酒は、『榎酒酒造』の「華鳩 貴醸酒の生にごり酒」です。

「にごりの貴醸酒は、とても珍しく、甘いお米のクリームのようです。その中に製氷機で凍らせたコーヒーを投入。甘味とクリーム感が増し、カフェラテのようになるんです!」と千葉さん。

確かに、徐々に珈琲氷が溶けゆく様は、色においてもカフェラテのように変化し、飲むごとに変化を楽しめます。

「最初はクリーミーに感じますが、珈琲が溶けていくに連れ、時間の経過とともに味の変化を感じられます。コーヒーの香ばしさと貴醸酒の甘みが融合して面白い体験ができると思います」と千葉さん。

「華鳩 貴醸酒の生にごり酒」は、仕込み水の代わりに酒(純米酒)で造る「貴醸酒」の生にごり酒。元気が良く、シュワシュワした舌触りも特徴です。味わいは、フルーティーな甘い香りと濃厚な甘口ですが、発泡によってしっかりとした酸味も兼ね備え、後味も爽やか。

この「華鳩」においては、国税庁醸造試験所の製造特許をもと、1974年に全国で初めて貴醸酒(迎賓館など、海外からのゲストを招き、日本酒で乾杯する際のお酒として、国税庁醸造試験所より開発された日本独自の高級酒)を製造した蔵元でもあるのです。

凍らせた『和光』の「ドリップコーヒー」は、世界中のコーヒー豆農園を自らの足で回り、「コーヒーハンター」としても知られる川島良彰氏が『和光』のためだけにブレンドしたもの。

焙煎、粉砕、充填、包装までを1日で行うことにより、ドリップパックはアロマを含んだ炭酸ガスで満たされ、パッケージを開けたとたんにふくよかな香りが広がります。

シトラスのようなフレーバーと甘みもあり、穏やかな酸味と香ばしさのバランスが取れたブレンドが特徴です。

「だから、にごりにも負けない」。

また新たなペアリング体験の扉を開けたにごり酒とコーヒーのペアリング。百聞は一見にしかず。まずはお試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『榎酒酒造』の「華鳩 貴醸酒の生にごり酒」。仕込み水の代わりに酒(純米酒)で造る「貴醸酒」の生にごり酒。フルーティーな甘い香り、濃厚な甘口でありながらも発泡感としっかりとした酸味が特徴。後味も爽やか。国税庁醸造試験所の製造特許をもと、1974年に全国で初めて貴醸酒(迎賓館など、海外からのゲストを招き、日本酒で乾杯する際のお酒として、国税庁醸造試験所より開発された日本独自の高級酒)を製造した蔵元でもある。

『和光』の「ドリップコーヒー」。世界中のコーヒー豆農園を自らの足で回り、「コーヒーハンター」としても知られる川島良彰氏が『和光』のためだけにブレンドしたもの。焙煎、粉砕、充填、包装までを1日で行い、深い味わいはもちろん、香りも豊かに仕上げる。今回は、凍らせてにごり酒と合わせたが、そのままの美味も是非。自宅で手軽に楽しめるのも嬉しい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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ビールとカレー。王道の合わせだけに、提案者の個性が光る。[和光アネックス/東京都中央区]

「4種あるレカマヤジフ craft curry canの中でも『平和クラフトSOUR ALE』と相性が良いのかは、四川花山椒と干しエビのカレー。酸味のあるサワーエールと山椒の爽やかな香りの組合せは抜群です」と『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さん。

WAKO ANNEX

決め手は山椒の爽やかな香りと酸味。1本1缶で、4度のお楽しみを是非。

『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さんが提案するペアリングは、『平和酒造』の「平和クラフトSOUR ALE」と『アパッペ』の「レカマヤジフ craft curry can」4種セットです。

味の好相性はもちろんですが、高い受賞歴を持つ両者という背景にも注目。

「平和クラフトSOUR ALE」は、ビールの国際コンペティション「The International Beer Cup 2017」において金賞を受賞。「craft curry can」を手がけた高木祐輔シェフは、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」入賞、「Forbes under 30 2020」にも選出されています。

まず、「平和クラフトSOUR ALE」は、酸味のあるサワーエールの味わいが特徴です。

「今回は、その酸味が今回のポイント。4種ある『レカマヤジフ craft curry can』の中でも特に相性が良いのは、四川花山椒と干しエビのカレー。山椒の爽やかな香りと酸味のあるビールの組合せがグッド!」と千葉さん。

通常の発酵に加え、乳酸菌による発酵を取り入れることでサワーエールの酸味は生まれています。「平和クラフト」では、このサワーエールに地元和歌山県の名産、ブランド「紀州南高梅」を加え、より爽やかな味わいとなっているのです。

レカマヤジフ craft curry can」のほか3種は、胡椒バターとチキン、ブラックマスタードとアワビ茸、馬告キーマ。高木シェフのこだわりが詰まったそれらは、缶とはいえ、本格的に仕込みます。

従来のスパイスカレーはスパイス×食材で構成されていますが、「レカマヤジフ craft curry can」は、茸や干しエビなどの旨味を加え、スパイス×食材×旨味を掛け合わせた新感覚のカレーに仕上げています。

それらもビールと相性が良いかどうかは、ご自身でお試しあれ。千葉さん推奨の四川花山椒と干しエビのカレーはもちろん、1本1缶で4度お楽しみいただきたい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『平和酒造』の「平和クラフトSOUR ALE」。サワーエールとは、「酸っぱいビール」。乳酸菌のほか、微生物から生成された乳酸により、酸度を上げ腐敗を防ぐ製法は、日本酒の「生酛造り」にも似る。乳酸発酵という工程を経ることで、従来の酵母のみの発酵では出ない果物のような香りと酸味が付与。さらに和歌山特産の南高梅を加えることで、クエン酸の要素も付与され、複雑でありながら軽快な味わいに仕上げる。ビールの国際コンペティション「The International Beer Cup 2017」において、金賞受賞。

『アパッペ』の「レカマヤジフ craft curry can」4種セット。従来のスパイスカレーはスパイス×食材で構成されるが、レカマヤジフのカレーは、茸や干しエビなどの旨味を加え、スパイス×食材×旨味の新しいカレーに仕上げる。手がけた高木祐輔シェフは、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」にて入賞、「Forbes under 30 2020」にも選出。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

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Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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驚きと発見、鯖の概念を覆す味と香り。フルーツと合わせることで、未知の領域に。[和光アネックス/東京都中央区]

「『南三陸CANシリーズ さば水煮』は、青魚特有の香りや塩味が少なく、上品な味わいとしっとり、ふっくらとした食感が特徴です。その鯖の上品な香りに、フルーツティーに香るいちごと合わさることによって、更にバランスのとれた風味になります。鯖にいちご!?と驚くかもしれませんが、是非お試しください」と、今回のペアリングを推奨するドリンクディレクターの外山博之氏。

WAKO ANNEXただ、美味しいだけではない。健康志向&サスティナブルなペアリング。

独自の視点と哲学を持って理論的にペアリングを行うドリンクディレクターの外山博之氏。

今回、提案するのは、『かたすみ』の国産無添加ドライフルーツを使用した「COPECO」のいちごのフルーツティー3種セットと『丸荒』の宮城県「南三陸CANシリーズ さば水煮」です。

砂糖・香料・着色料を一切使用せずに仕上げたシンプルなフルーツティーのドライフルーツは、全て国産。低温で丁寧に乾燥し、旨味を凝縮しました。

「いちごの優しいフルーティーなフレイバーを加えることによって、“これ”がさらに美味しくなるんです」と外山氏が話す“これ”とは、何と鯖。

「『南三陸CANシリーズ さば水煮』は、青魚特有の香りや塩味が少なく上品な味わいと、しっとり、ふっくらとした食感です。その鯖の上品 な香りに『COPECO』のいちごのフルーツティーの香りが絶妙なバランスを生んでくれます」と外山氏。

しかし、今回は、香りだけでなく特筆すべきがもうひとつ。それは、企業努力と哲学です。

『丸荒』においては、世界三大漁場の三陸沖が目の前の立地。更には、2018年「ラムサール条約」にも登録されるなど、世界が認める自然環境に恵まれています。

この恵まれた環境で最も旬の時期に水揚げされたものを当日のうちに、鮮度そのままに次世代の凍結技術(均等磁束と電磁波のハイブリッド)急速冷凍することで、素材の鮮度や美味しさを閉じ込めたものを缶に詰めているのです。 「COPECO」のいちごのフルーツティー同様、無添加・無着色。健康にも良いです。

「地球環境に配慮しながら水産資源を守り育てる持続可能な生産に取り組んでいます」とは、『丸荒』の言葉。

日本初のエコラベル「ASC」と森の「FSC」ふたつの国際認証を取得し、地球環境を守り、持続的に魚介類を食べ続けていくことができるよう、自然を傷つけない方法で育てられたサステナブル・シーフードの精算に取り組んでいるのです。

体にも良い、自然にも良い、そんなペアリングを是非ご堪能ください。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『かたすみ』の人気商品、「COPECO」のいちごのフルーツティー3種セット。いちごを低温で丁寧に乾燥することで旨みを凝縮し、砂糖・香料・着色料を一切使用せずに仕上げる。紅茶やハーブを合わせ、スッキリとした味わいの3種に。

『丸荒』の宮城県「南三陸CANシリーズ さば水煮」。水揚げされたサバをその日のうちに急速冷凍することで、素材の鮮度や美味しさを閉じ込める。無添加・無着色のため、健康にも配慮し、サスティナブル・シーフードの精算にも取り組む。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエに転身。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』)のマネージャーに就任。2018年より調布市にある『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

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Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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波佐見焼の里に1日限り現れた、長崎県産食材尽くしの野外料理会。[大人のピクニック・くらわんかくらわんか登窯/長崎県波佐見町]

中尾郷を見下ろす「中尾上登窯跡」に遠方からもゲストが集った。

大人のピクニック くらわんかくらわんか登窯波佐見焼の窯元が集まる山間の集落に1日限りの野外レストランを。

長崎県のほぼ中央に位置し、県内の市町村で唯一海に面していない波佐見町。400年の伝統を持つ磁器、波佐見焼のふるさととして知られています。その波佐見町の中でも、波佐見焼の窯元がとりわけたくさん集まっているのが、山間の集落、中尾郷です。2月、中尾郷で1日限りの野外料理会『大人のピクニック くらわんかくらわんか登窯』が開催されました。

会場となったのは、集落を見下ろす急峻な山肌に広がる「中尾上登窯跡」。世界第2位の大きさと言われる登窯跡で、その長さはなんと160mにも達します。ちなみに、まだ地中に埋まっていますが、世界第1位も波佐見にあり、、波佐見焼は世界に名だたる登窯の里だったことがわかります。中尾上登窯はかつて33室もの窯室を擁し、青磁や染付茶碗などを大量に焼き上げていました。現在は、窯室が連なっていた部分はレンガを利用して22面の段に整備され、巨大なひな壇のような威容を誇っています。今回、この段々が宴の舞台となるのです。

料理と空間演出を担当したのは、大塚 瞳さん。出張料理人として気に入った土地に数日限りの食空間を創出することをライフワークとする彼女は、使用する食材はすべて自ら生産者を巡り探し求める徹底ぶり。つながりのある生産者は数千件におよぶといいます。

今回の料理は、すべて長崎県産の食材を使用し、波佐見焼の器で提供されるとのこと。一体どのような内容になるのでしょうか。

山に鳴り響くのは正午を告げる町内放送の音楽。ゲストたちが続々と登ってきました。いよいよ『大人のピクニック くらわんかくらわんか登窯』の始まりです。

料理は3種の重箱からスタート。牛蒡と椎茸の具が入った波佐見寿司、黄色い白菜・黄ごころと金柑、青唐辛子のサラダ、足赤海老と渡り蟹の老酒漬けや煮豚、炙り鰆のジェノベーゼソース添えなど、多彩な内容。

テーブルと椅子の代わりに用意された帆布生地1反。登窯から街を見下ろす景色や、かつての窯そのものを味わうには地面に座ることだとロケハンの時に閃き、器の絵付師に連絡。染付の藍色で波佐見町の草木を描いてもらったレジャーシートが彩る。ゲストはブルーのベールを取って着座する。

一般公募したゲスト25名と地元の窯元5名が続々と登ってきた。

着座してまずはお茶をいただく波佐見焼のタンブラーはシリコン製の蓋も付いた機能性、デザイン性に優れた一品。

今回の料理や空間づくりのテーマについて紐解く大塚さん。波佐見焼やくわらんか碗の歴史などにもふれた解説に、ゲストは聴き入っていた。

くらわんかくらわんか登窯染付の藍色が登窯跡を彩るシートの上で車座に。野外でも陶器。陶郷ならではの大人のピクニック。

段々の一区画は6×5mほどの広さ。その中央にシートが敷かれています。これはテーブルとイスの代わりに用意された帆布製の宴座。ゲストが車座になって、屋外の料理会を楽しんでもらいたいという趣向です。5名の一般客に地元の波佐見焼の窯元1名が加わった6名のグループが5組。1組1段ずつ、5段に分かれて席におさまりました。

ブルーのベールを取ると、鮮やかな藍色で草木が大胆に描かれた帆布、その真ん中に磁器と桐の重箱が鎮座しています。席につくと、波佐見焼のタンブラーが配られました。冷えた体に染み渡る、長崎のそのぎ茶。お茶で喉を潤し、お重の料理からいただきます。

蓋を開けると、わぁという歓声が上がりました。めでたい瓢箪柄のお重の中身は、地域に受け継がれている波佐見寿司。黄色い錦糸卵が鮮やかな押し寿司です。ニノ重は老酒漬けの足赤海老と渡り蟹、焼豚、炙り鰆など、なんとも渋くて魅力的なラインナップ。三ノ重は春らしい明るい色合いの金柑と白菜のサラダです。

この日の献立は中国春節にちなんでいると大塚さんは話します。

「長崎は中国との交流の歴史が深いところ。チャイニーズニューイヤー、中国の旧正月をピクニックでお祝いしたいと思い、御節料理のように重箱でご用意いたしました。中国の香りが感じられる内容になっています。サラダには黄ごころという甘みの強い黄芯白菜を使っています。中国では、“白菜”と“百財”が同じ発音であることから、白菜は財をもたらす縁起物。皆様の運気が上がりますようにとの願いを込めて、サラダに仕立ててみました」。

長崎県産の馬鈴薯・デジマと、塩蔵した鯨を炊き合わせた鯨じゃが。

鯨じゃがはさまざまなデザインのくらわんか椀に取り分けられた。現代的でカジュアルなデザインも、波佐見焼らしい一つの表情である。

小浜温泉の温泉水で蒸し揚げられた緋扇貝と鯛。温泉由来の塩分を穏やかにまとったやさしい味わい。

くらわんかくらわんか登窯長崎県産食材を地域ならではの組み合わせと調理法で。

次なる皿が湯気を上げてやってきました。ポップなデザインの碗の中には、馬鈴薯と何やら透き通った白いスライス。その正体は鯨の本皮部分。肉じゃがならぬ、“鯨じゃが”、だそうです。かつて鯨漁が盛んだった時代の長崎では、肉よりも鯨の方がよく食べられており、肉の代わりに鯨を入れた肉じゃがも、家庭料理の定番だったといいます。

「馬鈴薯というと北海道のイメージが強いかもしれませんが、長崎県は全国2位の生産量を誇る馬鈴薯の産地。この馬鈴薯は私が一番好きなデジマという品種で、その名前は長崎の出島に由来しています。ほくほくとした食感でほんのりとした上品な甘みが持ち味のデジマを、塩蔵した鯨と炊き合わせました。カタクチイワシの魚醤、エタリ醤油をほんの少しだけ風味づけに使っていますが、塩気は基本的に鯨から出る塩分のみ。馬鈴薯と鯨、昔ながらの味付け、この郷土料理は漁師町のお母さん直伝です」。

鯨じゃがを口にしたゲストからは、「鯨の脂と馬鈴薯の相性が絶妙」「馬鈴薯の甘みがストレートに伝わってくる」と驚きの声が上がっています。本当はここに人参が入るそうですが、この日は真っ白の世界を作りたくてオレンジ色の人参は外したそうです。

さて、もうもうと湯気を上げる蒸し器から登場したのは、天然鯛と紫や黄色の鮮やかな殻を持つ緋扇貝。これらは雲仙市小浜町の温泉水で蒸し上げられました。

「橘湾沿岸の小浜温泉には、105℃という高温の温泉が1日に1万5000トンも湧いています。しかし、その7割は利用されることなく海に流されているといわれています。そこで、せっかくの温泉を料理にも活用しようと、温泉の熱を利用した蒸し料理や、飲用の許可を取った温泉水を使った煮込み料理などが作られるようになっています。塩化物泉の温泉は塩気を含んでおり、その温泉で調理すると、素材はほんのりと塩味が付きます。魚も野菜も、素材が本来持つ旨味が引き出され、素直な味が身体に染み渡ります。長崎の海と大地の恵みを堪能できる、知る人ぞ知る調理法です」

縁起のいい立ち鶴が描かれた伝統的なくらわんか碗。素朴なタッチの柄が不思議な魅力を醸し出す。

中国・四川名物の漬物、芽菜(ヤーツァイ)と豚肉の餡を、法蓮草を練り込んだ翡翠色の皮で包んだ水餃子。小浜温泉の飲用泉で蒸した蓮根とともにスープ仕立てに。

「今回使っている器は、重箱とくらわんか碗以外はすべて参加していただいた窯元が思い思いに持ち寄ったもの。伝統的な柄も現代風なポップなデザインもいろいろ混在していい、その方がカジュアルな食器として親しまれてきた波佐見焼の自由な雰囲気が感じられるのではないかと考えました」と大塚さん。

小浜温泉の飲用泉で丸ごと蒸した玉葱。温泉によるごくわずかな塩味が、玉葱の甘みを引き立てる。

初めて出会ったゲスト同士も、食事を共にしながら打ち解け、場は自然と和んでいく。

くらわんかくらわんか登窯波佐見焼を象徴する伝統的な器“くらわんか碗”で料理を堪能。

水餃子が“くらわんか碗”に取り分けられてやってきました。イベント名に掲げられている“くらわんか”とは“食べないか”という意味の関西の方言。江戸時代、大坂・淀川の乗合船の客に酒や惣菜などを「くらわんか、くらわんか」と売った煮売船をくらわんか船といい、そこで使われた器はくらわんか碗と呼ばれたそうです。揺れる船の上でも転げにくいように重心が低く、割れにくいように厚手であるのが特徴。ご飯だけでなく、汁物や酒の提供にも幅広く使われました。

くらわんか碗は各地の磁器の産地で作られましたが、波佐見焼は中でも代表的な存在として知られ、くらわんか碗は普段使いの食器を得意とする波佐見焼を象徴する器にもなっています。

丼としては小ぶりで、飯碗としてはやや大ぶりなくわらんか碗は、一つで何役もこなしてくれそうなほどよいサイズ。持ってみると、手にしっくりと馴染みます。

熱々の鶏出汁のスープを啜り、もっちりした水餃子を頬張ってひと心地つくと、太陽が顔を出しました。陽射しを受けた背中はポカポカと温まり、春の訪れが一気に感じられます。

サプライズとして突如始まった餅つき。長崎を拠点に活動するパフォーマンス集団「かわち家」による魅せる餅つきに、拍手が沸いた。

まだ温かいつきたての餅をあんこやきな粉とからめて即座にいただく。文句なしのおいしさ。

イベントの締めくくりとして好評を博した野点。

野点では、くらわんか碗にて薄茶が振る舞われた。

くらわんかくらわんか登窯サプライズの餅つきに野点。宴は大団円へ。

突然、上の方の段から軽快な和太鼓の音が聞こえてきました。サプライズの餅つきです。ゲストは音に誘われるように、登窯跡を登っていきます。レンガ造りの煙突が点在する、いかにも焼き物の里という眺望を背景に、餅つきが威勢よく始まりました。一年の息災への願いを込めて、ゲストたちは手拍子で応援します。

コシよくつき上がった餅は、あんこ餅ときな粉餅に。お腹いっぱいと話していたはずの人たちもペロリと平らげ、多くの人がお代わりに並びます。

続いて、ゲストを登窯跡の最上部へ誘うように、一番上の段で野点が始まりました。ゲストたちはさらに登っていきます。茶碗に使われているのは、再びくらわんか碗です。先ほどは伝統的な立ち鶴の柄、今回は亀甲の柄。正月にふさわしい鶴亀が揃いました。

息を切らして頂上まで上り、来た道を振り返るとそこには波佐見焼の里が広がっていました。薄茶を一服。清洌な山の空気とともにいただくお茶は、至福のひと言です。

大塚さんも薄茶を相伴しながら話します。

「このような屋外環境と水もないような限られた条件の中での料理会は、リハーサルもままならず、いくら綿密に準備してもなかなか思い通りにはならないものです。この場所を見つけ、会を開催できるというだけで8割成功と言っても過言ではないほどすでに美しい。私たちスタッフにできるのは、皆様の顔を思い浮かべながら料理し、空間を整え、怪我や事故が起こらない細心の注意をはらうこと。自分が思い描いた頭の中のデザインが何もなかった会場に出来上がった時の喜びをいつも真っ先に感じさせてもらっていますが、涙が出るほど感動するのは、そこにきてくださった方々が塗ってくださる最後の色。あぁ、これが見たかったんだ、っていつも思います。今回もね、吹雪に始まり、太陽が昇って雲がちぎれ、光がまっすぐ降り注いで、虹までかかり、神様ありがとうでしょう?」。

薄茶の一服で締めくくり、登窯跡を下って帰るゲストたち。その晴れ晴れとした笑顔は、この儚いレストランがもたらした感動を、何よりも雄弁に物語っているようでした。

世界最大級の登窯跡に、宴の舞台がしばし現れ、そして、また消え去った。

1981年福岡県生まれ。料理上手でおもてなしを大切にする祖母や母の影響で、幼い頃から料理や客礼に興味を持つ。世界中の様々な食に親しみ、大学在学中は料理研究家のもとで学ぶ。大学在学中の2004年、居心地の良い空間で過ごす食のひと時をテーマに「Life Decoration」を立ち上げる。現在は、自ら生産者を巡り探し求めた食材を使っての出張料理会や食空間のプロデュースを行う他、店舗、旅館、特産品などのメニュー開発も手がける。これまでに携わった企画は、新宿伊勢丹 有田焼創業400年記念料理会、小樽  旧円山圓吉邸 修築披露料理会、有田ボーセリンラボ 有田焼創業400年記念料理会、常滑 吉川千香子窯 料理会、日田 SnowPeak キャンプ場でのグランピング料理会、唐津 旧大島邸 唐津焼料理会などがある。食空間演出家。福岡市大名にある『台所ようは』店主。
http://hitomi-otsuka.jp/



Photographs:TAISHI FUJIMORI
Text:KOH WATANABE

同じ土地が育んだ、日本酒とアートのペアリング。[下関酒造 × 写真家・野村佐紀子/山口県下関市]

「言葉が要らないくらい、深く2人の世界へ入っていける。そんな体験ができる日本酒です」と、『下関酒造』の内田喬智常務。

Sakiko SILENCE/NIGHT/DIVEお酒と写真で提供したい、言葉もいらない特別な時間。

1923年、下関市幡生の445人の地元農家によって設立された『下関酒造』は、蔵の地下160メートルに流れる水を汲み上げ、山口県産の酒米を使用する、地元に根付いた酒造です。

設立当時の幡生は田んぼが広がり水質も良く、酒は評価されて第一回目の「全国新酒鑑評会」から優等賞を受けています。地域の人々に気軽に楽しんでもらえる酒を提供してきましたが、近年、世界でも親しまれる酒造りを目指し、香り高く上質な純米系高級酒の開発を始めました。

そうして生まれた純米大吟醸の『獅道(シド)38』と純米吟醸の『蔵人の自慢酒』は、ロンドンの日本酒品評会「LONDON SAKE CHALLENGE」で金賞と最高賞を受賞しています。

海外への展開を進めたのは、芸術大学に進学し英国留学を経験、酒蔵としては異色の経歴を持つ内田喬智常務。『下関酒造』は世襲制ではありませんが、豪快で優れた経営手腕を買われた5代目の祖父が営業を立て直し、現社長で6代目の父が機械設備やシステムの近代化を促進。

「自分がすべきことは、伝統を守りながら縛られず、新しい可能性に踏み込んで遊ぶこと。『下関酒造』の企業理念は“酒と食と心の感動”で、酒の味だけに限りませんから」と内田氏は言います。

そんな『下関酒造』の新たな挑戦は、下関市綾羅木出身の写真家・野村佐紀子さんとコラボレーションした日本酒『sakiko』の発売です。内田氏は「企画が立ち上がった時、これまでにない価値観の日本酒を生み出せると思った」と話します。

野村さんは世界で評価を受ける写真家・荒木経惟さんに師事し、自身も『テート・モダン』(ロンドン)に作品がコレクションされるなど、国内外での活動が活発。

ちょうど、地元で初めての大規模な写真展「海」が『下関市立美術館』にて開催されるタイミングでした。

「振り切ったことをしよう。写真をきっかけに、お酒が手助けをして、言葉がいらなくなる。そんなものが欲しいな」。

野村さんとの雑談からコンセプトが固まり、『sakiko』は、何も施されていない黒いボトルと、繊細で湿度を感じる力強い写真を同梱した商品になりました。ラベルに写真が刻印されているのではなく、プリントでボトルが包まれています。 

恋人と、友人と、日本酒を飲み写真を眺める空間。時にロマンチックであったり、言葉も必要のない時間を提案できる日本酒の味とは何か。

「穏やかにリラックスできなければ、親密な時間にはなり得ないと考えました」と内田氏。山口県産酒米と米こうじがほのかな甘みと味わい深さを残しながら、柔らか過ぎない中軟水の蔵の地下水が調和し、雑味の少ない滑らかな喉越しの純米大吟醸となりました。

もちろん、響灘、関門海峡、周防灘でとれる下関の良質な海産物や、食事との相性も良いですが、内田氏のおすすめは食後のゆったりとした時間に味わうこと。野村さんのモノクロ写真が2人を同じ世界に引き込み、その静かな空間で、安らぎを共有します。自然と、相手との特別な時間を演出してくれる日本酒と写真。ぜひお試しください。

『sakiko』の写真は3種で、SILENCE「静寂の時」、NIGHT「はじまる夜」、DIVE「溺れゆく時」(日本酒は共通)。上の写真は、SILENCE。アルコール分15度。300ml、各1,000円。

開催中の、野村さんの写真展「海」を鑑賞し、「黒の表現に圧倒された」という内田氏。展覧会は下関市立美術館にて、3月27日まで。

併設されたカフェ『shuan KU cafe』では、珈琲や軽食だけでなく、甘酒や利き酒セットなども。また、内田氏の姉で陶芸家の田中宜子さん、夫で漆器作家の田中修吾氏の作品も並ぶ。

山口県下関市出身。神戸芸術工科大学環境建築デザイン学科卒業。神戸と東京で3年間の異業種経験を積む。2014年より『下関酒造株式会社』に就職。事業である酒造りを学んだ後、英国の『Frances King School of English London』に入学。卒業後、北アフリカ各国を巡り、途上国の食文化やそこで暮らす人々、その国民性と直に触れる。帰国後、主に商品のブランディングに力を注ぐ。自身がデザインした主な銘柄に『獅道(シド)38』(純米大吟醸酒)と『蔵人の自慢酒』(純米吟醸酒)がある。現在は海外事業を主軸としながら、日本酒の新たな可能性の発信に努める。

山口県下関市出身。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。91年より荒木経惟に師事。 主に男性の裸体を中心とした湿度のある独特な作品世界を探究し続ける。93年より東京を中心に国内外で精力的に個展、グループ展をおこなう。主な写真集に『裸ノ時間』(平凡社)、『闇の音』(山口県立美術館)、『黒猫』(Taka Ishii Gallery)、『夜間飛行』(リトルモア)、『NUDE/A ROOM/FLOWERS』(MATCH and company)、『TAMANO』(libroarte)、『愛について』(ASAMI OKADA Publishing)、『春の運命』(Akio Nagasawa Publishing)など。2022年3月27日まで、下関市立美術館にて写真展「海」が開催中。

住所:山口県下関市幡生宮の下町8番23号 MAP
TEL:083-252-1877
https://www.shimonoseki.love/



Text:ASAMI OKADA

八戸で出合った一軒のイタリアン。正統派のようで驚きが潜む、ここだけの料理。[カーサ・デル・チーボ/青森県八戸市]

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青森県八戸市の住宅街に位置する、『カーサ・デル・チーボ』。主となる県産、地物の食材を大切に調理し、ここだから味わえる料理をゲストに供する。

カーサ・デル・チーボ遠くても、この店のために旅をしたくなる。八戸の名イタリアン。

そのレストランの所在地は、青森県八戸市。

北国の太平洋岸の住宅街の一角に、一見普通の住宅のように街に溶け込んで存在しています。長い道のりを辿って扉を開けば、まずはその包み込まれるような温かみに癒やされるはず。花瓶の花、磨き抜かれた無垢材の床、マダムの笑顔、そんなすべての要素が、長い道のりで凝り固まっていた心を解します。

ジャンルは、イタリアン。それも主食材が明確にあり、趣向を凝らしたソースが彩る王道。メニューの文字を眺めてみても、彼の地で長く愛され、認められてきた正統派の組み合わせが予想されることでしょう。

しかし卓に届けられる皿を見ると、予想は簡単に覆されます。

例えば、前菜のタコのトマト煮。真っ赤なトマトソースで煮込まれたタコかと思えば、届くのは茶色い出汁で煮込まれた、まるでおでんのようなビジュアル。口にしてみると、さらなる驚きが待っています。歯を押し返す弾力がありながら、そこからわずかに力を込めるとサクッと噛み切れる絶妙な柔らかさ。そして口に広がる凝縮された旨味。出汁はドライトマトの風味。確かに、メニュー名の通りタコのトマト煮ではあります。しかし、その味は完全に未知のおいしさです。

この完璧な、たった一点の頂点を見極めるような火入れは、きっと誰かに習ったり、本で学んだものではないのでしょう。細かな調整をしながら何度も何度も繰り返し、失敗も乗り越えながら到達したもの。大げさな話だが、ひとりの料理人の人生が詰まっているような、そんな凄みのある火入れです。

料理を手掛けるのは、池見良平シェフ。寡黙な人物ですが、言葉のひとつひとつから料理への情熱が伝わります。神奈川県で生まれ、東京で働いていたが、10年ほど前に奥様の故郷である青森に移ったこと。移ってはみたものの、地元で受け入れられるまでにさまざまな苦難があったこと。今では魚介を探すために日々漁港や市場を自らの足で巡ること。

「ここでしかできないことをしないと、来た意味がない」。

そんな真摯で真っ直ぐな言葉から伝わるのは、たとえば“責務”のような、池見シェフが自分自身に課した約束でした。

池見良平シェフ(右)とマダム(左)。シェフは、神奈川県で生まれ、東京のレストランで働いていたが、約10年前に奥様の故郷である青森に拠点を移す。以降、青森の食材と真摯に向き合い、この場所だからこそ表現できる料理を追求。県外はもちろんだが、地元から愛されるレストランであることを大事にする。

ある日の前菜は、タコのトマト煮。いわゆる、当たり前のトマト煮ではなく、食材が活きるよう、池見シェフ流のトマト煮。味はもちろん、秀逸な技術は火入れ。一口食べれば感動を覚える食感は、その火入れから成る。

カーサ・デル・チーボ地元で愛され、認められるために大切にすること。

パスタは鮑とその肝を使う料理。これにもまた驚きが潜みます。一般的に鮑の肝は伸ばしてソースにされますが、ここでは手打ち麺自体に肝が練り込まれているのです。だから鮑を引き立てる肝の風味はしっかりありながら、さっぱりとした後味。

メインディッシュの鴨も圧巻。胸肉のまわりをミンチで巻き、外側を皮で包んで香ばしく焼き上げるバロティーヌ仕立て。内臓はミンチに、ガラは出汁に。一皿に鴨のすべてが凝縮され、ひと口ごとに異なる味わいが広がります。技術、発想、素材の知識。すべてが揃っている。そしてもうひとつ、何か突出したものも。それでないと、これほどまでに驚きに満ちた料理の説明がつきません。池見シェフに「料理の理想形」を尋ねてみました。

「まずおいしいことが大前提。加えて、驚きがあり、見た目が良く、コストパフォーマンスに優れていること。これが料理の完成形だと思います」。

それが池見シェフの回答。シェフの中の重要課題にコストパフォーマンスが含まれていること。それはつまり、地元に目を向けていることの証明。家族連れがお祝いに使ったり、若者が少しだけ背伸びをして訪れられる店。地元の人が繰り返し通える店。それが地方でレストランを開く意味なのでしょう。

都会からやってきたシェフだからこそできる、この地の魅力を伝えようという思い。だからこそこの『カーサ・デル・チーボ』は、旅の1ページとして深く記憶に刻まれるのです。

ある日のパスタは、鮑とその肝を使ったひと皿。一般的に鮑の肝は伸ばしてソースにするが、池見シェフは、手打ち麺に肝を練り込むのが特徴。

ある日のメインディッシュは、鴨。胸肉のまわりをミンチした内臓で巻き、外側を皮で包んで香ばしく焼き上げるバロティーヌ仕立て。出汁にはガラを使用し、鴨のすべてが凝縮されたひと皿に仕上げる。

八戸やその近郊まで、自ら生産者のもとへ足を運び、食材を仕入れる。広大な面積ゆえ、移動にも時間はかかるが、食材が育つ環境や作り手を知ることによって池見シェフの料理は創造される。料理の背景には、そんなシェフの想い、生産者の想い、土地への愛が込められている。

住所:青森県八戸市湊高台1-19-6 MAP
TEL:0178-20-9646
http://www.casa-del-cibo.com/

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冬の青森で、雪に包まれたゲルに泊まる。日常から大きく離れた、記憶に刻まれる体験。[つがる地球村/青森県つがる市]

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つがる市にあるキャンプ場『つがる地球村』に設置された1基の「ゲル」。旧車力村と交流があったモンゴルから、約20年前に寄贈されたもので2021年9月に復元。

つがる地球村温泉やレストランを備えた通年営業の複合施設。

「冬の青森でキャンプをする」。

そう聞くとまるで大冒険のように聞こえるかもしれません。しかしそれを可能にする場所があります。青森県つがる市『つがる地球村』。そこには、モンゴルから取り寄せた本物の「ゲル」が設置され、予約があれば冬でも利用可能なのです。

青森市から弘前市を経てつがる市に向かうルートは、津軽の象徴・岩木山に見守られるような道です。

青森市からは遠く霞んで見えていた姿が、弘前に近づくに連れてはっきりと見えてきます。それは「山」という漢字の成り立ちを思わせる、3つの頂が連なる美しい姿。山裾は広くなだらかに広がり、悠然とした佇まい。その「岩木山」の麓をぐるりと廻るようにつがる市方面へ向かうと、またも山は姿は形を変えます。今度は鋭く尖ったひとつの頂上と、ゴツゴツと雄々しい山肌。どれも同じ「岩木山」。しかし見る場所によりこれほどまでも姿を変えるのです。

きっと世の中の物事も、この岩木山と同じことなのかもしれません。名峰に見守られたそんなことを考えているうちに、やがて目的地に到着します。
宿泊施設やレストラン、温泉施設も併設された『つがる地球村』は、季節を問わず快適に過ごせる施設です。しかし、「ゲル」があるキャンプ場は、先の温泉やレストランからも少し離れた場所。深い雪に覆われています。その白一色の光景は、あまりに日常とかけ離れているがゆえに、わずかな不安を呼ぶかもしれませんが、心配は無用。「ゲル」の中はいたって快適。薪ストーブに火がある間は、寒さに凍えることもありません。薄暗く、静寂に包まれた幕のなかにいると、きっといつもとは違う思考を加速させてくれることでしょう。

 『つがる地球村』までの道のりにおいても白銀の世界が広がる。鋭く尖った頂が特徴の山は、名峰「岩木山」。くっきりと山肌まで見えるのは、冬の澄んだ空気ゆえ。寒さは険しいが、この季節に訪れた者のみが望める特権だ。

「ゲル」の空間は、天井も高く、ベッドやテーブルセットも用意。中央には暖炉も設置され、快適に過ごすことができる。モンゴルの建築様式においても、非日常な旅情を演出する。

つがる地球村不便や寒さを楽しむことが、旅の記憶を思い出に変える。

「ゲル」の中で火を使った調理はできないため、夕食はレストランに歩くか、屋外で調理するかを選択。風呂に入りたければ、温泉施設まで歩きます。帰り道で凍えぬよう、少し長めに湯に浸かっておく方が良いでしょう。日没は早く、ストーブとランタンの灯りしかないゲルの中は、読書をするにも心もとない明るさ。しかし、そんな何もない時間が、きっと心満たされる豊かなひと時となるはず。

ベッドはありますが、ストーブの薪が燃え尽きると凍える寒さになるため、寝袋は必須。夜半、寒さで目が覚め、何度も薪を足す必要もあります。薪が切れれば外の薪棚まで取りに行くこともあるでしょう。さまざまな便利と快適に満たされた現代にあって、なぜわざわざそんな体験をするのか疑問に思うかもしれません。

しかし、雪の中の「ゲル」で本物の静寂を体験し、そして夜明けを迎え、翌朝扉を開いて朝日に輝く雪を見れば、きっと誰もがこの地を訪れたことに満足するはず。そして日常からかけ離れた希少な体験は、いつまでも心に刻まれる素晴らしい思い出となるのです。

「ゲル」の中では調理不可のため、外で行う。道中、県産の食材などを買い込み、地物をゆっくりと味わいたい。

青森は、バゲットやシードル、ハムなどの名品も揃う。外は極寒、中は暖か。そんな「ゲル」の中でいただく青森の味は、格別。

暖房ではなく、火で暖を取る。便利ではなく、不便。旅を通して得る原始的な体験は、生きる上で大切な何かに気付きを与えてくれるのかもしれない。

住所:青森県つがる市森田町床舞藤山244 MAP
TEL:0173-26-2855
http://chikyuumura.co.jp/

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不足を工夫で補い、不便を心から楽しむ。改めて思い出す、キャンプの醍醐味。[水源の森 キャンプ・ランド/山梨県道志村]

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 「何を持って行くかより、何を持って行かないかを考える場所」をコンセプトに掲げる『水源の森 キャンプ・ランド』。文明の利器に頼らず過ごす時間は、自然の営みをダイレクトに享受できる。

水源の森 キャンプ・ランド人気アウトドアブランドの主宰者がプロデュース。

キャンプ場の聖地といわれる道志村に2021年、『水源の森 キャンプ・ランド』という新たなキャンプ場が誕生しました。総合プロデュースを務めるのは、アウトドアブランド『マウンテンリサーチ』を主宰する小林節正氏。

コンセプトは、「何を持って行くかより、何を持って行かないかを考える場所」。キャンプの原点に戻るような体験ができる施設です。

アクセスは、神奈川県相模原市から山梨県道志村を抜け山中湖村までを繋ぐ国道413号線、通称「道志みち」を抜けて。道の脇には清流・道志川の流れ。遠望する山並みはカーブを越えるごとに形を変え、道路脇にはキャンプ場やカフェ、農産物の直売所がポツリポツリと現れます。

途中で食材を買い込んで、いよいよ『水源の森 キャンプ・ランド』に到着。目に映るあらゆることに、計算が潜んでいるような気持ちが浮かびます。

というのも『マウンテンリサーチ』のデザインには、山で生きるためのギアとしての研ぎ澄まされた機能性と、個性や遊び心が見事なバランスで共存しています。そのブランドを率いる小林節正氏の手による施設なのだから、“なんとなく”ではなく、すべてに細やかな計算と狙いが潜んでいるのではないか。そんな思いが湧いてくるのです。

『水源の森 キャンプ・ランド』までの道中では、山間をドライブしながら、美しい自然と出合うことができる。キャンプ場名の通り、川が多く点在し、水量も豊富。その透明度から、水に恵まれた地域だということが伺える。

木漏れ日も心地良い樹々をすり抜ける道中は、車の窓を開け、森の香りを深く吸い込みながらゆっくりと進みたい。水は、森も美しくすることに気付きを得るだろう。

道中には、無人販売や個人農家の直売店、道の駅などが点在する。地域の方々との会話を楽しみながら風土を学び、名産を知り、食材調達を楽しみたい。

『水源の森 キャンプ・ランド』のクラブハウス。デザイン性に飛んだ建物は、『マウンテンリサーチ』ゆえのセンスが光る。

水源の森 キャンプ・ランド心は研ぎ澄まされ、自然に戻る。アウトドアの本当の楽しみ。

クラブハウスに入ると、正面には大きな時計。頂上が13時、針の動きは逆周り。これは時間をしるための時計ではなく、きっと日常とは異なる時間を表現しているのでしょう。巨大な火皿で炎が揺れているのは、山の世界からの挨拶代わり。駐車場には車止めがあり、キャンプサイトに車を付けることはできないのはきっと、現代の利器から離れ、あえて不便を楽しむことを推奨しているのではないでしょうか。

施設についてあれこれ想像するうちに、小林氏と対話しているかのような気分になってきます。都会から自然への急な場面転換ではなく、このクラブハウスを挟むことで、心のエンジンが温まり、ワクワクとした気分が膨らんでくるのです。

キャンプサイトは道志川を見下ろす崖の上。そのさらに上にはキャビンがあり、さらに上の層にクラブハウス。まるで演劇の舞台を見下ろすような段々の造り。ならば主役は道志川です。止むことのない川のせせらぎが、崖を這い上がってきます。川の音、森の匂い、澄んだ冷たい空気が肌を刺す感覚。さまざまな刺激が、感覚を鋭く研ぎ澄ませます。

キャンプとは元来、便利な現代的生活を離れて自然の中で過ごすことが目的です。しかし慣れた人ほど、いつしか便利なギアで効率よく過ごすことが当然になってしまっているのかもしれません。このキャンプ場で不便に触れることで、感覚と感性が研ぎ澄まされ、あらためてキャンプの楽しさを思い出すことでしょう。

クラブハウス内には、『マウンテンリサーチ』や『ティンバークルー』のグッズを始め、山にちなんだ書籍などが並ぶ。

道中、農家さんなどに出会い、手に入れた食材を調理していただく味は、ただ美味しいだけでない。人や土地への感慨も料理に深みを与える。

夜になれば、気温はマイナスまで冷え込む。しかし、煌めく星、火の暖かさなど、本当の意味で美しい自然の姿を体感することができる。

住所:山梨県南都留郡道志村馬場5821-2 MAP
TEL:070-2673-1122
https://www.doshisuigen-mori.com/

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モノとモノの合わせだけでなく、少し手をかけ、料理にすれば、更に美味しさは広がる。[和光アネックス/東京都中央区]

無添加・無加糖の「カベルネ・ソーヴィニヨン100%のジュース『エル・グリーン ファーム』の「gohoubi葡萄ジュース」に合わせるのは、『西河商店』の「わさびオイル」と『脱サラファクトリー』の「自凝雫塩 RARESALT 大粒」。ともに調味料のそれは、グリル野菜のアクセントに。今回のペアリングを提案してくれたソムリエ・ドリンクディレクターの外山博之氏が特にお勧めする野菜は、パプリカと万願寺唐辛子。

WAKO ANNEXソムリエ・ドリンクディレクター視点だけでなく、シェフ視点も加味されたペアリング。

ソムリエ・ドリンクディレクターの外山博之氏がまず取り出したのは、『エル・グリーン ファーム』の「gohoubi葡萄ジュース」。

都内未発売のため、希少な品ではありますが、フォーカスすべきはそこにあらず。新潟県南魚沼市大崎地域で自社栽培したワイン用ブドウ品種カベルネ・ソーヴィニヨン100%のジュースのそれは、無添加・無加糖というこだわりの味と製法。甘酸っぱさのにカベルネ種特融の渋みが加わり大人向けの仕上りです。

単体だけでも十分美味しいジュースですが、外山氏が合わせに持ってきたモノに驚愕。それは、『西河商店』の「わさびオイル」と社名もユニークな『脱サラファクトリー』の「自凝雫塩 RARESALT 大粒」です。

ジュースを飲みながら、オイルを飲む? はたまた塩を舐める? と思いきや「軽く焼いたパプリカや万願寺唐辛子にわさびオイルと塩を振りかけてお召し上がりください」と外山氏。

ソムリエを超えたシェフのようなペアリング提案は、言葉だけでは伝わりにくいですが、「わさびの辛味成分の香りとカベルネ由来の香りがつながり、上品な香りが口の中でふわっと広がります」と言葉を続けます。

「わさびオイル」は、鳥取県の名峰、大山の清流で育てられた関金わさびを使用した品。わさび本来の香りと辛みがオイルに凝縮されています。「2〜3滴がベスト」と外山氏。

「自凝雫塩 RARESALT 大粒」は、淡路島の美しい海水を天日で濃縮し薪と鉄釜で煮詰めた海水塩の中でも粒目の大きいものを厳選。海水からは、わずか0.1%ほどしか取れないこのレアソルトは淡雪のようにゆっくり口溶けし、ゆるやかな塩辛さ、甘味、苦味、旨味などの複雑な味わいが素材とも良く馴染みます。もちろん、今回の料理にも相性抜群。

冒頭の通り、外山氏がこの料理に合わせるのはジュースですが、シーンは夜の味。カウンターのレストランやバーで供したくなるようなペアリングです。ぜひ、お試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

雪深い南魚沼市で育てたワイン用葡萄「カベルネ・ソーヴィニヨン」だけを搾った『エル・グリーン ファーム』の「gohoubi葡萄ジュース。皮や果柄を一緒に搾り、素材の良さを100%引き出して最高のジュースに仕上げる。無添加、無加糖、余計なものは一切ない。都内限定販売。

『西河商店』の「わさびオイル」は鳥取県のわさびと山形県のこめ油を使用。今回、外山氏が提案する料理はもちろん、カルパッチョやサラダ、塩を添えた焼肉やピザにも相性抜群。いずれも2〜3滴が適量。

原材料は、淡路島の海水。余分なものは一切なし。『脱サラファクトリー』の「自凝雫塩 RARESALT 大粒」は、じっくり40時間ほど薪で煮上げ、結晶化。最後は杉樽で寝かし、味わいをまろやかに仕上げる。素材を活かした塩の味は、辛さだけでなく、甘み、苦味も備える。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエに転身。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』)のマネージャーに就任。2018年より調布市にある『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

モノとモノの合わせだけでなく、少し手をかけ、料理にすれば、更に美味しさは広がる。[和光アネックス/東京都中央区]

無添加・無加糖の「カベルネ・ソーヴィニヨン100%のジュース『エル・グリーン ファーム』の「gohoubi葡萄ジュース」に合わせるのは、『西河商店』の「わさびオイル」と『脱サラファクトリー』の「自凝雫塩 RARESALT 大粒」。ともに調味料のそれは、グリル野菜のアクセントに。今回のペアリングを提案してくれたソムリエ・ドリンクディレクターの外山博之氏が特にお勧めする野菜は、パプリカと万願寺唐辛子。

WAKO ANNEXソムリエ・ドリンクディレクター視点だけでなく、シェフ視点も加味されたペアリング。

ソムリエ・ドリンクディレクターの外山博之氏がまず取り出したのは、『エル・グリーン ファーム』の「gohoubi葡萄ジュース」。

都内未発売のため、希少な品ではありますが、フォーカスすべきはそこにあらず。新潟県南魚沼市大崎地域で自社栽培したワイン用ブドウ品種カベルネ・ソーヴィニヨン100%のジュースのそれは、無添加・無加糖というこだわりの味と製法。甘酸っぱさのにカベルネ種特融の渋みが加わり大人向けの仕上りです。

単体だけでも十分美味しいジュースですが、外山氏が合わせに持ってきたモノに驚愕。それは、『西河商店』の「わさびオイル」と社名もユニークな『脱サラファクトリー』の「自凝雫塩 RARESALT 大粒」です。

ジュースを飲みながら、オイルを飲む? はたまた塩を舐める? と思いきや「軽く焼いたパプリカや万願寺唐辛子にわさびオイルと塩を振りかけてお召し上がりください」と外山氏。

ソムリエを超えたシェフのようなペアリング提案は、言葉だけでは伝わりにくいですが、「わさびの辛味成分の香りとカベルネ由来の香りがつながり、上品な香りが口の中でふわっと広がります」と言葉を続けます。

「わさびオイル」は、鳥取県の名峰、大山の清流で育てられた関金わさびを使用した品。わさび本来の香りと辛みがオイルに凝縮されています。「2〜3滴がベスト」と外山氏。

「自凝雫塩 RARESALT 大粒」は、淡路島の美しい海水を天日で濃縮し薪と鉄釜で煮詰めた海水塩の中でも粒目の大きいものを厳選。海水からは、わずか0.1%ほどしか取れないこのレアソルトは淡雪のようにゆっくり口溶けし、ゆるやかな塩辛さ、甘味、苦味、旨味などの複雑な味わいが素材とも良く馴染みます。もちろん、今回の料理にも相性抜群。

冒頭の通り、外山氏がこの料理に合わせるのはジュースですが、シーンは夜の味。カウンターのレストランやバーで供したくなるようなペアリングです。ぜひ、お試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

雪深い南魚沼市で育てたワイン用葡萄「カベルネ・ソーヴィニヨン」だけを搾った『エル・グリーン ファーム』の「gohoubi葡萄ジュース。皮や果柄を一緒に搾り、素材の良さを100%引き出して最高のジュースに仕上げる。無添加、無加糖、余計なものは一切ない。都内限定販売。

『西河商店』の「わさびオイル」は鳥取県のわさびと山形県のこめ油を使用。今回、外山氏が提案する料理はもちろん、カルパッチョやサラダ、塩を添えた焼肉やピザにも相性抜群。いずれも2〜3滴が適量。

原材料は、淡路島の海水。余分なものは一切なし。『脱サラファクトリー』の「自凝雫塩 RARESALT 大粒」は、じっくり40時間ほど薪で煮上げ、結晶化。最後は杉樽で寝かし、味わいをまろやかに仕上げる。素材を活かした塩の味は、辛さだけでなく、甘み、苦味も備える。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエに転身。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』)のマネージャーに就任。2018年より調布市にある『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
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Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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私のお店でも合わせています。どぶろくとブルーチーズが交わる快楽。[和光アネックス/東京都中央区]

提案してくれた千葉麻里絵さんのお店『GEM by moto』でも採用しているというどぶろくとブルーチーズの組み合わせ。「『とおの どぶろく 速醸火入れ』には、『yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー』の酸味と複雑な味わいを受け止める力があり、非常に合います」。

WAKO ANNEX癖のある味が見事にまろやかに。ペアリングの可能性を無限に感じる好例。

どぶろくと言えば、『とおの屋 要』。今回選んだのは、「とおの どぶろく 速醸火入れ」です。それに合わせるのは、『奥村佃煮』の「yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー」。提案するのは、『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さんです。

まず、その名だけでは想像しがたい「yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー」とは、卵のないオスの鮒の腹の中に白カビの酸凝固タイプのチーズ、つやこフロマージュを詰めたもの。

鮒寿しとともに一年以上もの長期発酵を行い、熟成。丁寧な仕込まれた鮒寿しならではの酸味とコクに加え、チーズの旨味が加わったそれは、抜群の相乗効果を生みます。単体でも一体感のある味に仕上がるも、さらにその先にある美味しい発見に導くのが千葉さんの得意技。そのために選んだのが、前出の、「とおの どぶろく 速醸火入れ」なのです。

「どぶろくとブルーチーズは最高の組み合わせです。実際に、私のお店『GEM by moto』でも、どぶろくとブルーチーズハムカツで組み合わせています」と千葉さん。

速醸火入れは、アルコール度数も低めに設定され、甘味を残し、飲みやすい味に仕上がっているため、どぶろくが初めての人でもお楽しみいただけるひと品。

「ブルーチーズは強くて、通常お酒に合わせると負けてしまいますが、このどぶろくはダイレクトに感じる米の甘味、濃厚なテクスチャー、豊かな香りがあるため、チーズの酸味と複雑な味わいを受け止める力があり、非常に合います」。

一見、疑義ある食べ合わせのように見えますが、口内で合わされば、溶けるように味がグラデーションしていきます。言葉では理解しにくいこのペアリングは、百聞は一見にしかず。

ぜひ、お試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『とおの屋 要』の「とおの どぶろく 速醸火入れ」。日本酒の起源ともいえるどぶろくは、米・米麹・水を発酵させ、もろみをこさずに造る。「原料がそのまま口に入るからこそ、田んぼの土にも、稲の育て方にも、お酒の醸造にも、すべての過程に心を込めて向き合っています」と話すのは、主の佐々木要太郎氏。「どぶろく速醸火入れ」はアルコール度数を低めに抑え、甘味を残し飲みやすい味に仕上げているため、どぶろくビギナーの入り口としてもぜひ。サイズは500ml、限定11本販売。

『奥村佃煮』の「yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー」。良い意味で、鮒寿しのようで鮒寿しでなく、チーズのようでチーズでない、新しい感覚の逸品。鮒寿し・チーズどちらからでも入れる間口の広い味わい。癖のある食材同士だが、食べればその概念は変わるだろう。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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私のお店でも合わせています。どぶろくとブルーチーズが交わる快楽。[和光アネックス/東京都中央区]

提案してくれた千葉麻里絵さんのお店『GEM by moto』でも採用しているというどぶろくとブルーチーズの組み合わせ。「『とおの どぶろく 速醸火入れ』には、『yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー』の酸味と複雑な味わいを受け止める力があり、非常に合います」。

WAKO ANNEX癖のある味が見事にまろやかに。ペアリングの可能性を無限に感じる好例。

どぶろくと言えば、『とおの屋 要』。今回選んだのは、「とおの どぶろく 速醸火入れ」です。それに合わせるのは、『奥村佃煮』の「yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー」。提案するのは、『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さんです。

まず、その名だけでは想像しがたい「yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー」とは、卵のないオスの鮒の腹の中に白カビの酸凝固タイプのチーズ、つやこフロマージュを詰めたもの。

鮒寿しとともに一年以上もの長期発酵を行い、熟成。丁寧な仕込まれた鮒寿しならではの酸味とコクに加え、チーズの旨味が加わったそれは、抜群の相乗効果を生みます。単体でも一体感のある味に仕上がるも、さらにその先にある美味しい発見に導くのが千葉さんの得意技。そのために選んだのが、前出の、「とおの どぶろく 速醸火入れ」なのです。

「どぶろくとブルーチーズは最高の組み合わせです。実際に、私のお店『GEM by moto』でも、どぶろくとブルーチーズハムカツで組み合わせています」と千葉さん。

速醸火入れは、アルコール度数も低めに設定され、甘味を残し、飲みやすい味に仕上がっているため、どぶろくが初めての人でもお楽しみいただけるひと品。

「ブルーチーズは強くて、通常お酒に合わせると負けてしまいますが、このどぶろくはダイレクトに感じる米の甘味、濃厚なテクスチャー、豊かな香りがあるため、チーズの酸味と複雑な味わいを受け止める力があり、非常に合います」。

一見、疑義ある食べ合わせのように見えますが、口内で合わされば、溶けるように味がグラデーションしていきます。言葉では理解しにくいこのペアリングは、百聞は一見にしかず。

ぜひ、お試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『とおの屋 要』の「とおの どぶろく 速醸火入れ」。日本酒の起源ともいえるどぶろくは、米・米麹・水を発酵させ、もろみをこさずに造る。「原料がそのまま口に入るからこそ、田んぼの土にも、稲の育て方にも、お酒の醸造にも、すべての過程に心を込めて向き合っています」と話すのは、主の佐々木要太郎氏。「どぶろく速醸火入れ」はアルコール度数を低めに抑え、甘味を残し飲みやすい味に仕上げているため、どぶろくビギナーの入り口としてもぜひ。サイズは500ml、限定11本販売。

『奥村佃煮』の「yoshio fermented foods鮒寿し×つやこブルー」。良い意味で、鮒寿しのようで鮒寿しでなく、チーズのようでチーズでない、新しい感覚の逸品。鮒寿し・チーズどちらからでも入れる間口の広い味わい。癖のある食材同士だが、食べればその概念は変わるだろう。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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京都の海を未来へつなぐ『Chefs for the Blue 京都』始動。[Chefs for the Blue 京都/京都府]

『Chefs for the Blue 京都』を立ち上げたシェフたち。手前右から、代表の『cenci』坂本健シェフ、『Bini』中本敬介シェフ、『Cenetta Barba』藤田紘一シェフ。奥右から、『cenci』渥美彰人氏、『MOTOI』前田元シェフ、『リストランテナカモト』仲本章宏シェフ。

Chefs for the Blue 京都東京から京都へ。広がりを見せる料理人発、水産資源への取り組み。

トップシェフが主導し、日本の漁業、水産資源の未来を考える一般社団法人『Chefs for the Blue』。
2021年、その京都チームが発足し、活動をスタート。メディア向けの試食会が2022年1月、京都で開催されました。

会場は、京都信用金庫『QUESTION』8階にあるコミュニティキッチン。試食会の主催者であり『Chefs for the Blue 京都』のリードシェフを務める『cenci』の坂本健シェフを筆頭に、『リストランテ ナカモト』仲本章宏シェフ、『MOTOI』前田元(もとい)シェフ、『Bini』中本敬介シェフら、京都のガストロノミー界をリードするトップシェフ5人に、生産者3人も加わり、豪華な顔ぶれが揃いました。

一般社団法人『Chefs for the Blue』の発足は、2017年。料理ジャンルの枠を超え、東京を拠点とするシェフを中心に50人もの料理人が活動に参加しています。発起人であり、代表理事を務めるのは、フードジャーナリストの佐々木ひろこ氏。

海に囲まれた島国であり、古くから魚食文化が根付く日本ですが、1984年のピークを境に、漁獲高は減少傾向に。2019年には、年間の総漁獲高はピーク時の約1/3(416万トン)まで落ち込んでいます。

状況への危機感を共有した上で、主たる要因とされている過剰漁業の規制を呼びかけ、海の環境や生態系の保全に努め、漁師コミュニティや産地の地域コミュニティを守る。この3本を柱に、さまざまな活動を続けています。

フルオープンの広々としたキッチンを備えた『QUESTION』8階にあるコミュニティスペースが会場に。スペースを運営する株式会社Q'sと、『cenci』を運営するThe Old Curiosity株式会社の共同企画により試食会が開かれた。

エントランスに並ぶ、この日の食材。到着した参加者は、着席前に解説に読み入った。

Chefs for the Blue 京都生産者も会場へ。漁業者、料理人が刺激し合う。

もともと『Chefs for the Blue』の活動に注目していた坂本シェフは、『Chefs for the Blue 京都』立ち上げの経緯を次のように話します。

「水産物の枯渇問題については、ずっと気がかりだったんです。東京で先にスタートした『Chefs for the Blue』の活動に興味を持ち、代表の佐々木さんを招いて単発勉強会を開いたりしていたんですが、やはり京都でもしっかりチームを組んで活動していくべきだと思い、昨年立ち上げを決めました。また京都でレストランをやっていても、京都の魚を使う機会は少なく、知識も乏しい。まずは自分たちの足下を学ぶところからはじめ、行動の機会を増やしていこうという想いがあったんです」。

坂本シェフの言葉の通り、一般にも「京都」と「海」のイメージはにわかに結び付きません。府南部の内陸部に都市機能、商圏が集中していることが一因と考えられますが、府北部は日本海に面し、伊根湾や宮津湾など、豊かな漁場が残されています。

本イベントの2ヶ月前、『Chefs for the Blue京都』を中心としたメンバーは宮津湾へ足を運び、漁師や漁業協同組合を訪ねたといいます。生産の現場を見て初めて知った、京都の海ならではの魅力、地域漁業の現状と課題。「生産者と手を携えて、料理人だからできることを」という、活動の出発点を確かめた時間でした。

訪問を経て開かれたイベントも、まずは食材の紹介から始まりました。会場入口には、その日に使われる食材がずらり。ブリにハモ、立派なナマコも目を引き、それらすべてが京都産。食材として上質で、料理人のクリエイションを刺激するものであることに加え、水産資源のサステナビリティの観点から意味を持つものが選ばれています。

例えば宮津湾産の青ナマコ。かつて、乱獲で漁獲量が激減した時期がありましたが、地元漁業者を中心とした『宮津ナマコ組合』が、漁獲量の上限を定め、厳格な資源管理に取り組んだ結果、漁獲高は規制前の1.4倍に回復。サイズの平均値も上がり、それに伴い、乱獲期と比べて3倍近くの価格で取引されるように。

9kgを超える大きな養殖ブリは、伊根湾から。水温が低いゆえ養殖に向かないといわれてきた伊根の海の特徴をポジティブに捉え、ゆっくり、時間をかけて育てることで、品質を高め、全国ブランドに育て上げたのは、橋本水産の橋本 弘氏。養殖の新たな可能性を示した、「海の特徴を生かした」漁業や、海への環境負荷を減らすため生簀に入れる魚の数を抑え、抗生物質も使わないなど海の未来を考えた取り組みが、やはり全国で注目を集めています。

イベントに参加した橋本氏から、次のような話がありました。
「太平洋側の主な養殖産地におけるブリの養殖は、エサにカタクチイワシを与えるのが一般的。そこに、カロリーを補うために魚油を加える。一方で、私たちがエサに使うのは若狭湾のアジやサバ。極力、抗生物質も魚油も使わず、2年間かけてゆっくり育てるため、脂のりがよく、脂の質はさらりとしているのです」。

宮津湾産の青ナマコ。乱獲を止め、漁獲量を規制することで価値が上がった、資源保護の成功例として。

新たな京都産ブランド食材として期待がかかる宮津湾産オオトリガイ。生産者の本藤 靖氏は未来につながるブランド食材としてトリガイに次いで、このオオトリガイの育成技術開発を始めた。日本で初めての取り組みは、未知なる食材の発掘例として、多くの漁業者に影響を与えているといいます。

コハダ、シンコの成魚、コノシロ。若き漁師が、情熱をもって「新しい価値」の創出に挑戦している。

Chefs for the Blue 京都未利用魚を含む、知られざる魚をガストロノミーの舞台に。

食材についての解説が一段落し、その味への関心、期待が高まったところで、いよいよ料理のサービスが始まります。

最初にテーブルに運ばれてきたのは、『Bini』中本シェフと、『cenci』坂本シェフによるナマコの料理。

中本シェフは、イタリアではポピュラーなタコとセロリの組み合わせから着想を得た、ナマコとセロリの一皿。坂本シェフは、自家製柿酢でのマリネ。なまこ酢と同じく酸味を合わせ、米麹と鮎魚醤で和えた即席の“このわた”を添えた、日本人になじみ深く、かつ発酵の旨みがワインを呼ぶ味です。

お次は宮津湾産のオオトリガイ。京都府産のブランド食材に指定されている丹後トリガイの養殖過程で発見された稚貝で、新たに養殖がスタートしたばかりですが、成長が良く、弊死率も低く、旨みと甘味が非常に強い貝として、高い期待が寄せられています。

シェフたちが産地訪問の際に出会い、その甘味、旨味に着目し、今回のイベントにも使用されることに。「未知の食材の発掘」も、活動の大事なテーマです。
仲本シェフは、イタリアの伝統料理「ズッパ・ディ・ペッシェ」を作り、ひと口大のクロスティーニに。坂本シェフは軽く蒸して冬キャベツ、完熟山椒を合わせます。

同時進行で、それぞれの料理を仕上げるシェフたち。

「ナマコとセロリ 発酵トマトとほうじ茶のジュレとオリーブオイル」は『Bini』中本シェフによる一皿。低温の昆布だしとほうじ茶で炊いたナマコが、コリコリとよい食感を残す。

坂本シェフによる「蒸したオオトリガイと冬キャベツ 完熟山椒」。産地で食べたときに感じた海藻のような風味を生かした一皿。

コハダ、シンコの成魚である、コノシロも登場します。

ご存じの通り、未成魚は寿司種として引っ張りだこですが、成魚になると、とたんに値が下がるもの。
水産資源のサステナビリティの観点でいえば、産卵を経た成魚を獲るほうが環境負荷が低く、未来につながります。また、成魚であってもきちんと下処理をすればおいしい一皿になるといいます。


若干25歳、宮津湾に隣り合う内海である阿蘇海の若手漁師・村上純矢氏が獲ったコノシロは、徹底した処理と品質管理の下、地元の宿泊施設や東京の飲食店に出荷。まだ京都市内に流通していない、大きな可能性を秘めた魚です。

「初めて使ってみて、小骨をどう処理するかが課題になると思いました」と、話すのは前田シェフ。

「多めの油で皮側をソテーし、ビネガーをベースにしたマリネ液で短時間マリネすることで、骨が柔らかくなり、口に残らなくなる」。
前田シェフの「コノシロのエスカベッシュ」は、ほどよく火の入ったふわっとした身の食感と、酸味、合わせた野菜の甘みがバランスした、春らしさも楽しめる軽やかな一皿です。

中本シェフは、小骨をハモ同様に骨切りし、ビニェに。シェフたちの素材使いで、コノシロの可能性が十分に表現されていました。

阿蘇海でコノシロのブランド化に奮闘する村上純矢氏。

前田シェフによる「コノシロのエスカベッシュ」。目にも春らしく、サワークリームの酸もアクセントに。

「コノシロのビニェ サルサヴェルデ」も中本シェフによる一皿。フキノトウのパウダーを添えて。

伊根湾産・橋本氏による巨大ブリは、仲本シェフがアニョロッティに。
「アラを180℃のオーブンで焼いてから出汁を取る、和食の技法に倣いました。生ハムのブロードと合わせて澄んだコンソメにしました」。

身はアニョロッティの詰め物とコンフィに、骨などのアラはコンソメに。一尾を余すところなく活用するための、一つの提案です。

最後は、栗田漁港のハモ。

京都の夏の風物詩としてもてはやされる一方で、冬場は水揚げされても値が付かず、未利用魚、または低利用魚となってしまうことが多いのだといいます。ところが、実際に脂をたくわえ、味が乗って来るのは秋から冬にかけて。
こうした未利用魚に適正な価格が付くよう活用するのも、海と漁業の持続可能性を考えるうえで非常に重要なこと。

このハモを、前田シェフはパイ包み焼きとスープ・ド・ポワソンに。坂本シェフは、ハモのすり身のポルペット(団子)を添えたリゾットを提供。
ゲストの多くがその豊かな味に唸り、フレンチやイタリアンの食材としてのポテンシャルを確かめました。

仲本シェフによる「ブリのコンフィ、ブリと生ハムのコンソメ、ブリを詰めたアニョロッティ 山城ねぎオイル」。脂のピュアな旨味がたっぷりの、伊根湾のブリを余すところなく味わえる。

『MOTOI』前田シェフによるハモのパイ包み焼き。フランス料理の技法が集約された一品だ。

『cenci』坂本シェフによるハモのリゾット。ハモの旨みが米の一粒一粒に。九条ネギとも鉄板の相性。

「ハモのスープドポワソン」。この日の個体は頭が大きく「良質なゼラチン質を含め、旨味が豊かだった」と前田シェフ。温かく滋味深いスープは秋冬にこそ食べたく、脂ののったこの時期のハモが生きる。ハモは、卸売業者の視点から未利用魚の活用や販路の開拓に力を入れている『山一水産』の手配によるもの。

Chefs for the Blue 京都小さな一歩を、ブランドありきの流通を見直すことから。

料理の提供を終えた坂本シェフに、再び話を聞きました。

「今回、5種の食材を料理に使わせて頂き、改めてそれぞれの食材のポテンシャルに気付きました。冬場のハモのように適正な値が付かないものから、オオトリガイのように、現状の生産量の少なさゆえ、まだ価格が高いものまでさまざまですが、共通していえるのは、すべてがガストロノミーの素材になり得るということ。私自身、実感しましたし、仲間たちの料理が、それを示してくれたと思います」。

そう話す表情から、手ごたえと充実感が見て取れます。

そして、「ブランドありきの流通を、真剣に見直さなくてはいけない時期に差し掛かっている」とも。

「一流の料理人たちがこぞって頼りにする、いわゆる“カリスマ”漁師や仲卸業者がいて、私も彼らの魚を分けてもらうこともあり、その状態や味は本当に素晴しいと思う。でも、すべての料理人が、右へ倣えで、同じ魚を欲しがっていいのか。質も状態も素晴らしい魚は、生で、ほんのわずかの塩で、美味しくなるから、素材を知る料理人ほどなるだけ手をかけたくないと思う。すると、料理まで均質化してこないか、と」。

自身に問いかけるような、坂本シェフの表情が印象的でした。

魚の需要が偏り、環境に負荷を与える漁業が続いた結果、魚が減り、消費地での市場価格が高騰する。漁業者はもちろん、料理人にとっても、対価を払い食事に出かけるゲストにも、いいことはありません。
現実的には、小さなレストランで扱える魚の量はごくわずかで、根本的な解決にはならないかもしれない。

「でも、今、何もしないでいることはできない」と、坂本シェフ。

まだまだ始まったばかり。知られざる「京都産」の魚介に光を当て、海の未来を考えた今回のイベントが、京都の漁業と、ガストロノミーのあり方を、少しずつ、変えていくはずです。



Text:KEI SASAKI
Photographs:YUTA MIZUNO

トップシェフとパティシエによる料理が伝えた、生産者も気付かなかった滋賀の食材の底力。[Local Fine Food Fair SHIGA/滋賀県、東京都]

滋賀の食材を使い、東京のトップシェフ、パティシエの4人が11品のコースを生産者のみなさんにふるまった。

ローカルファインフードフェア滋賀自らの食材がどう調理されるか。生産者にとっても勉強の場に。

東京都内で活躍する料理人やパティシエ、和菓子職人が、滋賀県産の食材を使った料理をそれぞれの店で提供するメニューフェア『Local Fine Food Fair SHIGA』。
2021年度は夏と冬の2回にわたって東京の料理人が滋賀を訪ね、食材が生産されている現場を視察しました。

そのなかで、ほぼすべての生産者が口にしたのが「食材が東京でどんなふうに料理されているのか、とても興味がある」という言葉。とはいえ、日々、食材の生産に携わっていると、なかなか滋賀県を離れて東京のレストランに赴くことができません。

そこで今回は、滋賀の食材を日頃から愛用しているシェフ、パティシエが感謝の気持ちを込めて滋賀に集結し、「県内レセプション」と称した食事会で、生産者のみなさんに向けて腕をふるうことに。

参加料理人は、イタリアン『sel sal sale』の濱口昌大シェフ、フレンチをベースに、精進料理や日本料理のテイストをフュージョンさせた料理を提供する『MOSS CROSS TOKYO』の増山明弘シェフ、フレンチ『Cheval de Hyotan(シュヴァル ドゥ ヒョータン)』の川副藍シェフ、パティスリー『INFINI(アンフィニ)』の金井史章シェフパティシエの4人。

コース仕立てで前菜からデザートまでを生産者のみなさんに提供すべく、それぞれの得意分野を生かしながら合計11品の料理を作りました。

一方で、生産者にただ食べてもらうことだけが目的ではありません。生産者たちが、自分たちの食材がシェフたちの手によりどのように姿を変えるのかを目の当たりにし、味わい、そして何を感じるのか。
よりよい食材を生み出すためのヒントや活路を見出してもらうために設けられた場であり、そこには滋賀県の「Local Fine Food」の未来があるといっても過言ではないかもしれません。

【関連記事】滋賀食材フェア/降雪のち快晴。シェフたちが目の当たりにした豊かな自然、そして滋賀県の素晴らしき食材。

「県内レセプション」に集まった生産者のみなさん。写真左から『グッドワン』永濱三智子氏、『クサツパイオニアファーム』中山欽司氏、『グッドワン』坂上良一氏、『FARM KEI』藤田氏、『みなくちファーム』水口良子氏、忍ネギの生産者千代傳男(つたお)氏、『みなくちファーム』水口淳氏、『JAこうか』上田健司氏、『いぶきファーム』谷口隆一氏。

琵琶湖の名産のひとつであるビワマスを調理する『sel sal sale』の濱口昌大シェフ。

近江鴨のローストを作る『MOSS CROSS TOKYO』の増山明弘シェフ。

根菜のサラダを和えている『Cheval de Hyotan』の川副藍シェフ。

デザートの仕込みをする『INFINI(アンフィニ)』の金井史章シェフ。

ローカルファインフードフェア滋賀シェフたちが一目をおく『みなくちファーム』の野菜でコースはスタート。

コースの最初に提供されたのは、『sel sal sale』の濱口シェフによる、『みなくちファーム』の菊芋を使ったスープです。生産者である水口良子氏は「菊芋は形や味にクセのある食材なので、どう調理してもらえるのかが気になる」と、期待を語ります。

濱口シェフは「『みなくちファーム』の菊芋は、アクが少ないながらもコクがあり、生で食べてもおいしい。レストランでもずっと使っています。今回も、皮ごとスープにし、他の調味料や具材はほぼ何も入れず、コトコト煮込みました」と紹介。さらに、スライスして揚げた菊芋を最後に添え、サクサクした食感を加えています。

これには水口淳氏も「火を通すことで菊芋のコクが増している。こんなに美味しくなるなんて」と嬉しそうに反応します。

続いて濱口シェフが提供したのは、『みなくちファーム』のサラダゴボウを使ったパンです。「生で食べられるほどフレッシュで、上品なゴボウです。火を通すと甘みが引き立ち、お店ではこのパンを焼き立てで提供しています」と、濱口シェフ。

実はこのサラダゴボウは、東京の料理人のあいだで大人気の食材。「東京からたくさん注文をいただいているのだけど、いつも、何に使っているのか不思議だった」と水口良子氏は笑います。パンから豊かに湧き立つゴボウの香りを確かめ、生地に練りこまれた刻みゴボウを見ながら「丹精を込めて作った食材と、こんなに素敵な形で再会できてうれしい」と、パンをほおばります。

『みなくちファーム』は、農薬や化学肥料を使わずに、持続可能な循環型農業を実践していて、イタリアンの元料理人で食材バイヤーの山本敦士氏も「業界でもトップレベルの野菜をたくさん生産している」と高く評価しています。

どんな野菜も、味の良さと見た目の美しさが抜群で、ファンの多い生産者です。

濱口シェフによる、『みなくちファーム』の菊芋を使ったスープ。「器の底に入れたブラッターチーズと甘い菊芋のスープをからませながら楽しんでほしい」と濱口シェフ。

「火を通すことで菊芋のコクが増している。こんなに美味しくなるなんて」と、『みなくちファーム』水口淳氏も嬉しそう。

サラダゴボウのパン。みりん粕のバターと生ハムの深い旨みが、洗練されたサラダゴボウの味に奥行きを加える。

2021年夏に山本氏が『みなくちファーム』の農場を訪ねたときの様子。「土ごと食べてもおいしい!」と、掘り立てのサラダゴボウをかじる場面も。

『みなくちファーム』では4ヘクタールの畑を擁し、年間100種以上の野菜を栽培している。

ローカルファインフードフェア滋賀ビワマス、忍葱、伊吹大根、近江鴨……。滋賀の食材が互いに魅力を高め合う。

滋賀といえば琵琶湖。400万年もの歴史をもち、地元の人々が「海」とも呼ぶ、この日本一の大きな湖が、滋賀県独特の食材や食文化を数多く生み出しています。

琵琶湖の北岸の大浦漁港にある『西浅井漁業協同組合(漁協)』のビワマスは、そんな食材のうちのひとつ。脂が上品で刺身で食べて美味しく、もちろん、煮ても焼いても楽しめます。
川副シェフは今回、このビワマスを「ブレゼ」と言われる、やさしい火でしっとりと仕上げるフレンチの技法で調理。「ビワマスが繊細で上品な味なので、この調理法を選びました」と解説します。

このビワマスに添えたのが、忍葱としいたけのソース。忍葱は、滋賀県甲賀市で12月初旬から3月中旬に収穫されるねぎで、味わいが濃厚で、火を通すととろりと甘みが出てくるのが特徴です。
『JAこうか』の上田健司氏は「忍葱の甘みが最大限に引き出されていますね!」と、嬉しそう。忍葱の生産者千代傳男(つたお)氏も「鍋に入れたり、焼いて食べたりすることが多かったので、こんな調理の仕方があるなんて思わなかった」と笑顔を見せます。

続いて川副シェフが提供したのが、『いぶきファーム』の伊吹大根とフォアグラです生産者である谷口隆一氏も、「伊吹大根とフォアグラを合わせたことはないですね」と、興味津々。
「伊吹大根は煮崩れしにくく、お出汁をぐんぐん吸い込むのが特徴。そこで、近江鴨やひき肉から作ったコンソメで煮込みました」と、川副シェフ。さらに、フォアグラは、同じく谷口氏が生産するそばの実を挽いたものをまとわせ、外側の食感をパリッと仕上げています。

食事会が始まるまでは、緊張気味の表情を見せていた生産者も、シェフの美味しい料理を食べるうちに少しずつ心がほぐれてきた様子。また、生産者本人でさえも思いつかなかったような調理法や、意外な食材との組み合わせに好奇心をくすぐられたようです。

「丹精込めて育てた食材が大切に料理されている姿を実際に見ることができて嬉しい。しかも、なかなか予約の取れないお店のシェフの料理を食べられるなんて、とても貴重な機会」と、近江鴨を生産する『グッドワン』の坂上良一氏が話します。

川副シェフによる、『西浅井漁協』のビワマスを使ったブレゼ。

琵琶湖の北岸、大浦漁港にある『西浅井漁協』から湖を望む。

ビワマスは、7月が漁の最盛期。琵琶湖の水温が下がる1~2月は、脂がのってよりいっそう美味しくなる。

2022年の冬に甲賀市の忍葱の畑を訪れたときの様子。シェフたちが上田氏の言葉に耳を傾ける。

川副シェフによる、『いぶきファーム』の伊吹大根とフォアグラ。

「うちのそばの実が、こんなに美味しくなって嬉しい」と、谷口氏。

増山シェフによる、近江鴨のロースト。『グッドワン』の洗練された近江鴨を、塩胡椒でシンプルに焼いた。

「東京にもっと近江鴨を広めたい。シェフの手でこんなに美味しく料理できることがわかり、自信がついた」と坂上氏。

増山シェフによる『クサツパイオニアファーム』の赤米と『西浅井漁協』の氷魚(琵琶湖で冬にだけ獲れる鮎の稚魚)のお茶漬け。

金井シェフによる、いちごのデザート。滋賀県東近江市の『愛東いちごハウス』のよつぼしとあきひめをソルベに。

ローカルファインフードフェア滋賀食事会を終え、シェフたちが滋賀の生産者、食材を改めて語る。

すべての料理を提供し終えた後は、料理人たちと生産者のみなさんとで座談会を行いました。

濱口シェフは「日本全国、さまざまな生産者さんを訪ねてきたけれど、滋賀県のみなさんは 特に仕事が丁寧で、人があたたかい。一対一の関係性を築くことができている」と、コメント。

川副シェフも「琵琶湖を中心に、自然とともに良い食材が揃っていて、さらに、生産者が自然に寄り添いながら作っている」と、魅力を語ります。
増山シェフと金井シェフは「どの食材にも自然とともにストーリーがあるので、東京で、料理とともにこのストーリーをお客様に語っていきたい」「生産者のみなさんたちと今後もコミュニケーションをとり続けていきたい」と語り合い、盛況のなかで食事会を締め括りました。

自然豊かな滋賀県で育まれた食材が料理人にインスピレーションを与え、その食材で作られた料理が巡り巡って生産者たちに驚きや感動、次の生産に向けたアイディアを与える。

まさに、美味しさが深まる好循環。今後も滋賀の生産者と東京の料理人の交流は続いていきます。

「生産者のみなさんには『自分たちはこんなに素晴らしい食材を作っているんだ』と自信をもってほしい」と、4人の料理人。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:AYANO YOSHIDA

(supported by 滋賀県)

【関連記事】料理人たちによる視察の様子は、こちらから

大地の香り、海の香り。嗅覚から味覚へ送る、美味しいシグナル。[和光アネックス/東京都中央区]

木桶で醸した「和轍」の香りと「四万十川天然鮎のコンフィ」の鮎が持つ青い香り、オイルの香りが絶妙に合うペアリング。今回提案してくれたソムリエ・ドリンクディレクターの外山博之曰く、「更に美味しく楽しむ続きもある」とのこと。その答えは、本文後半にて!

WAKO ANNEX天井知らずの止まらない食欲。胃袋の箍(たが)を外す、ペアリング。

「木桶が持つヒノキの香りと鮎の青い香り、オイルの香りが食欲を掻き立てます」。

今回、提案するペアリングに対してそう分析するのは、ソムリエ・ドリンクディレクターの外山博之氏です。

合わせたのは、『秋元商店 籠屋ブルワリー』の「和轍」と『道の駅 よって西土佐』の「四万十川天然鮎のコンフィ」。

「和轍」は、杉の香りとモルトの旨みが凝縮された木桶仕込みのジャパニーズビールです。木桶は国産材ブランドである吉野杉を使用。木桶は呼吸し、住み着く微生物が時間をかけて発酵を進め、木桶でしか出せない深い味わいを育みます。生産量も希少な国産麦芽を使用し、繊細できめ細かく優しい味わいを生んでいます。

味はもちろん、今回の決め手は、何と言っても木桶の香り。香りのペアリングは、外山氏の得意分野でもあります。それに引き合わせたのは、「四万十川天然鮎のコンフィ」です。

日本の清流四万十川の象徴である天然鮎を使用する「四万十川天然鮎のコンフィ」は、鮎の香りを残しつつ、ハーブやオリーブオイルの香りも加わり、上品な味わいに仕上がっています。

「ビールの香り付けに使われる木桶が持つ杉の香り、ホップの香ばしい香りが、天然のアユの青い香りや塩味とつながり、絶妙な相性を生みます」。

また、最後に外山氏がこっそりと教えてくれたのは、ペアリングの続き。「ビールと鮎のペアリングも最高ですが、残ってしまうコンフィのオイルで作ったパスタやサラダにビールを合わせていただくのもおすすめです」。

想像しただけでも美味しいのは間違いなし。天井知らずの止まらない食欲。余すところなく食材を堪能し、〆まで楽しみたい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『秋元商店 籠屋ブルワリー』の「和轍」は、吉野杉を使用した木桶仕込みのビール。味わいは艶やかで奥深く、色合いは深みのあるゴールド。口に含めば、木桶の香りがほんのり漂い、優しい甘みとほろ苦いコクが広がる。程よいボリュームや長い余韻も特徴。

四万十川の天然鮎を低温のオリーブオイルで長時間煮込んだ道の駅 よって西土佐』の「四万十川天然鮎のコンフィ」。四万十川が持つ自然の美味しさの全てを閉じ込め、鮎本来の風味が香草とともに広がる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエに転身。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』)のマネージャーに就任。2018年より調布市にある『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

決め手は、「温度」。王道のペアリングに一石を投じる新提案。[和光アネックス/東京都中央区]

「上喜元 純米吟醸 赤磐雄町 きもと仕込 熟成生酒」と「八葉塩幸 四種詰合せ」の食べ合わせを提案するのは、『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さん。「生酛造りのお酒に合うのは、塩辛4種の中でも、いか糀漬がおすすめです」。

WAKO ANNEX日本酒と塩辛。誰もが知る食べ合わせだが、ものの選び方とひと手間で別世界になる。

世のお父さん、日本の男性諸君のほとんどが食べ合わせた経験を持つであろう日本酒と塩辛。

今回、『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さんが提案してくれたのは、王道ともいえるそれですが、ものの選び方とひと手間で普通は普通でなくなります。

まず、ものの選び方。千葉さんが手に取るのは、『酒田酒造』の「上喜元 純米吟醸 赤磐雄町 きもと仕込 熟成生酒」と『気仙沼水産食品事業協同組合』の「八葉塩幸 四種詰合せ」です。

「上喜元 純米吟醸 赤磐雄町 きもと仕込 熟成生酒」は、氷点下−3℃にて3年以上貯蔵した無濾過生原酒です。偉大な酒造好適米「赤磐雄町米」の力を最大限発揮するために手間暇のかかる「生酛仕込」にて醸造しました。奥深いコク、やわらかく広がる旨味、嫌みのない熟成感は、他の上喜元とは一線を画したオンリーワンの味わいです。

そして、「八葉塩幸 四種詰合せ」。気仙沼で水揚げされ、通常ならばお刺身で食べるような新鮮なスルメイカを使用。気仙沼岩井崎の昔ながらの手作り塩100%にこだわり、低塩でまろやかな風味の塩辛に造り上げました。また、いか塩辛、いか明太子、いか糀漬、いか青唐辛子味噌と4種ある中、「上喜元 純米吟醸 赤磐雄町 きもと仕込 熟成生酒」との合わせには、いか糀漬を押します。

「塩辛の4種の中でも、いか糀漬が特にフィットします。王道の合わせ方ですが、この日本酒はフレッシュの状態でゆっくりと“温度”をキープしながら熟成するので、艶っぽさ、旨味のバランス感が良くなり、塩辛の糀の旨みがマッチします。フレッシュならではの熟成感をお楽しみください。冷酒から常温でお楽しみいただけます」。

今回、塩辛に補足すべきは、「しおから」ではなく「しおさち」と呼ぶ品であること。海の幸ならぬ塩の幸でもあるそれは、前出の通り全て手作り。塩における鮮度と旨味も酒との好相性に一役買っているのです。

王道の日本酒と塩辛のペアリング。それは、酒の造り方、食材の鮮度、温度などの方程式を正しく解くことによって、普通を感動へと導くのです。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『酒田酒造』の「上喜元 純米吟醸 赤磐雄町 きもと仕込 熟成生酒」。「生酛仕込」にて醸造された酒は、奥深いコク、やわらかく広がる旨味、嫌みのない熟成感が漂う。ほかの「上喜元」とは一線を画したオンリーワンの味わい。

『気仙沼水産食品事業協同組合』の「八葉塩幸 四種詰合せ」。4種の内容は、いか塩辛、いか明太子、いか糀漬、いか青唐辛子味噌。気仙沼岩井崎の昔ながらの手作り塩100%も旨さの決め手。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

料理人が見た知られざる冬の滋賀。寒い時期こそ出合える美味しさがある。[Local Fine Food Fair SHIGA/滋賀県、東京都]

雪の積もったにんじん畑で、『みなくちファーム』のみなさんと一緒に。

ローカルファインフードフェア滋賀雪降る北部から、快晴の南部まで、琵琶湖をぐるりとまわる。

東京都内で活躍する料理人や和菓子職人が、滋賀県産食材を使った料理をそれぞれの店で提供する期間限定のフードフェア『Local Fine Food Fair SHIGA』。食材が育まれる土地を自分の目で見て、生産者の思いを直接聞くため、4人のシェフとバイヤーが1泊2日で滋賀を訪ねました。

米原(まいばら)駅から車で移動すること約30分。滋賀に到着して一行がまず向かったのは、長浜市西上坂町の『ワボウ産業』です。案内されたのは、まるで工場のような建物。この敷地のどこに海老がいるのだろう、と不思議な気持ちになりそうですが、実は『ワボウ産業』は、もともと半導体製造を続けてきた企業です。自社の設備とノウハウをいかして、「食」の分野で新たな挑戦ができないか。そんな思いから、2020年夏に独自の方法でバナメイエビの養殖を始め、翌年から自社ブランド「おうみ海老」の出荷を始めました。

工場内に入ると、一面に設置された大きな水槽に圧倒されます。ここがまさに、「おうみ海老」を養殖している現場。水槽の水に、伊吹山の地下50mから湧き出る清冽な地下水と、フランス産の岩塩が使われています。

最大の特徴は、半導体事業で築いた技術力で、この水槽の水を循環利用していることです。まず、水質を保つことで抗生物質などを一切投与しない環境をつくり、安全性の高い海老を養殖します。
そして、海老を養殖した後、窒素分がたまった水を別の水槽に移し、今度はこの水で海ぶどうとアオサを栽培します。すると、海ぶどうとアオサが天然のろ過装置となり、水を澄んだ美しい状態に戻してくれるのです。その水で、再び海老の養殖を始める。こうして、複数の食材の養殖を介しながら、工場内で水を循環させているのです。「地球にやさしく、そして、本当に美味しい食材を人々に。それが、私たちが実現したいことなのです」と、第一事業部技術課課長の宮本和徳氏は言います。
こうした環境で育った「おうみ海老」は、臭みがなく、澄んだ味わい。さらに、身が引き締まっていて、噛むほどに海老本来の甘みが広がります。冷凍して出荷されますが、解凍後、生のままでも美味しく食べることができるほど品質が高いことも特徴です。

「今回の視察でも特に楽しみにしていたのが、この『おうみ海老』です」と話すのは、インド料理「ニルヴァーナ ニューヨーク」の料理人、引地翔悟氏。「ひとつのお皿に、このワボウ産業の海老と海ぶどう、アオサが乗る料理を考えて、この工場のストーリーをお客さまに伝えたい」と、語ります。

元イタリアンのシェフで食材バイヤーの山本敦士氏は「小ぶりの海老だけを集めて真空冷凍した商品があれば、飲食店にアヒージョ用に提案できそう」と、宮本氏に相談していました。

【関連記事】滋賀食材フェア/琵琶湖の豊かな水が育む、瑞々しい食材。料理人たちが見た滋賀県の食材の底力。

“天然のろ過装置”、アオサ、海ぶどうを用いて浄化した水で、「おうみ海老」は養殖される。

20gから31gまで、大きさごとに並んだ「おうみ海老」に見入る4人と、宮本氏。

「生でも十分美味しいので、タンドールとして強火で外側をバリッと焼き、中をレアにして提供しても美味しそう」と引地氏。

海老を養殖した後の水は、アオサを栽培しながらろ過していく。

ローカルファインフードフェア滋賀ヤマトタケル終焉の地で育つ伝統野菜・伊吹大根。

お昼休憩を兼ねて向かったのが、米原市大久保の蕎麦屋『久次郎』。岐阜県との県境に近く、姉川源流に位置する、こじんまりとした趣深いお店です。なんといっても、ここは日本百名山の一峰と知られる伊吹山の麓。この山には、日本神話の英雄、ヤマトタケルを死に追いやった強力な山の神様がいるという言い伝えもあります。

『久次郎』の店主、谷口隆一氏は、元米原市の職員をされていた方。在職中は、米原市に伝わる伝統野菜の「伊吹大根」と伊吹在来そばの「伊吹そば」の広報活動に勤しんでいたそう。そのうちに「この素晴らしさを人々に伝えていくには、自分が現場に入り込むしかない」という情熱にかられ、57歳で市役所を早期退職し、『いぶきファーム』を発足。伊吹大根と伊吹そばの栽培のかたわらで、後に『久次郎』をオープンしました。

雪のため畑の見学はかないませんでしたが、谷口氏が用意してくださった大きさ違いの伊吹大根を見物。谷口氏は「冬は、雪の下でさらに甘味が加わり、伊吹大根にとって最高の時期です」と話したうえで「小ぶりのものは水分が少なくて肉質が固く、よく締まっているので煮崩れしにくい。ふろふき大根など煮物に最適です。大きめのものは、香りが強く、小気味いいすっきりとした辛味が最高です。すりおろして蕎麦に添えるのがおすすめ」と紹介します。

「シャープでキレがよく、辛さが口の中に残らず、後味がすっきりしていますね」と興奮気味なのは、和菓子と日本酒のマリアージュを提案する『薫風』のつくださちこさん。「生のまま辛味を生かしてもいいし、火を通して自然に出てくる甘さを砂糖がわりにするのも、どちらも良さそう」と、少しずつアイデアが浮かんできているようです。

イタリアン「KNOCK」の料理人、犬亦真太朗氏は「この土地に伝わる歴史や伝統を感じさせる強い味わいが魅力。辛味を生かした料理をつくりたい」と、メモをとっていました。

つくださんがさらに関心を見せていたのは、谷口氏が販売しているそば茶。在来種の「伊吹そば」のそばの実は、小粒で、香りが強く、さらに旨みや甘みも優れています。煎ってそば茶にすると、香ばしさが増し、実をそのままポリポリと食べても美味しさを感じられます。「バニラアイスにそば茶用のそばの実をまぶして食べると、アイスクリームの食感にアクセントがうまれ、味にメリハリもつくんです」と谷口氏に紹介されると、「和菓子にも使えそう」と、つくださんはうなずいていました。

伊吹大根は、大きさによって煮物や大根おろしなど使い分けると、魅力が増す。

昼食をとりながら谷口氏の解説に耳を傾ける一行。

伊吹そばをぶっかけスタイルで。薬味に伊吹大根が添えられ供される。

伊吹そばの実をまぶしたバニラアイス。

ローカルファインフードフェア滋賀滋賀県の「海」、琵琶湖で冬にだけ獲れる氷魚(ひうお)。

次に訪れたのは、琵琶湖の北岸の大浦漁港にある「西浅井漁業協同組合(漁協)」です。滋賀県といえば、琵琶湖。地元の人はこの琵琶湖を「海」と呼ぶほど、特別な思いを寄せています。さて、冬の琵琶湖には、どんな食材が眠っているのでしょうか。

「本日、皆さんに見てもらいたいのは、鮎の稚魚である氷魚(ひうお)です」と、一行を迎えるのは、漁協の代表理事・礒崎和仁氏。シラスより少し大きめで、つやつや、ぷりっとした見た目が特徴の氷魚は、琵琶湖の冬の風物詩。「琵琶湖の西か北で食べることが多く、生きている時は透明で氷のような美しい見た目をしていることから、氷魚と言われています」と、礒崎氏は教えてくれます。

その隣に添えられているのは、ビワマスの刺身です。ビワマスは、一般的なマスと異なり、海に出ず、一生を淡水域で終える魚。サケ科ではあるものの、その脂はサーモンよりも上品なのが特徴です。漁の最盛期は7月。琵琶湖の水温が下がる1~2月は、脂がのってよりいっそう美味しくなります。
「よく見ると、お皿の手前にあるビワマスの刺身は赤みが強くて、後方に並んでいるのは白っぽいですよね。実は、ビワマスが何を食べて育ったかによって、身の色が変わるのです」と、礒崎氏。捌いて中を見るまではわからないそうですが、エビ類を多く食べたビワマスは身が赤くなり、コアユを多く食べると身が白っぽくなるといいます。「白っぽい方が、より脂がのっています」と、礒崎氏が解説してくれました。

手前の二切れが赤みが強く、後方の三切れは白っぽい。コアユかエビ類、どちらを多く食べたかで身の色が変わる。

冬限定の琵琶湖で獲れる氷魚。

引地氏は、夏にはビワマスをタルタルにして提供したことがあるそう。

礒崎氏の話に真剣に耳を傾ける犬亦氏。

ローカルファインフードフェア滋賀明るく、朗らかに、常に新しいチャレンジを続ける『みなくちファーム』。

1日目の最後に一行が訪れたのが、琵琶湖の北西、高島市にある『みなくちファーム』。就農からわずか8年ながらも、見た目が美しく、みずみずしくてフレッシュな野菜をつくることで定評のある生産者です。農薬や化学肥料を使わずに、持続可能な循環型農業を実践しながら、年間100種以上の野菜を栽培しています。そして、シェフやバイヤーからのニーズに応じて、新しい野菜の栽培にも積極的に取り組んでいくチャレンジ精神の持ち主でもあります。

シェフやバイヤーは、すでに代表の水口 淳氏とも親しく、今回は、冬に旨味を増すしいたけの試食を行いました。「せっかくシェフが集まっているので、プロによる調理で試食しませんか」という水口氏の提案により、引地氏がキッチンに立つことに。「実はお店で使っている野菜用のオリジナルスパイスを持参しました」と、引地氏も乗り気の様子。早速、しいたけを一口大に切り分け、フライパンで手際良く炒めていきます。

和気藹々とした雰囲気で、一同はしいたけをはじめ、『みなくちファーム』の野菜の試食をすすめていきます。山本氏は「いろんな産地の農家さんにも足を運びますが、ここの野菜はトップレベル。水洗いしたら、そのまま丸ごとかじっておいしい。『みなくちファーム』さんのファンの飲食店もたくさんいます」と、太鼓判。菊芋や大根を、パリっ、カリっと頬張ります。

無農薬で育てた原木しいたけ。肉厚で旨味がぎゅっと詰まっている。

しいたけをサッと炒める引地氏。

すべて、みなくちファームで栽培している大根。紅くるり、京むらさき、紅芯大根など。

「雪に埋もれていますが」と言いながら、にんじん畑に案内してくれた水口氏夫婦。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:AYANO YOSHIDA

(supported by 滋賀県)

料理人が見た知られざる冬の滋賀。寒い時期こそ出合える美味しさがある。[Local Fine Food Fair SHIGA/滋賀県、東京都]

雪の積もったにんじん畑で、『みなくちファーム』のみなさんと一緒に。

ローカルファインフードフェア滋賀雪降る北部から、快晴の南部まで、琵琶湖をぐるりとまわる。

東京都内で活躍する料理人や和菓子職人が、滋賀県産食材を使った料理をそれぞれの店で提供する期間限定のフードフェア『Local Fine Food Fair SHIGA』。食材が育まれる土地を自分の目で見て、生産者の思いを直接聞くため、4人のシェフとバイヤーが1泊2日で滋賀を訪ねました。

米原(まいばら)駅から車で移動すること約30分。滋賀に到着して一行がまず向かったのは、長浜市西上坂町の『ワボウ産業』です。案内されたのは、まるで工場のような建物。この敷地のどこに海老がいるのだろう、と不思議な気持ちになりそうですが、実は『ワボウ産業』は、もともと半導体製造を続けてきた企業です。自社の設備とノウハウをいかして、「食」の分野で新たな挑戦ができないか。そんな思いから、2020年夏に独自の方法でバナメイエビの養殖を始め、翌年から自社ブランド「おうみ海老」の出荷を始めました。

工場内に入ると、一面に設置された大きな水槽に圧倒されます。ここがまさに、「おうみ海老」を養殖している現場。水槽の水に、伊吹山の地下50mから湧き出る清冽な地下水と、フランス産の岩塩が使われています。

最大の特徴は、半導体事業で築いた技術力で、この水槽の水を循環利用していることです。まず、水質を保つことで抗生物質などを一切投与しない環境をつくり、安全性の高い海老を養殖します。
そして、海老を養殖した後、窒素分がたまった水を別の水槽に移し、今度はこの水で海ぶどうとアオサを栽培します。すると、海ぶどうとアオサが天然のろ過装置となり、水を澄んだ美しい状態に戻してくれるのです。その水で、再び海老の養殖を始める。こうして、複数の食材の養殖を介しながら、工場内で水を循環させているのです。「地球にやさしく、そして、本当に美味しい食材を人々に。それが、私たちが実現したいことなのです」と、第一事業部技術課課長の宮本和徳氏は言います。
こうした環境で育った「おうみ海老」は、臭みがなく、澄んだ味わい。さらに、身が引き締まっていて、噛むほどに海老本来の甘みが広がります。冷凍して出荷されますが、解凍後、生のままでも美味しく食べることができるほど品質が高いことも特徴です。

「今回の視察でも特に楽しみにしていたのが、この『おうみ海老』です」と話すのは、インド料理「ニルヴァーナ ニューヨーク」の料理人、引地翔悟氏。「ひとつのお皿に、このワボウ産業の海老と海ぶどう、アオサが乗る料理を考えて、この工場のストーリーをお客さまに伝えたい」と、語ります。

元イタリアンのシェフで食材バイヤーの山本敦士氏は「小ぶりの海老だけを集めて真空冷凍した商品があれば、飲食店にアヒージョ用に提案できそう」と、宮本氏に相談していました。

【関連記事】滋賀食材フェア/琵琶湖の豊かな水が育む、瑞々しい食材。料理人たちが見た滋賀県の食材の底力。

“天然のろ過装置”、アオサ、海ぶどうを用いて浄化した水で、「おうみ海老」は養殖される。

20gから31gまで、大きさごとに並んだ「おうみ海老」に見入る4人と、宮本氏。

「生でも十分美味しいので、タンドールとして強火で外側をバリッと焼き、中をレアにして提供しても美味しそう」と引地氏。

海老を養殖した後の水は、アオサを栽培しながらろ過していく。

ローカルファインフードフェア滋賀ヤマトタケル終焉の地で育つ伝統野菜・伊吹大根。

お昼休憩を兼ねて向かったのが、米原市大久保の蕎麦屋『久次郎』。岐阜県との県境に近く、姉川源流に位置する、こじんまりとした趣深いお店です。なんといっても、ここは日本百名山の一峰と知られる伊吹山の麓。この山には、日本神話の英雄、ヤマトタケルを死に追いやった強力な山の神様がいるという言い伝えもあります。

『久次郎』の店主、谷口隆一氏は、元米原市の職員をされていた方。在職中は、米原市に伝わる伝統野菜の「伊吹大根」と伊吹在来そばの「伊吹そば」の広報活動に勤しんでいたそう。そのうちに「この素晴らしさを人々に伝えていくには、自分が現場に入り込むしかない」という情熱にかられ、57歳で市役所を早期退職し、『いぶきファーム』を発足。伊吹大根と伊吹そばの栽培のかたわらで、後に『久次郎』をオープンしました。

雪のため畑の見学はかないませんでしたが、谷口氏が用意してくださった大きさ違いの伊吹大根を見物。谷口氏は「冬は、雪の下でさらに甘味が加わり、伊吹大根にとって最高の時期です」と話したうえで「小ぶりのものは水分が少なくて肉質が固く、よく締まっているので煮崩れしにくい。ふろふき大根など煮物に最適です。大きめのものは、香りが強く、小気味いいすっきりとした辛味が最高です。すりおろして蕎麦に添えるのがおすすめ」と紹介します。

「シャープでキレがよく、辛さが口の中に残らず、後味がすっきりしていますね」と興奮気味なのは、和菓子と日本酒のマリアージュを提案する『薫風』のつくださちこさん。「生のまま辛味を生かしてもいいし、火を通して自然に出てくる甘さを砂糖がわりにするのも、どちらも良さそう」と、少しずつアイデアが浮かんできているようです。

イタリアン「KNOCK」の料理人、犬亦真太朗氏は「この土地に伝わる歴史や伝統を感じさせる強い味わいが魅力。辛味を生かした料理をつくりたい」と、メモをとっていました。

つくださんがさらに関心を見せていたのは、谷口氏が販売しているそば茶。在来種の「伊吹そば」のそばの実は、小粒で、香りが強く、さらに旨みや甘みも優れています。煎ってそば茶にすると、香ばしさが増し、実をそのままポリポリと食べても美味しさを感じられます。「バニラアイスにそば茶用のそばの実をまぶして食べると、アイスクリームの食感にアクセントがうまれ、味にメリハリもつくんです」と谷口氏に紹介されると、「和菓子にも使えそう」と、つくださんはうなずいていました。

伊吹大根は、大きさによって煮物や大根おろしなど使い分けると、魅力が増す。

昼食をとりながら谷口氏の解説に耳を傾ける一行。

伊吹そばをぶっかけスタイルで。薬味に伊吹大根が添えられ供される。

伊吹そばの実をまぶしたバニラアイス。

ローカルファインフードフェア滋賀滋賀県の「海」、琵琶湖で冬にだけ獲れる氷魚(ひうお)。

次に訪れたのは、琵琶湖の北岸の大浦漁港にある「西浅井漁業協同組合(漁協)」です。滋賀県といえば、琵琶湖。地元の人はこの琵琶湖を「海」と呼ぶほど、特別な思いを寄せています。さて、冬の琵琶湖には、どんな食材が眠っているのでしょうか。

「本日、皆さんに見てもらいたいのは、鮎の稚魚である氷魚(ひうお)です」と、一行を迎えるのは、漁協の代表理事・礒崎和仁氏。シラスより少し大きめで、つやつや、ぷりっとした見た目が特徴の氷魚は、琵琶湖の冬の風物詩。「琵琶湖の西か北で食べることが多く、生きている時は透明で氷のような美しい見た目をしていることから、氷魚と言われています」と、礒崎氏は教えてくれます。

その隣に添えられているのは、ビワマスの刺身です。ビワマスは、一般的なマスと異なり、海に出ず、一生を淡水域で終える魚。サケ科ではあるものの、その脂はサーモンよりも上品なのが特徴です。漁の最盛期は7月。琵琶湖の水温が下がる1~2月は、脂がのってよりいっそう美味しくなります。
「よく見ると、お皿の手前にあるビワマスの刺身は赤みが強くて、後方に並んでいるのは白っぽいですよね。実は、ビワマスが何を食べて育ったかによって、身の色が変わるのです」と、礒崎氏。捌いて中を見るまではわからないそうですが、エビ類を多く食べたビワマスは身が赤くなり、コアユを多く食べると身が白っぽくなるといいます。「白っぽい方が、より脂がのっています」と、礒崎氏が解説してくれました。

手前の二切れが赤みが強く、後方の三切れは白っぽい。コアユかエビ類、どちらを多く食べたかで身の色が変わる。

冬限定の琵琶湖で獲れる氷魚。

引地氏は、夏にはビワマスをタルタルにして提供したことがあるそう。

礒崎氏の話に真剣に耳を傾ける犬亦氏。

ローカルファインフードフェア滋賀明るく、朗らかに、常に新しいチャレンジを続ける『みなくちファーム』。

1日目の最後に一行が訪れたのが、琵琶湖の北西、高島市にある『みなくちファーム』。就農からわずか8年ながらも、見た目が美しく、みずみずしくてフレッシュな野菜をつくることで定評のある生産者です。農薬や化学肥料を使わずに、持続可能な循環型農業を実践しながら、年間100種以上の野菜を栽培しています。そして、シェフやバイヤーからのニーズに応じて、新しい野菜の栽培にも積極的に取り組んでいくチャレンジ精神の持ち主でもあります。

シェフやバイヤーは、すでに代表の水口 淳氏とも親しく、今回は、冬に旨味を増すしいたけの試食を行いました。「せっかくシェフが集まっているので、プロによる調理で試食しませんか」という水口氏の提案により、引地氏がキッチンに立つことに。「実はお店で使っている野菜用のオリジナルスパイスを持参しました」と、引地氏も乗り気の様子。早速、しいたけを一口大に切り分け、フライパンで手際良く炒めていきます。

和気藹々とした雰囲気で、一同はしいたけをはじめ、『みなくちファーム』の野菜の試食をすすめていきます。山本氏は「いろんな産地の農家さんにも足を運びますが、ここの野菜はトップレベル。水洗いしたら、そのまま丸ごとかじっておいしい。『みなくちファーム』さんのファンの飲食店もたくさんいます」と、太鼓判。菊芋や大根を、パリっ、カリっと頬張ります。

無農薬で育てた原木しいたけ。肉厚で旨味がぎゅっと詰まっている。

しいたけをサッと炒める引地氏。

すべて、みなくちファームで栽培している大根。紅くるり、京むらさき、紅芯大根など。

「雪に埋もれていますが」と言いながら、にんじん畑に案内してくれた水口氏夫婦。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:AYANO YOSHIDA

(supported by 滋賀県)

雪深い北部から、快晴の南部へ。料理人が琵琶湖周辺をめぐる、食材探しの旅。[Local Fine Food Fair SHIGA/滋賀県、東京都]

1日目と打って変わって、滋賀の南東部では晴れやかな空が広がっていた。

ローカルファインフードフェア滋賀雪の下、春に向けてすくすくと成長している食材に思いを馳せる。

東京都内で活躍する料理人や和菓子職人が、滋賀県産食材を使った料理をそれぞれの店で提供する期間限定のフードフェア『Local Fine Food Fair SHIGA』。滋賀に分け入り、食材が育つ環境、育てている人を自分の目で見に行くべく、4人のシェフとバイヤーによる生産者巡りもいよいよ2日目です。

2日目は、大雪のなかでの出発となりました。雪化粧をまとった滋賀の山々を眺めながら一行が向かったのは、米原市の『薬草の里文化センター』。雪深くなっているため薬草園を散策することはかないませんでしたが、センターの室内で、四季折々に伊吹山に生えてくる薬草を紹介してもらいました。

「大昔、伊吹山の麓で暮らしていた人々は病院に行ったり、医者に診にきてもらったりすることがままならなかったので、薬草の力で治療していたそうです」という、薬草園の園長・谷口康氏による解説に、和菓子職人のつくださちこさんは興味津々。「昔の人々の暮らしや、日本の歴史は、和菓子を作るうえで欠かせない知識。古来の人々が、伊吹山の麓で薬草をどんなふうに取り入れていたのかとても気になります」と、積極的に質問を繰り返していました。

ツクシ、ドクダミ、フキ、シソ、ナズナ、セリなど多くの薬草が伊吹山には自生しますが、つくださんが特に目を輝かせながら話を聞いていたのが、ヨモギ。草餅を筆頭に、和菓子にもよく用いられる薬草です。春先に芽を出し、腹痛、下痢、腰痛に効果があり、生の葉をすりつぶして体に塗ると、止血効果もあるそう。「伊吹山でとれた薬草で和菓子を作り、昔の人々が医者がわりに重用していた、というストーリーを添えながらお客様に提供できたら、とても楽しそう」と、つくださんは声を弾ませていました。

【関連記事】滋賀食材フェア/琵琶湖の豊かな水が育む、瑞々しい食材。料理人たちが見た滋賀県の食材の底力。

雪化粧の伊吹山。暖かくなってくると、数々の薬草が芽吹き出す。

『薬草の里文化センター』で写真を見ながら薬草の効能を学ぶ4人。

『薬草の里文化センター』の谷口康氏。

伊吹山の麓で暮らす人々の生活と密接に関わる薬草の歴史を、やや興奮気味で学ぶつくださん。

ローカルファインフードフェア滋賀真っ赤な宝石、たわわに実ったいちごをほおばる。

琵琶湖の東へと移動し、一行が到着したのは東近江市の愛東いちごハウス。『aito budo labo』のメンバー・漆崎厚史氏は、初秋はぶどうを、初春にはいちごを出荷しています。冬は寒さのため、いちごの色づきがゆっくり。収穫できるまで時間がかかる分、甘さをため込む時間も長くなり、一粒一粒の味わいが濃厚になっていくのが特徴です。

ここで栽培しているいちごは、オレンジがかった色味が美しい「よつぼし」と、はちみつのような甘さが特徴の「かおりの」、やわらかくてジューシーな「あきひめ」の3種。すでに真っ赤に熟したいちごを試食しつつも、一行にとって新たな発見となったのは、“赤くなる前のグリーンのいちご”にも魅力があるということ。「さくさくしていて、爽やかな味なのでお菓子に使いたい」とつくださんも絶賛。「野菜と同じ感覚で、サラダや天ぷらにしても美味しいかも」と料理人の犬亦真太朗氏や引地翔悟氏も気に入った様子。

実際にはグリーンのいちごは出荷されていませんが、まだ世に出ていない食材を発掘できるのも、視察の意義のひとつ。料理人たちの反応を受け、バイヤーの山本敦士氏が「どのように体制を整えればグリーンのいちごを出荷できますか」と、漆崎氏に相談する場面も。いつか飲食店に向けてグリーンのいちごが流通していく日がくるかもしれません。

『aito budo labo』の漆崎厚史氏、青山彰宏氏、横田紳矢氏の案内のもと、いちごハウスを見学する4人。

赤く熟す手前の、グリーンのいちごの美味しさを知った、バイヤーの山本氏。

ローカルファインフードフェア滋賀地下水が育む、ジューシーなトマト。

朝は大雪のなかでの出発となりましたが、琵琶湖を中心に東へと車を進めていくと、まるで同じ滋賀県とは思えないほどの快晴。目の前に広がる畑や山々にも雪はまったくなく、県内でも気候が違うことに気づきます。滋賀県の多様な地域性を実感する瞬間です。

やがてたどり着いたのが、蒲生郡日野町『FARM KEI』のトマトハウス。社名は、代表の井狩けいこ氏の名前に由来したもの。元は車の販売をしていたという井狩さんは、5年前にトマトの栽培を始めました。

『FARM KEI』のトマトは、小粒で、色彩豊か。味や食感も、種類豊富です。たとえば黄色い「ナポリターナカナリア」は、さくさくとした食感で、柑橘のような爽やかな風味が特徴です。一方、丸くてぷっくりとした形状で、赤く熟れた「プチぽよ」はさくらんぼのようにみずみずしく、ふくよかな甘味が魅力。

一同が特に感動したのは、フレッシュな緑色の「カプリエメラルド」。「緑色のトマトは青臭いイメージだったけれど、カプリエメラルドはほんのちょっとの酸味と甘味のバランスがよくて、緑色のトマトの概念を覆す美味しさ」と、つくださんは話します。

「これだけ見た目が美しく、種類ごとに個性的な味わいをもっているから、あまり手を加えずに素のままの美味しさを伝えたい。ひとつのお皿に何色ものトマトが入るようにして、シンプルなサラダにして提供したら良さそう」と、引地氏。『FARM KEI』のトマトに相当惚れ込んだようです。

「美味しさの秘密は地下水」と、井狩さん。『FARM KEI』のほど近くにある「鈴休(すずやみ)神社」は、江戸時代の参勤交代の際に、水飲み休憩場として使われていたそう。当時は井戸で地下水を汲み上げていて、その美味しさに人々が惚れ込んでいたといいます。どうも、『FARM KEI』はこの地下水の恩恵をうけているそう。「トマトが美味しくなる条件は、すでにこの土地に揃っている。トマトがすくすくと元気に育つ環境をつくることが、私の仕事なんです」と、井狩さんは言います。

『FARM KEI』では約10種類のジュエリートマトを栽培している。

『FARM KEI』代表の井狩けいこ氏。

トマトハウスでほんのり黒みを帯びた見た目で、りんごのような食感と甘味が特徴の「ブラッディタイガー」を見る犬亦氏。

『FARM KEI』では、10月から翌6月にかけてトマトを出荷する。

ローカルファインフードフェア滋賀質実剛健がウリの忍葱の畑を見学。

2日にわたる視察の旅も、いよいよ終盤。最後の目的地は、甲賀市の忍葱(しのぶねぎ)畑です。

「忍葱」という名前は、甲賀市が甲賀忍者の里であることにちなんだもの。12月初旬から3月中旬に収穫されるねぎは、甲賀市の冬の特産品としても知られています。
甲賀市は風が強く吹く寒冷な地域でありながら雪があまり降らないため、栽培に長い時間をかけてもねぎが傷みません。こうした気候的条件を利用し、一般的な白ねぎよりも1.5倍の太さになるまでじっくりと育てていきます。

こうしてできあがった忍葱は、長くて太く、ぎゅっと身が詰まっていて味が濃厚なことが特徴です。火を通せばとろりと甘みが出てきて、やさしい味わいになり、焼いたり、鍋に入れたりするのに向いています。

JAこうかの上田健司氏の案内のもと、一同は畑を見学。「もともと忍葱の大ファンで、愛用しています」と笑顔を見せるのは、犬亦氏。
「この太さをお客様にも伝えたくて、なるべく形を残したまま、焼いたり、コンフィにしただけで提供しています」と、愛用してきた食材が育つ現場を目の当たりにできて、嬉しそうにしていました。

上田氏とともにねぎ畑を見学。

朝見ていた雪景色とは打って変わって、穏やかな夕暮れとともに視察の旅を終えた。

ローカルファインフードフェア滋賀2日間で見えてきた滋賀県の生産者と食材に宿る奥深きストーリー。

2日間を通して、出会ってきた滋賀の生産者と食材。「東京で暮らしていると、全国各地の美味しい食材を手に入れることができる。ただ単に美味しいから、という理由でその食材を使うのではなくて、僕たちは、その一歩先に行きたい。つまり、育った土地や生産者のストーリーもお客様に伝えたいのです。だから、この旅に参加しました」とは、犬亦氏。隣で話を聞くつくださんと引地氏も、大きくうなずきます。食材の素晴らしさとともに、生産者たちの思いは、今回の視察に参加した4人の胸に確実に刻まれたことでしょう。

今回の視察で巡った生産者たちの食材を使った料理は、2022年2月14日(月)~3月25日(金)に開催される『Local Fine Food Fair SHIGA』で味わうことができます。ぜひ、料理の美味しさを堪能しつつ、シェフたちから生産者の熱き思いを聞いてみてください。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:AYANO YOSHIDA

(supported by 滋賀県)

雪深い北部から、快晴の南部へ。料理人が琵琶湖周辺をめぐる、食材探しの旅。[Local Fine Food Fair SHIGA/滋賀県、東京都]

1日目と打って変わって、滋賀の南東部では晴れやかな空が広がっていた。

ローカルファインフードフェア滋賀雪の下、春に向けてすくすくと成長している食材に思いを馳せる。

東京都内で活躍する料理人や和菓子職人が、滋賀県産食材を使った料理をそれぞれの店で提供する期間限定のフードフェア『Local Fine Food Fair SHIGA』。滋賀に分け入り、食材が育つ環境、育てている人を自分の目で見に行くべく、4人のシェフとバイヤーによる生産者巡りもいよいよ2日目です。

2日目は、大雪のなかでの出発となりました。雪化粧をまとった滋賀の山々を眺めながら一行が向かったのは、米原市の『薬草の里文化センター』。雪深くなっているため薬草園を散策することはかないませんでしたが、センターの室内で、四季折々に伊吹山に生えてくる薬草を紹介してもらいました。

「大昔、伊吹山の麓で暮らしていた人々は病院に行ったり、医者に診にきてもらったりすることがままならなかったので、薬草の力で治療していたそうです」という、薬草園の園長・谷口康氏による解説に、和菓子職人のつくださちこさんは興味津々。「昔の人々の暮らしや、日本の歴史は、和菓子を作るうえで欠かせない知識。古来の人々が、伊吹山の麓で薬草をどんなふうに取り入れていたのかとても気になります」と、積極的に質問を繰り返していました。

ツクシ、ドクダミ、フキ、シソ、ナズナ、セリなど多くの薬草が伊吹山には自生しますが、つくださんが特に目を輝かせながら話を聞いていたのが、ヨモギ。草餅を筆頭に、和菓子にもよく用いられる薬草です。春先に芽を出し、腹痛、下痢、腰痛に効果があり、生の葉をすりつぶして体に塗ると、止血効果もあるそう。「伊吹山でとれた薬草で和菓子を作り、昔の人々が医者がわりに重用していた、というストーリーを添えながらお客様に提供できたら、とても楽しそう」と、つくださんは声を弾ませていました。

【関連記事】滋賀食材フェア/琵琶湖の豊かな水が育む、瑞々しい食材。料理人たちが見た滋賀県の食材の底力。

雪化粧の伊吹山。暖かくなってくると、数々の薬草が芽吹き出す。

『薬草の里文化センター』で写真を見ながら薬草の効能を学ぶ4人。

『薬草の里文化センター』の谷口康氏。

伊吹山の麓で暮らす人々の生活と密接に関わる薬草の歴史を、やや興奮気味で学ぶつくださん。

ローカルファインフードフェア滋賀真っ赤な宝石、たわわに実ったいちごをほおばる。

琵琶湖の東へと移動し、一行が到着したのは東近江市の愛東いちごハウス。『aito budo labo』のメンバー・漆崎厚史氏は、初秋はぶどうを、初春にはいちごを出荷しています。冬は寒さのため、いちごの色づきがゆっくり。収穫できるまで時間がかかる分、甘さをため込む時間も長くなり、一粒一粒の味わいが濃厚になっていくのが特徴です。

ここで栽培しているいちごは、オレンジがかった色味が美しい「よつぼし」と、はちみつのような甘さが特徴の「かおりの」、やわらかくてジューシーな「あきひめ」の3種。すでに真っ赤に熟したいちごを試食しつつも、一行にとって新たな発見となったのは、“赤くなる前のグリーンのいちご”にも魅力があるということ。「さくさくしていて、爽やかな味なのでお菓子に使いたい」とつくださんも絶賛。「野菜と同じ感覚で、サラダや天ぷらにしても美味しいかも」と料理人の犬亦真太朗氏や引地翔悟氏も気に入った様子。

実際にはグリーンのいちごは出荷されていませんが、まだ世に出ていない食材を発掘できるのも、視察の意義のひとつ。料理人たちの反応を受け、バイヤーの山本敦士氏が「どのように体制を整えればグリーンのいちごを出荷できますか」と、漆崎氏に相談する場面も。いつか飲食店に向けてグリーンのいちごが流通していく日がくるかもしれません。

『aito budo labo』の漆崎厚史氏、青山彰宏氏、横田紳矢氏の案内のもと、いちごハウスを見学する4人。

赤く熟す手前の、グリーンのいちごの美味しさを知った、バイヤーの山本氏。

ローカルファインフードフェア滋賀地下水が育む、ジューシーなトマト。

朝は大雪のなかでの出発となりましたが、琵琶湖を中心に東へと車を進めていくと、まるで同じ滋賀県とは思えないほどの快晴。目の前に広がる畑や山々にも雪はまったくなく、県内でも気候が違うことに気づきます。滋賀県の多様な地域性を実感する瞬間です。

やがてたどり着いたのが、蒲生郡日野町『FARM KEI』のトマトハウス。社名は、代表の井狩けいこ氏の名前に由来したもの。元は車の販売をしていたという井狩さんは、5年前にトマトの栽培を始めました。

『FARM KEI』のトマトは、小粒で、色彩豊か。味や食感も、種類豊富です。たとえば黄色い「ナポリターナカナリア」は、さくさくとした食感で、柑橘のような爽やかな風味が特徴です。一方、丸くてぷっくりとした形状で、赤く熟れた「プチぽよ」はさくらんぼのようにみずみずしく、ふくよかな甘味が魅力。

一同が特に感動したのは、フレッシュな緑色の「カプリエメラルド」。「緑色のトマトは青臭いイメージだったけれど、カプリエメラルドはほんのちょっとの酸味と甘味のバランスがよくて、緑色のトマトの概念を覆す美味しさ」と、つくださんは話します。

「これだけ見た目が美しく、種類ごとに個性的な味わいをもっているから、あまり手を加えずに素のままの美味しさを伝えたい。ひとつのお皿に何色ものトマトが入るようにして、シンプルなサラダにして提供したら良さそう」と、引地氏。『FARM KEI』のトマトに相当惚れ込んだようです。

「美味しさの秘密は地下水」と、井狩さん。『FARM KEI』のほど近くにある「鈴休(すずやみ)神社」は、江戸時代の参勤交代の際に、水飲み休憩場として使われていたそう。当時は井戸で地下水を汲み上げていて、その美味しさに人々が惚れ込んでいたといいます。どうも、『FARM KEI』はこの地下水の恩恵をうけているそう。「トマトが美味しくなる条件は、すでにこの土地に揃っている。トマトがすくすくと元気に育つ環境をつくることが、私の仕事なんです」と、井狩さんは言います。

『FARM KEI』では約10種類のジュエリートマトを栽培している。

『FARM KEI』代表の井狩けいこ氏。

トマトハウスでほんのり黒みを帯びた見た目で、りんごのような食感と甘味が特徴の「ブラッディタイガー」を見る犬亦氏。

『FARM KEI』では、10月から翌6月にかけてトマトを出荷する。

ローカルファインフードフェア滋賀質実剛健がウリの忍葱の畑を見学。

2日にわたる視察の旅も、いよいよ終盤。最後の目的地は、甲賀市の忍葱(しのぶねぎ)畑です。

「忍葱」という名前は、甲賀市が甲賀忍者の里であることにちなんだもの。12月初旬から3月中旬に収穫されるねぎは、甲賀市の冬の特産品としても知られています。
甲賀市は風が強く吹く寒冷な地域でありながら雪があまり降らないため、栽培に長い時間をかけてもねぎが傷みません。こうした気候的条件を利用し、一般的な白ねぎよりも1.5倍の太さになるまでじっくりと育てていきます。

こうしてできあがった忍葱は、長くて太く、ぎゅっと身が詰まっていて味が濃厚なことが特徴です。火を通せばとろりと甘みが出てきて、やさしい味わいになり、焼いたり、鍋に入れたりするのに向いています。

JAこうかの上田健司氏の案内のもと、一同は畑を見学。「もともと忍葱の大ファンで、愛用しています」と笑顔を見せるのは、犬亦氏。
「この太さをお客様にも伝えたくて、なるべく形を残したまま、焼いたり、コンフィにしただけで提供しています」と、愛用してきた食材が育つ現場を目の当たりにできて、嬉しそうにしていました。

上田氏とともにねぎ畑を見学。

朝見ていた雪景色とは打って変わって、穏やかな夕暮れとともに視察の旅を終えた。

ローカルファインフードフェア滋賀2日間で見えてきた滋賀県の生産者と食材に宿る奥深きストーリー。

2日間を通して、出会ってきた滋賀の生産者と食材。「東京で暮らしていると、全国各地の美味しい食材を手に入れることができる。ただ単に美味しいから、という理由でその食材を使うのではなくて、僕たちは、その一歩先に行きたい。つまり、育った土地や生産者のストーリーもお客様に伝えたいのです。だから、この旅に参加しました」とは、犬亦氏。隣で話を聞くつくださんと引地氏も、大きくうなずきます。食材の素晴らしさとともに、生産者たちの思いは、今回の視察に参加した4人の胸に確実に刻まれたことでしょう。

今回の視察で巡った生産者たちの食材を使った料理は、2022年2月14日(月)~3月25日(金)に開催される『Local Fine Food Fair SHIGA』で味わうことができます。ぜひ、料理の美味しさを堪能しつつ、シェフたちから生産者の熱き思いを聞いてみてください。

Photographs:JIRO OHTANI
Text:AYANO YOSHIDA

(supported by 滋賀県)

酵母とツナ。造り手の情熱が生んだ、「想い」のペアリング。[和光アネックス/東京都中央区]

「甘い日本酒には、ピリリと辛い島唐辛子のツナがよく合います」とおすすめするのは、今回のペアリングを提案してくれる『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さん。

WAKO ANNEX味だけではない。合わせることによって感じたいのは、背景の物語。

日本酒をワイングラスでいただく。近年、ポピュラーになっている飲み方ですが、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」という大会の存在を知る人はまだ少ないはず。2021年、プレミアム純米部門でその金賞に輝いたのが、今回ご紹介する神奈川県『中沢酒造』の『松みどり S.tokyo』です。

まず、特筆すべきはその酵母。1909年に発見されるも日本酒造りに一切使われなかった幻の酵母こそ、酒名にもある「松みどり」。

「現代主流の酵母では表現できない味にこだわりました」とは、「松みどり」の復活を果たした『中沢酒造』11代目・鍵和田 亮氏の言葉。

明治時代からやってきた酵母は、ほんのりとした甘味と爽やかな酸味が特徴。アルコールも14〜15%の原種のため、味わい深さを残しつつ、滑らかな喉越しは、よく冷やしてぜひ。杯はもちろん、ワイングラスで。

それに合わせるのは、東京都世田谷『JIN』の『おつな』。店主の関根 仁氏は、世田谷区池尻で10年間小料理屋『仁』を営むも、どうしても多くの人に本当においしい「マグロのオイル漬け」を食べて欲しいという情熱が止められず、2017年、「おつな」作りに専念し、現在に至ります。

ツナ缶発祥の地としても知られる静岡県焼津で作るそれは、美しく透き通ったオイルに純白のツナが特徴。素材のビンチョウマグロ、海洋深層水仕込みなど、こだわった製法は、全て手作り。食べた瞬間、しっとりしたオイルと柔らかな身が自然の旨味を口いっぱいに広げます。

10種以上ある味の中でも、今回の食べ合わせ提案をしてくれた『GEM by moto』の店主・千葉麻里絵さん選んだのは、島唐辛子。

「甘い日本酒に合わせるツナの塩味。青唐辛子の香りとお酒の甘味がマッチし、余白としての青唐辛子が引き立ちます。スパイシー感が気持ち良く、どんどんお酒が進みます」と千葉さん。

甘味と辛味。対局の味わいを合わせることによってひとつに。ぜひ、お楽しみください。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『松みどり S.tokyo』の「S」は、使用している酵母「Saccharomyces tokyo NAKAZAWA(サッカロマイセス・トーキョー・ナカザワ)」という清酒酵母の意味。この清酒酵母は1909年に農学博士の中沢亮治先生によって発見され、現存する清酒酵母の中で2番目に古いものと言われている。

『JIN』の『おつな』(右)を営む関根 仁氏は福島県出身。人気店にまで上り詰めた小料理屋『仁』を営むも、2017年、ツナへの愛が止まらず「おつな」作りに専念。今なお、探究心が止まらない。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

食事の後に、湯の後に。漆の止まり木へ。[BYAKU -Narai-/長野県塩尻市]

県産を中心とした酒類とともに楽しめるのは、不定期に変わるおつまみの料理。レストラン同様、『嵓 kura』の料理長・友森隆司シェフが土地に根付いたメニューを考案。

構造や扉などはそのままに、元々、味噌蔵だった場所を改装。メインのカウンターには、木曽の文化でもある漆を採用。壁面には、『杉の森酒造』の備品を配し、当時の面影を残す。奈良井宿の店舗で買い付けた品々も並ぶ。

BYAKU -Narai-この時間がたまらなく良い。奈良井宿の夜は、バーで完結する。

『BYAKU -Narai-』には、レストラン『嵓 kura』、温浴施設『山泉』以外にも、実はバーが併設しています。

なぜ「実は」と表現したかの理由は、開業が同時ではなかったため。

酒処『TASTING BAR suginomori』は、2021年12月に開業を迎えました。

その空間は、『杉の森酒造』であった当時、味噌蔵だった場所。ゆえに規模は小さいが、逆に秘密の隠れ家のような空気が漂います。

デザインにおいては、メインとなるカウンターには漆を施し、壁面には当時の面影を残す備品や役割を終えた酒道具、そして、奈良井宿の文化を感じる品々をディスプレイ。そんな時空を超えた邂逅体験は、このバーだからこそ楽しめる醍醐味でもあります。

メニューにおいては、県産の酒類を中心に、日本酒、焼酎、ワインなどを数多く揃え、料理は、『kura』の料理長・友森隆司シェフが腕を振るいます。

「ここでは、おつまみを中心にお酒と一緒にお楽しみいただければと思っております。定番の品から珍味まで。ちょっとひと手間を加えてお出ししたいと思います」。

不定期で変わる料理は、約5種。この日は、「季節のドライフルーツ」、「蜂の子とスパイシーマカロン」、「信州鹿ジャーキー」、「サルナシとブルーチーズのタルト」、「雷鳥の里と甘酒味噌」。「雷鳥の里と甘酒味噌」。郷土を加味しながらアレンジされた個性豊かな品々です。

食事の後に、湯の後に。そのまま客室へ直行し、ゆっくりと寛ぐも良しではありますが、『BYAKU -Narai-』の夜は、『TASTING BAR suginomori』で完結すると言っても過言ではありません。

目印は、宿泊棟と『嵓 kura』を結ぶ細い通りに灯る小さなサイン。ほんの少しだけ、奈良井宿の夜が更ける余韻をぜひ。

その心地良さに、きっと、あともう一杯と手が伸びるはずです。

「季節のドライフルーツ」は、春から秋にかけて『嵓 kura』周辺で果実や山菜などを採取し、時間をかけて低温で乾燥させて作る。単体ではなく、いちじくや葡萄など、ふたつの味を組み合わせ、味や香りを重層的に表現するのが特徴。

今も地元では食材として珍重されている地蜂の子を佃煮にし、マスカルポーネチーズと合わせた「蜂の子とスパイシーマカロン」。蜂の子と相性の良いシナモンやオールスパイスを混ぜ込んだマカロンは、香りと食感を楽しむ一品に仕上げる。

南木曽に拠点を構えるベテラン猟師が仕留め、新鮮なうちに処理を施した良質な鹿肉を薄切り にした「信州鹿ジャーキー」。自家製の醤油麹でマリネした後に乾燥させたジャーキーは、パリっとした食感と噛むほどに出る旨味が日本酒やワインと絶妙に合う。

「サルナシとブルーチーズのタルト」のサルナシは、皮ごとシロップにつけ、一口サイズのタルトに仕立てに。サルナシは、木曽周辺で栽培され、山にも自生する木の実。昔より奈良井宿でも季節ごと食されていた伝統的な食材でもある。それにブルーチーズを使ったムースと合わせ、ワインやハードリカーとのペアリングがおすすめ。

木曽福島宿にて昔ながらの味噌玉味噌を作る『小池麹店』の味噌と甘酒のソースに信州の有名なお菓子『雷鳥の里』をディップしていただく「雷鳥の里と甘酒味噌」。ソースには、近隣の山に自生する胡桃と合わせ、更に旨味をプラス。全てが口内で混ざり合えば、パイナップルのようなフレーバーが生まれ、日本酒との相性も抜群に。

空間の壁面には、当時の『杉の森酒造』の看板や奈良井宿に連なる店で購入可能な品なども並ぶ。気に入ったものがあれば、チェックアウト後に宿場を散策し、店へ足を運ぶのも楽しい。

2021年12月にオープンした『TASTING BAR suginomori』。場所は、宿泊棟から『kura』へ向かう右側の建物。Photograph:ROCOCOPRODUCE INC.

住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
電話:0264-34-3001
受付時間 : 20:00〜23:00
※バーのご利用は、宿泊者に限ります

住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
電話:0264-34-0001
受付時間 : 10:00〜17:00
https://byaku.site

Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI

酷寒の奈良井宿。枯と貧の先にある豊かさ。[BYAKU -Narai-/長野県塩尻市]

飛騨に語り継がれる魔物、両面宿儺からその名を得る塩尻産「宿儺カボチャ」は、サボテンのように長い形状が特徴。今回は、カボチャを主役に信州ぎたろう軍鶏と合わせ、「おやき」に。アクセントには、木曽の開田高原で作られたカマンベールを採用。

BYAKU -Narai-循環の味。冬の真実は、終わりを遂げた秋の名残なくしては生まれない。

冬の奈良井宿は、酷寒です。歴史を振り返ってみても、食材は貧しく、ゆえに保存食や発酵が生まれた地域でもあります。

しかしながら、そんな過酷な環境の中にも豊かさを育んだ先人たちの知恵があります。

冬の料理は、そんな学びから始まりました。

「奈良井宿はもちろん、長野県全体も含め、冬は食べるものを得るのに最も厳しい季節だったと言われています。海もなく、気温はマイナス。山間においては吹雪も日常茶飯事。作物も育ちづらい。一見、貧しいと思うかもしれませんが、先人たちは、そんな中においても豊かさを生み出してきたのだと想像しました」。

そう話すのは、『嵓 kura』の料理長・友森隆司シェフです。

現代においては、昔とは異なり、手に入る食材も多くなりました。しかし、「それに甘えては、本当の奈良井宿の冬の料理は表現できない」と言葉を続けます。

『嵓 kura』が表現したい冬の料理は、過去の追体験も含んだ料理なのかもしれません。

例えば、最初に供される「清香」。「すり流し」のそれは、シンプルな椀の中に淡い紫が美しく色付きます。

「奈良井宿の冬は、ご存知の通り漬物文化。中でも赤カブは、食材において、唯一、発色が美しい。きっと、粗食の漬物においても見た目の華やかさを楽しんでいたのだと思います。そういった気持ちの部分や色素を取り出す技術などを活かしました」。

続く「暮らし」と題した「おやき」においても哲学を持つ。

「塩尻産の宿儺カボチャと信州ぎたろう軍鶏を合わせたおやきです。宿儺カボチャは、通常の味と比べ味が濃く、ネットリというよりもホクホクした食感。それを甘酒と軍鶏の出汁で炊き、木曽の開田高原で作られたカマンベールをアクセントにしています」。

甘酒においては、酒造りが根付くこの地域ならでは。カマンベールを取り入れたことも、冬ならではの発酵文化を含むため。また、プレゼンテーションにおいても自然への敬意が演出されています。

「料理の下には紅葉を敷いています。実は『嵓 kura』周辺の雪に埋まった枯葉を掘り起こしたものです。冬には冬の素材と向き合うのはもちろんなのですが、こうして終わりを遂げた秋の名残は冬の影に潜んでいます。それが朽ちて土に還り、また次の季節の命を宿す。そういった季節の循環においても大切に向き合っていきたいと思っています」。

『嵓 kura』がスタートし、初めての冬を迎える料理長・友森隆司シェフ。日々、土地や食材、生産者と向き合うことによって、学びながら料理を作り続ける。

使用するのは、塩尻産「飛騨赤カブ」。飛騨と木曽は、昔から文化がつながり、食材や工芸など、行き来しているものが多い。まず、皮だけを煮出し、色素を抽出。最後に白い実と合わせ、「すり流し」に。また、本来のすり流しは、出汁で作るが、今回は動物性の牛乳や生クリームなども取り入れ、胃に入れた時に温かくなるように調理。

BYAKU -Narai-

過剰な演出は一切ない。冬の奈良井宿を正直に表現する。

前述の料理より続く冬のコースは、「水明」。食材は、秋メニュー同様、塩尻『田川浦養魚場』のシナノユキマスです。今回は、冬の時期だけ美味しい「薄造り」に仕上げます。

「冬のシナノユキマスは、一番脂が乗っていている時期。歯ごたえもあるため、薄造りが最適だと思います」と友森シェフ。

その薄造りの味に締まりを与えるのは、『嵓 kura』の監修を担う『傳』長谷川在祐シェフ直伝のポン酢。高級・希少な素材を一切使わず、醤油、カツオ、昆布、橙酢を独自の配合と時間をかけて丁寧に作ります。

「良いポン酢を仕入れることもできますが、当たり前の材料を自分たちの技術で美味しくするという考え方は、奈良井宿で食を表現する我々にとって大事なことだと思っています」。

そして、「伝承」と題した鯉の揚げ物。

「昔、この地域ではハレの日にいただく料理が鯉でした。昨今、そんな文化は失われつつありますが、『嵓 kura』では大事にしたいと考えています。骨斬りを行い、食べやすく手を入れ、仕込みに時間をかけ、泥臭さも一切ありません。その鯉を南木曽で採れた南木曽蓮根と塩尻の春菊ではさみ揚げにしています。添え物には、県産の金柑のコンポートと菊の花。そして、クタクタに煮た白菜を少し。ほっこり体を温めていただければと思います」。

料理に敷いた朴葉は、「おやき」の紅葉同様、『嵓 kura』周辺から採取したもの。

「雪を見立てることはできますが、それだけが奈良井宿ではない」と友森シェフ。

始まる季節に注ぐ愛もあれば、終わりを遂げた季節に注ぐ愛もある。それが『嵓 kura』流の季節の解釈であり、『嵓 kura』流の情緒。

「里山」のサラダは、通年、定番として出している料理ですが、今回こだわったのは、温度です。

「旬の食材を起用するのはもちろんですが、冬のため、体を冷やさず、ひとつ一つ手を加えています。例えば、里芋には甘く味を入れ、煮た後にじっくり揚げています。ニンジンはバターでグラッセにして熱々の状態にします」。

サラダのようでサラダではない。みなぎる大地の力、それぞれの野菜が適材に生かされた料理こそ、「里山」なのです。

お肉料理は、「嵓シシ」が登場。

「この時期は、何と言ってもジビエ。寒さに備えた冬のイノシシの肉質は、肉3脂7。とても濃いコクが特徴です。とはいえ、県産の野菜と合わさることによって、このお肉が生きるのだと思っています。木曽の『小池麹店』の味噌で仕立て、胃を温めていただければと思います」。

椀の中の関係は自然の中の関係と同様。大地の恵みがあり、シシは生かされ、活かされるのです。

当時は、この寒い冬をどうにか乗り越えるために体を芯から温め、火や囲炉裏を囲んで食べていたに違いありません。そして、命をいただく感謝も同時に得ていたと想像します。そんな滋味深い料理の享受は、現代に生きる我々に何かを訴えているようにも見えます。そんな問いかけすら感じるひと品です。

料理のシメは、「饗」と題した土鍋ごはん。

「土鍋ごはんと言えば『傳』。『傳』と言えば土鍋ごはん。直伝の逸品を、冬の『嵓 kura』では銘選木曽牛のサーロインを採用しています。お肉の下には、牛と同じ環境で育った雑穀米を使用し、白米よりも油切れを良くしています。雑穀の香ばしさ、素朴さが柔らかい肉質と相性が良く、ぜひおかわりもお楽しみください」。

最後は、「Mizu-Gashi」。

「冬の長野は、りんご。ですが、ここにおいても“冷たい”果物ではなく、“温かい”デザートをお出ししたいと考え、タルト・タタンに。それをキャラメルでコーティングして、熱を逃がさず美味しくいただけるようにしています。実は、もう少し酸味の多いりんごを使用したかったのですが、今季(2021年〜2022年)は、悪天候が続き、不作になってしまい。農家さんも大変苦しい状況です。ただ、そんな件も含め、これが“リアル”な地元の味。むしろ、我々、料理人の技術を活かす時だと考えます。地元農家さんが育てたものを美味しく仕上げたい。地元のものだからこそ、『嵓 kura』のお客さまに味わっていただきたい。良い時も悪い時も地元と向き合い続けることこそ、奈良井宿の味、『嵓 kura』の味になると思っています」。

シナノユキマスの薄造り「水明」。『傳』直伝のポン酢と共に。「冬のシナノユキマスは歯ごたえもあり、脂の乗っているため、薄造りが一番美味しいのですが、劣化が早くその日獲れた魚はその日しか持ちません。鮮度が命な料理です」。

「伝承」と題した千曲で育った鯉の料理は、南木曽蓮根と塩尻産の春菊ではさみ揚げに。県産の金柑と菊の花、クタクタに煮た白菜を添えて。「実は、長野県で蓮根を栽培している人はほぼいないく、希少な農家さんです。粘り気も強く、味がしっかりしており質が高い」。脇役も主役の力を持つのが『嵓 kura』の料理。

季節によって旬の県産野菜をいただく「里山」のサラダ。種類も豊富なそれは、その名の通り、ひとつの山が成す循環のよう。生、煮る、焼く、炒める、揚げる……。それぞれに適した調理を施し、それを皿の上で合わせる。

「嵓シシ」と題したひと品。脂の乗った冬場のイノシシに、県産のごぼう、しいたけ、松本一本ネギを具材に加え、木曽の『小池麹店』の味噌で仕立てた料理。

銘選木曽牛のサーロインを使用した土鍋ごはん「饗」。お肉の下には牛と同じ環境で育った雑穀米を使用。仕上げには、お肉を炙り、ごはんと和え、ゲストに提供する。ほどよく絡んだ油と土鍋で炊いたおこげ、雑穀の食感がお肉と絶妙に混ざり合い、食欲を掻き立てる。

デザート「Mizu-Gashi」は、伊那のりんご、サンフジを使用したタルト・タタン。それをキャラメルでコーティングすることによって温かさを維持。同じくキャラメルのアイスを添えて。某企業を彷彿とさせるりんごのデコレーションは、「デンタッキー」よろしく、長谷川イズムか!?

BYAKU -Narai-

食材の履歴書を理解し、奈良井宿に生きる料理人になるために。

「毎日、産地に行ける。その日の状態を見ることができる。育った環境を知ることができる。日々の作業のため、一番大変なことですが、奈良井宿だからこそできる喜び。キッチンで料理をすることよりも大切なことだと思っています」。

友森シェフは、日々、生産者のもとへ足を運び、このような作業を繰り返しています。これは、良い食材を仕入れるだけでなく、生産者との関係を強固にすることにもつながります。

地元のものを地元で食べることの意味と意義。『嵓 kura』の料理は、「レストラン」でありながら、「暮らし」の味を感じます。

美味しい料理であれば、世界中に存在しますが、奈良井宿の料理とは何か? 奈良井宿で食べる価値は何か? 全てに理由はあります。その解の物語が、料理に深みを与え、強い骨格を作り上げるのです。

食材や調理法など、料理に採用するコトとモノをひとつ一つ分解し、理由のある料理を表現する。『嵓 kura』が目指す料理はそれです。

「なぜ?に対する問いに必ず答えのある料理にする。なぜ奈良井宿? なぜ『嵓 kura』? なぜこの食材? なぜこの調理法? 答えのある料理を作りたい。いや、作らなければいけない。これは、長谷川シェフが最も大事にされていることでもあります。自分は、料理長として、その全ての問いを紐解き、答えを導き出すことが責務。この土地に生きる料理人として料理を作り続けます」。

住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
電話:0264-34-3001
営業時間:朝食7:30〜9:30/ランチ12:00〜14:30/ディナー17:30〜22:30
※ランチを除くレストランのご利用は、宿泊者に限ります。

住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
電話:0264-34-0001
受付時間 : 10:00〜17:00
https://byaku.site

Photographs:SHINJO ARAI
Text:YUICHI KURAMOCHI

3種の合わせ技。そのひと手間が味の想像を超え、独自の世界を創造する。[和光アネックス/東京都中央区]

長野県『若丸』の『馬節(さくらぶし)』を口に含みながら、鹿児島県『大和桜酒造』の『new classic imo shochu』を流し込めば、甘さ、辛さ、塩味、そして芋の香りが絶妙に調和する。更に、長野県『八幡屋礒五郎』の『山椒七味』を合わせることによって馬節に刺激を加え、より食欲を掻き立てる。

WAKO ANNEXそのピリリとした刺激が、さらに一口一飲みをそそる、美味しい無限ループ。

焼酎、馬節、山椒七味。3品の合わせを推奨するのは、第14代酒サムライであり、自身のお店『GEM by moto』を営む日本酒ソムリエの千葉麻里絵さんです。

まず焼酎は、鹿児島県『大和桜酒造』の新商品『new classic imo shochu』。

まだ若い原酒と8年古酒のブレンドという造られたそれは、まさに「new classic」。違うタイプの原酒をブレンドすることにより、更なる勢いと落ち着きが生まれ、とてもバランス良く仕上げられています。

それに合わせるのは、長野県『若丸』の『馬節(さくらぶし)』。馬節とは、馬肉ジャーキーです。信州の名産である馬肉を厚切りに、秘伝のタレに漬け込んで乾燥。常温保存が可能なため、地元では保存食としても重宝されています。

甘辛くしっかりと味付けのされた濃い味は、それだけでも『new classic imo shochu』に合いますが、さらにそれを引き立てる名脇役に千葉さんがチョイスしたのは、同じく長野県『八幡屋礒五郎』の『山椒七味』。

山椒香る爽やかなスパイスは、馬節の味わいをより引き立て、喉が焼酎を欲する関係にピタリと合わせます。

「馬肉ジャーキーの旨味がギュッと凝縮した、甘くやわらかい食感のジャーキー。芋焼酎のさつまいものふわりと優しい香りが、ジャーキーと合わせるとさらに広がります。山椒七味を付けることでさらに旨味がアップ!」と千葉さん 。

飲み物と食べ物を合わせることをペアリングだと思いがちですが、食べ物に調味料も立派なペアリング。この3品の邂逅は、合わせ技の妙が成した好例です。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

2012年製の8年古酒を若めの原酒とブレンドした『大和桜酒造』の新商品『new classic imo shochu』。

馬肉一筋の専門店『若丸』の『馬節(さくらぶし)』。都内初展開。

七味唐辛子専門メーカー『八幡屋礒五郎』の『山椒七味』。都内初展開。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supprtted by WAKO)

自然の味が際立つペアリング。ドライを通してつながる、熟成の食べ合わせ。[和光アネックス/東京都中央区]

『COPECO』ドライフルーツバナナを口に含み、噛むに連れ香りが広がる余韻をそのままに『焙じ茶+クローブ』を流し込む。言葉では表せない多国籍のような味わいと感覚は、おもしろい合わせ。

WAKO ANNEXスパイスと甘み。添加物を一切使用しない、自然のままの味を合わせる。

東京都調布『Maruta』ほか、様々なドリンクディレクターを務める外山博之氏がノンアルコールのペアリングに選んだ軸足は、静岡県『マルモ森商店』が運営する茶専門店『chagama』の『焙じ茶+クローブ』。

クローブとは、熱帯・亜熱帯地方で生息する常緑樹のつぼみを乾燥させたスパイスのこと。クローブは、スパイスの中で最も強い刺激的な香りを持つと言われている一方、バニラのような甘さも秘めています。

それにブレンドするのは焙じ茶。クローブの香りにも負けない香ばしさは、独特なハーモニーを感じさせます。

ひとつの茶の中にもペアリングが生じているのは、これから合わせる食とのペアリングだけではない、おもしろい関係の効果を生みます。

その相手は、埼玉県『かたすみ』の『COPECO』ドライフルーツバナナです。

沖縄県産のバナナを使用し、優しい甘みが特徴。こだわりの栽培、国産果物、そして、着色料や香料、保存料などの添加物は一切使用せず、あくまで自然の美味しさを追求。砂糖さえも加えず、低温でじっくりと乾燥させています。噛めば噛むほど果物本来の凝縮された味わいが広がり、絶妙に残されたしっとりとした感もまた名品たるゆえん。

「クローブの桂皮のようなスパイシーで甘みのある香りが、バナナチップスの香りをさらに引き出し、昇華します。また、飲むに連れ、しっとりとまろやかなバナナチップスの優しい甘さはより際立ち、きれいに両者をつないでくれます」と外山氏。

ノンアルコールのペアリングの奥深さを感じさせてくれる、これぞ提案型のスタイルです。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

創業明治10年の『マルモ森商店』が運営する茶専門店『chagama』の『焙じ茶+クローブ』。「変わる形、変わらぬ心が魅せる味」をモットーにお茶を表現する。

『かたすみ』の『COPECO』ドライフルーツバナナ。特に国産フルーツにこだわり、それに加工やパッケージを「+足す」を表現し、「果+実(かたすみ)」という社名に。ドライフルーツバナナは、都内初展開。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエに転身。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』)のマネージャーに就任。2018年より調布市にある『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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石川県が育んだ山海の饗宴。出合うことのなかった近くて遠かった味と味を結ぶ。[和光アネックス/東京都中央区]

アルコール度数が低く、優しい甘みを持つ『吉田蔵 石川門』と『食べる海藻図鑑セット』の食感、ほど良い粘り気が口の中で見事に合わさる。セットは、めかぶ、軸、葉と3種用意。日本酒も海藻も同じ石川県産のため、土地を感じながら楽しむのも一興。

WAKO ANNEXテンションが合う! 香り、味、そして食感の感動。

『吉田酒造店』の『吉田蔵 石川門』と『しら井』の『食べる海藻図鑑セット』の合わせを提案するのは、第14代酒サムライであり、自身のお店『GEM by moto』を営む日本酒ソムリエの千葉麻里絵さんです。

石川県のオリジナル酒米「石川門」は、とても繊細で割れやすく、造り手泣かせの酒米です。しかし、醸された日本酒には、寄り添うような優しい甘味があり、飲むと穏やかな気持ちにさせてくれます。

「7年前に始まった私たちの改革の第一歩目はこの石川門の良さを最大限に表現すること。私たちの酒造りはこの石川門と共に成長してきたと思っています。石川県で一番繊細なお米からできた優しい味わいのお酒です」とは、蔵元の言葉。

2021年11月に新たなスタートを迎える『吉田蔵』は、蔵のある美しい自然を表現し、共存していけるお酒を目指しています。

山や海から届く爽やかな風、暴れ川という異名を持つ手取川が作った力強い大地、霊峰白山からの美味しい雪解け水、そして一瞬にして心を奪うほど美しい空。新しい『吉田蔵』は この美しい自然をそのまま表現するために全て地元石川の素材を使用し、化学的な物は一切使用しないナチュラルな お酒に仕上げられているのです。

そんな『吉田蔵』の日本酒に合わせるのは、『しら井』の『食べる海藻図鑑セット』。同じ石川県のものです。

『食べる海藻図鑑セット』は、創業90年の昆布専門店『しら井』が安心安全を心掛けて作った製品。世界農業遺産に認定されている能登の海女素潜り漁で刈り取った貴重な天然わかめを軽いスナックに仕上げ、これまでになかった昆布のカタチに。

その味わいは、少々の塩と砂糖のみ。余計なものは一切使用していません。サクサクとした軽い食感はお子さまのおやつにはもちろん、カロリーが気になる方にも是非おすすめしたいひと品。

「『吉田蔵 石川門』は、アルコール度数が低く、お酒が苦手な方でも気軽に飲めるテーブル日本酒。それと『食べる海藻図鑑セット』の魅力、海藻が持つ優しい味わいがマッチングします。図鑑というだけあり、海藻は3種を用意。各々、食感が異なり、それもまた楽しい。サクサクと軽いのでアルコール度数のテンションと合っています」と千葉さん。

ご自宅でもお呼ばれの場でも、会話に花が咲くことは間違いなし。特に『食べる海藻図鑑セット』を口に入れた瞬間、その食感に誰もがびっくりし、感動の言葉を発するでしょう。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

『吉田酒造店』の玄関にやってくるつばめを幸せのシンボルとしてラベルに描いた『吉田蔵 石川門』。本数限定にて販売。

図鑑というネーミングらしく、デザインや同封される解説も秀逸な『しら井』の『食べる海藻図鑑セット』。都内店舗では、『和光アネックス』地階グルメサロンが初展開。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

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上級者の合わせか!? 魚のペアリング概念を覆す、未開拓の領域へ。[和光アネックス/東京都中央区]

宮城県『及川商店』の『骨までおいしい焼き魚シリーズ』と新潟県『エル・グリーン ファーム』の『gohoubiカベルネジュース』のペアリング提案をしてくれたのは、ドリンクディレクターを務める外山博之氏。その名の通り、「骨までおいしい焼き魚」のため、食感も柔らかくふわふわ。意外!?と思われるカベルネジュースとの合わせは、ぜひ試していただき、その感動を味わっていただきたい。

WAKO ANNEX魚と葡萄。余計なものは一切いらない。だから美味しく合わさる。

魚は、その種類に関わらず、独特の香りを兼ね備えています。合わせるドリンクは、アルコールであれば日本酒や焼酎、白ワインやシャンパンが主流かもしれません。ノンアルコールであれば、多くの人がお茶を想像するでしょう。

しかし今回、その固定概念を覆す提案をしてくれたのは、東京都調布『Maruta』ほか、様々なドリンクディレクターを務める外山博之氏。

宮城県『及川商店』の『骨までおいしい焼き魚シリーズ』に合わせたのは、新潟県『エル・グリーン ファーム』の『gohoubiカベルネジュース』です。

「葡萄ジュースの濃厚な旨味、サバ・鮭のしっかりとした旨味を共に味わうことで、それぞれの味が口の中でつながり、最終的に優しい後味になります。特に、鮭の香りがカベルネ・ソーヴィニヨンの持つ香りときれいに調和します」と外山氏。

『及川商店』の魚は、最高の素材・鮮度・美味しさをそのままに、旬の魚を急速冷凍。水揚げされた魚を、次世代の凍結技術といわれるプロトン急速凍結することで、食品・食材の鮮度や美味しさを閉じ込めています。ゆえに「骨まで食べられる」のです。

もちろん、無添加・無着色。常温で保存が利くため、保存食・防災食としても最適とされています。

それに合わせるのは、『gohoubiカベルネジュース』です。

雪深い新潟県南魚沼市で育てられたワイン用葡萄カベルネ・ソーヴィニヨンだけを搾ったジュースは、生食用の甘い葡萄とは全く異なり、ワイン葡萄独特の渋みと香りも楽しめます。

「そこが魚と合う」と外山氏。

『骨までおいしい焼き魚シリーズ』同様、『gohoubiカベルネジュース』も無添加に加え、無加糖。余計なものは一切ありません。
美味しく健康に調和するペアリングをぜひお楽しみいただきたい。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

2008年より葡萄栽培を始めた『エル・グリーン ファーム』。南魚沼産のカベルネ・ソービニィヨン100%は、雪国ならではのエグ味の少ないさわやかなミディアムボディ。

宮城県・前浜で揚がる豊富種類な魚の『骨までおいしい焼き魚シリーズ』。無添加で骨まで柔らかいため、子どもにも高齢者にもおすすめ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエに転身。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』)のマネージャーに就任。2018年より調布市にある『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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みず菜全国普及の立役者。茨城県行方市でみず菜栽培をはじめた生産者の挑戦。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・みず菜/茨城県行方市]

行方市のみず菜生産者・野原浩氏の畑を訪問する神保シェフ。愛用するみず菜のおいしさの秘密に興味津々。

なめがた ベジタブルキングダム生産量全国トップ。約20年前にはじまった茨城県のみず菜栽培。

冬場の鍋からパスタ、サラダまで幅広い用途で人気のみず菜。古くから愛される伝統的京野菜ですが、現在の生産量日本一は茨城県。とくに行方市は、いちはやく大量栽培に取り組み、関東へのみず菜普及に多大な役割を果たしてきました。

そんな関東におけるみず菜のトップランナーという誇りから、行方産みず菜が広く知れ渡った現在でも、生産者の間では日々品質の維持、向上のための試行錯誤が繰り返されています。

そんな生産の現場を、いばらき食のアンバサダーを務める『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフとともに訪ねました。

取材班を出迎えてくれた野原浩氏は、2005年に市町村合併により行方市が誕生する以前、この地が北浦町だった頃からみず菜栽培に取り組む生産者。みず菜栽培のパイオニアとして、試行錯誤を繰り返しながら品質向上に努めてきました。

「すべては土。栄養もおいしさも、土が決めるんです」

と野原氏。水耕栽培もできるみず菜ですが、やはり良い土にしっかりと根を張って栄養を汲み上げることで、おいしさや食感が変わってくるのだといいます。

「別に普通のことやってるだけだよ」

そう笑う野原氏ですが、これはきっと口下手でシャイな行方気質から。その証拠に、畑で採れたてのみず菜を試食した神保シェフが「うまい!」と漏らすと、我が子を褒められたかのように相好を崩しました。

【関連記事】伝統的京野菜から全国区の人気者に。みず菜の普及と行方市の果たした役割。

折れた茎を選り分けながら丁寧に収穫。美しい見た目もみず菜の大切な要素。

畑で採れたてを味見。日頃から知るみず菜の味でも、採れたてはまた格別。

野原氏はみず菜のほかにパクチーも栽培。現在は息子も畑を手伝い親子で野菜づくりに勤しむ。

なめがた ベジタブルキングダムおいしさの決め手は土。味も見た目も左右する繊細な土づくり。

まず神保シェフが注目したのは、抜いたみず菜の根。

「これだけ根が長いのは、土が柔らかいから。エグみがなく、うまみがあるのも、よっぽど丁寧に土づくりをされている証だと思います」

そんな称賛を寄せる神保シェフに、野原氏は土づくりの詳細を説明します。曰く、マッシュルームと籾殻を混ぜた堆肥を使用すること。農薬は極力使わないこと。窒素を減らすこと。

神保シェフの的を射た質問が、野原氏の口を滑らかにするのでしょう。専門的なみず菜栽培の話で盛り上がります。

みず菜の収穫は年に約6回。夏場は30日ほどで成長しますが、2作に一度は堆肥を入れて、いつでも同じ品質になるよう努めているのだとか。収穫後は袋詰めの作業ですが、見た目の美しさもみず菜の大切な要素。折れた茎を除け、サイズを揃え、丁寧に袋詰めしてから、真空予冷をかけてようやく出荷に至ります。

大きな体の野原氏ですが、みず菜栽培は非常に繊細な作業。行方産みず菜は評価が高く、売れ行きも良いことから、みず菜部会の平均年齢は比較的若く、後継者も育っているのだといいます。

生育の早いみず菜は年に約6回の収穫。品質を安定させることも、生産者の課題。

栄養豊富で柔らかい土。丹精込めた土づくりが、みず菜の味を左右する。

これだけしっかりとした根を張るのは、土が柔らかく栄養を含んでいる証拠。

なめがた ベジタブルキングダム行方産みず菜のおいしさを、手軽なレシピで引き出す。

「みず菜はアブラナ科の京野菜で、シャキッとした食感と爽やかな風味が特徴。クセが少なく、生でもおいしい。さまざまな料理に使える野菜です」

すでに自身の店で行方産みず菜を使用している神保シェフにとって、このみず菜は慣れ親しんだ味。

「カニと合わせたトマトパスタに使用しています。カラスミとの相性も良いですね。葉はサラダに、茎は浅漬けにしてもおいしい」

とさまざまな調理法を教えてくれました。
そこで今回は、家庭でも作りやすい手軽なレシピをオーダー。手軽さの中にもシェフの技が光る絶品みず菜レシピ、その詳細は次回の記事をお楽しみに。

鍋物をはじめ、洋食や中華料理でも使用されるみず菜。飲食店への出荷も多い。

角が立ち、しっかりと広がった葉。爽やかな風味とシャキッとした食感が魅力。

野菜の話を通して、たちまち生産者と意気投合する神保シェフ。取材では、もはやおなじみの光景。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

伝統的京野菜から全国区の人気者に。みず菜の普及と行方市の果たした役割。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・みず菜/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

今日では、どのスーパーの店先にも並ぶおなじみの野菜・みず菜。しかし思い返してみると、関東以北で30代以上の方は、幼い頃にみず菜を食べた記憶はあまりないかもしれません。

実は伝統的京野菜のみず菜が全国に普及したのは、いまから20年ほど前のこと。そしてその普及の立役者こそ、いちはやく大量栽培に乗り出した行方市だったのです。現在、みず菜の出荷量は茨城県が全国1位。もちろん、野菜王国・行方市でも、日々おいしいみず菜が生産されています。

そこで今回の『NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM』のターゲットは、みず菜。すでに自身の店でも行方産みず菜を使用しているという『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフとともに産地を訪ねます。

シャキシャキの食感と爽やかでクセのない味わいから、さまざまな料理に重宝するみず菜。一大産地でそのおいしさの秘密に迫ります。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

ついに完成。もう一度立ち上がった酒職人・松本日出彦。

地元でもある京都伏見にて自身の蔵『日々醸造』を構えることになった松本日出彦氏。1月末にリリースされるボトルを持って。

HIDEHIKO MATSUMOTOひとりの「武者修業」から、チームの「武者修業」へ。

振り返ること、2020年12月。

自身の蔵元である『松本酒造』を父親とともに去ることになってしまった松本日出彦氏。

以降、心を閉ざしてしまった時期もありましたが、そんな時に「酒造りをやめるな。蔵がないなら一緒に酒造りをしよう」と松本氏に手を差し伸べたのは、5つの蔵元でした。

それは、「No.6」を手掛ける秋田『新政酒造』、「仙禽オーガニックナチュール」を手掛ける栃木『仙禽』、「七本鎗」を手掛ける滋賀『冨田酒造』、「田中六五」を手掛ける福岡『白糸酒造』「産土(うぶすな)」を手掛ける熊本『花の香酒造』。

松本氏は、それぞれの蔵で酒造りに参画。この行為を「武者修業」と題し、期間中、無心で日本中を駆け巡りました。

でき上がった酒は、「別誂」として各蔵よりリリース。飲食店では入手困難、酒販店では即完売と瞬く間に市場から姿を消す盛況を成しましたが、同時に松本氏は自身の蔵を創設することにも励んでいました。

酒蔵は、代々続く一族経営が多いため、新規参入は至難の技。加えて、酒造免許取得においては極めて困難。一筋縄にはいきません。

しかし、ありとあらゆる手を尽くし、環境を整えるも、今シーズンよりスタートしたかった秋に蔵の完成は間に合いませんでした。

そんな時、また手を差し伸べてくれたのは、あの時の仲間でした。

「蔵がないなら一緒に酒造りをしよう」。

前回とは全く異なる向かい入れとなった今回の違いは、大きく3つ。

ひとつ目は、先が見えなかった松本氏ではなく、酒造りへの一歩を踏み出せた松本氏であること。

ふたつ目は、各蔵の酒造りに参画するのではなく、自身の蔵でも使用する兵庫県東条の山田錦を持ち込み、自身の酒を造らせてもらうということ。昔の「桶買い」、「桶売り」に近いかもしれませんが、厳密には「桶借り」が正しい表現かもしれません。

そして、三つ目は、ひとりではないこと。松本氏の酒造りを共にしたいと集まった有志がいるということです。

前向きに始まった「武者修業」の第2ラウンドは、そんなチームの物語。その名は、京都を拠点に構えた『日々醸造』。

『日々醸造』として最初にリリースされるのは、1月末に『白糸酒造』で醸した生酒(右)、2月に『富田酒造』の蔵で醸した酒(左)。その後、3月に『花の香酒造』、4月に『仙禽』と続く。少量は少なく、ほぼ小売には流通しないため、ぜひ飲食店にてお楽しみを。

 『日々醸造』のスタッフは、松本氏を含め、計5名。左より近野丞悟氏、辻井 亮氏、松本氏、上田幸治氏、山口和真氏。

HIDEHIKO MATSUMOTO「日々醸造」×「武者修業」、2022年1月末リリース!

今回、『新政酒造』においては全量秋田産にこだわるため、ほか4蔵において『日々醸造』×「武者修業」の日本酒がリリースされます。

それぞれ酒造りの時期が異なるため、五月雨式にリリース。まず先陣を切るのは1月末、『白糸酒造』にて醸した生酒です。

「ファースト“ブリュー”ではないけれど、ファースト“リリース”である事実は、この先においても事実として残る。日出彦さんたちの未来を担う第一歩、第一本になるものにどうお手伝いできるのか。それに対して真剣に取り組みました。ただ、難しいことは考えず、日出彦さんとまた会えるのは、純粋に嬉しいし、楽しい。京都で酒造りをしなくても、まだずっとうちで酒造りをしてもらってもいいのに(笑)」と『白糸酒造』8代目杜氏の田中克典氏。

「日出彦さんとまた会えるのは、純粋に嬉しいし、楽しい。京都で酒造りをしなくても、まだずっとうちで酒造りをしてもらってもいいのに(笑)」と『白糸酒造』8代目杜氏の田中克典氏。

現在、『白糸酒造』では、松本氏の恩師でもある勝木慶一郎氏が顧問を務めており、仕込みのために訪れた某日において再会を果たします。

「松本さんのエネルギーはすごいです。火山に例えれば、眠っていた状態が噴火したような。今回の件は、離れないと経験できなかったことも多かったと思います。加えて、受け入れた蔵にとってもプラスに働いたことが多かったでしょう。結果として外的要因からこうなってしまいましたが、このような機会は、これからの日本酒業界には必要なのかもしれない。蔵元というのは、細い糸のようなものなんです。それぞれが一本一本強くし、縒り合わせ、縦糸にし、農家さんや米、地域という横糸とともに大きな織物にしてほしい。今回の『武者修業』という経験を通して、どう実を結べるかは松本さん次第。期待しています」と勝木氏は松本氏へエールを寄せます。

そして2月にリリースされるのは、『冨田酒造』にて醸した酒。

「人生の中でも新たなスタートを切れることはなかなかありません。前回とは異なり、今回は『日々醸造』として新たな仲間とともに(松本)日出彦君と再会できたことを嬉しく思います。一方、自分の中の心境としては、前回よりも今回の方が圧倒的に責任は重い。日出彦君と『日々醸造』の将来がかかっていますから。自分のところの酒造り以上に気が引き締まりました」と『冨田酒造』15代目蔵元の冨田泰伸氏。

そして、3月に『花の香酒造』、4月に『仙禽』と続きます。

「振り返れば、日出彦さんの『武者修業』でしたが、自分が修業させてもらった感じです。今回は、前回と異なり、日出彦さんの造りを間近で見ることができました。自分だったら絶対にしない造り。発酵経過の取り方、醪の算段、全て違う。こんな味は出せない。荒走りを飲んだ時にそう思いました。あぁ、これが日出彦さんの味かぁ……と。これから京都で造る味が楽しみで仕方ないです。そして、自身の蔵ができるのは本当に嬉しい。最初の造りにはぜひ参加したい(笑)」と『花の香酒造』6代目の神田清隆氏。

そして、「もう一度、日出彦が自分の日本酒を造ることを信じている。1日も早く安住の地を見つけてほしい」と話していた『仙禽』蔵元の薄井一樹氏は、まず前回の「別誂」から振り返ります。

「酒販店から殺到した注文数、各飲食店での盛況、店舗での即完。その結果に安堵しています。これは、日出彦がまだこの業界に必要とされているという証拠。率直に嬉しい。そして、自身の蔵を創設し、まだ建物こそないものの、想像以上に早いスピードでここまで持ってくるのはさすが日出彦。おめでとうと言いたいところですが、同時に安心慢心は禁物。初心を忘れずに前に進んでほしい。そして、何より笑顔が増えて良かった。今回においては、戦友として迎えられたのも嬉しかった」と一樹氏。

「酒造りをしていると過程を大事にしたくなるのですが、一番はお客様に飲んでもらうこと。そういう意味では『別誂』が完売したという結果は本当に嬉しい。今回は、『日々醸造』の皆さんにお越しいただいて、日出彦さんがひとりで来た時とは全く違う雰囲気と酒造り。蔵の創設は、自分のことのように嬉しい。今度は逆に自分が学びにいきたいです」と杜氏の薄井真人氏は言葉を続けます。

「最初にリリースする『白糸酒造』さんで造らせていただいたお酒も『冨田酒造』さんで造らせていただいたお酒も、それぞれ自分の米を持ち込んで自分の仕込み方でやらせていただきました。しかし、異なる水と環境ゆえ、同じ味にはなりません。改めて、水の豊かさ、米の力、延いては日本の自然の素晴らしさを再確認いたしました。これまで自分が経験したことをスタッフも同じように経験させてもらえたことは、本当に財産だと思っています」と松本氏。

造ったお酒はいずれなくなります。しかし、経験が失われることはありません。ましてや、ほかの誰かが奪うこともできません。

4蔵の『日々醸造』×「武者修業」のあと、いよいよ自身の蔵での酒造りが始まります。

2022年1月、『白糸酒造』にて。「うちのスタッフの中に、実は田中さんのもとで酒造りをしたいと思っていた人もいたんです。今回はそれを間近で体験できて喜んでいました。これがハネ木か!と驚いてました(笑)」と松本氏。

「ちゃんと自分の場所を作れて本当に良かった。あれからまだ1年も経ってないなんて信じられないですね」と、ハネ木搾りに勤しむ松本氏を見守る『白糸酒造』8代目杜氏の田中克典氏。ともすれば「酒袋の向きが逆!」と檄を飛ばす田中氏に「すみません!」と松本氏。付き合いの長いふたりらしいかけ合い。『日々醸造』と『白糸酒造』の「武者修業」は、2022年1月末にリリース予定。

 「松本さんや田中さん、そのほか『武者修業』に携わった蔵元の方々、同じ志を持った造り手が同じ時代に酒造りをしているのは奇跡だと思います。みんなで日本酒業界を引っ張ってほしいと思います」と話す松本氏の恩師・勝木慶一郎氏。現在は『白糸酒造』顧問を務める。

2021年11月、『冨田酒造』にて。前回は、滋賀の米・玉栄で切り返しを行うも、今回は、兵庫県東条の米・山田錦にてそれを行う。

2021年3月、『冨田酒造』から始まった「武者修業」。当時、決意表明も含め、タンクにサインをした松本氏。今回は、『日々醸造』として再訪した証として記録。

江戸期に建てられた『冨田酒造』の酒蔵は、登録有形文化財でもある。「各蔵を周り、酒造りに参画することは、きっと『日々醸造』のスタッフにとって良い経験になると思います」と言葉を寄せる『冨田酒造』15代目蔵元の冨田泰伸氏(左)。
『日々醸造』と『冨田酒造』の「武者修業」は、2022年2月にリリース予定。

2022年1月、『花の香酒造』にて。搾りの味を確認する松本氏と『花の香酒造』6代目の神田清隆氏。「うん、イメージ通りになっている。山田(錦)の味になっている」と松本氏。

透き通るように美しい搾りたての酒は、香りも豊か。『日々醸造』と『花の香酒造』の「武者修業」は、2022年3月にリリース予定。

2021年4月に『花の香酒造』を訪れた前回と大きくことなることは、産土(うぶすな)の自然農法・馬耕栽培の実現に向け、在来馬・菊之進が仲間に加わったこと。愛らしいその姿に松本氏もすっかり虜に。

「確か日出彦さんに会いに行ったのは2021年1月でしたよね。京都駅のホームで色々話して……」と神田氏。「そうでしたね……、神田さんのお声がけから全てが動き出しました。感謝しかありません」と松本氏。

2021年12月、『仙禽』にて。「『仙禽』さんの酛擦りの辛さは、『日々醸造』のみんなに経験してほしかったこと」と松本氏。前回はひとりで苦しむも、今回はすぐ側に仲間がいる。その安堵感が表情にも現れる。

酛摺りを終え、疲れはあるも充実感に満ちた『日々醸造』の面々。「現代において新たに酒蔵を創設することは、自分の知る限り初めて。その行動力と実行力は、本当に素晴らしい」と杜氏の薄井真人氏(左)。「次に再会する時は、日出彦の蔵かな? 楽しみにしてます」と『仙禽』蔵元の薄井一樹氏(右)。『日々醸造』と『仙禽』の「武者修業」は、2022年4月にリリース予定。

HIDEHIKO MATSUMOTO5月に向けてエンジン全開。日々、酒と向き合い、日々、精一杯生きる。

2022年1月某日。『日々醸造』は朝から忙しく、『白糸酒造』と『冨田酒造』で醸した酒が次々と運ばれてきます。仕上がった酒をスタッフとともに試飲。皆で意見交換をします。

水、米、麹、もろみ、発酵、香り、舌触り、余韻……。一頻り議論を交わした後、ひとりになった松本氏はひと言。

「どうにか一年間生きることができた」。

心の底から湧いたひと言だったに違いありません。

一年前のあの時、一年後の今の状況を誰が想像できたでしょうか。蔵の創設、自身の酒造り信じてくれる仲間との出会い、そのみんなと造った酒を地元・京都伏見で飲める喜び……。

「言葉では伝わらないこともあります。体で感じるしかない。学ぶしかない。その体験がこれからの人生の宝になる。今まで以上に酒に向き合いたい。造りの幅は確実に広がっている。ゼロだからできる。これまでも想像を絶することが多くありましたが、これからも色々なことがあると思います。ただ、今はひとりじゃない。だから、信頼できるチームのみんなと乗り越えていきます。不安はない。やるべきことは明確に見えている。日本酒というものが社会とどう関わっていけるのか。今までお世話になった方々に、精一杯、恩返ししていきたいと思っています」。

松本日出彦らしく、『日々醸造』らしく。

冒頭、「ついに完成」と謳うも、本当の意味で自身の蔵から醸される酒が完成するのは、2022年5月。

さぁ、いよいよだ。
 

2022年1月、『日々醸造』にて。『白糸酒造』の生酒と『冨田酒造』の酒を試飲。新たなチームの第一歩、初めてできた酒は、様々な課題はあるも、皆で4蔵を回って酒造りをともにした時間と経験の方がこれから大きな財産になるはずだ。

京都伏見に建設中の『日々醸造』。古屋と新設を合わせ、これから酒造りに励む。『日々醸造』×「武者修業」は、エピローグに過ぎない。本当のスタートは、これからだ。

住所:京都府京都市伏見区城通町628
https://sake.inc

1982年生まれ、京都市出身。高校時代はラグビー全国制覇を果たす。4年制大学卒業後、『東京農業大学短期大学』醸造学科へ進学。卒業後、名古屋市の『萬乗醸造』で修業。以降、家業に戻り、1791年(寛政3年)に創業した老舗酒造『松本酒造』で酒造りに携わる。2010年、28歳の若さで杜氏に抜擢される。以来、従来の酒造りを大きく変え、「澤屋まつもと守破離」などの日本酒を世に繰り出し、幅広い層から人気を集める。2020年12月31日、退任。酒職人として第二の人生を歩む。

Photographs&Text:YUICHI KURAMOCHI

統括編集長・倉持裕一が振り返る、2021年の『ONESTORY』。

想像以上に長いコロナ禍。メディアを沈滞させた決断。

2020年2月。この時期を皮切りに、新型コロナウイルスという言語が一気に日本中を騒がせました。当時、まだその実態が分からず、死に追いやる感染病として国民の恐怖心は加速し、同時に経済も破綻。『ONESTORY』も例外ではなく、『DINING OUT』を含め、さまざまなプランは全て白紙に。

コロナ禍以前に取材した記事も遅延に遅延を重ねる結果になってしまいました。『エタデスプリ』、『グラン・ブルー・ギャマン』、『レヴォ』などがそれです。

すでに取材したのであれば、痺れを切らして公開する選択もありましたが、日本は緊急事態宣言や自粛の真っ只中。これらの記事をきっかけに、県をまたぐ移動の加担やそれによって感染者を出してしまったら、はたまたもっと最悪の事態を招いたらというメディアとしての責任を強く感じました。

誰もが情報発信できる今だからこそ、メディアの役割は重大だと認識しています。個人とメディアは、異なるものだと考えます。大袈裟に言えば、日本だけでなく世界が難局と対峙する中、活発な記事の更新は、社会に不要だと思ったのです。結果、メディアを沈滞させる決断をしました。

過去の振り返り記事において、自分は取材で出会った方々をこのように綴っていました。

―――
「働く姿」ではなく「生きる姿」、「仕事」ではなく「人生」を目の当たりにしてきたような気がします。
―――

今まさに我々において、それが問われている。そう感じました。

メディアやイベントではない別のカタチを持って自分たちにできることは何か。地域に貢献できることは何か。社会の一員になれることは何か。

それに向かって走り続けた1年となりました。
 

「ハレ」だけではない。「ケ」と向き合う覚悟。

前述、自分は過去の振り返り記事において、このようにも綴っています。

―――
まだここでは発表できないプロジェクトを水面下で進めています。それもまた、イベントでもメディアでもないカタチのものです。
『ONESTORY』は、既成概念にとらわれることなく、時代と目的に合った表現をより強固にしていきます。カタチのないカタチ、その活動体が『ONESTORY』です。
―――

そのカタチのひとつは、2021年に発表できた長野県塩尻市の奈良井宿における『杉の森酒造』プロジェクトでした。

中山道に位置する奈良井宿は、「木曽の大橋」のかかる「奈良井川」沿いを約1kmにわたって形成している日本最長の宿場です。そんな風景の中に200年以上も町のシンボルとして存在し続けていた場所が『杉の森酒造』でした。長い歴史に幕を下ろしたのは、2012年。以降、時は止まったままでしたが、2021年に『BYAKU -Narai-』として新たに息吹を取り戻しました。

酒蔵も復活させ、宿泊施設、温浴施設を備える中、我々はかつて蔵だった場所をレストランとバーにするプロジェクトに参画。そこでは、さまざまな学びがありました。

地域との共生、その魅力を伝えるなどは、これまでメディア及びイベントでも実践してきましたが、大きな違いはカタチとして「場」が残り続けるということです。

例えば、『DINING OUT』であれば、2日(準備期間を除く)。言わば「ハレ」の日です。しかし、1年を通して見れば、残り363日「ケ」の日があるのです。

カタチとして、「場」として、残り続ける関わりには、この「ケ」といかに向き合うかが大事になってきます。

そして、もうひとつのカタチは、銀座『和光アネックス』地階グルメサロンのリニューアルプロジェクトへの参画です。『ONESTORY』は、本件のプロデュース及び商品のキュレーションに携わりました。

日本全国に眠る知られざる名品の発掘や商品開発、季節の商材、ソムリエや唎酒師たちとの企画などを展開。その好例は、酒職人・松本日出彦氏による「武者修業」シリーズでした。発売当日に完売という結果を残すこともできましたが、やはり本件においても重要なことは「ケ」との対峙。

完売した1日ではなく、残りの364日。イベントのあった1週間ではなく、残りの358日。「カタチ」のある場、地域、もの、こと、人と向き合うことは、そんな日々と向き合い「続ける」ことなのです。

それぞれ準備期間に数年を有し、ようやく具現できた2021年。弊社代表・大類知樹と一番議論したテーマが、この「ハレ」と「ケ」でした。
 

ONESTORYのやり方でONESTORYらしく。

未だコロナ禍の尾を引いたまま2022年を迎える。

我々もさまざまな変化に順応していかなければいけません。テクノロジーの進化も手伝い、そのスピードは、日に日に加速しています。

しかしながら、大地や海から生まれるものや植物、季節の訪れなど、地球の動きに時短や効率はなく、一足飛びに何かを成し得ることはできません。

つまり、物事が生まれる正しい時間の見極めが必要だと考えます。「命」の時間です。

我々は、表現者として、活動体として、何ができるのか。そして、人としてどう生きるべきなのか。

その解は、そう易々と得ることはできませんが、波に呑まれず、『ONESTORY』のやり方で『ONESTORY』らしく、自分たちにできる最良の道を歩んでいきたいと思います。

そして、2021年も多くの読者様、取材先及び地域の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて、出会った全ての方々に深く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

どんなに時代が変わろうとも、『ONESTORY』は、まだ見ぬ日本の感動を探し続けます。

それでは、日本のどこかでお会いしましょう。画面上ではなく、どこか大切な場所で。

2022年、そんな出会いが叶う一年になることを願います。

『ONESTORY』統括編集長・倉持裕一

“わさび”といえばこの料理。わさび菜のピリ辛を生かす簡単ちらし寿司。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・わさび菜/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダム辛味、食感、色味。全てを引き立てるシンプルな料理。

茨城県行方市を訪ねた『HATAKE AOYAMA』の神保シェフが、今回出合った食材はわさび菜。現地のハウスで採れたてを試食したシェフは、「シャキシャキの食感、鮮やかな色、ピリッとした辛さの全てが生きるメニューを考えたい」と決意していました。

その後、神保シェフのもとには試作用のわさび菜が到着。改めて試食し、「葉はもちろん、茎も美味しいですね。この食感と辛味は、やはり“あの料理”で生きるでしょう」とにやり。そして教えてくれた料理は、ちらし寿司でした。

「やっぱり“わさび”といえば寿司ですからね。少し工夫することで、わさび菜の魅力を引き出します」と自信をみせるシェフ。そのポイントは、葉と茎に分けてそれぞれ下処理をすること。これにより軽やかな食感を生かしつつ、わさび菜の魅力である辛味を引き出すのだとか。ではさっそくレシピを見てみましょう。

【関連記事】歴史は浅くも、こだわりは強い。シャキっと食感でピリッと辛い、行方市のわさび菜。

材料はいたってシンプル。ただし梅肉は塩辛すぎない南高梅、ごはんは炊きたてを揃えたい。

なめがた ベジタブルキングダムわさび菜とツナのちらし寿司

材料(2人分)
わさび菜 1パック
ツナ缶 1缶
たたいた梅肉 50g
炊き上げた白米 2合分
(A)
 米酢 大さじ3杯
 砂糖 大さじ2杯
 塩 小さじ4分の1杯
 白炒りゴマ 少々
 刻み海苔 適量

手順
1.  わさび菜は水で洗って葉と茎に分け、葉は5分ほど水に漬けてから千切りに、茎は薄くスライスしてひとつまみの塩(分量外)で塩もみし、5分ほど置いておく
2.  塩もみした茎の塩気を水で洗い流す
3.  (A)を合わせてすし酢を作り、炊きたてのごはんに入れて切るように混ぜ、酢飯を作る
4.  3.の粗熱が取れたらたたいた梅を入れて混ぜ、続いてツナ缶を汁ごと入れて混ぜる
5.  更に冷めてから2.のわさび菜の茎を入れて混ぜ、次に葉を2回に分けて投入し、しっかりと混ぜる
6.  器に盛り付け、白ゴマ、刻み海苔をふりかけて完成
わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。 わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。

わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。

水から上げた葉はしっかりと水分を取り、空気を含ませるように刻んでいく

わさび菜を混ぜるのは酢飯の粗熱が取れてから。温かいままだと食感が損なわれてしまう。

シャキシャキの食感と鮮やかな緑が目を引くちらし寿司が完成。もちろんお好みの刺し身などを合わせても美味しい。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

歴史は浅くも、こだわりは強い。シャキっと食感でピリッと辛い、行方市のわさび菜。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・わさび菜/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

茨城県行方市は、年間80品目以上の野菜をはじめ、肉や魚まで、幅広い食材を産出する食材王国。我々ONESTORYは、その秘密や魅力的な食材を探るため、いばらき食のアンバサダーを務める『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフとともに、行方市を訪ねました。

今回のターゲットは、わさび菜。
アブラナ科の葉物で、その名の通りわさびのような爽やかな香りと、ピリッとした辛味が特徴。数々の野菜を生産する行方市ですが、実はわさび菜の歴史はそう長くなく、高齢者や兼業農家向けの作物として2005年に導入されたことが起源。しかしそこから行方市特有の温暖な気候や、研究熱心な生産者の努力が実を結び、わずか15年ほどで行方市を代表する農産物のひとつとなったのです。

産地を訪ねた神保シェフも、行方市のわさび菜を絶賛。「この爽やかな香りと食感を活かすメニューを考えてみたいですね」と、すでに頭の中でレシピの構想を練り始めた様子でした。そんな神保シェフと訪ねたわさび菜産地巡礼の様子をお伝えします。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

日常の延長線上にある穏やかな時間。暮らすように滞在する、新潟の古民家宿。[里山十帖 THE HOUSE/新潟県南魚沼市]

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築150年の古民家は、まるでもうひとつの邸宅。『里山十帖 THE HOUSE』での「暮らし」を楽しみたい。

里山十帖 THE HOUSE何もしない時間を楽しむ。そんな過ごし方を肯定する宿。

多くの場合、旅のプランの第一歩は宿を決めることから始まります。つまり旅の目的地は宿です。しかし考えてみると、旅において宿に滞在する時間は思うよりも短いもの。ならば宿には、何が求められるのでしょうか。

今回ご紹介する宿は、そんな疑問に答えを出してくれるかもしれません。宿の名は『里山十帖 THE HOUSE』。名宿『里山十帖』の離れとして誕生した1日1組限定の古民家宿です。 

南魚沼の市街を過ぎて街道を折れ、山道をしばし進むと、現代的な装いの中に積み重ねた時間の長さを隠す古民家が現れます。築150年。長い間、豪雪に耐えてきた重厚感は、モダンなリノベーションを経ても褪せることはありません。 

室内に入り荷をほどいたら、まずは窓に向いたチェアで一息。窓外に見えるのは、先ほど走ってきた街道です。この景観と、それを眺める時間こそが、この古民家宿の醍醐味のひとつ。遠くに望む道路に車が行き交う。車は誰かの人生を乗せて、走る。その人生に思いを巡らせながら、時間が過ぎる。無為な時間のようでいて、実は豊かな時間。「せっかくの旅だから何かをしなくては」という思い込みは、この宿には無縁です。 

夕食は迎えの車に乗って、本館である『里山十帖』まで。木の温もり溢れるダイニングで、これもまた豊かな食事が始まります。

「魚沼の四季の移ろい、七十二候に寄り添う料理を心がけています」という料理長の桑木野恵子氏。新潟の山海の幸で織りなす八寸、旬のキノコの葛寄せ、子持ち鮎と自家製梅干しを添えた蕎麦粥。料理には、桑木野氏の思いが込められています。

「せっかく山まで来て頂いたから、本当は山の中で食べて欲しいくらい。だからそれができない分、景色が浮かぶ料理だといいなと思っています。ここに来るまでの道中の風景が浮かぶような」。

そんな気持ちがこもっているからこそ、『里山十帖』の料理は、心に深く刻み込まれるのでしょう。

遠くに望むのは南魚沼の町並み。市街地と田園が自然に調和した現代の里山。

椅子に座り、外を眺めるためだけに設えられたような一室。この部屋の存在が、宿での滞在をゆるやかに彩る。

重厚な梁と柱、囲炉裏とモダンな家具や快適な設備。新旧がバランス良く調和した心地よい室内。

『里山十帖』で味わう夕食の一例。子持ち鮎と自家製梅干しを添えた蕎麦粥。

 地元の素材、地元の調理法をふんだんに取り入れる八寸。料理長・桑木野氏の思いが込められた一品。

南瓜の葛寄せを合わせた茸の椀。郷土の季節感を表現する滋味深い味に、料理長・桑木野氏の思いが宿る。

発酵にも造詣が深い料理長・桑木野恵子シェフ。郷土料理のアイデアも積極的に取り入れる。

里山十帖 THE HOUSE朝日とともに目覚め、炊きたての米を食べる。そんな里山の暮らしを体験。

部屋へ戻ったら、満点の星空を眺めながら露天風呂。絶景のダイニングやテラスも魅力ですが、眠気が訪れたらすぐに寝てしまっても良いでしょう。この宿では、何も特別なことをする必要はありません。

翌日の朝食は部屋食。

しかし部屋にやってくるのはお盆に乗った朝食ではなく、朝食を作る料理スタッフです。部屋に設えられたキッチンで食事の準備。土鍋でごはんが炊ける音、漂う出汁の香り。部屋は幸せな気配で満たされます

「ご飯は炊きたてが一番ですから」スタッフの松浦由奈氏は、さも当然のように笑います。部屋での調理というわずかな時間の差、そこから生まれる満足感を、この宿は何より大切にしているのでしょう。

つまりこの宿が提供してくれる時間は、特別な非日常ではなく、日常の延長線上にある穏やかさなのです。そして旅人が宿に求めるのはきっと、そんな当たり前の時間なのです。

何もしない時間を過ごすことも、すぐに眠ってしまうことも、当たり前のように許せること。心穏やかに、まるで暮らすように滞在する宿。それは旅の目的地としての宿の、正しい形なのかもしれません。

「朝食は、炊きたてのご飯が一番のご馳走。ぜひ、ご堪能ください」と話す、スタッフの松浦由奈氏。

露天風呂からもこの絶景。天気が良い日は見事な星空も眺められる。

 ベッドルーム。古民家の骨格を活かしつつ、快適に過ごせる空間にリノベーションされている。

室内の一角に設えられたダイニング。このキッチンで朝食が準備される。

部屋で調理される朝食の一例。米はもちろん、魚沼産のコシヒカリ。

住所:新潟県南魚沼市天野沢家森山671-1 MAP
TEL:0570-001-810
https://satoyama-jujo.com/thehouse/

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(supported by SUBARU)

自然とともに生きる昔ながらの生活を垣間見る。絶景の棚田を一望するツリーハウス。[星峠宿/新潟県十日町市]

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

星峠の棚田を目下に臨むロケーション。朝、昼、夕、夜、刻一刻と表情を変える自然芸術の絶景に身を興じる時間は、感動を超えた体験となる。

星峠宿300年続く集落に誕生した樹上のキャンプ場。

かの有名な星峠の棚田。

朝靄に煙る情景、柿色の夕焼け、紫の残照に照らされる日没。さまざまなメディアに登場する新潟県十日町市を代表する景観です。そんな星峠に、1日1組限定のツリーキャンプ施設ができました。美しい景色を眺めながらコーヒーを飲み、食事を食べ、眠りにつき、目覚めたることができるという素晴らしい施設をご紹介しましょう。

十日町の市街地を過ぎ山道をしばし進むと、やがて星峠に到着します。最初に目に入るのは、噂に違わぬ絶景です。 高台から見渡す一面の棚田。匂いがあり、音があり、肌に触れる空気がある。写真だけではわからないリアルな絶景です。 

受付に訪れた『星峠宿CHAYA』で、施設のオーナーである粂井貴志氏が出迎えてくれました。学生時代の同級生にここ出身の友人がいた縁で訪れてみて惹きつけられ、やがてこの地に暮らすようになった人物。もちろん、山間の集落に余所者が受け入れられるまでには、幾多のハードルもあったことでしょう。

「もちろん簡単ではありませんでした。最初の数年は“自分がここで何をやりたいか”ではなく、“自分がここのために何ができるか”だけを考えていました」。 と粂井氏は振り返ります。

粂井氏の晴れやかな笑顔は、その迷いのない生き方の象徴。彼との会話も、この施設を訪れる楽しみのひとつ。

星峠の棚田を舞台にツリーキャンプを堪能出来る『星峠宿』。ここでは、移りゆく景色の変化をただ望むことが何よりも特別な体験になる。

200枚の田圃がある星峠だが、手掛けるのは粂井氏を含め9名だけ。2022年には、7名まで減少する。

ツリーハウスの受付を兼ねた『星峠宿CHAYA』。コーヒーやグッズのほか、目の前の田で育った米も販売されている。

4mの樹上に作られたウッドデッキ。道路の一段上から星峠を見渡す、宿泊者のためだけの特等席だ。

粂井氏が精魂込めて育てた星峠の棚田米。品種はコシヒカリ。ミネラル豊富な雪解け水とこの地の土壌により甘み豊かに育つ。

棚田を眺めながら、その地で育った米を炊きたてで味わう。この地の住人にとっては当たり前のことでも、遠来のゲストにとっては何よりのご馳走。

宿泊者専用の風呂小屋も完備。湯船に浸かりながら里山を望むことができる。

星峠宿観光地ではなく住民が暮らす里山だからこその、生きた絶景。

観光地として脚光を浴びた星峠の棚田ですが、ここはあくまで地元住民の生活の場。年々増加する観光客に困っている部分もあったといいます。実は駐車場も公衆トイレも整備された道路も、すべて地元の方の土地を切り取ったもの。道路の整備やトイレの清掃をしても、地元には一銭の収益にならぬばかりか、手間ばかりがかかる。その解決策を次々に提示するうち、やがて粂井氏は集落に受け入れられていったのです。今ではこの棚田に土地を持ち、米も育てる粂井氏。いわば正式に住人として迎えられたのです。

そんな話をしながら粂井氏が、ツリーハウスのデッキへと導いてくれました。 

「集落の人と話し合って、一番の絶景ポイントにツリーハウスを建てました」。

4mの木の上で目に飛び込んできたのは、日本の原風景のようでいて既視感のない、まっさらな里山の風景です。

ただ美しい景色という以上に、この風景に今も血が通い、動き続けている事実が胸に迫ります。300年前の先祖が開墾し、代々それを守り続けているという住民の誇り。記録画像ではなく、進行形で動き続ける生きた絶景。施設では眼の前の棚田で収穫された米も販売されています。この景色を前に、その場所で収穫された米を味わう。それはどれほど豊かで、貴重な経験でしょう。

12月に入るとここは4mもの雪に閉ざされ、施設は雪解けまで閉鎖となります。そんな自然の成り行きに任せる姿も、またこの地の魅力。自然とともに生きる豊かな暮らし。このキャンプ場での体験は、そんな遠い世界のほんの一端を垣間見せてくれます。

雨、風、霧、雪。山間だけに自然の厳しさもあるが、それもまたこの地の魅力。

住所:新潟県十日町市峠728 MAP
TEL:025-594-7600
https://hoshitoge.jp

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

(supported by SUBARU)

日本を走る。日本を旅する。グランドツーリングNIPPON[Grand Touring NIPPON]

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

Main Pageすべての移動を感動に変えるクルマ。

『ONESTORY』は、日本の自動車メーカー『SUBARU』とともに、日本を巡るオウンドメディア「グランドツーリングNIPPON」を立ち上げました。

本企画は、架空の旅人が日本に潜むまだ見ぬ感動を探す旅。忘れがたい旅の紀行を記録に書き留めるツーリングエッセイです。

それは、最果てにある宿かもしれません。
山間で営む小さなレストランかもしれません。
はたまた、目的なく走った先に出合う絶景かもしれません。

ここでは、そんな旅から得た出合いを本メディアより抜粋し、ご紹介します。
 

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

(supported by SUBARU)

水風呂は、日本海。海水浴場の跡地に誕生したサウナで味わう究極の開放感。[サウナ宝来洲(ホライズン)/新潟県柏崎市]

架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

日本の渚百選に入選した風光明媚な鯨波海水浴場。天気が良い日は海の向こうに佐渡ヶ島を望む。

サウナ宝来洲サウナで温まり、浜辺を走り、海に飛び込む。

新潟に海が見えるサウナがある。

そんな噂を聞きつけ、向かった先は、新潟県柏崎市。施設の名は『サウナ宝来洲(ホライズン)』。訪れてみるとそこは、“海が見える”どころではありませんでした。いうなれば海そのもの。道路を挟んで向かいにある『小竹屋旅館』で水着に着替え、水着のまま道路を渡れると、そこがサウナです。

サウナ室に入ると、目線の高さの窓から海を一望。時計とにらめっこしながら「あと5分、あと3分」と我慢するのではなく、ただ海に見惚れていると時間が過ぎていきます。体が十分温まったら、サウナ室を出て浜辺へ。このサウナに水風呂はありません。代わりにあるのが海です。

サウナ室を出て浜辺を走り、そのまま海に飛び込む。火照った肌を冷たい日本海が冷やします。皮膚がきゅっと収縮し、心が溶ける。海水の浮力に任せ、海の上に大の字に浮かべば、波が体をやさしく揺らします。その贅沢な開放感こそ、このサウナの醍醐味です。

体が冷えたら、サウナ室の屋上にあるデッキへ。無論、ここからも海を望みます。施設すべての中心に据えられるのは、海。海辺の適地があったからサウナを作ったのではなく、この海を見せるためにサウナという手段を選んだような、海中心の施設です。

サウナ室には目線の高さから海を望む窓がある。ストーブには300kgのサウナストーンを設置した。

熱を逃さない建て付けや給排気のシステム、メンテナンスの利便性など、見えない部分にまでこだわりが溢れる。

浜辺や施設屋上のデッキチェアや浜辺に設置されたハンモックなど、思いお思いの場所で外気浴ができる。

サウナ宝来洲海辺の旅館で育ったオーナーの思いの結晶。

このサウナへの思いを、オーナー・杤堀耕一氏に伺ってみました。

栃堀氏の祖父と両親がこの地に海の家を開き、その後『小竹屋旅館』を開いたのは今から半世紀以上前のこと。その家に生まれ、賑わう海水浴場を見て育った栃堀氏ですが、やがて時代が流れます。価値観の多様化が、人々の興味を少しずつ海から逸していったのです。
一度は故郷を離れていた栃堀氏はこの地に戻り、さまざまな手を打ちました。しかし天候や海況など自然の力には抗うことはできず、夏の海水浴客減少も止まりません。
それでも杤堀氏は、この海を、ただ寂れさせたくはなかったといいます。「何かしないと、何か」そう考え抜いた栃堀氏の目に、偶然「サウナ」の文字が飛び込んできました。「これしかない」栃堀氏の心は決まりました。 

人気のアウトドアサウナを見学に行き、勢いのままそのオーナーに施設のプロデュースを直談判し、地元工務店と話し合い、日々サウナについて学び、最上級のサウナ専用薪ストーブを準備し、フィンランドからサウナストーンを取り寄せる。思いついてから施設のオープンまで、わずか9ヶ月の出来事でした。

まるで一遍の物語のように開業秘話を聞かせてくれた杤堀氏。その端々から伝わる、この海への思い。これだけの施設を作るのだから、大きな決断だったことでしょう。しかし杤堀氏の言葉からは、先への不安ではなく、新たなことを始めるキラキラとした高揚が伝わってきます。

「自然が相手ですから、0点の日もあれば200点の日もあります」。

秋の日本海を見ながら、杤堀氏は言いました。そして「だからこそ面白い」と笑いました。そして最後に「どの海も大好きだけど、とりわけ海に夕日が沈んでいく時間が好き」と言いました。

日本海を赤く染めながら海に沈む夕日。その壮絶なまでの絶景も、このサウナの財産のひとつなのでしょう。

オーナー・栃堀氏の言葉の端々には、この海への愛着がにじむ。

住所:新潟県柏崎市鯨波2-3-6 小竹屋旅館敷地内 MAP
TEL:0257-41-6270
https://www.odakeya.com/sauna/ 
 

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ドリンク、調味料、お菓子……。2021年を締めくくるベストギフト12選。[和光アネックス/東京都中央区]

年末年始は、ギフトを贈る側、贈られる側の機会も多い季節。センスの利いた品選びとワンランク上のギフト提案をぜひ。

WAKO ANNEXアルコールとノンアルコール。届けたい相手やシーンを配慮する、TPOのようなギフト選び。

年末年始は、各所へのご挨拶の時期でもあり、集いの時期でもあります。そんな時、少し気の利いたギフト選びをぜひ。

中でも、ドリンクは万能選手です。まずは、ひと味変わったアルコール3種。秋元商店「籠屋ブルワリー和轍」、完熟屋「ミサキミード」、吉田酒造店「手取川 Sparkling dot」です。

ビール、ミード、日本酒。種類の異なるアルコールは、こだわりのある独特な造りとそれによって豊かな味わいが生まれるブランドを選択。中でも、「籠屋ブルワリー和轍」は「和光」限定店舗販売、「手取川 Sparkling dot」は数量限定販売のため、希少性の高い逸品になります。

次は、ノンアルコール3種。宮崎茶房「みねかおり白茶」、茶縁むすび「政所茶・古樹番茶」、カネロク松本園「燻製紅茶 りんご」です。

宮崎、滋賀、静岡。茶の産地としても名高い各地の品は、ただの茶にあらず。こだわりの素材と味のアプローチは、おいしさだけでなく健康にも配慮しています。「政所茶・古樹番茶」においては、都内初 数量限定店頭販売のため、そんなエピソードとともにギフトを贈れば、その集いも盛り上がること間違いなしでしょう。

※今回、ご紹介した商品の一部は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナー及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内させていただいております

秋元商店「籠屋ブルワリー和轍」は、杉の香りとモルトの旨みが凝縮された木桶仕込みのジャパニーズビール。木桶は国産材ブランドである吉野杉を使用。木桶は呼吸し、住み着く微生物が時間をかけて発酵を進め、木桶でしか出せない深い味わいを生み出す。生産量も極端に少ない貴重な国産麦芽を使用し、繊細できめ細かく優しい味わいが特徴。※「和光」限定店舗販売

完熟屋「ミサキミード」は、愛媛・佐多岬の蜂の蜜のみを使用し、非加熱で製造。ミードとは蜂蜜から作るお酒であり、人類最古のお酒とも言われている。蜂蜜のお酒とは思えない深い味わいの秘密は、蜂蜜の含有量が60%も含まれていることにある。高品質な素材に加えて、しっかりとした酸が感じられる味わいの仕上がりに。

モダン山廃造りのナチュラルで優しいお酒を瓶内二次発酵させたスパークリング日本酒、吉田酒造店「手取川 Sparkling dot」。口に含むと優しく弾ける泡感は、全て天然のもの。優しい酸味でスッキリ爽やかな味わいのため、食前・食中酒にも最適。※数量限定販売

宮崎茶房「みねかおり白茶」の素材は、宮崎県五ヶ瀬町で育てる。農薬や化学肥料などを使用せず、有機栽培をしながら多くの品種を育て、お茶の香りを追求。様々あるお茶の中でも白茶はスッキリとした味わいと熟成された深みのあるハチミツのような香味が特徴。ティーポットに2~3gの茶葉を入れ、150ccのお湯を注いで2~3分抽出していただくのがお勧め。

 茶縁むすび「政所茶・古樹番茶」。滋賀県琵琶湖の東部、鈴鹿山系の渓谷に位置する政所は、古くから「宇治は茶所、茶は政所」と謳われた銘茶の最高峰であり、豊臣秀吉が生涯最も愛したお茶所。全国で2%以下となった在来種の茶樹の中、樹齢100年の古樹を葉だけでなく幹や枝までまるごと薪の火でじっくりと焙煎加工し、スモーキーな香りと口に広がる甘さを引き出す。※都内初 数量限定店頭販売

カネロク松本園「燻製紅茶 りんご」は、環境保全に貢献し、世界農業遺産に登録された「静岡の茶草場農法」を継承。有機肥料を中心に土作りにこだわった栽培で、これまでの日本茶の世界にはなかった薫香が漂うお茶。燻製材は林檎の樹木を燃料に、品種はブラムリーアップルの木材を使用。スモーキーな中に林檎の優しい香りを楽しめる紅茶。

WAKO ANNEX利用頻度の高い品だからこそ喜ばれる。プライベートに贈りたい、日常の特別。

お味噌やオリーブオイル、ジャムなど、日常において頻繁に使われる品々だからこそ、嬉しいギフトであり、人気のギフト。そこに、少しのセンスと上質な素材にこだわった品をセレクトすることによって、ワンランク上の贈り物になるのです。

まずは、調味料など3種。井上味噌醤油の「常盤味噌」と「白味噌」。アグリオリーブ小豆島「小豆島産100 %エキストラバージンオリーブオイル」。

いつもの料理で使用するお味噌を「井上味噌醤油」に、いつもかけるオリーブオイルを「アグリオリーブ小豆島」にするだけで、その味は見違えるほど、リッチに変わります。「井上味噌醤油」は、「和光」限定店舗販売のため、中々お目にかかれない品になります。

また、パン食派のお相手であれば、ジャムやはちみつなどもお勧め。

ビーハッピー/タケイファーム「アーティーチョークはちみつ」や楽農研究所「SOIL TABLE 苺のコンポート」は、朝の時間に豊かさをもたらすでしょう。もちろん、日常のお料理にも最適です。今回のタケイファームの品は、「和光」限定販売。加えて、ミシュランの星獲得店やトップシェフ、食通も唸る品として注目もされています。

また、この2品とともに楽しめる、NORTH FARM STOCK/白亜ダイシン「北海道クラッカー プレーン」のような品を添えて贈るギフトもまた、ホスピタリティーに長け、相手の記憶に残るに違いありません。

贈る側、贈られる側。両立場の機会も多くなる季節ですが、どちらにしても、喜ばせたいギフト、嬉しいギフトであれば、幸福と口福の連鎖が生まれると思います。

年末年始に向け、良きギフト選びをぜひ。

井上味噌醤油は、明治8年創業より変わることのない手造りにて麹菌を生育。「常磐味噌」をはじめ、使用しているのは「生味噌」のため、酵素・酵母が活動状態にあり、味噌が持つ本来の風味を楽しめる。約150年仕込み続けた「木樽」にて天然醸造されることにより、奥深い発酵も表現される。※「和光」限定店舗販売

上記と同様、井上味噌醤油の「白味噌」。伝統製法「もろぶた糀」が持つ天然の甘みのみを風味高く仕上げた淡色味噌。※「和光」限定店舗販売

穏やかな瀬戸内海に囲まれた小豆島の農園で造られた、アグリオリーブ小豆島の「小豆島産100 %エキストラバージンオリーブオイル」。燦々と降り注ぐ太陽をしっかりと浴びて育った希少なオリーブ果実を丁寧に手摘みし、一番搾り。新鮮なうちに採油することで、若草の香りと風味豊かな味わいが楽しめる。

ビーハッピー/タケイファーム「アーティーチョークはちみつ」は、ミシュラン取得店舗など数々のトップレストランに認められる逸品。日本最大級のアーティーチョーク畑を保有するタケイファームが「日本にもっとアーティーチョークを普及させたい」という想いから造ったアーティーチョークのはちみつは、品質はもちろん、稀少性も高い。※「和光アネックス」限定店舗販売

楽農研究所「SOIL TABLE 苺のコンポート」のいちごは、愛媛県の「あかまつ農園」のあまおとめ・レッドパール・紅ほっぺの3種類をブレンド。炊き上げ、瓶詰めなどすべて手作り。※都内初 数量限定店頭販売

NORTH FARM STOCK/白亜ダイシン「北海道クラッカー プレーン」は、北海道産の小麦を使ったワインを楽しむためのクラッカー。自社工場で一枚一枚丁寧に焼き上げ、サクッとした食感を追求。

※今回、ご紹介した商品の一部は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナー及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内させていただいております

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KUAMOCHI

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年末年始のテーブルを特別に彩る、新たな提案型ギフト5選。[和光アネックス/東京都中央区]

新しい提案型のギフトは、合わせの妙をぜひ。食べる味と飲む味に加え、交わる味も楽しめる品々は、おいしい発見の連続。

WAKO ANNEX大切な人たちと過ごす、一年の節目には、特別なギフトをぜひ。

未だ様々ある昨今ですが、年末年始はゆっくりと過ごしたい。そう思う人は多いと思います。

家族との集い、大切な人や気が置けない仲間との再会……。

シーンは様々ありますが、その時間を華やかに彩るのは、食事の時間です。

そんな時にお勧めしたいギフトは、ぜひ提案型のペアリングを。紹介してくれるのは、日本酒ソムリエ・『GEM by moto』店主・第14 代酒サムライの千葉麻里絵さんと調布市『Maruta』のドリンクディレクターを務める外山博之氏です。

両者に共通しているのは、これまでに類を見ない「食べ合わせ」のプレゼンテーション。それぞれに理論と哲学を持った合わせには、美味しいだけではない、楽しい発見が待っています。

クリスマスや年末年始、パーティーなど、ゲストを喜ばせる新たな提案型のギフト5選をご紹介します。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

外山氏がペアリングにおいて重視しているのは、香り。それも主観的な印象で判断するのではなく、科学的な香りの成分を紐解きます。「一緒に口に含むことで広がる香り、増加する旨味。そんな未知なる発見を楽しんでください」。

「造り手の想いが込もったお酒や食品が単品でおいしいのは当然です。それを状況に応じて合せること で、シーンにマッチした楽しみやサプライズを楽しめるのがペアリングだと思います」と千葉さん。

WAKO ANNEX外山博之が勧めるペアリングの軸は、ノンアルコール。香りや成分などを分析し、哲学的に結実させる。

外山氏が勧めるペアリングは、3種。まずひとつ目は、「弘前シードル工房kimori」のkimoriシードル(ドライ)と「GOOD MORNING FARM」愛媛野菜のミックスピクルスです。

シードルが持つリンゴの青い香りとピクルスの原料であるローリエの青い香りがマッチするペアリングは、香りと味わいが絶妙。「シードルが持つ発酵の香りは、ピクルスの酸味であるお酢との相性が良く、香りと味わいが交互に重なり、口の中で広がります」と外山氏。

ふたつ目は、「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」ブラッドオレンジジュースと「アサヤ食品」バルサミコ(Vintage2013)です。

ブラッドオレンジとバルサミコ酢の香りは、「同系統のため、非常に相性抜群」と外山氏。それを更に美味しくいただくためにお勧めするのは、「サラダ」にバルサミコ酢をかけて合わせること。

「例えば、バジル、チーズ、イチゴのサラダにバルサミコ酢をかけ、ジュースの酸味と旨みを合わせるのもお勧めです。6年熟成・純国産の無添加バルサミコ酢は、これだけでも本当に貴重な1本です」。

3つ目は、「かたすみ」いちごのフルーツティー3種セットと「トリ風土研究所」河内鴨もも肉コンフィです。

「いちごのフルーツティーの優しい酸味が、河内鴨もも肉コンフィの旨みをバランス良く中和します。更にこだわりたい方への提案は、ややぬるめのお湯で淹れてみていただければ、より香りと味わいの輪郭をお楽しみいただけると思います。お肉の旨みとの調和が拡張し、美味しさが倍増するはずです」。

「弘前シードル工房kimori」のkimoriシードル(ドライ)と「GOOD MORNING FARM」愛媛野菜のミックスピクルス。「『弘前シードル工房kimori』は、りんご畑の中にあるちいさな醸造所です。若いりんご農家たちが、自ら育てたりんごを持ち寄り、シードルを造っています。 果実感を損なわない自然な無ろ過製法を採用しているので、にごりや澱(おり)も含めたりんごそのものの味をお楽しみください。合わせるピクルスは、愛媛の旬野菜がぎゅっと詰められています。温暖で土地に高低差のある愛媛は、様々な食材の宝庫。春夏秋冬、豊かな味と出合えます」。

 「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」ブラッドオレンジジュースと「アサヤ食品」バルサミコ(Vintage2013)。「イタリア原産の赤いオレンジ、「ブラッドオレンジ100%の国産ジュースはとても希少です。中でも、愛媛・宇和島は、全国で数少ない産地のひとつです。合わせるバルサミコ酢においても希少。地元素材と向き合って半世紀以上。ワインビネガー専門メーカーの『アサヤ食品』さんが、2013年のヴィンテージを特別に100本限定で提供してくださいました。これは、2013年から6年樽で熟成後さらにビンで1年熟成したプレミアムなバルサミコ酢です」。

「かたすみ」いちごのフルーツティー3種セットと「トリ風土研究所」河内鴨もも肉コンフィ。「砂糖・香料・着色料を一切使用せずに仕上げたシンプルなフルーツティーですが、丁寧な仕事が成された逸品です。ドライフルーツはすべて国産。低温で丁寧に乾燥し、うまみを凝縮しています。合わせる河内鴨は、2019年に大阪で開催されたG20の晩餐会でも公式メニューに採用された食材。そのもも肉の旨味をさらに凝縮するために時間をかけてコンフィしたものは、大量生産こそ難しいですが、お肉好きの方にはぜひ召し上がっていただきたいです」。

WAKO ANNEXまさに千葉さんらしい日本酒との合わせ。食中から食後まで、シーンも楽しいペアリング。

千葉さんが勧めるペアリングは2種。

ひとつ目は、「木戸泉酒造」木戸泉 Afrugem 2016 afs×貴醸酒×スコッチ樽 GEM別誂と「和光」チョコレート ヴァレンシアです。

「日本酒をピート香の効いたスコッチ樽で熟成させた貴醸酒は、まるでバーのような時間を演出してくれます。合わせるチョコレートは、カカオだけでなくオレンジも主役となり、食べ口によって変化する味とペアリングの妙も楽しめます」。

ふたつ目は、「美吉野醸造」花巴 樽丸“水酛×水酛” 手漉き和紙ラベル 寺田克也画 千葉麻里絵オリジナルと「和光」うにからすみ。

年末はもちろん、年始にいただけば縁起も良さそうなそれは、上質なばふんうにの食材がリッチな世界へ誘います。加えて、合わせるお酒は、千葉さんがコラボレーションしたオリジナル。

「『美吉野醸造』花巴は、吉野杉を使った樽丸シリーズになります。杉の香りを纏っているため、身体と五感で美味しさを感じることができます。水の代わりに酒で仕込んだ貴醸酒は、濃厚で旨みたっぷり。合わせるうにからすみは、乾燥させずに仕上げた優しい食感が魅力です。生からすみと、とろけるようなばふんうにが織りなす調和とともにお楽しみください」。

ペアリングを選んだ理由やストーリーとともにギフトをプレゼンテーションできれば、そのテーブルは、もっと楽しくなるでしょう。

物語のあるギフトは、ただ美味しいだけでなく、誰かを幸せにする力があるのです。

「木戸泉酒造」木戸泉 Afrugem 2016 afs×貴醸酒×スコッチ樽 GEM別誂と「和光」チョコレート ヴァレンシア。「この日本酒は、バーで飲むイメージで、日本酒をピート香のきいているスコッチ樽に入れて熟成させた貴醸酒です。合わせるチョコレートは、カカオだけでなくオレンジも主役となり、食べる場所によって味が変わるので、時間の流れを感じながらお酒とともにお楽しみください。

「美吉野醸造」花巴 樽丸“水酛×水酛” 手漉き和紙ラベル 寺田克也画 千葉麻里絵オリジナルと「和光」うにからすみ。「樽丸とは、原木を年輪に沿って割って削る加工をした樽をつくる側板を集め丸く束ねたものです。杉の香りが纏っているので身体で感じるおいしさです。ここに、うにからすみの旨みが加わり、口の中は旨 味でいっぱいになります」。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエへ転向。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』」)」のマネージャーに就任。2018年より調布『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KUAMOCHI​​​​​​
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ブランド豚の旨味を引き出す、イタリアンシェフが作る魯肉飯。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・美明豚/茨城県行方市]

とろける食感と濃厚な旨味の魯肉飯。台湾の人気料理をイタリアンのシェフが作るとどうなるのか。

なめがた ベジタブルキングダムまさかの台湾料理は、まかない料理の人気メニュー。

茨城県行方市を訪ねた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフが、今回出合った食材は、ブランド豚・美明豚。さっそく「赤身と脂のバランスが良く、肉質も脂身も上質」と絶賛するその豚を活かすメニューを考えてくれました。

今回の料理は、なんと魯肉飯(ルーローハン)。イタリアンの神保シェフのイメージとは異なりますが、実は店のまかない料理でスタッフに大好評のメニューなのだとか。

「脂がおいしい美明豚は、とくにバラ肉がおすすめ。今回はそんなバラ肉の魅力を引き立てるメニューとして魯肉飯を選びました。肉は大きめにカットして、本来のおいしさを際立てます」

という逸品。今回はそんな肉の魅力を前面に打ち出すために、本場の魯肉飯では必須の香辛料・五香粉は使用せず、シンプルな調味料だけで仕立てるといいます。ではさっそく、イタリアンシェフが作る台湾料理のレシピを見ていきましょう。

【関連記事】NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/きめ細かい赤身と口溶けの良い脂。一貫生産へのこだわりが生んだ最高峰のブランド豚。

使う調味料はやや多いが、どれも家庭にあるものが中心。香りの決め手の八角はぜひ取り入れたい。

特別な材料やテクニックなしに極上の味に仕上がるのは、シェフならではの細やかな下処理から。

なめがた ベジタブルキングダム美明豚バラ肉の簡単魯肉飯

材料 (2人分)
豚バラ肉 400g
玉ねぎ 1/2個
生姜すりおろし 小さじ1杯
ニンニクすりおろし 1片分
ごま油 大さじ1杯
八角 1個
ちんげん菜 4束
刻み万能ネギ 適量
目玉焼き 卵2個分
炊き上げたご飯 2膳分
★醤油、酒、みりん 各大さじ3杯
★黒砂糖・米酢・オイスターソース 各大さじ1杯
水2カップ

手順
1.  豚バラ肉を一口大にカットしてフォークで刺して筋を切り、軽く塩コショウをしておく
2.  熱したフライパンに胡麻油をひき、中火で豚バラ肉を焼く。焼き上がったらバットに取り出しておく
3.  手順2のフライパンでスライスしたタマネギを中火で2分ほどソテーする
4.  フライパンに2の豚肉を戻し、ニンニク、しょうがを加えて合わせながら中火で炒める。全体に絡んだら★の調味料と水 1カップ、バットにある肉汁も入れ、強火でひと煮立ちさせる
5.  八角を加え、香りが立ってきたら弱火にし、蓋をして15〜20分煮込む
6.  煮詰まってきたらちんげん菜を手で割いて、肉を覆うように入れ、再度蓋をして弱火で2分半ほど蒸し焼きにする
7.  器に持ったご飯に6を盛り、目玉焼きを乗せたら完成

フォークで刺すことで味が染みやすくなり、かつ短時間で柔らかくなる。

炒めた際に出る豚の旨味をしっかりとタマネギに吸わせてから煮込んでいく。

ちんげん菜は豚肉を覆うようにして蒸し焼きに。手間がかからず洗い物も減るひと工夫。

半熟の目玉焼きを盛り付けて完成。しっかり味と八角の香り、美明豚の旨味がベストマッチ。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

きめ細かい赤身と口溶けの良い脂。一貫生産へのこだわりが生んだ最高峰のブランド豚。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・美明豚/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

全国圏屈指の野菜王国として数々の野菜を産出する茨城県行方市。我々ONESTORYは、一年に渡りこの行方市を繰り返し訪れ、生産者の話を伺ってきました。そしてたどり着いたひとつの仮説。行方市の野菜がおいしいのは、恵まれた気候や風土以上に、作り手の粘り強く、負けず嫌いな“行方気質”に由来するのではないか。そしてその説が正しいのなら、野菜以外の生産物もまた素晴らしいものなのではないか。

そんな説を証明するために訪れたのは、ブランド豚・美明豚を育てる『中村畜産』。同行者は、昨年一年間行方市の野菜を追いかけ続け、その魅力を引き立てる数々のレシピを考案してくれた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフです。

美明豚は、『中村畜産』がお産から出荷まで一貫して育てる特定病原菌を持たないSPF豚。肥育環境や飼料にこだわり、ストレスなく育てる豚は、各所から高い評価を得ています。果たして現地を訪れた神保シェフは美明豚と『中村畜産』にどんな感想を抱き、どんな料理のアイデアを練るのでしょう? その詳細をお伝えします。

Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

「国産 Non-Chemical レモン」×「クラウドファウンディング」。あるレモン農家の熱き挑戦。[CITRUSFARMS TATEMICHIYA/広島県尾道市]

「citrusfarms たてみち屋」の園主・菅秀和氏。広島県生口島で無農薬・無化学肥料のレモンを栽培している。

citurusfarms たてみち屋

孤高のレモン農家・菅氏がクラウドファウンディングにチャレンジ

レモン、好きですか?
レモンの、どんなところが好きですか?

ちょっと考えてしまった人は、もしかすると、まだ本当に美味しいレモンに出合ったことはないのかもしれません。食事に、ドリンクにと用途が広がり、身近になっているようで、意外と知られていないレモンという果物。

そう、料理人やバーテンダーら食のプロフェッショナルの間では、レモンを果物と捉え直し、積極的にレシピに採り入れる動きが広がっています。
そして、一流の食材にこだわるプロたちにレモンの話を聞くと、「菅さんのレモン」と耳にすることが多くなってきました。

「菅さん」とは、「DINING OUT ONOMICHI」の食材チームにも参加した菅秀和氏。
広島県尾道市と愛媛県今治市を連絡する瀬戸内しまなみ海道のほぼ中央に位置する生口島で、レモン農園「citrusfarms たてみち屋」を営むレモン農家です。

「食べて美味しいレモン」。菅氏が心血を注ぎ続けてきたのは、そんな、みんなの固定概念を覆すレモンです。菅氏のレモンの美味しさは、食のプロたちの間でクチコミで広がり、多くのファンを獲得してきました。


そんな菅氏は今年、クラウドファウンディングに挑戦するとのこと。その狙いを聞くために、菅氏を訪ねました。

燦々と陽光がふりそそぎ、凪の真っ青な海を見下ろす斜面に、強面で偉丈夫の菅氏はプロレスラーのように立っていました。5年前の「DINING OUT ONOMICHI」の時よりも貫禄がついています。


リスボンという品種のレモンの木が、深緑色の肉厚な葉を茂らせ、ラグビーボール型よりもぷっくりとした実をつけています。菅氏は鮮やかな黄色になった実をもぎとると、「かじってみませんか?」と勧めます。農薬や除草剤も、もちろんワックスも使っていないから、そのまま安心してかぶりつけます。

歯応えのある皮を突き破ると、一気に果汁があふれ出します。すっぱい。
けれど、嫌なすっぱさではありません。爽快な香りが鼻を抜け、心地よいほろ苦さの奥に甘味を感じます。これがレモンの味なのか……実に骨太。素直に、美味しい。

「レモン栽培に取り組み始めた時、素朴な疑問が生まれました。スーパーでレモンを探したけれど見つからない。果物売り場にも、野菜売り場にもなかった。ようやく見つけた場所は、奥の薬味のコーナーでした。薬味や添え物としてしか扱われていない果物って何なんだって。レモンはれっきとした果物。よし、食べて美味しいレモンを作ってやろうと心に決めたんです」と菅氏は2014年当時を振り返ります。

日本ではあまり目にすることの無いグリーンレモン。イエローレモンより糖度は低いが、そのキリっとした香りと酸味にはファンも多い。

citurusfarms たてみち屋「身土不二」の考え方を軸に、ひたすら土の健康状態を適切に保つ。

生口島の隣、大三島出身の菅氏は、食品流通などの仕事を経て、柑橘事業に乗り出す会社の一員として生口島に移住してきました。古民家の空き家を借りたところ、その家主から手に負えなくなってしまった約3,000坪のレモン農園の管理を頼まれました。空き家に思いがけずレモン農園が付いてきたカタチです。柑橘事業の撤退が決まったこともあり、菅氏はそのレモン農園主として独立を決意。翌年、40歳の時でした。

菅氏の農業の軸にあるのは、「身土不二(しんどふじ)」の考え方です。人間の身体と土の働きは同質であり、風土に育まれる命をいただくことは土を食べることに等しい、といった意味があります。レモンの木に美味しく健康的な実をつけてもらうには、土の健康状態を適切に保つことが大切と考えて、農薬や化学肥料を使わず、有用菌の働きを活かす土づくりに徹しています。

創業から使い続ける堆肥ヒューマスのほか、厳選した天然ミネラルや酵素をブレンドした天然液肥を散布します。雑草はシロツメクサなど土にとって有益な種類がはびこるように数種類播種し、除草剤に頼ることもありません。菅氏は鉄の杭を土に刺してみせます。他の園だった耕作放棄地の土には、菅氏が体重をかけても杭は20cmほどしか入りません。一方、菅氏の農園に杭を刺してみると、すうっと100cm近く入りました。土がやわらかく、ふかふかな証拠。土中に有用菌が多く、しっかり呼吸しているおかげなのです。

この土壌で育ったレモンは農薬・化学肥料不使用の「ノンケミカル・レモン」として出荷されています。皮まで丸ごと味わえる「食べて美味しいレモン」です。

自ら独自ブレンドした天然液肥。配合や散布量に菅氏の腕が光る。

地面に杭を刺して見せる菅氏。有用菌が働くやわらかな土には、力をかけずとも杭はすうっと入っていく。

citurusfarms たてみち屋レモンサワーの概念を覆す一杯。

取材班が訪ねたこの日、菅氏の農園にはもう一人のゲストがいました。東京・新宿にある「Mixology & Elixir Bar Ben Fiddich」(バー ベンフィディック)のバーテンダー・鹿山博康氏です。同氏は自ら農場で薬草を栽培し、養蜂をして蜂蜜を採取し多彩なカクテルを生み出すミクソロジストとして知られ、店は世界のバーランキングで常に上位にランクインするなど世界中にファンを抱えています。

数年来「菅さんのレモン」を店で使い、プライベートでも菅氏と交流のあった鹿山氏は、はるばる農園の見学に訪れていたのです。
「菅さんのレモンは香りのフレッシュさが違います。そして、完熟レモンは果汁の酸味と甘味、皮の苦味のバランスが絶妙」と鹿山氏。バーの七つ道具を持参した同氏は、その場でレモンサワーをつくってくれました。

香り、味わい、共に圧倒的なレモンの存在感。それでいて、全体的にまとまりがあり、すっきりと穏やかな後味。思わず笑顔になる旨さ。レモンサワーの概念が180度転換された思いです。

嬉々としてカクテルを作る鹿山氏。彼を見守り、頬を緩める菅氏。昼下がりの農園には、海風にのってレモンの香りがそよいでいました。

さて、菅氏は、一体どんなクラウドファウンディングに挑戦するというのでしょう?

菅氏のレモン農園「citrusfarms たてみち屋」で、もぎたてのレモンをレモンサワーに。鮮烈な美味しさ。

瀬戸内海を見渡せる絶好のロケーションで、採りたてレモンを使ったカクテルを振舞う鹿山氏。

citurusfarms たてみち屋国産 Non-Chemical レモンを未来へつなげていくために。

菅氏は枯れ草に覆われた畑に案内してくれました。ここは、耕作放棄地となって久しい畑。昨年、菅氏はこの土地を購入しました。多額の借入が伴う大きな決断でした。順調なレモン栽培を続けているように見える菅氏ですが、大きな危機感を覚えるようになったと話します。

危機感とは、第一に、気候変動による凍害の頻度が上がっていること。そして第二に、柑橘栽培を諦める農家が増え、耕作放棄地が広がっていることです。

「Non-Chemical レモンの美味しさを広く知っていただき、レモンを丸ごと味わうことが食文化の一部になることを目指して取り組んできました。ところが、そのためには一般消費者の方にまで届けるための絶対的な収量が不足しているという問題に直面しました。とはいえ、手間ひまのかかるNon-Chemical レモンの栽培は、収量を増やそうと無闇に耕作面積を増やしてしまうと、品質の低下や支出過多に陥ってしまいます。私はこれまで既存の柑橘園を譲り受け、その畑の土壌を改良することによってNon-Chemical レモンを栽培してきました。しかし、耕作放棄地のように土壌の改良だけではNon-Chemical レモンの栽培が難しい土地においては、伐採伐根と造成整地をしてから新しい苗木を植える必要があります。これは、野菜の様にすぐに収穫ができない果樹は最初の数年は経費ばかりがかかってしまい、とても効率が悪いのです。さらに、国産レモンの収穫は10月から4月までと、一番需要の高い夏場に収穫ができません。これらの課題を解決するために、大きな投資をしてでも理想的なレモン畑を一から作る必要がある、という結論に達したのです」

理想のレモン畑を作りたい。菅氏の熱意は、年々広がっていく耕作放棄地を自分の手でどうにかしたいという想いともつながりました。

「レモン畑のモデルケースを耕作放棄地に作り上げ、次世代のレモン栽培のあり方を示すことができれば、美しい生口島に虫喰いあとのように広がっている耕作放棄地を緑のレモン畑に変えていけるかもしれない」

菅氏は、その新たな取り組みのスタートにあたり、Non-Chemicalレモン栽培への賛同者を増やし、壮大なプロジェクトの着手資金を調達するために、クラウドファウンディング実施の決断をしました。

菅氏は約2,400坪の耕作放棄地を購入。さらに高品質なレモンを広く安定的に提供するべく、ハウスやラボを併設した園の整備に取り組んでいくという。

住所:広島県尾道市瀬戸田町福田796
FAX:0845-27-0861
http://www.tatemichiya.com/

Photographs:MINA MICHISHITA
Text:KOH WATANABE

宝石のように透き通る身に旨味を湛えたシラウオ。そのおいしさの秘密を求め船上へ。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/茨城県行方市]

なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

日本有数の水揚げ量を誇る霞ヶ浦のシラウオ。
その透き通った美しい身と、クセのないおいしさから首都圏の鮨店や和食店でも重宝される特産品です。

シラウオ漁の解禁は毎年7月21日。そこから12月末まで、霞ヶ浦の漁師は湖上に出て網を引きます。近年は輸送技術が発達し、この時期、スーパーなどでも獲れたてのシラウオを目にすることがあるかもしれません。

では霞ヶ浦のシラウオが有名な理由は、その漁獲高や鮮度のためだけなのでしょうか?

そうではありません。魚体を傷つけぬように獲り、船上で氷漬けにし、陸に上がってすぐに選別、出荷する。実は霞ヶ浦のシラウオを知らしめ、プロの料理人をも虜にする理由は、「おいしいものを届けたい」という漁師のこだわりにありました。

弾力があり、旨味があり、甘みがあり、かつタンパクでどんな味付けにも合う。そんな霞ヶ浦が誇るシラウオの秘密に迫ります。

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Photographs:TSUTOMU HARA
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))