2019年10月、石川県輪島市にて『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』が開催されました。
石川県輪島市は日本海に突き出した能登半島北部に位置し、門前町から続く美しい棚田や海岸線とのどかな里山や里海の景色には、誰もが懐かしさを感じずにはいられない、人と自然が共生する日本の原風景が大切に残されています。
この壮大なテーマに挑んだのは『DINING OUT』史上初のふたりのシェフでした。
ひとり目は、東京・西麻布「AZUR et MASA UEKI」の植木将仁シェフ。日本の優れた食材をフランス料理の技法で調理する「和魂洋才」をコンセプトにした、オリジナリティ溢れる料理で定評があります。石川県の出身であり、能登半島の食材の知識も豊富です。
そして、今回は更なるサプライズをご用意。「輪島塗」に新たな息吹をもたらすプロジェクト『DESIGNING OUT Vol.2』も同時開催され。クリエイティブプロデューサーとして、新国立競技場のデザインを手がけたことも記憶に新しい、世界的な建築家である隈研吾氏を迎え、輪島塗職人と共にオリジナルの輪島塗を完成させました。
今だかつてない豪華メンバーを結集させた『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』。3人のキーマンが振り返ります。
1967年石川県金沢出身。1990年より渡仏し、南フランスの四ツ星ホテル『ホテル ル デュロス』をはじめ、フランスやイタリアで3年間に渡り料理の研鑽を積む。帰国後、1993年『代官山タブローズ』スーシェフを経て、1998年『白金ステラート』オープンと共にシェフに就任。2000年に独立後、青山に『RESTAURANT J』をオープンした。2007年からは軽井沢『MASAA’s』、銀座『RESTAURANT MASA UEKI』を経て、2017年には株式会社マッシュフーズとともに同店をオープン。日本の伝統的な食材や伝統文化を探求しながら自身の料理に落とし込み発信することで、オープンから間もなくして注目を集め、高い評価を得ている。2016年世界料理学会イン有田と函館にてスピーカーとして登壇もしている。 AZUR et MASA UEKI HP:http://www.restaurant-azur.com/
2019年10月、石川県輪島市を舞台に行われた『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』の会場では、『DESIGNING OUT Vol.2』として、世界的建築家・隈研吾氏が手掛けた輪島塗の器が披露されました。
あの輪島の夜、ある人はうっとりと眺め、ある人は慈しむように手触りを確かめた美しい器。それがこの度、東京にやってきました。それも再開発に湧く渋谷の街に。
2019年11月にリニューアルオープンを果たした『渋谷PARCO』の1階、『Discover Japan Lab.(ディスカバー・ジャパン ラボ)』と名付けられたその店は、『DESIGNING OUT Vol.2』の器のみならず、日本の伝統工芸の美しさを追求するセレクトショップ。本誌の特集と連動して毎月の店頭商品も入れ替わる、まるで『Discover Japan』の誌面がそのまま形になったかのような店でした。
『Discover Japan Lab.』は、月刊誌『Discover Japan』が見つけ出した日本各地の伝統工芸をセレクトするショップ。
『DESIGNING OUT Vol.2』の器は『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』の晩餐で実際に使用された。
世界的建築家である隈研吾氏が、国指定重要無形文化財である輪島塗に新たな風を吹き込んだ。(写真は『DINING OUT WAJIMA』にて)
ディスカバージャパンラボ雑誌を編集するように、レイアウトされる店舗。
新生『渋谷PARCO』の正面玄関を入ってすぐ左手。施設の顔となるような位置に『Discover Japan Lab.』はあります。対面には誰もが知るハイブランドの店舗。しかし『Discover Japan Lab.』の店頭に並ぶ工芸品の数々は、どこにも負けぬ存在感を放ち、堂々と鎮座しています。
そんな店のオープニングのトップに『DESIGNING OUT Vol.2』を据えたのは、「隈さんは100以上ある輪島塗の工程をすべて読み込み、そのストーリーを6枚の皿で表現したのです。これにより現地の人も“輪島塗は途中でも使える”と気づいた。作家自身もそこに気づいた。変わり続ける宿命を持つ伝統工芸のなかで、その気付きを与えるストーリーを表現したのが、さすがは隈研吾さんという部分なのです」高橋編集長はそう話しました。この器は、「Discover Japan Lab.」と石川県輪島市にある「輪島塗会館」にて数量限定で販売します。
もちろん『DESIGNING OUT Vol.2』のほかにも、素晴らしい作品が並びます。オープンの11月にメインスペースを飾っていたのは、陶芸家・青木良太氏の作品でした。
青木氏は陶芸という分野のなかでも、とくに釉薬について研究を続ける作家。今まで世の中になかった色や質感。それを釉薬で表現する研究者でもあるのです。
「21世紀にしか作れないもの、千年、二千年後にこの時代の代表作といわれるものを作りたい」青木氏の夢は壮大です。そして周囲に何を言われようとも、青木氏は挑み続け、そして掴み取っているのです。
1961年には、国際サロンフットボール連盟(FIFUSA:Federación Internacional de Fútbol de Salón: International Futsal Federation)が設立され、1982年に世界サロンフットボール選手権がサンパウロで開催された。 #フットサル#サッカー#ユニフォーム
『DINING OUT WAJIMA』翌日の輪島塗ツアーのホストを務めた、東洋文化研究家アレックス・カー氏。
ダイニングアウト輪島
日本に眠る伝統的なデザインに最先端のクリエイションを加えて、新しいものづくりをするプロジェクト『DESIGNING OUT』。『ONESTORY』と、雑誌『Discover Japan』、そして地域に知見のあるクリエイターがチームを組み、地域の文化や自然、歴史などを積極的に取り入れた新しいプロダクトを開発しています。 今回『DESIGNING OUT vol.2』の舞台となったのは、石川県輪島市。世界で活躍する建築家の隈研吾氏をプロデューサーに迎え、国の重要無形文化財に指定されている「輪島塗」に新たな風を吹き込むプロジェクトが進行しました。
1年以上の準備・製作期間をかけて、出来あがった6つのオリジナルの輪島塗は、2019年10月5日、6日に開催された『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』でお披露目され、隈研吾氏だからできた輪島塗へのアプローチと、その意向をくみプロダクトに挑んだ輪島塗の職人たちの確かな技術に、惜しみない賛辞が贈られました。
そしてゲストは、輪島塗の奥深さがわかるもう一つの場所へ。江戸後期から明治期にかけて建てられた「塗師の家」は、全国を行商してまわり、旅先で見聞きした文化や流行を輪島に持ち帰った“塗師文化”を伝えるためのスポット。間口に比べて奥ゆきが深く、シンプルな空間ながら木部には漆が施され、小粋な意匠が随所に盛り込まれています。ゲストたちは、展示されている歴代の漆塗の銘品を眺めたり、今回の『DESIGNING OUT Vol.2』で製作された器の説明を聞いたりしました。
今回の『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』に、2日目に参加されたそうですね。まずは、全体のご感想を教えてください。
「日本の里山は、基本的に人間をすごくリラックスさせてくれる場所です。ですから、会場となった“金蔵の棚田”で食事ができたのは、とても素晴らしい経験でした。もともと日本の食べ物は里山の恵みですから、里山を感じながらの食事は理想的なことです。海外のリゾートホテルなどでは、上手に演出された屋外レストランで食事をしたこともありますが、日本の里山では初めてでした」。
『DESIGNING OUT vol.2』では、プロデューサーとして新たな6つの器を発表されました。
「もともと僕は漆が大好きなんです。日本の工芸はどこも同じなのですが、日本人は謙虚なためプロセスを自慢しません。僕はそれを歯がゆく思っていました。そこで、今回のプロジェクトでは、職人のプロセスの技を見せようと思いました。また、料理は最後の仕上がりだけでなく、食材や手順も大切です。同じように、輪島塗も製品にたどり着くまでのさまざまな“プロセス”が重要となります。普段は見えない輪島塗の出来あがる過程を、一連の食器としてデザインすることで、コースで出される食体験の時間軸と重ね合わせてプレゼンテーションすることができました」。
輪島の職人さんたちも、今回のプロジェクトには期待が大きかったと思います。「今までの輪島塗にはないデザイン、コンセプトだ」という職人さんたちからの声もありました。
「日本の伝統工芸は、とても丁寧な仕事をされているのだけど、ヘタをすると一本調子なところがあると思っています。そこで、絶えず新しい風を吹き入れることが必要なのです。たとえば、大正時代から昭和初期にかけて、柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司らによって提唱された“民藝運動”によって、工芸に新しい風が吹き入れられました。『DESIGNING OUT vol.2』も、現代における同様の刺激になれば、と思いました」。
職人さんをはじめ、輪島の地域の人々へメッセージをお願いします。
「“職人技のプロセス”を見せるというコンセプトで、職人さんたちが、自分の手跡が見えるということを喜んでもらえたら何よりも嬉しいです。職人さんをはじめ輪島の地域の方々には、いまの伝統を保ちながらも、世界に通用する新しい力を備えてほしいと思っています。具体的には、コミュニケーション能力でしょうか。例えば、料理の世界では、世界に伍する人がすでに出てきています。それが、漆芸という職人の世界でも表れてほしいですし、輪島にはその芽が出はじめていると感じました。今回の『DESIGNING OUT vol.2』『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』は、そんな取り組みの第一歩だと思うので、これからも発展させてほしいです。僕もまた参加したいと思います」。
『DESIGNING OUT Vol.2』のクリエイティブプロデューサーを務めた隈研吾氏も、自身でデザインした器を確かめながら食事と共に体験した。
この日に購入希望された方には、その場で隈氏がサインを箱に入れてくれるサプライズも。
翌日ツアーのランチ後には、輪島が誇る漆の建築「塗師の家」も見学し、『DESIGNING OUT Vol.2』の器も展示された。
漆工技術の粋を集めた輪島塗、日本三大朝市のひとつに数えられる輪島朝市などで知られる石川県輪島市は、能登空港から車で30分ほど。その市街の中心部に『ラトリエ ドゥ ノト』はあります。建物はかつて輪島塗の工房である塗師(ぬし)屋だったもの。入口に掲げられたナイフとフォークをあしらったロゴマークが、ここがレストランであることをかろうじて伝えてくれますが、その外観からフランス料理店であることは読み解ける人は少ないはずです。店名の『L’Atelier de NOTO』を直訳するなら「能登のアトリエ」。オーナーシェフの池端隼也氏が、能登の食材を材料に料理という作品を創作し続ける工房と言えるでしょう。