9ozインディゴブロックチェック ウエスタンシャツ

サイズが合えばお得!

  • こちらはレディースSサイズサイズの商品です。
  • サイズが合う方いかがでしょうか?
  • 数年前のモデルのため通常価格より20%引き!
  • 商品自体は新品未使用のA品です!
  • 春シャツの定番、インディゴチェックがグレードアップして再登場!

    • アイアンハートの春シャツの定番、インディゴチェックシリーズ
    • デニムのようにインディゴ染めをした糸を使用した経年変化の楽しめるシャツ
    • 「Indigo×Dark Indigo」は全てインディゴ染めの糸を使用
    • 「Vermilion×Dark Indigo」はDark Indigoの部分がインディゴ染めの糸となります
    • 前立て裏、カフス裏は赤耳使いの仕様
    • 釦はグローブを付けたままでも留め外しのし易い、YKK社製グリッパー釦を使用
    • 釦表面にはIRON HEARTの文字が刻印されたオリジナル釦
    • ワンウォッシュ済み

    サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    Ladies-S 59.0 36.0 88.0 88.0 57.0 10.0
    Ladies-M 63.0 39.0 92.0 92.0 59.0 10.5
    XS 70.5 40.0 101.0 95.0 62.0 10.5
    S 72.0 42.0 105.0 99.0 62.0 10.5
    M 73.5 44.0 109.0 103.0 63.5 11.0
    L 75.0 46.0 113.0 107.0 65.0 11.5
    XL 76.5 48.0 117.0 111.0 66.5 12.0
    XXL 78.0 50.0 121.0 115.0 68.0 12.5
    XXXL 79.5 52.0 125.0 119.0 69.5 12.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。
    • ワンウォッシュ済み

    素材

    • 綿:100%

    エクストラヘビーフランネル グレンチェックウエスタンシャツ

    サイズが合えばお得!

  • こちらの商品はレディースSサイズです。
  • 数年前のモデルのため通常価格より20%引き!
  • サイズが合う方いかがでしょうか?
  • グレンチェックの極厚ネルシャツ!

    • 生地の表側を1回、裏側を2回起毛させ、着た時の暖かみ感を重視した生地です
    • 釦はバイカーグローブを付けたままでも留め外しのし易い、YKK社製パーメックス釦(ジャケット類に多く用いられる釦)を使用。
    • パーメックス釦はアイアンハートのロゴ入り。
    • 強度のあるヴィンテージワークシャツの縫製仕様に倣い、縫い合せは全て巻き縫い仕様。
    • そのため、裏もロック目の無い綺麗な仕上がり。(環縫い下糸は各色共にオレンジ配色)
    • ワンウォッシュ済み

    IHSH-181:サイズスペック

    着丈 肩幅 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    Ladies-S 60 36 91 90 58 10
    Ladies-M 64 39 95 94 59.5 10.5
    XS 69.5 40 103 98 64.5 10.5
    S 71 42 107 102 64.5 10.5
    M 72.5 44 111 106 66 11
    L 74 46 115 110 67.5 11.5
    XL 75.5 48 119 114 69 12
    XXL 77 50 123 118 70.5 12.5
    XXXL 78.5 52 127 122 72 12.5
    • 商品は若干の誤差が出る場合がございます。

    素材

    • 綿 100%

    エクストラヘビーフランネル オンブレーチェックウエスタンシャツ

    サイズが合えばお得!

  • こちらはレディースSサイズ、レディースMサイズの商品です。
  • サイズが合う方いかがでしょうか?
  • 数年前のモデルのため通常価格より20%引き!
  • 商品自体は新品未使用のA品です!
  • 冬の定番!ヘビーネルが今年も登場!

    • 生地の表側を1回、裏側を2回しっかりと起毛させ、着た時の暖かみ感を重視した生地です
    • 釦はグローブを付けたままでも留め外しのし易い、YKK社製パーメックス釦を使用(ジャケット類に多く用いられる釦)
    • 釦表面にはIRON HEARTの文字が刻印されています
    • 強度のあるヴィンテージシャツの縫製仕様に倣い、縫い合せは全て巻き縫い仕様
    • そのため、裏もロック目の無い綺麗な仕上がり
    • ワンウォッシュ済み

    サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    L-S 60.0 36.0 89.0 89.0 56.5 10.0
    L-M 63.0 39.0 93.0 93.0 57.0 10.5
    XS 69.5 40.0 102.0 97.0 62.5 10.5
    S 71.0 42.0 106.0 101.0 62.5 10.5
    M 72.5 44.0 110.0 105.0 64.0 11.0
    L 74.0 46.0 114.0 109.0 65.5 11.5
    XL 75.5 48.0 118.0 113.0 67.0 12.0
    XXL 77.0 50.0 122.0 117.0 68.5 12.5
    XXXL 78.5 52.0 126.0 121.0 70.0 12.5

    素材

    • 綿:100%

    エクストラヘビーフランネル グレンチェックウエスタンシャツ

    サイズが合えばお得!早い者勝ちです!

  • こちらはレディースSサイズ商品です。
  • サイズが合う方いかがでしょうか?
  • 数年前のモデルのため通常価格より20%引き!
  • 商品自体は新品未使用のA品です!
  • グレンチェックの極厚ネルシャツ!

    • 生地の表側を1回、裏側を2回起毛させ、着た時の暖かみ感を重視した生地です
    • 釦はバイカーグローブを付けたままでも留め外しのし易い、YKK社製パーメックス釦(ジャケット類に多く用いられる釦)を使用。
    • パーメックス釦はアイアンハートのロゴ入り。
    • 強度のあるヴィンテージワークシャツの縫製仕様に倣い、縫い合せは全て巻き縫い仕様。
    • そのため、裏もロック目の無い綺麗な仕上がり。(環縫い下糸は各色共にオレンジ配色)
    • ワンウォッシュ済み

    サイズスペック

    着丈 肩幅 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    Ladies-S 60 36 91 90 58 10
    Ladies-M 64 39 95 94 59.5 10.5
    XS 69.5 40 103 98 64.5 10.5
    S 71 42 107 102 64.5 10.5
    M 72.5 44 111 106 66 11
    L 74 46 115 110 67.5 11.5
    XL 75.5 48 119 114 69 12
    XXL 77 50 123 118 70.5 12.5
    XXXL 78.5 52 127 122 72 12.5
    • 商品は若干の誤差が出る場合がございます。

    素材

    • 綿 100%

    ポラーテック(R)フリースベスト

    • ぽいエステルのポーラフリースを使ったノーカラーベスト
    • インナーでもアウターでも、春から夏まで色々と使える便利な一着です

    素材

    • ポリエステル:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 2月上旬ごろ

    リフレクタープリントウルトラヘビーパーカー

    • オリジナルヘビースウェットを使ったフーデッドパーカー
    • 胸と背中には、夜にライトの反射で光るリフレクタープリントを採用し、バイク乗りにとってより快適な一枚に仕立てました

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 2月下旬ごろ

    12ozヘビーチノトラウザーリラックスフィット

    • 12ozのオリジナルヘビーチノを使ったスッキリしたシルエットが特徴のチノパン
    • ウエストまわりの作りは昔のミリタリーチノをベースにした大人顔の一本です

    【リラックスフィット】

    レギュラーシルエットより腰回りを少しゆったり目にして、裾は逆にやや絞り、ジャケットなどを合わせた時に似合うシルエットに仕立てた一本です

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 4月ごろ

    ミリタリーサージウエスタンシャツ

    • 13ozの肉厚なサージ生地をシャツに仕立てたアイアンらしいヘビーシャツ
    • 硫化染めを採用しているためデニム同様にアタリや色落ちを楽しめます
    • 釦はグローブを付けたままでも留め外しのしやすいYKK社製パーメックス(ジャケット類に多く用いられる)釦を使用

    【サージ】

    • 元々はウールの織り方で、主にスーツや学生服に使われる生地
    • タテ・ヨコ双糸で綾の角度は45度(表と裏が同じ顔)。
    • 丈夫さとキレイ目の顔が売りです!

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 2月中旬ごろ

    5ozボウリングシャツ

    • レーヨン100%のオンブレーチェック半袖シャツ
    • シンプルなデザインで、ジーンズからチノパン、ショートパンツまで、相手を選ばない万能な一枚です

    素材

    • レーヨン:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 4月上旬ごろ

    メカニックワークシャツ

    • 4ozの軽いビエラ生地で縫い上げたメカニックシャッツ
    • 薄手の素材に軽く起毛を施しているので、手触りにあたたかみがあります
    • ジーンズよりもチノパンやショートパンツに合わせた、大人っぽい着こなしが似合う一着です

    サイズスペック(製品予定寸法)

    着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口巾
    XS 66 41 105 102 61.5 10.5
    S 67.5 43 109 106 61.5 10.5
    M 69 45 113 110 63 11
    L 70.5 47 117 114 64.5 11.5
    XL 72 49 121 118 66 12
    XXL 73.5 51 125 122 67.5 12.5
    XXXL 75 53 129 126 69 12.5
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月下旬ごろ

    10oz反応染めセルビッチデニムワークシャツ

    • 10ozセルビッチデニムを使ったミディアムウェイトのワークシャツ
    • IHSH-322を製品の状態でブラックでオーバーダイした一着です

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 70.0 40.0 102.0 96.0 62.0 9.5
    S 71.5 42.0 106.0 100.0 62.0 9.5
    M 73.0 44.0 110.0 104.0 63.5 10.0
    L 74.5 46.0 114.0 108.0 65.0 10.5
    XL 76.0 48.0 118.0 112.0 66.5 11.0
    XXL 77.5 50.0 122.0 116.0 68.0 11.5
    XXXL 79.0 52.0 126.0 120.0 69.5 11.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    10ozセルビッチデニムワークシャツ

    • 10ozセルビッチデニムを使ったミディアムウェイトのワークシャツ

    サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 71.0 41.0 103.0 97.0 63.0 9.5
    S 72.5 43.0 107.0 101.0 63.0 9.5
    M 74.0 45.0 111.0 105.0 64.5 10.0
    L 75.5 47.0 115.0 109.0 66.0 10.5
    XL 77.0 49.0 119.0 113.0 67.5 11.0
    XXL 78.5 51.0 123.0 117.0 69.0 11.5
    XXXL 80.0 53.0 127.0 121.0 70.5 11.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    10ozセルビッチデニムワークシャツ

    • 10ozセルビッチデニムを使ったミディアムウェイトのワークシャツ

    サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 71.0 41.0 103.0 97.0 63.0 9.5
    S 72.5 43.0 107.0 101.0 63.0 9.5
    M 74.0 45.0 111.0 105.0 64.5 10.0
    L 75.5 47.0 115.0 109.0 66.0 10.5
    XL 77.0 49.0 119.0 113.0 67.5 11.0
    XXL 78.5 51.0 123.0 117.0 69.0 11.5
    XXXL 80.0 53.0 127.0 121.0 70.5 11.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    10oz反応染めセルビッチデニムウエスタンシャツ

    • 10ozセルビッチデニムウエスタンシャツを製品の状態でブラックでオーバーダイした一着

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 71.0 40.0 101.0 96.0 62.0 10.0
    S 72.5 42.0 105.0 100.0 62.0 10.0
    M 74.0 44.0 109.0 104.0 63.5 10.5
    L 75.5 46.0 113.0 108.0 65.0 11.0
    XL 77.0 48.0 117.0 112.0 66.5 11.5
    XXL 78.5 50.0 121.0 116.0 68.0 12.0
    XXXL 80.0 52.0 125.0 120.0 69.5 12.0
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月中旬ごろ

    10oz反応染めセルビッチデニムウエスタンシャツ

    • 10ozセルビッチデニムウエスタンシャツを製品の状態でブラックでオーバーダイした一着

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 71.0 40.0 101.0 96.0 62.0 10.0
    S 72.5 42.0 105.0 100.0 62.0 10.0
    M 74.0 44.0 109.0 104.0 63.5 10.5
    L 75.5 46.0 113.0 108.0 65.0 11.0
    XL 77.0 48.0 117.0 112.0 66.5 11.5
    XXL 78.5 50.0 121.0 116.0 68.0 12.0
    XXXL 80.0 52.0 125.0 120.0 69.5 12.0
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月中旬ごろ

    10ozセルビッチデニムウエスタンシャツ

    • 10ozセルビッチデニムを使ったミディアムウェイトのウエスタンシャツ
    • ステッチはホワイトの糸を使用

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 71.0 40.0 101.0 96.0 62.0 10.0
    S 72.5 42.0 105.0 100.0 62.0 10.0
    M 74.0 44.0 109.0 104.0 63.5 10.5
    L 75.5 46.0 113.0 108.0 65.0 11.0
    XL 77.0 48.0 117.0 112.0 66.5 11.5
    XXL 78.5 50.0 121.0 116.0 68.0 12.0
    XXXL 80.0 52.0 125.0 120.0 69.5 12.0
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月上旬ごろ

    10ozセルビッチデニムウエスタンシャツ

    • 10ozセルビッチデニムを使ったミディアムウェイトのウエスタンシャツ
    • ステッチはホワイトの糸を使用

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 71.0 40.0 101.0 96.0 62.0 10.0
    S 72.5 42.0 105.0 100.0 62.0 10.0
    M 74.0 44.0 109.0 104.0 63.5 10.5
    L 75.5 46.0 113.0 108.0 65.0 11.0
    XL 77.0 48.0 117.0 112.0 66.5 11.5
    XXL 78.5 50.0 121.0 116.0 68.0 12.0
    XXXL 80.0 52.0 125.0 120.0 69.5 12.0
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月上旬ごろ

    8ozミリタリーシャツ

    • カーキとオリーブはスレン染めの糸、ブラックは反応染めの糸を使用
    • 色によって使い分けをしたコードレーン(縦に畝が走って見える生地)を使って縫い上げたミリタリーシャツ
    • 胸のプリーツポケットが特徴

    サイズスペック(製品予定寸法)

    着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口巾
    XS 70.5 40 103 96 62 10.5
    S 72 42 107 100 62 10.5
    M 73.5 44 111 104 63.5 11
    L 75 46 115 108 65 11.5
    XL 76.5 48 119 112 66.5 12
    XXL 78 50 123 116 68 12.5
    XXXL 79.5 52 127 120 69.5 12.5
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月ごろ

    6ozビエラチェックウエスタンシャツ

    • 6ozの硫化染めした糸で織りあげた春用ビエラチェックシャツ
    • 少し擦れたような色合いが特徴の、昔の顔をした一枚です
    • 硫化染めのため、着込んで洗いこむと、ゆっくりと色落ちしていきます

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 69.5 40.0 103.0 97.0 63.0 10.5
    S 71.0 42.0 107.0 101.0 63.0 10.5
    M 72.5 44.0 111.0 105.0 64.5 11.0
    L 74.0 46.0 115.0 109.0 66.0 11.5
    XL 75.5 48.0 119.0 113.0 67.5 12.0
    XXL 77.0 50.0 123.0 117.0 69.0 12.5
    XXXL 78.5 52.0 127.0 121.0 70.5 12.5
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月上旬ごろ

    6ozビエラチェックウエスタンシャツ

    • 6ozの硫化染めした糸で織りあげた春用ビエラチェックシャツ
    • 少し擦れたような色合いが特徴の、昔の顔をした一枚です
    • 硫化染めのため、着込んで洗いこむと、ゆっくりと色落ちしていきます

    サイズスペック(製品予定寸法)

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 69.5 40.0 103.0 97.0 63.0 10.5
    S 71.0 42.0 107.0 101.0 63.0 10.5
    M 72.5 44.0 111.0 105.0 64.5 11.0
    L 74.0 46.0 115.0 109.0 66.0 11.5
    XL 75.5 48.0 119.0 113.0 67.5 12.0
    XXL 77.0 50.0 123.0 117.0 69.0 12.5
    XXXL 78.5 52.0 127.0 121.0 70.5 12.5
    • 本製品になった際に上記サイズより差が出る場合があります
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    納期予定

    • 3月上旬ごろ

    9ozインディゴオンブレ―チェックワークシャツ

    • ブルーの濃い部分をインディゴ染めした糸、薄い部分を硫化染めした糸で織りあげたオンブレ―チェックのワークシャツ
    • 使い込んで色が落ちていくことで、ジーンズと同じように、世界で一枚の自分顔のシャツになります

    サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 69.0 40.0 102.0 96.0 62.0 10.0
    S 70.5 42.0 106.0 100.0 62.0 10.0
    M 72.0 44.0 110.0 104.0 63.5 10.5
    L 73.5 46.0 114.0 108.0 65.0 11.0
    XL 75.0 48.0 118.0 112.0 66.5 11.5
    XXL 76.5 50.0 122.0 116.0 68.0 12.0
    XXXL 78.0 52.0 126.0 120.0 69.5 12.0
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    パディングベスト

    • 高密度の目の詰まった硫化染めダウンプルーフ(平織り)を表に使い、裏にはビエラチェック生地を配したハンティングベスト
    • 表のダウンプルーフには裏にポリエステル面を合わせてダイヤ型のキルト加工を施してあります。
    • こちらの商品は予約ではございません!

    サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り
    XS 61.5 32.0 100.0 98.0
    S 63.0 33.0 104.0 102.0
    M 64.5 35.0 108.0 106.0
    L 66.0 37.0 112.0 110.0
    XL 67.5 39.0 116.0 114.0
    XXL 69.0 41.0 120.0 118.0
    XXXL 70.5 43.0 124.0 122.0
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。予めご了承ください

    素材

    • 綿:100%

    生産国

    • 日本

    555S-25MB W36 股下82cm

    股下の長さが合えばお買い得の商品です。早い者勝ち!

        
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    803 ブラック W33 ※リベットカスタム品

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    803 ブルー W32 股下78cm

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    801 ブラウン W34 股下80cm

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    461Z W32 股下80cm

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    634S-WH W30 股下71cm

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    • 綿:100%

    634S-14 W32 股下77cm

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    • 綿:100%

    634Z W31 股下71cm

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    • 綿:100%

    634S W32 股下77cm

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    • 綿:100%

    634S W34 股下75cm

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    555-XHS W31 股下83cm

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    • こちらの商品は未洗いのため、初回のお洗濯でウエストで約2cm、股下で2cm程度の縮みがでますのでご注意ください。(生地は防縮加工済みです。)
    • アイアンハートの股下の測り方はこちらをご参考に。
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    統括編集長・倉持裕一が振り返る、2021年の『ONESTORY』。

    想像以上に長いコロナ禍。メディアを沈滞させた決断。

    2020年2月。この時期を皮切りに、新型コロナウイルスという言語が一気に日本中を騒がせました。当時、まだその実態が分からず、死に追いやる感染病として国民の恐怖心は加速し、同時に経済も破綻。『ONESTORY』も例外ではなく、『DINING OUT』を含め、さまざまなプランは全て白紙に。

    コロナ禍以前に取材した記事も遅延に遅延を重ねる結果になってしまいました。『エタデスプリ』、『グラン・ブルー・ギャマン』、『レヴォ』などがそれです。

    すでに取材したのであれば、痺れを切らして公開する選択もありましたが、日本は緊急事態宣言や自粛の真っ只中。これらの記事をきっかけに、県をまたぐ移動の加担やそれによって感染者を出してしまったら、はたまたもっと最悪の事態を招いたらというメディアとしての責任を強く感じました。

    誰もが情報発信できる今だからこそ、メディアの役割は重大だと認識しています。個人とメディアは、異なるものだと考えます。大袈裟に言えば、日本だけでなく世界が難局と対峙する中、活発な記事の更新は、社会に不要だと思ったのです。結果、メディアを沈滞させる決断をしました。

    過去の振り返り記事において、自分は取材で出会った方々をこのように綴っていました。

    ―――
    「働く姿」ではなく「生きる姿」、「仕事」ではなく「人生」を目の当たりにしてきたような気がします。
    ―――

    今まさに我々において、それが問われている。そう感じました。

    メディアやイベントではない別のカタチを持って自分たちにできることは何か。地域に貢献できることは何か。社会の一員になれることは何か。

    それに向かって走り続けた1年となりました。
     

    「ハレ」だけではない。「ケ」と向き合う覚悟。

    前述、自分は過去の振り返り記事において、このようにも綴っています。

    ―――
    まだここでは発表できないプロジェクトを水面下で進めています。それもまた、イベントでもメディアでもないカタチのものです。
    『ONESTORY』は、既成概念にとらわれることなく、時代と目的に合った表現をより強固にしていきます。カタチのないカタチ、その活動体が『ONESTORY』です。
    ―――

    そのカタチのひとつは、2021年に発表できた長野県塩尻市の奈良井宿における『杉の森酒造』プロジェクトでした。

    中山道に位置する奈良井宿は、「木曽の大橋」のかかる「奈良井川」沿いを約1kmにわたって形成している日本最長の宿場です。そんな風景の中に200年以上も町のシンボルとして存在し続けていた場所が『杉の森酒造』でした。長い歴史に幕を下ろしたのは、2012年。以降、時は止まったままでしたが、2021年に『BYAKU -Narai-』として新たに息吹を取り戻しました。

    酒蔵も復活させ、宿泊施設、温浴施設を備える中、我々はかつて蔵だった場所をレストランとバーにするプロジェクトに参画。そこでは、さまざまな学びがありました。

    地域との共生、その魅力を伝えるなどは、これまでメディア及びイベントでも実践してきましたが、大きな違いはカタチとして「場」が残り続けるということです。

    例えば、『DINING OUT』であれば、2日(準備期間を除く)。言わば「ハレ」の日です。しかし、1年を通して見れば、残り363日「ケ」の日があるのです。

    カタチとして、「場」として、残り続ける関わりには、この「ケ」といかに向き合うかが大事になってきます。

    そして、もうひとつのカタチは、銀座『和光アネックス』地階グルメサロンのリニューアルプロジェクトへの参画です。『ONESTORY』は、本件のプロデュース及び商品のキュレーションに携わりました。

    日本全国に眠る知られざる名品の発掘や商品開発、季節の商材、ソムリエや唎酒師たちとの企画などを展開。その好例は、酒職人・松本日出彦氏による「武者修業」シリーズでした。発売当日に完売という結果を残すこともできましたが、やはり本件においても重要なことは「ケ」との対峙。

    完売した1日ではなく、残りの364日。イベントのあった1週間ではなく、残りの358日。「カタチ」のある場、地域、もの、こと、人と向き合うことは、そんな日々と向き合い「続ける」ことなのです。

    それぞれ準備期間に数年を有し、ようやく具現できた2021年。弊社代表・大類知樹と一番議論したテーマが、この「ハレ」と「ケ」でした。
     

    ONESTORYのやり方でONESTORYらしく。

    未だコロナ禍の尾を引いたまま2022年を迎える。

    我々もさまざまな変化に順応していかなければいけません。テクノロジーの進化も手伝い、そのスピードは、日に日に加速しています。

    しかしながら、大地や海から生まれるものや植物、季節の訪れなど、地球の動きに時短や効率はなく、一足飛びに何かを成し得ることはできません。

    つまり、物事が生まれる正しい時間の見極めが必要だと考えます。「命」の時間です。

    我々は、表現者として、活動体として、何ができるのか。そして、人としてどう生きるべきなのか。

    その解は、そう易々と得ることはできませんが、波に呑まれず、『ONESTORY』のやり方で『ONESTORY』らしく、自分たちにできる最良の道を歩んでいきたいと思います。

    そして、2021年も多くの読者様、取材先及び地域の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて、出会った全ての方々に深く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

    どんなに時代が変わろうとも、『ONESTORY』は、まだ見ぬ日本の感動を探し続けます。

    それでは、日本のどこかでお会いしましょう。画面上ではなく、どこか大切な場所で。

    2022年、そんな出会いが叶う一年になることを願います。

    『ONESTORY』統括編集長・倉持裕一

    “わさび”といえばこの料理。わさび菜のピリ辛を生かす簡単ちらし寿司。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・わさび菜/茨城県行方市]

    なめがた ベジタブルキングダム辛味、食感、色味。全てを引き立てるシンプルな料理。

    茨城県行方市を訪ねた『HATAKE AOYAMA』の神保シェフが、今回出合った食材はわさび菜。現地のハウスで採れたてを試食したシェフは、「シャキシャキの食感、鮮やかな色、ピリッとした辛さの全てが生きるメニューを考えたい」と決意していました。

    その後、神保シェフのもとには試作用のわさび菜が到着。改めて試食し、「葉はもちろん、茎も美味しいですね。この食感と辛味は、やはり“あの料理”で生きるでしょう」とにやり。そして教えてくれた料理は、ちらし寿司でした。

    「やっぱり“わさび”といえば寿司ですからね。少し工夫することで、わさび菜の魅力を引き出します」と自信をみせるシェフ。そのポイントは、葉と茎に分けてそれぞれ下処理をすること。これにより軽やかな食感を生かしつつ、わさび菜の魅力である辛味を引き出すのだとか。ではさっそくレシピを見てみましょう。

    【関連記事】歴史は浅くも、こだわりは強い。シャキっと食感でピリッと辛い、行方市のわさび菜。

    材料はいたってシンプル。ただし梅肉は塩辛すぎない南高梅、ごはんは炊きたてを揃えたい。

    なめがた ベジタブルキングダムわさび菜とツナのちらし寿司

    材料(2人分)
    わさび菜 1パック
    ツナ缶 1缶
    たたいた梅肉 50g
    炊き上げた白米 2合分
    (A)
     米酢 大さじ3杯
     砂糖 大さじ2杯
     塩 小さじ4分の1杯
     白炒りゴマ 少々
     刻み海苔 適量

    手順
    1.  わさび菜は水で洗って葉と茎に分け、葉は5分ほど水に漬けてから千切りに、茎は薄くスライスしてひとつまみの塩(分量外)で塩もみし、5分ほど置いておく
    2.  塩もみした茎の塩気を水で洗い流す
    3.  (A)を合わせてすし酢を作り、炊きたてのごはんに入れて切るように混ぜ、酢飯を作る
    4.  3.の粗熱が取れたらたたいた梅を入れて混ぜ、続いてツナ缶を汁ごと入れて混ぜる
    5.  更に冷めてから2.のわさび菜の茎を入れて混ぜ、次に葉を2回に分けて投入し、しっかりと混ぜる
    6.  器に盛り付け、白ゴマ、刻み海苔をふりかけて完成
    わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。 わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。

    わさび菜の葉は、 刻む前に5分ほど水に漬けておくとシャキッとする。

    水から上げた葉はしっかりと水分を取り、空気を含ませるように刻んでいく

    わさび菜を混ぜるのは酢飯の粗熱が取れてから。温かいままだと食感が損なわれてしまう。

    シャキシャキの食感と鮮やかな緑が目を引くちらし寿司が完成。もちろんお好みの刺し身などを合わせても美味しい。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

    歴史は浅くも、こだわりは強い。シャキっと食感でピリッと辛い、行方市のわさび菜。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・わさび菜/茨城県行方市]

    なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

    茨城県行方市は、年間80品目以上の野菜をはじめ、肉や魚まで、幅広い食材を産出する食材王国。我々ONESTORYは、その秘密や魅力的な食材を探るため、いばらき食のアンバサダーを務める『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフとともに、行方市を訪ねました。

    今回のターゲットは、わさび菜。
    アブラナ科の葉物で、その名の通りわさびのような爽やかな香りと、ピリッとした辛味が特徴。数々の野菜を生産する行方市ですが、実はわさび菜の歴史はそう長くなく、高齢者や兼業農家向けの作物として2005年に導入されたことが起源。しかしそこから行方市特有の温暖な気候や、研究熱心な生産者の努力が実を結び、わずか15年ほどで行方市を代表する農産物のひとつとなったのです。

    産地を訪ねた神保シェフも、行方市のわさび菜を絶賛。「この爽やかな香りと食感を活かすメニューを考えてみたいですね」と、すでに頭の中でレシピの構想を練り始めた様子でした。そんな神保シェフと訪ねたわさび菜産地巡礼の様子をお伝えします。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

    日常の延長線上にある穏やかな時間。暮らすように滞在する、新潟の古民家宿。[里山十帖 THE HOUSE/新潟県南魚沼市]

    日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』はこちらから

    築150年の古民家は、まるでもうひとつの邸宅。『里山十帖 THE HOUSE』での「暮らし」を楽しみたい。

    里山十帖 THE HOUSE何もしない時間を楽しむ。そんな過ごし方を肯定する宿。

    多くの場合、旅のプランの第一歩は宿を決めることから始まります。つまり旅の目的地は宿です。しかし考えてみると、旅において宿に滞在する時間は思うよりも短いもの。ならば宿には、何が求められるのでしょうか。

    今回ご紹介する宿は、そんな疑問に答えを出してくれるかもしれません。宿の名は『里山十帖 THE HOUSE』。名宿『里山十帖』の離れとして誕生した1日1組限定の古民家宿です。 

    南魚沼の市街を過ぎて街道を折れ、山道をしばし進むと、現代的な装いの中に積み重ねた時間の長さを隠す古民家が現れます。築150年。長い間、豪雪に耐えてきた重厚感は、モダンなリノベーションを経ても褪せることはありません。 

    室内に入り荷をほどいたら、まずは窓に向いたチェアで一息。窓外に見えるのは、先ほど走ってきた街道です。この景観と、それを眺める時間こそが、この古民家宿の醍醐味のひとつ。遠くに望む道路に車が行き交う。車は誰かの人生を乗せて、走る。その人生に思いを巡らせながら、時間が過ぎる。無為な時間のようでいて、実は豊かな時間。「せっかくの旅だから何かをしなくては」という思い込みは、この宿には無縁です。 

    夕食は迎えの車に乗って、本館である『里山十帖』まで。木の温もり溢れるダイニングで、これもまた豊かな食事が始まります。

    「魚沼の四季の移ろい、七十二候に寄り添う料理を心がけています」という料理長の桑木野恵子氏。新潟の山海の幸で織りなす八寸、旬のキノコの葛寄せ、子持ち鮎と自家製梅干しを添えた蕎麦粥。料理には、桑木野氏の思いが込められています。

    「せっかく山まで来て頂いたから、本当は山の中で食べて欲しいくらい。だからそれができない分、景色が浮かぶ料理だといいなと思っています。ここに来るまでの道中の風景が浮かぶような」。

    そんな気持ちがこもっているからこそ、『里山十帖』の料理は、心に深く刻み込まれるのでしょう。

    遠くに望むのは南魚沼の町並み。市街地と田園が自然に調和した現代の里山。

    椅子に座り、外を眺めるためだけに設えられたような一室。この部屋の存在が、宿での滞在をゆるやかに彩る。

    重厚な梁と柱、囲炉裏とモダンな家具や快適な設備。新旧がバランス良く調和した心地よい室内。

    『里山十帖』で味わう夕食の一例。子持ち鮎と自家製梅干しを添えた蕎麦粥。

     地元の素材、地元の調理法をふんだんに取り入れる八寸。料理長・桑木野氏の思いが込められた一品。

    南瓜の葛寄せを合わせた茸の椀。郷土の季節感を表現する滋味深い味に、料理長・桑木野氏の思いが宿る。

    発酵にも造詣が深い料理長・桑木野恵子シェフ。郷土料理のアイデアも積極的に取り入れる。

    里山十帖 THE HOUSE朝日とともに目覚め、炊きたての米を食べる。そんな里山の暮らしを体験。

    部屋へ戻ったら、満点の星空を眺めながら露天風呂。絶景のダイニングやテラスも魅力ですが、眠気が訪れたらすぐに寝てしまっても良いでしょう。この宿では、何も特別なことをする必要はありません。

    翌日の朝食は部屋食。

    しかし部屋にやってくるのはお盆に乗った朝食ではなく、朝食を作る料理スタッフです。部屋に設えられたキッチンで食事の準備。土鍋でごはんが炊ける音、漂う出汁の香り。部屋は幸せな気配で満たされます

    「ご飯は炊きたてが一番ですから」スタッフの松浦由奈氏は、さも当然のように笑います。部屋での調理というわずかな時間の差、そこから生まれる満足感を、この宿は何より大切にしているのでしょう。

    つまりこの宿が提供してくれる時間は、特別な非日常ではなく、日常の延長線上にある穏やかさなのです。そして旅人が宿に求めるのはきっと、そんな当たり前の時間なのです。

    何もしない時間を過ごすことも、すぐに眠ってしまうことも、当たり前のように許せること。心穏やかに、まるで暮らすように滞在する宿。それは旅の目的地としての宿の、正しい形なのかもしれません。

    「朝食は、炊きたてのご飯が一番のご馳走。ぜひ、ご堪能ください」と話す、スタッフの松浦由奈氏。

    露天風呂からもこの絶景。天気が良い日は見事な星空も眺められる。

     ベッドルーム。古民家の骨格を活かしつつ、快適に過ごせる空間にリノベーションされている。

    室内の一角に設えられたダイニング。このキッチンで朝食が準備される。

    部屋で調理される朝食の一例。米はもちろん、魚沼産のコシヒカリ。

    住所:新潟県南魚沼市天野沢家森山671-1 MAP
    TEL:0570-001-810
    https://satoyama-jujo.com/thehouse/

    日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』はこちらから

    (supported by SUBARU)

    自然とともに生きる昔ながらの生活を垣間見る。絶景の棚田を一望するツリーハウス。[星峠宿/新潟県十日町市]

    架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

    星峠の棚田を目下に臨むロケーション。朝、昼、夕、夜、刻一刻と表情を変える自然芸術の絶景に身を興じる時間は、感動を超えた体験となる。

    星峠宿300年続く集落に誕生した樹上のキャンプ場。

    かの有名な星峠の棚田。

    朝靄に煙る情景、柿色の夕焼け、紫の残照に照らされる日没。さまざまなメディアに登場する新潟県十日町市を代表する景観です。そんな星峠に、1日1組限定のツリーキャンプ施設ができました。美しい景色を眺めながらコーヒーを飲み、食事を食べ、眠りにつき、目覚めたることができるという素晴らしい施設をご紹介しましょう。

    十日町の市街地を過ぎ山道をしばし進むと、やがて星峠に到着します。最初に目に入るのは、噂に違わぬ絶景です。 高台から見渡す一面の棚田。匂いがあり、音があり、肌に触れる空気がある。写真だけではわからないリアルな絶景です。 

    受付に訪れた『星峠宿CHAYA』で、施設のオーナーである粂井貴志氏が出迎えてくれました。学生時代の同級生にここ出身の友人がいた縁で訪れてみて惹きつけられ、やがてこの地に暮らすようになった人物。もちろん、山間の集落に余所者が受け入れられるまでには、幾多のハードルもあったことでしょう。

    「もちろん簡単ではありませんでした。最初の数年は“自分がここで何をやりたいか”ではなく、“自分がここのために何ができるか”だけを考えていました」。 と粂井氏は振り返ります。

    粂井氏の晴れやかな笑顔は、その迷いのない生き方の象徴。彼との会話も、この施設を訪れる楽しみのひとつ。

    星峠の棚田を舞台にツリーキャンプを堪能出来る『星峠宿』。ここでは、移りゆく景色の変化をただ望むことが何よりも特別な体験になる。

    200枚の田圃がある星峠だが、手掛けるのは粂井氏を含め9名だけ。2022年には、7名まで減少する。

    ツリーハウスの受付を兼ねた『星峠宿CHAYA』。コーヒーやグッズのほか、目の前の田で育った米も販売されている。

    4mの樹上に作られたウッドデッキ。道路の一段上から星峠を見渡す、宿泊者のためだけの特等席だ。

    粂井氏が精魂込めて育てた星峠の棚田米。品種はコシヒカリ。ミネラル豊富な雪解け水とこの地の土壌により甘み豊かに育つ。

    棚田を眺めながら、その地で育った米を炊きたてで味わう。この地の住人にとっては当たり前のことでも、遠来のゲストにとっては何よりのご馳走。

    宿泊者専用の風呂小屋も完備。湯船に浸かりながら里山を望むことができる。

    星峠宿観光地ではなく住民が暮らす里山だからこその、生きた絶景。

    観光地として脚光を浴びた星峠の棚田ですが、ここはあくまで地元住民の生活の場。年々増加する観光客に困っている部分もあったといいます。実は駐車場も公衆トイレも整備された道路も、すべて地元の方の土地を切り取ったもの。道路の整備やトイレの清掃をしても、地元には一銭の収益にならぬばかりか、手間ばかりがかかる。その解決策を次々に提示するうち、やがて粂井氏は集落に受け入れられていったのです。今ではこの棚田に土地を持ち、米も育てる粂井氏。いわば正式に住人として迎えられたのです。

    そんな話をしながら粂井氏が、ツリーハウスのデッキへと導いてくれました。 

    「集落の人と話し合って、一番の絶景ポイントにツリーハウスを建てました」。

    4mの木の上で目に飛び込んできたのは、日本の原風景のようでいて既視感のない、まっさらな里山の風景です。

    ただ美しい景色という以上に、この風景に今も血が通い、動き続けている事実が胸に迫ります。300年前の先祖が開墾し、代々それを守り続けているという住民の誇り。記録画像ではなく、進行形で動き続ける生きた絶景。施設では眼の前の棚田で収穫された米も販売されています。この景色を前に、その場所で収穫された米を味わう。それはどれほど豊かで、貴重な経験でしょう。

    12月に入るとここは4mもの雪に閉ざされ、施設は雪解けまで閉鎖となります。そんな自然の成り行きに任せる姿も、またこの地の魅力。自然とともに生きる豊かな暮らし。このキャンプ場での体験は、そんな遠い世界のほんの一端を垣間見せてくれます。

    雨、風、霧、雪。山間だけに自然の厳しさもあるが、それもまたこの地の魅力。

    住所:新潟県十日町市峠728 MAP
    TEL:025-594-7600
    https://hoshitoge.jp

    架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

    (supported by SUBARU)

    日本を走る。日本を旅する。グランドツーリングNIPPON[Grand Touring NIPPON]

    架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

    Main Pageすべての移動を感動に変えるクルマ。

    『ONESTORY』は、日本の自動車メーカー『SUBARU』とともに、日本を巡るオウンドメディア「グランドツーリングNIPPON」を立ち上げました。

    本企画は、架空の旅人が日本に潜むまだ見ぬ感動を探す旅。忘れがたい旅の紀行を記録に書き留めるツーリングエッセイです。

    それは、最果てにある宿かもしれません。
    山間で営む小さなレストランかもしれません。
    はたまた、目的なく走った先に出合う絶景かもしれません。

    ここでは、そんな旅から得た出合いを本メディアより抜粋し、ご紹介します。
     

    架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

    (supported by SUBARU)

    水風呂は、日本海。海水浴場の跡地に誕生したサウナで味わう究極の開放感。[サウナ宝来洲(ホライズン)/新潟県柏崎市]

    架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

    日本の渚百選に入選した風光明媚な鯨波海水浴場。天気が良い日は海の向こうに佐渡ヶ島を望む。

    サウナ宝来洲サウナで温まり、浜辺を走り、海に飛び込む。

    新潟に海が見えるサウナがある。

    そんな噂を聞きつけ、向かった先は、新潟県柏崎市。施設の名は『サウナ宝来洲(ホライズン)』。訪れてみるとそこは、“海が見える”どころではありませんでした。いうなれば海そのもの。道路を挟んで向かいにある『小竹屋旅館』で水着に着替え、水着のまま道路を渡れると、そこがサウナです。

    サウナ室に入ると、目線の高さの窓から海を一望。時計とにらめっこしながら「あと5分、あと3分」と我慢するのではなく、ただ海に見惚れていると時間が過ぎていきます。体が十分温まったら、サウナ室を出て浜辺へ。このサウナに水風呂はありません。代わりにあるのが海です。

    サウナ室を出て浜辺を走り、そのまま海に飛び込む。火照った肌を冷たい日本海が冷やします。皮膚がきゅっと収縮し、心が溶ける。海水の浮力に任せ、海の上に大の字に浮かべば、波が体をやさしく揺らします。その贅沢な開放感こそ、このサウナの醍醐味です。

    体が冷えたら、サウナ室の屋上にあるデッキへ。無論、ここからも海を望みます。施設すべての中心に据えられるのは、海。海辺の適地があったからサウナを作ったのではなく、この海を見せるためにサウナという手段を選んだような、海中心の施設です。

    サウナ室には目線の高さから海を望む窓がある。ストーブには300kgのサウナストーンを設置した。

    熱を逃さない建て付けや給排気のシステム、メンテナンスの利便性など、見えない部分にまでこだわりが溢れる。

    浜辺や施設屋上のデッキチェアや浜辺に設置されたハンモックなど、思いお思いの場所で外気浴ができる。

    サウナ宝来洲海辺の旅館で育ったオーナーの思いの結晶。

    このサウナへの思いを、オーナー・杤堀耕一氏に伺ってみました。

    栃堀氏の祖父と両親がこの地に海の家を開き、その後『小竹屋旅館』を開いたのは今から半世紀以上前のこと。その家に生まれ、賑わう海水浴場を見て育った栃堀氏ですが、やがて時代が流れます。価値観の多様化が、人々の興味を少しずつ海から逸していったのです。
    一度は故郷を離れていた栃堀氏はこの地に戻り、さまざまな手を打ちました。しかし天候や海況など自然の力には抗うことはできず、夏の海水浴客減少も止まりません。
    それでも杤堀氏は、この海を、ただ寂れさせたくはなかったといいます。「何かしないと、何か」そう考え抜いた栃堀氏の目に、偶然「サウナ」の文字が飛び込んできました。「これしかない」栃堀氏の心は決まりました。 

    人気のアウトドアサウナを見学に行き、勢いのままそのオーナーに施設のプロデュースを直談判し、地元工務店と話し合い、日々サウナについて学び、最上級のサウナ専用薪ストーブを準備し、フィンランドからサウナストーンを取り寄せる。思いついてから施設のオープンまで、わずか9ヶ月の出来事でした。

    まるで一遍の物語のように開業秘話を聞かせてくれた杤堀氏。その端々から伝わる、この海への思い。これだけの施設を作るのだから、大きな決断だったことでしょう。しかし杤堀氏の言葉からは、先への不安ではなく、新たなことを始めるキラキラとした高揚が伝わってきます。

    「自然が相手ですから、0点の日もあれば200点の日もあります」。

    秋の日本海を見ながら、杤堀氏は言いました。そして「だからこそ面白い」と笑いました。そして最後に「どの海も大好きだけど、とりわけ海に夕日が沈んでいく時間が好き」と言いました。

    日本海を赤く染めながら海に沈む夕日。その壮絶なまでの絶景も、このサウナの財産のひとつなのでしょう。

    オーナー・栃堀氏の言葉の端々には、この海への愛着がにじむ。

    住所:新潟県柏崎市鯨波2-3-6 小竹屋旅館敷地内 MAP
    TEL:0257-41-6270
    https://www.odakeya.com/sauna/ 
     

    架空の旅人が日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』

    (supported by SUBARU)

    2022デニムカレンダー

    今年も出ました!2022年デニムカレンダー!

       
    • 今年はプレゼントではなく販売となりました!
    •  
    • 21oz生地の【 BB 】ブラック×ブラックの生地です!
    • 全世界200枚限定販売です!
    • 無くなり次第終了
    •  
    • 製品にはならない生地を使って作っておりますので生地に細かなキズや筋が入ってしまっている場合がございます。
    • 白い筋は濡れたタオル等でふき取って頂ければ目立たなくなります
    • お一人様1点でお願い致します。

    サイズ

    • 約縦102センチ×横84センチ

    ドリンク、調味料、お菓子……。2021年を締めくくるベストギフト12選。[和光アネックス/東京都中央区]

    年末年始は、ギフトを贈る側、贈られる側の機会も多い季節。センスの利いた品選びとワンランク上のギフト提案をぜひ。

    WAKO ANNEXアルコールとノンアルコール。届けたい相手やシーンを配慮する、TPOのようなギフト選び。

    年末年始は、各所へのご挨拶の時期でもあり、集いの時期でもあります。そんな時、少し気の利いたギフト選びをぜひ。

    中でも、ドリンクは万能選手です。まずは、ひと味変わったアルコール3種。秋元商店「籠屋ブルワリー和轍」、完熟屋「ミサキミード」、吉田酒造店「手取川 Sparkling dot」です。

    ビール、ミード、日本酒。種類の異なるアルコールは、こだわりのある独特な造りとそれによって豊かな味わいが生まれるブランドを選択。中でも、「籠屋ブルワリー和轍」は「和光」限定店舗販売、「手取川 Sparkling dot」は数量限定販売のため、希少性の高い逸品になります。

    次は、ノンアルコール3種。宮崎茶房「みねかおり白茶」、茶縁むすび「政所茶・古樹番茶」、カネロク松本園「燻製紅茶 りんご」です。

    宮崎、滋賀、静岡。茶の産地としても名高い各地の品は、ただの茶にあらず。こだわりの素材と味のアプローチは、おいしさだけでなく健康にも配慮しています。「政所茶・古樹番茶」においては、都内初 数量限定店頭販売のため、そんなエピソードとともにギフトを贈れば、その集いも盛り上がること間違いなしでしょう。

    ※今回、ご紹介した商品の一部は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナー及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内させていただいております

    秋元商店「籠屋ブルワリー和轍」は、杉の香りとモルトの旨みが凝縮された木桶仕込みのジャパニーズビール。木桶は国産材ブランドである吉野杉を使用。木桶は呼吸し、住み着く微生物が時間をかけて発酵を進め、木桶でしか出せない深い味わいを生み出す。生産量も極端に少ない貴重な国産麦芽を使用し、繊細できめ細かく優しい味わいが特徴。※「和光」限定店舗販売

    完熟屋「ミサキミード」は、愛媛・佐多岬の蜂の蜜のみを使用し、非加熱で製造。ミードとは蜂蜜から作るお酒であり、人類最古のお酒とも言われている。蜂蜜のお酒とは思えない深い味わいの秘密は、蜂蜜の含有量が60%も含まれていることにある。高品質な素材に加えて、しっかりとした酸が感じられる味わいの仕上がりに。

    モダン山廃造りのナチュラルで優しいお酒を瓶内二次発酵させたスパークリング日本酒、吉田酒造店「手取川 Sparkling dot」。口に含むと優しく弾ける泡感は、全て天然のもの。優しい酸味でスッキリ爽やかな味わいのため、食前・食中酒にも最適。※数量限定販売

    宮崎茶房「みねかおり白茶」の素材は、宮崎県五ヶ瀬町で育てる。農薬や化学肥料などを使用せず、有機栽培をしながら多くの品種を育て、お茶の香りを追求。様々あるお茶の中でも白茶はスッキリとした味わいと熟成された深みのあるハチミツのような香味が特徴。ティーポットに2~3gの茶葉を入れ、150ccのお湯を注いで2~3分抽出していただくのがお勧め。

     茶縁むすび「政所茶・古樹番茶」。滋賀県琵琶湖の東部、鈴鹿山系の渓谷に位置する政所は、古くから「宇治は茶所、茶は政所」と謳われた銘茶の最高峰であり、豊臣秀吉が生涯最も愛したお茶所。全国で2%以下となった在来種の茶樹の中、樹齢100年の古樹を葉だけでなく幹や枝までまるごと薪の火でじっくりと焙煎加工し、スモーキーな香りと口に広がる甘さを引き出す。※都内初 数量限定店頭販売

    カネロク松本園「燻製紅茶 りんご」は、環境保全に貢献し、世界農業遺産に登録された「静岡の茶草場農法」を継承。有機肥料を中心に土作りにこだわった栽培で、これまでの日本茶の世界にはなかった薫香が漂うお茶。燻製材は林檎の樹木を燃料に、品種はブラムリーアップルの木材を使用。スモーキーな中に林檎の優しい香りを楽しめる紅茶。

    WAKO ANNEX利用頻度の高い品だからこそ喜ばれる。プライベートに贈りたい、日常の特別。

    お味噌やオリーブオイル、ジャムなど、日常において頻繁に使われる品々だからこそ、嬉しいギフトであり、人気のギフト。そこに、少しのセンスと上質な素材にこだわった品をセレクトすることによって、ワンランク上の贈り物になるのです。

    まずは、調味料など3種。井上味噌醤油の「常盤味噌」と「白味噌」。アグリオリーブ小豆島「小豆島産100 %エキストラバージンオリーブオイル」。

    いつもの料理で使用するお味噌を「井上味噌醤油」に、いつもかけるオリーブオイルを「アグリオリーブ小豆島」にするだけで、その味は見違えるほど、リッチに変わります。「井上味噌醤油」は、「和光」限定店舗販売のため、中々お目にかかれない品になります。

    また、パン食派のお相手であれば、ジャムやはちみつなどもお勧め。

    ビーハッピー/タケイファーム「アーティーチョークはちみつ」や楽農研究所「SOIL TABLE 苺のコンポート」は、朝の時間に豊かさをもたらすでしょう。もちろん、日常のお料理にも最適です。今回のタケイファームの品は、「和光」限定販売。加えて、ミシュランの星獲得店やトップシェフ、食通も唸る品として注目もされています。

    また、この2品とともに楽しめる、NORTH FARM STOCK/白亜ダイシン「北海道クラッカー プレーン」のような品を添えて贈るギフトもまた、ホスピタリティーに長け、相手の記憶に残るに違いありません。

    贈る側、贈られる側。両立場の機会も多くなる季節ですが、どちらにしても、喜ばせたいギフト、嬉しいギフトであれば、幸福と口福の連鎖が生まれると思います。

    年末年始に向け、良きギフト選びをぜひ。

    井上味噌醤油は、明治8年創業より変わることのない手造りにて麹菌を生育。「常磐味噌」をはじめ、使用しているのは「生味噌」のため、酵素・酵母が活動状態にあり、味噌が持つ本来の風味を楽しめる。約150年仕込み続けた「木樽」にて天然醸造されることにより、奥深い発酵も表現される。※「和光」限定店舗販売

    上記と同様、井上味噌醤油の「白味噌」。伝統製法「もろぶた糀」が持つ天然の甘みのみを風味高く仕上げた淡色味噌。※「和光」限定店舗販売

    穏やかな瀬戸内海に囲まれた小豆島の農園で造られた、アグリオリーブ小豆島の「小豆島産100 %エキストラバージンオリーブオイル」。燦々と降り注ぐ太陽をしっかりと浴びて育った希少なオリーブ果実を丁寧に手摘みし、一番搾り。新鮮なうちに採油することで、若草の香りと風味豊かな味わいが楽しめる。

    ビーハッピー/タケイファーム「アーティーチョークはちみつ」は、ミシュラン取得店舗など数々のトップレストランに認められる逸品。日本最大級のアーティーチョーク畑を保有するタケイファームが「日本にもっとアーティーチョークを普及させたい」という想いから造ったアーティーチョークのはちみつは、品質はもちろん、稀少性も高い。※「和光アネックス」限定店舗販売

    楽農研究所「SOIL TABLE 苺のコンポート」のいちごは、愛媛県の「あかまつ農園」のあまおとめ・レッドパール・紅ほっぺの3種類をブレンド。炊き上げ、瓶詰めなどすべて手作り。※都内初 数量限定店頭販売

    NORTH FARM STOCK/白亜ダイシン「北海道クラッカー プレーン」は、北海道産の小麦を使ったワインを楽しむためのクラッカー。自社工場で一枚一枚丁寧に焼き上げ、サクッとした食感を追求。

    ※今回、ご紹介した商品の一部は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナー及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロン「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内させていただいております

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photographs:KOH AKAZAWA
    Text:YUICHI KUAMOCHI

    (Supprtted by WAKO)

    年末年始のテーブルを特別に彩る、新たな提案型ギフト5選。[和光アネックス/東京都中央区]

    新しい提案型のギフトは、合わせの妙をぜひ。食べる味と飲む味に加え、交わる味も楽しめる品々は、おいしい発見の連続。

    WAKO ANNEX大切な人たちと過ごす、一年の節目には、特別なギフトをぜひ。

    未だ様々ある昨今ですが、年末年始はゆっくりと過ごしたい。そう思う人は多いと思います。

    家族との集い、大切な人や気が置けない仲間との再会……。

    シーンは様々ありますが、その時間を華やかに彩るのは、食事の時間です。

    そんな時にお勧めしたいギフトは、ぜひ提案型のペアリングを。紹介してくれるのは、日本酒ソムリエ・『GEM by moto』店主・第14 代酒サムライの千葉麻里絵さんと調布市『Maruta』のドリンクディレクターを務める外山博之氏です。

    両者に共通しているのは、これまでに類を見ない「食べ合わせ」のプレゼンテーション。それぞれに理論と哲学を持った合わせには、美味しいだけではない、楽しい発見が待っています。

    クリスマスや年末年始、パーティーなど、ゲストを喜ばせる新たな提案型のギフト5選をご紹介します。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    外山氏がペアリングにおいて重視しているのは、香り。それも主観的な印象で判断するのではなく、科学的な香りの成分を紐解きます。「一緒に口に含むことで広がる香り、増加する旨味。そんな未知なる発見を楽しんでください」。

    「造り手の想いが込もったお酒や食品が単品でおいしいのは当然です。それを状況に応じて合せること で、シーンにマッチした楽しみやサプライズを楽しめるのがペアリングだと思います」と千葉さん。

    WAKO ANNEX外山博之が勧めるペアリングの軸は、ノンアルコール。香りや成分などを分析し、哲学的に結実させる。

    外山氏が勧めるペアリングは、3種。まずひとつ目は、「弘前シードル工房kimori」のkimoriシードル(ドライ)と「GOOD MORNING FARM」愛媛野菜のミックスピクルスです。

    シードルが持つリンゴの青い香りとピクルスの原料であるローリエの青い香りがマッチするペアリングは、香りと味わいが絶妙。「シードルが持つ発酵の香りは、ピクルスの酸味であるお酢との相性が良く、香りと味わいが交互に重なり、口の中で広がります」と外山氏。

    ふたつ目は、「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」ブラッドオレンジジュースと「アサヤ食品」バルサミコ(Vintage2013)です。

    ブラッドオレンジとバルサミコ酢の香りは、「同系統のため、非常に相性抜群」と外山氏。それを更に美味しくいただくためにお勧めするのは、「サラダ」にバルサミコ酢をかけて合わせること。

    「例えば、バジル、チーズ、イチゴのサラダにバルサミコ酢をかけ、ジュースの酸味と旨みを合わせるのもお勧めです。6年熟成・純国産の無添加バルサミコ酢は、これだけでも本当に貴重な1本です」。

    3つ目は、「かたすみ」いちごのフルーツティー3種セットと「トリ風土研究所」河内鴨もも肉コンフィです。

    「いちごのフルーツティーの優しい酸味が、河内鴨もも肉コンフィの旨みをバランス良く中和します。更にこだわりたい方への提案は、ややぬるめのお湯で淹れてみていただければ、より香りと味わいの輪郭をお楽しみいただけると思います。お肉の旨みとの調和が拡張し、美味しさが倍増するはずです」。

    「弘前シードル工房kimori」のkimoriシードル(ドライ)と「GOOD MORNING FARM」愛媛野菜のミックスピクルス。「『弘前シードル工房kimori』は、りんご畑の中にあるちいさな醸造所です。若いりんご農家たちが、自ら育てたりんごを持ち寄り、シードルを造っています。 果実感を損なわない自然な無ろ過製法を採用しているので、にごりや澱(おり)も含めたりんごそのものの味をお楽しみください。合わせるピクルスは、愛媛の旬野菜がぎゅっと詰められています。温暖で土地に高低差のある愛媛は、様々な食材の宝庫。春夏秋冬、豊かな味と出合えます」。

     「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」ブラッドオレンジジュースと「アサヤ食品」バルサミコ(Vintage2013)。「イタリア原産の赤いオレンジ、「ブラッドオレンジ100%の国産ジュースはとても希少です。中でも、愛媛・宇和島は、全国で数少ない産地のひとつです。合わせるバルサミコ酢においても希少。地元素材と向き合って半世紀以上。ワインビネガー専門メーカーの『アサヤ食品』さんが、2013年のヴィンテージを特別に100本限定で提供してくださいました。これは、2013年から6年樽で熟成後さらにビンで1年熟成したプレミアムなバルサミコ酢です」。

    「かたすみ」いちごのフルーツティー3種セットと「トリ風土研究所」河内鴨もも肉コンフィ。「砂糖・香料・着色料を一切使用せずに仕上げたシンプルなフルーツティーですが、丁寧な仕事が成された逸品です。ドライフルーツはすべて国産。低温で丁寧に乾燥し、うまみを凝縮しています。合わせる河内鴨は、2019年に大阪で開催されたG20の晩餐会でも公式メニューに採用された食材。そのもも肉の旨味をさらに凝縮するために時間をかけてコンフィしたものは、大量生産こそ難しいですが、お肉好きの方にはぜひ召し上がっていただきたいです」。

    WAKO ANNEXまさに千葉さんらしい日本酒との合わせ。食中から食後まで、シーンも楽しいペアリング。

    千葉さんが勧めるペアリングは2種。

    ひとつ目は、「木戸泉酒造」木戸泉 Afrugem 2016 afs×貴醸酒×スコッチ樽 GEM別誂と「和光」チョコレート ヴァレンシアです。

    「日本酒をピート香の効いたスコッチ樽で熟成させた貴醸酒は、まるでバーのような時間を演出してくれます。合わせるチョコレートは、カカオだけでなくオレンジも主役となり、食べ口によって変化する味とペアリングの妙も楽しめます」。

    ふたつ目は、「美吉野醸造」花巴 樽丸“水酛×水酛” 手漉き和紙ラベル 寺田克也画 千葉麻里絵オリジナルと「和光」うにからすみ。

    年末はもちろん、年始にいただけば縁起も良さそうなそれは、上質なばふんうにの食材がリッチな世界へ誘います。加えて、合わせるお酒は、千葉さんがコラボレーションしたオリジナル。

    「『美吉野醸造』花巴は、吉野杉を使った樽丸シリーズになります。杉の香りを纏っているため、身体と五感で美味しさを感じることができます。水の代わりに酒で仕込んだ貴醸酒は、濃厚で旨みたっぷり。合わせるうにからすみは、乾燥させずに仕上げた優しい食感が魅力です。生からすみと、とろけるようなばふんうにが織りなす調和とともにお楽しみください」。

    ペアリングを選んだ理由やストーリーとともにギフトをプレゼンテーションできれば、そのテーブルは、もっと楽しくなるでしょう。

    物語のあるギフトは、ただ美味しいだけでなく、誰かを幸せにする力があるのです。

    「木戸泉酒造」木戸泉 Afrugem 2016 afs×貴醸酒×スコッチ樽 GEM別誂と「和光」チョコレート ヴァレンシア。「この日本酒は、バーで飲むイメージで、日本酒をピート香のきいているスコッチ樽に入れて熟成させた貴醸酒です。合わせるチョコレートは、カカオだけでなくオレンジも主役となり、食べる場所によって味が変わるので、時間の流れを感じながらお酒とともにお楽しみください。

    「美吉野醸造」花巴 樽丸“水酛×水酛” 手漉き和紙ラベル 寺田克也画 千葉麻里絵オリジナルと「和光」うにからすみ。「樽丸とは、原木を年輪に沿って割って削る加工をした樽をつくる側板を集め丸く束ねたものです。杉の香りが纏っているので身体で感じるおいしさです。ここに、うにからすみの旨みが加わり、口の中は旨 味でいっぱいになります」。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

    埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエへ転向。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』」)」のマネージャーに就任。2018年より調布『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photographs:KOH AKAZAWA
    Text:YUICHI KUAMOCHI​​​​​​
    (Supprtted by WAKO)

    ブランド豚の旨味を引き出す、イタリアンシェフが作る魯肉飯。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・美明豚/茨城県行方市]

    とろける食感と濃厚な旨味の魯肉飯。台湾の人気料理をイタリアンのシェフが作るとどうなるのか。

    なめがた ベジタブルキングダムまさかの台湾料理は、まかない料理の人気メニュー。

    茨城県行方市を訪ねた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフが、今回出合った食材は、ブランド豚・美明豚。さっそく「赤身と脂のバランスが良く、肉質も脂身も上質」と絶賛するその豚を活かすメニューを考えてくれました。

    今回の料理は、なんと魯肉飯(ルーローハン)。イタリアンの神保シェフのイメージとは異なりますが、実は店のまかない料理でスタッフに大好評のメニューなのだとか。

    「脂がおいしい美明豚は、とくにバラ肉がおすすめ。今回はそんなバラ肉の魅力を引き立てるメニューとして魯肉飯を選びました。肉は大きめにカットして、本来のおいしさを際立てます」

    という逸品。今回はそんな肉の魅力を前面に打ち出すために、本場の魯肉飯では必須の香辛料・五香粉は使用せず、シンプルな調味料だけで仕立てるといいます。ではさっそく、イタリアンシェフが作る台湾料理のレシピを見ていきましょう。

    【関連記事】NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/きめ細かい赤身と口溶けの良い脂。一貫生産へのこだわりが生んだ最高峰のブランド豚。

    使う調味料はやや多いが、どれも家庭にあるものが中心。香りの決め手の八角はぜひ取り入れたい。

    特別な材料やテクニックなしに極上の味に仕上がるのは、シェフならではの細やかな下処理から。

    なめがた ベジタブルキングダム美明豚バラ肉の簡単魯肉飯

    材料 (2人分)
    豚バラ肉 400g
    玉ねぎ 1/2個
    生姜すりおろし 小さじ1杯
    ニンニクすりおろし 1片分
    ごま油 大さじ1杯
    八角 1個
    ちんげん菜 4束
    刻み万能ネギ 適量
    目玉焼き 卵2個分
    炊き上げたご飯 2膳分
    ★醤油、酒、みりん 各大さじ3杯
    ★黒砂糖・米酢・オイスターソース 各大さじ1杯
    水2カップ

    手順
    1.  豚バラ肉を一口大にカットしてフォークで刺して筋を切り、軽く塩コショウをしておく
    2.  熱したフライパンに胡麻油をひき、中火で豚バラ肉を焼く。焼き上がったらバットに取り出しておく
    3.  手順2のフライパンでスライスしたタマネギを中火で2分ほどソテーする
    4.  フライパンに2の豚肉を戻し、ニンニク、しょうがを加えて合わせながら中火で炒める。全体に絡んだら★の調味料と水 1カップ、バットにある肉汁も入れ、強火でひと煮立ちさせる
    5.  八角を加え、香りが立ってきたら弱火にし、蓋をして15〜20分煮込む
    6.  煮詰まってきたらちんげん菜を手で割いて、肉を覆うように入れ、再度蓋をして弱火で2分半ほど蒸し焼きにする
    7.  器に持ったご飯に6を盛り、目玉焼きを乗せたら完成

    フォークで刺すことで味が染みやすくなり、かつ短時間で柔らかくなる。

    炒めた際に出る豚の旨味をしっかりとタマネギに吸わせてから煮込んでいく。

    ちんげん菜は豚肉を覆うようにして蒸し焼きに。手間がかからず洗い物も減るひと工夫。

    半熟の目玉焼きを盛り付けて完成。しっかり味と八角の香り、美明豚の旨味がベストマッチ。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

    きめ細かい赤身と口溶けの良い脂。一貫生産へのこだわりが生んだ最高峰のブランド豚。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM・美明豚/茨城県行方市]

    なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

    全国圏屈指の野菜王国として数々の野菜を産出する茨城県行方市。我々ONESTORYは、一年に渡りこの行方市を繰り返し訪れ、生産者の話を伺ってきました。そしてたどり着いたひとつの仮説。行方市の野菜がおいしいのは、恵まれた気候や風土以上に、作り手の粘り強く、負けず嫌いな“行方気質”に由来するのではないか。そしてその説が正しいのなら、野菜以外の生産物もまた素晴らしいものなのではないか。

    そんな説を証明するために訪れたのは、ブランド豚・美明豚を育てる『中村畜産』。同行者は、昨年一年間行方市の野菜を追いかけ続け、その魅力を引き立てる数々のレシピを考案してくれた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフです。

    美明豚は、『中村畜産』がお産から出荷まで一貫して育てる特定病原菌を持たないSPF豚。肥育環境や飼料にこだわり、ストレスなく育てる豚は、各所から高い評価を得ています。果たして現地を訪れた神保シェフは美明豚と『中村畜産』にどんな感想を抱き、どんな料理のアイデアを練るのでしょう? その詳細をお伝えします。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

    21oz セルビッチストレッチスリムストレート

    666はスリムストレートカット!

    666-sstはごく少量のため2サイズ発送ができません!

    • 634(ストレート)と比べ、股上がやや浅目で腰周りから裾まで細くしたストレートシルエットです。

    サイズスペック

      ウエスト 前ぐり 後ぐり ワタリ ヒザ巾 裾巾 股下
    W28 72.5 20.0 31.0 26.7 19.5 17.5 91.0
    W29 75.0 20.5 31.5 27.4 20.0 18.0 91.0
    W30 77.5 21.0 32.0 28.2 20.5 18.5 91.0
    W31 80.0 21.5 32.5 29.1 21.0 19.0 91.0
    W32 82.5 22.0 33.0 23.0 21.5 19.5 91.0
    W33 85.0 22.5 33.5 30.7 22.0 20.0 91.0
    W34 87.5 23.0 34.0 31.5 22.5 20.5 91.0
    W36 92.5 24.0 35.0 32.0 23.5 21.5 91.0
    W38 97.5 25.0 36.0 34.7 24.5 22.5 91.0
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。
    • 前ぐり、後ぐりはベルト巾を含みません。

    素材

    • 綿:98% ポリウレタン:2%

    21oz セルビッチストレッチスリムストレート

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    • 634(ストレート)と比べ、股上がやや浅目で腰周りから裾まで細くしたストレートシルエットです。

    サイズスペック

      ウエスト 前ぐり 後ぐり ワタリ ヒザ巾 裾巾 股下
    W28 72.5 20.0 31.0 26.7 19.5 17.5 91.0
    W29 75.0 20.5 31.5 27.4 20.0 18.0 91.0
    W30 77.5 21.0 32.0 28.2 20.5 18.5 91.0
    W31 80.0 21.5 32.5 29.1 21.0 19.0 91.0
    W32 82.5 22.0 33.0 23.0 21.5 19.5 91.0
    W33 85.0 22.5 33.5 30.7 22.0 20.0 91.0
    W34 87.5 23.0 34.0 31.5 22.5 20.5 91.0
    W36 92.5 24.0 35.0 32.0 23.5 21.5 91.0
    W38 97.5 25.0 36.0 34.7 24.5 22.5 91.0
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      ウエスト 前ぐり 後ぐり ワタリ ヒザ巾 裾巾 股下
    W28 72.5 20.0 31.0 26.7 19.5 17.5 91.0
    W29 75.0 20.5 31.5 27.4 20.0 18.0 91.0
    W30 77.5 21.0 32.0 28.2 20.5 18.5 91.0
    W31 80.0 21.5 32.5 29.1 21.0 19.0 91.0
    W32 82.5 22.0 33.0 23.0 21.5 19.5 91.0
    W33 85.0 22.5 33.5 30.7 22.0 20.0 91.0
    W34 88.0 23.5 34.0 31.4 22.5 20.5 91.5
    W36 93.0 24.5 35.0 33.0 23.5 21.5 91.5
    W38 98.0 25.5 36.0 34.6 24.5 22.5 91.5
    W40 103.0 26.5 37.0 36.2 25.5 23.5 91.5
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    「国産 Non-Chemical レモン」×「クラウドファウンディング」。あるレモン農家の熱き挑戦。[CITRUSFARMS TATEMICHIYA/広島県尾道市]

    「citrusfarms たてみち屋」の園主・菅秀和氏。広島県生口島で無農薬・無化学肥料のレモンを栽培している。

    citurusfarms たてみち屋

    孤高のレモン農家・菅氏がクラウドファウンディングにチャレンジ

    レモン、好きですか?
    レモンの、どんなところが好きですか?

    ちょっと考えてしまった人は、もしかすると、まだ本当に美味しいレモンに出合ったことはないのかもしれません。食事に、ドリンクにと用途が広がり、身近になっているようで、意外と知られていないレモンという果物。

    そう、料理人やバーテンダーら食のプロフェッショナルの間では、レモンを果物と捉え直し、積極的にレシピに採り入れる動きが広がっています。
    そして、一流の食材にこだわるプロたちにレモンの話を聞くと、「菅さんのレモン」と耳にすることが多くなってきました。

    「菅さん」とは、「DINING OUT ONOMICHI」の食材チームにも参加した菅秀和氏。
    広島県尾道市と愛媛県今治市を連絡する瀬戸内しまなみ海道のほぼ中央に位置する生口島で、レモン農園「citrusfarms たてみち屋」を営むレモン農家です。

    「食べて美味しいレモン」。菅氏が心血を注ぎ続けてきたのは、そんな、みんなの固定概念を覆すレモンです。菅氏のレモンの美味しさは、食のプロたちの間でクチコミで広がり、多くのファンを獲得してきました。


    そんな菅氏は今年、クラウドファウンディングに挑戦するとのこと。その狙いを聞くために、菅氏を訪ねました。

    燦々と陽光がふりそそぎ、凪の真っ青な海を見下ろす斜面に、強面で偉丈夫の菅氏はプロレスラーのように立っていました。5年前の「DINING OUT ONOMICHI」の時よりも貫禄がついています。


    リスボンという品種のレモンの木が、深緑色の肉厚な葉を茂らせ、ラグビーボール型よりもぷっくりとした実をつけています。菅氏は鮮やかな黄色になった実をもぎとると、「かじってみませんか?」と勧めます。農薬や除草剤も、もちろんワックスも使っていないから、そのまま安心してかぶりつけます。

    歯応えのある皮を突き破ると、一気に果汁があふれ出します。すっぱい。
    けれど、嫌なすっぱさではありません。爽快な香りが鼻を抜け、心地よいほろ苦さの奥に甘味を感じます。これがレモンの味なのか……実に骨太。素直に、美味しい。

    「レモン栽培に取り組み始めた時、素朴な疑問が生まれました。スーパーでレモンを探したけれど見つからない。果物売り場にも、野菜売り場にもなかった。ようやく見つけた場所は、奥の薬味のコーナーでした。薬味や添え物としてしか扱われていない果物って何なんだって。レモンはれっきとした果物。よし、食べて美味しいレモンを作ってやろうと心に決めたんです」と菅氏は2014年当時を振り返ります。

    日本ではあまり目にすることの無いグリーンレモン。イエローレモンより糖度は低いが、そのキリっとした香りと酸味にはファンも多い。

    citurusfarms たてみち屋「身土不二」の考え方を軸に、ひたすら土の健康状態を適切に保つ。

    生口島の隣、大三島出身の菅氏は、食品流通などの仕事を経て、柑橘事業に乗り出す会社の一員として生口島に移住してきました。古民家の空き家を借りたところ、その家主から手に負えなくなってしまった約3,000坪のレモン農園の管理を頼まれました。空き家に思いがけずレモン農園が付いてきたカタチです。柑橘事業の撤退が決まったこともあり、菅氏はそのレモン農園主として独立を決意。翌年、40歳の時でした。

    菅氏の農業の軸にあるのは、「身土不二(しんどふじ)」の考え方です。人間の身体と土の働きは同質であり、風土に育まれる命をいただくことは土を食べることに等しい、といった意味があります。レモンの木に美味しく健康的な実をつけてもらうには、土の健康状態を適切に保つことが大切と考えて、農薬や化学肥料を使わず、有用菌の働きを活かす土づくりに徹しています。

    創業から使い続ける堆肥ヒューマスのほか、厳選した天然ミネラルや酵素をブレンドした天然液肥を散布します。雑草はシロツメクサなど土にとって有益な種類がはびこるように数種類播種し、除草剤に頼ることもありません。菅氏は鉄の杭を土に刺してみせます。他の園だった耕作放棄地の土には、菅氏が体重をかけても杭は20cmほどしか入りません。一方、菅氏の農園に杭を刺してみると、すうっと100cm近く入りました。土がやわらかく、ふかふかな証拠。土中に有用菌が多く、しっかり呼吸しているおかげなのです。

    この土壌で育ったレモンは農薬・化学肥料不使用の「ノンケミカル・レモン」として出荷されています。皮まで丸ごと味わえる「食べて美味しいレモン」です。

    自ら独自ブレンドした天然液肥。配合や散布量に菅氏の腕が光る。

    地面に杭を刺して見せる菅氏。有用菌が働くやわらかな土には、力をかけずとも杭はすうっと入っていく。

    citurusfarms たてみち屋レモンサワーの概念を覆す一杯。

    取材班が訪ねたこの日、菅氏の農園にはもう一人のゲストがいました。東京・新宿にある「Mixology & Elixir Bar Ben Fiddich」(バー ベンフィディック)のバーテンダー・鹿山博康氏です。同氏は自ら農場で薬草を栽培し、養蜂をして蜂蜜を採取し多彩なカクテルを生み出すミクソロジストとして知られ、店は世界のバーランキングで常に上位にランクインするなど世界中にファンを抱えています。

    数年来「菅さんのレモン」を店で使い、プライベートでも菅氏と交流のあった鹿山氏は、はるばる農園の見学に訪れていたのです。
    「菅さんのレモンは香りのフレッシュさが違います。そして、完熟レモンは果汁の酸味と甘味、皮の苦味のバランスが絶妙」と鹿山氏。バーの七つ道具を持参した同氏は、その場でレモンサワーをつくってくれました。

    香り、味わい、共に圧倒的なレモンの存在感。それでいて、全体的にまとまりがあり、すっきりと穏やかな後味。思わず笑顔になる旨さ。レモンサワーの概念が180度転換された思いです。

    嬉々としてカクテルを作る鹿山氏。彼を見守り、頬を緩める菅氏。昼下がりの農園には、海風にのってレモンの香りがそよいでいました。

    さて、菅氏は、一体どんなクラウドファウンディングに挑戦するというのでしょう?

    菅氏のレモン農園「citrusfarms たてみち屋」で、もぎたてのレモンをレモンサワーに。鮮烈な美味しさ。

    瀬戸内海を見渡せる絶好のロケーションで、採りたてレモンを使ったカクテルを振舞う鹿山氏。

    citurusfarms たてみち屋国産 Non-Chemical レモンを未来へつなげていくために。

    菅氏は枯れ草に覆われた畑に案内してくれました。ここは、耕作放棄地となって久しい畑。昨年、菅氏はこの土地を購入しました。多額の借入が伴う大きな決断でした。順調なレモン栽培を続けているように見える菅氏ですが、大きな危機感を覚えるようになったと話します。

    危機感とは、第一に、気候変動による凍害の頻度が上がっていること。そして第二に、柑橘栽培を諦める農家が増え、耕作放棄地が広がっていることです。

    「Non-Chemical レモンの美味しさを広く知っていただき、レモンを丸ごと味わうことが食文化の一部になることを目指して取り組んできました。ところが、そのためには一般消費者の方にまで届けるための絶対的な収量が不足しているという問題に直面しました。とはいえ、手間ひまのかかるNon-Chemical レモンの栽培は、収量を増やそうと無闇に耕作面積を増やしてしまうと、品質の低下や支出過多に陥ってしまいます。私はこれまで既存の柑橘園を譲り受け、その畑の土壌を改良することによってNon-Chemical レモンを栽培してきました。しかし、耕作放棄地のように土壌の改良だけではNon-Chemical レモンの栽培が難しい土地においては、伐採伐根と造成整地をしてから新しい苗木を植える必要があります。これは、野菜の様にすぐに収穫ができない果樹は最初の数年は経費ばかりがかかってしまい、とても効率が悪いのです。さらに、国産レモンの収穫は10月から4月までと、一番需要の高い夏場に収穫ができません。これらの課題を解決するために、大きな投資をしてでも理想的なレモン畑を一から作る必要がある、という結論に達したのです」

    理想のレモン畑を作りたい。菅氏の熱意は、年々広がっていく耕作放棄地を自分の手でどうにかしたいという想いともつながりました。

    「レモン畑のモデルケースを耕作放棄地に作り上げ、次世代のレモン栽培のあり方を示すことができれば、美しい生口島に虫喰いあとのように広がっている耕作放棄地を緑のレモン畑に変えていけるかもしれない」

    菅氏は、その新たな取り組みのスタートにあたり、Non-Chemicalレモン栽培への賛同者を増やし、壮大なプロジェクトの着手資金を調達するために、クラウドファウンディング実施の決断をしました。

    菅氏は約2,400坪の耕作放棄地を購入。さらに高品質なレモンを広く安定的に提供するべく、ハウスやラボを併設した園の整備に取り組んでいくという。

    住所:広島県尾道市瀬戸田町福田796
    FAX:0845-27-0861
    http://www.tatemichiya.com/

    Photographs:MINA MICHISHITA
    Text:KOH WATANABE

    2021年度 年末年始休業のお知らせ

    平素は格別のお引き立てをいただき、厚く御礼申し上げます。

    誠に勝手ながら下記期間を年末年始休業とさせていただきます。

    2021年12月30日(木) ~ 2022年1月4日(火)まで

    ※ 2022年1月5日(水)より、通常業務を開始します。

    ※ 休暇中のお問合せにつきましては、2022年1月5日(水) 以降に対応させていただきます。

    大変ご迷惑をお掛けいたしますが、 何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

    バイクチェーンタイプ シルバーキーホルダー

    • 21oz.デニムとの相性を考えて作り上げた完全アイアンハート仕様です。
    • すべてのパーツの型起こしから始まり、一番のポイントであるチェーンのコマの理想のゆるみを実現するまで約1年近くの時間をかけて作り上げた完全オリジナル。
    • 一人の職人が、細かなパーツの磨きからロウ付け、そして仕上げまで行っています
    • ベルトループにひっかけるナスカンタイプ

    生産国

    • 日本

    宝石のように透き通る身に旨味を湛えたシラウオ。そのおいしさの秘密を求め船上へ。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/茨城県行方市]

    なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

    日本有数の水揚げ量を誇る霞ヶ浦のシラウオ。
    その透き通った美しい身と、クセのないおいしさから首都圏の鮨店や和食店でも重宝される特産品です。

    シラウオ漁の解禁は毎年7月21日。そこから12月末まで、霞ヶ浦の漁師は湖上に出て網を引きます。近年は輸送技術が発達し、この時期、スーパーなどでも獲れたてのシラウオを目にすることがあるかもしれません。

    では霞ヶ浦のシラウオが有名な理由は、その漁獲高や鮮度のためだけなのでしょうか?

    そうではありません。魚体を傷つけぬように獲り、船上で氷漬けにし、陸に上がってすぐに選別、出荷する。実は霞ヶ浦のシラウオを知らしめ、プロの料理人をも虜にする理由は、「おいしいものを届けたい」という漁師のこだわりにありました。

    弾力があり、旨味があり、甘みがあり、かつタンパクでどんな味付けにも合う。そんな霞ヶ浦が誇るシラウオの秘密に迫ります。

    【関連記事】現場でしか知り得ぬ環境、気候、生産者の思い。神保佳永シェフが訪ねた行方市の食材生産者たち。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/茨城県行方市]

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

    現場でしか知り得ぬ環境、気候、生産者の思い。神保佳永シェフが訪ねた行方市の生産者たち。[NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM/茨城県行方市]

    なめがた ベジタブルキングダムOVERVIEW

    2021年秋。
    茨城県行方市に『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフの姿がありました。旅の目的は、行方市の食材を見て、味わい、生産者と話し、その魅力の本質を知ること。厨房を飛び出し、食材生産の現場に立つことで、新たなレシピの切り口を見つけることです。

    茨城県行方市のさまざまな野菜の魅力をお伝えしてきた「NAMEGATA VEGETABLE KINGDOM」。我々『ONESTORY』は繰り返し行方市を訪れ、四季折々の野菜を探り、その生産者に話を伺ってきました。そしてそれら旬の野菜の魅力を、野菜料理のスペシャリストであり、いばらき食のアンバサダーも務める神保シェフが考案するオリジナルレシピでお伝えしてきました。

    これまで1年間でお届けしてきたのは、春夏秋冬の8品目の旬野菜を主役にした8種類の料理。毎回、神保シェフの元には旬を迎えた野菜がどっさりと届き、シェフはそれを試食し、その魅力を感じ取った上で、その個性が際立つ料理を考案してくれました。

    そんなあるとき、ふと神保シェフがつぶやきました。

    「根っこの泥がきれいに落とされ、葉がぴったりと揃っている。きっととても真摯な生産者さんがつくった野菜でしょうね」

    その言葉が今回の旅につながりました。
    自身の店では、可能な限り生産者と直接話し、食材を理解してから使用するという神保シェフ。畑では率先して収穫を手伝い、その場で食材にかぶりつき、すぐに生産者と打ち解ける姿からも、生産者への敬意と食材への思いが窺えます。

    果たして今回の旅で神保シェフはどんな食材と出合い、どんなレシピをひらめいたのでしょうか。

    (supported by なめがたブランド戦略会議(茨城県行方市))

    「武者修業」の延長戦。松本日出彦、クラフトジンの世界へ。

    『尾鈴山蒸留所』にて、香りと味を入念に感じ取る松本氏。いくつもの原液をブレンドし、一本を形成するゆえ、その方程式は無限。

    HIDEHIKO MATSUMOTO日出彦さん、僕とも酒を造ろう。名乗りを上げたのは、日本酒蔵ではなく焼酎蔵。

    「百年の孤独」。

    小説のタイトルとしても知られるその名は、明治18年創業の老舗焼酎蔵『黒木本店』が手がける人気銘柄です。

    その五代目・黒木信作氏こそ、「自分も日出彦さんと一緒に酒が作りたい」と名乗りを上げた人物。

    「日出彦さんとは昔から仲良くさせていただいており、ご自身の蔵を離れるかもしれないという話も伺っていました。まさか現実になってしまうとは……。その後の『武者修業』の活動はずっと見ていました。自分も日出彦さんと一緒に酒が作りたい、そう思っていました」。

    そんな黒木氏は、宮崎の自然豊かな山奥で『尾鈴山蒸留所』というもうひとつの蔵も運営しています。そして今回、松本氏との酒造りに提案したのは、焼酎をベースにし、麹から生まれた新たな蒸留酒「ジン」。

    『黒木本店』は、老舗でありながらアグレッシブ。黒木氏の父、敏之氏が生み出した銘酒が前出の「百年の孤独」であれば、息子、信作氏が生み出した銘酒は「OSUZU GIN」。雄大な自然に囲まれた『尾鈴山蒸留所』でそれを醸します。

    歴史や伝統に寄りかかるだけでなく、最新最善を追求し、常にものをゼロから生み出す情熱は、酒種は違えど確実に受け継がれています。

    「せっかく蔵を離れたのであれば、これまでと全く違うことに触れてもらいたかった」と黒木氏。

    テーマは、ふたつ。香りとブレンド。

    「日本酒を桶で貯蔵していた時代は、新しいロットと古いロットを切り替える際、味を安定させるためにブレンドしていたと言われています。しかし、現代においての解釈は少し異なり、意図的に味の違いや個性を出すためにブレンドさせることがあります。しかし、自分はそれをあまり好まず、米を混ぜることはしていました。加えて、香りを纏わせない日本酒造りもしてきたので、今回の取り組みは真逆の世界。だからこそ、学びがあると思いました」と松本氏。

    秋田『新政』、栃木『仙禽』、滋賀『七本鎗』、福岡『田中六五』、熊本『花の香』と五蔵を巡り、ようやく仕上がった酒の余韻に浸ることなく、宮崎『黒木本店』へ。

    「武者修業」の延長戦、スタートです。

    ※WAKOオンラインストア(上記バナー)では、松本日出彦×尾鈴山蒸留所「OSUZU GIN」とオリジナルの「OSUZU GIN」を10セット限定販売。
    ※2021年10月1日(金)にリニューアルした『和光アネックス』地下1階のグルメサロンでは、松本日出彦×尾鈴山蒸留所「OSUZU GIN」とオリジナルの「OSUZU GIN」の単品購入も可能です。

    宮崎県の高鍋町に位置する『黒木本店』。重厚感のある建物には風格が漂う。屋号とともに掲げるのは「焼酎一筋」。

    大小合わせ30以上とも言われる尾鈴山瀑布群を擁する山の奥深くに位置する『尾鈴山蒸留所』。森の木々に囲まれ、人里離れたこの地で『黒木本店』の酒は醸される。

    『黒木本店』のある高鍋駅も走る列車。海の上を走る際は、ゆっくりと走行してくれるため、乗客は景色を堪能できる。そんな優しさも宮崎の人柄の良さ。「宮崎の人は、みんな優しいですね!」と松本氏。

    HIDEHIKO MATSUMOTO香りから感じる味の輪郭を表現したい。味の記憶は薄れても、香りの記憶は薄れない。

    「武者修業」における松本氏の酒造りは、蔵の中だけでなく、蔵の外にも目を向けてきました。土地に触れ、環境を知ることによって、その蔵だからこそできる味と理由があるからです。

    『黒木本店』においても、それらを学ぶために足を運びます。まず向かった先は畑。約40ヘクタールにも及ぶ広大な土地に広がるのは、原料となる芋。

    「宮崎は、太陽と緑の国を謡うほど、日本の中でも長い日照時間を誇る県。小丸川の水とこの土地で育った芋で酒を造ることに意義があると思います。加えて、『黒木本店』は、土作りから携わり、循環も生んでいます。そんな背景こそ『黒木本店』の価値であり、だからこそ銘酒が生まれているのだと思います」と松本氏。

    あまり知られていませんが、焼酎の製造過程で排出されてしまう焼酎粕は産業廃棄物に分類されます。『黒木本店』では、それを堆肥化させるシステムを数年かけて構築。土地の恵みから生まれたものを健全なかたちで土地に返す循環を生み出したのです。もちろん、松本氏が訪れた畑の土にもこの肥料は採用されています。

    「昨今の世界的な情勢もあり、SDGsという言語を目にします。しかし、自然や土地と深い関わりを持ってきた我々にとって持続可能な環境を目指すのは当然の社会」とふたり。

    そんな土地から生まれた芋・ジョイホワイトは、熟成させることによって独特な香りが生まれます。ライチのような優しい土の香りとふくよかな芋の香りは、嗅ぐ度、癒しへと誘われます。

    「柑橘や薔薇と同じ香り成分も含まれています。癒しを感じるのはそのせいかもしれません」と黒木氏。「でも、日出彦さんにはこっちの言い方の方がしっくりくると思うのですがロウリュのアロマオイルなんかにも含まれている成分です(笑)」。

    それを聞き、サウナ好きとしても知られる松本氏は、納得の笑みを浮かべながら「特に身と皮の間やヘタの部分がよく香る」と分析。

    「この香りは、蒸留しても残ります」と黒木氏。

    宮崎では、「疲れた」を「だれた」と話す方言があります。そのだれを止める(やめる)ために一杯呑むことを「だれやみ」と呼び、一日の疲れを癒すために晩酌することや焼酎を飲んで一日の疲れを癒そうという時に「だれやみしよう」と使用するのです。

    つまり、焼酎とは癒し。そんな文化が根付いている土地こそ、宮崎なのです。

    「今回は、香りから感じる味の輪郭を表現したい。味の記憶は薄れても、香りの記憶は薄れない。むしろ、同じ香りを嗅ぐことによって、その時の思い出や出来事がくっきり情景として浮かび上がる」と松本氏。

    それを聞いた黒木氏は、ゆっくりと記憶を手繰り寄せるようにこう話します。

    「今回の酒造りでは、ふたりの思い出の香りをジンで表現しようと思いました」。

    黒木氏が運営する『甦る大地の会』が所有する畑は、広大な敷地面積。「風の通りも良く、作物が良質に育つ環境が整っていると思います。小丸川の水も合わさるため、まさにメイド・イン・宮崎の素材ですね」と松本氏。

    芋の収穫は、まず葉を取り除き、芋を掘り起こし、その後、手作業で選別。この日も芋を積んだ『甦る大地の会』のトラクターがテンポ良く行き交う。

    小丸川は、その源を宮崎県東臼杵郡椎葉村三方岳(標高1,479m)に発し、山間部を流下。渡川などを合わせながら木城町の平野部を貫流する。その後、下流部において切原川、宮田川を合わさり、日向灘に注ぐ幹川流路延長75㎞、流域面積474kmの一級河川。

    焼酎生産で出た廃棄物を堆肥化して畑に戻すためのハウス。遡ること1998年に廃棄物を堆肥化する有機肥料工場を設立。2004年にはその肥料を使用し、焼酎の原料を栽培する農業生産法人「甦る大地の会」を立ち上げ、農場も運営。

    焼酎粕が持つ酸性を中和するために石灰を合わせる。加えて、窒素を担うために鶏糞なども混ぜ、肥料化する。

    土作りからしている畑で育った芋・ジョイホワイトの香りを確かめる松本氏。「丁寧な土の香り、美しい土の香りがします」。

    ジョイホワイトを割るとより香りが広がる。「季節や天候などにもよりますが、概ね6日ほど熟成させています」と黒木氏。

    酒造りは農業から。蔵の中だけでなく、蔵の外へも積極的に足を運ぶ黒木氏。「素材や環境を知らずして、良い酒造りはできません」と黒木氏。

     『尾鈴山蒸留所』の木桶は、地元の杉で造られる。「こうして土地で生まれた素材を正しい形に加工することは美しい循環。酒造りの道具は木材が多いため、林業とも密接な関係」と松本氏。

     ジョイホワイトと米麹のもろみ。「ステンレスだと、結露してしまったり、そこからカビが発生してしまうこともありますが、木桶は湿気を吸ったり、断熱作用があったりと理にかなっている。それに、人と同じで、ヒノキ風呂に入った方が気持ちいと感じるように麹もそう感じると思うんですよね!(笑)」と黒木氏。それを聞くと、もろみも喜んでいるように見える。

    HIDEHIKO MATSUMOTO人と土地をブレンドすることによって、ふたりの思い出が蘇る。

    『尾鈴山蒸留所』の焼酎・ジンは、地元の材料を多く使用しています。しかし、「今回は、宮崎の材料と日出彦さんの出身、京都の材料をブレンドしたいと思っています。その時にふと頭に浮かんだのがふたつありました」と言います。

    ひとつは、昔、京都に訪れた際に紹介された松本氏の同級生が営む宇治茶の生産家『丸利吉田銘茶園』のほうじ茶。

    もうひとつは、松本氏が蔵を離れることになった際、京都の『建仁寺』にて共に坐禅を行った際に見た庭園の松。

    「確か坐禅をした後に飲んだお茶もほうじ茶でしたね」とふたり。

    そんな黒木氏の計らいもあり、ブレンドに用意した材料は、宮崎のキンカン、生姜、山椒、ジェニパーベリー、そして、京都の松と『丸利吉田銘茶園』のほうじ茶。

    「松とほうじ茶は、いずれもこれまでのOSUZU GINにはなかった材料なので初めての試み」と黒木氏。

    そして、それぞれの香りと味を確認し、どうブレンドするかを考える松本氏。

    実験と検証を繰り返し、「これは潔い。この味には意志を感じる。こっちはカウンターで飲んでるシーンが浮かぶ……。ストレートで飲むのか、ソーダで飲むのか、トニックで飲むのか……。うーん……」。初めてのブレンドゆえ、当然、なかなか決まりません。実は松本氏は、ジンラバーでもあります。プライベートでも松本氏と親交の深い黒木氏は、それを知っての提案でもありました。これまで飲み手だっただけに、造り手の想いだけでない、客視点の比重も大きいのです。

    「きっとテイスティングした日や季節、天気、温度、湿度によって味の感覚は変わると思います」と黒木氏。

    だかこそ、香りが重要なのかもしれません。

    結局、この日は決まらず、また別の日に再度、ブレンドとテイスティング。しかし、その日にも決まらず……。

    「ただ、方向性は見えた」と松本氏。

    「自分であれば、絶対にこのブレンドはしない。これは完全に日出彦さんの味」と黒木氏。

    だから、ブレンドはおもしろい。

    ひとつ言えることは、ただ香りや味をブレンドしたものではないジンが醸されたということ。

    なぜなら、これは土地をブレンドした酒であり、人をブレンドした酒、そして、ふたりの心をブレンドした酒だから。

    そして、その香りは、黒木氏と松本氏にしか見えない情景を浮かび上げ、思い出を蘇らせるでしょう。ふたりだけの特権です。

    果たしてどんなジンになるのか。仕上がりは、乞うご期待。

    ミリ単位でブレンドしながら、細かく香りと味を形成していく。

    ブレンドをしながら、自然と思い出話にも花が咲くふたり。「今回、信作とジンを造ることができたのは、蔵を離れたからかもしれません。辛いことも多かったですが、それ以上に人の想いとたくさんのギフト(体験)をいただきました」と松本氏。

    今回のキーポイントとなる素材は、松の葉と宇治茶の生産家『丸利吉田銘茶園』のほうじ茶。

    「実は、京都のおばんざいのローカルルールで、掛け合わせる食材は奇数と言われているんです。それを考えると……、何種合わせようか……」と松本氏。

    大地の香水と形容できるクラフトジン「OSUZU GIN」は、伝統的な手仕事で造った本格焼酎に地元の素材を中心とした様々なボタニカルを漬け込んで蒸留。今回、松本氏が介在することによって、どんな化学反応を見せるのか!?

    ※WAKOオンラインストア(上記バナー)では、松本日出彦×尾鈴山蒸留所「OSUZU GIN」とオリジナルの「OSUZU GIN」を10セット限定販売。
    ※2021年10月1日(金)にリニューアルした『和光アネックス』地下1階のグルメサロンでは、松本日出彦×尾鈴山蒸留所「OSUZU GIN」とオリジナルの「OSUZU GIN」の単品購入も可能です。

    住所:宮崎県児湯郡高鍋町大字北高鍋776 MAP
    TEL:0983-23-0104
    https://www.kurokihonten.co.jp
    https://osuzuyama.co.jp/store/

    1982年生まれ、京都市出身。高校時代はラグビー全国制覇を果たす。4年制大学卒業後、『東京農業大学短期大学』醸造学科へ進学。卒業後、名古屋市の『萬乗醸造』にて修業。以降、家業に戻り、寛政3年(1791年)に創業した老舗酒造『松本酒造』にて酒造りに携わる。2010年、28歳の若さで杜氏に抜擢。以来、従来の酒造りを大きく変え、「澤屋まつもと守破離」などの日本酒を世に繰り出し、幅広い層の人気を集める。2020年12月31日、退任。第2の酒職人としての人生を歩む。

    Photographs&Movie Direction:JIRO OHTANI
    Text&Movie Produce:YUICHI KURAMOCHI

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    鹿児島から生まれる世界基準の芋焼酎。若き蔵元の情熱に、鹿児島焼酎の革新と核心を見た。[World SAKE KAGOSHIMA/鹿児島県]

    鹿児島本格焼酎を巡る旅OVERVIEW

    焼酎王国、鹿児島。江戸時代中期に芋焼酎が広まり、現在、鹿児島県内では112軒の蔵元が焼酎造りをしています。すべての蔵の本格焼酎の銘柄をあわせると、その数は2000以上。どれも、鹿児島県内の各地域の風土や文化、酒蔵の個性がぎゅっと詰まった逸品です。

    「近年、鹿児島の焼酎がますます洗練されてきて、全体的にフルーティーで香り豊かで飲みやすいものが増えています。かつ、蒸溜酒なので味わいがすっきりとしていて、食中酒にも最適。こんなに魅力的な飲み物なのに、日本酒やビールと比べるとほとんど注目されていない。どうしてもっと流行らないのだろうと、長い間不思議に思っていました」
    と話すのは、日本屈指の美食家として知られる本田直之氏。日本全国のみならず、世界中を自分の足で歩き、各地の食や酒に精通してきた本田氏が「もっとたくさんの人に鹿児島焼酎の素晴らしさを伝えたい」と、焼酎蔵と手を組み、動き始めました。

    そこで開催されたのが、東京都内の料理シーンを牽引する料理人を招いての蔵元巡り。事前に本田氏と、日本を代表するワインテイスターの大越基裕氏が30近くの銘柄のテイスティングを行い、「特に香り高くて、強い個性が表れている」と感じた5銘柄の造り手を訪ねました。

    「酒蔵の人々の情熱に触れることで、より深く、焼酎に惚れ込むことができる。そして東京に戻ったら、自分で体感してきたストーリーを、お店でお客様に熱く語りたくなる。そんなふうに、焼酎の造り手と料理人の情熱と情熱を掛け合わせて、パワフルに焼酎の魅力を広めていきたい」という本田氏の言葉から始まった、今回の蔵元巡り。ツアーに参加した3人の料理人も、焼酎を味わい、造り手の熱量を知り、自身の店のドリンクメニューへのオンリストを想定。
    それぞれの焼酎にどんな個性があり、造り手はどんな思いを込めているのでしょうか。その熱量に触れたら、きっとあなたも鹿児島焼酎に魅了されるはずです。

    Photograph:YOHEI MURAKAMI(Digital Homeless)
    Text:AYANO YOSHIDA

    (Supported by 鹿児島県酒造組合 / think garbage)

    若き蔵人が守り抜く伝統と歴史。鹿児島の大地が生んだ麗しき芋焼酎。後編[World SAKE KAGOSHIMA/鹿児島県]

    いちき串木野市・白石酒造にて。

    鹿児島本格焼酎を巡る旅鹿児島の自然をそのままボトルに詰める。自らさつま芋栽培をてがける杜氏。

    「鹿児島の蔵人が焼酎にこめる熱い思いに直にふれてほしい」
    十数年に渡り世界を旅しながら各地の食や酒に精通してきた美食家・本田直之氏のそんな願いから始まった、酒蔵巡り。目黒『鳥しき』の池川義輝氏、麻布十番『十番右京』の岡田右京氏、渋谷『酒井商会』の3名とともに、5軒の焼酎蔵を訪ねました。

    「いま、鹿児島の若手蒸溜家たちは、なんとかして焼酎業界を盛り上げようと並々ならぬ努力を積んでいます。その表現方法のひとつとして、思いを味わいに変える技術を磨いている。事前に東京でテイスティングした際にも、一口飲んだだけで、酒蔵の熱量が伝わってくるんです。というのも、香りが華やかで洗練されているほど、酒蔵の努力が結実しているということだから。今回の蔵元巡りでは、その中でも特に個性の強かった5軒をピックアップしています」とは、今回の参加者の一人であり、ワインテイスターの大越基裕氏。

    作り出す味わいや香りの表現方法は酒蔵によってさまざまです。小規模だからこそ実現できる手作業にこだわる造り手、大規模な敷地と工場を持つ強みをいかす蔵元。実際に訪問してみることで、そうした個性が見えてきます。

    いちき串木野市の『白石酒造』の五代目当主の白石貴史氏は、10年ほど前から地域の休耕畑を借りて、自社で無農薬のさつま芋栽培に取り組み始めました。除草剤も肥料も使わない理由は、そうすることで畑の土や芋が野生化し、自分の力で生きようとするようになるから。すると、虫に食われにくい強い芋が育つのです。

    「焼酎は、さつま芋や水、大地が融合したお酒。発酵具合も含めて、自然の産物としてできあがる飲み物なので、自分はなるべく手を加えずに、自然のままの味をとどけたい」と、白石氏。
    ただし、白石氏の手法では、畑を休ませながら芋を栽培する必要があるため、生産量がごくわずかになってしまいます。農薬や堆肥などを使った、一般的な芋農家のつくり方に比べ、同じ面積の畑でとれる芋の量は半分ぐらいといわれています。採算が悪くてもこの方法にこだわるのは「自分のやり方で栽培したさつま芋のほうが果物のように甘くて味わいも豊かで、他の芋より圧倒的に美味しかったんです」という至極シンプルな理由。それゆえ、できあがる芋焼酎は心地よい芋の香りと風味があって、余韻も長く残るのは当然でしょう。小さな蔵だからこそ貫ける職人の手仕事。白石氏は、愚直なまでにそれを追求しています。

    こうして完成した『白石酒造』の代表銘柄「天狗櫻」は果物感を感じる独特の風味があり、総甕壺仕込みによる丸みもあるのが特徴。「沁み渡るようなやわらかい飲み口ですね」と大越氏も、しみじみと味わっていました。

    杜氏の白石氏が開墾した畑で、自然栽培したさつま芋。その芋で造る焼酎は甘く、香りも豊か。

    テイスティングする池川氏。「無農薬、無肥料で栽培した芋で造る焼酎はテクスチャーがやわらかく、しみ入りますね」。

    白石酒造の代表銘柄「天狗櫻」をモチーフにした外装。

    鹿児島本格焼酎を巡る旅大規模な酒蔵の強みを生かし、鹿児島焼酎ファンの裾野を広げる。

    一方、日置市の『小正醸造』は年間の焼酎の生産量約2万石を誇る大手酒蔵。100名以上の従業員とともに、全国大手スーパーに流通する焼酎を大量生産するかたわらで、限定生産のこだわりの焼酎まで幅広く造っています。仕込みの時期には1日に30〜50トンもの大量の芋を選別しますが、地域社会とのつながりを大切にしているのも『小正醸造』のこだわり。工場内のホワイトボードには、常に、その日に扱っている芋の生産者の顔写真と名前が掲示されているのです。

    「大規模な酒蔵ならではの生産力をいかして、全国に本格焼酎を流通させ鹿児島焼酎の飲み手の裾野を広げている一方で、ハンドメイドの心意気も持ち合わせたマルチプレーヤー」と評価するのは、岡田氏。限定生産の「蔵の師魂 The Green」は、ワイン酵母「ソーヴィニヨン・ブラン」から採取された酵母を使用して発酵、蒸溜した焼酎で、爽やかな香りと、まろやかなコクが特徴です。
    「テクスチャーがまろっとしていてふくよかで、コクがある。メロンのような甘さ、程よい酸味のある味わいで、白ワインを感じるような香味もすばらしいですね」と岡田氏は続けます。

    さらに『小正醸造』では、地域の小中一貫校・日吉学園と手を組んで「My焼酎づくり」と称したプロジェクトも実施しています。これは、中学3年生の生徒が卒業記念に、自分たちで育てた芋を使い、焼酎を造り、ラベル・化粧箱もすべて手造りし、20歳になる日まで熟成させる、という内容。開始からすでに15年ほど続いているプロジェクトなのだそう。
    「鹿児島には数多の焼酎があれども、やっぱり、自分が住んでいる地域の味を大事にしたい、という思いが強い。“おらが村の焼酎”という言葉は、その象徴。鹿児島の焼酎、と一緒くたにしてしまうのではなく、日置市には日置市の味がある、と地域の子ども達に認識してもらえる機会にしています」と、社長の小正倫久氏は話します。

    広大な敷地を誇る『小正醸造』の日置蒸溜蔵。

    蒸溜後の原酒を熟成させる貯蔵タンク。この工程を経て、焼酎の味わいがよりまろやかになる。

    大規模な酒蔵の強みを生かした、豊富なラインナップ。中央の緑のラベルが「蔵の師魂 The Green」。

    鹿児島本格焼酎を巡る旅鹿児島の若手蔵人の情熱に触れた2日間。

    5蔵を巡ってみて見えてきたのは、江戸時代中期から続く芋焼酎の伝統と歴史を自分なりに解釈し、それぞれの「最高の焼酎」を表現しながら、若手蔵人たちが切磋琢磨しているということ。

    日本酒造りの経験を活かし、その麹造りのノウハウを焼酎に持ち込んだり、焼酎業界のタブーに切り込みシェリー樽で熟成した焼酎を造ったり、ジン造りなども積極的に行い、香りに焦点をあて焼酎を造るなど、革新的な焼酎造りに挑む蔵がある一方で、さつま芋栽培から手掛けるテロワールを感じる焼酎造り、地元とのつながりを大切にしたプロジェクトを続ける、地域・風土を感じさせる焼酎造りを行う蔵もある。それぞれが違うベクトルを示しつつも、根底にあるのは美味しい焼酎を造ることであり、素晴らしき鹿児島の焼酎文化をより多くの人に知ってもらうこと。

    こうした強い情熱を持つ5蔵を実際に訪問してみて、目黒『鳥しき』の池川氏は「5蔵の焼酎のいずれかをお店に入れさせてもらいながら、焼鳥と焼酎のより具体的なペアリングを提案していきたい」と言います。たとえば、フルーティーな香りがウリの焼酎には、焼鳥のなかでも特に脂の少ない部位と合わせてみるなど、焼酎のフレーバーが豊富で、酒蔵の個性も豊かになっているぶんだけ、ペアリングの楽しみ方も奥深くなっていくはず、と感じたそう。また、渋谷『酒井商会』の酒井氏も「お店では常時20種類ほど焼酎を揃えているので、5蔵のお酒のどれかを加えたいです」と、鹿児島焼酎の魅力を堪能した様子。麻布十番『十番右京』の岡田氏の「ソーダ割の爽やかさや、飲みやすさを、普段焼酎を飲まない人にも伝えていけるメニューを展開していきたいです!」と、感想を述べています。

    世界中を旅してきた本田氏は、最後にこの言葉で今回の旅を締めくくりました。
    「鹿児島はとにかく土地のパワーが強い。この地で育った人が、この土地で育った芋で焼酎を造るわけだから、できあがった焼酎もパワフルで奥行きの深いものになる。一口飲めば、味からその情熱が伝わってきます。これだけ鹿児島焼酎が盛り上がっているんだ、ということを、全国のみなさんにも飲んでいただき、ぜひ感じてみてほしいですね」

    焼酎をソーダで割る飲み方も一般的になってきた。炭酸とともに弾ける焼酎の香りが鼻孔をかすめ、爽やかに飲める。

    住所:鹿児島県いちき串木野市湊町1丁目342 MAP
    電話:0996-36-2058
    https://www.honkakushochu.or.jp/kuramoto/741/

    住所:鹿児島県日置市日吉町日置3309 MAP
    電話:099-292-3535
    http://www.komasa.co.jp/

    住所:東京都品川区上大崎2-14-12 MAP
    電話:03-3440-7656

    住所:東京都港区麻布十番2-8-8 ミレニアムタワー B1F MAP
    電話:03-6804-6646
    https://jubanukyo.localinfo.jp/

    住所:東京都渋谷区広尾1-12–15 リバーサイドビル 1F MAP
    電話:080-8040-4822
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    Photograph:YOHEI MURAKAMI(Digital Homeless)
    Text:AYANO YOSHIDA
    (Supported by 鹿児島県酒造組合 / think garbage)

    鹿児島芋焼酎の新たな可能性。模索する若き蔵人たちの情熱に触れる旅。前編[World SAKE KAGOSHIMA/鹿児島県]

    鹿児島本格焼酎を巡る旅日本酒蔵での修業で得た麹の知見。蔵に眠る種麹菌が焼酎造りを変える。

    東京都内で活躍する料理人が、世界各地の酒と食に精通する美食家・本田直之氏と、日本有数のワインテイスターである大越基裕氏のアテンドで鹿児島の焼酎蔵を巡る2日間。その焼酎旅に参加したメンバーも、やはりすごい顔ぶれでした。目黒『鳥しき』の池川義輝氏、麻布十番『十番右京』の岡田右京氏、渋谷『酒井商会』の酒井英彰氏の3名という、いずれも東京を代表する名店の店主たちです。

    この旅で最初に訪れた霧島市『中村酒造場』の新銘柄「Amazing」は、実は酒井氏がすでに『酒井商会』にボトルを置いている銘柄でした。ハロウィンスイート(オレンジ芋)という品種のさつま芋を使用し、グレープフルーツやライムのようなフルーティーな香りと、紅茶のアロマが重なった、繊細かつ華やかさが特徴の焼酎です。「飲み口がやわらかくて、かつ芋の香りと柑橘の香りが調和して清涼感があります。僕はこの味が大好き」と、酒井氏はこの焼酎が好きな理由を語ります。

    では、その秘密はどこにあるのか。酒井氏が絶賛する「やわらかさ」を演出している要因のひとつに、1888年の創業時から使用している麹室に生息する「室付き麹」の存在があります。
    六代目の中村慎弥氏は、東京農業大学醸造科学科で酒造りの科学的な側面を学んだ後、山形の日本酒蔵に弟子入り。2012年に蔵に戻り、2017年から杜氏(製造責任者)となり家業を継いだ際、「焼酎造りに、日本酒造りから学んだ麹造りの知恵を取り入れたら、蔵の新たな代表作を造れるはず」と志します。
    そこで、多くの酒蔵が専門業者から種麹を入手しているところ、中村氏は蔵で一から種麹を育てるための研究を始めます。その矢先、『中村酒造場』の蔵にはすでに生の種麹菌が生息していることを発見、微生物を育て、発酵を経て、焼酎を造り上げることに成功しました。焼酎造りにおいて、芋の扱いにはどの蔵も力を入れていますが、芋と同じように麹にこだわる人はまだ少ない。
    「麹をもっと重視することで焼酎の味わいがまろやかになるという“気付き”と、実は酒蔵に種麹菌が住んでいたという僕自身の“驚き・発見”にちなみ、『Amazing』と名付けました。飲んだ方がワクワクするような酒質を目指します」と、中村氏。

    焼鳥職人の池川氏も「とてもなめらかで、口のなかで余韻が続くので、焼鳥の脂をきってくれる力もありそう」と、焼き鳥とのマリアージュに期待します。

    『中村酒造場』の創業当時から使い続けている麹室にはオリジナルの種麹菌が生息していた。

    渋谷『酒井商会』の料理人、酒井氏は、もともと「Amazing」の大ファン。

    鹿児島本格焼酎を巡る旅もっと自由な芋焼酎造りを追求した“ユートビア”。

    中村氏が麹を通じて焼酎作りに新たな風を送り込んでいるように、若手蔵人たちは芋焼酎の魅力を引き出しつつ、進化させる方法を模索しています。次に訪ねた『小牧醸造』の専務・小牧伊勢吉氏は、今秋、「あえて焼酎造りのタブーに踏み込んだ」という新作を発表しました。その名も「ユートピア」。『小牧醸造』の代表銘柄「一尚シルバー」をバーボン樽で 熟成させたあと、さらにシェリー樽で熟成させた原酒 を加えた芋焼酎です。原酒が持つスモーキーさと樽の 香りが相まってドライな風味を生み出し、かつ、甘味 とフルーティーさがやわらかく調和した力作だそう。

    「焼酎造りにおいて、液体に色を帯びさせるのはご法度とされてきました。焼酎は透明でなければならない。でも、『ユートピア』は洋酒の木樽で熟成させて、ほんのりとした黄金色に仕上げているんです」
    すると芋の香りがさらにまろやかになり、香りも豊かになるのだという。
    「もっと自由に、もっと楽しみながら、もっと美味しい芋焼酎を造りたい。その理想郷としてこの焼酎がある」と、ネーミングに込めた思いを語ってくれます。

    ただ、画期的な取り組みを行いながらも、芋焼酎の歴史とアイデンティティへの敬意も失っていません。『小牧醸造』では、通常の何倍もの時間と労力をかけて、芋の選定と水洗いを行っています。芋を水洗いし、人間が目視で芋の選定作業を行うのは、ほかの多くの蔵元に共通する工程ですが、『小牧醸造』では、さらに芋を3種類の機械に通して洗浄。そのうえでたわしを用いて人の手で細かな溝に入った泥を丁寧に落としていき、痛んでいる部分を取り除いていきます。
    その徹底した仕事に対して、「ここまで手をかけることにより、雑味のない、クリアで洗練された味わいの焼酎に仕上がっていますね。ソーダ割にしたら、普段強いお酒を飲まない人にも好まれそう」と、岡田さんは話します。

    蒸したばかりのオレンジ芋。フルーティな香りが特徴。

    本田氏と大越氏を含めて、3人の料理人が木樽を熟成させる蔵の前でテイスティング。

    右から3番目が「ユートピア」。アルコール度数が40度を超える銘柄は、透明のボトルを使用。

    焼酎を熟成させる甕。地中に埋まっているスタイルが特徴だ。

    鹿児島本格焼酎を巡る旅華やかな香りの焼酎を、シュワっとソーダ割で楽しむ。

    ところで、お湯割にして飲むイメージが強い芋焼酎ですが、鹿児島焼酎の若手蔵人たちが最近お勧めしているのは、シュワシュワっとした爽快感や開放感が魅力のソーダ割。香り高い焼酎が増え、炭酸と相性の良さをウリにする銘柄も数多く誕生しています。そんな傾向に対してソムリエの大越基裕氏はこう語ります。
    「なんといっても、焼酎はフレーバーを楽しむ飲み物。蒸溜させて造るので味わいやボディがすっきりと仕上がり、ほぼ無味に近くなる分、フレーバーの個性が際立ってきます。そのうえで、最近は各酒蔵が、いわゆる“芋臭さ”を取り除き、芋がもつフルーティーな香りやあまやかさを引き立てる造り方を極めてきています。銘柄の数だけフレーバーの選択肢が増えているといっても過言ではなく、自分のお気に入りのフレーバーの焼酎を見つける愉しさも生まれてきているのです」

    焼酎は「香りを楽しむ飲み物」だと、もっと多くの人に知ってほしい。そんな思いから、指宿市『大山甚七商店』の専務・大山陽平氏は大胆なチャレンジを続けています。2021年に「お酒に振りかける香水」としてビターズ「PUSH BITTERS」を製造開始。さらに、今年夏には新ハイブリッド蒸溜機を導入。明治8年の創業以来培ってきた焼酎の蒸溜のノウハウを生かして、同じ蒸溜酒であるクラフトジン造りにも力をいれています。また、東京都内でシナモンやコーラの実を使ってクラフトコーラ造りをしている伊良コーラとコラボレーション。クラフトコーラのスパイスの風味と芋のフルーティーな香りを見事に融合させた「伊良コーラ酎」を販売しました。

    「遊び心を盛り込んだ存在感のある焼酎で、まずは若い飲み手に親しみをもってもらう。それを入り口に、伝統的な芋焼酎の世界に興味を持っていただけたら」と話すのは、陽平氏の父であり、代表取締役社長の修一氏。
    「当蒸溜所の理念は温故知新。スピリッツ・リキュールの製造といった新しい分野を開拓しながらも、先代から受け継いだ本格焼酎の秘伝の製法や味わいも守り抜いています」とその思いを語ります。

    代表銘柄のひとつ「甚七」は、黄金千貫という品種のさつま芋を原料とし、黒麹で醸した銘柄。仕込み水は蔵のある宮ヶ浜から湧き出るミネラル豊富な地下天然水を使用し、初代から受け継いだ甕壺で仕込み、常圧蒸溜で蒸溜という伝統的製法で造っています。
    「原酒をタンクで長期間貯蔵熟成することで、焼き芋のような香ばしさが引き出されている。また、黒麹特有のきめの細かい旨みがありながら、すっきりとキレの良い焼酎ですね」と酒井氏はコメントします。

    修一氏は、若手たちの挑戦をあたたかく見守っています。
    「20代、30代の造り手を中心に『焼酎業界をもっと盛り上げるぞ』という意気込みを感じています。私は63歳で、自分の近い世代の感覚としては、伝統的なお湯割の文化をもっと広めたいという思いもあります」
    それと同時に、ソーダ割で飲んだり、フルーティな香りを強調したりといった、若い造り手たちの新しい感覚にも共感。
    「焼酎の世界って、割と新しいものに対して柔軟なんです。酒税法の範囲内で遊ぶ分にはいいでしょ、って(笑)。作り手が楽しみながら生産した焼酎を、県外の人にも面白がりながら飲んでもらえるとを期待しています」

    長期貯蔵所「甚七伝承蔵」。甕熟成、ステンレスタンク熟成、樽熟成を行う。

    醸造所の脇にある事務所の一画にはバーカウンターが備えられ、テイスティングを行うことができる。

    今年夏に導入した新ハイブリッド蒸溜機。中央には香りのもととなるボタニカル専用のバスケットを内蔵。

    住所:鹿児島県霧島市国分湊915 MAP
    電話:0995-45-0214
    http://nakamurashuzoujo.com/

    住所:鹿児島県薩摩郡さつま町時吉12番地 MAP
    電話:0996-53-0001
    https://komakijozo.co.jp/

    住所:鹿児島県指宿市西方4657 MAP
    電話:0993-25-2410
    http://www.jin7.co.jp/

    住所:東京都品川区上大崎2-14-12 MAP
    電話:03-3440-7656

    住所:東京都港区麻布十番2-8-8 ミレニアムタワー B1F MAP
    電話:03-6804-6646
    https://jubanukyo.localinfo.jp/

    住所:東京都渋谷区広尾1-12–15 リバーサイドビル 1F MAP
    電話:080-8040-4822
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    Photograph:YOHEI MURAKAMI(Digital Homeless)
    Text:AYANO YOSHIDA
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    プリマロフト(R)キルティングマフラー

    保温性抜群のプリマロフト(R)マフラー

    • 高機能中綿「プリマロフト(R)」を採用したマフラー
    • ダウン同等の保温性・コンパクト性・透湿性を誇りながら優れた撥水性も兼ね備えています
    • 肌にあたる裏地はマイクロフリースを使用
    • 昨年度よりも厚みがまし再入荷!!

    PRIMALOFT(プリマロフト)とは

    • 米国Albany社が開発したアメリカで軍の寒冷地用防寒着の中材として開発、使用され る高機能中綿 ダウン同等の保温性・コンパクト性・透湿性を誇りながら優れた撥水性も兼ね備えています

    素材

    • 表地:ナイロン 100%
    • 中綿:ポリエステル 100%(プリマロフト)
    • 裏地:ポリエステル 100%

    「合餐」 これが私たちの正解。[Gohsan 7chefs in Fukuoka/福岡県福岡市]

    「世界的に活躍しているシェフのみんなが福岡に集ってイベントを開催できるのは、今回が最初で最後かもしれません」と話すのは、『合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―』の発起人、『La Maison de la Nature Goh』の福山 剛シェフ(一番右)。。会場となったのは、福岡天神に位置する『QUANTIC(クアンティック)』。

    合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―「合餐」の再開と再会。今の自分たちに迷いはない。

    去る11月某日。福岡にて、あるイベントが開催されました。

    合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―』。

    発起人は、2021年「アジアのベストレストラン50」30位にもランクインする福岡の名店『La Maison de la Nature Goh(ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ)』の福山 剛シェフです。

    加えて、参加シェフにおいても世界レベル。

    「ミシュランガイド東京2021」二つ星、2021年「アジアのベストレストラン50」7位、2021年「世界のベストレストラン」39位の『Floriege(フロリレージュ)』川手寛康シェフ。

    「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2021」二つ星及び「グリーンスター」、2021年「アジアのベストレストラン50」64位の『Villa aida(ヴィラ・アイーダ)』小林寛司シェフ。

    初台の名店『Anis(アニス)』を経て、現在は『傳』と『Floriege』が共同運営するレストラン『デンクシフロリ』の料理長を務める清水 将シェフ。

    「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2021」二つ星、2021年「アジアのベストレストラン50」8位、2021年「世界のベストレストラン50」では惜しくも50以内からは外れるものの76位の健闘を見せた『LA CIME(ラシーム)』の高田裕介シェフ。

    「ミシュランガイド東京2021」一つ星、2021年「アジアのベストレストラン50」27位の『Ode(オード)』生井祐介シェフ。

    「ミシュランガイド東京2021」二つ星、2021年「アジアのベストレストラン50」3位、2021年「世界のベストレストラン」11位の『傳』長谷川在祐シェフ。

    これまでの社会情勢により、シェフたちが顔を合わせるのも実にひさかたぶり。「大規模なイベントは約2年ぶり」と皆が口を揃えます。

    イベントの再開、人との再会。様々な想いが交錯するも、「今の自分たちに迷いはない」。言葉にせずとも、厨房内で喜びを分かち合いながら料理を作る姿を見れば、容易にそれを感じ取れます。

    合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―』(以下、合餐』)の幕が上がる。

    厨房の中での福山シェフ(左)と長谷川シェフ(右)。互いの近況報告をし合いながら、和やかな空気が流れる。

    コース料理の最後の皿、デザートを合作する生井シェフ(左)と高田シェフ(右)。久々の再会に笑顔が溢れる。

    小林シェフ(中央)と長谷川シェフ(奥)が同じキッチンに立ち、同じ料理を作るという異色の風景が生まれるのも、このイベントの醍醐味。

    清水シェフ(左)の火入れに興味津々の生井シェフ(右)。互いの料理を間近で見ることは、学びや技術の習得につながる。

    合餐』では、7人のシェフ以外に福岡をはじめ、九州のレストランもサポートに入る。川手シェフ(中央)とともに皿を仕上げるのは、赤坂「こみかん」の拓ちゃんこと末安拓郎シェフ(手前)。

    メインの肉料理(下記参照)は、『デンクシフロリ』、『Villa aida』、『La Maison de la Nature Goh』の合作。こちらは、その中のひとつ、『Villa aida』が手がけるカブと柿のミルフィーユ仕立て。

    上記と同じく、メインの肉料理(下記参照)にもうひとつ添えるのは、焼いたミカン。こちらも『Villa aida』が手がける。

    上記と同じく、メインの肉料理(下記参照)に使用する和牛シンシン。火入れの魔術師の異名を持つ『デンクシフロリ』の清水シェフが、驚異の約8時間をかけてじっくり火入れする。清水シェフの友人でもある台湾の原住民が作った石板の上に肉を置き、手で転がしながら指先で温度を感じ取り、真まで熱を伝える。

    シェフ自らテーブルまで足を運び、料理をサーブする場面も。そんな自由もゲストを大いに楽しませた。

    この日のドリンクは、全てペアリング。「ドン ペリニヨン」から糸島「田中六五」まで、バリエーションに富んだプレゼンテーションを披露。

    合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―想いは人を強くする。連鎖を生んだ幸福と口福。

    今回、供された料理は全8品。シェフがそれぞれ料理するものもあれば、合作もあり。様々な手法で舌と目を楽しませてくれます。

    しかしながら、各シェフが『合餐』について語る際、「料理は味わっていただきたいのですが……」という開口が多く見られました。その理由は、改めて様々を見直した空白の2年間を生きた在り方にあったのかもしれません。

    「これまでのレストランは、“個”がクローズアップされていたと思います。ですが、これからは、“個”から“全”へ。料理も大事ですが、今回のバックテーマは“全員で楽しむこと”。美味しかったよねよりも楽しかったよね。後に、そんな風に思い出していただけたら開催した甲斐があったなと思います。そして、それぞれの生活の中で当たり前だった様々なことを考え直す良い機会になるといいなとも。事実、当たり前だったイベントもできなくなり、『合餐』を開催できたことがこれほどまでに幸せな時間だったから」と川手シェフ。

    「みんなと会うには久々。いや、久々でもないかな? どっちだろう(笑)。お客様には申し訳ありませんが、まず何より自分自身がこの日を一番楽しみにしていました。普段はひとりで料理していますが、今日は尊敬できるシェフたちと一緒にキッチンで過ごすことができる。本当に幸せ」と小林シェフ。久々の再会だったシェフたちでしたが、顔を合わせれば瞬時に距離は縮まり、結実。昨今、主流の「オンライン」では成すことができないグルーヴです。

    「普段、実はシェフは孤独なんです。ですが、今日は、みんなで分かち合える。それが嬉しい。料理の手法や味、スタイル、哲学など、それぞれ違いますが、だからこそ共有できる。そんな自分たちの高揚感がお客様への満足にもつながると思っています。今日をきっかけに、またレストランの価値を向上させたいです」と清水氏。

    「この約2年間では、色々考えることが多かったです。レストランの経営の仕方、シェフとしての在り方……。サスティナブルという言葉もよく耳にしますが、実際に自分たちがどうそれを行動できるのか。苦しかった分、強くもなれた。対応能力やできることも増えた。明日に追われてしまう日々もありましたが、もっと先を見ることができるようにもなった。今日、この『合餐』から、また新しい一歩を踏み出したい」と高田シェフ。

    「人とのつながり、喜びの分かち合い、皆で場を囲むこと。当たり前にできていたことがこれほどまでに大事なことだったのかと再確認しました。楽しみ過ぎて、料理をお待たせしたこともありましたが、それも含めて熱量があった。『合餐』に参加していただいた全員に助けられたので、それが良い時間を生んでくれました」と生井シェフ。実際、生井シェフが担当だった料理の提供は、予定よりも約30分遅れ。しかしながら、ワクワクが止まらないゲストの表情を見れば、そんなハプニングや料理を待っている時間すら愛おしかったのかもしれません。

    「このメンバーの中では、以前から何かやろうかという話は出ていたのですが、僕らが集まって何かやることによって多方面にご迷惑をかけてしまう可能性がある。そんなことから色々な件の実施を決断できずにいました。当たり前だったことが当たり前でなくなったと思う反面、今までが当たり前じゃなかったのだとも思うようになりました。食事においても、どこで誰と何を食べ、共有したいのかなど、レストランの在り方も問われてくると思います」と長谷川シェフ。

    「振り返れば、自分が最後に大きなイベントをしたのは『DINING OUT RYUKYU-URUMA』でした。その後、色々なことを予定してみましたが、自粛や緊急事態宣言の繰り返しで全て実現が叶いませんでした。今回のメンバーは、公私ともに皆仲も良く、コースにおいても料理の流れではなく、人の流れが感じられたと思います。性格も出ていましたし(笑)。お客様にとって、自分たちにとって、何か前を向ける良いきっかけになれば、この上なく嬉しく思います」と福山シェフ。

    それぞれの想いが幾十にも重なった『合餐』。ほんの数時間の出来事は、まるで夢のごとく幕を閉じました。

    『LA CIME』が手がけた1品目、柑橘の果汁と魚を合わせたセビーチェ「魚介 ヘベナ 島唐辛子 ココナッツ さつまいも」。五島の石垣鯛や九州の柑橘、そして高田シェフの出身でもある奄美大島の島とうがらしなどを使用。柑橘は5種類ほど絞ってピューレにし、「虎のミルク」の意味を持つ「レチェ・デ・ティーグレ」と大阪に拠点を持つレストランということで、某球団をイメージした虎柄の生地も添えて。生地にはタイのアラ汁も練り込む。

    2品目は、『Floriege』と『傳』の合作、「トマト チーズ 牛 スグキ」。発酵をテーマに、和洋を融合。上は、スグキを葉で発酵させ、チーズを加えたトースト。下は、トーストに使用したチーズの皮と牛乳を合わせ、もう一度発酵させたムースを経産牛のカルパッチョに添える。トマトのテリーヌとガスパチョのような味わいのソース、沖縄のバニラをアクセントに。

    3品目は、『La Maison de la Nature Goh』が手がける「黒大豆 肝 黒無花果」。三層から成るそれは、福岡の朝倉、クロダマルの黒大豆のケーキ、黒イチヂクとチャツネ、フォアグラとコーヒーを合わせた前菜ケーキ。

    4品目は、『Villa aida』が手がけた「かぼちゃみりん粕漬 ほうずき 柑橘ピール 卵黄」。カボチャを丸ごとローストし、皮を剥ぎ、実のみガーゼで包み、みりんとレモンチェッロに漬け込む。『Villa aida』横の畑で育てたほおずき、オレンジピールを添え、みりんと卵黄で作ったソースとともに。

    5品目は、『Ode』が手がけた「ノドグロ 菊 ターメリック」。カボチャとノドグロを挟み込み、パイで包む。ソースにはシナモン、ハッカク、バニラに、乾燥させたカボチャのタネを野菜出汁で煮出し、香りを移したところに豆乳とターメリックで合わせる。全てのパーツに菊を採用しているため、まとまりのある味わいと香りもアクセントに。

    6品目は、『デンクシフロリ』、『Villa aida』、『La Maison de la Nature Goh』が手がける「和牛シンシン カブと柿のサワークリームマスタード 赤ワインソース」。お肉は、清水シェフが担当。うちももの柔らかい部位、シンシンを約8時間(!)かけて火入れ。その火入れにセオリーはなく、感覚と直感で温度を調整する。添えてあるカブと柿のミルフィーユ仕立てとミカンは、小林シェフが担当。ミカンは皮ごと焼いて丸ごと食べられるように調理。塩と砂糖に浸け、最後に表面を黒く焼き、自家製の七味唐辛子を振る。ソースは福山氏が担当。

    7品目は、『傳』と『Floriege』の合作、「桜海老ご飯 ビスクがけ」。桜海老の香り豊かな炊き込みご飯は、長谷川シェフが担当。それに、川手シェフが手がけた蟹の旨味を効かせたビスクを合わせる。添えられたミントは、『デンクシフロリ』清水シェフのアイディア。「最後に何か添えたいなと思っていたのですが、さりげなく、清水シェフが“ミントがいいんじゃない”とひと言。川手シェフと自分にはなかった発想でした。色々なシェフの感性が重ね合わせることによって、想像を超えた味になっていく楽しみは、合作の醍醐味」と長谷川シェフ。

    8品目のデザートは、『La Cime』、『Ode』、『La Maison de la Nature Goh』の合作。高田シェフが手がけたロールケーキには、奄美大島の砂糖や塩などの食材をふんだんに使用。それに、生井シェフが作った卵黄とコーヒーのフレーバーを効かせたコンブチャのソースと合わせる。 添えてあるアイスクリームは、福山シェフが担当。食材には、福岡の柿、秋王を使用。砂糖などは一切使用ぜず、自然の甘さのみで調理。料理にある『LA CIME』のロールケーキと『Ode』(系列店のカフェ『BGM』) のコーヒーは、各公式HPのオンラインストアでも購入可能。

    合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―「合餐」が教えてくれたこと。それは、「進化」ではなく「深化」。

    今回、『合餐』のテーブルを彩ったのは、花人・赤井 勝氏です。特筆すべきは、そのプレゼンテーション。供されるコース料理の8品に合わせ、8つの花材をライブパフォーマンスで生けてゆき、8品目と共に作品が完成するという演出手法です。

    シェフは食材、自分は花材。材は違いますが、自然からの恵みをいただいて表現している同じ立場として、シェフの方々をとてもリスペクトしています。自分自身、この2年間を経て、もう一度、仕切り直して花と向き合っていきたいと思っています。今回の『合餐』では、喜びが新鮮でした。人との触れ合いが新鮮でした。一輪ごとに生ける度、お客様の表情も変化してゆき、それを感じることができました。一品ごとに刺激を受け、お腹を満たすように花を通して心と目を満たしたいと思っていました」と赤井氏。

    そして、司会を務めたのは、「アジアのベストレストラン50」及び「世界のベストレストラン50」の日本のチェアマンや『DINING OUT』のホストを務めるコラムニスト・中村孝則氏。

    「世界中においてコロナ禍を経験し、レストランの価値も変わってきていると思います。美味しい以外に大切なことは、“JOYFULL”と“SHARE”。これは、国際的に議論されるレストラン業界でも話題に出るキーワードです。ただお腹を満たすだけでなく、人と分かち合う、喜びを感じる、そんな精神的な豊かさを享受できるレストランが必要とされるのではないでしょうか」と中村氏。

    これからのレストランに必要なことは、「進化」ではなく「深化」なのかもしれません。より深く食材とつながり、より深く生産者とつながり、より深く地域とつながり、より深くお客様とつながり……、結果、より深いレストランになる。

    今回、参加したシェフたちは、名だたるタイトルを受賞しているも、そこに驕りはありません。トップランナーであり続けるために大切なことは、シェフ力ならぬ人間力。

    そんな7人だからこそ、『合餐』を決断できたのです。

    以前ならば、何が正解で何が不正解かわからない。そう感じていたと思います。しかし、長い時間を経て、ようやくその難問の答えを得たのかもしれません。

    だから、今ならはっきりと言えます。

    これが私たちの正解。

    より「深化」するレストランへ。

    今回、独自の芸術的表現を見せた花人・赤井氏。作品が完成するまでのプロセスも含めたライブパフォーマンスにゲストも興奮。長谷川シェフとは、パリ『ルーブル美術館』にて開催された『JAPAN PRESENTATION in PARIS』でも饗宴。

    苔の島にひとつの生態系が形成されたかのような世界。8品ごと8花が生けられたそれは、まるで8人の集いのようにも見える。

    合餐』の司会を担ったコラムニストの中村氏。今回のシェフは、自身がチェアマンを務める「アジアのベストレストラン50」及び「世界のベストレストラン」にランクインするレストランばかり。一番側で苦しみも活躍も見てきただけに、「この日は感慨深かった」と話す。

    『合餐2021 ― 7Chefs in Fukuoka ―』は、ただのイベントではなく、何か一歩を踏み出すきっかけやこれまでの節目、そして、新たなスタート。全ての料理を出し終え、シェフたちが舞台に集まるも、なぜか手をつなぐ!?場面も。そんなチャーミングな仕草からも、7人の深い絆を感じる。


    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:YUICHI KURAMOCHI

    似ている味、同系統の香り、相反する要素。決まった答えがないから、ペアリングはおもしろい。[和光アネックス/東京都中央区]

    千葉さんが提案するペアリングは、飲み物と飲み物の組合わせ。ミクソロジーすることによって、また違った味わいも堪能でき、2倍おいしい。

    上記の品は、『富田酒造』龍宮原酒 らんかん 2016(¥3,520税込)、『川平ファーム』パッションフルーツジュース1 0 0 無糖(¥2,700税込)。

    WAKO ANNEX力強い原酒を、華やかな味わいに。

    2021年10月1日(金)にリニューアルした和光アネックス 地階のグルメサロンに『ONESTORY』は、そのプロデューサーとして参画しています。

    「FIND OUT ABOUT NIPPON」をテーマに掲げ、日本全国から見つけ出した「おいしいニッポン」を集約。

    日本酒ソムリエ・『GEM by moto』店主・第14 代酒サムライの千葉麻里絵さんや調布市『Maruta』のドリンクディレクターを務める外山博之氏らともコラボレーションし、これまでに類を見ない「食べ合せ」のプレゼンテーションも提案しています。

    今回、千葉さんが提案するのは、ドリンクとドリンクの合わせ。『富田酒造』龍宮原酒 らんかん 2016と『川平ファーム』パッションフルーツジュース1 0 0 無糖です。

    「ドリンクにドリンクを合わせる。意外性のある組合せですが、これもペアリングの楽しさのひとつ。熟成することによりねっとりと口に広がる黒糖の甘みと、パッションフルーツの酸味と華やかな味わいが抜群の相性。両方をロックにして交互に味わうのがおすすめ。ただし焼酎の原酒は強いので、氷を溶かしながら少しずつ味わうなど、好みに合わせて楽しんでください。さらにひと捻りするなら、焼酎、炭酸、ジュースを2:7:1で割ってもおいしく味わえます」と千葉さん。

    そのまま合わせるも良し、ミックスさせるも良し。1+1の先にある答えは、楽しみ方次第で無限に広がるのです。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    石垣島でパッションフルーツを始め、トロピカルフルーツの加工品製造をしている『川平ファーム』パッションフルーツジュース1 0 0 無糖。自然の甘さは、果物を直接飲んでいるかのよう。南国らしい香りも口福を増す。

    『富田酒造』龍宮原酒 らんかん 2016。奄美大島でも珍しい1次・2次とも甕仕込みによるこだわりの伝統製法によって醸された龍宮原酒を熟成させた黒糖焼酎。国産米を用いることで味わいにふくらみが増し、黒麹で仕込むことにより、甕仕込み特有のしっかりとした味にキレを加える。

    WAKO ANNEX重ねて広がる香りの相乗効果。

    続いて、外山氏が勧めるペアリングは、香りの合わせ。

    『COPECO かたすみ』ブラッドオレンジのフルーツティー 3種セットと『道の駅 よって西土佐』四万十川天然鮎のコンフィです。

    「砂糖や香料を使用せず、すっきりと仕上げたブラッドオレンジのフルーツティー。その爽やかな香りに、天然鮎の清流を思わせる青い香りや、ローズマリーをはじめとしたハーブの香りが優しく寄り添います。香りを起点にするペアリングでは、このように同系統の要素で、相乗効果を狙うのが王道。単体で楽しむ以上の香りの広がりをお楽しみください。さらにコンフィの旨みや塩味に対して、お茶の持つ天然素材の酸味が広がり、さっぱりとした後味を演出します」と外山氏。

    果物の香り、お茶の香り、鮎の香り……。舌だけでなく、香りのペアリングは、外山氏ならではの提案。ぜひ、お試しあれ。

    鮎とお茶。意外な組み合わせ提案は、さすが外山氏。コンフィの旨味とお茶の酸味が見事に結実する。

    使用した品は、『COPECO かたすみ』ブラッドオレンジのフルーツティー 3種セット(¥1,080税込)、『道の駅 よって西土佐』四万十川天然鮎のコンフィ(¥2,646税込)。

    オーブンで加熱することによって、より豊かな香りが広がる。添えられたハーブの香りもひらく。

    ティーバッグをくぐらせると瞬時に色と香りが広がる。鮎のオイリーな味わいにお茶がバランス良く寄り添う。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

    埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエへ転向。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』」)」のマネージャーに就任。2018年より調布『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (Supprtted by WAKO)

    3品の合わせ技。発見、驚き、楽しさ。ペアリングとは未知なる体験。[和光アネックス/東京都中央区]

    千葉麻里絵さんがお勧めするペアリングは、20年以上熟成された古酒にチーズとドライフルーツを組み合わせたおつまみ。チーズは軽く焼くことによって更に味わいをプラス。

    上記に使用した品は、左より『手取川』純米大吟醸 古酒 梅舞花 -1996-(¥4,400税込)、『Fattoria Bio Hokkaido』イタリア職人がつくる カチョカヴァロ(¥3,024税込)、『Ami Nature』宝玉ピオーネのドライフルーツ(¥756税込)。

    WAKO ANNEX古酒特有の熟成感と余韻を増幅。

    2021年10月1日(金)にリニューアルした和光アネックス 地階のグルメサロンに『ONESTORY』は、そのプロデューサーとして参画しています。

    「FIND OUT ABOUT NIPPON」をテーマに掲げ、日本全国から見つけ出した「おいしいニッポン」を集約。

    日本酒ソムリエ・『GEM by moto』店主・第14 代酒サムライの千葉麻里絵さんや調布市『Maruta』のドリンクディレクターを務める外山博之氏らともコラボレーションし、これまでに類を見ない「食べ合せ」のプレゼンテーションも提案しています。

    今回の面白さは、組み合わせの妙だけではありません。1+1のペアリングに加え、更に+1した3つのペアリング。

    まず、千葉さんが提案するのは、『手取川』純米大吟醸 古酒 梅舞花 -1996-と『Fattoria Bio Hokkaido』イタリア職人がつくる カチョカヴァロ、『Ami Nature』宝玉ピオーネのドライフルーツです。

    「このお酒は20年以上の時間をかけてじっくりと熟成させた古酒。その熟成感とドライフルーツの濃厚な風味、そして古酒の長く続く余韻とチーズの香り、それぞれのトーンを組み合わせました。カチョカヴァロチーズをフライパンで香ばしく焼き、その上にドライフルーツのピオーネを細かく刻んで振りかけてお酒と合わせてみてください」と千葉さん。

    それぞれの個性が一体となった味わいと、長く続く香りの余韻が楽しめます。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    外山氏がお勧めするひとつ目のペアリングは、もはや料理! 味わい豊かなのり佃煮と大山こむぎを使用した香り豊かなタリアテッレを和え、濃厚なトマトジュースとともにいただく。

    上記に使用した品は、左より『LaLaLa Farm』フルーツトマトジュース(¥3,240税込)、『大山こむぎプロジェクト』鳥取県産 大山こむぎ 大山パスタ タリアテッレ(¥378税込)、『三福海苔』佐賀有明 香味のり佃煮 65g(¥810税込)。

    WAKO ANNEX山と磯の香り、その意外なる親和。洋梨×乳製品でチーズケーキのコク。

    続いて、外山氏が勧めるペアリングは2種。こちらにおいても、3種の組み合わせになります。

    まずは、『LaLaLa Farm』フルーツトマトジュースと『大山こむぎプロジェクト』鳥取県産 大山こむぎ 大山パスタ(タリアテッレ)、『三福海苔』佐賀有明 香味のり佃煮です。

    「北海道ニセコ町『LaLaLa Farm』のトマトジュースは、完熟有機トマトを使ったフレッシュな香りが特徴。その青い緑の香り、いわば土の香りの成分に、あえて磯の香りを合わせてみました。香りの成分は似た系統のものだけではなく、一見、相反する系統のもの同士を合わせても、意外な魅力が引き出されることがあるもの。この組合せも、海苔の香りがトマトの香りと調和し、それぞれの旨みがいっそう引き出されます」と外山氏。

    ふたつ目の食べ合わせは、『Le Verger ヤマヨ果樹園』ル レクチエジュースと『NORTH FARM STOCK』北海道クラッカー(プレーン)、『オオヤブデイリーファーム』ヨーグルトディップ プラスワンです。

    「新潟県特産の最高級洋梨・ル レクチエをそのまま搾ったストレートジュース。まず着目したのはふわりと広がるその豊かな香りです。洋梨のフレッシュな香りと乳製品の発酵由来の香りが繋がり、口の中で調和します。味の面でも洋梨の甘みにヨーグルトディップの適度な塩気が加わり、まるでチーズケーキのような味わいに変化。北海道産小麦が香るクラッカーと合わせ、よりカジュアルに楽しむのもおすすめします」と外山氏。

    食べ物と飲み物でもなければ、1+1でもない。食べ物と食べ物、はたまた料理にも近い合わせ。様々な視点から組み合わせ、食べあわせることによって、ペアリングの口福は倍増するのです。

    外山氏がお勧めするふたつ目のペアリングは、ホームパーティにも最適。濃厚なヨーグルトをクラッカーに乗せた味は、まるでチーズケーキのよう。フレッシュなル レクチェのストレートジュースとともに。

    上記に使用した品は、左よりLe Verger ヤマヨ果樹園』ル レクチエジュース 500ml (¥2,484税込)、『NORTH FARM STOCK』北海道クラッカー プレーン(¥405)、『オオヤブデイリーファーム』ヨーグルトディップ プラスワン(¥1,080税込)。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及び和光オンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、外山博之氏と千葉麻里絵さんがセレクトするペアリングをご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

    埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエへ転向。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』」)」のマネージャーに就任。2018年より調布『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:NATSUKI SHIGIHARA
    (Supprtted by WAKO)

    奈良井宿のリアルな一瞬を切り取り、伝える。「季節感」という言葉に込められた料理人の思い。[BYAKU-Narai-/長野県塩尻市]

    BYAKU -Narai-全体のコンセプトは、「リアルな季節感」を伝えること。

    奈良井宿の老舗酒蔵『杉の森酒造』を再生して生まれた宿泊施設『BYAKU -Narai-』。その同じ屋根の下に、レストラン『嵓 kura』はあります。塩尻市でレストラン『ラ・メゾン・グルマンディーズ』を営んでいた友森隆司氏をシェフに迎え、『傅』の長谷川在佑氏が監修を担う店。今回はその料理の内容を紐解いてみます。

    「リアルな季節感を伝える料理」。

    『嵓 kura』の料理長・友森隆司氏に料理のコンセプトを聞くと、即答でそんな答えが返ってきました。

    ただの「季節感」ではなく、「リアルな季節感」。それは山の斜面に見える植物であり、風に混じる香りであり、田舎の食卓に上る漬物のこと。秋だからキノコを食べるのではなく、キノコが出てきたから秋を感じるような、自然中心の考え方のこと。

    友森氏はこのコンセプトを軸に、料理監修を担う長谷川在佑氏と協議を重ねます。そして導き出した結論。それは奈良井宿の伝統を踏まえつつ、極力シンプルな調理にすること。そしてそのシンプルさのために食材は徹底的に吟味すること。

    食材にこだわる。ある意味ありふれた言葉ですが、友森氏の行動は想像の上を行きます。何しろ毎日5時間、車に乗って山を一周回るのですから。それもただ生産者の元で食材を集めて回るだけではありません。ある時は山に踏み込み野草を集め、ある時は畑で直接収穫を手伝い、ある時は長靴に履き替えて水をかき分ける。「厨房よりも野山にいる時間が長いかもしれません」と笑う友森氏ですが、これこそが友森氏。生産者と話す時間も、季節の変化を肌で感じる時間も、すべて『嵓 kura』の料理に生き生きと表現されているのです。

    『嵓 kura』のメインホールは、かつて『杉の森酒造』だったころ、蔵として使われていた場所。

    『嵓 kura』の対面式カウンター。眼前の窓から緑を望む心地よい席。手前の遺構が当時の面影を残す。

    BYAKU -Narai-

    素朴で力強く、素材感が際立つ。奈良井らしさが宿る8品。

    「夏は植物が上に向かって伸び、繁り、実る季節。秋はその方向が逆になり、地中に向かって伸びるイメージ。だからキノコや根菜のように土を感じる素朴さ、力強さが中心になってきます」。

    友森氏はそう言いました。

    では、全8品の料理を見ていきたいと思います。

    一品目「清香」は、信州の伝統野菜・松本一本葱と出汁だけで仕上げたすり流し。出始めである秋のネギの、甘みよりも爽やかな青みのある味わいを上品な出汁でまとめます。「まずは土に潜って行くネギで、物語の始まりを連想させる」という友森氏の狙いです。

    続く一品は「暮らし」と名付けられた信州名物のおやきです。その名前は、おやきが長野において、生活の一部というほど一般的だから。その定番の料理に驚きをもたせるため、餡にアカヤマドリというキノコと信州ぎたろう軍鶏のミンチを使用しました。

    「ポルチーニのような風味のあるアカヤマドリは洋食ではお宝のような存在。こうしたメニューが生まれるのも、和食の長谷川さんと洋食出身の私が一緒にやるおもしろさです」。

    友森氏はそう話しました。

    お造りはシナノユキマス。通年手に入る川魚に季節感を出すため、山で採った天然山クルミと柿を使用しました。川魚という定点に、季節の素材で味わいを添える。これもまたシェフの言う「リアルな季節感」のひとつです。

    海のない長野県において、鯉は何よりも貴重なタンパク源でした。しかし、交通が発達し、遠方の食材が簡単に手に入るようになると、次第にその文化も失われていきました。今ではお祝いや産前産後の妊婦さんが栄養を摂るために食べる風習が残っている程度。その文化をなくさぬために、魚料理には鯉が登場します。

    「地元に人に“え、これが鯉!?”と言わせたい」。友森氏はそう不敵に笑います。

    地元で鯉が敬遠されがちな理由は、泥臭さと小骨の多さ。ここに料理人の技が光ります。身は1週間、ペーパーに水分を吸わせながら寝かせることで、水分とともに泥臭さも抜け、透明感ある味わいに変化。さらに小骨は鱧のように骨切りして食べやすくします。これを根菜と合わせて揚げ出しに。友森氏と長谷川氏はこの料理をあえて「伝承」と名付けました。

    コースは中盤です。

    「里山」と名付けた料理は、その名の通り、友森氏がその日に目にした里山の景色を皿の上で表現したサラダ。長谷川氏の店である『傅』の名物「傅サラダ」をベースに、それぞれの食材に最適な調理を施した上で盛り合わせます。無論、内容は日替わり。この日はホオズキやマイクロキュウリなど、15種の食材が盛り込まれました。

    肉料理は友森氏が「秋口がおいしくなってくる」という鴨。松本で育てられるフランス原産のバルバリー鴨を治部煮に仕立てました。全身に血が回るように締めるエトフェという手法がとられる希少なフランス鴨。長野県の懐の深さを改めて感じさせる一品です。

    食事は、長谷川氏が得意とする土鍋ごはん。7〜8種類のキノコをソテーし、出汁で炊いたご飯に混ぜて提供する秋らしい料理です。米、水、キノコ、すべてが地元産のため「水脈がつながっているため、味の調和が取りやすい。これは成分だけでは測れない部分」と友森氏。その繊細な感覚に訴える美味こそが、当地で食事を味わう醍醐味なのでしょう。

    デザートは洋梨のパイ包み焼き。実は奈良井宿のある塩尻市は10種以上の品種が栽培される洋梨の名産地。季節の移ろいとともに使用する品種を使い分け、秋口の清涼感から晩秋、初冬の濃厚さまで季節の移ろいを感じてもらえるデザートです。

    「レストランでは食後に帰宅しますが、ここは宿ですから食べたら部屋に戻るだけ。ボリュームや食後感も含め、やり尽くすことができます」友森氏はコース全体の流れをそう語りました。主食材が際立つ8品の料理それぞれはもちろん、コース全体を俯瞰することで、シェフが伝えたかった物語、この奈良井宿という場所の魅力が浮かび上がります。

    ネギのすり流し「清香」と松本一本葱。辛味を抑えつつ、この時期のネギ本来の爽やかな風味を引き出した。

    おやき「暮らし」と信州ぎたろう軍鶏、キノコのスープ。軍鶏とキノコをこの地の味噌が結びつける。

    お造り「水明」とシナノユキマス。新鮮なシナノユキマスの透明感ある身を、クルミダレと柿のガリという2種の味付けで。

    地元の鯉食文化の継承を目指す「伝承」と骨切りした鯉。この時期、味わいを増す里芋やカボチャとともに揚出しに。

    野菜やハーブのサラダ「里山」と野菜たち。近隣農家の野菜やハーブを、それぞれに適した味付け、下処理をした上で盛り付けた。

    鴨の治部煮「嵓シシ」とバルバリー鴨。旨みが濃縮されたフランス鴨を蕪の出汁や松本一本葱とともに炊いた一品。

    土鍋ごはん「饗」とキノコ。水、キノコ、米をすべて地元産で揃えることで、バランスの取れたおいしさを実現。

    「Mizu-Gashi」と洋梨。黒文字のシロップでコンポートした洋梨をパイ包みに。パイを使いつつ、洋梨の瑞々しさを残す。

    BYAKU -Narai-

    シンプルな料理を支えるのは、真摯な生産者の手による食材たち。

    友森氏が食材の解説をしてくれる時、必ずそこに「誰々さんの」という冠が付けられていました。そしてまるで友人を自慢するかのように、その人のエピソードも教えてくれるのです。

    「松本の笹井酒造の蔵人さんだった人が、突然鴨を育て始めたんです」。

    「この一本葱はつむぐ農園のもの。まるで子どもを育てるように、丁寧に育てる方です」といった具合。

    なぜこれほどまで、友森氏が地域に溶け込んでいるのでしょう。そのヒントは、視察に訪れた塩尻の自然栽培農園『with earth』で見えてきました。

    1000年持続できるライフスタイルを目指し、東京から家族で移住して自然栽培に挑む『with earth』の大塚直剛氏は話します。

    「たとえば米。人間の手で植えた米ですが、彼ら自身が生きようとします。その力に雑草たちがOKを出し、米は自然に育っていく。人ができるのは、その環境を整えること」。大塚氏の言葉は時に哲学的で、素人の理解が及ばない範囲にまで及びます。何とか理解しようとする取材陣を横目に、友森氏は言います。

    「僕は知識がないから、どうすれば米や野菜がおいしくなるかわかりません。わからないから、飛び込んでいくしかない」。

    例えば、大塚氏が「泥の柔らかさは赤ちゃんの肌が理想」と言えば、真っ先に靴を脱いで田んぼに入るのが友森氏。何度も足を運び、顔を合わせ、純粋な疑問を真っ直ぐにぶつける。そうすることで料理人と生産者という垣根がなくなり、いわばひとつのチームとして、良いものを生む好循環ができあがるのです。

    友森氏が「相手が長谷川さんだから(シェフ就任の話を)受けたんです」という長谷川氏も同様。東京に店を構えつつ、時間が許す限り生産者の元をめぐる長谷川氏。実際に自分が会って、生産者と互いに納得するまで話すのが長谷川氏のスタイル。地域を大切にする気持ちが根底にあるからこそ、長谷川氏の表現する郷土料理は、単なる上辺の踏襲ではなく、地元の人さえ揺り動かす重厚感があるのでしょう。

    シナノユキマスの養殖場『田川浦養魚場』のオーナー・百瀬陽一氏との関係値も同様。湧水を直接引いて、常に流れの中で魚を育てるこの養魚場。流れがあるから薬も使えず、自然に任せる養殖法は「運任せの部分もある」と百瀬氏。出荷まで3〜5年かかり通常の3〜5倍の餌を与えて育てるこの希少なシナノユキマスの養殖場を、友森氏は毎日訪れます。

    「シナノユキマスは、この地域の宝物。ただ1日で鮮度が落ちてしまうから、使う分だけ毎日仕入れるしかない」と友森氏。それを横で聞いた百瀬氏は「毎日来る人なんて他にいないけどな」と笑います。そんな言葉にも、商売を超えた信頼関係が垣間見えました。

    友森氏は、作った料理は生産者に食べていただくようにしているといいます。それは生産者の方々に、自身のやり方と食材に対して自信と誇りを持ってもらうため。

    「あなたの食材にはこういう価値があります、ということをしっかりと伝えたい。そのためには僕自身がある程度の地位にいることが必要」。友森氏はそう語ります。

    『with earth』を訪れた友森氏と長谷川氏。大塚氏の理念や情熱に真剣に耳を傾ける。

    深い山々が連なる塩尻市。この山を駆け巡るのが友森氏の日課。

    大塚氏の米作りは、自然本来の力を引き出す自然農法。都心からの移住者である大塚氏は試行錯誤しながら挑む。

    雪解け水が地中で濾過された湧水は地域の財産。米も野菜も魚も肉も、この水によって支えられている。

    撮影時は7月、眩しいほどの緑に囲まれていた塩尻も現在は稲穂の黄金色。訪れる度に景色が変わるのも、この地の魅力のひとつ。

    湧水が流れ続ける『田川浦養魚場』の養殖池。水温は年間通して13〜15℃という冷たさ。

    各地で養殖が試されたシナノユキマスだが、成功したのは一部。完全民間で営まれるのは、この『田川浦養魚場』のみ。

    百瀬氏の話を聞く友森氏と長谷川氏。話はシナノユキマスの身質のみならず、餌や飼育方法にまで及んだ。

    先代が亡くなり、一度はやめようと思ったという百瀬氏だが全国から要望が届き継続を決意。「水が出る限りやるしかない」と笑った。

    BYAKU -Narai-

    日々、刻々と移り変わる今を切り取り、食という体験に落とし込む。

    「例えば、同じ10月でも、初旬のキノコと下旬のキノコは別物です。そして来年、同じ時期なら同じものがあるかといえば、それも違う。リアルな季節感とは、瞬間的なものです。だからその瞬間を、ストレートに体験していただきたい」。友森氏は言いました。自身の店の合間をぬって繰り返しこの地に足を運ぶ長谷川氏もその気持ちは同じ。食とは体験である。友森氏と長谷川氏がつくり上げた秋のコースからは、そんな思いを強く感じます。

    夏、上に向かって伸びる力が秋になると地中に向かう。友森氏が言っていた秋の食材の特徴。さらに冬になると熟成し、滋味深い味わいが加わってくるのだとか。野山をフィールドにする友森氏の実感がこもった言葉に、改めてこの地の自然の美しさが感じられます。

    『杉の森酒造』の跡地に生まれた『嵓 kura』では、やがてこの地の水で仕込んだ日本酒も生まれます。その酒樽を横目に見つつ、奈良井の「リアルな季節感」が込められた料理を楽しむ。それは訪れる人の心に長く残り続ける、体験となることでしょう。

    フレンチと和食、地元と東京。異なる部分も多いが、地域に対する思いは同じという友森氏と長谷川氏。「ふたりだからこそできることがある」と友森氏。

    住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
    電話:0264-34-0001
    受付時間 : 10:00〜17:00
    https://byaku.site

    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    奈良井宿のリアルな一瞬を切り取り、伝える。「季節感」という言葉に込められた料理人の思い。[BYAKU-Narai-/長野県塩尻市]

    BYAKU -Narai-全体のコンセプトは、「リアルな季節感」を伝えること。

    奈良井宿の老舗酒蔵『杉の森酒造』を再生して生まれた宿泊施設『BYAKU -Narai-』。その同じ屋根の下に、レストラン『嵓 kura』はあります。塩尻市でレストラン『ラ・メゾン・グルマンディーズ』を営んでいた友森隆司氏をシェフに迎え、『傅』の長谷川在佑氏が監修を担う店。今回はその料理の内容を紐解いてみます。

    「リアルな季節感を伝える料理」。

    『嵓 kura』の料理長・友森隆司氏に料理のコンセプトを聞くと、即答でそんな答えが返ってきました。

    ただの「季節感」ではなく、「リアルな季節感」。それは山の斜面に見える植物であり、風に混じる香りであり、田舎の食卓に上る漬物のこと。秋だからキノコを食べるのではなく、キノコが出てきたから秋を感じるような、自然中心の考え方のこと。

    友森氏はこのコンセプトを軸に、料理監修を担う長谷川在佑氏と協議を重ねます。そして導き出した結論。それは奈良井宿の伝統を踏まえつつ、極力シンプルな調理にすること。そしてそのシンプルさのために食材は徹底的に吟味すること。

    食材にこだわる。ある意味ありふれた言葉ですが、友森氏の行動は想像の上を行きます。何しろ毎日5時間、車に乗って山を一周回るのですから。それもただ生産者の元で食材を集めて回るだけではありません。ある時は山に踏み込み野草を集め、ある時は畑で直接収穫を手伝い、ある時は長靴に履き替えて水をかき分ける。「厨房よりも野山にいる時間が長いかもしれません」と笑う友森氏ですが、これこそが友森氏。生産者と話す時間も、季節の変化を肌で感じる時間も、すべて『嵓 kura』の料理に生き生きと表現されているのです。

    『嵓 kura』のメインホールは、かつて『杉の森酒造』だったころ、蔵として使われていた場所。

    『嵓 kura』の対面式カウンター。眼前の窓から緑を望む心地よい席。手前の遺構が当時の面影を残す。

    BYAKU -Narai-

    素朴で力強く、素材感が際立つ。奈良井らしさが宿る8品。

    「夏は植物が上に向かって伸び、繁り、実る季節。秋はその方向が逆になり、地中に向かって伸びるイメージ。だからキノコや根菜のように土を感じる素朴さ、力強さが中心になってきます」。

    友森氏はそう言いました。

    では、全8品の料理を見ていきたいと思います。

    一品目「清香」は、信州の伝統野菜・松本一本葱と出汁だけで仕上げたすり流し。出始めである秋のネギの、甘みよりも爽やかな青みのある味わいを上品な出汁でまとめます。「まずは土に潜って行くネギで、物語の始まりを連想させる」という友森氏の狙いです。

    続く一品は「暮らし」と名付けられた信州名物のおやきです。その名前は、おやきが長野において、生活の一部というほど一般的だから。その定番の料理に驚きをもたせるため、餡にアカヤマドリというキノコと信州ぎたろう軍鶏のミンチを使用しました。

    「ポルチーニのような風味のあるアカヤマドリは洋食ではお宝のような存在。こうしたメニューが生まれるのも、和食の長谷川さんと洋食出身の私が一緒にやるおもしろさです」。

    友森氏はそう話しました。

    お造りはシナノユキマス。通年手に入る川魚に季節感を出すため、山で採った天然山クルミと柿を使用しました。川魚という定点に、季節の素材で味わいを添える。これもまたシェフの言う「リアルな季節感」のひとつです。

    海のない長野県において、鯉は何よりも貴重なタンパク源でした。しかし、交通が発達し、遠方の食材が簡単に手に入るようになると、次第にその文化も失われていきました。今ではお祝いや産前産後の妊婦さんが栄養を摂るために食べる風習が残っている程度。その文化をなくさぬために、魚料理には鯉が登場します。

    「地元に人に“え、これが鯉!?”と言わせたい」。友森氏はそう不敵に笑います。

    地元で鯉が敬遠されがちな理由は、泥臭さと小骨の多さ。ここに料理人の技が光ります。身は1週間、ペーパーに水分を吸わせながら寝かせることで、水分とともに泥臭さも抜け、透明感ある味わいに変化。さらに小骨は鱧のように骨切りして食べやすくします。これを根菜と合わせて揚げ出しに。友森氏と長谷川氏はこの料理をあえて「伝承」と名付けました。

    コースは中盤です。

    「里山」と名付けた料理は、その名の通り、友森氏がその日に目にした里山の景色を皿の上で表現したサラダ。長谷川氏の店である『傅』の名物「傅サラダ」をベースに、それぞれの食材に最適な調理を施した上で盛り合わせます。無論、内容は日替わり。この日はホオズキやマイクロキュウリなど、15種の食材が盛り込まれました。

    肉料理は友森氏が「秋口がおいしくなってくる」という鴨。松本で育てられるフランス原産のバルバリー鴨を治部煮に仕立てました。全身に血が回るように締めるエトフェという手法がとられる希少なフランス鴨。長野県の懐の深さを改めて感じさせる一品です。

    食事は、長谷川氏が得意とする土鍋ごはん。7〜8種類のキノコをソテーし、出汁で炊いたご飯に混ぜて提供する秋らしい料理です。米、水、キノコ、すべてが地元産のため「水脈がつながっているため、味の調和が取りやすい。これは成分だけでは測れない部分」と友森氏。その繊細な感覚に訴える美味こそが、当地で食事を味わう醍醐味なのでしょう。

    デザートは洋梨のパイ包み焼き。実は奈良井宿のある塩尻市は10種以上の品種が栽培される洋梨の名産地。季節の移ろいとともに使用する品種を使い分け、秋口の清涼感から晩秋、初冬の濃厚さまで季節の移ろいを感じてもらえるデザートです。

    「レストランでは食後に帰宅しますが、ここは宿ですから食べたら部屋に戻るだけ。ボリュームや食後感も含め、やり尽くすことができます」友森氏はコース全体の流れをそう語りました。主食材が際立つ8品の料理それぞれはもちろん、コース全体を俯瞰することで、シェフが伝えたかった物語、この奈良井宿という場所の魅力が浮かび上がります。

    ネギのすり流し「清香」と松本一本葱。辛味を抑えつつ、この時期のネギ本来の爽やかな風味を引き出した。

    おやき「暮らし」と信州ぎたろう軍鶏、キノコのスープ。軍鶏とキノコをこの地の味噌が結びつける。

    お造り「水明」とシナノユキマス。新鮮なシナノユキマスの透明感ある身を、クルミダレと柿のガリという2種の味付けで。

    地元の鯉食文化の継承を目指す「伝承」と骨切りした鯉。この時期、味わいを増す里芋やカボチャとともに揚出しに。

    野菜やハーブのサラダ「里山」と野菜たち。近隣農家の野菜やハーブを、それぞれに適した味付け、下処理をした上で盛り付けた。

    鴨の治部煮「嵓シシ」とバルバリー鴨。旨みが濃縮されたフランス鴨を蕪の出汁や松本一本葱とともに炊いた一品。

    土鍋ごはん「饗」とキノコ。水、キノコ、米をすべて地元産で揃えることで、バランスの取れたおいしさを実現。

    「Mizu-Gashi」と洋梨。黒文字のシロップでコンポートした洋梨をパイ包みに。パイを使いつつ、洋梨の瑞々しさを残す。

    BYAKU -Narai-

    シンプルな料理を支えるのは、真摯な生産者の手による食材たち。

    友森氏が食材の解説をしてくれる時、必ずそこに「誰々さんの」という冠が付けられていました。そしてまるで友人を自慢するかのように、その人のエピソードも教えてくれるのです。

    「松本の笹井酒造の蔵人さんだった人が、突然鴨を育て始めたんです」。

    「この一本葱はつむぐ農園のもの。まるで子どもを育てるように、丁寧に育てる方です」といった具合。

    なぜこれほどまで、友森氏が地域に溶け込んでいるのでしょう。そのヒントは、視察に訪れた塩尻の自然栽培農園『with earth』で見えてきました。

    1000年持続できるライフスタイルを目指し、東京から家族で移住して自然栽培に挑む『with earth』の大塚直剛氏は話します。

    「たとえば米。人間の手で植えた米ですが、彼ら自身が生きようとします。その力に雑草たちがOKを出し、米は自然に育っていく。人ができるのは、その環境を整えること」。大塚氏の言葉は時に哲学的で、素人の理解が及ばない範囲にまで及びます。何とか理解しようとする取材陣を横目に、友森氏は言います。

    「僕は知識がないから、どうすれば米や野菜がおいしくなるかわかりません。わからないから、飛び込んでいくしかない」。

    例えば、大塚氏が「泥の柔らかさは赤ちゃんの肌が理想」と言えば、真っ先に靴を脱いで田んぼに入るのが友森氏。何度も足を運び、顔を合わせ、純粋な疑問を真っ直ぐにぶつける。そうすることで料理人と生産者という垣根がなくなり、いわばひとつのチームとして、良いものを生む好循環ができあがるのです。

    友森氏が「相手が長谷川さんだから(シェフ就任の話を)受けたんです」という長谷川氏も同様。東京に店を構えつつ、時間が許す限り生産者の元をめぐる長谷川氏。実際に自分が会って、生産者と互いに納得するまで話すのが長谷川氏のスタイル。地域を大切にする気持ちが根底にあるからこそ、長谷川氏の表現する郷土料理は、単なる上辺の踏襲ではなく、地元の人さえ揺り動かす重厚感があるのでしょう。

    シナノユキマスの養殖場『田川浦養魚場』のオーナー・百瀬陽一氏との関係値も同様。湧水を直接引いて、常に流れの中で魚を育てるこの養魚場。流れがあるから薬も使えず、自然に任せる養殖法は「運任せの部分もある」と百瀬氏。出荷まで3〜5年かかり通常の3〜5倍の餌を与えて育てるこの希少なシナノユキマスの養殖場を、友森氏は毎日訪れます。

    「シナノユキマスは、この地域の宝物。ただ1日で鮮度が落ちてしまうから、使う分だけ毎日仕入れるしかない」と友森氏。それを横で聞いた百瀬氏は「毎日来る人なんて他にいないけどな」と笑います。そんな言葉にも、商売を超えた信頼関係が垣間見えました。

    友森氏は、作った料理は生産者に食べていただくようにしているといいます。それは生産者の方々に、自身のやり方と食材に対して自信と誇りを持ってもらうため。

    「あなたの食材にはこういう価値があります、ということをしっかりと伝えたい。そのためには僕自身がある程度の地位にいることが必要」。友森氏はそう語ります。

    『with earth』を訪れた友森氏と長谷川氏。大塚氏の理念や情熱に真剣に耳を傾ける。

    深い山々が連なる塩尻市。この山を駆け巡るのが友森氏の日課。

    大塚氏の米作りは、自然本来の力を引き出す自然農法。都心からの移住者である大塚氏は試行錯誤しながら挑む。

    雪解け水が地中で濾過された湧水は地域の財産。米も野菜も魚も肉も、この水によって支えられている。

    撮影時は7月、眩しいほどの緑に囲まれていた塩尻も現在は稲穂の黄金色。訪れる度に景色が変わるのも、この地の魅力のひとつ。

    湧水が流れ続ける『田川浦養魚場』の養殖池。水温は年間通して13〜15℃という冷たさ。

    各地で養殖が試されたシナノユキマスだが、成功したのは一部。完全民間で営まれるのは、この『田川浦養魚場』のみ。

    百瀬氏の話を聞く友森氏と長谷川氏。話はシナノユキマスの身質のみならず、餌や飼育方法にまで及んだ。

    先代が亡くなり、一度はやめようと思ったという百瀬氏だが全国から要望が届き継続を決意。「水が出る限りやるしかない」と笑った。

    BYAKU -Narai-

    日々、刻々と移り変わる今を切り取り、食という体験に落とし込む。

    「例えば、同じ10月でも、初旬のキノコと下旬のキノコは別物です。そして来年、同じ時期なら同じものがあるかといえば、それも違う。リアルな季節感とは、瞬間的なものです。だからその瞬間を、ストレートに体験していただきたい」。友森氏は言いました。自身の店の合間をぬって繰り返しこの地に足を運ぶ長谷川氏もその気持ちは同じ。食とは体験である。友森氏と長谷川氏がつくり上げた秋のコースからは、そんな思いを強く感じます。

    夏、上に向かって伸びる力が秋になると地中に向かう。友森氏が言っていた秋の食材の特徴。さらに冬になると熟成し、滋味深い味わいが加わってくるのだとか。野山をフィールドにする友森氏の実感がこもった言葉に、改めてこの地の自然の美しさが感じられます。

    『杉の森酒造』の跡地に生まれた『嵓 kura』では、やがてこの地の水で仕込んだ日本酒も生まれます。その酒樽を横目に見つつ、奈良井の「リアルな季節感」が込められた料理を楽しむ。それは訪れる人の心に長く残り続ける、体験となることでしょう。

    フレンチと和食、地元と東京。異なる部分も多いが、地域に対する思いは同じという友森氏と長谷川氏。「ふたりだからこそできることがある」と友森氏。

    住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
    電話:0264-34-0001
    受付時間 : 10:00〜17:00
    https://byaku.site

    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    コロナ禍でも攻め続け、木下威征であり続ける。そこに待ち受ける未来とは!?[Grand Bleu Gamin/沖縄県宮古島市]

    グランブルーギャマンいつか宮古島へ。スタッフと交わした7年来の約束を実現。

    実は宮古島に『Grand Bleu Gamin』というオーベルジュを出すに至ったのにはひとつのエピソードがあります。

    あるとき、仕事で宮古島を訪れた木下氏は、帰京すると、宮古島の素晴らしさをスタッフに伝えます。
    「こんなきれいなところあるんですか?」「いつか行ってみたいっすね」
    写真を見せながら、宮古島の魅力を伝えると、当然スタッフは興奮しました。
    しかし、その一方で「自分たちの給料じゃ全然いけないな~」との声もあがったそうです。
    それに対し木下氏は、「じゃあ、今年の目標は宮古島に行くことにしよう。売上を上げてみんなで社員旅行で行こう!」と約束したといいます。
    その場ではスタッフも喜ぶものの、みんなどこか半信半疑であったのも事実でした。

    ただ、それを木下氏は話半分にすることはしませんでした。
    「絶対にこいつらを信じさせてみせよう」
    スタッフとともに必死に働き、店舗だけの利益では宮古島旅行はできないと見るや、休み返上で他の仕事もこなし、講演をこなしたり……。なんとか社員旅行の経費を捻出、念願の宮古島にこぎつけるのです。ただ木下物語はここで終わりません。

    宮古島でのバカンスを楽しんだチーム木下のスタッフは「いつかこんなところで働いてみたい」という思いを抱くようになります。そして、木下氏はその場でスタッフにこう約束するのです。
    「よし、だったら次の目標は、この宮古島に店を出すことな!」

    それから7年。2020年2月、宮古島にオープンしたのが『Grand Bleu Gamin』なのです。

    2020年2月にオープン。まさにコロナがじわじわと世界中に蔓延し始めたタイミングでの開業となった。

    ディナーは『Grand Bleu Gamin』の真骨頂ともいえる鉄板焼のカウンターで。木下氏がカウンターに立てばそこは劇場と化す。

    グランブルーギャマンコロナ禍も連日、満席、満室。攻めの姿勢が新たな客層を呼ぶ。

    『ONESTORY』は今回の記事を制作するにあたり、コロナ禍をまたいだことで2度の取材を敢行しています。一度目は2020年2月のオープン直前、二度目は2020年12月。誰もが予想しなかった新型コロナウイルスが、観光産業に支えられる宮古島に与えた影響は小さいはずがありませんでした。しかし、木下威征がとった行動は、経営者として見事なものでした。

    木下氏は4月からまずキャッシュの確保に奔走します。
    「役員報酬は減らして、若手にはいままで通り、給料は全額支給する。なんとか2年間は耐えられる金額を集めました」
    そのうえでもちろんスタッフを危険にさらすことはできません。2020年4〜5月は東京の店を閉め、満席が続いた宮古島だけ営業を続ける形に。

    しかし、ふたを開ければ、コロナ禍で始めたYouTubeの料理教室も人が集まり、もともと通販を行なっていたノウハウをいかして、料理セットを販売するとこちらも好調。2店舗分くらいの収益を得たことで、借りたお金には一切手をつけず今まで来ることができたといいます。
    さらに、このコロナ禍で、一番の想定外だったのが満席の続く店の客層でした。オープン当初は東京をはじめ県外から訪れるゲストがほとんどでしたが、コロナ禍では県外の客が5割、残り5割は島内の人々という比率に。
    「YouTubeで強気にも課金性の料理教室をやったら、それでも人が集まってくれた。そこで繋がった人たちが宮古島に泊まりにきてくれたり、食事にきてくれたり。地元の人にとっても、いままで島内にこんなレストランがなかったから、特別な時間を過ごすのにきていただけるんです」

    さらに、木下氏の攻めの姿勢は、コロナ禍で「新たに20人のスタッフを雇った」ということにも現れます。
    「この状況だからもちろん閉めざるを得なくなったレストランも多い。そんななかで働き口を失った料理人たちが僕のところにやってくるんです。本来なら、どこも人を新たに雇える余裕なんかない。でも、知人から『木下さんのところならなんとかしてくれるかも』という話を聞いて助けを求めにやってくる人もいる。自分は面接をしたら基本的にみんな採用するんです。飲食業が大変ななか、仕事がなくなり、それでもうちにお願いしにくるということは、そいつは料理が好きでなんです。お客さんを喜ばせるこの仕事が好きだから頭を下げてやってくると思っている。『じゃあ、その好きな気持ちを、お客さんを喜ばせたいという思いを一緒にカタチにしていこうじゃないか』と。それだけなんです」

    コロナでも攻め続けた木下氏。キャッシュを確保し、役員は減俸にしたうえで若手スタッフにはいままで通り全額支給を続けた。

    レストラン2Fにあるバースペース。『Grand Bleu Gamin』で働くスタッフひとりひとりに木下イズムが浸透している。

    グランブルーギャマン宮古島の開発エリアにプロデュース店オープン。さらには……。

    そんな攻めの姿勢を続ける木下氏には新たな展開も待ち受けていました。いまとある企業から宮古島の新たな開発施設の目玉となるテナントプロデュースの仕事が舞い込んでいます。
    これも実は木下氏の誠実な性格があってこそ実現したもの。

    というのは、別業界で財を成した、とある企業の会長が飲食店展開に興味を持ち、木下氏に話しを持ちかけます。その会長とは、以前に別店舗のメニュー開発で関わりをもっていた木下氏は、新規飲食店の展開に対しこう助言します。
    「会長、飲食は儲からないですよ。会長がやってきた業界との利益率とは桁がひとつ違います。絶対に止めたほうがいいですよ」
    すると、その会長はこうきっぱりと返すのです。
    「木下君ね、だからこそ、僕は君とやりたいんだ。いままで、こんな話をいろんなやつらにしてきたけど、全員うまいこといって、お金だけ釣り上げ、ちょろまかして消えていった。『儲からないからやめた方がいい』といってくれたのは君だけだ」

    偶然にもそのときに、宮古島の新たな開発施設の目玉となるテナント運営の話を持ちかけられていた木下氏。しかし、そこを開くには数千万円単位のお金がかかる。そんなことを会長に告げると、「よし、じゃあ、それをやろう。運営はうちがやるから、木下くんはプロデュースをしてくれ」というのです。
    それが、今後オープンする予定の『トリプルG』という名のカフェ。『Grand Bleu Gamin』に続く宮古島の第二章はすでに始まっているのです。

    それだけではありません。極めつけは、2023年にフランスの南西、スペインとの国境にほど近いビアリッツという海沿いの街に店を出す予定もあります。
    「留学時代、アジア人としてバカにされ、悔しい想いをしながらも料理の素晴らしさを教えてもらったフランス。そこで“日本”を売りにいくんです。メイド・イン・ジャパンの皿で、メイド・イン・ジャパンのお箸で、メイド・イン・ジャパンの食材で、フランス料理を表現する。そんな店です」

    コロナ禍で飲食業界が悲鳴を上げるなか、こうして常に攻めの姿勢を続ける木下氏。それは無理をしているでもなく、背伸びをしているのでもありません。熱く、優しく、何事にも真っ直ぐに、真摯に向き合ってきた木下氏だからこそのいまであり、これからの物語も必然として紡がれていくのでしょう。

    『Grand Bleu Gamin』のアイコン的に建物の目の前に停まるギャマン号。次に木下氏が目指す場所とは?

    『Grand Bleu Gamin』の名は、伝説のダイバー、ジャック・マイヨールの生涯を追った映画『グラン・ブルー』に由来。

    グランブルーギャマン宮古島でも受け継がれる、温かさに満ちた木下イズム。

    実は、2度目の取材の前日、木下氏がいないことを知りながら、『ONESTORY』取材班は『Grand Bleu Gamin』をふと訪れました。すると、スタッフのひとりがわれわれを、温かくもてなしてくれるのです。旅行かばんも持っていませんから、われわれが宿泊客でないことは一目瞭然です。
    しかし、そのスタッフはレストランやバーを丁寧に案内してくれて、『Grand Bleu Gamin』のパンフレットを見せてくれながら、真面目に、そして楽しそうに話をしてくれるのです。

    翌日の取材でそのことを伝えると、木下氏はこういうのです。
    「それは、みんなが『雇われ』という気持ちがないからだと思うんです。ひとりひとりが自分たちのホテル、自分たちのグループ、自分たちのゲストと思っている。全員がそういう捉え方をしてくれているんです。だからこそ来てくれた方には、全力でもてなしをしてくれる」
    そんな言葉を聞いて改めて確信しました。これこそが木下威征という料理人の魅力なのだと。そのぶれない人間力のような、どっしりとした幹があるから、そこから多くの枝が伸び、葉が茂り、実がなっていくのだ、と。その木の隅々には当然、木下イズムが行き渡っています。
    料理人である前に、サービスマンである前に、ひとりの人間であること。
    そして、そこには温かさがないといけないということ。
    木下威征という人間のまわりには、そんなの温かさが満ちていました。

    キラキラと目を輝かせ、どこまでも真面目にまっすぐに。そんな人間としての魅力が、木下氏のまわりに人を呼び寄せる。

    住所:沖縄県宮古島市平良字荷川取1064-1 MAP
    電話:0980-74-2511
    https://www.grand-bleu-gamin.com/

    料理、空間、ディテールにまで落とし込まれた、ゲストを喜ばせたい思い。[Grand Bleu Gamin/沖縄県宮古島市]

    グランブルーギャマンディテールの積み重ねが、日常からゲストを開放する。

    『Grand Bleu Gamin』のオーベルジュという立ち位置を考えれば、もちろん宿としてのハードの説明が必要でしょう。
    『Grand Bleu Gamin』があるのは宮古島の北部、大浦湾にほど近い海沿いにあります。畑と緑に囲まれ、生い茂った木々を抜けた先には、宮古ブルーの海が広がるプライベートビーチ。
    南仏にあるような白亜の館を思わせる建物は、ワンフロアで構成されたスーペリアスイート、メゾネットタイプのデラックススイート、リビングと独立した2ベッドルームを備えたプレミアムスイートの3タイプ全5室で構成されています。そのすべての部屋にプライベートプールを備えるという贅沢な空間で、世界各地から厳選した最高級の麻を100%使うベッドリネン、ハンガリーホワイトダックのダウン85%、フェザー15%という2枚合わせの羽毛布団、ルームウェアには『JAMES PERSE』のパーカーとTシャツ 、パンツを用意。それだけではなく、無垢のピーチ材を使ったハンガーやブラシは、浅草橋にあるインテリア雑貨ブランド『clokee』とのダブルネーム……。
    そうしたちょっとしたディテールに「ゲストを喜ばせたい」との心遣いが形となって表現されているのです。
    「日常の喧騒を忘れてゆっくりと流れる島の時間に身を委ねてもらいたい」
    そのコンセプトは、言葉にすれば簡単なことですが、小さなことの積み重ねのひとつひとつが、ゲストを日常から乖離させているのです。

    ベッドリネンは、最上級麻を、羽毛布団はホワイトダックダウンとフェザーをかけ合わせ、睡眠の質を追求。

    滞在時間をよりくつろいでもらうべく、ルームウェアにもこだわった。パーカー、パンツ、Tシャツスタイルがリラックスさせる。

    ポーチも歯ブラシセットも『Grand Bleu Gamin』のロゴ入りオリジナル。こうした小さなこだわりが嬉しい。

    グランブルーギャマン食材に乏しい宮古島。そのなかで宮古島バージョンにアップデート。

    そして、『Grand Bleu Gamin』のハイライトとなるのが、もちろん食事の時間でしょう。その舞台は、『AU GAMIN DE TOKIO』のスタイルを踏襲したオープンキッチンのカウンターです。
    ここで登場するのも当然、フレンチをベースとした鉄板料理で、そこには木下氏の「ゲストに喜んでほしい」という遊び心と、もてなしの心が詰まっています。

    たとえば、『AU GAMIN DE TOKIO』でも出しているメニュー「サイフォントマトラーメン」。それを進化させた宮古島バージョンでは、カリカリに焼いて粉砕した宮古島産の車海老を鰹節とともにサイフォンに入れ出汁を抽出。カペッリーニと合わせ、島とうがらしを使って仕込んだ自家製ラー油を加えアクセントにしています。

    一方で、木下氏のスペシャリテでもある「とうもろこしのムースと生うに」でも宮古島らしさを演出します。チップになるまで焼いて焦がす宮古島産の玉ねぎを練り込んだクッキーを添え、『Grand Bleu Gamin』仕立てへとアップデートしているのです。
    「四季がない宮古島ではどうしても食材が限られています。皮肉にも一番観光客が集まるシーズンが、一番食材に乏しい。その中でいかに工夫してゲストに喜んでもらうか」
    その言葉は、まさに木下氏が修業時代、三谷氏や福島氏から学んだ精神なのではないでしょうか。

    木下威征といえばこれ。スペシャリテ「とうもろこしのムースと生うに」。ムースと生うにの絶妙なハーモニー。

    すぐ近くにあるビーチの貝や砂をあしらった「イカともずくのアロエ和え-みょうがと大葉の薬味とともに-」。

    サイフォンで出汁をとる。この一手間もまたカウンターのライブ感となってゲストを喜ばせるのだ。

    グランブルーギャマンなければつくるまで。食材探しに奔走し、築いた生産者との信頼関係。

    とはいえ、宮古島で料理をつくるのであれば、できるだけ島内の食材を使いたいのは当然です。しかし、それが一朝一夕でできるものでもありません。
    「宮古島で食材を仕入れるとなると料理人が行き着くのは、やっぱり『あたらす市場』か『島の駅』になるんです。ただ、そうなると『この食材もどこかで見たことがある』『この食材はほかで食べたことがある』となってしまう。宮古島で他にはない何か特別なものを使うとなると、やり方も考えないといけなかった」と木下氏はいいます。

    木下氏は『Grand Bleu Gamin』をオープンする1年前から宮古島を訪問し、食材探しに奔走、そこである答えに行き着きます。
    「ないのなら、生産者から育てていくしかない」
    オープンまでの間、木下氏は宮古島にある農園の住所を調べ、片っ端から生産者のもとを訪ね歩きました。
    「『わたくし木下と申しますが、1年後、宮古島でお店を開きます。市場に出る前の食材をあなたにつくってもらいたいのです。一緒にやっていただけませんか?』とお願いしてまわりました」
    ただ、宮古島ですでに栽培されている既存の食材をつくってもらうのではありません。生産者には、まだ宮古島ではつくられていない野菜を栽培してもらおうというのです。
    「ルッコラやプンタレッラももともとは宮古島にはなかった食材でしたが、種を渡してつくってもらったんです。漁師にも魚を釣ったらバンバン甲板に投げるのでなく、『めんどくさいけど釣ったら一度神経締めにして、血抜きしたやつをクラッシュアイスにいれて、うちのだけでもいいから、このサイズがとれたら処理してまわしてほしい』とお願いしてまわりました」といいます。
    それだけでなく、マンゴーやドラゴンフルーツなどをつくっている生産者には間引いていらなくなった果物を譲ってもらったり、宮古島では豆腐しか食べる習慣がないので、島豆腐の生産者には湯葉をいただいたり……。そうして、宮古島らしさを打ち出すために木下氏は準備をしてきました。

    車海老の頭と鰹節を使いサイフォンでとった出汁にカペッリーニを合わせた「車海老のサイフォンスープ」。

    マンゴー農家から仕入れるマンゴー。完熟を冷凍してデザートなどに使う。

    マンゴーの生産者。カフェも営み、そこで出されるマンゴーカレーは、木下氏絶賛の一品。

    グランブルーギャマンかつての常連の言葉が今に重なる。木下威征らしさを追求する。

    そんな具合に生産者を含めてここ宮古島でチームをつくってきた一方で、料理についてはまだまだ進化の途中とも木下氏はいいます。
    「今回お出ししている料理も、まだまだ自分らしくないと思っているんです。ここが開業するまで、ああでもない、こうでもないと思って、1年間スタッフとともに話をしてやってきたんですが、もっとライブ感があっていいと思っています。お客様に高いお金を出して来ていただく以上、『待たしてはいけない』とか『洗練された料理を出さないといけない』という思いが強くなるのは当然。でも、どこか縮こまっている。僕らしくないと自分では、感じているんです」

    昔、『深夜食堂はなれ』という店をつくり、木下氏が和食に挑戦したときのこと。木下氏をよく知る常連客にこう評されたことがあったそうです。
    「料理は素晴らしかったよ、素晴らしかったけど、おまえらしくないんだよね。『木下が和食をつくる』っていうから来てみたけど、あの料理だったらオレ、赤坂の料亭に行くよ。手が込みすぎていて、綺麗すぎて、いざ来てみたら全部仕込まれていて、後は盛り付けるだけの状態の料理だとは思わなかった。おまえなら、カウンターの目の前で最高級の明太子を串に打って、炭火でジリジリと炙って、『いまだ!』というタイミングで土鍋に落とし、『これがオレの最高の和食ですっ!』と来ると思っていた。そういうことを平気でやるやつだと思っていたから」

    その言葉が木下氏を改めさせ、その後『深夜食堂はなれ』はコースをやめ、アラカルト中心で勝負するようになったそうです。それは、まさにいまの『Grand Bleu Gamin』にも重なっている。木下氏はそう感じているのです。
    だからこそ、食材にも本気で向き合う。その日揃った食材を見て何をつくるか。そのくらいのライブ感があってこそ、木下威征なのではないかと自問自答するのです。

    2回の取材を通して分かったこと。それは、木下氏とは逆境にこそ真価を発揮するシェフであり、その真価がさらなる進化へと繋がっていくことでした。
    『オー・バカナル』時代のまかない事件の時も、それがきっかけでシェフの右腕に。福島氏との深夜のまかないセッションは、木下氏の真骨頂となるライブ感あふれる料理の礎になりました。そして、コロナ禍では、経営者として先頭に立ち、数手先をみこした行動でスタッフを守り、会社としては攻めの姿勢を崩しませんでした。
    その結果、チーム木下の結束力は増し、木下イズムはより浸透したことは言うまでもありません。そして、それらが、空間、ファシリティ、料理、もてなしといった、何気ないすべてに散りばめられていることこそ、『Grand Bleu Gamin』の魅力なのです。

    木下らしさとは何か? 今一度、宮古島でそれを追求する。もちろん、行き着く所はゲストを喜ばせることだ。

    住所:沖縄県宮古島市平良字荷川取1064-1 MAP
    電話:0980-74-2511
    https://www.grand-bleu-gamin.com/

    強く、優しく、熱い。木下威征という男の半生が、宮古島のオーベルジュの魅力を描き出す。[Grand Bleu Gamin/沖縄県宮古島市]

    グランブルーギャマンOVERVIEW

    1990年代に美食家の話題を集めた『MAURESQUE(モレスク)』のシェフを務め、独立した『AU GAMIN DE TOKIO』では鉄板フレンチとして一斉を風靡したシェフ・木下威征(たけまさ)氏。料理人として幅広く活躍する一方で、東京では『TRATTORIA MODE』『深夜食堂はなれ』を展開するなど、GAMINグループのオーナーとして店舗経営にも手腕をみせています。

    そんな木下氏が次なる一手を打ったのが、2020年のこと。新たに選んだ場所は、東京ではなく観光バブル絶頂の宮古島でした。しかも、宮古島北部の大浦湾近くに土地を購入し、業種もレストランではなく、オーベルジュだというのです。

    そう書けば、手広くやっている、ビジネスライクなシェフというイメージを描くかもしれません。しかし、実際の木下威征という料理人、木下威征という男は、その真逆にいく人間です。
    人情に厚く、人に優しく、負けず嫌いで、自分のなかの正義に真っ直ぐに突き進む。一言で表現するなら、温かな料理人であり、人間です。
    そのことは、これまで木下氏が紡いできた数々のストーリーが証明してくれます。

    1度目の取材は2020年2月。4月に控えていた記事公開は、コロナ感染者の増加、緊急事態宣言の発令を受け見送りに。その後も未知なるウイルスとの向き合い方に多くの人が不安を抱えるなか、『ONESTORY』は記事公開の時期を模索していました。そして、そのコロナがやや落ち着きを見せた2020年12月、当時の状況をうかがうべく再取材したものの、その後にまたコロナ感染者が増加。容易に公開に踏み切れない状況は続きました。
    それからおよそ10ヶ月、機を見計らっていた『ONESTORY』は、今しかないという決断を下し、この記事を公開します。

    オープンからおよそ2年。『Grand Bleu Gamin』とはどんなオーベルジュなのか。それを紐とくにはオーナーである木下威征氏というシェフがどんな人間かを知る必要があります。
    フランスでの修業時代、『オー・バカナル』『MAURESQUE』『AU GAMIN DE TOKIO』。木下威征が歩んできた道のりが、『Grand Bleu Gamin』の魅力を教えてくれました。

    これは単なるオーベルジュの紹介記事には当てはまらないかもしれません。ここにあるのは木下威征というひとりの人間の物語。しかし、それこそが『Grand Bleu Gamin』というオーベルジュの魅力を顕にするのです。

    住所:沖縄県宮古島市平良字荷川取1064-1 MAP
    電話:0980-74-2511
    https://www.grand-bleu-gamin.com/

    強く、優しく、熱い。木下威征という男の半生が、宮古島のオーベルジュの魅力を描き出す。[Grand Bleu Gamin/沖縄県宮古島市]

    グランブルーギャマンOVERVIEW

    1990年代に美食家の話題を集めた『MAURESQUE(モレスク)』のシェフを務め、独立した『AU GAMIN DE TOKIO』では鉄板フレンチとして一斉を風靡したシェフ・木下威征(たけまさ)氏。料理人として幅広く活躍する一方で、東京では『TRATTORIA MODE』『深夜食堂はなれ』を展開するなど、GAMINグループのオーナーとして店舗経営にも手腕をみせています。

    そんな木下氏が次なる一手を打ったのが、2020年のこと。新たに選んだ場所は、東京ではなく観光バブル絶頂の宮古島でした。しかも、宮古島北部の大浦湾近くに土地を購入し、業種もレストランではなく、オーベルジュだというのです。

    そう書けば、手広くやっている、ビジネスライクなシェフというイメージを描くかもしれません。しかし、実際の木下威征という料理人、木下威征という男は、その真逆にいく人間です。
    人情に厚く、人に優しく、負けず嫌いで、自分のなかの正義に真っ直ぐに突き進む。一言で表現するなら、温かな料理人であり、人間です。
    そのことは、これまで木下氏が紡いできた数々のストーリーが証明してくれます。

    1度目の取材は2020年2月。4月に控えていた記事公開は、コロナ感染者の増加、緊急事態宣言の発令を受け見送りに。その後も未知なるウイルスとの向き合い方に多くの人が不安を抱えるなか、『ONESTORY』は記事公開の時期を模索していました。そして、そのコロナがやや落ち着きを見せた2020年12月、当時の状況をうかがうべく再取材したものの、その後にまたコロナ感染者が増加。容易に公開に踏み切れない状況は続きました。
    それからおよそ10ヶ月、機を見計らっていた『ONESTORY』は、今しかないという決断を下し、この記事を公開します。

    オープンからおよそ2年。『Grand Bleu Gamin』とはどんなオーベルジュなのか。それを紐とくにはオーナーである木下威征氏というシェフがどんな人間かを知る必要があります。
    フランスでの修業時代、『オー・バカナル』『MAURESQUE』『AU GAMIN DE TOKIO』。木下威征が歩んできた道のりが、『Grand Bleu Gamin』の魅力を教えてくれました。

    これは単なるオーベルジュの紹介記事には当てはまらないかもしれません。ここにあるのは木下威征というひとりの人間の物語。しかし、それこそが『Grand Bleu Gamin』というオーベルジュの魅力を顕にするのです。

    住所:沖縄県宮古島市平良字荷川取1064-1 MAP
    電話:0980-74-2511
    https://www.grand-bleu-gamin.com/

    いまも変わらない。強くて、優しくて、義理人情に厚い木下威征という男の原点。[Grand Bleu Gamin/沖縄県宮古島市]

    グランブルーギャマン伝説的レストラン『オー・バカナル』でのまかない事件。

    木下威征という男の半生を描けば、ここには書ききれないほどの物語に溢れています。
    札付きのワルだった学生時代。悲しい思いをさせてしまった母親に対して変わった自分を見せようと邁進した調理師専門学校では、料理の知識がまったくなく入学したにもかかわらず、料理学校の東大といわれる調理学校を首席で卒業。フランス語がしゃべれないなか孤軍奮闘したフランス留学も木下氏に大きな影響を与えたのは間違いありません……。
    そんななか木下氏の礎を築いたといってもいいのが、かの『オー・バカナル』でした。
    『オー・バカナル』といえば、当時一世を風靡したレストラン。ブラッスリー、カフェ、ブーランジェリーが一体となり、料理はもちろん空気感、文化までもフランスそのものを再現したようなレストランで、閉店時(現在は他資本の経営で営業)にはテレビの生中継が入るほど、その人気は凄まじいものでした。

    1995年、木下氏はそんな伝説的なレストラン『オー・バカナル』のオープンニングスタッフとして働き始めました。料理長を務めていたのは、今はなき『レスプリ ミタニ ア ゲタリ』の故・三谷青吾氏。当時21歳、スタッフ最年少の木下氏は、そこで70人ほどいる従業員のまかないを毎日のようにひとりつくっていたそうです。そこで木下氏が次の道を切り開く出来事が起こります。
    当時、まかないはレストランの地下にあるパーティルームに用意していたそうで、トップの三谷氏から順にまかないを食べにいきます。すると、その地下からブザーが鳴り、こう言われるのです。
    「おー、今日のまかないつくったやつ誰だ? こんなクソまずい料理つくりやがって」

    それも、ある意味当然のことでした。他の先輩たちから頼まれる多くの雑用をこなしながら、調理に割く時間がない状況でまかないを仕込んでいたのですから。
    木下氏も「与えられるのは30分くらい。その時間で美味しい料理なんてつくれるわけないだろと思っていた」と当時を振り返ります。

    そして、ある時、木下氏は三谷氏から決定的なダメ出しを受けるのです。
    「おまえの料理には愛情を感じない。人を喜ばせようとしている料理には思えない。今日のまかないはいらない、外で飯食ってくる」
    「それが悔しくて、悔しくて……」とその一言が木下氏に火をつけることになるのでした。

    『オー・バカナル』オープン当初は一番の下っ端。木下氏はまかないづくりで、自らの地位を確立していく

    『オー・バカナル』で供されたのはいわゆるビストロ料理。そこで学んだ技術、精神は、木下氏の原点になっている。

    グランブルーギャマン30分ちょっとで70名分のまかないづくり。どうやって美味しく?

    そこで木下氏がとった行動が、マネージャーに店の鍵を借りること。当然、マネージャーには「お前、何やるつもりなんだよ」と詰め寄られます。
    「毎日毎日、『まかないがまずい』って言われてムカつくんすよ。オレだって時間さえあればうまいもんつくれるんすよ。30分で70人前つくるなんて無理っす」
    木下氏がそう迫ると、マネージャーは「やっとお前みたいなやつが出てきたか」と笑って鍵を預けてくれたそうです。

    木下氏はレストランの営業が終わり、従業員が帰った後の深夜2時に再び店に向かいます。そこで翌日の70人分のまかないを仕込み始めるのです。
    午前4時過ぎ、鍵を貸してくれたマネージャーが、店にやってきました。自宅でご飯を炊き、木下氏を鼓舞しようと大きなおにぎりを差し入れにきてくれたのです。
    「木下な、いまのお前の気持ち忘れなんよ。見てくれる人は見てるからな。明日のまかない楽しみにしているよ」
    そんな言葉とおにぎりだけを残し、そのマネージャーは帰っていったそうです。
    木下氏は「この人を喜ばせるためにも、明日は美味しいまかないをつくろう」と改めて決心します。

    翌日、ランチ営業後のまかないの時間。テーブルにずらりと並べた料理を、シェフの三谷氏から順に食べていきます。すると、いつものように地下のパーティルームからブザーが鳴りました。
    「おー、今日のまかないつくったやつ誰だ?」
    木下氏は「なんか、やっちまったかな?」と思ったそうです。
    ところが、です。三谷氏は木下氏の目の前まで来て、深々と頭を下げてこう告げました。
    「うまかった~、ごちそうさま! こういうまかないだったら、毎日食いたいな」

    こうしてまかないづくりで名をあげた木下氏は、三谷氏の右腕として働くようになるのです。
    単に負けず嫌いなだけではない。そこには人を喜ばせるためにどこまでも真面目である木下威征という男の芯の部分がありました。

    語りきれないほどのエピソードは、それだけ木下氏が一瞬、一瞬に妥協なく人生に向き合ってきた証拠でもある。

    『Grand Bleu Gamin』から木々の間を抜けていくと、その先にはプライベートビーチが待ち受けている。

    グランブルーギャマンレストランプロデューサー・福島直樹氏とのまかないセッション

    しかし、このまかないの物語には続きがあります。
    三谷氏に認められるようになり、一番下っ端から一気に三谷氏の右腕になった木下氏でしたが、厨房の最年少であったため、日々まかないをつくり続けたそうです。そこからこの物語は新たな展開をみせるのです。

    深夜のまかないづくりが続いたある日、午前2時になって店に誰かが入ってきました。その人こそ、当時の『オー・バカナル』の副社長であった福島直樹氏。後に『MAURESQUE』『AU GAMIN DE TOKIO』(後に経営権を木下氏に譲渡)、『酒肆ガランス』『焼肉ケニヤ』などを手掛けた、言わずと知れたレストランプロデューサーです。
    当時の『オー・バカナル』といえば、まさに一世を風靡した“イケイケ”の時代でした。副社長という立場の福島氏も毎日が接待で夜中まで飲んでは、こうして近くにある自分の系列店に寝泊まりしにきていたそうです。

    深夜の厨房に立つ木下氏は、事情を福島氏に説明します。すると、福島氏が一肌脱ぐのです。
    「よし、じゃあオレも一緒に手伝ってやるよ!」

    『オー・バカナル』では副社長という立場でしたが、もとを辿れば福島氏も料理人。しかも、かの三田『コート・ドール』の斉須政雄氏のもとで修業を積んだ方で、福島氏もまた熱い男でした。

    そうして、木下氏と福島氏の真夜中のまかないセッションが始まります。
    「キノヤン、ポロネギあるか?」「あります!」
    「蒸し器もってこい!」「はい!」
    「ポロネギは、蒸してからこうして水で締めてな……」
    「これはな、『コート・ドール』の斉須さんと一緒につくった料理でさ……」

    木下氏の熱い思いが、福島氏の料理人魂に火をつけたのです。ふたりの料理セッションはこの日だけでなく、この後も夜な夜な繰り広げられていくことになります。
    そこで木下氏は、福島氏の姿を目の当たりにし、改めて料理人としての大切さを思い知ることになります。
    「いままで料理するのが楽しかったはずが、『いつのまにか作業になっていたのでは?』と。とにかく時間に追われて、意地だけでやっていたのかもしれない、と気付かされたんです」
    福島氏のとにかく楽しそうに調理する姿、材料が足りないとみるやその場にあるもので工夫しながら料理をつくる姿。暑い季節には、冷たいサラダを出すために、まかないにもかかわらずわざわざ冷凍庫で皿を冷やしておいたりもしたそうです。
    「キノヤンな、ここまでやってサービスだからな」

    木下氏は、福島氏のそんな一挙手一投足に感銘を覚えたそう。ここにも料理人木下威征の原型があるのは間違いありません。

    『MAURESQUE』では、『AU GAMIN DE TOKIO』に通ずるライブ感あふれる鉄板料理の礎を見出した。

    いかにゲストを喜ばせるか。シェフズテーブルという概念から、カウンターのライブ感を大切にする。

    住所:沖縄県宮古島市平良字荷川取1064-1 MAP
    電話:0980-74-2511
    https://www.grand-bleu-gamin.com

    歴史に泊まる宿、百にひとつの宿。奈良井宿に誕生。[BYAKU -Narai-/長野県塩尻市]

    床の間や欄間だけでなく、梁や壁など、当時の材をできる限りそのまま残す。百五の客室より。

    既存の建物、構造を活かした客室作りのため、それぞれ広さもスタイルも異なる。天井高が活かされた空間は、百二の客室より。

    BYAKU -Narai-愛され続けてきた「杉の森酒造」に再び命が宿る。

    知る人ぞ知る、日本最長の宿場町として名高い奈良井宿。しかし、その本質は長さだけでなく、町の風景にあります。

    古き良き町並みを守り続けることは容易なことではありません。当時の面影を残す、もとい、そのままの姿を成しているのは、「作る」のではなく「直す」繰り返しをしてきたからこそ。まるで秘伝のタレのごとく、修復という名の継ぎ足し、継ぎ足しは、奈良井宿の味を変えず、保たれてきたのです。

    それは、長きにわたり、住民ひとり一人がそのイズムを受け継いできたことを意味します。

    しかし、歴史の中から消えてしまう灯火があるのも事実。2012年に幕を閉じた『杉の森酒造』もそのひとつです。

    創業は、1793年(寛政5年)。200年以上、この町並みを象徴する建物として愛され続けていました。

    今回、その『杉の森酒造』が再び息吹を取り戻します。2021年8月4日、大きな大きな杉玉をシンボルに『BYAKU -Narai-』として再生を迎えました。

    酒蔵の再生(2021年秋頃開業予定)はもちろん、宿泊施設と温浴施設、レストランやバー(2021年秋頃予定)という新たな役目を備え、もう一度、街の風景を形成する一端となります。

    もちろん、その姿はそのままに。

    建物をそのまま残すことによって、奈良井宿が守ってきた風景を汚すことなく再始動させる。当時より『杉の森酒造』のシンボルは、ひと際大きな杉玉。『BYAKU -Narai-』においてもそれを採用。

    実際に酒造りをしていた空間は、レストラン『嵓 kura』として再生。奥のガラス向こうは、2021年秋頃に酒造りを復活させる酒蔵。

    BYAKU -Narai-

    再生の条件は、「継ぐ」こと。決して、町の文脈から外れてはいけない。

    『BYAKU -Narai-』の容姿は、『杉の森酒造』だった当時と変わりありません。

    前述、大きな大きな杉玉においても、当時のシンボルを再現。建物の構造もできるだけ残し、もともとあった使用できるものにおいても再び役目を与え、『杉の森酒造』を継いでいます。

    大きな梁や土壁、レストランに使用する食器の一部などはその好例。まさに泊まりながら歴史を体感できる宿なのです。

    客室においては、全12室を用意。

    「百一」から「百十」までの客室名によって構成されるそれぞれには、建物の既存が活かされています。

    宿場町を目の前に中山道に面した「百二」、梁が露わになった「百三」、中庭を望む「百四」、蔵の中に設けた「百八」、天井高のある「百九」など、どれも個性豊か。

    泊まる度、もとはどんな空間だったのかと想いを馳せるも良し。先人や過去の旅人と同じ景色を見ているのかもしれない時空を超えた邂逅体験は、必ずや特別な時間を紡いでくれるに違いありません。

    客室は全12室。宿名にちなみ、百一から百十二までの数字を客室名に採用。

    黒く煤けた太い梁が印象的な百三。当時より使用されてきた階段も客室に残す。飴色になった木の質感に歴史を感じる。

    縁側から木曽の山々を眺める百四。元々茶室だった空間は半露天風呂として活用。

    中庭に面した客室には、露天風呂も備える。景色を望みながらゆっくりと癒やされたい。百四の客室より。

    土蔵だった場所も一棟まるごと客室に採用。天井高を活かし、メゾネットタイプに設計。2階をベッドルーム、1階をリビングに設計した百七・百八の客室より。

    酒蔵だった当時の壁面。多く見られるひび割れや経年変化による土の質感は、過去を彷彿とさせる。

    もともとあった『杉の森酒造』時代に使用されていた斗瓶をレストラン『嵓 kura』の照明に再利用。

    『BYAKU -Narai-』のエントランス。ディスプレイには、 『杉の森酒造』にあったものを多く採用。過去を受け継ぎ、これからの時代を共に歩む。

    BYAKU -Narai-

    百にひとつの宿、それが「BYAKU -Narai-」。

    『BYAKU -Narai-』には、温浴施設『山泉 SAN-SEN』も備えます。

    ここにおいても町を継ぎます。湯の恵みは、信濃川の源流である山の湧き水を引き込み、旅人を癒します。

    この湧き水は、古来より奈良井宿の生活を支え、今なお、その軌跡は宿場内に残っています。『BYAKU -Narai-』の前にある水場もそのひとつ。

    奈良井川しかり、奈良井宿は、水とともに生きた町でもあるのです。

    料理に使用する水や2021年秋頃再生予定の酒蔵における仕込み水もまた、同様の水を採用します。

    宿、湯、食、酒……。それぞれの体験の向こう側には、必ず土地があり、歴史があり、文化があります。

    『BYAKU -Narai-』の「BYAKU」とは、宿から得る「百」の物語を体感してほしいという願いを込め、「宿」の言語の中にある「百」から命名。

    この宿には、この宿場町には、そこに身を置くからこそ感じる何かが潜んでいるのです。その何かとは、決してSNSやテクノロジーでは得られるものではありません。むしろ、真逆な世界。

    百年の歴史をぜひ。
    百味薬々のおもてなしをぜひ。
    酒蔵の完成時には、百薬の長をぜひ。

    百にひとつの宿、それが『BYAKU -Narai-』。

    百分は一見に如かず。まずは、自分だけの百分の一の物語を探してみてください。

    古くから奈良井宿を支え続けてきた山の湧き水。信濃川の源流であるそれを温浴施設『山泉 SAN-SEN』にも採用。日帰り入浴も2021年秋頃から開始予定。

    『BYAKU -Narai-』のサインには、「百」の文字をモチーフに「100」も添える。ぜひ、多く物語を体験していただきたい。

    住所:長野県塩尻市奈良井551 MAP
    電話:0264-34-3001
    受付時間 : 10:00〜17:00
    https://byaku.site

    Photographs:ROCOCOPRODUCE INC.&KOJI FUJITA(TOREAL)
    Text:YUICHI KURAMOCHI

    ミナ ペルホネン・皆川 明が体験する、創造的休暇。

    紀寺の家「心が巡る時間」
    文・皆川 明

     この度の創造的休暇というテーマでの宿泊体験のご依頼はそのコンセプトの面白さになるほどと思う納得感と同時に自分がその時間を得た時に実際そのような創造的な時間、又は出来事が起こり得るだろうかとやや疑問だった。

     このコロナ禍以前は毎年6月頃一ヶ月程北欧へ出かけてまさに予定無しの時間を過ごしていた。その期間でも一週間ほどは現地でのリズムが気ぜわしくて落ち着かないのですがその後ようやく場に漂う気のままの心持ちになってそこからは小さな出会いや気づきからアイデアが気泡のようにふつふつと湧き始める感じだ。そうなると心は好奇心のままに行動と結びつき無意味な躊躇は消え、目の前の出会いや機会に自然と向き合おうとし始めようやくそこからが休息の時間になる。そして目に映るものに能動的な態度が自然な形で現れ、思いつけばその場で航空券を予約して知らない土地へも移動を開始する。全ての好奇心が不安を越えて行動が自転していく感覚になっていく。ひとりで行くのはそのペースを保つ為だ。その方が心と会話しやすく疲労や思考と向き合いやすくなる。そんな時間をこのコロナ禍で過ごせなくなる中で今回のお話を頂いた。前述したように心持ちが整うのに少し時間がかかるからこの二、三日の旅程の中でその状態を作れるだろうかと思いながらそれでも意識的に創造的休暇と思って過ごしてみることに関心があった。

     初日は15時くらいに宿に到着して荷物を置いて先ずは散歩に出かけることにした。日常の仕事のリズムから離れる為にも。歩く速度も思考もゆっくりと。出会うという感覚は出会うべきものがそこにあるのではなく意識の隙間を通り抜けるカケラのようなものがたまたま脳裏に引っかかるようなものだと感じている。その引っかかったものをそっと摘んで眺めているとむくむくとそのカケラが頭の中の空想と繋がって今までの何かと結合しておぼろげな姿となるようなそんな感覚かもしれない。数ヶ月前に奈良に来た時に一度立ち寄ったカフェまでとりあえず歩いてその間に自分のこれからをぼんやり思いつくままに思い浮かべてみる。ただのんびりしてるだけでこれは創造的かと思いながらも今回何も起こらないのもまた私であると思いながら。目的がなくても動いていれば何かが起こり何かを思考し何かを想像する。カフェの店主のお母さまから手作りジャムを頂いた。小さな出来事も旅では澄んだ記憶になる。その足で駅の方へ向かい商店街を歩いていると白雪ふきんのオーナーの奥様とばったりお会いした。前回、奈良に来たのは白雪ふきんさんを訪ねる目的だったのでここでばったり会うのも変化の兆しだった。ひとりどこかで食事を済ませようと思っていたがオーナー夫妻に夕食にご招待いただき、その後遅くまで時間をご一緒させていただいた。お互いの仕事や考えを共有できたことは日頃の打ち合わせでは得難い時間で有り難かった。それでもこれが創造的休暇なのかと言えばそうではないのだろう。でもこの予定外の時間が生まれる場の中に入ってきた感覚は何だか面白いと感じた。

     そもそも創造的休暇とは何なのだろう。

     それを目的とした時にその答えが見つかるのだろうか? 抱いていた疑問がまた湧いてきた。でもその疑問はここへ来るまでとは少し違う穏やかでそして安気な気分の中にあった。翌日は朝食後に奈良公園へ散歩に出ることにした。1時間ほどベンチに腰掛けて本を読みこちらを見る鹿の親子と時折り目を合わせているうちに静かに流れている時間が身体に馴染んできたのがわかった。今日は只々歩いてみようと決めて心がこの静かなままに過ぎるように目に映るものをゆっくり見ては頭の中に反芻させてまた歩いた。通りすがる人も蝉の声も町の古い看板も微かに触れるように記憶されていくのがわかる。夕方に商店街のアーケードの2階にカフェがあるのに気づいて入った。そこにあった民俗学的な本を読み僅かなタイムトリップをしながらしばらく過ごした。このカフェに気づいたことで心がだいぶニュートラルになっているのがわかる。目的から解放された時に生まれる偶然を含んだ時間になっているのを感じたからだ。あと数時間で何か起こるだろうけどそれは創造的とはまた違うのだろう。それでも今のこの時間の延長線上にはもしかしたら創造的何かがあるのかもしれないとも思えた。帰り道、もう閉店時間間際のアンティークショップを見つけて滑り込んでみる。最初に目についたのが僕がコペンハーゲンのアンティークショップで見つけたジョージ・ジェンセンの鳥のペーパーナイフだった。お店にはそれ以外が概ね日本の骨董だったからそれが目に飛び込んだのかもしれない。それにしてもそのペーパーナイフは僕の北欧の旅で出会った中でも大切なものだったからこの奈良での出会いに驚いた。今回自分が北欧での休暇とどこかで比較していることがリンクしているような気がした。それでもあまりこじつけて意味を持たせたくなかったのでただ心地良さを素直に感じながら店を後にした。何故だか夕食を取る気にならずそのまま夕暮れの中をまたしばらく歩き紀寺の家に戻って風呂に入りぼんやりしながらこの二日間で企画していただいたような創造的な休暇には至らなかったけれど久しぶりに自分の心とずっと一緒に過ごせたような気がしてうれしかった。

     旅や休暇で大きな気づきやアイデアが浮かぶとは限らないけれどその時間が心を解(ほぐ)したり自由にしたりしてあげる事はできる。そうしたら心が目的に縛られずに思いもしないことと出会うかもしれない。これからそんな時間を人生でもっと持ちたいと思うに至ったのが今回の僕の奈良での時間だった。今日は15キロ歩いたようだ。歩いた分をなぞりながら日頃ならば見落としているだろう細かな町の表情が浮かんできた。この微細な景色がこれからどうやって記憶としてトレースされ仕舞われていくのか楽しみだ。もしそのことが何か大きな気づきとなった時にはぜひお知らせしたい。

    1967年生まれ、東京都出身。1995年に『minä perhonen(ミナ ペルホネン)』の前身である『minä』を設立。ハンドドローイングを主とする手作業の図案によるテキスタイルデザインを中心に、衣服をはじめ、家具や器、店舗や宿の空間ディレクションなど、日常に寄り添うデザイン活動を行っている。デンマークの『Kvadrat(クヴァドラ)』、スウェーデンの『KLIPPAN(クリッパン)』などのテキスタイルブランド、イタリアの陶磁器ブランド『GINORI 1735(ジノリ1735)』にデザインを提供し、新聞・雑誌の挿画なども手がける。
    https://www.mina-perhonen.j

    住所:奈良県奈良市紀寺町779 MAP
    TEL:0742-25-5500(受付時間9:00~19:00)
    http://machiyado.com

    Photographs:HARUHI OKUYAMA

    小説家・角田光代が体験する、創造的休暇。

    紀寺の家 「人とともに生きる町」
    文・角田光代

     奈良って奇妙なところだと、奈良を訪れるたびに思う。神社仏閣が多いのは京都や鎌倉と似ているけれど、それらの規模がいちいち大きい。公園や町に鹿がいるのもへんだし、夜がびっくりするほど暗くて、見たこともないのに、はるか昔にタイムスリップしたような気分になる。

     奈良は広く、テーマごとに異なるスポットへの旅ができる。私は以前、万葉の旅や古事記の旅をしたことがある。範囲が広いので、車で要所要所を訪ねる旅だった。奈良の中心街を、テーマも目的も決めずに、じっくりと歩いてまわるのは、だから今回がはじめてだ。歩いてみて抱くのは、やっぱり、奇妙な町だという印象である。

     宿泊した「紀寺の家」から一キロも歩かないうちに木々が頭上を覆う森が広がり、鹿が音もなく歩き、森の奥には春日大社があり、その向こうに原生林が広がる。春日大社から奈良公園を突っ切っていくと、大きな池があり、池を過ぎるとホテルや飲食店が増えてきて、あっという間ににぎやかな繁華街となる。繁華街のなかに小学校があり、神社がありお寺があり、長いアーケードがある。

     何を奇妙に感じるのか、考える。あ、そうか、人に必要なすべてが、ぜんぶ等距離にあることだ、と気づく。人、というのは、今を生きる私たちが必要としたものばかりでなく、何百年、何千年もの昔を生きていた人たちがかつて必要としてきたものも、すべて、新古の別なく、聖俗の隔てなく、大小も広狭も関係なく、ひとしく配置されている。こうして書くと、ごくふつうのことのようだが、でもそんな町はめったにない。世界遺産や国宝や重要文化財が、町の至るところにあるけれど、その数の多さは、旅館や飲食店や雑貨店の多さと、意味合いとしておんなじだ。どちらも、この町に生きる人たちが必要とし、暮らしを支えてもらっている、拠りどころだ。

     今と昔、それもはるか昔の暮らしが、違和感なく矛盾なく、ごくふつうに入り混じっている光景は、そのまま、未来の町をも浮かび上がらせる。奈良の町を歩きながら、私は未来を想像している。古きものと今のもののなかに、未来を生きる人たちが必要とするものも、ごくすんなりと入りこむのだろう。

     そのことを、もっとも体感できるのは、紀寺の町のある一角、ならまちとよばれる地域ではないだろうか。道路に面した格子扉と瓦屋根が特徴の町家が、重要文化財、登録有形文化財も交えながらずらりと並び、ある家はごくふつうの民家、ある家は資料館、ある家は昔ながらの漢方薬局、ある家はカフェ、雑貨店、酒店と、まさに今と過去が「町家」のかたちを借りて入り交じっている。細い路地の先、行き止まりに見えつつ、さらに細い路地が左右に走っていたりする。路地から路地を歩いていると、野良猫になった気分だ。時空を自在にいききできる野良猫だ。

     瓦屋根の上に広がる空がゆっくりとだいだい色に染まり、端から紺に変わっていく。私が見ている夕方は、百年前の、千年前の、もっと前の夕方ときっと同じだと確信する。

     百年以上も前の建物で、湯が沸き冷暖房が完備された今の暮らしを体験できる「紀寺の家」は、まさに奈良という町をあらわすシンボル的存在だ。障子からさしこむやわらかな朝日とともに目覚め、おいしい朝ごはんをいただいて、格子をくぐって外に出て、過去と現在と未来を自在に歩く。すべての人にとって、そんな時間は創造的休暇になるだろう。

    1967年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学第一文学部卒業。1990年に「幸福な遊戯」にて海燕新人文学賞を受賞後、デビュー。以降、1996年「まどろむ夜のUFO」野間文芸新人賞、2003年「空中庭園」婦人公論文芸賞、2005年「対岸の彼女」直木賞、2006年「ロック母」川端康成文学賞、2007年「八日目の蟬」中央公論文芸賞、2011年「ツリーハウス」伊藤整文学賞、2012年「紙の月」柴田錬三郎賞、「かなたの子」泉鏡花文学賞、2014年「私のなかの彼女」河合隼雄物語賞を受賞。その他の著書には、「キッドナップ・ツアー」、「愛がなんだ」、「さがしもの」、「くまちゃん」、「空の拳」、「平凡」、「笹の舟で海をわたる」、「坂の途中の家」、「拳の先」など多数。近作は、新訳「源氏物語」(上中下)、連載小説「タラント」(読売新聞)。

    住所:奈良県奈良市紀寺町779 MAP
    TEL:0742-25-5500(受付時間9:00~19:00)
    http://machiyado.com

    Photographs:HARUHI OKUYAMA

    写真家・石川直樹が体験する、創造的休暇。

    紀寺の家 「順応と回復の地」
    文・石川直樹

     一カ月近いネパール・ヒマラヤの旅から帰国し、初夏の奈良を訪れた。ヒマラヤでは森林限界を超えた標高4000メートル前後の空気の薄い山岳地帯に長く滞在し、ぼくは身も心も乾いていた。ヒマラヤでは高所順応が必要なように、日本に帰ってきたら低所順応をしなければならない。そんな疲れ果てた自分に、紀寺の家で過ごす日々はうってつけだった。

     ヒマラヤのロッジでは、小さく堅い木のベッドの上に敷いた寝袋にくるまって眠る。でもここでは、畳の上に敷いたふかふかの布団で眠れる。寝返りを打っても床に落ちることはない。

     ヒマラヤでは一週間同じ服を着続け、お湯で体を洗えるのも一週間に一回程度だった。それも、ちょろちょろと流れ落ちるだけの心もとないシャワーか、バケツに入れたお湯を体にかけるのみ。ここでは、タイル張りの五右衛門風呂にざぶんと浸かって、心ゆくまで体を温めることができた。

     ヒマラヤの朝食は、かちこちの冷たいトーストに真っ赤なゼリーのようなジャムをつけて食べていた。ここでは、釜に入った出来立てのごはんをいただいた。味噌汁に入っている油揚げを口に入れただけで、幸せな気持ちになった。自分で淹れるコーヒーもお茶も、口にするあらゆるものが内臓に染みた。

     朝、食事をしながら近くの学校のチャイムが聞こえた。縁側から庭を眺めていると、どこからともなく鳥の鳴き声が耳に入った。静かだけど、静かすぎないのがいい。誰かの生と隣り合わせに自分が在るということを思い出し、いま生きていることのありがたみを感じる。

     二泊したうちの一日は、大雨で、風もことのほか強かった。その日、ぼくは縁側から、強風にかしぐ庭の木を、屋根から滴り落ちる水滴を、木の壁を叩く横殴りの雨粒をただ眺めてばかりいた。寒くない。つらくない。息苦しくない。毎日、数百メートルの高低差のある山道を何キロもひたすら歩き続けていた日々とは対極の時間を過ごしながら、しかし、頭の中ではこの先に広がる旅への思いが渦巻き、新しい考えが次から次へと浮かぶ。何もしていないのに、思考が縦横に巡り続けている状態、こうした時間に身を浸すことこそが自分にとっての「創造的な休暇」というのだろう。

     厳しい遠征から帰った後は、生きていることを実感する特別な順応期間が必要で、紀寺の家はそれを十分にもたらしてくれた。またここに泊まりたい。そう思える空間がひとつ増えたことを、自分自身、喜んでいる。

    1977年生まれ、東京都出身。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。2008年「NEW DIMENSION」(赤々舎)、「POLAR」(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞、2011年「CORONA」(青土社)により土門拳賞を受賞。2020年「EVEREST」(CCCメディアハウス)、「まれびと」(小学館)により日本写真協会賞作家賞を受賞した。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した「最後の冒険家」(集英社)ほか多数。2016年に水戸芸術館ではじまった大規模な個展「この星の光の地図を写す」が、新潟市美術館、市原湖畔美術館、高知県立美術館、北九州市立美術館、東京オペラシティ アートギャラリーを巡回。同名の写真集も刊行された。2020年には「たくさんのふしぎ/アラスカで一番高い山」(福音館書店)、「増補版 富士山にのぼる」(アリス館)を出版し、写真絵本の制作にも力を入れている。
    http://www.straightree.com

    住所:奈良県奈良市紀寺町779 MAP
    TEL:0742-25-5500(受付時間9:00~19:00)
    http://machiyado.com

    Photographs:HARUHI OKUYAMA

    食を愛す人、モノ、コトが銀座でつながる。「FIND OUT ABOUT NIPPON」プロジェクト始動。[和光アネックス/東京都中央区]

    WAKO ANNEX生まれ変わった「和光アネックス」。これまでになかった食の感動体験。

    2021年10月1日(金)、「和光アネックス」地階のグルメサロンがリニューアル。

    テーマは、「FIND OUT ABOUT NIPPON」です。

    『ONESTORY』は、そのプロデュースとして参画。商品のキュレーションをはじめ、ソムリエや唎酒師らとの企画も展開し、これまでになかった多角的な空間の創造を目指します。

    日本全国から見つけ出した「おいしいニッポン」は、アルコール及びノンアルコールのドリンクやデリカテッセンなど多種多様。しかし、本プロジェクトにおける特徴は、これまでに類を見ない食べ合わせのプレゼンテーションにあります。

    「FIND OUT ABOUT NIPPON」と掲げたテーマのごとく、潜んでいた美味を見つけ出すことはもちろん、出合うはずのなかったドリンクと食品をペアリングすることによって、口福領域の拡張を提案します。

    そんな表現を取り入れた空間は、ただ商品を「売る」場ではありません。グルメサロンというフロア名の通り、ここは、食を愛す人、もの、ことが一堂に会す、「集い」の場なのです。

    私たちは、味だけでなく、一つひとつのモノやコトが生まれた物語を大切にしており、当然、その背景には人がいます。

    「おいしい」には、必ず理由があります。その解を紐解き、様々が育まれた時間と共に、新たな食の感動体験をお楽しみください。

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photograph:SHINJO ARAI
    Text:YUICHI KURAMOCHI

    (Supprtted by WAKO)

    飲む人も、飲まない人も、平等に楽しめる。香りを軸に思考する、論理的ペアリング。[和光アネックス/東京都中央区]

    ノンアルコールのペアリングの礎を築いた外山氏の原点。

    WAKO ANNEXノンアルコールのペアリングの礎を築いた外山氏の原点。

    2021年10月1日(金)、『和光アネックス』地階のグルメサロンがリニューアルにあたり、日本の酒や食材の魅力に改めてスポットを当てるプロジェクト「FIND OUT ABOUT NIPPON」。

    今回は調布市『Maruta』のドリンクディレクターを務める外山博之氏が、3種類の食品とドリンクの組み合わせを提案します。「香り」を軸にした独自のペアリングに定評のある外山氏は、果たしてどのような組み合わせを教えてくれるのでしょうか。

    外山氏は、まずバーテンダーとして飲食界のキャリアをスタートしました。しかし、バーやレストランで働くうち、徐々にワインへ興味を惹かれ、その後、ソムリエに転身。カクテルとワインの知識という強みを手に入れ、次なる興味は料理とドリンクの組み合わせに向かいました。ただし、その対象は、アルコールだけに留まりませんでした。

    「“すみません、お酒飲めないんです”。時々、耳にする言葉ですが、不思議ですよね。何も悪いことをしていないのに、なぜ謝るのか」。

    そう話す外山氏。あるいはそれはバーテンダーやソムリエである外山氏への、気遣いの言葉だったのかもしれません。しかし、外山氏は決意します。

    この無用な「すみません」をなくすこと。お酒を飲む人も飲まない人も、平等に食事を楽しめるようにすること。

    それは、遡ること5、6年前、まだ「ペアリング」という言葉も今ほど浸透していなかった頃。 更に前例のないノンアルコールのペアリングは、いわば手探りの暗中模索でした。

    そこで外山氏が立てた方針はふたつ。ひとつは、あくまで料理が主役であり、ドリンクは引き立て役に徹すること。もうひとつは香りを軸に組み合わせを考えること。

    こうして外山氏は、アルコール、ノンアルコールを問わず、そして以前はタブー視されていた甘い酒やカクテルも食中のドリンクとして取り入れました。今でこそノンアルコールのペアリングや食中酒としてのカクテルはすっかり市民権を得ていますが、その礎に外山氏の挑戦の歴史が果たした役割は小さくありません。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及びWAKOオンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、外山博之氏がセレクトする18種の食品やお酒などをはじめ、9種のペアリングをご用意しております。WAKOオンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    「香り」を軸に組み合わさるペアリングは、単品では決して味わうことのできない口福が生む。

    とにかく、香る。香る。香る。ソムリエでもある外山氏は、香りから本質と魅力を解読する。

    WAKO ANNEXほんのり甘いハチミツ酒とスパイスの利いたピクルスの意外な相性。

    そんな外山氏がまず選んだ酒はハチミツの醸造酒・ミード。外山氏が手にした愛媛県『完熟屋』の「ミサキミード」は、豊かな香りとほのかな甘みが特徴の上質な一本です。特に外山氏は、その香りに注目しました。

    「マスカットのような爽やかな香りが特徴。酸味のバランスも良いため、甘いお酒が苦手な人にもぜひ飲んでもらいたい」。

    そう話す外山氏が、組み合わせとして選んだのは、同じく愛媛県の『GOOD MORNING FARM』が作る「グリル野菜ピクルス」。旬の野菜をグリルしてからクミンとニンニクの利いたオイルに漬け込むことで、スパイスの香りと野菜本来の甘みを引き立てる逸品です。そして外山氏は、それらの香りの要素を、パズルのピースをはめるように寄り添わせました。マスカットの香り、発酵の香り、ニンニクの香り、クミンの香り。系統の異なるそれぞれの香りが一体となるのは、実は外山氏が明確な根拠をもって香りを合わせているから。

    「食材の香りの成分を分析し、紐解いてみると、そこに隣接する香り、ぶつかる香り、増強する香りなど考えの方向性が見えてきます」。

    これこそが外山氏のペアリングの特徴。単に感性と経験だけに頼るのではなく、香りの構成成分を見極め、科学的根拠のある相性を考える。だからこそ外山氏の提案するドリンクと食品は、まさに「腑に落ちる」説得力を持っているのです。

    それは香りだけに限らず、味わいの組み合わせも同様。ミードの甘みとピクルスの酸味を合わせた根拠は、次の通り。

    「一般的に人の舌は味を感じる順序があり、まず酸味、次に甘みを感じるようにできています。そしてこれらを口内調味で合わせることで感じる味にタイムラグが生まれ、伸びのある、余韻の長い味わいになります」。

    まるで科学の授業のような論理的な説明です。

    実験と検証を繰り返し、ペアリングの結実を導く外山氏。出合うことのなかったふたつが合わさる瞬間、感動が生まれる。

    『完熟屋』の「ミサキミード」(右)と『GOOD MORNING FARM』が作る「グリル野菜ピクルス」(左)は、共に愛媛県のもの。香りを軸にしつつ、味わい、風味、余韻など、さまざまな相性を探る外山氏のペアリング。

    一般的な海外産ミードのハチミツ含有量が35%ほどなのに対し、「ミサキミード」は60%。贅沢な原材料が、ふくよかな味わいを生む。

    産地、原料、製法、度数。パッケージから読み取れる情報も、外山氏の貴重な判断材料。

    WAKO ANNEX同系統の香りを合わせ増幅させる、王道のペアリング。

    次いで外山氏が取り出しのたは、能登『松尾栗園』の「能登の焼き栗棒」。従来、栗といえば渋味を寄り添わせるために日本茶と合わせるか、あるいは洋菓子のようにブランデーなどの苦味と合わせるのが定説です。

    しかし、外山氏が選んだのは、意外にもフルーティなシードルでした。シードルの酸味と栗の甘み。外山氏はこれをどう合わせるのでしょうか?

    「そもそも栗にはバラ系の香りが含まれています。更に、こちらは焼き栗ということで、より重心の低い香りです」。

    外山氏の言う「重心の低い香り」とは、ややスモーキーな、どっしりとした香りのこと。バラ系の成分に、焼くことで加わった硫黄化合物の香りが合わさり、バラの系統ではありつつ力強く、骨太な香りとなっています。

    「一方で合わせるシードルも、複雑な香りの中にバラ系の香りを含みます。その共通項に注目しながら、まずは栗を口に含み、次いでシードルを口にしてみてください。同系統の香りが強固になり、非常にフルーティで華やかなおいしさが際立ちます」。

    同系統の香りを合わせ、増幅させる。それは「自分がやり続けてきたセオリー」という、外山氏の十八番です。

    『弘前シードル工房kimori』の「kimoriシードル」(右)と能登『松尾栗園』の「能登の焼き栗棒」(左)。それぞれに微かに潜むバラの香りが、合わせることで華やかに広がる。

    糖度30度以上の焼き栗のみを丁寧にペーストにし、棒状に固めた「能登の焼き栗棒」は、しっとりと滑らかな食感。

    「kimoriシードル」の主原料は、甘みと酸味のバランスが良いサンふじ。無濾過製法でリンゴそのままの風味を伝える。

    WAKO ANNEX生ハムと番茶。ペアリングの伝道師が提案する新機軸。

    最後の一品は、岩手県『肉のふがね』が丹精込めてつくる「長期熟成和牛生ハム いわて短角和牛Cesina」。

    希少ないわて短角和牛を塩に漬け込んでから冷燻し、その後1年ほど熟成させるという手間暇かけた生ハムです。燻製香のある加工肉は、重い赤ワインだとタンニンで旨味が消えてしまい、フルーティ過ぎる白ワインだとえぐ味が出てしまう、というペアリング難易度の高い食品。

    「定番はイタリアのちょっと甘口のスパークリングワインなどですね」と言いながら外山氏が合わせたのは、またも意外なことに、滋賀県『茶縁むすび』の「政所番茶」でした。生ハムと番茶。奇をてらったわけではありません。ここにも明確な根拠が隠れています。

    「番茶と生ハムの共通項は、燻製香。両者の、個性は異なっても系統が同じ熟成香が非常にマッチし、ふくよかな香りをつくり出します」。

    更に、味の上でも「番茶に含まれるミネラル分とスモーキーな渋みが、いわて短角和牛の旨味成分を際立てる」とか。

    合わせ方はまず生ハムを咀嚼し、口の中にある状態で番茶を含むこと。「旨味が口の中にブワッと広がります。きっと驚くと思いますよ」と、外山氏は不適に笑いました。

    甘いミード、フルーティなシードル、そしてノンアルコールの番茶で食品を引き立てた外山氏のペアリング。すべて科学的な、論理的な根拠に基づいた組み合わせですが、決して機械的なわけではありません。

    例えば、最新のAIが香り成分と相性を完璧に分析し、今回のペアリングをはじき出せるかといえば、きっとそうではありません。なぜなら外山氏の発想は、その工程のなかに科学的根拠があろうとも、起点はいつも「誰かを驚かせたい、楽しませたい」という心だから。そもそもの原点が「お酒を飲む人も飲まない人も、平等に楽しんでほしい」という優しさだから。

    「例えば、ホームパーティなら、お酒が大好きな人もいれば、好きだけど弱い人も、事情があって飲めない人もいる。でもせっかくのパーティなら、みんな楽しんでほしいじゃないですか」。

    そう話す外山氏。これが、論理的思考に人の情が加わった最高のペアリングの形なのかもしれません。

    『茶緑むすび』の「政所茶・平番茶」と『肉のふがね』の「長期熟成和牛生ハム いわて短角和牛Cesina」(左)は、意外なマリアージュ。香りの調和はもちろん、番茶が持ち上げる和牛の旨味も圧巻。

    「甘いものはデザート、お茶は締め、という常識を一度忘れてください」と新たな組み合わせに挑む外山氏。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及びWAKOオンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、外山博之氏がセレクトする18種の食品やお酒などをはじめ、9種のペアリングをご用意しております。WAKOオンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    埼玉県出身。バーテンダーとしてレストランやホテルなどに勤務した後、ソムリエへ転向。以降、様々なレストランで経験を積み、2012年より代々木上原『Gris』(現『sio』」)」のマネージャーに就任。2018年より調布『Maruta』のドリンクを監修、2019年より京都『LURRA゜』のドリンクディレクションなど、ペアリングを行いながら活躍の場を広げている。

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photograph:SHINJO ARAI
    Text:YUICHI KURAMOCHI

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    料理人・谷口英司の叶えた夢と、芽生えた夢。新天地で再始動した富山『L’evo』。[L’evo/富山県南砺市]

    富山県南砺市利賀村。春先でもなお道端に残る雪が、この地の過酷さを伝える。

    レヴォかつて語った夢を、そのまま具現化した新生『L’evo』。

    2017年夏。富山市街のリゾートホテル内のレストランにいた谷口英司氏は、自身の愛する富山県をつぶさに案内してくれました。食材の生産者を訪ね、工芸品の職人と話し、自然の中を歩く。その際に谷口氏の顔に浮かんだ、心底楽しそうで、誇らしげな顔が記憶に残ります。

    【関連記事】深い海、高い山、豊かな自然、伝統工芸。富山こそ料理人が、最高に輝ける場所。[L’evo/富山県富山市]

    やがて旅はさらに山奥に進み、深い森に囲まれる利賀村の山中に着いたとき、谷口氏はふとこう語りました。

    「いつかこの場所に、店を開くことが夢なんです」

    そこは曲がりくねった山道を車で1時間以上も走った先。45年も前に最後の住人が出ていってから、ずっと廃村となっている集落跡。冬は深い雪に閉ざされ外界と隔絶されてしまいそうな最果ての地。素人目にみても、ここが客商売に向いている場所には思えません。

    しかし谷口氏は、夢を実現しました。
    2020年12月、宿泊施設を併設したオーベルジュ『L’evo』が誕生しました。場所はあのとき谷口氏が夢を語ったまさにその地。
    あのときの夢は、この地でどのように形を結んだのでしょうか。その姿を探るため、新生『L’evo』を訪ねます。

    谷口英司氏の精悍さを増した顔がこの地の生活を物語る。

    レヴォやりたいことをすべて詰め込んだ、料理人の楽園。

    「ここはパン工房。専門店に負けない設備でしょう?」「こっちは肉の保管庫。ここでジビエを捌くために食肉販売業の免許も取ったんです」「ここの畑はスタッフみんなで切り開いたんですよ」「ここで羊を飼いたいと思っているんです」

    新生『L’evo』の敷地内をつぶさに案内してくれながら、4年前のあの時と同じように谷口氏は心底楽しそうに笑います。

    大きな窓とオープンキッチンが印象的なレストランは、木と石をバランス良く調和させた穏やかな空間。営業中はあえて音楽を流さず、キッチンから届く作業音をBGMにしています。
    オーベルジュゆえ、宿泊施設としての客室は独立型のコテージが3室。現代的に洗練されたインテリアに、この地で使われてきた建具のリメイクで温かみを加えます。
    先に紹介したパン工房は離れの中、肉の保管庫やワインセラーはレストランの下階。敷地内には「どうしても作りたかった」というサウナまで。

    「ここには料理人の夢がぜんぶ詰まっているんです」

    畑や山の仕事で精悍さを増した顔をほころばせ、谷口氏は言います。その夢とは突き詰めてみれば、おいしい料理、ここでしか味わえない体験を作り出すこと。アクセスという点においてはゲストに不便を強いるこの場所で、それ以上の驚きと感動を返すこと。

    谷口氏はさらに言いました。
    「ここが成功事例になって、こういうやり方もあるということを各地域の料理人に知ってほしい。そうして日本中に良いレストランができれば」

    コテージタイプの客室は、窓を広く切った開放感のある造り。

    「パン作りが好きなんです」と、パン工房には専門店さながらの設備を導入。

    ワインセラーもこのスケール。富山県産のワインを中心に多彩なラインナップ。

    段々畑の石垣も、スタッフ総出で積み上げたという。

    レヴォ山奥の小さな村。この場所を舞台に選んだ意味。

    メニューはコース1本。昼、夜ともに同内容で12皿ほどの料理が登場します。食材はほぼ富山県産。富山の食材による、富山の魅力の表現です。

    もちろん店が山にあるからといって、山の食材だけに固執するわけではありません。「海のものを山に持ってきたら、どうなるのか」と言う谷口氏。この場所でやる意味を見失うことなく、しかし決して独りよがりではなく、あくまでゲスト本位で考えつつ、自分ができることを考え続けているのです。

    繊細で前衛的で、しかし素材感が活きた料理。もともと谷口氏の持ち味であったそれらは変わりませんが、移転を経て変わったこともいくつかあります。

    オープンキッチンでゲストの顔を見ながら配膳できるようになったこと、薪窯を導入し、よりやさしい火入れが可能になったことなどがそう。しかし谷口氏自身も感じる一番の変化は、水にあります。この『L’evo』では、パイプで直接引く山の水を100%使用。これにより食材のピュアな透明感、料理のやさしさがいっそう際立つようになったのです。

    たとえばある日に登場したツキノワグマ。しゃぶしゃぶ風の火入れで、透明感がありつつ奥から湧き立つような力強い味わいも両立しました。
    黒部のヤギのチーズのソースとあわせた富山名産・大門素麺は、アルデンテに茹でることで、パスタのようなもっちりとした食感に仕上げつつ、のどごしに爽やかさを残します。
    ミズダコの料理は、輪切りではなく縦に薄くスライスし、薪窯でやさしく火入れ。この繊細な加減で、噛めば弾力があるのに脳はとろけて消えたと錯覚するような不思議な味わいを生み出します。

    山の水が作り出す、ピュアで繊細なおいしさ。それが谷口氏がこの場所にレストランを開いた理由のひとつなのかもしれません。

    スライスして薪火で炙ったミズダコは、大葉のオイル、梅肉のソースと合わせて。

    赤身が多くあっさりとした春獲れのツキノワグマは、ウニや春野菜とともに。

    ピュアな水とやさしい薪火が、谷口氏の繊細な技をさらに光らせる。

    レヴォ地域のレストランが、やがて食文化そのものを変える。

    食材やワインはもちろん、空間を彩るインテリアや家具も富山の職人の手によるもの。そしてスタッフも皆、富山出身。そして谷口氏は、スタッフたちにこう伝えます。

    「富山を自慢しなさい」

    富山のキレイな場所、自分の好きなもの、小さい頃の体験。自分たちが大好きな富山を、自信を持って“自慢する”こと。それが遠方から訪れるゲストに、もっとも響く言葉になる。そんな思いがあるのでしょう。

    新生『L’evo』のオープンにあたり、11人のスタッフ全員が、利賀村に引っ越しました。人口350人の村に、新たにやってきた11人。そして山奥のこの村を目指してやってくるゲスト。人の流れが変わり、村の知名度が上がり、やがて人々の意識も変わっていくことでしょう。

    かつてコペンハーゲンにレストラン『noma』が誕生し、世界屈指のレストランとなったとき、人々は『noma』の料理だけでなく、デンマークの食そのものを讃えたといいます。
    同様に『L’evo』の成功は利賀村、富山県の評価を変え、意識を変え、やがて食文化そのものを変えていくことになるのかもしれません。

    他に何もない、というロケーションこそが、最高の贅沢と気づかせてくれる。

    “チームL’evo”として店を支えるスタッフたち。

    食器やカトラリーのほか、メニューにも富山県の工芸品が使われている。

    住所:富山県南砺市利賀村大勘場田島100 MAP
    電話:0763-68-2115
    営業時間:ランチ 12:00〜、12:30〜 ディナー18:00〜、19:00〜
    定休日:水曜 ※2021年8月2日〜18日は夏季休業
    http://levo.toyama.jp/

    PhotographsJIRO OHTANI
    TextNATSUKI SHIGIHARA

    ※この記事は2021年4月に取材したものです。

    水に癒やされ、アートに触れ、食を楽しむ。多彩な魅力がつまった信濃大町の歩き方。[湧水とアートがうるおす町/長野県大町市]

    写真でめぐる、信濃大町の豊富な見どころ。

    北アルプスの雪解け水が河川となり、湧水となり、やがて街をうるおす。あちこちから湧き出す水は清冽で、大小無数の川には澄んだ水が流れる。長野県大町市の魅力の根底には、この豊かな水にあります。

    しかし、いくら“水が豊か”といっても、現地での具体的な楽しみは想像しにくいかもしれません。そこで今回は豊かな水が織りなす大町市のさまざまな魅力を、写真とともにご紹介してみます。

    折しも大町市では2021年11月21日(日)まで『北アルプス国際芸術祭2020-2021』も開催中。これからご紹介する町の魅力を知るごとに、きっと大町市に足を運んでみたくなることでしょう。

    『北アルプス国際芸術祭』では40以上のアート作品が町の各所で鑑賞できる。(蠣崎 誓/種の旅)

    町の魅力の根幹を支える、北アルプスの清冽な水。

    豊富な水。その重量感、水底まで見える透明感、ひんやりとした温度、心地よい水音は、ただそこにあるだけでも心癒されるもの。大町市には水に触れ合えるスポットが多数存在しています。

    たとえば『国営アルプスあずみの公園』は、自然そのままの地形を活かしながら、楽しみ、学び、くつろげる拠点。とくに園内の渓流クリエーションゾーンと名付けられたエリアでは、北アルプスの3000m級の山々から流れ出る水を身近に感じることができます。遊歩道の散策やピクニックなど楽しみ方はいろいろ。園内にはほかにデイキャンプ場やクラフト体験ができる施設なども揃っています。

    さらに水の質量を感じたければ、ダムや湖を目指してみるのがおすすめです。大町市は「大町ダム」「七倉ダム」「高瀬ダム」という3つの大規模なダムを擁し、どれも見学可能。「高瀬ダム」は土や岩を盛り上げてつくる“ロックフィルダム”と呼ばれる構造で、偉大な人工物という観点からも見学の価値あり。さらに北へ向かうと「黒部ダム」へと続くルートに繋がります。

    自然の湖も負けてはいません。大町市には二科三湖と呼ばれる3つの湖があります。湖底から清水が湧き出す巨大な「青木湖」、水上アクティビティが充実した「木崎湖」、フィッシングエリアとして知られる「中綱湖」。湖畔キャンプやSUP、ホタル観賞クルーズなど、楽しみもいろいろ揃っています。

    市街地に戻り商店街を散策しても、水の豊かさに気づきます。町のあちこちには水路が通り、水をテーマにしたオブジェなども点在。道路一本挟んで硬度の異なる水が湧く「男清水」と「女清水」も、大町の水の豊かさの象徴です。

    『国営アルプスあずみの公園』の渓流クリエーションエリア。雪解け水が渓流となって流れる。

    自然そのままの姿を守る『国営アルプスあずみの公園』には、さまざまな野生動物も暮らす。

    『大町ダム』の雄大な眺め。ダム周辺は芸術祭の会場にも指定されている。

    二科三湖のひとつ「青木湖」には、芸術祭の作品も展示されている。

    「男清水」と「女清水」は道路を挟んで正面。ぜひ両方を飲み比べてみたい。

    水質の良さを証明する、透明感あるおいしい名物たち。

    食の観点でも、水の存在は欠かせません。雪解け水をたっぷり蓄える野菜や果物、澄んだ水で育つ川魚をはじめ、大町名物の多くは水によって支えられています。

    たとえば市内で十数件の店が味を競うそば。使用するそば粉や技術はさまざまですが、共通するのは透明感のある味わいと喉越しの良さ。古くから“水の良い場所のそばは旨い”と言われますが、大町市も例外ではありません。

    水が決め手となる酒も同様。市内には3つの酒蔵があり、それぞれが高い評価を得ています。さらに近年は、市内初のクラフトビール醸造所『北アルプスブルワリー』もオープン。「地元の水の魅力を伝えるため、あえて水質調整をせずにそのままの水でつくる」というクラフトビールは、水の甘みが感じられるような素晴らしい出来栄えです。

    お土産物も充実しています。日本屈指のフィッシングスポットとして多くのファンがいる『鹿島槍ガーデン』では、信州サーモンや希少なイワナの卵などを販売中。鹿島川の流れをそのまま利用した養殖場で育つ魚の、驚くほど臭みのない味わいを楽しめます。

    『キハダ飴本舗』で販売中の「キハダ飴」は、キハダという木の実を煮出したエキスでつくる飴。ほろ苦く、香り豊かな飴は、一度味わうとクセになりそうな独特なおいしさ。『キハダ飴本舗』の敷地内でのびのびと育つキハダの木も、雪解け水によって支えられています。

    名物のそばは、市内各所で味わえる。水の豊かさがおいしさの肝。

    地元住民はそれぞれ贔屓のそば屋がある。写真は老舗そば処『タカラ』のざるそば。

    フィッシングスポット兼養殖場の『鹿島槍ガーデン』。鹿島川から直接水を引いている。

    「キハダ飴」は大町市以外では「七十七歳飴」として販売されている。

    『キハダ飴本舗』の敷地内の沢。大町市内では随所でこのような光景が見られる。

    町全体が巨大な美術館に。北アルプス国際芸術祭の見どころ。

    さて、ここまで大町市の水の豊かさをご紹介してきましたが、もうひとつの柱であるアートも見逃せません。そもそも大町市には、赤い屋根が印象的な信濃大町駅の駅舎をはじめ、フォトジェニックなスポットがたくさん。

    さらに現在開催中(2021年10月2日〜11月21日)の『北アルプス国際芸術祭』により、さながら街全体がひとつの美術館のような様相を呈しています。

    伝統的な古民家や博物館を舞台にした作品、施設の壁や地面に描かれた作品、そして道路脇にそのまま展示される作品。町を歩くだけで、そこかしこでアートが目に飛び込んできます。作家の個性が光るさまざまな芸術作品が、古い家屋や山々の景色と調和する、いわばアートと自然の融合は、この町でしか楽しめない景観です。

    作品数は絵画、立体物、建築、インスタレーション、パフォーマンスなど計42作品。会期中はシャトルバスも運行され、効率よくアートを鑑賞することができます。

    自然との色彩のコントラストが美しいJR信濃大町駅の駅舎。

    路上に直接展示されている作品も。(ジミー・リャオ/私は大町で一冊の本に出逢った)

    古民家などを舞台にした体験型の作品もある。(ニコラ・ダロ/クリスタルハウス)

    既存の建築物を活用したこの土地ならではの作品も多い。(淺井裕介/土の泉)

    【期間限定】大町市の天然食材を五感で感じるディナーメニュ

    大町の魅力を満喫したら、宿泊は北アルプスの懐に抱かれる『ANAホリデイ・インリゾート信濃大町 ホテルくろよん』へ。

    400年以上の歴史を誇る「葛温泉」を贅沢にかけ流した露天風呂・大浴場、フィットネスジムや屋内温水プールなどの設備が充実。小さなお子様から大人までゆったりとお過ごしいただけるでしょう!

    さらに10月末日までは、東京・青山の人気レストラン『HATAKE AOYAMA』神保佳永シェフとコラボしたスペシャルディナーが登場。

    大町の野菜の魅力に惚れ込み、地元産食材を吟味してつくり上げた全5品のディナーコースは、『鹿島槍ガーデン』のイワナのオードブル、地元産椎茸パウダーが決め手のパスタ、レアに仕上げた信州サーモンのインパナート、地元が誇る信州黄金シャモの胸肉を低温調理したメインディッシュ。さらに、大町のそば粉100%のガレットと地場産リンゴのデザートという内容。

    巧みなアイデアが組み合わさり生み出される逸品を、マウンテンリゾートという非日常の空間で、ご家族や大切な方と一緒にご満喫ください。

    豊かな水に癒やされ、アートを愛で、食を楽しむ。長野県大町市でのひとときは、きっと誰しもの心に確かな足跡を残す体験となることでしょう。

    暖炉を囲みながら感じる”非日常のリゾートステイ”

    ​自然の景色を見渡せるバルコニー付きデラックスツインルーム

    限定ディナーコースの一品「大町産信州サーモンのインパナート 大町野菜のタルタル添え」。レアに揚げた信州サーモンの旨味と食感がポイント。

    希少な信州黄金シャモを使うメインディッシュ「信州黄金シャモの低温調理 旬野菜のサルサ」。

    デザート「倉科製粉所のそば粉のガレット 大町産リンゴキャラメルソース」。ほろ苦いソースが、香り豊かなそば粉のガレットと響き合う。


    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA
    (supported by 大町市)

    ヘビーサーマル クルーネックロングTシャツ(2021AW新色)

    アイアンハートクルーネックサーマルTシャツ

    • 各部の縫い合せは全て4本針で縫製
    • ワンウォッシュ済み
    • 綿100%の肉厚ワッフルで作りました。
    • 基本仕様は【IHTL-1213】のサーマルヘンリーと同様です
    • 2021AWネイビーとオリーブが新登場!

    サイズスペック

     着丈肩幅バスト裾回り袖口幅袖口幅
    XS61.5377668569
    S64398476589
    M66.5419284609.5
    L694310092629.5
    XL71.5451081006410
    XXL74471161086610.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。
    • 素材の特質上、サイズに個体差があります。
    • 商品はワンウォッシュ済みです。

    素材

    • 綿:100% |ボディ : 20/- (肉厚ワッフル) ,リブ : 畦編み

    ヘビーサーマル ヘンリーネックロングTシャツ(2021AW新色)

    IRON HEARTヘンリーネックサーマルTシャツ

    • 各部の縫い合せは全て4本針で縫製
    • ワンウォッシュ済み
    • 綿100%の肉厚ワッフルで作りました。
    • 2021AW新色!!

    IHTL-1213:サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 62.5 39.0 76.0 71.0 56.0 9.0
    S 65.0 41.0 84.0 79.0 58.0 9.0
    M 67.5 43.0 92.0 87.0 60.0 9.5
    L 70.0 45.0 100.0 95.0 62.0 9.5
    XL 72.5 47.0 108.0 103.0 64.0 10.0
    XXL 75.0 49.0 116.0 111.0 66.0 10.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。
    • 素材の特質上、サイズに個体差があります。
    • 商品はワンウォッシュ済みです。

    素材

    • 綿 100% ボディ : 20/- (肉厚ワッフル) リブ  : 畦編み

    ヘビーサーマル ヘンリーネックロングTシャツ(2021AW新色)

    IRON HEARTヘンリーネックサーマルTシャツ

    • 各部の縫い合せは全て4本針で縫製
    • ワンウォッシュ済み
    • 綿100%の肉厚ワッフルで作りました。
    • 2021AW新色!!

    IHTL-1213:サイズスペック

      着丈 肩巾 バスト 裾回り 袖丈 袖口
    XS 62.5 39.0 76.0 71.0 56.0 9.0
    S 65.0 41.0 84.0 79.0 58.0 9.0
    M 67.5 43.0 92.0 87.0 60.0 9.5
    L 70.0 45.0 100.0 95.0 62.0 9.5
    XL 72.5 47.0 108.0 103.0 64.0 10.0
    XXL 75.0 49.0 116.0 111.0 66.0 10.5
    • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。
    • 素材の特質上、サイズに個体差があります。
    • 商品はワンウォッシュ済みです。

    素材

    • 綿 100% ボディ : 20/- (肉厚ワッフル) リブ  : 畦編み

    目指すのは、おいしさの先にある「快楽」。シチュエーションまで考慮する3種類のペアリング。[和光アネックス/東京都中央区]

    今回の考案にあたり、酒30種以上、食品50種以上を試した。無数の組み合わせから選んだ珠玉の3種にご期待を。

    WAKO ANNEX家庭でのんびり楽しむ。シーンに沿った組み合わせの提案。

    2021年10月1日(金)、『和光アネックス』地階のグルメサロンがリニューアル。テーマは、日本の酒や食材の魅力に改めてスポットを当てる「FIND OUT ABOUT NIPPON」です。『ONESTORY』は、その企画プロデュースとして参画しています。

    日本全国から見つけ出した「おいしいニッポン」は、アルコール及びノンアルコールのドリンクやデリカテッセンなど多種多様。しかし、本企画における特徴は、これまでに類を見ない食べ合わせのプレゼンテーションにあります。

    今回、そのセレクターとして登場するのは、第14代酒サムライであり、自身のお店『GEM by moto』を営む 日本酒ソムリエの千葉麻里絵さんです。

    千葉さんが提案する酒と食品の食べ合わせの妙は、既存にはなかった視点や独自の感性にあります。

    「お酒と料理を組み合わせて、互いを高め合う。それは素晴らしいことですが、そこにシチュエーションを考えることで、さらに幅が広がります」と、にこやかに語る千葉さん。

    例えば、仕事の話の中なら会話を途切れさせない、寄り添うような組み合わせ。賑やかなパーティなら場を華やかにするコンビネーション。そして今回のように家庭でのんびり楽しむなら、心安らぐおいしさに加え気軽さ、手軽さも重視する。それが千葉さん流の考え方。

    「おいしいのは当たり前。そこに驚きやシーンに合った工夫を加えることで、おいしさの先にある“快楽”を目指したい」。

    果たして、千葉さんは、どのような提案をしてくれるのでしょうか。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及びWAKOオンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、千葉麻里絵さんがセレクトする19種のお酒や食品をはじめ、8種のペアリングをご用意しております。WAKOオンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    千葉さんが提案するペアリングは、ただのペアリングにあらず。概念を覆す驚きに満ちた食べ合わせは、おいしいはもちろん、楽しい場と時間も作り出す。

    WAKO ANNEX酒、柿、山椒。3つの要素が相互に響き合う。

    まず千葉さんが手にとった酒は『冨田酒造』の「七本鎗 武者修業 木桶仕込み」。滋賀県で500年近くも続く老舗『冨田酒造』と『松本酒造』の杜氏を退いた松本日出彦氏とのコラボレーションから生まれた一本。『和光アネックス』地階 グルメサロン及び『和光オンラインストア』限定の品です。

    「『七本鎗』は無骨さ、土の温かさ、大地と米の恵みをどっしりと伝えるお酒。対して松本さんの持ち味はクリアな透明感。このコラボレーションでは見事に両者が表現されています」と、まずは酒を評した千葉さん。そして、「甘みの奥に、まるでタンニンのような、茶の渋みのような味を感じました。だから直感的に“柿が食べたい”と思ったんです」と続けました。

    そしてその第一印象を頼りに、柿を探し始めました。もちろん柿ならどれでも良いわけではありません。千葉さんが大切にしているのは「お酒と料理のテンションを合わせる」こと。「ワインが油絵だとすれば、日本酒は水彩画や水墨画。そこに合わせて自然で優しい甘さを合わせたい」。

    様々な柿を試食した千葉さんが決めたのは、奥能登『陽菜実園』が栽培からこだわる完全無添加ドライフルーツ「ひなみ柿」でした。

    「甘みが自然で、ほんのかすかな渋みがあるこの柿が、お酒のテンションとぴったり。お酒の無骨な土っぽさにこの柿がすんなりと寄り添います」と千葉さん。

    しかし酒の半分の魅力にだけ寄り添う千葉さんではありません。もう半分の魅力、松本氏の透明感。千葉さんはそこに『飛騨山椒』の「実山椒」を合わせました。しかも食品と酒の片側通行の組み合わせではありません。柿の甘さと山椒の爽やかな香り、山椒によってさらにキレが増す酒。三者がそれぞれ役割を果たしながら見事に調和する驚きの組み合わせです。

    酒と食品はもちろん、実山椒と柿も好愛称。「実山椒と柿を交互に食べながらお酒を飲んでみてください」と千葉さん。

    『冨田酒造』が満を持して挑んだ木桶仕込み。松本氏とのコラボレーションは、『和光アネックス』地階 グルメサロン及び『和光オンラインストア』のみ限定販売。

    「味が形として見える」という千葉さんの発想は直感的。しかし、直感の影には膨大な知識の蓄積がある。

    WAKO ANNEXまるで合わせ出汁のように、酒の余韻を持ち上げる。

    続いて千葉さんが選んだ酒は石川県『吉田酒造店』の「手取川 山廃 純米大吟醸 百万石乃白」。最高の日本酒を造るため11年の歳月をかけて開発された酒米・百万石乃白を使い、『吉田酒造店』お得意のモダン山廃で仕込んだ酒です。

    「山廃のしっかり味、と思いきや軽くてすっきり飲みやすい。マスカットのような香りと乳酸のようなクリーミーな後味です」とまずは酒の評価。そして千葉さんが着目したのは、後味の部分でした。

    「後に残る味わいに、喉の奥にさらなる可能性を感じます。ここに旨味を合わせたらどうなるか、それを確かめたい」。そう言って千葉さんが手にしたのは『マルキチ阿部商店』の「リアスの詩 さんまこぶ巻」。旬の新鮮なサンマを昆布で巻き、醤油ダレで煮込んだ逸品です。

    「山廃ですから光モノの魚が合うのは当然。さらに昆布の旨味がお酒のポテンシャルを引き出します」と千葉さんが狙ったのは、昆布のグルタミン酸により引き出され、持ち上げられる後味の余韻。煮物に酒を加えて食材の旨味を引き出すように、まるで合わせ出汁のような深みある旨味が長く尾を引きます。

    単品ではすっきりだった酒が、フードと合わせることでふくよかで旨味ある味わいに変わる。組み合わせることでまったく別のキャラクターを引き出すのもまた、千葉さんの狙いのひとつです。

    山廃仕込みと和の旨味を合わせる。王道のようだが、その裏には「余韻」という狙いが潜んでいる。

    日本酒への愛ゆえに、ときに話は発酵や稲作の歴史の話まで。千葉さんの朗らかな人柄が、薀蓄を楽しい酒の肴に変える。

    「口に含んだ瞬間のピリッとしたガス感が心地よい」と千葉さん。微発泡は搾ってすぐに瓶詰めした鮮度の証。

    WAKO ANNEX甘酒にオイル。意外な組み合わせの先にある驚きの調和。

    3つ目に千葉さんが選んだのは、甘酒でした。岩手の民宿『とおの屋 要』が造るナチュラルな甘酒は、実はもともと甘酒が苦手だったという千葉さんが「これは別格。上品で自然な甘さで毎朝飲んでいます」という愛飲の品。しかし単体で完結しているこの甘酒で、どのような組み合わせを狙うのでしょう。すると千葉さんが取り出したのは『アグリオリーブ』の「エキストラバージンオリーブオイル」。

    千葉さんは、甘酒のテクスチャに注目していました。

    「甘酒は、マットな質感が特徴。ここにオリーブオイルを少々垂らすと、まるでビシソワーズのような、クリーミーなスープのようになります」と千葉さん。

    「上質な革を使ったカバンを磨いて艶が出るイメージ」。

    千葉さんの言葉が、腑に落ちます。甘酒のしっかりとした質感にオイルが加わることでその味わいは滑らかに、艷やかになり、さらにオリーブのフレッシュな青っぽさが甘酒の甘みにさらなる深みを加えます。それから「ペアリングというより、料理ですね」と笑う千葉さんですが、驚きの組み合わせと味わいの変化を前にすれば、些細なこと。改めて酒と食品の組み合わせの奥深さを感じさせてくれました。

    テンション、余韻、質感に注目して考案した3種類の組み合わせ。すべてに共通するのは、合わせることで未知なる魅力が立ち上がってくること。

    「それぞれ単体でおいしいものばかりですが、そこに出合いを付け足すとそれは“体験”になります。体験することでおいしさ以上の楽しさ、快楽を見つけて頂ければ。そしてその楽しさを通して、日本の食の底力を改めて感じてください」そう総括した千葉さん。ぜひ今回の組み合わせを“体験”し、その驚きをご自身で体感してみてください。

    どぶろくでも知られる『民宿とおの』は、米の栽培も手掛ける。この甘酒も白米の米麹から丁寧に仕込まれる。

    甘酒にオリーブオイルをほんのひと垂らし。それだけで劇的に変わる味わいに驚かされる。

    「ペアリングはパズルをはめる感覚」という千葉さん。そのピタリと合致する組み合わせはお見事。

    ※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロン及びWAKOオンラインストア(上記バナー)にて、購入可能になります。
    ※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、千葉麻里絵さんがセレクトする19種のお酒や食品をはじめ、8種のペアリングをご用意しております。WAKOオンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

    岩手県出身。保険会社のSEから日本酒に魅了されたことで飲食業界に転身。新宿の『新宿の『日本酒スタンド酛(もと)』に入社後、利酒師の資格を取得。日本全国の酒蔵を訪ね、酒類総合研究所の研修などにも参加し、2015年に『GEM by moto』をオープン。化学的知見から一人ひとりに合わせた日本酒を提供する。口内調味やペアリングというキーワードで新しい日本酒体験を作り、日本のみならず海外のファンを魅了し続けるかたわら、様々なジャンルの料理人や専門家ともコラボレーションし、新しい日本酒のスタイルを日々模索する。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「第14代酒サムライ」に叙任。。主な作品は、『日本酒に恋して』(主婦と生活社)、『最先端の日本酒ペアリング』(旭屋出版)など。出演作は、映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(配給:シンカ)。https://www.marie-lab.com/

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8  MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    Photographs:植田 城維 (HYBRID FACTORY)
    Text:NATSUKI SHIGIHARA

    (Supported by WAKO)

    「武者修業」完結。仲間と醸した五蔵の酒、それは松本日出彦が生きた証。

    左より、秋田『新政』、栃木『仙禽』、滋賀『七本鎗』、福岡『田中六五』、熊本『花の香』と造り上げた「武者修業」における五本。

     約9ヶ月に及ぶ「武者修業」を終えた松本日出彦氏。全身全霊を注ぎ込み、五蔵それぞれの酒を仕上げた。「自分の人生を変えた酒造りになりました。五蔵の皆様と支えてくれた家族、周囲の方々には、感謝しかありません」。

    HIDEHIKO MATSUMOTO最も旨い「中汲み」を「直汲み」。魂を込めた五蔵のスペシャルエディション。

    2020年12月31日。自身の蔵元である『松本酒造』を父親とともに去ることになってから約9ヶ月。

    紆余曲折しながら「武者修業」という題を自らに課し、酒造りを再開した松本日出彦氏ですが、それを成すことができたのは、仲間の支えがあったからこそ。

    秋田『新政』、栃木『仙禽』、滋賀『七本鎗』、福岡『田中六五』、熊本『花の香』。

    五蔵の「武者修業」は、決して平坦な道のりではありませんでした。しかし、もう一度、酒造りに没頭できる環境は、すべてを失った松本氏にとって幸福な時間だったに違いありません。

    それぞれ醸した酒は、仕上がった順に「別誂」としてリリースされましたが、即完売。しかし、「武者修業」の最後に酒造りを終えた『新政』に合わせ、五蔵「直汲み」という特別仕様こそ、今回の真髄。「武者修業」における五蔵の酒が一堂に会すのは、初になります。

    その数は、各蔵限定75本のみ。

    ※「武者修業」における五蔵「直汲み」は、各蔵限定75本のみになります。2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地下1階のグルメサロン及びWAKOオンラインストア(上記バナー)のみ、購入可能になります。

    自社圃場の保有、無農薬栽培の実現など、(佐藤)祐輔さんは有言実行。それを信じて酒造りをしているプロフェッショナル集団こそ、『新政』たるゆえん。“美味しい競争に興味はありません。自分は、文化的価値の高いお酒を目指しています”と話していた祐輔さんの思想は、これからの日本酒業界にも必要なことだと思いました」。

    「『仙禽』といえば、自分の中では人生初のもと摺り。見た目は地味ですが、相当な労力、体力、忍耐力を要します。薄井(一樹)さん(右)から『武者修業』は『仙禽オーガニックナチュール』でと言われた時は、一番難しい造りが来た……と思いました。杜氏の(薄井)真人さん(左)との酒造りも学びが多かったです」。

    「最初に訪れた『武者修業』先が『冨田酒造』でした。決して酒造りに向いているわけではない玉栄の米を使い続ける酒造りに地元の愛を感じました。不器用だけど真っ直ぐな冨田(泰伸)さんらしい決断と覚悟。そんな想いが『七本鎗』の味にも出ていると思います」。

    「五蔵の中でも田中(克典)さんとは一番付き合いが古く、学生時代からの友人でもあります。『白糸酒造』が守ってきたハネ木搾りによって、『田中六五』は生まれているのだと感慨深い気持ちになりました。酒袋を槽(ふね)に積む作業は、本当に苦しかったです」。

    「神田(清隆)さんとは、面識がある程度だったので、今回の一件でご連絡をいただいた時にはびっくりしました。『花の香酒造』が大事にしている産土(うぶすな)の精神と熊本の在来品種・穂増(ほませ)を復活させた熱量には、心が熱くなりました」。

    松本氏の密着を始めてから、本人の手を定点観測。上段左より、「武者修業」前、『七本鑓』、『花の香』。下段左より、『田中六五』、『仙禽』、『新政』。

    HIDEHIKO MATSUMOTOどうしても「直汲み」として形に残しておきたかった。「武者修業」は、掛け替えのない時間だったから。

    「『直汲み』は、造り手にとって最も大切なお酒になります。搾り始める酒の最初と最後の荒い部分を除いた一番質の良い『中汲み』のみを厳選し、酒粕と清酒が離れる瞬間を酸化させずに直接手で汲み入れます。手間暇がかかるだけでなく、量産できないため、一般に流通できないのですが、今回は、どうしてもそれを形に残しておきたかったのです。今回お世話になった五蔵に限らず、日本酒造りは、非常に閉ざされた世界です。そんな環境の中に余所者の自分を受け入れてくれた五蔵の方々には感謝しかありません。何もかも失ってしまった自分に居場所を与えてくれました。役目を与えてくれました。大袈裟かもしれませんが、自分は生きていいのだと思わせてくれました。だから、その掛け替えのない時間を形に残しておきたかった。もちろん、このお酒の価値は、自分ではない誰かが決めることだと理解しています。我がままかもしれませんが、それでも残しておきたかった」。

    酒造りは、基本的に全ての蔵が同じ時期に行うため、例え余所者を受け入れる許容ある蔵があったにせよ、職人同士が現場を共にすることは不可能。今回は、皮肉にも松本氏が蔵を失ったからこそ実現できました。

    そして、それぞれにおける酒造りという長いシーズンを振り返り、松本氏は「楽しかった」と言います。

    「仕込みながら微調整していくライブ感や目指すべき味の目線合わせをしていく緊張感。そして、シーズンを戦い抜くために命をかける魂のぶつかり合い。予測はできても状況判断は、現場にいなければできません。現実を受け入れられなかった当初は内に籠ってしまった時もありましたが、仲間のおかげで心が動いた。体が動いた。色々な物事には理論や理屈はあるけど、実際に行動した人にしか見ることができない景色があるのだと感じました」。

    「直汲み」は、希少な酒です。しかし、語弊を恐れずに言えば、「武者修業」の価値はそこにありません。

    昨今における世界的な情勢も手伝い、日常や当たり前は奪われてしまいました。働き方、暮らし方など、様々は一変。改めて、「生きる」ことは何かを深く考えた人も少なくないのではないでしょうか。

    ゆえに、今回においても、ただ酒の「直汲み」にあらず。松本氏が酒職人として空白の時代を作らなかった「生きた証」なのです。

    「『武者修業』のお酒を通して、ほんの少しでも誰かに生きる力を与えられたらなと思っています。この難局も手伝い、疲れてしまったり、元気をなくしてしまったり、先が見えなかったり……。おこがましいかもしれませんが、それでも前を向いて生きる意義を感じてもらえたら嬉しく思います」。

    かく言う松本氏自身も「武者修業」を通して前向きになれたひとり。前出の「楽しかった」と振り返れた心境しかり、最後に残した言葉がそれを物語っています。

    「すべてをひっくり返しても、先祖代々が大切に残してくれた酒蔵で酒造りをさせていただいた『松本酒造』には感謝しかありません」。

    おそらく、これほどまでに人の想いと魂が込められた酒は、これまでも、これからもないでしょう。

    「武者修業」を終えた松本日出彦は、今何を思う。

    「やっぱり自分は酒が造りたい。それがちゃんと確信に変わった」。

    松本日出彦の密着は、まだ続く。

    「武者修業」をスタートさせる前、「酒造りをしている時は手が硬い。酒造りができていない今の手は、柔らかい。シーズン中にこんな自分の手を見るのはいつぶりだろうか……」と話していた松本氏。約9ヶ月後、すべての「武者修業」を終えた手は、酒職人の手になっていた。

    ※「武者修業」における五蔵「直汲み」は、各蔵限定75本のみになります。2021年10月1日(金)にリニューアルオープンした『和光アネックス』地下1階のグルメサロン及びWAKOオンラインストア(上記バナー)のみ、購入可能になります。

    住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
    TEL:03-5250-3101
    www.wako.co.jp

    1982年生まれ、京都市出身。高校時代はラグビー全国制覇を果たす。4年制大学卒業後、『東京農業大学短期大学』醸造学科へ進学。卒業後、名古屋市の『萬乗醸造』にて修業。以降、家業に戻り、寛政3年(1791年)に創業した老舗酒造『松本酒造』にて酒造りに携わる。2010年、28歳の若さで杜氏に抜擢。以来、従来の酒造りを大きく変え、「澤屋まつもと守破離」などの日本酒を世に繰り出し、幅広い層の人気を集める。2020年12月31日、退任。第2の酒職人としての人生を歩む。

    Photographs:JIRO OHTANI
    Text:YUICHI KURAMOCHI

    映画監督・河瀨直美が体験する、創造的休暇。

    紀寺の家 「きおくと現実のはざまで」
    文・河瀨直美

     紀寺で生まれ、紀寺で育った。紀寺はわたしの故郷である。この路地の先の長屋には、現実ときおくを行き来する空間がある。余分なものは一切無い。庭にある木々たちも、自らの場所をわきまえて存在している。枝葉を太陽に向かって伸ばしている姿は美しい。領域は無限だが、わきまえることで、その無限は無限たるに在る。季節ごとのしつらえも、あるがままに美しい。ひとりがこんなに贅沢なのは、物言わぬものたちが、その存在そのもので充分に豊かだからだ。それ以上でも以下でもない。比べることもない。私が私であって良いと彼らに存在を認めてもらっているような安心感が心を満たす。歩くこと、迷うこと、時間を気にしないこと、委ねること。丁寧に生きるとは、私の中の私を愛でることなのかもしれない。あたりまえに備わっている自分に感謝すること。もうひとつの目を持って、それらを見つめること。この空間は、そうして私を解放する。ああ、自由だ。風が心地よい。ささいな陰影が目に飛び込んでくる。細やかな物事がまるで奇跡のように思えたら、ここにある創造的休暇は、どんなことよりも贅沢だ。これでもかこれでもかとありとあらゆるものを自分の周りに置いて過ごしてみても、何やら孤独が押し寄せる夜は、ふっとこの路地の向こうを思い描いてみよう。そうすれば心の奥のほうに確かに存在しているあの日の自分を取り戻せるかもしれない。

     アテもない散歩、この辻を曲がれば何に出会えるのだろうと心弾ませていたあの日、私の笑顔はきっと穏やかで清々しい色をしていたに違いない。あの色にもう一度逢いにいく。でも、もう少し、だから、ここで頑張ってみる。そう思い、空を見上げるとまんまるなお月様がじっと私を見つめてくれていた。梢の向こうに輝くそれは、この地球に暮らす人々の上に等しく光を放つ。ああ、同じだね。大好きだよ。ここにいるよ。ありがとう。

    1969年生まれ、奈良県出身。地元・奈良を拠点に映画を創り続ける。一貫したリアリティの追求はカンヌ映画祭をはじめ、各国の映画祭で受賞多数。代表作は、「萌の朱雀」、「殯の森」、「2つ目の窓」、「あん」、「光」など。映画監督のほか、CM演出、エッセイ執筆などジャンルにこだわらず表現活動を続け、故郷奈良において「なら国際映画祭」をオーガナイズしながら次世代の育成にも力を入れている。最新作「朝が来る」は、第73回カンヌ映画祭公式セレクション、第93回米アカデミー賞国際長編映画賞候補、日本代表として選出。第44回日本アカデミー賞では、6部門で優秀賞と新人俳優賞を受賞。また、東京2020オリンピック公式映画監督に就任。2025年大阪・関西万博のプロデューサー兼シニアアドバイザー。バスケットボール女子日本リーグの会長も務める。プライベートでは、野菜やお米も作る一児の母。
    www.kawasenaomi.com

    住所:奈良県奈良市紀寺町779 MAP
    TEL:0742-25-5500(受付時間9:00~19:00)
    http://machiyado.com

    Photographs:HARUHI OKUYAMA

    「紀寺の家」と「奈良」を通して、「創造的休暇」について考える。

    紀寺の家自然と生きる。自然に生きる。

    奈良には、自然が溢れています。『紀寺の家』からゆっくりとそれを目指すに連れ、町の風景から樹々の風景へと変化し、徐々に人の気配は消えてゆきます。中には1000年以上、地に根を張り続ける木のある森もあり、そこに身を置けば、人類の無力ささえ感じます。

    また、霧や靄をまとった自然の姿は、生命力にみなぎり、野生を感じさせます。真の自然とは、ただ優しく、美しいだけではありません。時に狂気も孕みながら、神聖なる領域を維持しているのだと思います。

    大地があり、種が落ち、芽生え、雨によって水を蓄え、植物は育ち、やがて森や林、山を作る。環境が備われば、生き物も暮らし、そこには生態系が創造されます。ただただ、圧倒されつつ、私たち人間はこの場所から生まれた恵みをいただいているのだと気付きます。

    『紀寺の家』では田んぼを借り、苗から育てたお米でごはんを炊いています。苗は、山々から湧き出る水によって育ちます。私たち人間は、それを体内に取り入れます。自然に生かされているのです。日々の忙しさに感け、そんな当たり前を忘れてしまいがちですが、決して、当たり前は当たり前ではありません。

    自然と生きるとは何か。自然に生きるとは何か。技術やテクノロジーが進化し続けるからこそ、考えなければいけないことだと思います。人類の本当の進化は、いつの時代も創造力から生まれていると信じているからです。

    紀寺の家見えるものではなく、見えないことを知る。

    奈良には数々の伝統行事があります。中には、1000年以上前より続くものもあり、その行事を知ることは、町の歴史や文化を知ることにもつながります。

    日本各地に著名な行事は数多くありますが、ただ見るだけで終えてはいけないと思います。そこに深く根付いた理由や源に触れることに意味があると考えるからです。残り続けているからには、何か大切なメッセージが隠されているはずです。なぜ、なくしてはいけないのか。なぜ、なくならなかったのか。なぜ、想うのか、祈るのか、願うのか。

    見えるものではなく、見えないことに本質は潜んでいます。創造力を膨らませ、考え続けるからこそ、応えが見つかるのだと思います。

    紀寺の家ものの命は、人の命よりも長い。

    『紀寺の家』は、100年余の歴史を刻む建物です。5棟の町家群を修復したそこには、独特の時間が流れていると思います。その理由を少し考えてみました。

    修復するという行為は、実は、非常に時間と手間がかかります。いっそのこと、解体し、建て直してしまった方が効率良く建築物はできてしまいます。しかし、『紀寺の家』は、古き良き建物を残す活動を続けています。なぜなら、そうやってこれまでも誰かが守ってきたからです。

    建物を残すということは、風景を残すことにつながると思います。それを先人たちが成してくれたおかげで、時空を超えた奈良町の邂逅体験を現代に与えてくれました。

    『紀寺の家』では、長きにわたり生き続けている建物の呼吸を感じていただけると思います。使い込まれた床、撓んだ木材、圧倒的存在を放つ梁……。経年による老いは、深みを増し、美しい空間を形成しています。つまり、ここには、100年前の時間が残っているのです。

    いつか、私たち人間は死を迎えてしまいます。しかし、建物は、その後も生き続けていくでしょう。『紀寺の家』がこれからできることは何か。それは、正しい人に正しくこの建物を引き継いでいくことです。

    これから先、この建物には、どんな未来が待っているのだろうか。未来を創造するということは、過去を振り返るきっかけにもなるのです。そんな両輪的発想から何が生まれるのか。

    ものの命は、人の命よりも長いです。100年後も『紀寺の家』が建つ奈良町の風景を創造しながら、今日もまたお客様をお迎えしています。そして、ほんの少しでも「創造的休暇」を感じるようなことがあれば、是非、『紀寺の家』の方々に教えてあげていただければと思います。

    紀寺の家灯の数だけ、暮らしがある。

    奈良町には、古い民家が建ち並ぶ風景が今なお残っています。旧市街地ゆえ、夜になると暗さが際立ちますが、それによって存在感を増すのが灯です。
    路地に建ち並ぶ民家からこぼれ落ちる灯は、古き良き奈良町の風景だと思っています。

    灯の数だけ暮らしがある。
    灯の数だけ家庭がある。
    灯の数だけおいしいごはんがある。
    灯は創造力を掻き立てます。

    風景は、心の奥にあった記憶を手繰り寄せてくれます。ある日、そんなことに想いを馳せながら散歩をしてみると、突如現れる異質な空間も愛おしく感じました。さらに歩を進めると、足元に百日紅。目の上に咲く花の美しさもあれば、散る美しさもある。

    視点を変えれば、いつもの風景が全く違うものに映るかもしれません。

    住所:奈良県奈良市紀寺町779 MAP
    TEL:0742-25-5500(受付時間9:00~19:00)
    http://machiyado.com

    Photographs:HARUHI OKUYAMA
    Text:YUICHI KURAMOCHI

    10年という節目に迎えた試練。導かれた「創造的休暇」という応え。

    紀寺の家私たちは何かを失っただけではない。そこから何かを得なければいけない。

    2021年10月、「紀寺の家」は、10周年を迎えます。

    「本来であれば、様々な計画を練るところでありますが、ご存じの通り、2020年より人類を脅かす世界規模の難局が訪れてしまいました。以降、「新型コロナウイルス」という言葉を、ニュースや報道などにおいて目にしない日は一日もありません」。そう語るのは、『紀寺の家』の主人、藤岡俊平氏です。

    突如現れたそれは、瞬く間に人類から日常や当たり前を奪ってしまいました。『紀寺の家』も例外ではありません。

    「空室が続き、宿屋としての存在価値を失ってしまい、経営面はもちろん、何よりお客様をお迎えできないことはこんなにも辛く苦しいことなのだという現実を知ることになりました。夢であったら覚めてほしいと思うも、夢ではありません」と言葉を続けます。

    まるで役目を終えてしまったかのような『紀寺の家』には、ただただ静寂が漂っていました。どうしたらいいのか。残念ながら、時間はたっぷりあります。予定もありません。

    もし、この問題が終息したとしても、日常は戻ってこないかもしれません。当たり前は、当たり前ではなくなっているかもしれません。色々なことが藤岡氏の頭の中で巡ります。

    そんな時、まるで導かれるように藤岡氏は「創造的休暇」という言葉と出合いました。今まさに、その時と同じ現象が起きているのではないでしょうか。

    17世紀、著名な学者、アイザック・ニュートンが経験したパンデミック。そして、ニュートンが故郷へ避難したからこそ「万有引力の法則」を発見できたように、『紀寺の家』でも何か発見できるのではないか。そんな能動的な思考が生まれたのです。

    藤岡氏は、再度、誰もいない『紀寺の家』へ足を踏み入れてみます。すると、これまでにはなかった感性が芽生えている自分に気が付きました。

    「昨今、急速なテクノロジーや技術の革新により、物事の良し悪しを“時短”で判断するという風潮を感じます。頼んだものがすぐ届く。検索すればすぐ見つかる。買いたいものがすぐ買える……。旅においても、美しい景色やおいしい食事は、インターネット上に溢れ、行ったつもり、食べたつもり、見たつもりなどの“つもり”現象もしばしば。もちろん、それらによって格段に便利になったこともあるでしょう。しかし、本当にそれが全て正しいのでしょうか。誰もいない『紀寺の家』には、正しい時間が流れていました」。

    窓から差し込む朝日、日中には陽光が空間を優しく包み込み、徐々に染まりゆく朱色が夕刻の便りを届けてくれます。その残像による気配を片隅に、群青色から闇へとグラデーションしていき、やがて夜が訪れる。奈良の夜は暗いです。しかし、暗いからこそ、月明かりが美しく星が煌めいています。

    ここには、1時間を30分にするような「時短」はありません。正しい時間が正しく流れています。

    「忘れてしまった何かを感じました。我々は、正しい時間を正しく体感できているだろうか。正しい食材を正しくいただけているだろうか。正しいものを正しく使えているだろうか。正しい自然と正しく共存できているだろうか。そして、人として正しく生きられているだろうか」。

    寄せては返す波のごとく、様々な自問自答を重ねました。もしかしたら、自己との対峙によってニュートンも何かを得たのかもしれません。

    近道ではなく遠回りをしてみる。表側ではなく裏側を見てみる。角度を変えて物事と向き合ってみる。いつもの場所へひとけを避けて違う時間に訪れてみる。その対象は「紀寺の家」だけではありません。真夜中の社寺、誰もいない山頂、早朝の原始林……。

    大袈裟なことではなく、ほんの少し視点を変えるだけで、これまで気付きを得ることがなかった何かに出合えるかもしれません。

    庭にある木から落ちるりんごをヒントに着想を得たニュートンのように。

    大地の鼓動、風の音、光の陰影、自然への敬意、そして、生きるとは何か。

    無だからこそ見える景色、無だからこそ聞こえる音、無だからこそ得られる感受。

    その先にある豊かさとは何か……。

    「人類は、地球上の一生物に過ぎません。そんなことも、こんな時代になってしまったからこそ再認識するきっかけになりました。これも私にとっては、発見のひとつです」。

    「創造的休暇」の応えは、人それぞれです。

    「自身の心に耳を傾け、開眼した世界に気付きを得る体験こそ、“創造的休暇”なのだと思います。私たちは何かを失っただけではありません。そこから何かを得なければいけません。10年という節目。様々な想いを、ここに記しておきたいと思います」。

    住所:奈良県奈良市紀寺町779 MAP
    TEL:0742-25-5500(受付時間9:00~19:00)
    http://machiyado.com

    Photographs:HARUHI OKUYAMA
    Text:YUICHI KURAMOCHI

    切っても脂が滲まない、臭みと無縁の味。至高の淡水魚・信州サーモン。[鹿島槍ガーデン/長野県大町市]

    北アルプスの雪解け水で育つ信州のブランド魚。

    北アルプスの豊かな自然に囲まれ、力強くも澄んだ味わいの食材を生産する長野県大町市。そんな大町市で素晴らしい食材を探すべく、イタリアンの巨匠『HATAKE AOYAMA』神保佳永シェフが大町市を巡りました。
    今回出合ったのは、研究者の探究心と生産者の熱意、そして長野の清冽な水が生んだ奇跡の淡水魚・信州サーモン。神保シェフは信州サーモンに何を感じ、そしてどんな料理を思いついたのでしょうか。

    北アルプスの雪解け水を源とする鹿島川の水。夏でも15度以下という低い水温が特徴。

    最新のバイオテクノロジーで誕生した信州サーモン。

    時は20世紀の終わり頃。「信州ならではの食材を」との思いから長野県水産試験場で淡水魚の研究が始まりました。しかし新品種の開発はそう簡単には進まず、時間が流れます。そして約10年の歳月を費やし、ついに満足のできる種が誕生しました。
    それは細心のバイオテクノロジーによってニジマスとブラウントラウトを交配し、両者の良いところを受け継いだ種。三倍体という遺伝子構造で雄しか存在せず卵を産まないため、産卵のエネルギーを脂の乗った肉厚な身として蓄えます。研究者はその輝く銀色の魚体から、この魚を“信州サーモン”のと名付けました。

    特殊な技術によって生まれる信州サーモンの稚魚は長野県水産試験場で育てられ、そこから県内の各養殖場に出荷されます。そこから先は、熟練の魚飼いたちの出番。独自に餌を工夫し、環境に細心の注意を払いながら、それぞれが愛情を持って育てます。やがて同じ信州サーモンでも養殖場によって違いが生まれ、2〜3年後に成長しきる頃にはその生産者の自慢のブランドとして出荷されるのです。

    銀色に輝く体からサーモンの名がついた信州サーモン。身は肉厚で鮮やかなオレンジ色。

    クセがなく、適度な脂が乗った信州サーモンは、もちろん刺し身でも抜群のおいしさ。

    水産試験場から出荷された稚魚を、各生産者が丹精込めて育て上げる。

    鹿島川の清き水が育てる臭みのない魚。

    名峰・鹿島槍ヶ岳の懐に位置する『鹿島槍ガーデン』は、そんな養殖場のひとつ。正確には広大な敷地の中に管理釣り場と養殖場を備えたフィッシングガーデンで、巨大なニジマスやトラウト、ときにはイトウまで釣れると釣り人たちの伝説として語られる名所です。

    そんな『鹿島槍ガーデン』は、人生を川魚の養殖一筋に捧げてきた社長・矢野口千浪氏が1971年に開きました。安曇野穂高生まれの矢野口氏は、当時28歳。釣り場を開くことを夢見て、良質な水を探して長野中を歩き回りました。そしてとうとう見つけたのが、安曇野にもほど近いこの場所。「探していた場所がこんなに近くにあったんですね」矢野口氏は懐かしそうに振り返ります。

    矢野口氏が惚れ込んだのは、鹿島川の水。北アルプスの雪解け水を源流とするこの水は、冬場は水温0度まで下がり夏場でも15度以下。川の水をそのまま引いている養殖場も、自然そのままの環境です。そしてこの厳しさが、結果としておいしい魚を育てました。

    というのも冬場、極寒となる水中の魚たちは活動を止め、餌をまったく食べなくなります。ゆえに一般的な養殖場と比べ、成長まで2倍近くの時間がかかるのです。そしてゆっくり育てることで臭みが抜け、クリアなおいしさの身になるのだとか。さらに冷たい水は身を引き締め、脂を良質にします。自然に近い環境のため余分な脂は乗らず、身には旨味がギュッと凝縮されます。「鹿島川ほどおいしい魚のいる川はない」矢野口氏はそう胸を張ります。

    実は以前に何度も『鹿島槍ガーデン』を訪れ、信州サーモンも料理に使用していた神保シェフ。つまりその品質は、すでにシェフのお墨付きです。それでも再びこの地を訪れ、矢野口氏と再会の挨拶を交わすと、すぐに養殖場の見学や試食などで変わらぬ品質を確認します。

    鹿島川の水をそのまま引き込む『鹿島槍ガーデン』は、自然に近い生育環境。

    『鹿島槍ガーデン』の矢野口氏。半世紀以上の月日を、川魚の養殖に捧げてきた。

    『鹿島槍ガーデン』を見学する神保シェフと『ANA ホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん』 の泉田シェフ。

    『鹿島槍ガーデン』では信州サーモンのほか、希少な岩魚の刺身や卵などを試食させてもらった。

    濃厚な旨味と食感を、シンプルな調理で際立てるシェフの技。

    「川魚特有の臭みが一切なく、身が引き締まっている。海の魚にも負けない味です」

    そう言い切る神保シェフ。
    そして神保シェフが『鹿島槍ガーデン』の信州サーモンも使って作ってくれたのは、意外にもシンプルなフライでした。

    「鹿島槍ガーデンの信州サーモンは、揚げても身がしっかりと締まった肉のような身質ですから、レアのねっとりとした食感を味わってみてください」とフライに仕立てた理由を教えてくれた神保シェフ。
    さらに「切ったときに赤い脂が滲んでこない。身に臭みがまったくない。いろいろと魚を食べてきましたが、ここまでクリアな味わいの川魚ははじめてです。多くの場合、臭みの原因は水質。だから鹿島槍ガーデンは、水質が本当に良いんでしょうね。何しろ岩魚を刺し身で食べられる養殖場ですから」と手放しの称賛を寄せました。

    レシピはパン粉を付けて揚げる一般的なフライの作り方。イクラを添え、バジルオイルで香りを付け、仕上げにパプリカの粉を振れば、より本格的な味わいに。
    内部をレアに揚げるコツは「2cmほどの厚みの場合なら冷蔵庫から出したての魚を、180度で2分ほど揚げる。表面がこんがりしてきたら、内側はちょうどレアになっています」と神保シェフ。

    揚げたてを頂いてみると、衣の香ばしさとねっとりとした独特の信州サーモンの食感、ギュッと締まって旨味を湛えた身、イクラの塩気とタルタルソースの酸味が一体となった極上の味。一見、家庭料理のようですが、さまざまな小技で一体感を演出するのは、まさにスターシェフならではのテクニックです。

    『鹿島槍ガーデン』のいくら(奥)と岩魚の卵(手前)。この希少な味も神保シェフのインスピレーションを刺激した。

    フライといってもシェフが仕立てるのは、美しく盛り付けた洋食としての逸品。

    中は見事なレア。衣の香ばしさとの食感の対比や濃厚な味わいが楽しめる。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA
    (supported by 長野県大町市)

    切っても脂が滲まない、臭みと無縁の味。至高の淡水魚・信州サーモン。[鹿島槍ガーデン/長野県大町市]

    北アルプスの雪解け水で育つ信州のブランド魚。

    北アルプスの豊かな自然に囲まれ、力強くも澄んだ味わいの食材を生産する長野県大町市。そんな大町市で素晴らしい食材を探すべく、イタリアンの巨匠『HATAKE AOYAMA』神保佳永シェフが大町市を巡りました。
    今回出合ったのは、研究者の探究心と生産者の熱意、そして長野の清冽な水が生んだ奇跡の淡水魚・信州サーモン。神保シェフは信州サーモンに何を感じ、そしてどんな料理を思いついたのでしょうか。

    北アルプスの雪解け水を源とする鹿島川の水。夏でも15度以下という低い水温が特徴。

    最新のバイオテクノロジーで誕生した信州サーモン。

    時は20世紀の終わり頃。「信州ならではの食材を」との思いから長野県水産試験場で淡水魚の研究が始まりました。しかし新品種の開発はそう簡単には進まず、時間が流れます。そして約10年の歳月を費やし、ついに満足のできる種が誕生しました。
    それは細心のバイオテクノロジーによってニジマスとブラウントラウトを交配し、両者の良いところを受け継いだ種。三倍体という遺伝子構造で雄しか存在せず卵を産まないため、産卵のエネルギーを脂の乗った肉厚な身として蓄えます。研究者はその輝く銀色の魚体から、この魚を“信州サーモン”のと名付けました。

    特殊な技術によって生まれる信州サーモンの稚魚は長野県水産試験場で育てられ、そこから県内の各養殖場に出荷されます。そこから先は、熟練の魚飼いたちの出番。独自に餌を工夫し、環境に細心の注意を払いながら、それぞれが愛情を持って育てます。やがて同じ信州サーモンでも養殖場によって違いが生まれ、2〜3年後に成長しきる頃にはその生産者の自慢のブランドとして出荷されるのです。

    銀色に輝く体からサーモンの名がついた信州サーモン。身は肉厚で鮮やかなオレンジ色。

    クセがなく、適度な脂が乗った信州サーモンは、もちろん刺し身でも抜群のおいしさ。

    水産試験場から出荷された稚魚を、各生産者が丹精込めて育て上げる。

    鹿島川の清き水が育てる臭みのない魚。

    名峰・鹿島槍ヶ岳の懐に位置する『鹿島槍ガーデン』は、そんな養殖場のひとつ。正確には広大な敷地の中に管理釣り場と養殖場を備えたフィッシングガーデンで、巨大なニジマスやトラウト、ときにはイトウまで釣れると釣り人たちの伝説として語られる名所です。

    そんな『鹿島槍ガーデン』は、人生を川魚の養殖一筋に捧げてきた社長・矢野口千浪氏が1971年に開きました。安曇野穂高生まれの矢野口氏は、当時28歳。釣り場を開くことを夢見て、良質な水を探して長野中を歩き回りました。そしてとうとう見つけたのが、安曇野にもほど近いこの場所。「探していた場所がこんなに近くにあったんですね」矢野口氏は懐かしそうに振り返ります。

    矢野口氏が惚れ込んだのは、鹿島川の水。北アルプスの雪解け水を源流とするこの水は、冬場は水温0度まで下がり夏場でも15度以下。川の水をそのまま引いている養殖場も、自然そのままの環境です。そしてこの厳しさが、結果としておいしい魚を育てました。

    というのも冬場、極寒となる水中の魚たちは活動を止め、餌をまったく食べなくなります。ゆえに一般的な養殖場と比べ、成長まで2倍近くの時間がかかるのです。そしてゆっくり育てることで臭みが抜け、クリアなおいしさの身になるのだとか。さらに冷たい水は身を引き締め、脂を良質にします。自然に近い環境のため余分な脂は乗らず、身には旨味がギュッと凝縮されます。「鹿島川ほどおいしい魚のいる川はない」矢野口氏はそう胸を張ります。

    実は以前に何度も『鹿島槍ガーデン』を訪れ、信州サーモンも料理に使用していた神保シェフ。つまりその品質は、すでにシェフのお墨付きです。それでも再びこの地を訪れ、矢野口氏と再会の挨拶を交わすと、すぐに養殖場の見学や試食などで変わらぬ品質を確認します。

    鹿島川の水をそのまま引き込む『鹿島槍ガーデン』は、自然に近い生育環境。

    『鹿島槍ガーデン』の矢野口氏。半世紀以上の月日を、川魚の養殖に捧げてきた。

    『鹿島槍ガーデン』を見学する神保シェフと『ANA ホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん』 の泉田シェフ。

    『鹿島槍ガーデン』では信州サーモンのほか、希少な岩魚の刺身や卵などを試食させてもらった。

    濃厚な旨味と食感を、シンプルな調理で際立てるシェフの技。

    「川魚特有の臭みが一切なく、身が引き締まっている。海の魚にも負けない味です」

    そう言い切る神保シェフ。
    そして神保シェフが『鹿島槍ガーデン』の信州サーモンも使って作ってくれたのは、意外にもシンプルなフライでした。

    「鹿島槍ガーデンの信州サーモンは、揚げても身がしっかりと締まった肉のような身質ですから、レアのねっとりとした食感を味わってみてください」とフライに仕立てた理由を教えてくれた神保シェフ。
    さらに「切ったときに赤い脂が滲んでこない。身に臭みがまったくない。いろいろと魚を食べてきましたが、ここまでクリアな味わいの川魚ははじめてです。多くの場合、臭みの原因は水質。だから鹿島槍ガーデンは、水質が本当に良いんでしょうね。何しろ岩魚を刺し身で食べられる養殖場ですから」と手放しの称賛を寄せました。

    レシピはパン粉を付けて揚げる一般的なフライの作り方。イクラを添え、バジルオイルで香りを付け、仕上げにパプリカの粉を振れば、より本格的な味わいに。
    内部をレアに揚げるコツは「2cmほどの厚みの場合なら冷蔵庫から出したての魚を、180度で2分ほど揚げる。表面がこんがりしてきたら、内側はちょうどレアになっています」と神保シェフ。

    揚げたてを頂いてみると、衣の香ばしさとねっとりとした独特の信州サーモンの食感、ギュッと締まって旨味を湛えた身、イクラの塩気とタルタルソースの酸味が一体となった極上の味。一見、家庭料理のようですが、さまざまな小技で一体感を演出するのは、まさにスターシェフならではのテクニックです。

    『鹿島槍ガーデン』のいくら(奥)と岩魚の卵(手前)。この希少な味も神保シェフのインスピレーションを刺激した。

    フライといってもシェフが仕立てるのは、美しく盛り付けた洋食としての逸品。

    中は見事なレア。衣の香ばしさとの食感の対比や濃厚な味わいが楽しめる。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA
    (supported by 長野県大町市)

    苦いものは苦く、辛いものは辛く。自然そのままの環境で力強く育つ信濃大町の野菜。[アルプス八幡農園/長野県大町市]

    野菜の魔術師・神保シェフ、本領発揮の野菜料理。

    土壌や水質、寒暖差や日照時間。ある土地で育つ野菜には、その土地の風土がダイレクトに表れるもの。長野県大町市の野菜が各方面から高い評価を受けるのは、北アルプスの水、寒暖差のある気候、豊かな土壌などが野菜栽培に適していることの証明なのでしょう。
    そんな大町市の野菜生産者を、『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフが訪ねました。野菜料理に定評があり、“野菜の魔術師”の異名を持つ神保シェフ。そんなシェフに大町市の野菜は、どんな爪痕を残すのでしょうか。

    豊かな水と肥沃な土壌が育む信濃大町の野菜。そのおいしさはプロの料理人の間でも高評価を得ている。

    一家で移住して就農し、環境保全型農業に挑戦。

    この国には時折、常識破りの生産者がいます。手間暇や合理性を度外視し、ただ作物のおいしさをストイックに追求する求道者のような人。土地の特性を理解し、その恩恵を最大限に活かすスーパー生産者。
    北アルプス山麓、標高700mの場所で家族で営む『アルプス八幡農園』も、きっとそんな生産者のひとつ。

    『アルプス八幡農園』の畑を訪れてみると、すぐに一般的な畑との違いに気がつくことでしょう。まず見た目が違うのは、畝の間に雑草が伸びていること。ここでは畑に住むさまざまな生き物が暮らしやすい環境を作るべく、無農薬無化学肥料で環境保全型農業を進めているのです。雑草も定期的に刈るのではなく、伸びすぎて作業に支障を来す状態になったら刈るだけ。さらに刈った雑草はその場に留め、やがて土に還ります。雑草があるから手を抜いているのだと思うなら大間違い。作付けの場所を計算し、害虫避けには虫が嫌うハーブを植えるなどの工夫を凝らし、むしろ普通以上の多大な手間暇をかけ、自然に近い状態を保持しているのです。

    話を聞かせてくれたのは責任者の八幡大智さん、そして父の八幡博己さん。実は八幡一家はこの地の出身ではなく、農業も2010年に関西から移住し就農しました。

    大智さんが農業に傾倒したきっかけは幼い頃に何度も訪れていた祖母の家での家庭菜園の記憶、そして父・博己さんに連れられて訪れた大自然の記憶。成長した大智さんは農業高校、農業大学に進学し、その後、研修センターで実践を積みました。そして「いよいよ自分の畑を」と考えていたちょうどその頃、会社を定年退職した博己さんも第二の人生を大好きな山を眺めながら過ごしたいと引っ越しを目論んでいました。そうしてふたりの意見が合致した結果、長野県大町市への移住を決意したのです。

    3年ほど経験を積んだ後、いよいよこの地に『アルプス八幡農園』がスタートしました。しかし相手は自然。大智さんは家族みんなで団結しながら、少しずつ野菜の収穫量を増やしました。

    『アルプス八幡農園』の若き代表・八幡大智氏。大学で体系的に学んだ知識と実践で得た経験が武器。

    父・博己氏は定年退職してこの地へ。ホームページやデータ管理なども博己氏の仕事。

    一見、雑草が伸びてワイルドに見える畑だが、その実各所に細やかな計算が潜んでいる。

    新鮮で瑞々しく、味の濃い無農薬野菜たち。

    現在『アルプス八幡農園』で育てられるのは年間60品種ほど。家族経営のため大幅に収穫量を増やすことはできませんが、少量多品種、そして抜群のおいしさでリピーターをがっちりと掴んでいます。

    そんな『アルプス八幡農園』の野菜の一番の特徴は、食感と甘み。シャキッと瑞々しい食感は、北アルプスの清冽な水をたっぷりと吸って育つから。口に広がる野菜本来の優しい甘みは寒暖の差が大きい大町市の気候特性をうまく使いこなしているから。そして何より、自然に近い環境を作り出すことで野菜に適度なストレスがかかり、植物が本来持つ力強い生命力が揺り起こされるから。

    つまりここの野菜のおいしさは、この大町市という土地で、八幡一家の熱意なしでは育たないもの。ただ無農薬野菜といえばシンプルですが、その裏には真摯においしさを追求する一家の思いがこもっているのです。

    そして“野菜の魔術師”たる神保シェフは、畑を訪れてすぐにその本質を見抜きました。
    「畑を見るとワイルドな自然のままの姿に見えます。そしてひとつひとつの野菜に目を凝らしてみると、それがのびのびと生命力に満ちているのがわかります。どれも本当においしい野菜です」

    神保シェフの考える野菜のおいしさとは、野菜本来の個性がはっきりと見えること。甘さやみずみずしさだけでなく、苦味や青臭さといった要素も野菜のおいしさの一貫だといいます。
    「大根なら苦味と辛味、カブならみずみずしい甘み、ピーマンは苦味と青臭さ。それぞれの個性がはっきりと主張する素晴らしい野菜です」

    少量多品種が『アルプス八幡農園』の方針。西洋野菜などの珍しい品種も作られている。

    畑で博己氏の解説を聞く神保シェフ。栽培方法に関する鋭い質問も飛び出した。

    許可を得て畑の隅々まで見て回る神保シェフ。宝物を見つけた子供のような好奇心に満ちた姿が印象的だった。

    細かな技で野菜の魅力を引き出すバーニャカウダサラダ。

    神保シェフは『アルプス八幡農園』の個性際立つ野菜に敬意を表し、その個性をより引き出したバーニャカウダサラダを作りました。一見シンプルなサラダですが、それぞれに手の込んだひと手間が加えられています。

    ししとうは、素揚げ。揚げることで生のえぐ味を少し抑え、甘みとほのかな酸味を加えます。小カブは皮付きのままゆっくりと茹で、甘みを引き出しました。色による味のわずかな違いまで伝わる繊細な火入れです。ズッキーニは下茹で、大根は薄切りであえて生のまま。レタスは中心部を使い、赤タマネギは赤ワインビネガーでマリネ。

    「イメージは八幡農園のあの畑。ワイルドな印象でありながら、ひとつひとつは繊細な手入れがされている。そんな様子を一皿で表現しました」

    ソースは『アルプス八幡農園』のニンニクを牛乳で茹でこぼし、オリーブオイルとアンチョビを加えてミキサーへ。ビネガーを少々加えることで、野菜が引き立つ軽やかな味わいにしました。仕上げのパウダーは、キャベツとグリーンカールを茹でてから乾燥させて砕いたもの。抹茶のようなほろ苦さと青い香りが、サラダに奥行きを加えました。

    「あの畑を訪れ、直接見ていなければ生まれなかった料理です」神保シェフの言葉には野菜と生産者への深い敬意が込められていました。

    『アルプス八幡農園』から届いた野菜。「水が良いのでしょう。食感が瑞々しく、日持ちも良い」と神保シェフ。

    野菜ひとつひとつに合わせた下ごしらえ。素材を見極め、その魅力を際立てる引き出しの多さはさすが。

    「単体だとアクやクセが目立つ野菜を集合させて、全体のバランスを取る」ことがサラダのコツだという。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA
    (supported by 長野県大町市)

    ストレスなく育つことで、旨味を凝縮する長野のブランド鶏・信州黄金シャモ。[松下農園/長野県大町市]

    真摯に、実直に、地鶏と向き合うひたむきな生産者。

    豊かな自然と清冽な水に恵まれ、この土地ならではの食材を多数擁する長野県大町市。そのクリアな味わいは、イタリアンの巨匠たる『HATAKE AOYAMA』神保佳永シェフを唸らせました。
    街を巡り、生産者と会話を交わしながら、食材を見極め、料理のイメージを膨らませた神保シェフ。そのイメージが形となり、後に神保シェフは3つの料理を仕立てました。野菜、魚、肉、それぞれが主役となる3皿。その食材と料理から、信濃大町の食材の魅力が伝わります。

    北アルプスの澄んだ水が、信濃大町産食材のおいしさの源。

    信濃大町が誇る食材を、名シェフが美皿へと昇華。

    「こんなバカなこと、やっている人はいないだろうね」

    長野県のブランド鶏・信州黄金シャモを育てる『松下農園』の松下豊弘氏は、そう笑いました。それは決して自嘲などではなく、誇りに満ちた笑顔でした。

    信州黄金シャモとは、父鶏に旨味の強いシャモ、母鶏に弾力とコクがある名古屋種という在来種2種をかけ合わせた信州生まれの地鶏。それぞれの長所を受け継いだ、適度な弾力と濃厚な旨味を兼ね備えた鶏です。
    さらに血統のみならず、一般的な地鶏が75日以上に対し120日以上と定めた飼育期間、1平米5羽以下とする飼育環境など、厳しい基準を定め品質の保持に務めています。

    それほどまでに徹底して旨味を追求する信州黄金シャモですが、『松下農園』は、さらに上を行く飼育をします。それが、家畜に心を寄り添わせ、ストレスのない飼育を目指すアニマルウェルフェアの追求です。松下氏は厳しい基準をさらに越える飼育環境や、米を中心とした飼料など、考えうるさまざまな飼育方法を実践。つまり松下氏のいう“バカなこと”とは、採算を度外視しブランドの基準を大きく越える手間暇をかけて鶏を育てること。

    愛情をいっぱいに受けて、ストレスなく育った『松下農園』の信州黄金シャモは、品種特性である歯を押し返すような弾力がありながら、そこから少し顎に力を込めるとさっくりと噛み切れる柔らかさも併せ持っているのです。

    一般的な地鶏の飼育基準が1㎡10羽以下に対し、信州黄金シャモの基準は1㎡5羽以下。

    『松下農園』の松下豊弘氏。実直な人柄で、手間ひまかけた飼育を実践する。

    飼育日数もブロイラーの3倍近い120日以上を基準。じっくりと時間をかけて育てる。

    最後の出荷を終え幻となった地鶏。

    在来種100%の魅力を受け継ぐ品種特性と、さらに徹底したこだわりで育つ『松下農園』の信州黄金シャモ。アミノ酸のなかでも旨味成分であるアスパラギン酸とグルタミン酸がとくに豊富で、塩焼きにするだけでも溢れる旨味が感じられます。もちろん、そんな逸品をプロの料理人たちも放っておきません。焼き鳥屋から洋食店まで、地元のみならず首都圏からも引き合いがあり、松下氏は鶏舎を増築しながら常時1000羽以上の雛を育てていました。

    しかし多大な手間隙をかけ、プロの料理人向けに作っていた鶏だけにコロナ禍による飲食店休業の打撃は、松下氏にダイレクトに響きました。丹精込めて育てても廃棄となってしまう。松下氏は苦渋の決断として鶏の飼育を休止し、卵の販売に切り替えることにしました。かつて1000羽いた雛も70羽にまで減少。もちろん、状況が落ち着けば再開予定ですが、現状、『松下農園』の信州黄金シャモは、幻の鶏となってしまいました。

    『松下農園』を訪れた『HATAKE AOYAMA』の神保佳永シェフも、松下氏の話に神妙に聞き入っていました。そして、最後に残っていた信州黄金シャモを譲り受け、料理を仕立てます。料理人にとって、食材や生産者への最大の敬意は、おいしく料理すること。

    イメージはすでに固まっていました。味の軸は信州黄金シャモの適度な弾力の中から溢れ出す濃厚な旨味。それを引き出すのは、同じく信濃大町で出合った香り豊かな行者にんにく。そして神保シェフの頭の中にあった料理が、形を成します。

    松下氏と会話を交わす神保シェフ。生産者の苦境に料理人としてできることを模索する。

    大町市『キハダ飴本舗』の行者にんにく。旬に収穫し、オリーブオイルと塩で漬けたもの。

    『キハダ飴本舗』の行者にんにく畑は、全国有数の規模を誇る。

    信州黄金シャモのソテー 行者にんにくのソース

    信州黄金シャモは、皮目に熱したバターを繰り返し流しかけながらじっくりと火を入れる。こうすることで、皮目はパリッと香ばしく、身はしっとりやわらかいという食感のグラデーションが生まれます。そして高温のバターで閉じ込められた鶏自体の旨味が、口の中で溢れ出すのです。
    添えるソースはオイル漬けにした行者にんにくに、さらににんにくを利かせたもの。強くなりすぎて鶏の旨味を消さないよう、レモンをたっぷり絞って軽やかさを加えます。添えたのは信濃大町の野菜のグリルと、仕上げの白トリュフ。香りに特徴のある食材たちが、まるでパズルのピースのようにぴたりとはまり、見事に調和した風味となっています。

    バター、オイル、地鶏、トリュフという重量級素材でありながら、鶏の食感や旨味がはっきりと感じられるのは、レモンが透明感を加えるから。あっという間に作り上げた料理でありながら、まるでコースのメインディッシュのようにテーマと味わいのはっきりした料理。その重層的な味わいの中で、いっそう信州黄金シャモの存在感が際立っていました。

    熱したバターを繰り返し表面にかけて火を入れるフレンチの技法で、皮を香ばしく焼き上げる。

    ソースは主張し過ぎず、けれども弱すぎず。信州黄金シャモの持ち味を理解しているからこその絶妙な加減。

    肉、ソース、添えた野菜。すべてが過不足なく、一体となっておいしさを伝える。

    Photographs:TSUTOMU HARA
    Text:NATSUKI SHIGIHARA
    (supported by 長野県大町市)

    その味わい、軽やかにして、濃醇。輝き始めた石川県独自の新品種酒米「百万石乃白」。前編[Bon appétit Ishikawa !/石川県]

    ずらりと並んだ石川県の日本酒を前に、ワインテイスターの大越基裕氏。どれも原料に新品種酒米・百万石乃白を使った、デビュー間もない日本酒だ。
    ※写真の百万石乃白を使った日本酒は、2021年2月時点で入手できたものです。

    百万石乃白新しい酒米「百万石乃白」で醸された未知なる日本酒の数々。

    日本酒の新酒の搾りが最盛期を迎えた2月、とある共通点をもった日本酒が一堂に集められました。ずらりと並んだ21種の日本酒はすべて、石川県にある酒蔵が酒米「百万石乃白」を原料に使って醸したもの。2020年から本格的な醸造が始まったばかりの、まだあまり世に知られていない1本が勢ぞろいしています。

    これらを一挙に唎(き)いてみようというのは大越基裕氏。フランスでワイン醸造を学び、グランメゾンでシェフソムリエを務めた経験を持つ、日本のトップソムリエのひとりです。現在は、モダンベトナム料理とファインワインの店『An Di』を経営しながら、ワインテイスターとしてレストランや飲料メニューの監修やプロデュース、商品開発などで活躍中。日本酒にも精通しており、国際的な日本酒コンクールでの審査員の経験もあります。造り手、レストランサービス、カスタマー…さまざまな視点で酒類を見つめることができるプロフェッショナルです。

    「21本を一気にテイスティングすることによって、まだベールに包まれた百万石乃白という新しい酒米の輪郭が浮かび上がってくることでしょう」と、大越氏は期待します。1本につき酒、水、酒と2回の試飲で一口の酒をじっくりと味わいながら、パソコンに素早くメモを打ち込んでいきます。時折、酒を口に運ぶや否や大越氏の目の色が変わるような瞬間が見られました。そのような銘柄では、とりわけ入念にテイスティングを行われていきます。

    試飲しながら、香りの種類や味わいの特徴、バランス、持っている世界観などを素早くメモしていく。

    『ONESTORY』フードキュレーターの宮内隼人も大越氏と共にすべての酒を唎いた。

    百万石乃白通底する “軽やかさ”、きらりと光る個性。

    テイスティングを終えた大越氏は開口一番、率直な感想を語ります。
    「全体としては、ミッドパレット(最初に感じる味わいの次に感じる中間部の味わい)から余韻に向かって軽やかなイメージがあるように思います。旨口系のリッチな口当たりの酒を主に造っている蔵であっても、うま味とともに軽やかな終わり方をしてくれる 。心地よい抜け感がある“軽やかなお米”という印象を受けました」

    百万石乃白の特長の一つが、他の酒米と比べて元々のタンパク質含有量が少ないこと。このことにより、雑味の原因となるアミノ酸が少なくなり、雑味の少ないきれいな酒を造りやすくなります。もう一つの特長は、高精白できること。玄米の表面をたくさん削っても割れにくく、雑味の元となるアミノ酸が多く含まれる表層部分を取り除くことができる。この二つの特長の相乗効果で、さらに、他の酒米に比べアミノ酸が少なくなり、すっきりした味わいに仕上げやすい酒米と言えます。大越氏は百万石乃白のポテンシャルを次のようにまとめています。

    「百万石乃白は、軽やかさが光る一方、おそらくタンパク質含有量が低いことにより、主にミッドパレットの厚みが控えめになりがちという傾向もあるように感じました。厚みを出すためにうま味を無理に出そうとすると、キレが損なわれて味わいが重くなりがちです。軽やかな印象はそのままに、うま味は優しく広がり、輪郭が整っている。心地よくキレていく余韻と共に全体がうまくまとまっている。これが百万石乃白のポテンシャルを高次元に発揮させたお酒のイメージではないかと思います」

    以下、大越氏の具体的なコメントとともに4本を紹介します。

    天狗舞 COMON 純米大吟醸
    精米歩合:50%
    アルコール度数:15%
    車多酒造

    「元々味わいをきっちり出すことに長けている蔵元。天狗舞らしいキャラメル系やシリアル系の香り、完熟したバナナのような芳醇な香りを出しつつも、味わいにフレッシュ感を残していて軽やか。うま味と爽やかさのバランスが秀逸です。一般的には純米大吟醸の酒では明確な酸味が出てこないことが多い中、心地いい酸も感じられる。この酸があるおかげで、うま味のキレもよくなっています。天狗舞らしい力強い味わいと百万石乃白のデリケートさを見事にクロスさせています」

    手取川 純米大吟醸原酒 百万石乃白
    精米歩合:50%
    アルコール度数:15%
    吉田酒造店

    「グリーンアップルに加えてほんのりストロベリーのような香りが印象的なのですが、手取川の素晴らしい点は、この香りの出し方をきちんと抑制し味わいとバランスを取っていること。グリーンアップル系の香りを出す場合、日本酒はやや甘い味わいの印象に仕上げられることが多いので、このような軽やかさが持ち味のお米とバランスを取るために、香りのコントロールがひときわ重要となります。この手取川は香りが絶妙に抑えられていて見事に軽やかであり、ミネラリーなニュアンスまである。香り、軽やかさ、ミネラル感が1本の線にうまくまとめられていて、非常にタイト、ピュア、そしてエレガントなストラクチャー(骨格)に仕上がっていると感じました」

    奥能登の白菊 百万石乃白 純米吟醸
    精米歩合:55%
    アルコール度数:15%
    白藤酒造店

    「どこまでも、とことん穏やか。蒸しあげたお米やバナナのやさしい香り。口に入れた瞬間からソフトで、ミッドパレット、余韻に至るまでやさしく穏やかで、軽やかなタッチで終わっていきます。前出の手取川とは対照的に、明確な味わいのストラクチャーが出現するのではなく、ふんわりとやさしい世界観に包まれます。百万石乃白の酒米としての本質、純粋な部分を、もしかすると最もうまく捉えている造りなのかもしれません」

    遊穂 生もと 純米 百万石乃白
    精米歩合:68%
    アルコール度数:14%
    御祖酒造

    「今回の21本の中で最も個性的と言えます。キャラメル系、シリアル系、完熟バナナ、パン・デピス(香辛料が入ったライ麦パン)などの香りが感じられます。非常に強いうま味と酸味のコントラストが表現されています。うま酸っぱさが際立つ世界観でありながら、最後は穏やかにキレていく。遊穂はうま酸っぱい世界観を極めて高度につくり上げる蔵です。もっとうま味や酸味を押し出した酒もありますが、このように極めて軽やかに終わっていくのは、百万石乃白という酒米ならではの個性が生かされているからでしょう。強く、芳醇な味わいを押し出す遊穂スタイルが、百万石乃白によってライトに表現されているという点で、新たなとても魅力的な仕上がりになっています」

    百万石乃白を使った日本酒のテイスティングを通じて、「日本酒は農作物である」という認識を新たにしたと大越氏は話します。
    「こうして百万石乃白を共通項に横断的に味わったことで、各蔵が元々持っている個性の奥に、百万石乃白が生み出す世界観が浮かび上がってきました。石川県産の独自の米を地元の蔵がみんなで使い、さまざまな日本酒が生み出されていく。これにより、石川の土地で、石川の米で、石川の水で、石川の人の力で醸された日本酒は、なんとなくこんなおいしさであると提示できたのです。元来、日本酒は農作物であり、その土地の恵みが凝縮されたもの。その個性を味わう喜びをあらためて実感しました」

    「百万石乃白は軽やかな世界観を展開する酒米という本質が見えてきた」と大越氏。

    1976年、北海道生まれ。国際ソムリエ協会インターナショナルA.S.Iソムリエ・ディプロマ。渡仏後2001年より『銀座レカン』ソムリエ、2006年より約3年間フランスにてブドウ栽培・ワイン醸造を学ぶ。帰国後同店シェフソムリエに就任。2013年、ワインテイスター/ワインディレクターとして独立。2017年にモダンベトナム料理店『An Di』オープン。世界各国を回りながら、最新情報をもとにコンサルタント、講演、執筆などを通じてワインの本質を伝えている。日本酒や焼酎にも精通しており、ワインと日本酒を組み合わせた食事とのマリアージュにも定評がある。

    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:KOH WATANABE
    (supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

    石川県食のポータルサイト
    いしかわ百万石食鑑
    https://ishikawafood.com/

    その味わい、軽やかにして、濃醇。輝き始めた石川県独自の新品種酒米「百万石乃白」。前編[Bon appétit Ishikawa !/石川県]

    ずらりと並んだ石川県の日本酒を前に、ワインテイスターの大越基裕氏。どれも原料に新品種酒米・百万石乃白を使った、デビュー間もない日本酒だ。
    ※写真の百万石乃白を使った日本酒は、2021年2月時点で入手できたものです。

    百万石乃白新しい酒米「百万石乃白」で醸された未知なる日本酒の数々。

    日本酒の新酒の搾りが最盛期を迎えた2月、とある共通点をもった日本酒が一堂に集められました。ずらりと並んだ21種の日本酒はすべて、石川県にある酒蔵が酒米「百万石乃白」を原料に使って醸したもの。2020年から本格的な醸造が始まったばかりの、まだあまり世に知られていない1本が勢ぞろいしています。

    これらを一挙に唎(き)いてみようというのは大越基裕氏。フランスでワイン醸造を学び、グランメゾンでシェフソムリエを務めた経験を持つ、日本のトップソムリエのひとりです。現在は、モダンベトナム料理とファインワインの店『An Di』を経営しながら、ワインテイスターとしてレストランや飲料メニューの監修やプロデュース、商品開発などで活躍中。日本酒にも精通しており、国際的な日本酒コンクールでの審査員の経験もあります。造り手、レストランサービス、カスタマー…さまざまな視点で酒類を見つめることができるプロフェッショナルです。

    「21本を一気にテイスティングすることによって、まだベールに包まれた百万石乃白という新しい酒米の輪郭が浮かび上がってくることでしょう」と、大越氏は期待します。1本につき酒、水、酒と2回の試飲で一口の酒をじっくりと味わいながら、パソコンに素早くメモを打ち込んでいきます。時折、酒を口に運ぶや否や大越氏の目の色が変わるような瞬間が見られました。そのような銘柄では、とりわけ入念にテイスティングを行われていきます。

    試飲しながら、香りの種類や味わいの特徴、バランス、持っている世界観などを素早くメモしていく。

    『ONESTORY』フードキュレーターの宮内隼人も大越氏と共にすべての酒を唎いた。

    百万石乃白通底する “軽やかさ”、きらりと光る個性。

    テイスティングを終えた大越氏は開口一番、率直な感想を語ります。
    「全体としては、ミッドパレット(最初に感じる味わいの次に感じる中間部の味わい)から余韻に向かって軽やかなイメージがあるように思います。旨口系のリッチな口当たりの酒を主に造っている蔵であっても、うま味とともに軽やかな終わり方をしてくれる 。心地よい抜け感がある“軽やかなお米”という印象を受けました」

    百万石乃白の特長の一つが、他の酒米と比べて元々のタンパク質含有量が少ないこと。このことにより、雑味の原因となるアミノ酸が少なくなり、雑味の少ないきれいな酒を造りやすくなります。もう一つの特長は、高精白できること。玄米の表面をたくさん削っても割れにくく、雑味の元となるアミノ酸が多く含まれる表層部分を取り除くことができる。この二つの特長の相乗効果で、さらに、他の酒米に比べアミノ酸が少なくなり、すっきりした味わいに仕上げやすい酒米と言えます。大越氏は百万石乃白のポテンシャルを次のようにまとめています。

    「百万石乃白は、軽やかさが光る一方、おそらくタンパク質含有量が低いことにより、主にミッドパレットの厚みが控えめになりがちという傾向もあるように感じました。厚みを出すためにうま味を無理に出そうとすると、キレが損なわれて味わいが重くなりがちです。軽やかな印象はそのままに、うま味は優しく広がり、輪郭が整っている。心地よくキレていく余韻と共に全体がうまくまとまっている。これが百万石乃白のポテンシャルを高次元に発揮させたお酒のイメージではないかと思います」

    以下、大越氏の具体的なコメントとともに4本を紹介します。

    天狗舞 COMON 純米大吟醸
    精米歩合:50%
    アルコール度数:15%
    車多酒造

    「元々味わいをきっちり出すことに長けている蔵元。天狗舞らしいキャラメル系やシリアル系の香り、完熟したバナナのような芳醇な香りを出しつつも、味わいにフレッシュ感を残していて軽やか。うま味と爽やかさのバランスが秀逸です。一般的には純米大吟醸の酒では明確な酸味が出てこないことが多い中、心地いい酸も感じられる。この酸があるおかげで、うま味のキレもよくなっています。天狗舞らしい力強い味わいと百万石乃白のデリケートさを見事にクロスさせています」

    手取川 純米大吟醸原酒 百万石乃白
    精米歩合:50%
    アルコール度数:15%
    吉田酒造店

    「グリーンアップルに加えてほんのりストロベリーのような香りが印象的なのですが、手取川の素晴らしい点は、この香りの出し方をきちんと抑制し味わいとバランスを取っていること。グリーンアップル系の香りを出す場合、日本酒はやや甘い味わいの印象に仕上げられることが多いので、このような軽やかさが持ち味のお米とバランスを取るために、香りのコントロールがひときわ重要となります。この手取川は香りが絶妙に抑えられていて見事に軽やかであり、ミネラリーなニュアンスまである。香り、軽やかさ、ミネラル感が1本の線にうまくまとめられていて、非常にタイト、ピュア、そしてエレガントなストラクチャー(骨格)に仕上がっていると感じました」

    奥能登の白菊 百万石乃白 純米吟醸
    精米歩合:55%
    アルコール度数:15%
    白藤酒造店

    「どこまでも、とことん穏やか。蒸しあげたお米やバナナのやさしい香り。口に入れた瞬間からソフトで、ミッドパレット、余韻に至るまでやさしく穏やかで、軽やかなタッチで終わっていきます。前出の手取川とは対照的に、明確な味わいのストラクチャーが出現するのではなく、ふんわりとやさしい世界観に包まれます。百万石乃白の酒米としての本質、純粋な部分を、もしかすると最もうまく捉えている造りなのかもしれません」

    遊穂 生もと 純米 百万石乃白
    精米歩合:68%
    アルコール度数:14%
    御祖酒造

    「今回の21本の中で最も個性的と言えます。キャラメル系、シリアル系、完熟バナナ、パン・デピス(香辛料が入ったライ麦パン)などの香りが感じられます。非常に強いうま味と酸味のコントラストが表現されています。うま酸っぱさが際立つ世界観でありながら、最後は穏やかにキレていく。遊穂はうま酸っぱい世界観を極めて高度につくり上げる蔵です。もっとうま味や酸味を押し出した酒もありますが、このように極めて軽やかに終わっていくのは、百万石乃白という酒米ならではの個性が生かされているからでしょう。強く、芳醇な味わいを押し出す遊穂スタイルが、百万石乃白によってライトに表現されているという点で、新たなとても魅力的な仕上がりになっています」

    百万石乃白を使った日本酒のテイスティングを通じて、「日本酒は農作物である」という認識を新たにしたと大越氏は話します。
    「こうして百万石乃白を共通項に横断的に味わったことで、各蔵が元々持っている個性の奥に、百万石乃白が生み出す世界観が浮かび上がってきました。石川県産の独自の米を地元の蔵がみんなで使い、さまざまな日本酒が生み出されていく。これにより、石川の土地で、石川の米で、石川の水で、石川の人の力で醸された日本酒は、なんとなくこんなおいしさであると提示できたのです。元来、日本酒は農作物であり、その土地の恵みが凝縮されたもの。その個性を味わう喜びをあらためて実感しました」

    「百万石乃白は軽やかな世界観を展開する酒米という本質が見えてきた」と大越氏。

    1976年、北海道生まれ。国際ソムリエ協会インターナショナルA.S.Iソムリエ・ディプロマ。渡仏後2001年より『銀座レカン』ソムリエ、2006年より約3年間フランスにてブドウ栽培・ワイン醸造を学ぶ。帰国後同店シェフソムリエに就任。2013年、ワインテイスター/ワインディレクターとして独立。2017年にモダンベトナム料理店『An Di』オープン。世界各国を回りながら、最新情報をもとにコンサルタント、講演、執筆などを通じてワインの本質を伝えている。日本酒や焼酎にも精通しており、ワインと日本酒を組み合わせた食事とのマリアージュにも定評がある。

    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:KOH WATANABE
    (supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

    石川県食のポータルサイト
    いしかわ百万石食鑑
    https://ishikawafood.com/

    11年の歳月をかけて誕生した酒米「百万石乃白」の秘めたるチカラ。後編[Bon appétit Ishikawa !/石川県]

    百万石乃白を使って3回の醸造を経験した吉田酒造店の社長で杜氏の吉田泰之氏。山田錦に匹敵する県産酒米の登場を喜ぶ。

    百万石乃白「石川県産米で大吟醸酒を」の願いに応えるために。

    冬場の寒冷な気候や白山水系の清冽(せいれつ)な地下水脈など酒造りに適した環境に恵まれる石川県。日本の代表的な杜氏集団のひとつである能登杜氏を擁する酒どころで、37の蔵が酒造りを連綿と続けています。百万石乃白は県内の蔵元や杜氏たち待望の酒米。その誕生の秘密を探るために、金沢市才田町にある石川県農林総合研究センター農業試験場を訪ねました。百万石乃白の品種開発の歴史は、2005年までさかのぼります。

    当時は、日本酒の消費量が減少していく中、地域の独自性を打ち出した付加価値の高い日本酒を造るために、地域固有の酒米を求める声が大きくなってきた頃。石川県内で造られる大吟醸酒は、ほとんどが兵庫県産山田錦を使ったものでした。米の表面を50%以下に削って使うことが条件となる大吟醸酒。大粒で割れにくい山田錦は、「酒米の王様」として吟醸酒カテゴリーに君臨しています。新品種開発のスタートは、石川県酒造組合連合会からあらためて「石川県産の酒米で大吟醸酒を造りたい」との要請を受けたのがきっかけ。「50%まで精米しても割れにくいこと」と明解な育種目標が掲げられました。

    百万石乃白の開発を担当した石川県農林総合研究センター農業試験場 育種グループ主任研究員・畑中博英氏。

    農業試験場では毎年約50組の米の交配を行なっていると、育種グループ主任研究員・畑中博英氏は話します。
    「米の中心にある白い部分を心白といいますが、この部分がもろいため、大吟醸酒を造る時は心白近くまで削るのでどうしても割れやすくなってしまいます。この問題を克服するために、交配ではとにかく心白が小さいものを選抜していきました。有望な交配の組み合わせを入念に検討しても、その結果が出るのは1年後。優良な組み合わせが見えたら、試験醸造を行いながら、さらに選抜を繰り返していくので、長い年月がかかります。割れにくくても、収穫量が少なかったり、酒にした時の味がいまいちだったりという問題もありました。結局、百万石乃白の開発には実に11年を要しました」

    大粒の酒米「ひとはな」と大吟醸酒向けの酒米「新潟酒72号」との掛け合わせにより、石川県独自の酒米「'05酒系83」が誕生。これに山田錦を交配することで、のちに百万石乃白と命名される理想形「石川酒68号」の産出に至りました。肝心の“割れ”について農業試験場の分析では、50%精米時で割れるのは1割以下と、山田錦の2割以下を凌ぎます。さらに、収穫量も山田錦を上回り、草丈は山田錦よりも1割ほど低いことから台風などで倒れにくく、石川県での栽培にも適しています。

    「実は私は体質的にお酒が飲めないので、香りをチェックすることしかできないのですが、試験醸造で『良い酒ができた』という声が上がった時には、本当にうれしかったですね。ようやく一人前の酒米に、うまい酒に育ったんだなと」

    2018年に石川県内10の蔵が百万石乃白の使用を開始し、2019年には20蔵、2020年には24蔵に拡大。多くの酒蔵が百万石万白の醸造に挑戦しており、今後、県産酒米としての定着が期待されています。

    精米後の百万石乃白。公募によって決まった愛称の由来は、その美しい白さ。

    百万石乃白適切な栽培法を確立するために、田んぼでの奮闘は続く。

    古来、米作りが盛んな加賀平野。そのほぼ中央に位置する白山市山島地区で、稲作・麦・大豆の農業を営む林勝洋氏は、酒米作りにも積極的に取り組んでいます。夏場、この地では、手取川が冷涼な空気を運ぶことで夜から朝にかけての気温がぐっと下がり、良質な米ができる条件である昼夜の大きな寒暖差が生まれています。酒米として山田錦に次いで全国2位の収穫量のある五百万石、吟醸酒向けに先行開発された石川県独自の酒米・石川門に加え、3年前からは百万石乃白の作付けも開始。2020年7月に設立された生産者団体「百万石乃白」研究会の会長も務めています。百万石乃白の4作目となる今年は、3.3ヘクタールに田植えしました。品種の特性が少しずつわかってきたと話します。

    「百万石乃白の稲は軸が太いのが特徴です。そして軸は根元から広がり気味に伸びて、穂がつく頃には一株の束がバサッと広がっています。石川門や五百万石よりも収穫期が1ヵ月ほど遅い晩生(おくて)の品種なので、実のつまり方もしっかり。稲穂の形としてはやや不格好ですが、そのおかげで強い風でも倒れにくく、高い収穫量をもたらしています」

    「百万石乃白」研究会では、25の生産者が、より適切な栽培方法や収穫後の管理方法などについて情報交換しながら栽培しています。目下の課題は、肥料の選定と施肥のタイミングの見極めです。酒蔵が百万石乃白を安心して使えるように、栽培地域や生産者による品質のブレをなくし、いち早く安定供給できる体制を整えることを目指しています。

    林氏は、夏場は米作り、冬場では近隣にある吉田酒造店の蔵人として酒造りに従事した経験もあります。酒米を作るには、それを使う現場を知りたいという思いがあったからだと話します。
    「我々百姓ってのは、ついつい自分が作りたいもんばかり作ってしまうもんで。それを意識的に変えていかんと。何が求められて、どんな農業をしていかねばならんのか? そこにちゃんと向き合って挑戦するのがおもしろい。新品種の酒米を作るのは正直、農業経営的にはまだ割りに合わなくて、厳しいものがある。でも、やる。なぜなら、おもしろいからですよ」

    林勝洋氏に百万石乃白の田んぼを案内してもらうonestoryフードキュレーターの宮内隼人。極力農薬を使わず、土壌改良に能登産牡蠣の殻を利用するなど、そこに隠れた工夫や手間ひまの一端を知った。

    百万石乃白は軸が太く、広がって伸びるのが特徴。成長しても草丈が短く、倒れにくい点も評価が高い。

    26歳の結婚を機に農業指導員から脱サラ就農した林氏。農業指導を行う中で、白山市は全国屈指の稲作の好適地と判断。「ここでやっていけなきゃダメ」と農家への転身を決断したという。

    百万石乃白ここにしかない水、ここでしかとれない米、ここにしかない酒造りの技を。

    霊峰白山を間近に望む穀倉地帯、手取川扇状地で150年に渡って酒を造り続ける吉田酒造店。大越基裕氏も高く評価した「手取川 純米大吟醸原酒 百万石乃白」を醸す酒蔵です。迎えてくれたのは、昨年7代目社長に就任した吉田泰之氏。山形の出羽桜酒造で修行し、10年前から家業での酒造りに取り組み、現在は杜氏も務めています。

    酒米には伝統的に山田錦と五百万石を使い、2008年からは県産の石川門、そして2018年からは百万石乃白を積極的に使って酒造りをしています。酒米は、精米時の割れやすさもさることながら、発酵によって溶けて味や香りが出るかどうか、雑菌に対する強さなど特徴は千差万別。吉田氏は、酒米の個性について学校のクラスを例にして話します。

    「山田錦はスーパースター。勉強は一番、スポーツ万能、健康優良児の人気者。五百万石は成績は上位だけど、苦手教科も少しある、体育も脚は速いけど球技は苦手みたいな。でも、サポート役としては非常に優秀で、山田錦が学級委員長なら、五百万石は副委員長として力を発揮してくれる。実際、麹米として使うと素晴らしい働きをしてくれます。石川門は割れやすいため、雑菌に汚染されやすく、日本酒ではタブーとされるスモーキーな香りを発しやすい酒米。勉強も運動も苦手で気難しい生徒ですが、実はアートや音楽の才能がずば抜けている天才肌。扱い方によって大化けするタイプです。そして、百万石乃白は注目の転校生。勉強でもスポーツでもみんなをあっと驚かせているけれど、まだミステリアスな存在。どの子も、それぞれにかわいいんですよ」

    銘酒「手取川」と「吉田蔵」を醸す吉田酒造店。山廃仕込みを中心とする伝統的な酒造りを守り、2020年に創業150周年を迎えた。

    吉田酒造店では、蔵人たちが蔵周辺の田んぼで酒米を育てている。初夏、百万石乃白は青々とした葉を広げつつあった。

    吉田酒造店では、兵庫県産山田錦のほか、石川県産の五百万石、石川門、百万石乃白の4種の酒米を使用。自社精米によって最適な磨き方も追求している。

    この10年ほどで、全国的に日本酒の味は格段に向上したと吉田氏。しかし、その背景を知っていると、手放しでは喜べないと話します。酒造りから流通に至るまでの冷蔵技術の発達、発酵を促進させる添加物の使用、水質を醸造しやすい構成に変えるテクノロジーなど、多大なエネルギーを要し、地域で培われた酒造りの伝統技術を否定する手法も少なくないからです。極端な話、優れた酒米を取り寄せ、水質を調整し、最新技術と電力をふんだんに使えば、東京都心のビルでも高品質な酒は造れます。でも、果たしてそこに地酒としての価値はあるのでしょうか。何を大事にして、何を変えていくべきか? 吉田酒造店は原点回帰しながら、地域に根差す蔵としてのあるべき姿を模索しています。

    「私たちにとって水は命。かつて暴れ川と呼ばれた手取川が山の岩石を平地に運んだことから、この地でくみ上げる地下水はミネラル感豊富な中硬水となります。この水を守っていくためには、森や田んぼが健全に保たれていくことが必須です。田んぼが次々と工場やショッピングモールに変わっていく状況に危機感を覚え、7年前に地元の酒米をさらに積極的に使っていくようになりました。百万石乃白はこの地の気候風土に適しているので、持続可能性の観点でも理想的です。そして、百万石乃白を使った3回目の造りを経て、この地の水や私たちが大事にしている伝統的な製法との相性のよさも見えてきました。ここにしかない水、ここでしかとれない米、ここにしかない酒造りの技で、次世代の地酒を造っていきたいと思います」

    いまだ謎めく転校生、百万石乃白の真価が問われるのは、これからです。

    百万石乃白や石川門を使った最新の酒をテイスティング。アルコール度数を13%程度に抑えた食事に寄り添う酒の開発に注力している。「百万石乃白のバランスのよさ、石川門の自然でやさしい甘味、どちらも甲乙つけがたい」と宮内。

    工場内の貯蔵庫などには冷たい地下水を利用した井水式クーラーを導入して、極力電力を使わない操業を追求。今年、全電力は再生可能エネルギー由来に変えた。「アイデンティティである水、米を見つめ直し、持続可能な酒造りを目指していきたい」と吉田氏。

    住所:石川県白山市安吉町41 MAP
    電話:076-276-3311
    https://tedorigawa.com/


    Photographs:SHINJO ARAI
    Text:KOH WATANABE
    (supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

    石川県食のポータルサイト
    いしかわ百万石食鑑
    https://ishikawafood.com/