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【2018年】業界別イノベーション最新事例まとめ

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ユーザーの心を掴むヒントは“ハイパー・パーソナライゼーション“にあり

hyper-personalization
hyper-personalizationGoogleによると、過去2年間でモバイル上でのGoogle検索内において”Best”という単語がなんと80%も増加したという。 またアクセンチュアによると、アメリカとイギリスにて1,500人のユーザーを対象に行った調査でユーザーの75%はパーソナライズされた情報やコンテンツを提供してくれるブランドから商品を購入する傾向にあることがわかってきた。 この2つのレポート結果から言えることは、ユーザーがオンラインで買い物をする際、購入前にベストなものをリサーチすることが当たり前になった、そしてユーザーはパーソナライズされたコンテンツに価値・魅力を感じるようになったということだ。 つまり、スマホが普及して欲しい情報を簡単に手に入れることができるようになったからこそ、ユーザーは商品購入前の情報収集を大切にし、より満足のいく購入体験(購入前から後まで)を求めるようになったのかもしれない。 ということは、ユーザーにオンリーワンなコンテンツを提供することさえできれば、商品購入までの道のりはぐっと縮まるはず。そうしてユーザー体験を向上させることで、ひいてはブランドへのロイヤリティ醸成にもつながるだろう。 では実際に成功しているブランドはどのように「オンリーワンなコンテンツ」をユーザーに提供しているのだろうか? 関連記事:未来のユーザー体験をつくり出す「未来予測」のすすめ

グローバル企業に学ぶ”一歩進んだコンテンツ作り”

まずは以下のグラフを見てもらいたい。これは企業が実践しているパーソナライゼーションの領域と収益の相関を示したもので、多くの企業が実践しているのはSingle Message Mailing(簡素なメッセージでのメール配信)からSegmentation Rules Based(ターゲットのセグメント)に留まることがわかる。 それに比べて収益が好調なAmazonやStarbucks、Spotifyが行っているのは、さらに一歩踏み込んだPredictive Personalization(ユーザー行動を予期したパーソナライゼーション)だ。ユーザー行動を制するものはビジネスも制するのかもしれない。 personalization 画像転載元:こちらの記事より それではグラフにも出ているAmazonとSpotifyの事例を見てみよう。

1. Amazon:レコメンデーションで潜在的な購買欲を掻き立てる

Amazonはユーザー行動のデータを巧みに操り、ユーザー1人1人に合ったレコメンデーションのシステムを生み出した。一番売れている商品をランキング形式で表示したり、新着商品のラインナップを表示する一方的なレコメンデーションとは異なり、ユーザーが起こした行動を元にコンテンツをキュレートしていくので、よりユーザーのニーズに基づく。 例えば、過去にPumaの靴を購入し、且つ検索クエリに「Puma」があると下記のようなレコメンデーションがメールで届くようになっている。これにより、ユーザーの潜在的な興味や購買欲を掻き立て、商品の購入に繋げることができるのだ。 amazon case study 画像転載元:こちらの記事より それぞれのユーザー行動をマッチング AmazonはItem-to-item collaborative filtering(アイテムベースの協調フィルタリング)というレコメンデーション・エンジンを生み出したことでも有名だが、実はAmazonのコンバージョンの35%以上はこのエンジンからきている。 この機能を簡単に説明すると、①似ているユーザー同士をマッチさせるのではなく、②購入/閲覧される商品の類似パターンをマッチさせてレコメンデーションを作るというもの。下記の画像を参照していただきたい。 ① この商品を買った人はこんな商品も買っています ➡︎あなたと似た関心を持つユーザーをマッチさせてレコメンド amazon2 ② あなたの購入品に基づくおすすめの商品 ➡︎あなたが購入した商品と似ている商品をマッチさせてレコメンド amazon ①だと日々趣味や嗜好が変わるユーザーの変動を追うことになるのに対し、②は商品という普遍的なモノを組み合わせることになるので、より正確なレコメンドになるということ。自分が欲しい商品だけが並び、そこから選ぶことができるMeコマースの時代が着実に浸透していっているのかもしれない。

2. Spotify:ユーザー行動と自然言語をマッチさせたオンリーワンなプレイリスト

1億4千万人のアクティブユーザーを抱える音楽ストリーミングプラットフォームSpotifyが生み出したハイパー・パーソナライゼーションは、AIを活用してユーザー好みの曲をキュレートした”あなただけのプレイリスト”Dicover Weeklyだ。 discovery week 一昔前は音楽のエキスパート達によってマニュアルでキュレートされたプレイリストや曲に関連するタグ(Hiphopなど)を付けて同じタグを持つ曲をマッチさせるような技術があったが、ユーザーの潜在的なニーズを引き出すまでには至らなかった。 しかし、Spotifyが作ったDicover Weeklyは多数のアルゴリズムを組み合わせることにより、ユーザー好みの曲をレコメンドすることができる。 spotify Discover Weeklyの仕組みを図式化したもの(画像転載元:Quartzの記事より) 複数のアルゴリズムの中でも特に注目してもらいたいのが以下の2つである。 Collaborative Filtering ユーザーの視聴記録、プレイリストへの追加、アーティストページへの移動といったユーザ行動を元に似ている行動パターンを取るユーザー同士をマッチさせ、”まだ聞いたことないけど聞いたら好きになるであろう曲”をレコメンドするアルゴリズム。 NLP(自然言語処理) Spotifyは日々、AIを通してそれぞれの曲やアーティストに付随する自然言語(人間が日常的に用いる言語)を集めている。具体的には検索エンジン、ブログ、SNSなどで使われている言葉を細かくデータ取りして、曲同士をマッチさせる時の指標にしている。 これらのアルゴリズムがあって初めてユーザー好みのコンテンツを提供することができるのだ。SpotifyがDiscover Weeklyだけで70億以上(2016年時点)もの曲のストリーミング実績を持つのも頷ける。 なお、Spotifyは昨年新たなレコメンドプレイリストTime Capsuleをローンチしている。これは16歳から85歳までのユーザーに昔聴いていた懐メロをレコメンドしてくれるもので、アカウント登録時の生年月日やユーザー行動のデータを元に選曲しているようだ。 このようにSpotifyは現在だけではなく過去と未来という別の時間軸でもコンテンツを提供することで、継続的にユーザーの興味を掻き立てることができる。

ハイパー・パーソナライゼーション=究極のユーザー体験

上記の事例のように、ターゲットユーザーの興味や関心、行動データを元に最適化した情報を提供することはハイパー・パーソナライゼーションと呼ばれている。 では従来のパーソナライゼーションとの違いは何だろうか。 <パーソナライゼーションの具体例> ターゲットユーザーの名前を宛名にしたニュースレターを配信する、SNSの投稿を地域や言語で分けて投稿するなど、最低限の情報量(ユーザーの基本情報や趣味、関心など)だけでユーザーに合ったコンテンツを提供する。 <ハイパー・パーソナライゼーションの具体例> ユーザーに関する最低限の情報+ユーザーの行動を把握してよりユーザー観点に近いコンテンツを提供する。例えば、あなたはオンラインショッピングでBというブランドの靴を見ているとする。 【行動①】過去に同じブランドの靴の検索・購入履歴がある 【行動②】オンラインショッピングは大体19時〜21時に買う傾向にある この2つの行動からブランドのBがあなたに対して19時〜21時の間にディスカウントの案内をプッシュ通知で送るというのがハイパー・パーソナライゼーションだ。ユーザーが提供する情報だけではなくユーザーの行動も上手く活用することで、ユーザーは「そうそう、こういう商品が欲しかった!」と感じ、彼らの心をくすぐることができるのだ。

まとめ

ハイパー・パーソナライゼーションを極めるためにまず必要なこと、それは多角的な視点を持ちユーザーを理解すること、これに尽きると思う。ユーザーの日々の動きや見るもの、触れるもの、感じることに目を向け、様々な仮説を立てて実際に検証する、この一見簡単なように思えて奥が深いプロセスをどう活用していくかが鍵となる。 弊社では、そんなサービスデザインを通して日本企業のグローバル展開を支援しているので、今回の記事が新たなサービス/プロダクト開発プロジェクトに関わる方々にとって有益な情報であると有り難い。 参考:

2018年のIT動向を読み解く7つのキーワード

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先週ラスベガスでCES 2018が開催され、今年もスマート家電や自動車、IoT製品など多岐にわたるテクノロジーが公表された。 以前リリースした【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジーでも紹介させて頂いたが、2017年はIoTとスマートホームテクノロジー、ブロックチェーン、機械学習が世界中で注目を浴びたが、今年はテクノロジーの領域が更に拡大しているのかもしれない。 そこで今回は2018年に抑えておくべきITの重要キーワードを7つご紹介したい。

キーワード①:すべてのものがIoTとなる

BI Intelligenceのレポートによると、2020年までに34億ものデバイスがインターネットに繋がること、そして5年の間にIoT(Interne of Things)に支出額が6兆ドルになることが予測されている。 既にスマートウォッチやスマートスピーカー、スマート家電などテクノロジーを駆使したプロダクトが世に出回っているが、今後は鍵や美容製品、ペット用品などあらゆるものがインターネットに繋がれていき、私たちの生活になくてはならない存在になるだろう。

【事例】Petrics

今年のCESでも注目されたPetricsのペット用スマートベッドは、犬や猫といったペットの健康状態を管理することができる。米国では自宅で飼われている犬や猫の数は8,000万匹ほどいるとされ、そのうちの53%が肥満というデータがある。 この事態を解決するために開発されたPetricsのスマートベッドは、ペットがベッドの上に乗ると運動量や体重といった健康状態を把握することができる。また、連動アプリを使用すると健康状態に合った食事量や運動量を知ることができるので、効果的なダイエットが可能になる。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=gjCrWGS7LfI[/embed]

キーワード②:ブロックチェーンの台頭

ブロックチェーンの概要に関してはブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界でも紹介させて頂いたが、2018年はブロックチェーン技術が更に浸透していくだろう。 ブロックチェーン技術を応用した代表例にビットコインが挙げられるが、今後はフィンテックに限らず様々な業界で活用されると言われている。 現に、シリコンバレー発のゲーム会社Gameflipは昨年ブロックチェーンの活用を開始し、仮想通貨を扱うSparkleCoinはブロックチェーン技術を応用してAmazonやWalmart、Targetなどのリテールでオンラインショッピングすることを可能するなど、多くの企業がブロックチェーン技術を積極的に使い始めている。

キーワード③:VR・ARが本格的に普及していく

ここ2、3年でVR・ARの技術がどんどん進化していく中、2018年はVR・ARが様々な業界で主流となる可能性が高い。 市場調査企業IDCのリサーチによると、世界のVR・AR関連の支出は、2021年まで毎年倍増していくとの見方がある。具体的には、総支出額は2017年の114億ドルから2021年には2150億ドルに増加し、年間平均成長率は約113%になる見込みだ。 以前VR (仮想現実) を活用すると可能になる10の体験VR、AR、ドローンで体験する次世代アートとはでも紹介させて頂いたが、今年は今まで以上にVR・ARを身近に感じることになるのかもしれない。

【事例】IKEA Place

昨年の10月にIKEAがローンチしたARkit搭載アプリ『IKEA Place』を事例に挙げたい。既にご存知の方もいるかもしれないが、このアプリを使うことで家具の配置をバーチャル上で行うことができる。 すべての家具を空間に合わせて自動でサイズ調整、3D表示することで、今まで時間がかかっていた部屋のアレンジを効率的にするという画期的なアプリを開発した。また、実際にバーチャル上で作った部屋のアレンジを画像や動画で保存、シェアすることも可能。今後は、このように私達の生活によりVR・ARが浸透していくだろう。 ikea ↑上記画像はApp storeより引用

キーワード④:サブスクリプション・サービス(定期購読サービス)

Forbesによると、2017年4月時点でサブスクリプション・サービスをビジネスにしている会社のウェブサイトに訪問したユーザー数が3700万人であり、これは2014年と比較して800%増加していることが分かった。 最も訪問ユーザー数が多かった順に見ていくと、美容関係の商品を扱うIPSY、レシピ付きのフードデリバリーサービスを提供するBlue Apron、男性ユーザーをターゲットにしたシェービングアイテムを扱うDollar Shave Clubなど、様々な業界に亘っていることがわかる。 stat 2018年は従来の「必要に応じて商品を購入する」から「商品を月毎、週毎に届けてもらう」という新しい購買フローに変わっていくのかもしれない。 ↑上記グラフは、Forbesの記事より転載

キーワード⑤:更に高まるEコマースの需要

Forresterのレポートによると、昨年米国の成人ユーザーの83%がAmazonを利用していたことが分かった。このことから、オンラインで商品を購入するユーザーは益々増えていき、Eコマースの需要は今まで以上に高まると予想される。 また、アパレル業界を席巻する新勢力 – Direct to Consumer (D2C) で成功した7つのブランドでもご紹介したが、昨今アメリカのリテール業界ではD2C(Direct to customers)と呼ばれる、自ら企画・製造した商品を自社運営のECサイト上でのみ販売するビジネスモデルが注目されている。2018年はD2C型のスタートアップを目にすることが多くなるかもしれない。

キーワード⑥:ボットを介したインタラクション

2018年は様々な企業がユーザとのタッチポイントとしてボット(チャットボット)を導入していく傾向にある。Grand View Researchのレポートによると、グローバル規模で見るボットのCAGR(年平均成長率)は24.3%、マーケットサイズは2025年までに1.23億ドルとの見方がある。また、ボットを実際に使っているエンドユーザーの45%はボットでのインタラクションを好む傾向にあるというデータもある。 なお、ボットの役目はウェブサイトへの流入やカスタマーサポートだけではなくユーザーのインサイト獲得も挙げられるので、モバイルユーザーの属性や嗜好を知りたい企業はボットの導入を検討するべきなのかもしれない。 関連記事:【ユーザー視点で考えるAI】チャットボットのUX設計実験を通してわかったこと

【事例】Aerie(American Eagle Outfitters)

昨今アメリカの大手アパレル企業はボットでのカスタマーサポートを積極的に採用しており、AEO(American Eagle Outfitters)もそのうちの一つ。自社のランジェリーブランドAerie用にボットサービスをKik、Facebook Messengarで開発し、商品のレコメンドやお得なキャンペーン情報の配信、ヘルプセンターへの連動などを可能とした。 なお、アメリカのティーンエイジャーの40%はKikを利用しており、メッセンジャーユーザーの70%は25歳以下というデータがあることから、10代後半〜20代前半をメインターゲットにするAEOにとって、このボットサービスはユーザーとのエンゲージメントを高める効果的なインタラクションなのだろう。 aeo

キーワード⑦:AIや機械学習を駆使したサイバーセキュリティ

世界におけるサイバー攻撃による損失が2021年までに毎年6兆ドルという見方があるように、多くの企業がサイバー攻撃の驚異にさられようとしている。そんな中、2018年はサイバー攻撃対策にAI技術や機械学習が大いに役立つと考えられる。 その理由として、AIを使ったサイバー防御法を生み出すことで、後に機械学習で様々なパターンを覚えさせることができ、より良いサイバーセキュリティの仕組みを構築できるからだ。今後はAIの活用がサイバー攻撃対策の鍵となっていくだろう。 参考: ・"8 Tech Trends to Keep Your Eye on in 2018""Top 10 Technology Trends for 2018: IEEE Computer Society Predicts the Future of Tech"

2017年に終わりを告げたスタートアップ5社に学ぶ教訓

startupfail 2017
早いものでもう2017年を振り返る時期となった。年々スタートアップの勢いが増していく中、大手企業はスタートアップへの投資や共創、そして買収に力を注いでいる。それだけスタートアップの存在が大きいということなのかもしれない。 弊社CEO Brandon K. Hillが2017年スタートアップトレンド – ユニコーンの次はデカコーンでも述べているように、未上場で評価額が10億ドルを超えるスタートアップは”ユニコーン”、10億ドルどころか100億ドルを超える評価額を持つスタートアップは”デカコーン”と呼ばれ、大成功を収めている。 しかしここで忘れてはいけないのが、その一方で急成長を遂げたが何らかの要因によって終了したスタートアップも数多くあるということ。 今回は、資金調達に成功したのにもかかわらず残念ながら2017年に終わりを告げたスタートアップ5社と彼らから学ぶべき教訓を紹介したい。 関連記事:ベンチャー企業とスタートアップの違い

成長企業の70%が失敗に終わる

まず念頭に置いてほしいのがスタートアップの消滅率。サービスの終了に追い込まれた理由は様々だが、リサーチ会社CB Insightsは成長スタートアップの70%が失敗するというデータを公表している。たとえばB2Cのハードウェアスタートアップについてシードレベルのクラウドファンディングキャンペーンを見てみると、その97%が失敗に終わるようだ。 この事実を考えるとむしろ失敗するのは当たり前のようにも思える。Statistaによるとスタートアップが失敗する理由は20ほどあるが、最大の要因はNo market need、つまり「もうマーケットにニーズがない」(42%)となっている。 Infographic: The Top Reasons Startups Fail | Statista↑上記のグラフは、Statistaより引用 それではこの事実を踏まえ、実際に今年終了することになったスタートアップの事例を見ていこう。

1. Jawbone

サービス概要:フィットネス・トラッキング・デバイス 投資家:DST Global、SV Angel、Wells Fargo & Companyなど 資金調達額:$590.8M 1999年に創業しかつてはBluetoothスピーカーのメーカーとして人気を集め、2011年にウェアブル市場に進出して注目を集めたJawboneが2017年7月にその幕を閉じた。 最大の要因としてはウェアラブル市場規模の縮少と言っても過言ではないだろう。2013年から2014年にピークを迎えたウェアラブル系ビジネスだったが、当時話題となったGoogle Glassはそのわずか2年後の2015年に消費者向けの提供を終了し、クラウドファンディングの王者PebbleはFitbitに買収されてしまったのだ。 ウェアラブル市場が縮小してしまった原因は、フィットネスバンドの必要性を感じるユーザーがあまりにも少なかったからだ。そこに拍車をかけたのがApple Watchで、トラッキングシステムを搭載したスマートウォッチの進出によりユーザーはフィットネスバンドを買うことに疑問を抱き始めたのだ。 そしてAppleの美しいデザインも大きな魅力となりウェアラブル市場のシェアを一気に獲得した。 ちなみに、Jawbone Co-founder兼CEOのHosain Rahmanは現在新たな会社Jawbone Health Hubの立ち上げ準備をしている。サービスモデルの領域をフィットネスからヘルステックに移行し、糖尿病や高血圧の改善、不整脈の発見、そしてストレスマネージメントなどを目的としたアプリケーションを開発中。まだ確定はしていないが、2018年の上旬頃にはソフトローンチが予定されている。

2. Beepi

サービス概要:中古車マーケットプレイス・サービス 投資家:DST Global、SAIC Capital、Sherpa Capitalなど 資金調達額:$150M 2013年に創業した車の所有者と中古車の販売人を繋げるプラットフォーム、Beepiは2017年2月に終了した。Beepiの大きな特徴は、売り手と買い手の間に入ることでフェアな取引を実現したこと。これにより、中古車業者の不透明な価格提示を回避することできるため、当初は大きなマーケットになることが予測された。 倒産の要因はお金の使い方がスマートではなかったこと。当時従業員の給料が異様に高かったこと、多くの残業代が支払われていたこと、そしてミーティングルームのソファに$10,000費やすなど金遣いが荒かったことが挙げられる。最終的にBeepiは約200人の従業員をレイオフすることになった。 また、ファウンダー達の気が変わりやすく将来の方向性が見えづらかったことも要因にあるそうだ。Fair.comと中古車ディーラーDGDGによる買収の話も一時上がったが、最終的には帳消しになった。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=eMbwUEzPB7Q[/embed]

3. Yik Yak

サービス概要:匿名のソーシャルメディア・サービス 投資家:Sequoia Capital、Draper Associates、DCM Venturesなど 資金調達額:$73M Yik Yakは特定の地域内で匿名のユーザーがチャットを楽しめるソーシャルメディアアプリを展開していた会社だ。こちらも2013年の創業だったが、4月にサービスを終了した。 失敗の要因はユーザーの行動を予測しきれなかったことにある。サービスをローンチした当初はターゲットである大学生達にうけたのだが、次第に”匿名を逆手にとった”オンライン上でのイジメが多発したことから、多くの学校でYik Yakの利用が禁じられたのだ。これを機に2016年のアプリのダウンロード数が2015年同時期比で76%も落ち込み、最終的には従業員を一時解雇せざるを得ない事態となった。 また、同年にニューヨーク大学と提携したセキュリティ・リサーチャー達が、アプリ上の個人情報がハッキング可能な状態だということを突き止め、Yik YakのCTOが会社を去ることになった。

4. Sprig

サービス概要:フードデリバリー・サービス 投資家:Accel Partners、Greylock Partners、CAA Venturesなど 資金調達額:$57M 2013年に創業し、フードデリバリーサービスを展開していたSprigも今年5月にサービスを終了した。実は昨年寄稿したこちらの記事でSprigをとりあげていたこともあり、まさかの急展開にスタートアップの生き残りがいかに大変かを実感した。 サンフランシスコにはフードデリバリーサービスが数多くある中、Sprigは「クリーンでシンプルな食事を通して健康に」というミッションのもと、ユーザーの健康に対する意識を変えるために、専属シェフによって生み出されたヘルシー料理を提供していた。そして特殊なデータサイエンスを活用して、なんとオーダー後およそ30分以内に配達を開始するという仕組みも構築したのだった。 しかし、健康志向のユーザー達は配達の時間よりも食材の質にこだわりを持つことを知り、新しいメニューを開発したり、カフェを開設したりと軌道修正に取り掛かった。試行錯誤を繰り返したが、ユーザーが求める食のクオリティに到達することはできなかったようだ。 Founder兼CEOのGagan Biyaniは「ユーザーが求めるクオリティが非常に高く、その期待に応えるためのクオリティを維持しながら大量生産をするのがとても難しかった」というコメントを残している。

5. Hello

サービス概要:睡眠トラッキング・デバイス 投資家:Temasek Holdings、Horizons Ventures、Acequia Capital 資金調達額:$40.5M 2012年創業、睡眠時間をトラッキングできるデバイスを開発したHelloが2017年6月に終わりを告げた。Helloのデバイスは腕に装着するのではなく部屋に置くだけで睡眠習慣を改善できるというもの。Kickstarterで資金調達に成功した後TargetやBest Buy等リテールでも陳列されていたほど話題となった。 今年の1月には25歳のFounder兼CEOJames ProudがForbes 30 Under 30の表紙を飾り、ネット上では様々なメディアがJamesを取り上げた。少し余談にはなるが、彼は9歳の頃独学でHTMLを学び、12歳の頃にはプロ顔負けのウェブサイトを制作していたという天才少年であった。 会社の閉鎖に追い込まれた要因は明確に公表されていないが、恐らくハードウェアをビジネスにする難しさにあるのではないだろうか。睡眠習慣の改善を図るデバイスはHello以外にも数多くあり、FitbitやApple WatchなどのウェアラブルデバイスやiPhoneのiOS上にさえ搭載されはじめた。これにより睡眠改善ツールがコモディティ化し、Helloの付加価値を生み出すことができなかったと思われる。 hello ↑上記画像はKickstarterのページより引用

スタートアップ5社から学ぶ教訓とは?

教訓① ピボットで軌道修正(Jawbone)

Jawboneから学べること、それは失敗を糧にプロダクトをフィットネス・トラッキング・デバイスからヘルステック・デバイスに変えてサービスをピボットさせたこと。 例として、フードレビューサイトのYelpの原点はEメールレコメンドサービス、SNSプラットフォームのTwitterの原点はブログサイトと当初は全く違うサービスを提供していたのだ。しかし、ユーザーのニーズやマーケットの変化に合わせてピボットさせたことで現在大きな成功を遂げている。このようにマーケットに合わせた軌道修正も時には必要となる。

教訓② 未来の消費者ニーズを見据えた思考(Hello, Yik Yak)

Yik YakやHelloからはどんなことが学べるだろうか。この2社に共通すること、それは未来のユーザー行動を予測できなかったことだと思う。 Yik Yakは大学生をターゲットにした匿名ソーシャルメディアを提供し当初は話題となったが、使い方を間違えると悪用されてしまうことまで思いつかなかった。そしてHelloは睡眠習慣の改善デバイスの重要が膨らんだ時にどう差別化を図るか想定できなかった。 変化し続けるユーザー行動やマーケットを読み解くカギとなるのは未来予測(Future forcasting)だと考える。未来予測とはただ未来を予知するのではなく、未来を生きる人たちの苦痛や問題を感じとり、何が必要となるかを予測するUXを起点とした思考プロセスである。 「データから予測される変化」と「人々のコアとなる価値観」を見出し、交差する部分をプロダクトやサービスに転換させる。こうすることで現在進行形のマーケットに依存することなく、常に未来を見据えたプロダクトやサービスを生み出していけるのだ。 現に、Teslaの生みの親Elon Muskは、無人運転車が当たり前になることを予測して自動運転車を作り、Airbnbのファウンダー達は宿泊施設・民宿のシェアの次に体験のシェアをはじめている。成功している起業家達は常に未来を見据えながらユーザーのニーズを模索し、自ら未来を切り開いているのだ。

教訓③ 資金管理はスマートに(Beepi)

Beepiから学べることは資金管理の仕方そのものだろう。おそらく良い人材を雇うためにありえないような額の給料を支払っていたのだと思うが、従業員の給料や経費は本来セールス状況を把握できる人間がきちんと管理すべきである。 当たり前のように思えるが、CFO(Chief Financial Officer)などの資金調達・運用・財務・経理の分野に特化した人材をしっかり確保することが大切だ。

教訓④ ユーザー視点を忘れない(Sprig)

Sprigに学ぶこと、それはサービスやプロダクトのクオリティとユーザーが求めるニーズを合致させること。そのためには技術ファーストではなく必ず顧客ファーストで物事を考える必要がある。 Sprigはオーダー後30分以内に配達を開始するという画期的な技術を生み出したが、ユーザーが求めていたのは「時間」ではなく「料理の質」であったことを見逃していた。フォーカスインタビューやユーザーテストなどを通して顧客が求めていることを常に探り、サービスの改善をしていくことが最も重要となる。 参考: ・"10 of the most-funded startups to fail in 2017""7 startups that were massively funded that died in the first half of 2017"