Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業

Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた

ミレニアル世代のマインドセットを捉えて成功したスタートアップ事例

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資産運用会社であるAlliance Bernsteinのアナリストによると、2018年の今年にミレニアル世代(1980-2004年ごろ生まれ)の購買力は、ベビーブーマー世代を超えると見られている。 そのため、ミレニアル世代のマインドセットを理解することが世の中のマインドセットの変化を捉えるために重要だと言える。 特に食習慣は顕著にマインドセットの変化が現れやすく、他の世代とも比較しやすい。現にミレニアル世代の食習慣に関するマインドセットは今のフード業界のトレンドの要因となっている。 この記事ではそんなミレニアル世代の食にまつわるマインドセットの変化と、それらをうまく捉えているスタートアップの事例を紹介したい。

ミレニアル世代は健康意識が高い

米マーケティング会社CBDの行った調査によると、ミレニアル世代の健康意識が他の世代に比べて高いことがわかっている。これ以外にもミレニアル世代に関する調査は多く発表されているが、総じてミレニアル世代の健康意識は高く、ヨガや運動に積極的で、アルコールもあまり摂取しなくなったと言われている。

野菜・オーガニック食品が人気。食品選びも健康を意識

また、食事に対しても健康意識が現れており、米マーケティング会社NPDの行った調査によると、米国の40歳以下の1人あたりの生野菜、冷凍野菜の消費量がともにこの10年で50%以上増加していることがわかっている。NPDのリサーチアナリストによると、今後もミレニアル世代以下による野菜消費量が増えていくとしている。 実際に、北米のオーガニック食品促進団体のOTAの調査によると、米国のオーガニック食品を最も購買している世代がミレニアル世代ということがわかっている。さらに子を持つ親となったミレニアル世代は子どもの健康にも気を遣いオーガニック食品を選ぶ傾向があるということが明らかになった。 同調査によると、アメリカでのオーガニック食品消費は過去最大になっており、売上高では約5兆円規模に拡大しているという。調査ではこれらの主な要因はミレニアル世代だと指摘されている。 これらの傾向から今後もオーガニック食品などの健康意識にマッチした食品ニーズが高まっていくと言える。 現に、アメリカの主なオーガニック系スーパーであるTrader Joe’sWhole Foodsなどは売上を伸ばしている。グローバル市場調査会社のResearch and Marketsの調査によると、従来のスーパーマーケットが2007年以来顧客ベースの年平均成長率で減少傾向にあるにもかかわらず、Trader Joe’sは5.9%、Whole Foodsは4.9%の年平均成長率を達成しており、オーガニック食品への意識の高まりがうかがえる。

Plentyはオーガニック野菜の栽培・流通を効果的に行う

agritech-plenty 上記のようなフードトレンドがある中で、生産性の高い屋内での水耕栽培を実現させたPlentyは、農業スタートアップとして約250億円という過去最高の資金調達を行った。 屋内での水耕栽培のメリットは、何と言ってもクリーンな野菜を効率よく生産できる点だ。Plentyでは独自に設計されたポール状のタワーで栽培を行うことで、従来の農法と比較した場合、同じ面積で350倍の生産を可能にし、95%も少ない水で葉物野菜の他、イチゴなどを栽培している。将来的には、従来生産コストが高く栽培難易度の高い野菜や果物も栽培可能になる見込みだという。 また、赤外線センサーを張り巡らして作物をモニタリングすることで得られたビッグデータから機械学習を行い、アルゴリズムが光、温度、水などを調節することでより美味しい作物の生産が可能になっている。 都市近郊に工場を建設し、オーガニック野菜という価値だけでなく、
  • 物流コストの削減および都市部に供給するためにかかる環境負担の軽減
  • 新鮮
  • ローカルで作られた野菜
という価値を前面に押し出している。 同社はサンフランシスコ以外にも日本や、他の国と比べて農薬が2倍ほど使用されていると言われている中国でも事業拡大を目指している。

たんぱく質も重要視している

米広告マーケティング会社のAcostaの調査によると、ミレニアル世代の約80%が、食品購買時にたんぱく質が含まれているかを非常に重要であると回答していることがわかっている。また、ミレニアル世代より上の世代に上がるにつれて減少していることもわかっている。 健康志向の強いミレニアル世代間で増えているベジタリアンやヴィ―ガンといわれる菜食主義者もたんぱく質を重要視しており、植物性の代用肉からたんぱく質を摂取している。世界的な市場調査・コンサルティング会社であるMarkets and Marketsの調査によると、代用肉市場は今年2018年に約4,700億円に達し、2023年には約6,500億円に拡大すると見ており、急成長する市場の一つとして注目されている

Memphis Meatsは動物を殺さない人工肉を実現する

https://www.youtube.com/watch?v=Y027yLT2QY0 サンフランシスコに拠点を置くMemphis Meatsは、牛からとった幹細胞を培養して牛肉を作っている。Microsoftのビル・ゲイツや世界的な実業家として知られるリチャード・ブランソンら、その他著名な投資家が同社に総額約18.5億円を出資している。 リチャード・ブランソンは、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、
「向こう30年ほどで、私たちは動物を殺す必要がなくなり、(供給される)全ての食肉は現在と同じ味を保ったまま、クリーンな肉、または植物原料の肉になるだろう。それらは同時に、私たちにとってより健康的なものになるはずだ」
と述べている。 持続可能なオーガニック食品として、上記のようなミレニアル世代のマインドセットをうまく捉えつつ、人間の長期的な課題を解決しようと試みている。

ミレニアル世代は外食・デリバリーが好き

アメリカ農務省のレポートによると、ミレニアル世代の外食頻度が他の世代に比べて多いことがわかっている。同調査の分析によると、ミレニアル世代は約2週間に1回の割合で外食をするという。 また、アメリカ合衆国労働省労働当局の調査によると、ミレニアル世代はベビーブーマー世代(団塊の世代)に比べ、総支出が14%下回っているにもかかわらず、ベビーブーマー世代は外食、デリバリーに週平均$47.65支出するのに対し、ミレニアル世代は週平均$50.75と多く支出することがわかっている。 ミレニアル世代の健康志向や、外食・デリバリーが多い傾向からSakara LifeProvenance Mealといったオーガニック食品によるフードデリバリーや菜食主義者のためのフードデリバリーを行うサービスが増えている。

Zume Pizzaは焼き上がりのピザをデリバリーする

https://www.youtube.com/watch?v=VKlvVTgOCEA シリコンバレーにあるZume Pizaは、人が移動中に調理するという法律違反を、移動中に車内でロボットがピザを焼き上げることで解決している。 この一連の「移動中に調理する」という特許により、食べる2分前に焼きあがるピザをデリバリーしている。 多くのピザ屋では、チーズが配達中に溶けた状態になるように保存料などの化学調味料を使用するが、Zume Pizzaでは保存料を使う必要がないため、健康的であるということもアピールしている。 Zume Pizza Pod また、100%リサイクル可能なサトウキビ繊維でできたピザのパッケージは、保湿性が高く、特殊な形状により、残ったピザのサイズに合わせて折りたためるようにもなっている。 こうした画期的なユーザーエクスペリエンスと要所要所にユーザーのマインドセットを反映させることで、他社との差別化を図り、ミレニアル世代の支持を得ることができる。

まとめ

小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」という記事でも紹介したように、今回の事例でも、世の中の変化に対応するためにはまず、ユーザー中心のマインドセットが必要となることがわかる。 ではそのようなマインドセットはどうしたら身につくのだろうか?btraxでは、スタートアップとデザインの本場サンフランシスコにて、イノベーションブースターというワークショップ型プログラムを通じてそうしたマインドセットを習得する機会を企業向けに提供している。ご興味のある方は是非お問い合わせを。

小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題

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小売業は現在、変革期に差し掛かっている。おそらくここ数年で大きな変化が訪れる産業の一つである。 その証拠として、実店舗型の小売業者の経営破綻、店舗閉鎖が相次いている。それらはEコマースやデジタルの普及が影響を与えていることは明らかだが、消費者が実店舗よりもAmazonなどのEコマースを選んだとは単純に言い切れないのである。

Eコマースは小売業界の売上高のほんの一部でしかない

実際に、NRF(全米小売協会)が毎年出している全米の小売業界の売上高ランキング2017年版によると、上位10社が
  1. Wal-Mart Stores
  2. The Kroger Co.
  3. Costco
  4. The Home Depot
  5. CVS Caremark
  6. Walgreens Boots Alliance
  7. Amazon.com
  8. Target
  9. Lowe's Companies
  10. Albertsons Companies
  と、Amazon以外は主に実店舗型を展開する企業となっている。また、デジタルマーケティング、商業などに関する市場調査を提供するeMarketerの調査によると、2017年時点でAmazonのEコマース売上高が全米全体のEコマース売上高の44%ほどを占めているにもかかわらず、全米全体のEコマースの売上高は総小売売上高の9%ほどにしか満たないことから、Eコマースがさほど影響を与えているわけではないことがわかる。

デジタルネイティヴの世代も実店舗を好む

さらには、世界最大の商業用不動産サービスや投資を行うCBREのミレニアル世代を対象とした2016年の調査では、世界のミレニアル世代(1980~2000年前後生まれ)の70%が実店舗を好むことがわかっている。また、回答者のほぼ半数が店内で製品を実際に見たり、触ったりして、すぐに購入したいと考えており、店内での体験が重要だということがわかる。 上記の理由から、実店舗の影響力がいまだに強いことがわかる。

Amazonも実店舗への進出を進めている

実際にEコマース大手のAmazonは2017年に米食品スーパーのWhole Foods Marketを137億ドルという、これまでの最高額で買収し、実店舗への展開を進めている。また、店内での買い物体験をよりスムーズにした、レジなしスーパーのAmazon Go1号店をシアトルにオープンしている。また、近々サンフランシスコとシカゴにも出店するとも言われている。 こうした傾向やAmazonの動きから、小売業界全体が次なる変革のためにAIやIoT技術を活用し、業務の効率化や在庫管理による食料廃棄の削減、革新的なユーザー体験の実現を目指している。 この動きに伴い、それらを実現しようとするスタートアップが今注目を浴びている。そのなかでも本記事では、食料品小売ビジネスに注力しているスタートアップを紹介したい。どのような技術で課題解決を行おうとしているかを注目してもらいたい。

食料品小売業界の技術マーケットマップ

食料品小売店技術マーケットマップ引用: CB insights まず紹介したいのは食料品小売業界における技術マーケットマップである。ちなみにこれは各技術カテゴリにおけるすべてのスタートアップを網羅するものではない。また、一部のスタートアップは複数のカテゴリにまたがってサービスを提供している場合もあるが、主要サービスの事例に沿って分類している。 各技術カテゴリは以下のような課題解決を目指している。
  • リアルタイムシェルフ管理 - AI技術とカメラを駆使し、陳列した商品の状態や商品ブランドシェア率、品切れ、一度手に取ったが戻した商品のデータなどの情報を提供。在庫管理プロセスの改善だけでなく、効果的な商品陳列や商品ブランドのパッケージデザインの改善に役立てることができる。
  • ストアロボット&チャットロボット - 店舗にロボットを配置することで、顧客への挨拶や対応、在庫の管理だけでなく陳列の自動化などが期待できる。また、顧客行動などの貴重なデータの蓄積が可能で、顧客からの苦情を減らすなど店舗の最適化が期待できる。
  • AR・VRツール - 拡張現実を利用し、店舗の棚や通路などのレイアウトのシミュレーションを低コストかつ即座に行うことを可能にする。また、実際に拡張現実内でユーザビリティテストを行うことにより、顧客の視点や行動から彼らの心がどこに向いているかなどのデータも提供する。
  • インタラクティブ・ディスプレイ - インタラクティブとは双方向を意味する言葉であり、店舗に配置したディスプレイ上でクーポンやその日のセール情報を表示し、顧客がそこからお買い得情報を取得することを可能にする。それにより顧客に来店を促すなど、エンゲージメント促進を実現している。
  • デジタルラベル - 顧客が商品をスキャンすると詳細な商品情報を表示。商品に対する透明性を高め、顧客に安心と満足度を提供する。
  • ビーコン&ロケーショントラッキング - スマートフォンのアプリとビーコン、センサー、Wi-Fi信号を紐付け、顧客の行動をトラッキングすることによって店舗のレイアウトの最適化や、特定の位置で顧客に応じたイベントを発生させることが可能になる。今後はこの技術を応用し、ユーザーがスマートフォンのアプリのボタンひとつで、店員を自ら探すことなく自身の場所へ呼ぶことも可能になるかもしれない。
  • 店舗管理 - 決済処理や在庫管理などの機能を統合した幅広いソフトウェアプラットフォームを提供。業務の効率化を実現し、特に中小規模の小売食品店に効果が期待できる。
  • クーポン・ポイント・キャッシュバック - 顧客に報酬型のクーポンやポイント、キャッシュバックを提供するプラットフォームを提供。例えば、特定の商品の購入や、アンケートへの回答などの条件を満たした顧客に、クーポンやポイントを付与することで、顧客の商品へのエンゲージメントを促進する。
  • 購買分析 - 商品の売上数や顧客の購入パターンなど店舗レベルで監視、分析するためのソフトウェアプラットフォームを提供。店舗内のデータに基づき、ターゲットを絞ったプロモーシャンや購買分析が可能になる。
  • マーチャンダイジングツール - 顧客の要求に合わせ、適正な商品を適正なタイミングで適正な場所、量、価格で提供するためのツール。マーチャンダイジングの最適化により、コストの削減や増収が見込める。
  • 食料廃棄物管理 - 在庫管理を徹底するツールにより食糧廃棄物を減らす。また、廃棄食料を寄付したり、飼料や肥料に再利用したりするプロセスを提供することでも食料廃棄量削減を実現する。
  • プロモーション最適化 -店舗やブランドのプロモーション戦略を最適化するためのソフトウェアプラットフォームを提供。プロモーションコストの削減・効果の最大化などが期待できる。
  • ストアガーデン - 店舗やレストランの近くに水耕農場を建設することで、地元の食材を安定して提供できるようにする。
こうしてみると、ほとんどのカテゴリで、実店舗の利点であるリアルな顧客の行動データを上手く活用しようとしていることがわかる。 これらの中でも特に注目を浴びているカテゴリにおけるスタートアップ5社を紹介する。

1. Trax: リアルタイムシェルフ管理

https://www.youtube.com/watch?v=VsGnru8zxKE 主要投資家: Warburg Pincus, Investec, Broad Peak Investment 調達額: $138.5M サービス概要: 商品陳列用の棚をスマートフォンやタブレット端末で写真を取るだけで、非常に豊富なデータを即時に得ることができるシステムを提供している。それらのデータをクラウドからレポートとして小売業者や商品ブランド会社にリアルタイム配信することができる。 注目の理由: スマートフォンとタブレットを利用することで、導入にかかる初期費用を大幅に削減することができる。実際に同社のツールを導入したCoca-Cola Hellenic社では在庫を63%削減することに成功。他にも、P&GやNestleなどの大手商品ブランド会社を顧客にしている。

2. simbe: ストアロボット&チャットロボット

simbeストアロボット 主要投資家: SOSV, Comet Labs, Anorak Ventures, Presence Capital, Vijay Pradeep, HAX, Cherubic Ventures, Riot Ventures, Greg Castle 調達額: 未公開 サービス概要: 完全自律型の小売用ロボットを開発、提供している。在庫切れや、在庫不足、誤った場所に置かれた商品、価格設定の誤りなどをスキャンにより判別し、従業員の作業を効率化する。通常の営業時間帯でも動作し、顧客が棚を確認している際には避けるようになっている。 注目の理由: 同社は完全自立型ロボットを世界で初めて開発している企業だ。完全自律型のため、人件費の削減や従業員の負担を削減することができる。また、人的ミスをほぼなくすことが可能になる。調達額が公表されていないことや、世界初の試みという意味でも注目を浴びている。

3. InContext Solutions: AR・VRツール

InContext Solutions VR 主要投資家: Intel Capital, Beringea, Plymouth Growth Partners, Hyde Park Angels 調達額: $42.5M サービス概要: VRシミュレーションにより、店頭レイアウトを簡単に変更することができるプラットフォームを提供。ヒートマップなどにより、顧客の反応を分析することができる。また、商品のパッケージデザインなどもVRにより可視化することができる。 注目の理由: VR技術の活用は建築業界を初め注目を浴びているが、InContext Solutionsは小売業界にフォーカスした企業として注目を浴びている。商品ブランドでは商品サンプルデザインの作成にかかるコストをVRにより大幅に削減することを可能にした。また、実際に仮想上の店舗に商品を配置し顧客の反応をあらかじめ分析することもできる。

4. Ksubaka: インタラクティブ・ディスプレイ

ksubaka主要投資家: Fullshare Holdings Limited, Ksubaka (ジョイントベンチャー) 調達額: $15.3M サービス概要: 店舗にディスプレイを設置し、その画面上でゲームを配信して顧客にプレイしてもらうことで、商品を効果的にプロモーションするサービスを行っている。ディスカウントなどを行わずとも、商品の売上を伸ばすことが可能になる。 注目の理由: 同社が注目を浴びたのは中国のネスレとの間で実施した2か月間ほどのキャンペーンだ。このキャンペーンでは、ゲームに対する顧客のインプレッションが7000万ほど、購買エンゲージメントが100万ほどと大きな効果を生んだ。また、このディスプレイを介して行われた調査では、商品ブランドのミニゲームを終えた後で購入意思が81%増加したこともわかり、インタラクティブディスプレイの効果を大きく証明した。

5. Estimote: ビーコン&ロケーショントラッキング

estimoteビーコン主要投資家: Javelin Venture Partners, BoxGroup, Homebrew, Y Combinator 調達額: $13.9M サービス概要: 小売店や博物館、空港などに設置するビーコンを販売している。ビーコンは、電源とチップセット、通信用アンテナを内蔵した小型デバイスであり、Bluetoothのような通信技術よりもあまり電力を使用しないデバイス間通信を可能にする。これらにより、顧客の位置トラッキングによる情報の取得だけでなく、特定の顧客があるディスプレイの前を通過したさいなどに、特定の映像を流すなどのイベントを発生させることができる。 注目の理由: Y Combinatorから出資を受け、2012年以降からセンサネットワークと低電力ソフトウェアを提供している同社は、iBeacon互換のビーコンを初めて取り扱った企業であり、この分野では間違いなく現状トップであるといえる。現実世界で位置情報を使い、特定の個人に向けてパーソナライズされたイベントを発生させることは、スマートフォンが普及したユビキタス社会ならではのサービスといえる。また、ビーコン自体が安価なこと、エンジニア用にSDKがあるため、エンジニアを中心に個人の利用や活用が見出されている。

まとめ

小売業界での最も身近な進歩といえば、セルフレジであったが、他の業界と比較してみると過去数十年にわたって見られた進歩の中では遅れていると言える。しかし、小売業界での実店舗の重要性が見直され、ユーザー体験の向上が求められるようになり、AIやIoT技術により小売業界を変革しようとするスタートアップが増えてきた今、その進歩のスピードは急加速するだろう。 ここで忘れてはならないのは、技術ありきでは進歩は実現しないということだ。実際にユーザー体験を向上させるには、それらの技術を駆使する前にユーザー中心のマインドセットが必要になる。現在のような変革期に対応するためには、テクノロジーや情報に精通するだけでなく、それらを活用するためのマインドセットがより今後重要になるだろう。

シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の早さ

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サンフランシスコ市では2013年より市交通局を主体として、『ベイエリア・バイクシェア・パイロットプロジェクト』を実施している。 このプロジェクトでは、サンフランシスコ市交通局と民間のシェアサイクル運営会社である「Motivate」が提携し、シェアサイクルの普及・拡大を促進させ、
  • 交通渋滞の緩和
  • 移動効率の改善
  • 市民の健康管理
などを目的としている。 2017年の夏には、「Ford Mortor Company」によるスポンサーシップなどにより、「Ford GoBike」として、320ほどのステーションと4,500台ほどのシェアサイクルが導入されている。 fordgobikestation 「Ford GoBike」のステーションマップ - 公式サイトより こうして現在シェアサイクルはサンフランシスコ市民にとって馴染みのあるものになっているのだが、2018年に入り、
  • どこでも乗り捨て可能なステーションレス型のシェアサイクルである「JUMP Bike」(1月)
  • 同様に乗り捨て可能な電動シェアスクーターの「LimeBike」「Bird」 「Spin」(4月)
が突如として市街地に現れた。 「Ford Gobike」と同様に、「JUMP Bike」はサンフランシスコ市交通局と協力体制を得て実証実験を行っているが、電動シェアスクーターの運営会社である「LimeBike」、「Bird」、「Spin」の3社は市の許可を得ずに運営を始めた。 サンフランシスコ市民は新しいテクノロジーやモノに寛容なため、すぐにサービスを利用するユーザーが多く、それが違法だということにもかかわらず、あたかも電動シェアスクーターが数年前から存在していたように錯覚してしまう。 「さすがはサンフランシスコ。日本とは違ってそういったことには行政も寛容なのだろう。」と思われるかもしれないが、当初サンフランシスコ市は怒っていた。 その後裏側でしっかりとしたプロセスを踏み、驚異的な早さで意思決定と法整備を行った。 では具体的にどういった問題が発生し、市としてどのような問題解決を行っているのだろうか?また、これらの問題からシェアサイクル事業の課題点について言及したい。

ステーションレス型電動シェアスクーター「LimeBike」「Bird」「Spin」とは

limebikes-bird奥からLimeBike、Bird 現在、サンフランシスコ市街では上記の画像のようなステーションレス型の電動シェアスクーターが点在している。乗り方はとてもシンプルで、アプリを起動し、近くのスクーターを探し、QRコードをかざすだけだ。

ステーションレス型は投資評価額が高い

electricscooter-company 引用: CB insights 「LimeBike」「Bird」「Spin」3社はともに投資を受けている。 「LimeBike」はすでに世界各国でシェアサイクル事業を展開しており、投資額が高い。同様に「Bird」も巨額の投資を受けている。ちなみに同社のCEOはTravis VanderZanden氏であり、過去には「Lyft」のCOO、「Uber」ではVP of Global Driver Growthを経験した人物だ。 bike-share-funding引用: CB insights 上記のグラフのように、2017年はシェアサイクル業界への関心が高く、全体の投資額が上昇したことも各社が巨額の投資を受けたの要因となっている。 その中でも、ステーションレス型のシェアサイクルは、コストの削減や、地理的なサービス展開の容易さ、ユーザビリティの観点から特に注目を集めている。「Bird」が2018年に入ってから巨額投資を受けたことからも、この傾向は続くと言えるだろう。 では、実際にユーザビリティが優れているのかを検証するために、一般的なステーション型のシェアサイクルである「Ford GoBike」を利用したことのある筆者が「LimeBike」「 Bird」「Spin」を利用してみた。 limebikes-testdrive アプリをダウンロードしたあと、実際にQRコードをスキャンし、各社の電動シェアスクーターに試乗してみた。最初のひと蹴りのあとに、アクセルとなるハンドル部のレバーを親指で押すだけでスムーズに加速するのは確かに心地が良く、本体も小さく軽いため、とても軽快に感じた。 ステーション型よりもはるかに楽で、ステーションを探す手間や、ステーションの空きがないなどの心配をすることがなく、完全なストレスフリーであった。

「LimeBike」「 Bird」「Spin」の3社の違い

limebikes-bird-spin-uiホーム画面 左からLimeBike, Bird, Spin limebikes-bird-lime-menuメニュー画面 左からLimeBike, Bird, Spin アプリのUI, UXデザインにはすぐに改善できるような違いしかなかった。さらに、3社とも、シェアリング・エコノミー業界を牽引してきたUberのアプリUIデザインに影響を受けていた。 また、料金設定や最高時速の制限も同様に3社ともに、
  • 最高時速 22km毎時
  • 基本料金1ドル + 1分毎に15セント
と設定されていた。さらには、「Bird」「Spin」の2社は「Xiaomi M365」という電動スクーターを流用しているため、スクーター本体の性能は完全に同じであった。

なぜ3社が同時にサンフランシスコ市に現れたのか?

「Bird」はサンフランシスコ市に進出する以前に同カリフォルニア州内のサンタモニカ市でも市の承認なしにサービスを提供していた。現在は和解金(300,000ドル)を支払い、正式にサービスを運営している。 こういった動きは、初期の「Uber」を思い浮かばせる。 「市にも交通緩和などの利点があり、ユーザーにとっても便利であれば、市の承認なしでもサービスが受け入れられるだろう。なおかつこれが一番手っ取り早い」というスタンスは、おそらく、CEOのTravis VanderZanden氏の「Uber」での経験からきたものだろうと筆者はみている。 そうしてサンフランシスコ市にも承認なしで進出し、「LimeBike」「Spin」の2社はこの動きを察知し「Bird」と同時に現れたのではないだろうか。 もしも、「Bird」の1社が市の正式な許可を得てサービスを先行した場合、ユーザー数との適切な電動シェアスクーターの個体数を設置されることで、完全にサンフランシスコ市という市場をコントロールされてしまうためである。 中国のシェアサイクルの廃棄が問題になっていたように、行政が個数を管理しなければ二の舞になりかねないため、おそらくサンフランシスコ市は次の電動シェアスクーター運営会社の承認を出さないか、個体数を制限する可能性があるからだ。 実際にサンフランシスコ市交通局が18ヶ月間のテストプログラムの期間中の現在、「Jump Bikes」以外のステーションレス型のシェアサイクルを認めないとしている。

ステーションレス型電動シェアスクーターの問題

電動シェアスクーターでは、
  • 18歳以上である事
  • 免許証の所持
  • ヘルメットの着用
  • 車道を走る
  • 駐車は歩道の妨げにならないように
などが義務付けられており、乗車する際は必ずアプリ内に注意事項として表示される。 electricscooter-problem路上に横たわる「Spin」- 引用:SF Examiner しかし、実際には「ヘルメットを着用しない、歩道を走っている、歩道の中心に駐車する、二人乗り」などが見られ、市民から苦情が出ている。特に上記の画像のような状態はよくみられ、車椅子の妨げになるなどの問題がある。 「Bird」では安全の呼びかけや、ユーザーに無料でヘルメットを配るなどを行っているが、現段階では問題解決にはつながっていない。

ユーザーのサービス利用意識はシェアリング・エコノミー型サービスの共通の問題

そもそもシェアリング・エコノミーとは個人の所有物を個人間で共有するという意味合いが強く、企業が所有しているシェアサイクルや、電動シェアスクーターをシェアする場合は、レンタルの要素が強い。 レンタルの場合は、貸主個人の顔が見えないために使用者の意識が下がり、いたずらや問題が起きてしまう可能性が高くなる。 例えば実際に時間貸しのカーシェアリングを行っていた「RelayRides」という会社は、2011年当初はオーナーと顔を合わせることなく車に搭載されたカードリーダーに会員証をかざすだけで利用できるという仕組みだったが、当時はオーナーからの損害請求等が多かったという。 しかし、2012年に別の理由でカードリーダーを廃止し、借り手とオーナーが直接キーを渡したり、車両を点検するように変更した。 その結果、オーナーからの損害請求は減り、借り手もオーナーに対し、満足度の高い評価をつけるようになったという。 また、シェアリング・エコノミー業界を牽引する「Lyft」では、乗客に後部座席ではなく、助手席に座ることを推奨していたり、「Airbnb」では、ホストに対してプロフィールに自身が大きく写った写真を載せることを推奨し、必ずゲストと宿泊前にコミュニケーションを取るように求めている。 これらのことから、フェイストゥフェイスでコミュニケーションをとることで、ユーザーに対して「サービスを正しく利用する」という意識を高められることがわかる。 実際に中国のシェアサイクルでは、いたずらや破損の多発が相次いで問題になっていたが、サンフランシスコでも同様に起きており、ステーション型であるFord GoBikeが放置されていたり、電動シェアスクーターが海に投げ捨てられたりしている。 fordgobike-problem放置されている「Ford GoBike」 scooter-problem海に投げ捨てられている「Spin」「LimeBike」 引用: @SRobertsKRON4 こうした問題をサンフランシスコ市と企業が連携し、解決していくことが重要な課題といえる。

電動シェアスクーターに対するサンフランシスコ市の対応

electric-scooter-track回収される電気シェアスクーター 4月中旬にサンフランシスコ市は「LimeBike」「Bird」「Spin」の3社に対し、公共への安全性を配慮していないとした上で法に違反しているとし、一時的に電気シェアスクーターを回収した。 それに対し、「Bird」はユーザーに利用後の電動シェアスクーターの写真を撮るよう求めることを検討しているなど、前向きな解決姿勢を見せていた。 それが4月下旬になり、サンフランシスコ市の関係者が新しいガイドラインを提案し、「電子シェアスクーター5社の運営を許可する。ただし、台数は各社500台までとし、2年間のテストプログラムを行う」と発表した。つまり、サンフランシスコ市内では2500台以下の電子シェアスクーターが許可されることになった。 しかし、いくつか条件があり、
  • ユーザーに安全の配慮を呼びかけ
  • 手数料(5,000ドル + 1年ごとに25,000ドル)の支払い
  • 不適切に駐車された電子シェアスクーターの保管や、公共物の損害などをカバーするためのメンテナンス費用として10,000ドルの支払い
  • 低所得者のための計画を提供する
などの必要があるとしている。 サンフランシスコ市もサンタモニカ市と同様に、サービスの承認に対して前向きな姿勢を見せているが、あくまでテストプログラムであるため、これから市民に受け入れられるかが重要である。

まとめ

ステーションレス型のシェアサイクルは、歩道や駐輪スペースを埋め尽くしてしまうなどしないように配慮する必要があるほか、ステーション型の場合はステーションの密度が重要になるため、行政と協力することは不可欠であると考えられる。 日本では行政と協力となると手が出しづらいイメージがあるが、今回ご紹介したようにサンフランシスコ市は、承認をしていない電動シェアスクーターが現れた同月に一時規制を行い、新たなテストプログラムの提案を行うなど、意思決定が早く、法律に影響を与えるサービスなどでも柔軟に法整備をしていることがわかる。 サンフランシスコ市で新たなサービスが次々と生まれる背景には、このような行政対応もあることがおわかりいただけたのではないだろうか。今後、サンフランシスコ市がどのようにシェアサイクル事業の問題解決を行っていくか動向をチェックしていきたい。

【2018年版】ウェブデザインの最新トレンド5選

【2018】最新のウェブデザイントレンド
Windows8が登場した2012年以降、ウェブデザインに関する話題においてフラットデザインという用語をよく耳にするようになった。 AppleもiOS7を発表した2013年からは、従来使われていたスキューモーフィズム、つまり物理的なアイテムに似せたデザインをやめ、フラットデザインを採用している。 iOS6,7

iOS6, 7

これらにより多くのウェブサイトに影響を与えたフラットデザインは、現在多くのウェブサイトで見かけるようになったが、ウェブデザイン界ではこれに限らず毎年クリエイティブなデザインが生まれ続けている。 この記事では、2017年後半に見られたクリエイティブなウェブデザインのうち、2018年も引き続きトレンドとして見られるであろうものを紹介する。

【トレンド①】モバイルファースト

アクセス解析ソフトを提供しているStarCounterによる世界のブラウザ定点観測の調査によると、2016年11月にモバイルブラウザーの利用率がブラウザ利用率の全体の「50.62%」を占め、モバイルの利用率が従来のコンピューター利用率を超えたことが明らかになっている。 弊社、btraxの当ブログであるfreshtraxでも読者のおおよそ半数がモバイルからアクセスしている。 このモバイル利用率増加を背景に、デバイスに依存しないレスポンシブデザインがトレンドとなり、相性の良いフラットデザインも同時によく見かけるようになった。 何年も前から言われていることではあるが、2018年以降はこれまで以上にモバイルファーストを意識しなくてはならない。 モバイルファーストなウェブデザインの特徴としては、アイコンを多用して少ないスペースで効率よくシンプルに情報を見せていることだ。 例えば横線を縦に3つ並べたハンバーガーメニューなどは非常に一般的なアイコンとして浸透しており、今では多くのユーザーにとってその機能が馴染みのあるものとなっている。 RestuarantFinder

Nutrition app design by Masum R.

g-star.growing

Home growing app design by Typelab D

【トレンド②】フラットデザイン2.0

フラットデザインが進化し、シャドウやグラデーションによってより奥行きのあるフラットデザイン2.0とも呼ばれるセミフラットデザインがトレンドとなっている。 scale

scale

fireworks.prayer

Fire Works mobile app by Samuel.Z, Mobile app by M. Tony for Elmurz

bubblewits

Bubblewits

従来のフラットデザインでは余分な装飾やグラフィックを省いたがゆえに、クリックできる箇所がわかりづらいなどといった課題があった。 しかし、フラットデザイン2.0は上記のデザインのようにドロップシャドウやグラデーション、効果的なアニメーションを一部に取り入れることで、従来よりもわかりやすい、つまりユーザビリティの高いデザインを実現している。 ちなみに冒頭で紹介したiOS7のアイコンにもグラデーションが効果的に使用されていることがわかる。

【トレンド③】鮮やかな配色

adobe

Adobe

spotify.egwineco

Spotify, Eg WineCo

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Colorful landing page design by Adam Bagus for Arielle Careers

2018年にはビビッドカラーなどの鮮やかな色合いがトレンドになると言われている。 これはスクリーンやモニターなどの装置の技術的進歩により、豊かな色を再現することが可能になったことで結果的にデザインの可能性が広がったゆえのトレンドだ。 色はブランディングにおいて重要性が高く、色の知覚は感情に結びつくため、効果的にユーザーにアピールすることができる。ターゲットとなるユーザーがどのような感情を欲しているか、国や文化によって色に対するイメージが異なることを理解することが重要である。

【トレンド④】アニメーション

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GiFs – such as this one by Chris Gannon – are back in favour

gifアニメーションが再起しつつある。 gif規格は現在ほとんどのデバイスで読み込むことができ、ロード中に表示するなど効果的に使用することができる。 アニメーションロゴなどは、少ない時間で効果的に情報をユーザーに伝えることが可能で、企業のブランドをさらに強化するために大きな可能性を与えるかもしれない。 zendesk

Zendesk

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Digital Asset

また上記のように、スクロールアニメーションやパララックス、つまり視差を利用した演出によってユーザーの理解を高めたり、効果的なブランディングが可能になる。 alarm_material_ui

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さらに、クリックやタップ時のアニメーションを効果的に利用し、ユーザビリティを向上させることも可能だ。 上記の例では、タップしたアクションボタンを起点としたアニメーションが、ユーザーに自身が行っている操作と、その結果が結びついていることを理解するために役立たせることができるなど、細かなアニメーションがユーザビリティ向上に役立つことがわかる。 ブラウザの進歩によって様々なアニメーションが実装できる今、シンプルなデザインであっても効果的に印象を与えることができる。

【トレンド⑤】オリジナルイラスト

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Web page illustrated and designed by SixDesign, Zingle

1960年代後半まで広告の世界を支配していたイラストレーションだが、ウェブの世界で再起しつつある。 イラストは、ウェブサイトに個性を見いだす画期的な方法であり、機能性とシンプルさを損なうことなく企業の目指すブランドのトーンに合わせた性格を表現できる。 形、大きさ、スタイルなど無限の可能性があるイラストは、ユーザーエクスペリエンスという名目で遊び心を失うことなく個性を出すことができるだろう。

まとめ

上に挙げたトレンドに共通するのは、ユーザーファーストでありつつも大胆かつ的確にユーザーに伝えるための手法であるということだ。 2018年は最近のウェブの記憶の中でもっとも楽しい年になりつつあると言えるだろう。

【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジー

2017 IT trends
テクノロジーの発展、加速率は消費者をたびたび驚かせる。こうした技術の進歩は、生産性、コスト効率、ブランド認知度の向上のために、より多くの機会を提供する。 そのため、技術者やマーケティング担当者は技術の進歩について、常に動向を把握することが必要となるだろう。今回は2017年に世界中で話題となったテクノロジーを振り返りたいと思う。

1. IoTとスマートホームテクノロジー

Iot(Internet of things)の発展・普及に伴い、スマートホームテクノロジーの相互接続性について、数年前から注目されている。様々なスマートホームデバイスが、統合・制御されることで、効率的かつ快適な自動化された暮らしが実現できる可能性があるからだ。 しかし、販売されている多くのスマートホームデバイス、アプリケーションは、全てを1つにまとめてシームレスなユーザー体験ソリューションを提供するものはほとんどない。 だが、2017年、Google, Amazon, Appleなどのユーザー体験に精通している企業がスマートスピーカーを発表した。 スマートスピーカーは音声コマンドと応答によって、日々の生活をアシストし、様々なサービスを提供する新しい方法を導入し、様々なデバイスをインターネットで統合するための大きな前進となった。 また、それに伴い、音声認識の技術は非常に洗練されており、音声認識システムのエラー率が5%未満のエラーレートに下がり、人間と同等レベルまでに正確となっている。 これまでIoTとスマートホームテクノロジーの分野に参入している会社はスタートアップが多かったが、Google, Amazon, Appleなどの巨大IT企業が参入したことで、2018年以降はさらなる技術の進歩が期待できる。

Amazon Echo

米国のスマートスピーカーの市場シェアの76%を占めるAmazon Echoの販売数は今年1,500万を超え、スマートスピーカー全体の販売数は2000万を超えた。 Alexa(アレクサ)と呼ばれる人工知能(AI)が搭載され、「何か音楽をかけて」と指示をすると音楽を流してくれる。「音量を上げて」などの細かい指示調整も可能だ。その他にも、ラジオを聞いたり、Amazonで注文したり、計算や、「btraxってどんな会社?」などの質問を答えてくれる。 関連記事【AIスピーカー入門】Amazon EchoとGoogle Home amazon echo

2. ブロックチェーン

ブロックチェーン技術はまさに今年、2017年に活用され始めたデータ管理システムにおける技術である。 従来のデータ管理システムと比べ、維持費が低コスト、セキュリティに強い、データをオープンにできるといったメリットがある。 そのため、『ブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界』でもご紹介したが、銀行や決済、送金、チャリティー、保険、ヘルスケア、IoT、Eコマース、政府・公的記録、選挙、教育、著作権など多岐にわたる分野でブロックチェーンシステムの活用が見出された1年だった。

仮想通貨

仮想通貨は、その名の通りブロックチェーン技術によって管理されている仮想上の通貨だ。 正確な例えではないので注意をしてもらいたいが、簡単に説明すると、各国に通貨が存在するように、「インターネットという国の通貨」と想像してもらうと容易に把握しやすい。送金や決済手数料が格段に安く済むという点で注目されている。 現代では、ほとんどの国でインターネットが使えるため、各国に法規制がない場合は、「金(ゴールド)」のように各国の通貨に代替できたり、実際の通貨のように使用することができる。 「ビットコイン」と呼ばれる仮想通貨を聞いたことがあるだろうか? 仮想通貨はいくつもの種類が存在するが、最も代表的なものが「ビットコイン」である。日本ではすでに一部の店舗で、ビットコインなどの仮想通貨による支払いが可能となっている。 日本では仮想通貨が、投資対象として注目されている要因が強いため、実際に多く普及しているというわけではないが、元となっているブロックチェーン技術は、2017年に大きく注目された。 bitcoin

3. 機械学習

ここ数年、機械学習は大きな進歩を遂げており、2016年にGoogleの「AlphaGo」プログラムが人間のプロ囲碁棋士に勝利したことが記憶に新しい。 そして、この「AlphaGo」は、2017年には世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した。 他にも、ガートナーの予測ではEコマースにおいて、顧客とのインタラクションの85%が2020年までに人間なしで管理されると予測されている。 機械学習は、あらゆる分野で一般的に普及しつつあるが、今後も主流な技術として注目されるのは間違いないだろう。

AlphaGo Zero

2017年に世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した「AlphaGo」に対して、わずか5ヶ月ほどの期間で、全勝できるまでに強くなった「AlphaGo Zero」が開発された。 「AlphaGo Zero」は、過去の人間の棋譜から学習するのではなく、人工知能同士の対戦から学習することで、以前の性能を追い抜いた。つまり、プロの人間の過去の行動データなどの良質なデータを準備する必要がなく、人工知能同士で学習したということになる。 人工知能という言葉がたびたび使用されているが、これらは機械学習の技術の進歩によって実現されている。 関連記事人工知能(AI)のできることとは?歴史から学ぶ現状と未来予測 [embed]https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=tXlM99xPQC8[/embed]

まとめ

テクノロジーの未来の経緯を予測することは、1年後でさえ難しいとされる。現に2016年に、音声によって生活をアシストする、人工知能同士で学習し、新たな人工知能を開発、仮想通貨に価値が生まれる、など想像できただろうか? 新たに開発された技術は実際に活用されないことも多い。しかし、次に話題となるものを予測し、ユーザーの行動の変化を読み解いていくことがマーケティング戦略を練る上で最も重要だと考えられる。