NO NAME DISTILLERYよりあわせる先に見える世界。
「YORI は、よりあわせる。いくつもの細い糸を、1本の、太くしなやかな糸にする。YORIは、よりよくする。環境を、地域を、経済を。YORIは、地域からのたより。その地域ならではの味わいを、いちばん引きたつ融合で提供する。YORIはジンであり、絆であり、解決策であり、ストーリーである」(YORI HP より一部抜粋)。
タイトルに置いた「僕ら」とは、この「YORI」を指します。
「目的は、良い酒造りだけではなく、良い地域作り」。そう話すのは、「NO NAME DISTILLERY」代表・小口潤氏です。
「NO NAME DISTILLERY」とは、その名の通り、名無しの蒸留所。日本の地域素材を活用した社会課題循環型サステナブルジンを開発・製造するプロジェクトです。現在、北海道上川、静岡県富士、広島県大崎上島、愛知県岡崎、千葉県柏の計5地域より、5品をラインアップ。
「YORIの決まりごとはひとつ。ひとつの品に対し、ひとつの地域とパートナーシップを結び、価値を持たないものをメインボタニカルに置くこと」。
例えば、北海道上川では、3種の松の葉や酒粕などを使用。松は、剪定のため、切り落とされた残葉を活かします。広島県大崎上島では、オリーブかす、ポンカンなどを使用。オリーブオイルを製造する過程に出た搾りかすや雹(ひょう)の被害にあって流通できなかったポンカンの木などを活かします。それ以外にも、地元大学とも連携し、そこで育てた植物の起用や愛知県岡崎では、八丁味噌、しめ縄!?なども。
どれも個性的ですが、それは奇をてらったものではなく、もともと地域にあったもの。名無しの蒸留所ゆえ、これらは、KAMIKAWA、FUJI、OSAKIKAMIJIMAなど、地域名で呼称されていることも「YORI」の個性。そんな産地への想いはエチケットにも表れ、ブランド名「YORI」より上に地域名を冠しています。
そして、特筆すべきは、廃棄されるものとはいえ、素材は基本的に買い取っているということ。「処分するものだから、無償でどうぞって言ってくださる方々がほとんどなのですが、それでは社会課題循環型サステナブルにはならないので」。まず、ここで地域に利益を生みます。
「YORIは、地域のプラットホーム。YORIをよりあわせることにより、関係人口、関心人口を増やしていきたいと考えています」。
例えるならば、「YORI」は、地域を引き立てる名バイプレイヤー。主役=地域>脇役=「YORI」の関係なのです。
また、「香りを引き立てるため、あえて味の個性が前に出ない醸造アルコールをベースに採用しています」と話すよう、香り=地域>味=「YORI」の関係によって、「YORI」の特性も構築されます。
加えて、バーテンダーのようなクリエイティビティやテクニックがなくとも、水、ソーダ、トニックなど、割りものとして楽しめるゆえ、地域のあらゆる店舗、あらゆる人が作っても高品質な味を約束。
「技術がないと美味しくならないのでは、地域に根ざすことができませんから」。そして、それを定着させることによって「地域の地酒のような存在になってもらえたら」。これが小口氏の理想。
よりあわせることによって、理想を現実に。そんな活動を、今この瞬間も続けているのです。
NO NAME DISTILLERYアイディアよりも必要な能力。
実は、小口氏の本業は、地域の事業コンサルタントなどを主に活動する「Connec.t」代表。現在、「YORI」は、ふるさと納税の返礼品にも選定されるほか、流通や取り扱い店舗も増えつつあり、これは、「Connec.t」として活動してきた知識と経験が大きく作用しているといっても過言ではありません。
そのほか、「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション」や「日本産酒類の発展・振興を考えるビジネスコンテスト」など、数々の賞も受賞。現在は、広尾にて実店舗「COYORI」も構える。
つまり、結果的に、「Connec.t」と「NO NAME DISTILLERY」は運命共同体。「Connec.t」小口氏の頭脳を持って、「NO NAME DISTILLERY」小口氏の思想をカタチにしているのです。
「実を言うと、ジンを作りたくて、作ったわけじゃなくて。どうすれば地域を循環させる経済を生み出せるか。どうすれば地域に利益を生み出せるか。その仕組み作りを考えた時、ジンであればできると思ったのがきっかけでした」。
そんな本音をさらけ出してしまう小口氏の言葉に嘘はない。
また、「YORI」をきっかけに、様々な活動にもつながる。そのひとつ、某所にて、耕作放棄地の活用事業もこれから始まるという。植物のアップサイクルから、地のアップサイクルへ。これは、小口氏も予想しなかった展開でした。
「ジンに必要なジュニパーベリーは、日本の生産がほぼないのが現状です。これは、気候によるものが大きいのですが、どこか育成に適した地があるのではと調べています。もし実現できれば、それもまた、地域と一緒に取り組むことができればと考えています。それ以外ですと……」。ここから先は、まだ構想段階のため、御内密。ただ、それが実現できたあかつき、もとい、よりあわせることができたあかつき、「YORI」の世界は一気に拡張するでしょう。
そんな小口氏が何より長けている点。それは、「YORI」というアイディアや創造力以上に、実現できる能力を備えていたことにあると考えます。
実際、良いアイディアを持ち合わせている人は少なくない。しかし、それを実現できる能力がある人は、ごくわずか。アイディアは、実現できる能力を兼ねて、初めて活きる。但し、それに伴い、責任を負う覚悟も必要とされます。
小口氏は、毎回産地に足を運び、人に出会い、地を学ぶ。ゆえに、「YORI」は、各地域によって、オートクチュールされるため、同じフォーマットはない。それはまるで冒険のようだ。
「まだまだ課題も多く、全てにおいて一筋縄にはいきません。ただ、地域に対して、生産者さんに対して、そして、YORIに対して、正直に向き合いたい。今後、YORIがよりあわせることによってどんな世界が広がるのか……。自分自身も楽しみ」。
何を隠そう、小口氏もまた、「YORI」によりあわせてもらっているひとりなのかもしれない。
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