木曽平沢の漆器巡り。歴史と伝統、そして美しさに触れる旅。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

『石本玉水』の石本則男氏、愛子さん夫妻。ともに漆器職人として木曽漆器を支え続ける。

DINING OUT KISO-NARAI伝統の木曽漆器を見て、触れて、体験するツアー。

2022年7月末に開催され、大盛況で幕を下ろした『DINING OUT KISO-NARAI』。約2年半の時を越えて開催された『DINING OUT』は、ただ地元を伝えるのではなく、地元の人や文化に触れ、深く地元と繋がることを目指しました。

興奮覚めやらぬその翌日。より深く地元文化を体験してもらうべく、木曽を代表するふたつの文化体験ツアーが企画されました。

ひとつは木曽の霊峰・御嶽を神聖視する御嶽信仰の修行である滝行の体験。そしてもうひとつは、木曽を代表する工芸品・木曽漆器を学ぶツアーです。

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各地の旅館やホテルで見られる座卓や脇息にも、木曽漆器が多く使用されている。

DINING OUT KISO-NARAI木曽の漆器を支える漆掻きという仕事。

木曽は、良質な木材の産地。木曽漆器のルーツは、そんな木曽の木材を使って作る木製品をさらに丈夫にするために漆を塗ったことが起源です。木製品に漆を重ね塗りする漆器は、庶民の生活用品としても親しまれていました。

そこに変化が訪れたのは明治時代。奈良井の川で漆と混ざりやすい粘土質の良質な土が見つかり、より堅牢で美しい漆器が作れるようになったこと。そこから庶民の道具だけではなく、高級調度品も生産され、木曽は漆器の産地として発展していきます。

『DINING OUT KISO-NARAI』の舞台となった奈良井宿の隣町、木曽平沢。ここは木曽漆器の伝統を色濃く受け継ぐ、漆器の街です。街道が町中を貫く小さな集落に、漆器関連の事業所が100軒以上、漆器店だけでも50〜60軒。そう聞けば、この街と漆器の密接な関係がわかることでしょう。

そんな木曽平沢で行われた漆器体験ツアー。その最初の目的地は漆器ではなく、その元となる漆作りの現場です。

一行を出迎えてくれた竹内義浩氏は、長野県内で唯一、全国でも40〜50人しか居ないという漆掻き(うるしかき)。漆掻きとは、苗木から育てた漆の木に切れ目を入れて漆を採取する職人のことで、竹内氏はそこから精製、調合も手掛けます。その仕事は、漆器職人に渡る前の漆をゼロから生産する仕事。漆の全消費量の1割未満という国産漆を支える、大切な生産者なのです。

竹内氏の仕事場は、木の香りと見たこともない仕事道具の数々に囲まれる不思議な場所。しかし竹内氏の仕事と、漆に対する真摯な想いを伺うにつれ、木曽漆器がより深く、美しく見えてくるのです。

苗木を植え、育て、漆を抽出、精製、調合するのが竹内義浩氏の仕事。漆産業の根本を支える職人だ。

樹皮をひっかくように傷をつけると、その場所を守るように漆が染み出す。木一本から採れる漆は、1回わずか15g。年間でも1本あたり200gほどしか採れない。

木曾漆器工業協同組合の精漆工場。かつては手作業で天日にさらしながら精製していたが、現在は機械で撹拌して水分量を調整する。

漆の苗が成木になるまでは15年。「木も職人も育つまで時間がかかる。それが漆の難しいところ」と竹内氏。

DINING OUT KISO-NARAIそれぞれ個性豊かな3軒の工房を訪れる。

続いては木曽平沢にある、3軒の漆工房へ。

最初に訪れた『うるし工房 石本玉水』は、漆器職人・石本則男氏が奥様の愛子さんとともに営む工房。石本氏は木曽漆器工業協同組合の理事長を務める人物であり、今回の『DIINNG OUT KISO-NARAI』でゲストにプレゼントされた漆器制作においても中心的な役割を担った人物。

得意とするのは、蛋白を混ぜた漆で刷毛目を残して、やや艶を消す松明塗です。刀の鞘に塗られた技法が起源で「カジュアルに普段遣いしてもらいたい」と言います。一方で愛子さんの得意分野は、漆を接着剤として金やプラチナ、顔料などを沈め、そこからノミで削り出すことで図柄を浮かび上がらせる沈金という技法。こちらは絵画のような色彩で、芸術品としての美しさを秘めています。日用品と芸術品。漆の奥深さを改めて感じる工房です。

次に訪れたのは、漆器職人・巣山定一氏の工房『漆芸 巣山定一』。ここでは巣山氏の作品に加え、漆器作りの準備段階の話も聞かせてもらいました。

「漆は特殊な世界で、専用の道具がほぼありません。だから漆器作りのスタートは、まず道具を作るところから」。

そう言って鉋(かんな)を取り出す巣山氏。見事な手さばきで木を削り、作るのは漆に使うヘラや刷毛など。つまりスタート地点に向かうための作業です。しかしこれも、漆器職人の大切な仕事。そんな道具を使って仕上げる巣山氏の作品は繊細でいながら頑強で、末永く愛用できる品ばかりです。

最後の一軒は『伊藤寛司商店』。4代目店主・伊藤寛茂氏の案内で漆器を見学します。ここで目を引くのは、古代あかね塗というオリジナルの漆器。

「塗ったばかりの漆は暗い色。それが使い込むごとに、艶が出て明るくなります。この変化のために、7〜8回重ね塗りする最後の一回に、貴重な国産漆を使用しています」と伊藤氏。

展示されていた経年変化を経た古代あかね塗の器は、鮮やかな朱と見事な艶を放っていました。さらに伊藤氏は工房である築110年の土蔵も案内してくれました。荘厳ささえ感じるような静謐な蔵で繰り返される漆器づくり。改めて、この地の漆器に込められた思いの強さを感じる光景です。

石本則男氏と松明塗。使い込むほどに艶が増す木曽漆器の特性が如実に表れる。

愛子さんと沈金の作品。背後にある額装された作品も、すべて顔料を混ぜた漆を削り出すことで描かれている。

『DINING OUT KISO-NARAI』では、オリジナルの漆器を『木曽漆器工業組合』と制作。とうじそばを入れたそれを、ゲストにサプライズでプレゼント。

『漆芸 巣山定一』の巣山氏。実用性と芸術性を兼ね備えた作品に定評がある。

巣山氏の代表作である姫枡重市松三段は、現在7年待ちの人気ぶり。

「軽さ、持ちやすさ、口当たりの良さ、洗いやすさ、重ねやすさ、という5つの“さ”を重視しています」と巣山氏。道具も自ら製作する。

日用品から高級品まで幅広い品ぞろえに定評がある『伊藤寛司商店』の4代目店主・伊藤寛茂氏。

工房である蔵は築110年で、現役の塗蔵として木曽で最古のもの。作業道具を上げ下げできるように窓が大きく取られているのが特徴。

古代あかね塗の椀。仕上げに希少な国産漆を使用することで、使うほどに艷やかに、丈夫になる。

DINING OUT KISO-NARAI漆とともに木曽の地に受け継がれる、おもてなしの心。

ツアーで巡った漆器の街・木曽平沢には、いくつか特徴的な風習もあります。ひとつは、店にスタッフが居ないこと。

間口の広さで税率が決められていた木曽平沢の建物は、入り口が狭く、奥に細長いうなぎの寝床。通りに面した側に店舗やギャラリーがあり、中庭を挟んで奥に工房がある造りが一般的です。

そして、職人たちは基本的に工房で作業をしているため、店舗部分は無人なのです。客は街道からふらりと店に入り漆器を見学、用があれば呼び鈴を押して工房にいる人を呼び出すというスタイル。不用心なようにも思えますが、これが工房と店舗を併設する木曽平沢らしさなのです。

もうひとつの特徴は、どの工房にもおもてなしの心が溢れていること。職人の方々に漆について尋ねれば、丁寧に教えてくれるのはもちろん、お茶やお茶菓子を出して、座って話し込んでしまうこともしばしば。古くから旅人を迎えた街道の文化なのでしょうか。

「せっかく遠くから来ていらしたからね。ただ“来てくれてありがとう”という気持ちです」。『石本玉水』の石本愛子さんはそう笑いました。

ツアーの締めくくりは、昭和6年(1931年)築の『日々別荘』にてランチ。ここは地域おこし協力隊の近藤沙紀氏が家主を務める施設で、週末に近藤氏主催のカフェがオープンするなど、さまざまな企画で地域活性化の拠点となる場所。

そんな『日々別荘』でこの日は、地元の郷土料理である朴葉寿司と、手打ち蕎麦が供されました。もちろん、器や箸は木曽漆器。器と料理を担ってくれたのは、『漆工房 野口』の野口義明氏と野口早苗さん。さらにこの蕎麦を打ったのは、先にご紹介した漆器職人・巣山定一氏。最後までおもてなしの心にあふれていました。

漆工房で漆の成り立ちを知り、石本夫妻の工房でその奥深さを知り、巣山氏に道具としての漆器のこだわりを伺い、伊藤氏のもとで伝統的な作業を見学し、そして最後に実際に漆器で食事をする。わずか半日の間に、木曽漆器に親しみ、漆器を深く学ぶことができるツアーでした。

漆器は職人の手で塗り直され、丁寧に修復されながら、長く愛用するもの。木曽平沢では毎年、多くの人で賑わう漆器市も開催されますので、何度でもこの街を訪れ、愛用の漆器を塗り直しながら、このおもてなしの文化と、木曽漆器の伝統を体感してみてはいかがでしょうか。

『日々別荘』は、ゲストハウスとしても利用可能なため、1日を通して町を楽しむこともおすすめです。また、より木曽漆器の伝統に触れたければ、ぜひ『木曽くらしの工芸館』へ。奈良井、平沢の職人の作品にも出合うことができます。

人、もの、こと。さまざまな体験をすることによって、この町の魅力は初めて享受できるのです。ですが、一度では、まだ足りないかもしれません。なぜなら、その全てが深く、奥ゆかしいからです。だから、皆、再訪を誓うのかもしれません。

おもてなしは特別なことではなく、ただ感謝の気持ち。それが木曽平沢に共通する人々の思い。

漆器ツアー最後には、『日々別荘』にて食事を。『漆芸 巣山定一』の巣山氏は、蕎麦打ちも行う。左より、『一般社団法人 塩尻・木曽地域地場産業振興センター』太田洋志氏、巣山氏。そして、『日々別荘』にて器と料理を担った『漆工房 野口』の野口義明氏と野口早苗さん、巣山とし子さん。ここにはいないが、今回のツアーは、近藤沙紀さんが構成。多くの地元の方々が参画したからこそ内容の濃い体験につながった。

住所:長野県塩尻市木曽平沢1692 MAP
電話:0264-34-2106

住所:長野県塩尻市木曽平沢1634-35 MAP
電話:0264-34-2254

住所:長野県塩尻市木曽平沢1607 MAP
電話:0264-34-2034

住所:長野県塩尻市木曽平沢1587 MAP
電話:0263-88-8530

住所:長野県塩尻市木曽平沢2272-7(道の駅 木曽ならかわ内) MAP
電話:0264-34-3888

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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宇和島名物・太刀魚巻。時代を越えて愛される唯一無二の味。[河合太刀魚巻店/愛媛県宇和島市]

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秘伝のタレに潜らせながらじっくりと焼くことで、香ばしく、味わい深いおいしさになる太刀魚巻。

河合太刀魚巻店海産資源の宝庫・愛媛県で異彩を放つ名店。

北の瀬戸内海、南の太平洋、伊予灘、宇和海、豊後水道と豊富な漁場を抱える愛媛県。実際に訪れてみると、魚それぞれの鮮度や脂の乗りに加え、魚種の多彩さに驚かされます。街の食堂にも、魚屋にも、見たこともないようなさまざまな魚が並んでいます。

そんな愛媛県の宇和島に、少し変わった店があります。
店名は『河合太刀魚巻店』。その名の通り、太刀魚巻の店です。これほど魚種が豊富な愛媛で、太刀魚一本勝負。そこにはどんな物語が隠されているのでしょう。

「河合太刀魚巻店」の外観。かつては魚屋で賑わったエリアだが、いま賑わうのはこの店のみ。

河合太刀魚巻店名物はなくても訪れたくなる看板娘の人柄。

「ごめん!今日は太刀魚ないんだよ」

それが取材班を出迎えた『河合太刀魚巻店』の看板娘・河合京子さんの第一声でした。相手は自然。無いものは、無い。

「あるときは週に4〜5日はあるんだけど、無いときはめっきり。5回来て外れて、6回目でようやく、って人もいたよ」

快活で聞くだけで元気がもらえるような京子さんの声に惹かれ、店先でもう少し話を伺ってみました。

聞けば名物・太刀魚巻を考案したのは、京子さんの祖父。まだ冷蔵庫も普及していない時代、大量に揚がる太刀魚を活かすために青竹に巻いてチクワの焼台で焼いたのが始まりでした。

「このあたりは魚棚という地名で、この通りはみんな魚屋だったんだよ」

というが、現在、この店のほかに開いている店はありません。時代の流れを感じると同時に、その次代を越えて愛される太刀魚巻にいっそう興味が湧きます。

「コロッケはあるよ。これもおいしいよ」

それはこの店のもうひとつの名物、アジのすり身のコロッケ。ぎっしりと凝縮されたアジの旨みと、弾力、ピリッと効いたスパイス。素材が良いからか、魚の臭みとは一切無縁。味わい深く、ジューシーで、後を引く絶品です。

さらに京子さんの話は続きます。祖父と父のこと、近年の太刀魚の水揚げのこと、宇和島のこと、テレビの取材で大好きな俳優と中継で話し夢が叶ったこと。まるで昔からの友達と話すような時間。さすがは看板娘。名物の太刀魚巻がなくとも、訪れる価値がある愉しい時間を過ごせるはずです。

「河合太刀魚巻店」の看板娘・河合京子さん。その明るい人柄にファンも多い。

店のもうひとつの名物アジのすりみコロッケ。アジ100%で魚の旨みを凝縮。

プリッとした弾力と旨みに加え、スパイスの刺激もあり、酒の肴にもぴったり。

店の内観。客席などはないが、ここで名物を肴に一杯飲んでいく常連客も多い。

河合太刀魚巻店2日目にして出合えた名物・太刀魚巻。

翌日、取材班はもう一度店を訪れてみました。迎えてくれたのは昨日と同じ京子さんの笑顔。

「今日はあるよ!」

あたりに漂うタレが焦げる香ばしい匂い。焼台では見事な照りを放つ太刀魚巻が焼かれています。これが名物・太刀魚巻です。

淡白な太刀魚の身に絡む濃厚な甘辛のタレ。外側はパリッと香ばしく、中はふっくら柔らかで、ボリュームもたっぷりだ。一本あたり一尾半から二尾の太刀魚を使っているのだといいます。いまや高級魚となった太刀魚の、なんと贅沢な食べ方でしょう。

時代を越えて愛される名物・太刀魚巻。確かにこれはここにしかない、世界でひとつの味でしょう。

遠方から訪れる客も多いというこの店。それはもちろん太刀魚巻とアジのコロッケのおいしさのためでしょう。しかし話すだけで元気がもらえるような京子さんの存在もまた、『河合太刀魚巻店』の価値のひとつであることは間違いありません。

焼台から漂う、タレの焦げる香ばしい匂いは、角を曲がって表通りまで漂う。

外はカリッと香ばしく、中はふんわり。太刀魚の淡白な味わいが、タレとベストマッチ。

住所:愛媛県宇和島市吉田町魚棚28 MAP
TEL:0895-52-0122
http://www.tachiuomaki.com/

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(supported by SUBARU)

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山形・庄内の一流料理人や農家とともに開発したコーラシロップ。[和光アネックス/東京都中央区]

タイポグラフィの美しいデザインボトル。1本で約10杯のクラフトコーラを楽しめる。

WAKO ANNEX出羽三山の麓から生まれた、山形発のクラフトコーラ。

コリアンダー、シナモン、カルダモン、クローブなど、10種のスパイスが織り成す芳醇な香り、ブドウ糖、果糖、黒糖の3種の糖類のキレの良い甘味、レモン、ライム果汁の2種の柑橘のスッキリ爽快感。

それぞれのバランスが絶妙に良い飲み口のクラフトコーラが『YATA COLA』の特徴。製造しているのは、山形県鶴岡市の『ティーズファクトリー』です。

「山形・庄内に住むわたしたちが作る山形を楽しみ味わう、山形発のクラフトコーラ」は、山形・庄内の一流フレンチシェフや農家が集まり、独自のレシピを開発。たっぷりのミネラルと豊富な栄養価も含み、健康にも配慮。老若男女問わず支持を得ています。

前述、スパイスをしっかりと感じることができる一方、クセもなくレシピ派生もしやすく、炭酸割りをはじめ、お湯割り、牛乳割り、いずれも1(『YATA COLA』):3がおすすめ。加えて、料理の調味料としても利用できるため、ぜひお試しを。

様々な飲み方を楽しめるのがコーラシロップの利点。本文中に記したよう、氷で冷やしたグラスに『YATA COLA』とソーダを割るスタンダードをはじめ、『YATA COLA』と冷たい牛乳を注いだアイスチャイや『YATA COLA』と水を鍋で温めたホットコーラもおすすめ。お好みに合わせてぜひ。(全て1:3の割合が目安)

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

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約300年の成果。土作りから食材に向き合う、絶品ジャム。[和光アネックス/東京都中央区]

一本一本、丁寧に育てられた植木からできた『夏みかんマーマレード』。味わいは甘さ控えめ。皮も残しているため、食感も楽しい。

WAKO ANNEXみんなに味わっていただきたいことは、植木の美味しいところ。

東京都三鷹市の植木農家『天神山須藤園』は、戦国時代の城跡が残る天神山にて14代300年以上にわたり土を耕してきました。

そんな歴史ある農園が「植木をもっと身近に」と展開しているのが畑に実った果物を活かしたジャム類。中でも『夏みかんマーマレード』は、人気の品です。

皮をしっかり残し、甘さは控えめに。苦味と甘味のバランスが絶妙な食べ応えのあるマーマレードは、畑仕事同様、手間ひまをかけ、ひとつひとつ丁寧に作られています。

冬に採った夏みかんは、そのままでは酸味が強いため、収穫後に貯蔵。酸を抜き、春まで待って加工しています。もちろん、化学調味料や合成保存料は一切使用せず、無添加。素材の味を大事にしています。

おすすめは、やはりトーストとご一緒に。塗れば、たちまち夏みかんの香りが立ち、凝縮された味を楽しむことができます。また、ソーダや紅茶ともお試しあれ。上質さが増し、ワンランク上のひと時を満喫できるでしょう。

都市農家として、植木生産農家として、農地の魅力や役割を伝えながら、まちなかに根付き、生きている『天神山須藤園』の姿は、実に清々しく、『夏みかんマーマレード』にも似ます。

名は体を表すごとく、生き方は味を表すのかもしれません。

そんな想いを馳せながら『夏みかんマーマレード』とトーストの朝を迎えれば、爽快な一日が約束されるでしょう。

たっぷりと『夏みかんマーマレード』をパンに載せてぜひ。味だけでなく、フレッシュな香りも魅力。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
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Photographs:JIRO OHTANI
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御嶽信仰の聖地で滝に打たれ、やがて心は自然と一体になる。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県王滝村]

『御嶽神社』新滝での滝行。一般体験は『一般社団法人・木曽おんたけ観光局』に問い合わせを。

DINING OUT KISO-NARAI「DINING OUT」翌日。地元の文化を肌で感じるふたつのツアー。

2022年7月末に長野県奈良井宿で開催された『DINING OUT KISO-NARAI』。

約2年半ぶりの開催となった19回目の『DINING OUT』は、地元婦人会や伝統工芸品組合、地元小中学校の生徒たちに支えられ、ゲストにただ地元の魅力を伝えるだけでなく、この先も長く地元との繋がりを生みました。

【関連記事】山に触れ、山を知り、山に学ぶ。中山道34番目の宿場・奈良井宿を舞台にした19回目の「DINING OUT」速報。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

さらに地域と繋がり、理解を深めるために、晩餐の翌日には、地元文化に触れるふたつのツアーが組まれました。ひとつは、『御嶽山信仰』の一貫である滝行、もうひとつは、この地に伝わる木曽漆器の工房巡り。

この記事ではそんなツアーのひとつ、滝行の様子をお伝えします。

滝行の場へと向かう山道。夏日だが登るにつれて空気はひんやりと変わっていった。

DINING OUT KISO-NARAI「御嶽山」を敬い、信仰する「御嶽信仰」の歴史。

土地や歴史、伝統や由縁を知り、その上で見て、感じ、経験する。それが本当の意味の体験となって、心に刻まれるもの。今回のツアーではそんな知識を学びつつ、バスに乗って滝へと向かいます。

ガイドは、木曽の文化や歴史を紹介する輿幸信氏。バスの中では、この地に育ち、『御嶽信仰』を身近に感じてきた輿氏による解説が繰り広げられました。

『御嶽山』は標高3,067m。独立峰としては富士山に次いで日本で二番目の高さを誇り、その悠然とした姿から古くから山岳信仰の対象とされてきました。ただしその信仰は、厳しい修行により悟りを開こうとする修験道。一般の人には、遠い世界の話でした。

それが変わったのが江戸時代末期。「講」と呼ばれる、地域のコミュニティ単位で信仰するグループが誕生します。講の中で集めた資金で代表者が参拝するこの講で御嶽信仰は身近になり、一説によると、一時期にはその数60万人近くまで信者を増やしたと言われています。

滝行のスタイルも、そのときに変化。修験道では1日4回の滝行を100日間続けてようやく山に入ることができた、という滝行。それが徐々に緩和され現在では、日帰りなどもできる比較的体験しやすいものになっています。

しかし、先人たちが命を賭して挑んできた滝行と、その背景は同じ。山に触れ、自然と一体化し、雑念を払い、体に自然のエネルギーを取り込む。それがこの地の滝行の目的です。

窓の外の景色や自らの実体験を交えながら、おもしろく、わかりやすい解説を続ける輿氏。

「私も滝行は何度も経験しています。人生観が変わるような体験です」。

そんな言葉でツアー参加者たちの気持ちを盛り上げます。

ガイドの輿氏(左)と参加者たち。輿氏の話により、ただの山景色が霊山としての意味を持ち始めた。

『御嶽神社』第22代宮司である滝 和人氏のお祓いを受け、正式参拝する希少な体験。

里宮内に飾られる信者に奉納された天狗の面。島崎藤村の『夜明け前』内にも、この面の精密な描写がある。

山の中に無数にある石は墓ではなく霊神碑という信仰の証。『御嶽信仰』では人は亡くなると『御嶽山』に引き寄せられ神の眷属になると信じられている。

DINING OUT KISO-NARAI滝に打たれ、自然に溶け込む。滝行の本質を見たゲストたち。

まず『御嶽神社』で宮司による正式参拝を終えた一行が、いよいよ滝へと向かいます。

普通、一般向けの滝行では「清滝」という滝で行われるところを、今回のツアーでは修験道の修行の場であり、より荘厳な「新滝」へ。水量が多く、流れも強いこの神聖な場所で滝に打たれるのです。

白装束に着替え、次いで準備運動を兼ねた禊。舟を漕ぐような動作と独特の祈りの言葉で山の神を呼び込みます。

禊を終え、水の落ちる轟音に圧倒されつつ、滝の中へ。斜めから日が差し、水しぶきが虹を作る荘厳な風景です。

それぞれ滝に打たれたツアー参加者たち。その顔は一様に、体験前よりすっきりとしているように見えました。
「やる前は不安でしたが、いまは清々しい気持ち」。
「水は冷たかったけれど、だんだんそれを感じなくなり、自分が自然と一体化したような気分になりました」。
「大自然のなかで、自分が、人間が自然の一部なのだと感じられました」。

参加者たちからはそんな感想が飛び出し、輿氏はうれしそうにそれを聞いていました。

「自分が生まれ育った木曽の、他にはない部分を伝えることが私の役目。今日という日の体験で、そんな何かを感じ取ってもらえたら。峠の古道歩きのツアーもやっているので、ぜひまた木曽に来てください」。

輿氏はにこやかにそう話し、参加者たちを見送りました。

轟音とともに水が流れ落ちる新滝。修験者たちが修行の場とした聖地。

準備運動を兼ねた禊の儀。大声を出し、体を動かすことで体の中の悪いものを出し、滝に打たれて新たに良いものを取り入れる。

滝に向かう参加者。大迫力の新滝だが、清浄な空気と水しぶきが心を洗う。

「行けるところまで行き、自然と一体になったと思ったら戻る」との指示。どの参加者も体験後は、その言葉を深く理解していた。

住所:長野県木曽郡王滝村3315 MAP
TEL:0264-48-2637
https://www.ontakejinja.jp/

住所:長野県木曽郡木曽町福島2012-5 MAP
TEL:0264-25-6000
営業:8:30~17:30(年末年始休業)
http://www.kankou-kiso.com/

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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大人気のディップシリーズ。クセになるピリ辛ソースは、高いリピート間違いなし![和光アネックス/東京都中央区銀座]

人気の高い『NORTH FARM STOCK』のディップシリーズの『北海道野菜のディップ(トマト・チリ)』。60gの食べきりサイズは、いつも鮮度良く食べることができる。※本製品は蜂蜜を使用しているため、1歳未満の乳幼児には与えないでください。

WAKO ANNEXこのひと瓶さえあれば、誰もが料理上手に! 付けるだけで料理の美味しさに。

北海道産トマトと人参の旨みをギュッと凝縮させたピリ辛クリーミーなマヨネーズタイプの『北海道野菜のディップ(トマトチリ)』は、北海道岩見沢市『白亜ダイシン』の大人気シリーズ、『NORTH FARM STOCK』の品。

どこにもない上質な味。そして、四季のはっきりした北海道ならではのピュアなおいしさを届けることにこだわり、北海道発のナチュラルブランドを誕生させました。

地元の意欲ある農家とも連携を計り、岩見沢の、北海道の、おいしいものを全国に発信。愛する北海道をますます元気にするため、商品を展開し続けています。その中でも人気を博しているのが、前述の『NORTH FARM STOCK』ディップシリーズなのです。

クラッカーやカリカリに焼いたトースト、スティック野菜、サンドイッチのベース、ソーセージ、フライドポテトなど、一緒に食べれば、たちまち上質な料理に!

美味しい理由は様々あれど、特筆すべきは、素材と環境、そして人。新鮮な空気、綺麗な水、太陽の恵みなど、日本屈指の良質な風土を持つ北海道からは、同じく良質な農産物が育ちます。それだけでなく、「北海道のおいしいものを蔵出しで」を大事に、自分たちの目の行き届く範囲で産地や生産者とも繋がり、レシピもできる限りオリジナルを追求。瓶詰めから出荷まで、全て手作業で行います。

そんな想いが詰まった逸品は、一度食べればリピートすること間違いなし! 自身の食卓はもちろん、ギフトにもおすすめです。

おすすめは、シンプルな焼き野菜に添えてぜひ。ビールや赤ワインにも合う万能ディップ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

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「百万石の極み」に20品目を認定。全国に誇る至高の石川食材、統一ブランド化スタート。

百万石の極み知る人ぞ知る逸品食材がラインナップ。

豊かな里山里海に恵まれた能登半島、深い原生林が清冽な水を育む霊峰白山、肥沃な穀倉地帯を形成する手取川扇状地……。南北約200kmに細長く伸びる石川県は、実に多彩な表情を持っています。

その県土の各地で獲れる農作物、港に揚がる水産物は、量が多くはないために県外に流通する機会は少なく、全国的な知名度は決して高いとは言えません。しかし近年は、卓越した品質がゆえに一流の料理人たちがこぞって愛用し、一般人にもその名と唯一無二の美味しさが知られるようになった農林水産物も数多く存在します。

石川県は今年8月、県独自の優れた農林水産物を「百万石の極み」と認定し、統一ブランド化すると発表しました。ブランド化の専門家や生産流通関係者らでつくる有識者委員会により第一弾として選出されたのは、ルビーロマンや能登牛、加能ガニなど20品目です。

【認定基準】

  1. 一般的な品種と比較して形状・機能が優れているなどの「差別化」があること
  2. 品質管理体制が確立されているなど「生産体制」の充実
  3. 高い初競り価格やトップブランドと同等以上の価格など「市場性」の高さ
  4. 生産量が維持・拡大する見込みであるなど「生産量」の充足

第一弾の20品目は、いずれも一流シェフや美食家たちを唸らせる逸品ばかりです。

「百万石の極み」認定品目
ルビーロマン
能登牛
ひゃくまん穀
百万石乃白
能登とり貝
加賀しずく
のとてまり
エアリーフローラ
能登大納言小豆
能登志賀ころ柿
高松紋平柿
五郎島金時
加賀太きゅうり
加賀れんこん
加賀丸いも
源助だいこん
輪島海女採りあわび
輪島海女採りさざえ
加能ガニ
香箱ガニ
※「百万石の極み」の食材に関する情報はこちら

【関連記事】生産者の想いは熱く、その味は洗練の極みに。珠玉の石川食材、めくるめく。

『レスピラシオン』オーナーシェフの梅達郎氏。

『SHÓKUDŌ YArn』オーナーシェフ兼ソムリエの米田裕二氏。

『片折』主人の片折卓矢氏。

百万石の極み卓越した食材が生み出される背景をつぶさに見つめて。

これまでONESTORYでは、石川県のさまざまな食材に注目し、取材を重ねてきました。料理の世界の第一線で活躍するトップシェフ、パティシエ、ソムリエの方々と一緒に、時には生産者の元を共に訪ね、日々の生産における秘密や苦労についてうかがってきました。現地を直接肌で感じ、生産者の生の声を聞くことで、逸品食材が持つ魅力を理解したい。そして、そのポテンシャルをより良い使い方、調理の工夫やアイデアによってさらに高めたい。優れた食材に対する感謝と畏敬の念がそこにはありました。

今回、「百万石の極み」に認定されたいくつかの食材もONESTORYで取り上げ、大きな反響を呼びました。

ローカルガストロノミーの最前線に綺羅星の如く登場した金沢のスパニッシュレストラン『respiración(レスピラシオン)』。そのオーナーシェフのひとりである梅達郎氏と七尾湾に出て、海に浮かぶ養殖筏の現地取材を敢行したのは「能登とり貝」。一般的なものの2倍もある大きく肉厚なとり貝を育む里山里海の豊穣さ、手間を厭わず環境変化に弱いとり貝を大切に育てる漁師の方々に直接ふれることで、類まれな美味しさの背景を知ることができました。

能登町の高台に広がる「能登牧場」では、黒毛和牛である能登牛の飼養の様子をつぶさに見学しながら、能登牛の圧倒的な美味しさの秘密に迫りました。さらに、小松市のイノベーティブレストラン『SHÓKUDŌ YArn(ヤーン)』では、オーナーシェフ兼ソムリエの米田裕二氏に能登牛を使った料理を作っていただきました。「牛すじ煮込み」と「牛ヒレカツとじ」と銘打つ2皿でしたが、そんななじみ深い料理名からのイメージをいい意味で期待を完全に裏切る斬新なレシピと新感覚の美味しさに、取材班一同感服したことを思い出します。

能登のブランド原木椎茸「のと115」。そのプレミアム規格「のとてまり」の生産地を訪ねたのは片折卓矢氏。そう、今や日本を代表する和食の一店となった金沢の日本料理店『片折』の親方です。毎日最高の食材を求め、早朝からスタッフ総出で県内各地の漁港をまわり、天然水を汲み、山に分け入って山野草を摘んで……と東奔西走する同店。さすがの片折氏も極めて希少とされる、のとてまり級の巨大な椎茸が原木についているのを見るのは初めて。「鳥肌が立ってしまう」と、興奮しながら収穫を手伝う姿が印象的でした。

石川県七尾市出身の世界的なパティシエ・辻口博啓氏と訪ねたのは、県内のとあるブドウ畑。石川県が長年かけて開発した奇跡のブドウ「ルビーロマン」がちょうど収穫の時を迎えていました。2011年の初競りでは、辻口氏が一房50万円の当時最高値で落札し、東日本大震災で被災した中学生に振る舞ったという経緯もあり、同氏にとってひときわ思い入れの強いフルーツです。ブドウ棚からもいだばかりのルビーロマンを味わった辻口氏。この年、畑でのインスピレーションからルビーロマンを使った新作がお店で出されましたが、一体どのようなスイーツに仕上がったのでしょうか?

2020年から本格的に醸造に使われるようになった石川県生まれの新品種酒米「百万石乃白」。全国有数の酒どころとして知られる石川県で長年切望されてきた吟醸用の酒米です。当時百万石乃白で醸された全銘柄21種を取り寄せ、日本のトップソムリエのひとりである大越基裕氏が一挙に唎酒を実施。1本1本を緻密に分析していただきました。そこで特に気になった「手取川」にフォーカスし、造り手である白山市の酒蔵「吉田酒造店」を訪ねました。さらに、新品種の開発に取り組んだ研究所、未知の米作りにチャレンジした農家を訪ね、新しい日本酒が誕生するストーリーをたどりました。

どの取材でも現場でひしひしと感じられたのは、生産者の作物に対する大きな愛情と、最高のものを生み出そうという気概です。最高峰の食材たちを、やはり料理界最高峰のキーマンたちと共に取材できたことは、メディアとしてもこの上なく幸せなことでした。

『レスピラシオン』梅達郎氏による能登とり貝の一皿。

『SHÓKUDŌ YArn』のコースに登場することもある能登牛の「牛ヒレカツとじ」。

『片折』では、のとてまりをシンプルに出汁醤油を塗って焼き上げた。

ルビーロマンの畑を視察する『Mont St. Clair(モンサンクレール)』の辻口博啓氏。

辻口博啓氏が考案し期間限定で商品化したルビーロマンのスイーツ、その名も「ルビーロマン」。

百万石乃白を使った日本酒の全銘柄を、大越基裕氏は丹念に唎いた。

百万石の極み鈴のロゴマークは最高峰級の証。

「百万石の極み」のロゴマークは、枝にぶら下がる果実のようであり、漢字の「百」も思わせるデザイン。「鈴のようにたわわに実って継続的に未来へとつながってほしい」という願いが込められているといいます。

認定された20品目は販売促進が強化されていくとのことで、今後は県外でも目にする機会が増え、買い求めやすくなっていくかもしれません。なかには高価なものもありますが、少し背伸びすれば手が届くものがほとんど。身近に楽しめる最高峰級の食体験と言えます。

せっかくの一流の素材なら、プロの料理人に料理してもらったものを味わいたい。そう考える向きもあるでしょう。今後は石川県内の飲食店のみならず、県外にも「百万石の極み」素材を提供する店が増えていくはずですから、お目当ての食材をメニューに見つけたらぜひ味わってみましょう。

今後、「百万石の極み」のラインナップはさらに拡充されていく予定。石川の逸品食材はますます輝きを放っていきそうです。



Photographs:SHINJO ARAI, DAICHI MIYAZAKI
Text:KOH WATANABE
(supported by 石川県、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構)

石川県食のポータルサイト
いしかわ百万石食鑑
https://ishikawafood.com/

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地域の想いが込もった木造校舎で学ぶ。「塩尻市立楢川小中学校」。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

1991年に作られた『塩尻市立楢川小中学校』の校舎。2022年度に小中学校に移行するにあたり改築されたばかり。

DINING OUT KISO-NARAI「DINING OUT」の骨格的存在。レセプションの舞台となった、義務教育学校。

2022年7月末に長野県奈良井宿で開催された『DINING OUT KISO-NARAI』。そこで最初にゲストを迎えるレセプションの場に選ばれたのは、『塩尻市立楢川小中学校』(以下、楢川小中学校)でした。

『DINING OUT』のレセプションに学校施設が使われるのは異例のこと。それでもこの学校こそ木曽の文化や歴史をゲストに伝え、体験してもらうための最適な場所として選ばれたのです。では『楢川小中学校』とは、いったいどのような学校なのでしょうか?

平成3年に木造校舎を新築。地元のひのきをふんだんに使用した、木の香り漂う空間は、音を吸収したり、湿度を調整する働きもある。

DINING OUT KISO-NARAI希少な木曽ヒノキをふんだんに使う木造校舎。

『木曽楢川小学校』と『楢川中学校』が統合され、小、中一貫教育の義務教育学校『楢川小中学校』となったのは今年度から。現在は1年生から9年生まで、約100名の児童生徒がここで学んでいます。

校舎は旧『木曽楢川小学校』の建物を増改築。約30年前に建築された、木曽ヒノキをふんだんに使った木造校舎です。これが、この地を伝える最初のポイント。土壌が固く、地中に深く根を張ることができない木曽地方のヒノキは成長が遅く、それゆえに年輪が濃密になり非常に硬い木材。寺社仏閣の建立や文化財の補修に使われるという希少な木材でもあります。

そんな木曽ヒノキをふんだんに使っているという事実は、この地が山や森といかに密接につながっているかを伝えます。

校内のいたるところにたっぷりと木材が使われる温かみのある雰囲気。

校舎1階にある教室。左手の窓の外は校庭。

DINING OUT KISO-NARAI偉大な芸術家の言葉とともに給食をいただく時間。

校舎に入り、木の温かみがある廊下を歩くと、突き当りはランチルームと呼ぶ給食会場。児童生徒たちは全員揃ってこのランチルームで昼食をとり、学年の垣根を越えた交流を図ります。そんなランチルームの入り口上には、大きな書が飾られています。

「山中に学ぶ」。

これは、この地に縁の深い芸術家・池田満寿夫氏の揮毫。山に触れ、山の恵みに感謝し、山とともに生きる。そんなこの地らしい言葉とともに、児童生徒たちは毎日食事を食べているのです。この言葉はそのまま、『DINING OUT KISO-NARAI』のテーマともなりました。

廊下を歩く児童生徒たち。生徒たちは奈良井宿のガイドなどもしながら地域との繋がりを学ぶ。

ランチルームに掲げられた池田満寿夫氏の揮毫による書。1992年にこの地を訪れた池田氏によって書かれたもの。

DINING OUT KISO-NARAI日々使う給食食器も、伝統工芸品・木曽漆器。

昼食の時間。ランチルームに併設された厨房で作る給食が食器に盛られます。その食器は、なんと木曽漆器。

この地に伝わる美しい漆の器で、児童生徒たちは毎日の食事をいただいているのです。この素晴らしい取り組みは、伝統文化や食事を大切にするための食育の一貫。地元漆器生産者の協力のもとでこの食器が使われているのです。

漆器は大切に扱えば何百年も使用できますが、乱暴に扱えば傷がつくことも割れることもあります。漆器のこと、歴史のこと、地元文化への誇り、物を大切にする心。生徒たちは食事を通して、さまざまなことを学ぶことができるのです。

そして、この精神性もまた、この学校をレセプションの場とすることでゲストに伝えたいことのひとつでした。

「地域の方の想いが詰まった学校です。だから地域を大切にしながら、この地だからできる教育をしていきたい」。山本秀樹校長は、そう話します。

児童生徒たちは3年生から漆の技法を学び、6年生になるとその集大成として、作った漆器を地元の漆器まつりで販売。コロナ禍でまつりが中止になっていた時期には、「ならにこ」というこども会社を立ち上げました。

あのランチルームに掲げられた言葉「山中に学ぶ」は、コロナの逆境にあってもこうして力強く、ポジティブに貫かれているのです。

そんな楢川小中学校をレセプションの舞台にした『DIINNG OUT KISO-NARAI』。奈良井宿の文化や歴史、地域への思いは、この校舎を通して、ゲストたちへと伝えられました。

漆器を日常的に使うことで、地域の伝統文化や物を大切にする心を育む。使うほどに艶が増すのは木曽漆器の特徴。

『楢川小中学校』の山本秀樹校長。『DINING OUT KISO-NARAI』ではゲストを前に学校説明も行った。

目標は「楢川から未来にはばたく」。9年間の一貫教育はさまざまな効果があり注目が集まっている。

https://www.fureai-cloud.jp/narakawa-ej

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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食の祭典『ドリームダスク ファイナル』が、心に残してくれたもの。[DREAM DUSK FINAL/福岡県福岡市]

コースの口開けは、参加者全員でドン・ペリニヨンで乾杯。歓声が響く中、次々にスマホでパシャリ。久々の大型食イベントの再開を皆が心待ちにしていた瞬間だった。

ドリームダスク ファイナル各界のトップシェフが一堂に集う、食イベントが復活!

「もし、自分が大好きなお店の料理をハシゴして食べられたら最高だな。実際には1日では絶対にありえない名店のハシゴ。東京だけだとしてもハシゴなんてできるはずもないのに、今回でいえば大阪や金沢のシェフもいればミラノのシェフもいる。そんな僕の夢を形にしたところからドリームダスクは始まった……」
イベントの総合プロデューサーを務めた本田直之氏は、そう話しながらイベントの成り立ちを思い出します。2016年の第一回を皮切りに、毎回、日本各地、時には世界に散らばる日本人シェフまで、予約困難店のシェフがその日限りのチームを組んでひとつの晩餐を作り上げる。和食・フレンチ・イタリアン・中華・鮨など、コースを彩るシェフの人選も功名で「この人が前菜担当? この人がデザートなの?」と驚きの連続。通常はイベントなどへの参加を拒んでいるシェフや海外からの参戦など、『ドリームダスク』でしかなし得ない、シェフの編成も多くの耳目を集めてきたのです。実は2020年の第5回をもってファイナルとすることを決断したときには、次なる開催を惜しむ声が鳴り止まず、いつしか、最後の『ドリームダスク』のチケットは、食のプラチナチケットと呼ばれるほどに。

それが、新型コロナの蔓延……

『ドリームダスク ファイナル』として大々的に告知された2020年の最終回は、2度の延期を余儀なくされてしまうのです。
「大勢のお客様を一度にもてなす食の祭典なので、苦渋の決断であってもストップするしかなかった。お客様は本当に長い期間お待たせしてしまったし、シェフやスタッフには何度も何度もスケジュールの都合をつけてもらい、本当に申し訳なかった。2年以上の時を経て、ようやくなんです」と本田氏。この“ようやく”という言葉がイベントをレポートする間、取材班の耳にはずっと印象的に残ったのです。

ようやくの乾杯
ようやくの集い
ようやくの共演
ようやくの再会

今回、ONESTORYでは、7月に行われた『ドリームダスク ファイナル』の伝説の1日をレポート。コロナの影響で2度の延期を経てようやく実現した、食イベントが残した軌跡と奇跡を伝えていきます。

共演を果たしたのは写真右二人目より『すし処めくみ』山口尚享氏、『宮坂』宮坂展央氏、『ShinoiS』篠原裕幸氏、『LaCime』高田裕介氏、『Ristrante TOKUYOSHI』徳吉洋二氏のシェフ5名、ドリンクディレクター『AnDi』大越基裕氏

開演前、150名以上のフルコースディナーのテーブルセットも抜かりなし。今か今かと静かに開演の時を待つ。

ドリームダスク ファイナルあえての、あり得ない料理の連続が、唯一無二のコースに。

5名の錚々たる顔ぶれのシェフがひとり2品ないしは3品を作り、ひとつのコース仕立てで楽しませてくれる『ドリームダスク』。これだけでもあり得ない夢のコースであることは重々理解できるのですが、このイベントの凄みは実は数にあるのです。今回、定員は150名。最終日には参加希望の声が殺到し、会場のキャパシティの許せる限り、なんと180名が一度に食事をともにしたというのです。
それが熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに。できたてが次々とサービスマンによりテーブルにサーヴされ、気がつけばペアリングのドリンクも寄り添うようにセット。この量を一度に手掛ける料理人の技術と熱意はもちろんのこと、会場となった『ザ・ルイガンズ.リゾート & スパ』を運営するプランドゥシーのサービスマンのスピードと手際の良さ、シェフをサポートするキッチンスタッフのチームワークが三位一体となり高次元のクオリティを実現。ゲストはストレスなく、料理と美酒に酔いしれ、至福のときを楽しめていたのです。
開始前「厨房はすごいことになっていますよ」とミラノから参戦の徳吉シェフが話していたのですが、“徳吉シェフはゲストをお出迎えするほどに、随分余裕があるのかな?”と思いきや、茹でたてのパスタを絶妙のタイミングで提供したいがために、あえてコースの途中まではぐっと耐えに耐え、ここぞのタイミングでパスタを茹で、茹で上がった180名分のパスタをフライパンで返し次々とソースを絡めていたのです。10人前のパスタでもベストなタイミングで出すのは至難。それを180人前、シェフがタイミングを図って動き出すと聞き、このイベントの凄まじさを実感。パスタが運ばれたと思いきや総合ディレクター本田氏を含めたスタッフ自らがひと皿ずつトリュフを削るパフォーマンスもゲストに待ち時間を感じさせない絶妙のパフォーマンスだったのかもしれません。
石川県野々市市に店を構える『すし処めくみ』の山口氏はコース中盤、ウニちらしを披露したのですが、なんと180人前の酢飯とウニを舞台上で混ぜ合わせてくれたのです。しかも驚くべきはウニの量と質。酢飯と同等ないしはそれ以上のウニが投入され、混ぜれば混ぜるほど、光り輝くオレンジ色のウニご飯になっていくのです。聞けば、ウニの形を崩したくないと山口氏は石川県から自ら車を11時間も走らせ福岡に会場入り。最高の状態でウニを提供したといいます。
さらに「皆さんに石川県のウニの美しさと質の高さを感じてもらいたくて、車で運びました。でも、結局は見せた後は混ぜちゃうんですけどね」と会場を驚きと笑顔に包みます。
『ShinoiS』篠原氏は前菜、スープ、ごはんまで、最多の皿数3品の広東料理を作り上げ、『宮坂』の宮坂氏は胡麻豆腐に椀物で日本の夏の粋を表現。『LaCime』高田氏はコースのトップバッターとして店の名物・ブータンドックと、魚のメイン・鯵のエスカペシュを提供しフランス料理ならではの深みある味わいを披露してくれました。
それぞれのシェフが思い思いの仕事で個性ある料理を披露していくのですが、個性ある点と点が、一本の線になっていくのも『ドリームダスク』。そこにはドリンクディレクター・大越氏のコースを通した、ペアリングのセレクトが脇を固めているのでしょう。
「まったく異なる料理が順々に提供されるので、コースを通じて気をつけたのは、個性あるベストなペアリングではなく、コース全体を壊さないセレクト。そうしないと、ひとつのコースとしての体裁が壊れてしまいますから」と大越氏。
ひと品ひと品の個性を大切にしながらも、コース全体を影でコントロールする。さらにお酒で物語を紡いでいく。そんなドリンクディレクターの存在もこの5つの個性をひとつのディナーに成立させる影の立役者だったのです。

山口氏が披露した「ウニちらし」。米の量より多い、石川県産のウニのきれいな旨味に酔いしれた。

150人前のウニを一気に酢飯と混ぜる。壇上で披露した山口氏のパフォーマンスに、カメラを持つ人だかりが幾重にも行列を作る。

コース中盤から終盤、一気にパスタを作り出す徳吉シェフ。次から次にフライパンを返し、できたてを食膳へと運んでいく。

総合プロデューサーの本田氏もトリュフ削りに参加。チーム一丸となって晩餐を盛り上げるのが印象的であった。

見事なまでにアルデンテのパスタ。ハマグリと牛脂を使ったソースにトリュフがたっぷりと削られた。

篠原氏が提供した一品。「三味鮮露筍 ジェットファームのアスパラガス」。3つの味わいを食べ比べ。

「冬瓜燉魚翅」、フカヒレ冬瓜上湯蒸しスープを仕込む篠原シェフ。

猛暑の福岡に涼を運んだのが宮坂氏の「胡麻豆腐 車海 枝豆 出汁ジュレ」。一口味わうと夏の恵みと、ひんやりとした食感が時を忘れさせてくれる。

冷製の賀茂なすと鱧のお椀を仕込む宮坂氏。150人以上の鱧切りも一気に行うなど想像を絶する厨房での仕事がコースを支える。

揚げ焼きした鯵を酸味の効いたソースで味わう「鯵のエスカペシュ」。

チームで協力しながら美味を生み出す「LaCime」高田氏。

ドリームダスク ファイナルシェフ、スタッフ、ゲストが一丸となって楽しんだ食の祭典の意義とは?

それぞれがそれぞれの立場から、ベストの力を尽くしイベントを盛り上げる。そんな使い古された言葉を、すべてのスタッフが肝に銘じて動く。それがひとつの形となったとき、180名のゲストも含め、歓喜の輪は生み出されました。これは『ドリームダスク』を称賛したのではなく、体験談。コースを終了した後に、シェフたちは舞台に上がり感謝の言葉、喜び、難しさ、楽しさ、五人五色に色々と伝えてくれました。それらを楽しんだゲストより自然と心からの拍手が送られたのですが、鳴り止まない拍手は『ドリームダスク』が訪れたゲストの心に残したもの、そのものだったのではないでしょうか。
皆で分かち合った感動、会話とコミュニケーションで生まれる笑顔、同じ時間を共有する喜び、久しぶりの時間……
そのすべての想いが会場を包み込んでいたのです。
本田氏がこぼした“ようやく”。
それは大好きな仲間でこんな時間を共有したかったという、切なる願いそのものだったのかもしれません。
ディナーとディナーの間となる2日目ランチには、海を目前にした『ザ・ルイガンズ.』の屋外スペースを使ってのスペシャルランチが行われ、一般にも開放。地元福岡の人気店が屋台を出し、気軽に名店の味を食べ歩くこともできました。多くの来場者が通常ではありえない名店ハシゴを一般でも体験できたのです。

イベント開催の2日を通して感じたのは、食は楽しく、楽しい時間は幸せを生む。コロナによって難しくなったイベントのありかたとありがたさ。

とにかく、楽しい時間がなければ、人は弱ってしまう。食は人を楽しませ、強くする。そんな分かりきったはずの喜びでした。

「今回でドリームダスクは一区切りですが、たぶんまた何かやりたくなる。ようやく、こんなに楽しい時間が生み出せたんだから。期待してていいよ」

本田氏の最後の言葉は、次への期待と喜びに。『ドリームダスク』が心に残してくたものは、きっとこのドキドキなのでしょう。
『ドリームダスク』を経験した人はきっと、この響きを聞いたらならば、自然とドキドキせずにはいられません。次に『ドリームダスク』という言葉を再び聞ける日を、我々は楽しみに待つことでしょう。

『餃子のラスベガス』『三原豆富店』『藁焼 みかん』『めしや コヤマパーキング』『二加屋長介』『清喜』『大重食堂』『スナックアポロ』など、ランチに行われたイベントでは福岡の名店が集合。

ユーモラスな表情が印象的な福岡土産・にわかや煎餅のお面をかぶる本田氏と大越氏。

『ドリームダスク ファイナル』を盛り上げたドリームチーム。

Text:TAKETOSHI ONISHI

 

DREAM DUSK Encoreの開催が決定!

もう一度だけ、最高の形を目指して……
ファイナルを終えた直後に発表されたのが、2回のリスケを余儀なくされたファイナルへの思い残し。
2023年6月10・11日の開催予定でドリームダスクが再び帰ってきます。

https://www.luigans.com/dreamdusk/

開催詳細および予約開始日時につきましては、決定次第ザ・ルイガンズ.公式HP、Instagramにてご案内させていただきます。

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実も、種も、皮も。ひと瓶にひと房丸ごと入った食べるジュース。[和光アネックス/東京都中央区]

『食べるぶどうジュース』は、シャインマスカットが丸ごとひと房入っているため、液はトロトロ。ジュースだが食べ物のような味わいと充実感を堪能できる。

WAKO ANNEX食べておいしい、身体に優しい、美容にうれしい、ぶどうジュース。

「種も皮も丸ごとは、『食べるぶどうジュース』だけ」。そう語るのは、製造元の山梨県南アルプス市の『ジット』です。

ジュースなのに、なぜ食べる? そう思う人もいるかもしれませんが、一度口にしたことがある人ならば、この表現に頷くはず。

原料は、シャインマスカット。採れたてのぶどうをすぐに自社加工し、実はもちろん、種も皮も丸ごと使用。それを可能にするのは、改良に改良を重ねた独自の破砕製法にあります。

丸ごと使用することによって、ぶどうそのものの味わいをダイレクトに満喫できることはもちろん、一般のぶどうジュースには入っていないビタミンEやオレイン酸、リノール酸が含まれているのが特徴。美肌やアンチエイジングにも効果が期待できます。

冷やして飲むだけでなく、凍らせてシャーベットにするも良し、ヨーグルトにかけたり、パンに塗るも良し。万能に美味しくいただけるため、様々なシーンにぜひ。

新鮮な味をそのまま表現するために、何度も試作を繰り返し完成した『食べるぶどうジュース』。水も砂糖も一切使わず、完全無添加。ひと瓶飲んでも77kcal。美容と健康にもこだわる。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:JIRO OHTANI
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

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食べ終わった瞬間、また来たくなる店。北の大地で人気を集めるうどん店。[名水うどん野々傘/北海道虻田郡]

日本を巡るツーリングエッセイ『Grand Touring NIPPON』はこちらから

グリルチキンうどん。「とり天や唐揚げよりも、なるべくヘルシーに」との思いから生まれた人気メニュー。

名水うどん 野々傘シーズンオフでも行列ができる人気店。

雄大な大地に、見渡す限り広がる麦畑。
北海道はシェア60%以上で独走する日本一の小麦の生産地にも関わらず、蕎麦やラーメンのイメージに押され、うどんの印象は強くないかもしれません。そんな北海道・羊蹄山の麓に知る人ぞ知る人気うどん店があることをご存知でしょうか。名は「名水うどん 野々傘」。周辺のシーズンオフである夏の間でも行列ができる人気店です。

店内でまず目を引くのは、そのメニュー。
「ぶっかけうどん」などの定番に加え、「グリルチキンうどん」や「山わさび香る肉ぶっかけ」といった個性派メニューも並んでいます。そしてどのメニューにも添えられている丁寧な説明。きっと店主が気配りの行き届いた人物なのでしょう。

さらに店内を見渡してみると、民芸調の店内に古道具が配置されているのに気づきます。格子窓の向こうには蝦夷富士・羊蹄山を一望。どれだけ待っても苦にならないような、ゆったりとした穏やかさに満ちた空間です。

うどんはやや細めですががモチモチとしたコシがあり、小麦の風味が豊か。出汁のほのかな甘み、手のこんだ具材のバランスも絶妙で、たっぷりのボリュームもうれしいところ。決して市街地からのアクセスが良好な場所ではないにも関わらず、連日の盛況ぶりも納得の味です。

メニューを見るだけで内容が想像できるような親切な説明書きが添えられている。

室内は民芸調の風情ある空間。窓の外には羊蹄山の雄姿を一望。

人気のちく玉天ぶっかけ。玉子天の半熟の黄身をうどんに絡めて味わうのもおすすめ。

名水うどん 野々傘「お客さんの笑顔のため」。店主の人柄も店の魅力。

おいしさの秘密を、店主の野々田耕一郎氏に伺ってみました。
穏やかな笑顔とやさしい語り口が印象的な人物です。

「お客さんを喜ばせることだけが、ここをやっている目的。だからお客さんの笑顔が一番うれしい」

それだけで人柄が伝わるような、素敵な言葉です。

聞けば野々田氏は、岐阜生まれの大阪育ち。北海道の大学で酪農を学んだ後、大学事務員として務めていた。そして30代の後半で脱サラを思い立ちました。
「脱サラのセオリーといえばラーメン屋ですが、研究のために食べ歩いている間に、うどんも良いなと思い始めたんです」

それから独学で製麺を学び、地方から来た学生に試食してもらっては感想を聞いて腕を磨く日々。そしてついに、学生から「まあまあおいしい」の声。
しかし野々田氏の修業は、まだ終わりではありません。

39歳で退職し、今度は大阪にあるうどんの名店で本格的なうどん作りと経営を学ぶ。そして2005年、満を持して羊蹄山の麓に、この店を開いたのです。

店主の野々田氏。「職人気質ではない」と笑うが、ゲストを思い味を追求する真摯な姿は職人的。

山わさび香る肉とろたまぶっかけ。山わさび、醤油漬け卵黄、とろろ、肉の贅沢なハーモニー。

名水うどん 野々傘食べる人を気遣う小さな工夫がいろいろ。

「僕は職人気質ではないので、自分が打ちたいうどんよりも、お客さんが喜ぶうどんを作っていきたい」

そう話す通り、野々田氏のうどんには、食べる側のことを考えた気遣いが満ちています。

たとえばうどんは圧力鍋で茹でることで、独特のもっちりした食感を出しつつ、提供時間を短縮。待たせすぎないようにとの配慮が、良い形で味にも作用しています。肉うどんの肉は、最後に炙って香ばしさをプラス。グリルチキンを乗せるのは、「少しでもヘルシーなものを」との想いから。

食べ終わった瞬間に、また来たくなるようなうどん。
それはおいしさだけでなく、店主の人を幸せな気分にさせる優しさがメニューに反映されているからでしょう。
まだ見ぬ誰かのことを想像し、その幸せを願えること。それはひとつの才能であり、そしてものづくりの原点でもあります。

ちなみに店名の「野々傘」は大学事務員時代に学生たちから「野々さん」と呼ばれていたことに由来するとか。その親しみを込めた呼び方からも、当時から変わらぬ野々田氏の人柄が垣間見えます。

ゲストを待たせないため、という思いからスタートした圧力釜による湯で上げは、うれしいおいしさへの効果も。

細めだがしっかりとコシがあり食べごたえがある。具材や出汁との絡みも絶妙。

炙る、焼く、冷やすなど細かな作業のひとつひとつが丁寧。その積み重ねがおいしさにつながっている。

住所:北海道虻田郡京極町更進466-5 MAP
電話:0136-42-2381
https://www.facebook.com/nonodasan/

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(supported by SUBARU)

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ニセコの一棟貸しコテージ。夫婦の青春が詰まった、カタツムリの家。[Tree Shell Niseko/北海道虻田郡]

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蓄熱するモルタルと呼吸する丸太の効果で室内を快適に保つというコードウッドメイソンリー工法。

Tree Shell Niseko丸太とモルタルを積み上げた独特な工法。

整備されたゲレンデ周辺に高級ホテルが並び、外国人観光客向けの英語の看板が連なる−−まるで外国の避暑地のような、おしゃれな町・北海道ニセコ。
そんなリゾートの印象が強いニセコですが、大半は大自然に囲まれる閑静な場所。
それはいわば “何もない方のニセコ”。そんなエリアの一角に、一棟貸しのコテージ『Tree Shell Niseko』はあります。壁に無数の丸太の断面が見える不思議な建物。“Tree Shell(カタツムリ)”の名の通り、曲線が描く渦巻きが不思議な穏やかさを醸し出します。

宿泊施設としてのオープンは昨年とのことですがが、建物はもっと古いもの。それは傷んでいるのではなく、大切に使いこまれてむしろ魅力を増している印象があります。この建物に潜む物語を、オーナーに伺ってみました。

「丸太をモルタルとともに積み上げるコードウッドメイソンリーという工法です。木はこの地に生えていたカラマツを使っているんですよ」

そう教えてくれたのはオーナー・工藤三智子氏。

夫婦二人のセルフビルドだといい「たいへんだったけど、愉しかったな」と明るく笑いました。

ニセコのシンボル・羊蹄山を見渡す絶景もこのコテージの魅力のひとつ。

Tree Shell Niseko部屋の中心に据えられた重厚なヒーター。

「開拓ごっこがしたい」そんな動機のもと、本州出身の工藤氏がご主人とともにこの地に移ってきたのは、20年ほど前。胸まで伸びた草と木々があるだけの1300坪の土地に、小さな小屋を建てたのが始まりです。

「冬には10m以上の雪が降る地。週末だけ来て作業するのでは、なかなか進みません。それで退路を断つ意味でアパートを引き払い、ここに建てた小屋に住み始めたのです」

ログハウスビルダーだったご主人はさらに電気工事を学び、工藤氏は職業訓練校で左官を身に着けた。さあいよいよ建物の着工、かと思うとそうではありません。

「セルフビルドの本を読んでいて、とあるヒーターが気になって。それでアメリカにそのヒーターの勉強をしに行きました」

そういって工藤氏が指差したのは、建物の中心にある重厚なレンガのストーブ。メイソンリーヒーターという蓄熱型のストーブで、重量は3tもあるといいます。

「戻ってきて、まずこのヒーターを作りました。だから建物よりも先に、ヒーターができていたんです」

一度火を入れると本体に熱を蓄え、薪が燃え尽きたあとも、じんわりと穏やかな暖かさが続く。この穏やかな空間を象徴するようなヒーターです。

写真左が蓄熱式薪ストーブ、メイソンリーヒーター。レンガ造りで重量は3トンにも及ぶ。

オーナーの工藤氏。職業訓練校で左官を学び、セルフビルドに役立てた。

Tree Shell Niseko駆け抜けた青春が詰まった、思い出の建物。

そしてようやく建物の建築がスタート。デザインのイメージは、カタツムリ。

「幼稚園の頃かな。私が画用紙にカタツムリの絵を描いたら、母がそれをカバンにキレイに刺繍してくれたんです。きっとそれが心に残っていたんでしょうね」

5歳の頃に撒いた種が、20年の時を越えて実を結ぶ。若き夫婦は小さな小屋に住みながら、カタツムリの家を作りはじめました。モルタルとともに丸太を積む工法は二人がかりで一日作業をしても数十cmしか進まない、まるでカタツムリの歩み。草を払い、木を切り、家を建てる。それはまさに開拓と呼べるような日々だったのでしょう。

「本当に愉しかった」工藤氏は再びそう言いました。それは、毎日が風のように過ぎていく、夫婦ふたりの青春だったのかもしれません。

工藤氏の話の後で、改めて室内を見回してみます。
中心に堂々と佇むストーブ、その横には金属製のストーブがもうひとつ。上から見るとカタツムリの殻に見えるという建物は曲線が中心で、穏やかな開放感に満ちています。柱や梁やハンドメイドだという木製の家具は、丁寧に、大切に使いこまれて輝いています。

ふと窓の外をキタキツネが横切りました。それは特別なことではなく、このコテージの日常なのでしょう。

インテリアもセルフビルド。自然木の優しさを活かした穏やかな空間。

寝室は2箇所あり、4名まで宿泊可能。写真はシングルベッド2台を備えたロフト。

ウッドデッキには本格的なピザ窯も。キッチンには食器や調理器具も完備されている。

住所:北海道虻田郡ニセコ町ニセコ310-44 MAP
電話:090-9085-2766
https://treeshellniseko.com/

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北の大地のチーズ工房が目指すのは、旅の土産ではなく、旅の目的になるチーズ。[ニセコチーズ工房/北海道虻田郡]

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『ニセコチーズ工房』オーナー近藤裕志氏。発酵室で状態をチェックするのは、1日たりとも欠かせない毎日の日課。

ニセコチーズ工房観光地ニセコで異彩を放つチーズ工房の黒い建物。

北海道・ニセコにある、世界的な評価も高いチーズ工房の噂をご存知でしょうか。
場所はニセコ町の一角、羊蹄山のふもと。北海道らしい雄大な自然の中に佇む黒い建物が、その『ニセコチーズ工房』です。

工房とショップが併設された建物でショップ部分のガラスのショーケースの中には、チーズが20種ほど並ひ、奥にはイートイン用のカウンターも併設されています。

そんな店内をひとまわりしてみて、まず目を引くのは、店内のあちこちに置かれたメダルや賞状。手近なひとつを見てみると「WORLD CHEESE AWARDS」という世界最大級のチーズコンテストの名。その下には最高賞である「SUPER GOLD」。つまりそれは世界が認めたチーズを意味します。

賞状は他にも多数。額に入れずにそのままであったり、数枚が重なっていたり、いわば無造作とも思える様子で置かれています。きっとすべてを額装して飾るには、スペースが足りないのでしょう。それほど、ここのチーズは認められているのです。

ショーケースとイートインスペースがあるショップ。広大な北海道にあって意外に思えるほどコンパクトな店内。

ショーケースには常時20種ほどのチーズが並ぶ。一部、この店舗でしか購入できない限定品も。

無造作に置かれた賞状やメダル、盾。決して栄誉ある賞に無頓着なわけではなく、「ただスペースの問題」という。

ニセコチーズ工房先代との衝突を越え、やがて誕生したここだけのチーズ。

工房のオーナーの近藤裕志氏に話を伺ってみましょう。

聞けばここは裕志氏の父である先代が脱サラしてはじめた工房。北見で酪農を営む家に生まれたが大企業に務めていた先代が、思い立ってチーズ作りに挑戦。倶知安とニセコの生乳を使い、この地ならではのチーズを作る工房を2005年に開いた。その5年ほど後に、やはり別企業で働いていた裕志氏もチーズの世界へ。レシピ開発で先代と衝突しながらも、少しずつ独自の味を築き上げてきた。そんなストーリーを聞かせてくれた裕志氏。そしてこんなことを言いました。

「最初は観光地のチーズをやっていたんです」

観光地のチーズとは、つまりニセコに観光に来た人が買って帰るチーズのこと。観光地でやっているのですから、それで良いような気もします。しかし裕志氏は続けます。

「私が作りたいのは来た人が買っていくチーズではなく、それを買うためにニセコに来るようなチーズなんです」

その言葉には、決意と自信が満ちていました。

自然体で穏やかな話し方が印象的な近藤裕志氏。しかしその内には、熱いチーズへの情熱を秘めている。

基本は丁寧な手作業。量産はできないが、ひとつひとつの状態を見極めることで質を高める。

原料は北海道産ミルク。近隣の新鮮なミルクが、コクがあるのにクセのない上質なチーズになる。

ニセコチーズ工房それぞれのチーズの個性が際立つ、多彩なラインナップ。

仕事に戻る裕志氏を見送り、イートイン用のチーズプレートをオーダーしてみました。この日の内容は、ブルーチーズ、さけるチーズ、フルーツをあわせたクリームチーズ、12ヶ月熟成のミモレットチーズの4種。ブルーチーズは穏やかな風味でクセが強すぎず、食べやすいおいしさ。さけるチーズはフレッシュなミルクの味わい。クリームチーズは爽やかでコクがあり、それだけでスイーツとして味わえるほど。そしてミモレットは、濃厚で凝縮された旨味が圧巻だ。どれもチーズの個性が際立ちながら、主張が強すぎないやさしい味。穏やかでありながら記憶に残る、ここだけの味です。

次いで裕志氏が「自信作」と言っていたカマンベールチーズのソフトクリーム。これも驚きの完成度でした。しっかりと熟成をかけたカマンベールチーズをたっぷりと混ぜ込んだ濃厚な味わいで、チーズ屋の本気が垣間見える出来栄え。

「それを買うためにニセコに来るようなチーズ」

先程の裕志氏の言葉が思い出されます。
ニセコはチーズのために訪れるには、あまりに遠い場所です。しかし裕志氏の想いは、形になりつつありました。ニセコにしかない、ニセコらしいチーズ。ここは札幌から200kmの距離を越え、訪れる価値のある場所です。

チーズプレート。左から、12ヶ月熟成のミモレットチーズ、さけるチーズ、フルーツをあわせたクリームチーズ、ブルーチーズ。

濃厚な味わいとカマンベールチーズの香りが特徴のオリジナルソフトクリーム。

住所:北海道虻田郡ニセコ町近藤425-6 MAP
電話:0136-44-2188
https://www.niseko-cheese.co.jp/

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アジア・パシフィック予選突破。いよいよ本選へ向けてエンジン全開。

左から浜田統之シェフ、コミ(当日のアシスタント)の候補生、石井友之シェフ、長谷川幸太郎シェフ。見事『アジア・パシフィック大会』を突破し、これから本大会へ向けて本格始動する。

ボキューズ・ドール 2023急遽のアジア大会開催。異例の審査方法。いかなる環境においても、国として戦い抜く。

『ボキューズ・ドール』のフランス本選に出場するためには、各エリアの大会を勝ちぬかなければならないことは、前回も記した通りですが、今年のアジア・パシフィック大会は、異例での開催となりました。

4月の初旬までは、コロナ禍のためアジア大会は中止。直近の大会の順位を踏襲するというものでした。つまり、前々回一位だった日本は、自動的に世界大会の本選に進める予定だったのです。

それが突如、4月の半ばに、アジア大会が行われる通知がありました。しかも、これまでは、開催国へ出向き、世界大会と同じように実技が行われ、出場国の審査シェフが評価を決めるという、本選同様のスタイルをとっていたのですが、今回は、コロナ禍の影響も大きく、作品となる料理写真とレシピ、さらに2分間のイメージ動画(上記)をフランス本国に送り、ジェローム・ボキューズ氏、レジス・マルコン氏などの重鎮審査員が採点を行うという方式に決まったのです。

つまり、調理の様子や味の評価ができないのです。見た目の美しさや斬新さ、いかに細かに仕事をしているかの印象、そして説得力のあるレシピが必要となります。動画は、各国の伝統や独自性を加味しつつ、ボキューズ・ドールをいかに世界に普及させるかを見せるためのプロモーションだそうです。締め切りは6月15日。つまり2か月弱でそれらをクリアしなければいけないということになったのです。

テーマ素材は「豆腐」。

アジア大会ならではともいえる食材であると同時に、ビーガンやマクロビなどのニーズの高まり、環境問題への影響などが配慮されてのことでしょう。同時に、動物性の食品(乳製品は除く)の使用も不可というのがルールです。生まれたときから豆腐を口にしてきた日本人にとって、そうした素材を正面切ってフランス料理に仕立てるのはある意味、難題とも言えます。

無事、期日前に、すべての素材を提出し終えましたが、本部から連絡がきたのは、1か月をすぎた、7月21日の夜。結果は見事突破。順位は発表されていませんが、入賞国は日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5か国。まずは、石井シェフに大きな拍手をおくりたいものです。

テーマ素材が決まり、過去のさまざまな資料を読み込みながら、アイディアを膨らませる石井シェフ。

彩な素材と豆腐を組み合わせながら、相性や完成度を予想して一皿の組み立てを考える石井シェフ。右はコーチの長谷川幸太郎シェフ。

ボキューズ・ドール 2023豆腐というテーマの難題と挑戦。たどり着いた豆腐は、ゼロから作ること。

さて、どのようにして、厳しいアジア・パシフィック予選をくぐり抜けたのか、その様子を振り返りましょう。

お題が豆腐と決まった時点で、石井シェフは、まず、県のアンテナショップを巡り、各地の豆腐を購入し、キッチンにさまざまな野菜を並べ、スタッフ全員で豆腐との組み合わせを試し、どんな野菜に相方として適性があるかを試していきました。結果、選ばれたのは茸類でした。鍋の具材を考えれば、豆腐との相性の良さは、自明かもしれません。

しかし、そこには難題が。市販の豆腐では、どうしても茸の旨味に負けてしまうのだそうです。そこで、自家製の豆腐を作ることを考えたのですが、市販の豆乳では濃度が足りません。そこで、知人の紹介で、逗子で豆腐店を営んで90年の老舗「とちぎや」を訪れました。

「市販の豆乳は大豆の固形分が14%くらいまでしかないのですが、とちぎやさんのものは、20%以上。早速、その豆乳を送ってもらい、自家製の豆腐を作ることに決めました。豆腐の作り方に関しても改めて勉強させてもらいました」と石井シェフは言います。

実は、石井シェフの考えは、豆腐そのものに茸の香りをつけることが狙いだったのです。豆乳にセップ茸とにがりを加え、真空にして、40℃で20分間加熱。その後1~2時間おき、さらによく水気をきって、かための豆腐に仕上げます。これだと、加工がしやすいうえに、きのこの香りを重ねていくなどの、メインディッシュとしての完成度が高くなるというのが、その理由です。

老舗豆腐店『とちぎや』の出き立ての木綿豆腐は、味はもちろん、目にも美しい。まだほの温かいおぼろ豆腐を試食する石井シェフは、濃厚な豆乳を試食用に分けてもらう。

ボキューズ・ドール 2023

食べられないからこそ、伝えるための戦略。

こうして土台となる豆腐ができたものの、完成までには、紆余曲折があったといいます。写真による審査だけに、見た目のインパクトや美しさ、いかに緻密に構成された一皿であるかが重要であるかということは、先述の通りです。真っ白な豆腐にスプーンを入れると中が複雑に構成されているというサプライズは写真では伝わらないのです。

実は、石井シェフが最初に仕上げた料理は、アジア大会に表現した料理とは別物でした。これには、メンターである浜田氏、長谷川氏から、「アジア予選を通らないぞ」という厳しい評価がくだったそうです。

試行錯誤の末に出来上がった一皿は、豆腐と茸の美しい層がアーチをなして重なり、4種のガルニチュール(付け合わせ)が華やかさを盛り上げています。

「実は、写真撮影(6月10日)の前日に、今のままではだめだと思い立ち、合羽橋へ行って樋型を買い、試してみて、ようやく納得のいくものができ上がったんです」という石井シェフ。最終形は、その樋型を使用してかためたものです。

「樋型の中に薄くスライスした自家製の豆腐を敷き、トリュフのシートをのせ、また豆腐を重ね、次にジロール茸のペーストを塗り、また豆腐をのせるというように、豆腐と茸を層にし、表面だけを凍らせてカットしたものが、メインとなるアーチ型の豆腐です。周囲には数種のガルニチュールを配しました。燻製をかけたサントモール(山羊のチーズ)の上に絹ごし豆腐のピューレを絞り、キヌアを散らしたものや、青りんごのジュースを流したタルトにパースニップのピューレを絞り、グリーンピースをあしらったもの、黒にんにくを詰めたモリーユ茸を煮詰めた酒でからめたものなどです」と料理の説明をしてくれました。ひとつ一つのガルニチュールにも、高度に緻密な考えがめぐらされ、心がこめられていることがよくわかります。

 石井シェフは、「浜田さんのひと言があってよかった」と言います。実は、今回、常勝国である、タイ、シンガポールが落選しているのです。そして、インスタに上がった、タイの出品写真を見てみると、石井シェフの初期段階の作品のように、白いムース状なのです。やはり、料理の構想が伝わらなかったということなのでしょう。今の段階では、順位が出ていないのでわかりませんが、アジアパシフィック予選がいかに厳しい戦いであったかということは、想像に難くありません。

本選は、プレート料理(一皿料理)とプラッター(大皿盛り)の2種で競われます。

プレートのテーマが9月末、プラッターのテーマが11月末に決まるというのがおおまかな予定だそうです。ついこの間までは、本選まであと10か月という気持ちだったのが、あっという間に半年を切ってしまいました。心がはやります。テーマ食材が出るまでに、やるべきことは何なのでしょうか?

「アジア大会は見た目の勝負でしたが、逆に本選は、見た目の美しさや斬新さはもちろんですが、とにかく美味しくて、熱々でないとダメなのです。にんじん、じゃがいも、玉ねぎなど、必ず使う野菜を、ガルニチュールとして使う場合、またはある程度のメイン素材として使う場合などをシュミレーションして、加工方法、味の決め方、温度の調整などの実験を繰り返します。なにしろ、テーマ素材が決まったら、その一か月後にレシピを提出することになると思いますので、それからでは全く時間がなくなってしまいますから」と石井シェフ。

まだまだ課題は山積み。それらを乗り越え、本戦に備え、日本を勝利へ導く。

試作段階のひと皿。何度も何度も制作を繰り返し、料理をクリエイションしていく。

過去の各国の作品や、今回作ろうとしている作品をCG化したものなど、大量の資料を読み込みながら、作品を考案。

緊張感のあるキッチンにて「勝つ」ためのディスカッションを続けるチームジャパン。左から浜田シェフ、石井シェフ、コミの候補生、長谷川シェフ。

『アジア・パシフィック大会』に出品したひと皿。この料理で見事、通過を果たした。

上記の料理のデッサン。緻密に料理を構築し、イメージを固めてから表現する。

ボキューズ・ドール 2023

米田 肇、浜田統之、長谷川幸太郎。勝つために揃った最強の布陣、チーム日本。

いよいよ日本チームの布陣が決まりました。

三ッ星レストラン「HAJIME」米田 肇氏が、試食審査シェフに選ばれました。そして浜田統之氏が日本チームのコーチに。コーチの役目は、日本チームをまとめ上げることはもちろんですが、『ボキューズ・ドール』内でいわゆる「顔がきく」といいうことが大切であり、その点、2013年の3位入賞以来、『ボキューズ・ドール』に関わり続けている浜田氏は最適です。そして、長谷川幸太郎氏は、キッチン審査シェフに任命されました。これは大会当日、舞台上の各キッチンを回り、キッチンを清潔に保っているか、素材の無駄を出していないか、などをチェックする役目です。同時に、出場選手そのものも、試食審査員に顔を知られたほうがいいとも言われています。

私情をはさむとまではいいませんが、人間ですから、やはり、顔を知っているかどうかに左右される部分がないとはいえないのだそうです。そのため、石井シェフは、ヨーロッパ大会に視察に行き、日本チームのTシャツを配るなど、ロビー活動に励みました。

こうして組まれた、最強の布陣、日本チーム。あとは、本番へ向けて努力を積み重ねるのみです。次号からは大会へ向けての進捗に加え、関係者と石井シェフの対談をお届けいたします。

Text:HIROKO KOMATSU

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手軽に一流の味を。ふっくら、とろける、あなごの缶詰。[和光アネックス/東京都中央区]

「木の屋石巻水産」の缶詰「三陸産あなご醤油煮」。中には、ふっくらしたあなごの醤油煮がぎっしりと詰まっている。使用目安は、ひと缶約2食分。

WAKO ANNEXファン待望のあなご醤油煮。震災を乗り越え、2020年に復活。

東北・三陸産で獲れたあなご(イラコアナゴ)をじっくりと煮込んだ「木の屋石巻水産」の缶詰「三陸産あなご醤油煮」。

丁寧な仕込みのため、あなご特有の臭みはなく、小骨まで柔らか。少し甘めの上品な味が染みた醤油煮です。地元宮城県のメーカーの醤油や喜界島の粗糖、隠し味に国産山椒を使用しており、脂がのったあなごはふっくらでとろけるような食感が食欲をそそります。

「木の屋石巻水産」は、三陸沖の海の幸を原料に仕込む水産加工メーカーです。特筆すべきは、そのスピード感。朝に水揚げされた魚は、昼には缶詰になっていることも。創業から約60年、常に海と向き合い、魚と向き合い、「うまい魚を、うまいうちに」をずっと守り続けています。

しかし、2011年3月11日の東日本大震災によって、工場や倉庫を失う事態に。生産などはストップされてしまいましたが、2013年に再スタート。人気を博していた沖穴子醤油味付」も名前を「三陸産あなご醤油煮」に改め、2020年に9年ぶりの復活を果たしました。

様々な想いが込められた缶詰は、ファン待望の逸品。ご飯のお供としてはもちろん、お寿司やたまご焼きなどにして美味しくお召し上がり頂けます。

やはり定番の食べ方は、ご飯に乗せてぜひ。湯煎で温めることによって、より美味しく、ふっくらした食感に。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

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山に触れ、山を知り、山に学ぶ。中山道34番目の宿場・奈良井宿を舞台にした19回目の「DINING OUT」速報。[DINING OUT KISO-NARAI/長野県塩尻市]

DINING OUT KISO-NARAI2年半の時を越え、帰ってきた「DINING OUT」。

去る2022年7月23日、24日。約2年半ぶりに『DINING OUT』が開催されました。

舞台となったのは、古の宿場町の面影が色濃く残る奈良井宿。中山道34番目の宿場であり、深い山々に囲まれる木曽路の街に、二晩限りのレストランが現れました。

料理を担当するのは、「ミシュランガイド東京」2つ星、「ゴ・エ・ミヨ東京」3トック、「アジアのベストレストラン50」1位、「世界のベストレストラン50」20位など、数々の賞に輝いた『傳』の長谷川在佑氏。常に産地や食材へ深い敬意を示す長谷川氏が、この地の食文化を紐解き、自身の感性に重ね合わせます。

新型コロナウイルス感染拡大によって世界中が翻弄され、繰り返された緊急事態宣言、自粛。飲食店においては、時短営業、酒類提供禁止……。コミュニケーションは遮断され、日常や当たり前は一変。様々な時代の節目を経て、人々の価値観が大きく変わる今、19回目となる『DINING OUT』もまた、新たなステージに進みます。それは、ただ土地の魅力を伝えるだけでなく、食を通してより深く地域に踏み込み、地元と深く繋がること。それではさっそく『DINING OUT KISO-NARAI』の様子をお届けします。

2015年に静岡で開催された『DINING OUT NIHONDAIRA』、2017年にパリで開催された『JAPAN PRESENTATION』のシェフを担ってきた長谷川氏。「『DINING OUT KISO-NARAI』は、それらとは全く別物。自分自身も本当に大事なことを知る機会となりました」と長谷川氏。

『DINING OUT』のホストを今回で通算10回務めるコラムニストの中村孝則氏。披露される土地への深い知識が、料理に彩りを添える。

DINING OUT KISO-NARAIテーマは「山中に学ぶ」。山深い木曽の地に受け継がれる伝統を紐解く。

「木曽路はすべて山の中」。

島崎藤村の代表作『夜明け前』は、そんな言葉で始まります。木曽を訪れてみると、その言葉が腑に落ちることでしょう。山々に囲まれ、冬は雪に閉ざされるこの地。ここには、保存食を中心とした独特な食文化が育まれました。今回の『DINING OUT』では地域に触れ、人に触れながら、そんな食文化を体験します。

ゲストが乗り込んだバスがまず向かったのは、レセプション会場である『塩尻市立楢川小中学校』(以下、楢川小中学校)。「小中学校」とは、小中一貫で9年間学ぶ義務教育学校で、この重厚な木造校舎では約100名の児童生徒が学んでいます。

入り口でホストのコラムニスト・中村孝則氏と地元の「お母さん」たちが出迎えます。下駄箱を通り、廊下を歩いてまず向かったのは教室。ゲストが席に着くと、中村氏の挨拶と、『楢川小中学校』の山本秀樹校長による学校紹介がありました。山に学び、山とともに生きる暮らし。校長先生の興味深くウィットに富んだ話に、ゲストたちは笑いとともに聞き入っていました。

次いで中村氏にうながされ、向かった先はランチルーム。この学校には全生徒が一度に昼食をとるための食堂が完備されているのです。ランチルームの入り口頭上には大きな書が飾られていました。

「山中に学ぶ」。

芸術家・池田満寿夫氏によるこの言葉こそ、今回の『DINING OUT KISO-NARAI』のテーマ。山に囲まれ、山とともに生きるこの地の知恵を、食を通して学ぶこと。それはゲストにとっても開催地の人々にとっても、一夜限りの晩餐では終わらない総合的な体験となることでしょう。

このランチルームで生徒たちは、学年の垣根を越えて交流します。さらに毎日の食事に使用されるのは、地域の方々から提供された漆器の食器。

「地域の方がくださった大切な器で食事する。食の大切さを学ぶ教育です」。そんな校長先生の言葉が印象的でした。

いよいよレセプションの幕開けです。アペリティフには、信州の地酒『亀齢』と郷土料理。この料理を担うのが、前述の「お母さん」たち、「楢川地域おこし農家組合」です。

信州の伝統野菜・羽淵キウリの漬物、地元ではおやつの定番という餅菓子・お釈迦のおみみ、家庭ごとに味つけが違うという夕顔汁。この土地で古くから親しまれている味を入り口に、この地の食を巡る一夜の体験が始まりました。

『楢川小中学校』の校舎は築31年。2022年度から、新たに小中学校として再出発を果たした。

木曽楢川小学校と楢川中学校を統合して生まれた楢川小中学校。1991年に新築された木造校舎には、地元のヒノキがふんだんに使用されている。

出迎えたのは、エプロン姿の「楢川地域おこし農家組合」の方々。地域とのふれあいを通して、ゲストをこの地の食の世界へと誘う。

レセプションは、3年1組の教室にて開催。『楢川小中学校』の山本秀樹校長先生による学校の説明から。まるで学校説明会のようなスタイルと興味深い話に、これからの晩餐に期待が高まる。

『楢川小中学校』のランチルームの掲げられた「山中に学ぶ」の力強い毛筆は、池田満寿夫氏の揮毫。

「楢川地域おこし農家組合」のお母さんたちが手がけた郷土料理は、地元で親しまれ、素朴で滋味深いおいしさ。器や盆などは、もちろん漆器。

「このへんは交通の便が悪いからね、おやつも何もみんな手作り」とお母さんたち。地元で親しまれる伝統の味を、心をこめてサーブしてくれた。

「楢川地域おこし農家組合」の皆様。古くから旅人が行き交う宿場町だけに、おもてなしの心が脈々と受け継がれている。

乾杯のドリンクは、長野が誇る幻の銘酒・亀齡が選ばれた。

DINING OUT KISO-NARAI中山道の上に現れた前代未聞のディナー会場。

『楢川小中学校』を後にし、いよいよ会場である奈良井宿へ。到着したゲストが目にしたのは、街道の上に並べられたテーブルでした。そう、今回の会場は、奈良井宿の街道上。中山道の路上で食事をとるという前代未聞の晩餐です。

中村氏と長谷川氏からの挨拶の後、いよいよディナーがスタート。

一品目は信州名物のおやき、二品目は海のないこの地でタンパク源として親しまれた鯉、三品目にはシナノユキマスを木曽地域独特の漬物すんきとともに。次いで木曽地域で食されてきた雑穀を柔らかく煮込んだ信州牛と合わせた一皿。どれもこの地に伝わる伝統を、長谷川氏流にアレンジした料理ばかりです。

その料理とともにゲストの目を捉えたのは器。艶のある木曽漆器の器は、実はレセプションで訪れた楢川小中学校の給食食器。生徒たちが毎日使用する器を通し、この地の食文化をさらに深く体験します。

三品目の料理サーブは、そんな『楢川小中学校』の生徒たちが担当しました。やや緊張の面持ちで慎重に料理を運ぶ生徒たち。

「どうぞごゆっくりお楽しみください」。

そう話す言葉には、宿場町に伝わるおもてなしの心がこもっていました。

奈良井宿の路上を貸し切ってディナー会場に。古の風情漂う街に、上質なレストランが出現した。

中村氏と長谷川氏による乾杯の挨拶。キッチン含め、拠点になったのは、奈良井宿の『徳利屋(とくりや)』。普段は、手打ちそばや独自の三食五平餅も人気の名店。

一品目の鰻と茄子。信州名物のおやきを、脂の乗った鰻を使ってアレンジ。

長野県に伝わる鯉食文化。長谷川氏は鱧のように骨切りして羽淵キウリの餡と合わせた。楢川小中学校で日常的に使用される漆の給食食器が、長谷川氏の料理としっくりと馴染む。

楢川小中学校の生徒たちによるサーブ。「プロのサービスを間近で学ぶことができた」と、生徒たちにとっても良い経験となった。

やや緊張の面持ちの『楢川小中学校』の生徒たち。配膳とご挨拶の役割をしっかりと果たした。

DINING OUT KISO-NARAIただの食事で終わらない、一連の体験としての「DINING OUT」。

料理は続きます。

きのこや山菜を煮込んだ鍋の中で蕎麦を温めて味わう投汁蕎麦は、厳しい寒さの中で体を温める知恵。素朴な郷土料理にこめられたアイデアと技術が、木曽の食文化を伝えながら、新鮮な驚きと感動も伝えます。

投汁蕎麦に使われていたのは、ほかの食器とは少し趣の違う木曽漆器でした。木曽漆器工業組合の石本理事長が登壇し、木曽漆器の伝統と魅力について語ります。

「漆は使うほどに透明度が上がり、艶が増していくもの。どうぞ末永くお使いいただき、そして使う度に、この地を思い出して頂けたら」と石本理事長。そう、この器は今日の思い出として、ゲストへのサプライズプレゼントだったのです。

テーブルには信州特産のルバーブととうもろこしのデザートが届きました。ディナーコースは、これにて終了。しかし木曽の食体験はまだ終わりではありませんでした。

登場した「地元婦人会・桜香会」の皆さんから手渡されたのは、わっぱの折り詰めに入ったおにぎりと漬物。ホテルに戻ってから小腹を満たすお夜食です。地元の方が心をこめて握ったおにぎりは、きっと旅の余韻とともに深くゲストの心に刻まれることでしょう。

打ち立ての香りと素材の風味が生きた蕎麦。この日のために作られた漆器の椀はゲストへのプレゼント。

「木曽漆器工業組合」の石本則夫理事長が、木曽漆器の歴史と魅力を語った。

格子越しにしっとりと会場を彩る花は、奈良井宿の宿『花と休息 Wakamatsu』店主であり花道家の山本文弥氏の作。

心をこめておにぎりを握ってくれた「地元婦人会・桜香会」の皆様。

ひとつは辛味噌の焼きおにぎり、ひとつは大葉を添えた酢飯。どちらもこの地で親しまれるおにぎり。

DINING OUT KISO-NARAI食を通して伝える、人との繋がりの大切さ。

長谷川在佑氏による地元の食文化への敬意に満ちたディナーコースは、心地良い余韻を残して幕を閉じました。

「待ちに待った『DINING OUT』。この日を迎えられたことが何よりもうれしい。この2年半の間にいろいろなことが変わりましたが、人との繋がりは変わることはありません。多くの人に支えられたこの『DNING OUT』を通して、人と繋がっていくこと、会うことの大切さを再認識できました」。

そんな挨拶で結んだ長谷川氏。

趣向を凝らした料理はもちろん、レセプションでの郷土料理、子どもたちによる配膳、木曽漆器のサプライズプレゼント、地元の方の心づくしのお夜食と、地元の方々の協力に支えられた今回の『DINING OUT』。それはこの2日の特別な夜だけではなく、今後も長く続くような深い繋がりを生みました。

日本のどこかにある日突然現れ、数日で消えてしまう幻のレストラン。しかし山中の豊かな食文化と地元の方々との繋がりを感じた一夜の晩餐は、生涯忘れない記憶となってゲストの心に刻まれたことでしょう。

過去最大人数の地元の方々が携わった『DINING OUT』。開催を支えた大勢のスタッフたち。厨房では地元飲食店のシェフたちも活躍した。

開催日程:2022年7月23日(土)、24日(日)
開催地:長野県塩尻市
出演:シェフ 長谷川在佑『傳』
    ホスト 中村孝則(コラムニスト)
協賛: 一般社団法人塩尻市観光協会、サントリー株式会社、日本航空株式会社
協力: 一般社団法人木曽おんたけ観光局、木曽漆器工業協同組合、塩尻市、塩尻市立楢川小中学校、奈良井区、奈良井宿観光協会

Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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フルーツ王国岡山の名品、清水白桃のコンポート。[和光アネックス/東京都中央区]

「角南製造所」の「フルーツコンポート 清水白桃」。桃の生産者と栽培を契約し、その年の清水白桃の生育状況を把握。一番美味しい時期に収穫し、一番美味しいものを厳選して加工する。

WAKO ANNEX目、鼻、手。手作業でなければ生むことができない美味しさ。

昭和10年創業。フルーツ王国岡山の老舗加工メーカー「角南製造所」が作る「フルーツコンポート 清水白桃」は、手作業にこだわった逸品です。

人の感性とも言うべき目、鼻、手で完熟度合いを判断し、最も美味しく加工できるタイミングを見極めます。中でも、特にこだわっているのが、湯剥き。その理由は、桃の果肉と皮の間の一番美味しいところを残すことができるからです。これは機械ではできず、「角南製造所」では、約60年続けているのです。

そんな岡山産の清水白桃を丁寧にシロップ漬けにしたものが「フルーツコンポート 清水白桃」なのです。そのままいただけば、素材そのものの甘さや食感を楽しめますが、ヨーグルトやケーキのトッピングとしてもお勧め。ぜひ、シーンに応じて様々な清水白桃の味をお楽しみいただきたい。

ひとつ一つ丁寧に手剥きし、シロップ漬けに。まろやかな風味をそのままに、とろけるような食感が特徴。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp

Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
(Supported by WAKO)

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スーパーフードとしても注目される、はだか麦の麦茶。[和光アネックス/東京都中央区]

「福岡正信自然農園」の「はだか麦茶」。はだか麦には豊富な栄養素が含まれ、スーパーフードとしても注目されている素材。

WAKO ANNEX自然を尊重したはだか麦の栽培。環境を配慮したはだか麦茶の品。

「はだか麦茶」を製造する「福岡正信自然農園」では、他の作物同様、自然の循環を尊重しながら植物の力を最大限に引き出す手法で、はだか麦を栽培しています。

はだか麦とは、世界最古の栽培植物のひとつとして知られ、愛媛県では古くから栽培されている麦の一種。プチっとした食感が特徴的であり、脱穀すると簡単に殻が取れることからその名が付いたと言われています。

そんなはだか麦を、もっと身近に楽しんでいただきたいという想いから生まれたお茶が「はだか麦茶」なのです。麦ならではの香ばしさが口いっぱいに広がり、ノンカフェインのため、お子さまや妊婦の方にも安心して楽しむことができます。

また、常に自然に敬意を示す「福岡正信自然農園」の想いは、パッケージや仕様にも反映され、包装は再生可能なとうもろこし由来の不織布を使用し、使い切りのテトラ型のティーパックを採用。

はだか麦を焦がさないよう、最初は低温でゆっくりと焙煎し、その後一気に火力を上げ、しっかり焙煎。この火加減とタイミングが誰でも美味しく淹れられるティーパックたる所以であり、熟練された職人技と感覚が成すもの。

日々の生活にはだか麦を取り入れることによって、健康にも健やかな美味しい日々をぜひ。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

急須やティーポットにティーパックを入れ、約90℃のお湯を150~200ml注ぎ、3~5分蒸らしてからぜひ。夏場や暑い日は、氷を入れ、冷やした「はだか麦茶」がお勧め。

※今回、ご紹介した商品は、2021年10月1日にリニューアルオープンした『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
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Photographs:KOH AKAZAWA
Text:YUICHI KURAMOCHI​​​​​​
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金沢から新たな文化を。レストランという表現の地平を拓くシェフ・トリオ。[respiración/石川県金沢市]

レスピラシオンOVERVIEW

ローカルガストロノミーのディスティネーションとして注目を集める石川県金沢市。全国的にも指折りの名店ひしめくこの美食の地で、近年一気に輝きを増したレストランがあります。

『respiración(レスピラシオン)』。
スペイン語で「呼吸」を意味する言葉を冠するこのレストランは、2017年に金沢市の中心部である近江町市場近くに開業したモダンスパニッシュの店です。

開業からわずか4年で、ミシュランガイド北陸2021特別版にて二ツ星を獲得。環境への配慮や生産者支援などサステナブルな取り組みを評価するミシュラングリーンスターもダブル受賞し、その名は全国に知られることになりました。

『レスピラシオン』は3人のシェフにより設立されました。
梅 達郎氏。
北川悠介氏。
八木恵介氏。
彼らは揃って金沢市の隣の内灘町出身。そして同い年。梅氏と八木氏は幼稚園から一緒。小学校からは北川氏も加わり3人共にミニバスケ、バスケットボールに打ち込みながら中学時代までを一緒に過ごしました。家は梅氏と北川氏が歩いて1分の距離。八木氏の家もそこからわずか5分です。高校は北川氏だけが離れたものの、引き続きそれぞれの高校でバスケに取り組みながら、親密な付き合いは続きました。洋服の趣味も、音楽の趣味も同じ。興味のあるもの、好きなことを共有し、いつしか3人は一緒にいることが当たり前になっていました。

そんな3人は、高校卒業後、それぞれの道に進みます。
けれど、時を経て3人ともが自分の愛すべき家庭を持った30代後半、再び結集し、つくり上げたのが『レスピラシオン』です。

鉄の結束で同じ夢に向かって歩く3人。そこには、一体どんな物語があるのでしょう?

『レスピラシオン』の軌跡、そして今を見つめます。

住所:石川県金沢市博労町67
電話:076-225-8681
営業時間
   昼:12時一斉スタート
   夜:18時一斉スタート
 定休日:月曜日を中心に月6回
https://respiracion.jp/

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日本初、50位以内に4店舗ランクインの大躍進を見せた「ワールドベスト50」。

アワード後に、全シェフが檀上に集まり、喜び合い、また来年への頑張りを誓う満たされたひと時。

世界のベストレストラン50世界一に輝いたのは、デンマーク・コペンハーゲン「ゲラニウム」。日本勢は、「傳」、「フロリレージュ」、「ラシーム」、「ナリサワ」が健闘。

世界27の国と地域の食の識者40人ずつの投票によって、文字通りベスト50位のレストランが決まる『The World’s 50 Best Restaurants awards 2022』(以下、ワールドベスト50)。このランキングシステムが創設されたのは2002年。栄えある1回目のベスト1に輝いたのは、かの伝説のレストラン『エルブリ』です。それから今年でちょうど20年、去る7月18日にロンドンで行われたアワードは、まさに20年の集大成となる、華やかなものとなりました。というのも、コロナ禍をはさんで、これだけ多くのシェフやメディアが集まれたのは3年ぶり(2020年中止、2021年小規模開催)だったからです。世界を代表するトップシェフたちが、また一同に顔を揃えられたということに、皆、喜びを爆発させていました。会場となった『オールドビリングスゲート』は、1980年代初頭まで魚市場だったビクトリア朝の歴史的建造物。ブラックタイにカクテルドレスの男女、赤いマフラーを巻いたノミネートシェフたちが、グラスを手に行きかい、あちらこちらでハグを交わす姿はなんとも艶やかでした。

今回のアワードの一番の注目は、1位の行方。2021年は、2位の『ノーマ』がスライドして1位になるだろうというのが大方の予想でしたが、今回に関しては2位のデンマーク『ゲラニウム』がくるのか、はたまたこの10年近く、5位前後を死守しているペルー『セントラル』(昨年は4位)が念願の1位に輝くか、予想が分かれるところだったからです。話が前後しますが、『ワールドベスト50』では2018年以降、一度1位にランクインしたら、ベスト オブ ザ ベストとして殿堂入りし、ランク外となるルールができたため、こうした予想が成り立つわけです。

果たして、1位の座を射止めたのは、ラスムス・コフォードシェフ率いるデンマーク『ゲラニウム』、2位にビルジリオ・マルチネスシェフ率いる『セントラル』がつけました。コフォード氏は、料理界のオリンピックとも言われる技能大会『ボキューズ・ドール』でも、金・銀・銅賞を受賞した実力者で、ミシュランの三ツ星も獲得しており、まさに、今回の1位で、料理界の真の帝王となったといっても過言ではありません。昨年からメニューのミートフリー宣言をするなど、時代に先駆けている点も注目です。また、ビルジリオ氏は、クスコの伝統文化を繋ぐ支店『ミル』の開店や、アマゾンの生態系の研究に力を入れるなどの社会貢献のほか、7月には日本に支店『マス』をオープンしたばかり。一層の高評価は、日本人である我々にとっても喜ばしい限りです。

『ゲラニウム』チーム。真中のベスト姿がシェフのラスムス・コフォード氏。その右隣りは、マネージャーのソレン・レデット氏

世界のベストレストラン50

日本勢も過去最高の4店舗のランクインと大健闘を見せました。その筆頭が20位の『傳』
で『The Best Restaurant in Asia』を獲得しました。昨年11位、悲願のベスト10入りはかないませんでしたが、コロナ禍でインバウンドが激減したなかではむしろ賞賛に値すると言えるでしょう。何より、これまで、タイ、シンガポール、香港に阻まれて、獲得できなかった、アジアNo1を手にしたわけですから、まさに傳の真価が発揮されたともいえます。長谷川在佑氏に喜びの声を聞くと、「順位はそれほど気にしていません。それより、何より嬉しかったのは、こうして世界のシェフたちとまた集まれたこと。久しぶりに彼らの顔を見て、おおいに刺激を受けましたし、また頑張ろうと思えました。僕にとっては、ワールドベスト50はカンフル剤みたいなものです」と話します。

『傳』の受賞が、表彰台の大スクリーンに映し出された瞬間。日本勢の中はトップにランクイン。

世界のベストレストラン50

次点が、39位から30位にジャンプアップした『フロリレージュ』。川手寛康氏は「インバウンドがほぼなかった中で、多くの評議員が訪れ、評価してくださったことは、本当に嬉しいです。けれど、コロナ渦中のこの結果は仮のものだと思い、これには甘えないようにします。本当の勝負は来年だなと。今年後半からは海外でのコラボレーションも増えていますし、自分らしく頑張りたいですね」と。そして、日本にとっての吉報は、大阪の『ラシーム』が41位にランクインしたことです。高田裕介氏の感想は「大阪というハンデがある中、正直、そんなに評議員がきてくださっていたのかと驚いていますが、こうして会場へ来て、海外のシェフたちに会うと、自分自身もっと変化を受け入れ、進化しなければいけないと、強く感じますね」と決意を新たにしていました。そして45位に『ナリサワ』がランクインしています。19位からランクを落としたのは残念ですが、もとより海外票の多い『ナリサワ』にとっては、この状況はいたしかたのないものでしょう。それより、2009年に、初めて『ワールドベスト50』にランクインして以来、一年も欠かさずランクインし続けている店は、2022年の50店舗のうちでもごく少数であり、その貢献には心から賞賛を送りたいものです。

『フロリレージュ』の受賞が映し出された瞬間(左)と『ラシーム』の受賞の瞬間(右)は、大いに湧いた。

『ナリサワ』の受賞が映し出された様子。右前方で立ち上がっているのが、成澤由浩氏。

世界のベストレストラン50

最終的に日本は、最多入賞6店舗のスペインとイタリアに次ぐ、多勢入賞国となったわけで、真の美食大国であることを、世界に知らしめるにいたりました。

アワードの前日に「シェフズトーク」という、メディア向けのセッションがあり、その年のテーマとなることをシェフが語るのですが、そのひとつが「ホスピタリティ」でした。世界が政治的に厳しい局面を迎え、殺伐とした世の中だからこそ、一層、おもてなしの心が大切になるということを考えてのことでしょう。ホスピタリティに定評のある『傳』(かつて、アジア、ワールド共に、アート オブ ホスピタリティ賞を受賞)の女将のビデオインタビューが流れ、個々のゲストが求めているものを汲み取る力の重要性を語り、賞賛を得ていました。長谷川氏も、「じきに海外のお客様が戻ってきてくれると思いますが、いつでも迎えられるように、日々、自分やスタッフをブラッシュアップしています。もちろんうちだけでなく、成澤さんはじめ、『フロリレージュ』、また、ニューエントリーした『ラシーム』も含め、チームジャパンで一丸となって、海外のお客様を迎えていきたいですね」と心意気をのぞかせてくれました。そして、ロンドンの街の賑わいにふれ、日本も一日も早く経済活動が活発になるようにと、切実に思ったとも。

最終的に日本は、最多入賞6店舗のスペインとイタリアに次ぐ、多勢入賞国となったわけで、真の美食大国であることを、世界に知らしめるにいたりました。

アワードの前日に「シェフズトーク」という、メディア向けのセッションがあり、その年のテーマとなることをシェフが語るのですが、そのひとつが「ホスピタリティ」でした。世界が政治的に厳しい局面を迎え、殺伐とした世の中だからこそ、一層、おもてなしの心が大切になるということを考えてのことでしょう。ホスピタリティに定評のある『傳』(かつて、アジア、ワールド共に、アート オブ ホスピタリティ賞を受賞)の女将のビデオインタビューが流れ、個々のゲストが求めているものを汲み取る力の重要性を語り、賞賛を得ていました。長谷川氏も、「じきに海外のお客様が戻ってきてくれると思いますが、いつでも迎えられるように、日々、自分やスタッフをブラッシュアップしています。もちろんうちだけでなく、成澤さんはじめ、『フロリレージュ』、また、ニューエントリーした『ラシーム』も含め、チームジャパンで一丸となって、海外のお客様を迎えていきたいですね」と心意気をのぞかせてくれました。そして、ロンドンの街の賑わいにふれ、日本も一日も早く経済活動が活発になるようにと、切実に思ったとも。

もう1点、日本にとって喜ばしいニュースは、旭酒造『獺祭』が国際スポンサーに参入したことです。これまで、日本が参加し始めた2007年から一社もスポンサーに手を上げる企業がなかったのです。世界的なレストランの大会で、各国の飲料・食品メーカーが華やかにブースを出し、いたるところでロゴマークを目にし、パーティでは、皆それらの美味を飲み、食べ、集う中、美食大国を自負する日本から、スポンサーが出ていないことは、大変に寂しいことでした。それが今年は、『獺祭』の墨文字も眩しい、真っ白なブースが入口の至近に出され、世界中のシェフやメディアが「SAKE please!」と、『獺祭』の「ニ割三分」を楽しんでいる姿は、誇らしいものでした。これでようやく、日本が国際市場に参入できた、そんな気になったほどです。桜井社長も「日本のシェフが世界で勝負する姿は、日本人として心が震えました。獺祭がその力添えになれればこんなに嬉しいことはありません」と感激を言葉にしてくれました。

凛とした『獺祭』のブースと、ゲストをお迎えする桜井一宏社長。

大変な盛り上がりを見せる、アフターパーティの様子。

世界のベストレストラン50

10年間日本のチェアマンを務める中村孝則氏に、今回のアワードで印象的な事象をあげてもらうと「新規のランクインが12軒、カムバックが2軒と、計14軒のリストが刷新されたことでしょう」と言います。「この入れ替わりの激しさは、例年にないもの。つまり、コロナ禍で海外へ出かけることができなかった地域(主にアジア、南米)の評議員には、通常は自国に6票、他国に4票投票するところ、全票を自国に投じてもよいという救済措置が施され、多くの人が、これまで入れなかった自国のレストランに投票したためだと思われます。これまで、自国では名店でも、世界的なリストには上がってこなかったような、ローカルガストロノミーが、土俵に上がってきた。こう考えるのが順当ではないかと思います」と話します。

実際、これまで美食の国ではありながら、それほど多くの票を獲得してこなかったイタリアが、6店舗のランクインと、スペインと並ぶ、トップの入店国になったことも、ひとつにはこの理由が上げられるでしょう。6店舗中の新店は2軒。中でも初ランクインの12位セニガリアの『ウリアッシ』は、アドリア海沿岸の伝統にインスピレーションを受けたモダンな料理で、ハイエストニューエントリー賞を受賞。もう1軒は29位のサンカッシアーノ『セント ヒューベルト』です。また、8店舗の入店と、今回強さが目立った南米も同じくで、32位のリマ『マイタ』、47位リオデジャネイロ『オテーク』2店舗の新店がランクインしています。

相対的にコロナ禍で海外旅行がままならないなか、地方のレストランを掘り起こすという作業が進んだということが言えますが、完全にコロナ前の世界に戻った時、この現象がもとへ戻るのかは定かではありません。しかし、一度動き始めた波は止まらないのではないだろうか、というのが私の考えです。ひと昔前の、地球の裏側から季節外の野菜を取り寄せることが最高の贅沢だった時代から、その地へ足を運ばなければ食べられないものを、体験しに訪れることこそ贅沢という考え方が進む限り、ローカルガストロノミーへの探求は止まらないはずです。世界一位のレストランを決める大会であるワールドベスト50のランキングを、デスティネーションレストランマップとおきかえて読み込めば、なんとも楽しい、世界の新しい地図が見えてくるはずです。

喜びを分かち合う日本チーム。左は、チェアマンの中村孝則氏。

Text:HIROKO KOMATSU

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