先進技術と独自のノウハウで、獲れたての鮮度とおいしさを閉じ込めた炊き込みご飯。[和光アネックス/東京都中央区]

肉厚、大粒のホタテは抜群の存在感。世界に誇れる自然環境の南三陸町で育まれた自然の恵みを、存分に味わえます。

WAKO ANNEX豊かな漁場が育んだ旬の味をシンプルな味付けで。

最高の素材、鮮度、おいしさをそのままに、調味料、添加物不使用で作る『炊き込み御飯の素 帆立』は、地元の素材を活かした製品づくりを一貫して行い、先進的な研究開発でも注目される宮城県南三陸町の企業『丸荒』によるものです。

何といっても、主役は大粒のホタテ!プランクトンの豊富な三陸の漁場で、天然稚貝から垂下養殖にて3年もの間育成されたホタテは、大きく肉厚な身と強い甘味が特徴です。

おいしさがピークに達する旬の時期に水揚げし、次世代の凍結技術と称される「プロトン急速凍結」により-38℃で急速凍結することで、細胞を壊さずに無添加で閉じ込めます。そうしてうま味を凝縮した良質なホタテを、独自の高温・高圧スチーム技術によってふっくら、やわらかく仕上げました。ごぼうや人参、こんにゃくといった素材とともに、絶妙に火を入れることで、炊き込んでも形が美しく残るところも魅力です。

ご家庭で、お米に加えて炊き込むだけ。素材の味を生かしたシンプルな味付けは、子どもからお年寄りまで安心して食べられます。まるごとおいしくお召し上がりください。

先進技術を果敢に取り入れ、進化を続ける『丸荒』だからこそ実現可能な味わいがここに。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

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お茶のように飲む“だし”。新発売「Dashi-Cha」を監修した料理人・長谷川在佑氏の思い。[Dashi-Cha]

「Dashi-Cha」を味わう外苑前『傳』の長谷川在佑シェフ。

オンとオフ、それぞれの時間に寄り添う「Dashi-Cha」。

このほど、新たに発売された「Dashi-Cha」をご存知でしょうか?

日本人にとってなじみの深いだしの文化を再解釈し、ドリップして楽しむ新しいジャンルの飲み物として誕生した「Dashi-Cha」。それは文字通り“お茶のように楽しむだし”です。

この「Dashi-Cha」の監修をつとめたのが、『DINING OUT』でもおなじみの長谷川在佑シェフです。長谷川氏の店、外苑前『傅』は、数々の栄誉に輝く日本を代表するレストラン。そんな名店を率い、日々だしと向き合う長谷川氏が2年以上にわたり何度も試作を繰り返しては調整し、ようやく完成した逸品です

長谷川氏は、どのような思いで「Dashi-Cha」を監修し、そして完成した「Dashi-Cha」をどのように見つめるのでしょうか?

その心の内を知るため、仕事と向き合うオンタイム、プライベートなオフタイムそれぞれの長谷川氏に話を伺いました。

想いはいつも「お客様のこと」。料理、サービス、雰囲気づくり、すべてに心を配るオンタイムの長谷川氏。

忙しい日々のなかでも「釣りで疲れることはない。むしろ来ないと疲れちゃう」と笑う長谷川氏。

ほっと染みる味わいが、一日の始まりという起点をつくり出す。

「“おいしさ”って不思議な感覚で、リラックスしていたり、愉しんでいたりすると、より感じやすいもの」

仕事場に立つ長谷川さんは、そう話しました。

そしてそのために店の雰囲気づくりを何よりも大切にしているのです。しかしそれは言葉でいうほど簡単ではなく、もしかすると料理の味以上に確たる正解のないものかもしれません。

「どういう方と、どういうシーンで、どういう気持ちでいらっしゃるか想像して、そこに一番ふさわしいサービスを心がけるのです」

と長谷川氏。つまり店づくりの基本は、相手を思う気持ち。だから厨房に立つとき以外も長谷川氏の頭の中には、お客様に関することであふれています。24時間365日、常に料理のこと、お客様のこと。カレンダーの“1日”という区切りが意味をなさぬほど、エンドレスに時間が連続するのです。

そんな長谷川氏にとって「Dashi-Cha」の魅力は、「自分で引いたものではないだしを味わうことで、自分の時間を取り戻せる」という点にありました。

まだ街も目覚めきらないある朝。

『傳』の店舗前にあるテラスで「Dashi-Cha」を味わう長谷川氏。

「クリアな味で、香り豊か。でもどこか優しく、ほっと心に染みる。このDashi-Chaを味わうことで連続する時間に区切りをつけ、1日の始まりという起点を自分でつくれる気がします」。

それは、誰かが心を込めてつくった「Dashi-Cha」の味が、常に「誰かのため」を考え続ける長谷川さんの想いと重なり、ふと自分自身を見つめる機会となるからなのでしょう。

日本各地の産地を訪ね歩くなど、食材へのこだわりも強い長谷川氏。今回監修した「Dashi-Cha」もとことん素材にこだわり抜いた。

早朝のテラス席で「Dashi-Cha」を味わう長谷川氏。一日のスタートに心が整う感覚だという。

心をほぐすおいしさが、仲間との心の距離をいっそう縮める。

子供の頃から続けている長谷川氏の趣味は、釣り。休みの日や、店のオープン前の早朝、長谷川氏はしばしば釣りに出かけます。

日々、料理のこと、お客様のことばかりを考えている長谷川氏にとって、釣りは日常を離れる時間なのでしょうか?

実はそればかりではありません。

長谷川さんは言います。

「変な言い方ですが、魚とお客様って似ているところがあるんです。バス釣りはラッキーで釣れることはまずありません。気温や季節や天気を見て、今日はバスがどのへんにいて、何を食べたいかを予想する。そしてその場所に的確なルアーを投げる。相手が求めるものを予測して、自身の技術でそこに合わせる。レストランのお客様と共通点がある気がしませんか?」。

つまり長谷川氏にとって、釣りはリラックスする時間であるのと同時に、まだ見ぬお客様の心を読み、的確に応えるための練習でもあるのです。

ある冬の日。

まだ夜明け前の千葉県のとある河川敷に、カヌーを準備する長谷川氏の姿がありました。今日は気の合う釣り仲間たちとともにバス釣りです。

カヌーの出航準備を整え、ロッドとルアーを揃えたら、仲間とともに作戦会議。

「夜明け前は冷えていたけど、日が上がって気温が上がってきた。このまま水温が上がるなら狙う場所は……」。

真剣な会話ですが、長谷川氏と仲間たちの顔はにこやか。

「軸は仕事にありますが、やっぱり愉しいからリラックスはできます。そうしてふっと抜けた状態だからこその閃きがあったりもするんですよ」。

皆で囲むテーブルの上に並ぶのは「Dashi-Cha」。

「体を温めるというのはもちろん、Dashi-Chaの香りが気持ちまで温める気がします。場をほぐしてなごやかな会話を生み出してくれる」
そう言ってお気に入りのマグカップを傾ける長谷川氏。気心知れた仲間たちとの距離をいっそう近づけるような効能を、「Dashi-Cha」に見出したようでした。

「釣りは、本当の自分を取り戻し、ふっと気持ちを落ち着かせる時間。Dashi-Chaも僕にとって同じような効果を感じています。だから釣りのときに愉しむDashi-Chaは、いっそう染みるのでしょうね」

出航前のリラックスタイム。自身が監修した「Dashi-Cha」を仲間たちに振る舞う長谷川氏。

穏やかなおいしさの「Dashi-Cha」が、自然の中でも存在感を発揮した。

冷え込む朝の時間、「Dashi-Cha」の温かさがいっそう染み渡る。

優しく深いおいしさは、大切な人への贈り物にも。

自身が監修した「Dashi-Cha」をオン、オフ、それぞれのシーンで楽しんだ長谷川氏。そしてこの「Dashi-Cha」こそ「いまの時代に必要なもの」と言いました。

「面倒なもの、難しいもの、高尚なもの。そんなイメージで、だしへのハードルが高くなり過ぎた現代。しかしやはりだしは日本人にとって縁深いもの。だしの味や香りを感じると、ほっと心安らぐ気分を感じますよね? だから毎日の中でそんな安らぎの時間をつくるため、そして日常の中にだしを取り戻すためにDashi-Chaの存在はとても役立つと思います。ストレスの多い時代だからこそ、この優しさが染みるんですね」

と長谷川氏。シーンを選ばずに利用できるのも大きな魅力だと語りました。さらに大切な人への贈り物にも最適だとも。

「贈り物を選ぶときって、自分自身が大好きなものを選んで、相手が喜ぶ姿を想像する楽しさがありますよね。この日本人にとって親しみ深いだしを通して日本のことを伝え、さらにリラックスできる時間を贈るという意味で、外国の友人への贈り物にぴったりだと思います。あとは、産前産後の方へ。飲めるものが限られている時期ですし、疲れもたまりやすい時期でもあります。そんな方に、心を込めて贈ってみたらきっと喜ばれるんじゃないかな」

という長谷川氏。

日常の中に取り入れ、大切な人へと贈る。この「Dashi-Cha」がやがて、老若男女が楽しむスタンダードな飲料となる日も近いのかもしれません。

「スタイリッシュなパッケージも贈り物にぴったりですね」と長谷川氏。

意見を交換しながら何度も試作を繰り返した「Dashi-Cha」開発チームとともに。


Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SIGIHARA
(Supported by 味の素株式会社)

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古きを温ねて、新しきを知る。江戸から東京への進化を辿る美食の会。

左から、江戸蕎麦御三家『砂場 赤坂店』にて、江戸前蕎麦の技術を体得し、西麻布の地にて蕎麦の発展を目指す『おそばの甲賀』、甲賀 宏氏。2011年から13年連続でミシュランの星を獲得し続ける『天ぷら元吉』の元吉和仁氏。2022年「アジアのベストレストラン50」で1位を獲得した『傳』の長谷川在佑氏。29歳の若さで『鮨 銀座おのでら』のハワイ店の責任者を務め、独立後も瞬く間にミシュランの星を獲得した『鮨まつうら』の松浦 修氏。鰻の美味しさだけでなく、資源問題に向き合った鰻料理の未来を模索する『はし本』の橋本正平氏。

Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner 日本料理界を代表する5人。「江戸前」の最前線。

今から400年前の江戸時代。活気のある城下町には、暖簾を掲げた大勢の屋台が並び、気軽につまめる庶民の料理が大流行。日本が世界に誇る食文化「江戸前」が誕生しました。

そして、移り変わる時代の中、数多の料理人が研鑽を重ねて幾星霜ーー。師から弟子へ伝統が受け継がれ、刷新と革新が繰り返され、かつて庶民の食として愛された江戸前料理は、世界が注目する食文化として進化を遂げました。江戸前において四天王と呼ばれた、寿司、天ぷら、蕎麦、鰻は、さらなる美味しさと料理人の想いが込められ、令和の時代でも多くの人々を魅了しています。

2023年、都内某所で開催された「江戸前進化論」は、そんな江戸前料理の最前線を5人のシェフが披露します。脈々と続く伝統を受け継いだ江戸前の担い手たちが、400年前の食文化に想いを馳せながら、自身が考える至高の江戸前料理を表現。まさに古きを温ねて、新しきを知る。江戸から東京への進化を辿る美食の会が始まります。

まず料理を振る舞ったのは、日本料理店『傳』の長谷川在佑氏。店の名物でもある「傳最中」がテーブルに供されます。

「香ばしく焼いた最中種に、干し柿、フォワグラの味噌漬け、いぶりがっこを挟みこみました。干し柿は、砂糖が簡単には手に入らなかった時代の貴重な糖分。自然の食材だけで感じる贅沢な甘味と、当時の日本にはなかったフォワグラの味噌漬けのコンビネーションを楽しんでください」。

手の平にちょこんと乗るサイズの「傳最中」を口にしてみると、思わず仰け反るほどの濃厚な甘い風味が、口内を満たし鼻腔へと駆け抜けます。

イベント開始早々、長谷川氏の「傳最中」で会場は一気に熱を帯び、4人のシェフが次々に料理を振る舞い始めました。今を生きる日本料理界の旗手たちが考えた「粋」な江戸前料理とはーー。

『傳』の長谷川氏が、まず披露した「傳最中」。

「傳タッキー」は、手羽の中に紫蘇を混ぜ込んだおこわと青梅が詰めて揚げてある。

Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner魚の上質さを生かして、江戸前の仕事を施す。

白金で鮨屋を営む『鮨まつうら』の松浦 修氏が、江戸前料理として披露したのは4種の鮨とどんぶりです。そして、江戸時代に城下町を賑わせた屋台スタイルで鮨を供します。客は肩を並べながら、目の前で大将が握る鮨に目を奪われます。

「僕が考える江戸前鮨は、現代だから手に入る新鮮で上質な魚に、少しだけ手を加えてネタにします。魚本来の風味をのこしつつ、先人が考え出した知恵をそっと添えてあげる。進化した江戸前の美味を感じてください」。

松浦氏が付け台に差し出した、艶やかに光る小肌を口に入れます。なるほど、小肌の上質な脂感を感じつつ、口内の余韻をしめるのは酢の柔らかな酸味です。一つ一つの鮨が目をみはるほどの充実感で、現代の食材と江戸前の仕事が見事に融合した味わいでした。

『鮨まつうら』で一品目に必ず出すという「まぐろの脳天」。

江戸時代によく使われた調味料、煎り酒なども取り入れた松浦氏。

左から「のどぐろのどんぶり」「大トロ」「小肌」「まぐろの脳天」「あん肝」。

Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner食材の真価を見極める。調理法としての天ぷら。

パチパチと金色の油が跳ねる鍋を前に、人の良さそうな笑顔で客を迎えるのは『天ぷら元吉』の元吉和仁氏。

元吉氏が天ぷらを揚げる中でゲストを驚かせたのは、多彩な調理法でした。食材に衣をつけて油で揚げる。そんな定型通りの揚げ物とは別次元。まるで異国の調理法を見ているような新鮮な光景が広がります。

揚げたての新玉ねぎは、冷めるまで風にさらし、片面だけ衣がついて揚がった大葉の上には生のウニが堂々と鎮座します。なんと、太刀魚の天ぷらは揚げる時に油へ水を加えます。固定概念から大胆に脱却した元吉氏の天ぷらは、軽やかでありながら不思議と馴染み深い味わいを感じます。

「ただ珍しいことをするのではなく、裏側にはきちんと基礎と理由があります。太刀魚の天ぷらは、水を加えて揚げることでふっくらと。衣をすこし焦がす事で焼き魚のような香ばしさもまとわせます。この調理法のために、蓋をしめられる専用の揚げ台まで作りました。伝統的な教えを理解した上で、新しい調理法を考え、今までになかった味を創ろうと心がけています」。

独自の天ぷらを作るために、調理器具も開発したという。

左上から時計回りに「太刀魚」「新玉ねぎ」「ウニ」。

「食材の美味しさを引き出すための手法として、天ぷらを作っています。江戸前の精神と、これまでになかった調理法から、天ぷらの未来を感じてもらえたら嬉しいです」と話す元吉氏。

Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner庶民の味とお殿様の味。多様な江戸前蕎麦の世界。

江戸蕎麦御三家の一つ『砂場』で修行を積んだ『おそばの甲賀』甲賀 宏氏は、2種類の蕎麦を披露しました。

「江戸時代は庶民からお殿様まで、蕎麦が大好きでした。今日は現代風にアレンジをした気軽に腹を満たせる”庶民の蕎麦”と、更科粉を用いた上等な”お殿様の蕎麦”を用意しました。江戸から続く多様な蕎麦の美味しさを愉しんでください」。

一つ目は、『おそばの甲賀』でも出しているという「すだちそば」。濃いめのつゆをカツオ出汁でわったものを、豪快に蕎麦へぶっかけて食します。清涼感のある蕎麦の美味しさは、夏の定番として、江戸時代から庶民に親しまれていたのです。

二つ目は「キャビアそば」。江戸時代にお殿様に献上されていたという「御前蕎麦」の上に、キャビアが溢れんばかりに盛ってあります。江戸時代のお殿様よりも贅を尽くしているであろう蕎麦を手繰り、会場には至福と愉悦の雰囲気が漂いました。

大葉を練り込んだ更科蕎麦にキャビアをのせた「キャビアそば」。

「すだちそば」は、半分食べたらもずくを投入。キュッとした酸味が加わる。

修行先で江戸前蕎麦への理解を深めたという甲賀氏。

Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner野趣と洗練の間。進化した鰻の食事情。

鰻屋として江戸前を表現するのは『はし本』の橋本翔平氏。現代ならではの上質な養殖鰻を使い、江戸時代の野趣を感じる調理法を披露します。

「江戸時代の鰻は、すべて天然もので美味しさにも個体差があったはずです。今は醸成された養殖技術と優れた生産者がいるので、いつでも美味しい鰻が手に入るようになりました。今日使う鰻は、鹿児島で横山さんという方が育てています。臭みがなくて綺麗な味わいです」。

酸味を効かせた「鰻ざく」は、穀物の荒々しさがのこっていた江戸の酢をオマージュして、どぶろくの醸造過程で抽出したお酢を使用。まるできりたんぽのような佇まいの「蒲穂焼」は、筒切りにした鰻を骨ごと串刺しにして、山椒味噌を塗って焼き上げています。豪快な江戸の調理法を用いながらも、洗礼された盛り付けといった現代的なアプローチで、鰻の澄んだ味わいと力強い存在感を表現していました。

どぶろくから抽出した酢を使った「鰻ざく」と、筒切りの鰻を串刺しにした「蒲穂焼」。

鹿児島産「横山さんの鰻」。クセがなく澄んだ鰻の旨味が愉しめる。

鰻を丁寧に焼き上げる橋本氏。

Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner江戸前料理のこれまでと、これから。

屋台スタイルで暖簾を掲げるシェフたちの料理を味わった「江戸前進化論」。短い時間でしたが、肩を並べて大将の話を聞き、舌鼓を打った面々の間には、美食談義の華が咲いていました。400年前の江戸っ子たちも屋台からの帰り道、同じように美味しいものへの熱い想いを語り合ったに違いありません。

最後は、イベントをプロデュースした本田直之氏のこんな言葉で締めくくられました。

「江戸前を代表する鮨、天ぷら、蕎麦、鰻を一つのコースで食べる特別な会でした。シェフたち! 素晴らしい料理をありがとう! 今宵が江戸前料理の未来を考えるキッカケになったらと思います」。

互いの料理を賞賛しアイデアを出し合うシェフたち。食べた料理に合わせる酒を議論する醸造家たち。次に食べてみたい料理への飽くなき好奇心を胸に宿す美食家たちーー。

まだイベントの熱から冷めやらぬ会場には、世界基準へと成長を遂げた江戸前料理が、さらに先へと歩みを進める気配に満ち溢れていました。

日本料理を代表する5人のシェフが揃い踏みした特別な一夜だった。

エネルギッシュな会場には、フーディーやクリエイターなど、国内外を問わず、多くの人々が集った。

「江戸前進化論」のプロデュースを務めた本田直之氏。料理人や各界からの信頼も厚く、そんな人間関係によって成された今回は、ただ美味いだけでなく、日本文化も表現。


Text:DAIJIRO KAWANO

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コク深いたまり醤油と爽快な山椒の邂逅。後味まで美味しい新定番。[和光アネックス/東京都中央区]

昔ながらのスタイルで醤油を醸す『山川醸造』のたまり醤油は、岐阜県内の料理店などでも広く使われる地元で馴染みの味。同じく地元伝統の山椒と組み合わせ、新たな可能性の扉を開いた。

WAKO ANNEX醤油の旨味、山椒の辛味としびれ。すべてが一体となり素材を引き立てる。

岐阜県奥飛騨温泉郷で栽培されてきた「高原(たかはら)山椒」。香り、辛さ、しびれのバランスが優れており、柑橘系の上品で豊かな香りが口から鼻へと爽快に抜けていきます。そして追うように表れる、程よい辛さと心地よいしびれ。

そんな高原山椒を昔ながらの製法でつくり続ける『飛騨山椒』が、地元の蔵元『山椒醤油』とタッグを組み誕生した『山椒醤油』は、まさに奥飛騨伝統の味。長良川の伏流水を使い杉の木桶で、2年もの間寝かせてつくるコク深いたまり醤油に、こだわりの山椒の実を漬け込みました。

香り豊かに料理の味を引き立たせる醤油の旨味と、山椒のすばらしい香り、ピリリとした刺激が食欲をかきたてます。

刺身や卵焼き、冷奴といったおなじみの料理はもちろん、白米に軽く回しかけていただくのも、素材の味を存分に楽しめてお勧めです。

また、忘れてはいけないのが、瓶の底で眠る山椒の実です。たまり醤油がしっとりと染みた粒山椒を舌の上でやさしく潰せば、豊かな風味とコク、山椒の刺激と香り、すべてが一気に広がり、後味はすっきり。

いつもの料理に新たな味わいと発見をもたらす新定番を、ぜひお試しください。

もちろん、魚や寿司との相性は抜群。『山椒醤油』の深い味わいとコクに負けない、脂の乗ったブリやサーモン、さんまなどもお勧め。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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Photographs:JIRO OHTANI
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多彩な旨味を凝縮。アレンジ自在の和製タプナード。[和光アネックス/東京都中央区]

椎茸、塩麹、しょっつるの旨味が重なり合う豊かな味わい。サクサク、とろっとした食感も料理のアクセントに。

WAKO ANNEX秋田産の椎茸をふんだんに。和洋に合う万能ペースト。

フランス・プロヴァンス地方を発祥とするペースト、タプナードをヒントに、秋田県産の椎茸と塩麹、秋田伝統の魚醤「しょっつる」で仕立てた『とろっとうまみ 椎茸タプナード』。

手がけるのは、世界遺産・白神山地と日本海の町、秋田県八峰町に店を構える『ノルテカルタ』。オイル漬け専門店として個性的なメニューを展開するなかでも、ひときわ秋田を感じられる一品が、このタプナードです。

椎茸の程よい食感と風味に加え、塩麹のやさしい塩味、しょっつるの後引くコク…さまざまな旨味が重なり合い生まれる豊かな味わいは、癖になる美味しさ。

肉、魚問わず素材の味を引き立てる万能調味料ですが、楽しみ方はさまざま。バゲットに乗せてカナッペにしたり、牛乳や生クリームでのばして、パスタやオムレツのソースにしたり。アレンジ次第で多彩なメニューに変身する、懐の深さも魅力です。

また、和食においても本領を発揮するのは、和製タプナードだからこそ。出汁やしらすとさっと和えるだけでも、至福のごはんのお供に。卵かけごはんにもよく合います。

2020年、2021年には、国内航空会社国際線ビジネスクラスの機内食にも採用されるなど、秋田発の美食はグローバルに存在感を示し始めています。

お好みの具材と合わせ、カナッペに。しっかりとした旨味があるため、お酒のお供としても大活躍します。

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“梅に選ばれた”石神という場所で、梅の可能性はさらに広がり続ける。[和光アネックス/東京都中央区]

梅酒も作る『濱田農園』だが、『梅搾り』はノンアルコール。梅ジュースとしてはもちろん、シロップや料理の調味料など、多彩な使い道でその可能性を広げている。

WAKO ANNEX完熟南高梅の味わいをそのままに。まろやかな甘みと酸味で魅了する梅シロップ。

和歌山県第二の都市、田辺市の山あいに広がる石神地区は、江戸時代から続く梅の郷として知られています。黒潮の海から吹き付けるミネラルを含んだ風、温暖な気候と陽光、水はけのよい土壌など、“梅に選ばれた”としか思えないようなこの場所では、今もなお梅の栽培が盛んに行われています。

豊穣な石神の地で育まれ完熟した梅の実を、人の手で丁寧に拾い集め、塩漬け、天日干しを行い、調味を施す。手間暇かけた昔ながらの製法で梅干しづくりをおこなっているのが『濱田農園』です。

バラエティ豊かな栽培方法、味付けの梅干しはもちろん、先鋭的な加工品の開発も行う同社がつくる梅シロップ『梅搾り』は、完熟南高梅に砂糖のみを加え、濃厚な味をそのまま閉じ込めた一品。梅のエキスを凝縮したまろやかな甘みの中には、ノンアルコールとは思えないほどの深みが感じられます。

水やソーダ、お湯、焼酎などで薄めて梅ジュースや梅酒として楽しむのはもちろん、かき氷のシロップや料理の隠し味、製菓材料などにも活用できます。

酸味料・着色料不使用で、子どもでも安心して食せるのも嬉しい限り。栄養たっぷりの完熟南高梅は、滋養に好適。家族の健康食として冷蔵庫に常備しておきたいものです。

ジュースやお酒で割る場合は4倍希釈で。爽やかな酸味と完熟南高梅のフルーティーな香りが広がります。

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もっちり、つるり。伝統と進化が融合した手延べうどん。[和光アネックス/東京都中央区]

深みのある鰹出汁のつゆに浸る、艶やかな手延べ麺。細麺、太麺と異なる食感、喉越しが楽しめるのも魅力。

WAKO ANNEXうどんの聖地・宮城で無二の存在感を放つ、手延べうどんの新境地。

くるくるとまるめた麺は花のように愛らしく、茹で上げればその名のとおり“つるりん”とした食感で魅了する。

宮城県北部、登米地方のカラリとした気候のもと、絹糸のように白く美しく風に舞う手延べうどん。それが、明治18年創業の『二階堂製麺所』が手がける『花つるりん』です。

コシ、喉越し、麦の香りなど、手延べ麺にしか出せない食感や味わいは、職人の技術と勘があってこそ。塩水の仕込みから仕上げまで約3日を有し、「より」「のばし」「ねかし」といった20以上の工程を経て熟成を重ねた麺は、“本当に美味しいものとは何か?もっと美味しいものをつくりたい”という4代目の情熱が実を結んだものでもあります。

『花つるりん』は伝統を今に復活させただけではありません。製麺所の長い歴史の中でも“進化系”と位置付けられている理由が、麺に練り込まれた低分子の天然コラーゲンです。このプラスワンこそが、もちもちの歯ごたえとつるっとしたのど越しを実現しています。身体にやさしい麺というのも現代の価値観にフィットし、発売以来不動の人気商品です。

こだわりの麺を引き立てるのは、無添加、化学調味料不使用のうどんつゆ。口に含めば、鰹出汁の豊かな風味と深くまろやかなうまみがやさしく広がります。

老舗製麺所の初代が心血を注いだ手延べ道は、4代続いた今もまだ進化の途中。うどんの聖地で無二の存在感を放つ『花つるりん』、温でも、冷やでも、お好みでお召し上がりください。

もちもち、つるつる食感に仕上げるコツは、沸騰したたっぷりのお湯で茹で、冷たい流水でもみ洗いした後、氷水で締めること。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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瀬戸内産 天然魚のうまいもんをご飯と一緒に炊き上げる。

「愛媛海産」の人気シリーズ「瀬戸内 炊き込みごはんの素」。数ある中から今回は、旬の鰆をご紹介。

WAKO ANNEX季節をいただく歓び。約44年、瀬戸内と向き合い続けた味。

瀬戸内海、来島海峡に面する愛媛県今治市に1979年の創業以来、魚介類を主に製造し続けている「愛媛海産」。地域の食材の鮮度と旨味を大切に、原料、製法にもこだわり、「瀬戸内産 天然魚のうまいもん」をお届けしています。

中でも人気の商品は、「瀬戸内 炊き込みごはんの素」シリーズです。

お米2合と炊飯器(土鍋で炊けばより美味しい!)で炊くだけ!のそれは、簡単ですが、味は本格的。その理由は、瀬戸内の新鮮な魚介の力です。鯛、蛸、鱧、牡蠣……。その種類は様々あれど、旬の時期に登場する魚は、ぜひおすすめしたい逸品。今の旬は、鰆です。

鰆は文字通り春を代表する魚のひとつで「春告魚(はるつげうお)」とも呼ばれています。身は柔らかくしっとりとして、ほろりとした甘みが特徴。醤油やみりんで甘めに味付けした鰆をお米と炊き込むことで春を感じる味わいは、お好みで、すだちや柚子胡椒を添えるとより旨味が広がります。

食を通して、瀬戸内を感じ、季節を感じる。そんな美味しい体験をお楽しみください。

簡単に炊飯器で炊き上げるだけでも美味しいが、少し一手間、土鍋で炊き上げればより美味しい炊き込みご飯。三つ葉とかぼすを添え、彩りと香りも豊かに。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
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世界でも類を見ない奇跡の夜。トップシェフたちが集い、互いに料理を作るThe Chefs Gathering。[The Chefs Gathering/東京都渋谷区]

この日集まったシェフは40名以上。いずれも本田直之氏が直接スカウトしたトップシェフたち。

シェフズギャザリングコロナ禍を経て4年越しに開催されたシェフたちの宴。

クラブミュージックが流れるキッチンに名だたるシェフたちが集まり、それぞれの料理を作り、それぞれに振る舞う。そこかしこでにぎやかな会話が交わされ、突発的に共同作業が行われることも。それはシェフがホストであり、ゲストでもある不思議な場所。だからこそ、各店のキッチンからは生まれ得ないここだけの味が生まれることもある。そんな夢のようなイベントがこの「Chefs Gathering」です。

もしこの会のチケットが一般販売されるなら、間違いなくプラチナチケットになることでしょう。しかしこれは、シェフの、シェフによる、シェフのためのイベント。誰もが簡単に訪れられるものではありません。

それでもこの場で紹介するのは、この自由な場が、日本の食の未来に繋がるから。この場で出会い、交流を深め、新たなコラボレーションをするシェフ。この場で得たインスピレーションを糧に、新たなステージに挑むシェフ。賑やかで楽しいこのイベントは、さまざまな可能性に満ちています。

2016年から開催され、コロナの中断を経て2019年以来4回目となった「Chefs Gathering」。そこではどんな光景が広がっていたのでしょうか。

会場となったのは渋谷『TRUNK(HOTEL)』のキッチン。イベントの協賛はドン・ペリニヨンとエビアンスパークリング。

シェフズギャザリング混沌の中で進化するトップシェフのクリエーション。

「ひとつどうだい?」

自ら作った料理を持って会場内を回るのは、2023年の「アジアのベストレストラン50」で第一位に輝いた『ル・ドゥー』のトン・ティティット氏。この日のためだけに来日し、翌日にはもう帰国するといいます。

遅れてやってきた『傅』の長谷川在佑氏は、顔見知りのシェフたちとの挨拶が忙しく、なかなか料理に取りかかれません。

フランス・パリでミシュラン一つ星を獲得した『RESTAURANT PAGES』の手島竜司氏は、せっせと海老の殻を剥いています。その作業を手伝っているのは、『ALTER EGO』の平山秀仁氏。福岡からやってきた『Goh』の福山剛氏は、『鮨 唐島』の唐島裕氏とともにシャリカレーを作るといいます。大阪『La Cime』の高田裕介氏氏は注文していた食材が届かず、急遽パスタを作り始めました。銀座『はっこく』の佐藤博之氏は、巨大な鮪を捌きつつ、さまざまなシェフとコラボして料理を仕上げています。

一言でいうなら、それはカオス。

楽しげな会話と調理の音と音楽。さまざまな料理の香り。それらが入り混じりながら、独特の活気を生み出しています。しかしその状況の中でも、手際よく料理が仕上がっていくのは、ここにいる全員が一流の料理人だから。

「料理人同士、言葉を交わさずとも伝わることがあるんでしょうね」。

先の手島竜司氏はそう言いました。

混沌の中に生まれる秩序と創造。この場所が、これからの料理界にとっていかに大切な場所であるかが垣間見えました。

メインのドリンクは「ドン・ペリニヨン」。最高峰のシャンパンが料理を引き立てた。

シェフたちはオリジナルTシャツを着用。揃いのシャツに連帯感が高まる。

音楽プロデューサーFPMこと田中知之氏がDJ。アップテンポな曲で会場を盛り上げた。

キッチンは広いが40名のシェフが一斉に料理をするとたちまち熱気に包まれた。

トップシェフたちの共演だけに、揃う食材も最高峰。

シェフズギャザリング最高の料理を、フリースタイルで味わい尽くす奇跡のような夜。

料理は次々と完成します。テーブルはありません。料理が並ぶのは調理台の端やコンロの脇。皿が足りなければ、金属のバット。シェフたちは会場を歩きまわりながら、気になった料理を気軽に口に運びます。

しかし何度も言いますが、参加者たちはいずれもトップシェフ。無造作に並べられた料理は、どれも一級品です。なんと贅沢で、なんと楽しいイベントでしょう。

ドリンクを担当するのは日本を代表するバーテンダー・後閑信吾氏と、トップソムリエでありワインディレクターの大越基裕氏。最高のワインとカクテルが、料理のおいしさと場の楽しさをいっそう盛り上げます。

「世界のどこでも、聞いたことがない」。

世界の美食を食べ歩くフーディ浜田岳文氏はそう話します。

「アジアのベストレストラン50」のチェアマンであり、世界のレストラン事情に造詣が深い中村孝則氏もそれに同意します。そしてこう付け加えました。

「この夜は、奇跡に近い」。

焼き肉界の雄『よろにく』からは桑原秀幸氏、早川剛氏の両氏が参加。

『ALTER EGO』平山秀仁氏による一皿。ミラノ仕込みの美しい料理が目を引いた。

銀座の鮨『はっこく』佐藤博之氏による鮪料理。

『鮨 唐島』の唐島裕氏が特別に炊いたシャリに『Goh』福山剛氏がカレーを合わせた鯛シャリカレー。

『FARO』能田耕太郎氏の料理は、スペシャリテであるヴィーガンパスタ。

シェフズギャザリングシェフ同士を繋ぎ、新たな食の未来を描く、美食家の夢。

シェフの、シェフによる、シェフのためのイベント。

その仕掛け人は、ひとりの美食家でした。

その名は本田直之氏。この晩、集まった40数名のシェフは、本田氏が直接出向き、話し、招待した方々。東京も、地方も、海外も、すべて本田氏の直接スカウトです。その情報網と行動力、そして熱量こそが、シェフたちを動かしたのでしょう。

「同じジャンル内では親交があっても、カテゴリーを越えたシェフ同士の交流はなかなか生まれません。しかしジャンルを越えた交流からこそ発見や進化があるはず。ひとりのファンとして、そんな進化が生まれる場を作りたかったんです」
と本田氏。その思いに共感したのが、会場となった「TRUNK(ホテル)」代表取締役社長の野尻佳孝氏。

「どうせなら、何か突き抜けたことをやろう」。

そんな二人の思いが結実して、2016年に第一回の「The Chefs Gathering」が開かれたのです。第4回となった今回は、過去最高の盛り上がりを見せました。そしてもちろん、これからも「The Chefs Gathering」は続きます。

「シェフ同士を繋いだら、どんな化学変化が生まれるか。僕はそんな未来を夢見るシェフの応援団」。

世界でも類を見ないイベントを手掛け、大成功に導いた本田氏は、そう言って楽しそうに笑いました。

仕掛け人の本田直之氏。「オリジナリティとフィロソフィを持つ料理人」を自らスカウトしてこのイベントに繋げた。


Text:NATSUKI SHIGIHARA


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美味しく、健やかに。発酵酢は、人の健康を創る。

りんご酢、りんご黒酢に使用している長野県白井農園の信州りんごは、農薬不使用、化学肥料不使用で栽培。

WAKO ANNEX農薬化学肥料不使用のアップルビネガー。

創業1805年の歴史を誇る鹿児島県霧島市福山町「重久盛一酢醸造場」。約200年、かめつぼ露天醸造法という世界的にも珍しい製法にこだわります。露天に並べられた甕(かめ)の中から生まれたものが「りんご甕酢」です

長野県佐久市にある「白井農園」で栽培されている信州りんごを丸ごと粉砕した後、米麹、地下水と一緒に入れて発酵させたりんご酢を使用。そのりんご酢に、さらに無農薬栽培のりんごを米黒酢に漬け込んで二次熟成させたりんご黒酢をプラス。その後、オリゴ糖や黒糖などを加えて飲みやすくておいしいフルーツ酢に仕上げています。

りんご酢、りんご黒酢に使用している長野県白井農園の信州りんごは、農薬不使用、化学肥料不使用で栽培しています。

おすすめは、まず炭酸水で2~5倍程度に希釈してぜひ。そのほか、アイスやヨーグルトに入れていただくとより美味に。お酒好きな方は、焼酎やビールなどに適量入れていただくも良し。

余談ですが、重久雅志氏曰く「お酢が苦手な私でも、お水で薄めてごくごく飲めます。そんな私のおすすめは、ヨーグルトに混ぜて食べる食べ方です。発酵食品同士のため相性が良く、お互いの爽やかな酸味とりんご甕酢の甘味が相まってぺろりと食べられます」。

おすすめのいただき方のひとつ、「りんご甕酢」を炭酸水で2~5倍程度に希釈してぜひ。酢が苦手な人もお試しあれ。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

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銀座コリドー街の賑わいの中、心静かに自分と向き合う点茶体験。[ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー/東京都中央区]

点茶セットはオリジナルの酒粕チーズケーキとともに販売され、茶菓子は季節によって変わっていく。

ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドーコリドー街の玄関口に誕生したナイトライフを楽しむホテル。

数々の飲食店が軒を連ね、いまや銀座の賑わいの中心地とさえいえるコリドー街。その玄関口に2022年11月、名門ロイヤルパークホテルズの新たなホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー」が誕生しました。

ホテル館内でバーホッピングが楽しめる3つのバーや、お酒の要素を取り入れた客室など、コリドー街らしいエッセンスに満ちたこのホテル。“酔いしれる”をコンセプトに、お酒、音楽、光、食、エンターテインメントをテーマにしたコンテツも多数揃う注目のホテルです。

しかし今回ご紹介するのは、「ナイトライフ」や「活気」というイメージからは少し離れた、一風変わった体験。

それは、抹茶を点てて味わう点茶です。

喧騒から離れて心静かに茶と向き合い、茶の中に自分の心を映す。そのマインドフルな体験は、ホテルの滞在をいっそう豊かな時間に変えてくれることでしょう。

裏千家の岩本氏が監修する抹茶はたっぷりと泡立てるスタイル。泡により飲み口がまろやかになる。

館内に3つのタイプのバーを備えた「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー」。

ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー若き茶道家が監修する、文化に触れるための点茶。

ただ道具を貸し出すだけの体験ではありません。やるからには本格的に。そんな思いのもと、今回の点茶体験は茶道家の岩本涼氏が監修を手掛けました。26歳の若き茶道家・岩本氏は、一般社団法人お茶協会が主催するティーアンバサダーコンテスト日本代表に選出される、世界に日本茶を広める中心人物。そんな岩本氏が、銀座のホテルで点茶を体験する意味を改めて見つめ、そこにふさわしいスタイルを考案しました。

舞台となるのは「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー」2階の「CANVAS LOUNGE」、そして同じく2階の奥にあるバー「OMIKI BAR」。テーブルとチェアのあるバーで行うため正式な茶道の作法とは異なりますが、

「作法よりも大切なことは、“どう向き合うか”ということ。自身と向き合う内省、他者と向き合う対話。日常生活の中で減りつつあるこの“向き合う”という精神性を心に留めれば、正式な作法は後回しで構いません」

と岩本氏は話します。

上質な陶磁器の抹茶碗に触れることで、自分自身や眼の前の相手としっかりと向き合う。それこそが点茶の一番の目的。文化大国といわれながら、文化に直接触れ、体験する機会が少ない日本。海外からのゲストだけでなく、日本人にとっても点茶の体験は素晴らしい時間となるはずです。

さらに岩本氏は、こう続けます。

「余裕がないときや疲れているときには、お茶を点てようという気持ちにはなりにくいもの。つまり、お茶を点てるという行為は、それだけで心が豊かである証明になります」。

コリドー街という繁華街の真ん中で、静謐に浸り、己と向き合う豊かな時間。銀座で点茶という貴重な体験は、体験者の心に確かな何かを残すことでしょう。

監修を務めた株式会社TeaRoom代表の岩本涼氏。「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2022」にも選ばれる次世代を担う茶道家。

「OMIKI BAR」は厳選した酒とアナログレコードの上質な音楽が楽しめる大人のための和酒専門バー。

点茶体験はスイーツ付き。この日のスイーツ、酒粕チーズケーキを味わった岩本氏は「濃厚で苦味のあるお茶と合います」と太鼓判。

ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー点茶を通して心と体も整えて、夜の銀座へ。

作法は後回し、とは言っても、一連の流れは理解しておいて損はありません。ここで、岩本氏の指南による、「OMIKI BAR」での点茶体験の流れを見てみましょう。

まずは抹茶碗選び。6種類準備された抹茶碗は、萩、織部、伊羅保など、いずれも風格のある名品ばかり。

「道具は鑑賞するよりも、使ってみてその先に何があるかに思いを馳せるもの。いわば生活の中に美を見出すこと」

と岩本氏。上質な椀でも直接触れて、土の感触や陶芸家の指の動きに思いを巡らせることで、新たな気づきがあるはずです。

茶碗を選んだら、いよいよ点茶。

湯で温めて提供された椀に茶杓で2杯の抹茶を入れ、湯を流し入れたら茶筅で静かに混ぜます。このとき、“混ぜる”より“こする”ようなイメージで茶筅を回すのが茶の成分と旨味を引き出すポイント。十分に混ざったら最後に「の」の字を書くように茶筅を引き上げます。

抹茶ができあがったら両手で抹茶碗を持ち、感謝の思いを込めて一度黙礼。そこから手の上で茶碗を2度まわします。これは「椀の正面に口をつけないために位置をずらす」という敬意の表現です。

飲み口をずらしたら、あとはどう楽しむのも自由。一息で飲み干すのも、少しずつ味わうのも、一緒に供されるスイーツと交互に味わうのもお好み次第です。ただしお茶の最後のひと口は「最後まで飲み干した」ことを伝えるため、ズズッと音を立ててすすります。

バーで体験するための特別バージョンではありますが、このように点茶は静かに向き合いつつ自由に楽しむもので、なんら堅苦しいことはありません。

直接触れられる文化体験であり、禅に通ずるマインドフルネスの時間でもある点茶。さらにもうひとつの意味があると岩本氏は言います。

「旅館に行くとお茶とお菓子が置いてありますよね。あれには“疲れた体の血糖値を上げ、水分補給をしてください”という意味が込められています。このコリドー街のホテルでの点茶体験は、遠方から到着した方、これから街へ出かける方への体のメンテナンスの意味でもとても素晴らしいと思います」。

都会の夜を楽しむホテルで、点茶で静かな時間を過ごし、心と体を整える。ぜひ体験し、銀座の新たな楽しみ方を見つけてみてください。

素晴らしい器に触れて愛でるのも点茶体験の醍醐味。

茶杓に掬う抹茶は1杯半ほどで。湯量は60ml〜70mlが目安。

器に手を添えて抹茶をこするようにしっかりと混ぜる。

手の上で回して正面を避けたらあとは好みに応じてお茶を楽しむ。

住所:東京都中央区銀座6-2-11
電話:03-3573-1121
https://www.royalparkhotels.co.jp/canvas/ginzacorridor/

【販売情報】
点茶セット+酒粕チーズケーキ 1,800円(税込)
 ※宿泊者には1,500円(税込)で販売
 ※
点茶セットは貸出制となります
 抹茶碗はお選びいただけない場合もあります

OMIKI BAR
 月~土 17:00~28:00(飲物L.O. 27:00)
 日・祝 17:00~22:00(飲物L.O. 21:00)
 

CANVAS LOUNGE
 月~土 11:00~28:00(飲物L.O. 27:00)
 日・祝 11:00~22:00(飲物L.O. 21:00)
 


Photographs:SHINJO ARAI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

(Supported by ROYAL PARK HOTELS)

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幻の花山椒。丁寧な手仕事で最高の山椒を。

5月初旬に1週間ほどだけ咲く、実のならない雄花を新芽と一緒に炊き上げた花山椒。化学調味料、防腐剤、着色料不使用な自然に寄り添った味。

WAKO ANNEX1週間ほどだけ咲く、実のならない雄花を新芽と一緒に炊き上げた花山椒。

岐阜県奥飛騨温泉郷でしか育たない「高原山椒」。その特徴は「香り・辛さ・しびれ」の優れたバランスにあります。特に柑橘系の上品で豊かな香りは他の品種よりも強く、口から鼻へと爽快に抜けていきます。追うように程よい辛さと心地よいしびれが現れ、料理の味を際立たせ、後味をすっきりと引き締めます。

そんな山椒にこだわり続けているのが「飛騨山椒」です。

「飛騨山椒」は、その美味しさを最大限の状態で製品化するために、山椒の出荷を始めて半世紀以上「ひと手間かけた昔ながらの製法」にこだわり続けています。

飛騨の山椒は、古来より山と土と水に恵まれたこの地域で自生していた香りの強い品種。代々、地元の人々によって守られてきました。高度800m程度、上下100m、半径5m範囲の土地で栽培された山椒のみが、高い香りを生み出し、他の土地に移植しても同じようには育ちません。土地、水、気温、霧(湿度)など、様々な偶然が積み重なった自然の恵みなのです。

そんな山椒を使った品は、丁寧な手仕事から生まれています。7月末から8月末にかけて、実をひと房ずつ収穫。陰干し、日干しした後、皮を取り出し、注文がある分だけ、杵でついて山椒を作ります。

今回ご紹介する花山椒は、さらに特別な逸品。5月初旬に1週間ほどだけ咲く、実のならない雄花を新芽と一緒に炊き上げた希少なもの。
なかなか手に入れることができない花山椒の味わいを、ぜひご賞味あれ。

飛騨の山椒は、江戸時代、天領だった飛騨の郡代が徳川将軍にも献上した記録が残っているほど、歴史ある品。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

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ホストが観た「ダイニングアウト比叡山」。[DINING OUT HIEIZAN/滋賀県大津市]

「ダイニングアウト」最多のホストを担った中村孝則氏は、今回、ゲストとして参加。

DINING OUT HIEIZANなぜ「比叡山」が舞台となったのか?

2023年2月末。20回目という節目を迎えるダイニングアウトが、「比叡山延暦寺」で開催されました。私は今回、ホストではなくゲストとしてこの「ダイニングアウト」に立ち会うことになりました。ですので、お客さまと同じ目線から、今回の「ダイニングアウト比叡山」の全体像を振り返り、その魅力のツボお伝えできればと思います。

さて読者の多くは、なぜ美食イベントの象徴ともいえる「ダイニングアウト」が「比叡山」で開催されることになったのか? 素朴な疑問を抱かれることでしょう。ご存知の通り「比叡山延暦寺」は、平安時代の僧侶の伝教大師最澄が開山し、以来1200年の歴史を持つ天台宗の総本山であり、のちに六大宗派の開祖を生んだ日本仏教界の中心であり、今も神聖な修行の場でもあります。そもそも、そこで食される食事は美食の対極にある精進料理ではないかと。そのご指摘を想定しているかのように、今回の料理のテーマはずばり“精進料理”であること、挑むのは和歌山の「Villa Aida」の小林寛司シェフであることが、事前に公表されていました。その小林シェフが、どんな狙いと想いを持って、どんな精進料理を作りあげたのかについては後に述べるとして、まずは今回の舞台が「比叡山」であった理由とその本質について、私なりに分析してみたいと思います。

過去に「ダイニングアウト」に参加された方や、このメディアの読者の方々なら既にご存知のことと思いますが、「ダイニングアウト」は、単なるポップアップのレストランではありません。ちょっと私なりに硬い表現を使わせて頂くと「地域表現をガストロノミーで紐解く知的エンターテイメント」なのです。いわば、地域表現としてダイニング・エクスペリエンスということになります。

地域に眠る豊かさを再発見し、それを体験型の美食エンターテイメントに仕立てることが、「ダイニングアウト」のそもそもの命題です。では、ガストロノミーに集約される地域に眠る豊さとは何かといえば、気候風土が生みだす海の幸・山の幸といった食材や、歴史や習俗や祭りや歳時記に根ざした伝統的な食文化、あるいは器などの伝統工芸もまた欠かせない要素になります。そして、地元が育んだ神や神話や宗教もまた、地域を表現するうえで避けて通れない、というか重要な要素になっています。あえて“宗教観”という言葉を使わせてもらえば、それは食文化の精神性に根ざしているだけでなく、“おいしい”と感じる感覚的なところにも影響しているからです。それは広義に“文化的なおいしさ”とは何か?という議論にも通じますが、それはこのコラムの本論ではないので別の機会に譲るとして、少なくとも祈りや救いの宗教的な感性は、「ダイニングアウト」の豊かさの表現の一端を担ってきたのは事実です。

「ダイニングアウト宮崎」では、日本神話の舞台にもなった「青島神社」の敷地内で開催されました。「ダイニングアウト琉球・南城」は、琉球神話の神の島である久高島や、祈りの場である「御嶽(うたき)」を舞台にしました。そのときに担当した樋口宏江シェフは、伊勢神宮にお供えする“御食国”である伊勢志摩のローカルガストロノミーをフランス料理で表現しています。また、「ダイニングアウト国東」では、日本の神仏習合の原点である六郷満山の代表的な寺である文殊仙寺の境内を舞台にしました。私は、これらのホストを担当しましたが、いずれの回も地域に根ざした独自の宗教観を紐解くことからはじめました。というのも、その神聖な“場”のルーツを探り、雰囲気と共にゲストと一体になることこそ、それぞれのダイニングアウトの醍醐味だったからです。それは、今回の「ダイングアウト比叡山」で、ゲストの立場になって参加して確信にかわりました。

今回の「ダイニングアウト」は、比叡山「金台院」住職の礒村良定氏がホストを務めました。礒村氏は「延暦寺」で得度し、長年にわたり延暦寺に従事し、比叡山を最も熟知する僧侶のひとりです。そして、「ダイニングアウト国東」の舞台となった、「文殊仙寺」のご住職の秋吉文暢氏と「延暦寺」での修行の同期でもある。今回は、そのお二人のご縁も開催の理由のひとつになったそうです。延暦寺には国宝の根本中堂という施設があり、現在は大規模な修復中ですが、礒村氏はその「比叡山」の文化財保護の担当者でもあります。礒村氏は「歴史的な文化財の保全だけでなく、地域の文化としての寺の魅力を、いかに未来に繋げるか」がご自身の使命であると開催後に語ってくださいました。「信仰心だけでなく、もっと広視野で人々に比叡山にかかわってほしい」という考えのもと、今回のダイニングアウトを計画したといいます。そして、ホストとして小林シェフのサポートをするだけでなく、実際にご自身が修行をした寺の施設を、二日間にわたりゲストにご案内くださりました。

宮崎、琉球・南城、国東と、過去にホストを務めた「ダイニングアウト」を振り返りながら、今回を分析する中村氏。

今回ホストを務めた比叡山「金台院」住職の礒村良定氏。ホストが見るホストの視点は、中村氏ならでは。

DINING OUT HIEIZAN「比叡山」の修行とはどういうものか。

「比叡山延暦寺」の修行がたいへん厳しいことはよく知られています。中でも、7年をかけて峰々を歩きまわる千日回峰行は有名です。私が強く興味を惹かれたのは、それ以外にも、様々な厳しい荒行があること。たとえば四種三昧という修行。これは最澄が定めた4種の修行で、常座・常行・半行半座・非行非座からなるものです。常坐三昧は、90日間を一期としてひらすら堂のなかで常坐をする修行です。眠気を覚ます経行(きょうぎょう)という歩行と食事とトイレ以外は他の行為は許されない。逆に常行三昧は、常行堂の中の阿弥陀仏の周囲を90日間昼夜問わず、合掌して阿弥陀仏を唱えなら歩き続けるというもの。実際に、その常行三昧の修行も経験したホストの礒村氏に、特別に常行堂の中をご自身の経験談を交えてご案内頂いたのは貴重な体験でした。というか、私の想像力ではまったく及ばない世界に、純粋に驚きました。礒村氏はその修行中に、仏が目の前に現れる不思議な体験や、歩行しながら幾度も落ちたエピソードなど、好奇心をもって聞き入ってしまいまた。もともと四種三昧は、天台大師が「摩訶止観」のなかで説いた修行法で、悟りを目的にしていますが、それを制定した最澄もさることながら、今でも脈々と続いていることに、不謹慎ながらその修行のユニークさやバリエーションの多彩さに驚愕し、畏敬の念を抱くのでした。

極め付けは、十二年籠山行です。この修行は最澄の霊廟となっている「浄土院」で行われますが、山からでることが許されないどころか「浄土院」に籠り、12年間1日も欠かさず定められた日課に従い修行するというもの。その修行に挑む僧は待真と呼ばれ、待真になるのも厳しい修行が必須といいます。島田裕巳著「比叡山延暦寺はなぜ6大宗派の開祖を生んだのか」(ベスト新書2014年)によると、この制度が確立されて満行できたのはわずか79名にすぎず、修行途中で亡くなった僧侶は26名にものぼるという。2021年に渡部光臣(こうしん)住職が戦後7人目の満行を終えたので数は増えたものの、極めて厳しい修行です。実は、今回の「ダイニングアウト」でゲストは「浄土院」もご案内いただいたのですが、私たちは期せずしてお堂の中から経典を唱える声を聞いたのでした。礒村氏によると、現在この修行に挑んでいる真っ最中の待真の声だと知らされ、背筋を正す思いを覚えました。

「浄土院のお堂の中から経典を唱える声が聞くことができたのは貴重な機会でした」と中村氏。

DINING OUT HIEIZAN小林シェフがイメージした「比叡山」の食事。

ちなみに、待真が朝5時に召し上がる食事は「献膳」とよばれ、最澄の真影に献ずるもので、そのお下がりを召し上がるそうです。もちろん精進料理ですが、それを作る僧侶たちにとっても、命がけで修行をする待真にとっても重要なものに違いありません。これは、下衆な勘ぐりで恐縮なのですが、待真にかぎらず厳しい修行を行う僧侶にとって、食事は修行への体力維持だけでなく、僅かな貴重な楽しみではなかったでしょうか。作る側も精一杯の工夫を凝らす気持ちは、容易に理解できます。実は、今回の「ダイニングアウト」で小林寛司シェフが挑んだ精進料理のイメージの根幹は、この「献膳」だったといいます。もちろん、あくまで想像の源であって実際は私たちゲストをもてなすための料理なのですが、「もしも最澄に献じるのであれば」という設定は、今回の「ダイニングアウト」の最大のスリリングな味わいどころなのでした。しかも、小林シェフは基本的な精進の規則を守りつつ、今までにない新たな味わいの精進料理への挑戦だったといいます。さすがに百戦錬磨の小林シェフであっても、前日は緊張で眠れなかったと後に語ってくれましたが、「延暦寺」の境内の大書院で味わうと、どの料理も滋味が深いというだけでなく、新たな味覚の創造があり、そして隅々まで緊張感に漲った食体験でした。

「ダイニングアウト比叡山」の会場は、「延暦寺」の境内の大書院。

DINING OUT HIEIZAN小林シェフが作った現代の精進料理の味わい。

「呼吸」と題された12皿からなる精進料理は、どれも「これが精進料理なのか?」と思うほど、縦横無尽に味覚の想像力がひろがることに、まず感服しました。特に感銘をうけたのは、一皿目の「白椀」です。具のない薄い味噌汁のような温かな汁だったのですが、詳細な情報なく食した印象は、「なんと滋味深いことか。これは複雑な野菜の出汁なのか」と思いました。しかし、聞けば味噌と水だけで作るというではないですか。わたしはひっくり返りそうなくらい驚きました。原料の水は滋賀の「七本鎗」の仕込み水だといいます。偶然にも、私はかつて「七本鎗」の「冨田酒造」を訪れ、地下から湧くこの水を味わったことがあり、その旨さは経験していましたが、どうやったらあの「白椀」の詩的ともいえる深い旨味になるのか、未だに理解できませんが、この一椀で今回の精進料理が成功したと私は確信を持ちました。もうひとつ私が特に印象を持ったのは「導き」という料理です。比叡湯葉を主体に構成されたこの料理は、見た目は「ぽーぽー」という沖縄のお菓子のようであり、みかんを使った甘辛の餡風のソースはお菓子のような味付けがなされ、蕗の薹やハーブの苦味や辛味もある。どれも素朴な素材ながら、五感がパッと目覚めるような風味の刺激もいい。小林シェフによると、この料理まさに彼に考える新たしい「献膳」のイメージだったといいます。

そして、もうひとつゲストたちを驚かせたのは、「異文化」と呼ばれるデザートの料理でした。この料理のメインの材料はカカオです。カカオは植物の果実の種子を原料にしているので、原則的には精進料理の規定内です。ただ、最澄の時代には無かった食材ですので、さすがに最澄が生きていたらさぞ驚いたでしょう。しかし、カカオは栄養価が高い食材であり滋養という面でも、未来の精進料理の提案という意味でも、面白い果敢な挑戦だったのではないでしょうか。

「冨田酒造」の仕込み水と味噌と技術だけで仕上げた白椀。角のないまろやかな味わいと、深いコクが滋味深い。

フォークとスプーンでいただくチョコレートのデザート。挑戦的な精進料理こそ、「比叡山」の柔軟な姿勢の象徴。

これまで何ども小林シェフの料理を食べてきた中村氏も、「今回は驚愕の連続だった」と話す。

滋賀「冨田酒造」の冨田泰伸氏。今回は、「七本鎗」の純米にごり酒と熱燗を提供。

DINING OUT HIEIZAN小林シェフの料理の精進的なるもの。

一般的に精進料理は煮物中心と思われがちですが、今回の小林シェフの料理は、その調理法や表現はそのイメージを覆すバリエーションを提示してくれました。しかしながら、その根本原理は精進料理の本質を突いているもだと私は感じました。小林シェフご本人も「自分の料理は精進料理にちかい」といいます。普段の彼の料理の食材の大部分——野菜や穀物や果実やハーブのほとんどは、自分の畑で自ら育てたものです。その種類は年間有に100種を超えるそうです。野菜や穀物を中心にするという物理的なことだけでなく、素材に感謝して命をいただくという思想的なことも含めて、彼の料理は“精進的”なのです。

小林シェフは、自分の料理の理想を追求するために自分で畑をおこし素材を育てる、という型破りのスタイルを確立しました。それは、自然の息吹と向き合い、その命の刹那を切り取ることで、生命をいただくこと尊さや食べることの本質を呼び覚ます料理を作り上げてきました。なので、凡百な農家レストランとも、ファーム・トゥ・テーブルとも違うのではないかと私は思います。むしろ、彼にとって畑はガストロノミーの表現のための手段であり、テーブル・トゥ・ファームとでも表現したほうがいいのではないか。私は勝手に彼のスタイルを「アグリ・ガストロノミー」と呼んでいますが、それは今回のダイニングアウトを通じても感じることができました。ホストの礒村氏も小林シェフの料理を通じて「道は違えども、同じ求めるものを感じた」といいます。「ゲストが喜んでいる姿を見て、今回の「ダイニングアウト」が成功したと確信を持ちました」という礒村氏の言葉どおり、今回の小林シェフの起用は、「ダインングアウト」の本質の道筋に光を当てただけでなく、小林シェフの未来の姿の片鱗も指し示したのではないかと感じています。

「今回の小林シェフの料理は、精進料理の調理法や表現のイメージを覆すバリエーションを提示してくれた」と中村氏。

DINING OUT HIEIZAN「比叡山」が生み出した日本の食文化。

「比叡山延暦寺」は、最澄が中国の天台宗の影響をうけて確立した総本山です。その後、鎌倉時代に排出した各宗派の宗祖たちは、比叡山で修行をして仏道研鑽の日々を送った経験を持っています。浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、日蓮宗の日蓮、臨済宗の栄西、曹洞宗の道元。彼らはみな、一度は比叡山で修行しています。日本の仏教や信仰だけなく、日本固有の文化を考えるとき、比叡山を抜きには語れないのです。ちなみに、仏教のなかの食事や作法に関する著書は、道元の「典座教訓」や栄西の「喫茶養生記」がありますが、これらの内容は、いまも精進料理に限らず、日本料理や懐石や茶道に深い影響を及ぼしています。それも、道元や栄西が比叡山延暦寺で修行しなければ、生まれていなかったかもしれません。その意味で、今回の「ダイニングアウト比叡山」は、日本の食の原点を紐解くという意味においても、きわめて意味深い試みだったと思います。そして、今後比叡山だけでなく、日本の仏教寺院の魅力を拓くというための提案としても、価値があったと思うのでありました。

2日間の「ダイニングアウト比叡山」を終えた礒村氏と。ホスト同士だからこそ、共鳴するふたり。


Photographs:JIRO OHTANI
Text:TAKANORI NAKAMURA

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1200年の歴史に一石を投じた晩餐。「比叡山延暦寺」での「DINING OUT」に奔走した住職が描く未来。[DINING OUT HIEIZAN/滋賀県大津市]

礒村良定氏。今回の『DINING OUT』を通して、「私自身にも数々の発見がありました」と振り返る。

DINING OUT HIEIZAN幾多の困難を乗り越え、歴史的な「DINING OUT」を実現。

外部からシェフを招き、信者ではないゲストを迎えてもてなす。「比叡山延暦寺」1200年の歴史の中で初の試みとなった「DINING OUT HIEIZAN」。それは、ひとりの僧侶の熱意によって実現に至りました。

「比叡山金台院」住職・礒村良定氏。

「比叡山」の未来を思い東奔西走、保守派を粘り強く説得し、さまざまな準備を担い、当日はホストまで務めた礒村氏が、その熱意の源を語ります。

礒村良定氏。今回の『DINING OUT』を通して、「私自身にも数々の発見がありました」と振り返る。

DINING OUT HIEIZAN親友とともに開拓する、寺と仏教のこれから。

話は5年前に遡ります。

2018年初夏。大分県国東半島で開催された「DINING OUT」の舞台は、「天台宗」の寺院である「文殊仙寺」でした。神仏習合の地として、古くから宗教とともにあった国東半島。その地の寺で「DINING OUT」という横文字のイベントを開催するには、さまざまなハードルがあったであろうことは想像に難くありません。その実現には、「文殊仙寺」副住職(当時)である秋吉文暢氏の尽力がありました。

そして、実はこの礒村氏と秋吉氏は大学時代の同期であり、親友。関西と九州という距離はありますが、ともに仏教の未来を思い、意見を交わしながら、さまざまな取り組みをしてきました。

「人々の宗教離れとは言うが、寺の立場からできることはないのか」。「伝統を守るだけではなく、時代に合わせた対応が必要なのではないか」。

若きふたりの思いは周囲を少しずつ巻き込み、やがて大きな変革の一歩目を踏み出します。

「DINING OUT KUNISAKI」の「文殊仙寺」秋吉文暢氏(左)。友人である礒村氏とともに、いまの時代に求められる宗教の在り方を模索する。右は、当時ホストを務めたコラムニスト・中村孝則氏。

写真の「常行堂」をはじめ、「比叡山」は文化財の宝庫。この貴重な文化財を未来に残すためにさまざまな取り組みが行われている。

本堂である根本中堂で行われた朝のお務め。なかなか見ることができない貴重な体験だった。

DINING OUT HIEIZAN比叡山を訪れ、体験し、好きになってもらうために。

「信仰心を持っていただくことが難しくなってきたこの時代に、お寺そのものだけでなく、文化、観光や文化財など、色々な角度からの興味を入口としていただくために、様々な仕掛けが必要だと思っています」。

礒村氏はそう話します。

それは「せっかく来ていただいた方が、『比叡山』を楽しみ、好きになってもらうような取り組み」です。もちろん、「比叡山」という大きな組織の中には格式を重んじ、その取り組みそのものに異を唱える方々もいます。その方々に粘り強く思いを伝え、力を借りる。礒村氏の進む道はまだまだ多難な茨の道でしょう。

それでも礒村氏は確かな手応えを感じています。

そして、その手応えが確信にかわったのが、今回の「DINING OUT」の成功だといいます。

「来られたゲストの方々はもちろん、スタッフのみなさんが本当に良い顔で“やってよかった”と言っていました。その姿を見て、自信をもって今回の『DINING OUT』が大成功だと確信できました」。そう振り返る礒村氏。

「villa aida」の小林寛司シェフが手掛けたバリエーション豊かな精進料理や笑いを交えながら巡った境内。ゲストやスタッフひとり一人とじっくり話せた宴。そのすべてが「楽しい」という感想に収束しました。

「訪れる側も迎える側も、楽しめること。楽しい経験は心に残り、また来てみたい、に繋がります。私もご案内した立場として今後に対して大きなインスピレーションをもらえました」。

そう笑顔を見せた礒村氏。

そんな未来志向の礒村氏によって「比叡山延暦寺」は、今後ますます身近で魅力的な寺に変わっていくのかもしれません。

食事の前の挨拶をする礒村氏。「ただ一方的に伝えるのではなく、愉しんでもらうことが大切」という。

「DINING OUT」後、宴の場では、積極的にゲストと交流する姿も見られた。

全ての工程を終え、ゲストに手書きの文字を記した扇子をプレゼントした礒村氏。


Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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小林寛司シェフが振り返る「DINING OUT HIEIZAN」と精進料理のまだ見ぬ可能性。[DINING OUT HIEIZAN/滋賀県大津市]

今回のシェフを担った『villa aida』小林寛司シェフ。「直前まで何度も試作を繰り返し、味の調整をしました」。

DINING OUT HIEIZANおおいに湧いた晩餐から、一夜明けて。

1200年の歴史を持つ『比叡山延暦寺』を舞台に、これからの寺の在り方を見つめる試みとして開催された『DINING OUT HIEIZAN』。それは静謐な境内に響く盛大な拍手とともに、大成功で幕を下ろしました。

夢のような晩餐から一夜明けた朝。宿坊には料理を担当した『villa aida』小林寛司シェフの姿が。雪降る『比叡山』の景色を静かに眺めていました。その顔に浮かぶのは疲れ果てた中に、やりきった満足感が漂うような表情。そんな小林シェフが思いの丈を語ります。

晩餐の最中には、経文や真言に旋律抑揚をつけて唱える仏教声楽曲・声明が披露された。

ご僧職による朗々たる声明は荘厳そのもの。ゲストたちは食事の手を止めて聞き入った。

花びらを模った紙を撒く「散華(さんげ)」は、仏様が説法する際に天から花が舞うという伝説に由来。

ひと足はやく「延暦寺」に入った小林シェフが参拝し、料理と向き合う様子が会場のモニターに映し出された。

ゲストの手元に配られた声明の経文。ともに口ずさむことで、会場全体に一体感が生まれた。

DINING OUT HIEIZAN張り詰めた緊張が溶けた小林シェフがもらした本心。

「ホッとしました。ホッとしたということは、それだけ張り詰めていたんでしょうね」。

今の率直な心境をそう語る小林シェフ。

これまでもさまざまなイベントに出てきましたが、「これほど大勢の人が関わった規模は、はじめてだった」といいます。

「どんなイベントでも手を抜くことはありませんが、特に今回は本当に全力で出し切りました。道具もスタッフもまるごと、厨房ごと移動してきたような感覚です」。

そんな規模感もさることながら、舞台が格式高い寺院、そしてテーマが精進料理であったことなど、さまざまな「初」に挑んだことも大きいのでしょう。

「日頃から野菜を軸にした料理をしていますから、最初に精進料理と聞いても難しく思わなかったんです。乳製品は使えると聞いて安心もしていました。しかし、いざやってみると、そうはいきませんでした」。

特に苦労したのは出汁。

卵やニンニクはもちろん、タマネギもネギも使用禁止。少ないものの中でなかなか味が決まらず、宿坊の味噌汁を参考にぎりぎりまで試作を繰り返したといいます。

「日頃は結局、肉に頼っていたのだと気づきました。野菜メインの料理ではあるけど、旨みの部分では肉や魚にこれほど頼っていたのか、と。それは自分自身の中で大きな発見であり、成長にも繋がったと思います」。

乾杯の一幕。食事を前にした挨拶では、小林シェフらしい真摯な言葉で思いを語った。

メニューに添えられたのは椿の蕾。聖徳太子の愛用の椿の杖から育ったという大木があるなど、椿は比叡山延暦寺にとって特別な木。

DINING OUT HIEIZAN自身が振り返るとくに印象深い料理。

前夜、小林シェフが繰り出したコースは全12品。少量多皿で精進料理の可能性を伝えてくれましたが、実はこの皿数はたまたま。

「サンプルで届けていただいた食材は、どれも生産者の思いがこもった素晴らしいもの。だから届いた食材をすべて使いたかった。そうしたら結果的にこの品数になりました」。

全体のバランスや緩急、ボリューム感など、品数が増えれば考えることも増えるもの。それでも生産者への敬意としてすべてを無駄なく使用するのは、自身も畑を手掛ける小林シェフらしさでしょう。

無論、品数の分だけ厨房は大忙し。調理にかかる小林シェフに代わり、客席をまわり料理の説明を伝えたのはマダムの有巳さんでした。さらにその柔らかい存在感で会場の緊張を解きほぐしたのも有巳さん。有巳さんなくしては、あの会場の世界を形成することはできなかったといっても過言ではありません。名店『villa aida』のチームが一丸となり、格式高い名刹の中に、穏やかで優雅な一夜限りのダイニングを作り上げたのです。

そんな晩餐を終えた小林シェフに、特に印象深い料理をいくつか紐解いてもらいました。

「まず最初の白椀。寒いので、最初はあたたかい椀と決めていたのですが、出汁が使えない中で、どうやって旨みを出していくか。そこで知人の和食料理人から伺った手法を取り入れました。使うのは、水と味噌だけ。じっくりと時間をかけて炊くことで、味わいがまろやかになり、深い旨みが感じられるようになります」。

滋賀県の銘酒『七本鎗』で知られる冨田酒造の仕込み水と、地元の白味噌。そのふたつの素材だけで生まれる奥深く、柔らかい味わい。

雪の舞う『比叡山』で冷えた体に染みる優しい温かさ。味噌だけであることが信じられぬほど奥深い一品目は、これから供される料理への期待感を一気に高めました。

次いで小林シェフが挙げたのは、3品目に登場した「誕生」と題した料理。からしを入れたフロマージュブランに比叡湯葉、クルミなどを合わせた一品です。

「すっと創造できた料理で、そのまま店でも出せるような仕上がりになりました。パーツ的には日頃やっている料理と同様ですが、精進料理としての味のバランスを繰り返し調整しました」と小林シェフ。

口にしてみると、辛子の辛さが際立ち、味の輪郭がはっきり。そこにとろける湯葉と香ばしいクルミという複層的な食感が重なり、“食べる楽しさ”を演出します。「精進料理は素朴な、淡い味」という従来のイメージを覆す、見事な完成度の一品です。

当日のメニュー。料理名が抽象的であるのは、「直前まで追求したかったため、あえて具体を示さず」という狙いもあった。

料理を引き立てたのは、琵琶湖の畔で460余年続く「冨田酒造」の銘酒「七本鎗」。当日は15代目蔵元・冨田泰伸氏が自ら燗付け。

12品の料理を20名分という大仕事でも、厨房での小林シェフは冷静に料理と向き合った。

「白椀」。水と味噌と技術だけで仕上げた白椀。角のないまろやかな味わいと、深いコクが感じられた。

「三部作」と題した3品の前菜。左からみりんジャムを添えた小蕪のピクルス、フェンネルの風味を加えた黒豆、にんじんのタルトレット。

「誕生」。辛子入りのフロマージュブランと比叡湯葉の一皿。塩味や酸味、辛味がしっかりと主張した。

「凛々」。ゆずのクリームを和えて味わうサラダは、野菜の旨みを引き出す「villa aida」らしさがもっとも表れた一品。合わせるのは「七本鎗」の純米にごり酒。

「雪暦」。酒粕に漬けた絹ごし豆腐を、チコリコーヒーのソース、ふきのとうのグラニテとともに。凝縮された豆腐の旨みで、食べごたえがあった。

「導き」。湯葉ににんじん、干し芋などを包んで揚げ、みかんのソースを合わせた一品。精進料理という制限のなか、小林シェフの技術と発想が光る。

「森土壌」。オリーブオイルでソテーしたしいたけに、焼きトマトのソースと焦がしバターのソースを絡めた一皿。

「風土」。裏ごしした胡麻豆腐に、辛子酢味噌を添えて。味のバリエーションが多彩で、品数は多くとも、毎皿新鮮な驚きがあった。合わせるのは『七本鑓』の○○。

「独創」。メインディッシュの扱いだった生麩のソテー。力強い赤ワインとのペアリングで、その味わいがいっそう際立った。

「留」。食事は玄米を使ったちらし寿司。レンコンや菜の花で複雑な味わいを生んだ。

感動を隠せないゲストたち。中には、過去00回ホストを担ったコラムニスト・中村孝則氏の姿も。「ゲストはもちろん、『比叡山』の方々も驚かせたい」という小林シェフの願いは見事に叶った。

DINING OUT HIEIZANご僧職の柔軟な姿勢が、精進料理の新たな扉を開く。

そして最後に小林シェフが言及したのは、アマゾンカカオを使ったデザート。

「実は『比叡山』の精進料理のしきたりに、“カカオを使ってはいけない”という言及がありませんでした。それは想定していないだけかもしれませんが、協議を重ねた結果、“駄目と書いてないから使ってみましょう”ということで」。

当時を振り返り、やや苦笑いしながら話す小林シェフですが、これは冗談ではなく、今とこれからの『比叡山』の在り方を象徴するメニューでもあります。

「このカカオの例に代表されるように、今回お会いした『比叡山』の方々は、非常に柔軟。歴史を大切にしていながら柔軟で前向きで、この『DINING OUT』というイベントを非常に大切にしている印象でした」。

そして、その思いを受け止めるべく、斬新で、バラエティに富んだ、攻める精進料理に挑んだのです。

小林シェフの狙い通り、全12品の料理はどれも、強く五感に訴えるような、鮮烈な味わいが印象的でした。そして、常識を飛び越える “攻める料理”でありながら、随所に『比叡山』の伝統を取り入れるような“守る味”にも敬意を払う。そのバランスの見事さに胸を打たれます。

「今の日本を伝えられるような料理になったと思います。例えば、外国からいらした方が食べた時に、サムライ、ニンジャではなく、“現代の日本はこうなっています”と伝わるような料理。それを『比叡山延暦寺』という格式ある寺から発信できることにも意味があります」。

稀代の名シェフが手掛けた、新たな精進料理。それは『比叡山延暦寺』の、そして日本の新たな文化として受け継がれていくのかもしれません。

「異文化」。アマゾンカカオのチョコレートにイチゴ、黒米、ふきのとうのシロップを合わせたデザート。

フォークとスプーンでいただくチョコレートのデザート。この挑戦的な精進料理こそ、比叡山の柔軟な姿勢の象徴。

「拝謝」。締めのプティフルールは、『延暦寺』のお茶とともに。

『DINING OUT』後の宴では、参加者たちとテーブルを囲みリラックスする姿も。

ドリンクを担当したマダムの有巳氏、ホストを務めた比叡山金台院住職・礒村良定氏とともに。


Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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飛騨地方の山の恵み。ふきのとうを万能な惣菜でいただく。[和光アネックス/東京都中央区]

瓶から覗く美しい緑が鮮度の良さを感じる。地採れのふきのとうを塩漬けにし、ほろ苦さをそのままに、さっぱりとした薄味しょうゆに炊き上げる。

WAKO ANNEX美味しい季節の到来。春の代名詞、ふきのとうのほろ苦い口福。

創業60年の老舗、岐阜県飛騨地方で活動する「飛騨かわい やまさち工房」は、地元で採れた山菜などの山の幸を加工し、美味を創造しています。

季節限定の雪中酒や健康に配慮したグラノーラなど、多くの人気商品を販売していますが、定番商品も多数用意。えのき、山ぶき、なめこ、しめじ、ぜんまい……。前述の通り、多彩な山の幸を活かした商品化をしていますが、これからの季節にお勧めしたいのは、ふきのとう。

春一番を知らせる山菜の代名詞、地採れのふきのとうを塩漬けにし、地下水で洗浄。素材の香りをそのままに、さっぱりとした薄味しょうゆに炊き上げています。独特のほろ苦さ、風味を活かした控えめな塩分は、実に優しい味わい。

そのままいただくも良し。酒の肴としても良し。アレンジするのであれば、味噌と混ぜておでん、田楽、焼きおにぎりなどもお楽しみいただけます。

ぜひ、自分だけの味わい方を探してみてはいかがでしょうか。

そのままでも十分美味しいが、細かく刻んだクリームチーズに合わせると、また違った「惣菜 ふきのとう」の味わいを楽しめる。酒の肴にも最適。

塩むすびに「惣菜 ふきのとう」をただ乗せるだけ。シンプルな食べ方だが、抜群に美味しく、驚くほど食が進む。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

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世の中の価値とは一線を画す、独自の価値から生まれたマーマレード。[和光アネックス/東京都中央区]

「福岡正信自然農園」のこだわりのひとつは、商品ラベル。商品名、原材料、アレルギーなど、消費者にとって重要な情報を美しく1書体のみ、手仕事による活版印刷で仕上げる。

WAKO ANNEX柑橘も人間や動物と同じように命を宿した存在だと信じている。

奈良県磯城郡の「福岡正信自然農園」の柑橘栽培は、一般的に言われる「美味しい」を追求していません。自然との循環を軸とした農法ゆえ、植物が持ち合わせる野性味溢れる躍動感や季節の表情を大切にしているからです。そして、その先にあるものが「健康への安心感」への保証。自然農法=引き算の法則にそって作られたマーマレードは、シンプルの先にあるシンプル。できるだけ余分なものを取り除き、素材本来の良さを際立たせます。

中でも、「甘夏マーマレード・フレッシュ」は、瑞々しい美味しさが特徴。柑橘そのものの味わいを出すため、北海道産のてん菜100%の砂糖を使用し、糖度を低めにおさえて酸味のあるフレッシュな香りを引き出しています。

丁寧に手剥きした甘夏の苦みを抑え、かつ食感は残るように、絶妙な厚みでスライス。甘夏のほのかな苦みと精製されていないてん菜糖のコク・レモンの爽やかな酸味を感じる一品です。果肉を多めに入れることで、食べごたえを感じることのできるマーマレードに仕上げています。

「福岡正信自然農園」のマーマレードは、果実を丸ごと使い切る「一物全体」の精神から生まれています。自然界との呼応から育まれた柑橘は、人間や動物と同じように命を宿した存在。口に含んだ瞬間、「自然の産物の味」、「命の味」を感じるでしょう。

「福岡正信自然農園」は、本場イギリス・ダルメインで開催された「世界マーマレードアワード」金賞を受賞。自ら世の中の価値と異なるかもしれないと言いつつも、世界が認めた味なのです。

柑橘そのものの味わいを出すため、北海道産のてん菜100%の砂糖を使用。糖度を低めにおさえて酸味のあるフレッシュな香りが特徴。果肉を多めに入れることで、食べごたえを感じることのできるマーマレードに仕上げる。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
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雪舞う「比叡山延暦寺」にて解き放された「DINING OUT」の真実。[DINING OUT HIEIZAN/滋賀県大津市]

会場となった「延暦寺大書院」旭光の間。この荘厳な場で食事を楽しみ、酒を傾けることができる機会は極めて稀少。

DINING OUT HIEIZANあの名刹で開催された20回目の「DINING OUT」。

2023年2月。20回目となる「DINING OUT」が開催されました。舞台は、「比叡山延暦寺」。歴史の教科書で、大河ドラマで、さまざまなメディアで、その名を目にしたことがない人はいないでしょう。

1200年という悠久の歴史を持つこの名刹を舞台に、幻想的で高い精神性があり、そしてある種のエンターテイメント性をも併せ持つ1夜限りの晩餐が繰り広げられたのです。

晩餐だけではありません。ご住職の案内で境内を巡り、一般非公開のお堂を特別に拝観し、そこに息づく歴史を肌で感じる。「延暦寺」の全面協力のもと、この日だけの特別な体験が数多く準備されていたのです。

そして舞台の情報を十分にインプットした上で味わうのは、名シェフが手掛ける精進料理。ただ舌で味わうのではなく、脳で、体で、理解した上で味わう料理。それは、ゲストたちの胸に、確かな足跡を残しました。

そんな「DINING OUT HIEIZAN」の模様をお伝えします。

修行の場である「延暦寺」史上で極めて異例の食イベントとなった今回。写真は「浄土院最澄廟」。

「比叡山」の広大な山中が「延暦寺」の境内。歴史の中で刻まれた美しさが随所に残されている。

DINING OUT HIEIZAN袈裟姿の語り部。ホストを務めるのは、ご僧職・礒村良定。

京都駅から迎えのハイヤーに乗って一路、滋賀県へ。市街を抜けて1時間ほど、やがて車は山道に入りました。木々の間に琵琶湖と大津市街を見下ろします。実は、ここはすでに「比叡山」の境内。「延暦寺」はひとつの建物ではなく、「比叡山」の山内1700ヘクタールの境内に点在する約1000の堂宇の総称。新宿区の面積と同等の広大な境内と聞けば、そのスケールが想像できることでしょう。

「比叡山延暦寺」は、平安時代に最澄により開かれた天台宗の総本山。その1200年の歴史の中で、日本における仏教史に多大なる影響を及ぼしてきました。浄土宗の開祖・法然、浄土真宗の親鸞、日蓮宗の日蓮など著名な僧がこの「比叡山」で修行をしたことからも、その重要度が伺えます。最初の目的地は、その境内にある「ガーデンミュージアム比叡」。展望台で待っていた袈裟を着た人物こそ、今回の「DINING OUT」のホストである礒村良定氏でした。

これまでの「DINING OUT」でホストを務めたのは、土地や風土、食に造詣の深い文化人たち。しかしここ「延暦寺」でゲストを迎えるにあたり、この地を誰よりも深く知るご住職がホストとして立ち上がったのです。

礒村氏は「比叡山金台院」の現役のご住職。これほど歴史ある寺のご僧職と聞き緊張を隠せぬゲストたちに、礒村氏はにこやかに語りかけました。

「今日の日を待ちわびていました。難しく考えず、どうか延暦寺を楽しんでください」。

それから「延暦寺」の概要を伝える礒村氏。しかしそれは難しい説法ではなく、大学の学部やゼミに例えたわかりやすい話。砕けた口調、ユーモアあふれる話術、礒村氏の親しみやすい人柄に、ゲストたちはたちまち引き込まれました。

「延暦寺」へと向かう道中。車窓からは雄大な琵琶湖を一望した。

冬期閉鎖中の「ガーデンミュージアム比叡」を特別に開放。雪に覆われた庭園を見学する貴重な体験。

展望台にてホストの礒村氏が登場。ユーモアあふれる話術で、はやくもゲストの心を掴んだ。

DINING OUT HIEIZAN少しずつ、確実に、「比叡山延暦寺」の世界へと誘う境内巡り。

夕食までの時間、礒村氏に誘われ、「比叡山延暦寺」の見学に向かいました。最初に訪れたのは「浄土院」。伝教大師最澄廟がある、境内でもっとも神聖な場所です。

この廟のなかでは最澄がいまなお生きているかのように、毎日食事が捧げられ、落ち葉ひとつないほど掃き清められているとか。

「今でもここに来ると気持ちが引き締まります」。そう話す礒村氏の言葉通り、周囲には厳かな空気が漂います。

次いで訪れたのは、2棟のまったく同じ造りの建物が渡り廊下で結ばれる常行堂と法華堂。渡り廊下を天秤棒にして武蔵坊弁慶が担いだという伝説があり、「にない堂」と呼ばれています。

通常は入ることができない常行堂内部に招かれ、その空気を肌で感じるゲストたち。「比叡山」の堂宇の多くは本来、修行の場であり、この常行堂では90日間念仏を唱えながら時計回りに堂内を歩き続けるという修行が行われています。休憩できるのは食事、厠、沐浴の時間のみ。睡眠時間の設定さえなく、ひたすら暗い堂内を歩くという想像を絶する修行です。

ちなみに、先の「浄土院」では14年にわたり山籠りを続ける修行僧がいるといいます。外界に触れず、ただ自身の心と信仰心と向き合う。礒村氏の穏やかな語り口で和らいではいますが、その修行の凄まじさに改めてこの地の神聖さがよぎります。

親しみやすい口調で語られるも、歴史や寺の在り方など、その内容の重厚さは言うまでもありません。礒村氏のホストによって、ゲストたちは「比叡山延暦寺」を知り、親しみ、そして、この地で開かれる晩餐への期待を高めていきました。

「浄土院」では、十二年籠山の僧が伝教大師最澄が生きているかのように奉仕をしている。

最澄廟にて。「ここに来ると叱られている気持ちになる」と冗談めかすも、礒村氏の敬愛の念が伝わる。

同じ造りの2棟がつながる「にない堂」。通常は、一般非公開。

自身もこの堂での修行を終えた礒村氏の言葉が、現実感を持ってゲストの胸に染みる。

堂内はろうそくの灯りのみ。ここで90日もの間、ただ経文を唱えながらあるき続ける修行がある。

DINING OUT HIEIZAN境内の名建築で、読経を背景にワイングラスを傾ける。

ディナー会場となったのは、境内でもひときわ重厚な存在感を放つ和風建築の「大書院」。稀代の建築家・武田五一により設計され東京赤坂に建築された邸宅を、1928年の開創1150年記念事業として移築したもの。

この建物の中で食事をし、あまつさえ酒を楽しめる人が、どれだけいることでしょう。「比叡山延暦寺」の全面協力があり、実現したこの貴重な機会。

「1200年の歴史の中、外部からシェフを招聘してイベントをするのは初めてです」。そんな礒村氏の挨拶の後、いよいよ食事がはじまります。

今回の料理を手掛けるのは、和歌山「villa aida」小林寛司シェフ。自身の畑で育てた野菜を軸にした料理で、「ミシュランガイド」二つ星とグリーンスター、「ゴ・エ・ミヨ」3トック、「アジアのベストレストラン50」14位など躍進を続ける注目の料理人です。

そして、寺院内での食事であるため、その内容は精進料理。いかに野菜料理のエキスパートである小林シェフをもっても、精進料理は未知の領域。どのような解釈で、どのような料理を披露してくれるのでしょうか。

大書院は宿泊場所の宿坊から歩いて向かえる距離。日没後の境内は昼とは異なる幽玄な雰囲気が漂っていた。

晩餐の会場となった大書院。移築後100年近くが経ってもなお色褪せぬ威風堂々たる姿。

礒村氏、小林シェフの署名が入った品書き。内容が想像できないような料理名が並ぶ。

サービスを担ったのは「JALふるさと応援隊」のメンバー。機上で培ったプロのサービスを披露しつつ「この素晴らしい体験を今後に活かしたい」と口を揃えた。

小林寛司シェフの手にかかり、精進料理は進化する。

礒村氏と小林シェフの挨拶から、ディナーがスタート。一品目は、白椀が登場しました。出汁を使わず、滋賀県「富田酒造」の仕込み水と白味噌だけを低温でじっくり炊いたという椀。その奥深くまろやかな味わいに、続く料理への期待値も上がります。

続いて3種の前菜、辛子を加えたフロマージュブラン、ゆずクリームで味わうサラダ、豆腐とふきのとうのグラニテ、春巻き状に揚げた湯葉、と次々と登場する料理。食感豊かで、味の輪郭がくっきりとした料理は、「精進料理」の語感が持つ、質素で素朴というイメージとは離れたおいしさです。

メインディッシュの生麩のソテー、玄米を使ったちらし寿司、そしてデザートにはチョコレートが登場。プティフルールまで、全12皿のバラエティ豊かな味わいが緩急をつけながら供され、ゲストたちを魅了しました。

食事の途中には、礒村氏の話のほか、旋律をつけて経文を唱える声楽曲・声明の披露も。重厚な建築の内部に満ちる荘厳な空気。その中でワイングラスを傾け、美食を堪能するまたとない時間は、単なる希少価値ではなく、食とは何か、豊かさとは何か、をゲストに問いかけました。

コロナ禍によって、さまざまな心境の変化を経ての「DINING OUT」は、「延暦寺」という舞台と相まって、感慨深い時間となった。

挨拶に登場した小林シェフ。精進料理の難しさと手応えを語ってくれた。右は、マダム有巳さん。

礒村氏の挨拶と乾杯の発声がディナー開始の合図。

三部作と題した前菜。みりんジャムとこかぶのピクルス、バターソースを合わせた黒豆、にんじんのタルトレット。

酒粕に漬けた絹ごし豆腐にチコリコーヒーのソース、ふきのとうのグラニテ。

玄米の酢飯に蓮根、菜の花などを合わせたちらし寿司。

重厚な場でありながら、晩餐はいたって和やかに進んだ。

DINING OUT HIEIZAN語り合い、理解し合う。寺という舞台がもたらした連鎖。

心地良い余韻を残して終わった晩餐。しかし、この後にも楽しみが待っていました。

これまでの「DINING OUT」では、食事が終わると解散となるのが常でしたが、今回は誰でも参加できる宴を準備。

袈裟から作務衣に着替えた礒村氏、片付けを終えた小林シェフも合流。じっくり話す機会も少なかったホストやシェフと語り、また参加者同士で交流を深めるかつてない場となりました。

明けて翌朝。まだ薄暗い境内を歩き、ゲストたちが向かったのは「延暦寺」の総本堂である「根本中堂」。ここで毎朝行われている朝のお務めを見学します。

薄暗いお堂に響く読経の声。昨日からじっくりと「延暦寺」を見て回ったゲストたちは、極寒のお堂で行われる毎朝のお務めを見学し、さらに深く延暦寺を知ることができました。

礒村氏からの最後の話は、「法華総持院東塔」で伝えられました。通常は非公開のこのお堂を特別に拝観しながら、この2日間ですっかり聞き慣れた礒村氏の言葉に耳を傾けます。

「『延暦寺』を好きになっていただき、またいつか遊びにきてください」。

シンプルな言葉で、まっすぐに伝えられる言葉。それは1200年の歴史と、日本を代表する寺院としての重責を担いながら、それでも飛び出した礒村氏の本心なのでしょう。

こうして20回目となる「DINING OUT HIEIZAN」は幕を下ろしました。

歴史ある名刹の建物内で、ご住職によるホストで、精進料理をいただく。シェフやホストや参加者同士の交流が生まれ、また会場となった延暦寺への理解と愛着も育む。それはこれまでの開催からさらに一歩進んだ、新たな「DINING OUT」。この貴重な体験はきっと、参加したゲストすべての心に刻まれ、人生の道標となることでしょう。

「DINING OUT」終了後の宴。ゲスト、シェフ、ホストたちが皆でその感動を語らう。

早朝の境内。凍結した階段を慎重に歩く。

朝のお務めを見学。静謐な堂内に朗々たる声が響く。

締めの挨拶をする礒村氏を囲んで。名残惜しさから多くのゲストが終了後も残り、礒村氏との写真を求めた。

「まずは『延暦寺』を楽しんでほしい」という礒村氏の願いが形となった2日間だった。


Photographs:JIRO OHTANI
Text:NATSUKI SHIGIHARA

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松本高山Big Bridge構想。それは、世界中の旅人が目指す目的地の創造。

「中部山岳国立公園」の飛驒山脈にある「穂高岳」は、標高3,190mの山を主峰とする山々の総称。日本百名山、新日本百名山及び花の百名山に選定される。

松本高山Big Bridge構想つながることによって再発見する、風土の力。

「松本高山Big Bridge構想」とは、「中部山岳国立公園」をはさみ、信州松本と飛騨高山をつなぐ横断ルートを「大きな架け橋」=Big Bridgeに例え、より美しい日本を体験できる旅を世界に向けて発信していくプロジェクトです。

「環境省」が中心となり、日本の国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化することを目指します。

今回の起終点は、「信州松本」と「飛騨高山」。その間を「槍穂高」、「新穂高」、「上高地」、「沢渡」、「平湯」、「白骨」、「乗鞍高原」、「乗鞍岳」などの「中部山岳国立公園」がつなぎます。

特筆すべきは、2県にわたり、その「橋」が架けられていること。これまでのローカル発信は、街から、地域から、県からというスタイルは数多くあれど、異なる県同士による発信は極めて稀有。これからのケーススタディになりうる新しいモデルとも言えます。

つながることのなかった「点」が結ばれることによって「面」になり、総合循環型の観光という新たな世界が誕生。3,000m級の山岳と80km県内にあるふたつの都市圏の訪問は、文化、自然、歴史など、異なる特別を体験することができ、より風土の魅力を感じることができるでしょう。

北アルプル登山はもちろん、山岳ガイドや山小屋宿泊から得る共生の学び、里山の美しい自然を巡るトレッキング、多彩な泉質の温泉、木工や民芸などの伝統文化……。心と体、双方のアプローチから得るアクティビティは、きっと、日本人ですら日本の感動を再発見できるはずです。

安川通りを登りつめた先にある風情漂う「東山寺町」、国の重要文化財にも指定されている「日下部民藝館」、飛騨国の一宮として古くより飛騨人の心の拠り所として親しまれている「飛騨一宮水無神社」、江戸幕府が飛騨国を直轄領として管理するために設置した代官所・飛騨郡代役所「高山陣屋」など、飛騨高山には、様々な歴史と邂逅できる建物や町がある。

飛騨高山では、城下町の中心、商人町として発達した上町、下町の三筋の町並みを合わせ、「古い町並」と呼ぶ。出格子の連なる軒下には用水が流れ、造り酒屋には看板ともいわれる杉の葉を玉にした「酒ばやし」が下がり町家の大戸や、老舗ののれんも連なる。

上高地の玄関口、沢渡にある温泉地「さわんど温泉」。周囲には「乗鞍高原」や「白骨温泉」、「北アルプス槍穂高連峰」などの名所も控える。

長野県松本市安曇(旧国信濃国)にある「白骨温泉」。北アルプス・乗鞍岳の山麓(標高1,400mほど)の「中部山岳国立公園」区域内に位置し、国民保養温泉地にも指定される。

松本高山Big Bridge構想垣根を超えた横断。そのルートの名は、「Kita Alps Traverse Route」。

前述、「松本高山Big Bridge構想」によって生まれたコースは、「Kita Alps Traverse Route」という名称で世界に発信されていきます。

「北アルプス=Kita Alpsという固有名詞が世界に広がってほしい。そして、山岳を横断=Traverseする体験をしていただきたい。そんな思いを名称に込めました」。

そう語るのは、本プロジェクトの中心人物である「環境省」中部山岳国立公園管理事務所 国立公園利用企画官の笠井大介氏です。

「信州松本と飛騨高山をひとつの一体的な観光圏としてつなぐために、『松本高山Big Bridge構想』を立ち上げました。そんな両都市の中心にあるものが『中部山岳国立公園』です。このプロジェクトをきっかけに、国立公園の自然、歴史、伝統、そして、町や食の文化など、すべての土地の恵みを活かした素材をアピールしていきたい。信州松本と飛騨高山移動の優位性もあり、国内はもちろん、海外の方々にも、体験いただきたい。『Kita Alps Traverse Route』を通して日本を知っていただきたいと思っています」と言葉を続けます。

昨今、海外の渡航も緩和され、この地域においてもアメリカ、デンマーク、台湾、香港、シンガポール、タイなどのゲストも増えてきており、中には、2週間かけてロングトレイルをする本格派からも支持を得ています。

「世界中に山や自然ありますが、この地域の特徴は、稜線上を長距離トレイルできるところにあります。これは世界から見ても珍しい地形。ゆえに、2週間かけてトレイルできるのです」と笠井氏。

しかし、「Kita Alps Traverse Route」の魅力は山岳だけではありません。例えば、「乗鞍高原」では、ガイドサービスに長けており、トレイルはもちろん、スノーシューやロードも整備。実は、公式で国立公園内をマウンテンバイクで走ることができるのは、国内において唯一ここだけ。上級、中級など、スタイルに合わせた対応も可能なため、安心して自然を満喫することができます。そのほか、普段では踏み入れることができない敷地にも訪れることができる貴重な体験もガイドサービスの利点の好例です。バイリンガル対応にも積極的なため、世界への発信の意欲も伺えます。

視点を変えれば、飛騨高山は古い町並みが景観を形成し、長きにわたり歩んできた文化があります。歴史を紐解くことによって深まる理解は、自然と一心同体の暮らしの背景。建物は北アルプスの木で作られ、その木が育った水によって育まれた食材は、今度は料理に活かされ、郷土料理や食文化が生まれます。これもまた、前述、総合循環型の観光の考え方のひとつ。ストーリーを知ることで生まれた連鎖もブリッジしていくことが、「松本高山Big Bridge構想」なのです。

このプロジェクトには、Key Peopleと呼ばれる地域のメンバーも参画。山小屋「横尾山荘」、アウトドアガイド&コンドミニアム「ノーススター」、里山サイクリングのツアーガイド「美ら地球」、5軒の山小屋を運営する「槍ヶ岳山荘」、岐阜県と長野県の県境に建つ山小屋「穂高岳山荘」、上高地氷壁の宿「徳澤園」、平湯の温泉宿「ゆらゆの森」、飛騨の家具「飛騨産業」、信州松本の宿「美ヶ原温泉 翔峰」など、住民の士気も高い。

県、地域、街、ジャンルを超え、人、もの、こと、自然、文化がつながる。多角的にブリッジできたことは、国立公園の存在が大きかったのかもしれません。

これから橋は、もっと大きくなる。

飛騨山脈南部の長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる「剣ヶ峰」(標高3,026 m)を主峰とする山々を総称すり「乗鞍岳」。

飛騨山脈南部東側、北アルプスの南端に位置する「乗鞍高原」。標高3,026mの裾野(標高1,200~1,800m付近)に広がる山岳地にありながら、古くから人々の生活が営まれ、「住む」アルプスと呼ばれる。

松本にある標高約1500メートルの山岳景勝地「上高地」。国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)にも指定される。

西に北アルプス、東に美ヶ原高原が望める松本は、長野県のほぼ真ん中に位置。信州の旨い食は松本に集まるとも言われ、蕎麦をはじめ、漬物、山賊焼き、馬刺し、松本一本ねぎなど、料理・食材ともに美味が豊富。


Text:YUICHI KURAMOCHI

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SDGsにも配慮。東北の旨味が詰まったホタテとしいたけのアヒージョ。[和光アネックス/東京都中央区]

未来の笑顔をシェアするをコンセプトとした食とデザインの会社「LUNNY’S VEGGIE(ラニーズ べジー)」が展開するアヒージョ。食べ終わっても嬉しくなるようなキュートなデザインは、キャラクターアーティスト・タロアウト氏によるもの。

WAKO ANNEX地元の食材をたっぷり使用。みんなで食べたい「EVERY 1缶」。

ポップなデザインが目を引く缶詰は、環境省が循環型社会の実現のために進めている「つなげよう支えよう森里川海」プロジェクトのアンバサダーであり、野菜が大好きな料理家・藤田承紀(よしき)氏とデザインに命を吹き込むキャラクターアーティスト・タロアウト氏が始めた「LUNNY’S VEGGIE(ラニーズ べジー)」。その中身は、東北の食材をたっぷりと使ったアヒージョです。

青森県陸奧湾のホタテ、宮城県栗原市のしいたけ、宮城県「秋保ワイナリー」の白ワインを使用したアヒージョは、東北の旨味が溢れています。ホタテはひもごと、しいたけは軸まで使用することによって食材を使い切り、SDGsにも配慮。また、オリーブオイルに米油をブレンドし、白ワインの酸味を効かせた濃厚な味わいは、食欲もそそり、どんどんお箸が進む味わいに仕上げています。

サラダと絡める、バケットに乗せる、粗く切ってパスタとからめるなど、様々なアレンジもぜひ。

青森県産のベビーホタテ、宮城県産のふぞろい椎茸と「秋保ワイナリー」の白ワインを使ったアヒージョ。油を少なめにし、ワインをしっかりきかせることにより、コクと軽やかさを併せ持つ味わいに。地元の食材、地元の企業とも協業し、本来捨てている椎茸の軸も使用など、サスティナビリティの観点も踏まえた逸品。

※今回、ご紹介した商品は、『和光アネックス』地階のグルメサロンにて、購入可能になります。
※『和光アネックス』地階のグルメサロンでは、今回の商品をはじめ、全国各地からセレクトした商品をご用意しております。和光オンラインストアでは、その一部商品のみご案内となります。

住所:東京都中央区銀座4丁目4-8 MAP
TEL:03-5250-3101
www.wako.co.jp
 

Photographs:JIRO OHTANI
(Supported by WAKO)

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