動画を使って効果的にPRしよう!動画制作関連の講演実績が豊富な講師を招いて動画制作のポイントを紹介するセミナーを6月26日に開催

動画制作のポイントを紹介するセミナー

「この商品の特徴、文字や写真だけじゃうまく伝わらないかも…」
「動画コンテンツに挑戦してみたいけど費用がかかって実現できない…」
「イベントの告知用の動画が欲しいけど時間がない…」
といった商品/サービス、イベントのPRなどに関する悩みをお持ちではありませんか?

ネットPR事業を展開している株式会社ニューズ・ツー・ユーでは、そんなお悩み・疑問をお持ちの皆様に、ぜひ体験いただきたいプログラムを特別にご用意しました。

当社が提供する「動画制作アプリ(iOS限定)」なら、お持ちのスマホで「商品・サービスの紹介動画」や「イベント集客動画」を作成できます。
プロのCMディレクターが監修したテンプレートに従って撮影するだけで、簡単に高品質な動画が完成!編集も自動で行われるので、初めての方でも1~2時間でオリジナルの動画が完成します。

今回は、宣伝会議などで動画制作に関する講演実績のある株式会社フレイ・スリーの前田氏を招き、動画制作のポイントやワークショップを通じて、効果的な動画制作方法についてご紹介します。

【参加特典】
セミナー料金内に、動画制作アプリを使って動画を1点制作できるチケットが1枚含まれます。

今後のWebマーケティングでご活用いただける考え方やテクニックが満載のセミナーになっておりますので、この機会にぜひご参加ください!

セミナー概要

開催日時 2017年6月26日(月)15:00-17:00 (14:45 受付開始)
場所 株式会社ニューズ・ツー・ユー 1階セミナールーム 地図
(東京都千代田区一番町2-2 一番町第二TGビル)
定員 12名
参加費 8,000円(税込)
お支払い方法:イベントレジストのシステムを使用しており、クレジットカード、PayPal決済より選択できます。
※お申込み後のキャンセル及び返金は承っておりません。
こんな方におすすめ 【企業の広報・マーケティング担当者様】

  • 情報発信において動画を活用してみたい方
  • 動画コンテンツ作成に興味はあるが、はじめ方が分からない方
  • サービス、商品などを動画でもっと魅力的に伝えたい方
  • イベントの様子を動画で伝えたい方
  • 動画制作のコストや工数にハードルを感じている方
プログラム内容(予定) 今回の講座では、宣伝会議でも特に参加者満足度の高い、下記の内容をご提供します。

  1. 動画制作のための3つのキーワード
    ○ “情報の地と図”を整理すれば成果を出せる
    ○ 動画企画のための“3つのM”
    ○ “動画化価値”の高い情報を動画化せよ
  2. 動画活用の勘所
    ○テレビのミニ番組から学ぶ制作のコツ
    ○“必要にして十分”なクオリティを持つべし
  3. 動画マーケティングを成功に導くポイントと事例紹介
    ○「どうつくるか?」と「どう活用するか?」を行き来せよ
    ○ナショナルECサイトで20万再生された商品紹介動画のつくり方
    ○大手から中小までのEC企業事例、全国180支店での動画活用事例紹介
  4. 動画制作ワークショップ
    ○30分のテレビショッピング番組を、30秒のスマホショッピング動画に。
    ~テレビショッピングの商品を訴求する仕掛け、テクニックをワークショップで体験!
注意事項 ワークショップで使用するアプリはiOS限定で、対象端末は、iPhone(5S以降)、iPad(第4世代以降)、iPod touch(第5世代以降)となります。
上記機種をお持ちでない方は、本セミナーに参加できませんので、予めご了承ください。

講師紹介

(株)フレイ・スリー プロデューサー 前田 考歩

ネットとリアルをつなぐ新世代のデジタル広告会社(株)フレイ・スリーにて、動画制作アプリ「1Roll(ワンロール)」を使用した映像制作ワークショップの企画運営や、商品別の撮影ナレッジの提供活動等に従事。
(株)宣伝会議で、「Web動画クリエイター養成講座」、「企業のための定期勉強会 広告・宣伝コース」等の講師を務める。
業界や動画の利用目的に合わせた、動画の企画、制作、活用方法などをワークショップ形式で体験できるプログラムが人気を集める。

※本セミナーでは同業他社様のご参加はおことわりしておりますのでご了承ください。

お申し込み

以下よりお申し込みください。

ベンチャー企業のプロスポーツ支援「成功する支援/成果が出ない支援」の違いは?~ゼロスタート代表取締役社長・山崎徳之氏に聞きました

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2020年に東京オリンピックを控えて、いま企業のスポーツ支援への関心が高まっています。

とはいえ、これまでスポーツ支援を行ったことがない企業や、PR活動の経験が浅い中小企業、ベンチャー企業にとっては、興味はあっても何をどうすればいいかわからない、きっかけや情報の糸口が掴めないといった場合が多いのではないかと思います。

そこで、東京オリンピックの追加種目に選ばれ注目度急上昇中の競技、スポーツクライミングのスポンサー支援活動を2012年より行ってきた株式会社ゼロスタートの代表取締役社長・山崎徳之氏に、お話を伺いました。

お話を伺った方
山崎 徳之氏 株式会社ゼロスタート 代表取締役社長

支援のきっかけは、知人からの紹介

──ゼロスタートでは、2012年からプロフリークライマー野口啓代(のぐち・あきよ)さんのスポンサー支援を開始して、2015年からはスポーツクライミング日本代表選手のサポートもしてきました。また、2016年からは、冒険家の南谷真鈴(みなみや・まりん)さんの公式サイトのサポートもしていらっしゃいます。こうしたスポーツ支援を始めるきっかけをお聞かせください。

山崎(以下敬称略):きっかけは、知人の紹介です。スポーツクライミングがオリンピック競技に選ばれたのは昨年(2016年)の夏ですが、2012年当時はまだぜんぜん知名度がなくて、世界大会で1位の選手でもプロ活動だけで生活を成り立たせるのは難しい状況でした。

当時日本人選手で純粋にプロ活動だけで食べていける人は3人ほどで、そのうち2人は現役を引退して指導や育成的な活動をしていて、現役では1人ぐらいしかいなかったようです。そういった現状を聞いて、支援を申し出た形ですね。

──具体的に、どのような支援を行ったのでしょうか。

山崎:野口選手は、2012年の時点ですでに世界1位だったので、スポンサー企業が5、6社ついていましたが、ほとんどが物資の提供だったそうです。

例えばシューズを提供しますとか、ウエアを提供しますとか。競技を行う上でそれは非常に助かりますしありがたいのですが、物資の支援だけでなく現金の支援もあればより競技に集中しやすい環境になると思いましたので、少額ではありますが年間いくらで金銭的な支援をしましょう、ということになりました。

その後、日本代表も支援

山崎:フリークライミング日本代表選手についても、渡航費の問題で海外の大会に参加することを断念したり、行けたとしてもコーチが帯同できないといった状況だったそうです。

プロの世界大会でコーチが一緒に行けるか行けないかは、戦績に大きく影響します。その上、日本の選手が優勝して世界一になっても記者会見を開く予算がないというお話でした。記者会見を開くのはそこまで費用がかからないのですが、当時はそれほど金銭的に厳しい状況にありました。

そういった苦労話を聞いて、2015年からは日本代表も支援することになりました。こちらも年間いくらという固定のスポンサー費です。

2012年当時、日本人選手では野口選手と安間佐千(あんま・さち)選手が世界トップレベルで活躍していたのですが、その後日本のレベルはさらに上がり、現在の日本代表にはオリンピックでメダルが狙える選手が何人もいます。

東京オリンピックの種目に選ばれてから

──支援の成果があって、東京オリンピックの追加種目に選ばれたんですね。

山崎:うちが支援したこともありコーチが帯同できるようになったことや、記者会見が開けたことなど役に立った面はあると思いますが、もともとオリンピックの種目になることを期待して支援していたわけではないので、選ばれたことは予想外の結果でした。

オリンピック競技となったことで注目度が一気に高まって、他の競技と同様にフリークライミングにも代理店が入り、大きな企業がスポンサーにつくようになったのを機に、当社の支援は一応の役割を終えたと考えています。

──終えたんですか!?

山崎:他の企業やみんなが支援してくれるようになったので、CSRとしての当社の支援の役割は終了ということですね。オリンピック競技になっていなかったら、まだまだ支援を続けたかもしれませんが。

企業のスポーツ支援の2つの役割

──「CSRとしての支援」の役割とは?

山崎:企業のスポーツ支援には、2つの役割があると考えています。支援することによって企業のロゴが出て、自社の知名度やイメージアップにつながったり、売上が上がったりといった効果を狙って行うのはマーケティングです。そういったリターンがなくても、社会貢献のために行うのであれば純粋なCSRだと思います。

──そこは明確に線引きをして判断していると。

山崎:はっきりと線を引いているわけではありませんが、マーケティングが目的になってしまうと、費用対効果についても考えなければならなくなってしまうので、話が変わってしまいますよね。

支援した額に対してリターンが少ないと、「そこにこれだけ支援するなら、こちらのイベントに出展したほうがリターンが大きいのではないか」という見方も出てきてしまいます。

リターンが明確ならば、支援に名乗りを上げる企業は多いですけれど、リターンがあるかどうかわからないときに支援するのがCSRなのではないかと思います。

スポーツ支援のPR的な旨みは?

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──とはいえ、純粋なCSRとして支援を行っていたとしても、今回のようにスポーツクライミングがオリンピック競技に選ばれて脚光を浴びたことで、何かPR的な旨みというのはなかったのでしょうか?

山崎:まったくないですね。それによって当社の検索エンジンが売れたわけではないですし、会社のイメージアップ等につながって採用率が上がったりもしていません。強いてメリットを挙げるとすれば、ニュースリリースの話題がないときにスポーツ支援の件でリリースが出せたことです。

──冒険家の南谷真鈴さんが、日本人最年少で7大陸最高峰登頂を達成したときの報告リリースは、ものすごい反響がありました。

山崎:はい。リリース経由でマスコミの方たちから当社にたくさんお問い合わせがありましたが、うちは公式サイトの運営をサポートしているだけなので、お問い合わせへの回答など実対応はすべて代理店の方で行なっています。

南谷さんサポートのきっかけ

──ちなみに、南谷さんの支援をするきっかけはなんだったのですか?

山崎:南谷さんも知人の紹介です。実は、それ以前に一度、八ヶ岳のとある山で偶然会っていたんです。珍しく山に若い女の子がいるなと思ったら、下山後にその同じ山で「女子高生滑落」というニュースがあり驚きました。その際非常に気になっていたのですが、翌日無事が確認されたので安心しまして、以降はそのときの女の子のことは忘れていました。その後、知人に紹介されたとき彼女は7大陸最高峰制覇にトライしていて、すでに5つクリアしていました。

共通の知人に「山崎さんは、クライミングの支援をしていることですし、南谷さんの支援もしませんか?」とお話をいただいたのですが、ご本人にお会いしたら、金銭的な支援はスポンサーがしっかりついているので大丈夫ですとのことだったので、ならばメディア周りの支援をしましょうという話になりました。公式のホームページを当社で立ち上げたり、Webでの問い合わせの対応をしたりしています。

決め手があるから支援する

 ──野口選手やフリークライミング日本代表選手、南谷真鈴さん、みなさん知人からの紹介で支援を始められたんですね。支援を判断するにあたって、決め手のようなものはあったのでしょうか?

山崎:支援することでより大きな成果を出せるのではないかと思えるので支援するわけです。

野口選手は支援を開始したときにはすでに世界1位でしたが、その後も2度世界一になりましたし、スポーツクライミングも去年(2016年)ボルダリングのワールドカップ・世界選手権の男子1位は日本人でした。

南谷さんも、7大陸のうち5大陸制覇していましたし、この人なら頑張ってくれるだろうと思ったから支援しました。

実際に、南谷さんが最後に挑んだのは北米大陸のデナリという山で、そこは相当に難しい山として知られており7人ぐらいで入山したそうなのですが、一番標高が高いキャンプで暴風雨に見舞われて、1週間ほど粘った結果天候が回復しないため一旦下山したそうです。でも、翌日一人だけ戻って登頂してしまった。そういったポテンシャルがある女性です。

──有望だから、支援する。

山崎:「有望だけど、認知されていない」ところを支援するからCSRとしての意味があるのだと思います。

自分が知っている分野だから可能性を見極められる

──こういうスポーツ支援のお話とは、いったいどこで出合うのでしょうか?

山崎:自分自身もクライミング・登山はしていますが、野口選手の支援を開始した2012年当時のクライミングの世界は本当に狭くて、ある程度本気でクライミングをやっている人なら、通っているジムに行ったらそこに野口選手がいる、みたいな感覚でした。

ですから知人に紹介してもらったのも、ごく自然な流れです。

──個人の趣味や人脈だけで支援を決めているわけではなく、その人たちが出すであろう成果に価値があると感じているから支援する。

山崎:それが社会貢献だと思うんです。個人貢献ではなく、あくまで社会貢献としてであり、個人的に気に入ったから支援するということではないです。

──これからも、そういった支援は続けていくおつもりですか?

山崎:そうですね、良いお話があればこれからも続けていきたいと思います。とはいえ、世界でトップになるポテンシャルがあって、企業に注目されていないケースはそれほど転がってはいません。だからこそ、たまにそういう選手やスポーツが見つかったら、すごく支援する意義はあると思います。

企業には潜在的に社会貢献のモチベーションがある

──今回、山崎さんに取材させていただこうと思ったのは、2020年の東京オリンピックを前に、いろいろな企業がスポーツ支援への興味・関心を高めているのではないかと思ったからなんです。ですが、お話を聞いてみると、すでに代理店がついていて、活躍が期待されている分野にベンチャーや中小企業が支援で参加するのは難しそうですね……。

山崎:そういった支援は金額も大きいですしね。ですが本来、どんな企業も社会に貢献したいというモチベーションを潜在的に持っていると思うんです。

スポーツ支援に限らず、例えば、震災のときに寄付や社会貢献活動を行った企業もたくさんあります。そういった数々の活動は、PRやマーケティングのためではなく、純粋な社会貢献活動としてごく自然に行われました。その潜在的なモチベーションを平時からどのように使うかだと思います。

ただ、自分にとって全然興味のない分野だと、支援する相手が本当にすごいポテンシャルを秘めているかどうかわからないですよね。スポーツクライミングや登山は、自分もやっているから彼らの活動を見て、感じることができたというのは言えると思います。

「成功する支援/成果が出ない支援」の違いとは?

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──そうですね、ただ人から話を聞いただけではわかりませんよね。

山崎:自分がある程度真剣に取り組んでいるジャンルでないと、成果が出せるかどうか見極められないと思います。自分がそんなに詳しくない、打ち込んでいないジャンルに支援すると、単に他人の経済活動に利用されてしまうだけという可能性もあり、結果的にCSRにならないこともあります。

CSRとして支援するなら、自分もある程度目が利くジャンルに限らないと上手くいかない気がします。

スポーツ支援には3パターンあるのだと思います。1つは「結果が出ているから支援します。」というもの。有名選手の支援など、スポーツ支援で一番わかりやすいパターンですね。

2つめは「結果はまだ出ていないけれど、自分にはポテンシャルがわかるから支援します。」というもの。これがCSRとして最も有意義なのではないかと思います。

3つめは、「結果はまだ出ていないし、自分にはポテンシャルはわからないけれど、チャレンジへの意気込みを買って支援します。」というもの。こういう判断で支援すると、結果が出ない可能性もあるわけで、それは「貢献」ではなく「寄付」ですよね。最悪お金を騙し取られる可能性もあるわけです。

ですから、企業活動としてスポーツやアートの支援をするのであれば、自分もそれに打ち込んでいて、ある程度目利きになっている分野で行うのがいいと思います。

昔のパトロンって、そういうことですよね。パトロンになるような王様や貴族は、一般庶民よりも芸術や学問の素養が高いから、将来の偉大な芸術家や音楽家、学者の卵を見抜く目がある。紹介されただけで「いいよ、気に入ったからお金を出そう。」ということではなかったはずです。もちろん、見込みがハズレることもあったとは思いますが。

──「才能も実力もあって、この人が成功するために必要なものがあるとすれば…」というところを支援する。

山崎:そうですね。資金とか、環境を提供するということですね。

──なるほど。これからスポーツ支援を考えている人にとって、良いヒントになりそうです。ありがとうございました。


山崎氏は謙遜して語ってくれましたが、2012年からのゼロスタートの野口啓代選手ならびにスポーツクライミング日本代表選手への支援の道程、さらに南谷真鈴さんのオフィシャルサイトサポートの経緯は、同社が発表してきたニュースリリースで追うことができます。

そこから伝わる先見性やベンチャースピリッツは、見る人に企業に対する信頼感を与え、狙ってはいなくてもPRやブランディングの効果があることは間違いありません。

これからスポーツ支援を考えている企業の一助になれば幸いです。

「刺さるリリース」を書くために必要なたった2つのこと~インプレスの安田英久氏に聞きました

刺さるリリースを書くために必要なたった2つのこと

「刺さるリリース」「響くリリース」って、どうしたら書けるの?

リリースの書き方は覚えたけれど、いまひとつ何かが足りない。目につきやすいリリースとの違いはいったい何だろう?

初心者からステップアップするためには何が必要なのか。「Web担当者Forum」編集長の安田英久氏に伺いました。

お話を伺った方
安田 英久氏(株式会社インプレス Web担当者Forum編集長、ネットショップ担当者フォーラム編集統括)

リリースの「守破離」

──出版とWebメディアに長年携わっている安田さんに今回お聞きしたいのは、基本的なリリースの書き方は覚えたけれど、それだとまだ凡庸でパッとしない、キラリと光るポイントが作れない。そういった壁を感じている広報担当者に、何かブレイクスルーのアドバイスをいただけないかと思いまして。

安田(以下敬称略):けっこう無理言うなぁ(笑)

──すみません(笑)

安田:どんな仕事でも同じなんですけれども、スキルというのは必ず「守破離」という段階を経て磨かれていく。お手本通りにリリースを書くのは、基本を守っている「守」の段階ですよね。

そこから基本の型を破って、自分のオリジナルの技にしていくのが「破」と「離」なわけですが、ブレイクスルーで「守」から「破」にステップアップするにはどうすればいいか?

それには、次の2つのことを明確にする必要があります。

「ゴール」と「ターゲットセグメント」

──2つのこと。それはなんでしょうか?

安田:「ゴール」と「ターゲットセグメント」の2つです。

リリースのお手本というのは、どんな要素をどんな順番でどう書くかは示していますが、あくまでも一般論なんですよね。「守破離」の「守」から「破」に行くということは、このお手本どおりではなく、「そのリリースのネタに最適な伝え方」に変えていくということ。

では、何をもとにやり方を変えたらいいのかを考えていくときに大切なのが、「ゴール」と「ターゲットセグメント」の2つなんです。

まず、ゴールというのは「どうなったら成功と見なすのか」、また逆に「どうならなかったら失敗と見なすのか」ということです。

何のためにリリースを出すのか?という質問をすると、多くの人は「記者に取り上げてもらって記事にしてもらうため」と答えると思います。

でも、記事にしてもらったらそれでOKなんでしょうか。記事になった後はどうなればいいのか? 記事を見た人にどういう行動を取ってほしいのか?

「誰に」動いて欲しいのか?

──記事になった後に何が起きてほしいかまで考える。

安田:メディアに載ることがゴールではないですからね。それによってどんな効果を出したいかがあるはずですよね。

たとえば、「記事を見てくれた人に自社の製品やサービスを買ってもらうこと」をゴールにしたとします。でも、ビジネスってそんなに単純ではなくて、エンドユーザーの手に渡るまでに、いくつか段階があるわけです。

そこで、もう1つの「ターゲットセグメント」が重要になってきます。「誰に、そのゴールを達成してもらうのか?」という問いがセットになっていないと意味がないんです。

たとえば、BtoCの一般消費財で考えてみましょう。わかりやすい例で言うと、日用品などはスーパーの店頭で手に取ってもらうのが一般的ですよね。じゃあ、自社の商品を仕入れているのは誰なのか、スーパーの棚に並べているのは誰で、その人はどういう考え方で棚に並べる商品を選んでいるのか? どうやったら棚の良い場所に置いてもらえるのか?

「そんなの営業や販促の仕事だから、広報ではわからない」じゃなくて、たくさん棚に並べてもらうことで売り上げを伸ばしたい場合は、スーパーなどのマーチャンダイジングの担当者が見て「コレいいかも!」と思ってくれる文章をリリースに入れ込むことで、狙ったゴールを達成できるかもしれない。

すると先ほどの「誰に」は、「小売業のマーチャンダイジングの担当者」ということになります。

相手のニーズに刺さるコミュニケーションとは?

株式会社インプレス 安田 英久氏

株式会社インプレス 安田 英久氏

──ゴールを達成するために動かしたい相手を、より具体的に絞るわけですね。

安田:ターゲットセグメントというと、多くの人が「女性、20代」といったデモグラフィックなターゲティングを考えると思います。もちろん、そういう属性的なことも大切ですが、たとえば20代の女性でも、独身か子どもを持つ母親かで生活上の課題やニーズは違います。さらに母親でも専業主婦か働いているかでまた違う。

マーケティングの基本は、ターゲットを明確にして、そのターゲットのニーズ──わかりやすく言うと、欲求、願望、不安、不満、困ったなど──を把握して、そこに刺すコミュニケーションを作っていくことです。それは我々がコンテンツを作るときも、企業がリリースを書くときも同じはずです。

ターゲットが具体的にどんなことに困っているのか? それがどうなったらうれしいのか? といったことを明確にしていくと、「守破離」の「破」に向う考え方が見えてくるのではないでしょうか。

──「刺さるリリース」を書くには、ターゲットが置かれたシチュエーションや意思決定の動きをより具体的にイメージすればいいということですね。

安田:そうですね。ただし、そのとき忘れてはいけないのが、ターゲットはあくまでも「ゴール」を達成するために動いて欲しい「誰か」だということです。

ゴールを達成するには、リリースを通じてコミュニケーションをして人を動かさなければいけない。人を動かすには、相手にとって良いもの、相手が動く気になる情報を伝えなければ動いてくれない。

では、どういう情報を伝えたら相手は動いてくれるのか?

それには、相手が気にしていること、その人が困っていること、悩んでいることにスポットを当てればいい。そのニーズを明確にするためにターゲットセグメントを明確にするんです。

ユーザーはなぜ自社商品にお金を払ってくれるのか?

──ゴールを達成するために、誰にどのように動いてもらいたいか? そこをリサーチして明確にしていけば、ブレイクスルーできるわけですね。

安田:相手が動く気になってくれる情報というのは、企業や商品、サービスによっていろいろあると思います。自社の商品を買ってくれる人は、なぜそれにお金を払ってくれるのか? それを把握していったら、自社のニュースネタはいろいろ掘り起こせるはずです。

たとえば、その会社には150年の歴史があって、その実績を信用してもらっているからビジネスが成り立っているのだとしたら、広報の仕事としてその信頼をさらに厚くするために、自社の歴史にまつわるエピソードを掘り起こすことがプラスになるかもしれない。

社内の製品開発の人たちが優秀で、その人たちのモチベーションが上がることで売り上げが伸びる製品につながるのなら、開発者にスポットを当てた情報発信をすることが結果として売上を高めることになるかもしれない。

──そのように商流や情報の流れやお金の流れを具体的にイメージすることで、広報の情報発信の幅が広がっていく、と。

安田:営業や商品開発の人たちは、日々そうしたことをやっているわけです。広報の仕事のベースも同じということです。

……とはいえ。

──とはいえ?

ゴールとターゲットセグメントを明確にして、狙う人たちに「刺さるリリース」を自分なりに作れたとしても、リリースですからやはり記者に記事として取り上げてもらったり、番組で使ってもらわなければ情報を広く拡散することは難しい。

記者が「タイトル」を見るのは2秒以下

──そうですね。

安田:そのときに大事なことが、大きく2つあります。「タイトル」と「リード」です。そこがダメなら、どんなに中身が良くできていても、記者は見てくれません。

基本的に、記者って忙しいんです。想像以上に忙しいから、個々の情報にそれほど手間をかけてくれないんですよ。

昔は、リリースはファックスか郵送で届いたので、パッと見たら全体像が見えて、写真も目に入りました。でも、今はほとんどがメールで届きます。

メールでリリースを受け取る記者が、どんな環境でそれらを目にしているのかイメージしてみてください。

最初に目に入るのは、メールの一覧ですよね。少なくともそこには本文は出ていません。画像も出ていません。昔と違って、本文も写真もまったく目に入らないんです。

しかもメール配信になってから届く量が爆発的に増えて、1日500~600通は来ています。そのうち9割は、自分が携わっているメディアとは関係ない情報です。

すると、どうなるか。1日に500通チェックするとして、1通あたり10秒かけたら全部確認するのに83分かかります。

株式会社インプレス 安田 英久氏

──そんなに時間はかけませんよね。

安田:はい。1通2秒なら16分で済みます。まぁ、そのくらいが妥当ですね。

我々はどうやって見ているかというと、タイトルだけザーッと見て、「ん?」と思ったものは30秒かけて本文を見る。さらに「これはどうだろう?」と思ったら10分かけて調べる。そんな感じです。

ですから、サブジェクトで「ん?」と思わせるには、先頭の20文字でその媒体にとって有益な情報であることがわかるようにする必要があります。それだけで見てもらえる確率が上がります。

「リード」というのは、全体の要点をまとめた冒頭の文章です。30秒かけてチェックするときに最初に見る部分。ここに「平素より大変お世話になっております」なんていうご挨拶はいりません。端的に、要点を伝えてくれればいい。

その上で、中身は先ほど言ったように、ターゲットセグメントの人に響く内容で、かつそのメディアの特性にマッチしていればゴールは達成できるのではないでしょうか。

もっと言うと、リリースが「どんな人にどんな価値を提供する内容か」がわかりやすく作られていれば、記者もどう伝えるといいのかをイメージしやすくなっていいですしね。

SNSでシェアされる文字列にも配慮を

──メールのサブジェクトの部分が、リリースの「タイトル」に当たるわけですね。

安田:イメージとしては、本屋さんの棚に大量の書籍が並んでいる中で、背表紙のタイトルだけで手に取ってもらうにはどうしたらいいか? そのくらいタイトルはよく考えたほうがいい。

また、タイトルを考えるに当たっては、メディアの記者に見てもらうためのタイトルのほかに、ソーシャルメディアでシェアされるためのタイトルという考え方もあります。たとえば、TwitterやFacebookでシェアしたときに、タイムラインにどんな文字列が表示されるか。

このときも、タイトルとリードだけで内容がわかってシェアしたくなるくらいわかりやすいほうがいい。特に若い人にシェアしてもらいたいなら、本文を読み込まなくてもパッと内容がわかることが大切です。

ソーシャルメディアの拡散でもう一つ考えたいのが、ユーザーがどういうコメントをつけてシェアするかをイメージすることです。

「すごーい!」「待ってました!」なのか。

「いや、ちょっと待てw」といったツッコミ系のコメントなのか。

「○○ちゃんに教えてあげよう」なのか。

それによって、書くときの文体や情報の味付けが変わってくると思います。

もちろん、ソーシャルメディアでも最初に言った「ゴール」と「ターゲットセグメント」の2つを明確にするのは変わりません。というより、コミュニケーションの基本は何でも一緒なんです。相手が何を気にしていて、どうなれば喜ぶのかですね。

これを押さえておけば、実は社内コミュニケーションにも使えます。

相手に「刺さる」=「効くコミュニケーション」

──社内コミュニケーションにも?

安田:自分が求めるゴールを達成するために、事業部や経営層に納得してもらって動いてもらわなければいけないことって、多々ありますよね。でも、なかなか思ったように動いてくれない。

そういうときも、「相手が一番気にしているのは何か、何を理解できるのか、何をよくわかってないのか」を考え、それを中心にコミュニケーションを考えます。

たとえば、相手が売上ベースで物事を考えている人だったとします。そういう人にPVやコンバージョンの話をしても通じません。そういう場合は「売上」という共通のテーマでコミュニケーションするのが大切です。

そうやって「効くコミュニケーション」を身につけていくことで、リリースの質は上がるし、仕事自体がどんどん面白くなっていくんですよ。

──「ゴール」と「ターゲットセグメント」を明確にすることが、リリースの質を高めるだけでなく、ソーシャルメディアでのコミュニケーションや社内コミュニケーションにも役立つというお話、大変ためになりました。

貴重なお話をありがとうございました!

株式会社インプレス 安田 英久氏

ニュースリリーステンプレート無料ダウンロードできます

ニューズ・ツー・ユーでは、ニュースリリース・プレスリリースを書いたことがない方や、初心者の方のための「ニュースリリーステンプレート」を無料公開しています。ぜひご活用ください。

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ニュースリリース・プレスリリースのテンプレート雛形をワードファイルでダウンロードできます。

「パンツ」に新しい価値をもたらした、ワコールのソーシャル企画の優れた戦略~ワコールの担当者に取材しました

担当者に聞きました

ワコールでは、さまざまなキャンペーンを通じて、パンツで親しい人にエールを送ったり、頑張る人のゲン担ぎアイテムとしての新たな価値を提案しています。

今回、そうした“パンツPR施策”を振り返ってお話を伺ったら、ソーシャルで話題化させるいくつものポイントや、リリースの情報価値の高め方など、ネットPRに生かせるさまざまな知見が得られました。

お話を伺った方々

株式会社ワコール
布川 篤氏(総合企画室 広報・宣伝部 京都広報・宣伝課)
北見 裕介氏(総合企画室 広報・宣伝部 WEB・CRM企画課)
(※役職は2016年8月現在)

8月2日「パンツの日」企画に込めた想いとは?

──ワコールでは今年、申年に赤い下着を身につける「申赤」キャンペーンや「パン捨離」など、楽しい企画をいろいろ打ち出していらっしゃいます。今回は、そうしたさまざまなパンツ企画を改めて振り返ってお話を伺いたいと思います。

北見(以下、敬称略):最初にご説明させていただくと、当社ではレディースアイテムは基本的に「ショーツ」と表現しています。

ですが年に一度、8月2日の「パンツの日」前後だけは「パンツ」という表現を期間限定で使っています。そのほうが男性にも女性にも幅広い人たちに楽しんでもらえる企画になるからです。

布川:ワコールは女性の下着だけではなく、男性用の下着も取り扱っています。「パンツ」という共通のワードならば、すべての方に話題が提供できる。

8月2日の「パンツの日」はパンツの話題が最も拡散しやすいタイミングですので、女性はもちろん、ワコールは男性用のパンツもやっているんだよ、ということも知ってもらうためにいろいろとネタを考えています。

北見:「パンツの日」は語呂合わせなので、「8月2日はパンツの日」と聞くだけで面白味がありますし、盛り上がりやすい。

記念日では他にも、2月12日の「ブラジャーの日」がありますが、1914年にブラジャーが世界で始めて特許申請された記念日で、当社ではその日は「自分のカラダに合ったブラジャーを身につけましょう」という啓蒙的な企画を主に行っています。

由来が真面目だと、記念日企画も比較的真面目なトーンになりやすいというのはあると思います。

「キーワード化」するとシェアされやすい

株式会社ワコール 北見 裕介氏

株式会社ワコール 北見 裕介氏

──なるほど、「パンツの日」はそういう意味ではソーシャルメディア向けの記念日ですね。ネットで話題化しやすい企画はどうやって生み出しているのですか?

北見:2014年に「あなたのBlogで、『私はパンツ』というテーマで短編小説を書きませんか?」という企画を行ったとき、最初は「パンツで小説!?ワコールは突然何を言い出したんだ?」という反応だったんですが(笑)、応募してくれた方々がみなさんアイデアを練ってきちんと書いていただけたおかげで、面白がりながらも好意的な雰囲気で話題が広まったと思います。

その延長線上で2016年は、「クラウドパンツィング!?」という公募企画を行いましたが、これまでソーシャルメディアでキャンペーン企画をいくつか行ってきた経験から、まず一つは「キーワード化」するとシェアしてもらいやすくなるというのは言えると思います。

「身内ウケ」で盛り上がれる話題を提供

──「クラウドパンツィング!?」という造語はユニークでした。

北見:「クラウドパンディング!?」と「クラウドパンツィング!?」ならどっちのネーミングのほうがわかりやすいかという社内議論も途中にはありました(笑)

2つめは、「身内ウケ」をできるだけ多く作ることを心掛けました。企業がソーシャルメディアで情報発信すると、大量投下でマス広告と変わらなくなりがちなので、ソーシャルで話題にしてもらいたいときは、身内で盛り上がれるネタやワードをいくつも提供することが大事だと考えています。

「クラウドパンツィング!?」は、応募してくださった団体の活動に「いいね!」やRTで応援してもらい、シェア数を独自集計して「パンツポイント」と名付け、そのパンツポイントを82集めたらパンツをプレゼントします!という企画です。

まずは応募団体の方たちが「私たちこの企画に参加しています!」とシェアしてくれる動線ができ、それを見た知り合いの方たちが反応してくれる。そんなふうに小さな応援の輪をたくさん作れたらいいなと。

──知り合いのツイートやFacebookなら気軽に反応できますね。

北見:ただ、一つだけ今回の反省点としては、ほぼ一瞬で全チームが82パンツポイントを達成してしまったのがちょっと早すぎたな、と。

布川:そういう意味では、ネット上の反応はものすごくよかったと思います。達成するパンツポイント数をいくつにするか話し合ったときに、「パンツの日」と同じ語呂合わせで「82」がいいだろうということになりまして。

パンツポイントを獲得するには、団体のメンバー以外の人にシェアしてもらわないといけないので、82でも少しハードルが高いのではないかと思っていたんです。ですが結果的には、クリア目標の2倍近くシェアが集まりました。

マスコミ関係者に響く仕掛けを組み込む

株式会社ワコール 布川 篤氏

株式会社ワコール 布川 篤氏

──不思議だったのは「クラウドパンツィング!?」の企画と、しりあがり寿氏の関係です。今回、キャンペーンページのタイトルとイラストをしりあがり寿氏が手掛け、ワコールはしりあがり寿氏の個展「回・転・展」を応援していました。

布川:「パンツの日」は、たくさんの方にパンツを楽しんでもらうことを目的に企画を立てていますので、しりあがり寿さんのお名前はこれ以上ないくらい最適ではないかと思っています。英語にすると「ヒップ・アップ・ハッピー」ですから(笑)。我々がお伝えしたい「パンツでハッピーに」そのままです。

──「“しりあがり寿さん”を英語にすると?」は、周囲の編集者やライターの人たちが反応していました。

北見:当社はこうしたWeb企画を社内で考えることが多くて、部署内の雑談レベルでいろいろなアイデアが飛んできたり、社内ですれ違いざまに意見交換したりする中で企画が固まっていきます。しりあがり寿さんも、そうした中から飛び出したアイデアです。

しりあがり寿さんはお仕事柄、出版や広告といった業界の人たちに非常にウケがよくて、そういう方たちはソーシャルでの発信力やメディアへの影響力があります。「しりあがり寿さん+ワコール」という組み合わせの意外性のほかに、そういった影響力を狙ったというのはやはりありますね。

というのも、これまでのワコールの認知の高さは「ブラジャーの会社」というイメージがメインです。それは僕らの先輩たちがずっと作り上げてきた大切なブランドイメージでもありますが、一方でメンズパンツもやっていることは、まだあまり知られていません。

「ワコール」と「メンズパンツ」という2つのワードを上手くつなぐために、消費者間で情報を流通させるにはどうしたらいいだろう?と考えて、いろいろなルートで意外性というか、ちょっと違和感のある話題を投げかけるということをここ数年やっています。

2つの言葉を組み合わせた「違和感」が楽しさを生む

──違和感のある話題というと?

北見:「私はパンツ」企画は「パンツ+小説」。「クラウドファンディング+パンツ」もそうですし、2015年のバレンタインデー企画は「バレンタイン+パンツフラワー」でした。それぞれ2つのワードを足してみたら、すごい違和感がある。それでいて、情報を目にした人がすぐに趣旨を理解できて、話題にしやすい。

理解されやすいメッセージにするために、余計な要素は足さずに中心となるメッセージをストレートに伝える配慮もしています。

例えば、バレンタインデー企画では「パンツをまるめたら 花になる」というアスキーアートをソーシャルメディア上に置いたんですが、アスキーアート自体はネット上でよく使われているものを2つ組み合わせただけで、新しいものを創り出しているわけではありません。

でも、ネットでよく目にするものだからメッセージがすんなり伝わった。

Web企画はリアルとの連動が必要

wacoal_ph6

──組み合わせの妙ということですね。ソーシャルメディア企画は、そのくらいの気楽さで行ったほうがいいのかもしれないと思いました。

北見:とはいえ、Webの中だけで完結するような情報は、あまりウケないと自分は思っているんです。ネットはリアルの出来事が情報化されて反映される場だと思っていて、情報のもとにはリアルな出来事があるはずです。

Instagramは、まさにそういう文化ですよね。企業が発信する情報やWeb上のキャンペーンも、リアルのファクトやイベントと連動しているほうがいいと僕は思っているんです。まあ、企画でそれをやるのは大変ですけど(笑)

──今回の「クラウドパンツィング!?」は、そのリアルの部分を参加チームの活動が担っていたわけですね。

北見:そうです。

他にも、Web企画とリアルの連続性を示すためによくやるのは、面白さを狙った企画でも、そのリリースは真面目に調査データなどを交えて企画の背景を説明するという方法です。

>>次ページ「リリースで真面目さとのバランスを取る

展示会出展を成功させる7つのポイント〜展示会超攻略セミナーレポート

展示会出展を成功させる7つのポイント

展示会出展を成功させる7つのポイント

2016年8月、ニューズ・ツー・ユーでは「超実践!展示会攻略セミナー ~効率的な事前集客、ブース内行動、出展後営業まで完全解説」と題して、

  • 出展したいけど、費用対効果が出せるか心配・・・。
  • 過去に出展したけれど、思ったような効果が出なかった。

そんな悩み・疑問をお持ちの皆様に約3時間で展示会を成功させるノウハウを伝授するセミナーを開催しました。

5つに分かれたセッションでは、ブースの作り方、目標数値の立て方、ブースへの集客やブース内の行動フロー、出展後の営業フォローなど、今後の展示会出展でご活用いただける考え方やテクニックが満載で、参加者にも好評いただきました。

今回はその中で語られた展示会出展を成功させる7つのポイントを「展示会前」「展示会中」「展示会後」にわけてご紹介します。

<開催日>
2016年8月1日(月)

<登壇者>
株式会社フレイ・スリー 前田 考歩氏、株式会社セールスカレッジ 森田 光一氏、株式会社ベンチマークジャパン 笠原 吾郎氏、株式会社ニューズ・ツー・ユー 恩田 貴之

展示会前

ブースはありものではなく、体験できるスペースに

フレイスリー前田氏

株式会社フレイ・スリー 前田 考歩氏

展示会への出展を決めると、事前に検討することの一つにブース設計があります。自社の製品やサービスをアピールできる場所として、ブースに自社の製品やパンフレットを置いておくだけで良いのでしょうか。

スマホで簡単に動画作成できるアプリ「1Roll」を提供する株式会社フレイ・スリーの前田氏は自社製品の導入に最も効果のあった「体験」をブース内に再現しようと考えたそうです。

前田氏:主催者側からブースプランの提案もありました。でもたくさんの出展社がいる中、他と同じようなブースを作っても集客できないのではないかという懸念がありました。そこで、無機質なデスクの上に「はい、試してください」と製品を置いておくよりも、当社の動画アプリを楽しく体験してもらおう、操作性やお客様のベネフィットを体験いただけるスペースにしようと考えたんです。

そして、よくある商談スペースは動画体験してもらって「良かったらお話しどうですか?」とか「良かったら座っていってください」というような感じで、ちょっと休憩できる開放的なスペースに変えました。 商談スペースを作っても、今どき、お財布持って「どのツール買おうかな」と回るようなお客様はいらっしゃらないですからね(笑)

事前集客はHTMLメールで

重要な事前準備として集客もあります。まずは自社で所有するハウスリストへの案内ですが、どのように告知するのが良いのでしょうか。

前田氏:小さな会社・事業部だとハウスリストにFAXでの案内を送ることは手間ですし、そこまでリソースを割けないことが多いです。ですので私たちの場合は、簡単にHTMLメールを配信できるサービス「Benchmark Email」を使ってハウスリストに案内しました。メールには展示会の概要だけでなく、我々のブースに来ていただいたらこんな体験ができます、撮影体験が出来るんですよという動画を貼りました。文字だけより、イメージも付きやすく伝わりますよね。

そして撮影体験を予約できるボタンを配置して、メールを見て興味を持ったらすぐ体験予約をできるようにしました。予約フォームは無料で簡単に設置できるGoogleフォームとGoogleカレンダーを使いました。

このメールを展示会の3週前と当週と初日の3回に分けて送信しました。

 

HTMLメール配信ツールを使うことで、開封率やクリック率もわかるので、内容の見直しも適宜可能です。見てもらえたかもわからないFAXで送るよりも効率的ですね。また、「いよいよ開催」「今日から出展します」など複数回案内メールを送ることで、思い出してもらい足を運んでもらえるきっかけにもなります。

リリース配信することで新規の集客にもつながる

ニュースリリース配信することで、自分たちのハウスリスト以外の潜在顧客にリーチできる可能性があります。

恩田:ニュースリリースを配信することでWebサイト上に情報を広げることができるので、自分たちのハウスリスト以外のユーザーにもリーチすることができます。通常、テキストのみ、もしくはテキストと画像のリリースが多いですが、なかなか文章だけではイベントの雰囲気や商品の質感までは伝えられません。そこで動画を活用し、読者の方に動画でイベントの概要・雰囲気を味わっていただいて、テキストでイベントの開催情報を補足するといったようにしてリリースを活用していただけます。

北米の調査によると、84%のユーザーが企業の動画というものを好意的に感じており、48%のユーザーがシェアをした経験を実際にもっているという調査結果もあり、このデータからも動画を付けることで、そのリリースを見てユーザーがリリースの情報をシェアしてくれる可能性が高まると考えられます。

どのくらい名刺を集めればいいの?目標数値の立て方

出展する展示会の規模にもよりますが、どれくらい自社ブースに呼び込んで名刺を交換できれば成功と言えるのでしょうか。もちろん多ければ多いほど良いのでしょうが、やみくもな目標数値を立てても意味がありません。

前田氏:目標数値については、ブースで提供する動画撮影体験回数をベースに組み立てました。

動画体験とアンケート、少なくても15分はかかります。開催時間が7時間、撮影体験エリアを2つとして1日提供できる撮影体験を56回、3日間の会期で168回ですが、キリよく150を目標にしました。

名刺交換のみの方だけもいらっしゃることを想定して、動画体験150名、動画体験なし350名、合計500名と名刺交換する、という指標を立てました。一番見込み度の高い動画体験したお客様の数に指標を置いたわけです。

展示会中

大きなブースで出展している企業は、ノベルティやコンパニオンを用意してアンケートをとったりしますが、そういった予算が取れない場合、どのように自社のブースに呼び込めば良いのでしょうか?

医薬系企業の出展した展示会で獲得リード数を3倍にした実績のある株式会社セールスカレッジの森田氏はその時の事例をもとに次のように話しました。

ブースに呼び込む武器はチラシ

セールスカレッジ森田氏

株式会社セールスカレッジ 森田 光一氏

森田氏:来場者に何を伝えたいのかはっきりさせることのできるチラシがブースに呼び込む武器になります。では、どのようなチラシだったら集客につながるのか。私たちは「ビジネスは30秒で話せ」という本に出てくる「ダイヤモンドモデル」を参考にしています。

自社の製品を知らない人の足を止めるには、自社の製品説明から始めるよりも、最初に聞き手の興味を引いて関心を持たせることが大切です。チラシにもキャッチコピー、注意を引くポイントを作りました。この医療系の会社の場合ですと、お客様のシステム利用継続率の高い企業だったので、少しもじって「日本で一番愛されているDIシステムです」と声をかけて笑ってもらうみたいな感じです。

次にメインのトピックとして、このシステムでどのような効果があったのかをまとめました。例えば前述の医療系の会社であれば、システム導入で日に400件もあった問い合わせが0件になったんですと訴えます。問い合わせが減ることで本来の業務に注力できるようになったという説明もして相手の興味を引く。「どういうこと?」と。そこで、サブトピックとしてさらに詳しい機能の説明をしていくわけです。

最後にアクションプランです。今、デモをやっているのでぜひご覧くださいという流れですね。急いでいる方もいらっしゃるので、全部お話しできない場合もありますが、基本的にこのストーリーでお話ししました。

 

まずは、興味・関心を引く、そして、メインのトピックでは、なぜ聞き手のメリットになるのかを説明することで自分ごとに考えてもらうことができます。最後にアクションプランで聞き手に次に何をして欲しいのかを明確に提示するんですね。

 

森田氏:声をかけても止まってくれない人もいますよね?そういう時どうするか。私たちは話しかけて、付いていくようにしています。声だけだとスルーされてしまいますが、付いていくと視覚に入ってくるので、止まってくれる方が明らかに増えます。

展示会後

展示会後のフォローは動画とHTMLメールで

展示会が終わって集まった名刺にどのようにアプローチするのが良いのでしょうか。前田氏は全リードに同一のアプローチではなく、見込み客のレベル別にアプローチ手法を変えるといいます。

前田氏:展示会後、速やかに行ったのは、確度の高い見込み客へのアポ取得とクロージング、低い見込み客の場合はナーチャリングを行いました。

具体的には撮影体験、アンケート回答してくれた方にはある程度確度が高いということで、デモアカウントを発行しました。撮影体験ありと撮影体験なしで動画付きのお礼メールの配信もしました。開封率は動画体験ありで50%を超えるなど通常と比べるとかなり高い数字がでました。

開封してくれた方で動画を見てくれた方は確度が高そうだということで、営業がさらにフォロー、開封したけど動画は見ていない方に対してはナーチャリングというように、見込み客のレベルに合わせて戦力を集中投下するということが重要と考えています。

リリース配信で来場できなかった方にもアプローチ

株式会社ニューズ・ツー・ユー 恩田

株式会社ニューズ・ツー・ユー 恩田 貴之

ニュースリリース配信することで、展示会終了後も資料請求やお問い合わせにつながる機会を作ることができます。

恩田:今までリリース配信をご利用いただいたお客様の中にはイベントの告知とともに、出展した商品のPRを目的として、イベントの初日に動画リリースを配信いただいた企業様もいらっしゃいます。

動画リリースの特徴として、撮影・編集が1~2時間でできるので、撮影したその日のうちに配信いただくことが可能です。イベントの開催期間中に動画をスマホで撮影すれば、スピード感のある商品の訴求が実現します。また、展示会終了後のレポートとしてリリースを配信することで、会場に来られなかった方にもイベントに参加したような体験を提供することができます。

動画付きのリリースは、74%の企業が実際のCVが向上、50%がROIが向上するというデータがありますので、通常のリリースとともに動画をつけることによってイベントに参加いただけなかった方からの実際の受注や資料請求の獲得にも効果的であると言えます。

 

いかがでしたでしょうか。展示会に出展を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。ご登壇いただいたみなさま、貴重なお話ありがとうございました!

ネットで話題になるユニークなニュースを仕掛けるアイデアとは?~「品川経済新聞」「和歌山経済新聞」などを手掛ける有限会社ノオトの宮脇氏に聞きました

Interview_note

Webメディアに記事にしてもらうには?というPR担当者の声に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材するメディアインタビュー第4回。

今回は、「品川経済新聞」「和歌山経済新聞」の2つのエリア媒体を運営する有限会社ノオトの宮脇 淳氏にお話を伺いました。エリア媒体ならではのニュースの集め方、ヤフトピ掲載を意識した画像とタイトル作りなどネットで話題になるニュースの仕掛け方のコツから、ソーシャルメディアでファンを増やす方法まで幅広いアドバイスが聞けました。

お話を伺った方

有限会社ノオト 代表取締役 宮脇 淳氏

毎週5本の記事ネタはみんなで足で探す

──「品川経済新聞」や「和歌山経済新聞」のようなネットのエリア媒体では、どのように地域のニュースを集めているのでしょうか?

宮脇(以下、敬称略):基本的には足で探しています。街を歩いて、建物や店舗の入れ替わりのような変化を探す感じで。他に、Twitterで誰かが今品川駅でこんなイベントをやっているとツイートしているのを見かけて、面白そうなら取材に行ったりもしています。

品川エリアのホテルや商業施設で開催されるイベントは、プレスリリースで情報をキャッチすることも多いですね。でも、そのまま記事にするのではなく、何かしらユニークなポイントを見つけて取材記事に仕上げるようにしています。

「和歌山経済新聞」は品川と違って、地方なのでプレスリリースはほぼ来ません。ですので、編集スタッフが自分たちで歩き回って探したり、知り合いが独立して新しいお店をオープンするとか、シャッター商店街を利用してみんなで綱引き大会を開催するとか、そういうローカルな記事を口コミで得たりして記事にしています。

──記事はどのくらいの頻度で更新していますか?

宮脇:どちらも月曜から金曜まで、平日は毎日1本ずつ記事を上げています。新聞としては、それほど頻度は高くないんですけれど。

──平日毎日となると、ネタ探しは大変そうですね。

宮脇:本当に大変です(笑)。「品川経済新聞」はノオトの若手編集スタッフがネタ探しから記事の執筆、更新まで行っていますが、「和歌山経済新聞」の場合は、和歌山にあるコワーキングスペースの会員さんたちが情報を集めてくれて、毎週1回みんなで持ち寄ったネタをホワイトボードに書きながら編集会議を開いています。みなさん本業は別にあって、ボランティアで記者として活動しています。まあ、私もボランティア編集長なんですけどね。もう3年近く継続しているので、創刊当初から書いている記者の実力はかなりついてきていますね。

記事はYahoo!ニュースにも掲載

──今、地方の自治体や企業でも、ネットで情報発信を積極的に行おうという気運が高まっています。そうした流れの中で「みんなの経済新聞ネットワーク」のようなエリア媒体はとても興味深い存在だと思います。実際に「品川経済新聞」や「和歌山経済新聞」は、どういう人たちにどのくらい読まれているのでしょうか?

宮脇:実は我々もよくわかっていないんですよね(笑)。そう言うと、「じゃあ、なんでやってるんですか?」とよく聞かれるんですけれど……。

──なぜ、やっているのでしょうか?(笑)

宮脇:「品川経済新聞」は、私が東京で会社を興して、今年でちょうど12年になりますが、たまたま品川エリアにいいオフィスを見つけて品川が拠点になったから始めたんです。

和歌山は私の出身地で、妻子が和歌山に住むことになってしばらく東京との2拠点生活を送っていたとき、ちょうど地元のコワーキングスペースに集まっている人たちと親しくなったので立ち上げました。3年前ぐらいです。

当時、和歌山ではネットでの情報発信メディアがほとんどなかったんですよ。せっかくいろいろなコンテンツがあるのにもったいないと思いまして。そういう話をしたら、情報発信で地元を盛り上げたいと言う人たちが他にもたくさんいて、協力者が集まってくれた。

みんなの経済新聞ネットワーク」はYahoo!ニュース提供社のひとつなので、記事を上げるとYahoo!ニュースに配信されるようになっています。地元の人たちにとってYahoo!ニュースに記事が出るのはNHKに取り上げられたぐらいのインパクトがあって、みんなものすごく喜んでくれるんですよ。だから完全に地元への善意だけでやっているメディアです。

「ヤフトピを取れるか?」は企画アイデア次第

有限会社ノオト 代表取締役 宮脇 淳氏

有限会社ノオト 代表取締役 宮脇 淳氏

──「品川経済新聞」や「和歌山経済新聞」で取り上げるニュースの選定基準について教えてください。

宮脇:絵作りができるかを、まず基本的には判断します。

例えばプレスリリースは他の媒体も見ているので、同じ内容をそのまま記事に書き起こして出すことに価値を見出しにくい。ですからプレスリリースの情報をベースに、うちはこういう切り口で取材できるかな、という何かしらのひねりや付け足しが思い浮かべば記事にしやすいですね。ニュースに“花を添える”と言いますか。本来、それは編集者が考えるべきことではありますが、そういったプラスアルファの報道がしやすいリリースの中身になっているといいのかなと思います。デキるPRの人は、そういう仕込みが上手ですよね。

──やはり絵作りは重要なんですね。

宮脇:エリア媒体でも他のメディアでも、ニュースを探すときはヤフトピを取れるくらいのインパクトがあるかどうかを常に意識していますから。

──ヤフトピに載るくらい大きなニュースですか?

宮脇:大きいというより、アイデアです。記事にしたときに目を引く絵が作れるかというのと、もう一つはタイトルで文字のインパクトが出せるかどうか。

例えば、和歌山県に三段壁(さんだんべき)という波に侵食された断崖絶壁があって、地元では有名な自殺の名所でもあるんですが、今年の10月にそこで高飛び込みの世界大会が開催されるんです(笑)。そういうイベント告知がプレスリリースで送られてくると、絵も浮かぶし、インパクトありますよね。自殺の名所で飛び込み大会をして安全なの? みたいな疑問はみんな当然気になるから取材要素になる。いかにも「火曜サスペンス」のクライマックスシーンに出てきそうな崖から参加者が飛び込む瞬間をカメラで押さえたら、Yahoo!の写真ニュースに来そうだな、とか。

そんなふうに絵柄と取材内容がパッと浮かぶ企画モノの情報が入ってくると、メディアは食いつきやすいんです。もちろん、あまりヤラセの臭いがするとダメですけれど、“ニュースを作る”という概念はもっとあっていいと思います。

「誰もやっていない」「珍しい」要素をプラスする

──自殺の名所というネガティブ要素を、楽しいイベントで逆手に取る発想が面白いですね。

宮脇:ネガティブな要素をポジティブに塗り替えてしまうPR発想は、最近手法として多いじゃないですか。

たとえば、青森県が平均寿命の短さを掲げて「短命県体験ツアー」を企画したり。そういうのはネタになりやすい。

中には、そういうふざけたPRを嫌がる担当者も当然います。ですが、誰にも見られないよりは100倍マシだと私は思っているので。自虐の入ったPRは匙加減とセンスの問題だと思います。

──自虐でなくても、何かしらユニークな要素を盛り込めれば面白くできそうですよね。

宮脇:まだ誰もやっていないとか、こういうのは珍しいんじゃないかという要素を積極的に取り入れて、それをニュース化するとメディアは取り上げやすいと思います。

地元向けの記事が全国に広まることも

──そうした記事作りをする中で、エリア媒体の小さな記事が全国に広まった事例はありますか?

宮脇:エリア媒体は基本的に地元の人に響く記事作りを心掛けていますが、それが結果的に全国にも広まることはあります。最近もありました。

和歌山県には日本で初めて抹茶のアイスクリームを作ったと言われている玉林園という会社があって、そこが抹茶を使ったコンビニスイーツを共同開発したんです。県内で大人気なので取材したところ、通常のスイーツの10倍の個数が毎日完売になり、あまりの人気で店長はまだ味見すらできていないという話が聞けまして。「和歌山・玉林園の「グリーンソフト」がコンビニスイーツに 店長はまだ食べられず」というタイトルで記事を出しました。出したときは地元の人にしかウケないと思っていたんですよ。東京の人が見ても、おそらく何のことかわからないだろうと。それがたまたま全国の人が読んでも面白いと思ってもらえたようで。そういうケースもありますね。

記事へのエンゲージメントを上げる工夫

──基本的には地元の人に響く記事を書いているわけですね。

宮脇:「品川経済新聞」は東京のメディアということもあって、多少ネットを意識した記事作りをしてはいます。

例えば、有限会社ノオトが2016年7月に「コワーキングスナック」をオープンしまして、そのボトルキープチケットをイベントチケットの販売サイト「Peatix」で売ってみたんです。手数料もかかるのになぜわざわざPeatixを使ったかというと、たぶん誰もやったことがないと思ったから。

そうやって人々が「えっ!?」と思うようなフックになる要素を加えると、「コワーキング“スナック”ってなんだよ」とか「わざわざPeatixで売るのかよw」といったツッコミが入ったりする。都心部の人たちはこういうちょっとしたところをよく見ています。ただ、和歌山で「Peatix」と言っても、なかなか地元のみなさんには伝わりづらいと思います(笑)。

コワーキングスナック

有限会社ノオトが2016年7月にオープンした「コワーキングスナック」

──企画を工夫することで、記事に対するエンゲージメントが得られるわけですね。そのようにニュースを面白く書くコツはありますか?

宮脇:これを言うと身も蓋もないんですけれども、結局、面白くないことはどんなリリースを打ったって面白くないんですよ。本当にもう、残念ながら。だったら、もともと面白くないことをどうやって面白くするのかということを考えるのが、編集者やPR担当の仕事だと思うんです。

──書き方の問題というより、元のファクトを工夫するということですね。

宮脇:もう数年前の話ですが、iPadが日本に初上陸したとき、一足先に輸入品を仕入れて十数万円で先行販売しようとした中古PCショップがあったんです。日本発売の1カ月ぐらい前に。当時iPadは大注目されていたので、店の経営者は「iPad先行販売!」と宣伝するだけで売れるだろうと思ったら、2週間過ぎてもまったく売れない。

そこで、仕入れたiPadを1台開封して、「iPadおさわりできます。3分間100円」というふうに店頭に飾ってニュース記事にしたら、途端に客が大勢訪れて2日間ほどで仕入れた十数台が完売した事例がありました。少し待てば数万円で買えるiPadが十数万円で売れちゃったわけです。

さらに、iPad上陸前夜だったこともあって、この店にラジオやテレビ番組の取材が殺到しました。お店にとってはいいPRですよね。 このケースでは「おさわり」というキーワードと、「金取るのかよ!」というツッコミどころにネット民が反応したわけですが、ニュースの元となるファクトを工夫するというのはこういうことだと思います。

(元記事:「武蔵小山の中古PC店、iPadを輸入販売-3分100円でおさわりも」)

楽しい気持ちを共有して生活者とつながる

──企業や自治体の中にいると、PR施策でツッコミどころを作るのが難しい空気もありそうです。

宮脇:そうなんですよね、たぶん。でも企業の中にいる真面目そうだったり偉そうだったりする部長でも、お酒を飲みに行くとけっこうふざけて冗談言ったりするじゃないですか。本当はみんな楽しいことが好きで、面白い情報を見つけたら笑って手を叩いて喜ぶんですよ。そういう出来事を世の中に広めていけばいい。

真面目ぶって外面を良く見せようとして、楽しい気持ちに蓋をしてしまったら、生活者の気持ちとつながることはできません。世の中には、もうちょっとひねれば面白くなるニュースってたくさんあると思いますよ。

──ニュースを楽しい情報や出来事にして発信する、と。

宮脇:今のパブリックリレーションズの大部分はメディアリレーションズで、いかにメディアに取り上げられるかを課題にするPR担当の方が多いですよね。けれど、メディアを通さずに企業の誠実さや真面目さを生活者に直接伝えられるTwitterやFacebookのようなツールが充実しているので、メディアにこだわる必要はないと思うんですよね。ということをメディア側の人間が言うのもどうかと思いますが(笑)

>>次ページ「ファンを増やすソーシャルメディア運用法

急成長するスタートアップがPRでやっていることは?~Viibarの広報担当者に聞きました

株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

スタートアップ企業や、これからネットPRを始める企業はどのようなことに目を配って広報活動を行えばいいのか? そのポイントを、国内外で3000人を超える動画クリエイターを擁し、動画制作と動画マーケティングをワンストップで提供する注目のスタートアップ企業「Viibar」(ビーバー)の広報ご担当者、近江晶子氏に伺いました。

お話を伺った方
株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

前任者は広報勉強会でノウハウを積極的に吸収

──これから広報活動に取り組もうと考えているスタートアップや中小企業のために、Viibarでどのような広報活動を行ってきたかお聞かせください。

近江(以下、敬称略):私がViibarにジョインしたのは2015年8月頃からなので、それまでの広報活動については前任者にヒアリングしたことをお話させていただきます。

当社は2013年4月設立で、広報の専任はおらず、営業の女性が広報も兼任していました。広報経験はなかったため、最初はスタートアップ広報の勉強会や記者懇親会などに出かけてプレスリリースを手渡ししていたそうです。

プレスリリースは月に1、2本書いて、勉強会で学んだことを参考にメディアが記事にしやすいニュースを作ることを意識していたそうです。さらに、広報勉強会やオフ会などに積極的に出かけて、知り合った記者の方にアポイントを取って会いに行ったりもしていたと聞きました。

まずは「業界ナンバーワン」を数字で示すことから

──近江さんは広報経験者としてジョインされたのですね。

近江:前職はサイバーエージェントで広報とIRを12年担当していました。動画の業界は今が黎明期で、ちょうどインターネットの黎明期と雰囲気が似ていて面白いです。

──広報経験のある近江さんから見て、参画した当時の広報活動の課題はどういうところでしたか?

近江:まずは数字ですね。それまでのプレスリリースには具体的な数字の記載がほとんどなかったので、クリエイターの登録者数や制作した動画の本数、取引社数からパッケージの金額に至るまで、数字をきちんと精査して、インパクトのある数字とともに「業界ナンバーワン」と言えるようにしようと思いました。

また、そうした数字が社内でうまく共有されておらず、ブログやインタビューなどで言う人によってバラバラだったので、社内で統一するとともに社員にも数字の重要性を伝えることから始めました。

Viibarのプロダクトが提供する価値をコンテンツ化する

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──社内で統一するというのは案外重要ですよね。ほかにはどのようなことを?

近江:広報でどういった方向性を打ち出していくかを経営者と話し合い、広報の目標を決めました。

Viibarのビジネスについて、現状はまだなんとなく動画を作っている会社だという程度にしか世の中に認知されていないので、まずはプロダクト広報を中心に据えてViibarがどのような価値をお客様に提供しているかを市場に知らせることをメインに取り組む方針に決めました。

また、これまで作ってきた動画がお客様企業にどのような満足をもたらしているのかという実績が外部に見えていなかったので、事例を掘り起こしてコンテンツ化し、記者に伝えるということを行いました。

──こちらの「Viibar動画研究所」の事例インタビューですね。

動画マーケティング・動画広告の事例ノウハウ | 動研 | Viibar

動研ことViibar動画研究所。企業様のケーススタディを中心に、マーケティングに役立つ動画の活用例を詳しくご紹介。

近江:はい。記者に伝えるためにもまずは会社の引き出しを増やし、ネタをためていくことが重要だと考えています。

このコンテンツは私の提案で始まり、私自身がインタビューをして書いています。いい事例がたくさんあるのに、外部にあまり伝わっていないのがもったいなかったので。そういった有益なネタを社内から集めてコンテンツ化する取り組みは精力的に行っています。

──コンテンツマーケティングですね。

近江:実は今、広報とマーケティングを兼務していまして、事例コンテンツはマーケティングの仕事としてやってはいますが、それを記者の方に伝えるのは広報の仕事なので結局は両方の領域にかかっている感じですね。

社内から広報ネタを提供してもらえる環境づくり

──ほかにはありますか?

近江:あとは社内への働きかけです。「こういうネタが出たら広報に知らせよう」という情報の共有体制がまだ整っていないので、社内のいろいろなミーティングに顔を出したり、気になる動画があったらすぐに営業にヒアリングをしたりして、こちらからこまめに情報を拾いにいくことを心がけています。

前職は広報的な考え方が全社的に理解されていたのですが、それと比較するとViibarはまだ何が広報のネタになるのかが社員に浸透していない状況です。ですので、少しずつわかってもらえるように競合他社のネタを社内に共有したり、新聞で動画が取り上げられた記事を共有して「今、動画はこんなに注目されているんだよ」ということを伝えたりしています。

自分たちが面白いことをやっていても、それを外部に知ってもらう努力をしないと報道される機会を逃してしまうということをわかってもらいたくて(笑)。そういった社内コミュニケーションを通して、どういった情報が広報ネタになるのかみんなに理解してもらえるように努力しているところです。

──ちなみに、前職のサイバーエージェントではどのように全社に広報感覚を広めていたのでしょうか?

株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

近江:もともと藤田社長ご自身が広報をとても重要視していて、社員も広報に取り上げてもらうことを誇りに感じる雰囲気をつくっていました。仕事で成果を出した人を積極的に広報していく方針でしたし、広報に露出することがうまくインセンティブにつながっていたんだと思います。

Viibarの社員は裏方に徹するタイプが多いので、どうしたら社員も喜ぶ広報活動ができるか試行錯誤しています。

社内への取り組みではもう一つ、部署ごとに提供してもらったリリースネタの数を表にして公表することもしています。数字で見せるとわかりやすいので、「どんなネタを出せばいいでしょう?」と声をかけてもらえたりもします。今はどんなネタでも可能性があれば教えて欲しいので、最終的にプレスリリースに使ったかどうかは別にして、単純に提供してくれたネタの数をカウントしています。

プレスリリースの6つの軸

──そこからどういうネタをプレスリリースにするのかという指針はありますか?

近江:一応、広報でいくつか軸を考えています。

まず一つは、大企業と共同リリースを出せるニュースは必ずプレスリリースを出そうと思っています。例えば、Viibarの資本業務提携先であるヤフー株式会社との取り組みなどです。

2つ目が、新しい商品やサービスについてのリリース。

3つ目は、動画制作のクリエイティブの質と幅が広がることが訴えられるニュース。

4つ目は、業界トレンドに絡んだ話題。今ならVR動画や360°動画に関する取り組みなどですね。

5つ目は、これはまだ実現できていないのですが、「クラウド×地方自治体」に関する話題です。地方在住のクリエイターが活躍している話題や、地方自治体の動画制作に関するトピックですね。今、地方活性化の話題は新聞でも取り上げられやすいですから。

それから6つ目が、今一番うまくいっている「データ×クリエイティブ」の話題です。これに関しては『宣伝会議』や『MarkeZine』などでも注目されているので、関連する話題があれば必ずリリースを出そうと思っています。ですから、これら6つのネタにひっかかりそうなものがあったら必ず教えて欲しいと社内に伝えています。

企業事例の次はクリエイターや働き方の情報も充実化させたい

──「クラウド×地方自治体」の話題で今何か準備していることはありますか?

近江:Viibarに登録しているクリエイターに取材して、紹介記事をWebコンテンツ化して記者の人たちにも伝えていく取り組みを準備しています。地方在住のクリエイターもいますし、海外在住でViibarの仕事だけで1000万円ぐらい稼いでいるクリエイターもいるんです。

ほかにも子育てしながらクラウドソーシングで動画制作を請け負って自立しているママクリエイターの方ですとか、学生から本格的に動画で稼げるようになった方など、Viibarを通じて活躍の場を広げているクリエイターの方々がたくさんいるのになかなかお伝えしきれていないので、きちんと情報発信しなければと思っています。

──それは興味深いですね。

近江:クラウドソーシングは一時期とても注目されましたが、結局は小銭しか稼げないと思われている現状があります。そうした風潮に対し、Viibarでは実力さえあればどんなクリエイターでも活躍できるオープンな機会を提供しているということをお伝えしていきたいと思っています。

今まで、映像クリエイターはテレビCMなどで大きな実績を出せないと、クリエイターとして独立し、継続した受注が取れるということはあり得なかったのですが、それが変わってきています。

Viibarが存在することによって、若手でも実力があれば大手企業と組むことができるようになってきたので、そういう新しい才能や新しい働き方をお伝えすることもニュース性があると思っています。

「データ×クリエイティブ」で差異化できた今がビジネスステージの転換期

──スタートアップ企業が急成長していくと、広報活動にも転換期が訪れるポイントがあると思います。御社では、会社としてのステージの変化やそれにともなう広報活動の変化はありましたか?

近江:今がちょうど変化の最中だと思っています。これまでクラウドソーシング市場や動画市場の盛り上がりの波に乗ってメディアに取り上げられてきましたが、最近は一歩抜けて、データ×クリエイティブの取り組みのプレスリリースなどViibarならではの独自性を打ち出し始めています。

──データドリブンな動画制作は、もともと創業時から考えていたことなのでしょうか。

近江:創業時からではありません。BtoBビジネスにはやはり何か新規性のある軸が必要だということで、まだ誰もできていない分野で本気でデータを生かした動画作りをやり切れたらすごいよね、という話がある時期から社内で盛り上がってきたんです。

もともと動画制作の市場は、テレビCMなど数千万円規模の動画を制作する映像会社と、企業の会社説明会などで流れるような数十万円規模の動画を制作する会社に二極分化していて、その中間がぽっかり空いていました。

そうした状況がずっと続いていたところに、近年新たにオンライン動画の市場ができつつあるのですが、適正な価格で提供できるプレーヤーがいなかった。そこでViibarは数百万円規模のオンライン動画をメインで行うビジネスを拡張させています。

ですが、オンライン動画の市場はまだ始まったばかりで、作りたくてもどうすればいいかわからないと言う企業のご担当者が多くいらっしゃいます。作った動画をFacebookに投稿したほうがいいのか、Twitterに投稿したほうがいいのか、YouTubeにチャンネルを作ったほうがいいのか、どういう動画ならブランド力が高まるのか、といったノウハウが溜まっていません。

ですから、まずどういう目的で、何を解決するために動画を作りますか? といったコンサルティングから行っているのが今のViibarのビジネスの流れです。

Viibarでは動画制作、配信、効果検証までワンストップでオンライン動画のすべてを承ります。インターネットでバズっても、本当にその動画を見て購入につながったのか、認知は拡大したのか、好感度は上がったのかというところまで企業の担当者は厳しくチェックしますので、動画配信後の効果まで一緒に考えることが必要だと考えています。

動画制作に迷っている企業の背中を押す情報発信を

株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

──ビジネスの変化やプレスリリースをはじめとする情報発信を通じて動画マーケティングをリードしていく姿勢がとても伝わってきます。

近江:プロダクト広報は特に、最終的に受注につながらないと意味がないと私は思っています。

こうした成功事例や動画制作のノウハウ、注目のクリエイター情報などをコンテンツ化して積極的に発信することで、オンライン動画の必要性を感じていながら「どうやって作ればいいかわからない」という企業が、一歩足を踏み出すための環境を作っていきたいと思っています。

コンテンツ化しておけば、メディアや記者の方にもまとまった情報としてお伝えできます。

さらに、企業向けには季節に合わせた動画事例のお知らせなども積極的に発信していきたいですね。例えば、新卒採用の時期にはそのテーマにあった動画事例をご紹介して、「うちもやってみよう!」と思っていただけるような。CMは作っているけれどオンライン動画はまだやっていない企業や、テレビCMは予算的に作れないけれどオンライン動画なら手が届きそう…とお考えの企業はとても多いので、そういった企業に「これならできそう!」と背中を押すようなコンテンツを作っていければと思っています。

──とても参考になるお話を多岐にわたってしていただき、ありがとうございました!

企業ニュースのユニークポイントをメディアはどう見つける?~「ITmedia ニュース」編集部に聞きました

Interview_ITmedia

「Webメディアに記事にしてもらうには?」というPR担当者の疑問に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材するメディアインタビューの第3回。

今回は、IT分野のトレンドをいち早く伝える「ITmedia ニュース」編集長の本宮 学氏と、編集記者の片渕 陽平氏にお話を伺いました。

お話を伺った方

ITmedia ニュース
編集長 本宮 学氏
編集記者 片渕 陽平氏

一日に届くリリースは600通以上

──企業からのプレスリリースは、編集部にどのように届いていますか?

本宮(以下、敬称略):アイティメディア株式会社には、プレスリリース受付専用のメールアドレスが複数あります。IT総合情報ポータル「ITmedia」に属しているメディア宛てのほか、ネット上の旬な情報を幅広く扱う「ねとらぼ」宛てやITエキスパートのための技術情報メディア「@IT」など窓口は10ほどあります。(※)毎日プレスリリースが届く量は膨大で、600、700通ぐらい。多い日はもっと来ます。

片渕:多いときは1000通以上届くかな、というくらいですね。

本宮:その多くはニューズ・ツー・ユーさんのようなリリース配信サービス経由で届いたもので、企業から直接送られてくるものもあります。

我々の媒体は「ITmedia ニュース」という名前の通り速報媒体ですので、情報をいかに早くキャッチして記事を出せるかを媒体価値の1つに置いています。プレスリリースはそのための良い情報ソースの1つではありますね。

──1日数百通もの膨大なプレスリリースの中から、記事にする情報をどのように拾い上げているのでしょうか。

片渕:スピードが求められるので、選定に何十分もかけられるわけではありません。メールのタイトルをざっと見て媒体に合いそうなものをピックアップし、さらにメールの中身を見て記事の形に落としこめるかを検討するという2段階でセレクトしています。

──毎日リリースをチェックする時間は決めていますか?

片渕:入社して最初の頃は、意図的にプレスリリースをチェックする時間を作っていましたが、慣れてきてからは空き時間に目を通す感じです。

本宮:私も空き時間ですね。よく「いつ送ったら拾われやすいですか?」とか、「どういうタイトルにしたら目につきやすいですか?」という質問を受けますが、あまり関係ないと思っています。

重要なのは、単純に情報の中身と媒体に親和性があるかどうか。我々のような専門媒体にとって、毎日膨大に届くリリースの多くは自分たちの領域以外のもの、悪く言えばノイズです。ニュースソースはプレスリリースだけではありませんし、世の中のあらゆる事象に目を配っている中で、記事にするネタを探すのは砂の中から砂金を見つけるようなものです。

明確なメディアポリシーに照らし合わせて情報を取捨選択

──情報の中身と媒体の親和性については、具体的にどのように判断されるのでしょうか。

ITmedia ニュース 編集長 本宮 学氏

ITmedia ニュース 編集長 本宮 学氏

本宮:ITmedia ニュースは、「テクノロジーで世の中が変わっていく」という視点でITやインターネットのさまざまなニュースを伝え、ITへのさらなる関心や期待をもたらすことを目指してメディアを運営しています。

ITを取り巻く状況はものすごいスピードで変化していて、何をニュースとして取り上げるべきかは日単位や時間単位で刻々と変わります。その中で我々は、今このタイミングでどういう情報をどのような切り口で伝えたら世の中にインパクトを与えられるか、ということを第一に考えています。

片渕:ですからニュースリリースを拝見して記事にするかを判断するときに、いま本宮が申し上げたメディアポリシーと照らし合わせて合致するかどうかを考えることが多いです。

──記事にする情報を選ぶときに、他媒体で取り上げられているかは考慮しますか?

本宮:それは実際に記事を書く記者にもよると思いますが、これだけネットメディアが多様化した中、毎回確実に一番乗りの記事を出し続けるのは難しいとも思います。SmartNewsやGunosyをはじめとするニュースアグリゲーションサービスもいくつもありますし。

ただ、それらのキュレーションメディアに拾われたからといって、世の中すべてに伝播するわけではありません。仮に一番乗りでなくても、我々は自分たちならではの切り口で読者に向けて記事を出す価値はあると思っています。ニュースソースは同じでも、どのようにバリュー付けするかで媒体による記事の差は出てくるはずです。

新たにオリジナル特集企画の取り組みをスタート

──ITmedia ニュースらしい切り口で勝負ということですね。

本宮:はい。とはいえ、プレスリリースの情報に基づくニュース記事ばかりだと媒体の独自色が薄くなってしまうので、そういった速報ニュースもきちんと伝えつつ、最近ではITmedia ニュースならではの取材記事やオリジナリティのある特集企画を増やす取り組みも強化しています。

──オリジナルの特集に力を入れ始めたんですね。どのような取り組みか、ぜひ聞かせてください。

本宮:私は今年4月に編集長になったのですが、ITmedia ニュースはこれまで速報主体の新聞メディア的な文化で運営されていました。今、そこに雑誌的なコンテンツ作りを取り入れる試みを始めていて、6月に第一弾の「スタートアップ特集」を公開しました。

──特集用のネタはどういったところから探してくるのですか?

本宮:特集テーマがそのまま切り口になっているので、今回で言うと「“未来IT”で世界を変える すごい国産スタートアップ」というタイトルに沿った情報を編集者や記者が各々集めてきます。

例えば、最近よく目にする「IoT」(Internet of Things)や「VR」(Virtual Reality)といった新しいITで世の中を変えようとしている日本のスタートアップに関するホットな情報があれば、届けていただけると編集部としても嬉しいですね。

片渕:そうですね。僕の場合は、リリースを見て伺った発表会で名刺交換した方から、関係者や企業を紹介していただき、取材をしながら繋がっていくことが多いです。リリースや名刺交換がなくても、アタックしたい企業にはこちらから声を掛けることもあります。

──過去のリリースが、しばらくしてから特集の取材のきっかけにつながったりもしているんですね。

本宮:過去にプレスリリースで面白い情報を出していた企業に電話して、最新情報をヒアリングすることはしばしばあります。

「面白そうだけどわからない」リリースが気になる!?

──「面白い情報」というのは、どういうところがフックになるのでしょうか?

本宮:媒体の特性や特集テーマに合った情報というのは大前提ですが、私個人としての感じ方で言うと、プレスリリースは内容が乏しいほうがワクワクするんですよ。

──内容が乏しいほうが!? どういうことですか?

本宮:内容がきちんとしていて、これを元にすれば誰でもある程度の記事が書けそうなリリースって、どこの媒体でも似たような記事になるじゃないですか。でも、情報が全然足りてないのになんだか面白そうなリリースだと「片渕君、これ電話してちょっと詳しく聞いてみようよ」となりますね(笑)

片渕:そういうこと、よくありますね(笑)

本宮:面白そうなのによくわからないと、そのわからないところを確認したくなるんですよ。だから、あえてちょっと足りないくらいの情報量にしてみるのも1つの方法としてアリじゃないかと思いますけどね。

プレスリリース未満の情報に意外な面白さが

──なるほど。わからないと知りたくなるというのはジャーナリストらしいですね(笑)

本宮:プレスリリースって基本的に書き方がきっちりしていますよね。でも、おそらくプレスリリース未満の小ネタ情報のほうが我々としては面白いんですよ。

我々がある情報を記事にするかしないか判断するのと同じように、企業でもどのような情報をプレスリリースにするか判断していると思いますが、その判断から漏れたような情報も見えるようにしたらきっと面白いのではないかと。

例えば、うちの社長は毎日セグウェイで出社しています、みたいな情報ってわざわざプレスリリースにはしませんよね。でも、メディアがそれを知ったら「なんでなの?」と聞いてみたくなるかもしれない。

片渕:そういう話題は、取材で広報の方とお話ししているときに出てくるんですよね。取材では、そういった余白から顔を覗かせるちょっとした話題が大事です。

ソーシャルメディアの情報発信にも注目

本宮:今はソーシャルメディアで気軽に情報発信できますし、我々もTwitterで見つけたトピックを取材して記事にすることも少なくありません。メディアに取り上げられるかどうかを問わず、ぜひ何らかの形で発信したほうがいいと思います。

片渕:Twitterはよくチェックしますね。企業アカウントに限らず一般のアカウントも含めて。

今は一般ユーザーの一人一人がメディアになれる時代で、スマホがあれば誰でもニュースを全世界に発信できる。NHKの記者が全国にいるのと同じように、Twitterのユーザーも一人一人が記者だと考えると、ものすごいメディアソースになると思うんです。

それぞれの人がリアルタイムで見聞きした情報を発信して、大勢の人が共感しているなら、それは十分ニュースとして成立している。ですので、TwitterやYouTubeなどの情報は特に注目しています。

──TwitterやYouTubeでの情報発信なら、ベンチャー企業や中小企業でもできることがたくさんありそうですね。

本宮:そうですね。例えば片渕がTwitter経由で取材をしたものに、新しく決まった五輪エンブレムのデザインを幾何学的に分析したツイートを報じた記事があります。これを企業が参考にするとしたら、世の中でそのとき話題になっている事柄に対して、その企業ならではの知見や技術で絡んでみるというのも1つの方法ではないでしょうか。

取材対象が個人アカウントだと記事にするに当たって裏取りや信頼性の担保にかなり気を遣いますが、企業や大学のアカウントならばある程度信頼を置けて、記事も書きやすいと思います。

電話取材のしやすさもカギに

──これまでのお話を聞いていて、とても基本的だけど案外見落としがちな点として、メディアからの連絡のしやすさも重要だと感じました。

ITmedia ニュース 編集記者 片渕 陽平氏

ITmedia ニュース 編集記者 片渕 陽平氏

片渕:面白そうな情報を発見してこちらから企業に連絡を取りたいときに、電話番号がなかなか見つからないケースはありますね。プレスリリースを見て一歩踏み込んだ取材をしたいときに、電話で直接お話を聞くのは非常に大事なことですので。連絡先の電話番号が見つからないとけっこう困ります。

本宮:企業サイトに電話番号が載っていないこともありますし、ベンチャー企業などの場合は固定電話がないこともあります。そうすると手間がかかりますね。メールで連絡してもいいのですが、それだといつ返事をいただけるかわからないので。

片渕:速報性を考えると、やはり早く連絡が取れるに越したことはないですし、電話なら分からないことはその場で聞き返すこともできます。メールだと何往復もやり取りする必要が出てしまいますので。それに電話で直接お話をうかがえば、先ほど申し上げたようなリリースに書いていない面白い小ネタも聞き出せますから。

本宮:プレスリリースにない追加情報のほうが、記事タイトルにしたときに人を引きつけるフックになることも多いですからね。

ユニークさは外部との視点のギャップによって見つかる

──プレスリリース未満のネタにも、そのように目を配っているんですね。

本宮:わけがわからないことって面白いじゃないですか。

我々は新しいトレンドや、まだ世の中にないものを発信していく専門メディアとしての視点を持っているので、新しい何かを生み出しているところに注目するんです。

新しい物事って、最初はだいたい他人が見ても何なのかよくわからないですよね。ですから、全ての人に理解されなくてもいいから何か新しさのエッセンスを感じさせるような情報の種があるといいなと思いますね。

──そういうニュースはどのように作って、メディアの方々に知ってもらえばいいのでしょう。

本宮:「作る」と言うと難しいですね。ナチュラルにやってほしいんです。

やり手のPRマンが練った“記者が食いつきやすい企画”に対して「据え膳食わぬは…」みたいに食いつくばかりというのも、ねえ。そういうものもけっして悪くはないですし、中には面白いものもありますが、どちらかというと企業が日々ナチュラルに情報発信している中で、我々から見たらそれ面白いじゃん! というネタを追わせていただいたほうが、媒体のオリジナリティにもつながりますし、かつ読者にとって有益な情報になるのではないかという思いがありますね。

──作為的にならないのが一番難しいですね(笑)

本宮:そうですよね。だからこそ、御社のようなプレスリリース配信サービスやPR代理店に期待するのは、クライアント企業とコミュニケーションして第三者的な視点でその企業のユニークさを見つけてもらうことです。

社内の人たちは普通だと思ってやっていることでも、第三者から見るとヘンで面白いことっていろいろあるじゃないですか。そういった情報を見つけて、完全な情報でなくてもいいので見えるところに出してくれたら、我々はそれを見つけに行きます。

ITmedia3

──外部から見たギャップによってユニークポイントは見つかる。おっしゃる通りですね。楽しいお話をありがとうございました!

オウンドメディアやSNSを活用したネットPRで企業は何をどう伝えればいい?話題を体系的に組み立てている株式会社TOLOTのノウハウを取材しました

eyecatch

少し前に、「2016年のネットPRで押さえておきたい3つのポイント」の記事で、「PESO」というキーワードを紹介して、ペイドメディア、アーンドメディア、ソーシャルメディア、オウンドメディアを活用した多角的な情報発信が重要であるとお伝えしました。

でも複数のメディアを管理・運営するのは大変で、「どれかがつい疎かになってしまう」、または「ネットPRを始めたいが何から手をつけていいかわからない」という声が多く寄せられてもいます。

そこで今回は、ニュースリリース、Twitter、Facebook、Instagram、ブログメディアなど、いくつものメディアを使って円滑に情報発信を行っている株式会社TOLOTのPR・マーケティングご担当者様に、どのようにネットPR活動に取り組んでいるのかを伺いました。

TOLOTサービス画像

スマートフォンアプリで簡単にオリジナルフォトブックが作成できるTOLOT

お話を伺った方
田崎 豪介氏 株式会社TOLOT セールスプロモーション

ワンソース・マルチユースで、メディアごとに情報量と表現を変えて発信

──多角的な情報発信を行おうと思っても、複数のメディアをなかなか使いこなせないと感じているPR担当者が多い中で、TOLOTではどのようにメディアを使い分けているのでしょうか?

田崎(以下、敬称略):今、企業がパブリックリレーションズやマーケティングで活用できるメディアが多数ある中で、重要なのは、伝える情報に関して「誰に向けて」「何を伝えるのか」をきちんと意識的に組み立て、それを各メディアの特性に応じて割り振っていく包括的な視点だと思います。

当社では、メディアごとに別々に運用するのではなく、ワンソース・マルチユースの考え方で、例えば情報のボリュームを分けて発信しています。具体的には、ブログの情報を100%だとすると、お客様にお送りするニュースレターはそのうちの30%ぐらいのサマリーを記して、ソーシャルメディアではフックになる10%だけをお伝えする。コンテンツの構成もそれを前提に作ります。

各メディアの特性については大まかに、ブログは自分たちの伝えたいことが、演出も含めて100%表現できる場所で、ニュースリリースは、演出要素を省いた最もプレーンで純度の高い情報。ソーシャルメディアは、Twitterは140文字という制限の中できちんと言葉が立っていることが重要で、Facebookは画像とテキストのバランスが大事、Instagramは写真の質と捉えています。

またInstagramに関しては、当社からの情報発信だけでなく、たくさんのユーザーの方々が「#TOLOT」のハッシュタグで自作のフォトブックの写真を投稿してくださっていて、それが最も訴求力の高い情報になっています。非常にありがたいことだと思っています。

TOLOT様が運営するオウンドメディア・ソーシャルメディア

スタッフ全員がすべてのメディアに携わり、効果測定を共有

──スタッフ何人ぐらいで運用しているのでしょうか?

田崎:6人です。男女はちょうど半々ぐらい。ソーシャルメディア担当やニュースリリース担当というふうにメディア別に役割分担しているのではなく、コンテンツごとに責任者を決めて、ブログ記事の執筆からソーシャルメディアでの情報発信まで全体的にコーディネートするようにしています。

というのも、メディア別に担当を割り振ると、例えばFacebook担当者はFacebookのことしか考えなくなってしまう。

責任者がまずやることは、伝えたい情報を、コンテンツとして成立させ、伝えたい人に届ける最適な手段を考えること。大まかな内容は全員で練りますが、具体化な作業は、ほぼ一人で行います。

ネットのメディアは情報発信の結果がすべて数字で見えるので、各自が仮説を立てて試した結果は必ずグループ内で共有するようにしています。その過程は社内ナレッジを高めるために非常に重要で、これをくり返すことでPDCAが機能します。

大事なのは文脈とその組み立て方

──一人一人が全体を見られるような仕事の配分にして、なおかつフィードバックを必ずみんなで共有しているんですね。

田崎:情報を届けるためには、当然いろいろなメディアのことを知っていなければなりませんが、メディアをめぐる状況は数年のスパンで激変していて、個々のメディアを深く研究しても2、3年後には何の役にも立たなくなってしまう可能性がある。

ですから、伝えたい情報を対象の文脈に合わせて体系的に導き出し、それをコンテンツにできる能力があれば、FacebookやTwitterなどに変わる新たなメディアが出てきた際も対応することが可能になります。

ターゲットごとに「主語」と「結論」を設定

──重要なのは、発信する情報の組み立て方。一体どのように組み立てているのでしょうか。

田崎:例えば、ターゲットによって「主語」と「結論」が異なるという原理原則が、まずはあると考えています。すでにTOLOTの会員になっていただいているお客様にお伝えする情報の主語は「TOLOT」でかまいませんが、競合他社を含めて情報を求めている方にとっての主語は市場をさす「フォトブック」になります。

さらに、フォトブックサービスを知らない潜在層に向けた情報では、主語は「TOLOT」でも「フォトブック」でもなく、その人たちの生活シーンの中にある“何か”になって、結論としてフォトブックというサービスに関心が湧くような話題が提供できればいいと思っています。

情報発信するコンテンツの考え方(TOLOT様ご提供資料)

情報発信するコンテンツの考え方(TOLOT様ご提供資料)

印象に残してほしい象徴的なキーワードを定める

──誰に伝えるか? によって「主語」と「結論」を明確に分けているんですね。

田崎:サービス側の都合としては「自分たちのお客様になってほしい」「買ってほしい」という結論にすぐ飛びついてしまいがちですが、長期的に段階を踏んで最終的なゴールに至っていただくことも戦略的に必要です。

コンテンツの目的設定も低くなることで営業的な影響も低くなりますが、その代わり主語の対象が増えれば多数の人と接点を設けることが可能になります。ソーシャルメディアはそれを自分たちでコントロールできることが最大の魅力です。

また、情報は必ずしも「TOLOT」というサービス名を覚えてもらう必要はないと考えます。

例えば外食するとき、よく行くお店でも店名を覚えていないことって多いんですよ。けれど、人を食事に誘うときに「あのハンバーグのお店に行こうよ」と言うだけでお互い把握できることもある。名称を知らなくても、自社のサービスを象徴するキーワードを2つか3つ覚えてもらえば、検索でかなりの確度でたどり着いてもらえる。

ですからコンテンツを作るときは、カギとなるワードをいくつか定めて、文章を書くときもほぼすべての単語に対して定義が適正か検討しています。実際、弊社サイトの検索流入キーワードで「500円」「スケジュール帳」「アルバム」などサービス名やフォトブック以外のワードが上位にいます。

情報の受け手との距離感や関係の深さを見極める

──カギとなるワードを定めて、道順にビスケットの欠片を撒くみたいに段階的に情報発信を重ねているんですね。

田崎:情報発信の対象を「潜在的な顧客」「顧客」「ロイヤルカスタマー」に分けて考えると、対象によって有益な情報は異なります。対象人数は「潜在的な顧客」が最も多く、必然的に主語はサービス名とはかけ離れていきます。

反対に「ロイヤルカスタマー」の方々に向けた情報の主語はサービスと直結したワードになります。そのように、情報の受け手にとって「有益な情報とは何か?」ということを、顧客ステータスを軸にしたマトリックスを作ってコンテンツを企画しています。

会員数100万人を超えたら情報発信に変化が必要に

──かなりシステマチックに情報の組み立てを行っているんですね。

田崎:当社のサービスも、おかげさまで会員が200万人を超えました。サービスの黎明期は、とにかく一人でも多くの方に知っていただくことが目的で、情報発信もシンプルだったのですが、会員数が100万人を超えたあたりから新規のお客様を増やすための話題だけでなく、既存のお客さまとのエンゲージメントを高めることも重要になってきました。そのあたりから、体系的に考える必要性が出てきたんです。

有益な情報を定義していくと、サービス以外の情報も必然的にコンテンツになっていきます。私たちのサービスはスマートフォンを使ったサービスで、なおかつ写真が必要なので、スマートフォンの操作でわからないことがある人に向けたお役立ち情報や、写真の撮り方に悩んでいる人に向けてのハウツー情報などがそれに当たります。

赤ちゃんをかわいく撮るための「10の基本」画像

赤ちゃんの写真のかわいさをもっと引き出せる!スマホで撮影「10の基本」撮影編など、ハウツー情報を発信している

新規開拓は伝える相手の日常の関心事を基点に話題を提供

また、新規のお客様を増やすための情報発信では、サービスが直接的にもたらす価値だけでなく、間接的な付加価値を伝えていかなければと思っています。

コミュニケーションツールとして語るのであれば、お母さんがお孫さんの写真をフォトブックにしてプレゼントすることでお姑さんとの関係構築にもなりえます。それがプリントせずとも見られる写真をあえて形にする目的になると考えます。

──先ほど、ターゲットによって「主語」と「結論」が異なるというお話で、潜在的なお客様に向けては「その人たちの生活シーンの中にある“何か”」が主語になると言っていたのは、具体的にはそういうことなのですね。

フォトブックサービスの機能強化と情報発信の相乗効果

田崎:そうです。その延長で主語をコンテンツだけでなく、サービスとして提供することもあります。今年の2月からスタートした、赤ちゃんの成長を月齢ごとに記録できる「マンスリーベビーアルバム」です。おかげさまで、これが非常に大きな反響をいただいたのですが、それだけでなく、これによって「成長記録」というワードでマーケティングができるようになったのが非常に意味のあることだと思っています。フォトブック以外でTOLOTのサービスを知っていただく入り口になりますし、提供できる情報の幅が広がってきました。

マンスリーベビーアルバム画像

赤ちゃんの成長を月齢ごとに記録できるマンスリーベビーアルバム

──情報発信とサービスの企画がそのような相乗効果を生んでいるんですね。このたびはいろいろと貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

お話いただいたポイントをまとめると、

  1. まずは「誰に、何を伝えるか」を、情報の「主語」と「結論」を定めてしっかり組み立てる
  2. それをブログ記事やニュースリリースの文章にする
  3. 情報をもとにマルチユースでメルマガやFacebook、Twitterに活用する

という手順でネットPRを行うと良いようです。

さらに、まだ接点がない潜在的なお客様に向けた情報発信では、主語は「その人の生活の中にある“何か”(興味関心があること)」とし、結論は自社の製品・サービスを含む市場の有益性に導く。受け手に覚えてもらいたい象徴的なワードを2つか3つ設定する、というようにシステマチックにトピックを組み立てる方法も参考になります。

というより参考にしたいお話が満載すぎて、上のように簡単にまとめてしまうのはもったいないほどです。時間を置いて何度か読み返し、じっくり吸収していきたいと思いました。

以上、みなさまのネットPRにもお役立ていただけると幸いです。

取材したくなるリリースの特徴はなんですか?朝日新聞出版「dot.(ドット)」に聞きました

取材したくなるリリースの特徴はなんですか? ~朝日新聞出版「dot.(ドット)」に聞きました

取材したくなるリリースの特徴はなんですか? ~朝日新聞出版「dot.(ドット)」に聞きました

「Webメディアにニュースとして取り上げてもらうには?」というPR担当者の声に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材して効果的なメディアリレーションのあり方を探るメディアインタビュー。

2回目は、朝日新聞出版が運営するニュースサイト「dot.」のプロデューサー・北元 均氏と、記者&編集者の金子 哲士氏にお話を伺いました。

お話を伺った方
ニュースサイト「dot.」
プロデューサー 北元 均氏
記者&編集者 金子 哲士氏

スタッフは週刊誌や雑誌で活躍するベテラン揃い

──dot.でオリジナル記事を制作している編集者や記者の方は、何人ぐらいいらっしゃいますか?

北元(以下、敬称略):社内の編集者と外部スタッフの編集・ライターさん合わせて、だいたい10人ぐらいですね。人数は流動的ではありますが。

金子:ライターさんは私が『週刊朝日』編集部にいたときにお付き合いがあった方々や、専門分野の記事は、例えばサッカーならサッカージャーナリストの編集長レベルの方に書いていただいています。予算的に大人数を抱えられず、人員は少ないですが、いずれも実力のあるベテランの方々ばかりです。

──ベテランの方々も、プレスリリースから記事のネタを拾うことはあるのでしょうか?

金子:企画記事をつくるときの参考にはすごくしています。リリースの情報をそのまま記事にするのではなく、あるテーマで3本ぐらいのリリースに横串を通して記事化したり。

例えば季節のテーマで「お花見」の記事を書くときに、花見で使える新商品をいくつか集めて紹介するような形です。Webの記事は紙媒体と違って文章が長いと読んでもらいにくい傾向がありますが、グッズなどを3つぐらいポンポンポンと配置するとテンポがよくなって読みやすくなるので、そういった記事の作り方はわりと多いですね。

北元:製品発表会や記者会見などのリリースは、内容を見て取材モノとして成立すると思ったら、まずは記者に行ってもらいます。

ニュースサイト「dot.」 プロデューサー 北元均氏

ニュースサイト「dot.」 プロデューサー 北元 均氏

──dot.の編集部には毎日どのようにプレスリリースが届いていますか?

北元:ニューズ・ツー・ユーさんのようなリリース配信サービスから編集部のメールアドレスに送られてくるものと、編集部のFAXに流れてくるもの、郵送で届くもの。ほかに、名刺交換させていただいた方が直接個人宛に送ってくださることもあります。

金子:一度お会いした方だと、顔が浮かぶので目にとまりやすいですね。お電話いただいて、ご挨拶で一回お会いしてからメールで送っていただくこともけっこうあります。

──郵送のプレスリリースもまだありますか?

北元:今も必ず郵送で送ってこられる会社が2、3社あります。映画の試写状やイベント招待なども郵送が多い。でも、ほとんどはリリース配信サービス経由のメールで、1日に100通、200通という量ですね。

金子:そういう状況なので埋もれて見逃しているリリースも多いんですよねぇ。

タイトルは包装紙のようなもの。人目を引く工夫を

──その中でも思わず開いてしまうリリースは何が違うのでしょうか?

金子:タイトルが面白いかですね。リリースも記事と同じで見出しは大事ですよね、包装紙みたいなものですから。PR会社の方からよく同じ質問をされますが、全体的にタイトルが長すぎて何が言いたいのか一目で掴みにくいものが多いので、タイトルをもっと工夫されると良いのではと、いつもお話させていただいています。

──タイトルをつけるときのコツを教えていただけますか?

北元:記事につける見出しは、だいたい三十数文字ぐらいまでが一般的。リリースのタイトルも、Webやメールで見られることを考えれば同じくらいがいいと思います。メールはメーラーで見るので、デバイスや画面設定によって件名に表示される文字数は違いますが、それでもやはり三十数文字以上は読んでもらえないのではないでしょうか。

金子:タイトルは「短く、わかりやすく」が基本ですが、記事の場合は「全部言い切らない」という方法がよく使われます。見出しで全部言い切ってしまうと記事を見ずに満足されてしまうので、「何だろう?」と思って中身を確認したくなるタイトルを心掛ける。そういうのはニュースリリースにも応用できるのではないかと思います。
ただし、顔見知りの担当者から届いたリリースのタイトルが思わせぶりだったら、ちょっとイヤかもしれません(笑)。その場合はストレートにわかりやすい件名で送ってもらったほうがいい。ですので、そこは書き分けが必要かもしれませんね。

社会性と結びついたリリースに注目

ニュースサイト「dot.」 記者&編集者 金子哲士氏

ニュースサイト「dot.」 記者&編集者 金子 哲士氏

──記事として取り上げやすいのはどのようなリリースでしょうか?

金子:季節や時流を捉えたものですね。上手な人は、そのとき最もタイムリーなキーワードと絡めてリリースを送ってきます。最近の話題で言うと「保活」とか。タイトルにそういう文字が入っていると中身が気になりますし、先ほどお話した企画記事の参考になるかもしれないので目を通す可能性が高い。

北元:客観的な調査データが織り込まれたリリースも取り上げやすいですね。ただし、最初から結論ありきで取ったアンケートではなく、社会性と客観性があるデータに限ります。露骨に宣伝っぽいと、僕らの立場では取り上げにくいんですよ。

金子:2月に掲載して反響が大きかったマスクの意外な着用理由の記事は、リリースが元で生まれたものですよね。

“伊達マスク”着用理由1位は「顔が隠せる」ではない! 意外な1位とは? 〈dot.〉|dot.ドット

じわじわと増え続けている”伊達マスク”愛好者。そもそも伊達マスクとは、本来の衛生上の理由とは異なる目的で常にマスクを着用することを指す。いわゆる伊達メガネと同じカテゴリーとしての伊達マスクだが、伊達…

北元:あれは季節性があり結果が意外だったことと、客観性のあるデータだったので、記事に使ってもいいだろうと判断して書き起こしてもらいました。
ほかにも定期的に調査を行っている企業があれば、記事のネタ探しで見に行くライターさんは多いですよ。ミキハウスさんやベネッセさんが子どもに関するアンケートを定期的に行っていますし、最近は旅行予約サイトが旅に関するアンケートをよく行っていて、「○○に行ったら何を食べたいですか?」みたいな話題は記事に使いやすいですね。

──季節や時流と結びついていたり、社会性のある調査データなど、自社の宣伝にとどまらず公共性が感じられることが重要なんですね。

金子:今はよほどニュース性が高い話題でないと、一社だけではなかなか記事にしにくいんですよ。

北元:ステマ問題があるので、リリースを見て記事にしたいと思っても、単独で取り上げると広告と間違えられるかもしれないということを最近は意識するようになりましたね。ニュース性が高ければ一社だけでも取り上げますが、コモディティ化した分野などは単体で記事に取り上げにくくなっています。

金子:こちらで面白いと思って取材して書いた通常の記事でも、コメントにステマと書かれたりするんですよ。ステマじゃないのに。

北元:お金いただけるなら欲しいですよ(笑)。でも本当に最近そういうケースが増えて、読者の方々が広告記事かどうかをとても気にして見ているのがわかります。

“現場の声”を拾って取材のきっかけづくりに

──ところでdot.では、どのような視点で記事の企画を考えていらっしゃるのでしょうか?

北元:分野を絞らずに幅広い人たちが興味を持ちそうな話題を取り上げています。新製品や新オープンなどのインフォメーション記事ではなく、そこに専門家の分析が加わったり、開発の裏話やストーリーを伝えて読み応えのある記事を多く出すようにしています。

金子:開発に成功するまでにどういう紆余曲折があったかといった現場の話はおもしろいですよね。そういう秘話をいろいろ仕込んで、リリースにひと言添えるといいのではないでしょうか。詳しく説明しなくても、一文程度でいいので。

北元:我々は広く一般の方が読まれるメディアですので、専門誌や業界誌が取り上げるようなレベルの難しい話ではなく、開発秘話といっても一般の人が興味を持って理解できる話題ですね。

速報メディア、深掘りメディア、専門(業界)メディアに分けてリレーションを

プロデューサー 北元均氏と 記者&編集者 金子哲士氏

金子:ですから、メディアのカテゴリーごとにリリースを書き分けたほうが本当はいいんでしょうね。とても手間がかかると思いますが、実際にやっているPRの方はいらっしゃいますから。

北元:例えば、リリースに書かれた内容をそのままインフォメーション的に報じる速報主体のWebメディアには、見てすぐ記事が書けるようなリリースを送るといいのだと思います。
我々のように企画や取材で深掘りして伝えるメディアには、裏話や取材できる人物に関する情報をひと言添える。業界向けの専門メディアには、より専門的な情報を書くというふうに、上手く書き分けられるなら2段階、3段階に分けて考えるといいのかもしれません。

──なるほど。ほかにも記事にしやすいリリースの書き方のアドバイスがあれば教えてください。

金子:リリースに盛り込む情報は絞ったほうがいいと思います。上手な方は、メディアが取り上げやすいポイントの目星をつけて、そこをギュッとわかりやすく書いています。情報を盛り込みすぎるとピントがぼやけて結局何が言いたいかわからなくなり、どこにも刺さらなくなってしまう。

北元:反対に書くことが見つからず、知らせたいことはタイトルですべて言い切っていて、前文も本文もタイトルの内容を膨らませて同じ話をくり返しているリリースも少なくないですよね。何を書いていいかわからないのだと思いますが。

金子:そういう場合は、市場の話題や業界事情を書くといいかもしれません。新商品の市場規模が今このくらいで、どのように拡大していて……という俯瞰的な情報ですね。ある商品やサービスを紹介するときに、メディアは競合や市場の動向、海外事情の話題をよく記事に入れ込みますし、そういった情報がリリースにあれば取材の参考にもなります。

北元:ベンチャー企業や中小企業で、大手企業のように年に何本もニュースになるような話題がない場合は、経営者の人柄がおもしろくて記事になる場合がありますので、その方面をアピールしてもいいかもしれませんね。今なら大手の電機メーカーからスピンアウトして会社を興された方の話などは記事になりやすいと思います。

北元様、金子様、ありがとうございました!

まとめ

今回の取材で伺った、記事に取り上げられやすいリリースの書き方のポイントを以下にまとめます。

1. タイトルで読んでもらえるのは三十数文字ぐらいまで。短く、わかりやすく。
2. 一斉送信リリースのタイトルは、「何だろう?」と思わせる書き方も有効
3. 季節や時流のキーワードと掛け合わせて話題性をつくる
4. 調査リリースは社会性、客観性のあるデータを提供
5. 開発秘話や開発者情報をひと言添える
6. リリースの訴求ポイントを絞り、情報を盛り込みすぎない
7. 市場や業界動向、海外事情も織り交ぜるとニュース性が高まりやすい
8. ベンチャーや中小企業は経営者の人柄がニュースになることも
9. メディアの特性に合わせてリリースを2、3パターン書き分ける

市場調査は、潜在顧客の発見とメディアへの話題提供に活用できて一石二鳥。Webサービスやアプリを提供している会社は、自社データの知見をリリースで告知して社会に役立てることが有効なメディアリレーションにつながります。

以上、みなさまのWebメディアリレーション活動にぜひお役立てください。

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか?東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか? ~東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか? ~東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ソーシャルメディアで自社の話題がバズったとき、広報担当はどう対応すればいいのか?

さまざまなケースがあるため一概に「これが正解」とは言えませんが、ポジティブな事例のひとつとして、2016年2月に学生がTwitterに投稿した卒業制作の「書き時計」(正式作品名:Plock[プロック])が大反響を呼んだ東北芸術工科大学のご担当者様に、当時の広報現場についてお話を伺いました。

お話を伺った方
滝口慶太氏 東北芸術工科大学 入学広報課(※2016年3月時点)

Yahoo!リアルタイム検索の通知で2時間後には情報をキャッチ

──ネットで「書き時計」が話題になっているのを知ったのは、いつ、どのようにでしたか?

滝口氏(以下、敬称略):制作した学生がTwitterに「書き時計」の動画を投稿したのが2月7日の16時頃。日曜日で大学は休みでしたので私は家にいて、たまたま18時ぐらいにネットを見たらYahoo!のリアルタイム検索の通知がきていました。滅多にはないんですが、大学の先生がテレビ出演したときなどに大学名が注目ワードに上ることがあるので、キーワード登録していまして。当日は、その時点ですでに1万5千以上リツイートされていた記憶があります。

書き時計

書き時計(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

──大学の話題でバズが起きたときの対策は、事前に決められていましたか?

滝口:今回の件は、いわゆる危機管理ともちょっと違って、対応に関してはまったくの手探りでした。翌日どのように対応するか、大まかなプランは日曜の夜に考え、月曜の朝8時頃には大学の上層部や彼の担当教員と話し合い、これからメディア対応をお願いする可能性がある旨を本人に伝えてもらったのが一つ。もう一つは、朝イチで広報のスタッフに、メディアに提供できる写真と動画を撮ってもらいました。

「書き時計」の動画は、本学のキャンパス(山形市)で2月9日(火)から開催される「卒業/修了研究・制作展」の一般公開前々日となる7日日曜日に投稿され、8日月曜日は学校関係者だけの内覧日だったので、多少余裕を持って対応の準備ができたのはタイミング的に助かりましたね(笑)

──バズが起きた翌日のメディア対応では、どのようなことを行いましたか?

滝口:地元の山形新聞さんが午前中すぐに取材と動画撮影にいらしたのと、学生が宮城県の出身なので、河北新報さんにちょうど別件でご連絡差し上げたついでにお話してすぐに来ていただきました。それから9時半ぐらいにwithnews(ウィズニュース)さんから電話をいただき、本人に電話取材をして昼までに記事を上げたいというお話だったので、学生へつないで写真はこちらが用意したものを提供しました。その記事をきっかけにバズがさらに加速して、NHKさんからも夜の「NEWS WEB」で放送したいとご連絡いただき、朝撮影した動画を提供してその日じゅうに放送されたのが月曜日の流れです。

写真に関しては、朝イチで撮ったものだけでなく、大学のパンフレット用に卒業制作の過程を写真に収めていた中に、たまたま彼の制作中の様子が何枚かあったので助かりました。

制作中の様子

制作中の様子(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

卒展の来場者は例年の約3倍近くに

──卒展の来場者数も、かなり増えたのではないでしょうか。

滝口:例年5,000人ぐらいだったのが、今年は1万4,000人ほどでした。駐車場に入るのに1時間待ちになるなど大学側も初めての体験ばかりでした。来場者は毎年地元の方が多いのですが、名古屋から時計を見にいらした方や、中には「僕が商標登録してあげるから」と名刺を置いていかれる方も。でも意匠等の登録は常日頃の授業でも学生に指導しています。

──マスコミの取材は、最終的にどのくらいになりましたか?

滝口:山形の地方局はNHK山形を含め全局。テレビのキー局は民放4局とNHKさん。番組名で言うと、「めざましテレビ」が土日の2日間来てくださって、それから「月曜から夜ふかし」と「Nスタ」、あとは大学が提供した画像・動画や、地方局が撮った映像を使って紹介してくれる形で「とくダネ!」「スーパーニュース」「スッキリ!!」「サンデーモーニング」等々、本当にたくさんのメディアで取り上げていただきました。とはいえ、現状まだすべて整理しきれていないのですが。

マスコミ対応では投稿した学生の負担軽減を配慮

──本当にものすごい反響だったんですね。

書き時計

書き時計(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

滝口:ですから今回最も気をつけたのは、「書き時計」を制作した学生本人に負担をかけすぎないことでした。やはり大学としては学生を守らなければいけませんので。本人に直接話を聞きたいというご依頼が殺到しましたが、彼に取材が集中しすぎないよう、ある程度のことは広報スタッフでお答えできる体制にしたり、Twitterなどで本人に直接依頼が来たときの返信用の定型文をこちらで用意して、必ず大学に連絡してもらうようにしていました。

本学には第一線で活躍する現役のメディア関係者やクリエイターの方々が教員に大勢いますので、イザというときは相談できる安心感はありました。今回も広報部長で企画構想学科准教授の片岡(※企画家・コラムニスト・戦略PRプロデューサーの片岡英彦氏)に報告と相談はしていましたので。特にバラエティ番組に取り上げていただく際の線引きのバランスと言いますか、許容できる脱線の按配のようなことは片岡とも話し合いました。

──「書き時計」が話題になって、地元での大学の評価などに変化はありましたか?

滝口:地元のメディアでは毎日のように芸工大(※東北芸術工科大学の地元での呼び名)のニュースが出ているので、特別に注目が高まるようなことはなかったんです。ところが今回、キー局で地元の大学が紹介されているのを観て、黒船効果で改めて見直されたというのはあると思います。キー局でテレビ放送されるたびに、「ネットで見たこの時計は、芸工大だったのか!」という驚きの声が、地元の方からよく聞こえてきました。ネットのソーシャルメディアで一気に広まった話題ではありますが、そういう意味ではやはり従来からのマスコミの力はものすごく大きいということを改めて感じました。

──2月9日(火)~14日(日)の山形キャンパスでの卒展終了後、2月23日(火)~28日(日)東京都美術館で開かれた美術科の卒業制作展で再展示しました。その決定はすぐに行われたのですか?

滝口:東京で開かれた卒展は、芸術学部美術科(日本画・洋画・版画・彫刻・工芸・テキスタイル・総合美術)が対象で、「書き時計」を制作した学生が所属するデザイン工学部の作品は本来展示しないのですが、再展示する話は山形展開催中の早い段階で行われていました。というのも、「東京でも見られますか?」という問い合わせの電話が鳴り止まなかったので。美術科の学生たちも「彼は作品の力でたくさんの人の心を惹きつけたのだから」と快く承諾してくれました。

東京展での再展示では実演時間をリリースで事前告知

──東京展での再展示は、「News2uリリース」でも告知されました。

ネット上で大きな話題となった卒業制作作品「書き時計」を2月23-28日に東京都美術館で再展示|東北芸術工科大学のニュースリリース

東北芸術工科大学のニュースリリース(2016年02月18日)ネット上で大きな話題となった卒業制作作品「書き時計」を2月23-28日に東京都美術館で再展示

滝口:地元メディアには直接告知を流しましたが、東京圏に対してどのように伝えようかということで、ニュースリリースを出させていただきました。Webメディアが取り上げてくれたり、インフルエンサーの方がTwitterでリツイートしてくれたりして認知の効果はあったと思います。リリースには「書き時計」の会期中の実演時間の予定も記載しました。あの時計は彼でないと動かせないので、本人の負担を減らすために書いておいたのですが、リリースで事前にスケジュールも広められたのは結果的に非常に良かったです。

他の学生や他大学の卒業制作にも取材の波及効果が

──「書き時計」が話題になったことで、大学の認知やメディアリレーションにどのような変化がありましたか?

滝口:地元での認知に関しては、東京のテレビ局で取り上げていただいたことで、地元の人たちが大学を再評価してくれたというのが大きいですね。メディアリレーションでは、今までつながりがなかったたくさんのメディアの方々とつながりを持つことができましたし、さまざまな波及効果もありました。

「書き時計」とともに他の卒業生の作品も取材していただいて、その中のある作品が企業の目に留まって商品化の話が具体化したり、また別の学生はメディアから卒業後もぜひ取材をさせて欲しいとお話があったり。「めざましテレビ」では、美大の卒業制作が大変面白いからぜひコーナー化したいと、他の芸術系・美術系大学への取材へと広がっていきました。本学だけにとどまらず、他の大学も含めて美大の卒業制作そのものにメディアが注目するひとつのきっかけになったのは嬉しいですね。

スタッフの情報共有と協力体制を日頃から整えておくことの大切さを実感

──ネットで突然バズが起きたことによるこのたびの広報対応を振り返って、浮かび上がった今後の課題などはありますか?

東北芸術工科大学 滝口慶太氏

滝口:今回たまたまバズが起きたのが日曜日で、かなり早い段階でネットの動きをキャッチでき、事前の心構えと準備の時間が持てたのは幸いでした。これがもし平日の昼間で、メディアからの問い合わせで初めて知ったという順序だったら、とても対応が追いつかなかったと思います。広報スタッフや上層部を含め、ソーシャルメディアに明るい方ばかりではないですので、ネットの動きを日頃どのようにチェックして情報を共有しておくかは課題のひとつですね。

広報体制としては、このたびのような大きな動きがあったときにヘルプしてもらえる人員が確保できるかも考えさせられました。本学では入学広報課の4人が他業務と合わせてWeb運営やメディア対応を担当しています。4人いたからなんとか回せましたが、広報担当が1人か2人という大学や企業でバズったらとても回せないと思います。2-3月で通常業務だけでも多忙な年度末に、希望にはできるだけ応じようと取材が一日に5社重なったりして、それに対応しつつ事務局にはその間も問い合わせの電話がひっきりなしに来る。そんな状況でしたので。日頃から部署内はもちろん、他部署の人たちとも業務の平準化や情報共有を意識的に行っておくことが必要かもしれないと思いました。

また私たち入学広報課は、ネットを通じてこれから大学受験を迎える高校生にいかにリーチするかを常に探っています。高校への出張説明会などを通じて、「書き時計」の話題をどのように知ったかアンケートを取るなどして、高校生がネットで情報をどのように取り入れているかこれから探ってみたいとも考えています。

滝口様、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

Webメディアに記事化してもらうには、どうすればいい? ~メディアジーン「gene」と「ギズモード・ジャパン」に聞きました

Media Interview "gene" & "ギズモード・ジャパン"

Media Interview "gene" & "ギズモード・ジャパン"

Webメディアの爆発的な発展にともない、「Webメディアに記事を書いてもらいたい」という企業のPR担当者からの声が急増しています。

そこでネットPR.JPでは、これからさまざまなWebメディアを訪問して、プレスリリースはWebメディアにどう届いているのか? Webメディアに記事にしてもらうにはどのようなメディアリレーションが有効か? を取材します。

第1回は、ライフスタイルや趣味などにこだわりを持つコアな読者に向けて多彩なメディアを運営するメディアジーンを訪問。女性メディアgene(「cafeglobe」、「MYLOHAS」、「GLITTY」)とギズモード・ジャパンの編集者お二方にお話を伺いました。

お話を伺った方

cafeglobe編集長代理 藤島 由希氏
キズモード・ジャパン編集部 鈴木 康太氏

編集部宛てのリリースはスタッフ全員でシェアし合う

──企業から届くプレスリリースは、ご覧になりますか?

藤島(以下、敬称略):私の場合、届いたリリースは自動的にフォルダに振り分けられるように設定していて、毎朝ひと通り件名に目を通します。そのほかに、過去に取材をしたり、名刺交換をした方から個人のアドレス宛てに届いたものは、午前に1回、午後1回チェックする感じですね。

鈴木:僕は日中デスクにいることが多いので、逐一メールフォルダをチェックして、目を引いたタイトルがあればちらっと内容を見ます。基本的には編集部宛てに送っていただくことが多いので、僕だけでなく一応スタッフ全員に届いています。

藤島:geneも、編集部のアドレスに送っていただいたリリースはスタッフみんなが見ていて、誰かが「これ、いいんじゃない?」とレコメンドしてくれたりします。

当社が運営する女性メディアgeneには、40代のラグジュアリーなキャリア女性を読者ターゲットとしたcafeglobe、ナチュラルなライフスタイルを志向する女性のためのMYLOHAS、東京で暮らすアラサーのトレンドリーダーに向けたGLITTYの3つのメディアがあります。

自分が担当するメディアのテイストとは違っても、「これ、GLITTYにいいんじゃない?」とか、「これはMYLOHASっぽいよね」と、メディアの特徴に合わせてスタッフ同士でリリースをシェアし合っています。

リリースの件名でクリックする/しない、その分かれ目は?

cafeglobe編集長代理 藤島 由希氏

cafeglobe編集長代理 藤島 由希氏

──メールで届いたリリースの件名にまずは目を通して、そこから開いて見たくなるリリースと、スルーしてしまうリリースの違いは何でしょうか?

藤島:読者が憧れるブランドやショップなどの固有名詞が入っているリリースは、名前が目に入った瞬間クリックします。「期間限定」「新」の文字が入った情報も、やはり気にはなります。

それ以外では、画像のクオリティやテイストがかなり重要ですね。女性メディアはビジュアルが勝負なので、リリースに添付されている画像のクオリティが高ければそのまま使えますし、ほかの画像をお借りするときも良い写真が借りられる可能性が高いですから。

鈴木:ギズモード・ジャパンの場合は、他のところにまだ出ていない独自の情報であるという点が最も重要です。

こう言ってはなんですが、リリースの情報はいろいろな媒体社さんに一斉送信されていたり、Web掲載されていたりして、もうすでに知られている情報なので、ギズモード・ジャパンでわざわざ記事にする必要がないわけです。

ですから、発表前に教えていただける独自のソースや、リリースには書いていないけれどギズモード・ジャパンのために特別にネタを用意しました、というようなエクスクルーシブな情報でないと正直、土俵にも上がらないと言えると思います。

逆に言うと、リリースの情報がマス向けであればあるほど我々には刺さらなくなってしまうので、他のメディアとちょっと違っていて、もしかしたら今回のインタビューの参考にはならないかもしれません。

藤島:geneでも、パッと見て「これはいろいろなメディアに載りそうだな」と思ったネタはやめています。情報のスピードよりも「らしさ」のほうを優先しているので、リリースを受け取って情報をそのまま記事化するのではなく、一拍置いてきちんと作り込んだ記事を提供するよう心掛けています。

ただ、GLITTYはトレンドネタをいち早くみんなで共有して楽しみたい世代が読者層なので、内容次第ではリリースの情報をもとに速報的な記事を作ることもあります。

──なるほど。配信されたリリースを受け取ってそのまま記事にすることはあまりないのですね。では企業のPR担当は、御社のメディアに対してどのようにメディアリレーションを行えばいいのでしょうか。

記者が体験・撮影できる場を提供してほしい

キズモード・ジャパン編集部 鈴木 康太氏

キズモード・ジャパン編集部 鈴木 康太氏

鈴木:プレスリリースの中でも別枠というか、送っていただけるとありがたいリリースもあります。イベントの招待や記者向けの取材会などのリリースです。そういう情報は、編集部内のメッセージングサービスで共有して、スタッフをアサインすることもありますので。

藤島:記者が実際に体験したり、撮影したりできる場をつくっていただけるとありがたいですね。

先ほど、女性メディアではリリースの添付画像が重要と言いましたが、例えば、ホテルの春のデザートフェアなどのリリース写真はどれも美しいけれど、できればそのまま掲載するのではなく、オリジナルの写真を掲載したいんです。小さな会場でかまわないので、撮影できて商品に触れられる取材会を開いていただけると、メディア側としては非常に助かります。

複数メディアが集まる会でもかまいません。撮影する角度が少し違うだけでも、他媒体とは違う切り口の記事が載せられますから。ショップなども、オープン前にプレス内覧会を開いて、その情報を事前に送っていただけるとありがたいですね。最近は、実際にそういう取材の場が増えています。

鈴木:大々的なイベントでなく、小規模でいいんです。小さな会場を借りて、体験コーナーがいくつかあって、我々がちゃんと時間を取って触ったり撮影したりできる空間を提供していただければ。

一つだけ注文を付けさせていただくとしたら、ちゃんとした写真が撮れるようにロケーションと照明に配慮していただけるともっとうれしいです(笑)

リリースの文面よりも画像のクオリティに凝ってほしい

藤島:ファッションやジュエリー、コスメなど、撮影するのが難しいものについては、画像のクオリティが高くてバリエーションがいろいろあると非常に助かりますし、掲載の確度が上がります。商品のテイストがメディアとマッチするかも、世界観がわかる写真が添えられていれば感覚的にすぐにわかります。

鈴木:リリースの文面に凝るよりも、画像を1枚増やしたほうがお得ですね。

藤島:その通りです。特に女性メディアには、情報が可視化されているほうが響くと思います。

動画が付いていると二重に助かる

──写真だけでなく、今は動画付きのリリースも増えています。

藤島:動画付きは最近よく見ますね。最近も、ぺんてるさんが配信したリリースに、自社の折れないシャープペンシルの芯で人気イラストレーターさんにイケメンゴリラのシャバーニを描いてもらった動画が添付されていて、ユニークな動画だったので、GLITTYで記事として掲載しました。プロモーション動画でも、こういった驚きのあるものは読者にも喜ばれますね。

え? こんなイケメン初めて会ったかも(しかも絶対やさしい) | GLITTY

え? こんなイケメン初めて会ったかも(しかも絶対やさしい)。コンセプトは「ガールズ サヴァイバル」。だれよりも早くトレンドをおさえたい、いつもおしゃれできれいでいたい女性のためのメディアです。

鈴木:動画はあると助かります。1分半~2分ぐらいの短い動画を見れば、それがどういうもので、どういう大きさで、どう動いて、どんな人の役に立って、といったことがわかる内容なら、我々も商品の特性を理解できますし、Youtubeなどに上がっていれば記事にそのまま埋め込めるので、二重に助かります。

メディアの特性にマッチしたネタを個別に届けてほしい

藤島:でも、やはり一番確度が高いのは、geneの各メディアの特性を理解して、それぞれに合った情報を届けていただくことだと思います。

例えば先日、企業のご担当の方から直接電話で、商品を作っている女性社長が南米から来日するので、インタビューにいらっしゃいませんか?とオファーをいただきました。「cafeglobeは、素敵なキャリア女性をよく取材されているので、合うんじゃないかと思いまして」と言われたので、概要を伺ったら「まさにぴったりです! よろしくお願いします」という内容で(笑)。そんなふうに、個別にぴったりの話題を紹介していただくと、こちらとしても大変ありがたいです。

鈴木:ギズモード・ジャパンでも、いつも読んでくださっているメーカーの製品担当の方から、こういう情報があるんですけれどギズモードさんに合うのではないかと思って、とネタを直接持ち込んでいただくことがあります。そういう個別情報は強いですね。こちらとしても、この人はギズモード・ジャパンのことをちゃんとわかってくれていて、情報をくれたんだと思うと嬉しいですし。

──いきなり連絡しても、大丈夫なものでしょうか?

鈴木:見せていただけるモノやサービスが面白ければ、面識がなくても構いません。ベンチャーや中小企業のようにメディアリレーションの経験がないところは、自社のプロダクトに最もマッチするメディアを選んで、決め打ちでアプローチしてみるといいのではないでしょうか。ギズモード・ジャパンは、そういった方々からの連絡もわりと多いです。

リリースを送るタイミングは?

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藤島:女性誌などの紙の雑誌の場合は、だいたい1ヵ月半から2ヵ月前ぐらいにリリースを送るといいと言いますよね。Webメディアの場合は、記事をアップする日の1週間~10日前ぐらいには取材をさせていただきたいので、掲載日の2~3週間ぐらい前に届くのがちょうどいいのではないでしょうか。

鈴木:内覧会や記者発表会の場合は、もっと早くてもいいですね。早いほうが確実に記者の予定を入れられるので。

藤島様、鈴木様、どうもありがとうございました!大変参考になりました。

まとめ

お二人から伺った有効なメディアリレーションのポイントは、以下の5つ。

  1. 女性メディア向けの情報は画像のクオリティが大事
  2. 記者が体験&撮影できる取材会を開催してリリースでお知らせ
  3. 動画リリースは情報が伝わりやすく、掲載もしやすいので有効
  4. 載りたいメディアの特性に応じて、個別にネタを用意してアプローチ
  5. リリースを送るタイミングは、掲載日の2~3週間が理想的

以上、みなさまのWebメディアリレーション活動にお役立ていただければ幸いです。

グループ企業のCSR活動のニュース発信で実った従業員の意識改革【ツネイシホールディングス株式会社のオウンドメディア活用インタビュー】

常石グループとして造船事業、海運事業を中心に、環境事業、エネルギー事業、レジャー施設やホテル・マリーナ運営などのサービス事業を展開しているツネイシホールディングス様では、グループのCSR活動に関するニュースリリースを数多く発信しています。

常石グループのCSRリリースは写真が豊富に掲載されているのが特徴的で、特に地域の子供たちが参加するイベントのニュースには写真が10点ほど添えられ、当日の楽しそうな様子がダイレクトに伝わってきます。

常石グループの工場・施設見学に、福山市内の小学校6校の児童250人が参加~ツネイシホールディングス|ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース

常石グループは、CSR活動の柱として、子どもの健全育成および地域の活性化に向けた支援を毎年継続しています。2015年度も、日本財団のご支援を受けている、一般社団法人日本中小型造船工業会との共催で、地元小学校6校の児童250人(小学5~6年生)を招待し、常石グループの施設見学を実施しました。 ・ツネイシホールディングス株式会社 http://www.tsuneishi-g.jp …

“ツネイシベースボールクリニック2015″に小・中学生ら160人が参加~ツネイシ硬式野球部|ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース

ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース(2016年01月18日)”ツネイシベースボールクリニック2015″に小・中学生ら160人が参加~ツネイシ硬式野球部


グループ各社からどのようにニュースを集めているのか? また、魅力的なCSR活動報告リリースをつくる秘訣、さらにCSR活動をニュース発信し始めて約2年で見えてきたメリットについて、CSV推進部 マーケティング コミュニケーショングループの大西 好樹氏に伺いました。

毎月のグループ報とイントラネットで集まった情報から、ニュース性があるものをリリース配信

──グループ各社からどのようにニュースを集めているのでしょうか?

大西(以下敬称略):主にグループ報とイントラネットです。常石グループでは毎月20ページのグループ報を発行しています。各社にグループ報の担当者や通信員がいて、掲載するための情報を毎月送ってくれるのが一つ。

もう一つのイントラネットは、各事業会社の担当者がソーシャルメディアのように気軽に写真と記事をアップできる体制を構築している最中で、今のところ年間400件ほどの記事や画像が投稿されています。その2つのルートで集まる情報の中から、ニュース性があるものを私どもの部署でブラッシュアップしてニュースリリース発信しています。

──ニュース性があるかどうかは、どのような観点で選んでいるのですか?

大西:CSR活動の情報に関して言えば、「切り口が良い」「会社のよさが表れている」と感じる情報です。グループ報向けのネタやイントラネットに投稿された情報は、原稿のクオリティとしてはやや荒削りですが、事業所のちょっとした報告書や担当者とのメールでのやり取りなども含めて情報を膨らませて、対外的に発信できる原稿に仕上げます。

自社サイトに新設した「ニュースセンター」(*)が社内外のニュースコミュニケーションの要

ツネイシホールディングス株式会社 常石グループ ニュースセンター

ツネイシホールディングス株式会社 常石グループ ニュースセンター

──いつ頃からそのような体制でニュース発信を行っているのでしょうか?

大西:イントラネットでグループ各社の情報を集めて、その中からニュースを選んで対外的に発信していく体制ができたのは2014年からです。それまでは常石造船を中心に広報活動を行っていたのですが、2年前にツネイシホールディングスのウェブサイトを常石グループのニュースセンターとしてリニューアルし、グループの各事業会社の細かな情報についてもニュースセンターで紹介する仕組みに改めました。

常石グループのニュースセンター公開~常石グループ企業からの情報を集約してお伝えします|ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース

ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース(2014年05月02日)常石グループのニュースセンター公開~常石グループ企業からの情報を集約してお伝えします

常石グループでは、イントラネットで社内向けに発信する情報と、ニュースセンターで社会に向けて発信する情報を分けて考えていません。対外的に発信する情報は、いの一番に従業員に伝えたい。ただし、社内向けの情報と対外向けの発信では情報の受け手が異なりますので、タイトルなどはそれぞれ変えています。

また、対外向けも、全国向けと地元メディア向けで表現を変えます。全国に向けたニュースでは、常石グループのことをご存じない方にも伝わるように補足説明を入れますが、地元向けには補足は省略してタイトルも短くしています。

CSR情報は従業員向けのコミュニケーションが第一義。だから必然的に画像が多くなる

──CSR活動のリリースにたくさん掲載されている魅力的な写真は、各事業会社の担当者の方が撮影しているのでしょうか? グループで共有しているルールなどはありますか?

大西:一部の事業会社には写真が上手な方がいるので、その方にお任せしていますが、基本的には我々マーケティングコミュニケーショングループの者が出向いて撮影するようにしています。ルールはありませんが、イントラネットに投稿するときに見出しと写真とキャプションだけでニュースの内容が伝わるように工夫はしています。

従業員の方々には業務が忙しいときもイントラネットに目を通していただきたいので、原稿を読まなくても写真だけでわかるように。ですから必然的に写真の点数が多くなるのですが、それがニュースリリースでもプラスに働いているのなら喜ばしいですね。

情報の好循環が生まれてグループ全体の意識が高まり、採用活動にも好影響が

──CSR活動のニュースを社内外に発信しはじめて約2年で、どのような変化がありましたか?

大西:一番大きな変化としては、「地域貢献」に対する各事業会社の意識の変化が挙げられると思います。常石グループはサービス業を含む幅広い事業を展開していますが、全体としてはBtoB事業が多く、事業会社は業務に集中するあまり自分たちのお客様企業に視野が固定されてしまいがちでした。これはおそらく、多くのBtoB企業に共通の課題かと思います。

ツネイシホールディングスとしては、「地域と共に発展する」という理念を創業以来のDNAとして持っているのですが、各事業会社がそれを同じように共有しているかというと、やはり地域貢献は本業の余力でやるものという意識がありました。

ですが、イントラネットを通じて各社が地域貢献活動のニュースをアップし、それがグループ全体に共有されるだけでなく、ニュースセンターでも対外的に情報発信されています。取引先や地域の人々といった外部のステークホルダーの方々がそれを話題にし、良いコミュニケーションができたという体験の積み重ねで、CSR活動の意義を実感してもらえ、事業会社がいろいろな情報を積極的に送ってくれるようになりました。2年経って、そのような情報発信の好循環ができてきたことを実感しています。

もうひとつ、採用活動にも効果の兆しが現れています。常石グループは地元の広島県周辺ではよく知られていますが、それでも常石造船以外は新卒の人材が集まりにくい状況があります。ところが最近は、学生さんから「WEBを拝見しました」とコンタクトしてくれたり、ニュースセンターのトピックスを見て「企業としての社会貢献への積極的な姿勢に好感が持てました」と言ってくれたり、Uターン就職の学生さんが関心を持ってくれるケースが増えてきました。

──そのような情報発信の好循環を、今後どのように発展させていこうとお考えですか?

大西:常石グループでは「子どもの健全育成」「地域活性化」「郷土の文化・伝統の継承」の3つの柱を掲げて、社会貢献活動を地元である備後地域、広島県へと広げてきましたが、この3つの柱は日本全体の課題でもありますので、さらに視野を広げて取り組んで行きたいと考えております。

もっと言えば、日本だけでなく世界にも意識を広げて、造船会社の海外拠点があるフィリピン、中国、パラグアイでも同じ3本の柱で活動のネットワークを広げる活動を今後も積極的に行っていきたいと考えています。

大西様、貴重なお話をいただきありがとうございました!


(*)ニュースセンターの企画/開発/構築は、株式会社ニューズ・ツー・ユーのグループ会社である株式会社パンセが担当。リリース配信とそのリリースを自動的に自社サイトへ掲載できるオウンドメディアプラスを実装し、約30社あるグループ各社からの活動をニュースセンターにまとめ、掲載するだけでなく、海外も含めあらゆるステークホルダーへの情報伝達を考慮して日本語、英語、中国語の3カ国語に対応しています。


お手本になるニュースリリース活用事例12選

集客からブランディングまでNews2uリリース活用事例を12社ご紹介します。