日本企業がデザインスプリントを実践すべき理由とは【btrax voice #10 Jensen Barnes】

サンフランシスコのUXデザイナーが語る UXの基本とこれからのトレンド【btrax Voice #9 Mimi Yu】

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btrax社員の生の声をお届けする「btrax voice」シリーズ。 今回のインタビューは、btraxのサンフランシスコオフィスで活躍するUXデザイナーのMimi Yuさんです。今回は彼女がデザイナーになるまでの道のりや、彼女の考える最新のデザイントレンド、また彼女が今後どのようにデザインの世界で成長し続けていきたいかについて語ってもらいました。 関連記事:2018年にUXデザインを取り巻く7つの変化

Who is Mimi?

mimi Mimi Yu 役職:UX Designer 所属:btrax カリフォルニア大学デービス校卒業。専攻は社会学、副専攻は哲学。卒業後はマーケティングや営業の仕事に従事するもUXデザインには常に興味を持ち続け、その後本格的にUXデザイナーへとキャリアチェンジをするためにサンフランシスコのGeneral AssemblyにてUXデザインを学ぶ。 コース終了後、btraxにてUXデザイナーとしてのキャリアをスタート。コリアン・アメリカンとしてのバックグラウンドから異文化間の橋渡しをすることを目指している。    

まず、UXデザインに興味を持ったきっかけを教えてください

無意識のうちにUXデザインにはずっと興味を持っていたように思うのですが、振り返ってみると、2つのきっかけがありました。 1つは、私がスタートアップの営業として働いてた時のことです。私がその会社で働き始めたときは、ターゲットカスタマーが複数設定されていて、どのカスタマーも同じくらい重要視されていました。 しかしリサーチを行った結果、私たちはターゲットを自社商品のソフトウェアを導入できるだけの資金力がある層に絞ることを決断したのです。それからはプロダクトデザインも含めた全てにおいて、「このターゲットカスタマーが何を求めているか」を中心に考えるようになりました。この経験は本当に面白いものでした。 プロダクトの変更が決まったとき、プロダクトデザイナーはそれについて私たち営業チームに説明してくれたのですが、プロダクトや会社の方向性に影響するインサイトやデータ、営業としての知識がそこに反映されていくプロセスを目の当たりにするなかで、私は「そっち側に行きたい」と思うようになりました。それは言わばコックピットであり、私もその中心部にいたいという気持ちが強くなったのです。 もう1つのきっかけはプロダクトデザイナーをしている友達のMikeの影響です。彼はとても魅力的な人で、営業というポジションで働く中でキャリアの方向性の岐路に立っていた私は、彼と接するうちに営業よりもMikeのような人になりたいと思うようになったのです。 彼や彼の友達は常にもデザインのことを考えていて、バーにいる時でさえ、いつもデザインの話をしていました。そんなMikeの情熱や、彼らのコミュニティーはとても魅力的で、彼らの姿を見て私はデザインの世界に惹かれていったのです。 mimi-interview-min

「UXデザイナー」と言ってもその内容は会社によって異なるものだと思いますが、btraxではどういう仕事をしているのでしょうか?

ほとんどの会社でUXと言うと、それは1つのプロダクトのデザインプロセスにフォーカスする場合が多いです。しかしbtraxでは、UXに関するあらゆる業務に関わっています。 btraxは大企業ではなくデザインチームも小さいので、私はプロダクトデザインのあらゆる側面に対処できる必要があります。あるプロジェクトでは、リサーチや仮説検証のためのユーザーテストを行う一方で、ユーザーフローやインタラクションデザインについての検討も行います。 日本企業と仕事をする機会が多いこともbtraxならではです。私たちが当たり前だと思うことが、アメリカとは異なる文化にいる彼らにとって必ずしもそうだとは限りません。デザイナーとして、前提が常に疑われるような場所にいることはとても難しいけれど重要なことです。 そしてそれは物事に対する意識を、自分が思う「真実」の限界を超えて広げることに繋がります。これはbtraxにいるからこそ得られる貴重な経験です。 これまでサンフランシスコで働いてきた中でも、人種やジェンダーあるいはセクシャル・アイデンティティの多様性に欠けた企業をたくさん見てきました。しかしbtraxでは同僚やクライアントが持つ多様な価値観に触れることができるのです。

普段のデザインプロセスを教えてください

私はいつもこんな問いからスタートします。
  • ユーザーは誰か?
  • ユーザーが持っている課題は何か?
  • その課題がなぜユーザーにとって重要なのか?
  • ユーザーについて知っていることは何か?
  • 私たちの仮説は何か?
  • 私たちのソリューションはその問題解決において、どれだけユニークあるいは効果的なのか?
このプロセスを実践した事例としては、ある自動車会社のプロジェクトがあります。その会社はカスタマーに関する膨大なデモグラフィックデータを持っていたのに、カスタマーのニーズに関する実際のインサイトはほとんど得られていませんでした。 そこで私たちは上記の6つの問いから始め、フォーカス・グループ・インタビューを実施して、ユーザーのライフスタイルやモチベーション、ニーズに関する仮説検証を行いました。それは現在のカスタマーエクスペリエンスをどのように改善し強化すべきかを明確にすることにも繋がったのです。 これらの質問に答えることは、デザインプロセスにおいて最も難しい部分の1つです。しかし一度知識を身につけてしまえば、企業のビジネスゴールとユーザーのニーズが交わるポイントを簡単に見つけられるようになります。そしてその後どのようにソリューションを展開しユーザーを巻き込んでいくかについても考えられるようになるのです。 私は一度質問に対して答えを出した後も、全プロセスを通して同じ質問を問い続けるようにしています。時にはわざと反対の立場を取ってみることもあります。 よくあるのが、プロジェクトの始まりの段階で、みんなとにかく前に進みたがることです。私ももちろん進みたいのですが、ブレーキを踏んで「ユーザーの何が本当に知りたいのか?」「真実であって欲しいと私たちが望んでいるだけのものは何か?」と問う人も必要なのです。 btraxで部署を超えて色々な立場の人と働く良さはこの部分に出ると思っています。特にイノベーション・ブースターを行うチームのメンバーはいつもあらゆることに質問してくる人たちです。それこそが私がまさに自分のプロセスに取り入れたいと思っている部分です。 mimi

UXは日々変化していますが、Mimiさんはどのように最新のUXを学んでいるのでしょうか?

とにかく本を読んで、人と話すことです。特に影響を受けているのはデザインコミュニティですね。私が入っているのはデザインに関する投稿をしたり質問したりし合うFacebookのグループです。 今何が流行っているのかを知るのにはミートアップがいいですね。特に私が好きなのはDesigners + Geeksというミートアップでフォローしています。 あと、私には幸運にもデザインや人生についてコーチングを行ってくれるメンターがいます。あとは、ただサンフランシスコ・ベイエリアに住んで同じ業界の友達と過ごすだけでも刺激を受けます。この街で得られるアイデアや、イノベーション、情熱はもう本当に面白いです。ここが私がエネルギーを得られる中心なのです。

そんなMimiさんが注目する最近のUXのトレンドを教えてください

私が最近感じている最大のトレンドは、ユーザーエクスペリエンスが実生活に入ってきていることです。たとえば音声アシスタントやスマートウォッチなど、考えられて設計されたUXは今や生活のどこにでも存在しています。 これはトレンドというにはもはや当たり前で、普段これらのUXについて意識することすらなくなっています。このことが何を意味するかというと、ユーザーの行動やライフスタイル、ニーズを知ることが間違いなく今以上に重要になるだろうということです。 また、ゆくゆくはこれらのテクノロジーが私たちの生活と密接に融合していくだろうとも言えます。例えばGoogle HomeやAmazon Echoなどは寝室やリビングに置かれ、私たちのプライベートな会話にアクセスできてしまいます。 私たちはデザイナーである以上、いかにこちらが想定した方法で行動するようユーザーを促していくのかをしっかり考えなくてはいけません。それには、倫理面で問題がないようにする視点も忘れてはならないのです。 また私がbtraxで働く中で経験し感じているトレンドとしてはConversational UIが挙げられます。私はもともと文を書いていた経験があり、btraxでもよくインターフェースにマイクロコピーを書いていますが、それは自ずと画面上での対話やそれがどのようにユーザーエクスペリエンスに関係するかを考えることに繋がります。そうすると、会話(conversation)、つまりインターフェイスが質問を投げかけこちらがそれに答えるというやりとりとしてのフローを考えるようになるのです。 関連記事:今さら聞けないユーザーインターフェイス (UI) の基本

このトレンドはこれからどう進化すると見ていますか?

私自身を含めたミレニアル世代は自分たちについて多くの情報を発信しています。私たちは「自分ブランドの発信者」として優れていて、オンラインでもオフラインでも、常にどのように自分たちが映るかを考えて生活しているのです。そのために、あらゆるものが非常にパーソナライズされたものとなってきています。 たとえばiPhoneの登場がいい例です。iPhoneは好みのアプリをダウンロードして、個人のライフスタイルや好みに合わせたアプリのコレクションを作ることを可能にしたパーソナライズド・デバイスです。それはいわば、自分だけのデジタルな領域を作り上げるようなものです。 私たちはもはや日常のどの場面でもテクノロジーが常にあることを期待しているため、今後インターフェイスが音声のようなより形のない経験へと変わっていくことは間違いないでしょう。今後このような期待が高まるにつれて、テクノロジーは、AR/VRに代表されるような「没入型」が中心になっていくだろうと思います。 Conversational UIもまた、そのような期待の高まりを反映したものだと言えます。例えば物理的ボタンからタップできるフラットボタンへの変化は、テクノロジーがより人間に近づいていくことを示しています。 過去には、テクノロジーは切り離されたツールとしてみなされてきました。しかし今では、私たちはインターフェースが個人の要求を満たした個人仕様になっていることを求めています。それはまさに「会話」を使って私たちの言葉でコミュニケーションすることが期待されているアシスタントです。

これからbtraxのUXデザイナーとしてどのように成長していきたいのか、Mimiさんの展望を教えてください

改善したいと思ってることはたくさんあります。自分の専門スキルを磨くとともに他分野からも学んで幅広い知識を身につけていきたいし、それにプロトタイプのスキルも伸ばしたいし、ゆくゆくはインタラクションデザインももっとできるようにもなりたいです。 同時に、デザインの効果やインパクトを測れるようになるために、リサーチをより深く学びたいとも思っています。btraxのサービスチームは分析能力に長けています。私ももっとリサーチスキルをつけて、ユーザーの行動分析の経験をもっと積みたいと思っています。 あと、個人的に可能性を感じていてこれから勉強していきたいと思っているのはARです。UXプロセスを通じてARがどのように実現されてきたかについて今までたくさんの本を読んできましたが、非常に面白いと思っています。ARで解決できる課題にはどのようなものがあるのか興味がありますし、それらの課題の1つに取り組んでみたいと思っています。 また文化を超えたエクスペリエンス・デザインについてももっと知りたいです。これはbtraxで時間を過ごす中で学んでいけるものだとわかっているので、これからがとても楽しみですね。