イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

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皆さんはサンフランシスコに住む人々の生活を明確に描けるだろうか?どのように生活し、どのように仕事しているか、想像できるだろうか。今回は、我々サンフランシスコで働く人の生活の中に浸透しているテクノロジーを、衣食住(仕事)という切り口で紹介し、サンフランシスコがイノベーションを生み出し続ける街である所以をお伝えしたいと思う。
  • 衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力
  • 食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある
  • 住(働く):サンフランシスコのイノベーションを生む、自分にあった仕事環境と通勤スタイルの選択

サンフランシスコは今もなお最新テクノロジーの発信源

btraxではイノベーションブースタープログラムを提供しているが、参加者には最長2ヶ月間サンフランシスコに滞在していただいている。その滞在のなかではプログラムに参加する以外にも、サンフランシスコの色々な最新サービスを自ら試し、自分たちのサービスアイデアに活かしている。 たとえば同プログラムに参加された日本の大手シンクタンクの社員の方々はサンフランシスコ市内で利用したUberの乗車時に、思いの外ドライバーと会話を楽しんだようで、サンフランシスコに住む人のようにサービスの価値を体験したようだった。 関連記事:日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント サンフランシスコでは生活のあちこちにテクノロジーが浸透している。大手スタートアップの本社があったり、新しいスタートアップが次々と生まれたりする環境ということもあり、最新のサービスのテストマーケットとなることも少なくない。 また、ここで暮らす人の最新サービスに対する関心が高く、アーリーアダプターも多いため、新しいサービスが生活の一部になる速度が早い

サンフランシスコから離れて初めて気付く、テクノロジーと隣り合わせの生活

筆者はサンフランシスコに3年ほど住んでいるが、恥ずかしながら自分の生活にそこまでテクノロジーが浸透しているとは思わず、自分が依存しているとも思っていなかった。しかしその認識が間違っていたことに気付かされたきっかけとなったのは、先日休暇兼リモートワークで訪れたハワイである。 ハワイ、オアフ島は言わずと知れた観光業の盛んな土地であり、特にテクノロジーが盛んなイメージは当然ながらない。とはいってもアメリカ国内なのである程度はサンフランシスコで使ってるサービスも浸透していると思っていた。 しかしながらハワイに2週間ほど滞在して、普段のように生活、仕事ができずに不便を感じることが多かった。そしてその不便の多くはサンフランシスコのテクノロジーによって成り立っていた生活体験ができなかったからである。 一方で、ハワイならではのテクノロジーの使われ方も垣間見ることができたのも事実である。 Hawaii sharing bike (ハワイにあったシェアリング自転車のbiki) そこで今回は筆者のような文系サラリーマンでさえもサンフランシスコではテクノロジーに生活を支えられているという点をあたらめてまとめてみた。 また今回筆者はサンフランシスコを離れて暮らしてみてどれだけサンフランシスコが特別な環境なのかを実感したわけなのだが、特にスタートアップ、新しいビジネスアイデア、サービスを考えている人に、ここにどんな特別な環境があるのかということを知っていただければ幸いである。

衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力

サンフランシスコはデザインやアートが盛んだったり、ヒップスターやヒッピーなど個性的なスタイルが根付いていたり、ファッション感度が比較的高い都市だ。ファッション業界の中でもテクノロジーという切り口でトレンドの勢いを増している。

買い物不要!便利などころか、専属スタイリストがつくサブスクリプションサービス

サンフランシスコの生活の中に浸透してきているファッション業界のスタートアップの中に、サブスクリプションやキュレートボックスなどの形態でおしゃれさと便利さを追求しているブランドがある。 2011年創業のStitch Fixはユーザーの好みやサイズを元に、パーソナライズされたスタイリングをキュレートしてユーザーに届けるサービスだが、2017年にはアメリカで11番目に大きいアパレル・靴のオンライン小売ブランドとまでなった。その成長率はAmazonを超える。 stitch fix (Stitck Fixから届く箱の中身のイメージ。写真は公式サイトより転載) ユーザーに届けられる5セットのスタイリングはStitch Fix独自のアルゴリズムから選ばれたものだが、スタイリストからのコメントもついており、テクノロジーとマニュアルのバランスが取られている。 好みに沿った服が届くのは大前提だが、ユーザーは数日間のうちに試着をしてみてサイズが合わなかったり、好みでなかったりしたら返却することができる。もちろん気に入れば購入ができる。 実店舗が次から次へと閉店して数が少なくなりつつある昨今、オフラインで購入をしようとすると消費者は店舗に行くまでに以前よりも時間をかけ、さらにその中から自分の好きな服、サイズを探さなくてはいけなくなった。 一方Stitch Fixは探すという行為を無くしてくれた。買い物をする時間があまりないけどテキトーな服でいいわけじゃない、もしくは何を着るべきかの助言が欲しかったりする人は、うってつけのサービスなのだ。 またテック企業を中心に女性起業家などの活躍が目立ってきている中、彼女たちの仕事ぶりだけでなくライフスタイルも注目されてきており、特に働く女性にとってファッションは忙しくても妥協したくないという思いが強くなってきているのではないだろうか。

購入だけじゃなく試着から返品までも自宅で完結できるようになる

さらに衣類のオンライン購入で消費者の悩みのポイントのひとつになっているのが、事前に本物の商品をみて試着ができないという点だが、返却サービスの提供、簡易化をすることでこのハードルを下げている。 大手Amazonに至ってはAmazon Prime会員限定で、Amazon Prime Wardroabというサービスを開始した。ユーザーが購入を考えている商品を選択すると、その商品が届き、自宅で購入前に試着ができるという仕組みである。 同封されている返却用の伝票を使えば、無料で返却商品の引き取りをしにきてくれたり、試着した商品の中から購入をすればさらに割引が得られたりと、事前に試着ができないという悩みの解決以上にお得なサービスを提供しているのである。 服だけに限らないアメリカの返品文化というのはオンラインでも同様に存在しているようだ。むしろオンラインでの返品サービスには今までより便利に使い続けられる工夫がみえる。 関連記事:アパレル業界の未来を予測!知っておくべき6つの現象【前編】

食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある

探す・予約・注文・受け取り。あらゆる外食体験がシームレスになりつつある

サンフランシスコは山手線内回り約2個ぶん程の大きさ*でありながら約4,400のレストランがあるという。当然レストランなどの飲食店の口コミサイトというのはサンフランシスコでもよく使われている。 その中でもYelpは有名で、実名による口コミだけではなく持ち帰りやデリバリーのオーダー、席の予約もアプリ内で行うことができる。本来はデリバリーを行っていないレストランの代わりにデリバリーするサービスはGrubHubPostmatesUberEatsなどかなり主流になってきた。 さらに最近ではGoogle Mapsがロケーションと時間に応じてレストランやオススメのアクティビティなどを地図上に表示してくるようになった。自分が検索してから決定までの操作を繰り返すうちに、より個人にあったオススメを表示してくれるようになるのであろう。 関連記事:小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題

オンラインは便利だけどお値段高めなんてことはなくなってきている

また、サンフランシスコの物価の高さはいつも悩みの一つで、外食も例外ではない。平日のランチであっても10〜15ドルかかるのが普通で、お財布に優しいオプションはいつも歓迎される。 そこに目をつけたのがMealPalというサービスである。日々のランチ(もしくはディナー)をサブスクリプション式で購入して、各レストランが1種類ずつ提供しているメニューから好きなものを事前に選び、自分でお店まで取りに行くというもの。 お店側にとっては決まったメニューを決まった量分作りやすいので1食5〜6ドル程度で提供ができるのである。サンフランシスコ界隈で働く人の間で広がりを見せている。 また日々の食材の買い物についてもAmazonFreshInstacartといったオンライングローサリーデリバリーサービスが、便利かつ、店頭販売価格とさほど変わらないお得さをメリットに浸透してきている。 sf food price table (食材価格サンフランシスコとアメリカの比較。こちらのサイトより転載) オンラインの注文は配達までに時間がかかる、店舗の方が安いというような消費者の心配はどんどんなくなってきていると言えるだろう。

住(働く):サンフランシスコのイノベーションを生む、自分にあった仕事環境と通勤スタイルの選択

住宅よりも働く空間によりサンフランシスコらしさが垣間見られると思うのでオフィススペースについても述べておく。

働く場所はどこでも良いけどどこでも同じという訳ではない

まずサンフランシスコではリモートワークは主流であることが街を歩いていてもわかる。日中カフェに入れば仕事をしている人を多く見かけるし、「今日はカフェで仕事してから午後オフィスにちょっと寄る予定」といったようなパターンをよく聞く。 会社のデスク以外で仕事ができるというのは会社の規則によって許可されているということだけでなく、サンフランシスコの多くのカフェなどでWiFiやコンセントなど働くことを前提にした場所がたくさんあるということでもある。 カフェなどの飲食店だけでなく、日本にも進出したWeWorkImpact Hubなどのコワーキングスペースも多くみられる。 利用者が自分の執務スペースだけでなくネットワークの構築やそこから起こりうるコラボレーションの機会を求めていることもこのようなコワーキングスペースが流行る理由であり、そのようなマインドを持つ人が多いこともまたサンフランシスコならではだ。

みんな同じである必要はない、通勤スタイル

また、通勤においてサンフランシスコ界隈で働く人の多くに利用されているのはシェアリングサービスである。 関連記事:【2017年最新版】コワーキングスペース 世界の8トレンド ドライバーの自家用車に相乗りしてライドをシェアをするUberは通勤ではさほど主流ではないものの、特定のルートを走る小型シャトルをシェアするChariotや、通勤者同士で運転手、乗客をマッチングするScoopFord GoBikeJUMP Bikesの提供する自転車もサンフランシスコ市内で展開されており、激戦区となっている。 ちなみに以前フライング気味でサービスが一部始まってしまったBirdLimeBikeSPINといったシェアキックスクーターも、2018年8月現在はサンフランシスコ市交通局の許可待ちの状態ではあるが各社資金調達に成功しており、勢いを増している。 テクノロジーとは少し離れるが、ローラーブレードやスケートボードで出勤をする人も見かけるあたり、サンフランシスコでは通勤においてもダイバーシティが認められ、それぞれが自分にあったスタイルを選択していることがわかる。 こういった姿もサンフランシスコのライフスタイルを形成する重要な要素と言わざるを得ない。 関連記事:サンフランシスコが取り組む通勤イノベーション

サンフランシスコのどういった人がこのような生活をしているのか

ここまで紹介したサービスは何も特別なものではなく、むしろサンフランシスコに長く住んでいる人であれば聞いたこと、使ったことのあるようなものばかりである。 エンジニアでも投資家でも起業家でもない筆者のような文系サラリーマンでも最新テクノロジーの情報が耳に入り、実際に見てその広がりを実感している。 (実際にアメリカ国内でもベイエリアのスタートアップは一番多くの投資を受けて拡大していることがわかるこちらのサイトより転載) これは間違いなくサンフランシスコ唯一無二の特徴だ。そして各サービスの広がりを見ているとサンフランシスコの以下のようなユーザーが、サービス拡大の根源を支えてくれていることがわかった。 まず、サンフランシスコ界隈にいる利用者の最新サービスに対する関心が高いので、新しいサービスへの抵抗が低い。人は得てして今まで使っていたものに慣れているから現状維持を選びがちだが、テック企業で働いている人や投資家などは新しいサービスを聞きつけるのも早いし、まずは使ってみたいという精神が強いアーリーアダプターが比較的多い。 この人たちによって、さらにそのサービスの情報や評判が広まっていく。 そしてさらに、アーリーアダプターを中心に使ってくれるので改善点がより早い段階で出てサービスの改善へと繋がっていくというサイクルがある。サンフランシスコはよく新サービスの試運転対象エリアとなることが多いのもそれが理由であろう。 btraxが日本の大手電機メーカー向けに行ったプロジェクトでも新規ユーザーを探すために、街で開発段階のサービスをテストしてもらえる人を探し、ユーザーインタビューを行った。 全く知らないサービスをテストして見知らぬ我々に協力してくれる人が少なからずいるということ、そして彼らが具体的にそのサービスを使うシーンを想定して共有してくれるフィードバックの質の良さは、やはりサンフランシスコならではでないかと改めて実感した。 関連記事:マジックなんてなかった!スタートアップ企業の初期ユーザー獲得方法

まとめ

今回、サンフランシスコを出てハワイで生活をしている時に感じたことをきっかけに、こういったテクノロジーを中心としたライフスタイルについて振り返ったわけだが、やはりアメリカ国内とはいえサンフランシスコは他の都市とは全く異なる特徴がある。 筆者はテクノロジーを追い求めてサンフランシスコにきたわけではないが、そんな筆者の生活にもあらゆる面でテクノロジーが浸透してきていた。 ハワイでUberを使った際には、サンフランシスコで主流である1台のUberを他のユーザーと相乗りすることで安価に乗車できるUber Poolというプランがなかったため、毎回ひとりでも1台をチャーターしなければならず、非常にお金がかかってしまった。 またハワイ、特にワイキキ周辺は働きにくるような場所ではないので当たり前かもしれないが、WiFiやコンセントのあるカフェがほとんどなく、コワーキングスペースもなかなかの過疎っぷりだった(事実、筆者が訪れたハワイのコワーキングスペースは訪問後数日後にクローズした)。 またサンフランシスコで新サービスの拡大を目の当たりにしたり、btraxプロジェクトで実際にサービス開発のサポートをしたりしたことを振り返ってみると、やはりサンフランシスコがどれだけ特別な場所なのかがわかる。 シリコンバレーを中心に世界トップレベルの技術力を持っているということはサンフランシスコ、ベイエリアの特徴の一部でしかない。 起業家精神のある人や最新サービスに対する感度の高い人が集まり、時には彼らが交わりながらまた新しいアイデアが生まれ育っている。こういった環境の中、ビジネスアイデアを作って育てて行けることがどれほど有効かは、先に紹介したサービスの例からもわかっていただけると思う。 サンフランシスコ、シリコンバレーだけが起業をできる唯一の環境というわけではないが、ここで暮らし、この環境にふれ、ここで試しながらサービスを発展させていくということはどの都市で行うよりも濃いイノベーションが起こせるのではないだろうか。 参考: ・Stitch Fix Proves Again That Data Is The New Hit FashionMealPal gobbles $20M for its restaurant meal subscription serviceShared electric scooters probably won’t return to SF until August *サンフランシスコ面積山手線内回り大きさ

イノベーションの力でアメリカを健康に!フード系スタートアップの活躍

food startup
「スタートアップ」という言葉がだいぶ浸透し、日本でもアントレプレナー向けのミートアップや起業家を育成するようなプログラムや施設が増えてきた。そんな今だからこそ改めて触れておきたい点がある。 それは成功している多くのスタートアップは問題を解決するために生まれてきたということだ。ユーザーの理解から始まり、問題を特定をし、新しい価値のあるソリューションを提供し続けることで急成長を成し遂げてきたのである。 関連記事:今さら聞けないリーンスタートアップの基本 こういったスタートアップのなかでも、特に注目したいのがフード系だ。アメリカの食料問題、特に肥満の問題は非常に深刻で、彼らはその解決に取り組んでいる。彼らがすごいのは現在明らかになっている問題の解決だけではない。 サービスを通して、ユーザーの社会問題に対する貢献度や達成感を与えることでユーザーの自己実現欲求を満たし、一つの問題解決以上の価値を提供しているのだ。 日本は世界的に見ても健康意識の高い国だが、それでも食品ロス、中高年を中心として生活習慣病、食品偽装、異物混入(食の透明性)などの問題が根強く残るのも事実。このような社会問題を解決するためにアメリカではどのようなスタートアップが生まれ、それがどのようにユーザーに受け入れられているのかを紹介したい。 関連記事:【農業 × テクノロジー】食の未来を変革する最新アグリテックサービスまとめ5選

アメリカの肥満問題は食品不足が一因だった

アメリカが肥満大国なのは有名な話だが、その問題を調べていくと、アメリカ特有の理由や様々な問題が絡み合っていることが見えてくる。 まず肥満問題の深刻度合いについて簡単に説明すると、アメリカの20歳以上の成人で太っている(オーバーウェイト:一般的にBMI指数が25-29.9)もしくは肥満(オビース:一般的にBMI指数が30以上)の人の割合は全体の約70%にも及ぶ。肥満の増加率は減ってきたという報告こそあるものの、肥満は未だにアメリカで深刻な問題の一つでなのである。 america is fatter than ever (写真はこちらのサイトより転載) また肥満によってもたらされる病気の医療コストは年間1500億ドル、肥満による生産性の損失も何十億ドルとも言われ、経済的な面からも非常に深刻な問題となっている。 アメリカの肥満という問題には様々な背景が関係しているが、「地方」と「低所得」がキーワードとなりそうである。アメリカで太っている人の割合が高いのは、飲食店が多くあるような都市部を擁する州ではなく、実は南部を中心とした地方エリアなのだ。 このようなエリアは農作物や健康的な食べ物を取り扱うスーパーが近くになく、フードデザート(食べ物砂漠)と呼ばれており、実に2300万人がフードデザート地域に住んでいると言われている。 またこのような地域の中でもファストフードやコンビニエンスストアへのアクセスの方が良い地域(フード沼、food swampsとも呼ばれる)も存在し、スーパーがないだけよりも肥満への貢献度が高いとの調査もある。さらに低所得者の世帯は、肥満により患った病気に対する医療費が払えないなど悪循環が続いているのだ。

食品は不足しているのに大量に廃棄されているという問題も

食品が行き届いていない問題がある一方で、皮肉にも大量の食品廃棄が発生している現実もある。実際にアメリカでは毎日約15万トンの食べ物が廃棄されているという。一人当たりにすると約450グラムを捨てているということだ。さらにこれらの食べ物を生産するのに使っている水、土、ガソリンなどのエネルギーも無駄にしていることを考えると、無視できない問題である。 ちなみに2016年には米国農務省と環境保護庁が「2030年までに食品廃棄を50%減らす」という目標を発表した。企業に加え、NPO、個人消費者に対しても協力が求めれれており、各州や市レベルで制度が整えられ始めている。

加工食品ブランドに対する不信感

このような食品不足と食品廃棄が発生しているアメリカの食生活には、さらに悪影響とも言える習慣がある。それは加工食品が日常の食卓に並ぶことだ。 アメリカのフードマスマーケットでは、加工食品の大手ブランドが存在感を放っている。マクドナルドやコカ・コーラやペプシなどの炭酸飲料メーカー、クラフト、キャンベルスープなどの加工食品メーカーがこれまでの広がりを見せることができたのは価格を少しでも下げることを可能にした大量生産システムがあったからこそ。 また、アメリカ全土に商品を行き渡らせることができるだけの流通網、全国的に認知度を上げるための広告資金があったことも関係するだろう。そしてその結果、これらの加工食品は広くアメリカの食卓に浸透していったのだ。 major food brands (写真はこちらのサイトより転載。加工食品を含むコンシューマー商品業界マップ。これら中に健康的と言える食品が果たしてどのくらいあるだろうか) しかし最近になって、これらの加工食品ブランドは消費者からの信頼を失いつつある。実際に消費者からの需要が減ってきたため、一部の大手スーパーでは取り扱う加工食品を少なくするための見直しが行われている。 その一因となっているのが、一部のブランドの遺伝子組み換えや非倫理的な生産方法といったサステイナビリティの問題が明るみに出てきたことだ。さらに大手ブランドがアメリカ全土に食品を行き渡らせているということは、運ぶのにそれだけ排気ガスを使っているというのと、ローカルの農作物を差し置いて売られている可能性があるということ。 このようなサステナブルでない食品加工物が求められなくなってきた現在、支持されるフードブランドのあり方が変わりつつある。 関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦

これらの問題に取り組むために始まったスタートアップ

食品不足による肥満、食品廃棄、サステナビリティ。これらの課題に問題意識を持って解決を試みるスタートアップが勢いをつけている。以下に紹介するスタートアップは皆アメリカの食に関する問題に対して様々なアプローチでサービスを提供している。

1. Imperfect Produce:インスタ映えはしないが質が保たれた食材を提供

2015年にベイエリアでスタートした、見た目が不揃いのため廃棄する予定だった食材を買い取り、サブスクリプション式でスーパーよりも安価な食材を販売しているスタートアップ。 彼らの買い取り元は大手からローカルの小さなオーガニックの農家までにわたり、コミュニティーへ大きく貢献している。彼らは創業から約2年で1800トンもの捨てられるはずだった食材を廃棄することなく引き取ったという。 また、彼らはオーガニック食材も扱い、サービスを通して無駄にならなかった水や二酸化炭素の量を計算して、サステイナビリティの状況を把握している。ローカルの農家やフードバンクとも積極的にパートナーシップを組み、持続可能な地域づくりにも貢献している。 imperfect produce_insta (写真はImperfect Produceインスタグラムより転載)

2. Full Harvest:廃棄食材のマッチングを行う

Full Harvestは農家が持て余した形が不揃いの野菜や果物を、レストランやジュースストアなどが他よりも安く食材を購入することができるB2B向けの廃棄食材マッチングプラットフォームだ。 もともと創業者のChristine Moseleyはオーガニックのコールドプレスジュースストア事業の拡大に従事していたが、高品質の食材を扱っていたため、そのコールドプレスジュースは1本13ドルもしていたという。 彼女がこの価格になってしまう理由を探っていると、コールドプレスジュースに使う食材はプレスされるのに、見た目が綺麗で高品質なフルーツや野菜を使っていたことがわかり、まずはここを変えられないかを検討。さらにサプライチェーンを探っていくと、大量の食材廃棄があることにショックを受けた。 そして彼女は、農家が売れないと判断していた高品質な食材と、実は食材の見た目はそれほど重要ではないが、できるだけ良心的な価格で良いものを売りたいお店側を繋げるというサービスを開始するに至ったのである。

3. Copia:食べ残しを回収して必要な人に寄付する

Copiaは企業ででた余剰食品を、非営利団体に提供しているサービスだ。アメリカ、特にシリコンバレーエリアの企業では企業が社員向けにケータリングの食事を提供したり、福利厚生の一部で無料スナックがオフィスに並んでいたり、食事付きのイベントやカンファレンスがあったりと、食に溢れている一方で、食べ残しも発生している。それらの食べ物をCopiaのドライバーが綺麗に包み、非営利団体まで運ぶという仕組みである。 企業側にとって利点となるのは、Copiaのデータを元にどの食べ物によく余りが出るのか、どのくらいの量が適切なのかがわかるので、次の購入の決定がしやすくなるということだ。 先ほど挙げた通り、連邦政府が食品廃棄問題対策に動き出しているため、企業として食品廃棄を出し続けることは今後コンプライアンス違反にもなりかねない。Copiaの利用はそんな問題を回避できるうえに、社会問題解決に貢献しているという満足感を与えることも企業ユーザーにとってはメリットとなっているようだ。 copia food waste impact (写真はCopiaウェブサイトより転載。無駄にしなかったものの効果の金額シミュレーションを表示)

まとめ:自分が食べている食べ物の本当の価値を見つめ直し、問題解決に多角的に取り組む

肥満、食品不足、食品廃棄などアメリカの食にまつわる問題は誰が見ても明らかである。この問題を多かれ少なかれ実際に体験した人が、問題を突き詰め、解決しなくてはいけない!という信念を持って始めたスタートアップが広まってきている。 さらに今まで大手ブランドが提供してきた加工商品が疑われるようになり、それらの商品を売るためのマーケティングやロジスティックスなどはかつてのように効果がなくなり始めている。 食べているものがどのように作られ、どのように運ばれ、どのように消化されているのかを知り、食べ物の本質に対する認識が高まってきた今だからこそ、このような問題解決に取り組むスタートアップが支持され、ユーザーもそこに貢献することに新しい価値を見出しているのではないだろうか。 フード系スタートアップを調べていくと、実体験や調査などで現状の問題とユーザーを理解し、課題を明らかにし、新しい価値のあるサービス・商品を提供していくことがスタートアップビジネスには欠かせないことが改めてわかる。 また、今回紹介したフード系スタートアップの問題には、一般消費者、一般企業(スーパー、レストラン、ファストフードチェーンなど)、食品会社、農家、低所得者など多くの人が絡んでいることがわかる。彼らユーザーをあらゆる方面からを理解し、問題を見極めて価値を提供できるように取り組むことが重要になっていると言える。 参考:

ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦

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大手企業の強みの一つにブランド力があげられるが、昨今、それだけでは勢いのある新興ブランドに顧客をどんどん取られていく傾向にある。例えば、老舗ショッピングモールなどはECサイトに取って代わり、自動車メーカーはUberやLyftなどライドシェアサービスの台頭により、車をシェアするという新しい潮流に直面している。 この流れには生活習慣や消費者が求めるものの変化、そして技術の進歩などが大きく関わっており、ブランドにとってその変化に沿った商品やサービスの開発が必要になってくるということだ。すでにブランドバリューのある企業であればその価値を大いに活用し、新しい商品やサービスを生み出して厳しい競争を勝ち抜いていくことも可能だろう。 では果たして大手ブランドは、そのブランドバリューと資金にものを言わせておけば顧客を掴み続けられるのだろうか。答えはNOだろう。 特にアメリカのミレニアル世代にとってはそのブランドが大手なのか否かよりも、そのブランドを使うことによってどんな体験ができるのか、自己形成ができるのかということの方が重視されているように思う。実際にEventbriteのリサーチによると、ミレニアル世代の78%がモノよりも体験を選び、さらに72%が今後もモノより体験にお金をかけたいと思っていることがわかっている。 さらにミレニアル世代が体験を重視することを根拠づける事象として、今回は飲料業界大手のコカコーラとペプシが挑む新たな挑戦と飲料スタートアップを事例に挙げ、ユーザー体験を重視したマーケティング手法をご紹介したい。 関連記事:若者が車を所有しなくなった6つの理由

コカ・コーラとペプシの異変

アメリカで人気のソフトドリンクと言ったらコカ・コーラやペプシコーラ(ペプシ)を想像するのではないだろうか。それもそのはず、コカ・コーラ社とペプシは世界のソフトドリンク市場でマーケットシェア70%(2015年時点)を誇るブランドとして確立し続けてきたまぎれもない大手企業なのである。 しかしながらその事実とはうって変わり、2018年冬に彼らが発売した新商品に込められたメッセージや背景を探ると、危機感を抱いているかのような変化が見られた。その危機感というのも他の新興ブランドに置いてかれないように模索しているようであった。 まずはコカ・コーラとペプシが発売した商品を見ていただきたい。

コカ・コーラ新商品:Diet Coke (新しい味の追加)

Diet Coke 4 new flavors (写真はダイエットコークポートフォリオサイトより転載) ターゲット:ミレニアル フレーバー:ジンジャーライム、チェリー、ブラッドオレンジ、マンゴー デザイン:細身・銀色の缶で従来のDiet Cokeにコンテンポラリーさを加えている。タイポグラフィーも今までのコカ・コーラのブラント感を残しつつ、どこかスタイリッシュでスッキリした部分がある。また、デザインカラーは新しい冒険や体験となる味を思わせるような、目を引く(Boldな)色使いを試みた。 開発秘話:2年の歳月をかけ、1万人ものユーザーによるテストから、味やデザインを決めていったという。また、コカ・コーラ自身がターゲットはミレニアルだと公言し、新しい冒険や体験を求める彼らに寄り添っていきたいと話していた。 常に新しいものを試すことが好きなミレニアルに向けて、従来のDiet Cokeとフルーツ味をミックスした全部で4つの味の提供と、その冒険を助長するアピアランスで発信している。(ちなみに筆者は先日Ginger Limeを飲んでみたところ、”サイゼリアのドリンクバーでコーラにライムを混ぜちゃった感”を覚えた)

ペプシ新商品:bubly

bubly pepsi sparkling water (写真はペプシ公式サイトより転載) ターゲット:ミレニアルを中心とした遊び心溢れる体験を求める人 フレーバー:ライム、グレープフルーツ、ストロベリー、レモン、オレンジ、アップル、マンゴー、チェリー デザイン:明るくてポップな配色。複数のデザインの笑顔マークが缶に描かれ、開け口や缶自体に遊び心のあるメッセージがあしらわれている。 開発秘話:ペプシは”2025年までに健康志向が高まる消費者のニーズに応えるため、グローバルで展開する商品の最低でも3分の2は100キロカロリーもしくはそれ以下にする”ということを企業目標に挙げている。bublyはこの目標へ大きな期待を背負い、誕生した。 また甘味料は含まないけど風味にバラエティーを持たせることで、健康需要を満たし、なおかつ遊び心を書き立てている。健康・楽しさ・親近感のあるスバークリングウォーターブランドという新しい分野にチャンスを見出したのである。

コカコーラ VS ペプシ

どちらの新商品も炭酸系飲料ではあるものの、それぞれの看板商品と比較すると様々な点で変化が見られる(看板商品の対象はコカ・コーラとペプシ)。 ・ターゲット コカ・コーラやペプシは今やビッグブランドであり、そのターゲットは老若男女と言えるだろう。一方、Diet Cokeの新しい味とbublyは開発段階からミレニアルを強く意識し、プロモーションも行なっている。 ・ブランドアイデンティティ コカ・コーラもペプシも100年以上愛され続けているブランドであり、今更味に関するアピールをする必要がないので飲み物の枠を超えて、スポーツ大会等のスポンサーや社会奉仕活動、音楽業界とのコラボなど世界規模で露出をしている。一方、新商品は、ミレニアルを意識したブランド構築の様子が見られる。Diet Cokeの場合、プロモーションビデオにNetflixドラマで人気が出てきた女優を起用した。 これはハリウッド級のセレブを起用するよりは、ミレニアルがより親近感を感じるとされるアイコンを選択したと見られる。また、ビデオの中で「人生短いので(健康的な飲み物とは言えないけど)なんだかんだ飲む!」といったようなある種、開き直りとも取れる正直なメッセージングをしたり、別のビデオでは実際にミレニアルに飲んでもらって正直な感想が取り上げられている。をビデオにしてプロモーションしている。 一方bublyは第90回オスカー授賞式の放送中の30秒のテレビコマーシャル枠で華々しくデビューを飾った。ビデオはポップな仕上がりで、こちらもテレビドラマで人気となっている俳優を起用したGIFアニメもあり、ジョーク混じりの楽しいブランドを演出している。 ちなみにどちらも起用したタレントが映画俳優ではなくテレビドラマで浸透した人であるという部分は、ネームバリューよりも親近感を意識した結果とも思われる。 [embed]https://youtu.be/zVlfWLO-cjM[/embed] ・商品デザイン コカ・コーラやペプシは赤、青、白といった色やロゴを長年にわたり定着差せてきた。もはやそのデザインはシンボルともなっているため、大幅変更の必要もなければ、そうすることはリスクともなる。一方、両社の新商品は浸透しきっているブランドの色・姿かたちからはどちらかというと離れ、どのような感情をもたらせたいかを中心にデザインされたと言える。 スタイリッシュな缶や遊び心、様々な味のラインナップを表す配色でいろんな味に挑戦する冒険を促している。新商品はターゲット(ミレニアル)にどのような感情になって欲しいか、醸し出したい雰囲気を中心によりデザインされているのではないだろうか。

ウィスコンシン州出身、LaCroix(ラクロワ)の台頭と人気の理由

コカコーラとペプシが、新商品に託した狙い・特徴をみると、彼らが意識していると思われる新興ブランドの存在が見えてくる。それはウィスコンシン州生まれのLaCroix(ラクロワ)という飲料ブランドである。

ラクロワとは?

ラクロワは1981年創業のスパークリングウォーターに特化したブランドで、1990年代は打倒ペリエを掲げ、ペリエとは異なるターゲットで独自のブランディング施策を行なってきた。その後、ナショナルビバレッジコーポレーションに買収され、同社の売上は、2010年から2015年の間に6500万ドルから2億2600万ドルまで増加し、2倍以上の利益を上げている

ラクロワが受け入れられた3つの理由

ではなぜ100年以上も多くの人に愛され続けているコカ・コーラやペプシがラクロワをベンチマークするまでになったのか。ラクロワの成功の背景には、アメリカの食に対する意識・生活習慣の変化や消費者(特にミレニアル)が好むもの、ブランドを巻き込んだ環境の構築が絡んでいるようである。

1. アメリカで起きている健康志向の高まり

アメリカ全土で起きている健康志向の上昇が大きく影響したことは明らかである。肥満や生活習慣病といった深刻な問題に対して、現在ニューヨークやシカゴをはじめとする都市ではソーダなどの炭酸飲料を制限する規則の制定が計画されている。 実際、ソーダやカロリーゼロのソーダなどの炭酸飲料の売上はここ12年連続で減少し、一方でボトルウォーターの売上は急上昇しているのである。この健康志向ブームが、砂糖や人工甘味料を一切使わないラクロワにとっても追い風となったのでは。 stat (グラフはNYタイムズより転載)

2. エンゲージメントを中心としたオンラインマーケティングに集中

『ミレニアル世代に効果的なブランド構築方法』でも述べているように、ミレニアルは広告の美辞麗句に敏感で疑い深く、Authenticity(信頼性)を大切にする傾向にある。この点においては、ラクロワはどちらもクリアしたといえるだろう。なぜならラクロワはトラディショナルマーケティングと言われるテレビやプリント広告を一切使わず、インスタグラムを中心としたオンラインマーケティングを重要視したからだ。 具体的には影響力のあるブロガーやフィットネス業界のアイコン的人物にラクロワを飲んでもらい、SNSでポストしてもらうことに投資したのである。テレビや雑誌などのマスメディアでは宣伝されていないため、ミレニアルがインスタグラムやインフルエンサーのポストを通してラクロワを発見した時には、まだ世に知られていないものを発見した!という高揚感と信頼感が湧き、同時にマイナーブランドの支持という特別感も生まれる。 これがさらにインフルエンサーを含む知り合いの間で広がっていくと自分もシェアしたいという感情に繋がっていくのではないだろうか。さらにシェアやポストを啓蒙する働きかけとして、ラクロワはハッシュタグを使った。ラクロワ独自のハッシュタグでフォロワーにラクロワ好きを自由に表現してもらい、ラクロワ自身がリポストするだけでなく、健康意識の高い人たちの中でよく使われているハッシュタグなどとも絡めたエンゲージメントを続けた。 とにかく定番の広告媒体という表玄関ではなく、じわじわとオンラインで根ざし、ユーザーに寄り添って広まっていったのである。 lacroix (写真はラクロワインスタグラムより転載)

3. ユーザーと一緒に作り上げるブランド構築手法

ユーザー(主にミレニアル)とのエンゲージメントに妥協がなかったラクロワだが、このエンゲージメントはブランディング形成にも一役買っている。ラクロワは終始”イケてる”ブランドとしてユーザーと一緒にブランドを作ってきた。時にはユーザーが有機的にコンテンツを作り、広がっていったものさえもある。その結果、ラクロワというもの自体だけでなく、ラクロワを飲むということがステータスシンボルにさえなっているのである。 実際に、ラクロワは”イケてる”ブランドになるべく、カリフォルニア州で毎年行われる音楽イベントのコーチェラのパーティーに商品を出展。同イベントには毎回多くのアーティストやセレブ、モデル、インフルエンサーが集まる。このイベントは音楽だけでなく”ボホチック”と呼ばれるファッションにも注目が集まり、まさに”イケてる”人のみぞ集まるお祭りなのである。このイベントで、ラクロワはインフルエンサーを雇い、彼らがソーシャルメディアにポストする写真に商品をさりげなく写してもらうことを行った。 結果、このインフルエンサーたちは自分たちを”Sparkle Squad”(スパークル軍団)と称して盛り上がり、ラクロワのソーシャルメディアフォロワーは10万人以上増えたという。また、”LaCroix over boys”(男子よりラクロワを選ぶ!)と書かれたTシャツがバズになるになるあたりも、ラクロワがイケてる女子から好かれていることがわかる。 lacroix-tshirt (写真はラクロワインスタグラムより引用) ラクロワのネオンの缶はソーシャルメディア映えし、多くのファンがラクロワと一緒に映るポストを見る。それに加えて、ポートランドやサンフランシスコといったアートやデザインの感度の高いエリアで活躍しているアーティストがアート作品としてラクロワを使っていることも、さらにファンのロイヤリティを助長したと考えられる。 サンフランシスコで人気が出ているストリートアーティストfnnchは、ミレニアルズ版アンディーウォーホルのキャンベルスープ缶とも称された、ラクロワを扱ったアート作品を手がけた。彼のような作品が、ラクロワとそれを取り巻く魅力的でおしゃれなも空間のイメージを作り出し、ファンもアーティスティックなポストをしたり、まるで自分もそのデザインの中に入ると思わせる”イケてる”環境を作ってきたと言えるのではないだろうか。 andy (写真はこちらのサイトより転載)

まとめ

今回アメリカの炭酸飲料業界で起きている変革について紹介させていただいた。ブランドが生き残っていくためには健康志向という表面的な流れだけを掴むのではなく、魅力的な体験が何なのか、感情レベルで察知していく必要があることをおわかり頂けたと思う。 特にミレニアルから支持されるブランドになるには、健康的な飲み物であるという事実だけでなく、それを飲むことで”イケてる”体験を創造できるパッケージを提供していかなくてはいけないということがラクロワの成功事例からわかった。 大手なのかどうかは、特にミレニアルにとっては魅力とはならない。大事なのはそのブランドを通して消費者がどんな体験をするか、そしてそれをイメージできるように伝えていくことである。そのためにはエンゲージメントの量や質を高め、ブランドをユーザーと作るというスタンスで一度ブランディング・マーケティング戦略を見直してみてはいかがだろうか。 参考: Diet Coke's new cans and flavors are Millennial-friendly Bottled Water Continues to Take the Fizz Out of Diet Soda How LaCroix Bear Coke and Pepsi in the Sparkling Water Wars Here's Why It Feels Like You're the Only Millennial Not Drinking La Croix Why LaCriox sparking water is suddenly everywhere MERIDIAN ASSOCIATES INC. Summary List LaCroix Uses This Brilliant Tactic to Win Over Millennials by the Droves Have we reached peak sparkling water? La Croix launches boozy new cocktail menu Sales are exploding for a little-known soda brand with a cult following These ‘9 Cans of LaCroix’ paintings are Warhol’s ‘soup cans for millennials’

【2018年】マーケティングの未来はITトレンドの先にあり?マーケティング施策7つのまとめ

2018 marketing trends
2017年のマーケティング施策の結果はいかがだっただろうか。反省・改善点を踏まえ、2018年のマーケティングトレンドをキャッチし、新たな戦略へのヒントにしていただきたい。 そこで今回は2018年マーケティングトレンドを様々な分野と関連してまとめた。一見マーケティングには関係ないと思えるような最新技術の活用や、そこにある潜在的なマーケットのチャンスなど、業界関係なく検討すべき把握しておきたいものばかりとなった。 関連記事:【2018年】ITの最新トレンド10大予測

自動車産業、音声認識、iPhoneの技術進歩から見えるトレンド

1. 自動運転車の未来には新しいメディアチャネルの機会があり?

自動運転業の勢いはマーケターもマークしておくべきことがある。まずはその勢いについて例をあげると、自動運転車開発会社であるWaymoは400百マイル(644㎞)もの自動運転車の試運転をアメリカの一般道で実施済みであり、Tesla、Audi、Mercedes-Benz、BMWなど多くの高級車が自動運転機能を持ち始め、大手自動車配給サービス会社Uberは約19億ドル(1900億円)ものVolvoを購入したというのである。 現在市場に出ている機能はクルーズコントロールや自動ブレーキなど部分的な自動機能であるが、先に述べた勢いを踏まえると、今後かなりのスピートで全自動へシフトしていくことなる。そしてこの進歩が進むにつれ、運転手が運転に集中する必要が無くなってくるはずだ。 そうなると、彼らはその代わりに他に何をするのか。何かしらのコンテンツを消費するという選択肢が考えられないだろうか。つまり乗客は自動運転車のカーナビに流れる映像を見たり、スマートフォンをいじったりする時間が増えるということである。UberやLyftなど商用の自動運転車に関しては車内広告などが普及してくるかもしれない。 map of Autonomous Vehicle Industry ↑の写真はリンクより引用。大手メーカーがテクノロジーを強みとした新興企業とタイアップしていることがわかる

2. 音声検索のための最適化がSEOの勝ち組に残る鍵?

Googleによると2016年にあった検索の約20%が音声認識を使ったものだったという。また、アメリカ国内のアンドロイドユーザーに絞ると25%という驚きの数字がある。これは2020年までに50%にまで上昇するとも予測されており、ウェブマーケティング従事者にとって、音声による検索のためのウェブサイト最適化が必要になると言える。 なお、音声による入力はタイピングより簡単なので、1回の検索でたくさんの単語が入ると予想される。つまり、一般的に少数の単語を検索キーワードとするのではなく、より具体的かつ多くの単語に引っ掛けてコンバージョンを稼ぐようなロングテールなキーワード設定が必要になるのではないだろうか。

3. 新型iPhoneのおかげでARはユーザー、マーケターにとって身近なものになる

まだ記憶にも新しいiOS11には、「ARKit」というAR(拡張現実)アプリ開発フレームワークが搭載されている。ARを使ったアプリやコンテンツ作成のオープンソース化がいよいよAppleからなされたのである。また企業のARコンテンツ開発にも開発の進捗が見られる。例えばメジャーリーグベースボール(MLB)のiPhoneアプリは試合中にiPhoneを通してコートを見ると、画面上に打率や選手の情報が出てくるという。また大手家具小売店、IKEAはスマートフォンを通して、実際に家の中に家具を配置してみた様子がわかるARアプリを開発してる。 iPhoneにAR機能が加わったのはただの新機能ではなくコンテンツマーケティングなどにおいてゲームチェンジャーととらえるべきだろう。もしかしたらインスタ映えではなくAR映えといったコンテンツが人気になることもありえるかもしれない。 AR MLB case ↑の写真はEngadgetより引用

まだマーケティング実務に時間を費やしているの?人工知能によるスマートな処理

4. マシーンラーニングによるマーケティングオートメーション

技術的には目新しくはないが、マシンラーニングはマーケティング分野でも実用レベルで使えるところまできている。使ってから短期間でもその導入効果がわかりやすかったり、最近では低額で始められるプランもあるので気軽さが高くなってきている。代理店に高いお金払う必要なく、マーケターは基本設定だけ登録しておけば良いのでミスや人件費の削減、的確な分析に基づく効果が期待できるためさらに浸透していきそうである。

5. AIによるメッセージ管理

業界全体を通してこの機能のROIはまだないが、期待値は高い。特にオンラインビジネスにおいてメッセージ機能の重要性が高くなっていることは下記に挙げるデータからも言える。   1)世界で使われているアプリ上位10個のうち、6つがメッセージングアプリである 2)消費者の65%は企業に問い合わせをするよりメッセージングアプリを使うことを好む また、AIを使ったチャットボットによる顧客サポートで大幅に業務のコストを減らせるという点や迅速で的確な対応によるサービスの向上ができる点を達成できれば、売上利益に大いに貢献できる要素なのでは。 関連記事:人工知能(AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル

ソーシャルメディアマーケティングの重点チャネルを見極めよう

6. インスタグラムの台頭

インスタグラムは2017年9月時点で毎月のアクティブユーザーが8億人に達したと発表した。ソーシャルメディアの重鎮、Fecebookは20億人なので数字的には差はあるものの、インスタグラムの勢いと今後の期待値は高い。2016年下半期に追加となったインスタグラムのストーリー機能は、類似機能の先駆けであったスナップチャットを1年足らずであっさり抜いた。またブランドエンゲージが他のチャネルより高かったり、広告の規制などもよりソーシャルメディアマーケティングに注力をしているブランドを呼び込む要素になっているという。 またEコマースプラットフォームがインスタグラムフィードから商品詳細情報やそのまま買い物ページに飛ぶことができるような機能を始めたり、インスタグラム側もショッピング機能を強化したりと、ビジュアルからブランドの確率と、購買に繋げるルートが確立されていきそうである。 snapchat vs instagram stories ↑の写真はrecodeより引用

7. Twitterは落ち込み気味

Twitterはユーザー獲得に苦しんでいるようだ。2017年の第二四半期にはマンスリーアクティブユーザー数が全く増えなかったという事実もある。そのため2018年はユーザー獲得に手を焼き、広告機能や劇的な新機能の追加などは期待できなさそうである。 関連記事:オンラインブランドのソーシャルメディア活用事例ー成功の秘訣は”ユーザーを巻き込む”こと

まとめ

今回は自動車産業、音声認識、新型iPhone(AR)、人工知能、ソーシャルメディアなど一見マーケティングに関係ないように思える最新技術のトレンドを列挙した。しかし、これらは今後マーケティング活動に大きな影響を与える可能性がある。今までの成功事例や経験を元に作り出すマーケティング施策の実行も大事だが、投資家が最新技術に出資をするようにマーケターも新しい技術を意識したチャレンジングな投資的マーケティングも必要なのかもしれない。 参考:18 Marketing Trends to Watch in 2018