これまでも幾度となくFreshtraxでトピックとして取り上げているコーポレートカルチャー。
組織の長期的な成長を考えると、もちろん重要そうに聞こえる一方で、「何から始めるべきか正直わからない」「組織改革って大変そう」「自分は興味を持っているが、どうやって周りの社員を巻き込めば良いのだろう?」と、悩んでおられるマネジメントや人事担当の方も少なくないのではないでしょうか?
本記事では、前編のコーポレートカルチャーを促進するチームビルディングのコツとは?ハワイで行われたbtrax社員リトリートの事例をご紹介【入門編】に続き、実践編として、2023年の秋頃にハワイで行われたbtraxの社員リトリートでの事例をご紹介いたします。海外へ行かずとも、今日からいつものオフィスで実践できるようなアクティビティもございますので、ぜひ気になったものから実践してみてください!
ハッピーな気持ちでリトリートをスタート!ウェルカムギフト
東京とサンフランシスコ、それぞれのオフィスから飛行機で移動してきたメンバーがハワイで集結。最初に、メンバー全員にCEOであるブランドンからのメッセージカード付きWelcome bagをプレゼントしました。
バッグの中には、色々な予定が詰め込まれたアクティブな旅程を健康的に過ごしてもらえるよう、ビタミンC飲料の粉末や酔い止め、ハンドクリームなどを入れました。
また、このリトリートのためにデザインチームが作成したスペシャルステッカーも。(”You are an inspiration!”と書かれた名刺サイズのカードについては後述します。)
特に日本チームは長時間のフライトの後で、到着時は少し疲れた表情を見せているメンバーもいましたが予想外のサプライズギフトに笑顔を見せてくれました。
ちょっとした気遣いや贈り物も、チームメンバーへの敬意や感謝を表し、「自分たちの日々の頑張りはちゃんと認識されている」と感じてもらえるきっかけとなります。
まずは個包装のチョコレートなど、休憩中にちょっと手に取れるような小さなサプライズから始めても良いかもしれません。

ウェルカムギフトの中身。それぞれに手書きのメッセージが添えられている
知っているようで知らないチームメンバーの素顔。ミングル・ビンゴ
btraxでは今回のリトリートに限らず、毎週日米のチームが全員参加するオンラインでのチームビルディングの時間を儲けたり、ハロウィンなど年次のイベントも実施しています。
また社内でのコミュニケーションは日本語と英語が飛び交いつつも、ベースはアメリカ英語のため、基本的にはかしこまらず、カジュアルでオープンな雰囲気です。よって、メンバー間のやりとりは比較的活発ですし、それぞれのメンバーの距離も近いのですが、それでもお互いまだまだ知らないことはある!
ということで、リトリート一発目のチームビルディングアクティビティとしてミングル・ビンゴ(Mingle Bingo)というゲームをやりました。ミングル(Mingle)とは英語で、混じり合う・交流するといった意味です。
通常のビンゴは25マスの中に数字を並べ、読み上げられる数字と合致するものをチェックしていき、縦横斜め、どれかしらの一列を誰よりも先に制覇することで勝利となります。
ミングル・ビンゴでは、数字の代わりに、それぞれのメンバーのファン・ファクト(ちょっと意外な事実)が書かれています。
事前にそれぞれのメンバーのファン・ファクトを教えてもらい、誰についてのことなのかわからない状態でそれぞれの紙に印刷しておきます。
参加者は、他のメンバーに話しかけ、そのファン・ファクトの主を見つけることができたらチェックをつけることができます。話しかけられたメンバーは、基本的にYesかNoで答えます。
例えばこんな感じです。
「あなたの子供の頃の夢はお医者さんでしたか?」
「No!」
「あなたはトランポリンで宙返りすることが特技ですか?」
「Yes!」
これを制限時間内に繰り返していき、最初に一列を制覇できた人が勝者です。
同じオフィスにいてお互いよく知っていると思っていたメンバーの知らない側面を見つけたり、これまでオンラインだけで話をしていたメンバーの肩を叩いて話しかけたり。意外なファン・ファクトの主が判明した際には歓声が上がるなど、非常に盛り上がりました。
このアクティビティは、印刷した紙を持って動き回れる環境であれば、いつものオフィスでやっても十分盛り上がるアクティビティですので、ぜひやってみてください。

大いに盛り上がったミングルビンゴの様子
ホノルルの街を駆け回れ! バリューを体感するスカベンジャーハント
ここで突然ですが、みなさま弊社のカンパニーバリューをご存知でしょうか?
btraxのカンパニーバリューは4つ。
- Be a forward-thinker
- Driven by creativity
- Empathize differences
- Fearless in trying something new
このそれぞれのバリューを、今回のリトリートで改めて身をもって体験してもらうには?と考え、今回やってみたアクティビティがホノルルの街を舞台にしたスカベンジャーハントです。
メンバーを4つのチームへ分け、それぞれにミッションが羅列されたリストが送られます。それぞれのミッションはホノルルの街の中を動き回らなければ達成できないようになっており、制限時間である2時間以内に最も多くのミッションを達成し最も高い得点を出したチームが勝ちとなります。
ミッションは、例えば「Marrie Monarchへ行き、チームでグループ写真を撮影してシェア」「ABCストアで買えるジンジャービールの販売元のブランドを答えよ」「ポストカードになりそうな写真を撮って来て!素敵な写真を撮ったチームには追加点あり!」など。
このゲームに勝つためには
- 制限時間により多くのミッションを達成するため先を見据えて動き
- 自身のチームの個性や創造性を発揮して、
- 他チームと差別化し、
- これまでやったことがないことにも挑戦する必要があります。
燦々と輝く太陽の下、それぞれのチームが街中を走り回り、各々のやり方でミッションをクリアしていきました。
普段の業務や役割関係なく、それぞれの強みを発揮してゲームを進めていく中で、これまで以上に各メンバーの良さに気づいたり、お茶目な一面を垣間見たり。同じミッションでも、それぞれのチームによってアウトプットの形が異なり、激戦となりました。
ここまで手の込んだものでなくても、例えば「二人一組で、会社の中の素敵なスポットの写真を撮ってくる。一番素敵な写真をとってきたチームが勝ち!(最後に参加者全員で投票する)」というくらいシンプルな設定にすれば、限られた時間の中でも実践しやすくなります。
また、業務と絡めて、「一緒に100つの椅子を隣の部屋へ移動させる」「未開拓の営業先へ二人で飛び込み営業へ行ってみる」など、”少しチャレンジングで一人でやるのは大変だが、人とやったら楽しめる”ようなことをあえて複数人でゲーム感覚でやってみるだけでも、関係性は深まります。
筆者もこれまでの仕事でイベントのためにTシャツを2-3人で1,000枚近く袋詰めするという作業があり、気が遠くなりそうでしたが、アップテンポなBGMをかけながら、どうよりすれば効率的に作業ができるかを他のメンバーと試行錯誤しながら乗り切りました。その作業を一緒にやり切ったメンバーとはそれ以降、戦友のような関係性が出来上がりました。

一人一人のメンバーへ手書きのメッセージを!Value card
一つ目のギフトバックの中に入っていた小さなカード。btraxでは昔から、カンパニーバリューを体現していたメンバーへ「あなたは素晴らしいよ!」という一言メッセージを贈る習慣があります。
こちらのカードは、今回のリトリート用にリニューアルした新デザイン。宛名と送り主を書いて、その人が体現しているとバリューにチェックをつけ、一言メッセージを書く仕様になっています。
リトリートの最初に、運営チームから「今回参加している全てのメンバー、一人一人に対してカードを書いてください!」と参加メンバーへお願いをお願いし、最終日にカードの交換会を行いました。
このカードを渡し合うアクティビティは、もらった側が普段の頑張りを認められて嬉しいのはもちろんのこと、それぞれのメンバーに、手書きでカードを書くことによって、日頃自分が一緒に働いている一人一人の同僚の良いところを、ふと立ち止まって考えてもらうところにより意義があると考えています。これは、一緒に働くメンバーへの感謝の気持ちを感じる時間を意図的に作り出すということです。
感謝の気持ちを感じることがビジネスへ良い影響を与えるということについては、非常に多くの記事が書かれており、「感謝の気持ちを持つ」こと自体がカンパニーバリューになっている有名企業もあるほど。
日々スクリーン越しに大量のメッセージをやりとりしているからこそ、あえて手書きのカードを手渡しする。私自身も、全メンバーへカードを書く中で、改めて素晴らしいメンバーに囲まれていることを再確認すると同時に、普段なかなかそれを言葉で伝えられていないことにも気づきました。
カンパニーバリューと関連付けづとも「日頃一緒に働いているメンバーの良いところをカードに書いて渡す」だけでも、同じような効果が得られますので、ぜひご自身のチームでもぜひ実践してみてください!
ちなみに弊社では今回のバリューカードアクティビティだけではなく、日常的に毎週の社内会議で「今週のカルチャーリーダー」と題して、前週に特にカンパニーバリューを体現していたメンバーを紹介するコーナーを設けています。

コーポレートカルチャーは一日にしてならず!
btraxのハワイリトリートから、チームビルディングのためのアクティビティの事例を紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか?
btraxではバリューやミッションとは別に、” We are all designers”という標語があり、デザイナー職以外のメンバーも含めて、btraxに関わる全てのメンバーがデザイン思考的なマインドセットで日々働くということを大切にしています。
それは、例えば、一見自分たちには難しすぎるように見える問題でもクリエイティブな解決策がないか多角的に検討してみる、ユーザー視点でベストなソリューションや体験は何かを常に意識する、といった具合です。
ここでいう”ユーザー”とは、今回のような社員向けのプログラムを企画する上では、”社員視点”でのベストを追求することとなります。
一見するとビジネスとは直接関係ないような活動も、長い目で見ると、チームメンバー間の円滑なコミュニケーションの促進、厳しい状況下でも耐えうる信頼関係の構築、枠に囚われない自由な創造性を鍛えるなど、様々なベネフィットを会社にもたらしてくれます。
btraxでは、社内に限らず、クライアント様向けにも数時間の手軽なものから数ヶ月に及ぶ長期のプログラムまで、オーダーメイドの社員研修やワークショップをご提案させていただいております。まずはご相談からでも大歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。

コーポレートカルチャーは一日して成らず!





写真は




移転前のサンフランシスコオフィスの一画。バリューの一つ「大胆にやろう」がプリントされたTシャツと、スタッフの写真が飾られている
遠隔でリモートで操作ができるロボットBeam「Beamのおかげで日本のスタッフも気軽に話ができます。会議室に1台だけある姿を見るとシュールですけどね笑」と石塚氏
各会議室にはChromeboxが用意されている。米国では居抜きが一般的で、家具もこちらのオフィス用意されていたものを使用している
オフィスエントランス。エレベーターを降りると大きなロゴが来客者を迎え入れる
エントランスに設置された飾り棚。棚を彩る小物はメルカリを通じて購入したものだそうだ
インタビューにご対応頂いたメルカリ共同創業者であり、メルカリUSの石塚氏
社内リフレッシュスペース。こちらに用意される食べ物や備品の管理もオフィスマネージャーの役割だ
オープンスペースにはビリヤード台も用意されている
メルカリ、移転を控えたサンフランシスコオフィスのバルコニーより
888 BrannanにあるAirbnb本社(写真はMark Mahaney)
オフィススペースはビル全体で16の空間に分かれており、それぞれ50人ほど収容できるようになっている。
各空間にはオーダーメイドのテーブルやスタンディングデスク、3つの通話ブース、そしてオープン/クローズ両方に対応可能なガレージ型ドアを備えた最大30人収容可能なミーティングルームを入れている。様々な働き方に対応できるスペースを用意しているのだ。
写真はMariko Reed
実際に同社は2016年に宿泊場所だけでなく、旅行ツアーや体験を提供するサービスも始めていることから、社員がオフィス体験を向上させる取り組みに加わることはユーザー体験を大事にする同社にとって大きな意味を持つのだ。
このような空間で、Airbnb社員は今日も顧客をイメージしたサービス設計に携わっている。

「コーポレートキャンパス」と聞いた時に一番に思い浮かぶのが、カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle本社のGoogleplexだろう。「キャンパス」という言葉が入っているように、コーポレートキャンパスには大きく次の3つの特徴がある。
BIG & Heatherwick StudioによるGoogleの新キャンパスのデザイン
こうして他に類を見ない充実した施設とそこでの社員の自由な働き方はこの種のオフィスの最大の特徴だ。そして、先述のGoogleを含めた世界の4大テクノロジー企業と言われているGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の本社はすべてこのコーポレートキャンパスの形態を取っている。
そんなコーポレートキャンパスはどのように成り立ってきたのだろうか?
Bell Labsのトランジスタチーム(写真は
Bell Labs(写真は
アイビー・リーグを代表するハーバード大学の中庭、ラドクリフクアッド
それまで都市部にオフィスを持っていた大企業が少し離れた郊外にコーポレートキャンパスを建てたことは、当時の人口移動問題に繋がった。1950年代、戦後のアメリカにおいて都市部の人口は溢れ、さらに市民は人種ごとに分かれて暮らし、不安定な治安状態であった。その中で中流・上流階級の白人が、非白人の多い都市部から郊外へ移る、いわゆる「ホワイトフライト」が発生。
コーポレートキャンパスには高学歴の白人研究員が多く集められたこともこのホワイトフライトを起こした要因の1つとなった。
デンマーク・ビルンに2019年完成予定のLEGO Campus
ここに現時点で企業のコーポレートキャンパスが提供する施設・スペースを並べてみた。このリストを見てみると、現代のコーポレートキャンパスがもはや単純に「オフィス」とは呼べないほどの施設になっているのがわかる。

↑Steelcaseによるレポート”Brand, culture and the workplace”より引用。やはりロゴを散りばめる等でブランドを表現している企業は70%と多くいるが、それで十分なブランディングができているとは言えない
オフィスにおいて企業のカルチャーとブランドは混同してしまいがちだが、カルチャーが社員のアイデンティティだとするならば、ブランドは企業のアイデンティティだと捉えられる。オフィスはこの両方をバランスよく表現するべきで、ブランドを通して企業がなりたいと思う理想と近しいカルチャーを構築できる人材を獲得し、そこでできたカルチャーでブランドをさらに強化していくという相互間の関係性が大切になる。
それではそのブランドを上手にオフィスに落とし込んでいる企業5つを紹介しよう。
話題の「民泊」サービスで世界を牽引するスタートアップ、Airbnb。サンフランシスコでも特に名の知れた企業であるが、その本社オフィスは彼らが提供するサービスとそれを実現する企業のビジョンを明確に表現している。
倉庫跡を利用した広々としたスペースのオフィス建物には大小いくつものミーティングスペースが用意されているが、その中で1つとして同じデザインのものはない。それぞれのミーティングルームは実際にAirbnbで掲載されているスペースを再現しているのである。
フロアやエリアごとに「ブエノスアイレス」「京都」「アムステルダム」といった世界の都市をテーマに掲げ、色のパターン、材質等でローカルの雰囲気を表現。社員はオフィスにいながら世界中に登録されている物件を味わうことができる。
このようにAirbnbの本社オフィスは彼らが提供するグローバルスケールなサービスをデザインで表現している一方で、それを利用する社員の「ローカルとしての意見」にも気を配った。同社は今回デザインを決定する前段階で、社員に”Employee Design Exeperience”と呼ばれるプログラムを提供。世界にある実際のスペースを再現しながら、同時に本社にいる社員にデザインの最終的なタッチを手伝ってもらい、彼らのアイデンティティを落とし込んでいった。
「暮らすように旅しよう」という同社のステートメントにあるように、「現地の住民のような生活で得られるリアルな体験」と「ユーザーが持つ独特な視点」の調和で限りない体験価値を提供していくという彼らの姿勢が、オフィス全体で強く伝えたいメッセージとなっている。
今回画像を用意することはできなかったが、社内には人を撮った写真がいくつも飾られており、その被写体は実際にスペースを貸し出しているユーザーだ。Airbnbは彼らあってのサービスであるため、「そのユーザーのためにサービス開発を行っていく」という思いを常に持ち続けるようにしているという。
誰のためにより良いサービスを求めていくのか、社員全員が常にその意識を持って仕事に取り組めるよう、オフィス環境からその風土を整えている。ユーザーとの接点を常に意識する姿勢を表現しているAirbnbオフィス。この場所は訪れる人すべてに、彼らがいかによりよいサービスを追求しているのかを強く伝えている。
Ancestryは戸籍制度のないアメリカにおいて、ユーザーに自分の先祖やルーツを調べることができるサービスを提供している。入国記録や移民記録、婚姻記録に兵役記録に至るまで様々なデータを活用し、家系を辿っていく。そうすることで「人のつながり」を見ていくことを可能にしている。
だからこそAncestryがこのオフィスを作る上で重視したのが、彼らが持つテクノロジーを通じていかに人間味を表現できるか、というところだった。その背景から、オフィスの壁には自社サービスを通じて社員自身が見つけた、まだ見ぬはるか遠い親戚の写真と社員自身の写真が2つ並んで掲示されている。
こうして写真を2枚並べることで、扱うものはテクノロジーだが、それを使って提供したいことは「人のつながり」を見つけ出しユーザーの感情に訴えかけるもの、という企業の想いが強く伝わるようになっている。
またオフィス建物の入り口には複数の色、層で作られたグラフィック作品が展示してあり、異なる色が様々な人々のそれぞれの先祖を表現。色を重複して使うことで、世界の歴史は私たちが気づかぬところでも強いつながりを持って構築させていったものであることを表し、企業としてこのように大きなビジョンを持ってサービスを提供してきたことを伝えている。
オフィスの機能面でも「人間のつながり」を意識しているため、休憩用の部屋やファミリールームといった場所は人が集まる場所としてオフィスの中心に存在し、そこで生まれる社員の交流をAncestryは何よりも大切にしている。
このように企業が人間のつながりというものに対しどのような視点で取り組んでいるのかが見えてくると、彼らが提供する価値の重みも自然と感じられるようになる。
買い物代行プラットフォームのInstacartはサンフランシスコで急成長を遂げてきたスタートアップの1つ。スーパーやドラッグストアなど複数の小売店と提携し、ユーザーが買いたいものをオンラインで指定すると、ショッパーと呼ばれる個人がユーザーの代わりにそれらを買って即日配達するサービスを実現している。そのオフィスデザインは先日インタビューを行ったSeth Hanley氏によるものだ。
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また、食料品配送ボックスで作られたオーダーメイドのスタンディングデスクや、野菜が一面に広がる壁で買い物の体験シーンを表現。企業が常にユーザーの一般的な生活と隣り合わせでサービスを提供していることを表している。実際に社内ではショッパー向けに食料品のレプリカを並べ、良い野菜や果物の見分け方をレクチャーする空間も用意されている。
ユーザーに寄り添うブランドをもつ企業にこそ参考にしてほしいオフィスだ。
誰もが知るスポーツブランドのadidasだが、ロシア・モスクワにあるこのオフィスは特徴的だ。全6階の建物のうちの3フロアはオフィス、2フロアはフィットネスセンターで、残る1フロアはプロトレーナーが最新トレーニングプログラムを提供する「adidas Academy」用の施設となっている。このように異なる機能と目的を同時にもつ複雑な作りになっており、だからこそここを訪れる人には分かりやすく、伝わりやすいメッセージが必要だった。
このオフィスでadidasは企業としてアクティブなライフスタイルに注目する姿勢とスポーツそのものへの愛情を表現。すべての階でキックボードでの移動を可能にするため専用のトラックと保管場所を用意している。
また天井の照明部分にはサッカーボールを彷彿とさせるデザインを施し、オフィスにあるほとんどの仕切りは透明で広がりを見せることでスポーツ競技場のような広々とした空間を演出。白一面の壁にはアスリートの写真とモチベーションを上げる言葉が書かれている。
建物中央にある受付ホールは本物のスポーツスタジアムの見た目に近づけている。例えば、大きなメディアスクリーンにテキストが流れる電子掲示板やビデオ映像を流すスクリーンに2つの大きな照明塔がそうだ。受付デスクはこのホールの奥にあり、一般的なオフィスのように一目でわかる場所には置かれていない。
圧倒的な世界観を表現したadidasのモスクワオフィスは、人々がもつ同社へのイメージを一層強化するような仕組みが施されている。スポーツで人々の生活を変え、アスリートの不可能を可能にするという企業理念の実現は環境づくりから徹底して行われている。
ソーシャルゲームの最大手企業として有名なZyngaは、これまで農場管理を他のユーザーと一緒に行うFarmVilleやFacebook上で他のプレーヤーとポーカーが遊べるZynga Pokerといった、誰でも簡単に遊べて人と交流できるゲームの開発を行ってきたスタートアップ。そのゲームを通じて人をつなげることを企業理念に掲げている。創業者のMark Pincus氏はこれを元に創業間もない頃からブランディング戦略を重視していた。
彼が抱くブランドイメージを最も明確に体現したのが、企業名やそのロゴの由来ともなった彼の愛犬、Zingaである。遊ぶのが大好きでありながら忠誠心は強く、皆に愛され、何かをするときには常に中心的存在になりたがった性格が、企業が提供するゲームだけでなく、社員の行動規範としても大事な見本となった。オフィスには今も社員のペットが多く集まり、その光景は「誰にでも愛されながら人の交流を手助けする」環境づくりの大事な要素と一つとなっている。
また彼はビジネス分野がソーシャルゲームということもあって社員の社交性を重要視しており、今では無料カフェテリアを置くところが多いスタートアップ業界内でも、特に早いうちから従業員に無料の食事プランの提供を始めた。現在でも昼だけでなく、朝食や夕食まで提供しているところはZynga以外になかなか見られない。また創業時のジムのメンバーシップ制度から始まり、後に社内でフィットネス設備を自前で設置するなど、社員には積極的に手厚いサポートを行ってきた。
「世界をゲームでつなげる」というミッションステートメントを掲げる以上は、まずは社員がつながっていなければいけない。ゲームの世界を表現したオフィスで社員が固まって活気あるミーティングを行う姿はユーザーにも他の社員にもポジティブな印象を与える。
ゲーム業界により多くの人を巻き込んで盛り上げていくZyngaの姿勢の裏には、こういった社内の環境作りがある。「人をつなげる」という理念をどこでも実現させていこうするその努力はブランドに説得力を持たせるのだ。
本記事で掲載した写真はOffice snapshot、Office lovinよりダウンロード
*本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、