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現代女性の健康を支える500億ドル市場フェムテックと注目スタートアップ

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femtech
皆さんは「フェムテック」という言葉を聞いたことがあるだろうか? フェムテックとは、フェミニンとテクノロジーを組み合わせた造語で、不妊治療や生理など、女性の健康に関する問題をテクノロジーを使い解決する分野のことを指す。

急成長するフェムテック市場

Frost&Salivanによると、このフェムテック市場は、2025年までに500億ドル規模にまで成長する可能性があるとされている。すでに投資家も次なる成長市場として注目しており、The Gardianも、過去3年間で10億ドルの投資が集まったと報告している。 また、投資プラットフォームであるPortfoliaがフェムテック専門のファンドを立ち上げるなど、シリコンバレーを中心に急成長を遂げている。

ニッチではなく、未開拓市場

女性に関するデータを集め、AIなどの最新テクノロジーを活用し、女性が抱える問題を解決していくこのフェムテック市場は、歴史的に見てもかなり意義のある市場なのだ。男性のデータに比べ、女性のヘルスデータは圧倒的に不足していると言われている。驚くことにアメリカでは、1993年まで女性のデータは医学的な実験の対象になっていなかった。なぜなら、実験中に女性が妊娠した場合、胎児に悪影響があるとされていたためだ。 そのため、薬や病に関するデータは、全て男性の体への影響を測る実験から得たものであり、この法律がなくなった後も医療現場では男性のデータを使う傾向にある。このような背景を考慮すると、フェムテック分野がいかに未開拓の市場であることがわかる。 Fitbitは、今年2月に、生理周期をトラックするClueアプリとのコラボレーションを発表した。これは、ヘルスケアデータ=男性の体のデータといった、偏ったデータ収集状況を正す第一歩と言えるだろう。 今回はこのように急成長を遂げているフェムテック市場で注目されるスタートアップを4社ご紹介したい。

1. 生理用品界のディスラプター:Cora

皆さんは次の画像を見て、何を思い浮かべるだろう。 Cora Tampon case1 写真はCoraのInstagramオフィシャルアカウントより Cora tampon case2 写真はCoraのInstagramオフィシャルアカウントより 実はこれら、生理用品のサブスクリプションサービスを手がけるCoraの、タンポンを入れるケースなのだ。生理用品のパッケージといったらピンクなどのコーラル系色が使われることが多いが、Coraのデザインは際立ってスタイリッシュだ。 この背景には、生理をもっとポジティブな経験に、というファウンダーMolly Haywardの思いが込められている。女性用の製品はとりあえずピンクにして売ればいい、といった業界の常識を覆した。ケースのデザインをスタイリッシュにするのは、これまで生理用品を袖の下に隠してトイレまで運んでいた女性達が恥じることなく明るい気持ちでいられるようにするためだ。このように女性ならではの視点で考えられたデザインが共感を集めている。

Coraとは?

Coraは、2015年に誕生した、サンフランシスコ発のスタートアップだ。ナプキンやタンポンといった生理用品のサブスクリプションサービスを手がけ、昨年7月にはシリーズAとして600万ドルを調達している。 ユーザーの生理周期や経血量などに合わせ、最適な量の生理用品が送られてくる。価格は$8から$16で、3カ月ごとに生理用品が自宅まで届くシステム。上記で述べた、スタイリッシュさやデザイン性以外にも、Coraがミレニアル世代を惹きつける理由を深掘りしてみたい。

ミレニアル世代の社会貢献欲求を刺激

Cora founderファウンダーのMolly Haywardとケニアの少女たち(写真はCoraのInstagramオフィシャルアカウントより) Coraのサブスクリプションを1カ月分購入すると、自動的にインドの少女達に1カ月分の生理用品が寄付される。インドの貧困地域では、生理用品が賄えないため、生理を迎えた少女は生理期間中、学校に行くことができない。インドに住む少女のうち、4人に1人が生理によって学校をドロップアウトしているとの報告もある。ファウンダーのMolly Haywordは、Huffpostに対し、この問題を解決するために、Coraを立ち上げたのだと語る。 彼女がケニアで英語を教えている時、少女が生理用品を買えずに授業を休んでいる光景を見て、激しい怒りと共に、使命感を感じたという。この制度は、世界中の全ての女性が清潔で健康な生活を送ることができるようにしたいというファウンダーの思いが現れている。 毎月必ず買う必要のある生理用品で、貧困地域の少女が自立することを助けられるというCoraのコンセプトは、社会に貢献することに生きがいを感じるミレニアル世代に強く響いている。

2. 年齢に左右されない!不妊治療技術の新しい活用法:Prelude fertility

前回『シリコンバレーが注力する女性活用施策の中身とは ー時代は徹底的能力主義へ』でも紹介したように、卵子保存を福利厚生として提供する企業は、経営戦略として行っている。なぜなら、優秀な女性が、自然な妊娠可能年齢に影響を受け、職場を去ることを防ぐことができるためだ。キャリアと出産の両立は、女性にとっては大問題だと言っても過言ではない。 つまり、企業にとっても、重要な労働力である女性の問題をどう支援するかは大きな課題だと言える。そんな問題を解決するために生まれたPrelude fertilityは、現在不妊治療で使われている技術を、妊娠ができる状態だがまだ妊娠をしたくない若い層に使い、女性の自由な選択を応援しているのだ。

Prelude fertilityとは?

体外受精の技術を提供する、2016年に創立されたこの企業。サービスの仕組みは以下の通り。(参照:ビジネスインサイダー)
  1. 20代後半〜30代前半で卵子、精子を冷凍、保存する
  2. 妊娠を希望する場合は卵子、精子を解凍し、Prelude fertilityが胎芽を作る手伝いをする
  3. 着床前スクリーニング(PGS)(正常な受精卵だけを移植する方法、遺伝病の有無などもチェックできる)
  4. Prelude fertilityは、胚芽を母親に戻す

ユニークなターゲットと料金体系

一見すると、一般的な体外受精技術を提供する企業に思えるだろう。しかしPrelude fertilityがユニークなのはそのターゲット層と料金体系にある。従来、体外受精の技術は、妊娠が難しい層に使われていた。しかし、Prelude fertilityは、妊娠ができる状態だがまだ妊娠をしたくない若い層をターゲットにしているのだ。妊娠や出産を年齢に左右されないで、というスローガンで、女性のキャリアと出産の両立を応援する。 アメリカでは、女性が初めての子どもを出産する年齢が、年々上がり続ける傾向にある。2014年の統計では26.3歳で、2000年時の24.9歳から大きく上昇した。この傾向はさらに加速すると言われており、卵子を保存するニーズも増えると考えられる。 体外受精を検討する際、その高いコストが懸念事項にあがるが、Prelude fertilityはそこにもアプローチしている。卵子、または精子を冷凍のために採取してから、毎月199ドルを払うのだが、(最長3年間)この金額には上記のステップ4まで含まれる。 なお、ユーザーは、冷凍卵子、精子の保管料だけ払うことも可能だがその場合ステップ2−4は別途課金となる。一般的にこの工程には5万ドル以上かかるのに対し、このサービスを使うと、採取から10年後に解凍し使用する場合、毎月199ドルを払ったとしても従来の金額の半額以下になる。Preludeのように、コストを抑えたサービスが増えれば、会社の支援がなくても私費で計画的に卵子を保存する女性も増えてくるかもしれない。

3. 妊娠を目指す人のためのウェアラブルデバイス:Ava

不妊治療のグローバル市場規模は、2022年までに20億ドルにまで成長すると見込まれている。次に紹介するAvaは、妊娠を目指す全ての人を応援するウェアラブルデバイスを販売している。また、今年の1月には同社のウェアラブルデバイスを使ったユーザーの内、1000人から出産することができたという報告を受けている。

Avaとは

ava-app 写真はAvaのPresskitより 排卵日を正確に予測するブレスレットを開発したAvaは2014年に創立したスイス発のスタートアップだ。今年5月にはシリーズBとして3000億ドルを調達している。ユーザーは、就寝中にブレスレットを着けるだけで排卵日を確認することができる。 これを身につけることでユーザーは呼吸数、心拍数、睡眠の質、体温など、生殖ホルモンの増加に関連して変化する9つの生理学的パラメーターを監視し、予測することができる。一般的に妊娠可能期間は月のうち6日程度、そのうち高確率なのは3日にすぎないと言われている。実験によると、平均で妊娠可能期間を5.3日予測し、その正確さは89%だった。料金体系は、ブレスレットが249ドルで、毎月のアプリ使用料が5ドルとなっている。

妊活をストレスフリーに

体のデータを記録するアプリはフェムテックの中でも競争が激しい分野だ。例えば、月経周期を記録するアプリであるClueやNatural Cyclesなどが挙げられる。 Avaの特徴を同社CEOはこう話す。「現在、妊活では、排卵検査薬の使用や毎日の基礎体温の測定など、日々生活に負担をかける方法が用いられています。Avaは、そんな女性の生活を少しでも楽にするために生まれ、ハードウェアとテクノロジーを活用することで女性が抱える問題を解決したいと思っています。」 従来の方法に比べ、Avaは、就寝中にブレスレットをつけるという簡単な方法で正確なデータをコンスタントに取ることができる。日本国内でも不妊治療を行う人は年々増え続けているため、カップルの負担を減らし、ストレスフリーな妊活を応援するAvaは、日本でも需要があるのではないだろうか。

4. データ活用でより自然な避妊法を実現:Natural Cycles

最後に紹介したいのは、月経周期、毎日の基礎体温をAIで分析し、避妊が必要かどうかを教えてくれるアプリ、Natural Cyclesだ。一見するとただの月経周期を記録するアプリだが、これは、アメリカの行政機関であるFDA(食品医薬品局)によって正式に避妊具として認められたアプリなのだ。 naturalcycle presskit 付属の基礎体温計とアプリ(写真はNatural Cyclesプレスキットより)

Natural Cyclesとは?

2013年にスウェーデンで設立された同社は、昨年シリーズBとして3000億円を調達した。使用方法は以下の通り。朝一番に体温を測り、アプリに入力する。数週間繰り返すと体のサイクルをアプリが分析し、避妊が必要な時はRed Day, 必要ない時はGreen dayとして表示される。 年間のアプリ使用料は$79.99で付属の小数点2位まで出る基礎体温計($28)がつく。毎月の支払いの場合は月に$9.99で、この場合は基礎体温計が付かないため、ユーザーが自分で用意する必要がある。基礎体温計は、小数点2位まで出るようになっていて、アプリを使うためにはこのタイプの体温計が必要になる。 app UI 避妊が必要な時は赤、必要ない時は緑が表示される(画像はNatural Cyclesのオフィシャルサイトより)

より自然に、安全な避妊を応援する

避妊の正確さについて、同社は以下のデータを発表している。22,785人の女性(平均年齢29歳)の、224,563通りの生理サイクルを研究しており、体温を完璧に測りアプリを利用すると99パーセントの確実性が見込まれる。なお、Natural Cyclesを使うと、一般的には避妊の確率は93%と言われているので、いかに効果的かがわかる。 避妊用ピルが普及している欧米では、「余分な化学製品を体に入れたくない」と思う自然なライフスタイルを求める若者が一定数おり、その層に受け入れられているようだ。その一方で、懐疑派も多い。ストックホルムの病院では、2017年の9月から12月の間の中絶希望者668人のうち37人はこのアプリを使っていたと報告されている。同社CEOは「Natural Cyclesは全員にとって最適な避妊方法ではなく、より自然な方法を好むユーザーに使ってもらいたい」と述べている。 Forbesは、2015年から2018年にかけて100億ドル以上の投資を集めたこのフェムテック市場は、グローバルヘルス市場の次なるディスラプター(市場を混乱させるほど、画期的なビジネスを生み出す企業のこと)になると予測している。世界人口の半分の、およそ35億人がターゲットであるこのフェムテック市場。 女性活用を戦略として捉える企業が増える中、女性社員に働きやすい環境を与えられている企業はどれだけいるのだろうか? 冒頭でも述べたようにキャリアと出産の両立は、女性にとってはシビアな問題だ。まだまだ働きたい、と思っている有望な女性社員達がやむなく会社を去ってしまう状況をそのままにするのではなく、彼女達が抱えている問題に目を向け、サポートすることが大切という姿勢が大事になってくるのではないか。 だからこそ、今回ご紹介したようなスタートアップの躍進が世界の女性達の健康を支え、ゆくゆくは企業の成長にもつながるのかもしれない。

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新サービスの初期ユーザー獲得に意外と有効なオフライン施策

新サービスの初期ユーザー獲得に意外と有効なオフライン施策

新サービスの初期ユーザー獲得に意外と有効なオフライン施策

user acquisition
freshtrax読者の方ならご存知の通り、ここ10年程でサンフランシスコではサービス開発の手法が大きく変化した。ユーザーを中心に捉え、デザインのプロセスを通して課題解決を図るそのプロセスは数多くのサービス・プロダクトを生み出してきた。 そうして生まれた新たなサービス・プロダクトが必ず通るのが「初期ユーザー獲得」のフェーズだ。いくら問題を解決する革新的なソリューションを生み出したとしても、それを使ってくれる人がいなければ何の意味もない。しかしこうしたスタートアップは資金が潤沢にあるわけではないことから、かなり地道な方法でユーザー獲得に励んでいたのは「マジックなんてなかった!スタートアップ企業の初期ユーザー獲得方法」で紹介した通りだ。 また、このような新サービス・プロダクトを広めるにあたっては、従来のプロモーションのように大規模に予算をつぎ込んで行うという手法ではなく、デザイン思考のプロセスのように仮説⇒実践⇒検証という実験的なサイクルを複数回すことで、最も効果の高い手法を特定していくことが求められる。 btraxでもこれまで新サービス・プロダクトを広めるサポートをオンライン・オフライン問わずに広く行ってきたわけだが、その中でも意外に効果のある手法もあった。そこで、今回は、btraxが実践してきた初期ユーザ―獲得方法から3つご紹介したい。

意外と効果大 ポストに届けるダイレクトメール

まずご紹介したいのはダイレクトメールだ。と言ってもInsagramやeメールのことを言っているのではない。オフラインのダイレクトメール、ポストに届くアレである。 意外かもしれないが、ダイレクトメールを活用しているスタートアップはこの最新テクノロジーで溢れるサンフランシスコ・ベイエリアに結構存在している。頻繁にやっているところでいくと、自動車保険スタートアップのMetromileは筆者の家にも月1回程度のペースでダイレクトメールを送ってくる。封筒にチラシが入っているタイプのものである。 アメリカではUSPS(米国郵政公社)が行っているEDDM(Every Door Direct Mail)という面白いサービスがある。USPSのウェブサイトに行くと、各郵便番号内の細かいエリアごとに、指定した年齢層の割合と、平均所得を見ることができるのだが、このデータを基にターゲットが多く存在する郵便番号を指定し、ダイレクトメールを送れるのだ。

btraxでは高齢者層獲得に活用

実際にbtraxでは、高齢者層をターゲットとしたサービスのダイレクトメールをこのEDDMという仕組みを利用して送ったことがある。高齢者が多く、かつ所得の高い地域を予算の範囲内で複数指定し、クライアントが開発していた新規サービスへのサインナップを促すダイレクトメールを送ったのである。 実際オンライン広告に比べると1通あたりにかかるコストは大きいのだが、一方で高いサインナップ率を獲得することができた。計画段階ではオフラインで受け取ったダイレクトメールに記載されたURLをわざわざパソコンやモバイルに打ち込んでランディングページを訪れ、そこからさらにサインナップをしてくれる人が果たしてどのくらいいるのか不安だったのが、いい意味で裏切られた結果となった。ターゲットが高齢者ということもあったため、よりダイレクトメールに親和性が高かったこともあったのだろう。

スタートアップのためのDMサービスも人気

他にもShare Locial Mediaという、ダイレクトメールの制作・発送を行うスタートアップもある。ポストカードのようなダイレクトメールが、似たような他のビジネスの分と複数で1つの封筒に入って届けられる仕組みで、Blue Apron、Lyft、ThirdLove等のスタートアップがこれまでに利用している。まさにスタートアップのためのスタートアップだ。 Lyft DMShare Local Mediaのウェブサイトより引用) Share Local Mediaがターゲットにするのは大都市部の高所得者層で、年齢は25~49歳が中心。ターゲットは5種類に分けられ、eコマース(ジェンダー共通/男性/女性)と、母親層、そしてその地域に新たに引っ越して来た層である。これらのグループの中から1つ指定し、自社のダイレクトメールを他社のものと共に届けてもらうことができる。 毎日山のように目にし、スルーすることに慣れてしまっているオンライン広告やeメールニュースレターと比べて、ポストに届いたものは1つずつ確認する人が多く、ターゲットにメッセージが届きやすいのだろう。そういう意味では、ターゲットリーチにおいて存在感を出す手段として多くのスタートアップがダイレクトメールを利用するのも納得できる。

実物を体感してもらう 草の根ポップアップ展示

もし新たなプロダクトのユーザーを獲得したいのなら、ポップアップ展示は非常に有効だ。もちろんb8taのような新プロダクトを展示するスペースに出品できれば大きいが、それ以外にも地道に草の根活動で展示する方法はある。

クライアント企業内に昼寝部屋を設置

btraxでは以前海外のマットレスメーカーの日本進出をお手伝いした際、ローンチ前のユーザー獲得活動の一環として、他のクライアント企業に掛け合い、各企業内に昼寝部屋を設置するという試みを行った。 日本の働き盛りのビジネスパーソンの就寝時間が短いことは有名だが、同時に仕事の生産性UPに対する昼寝の効用も認知されつつあったことから、マットレスのプロモーションとしても企業の生産性対策としてもちょうどいい施策となったのである。 実際には企業に会議室の1室をご提供いただき、その部屋を2週間の間「昼寝部屋」とし、マットレスを置いて社員の皆さんに自由にマットレスを体験してもらった。その後同フロアの社員の皆さんにアンケートを送付し、回答者には特別割引コードを差し上げた。 また、ある企業ではホワイトボードがあったため、体験した社員の皆さんに自由にコメントを書いてもらうようにしたのところ、非常に正直な意見を沢山いただくことができた。ちなみにbtraxのクライアント企業のご厚意で場所の使用コストはかからず、発生したのは運搬コストのみであった。

サンフランシスコのランニングイベントで靴下展示

アメリカでも同様の草の根ポップアップを行った事例がある。日本の靴下メーカーのアメリカ進出をサポートした際は、同社のランニングソックスの初期ユーザーを獲得するためにサンフランシスコのランニングイベントでポップアップ展示をした。 pop-up store サンフランシスコは今年アメリカ国内170都市の中で最もヘルシーな都市に選ばれたことからもわかるように、健康意識が非常に高く、ランニングイベントも多数開催されている。そこでランナーたちにリーチし、実際にプロダクトに対するフィードバックをもらうことを実施。 ランナーの中にはサンフランシスコ・ベイエリアの住民が多いため、新サービスやプロダクトへの興味が強く、フィードバックを惜しまない。ローンチ後の今でもランニングイベントの主催団体と提携し、月に1度のイベントで定期的にポップアップ展示を行っている。

究極に地道だが有効 オフラインでユーザーをスカウト

気が遠くなるような作業に思えるかもしれないが、実は結構効果的なのが1人1人に声をかける方法だ。手作り商品のオンラインマーケットプレイスEtsyも創業当初はメンバーが実際のクラフトフェアに赴き1人1人のユーザーに対してピッチしたという成功例もあるが、どのスタートアップも一度は検討した方法なのではないだろうか。 なぜそう考えるかというと、btraxがとあるスタートアップのお手伝いでこの活動をしたときに、声をかけた殆どの人が非常に好意的な反応だったからだ。 ターゲットは小さな子を持つ親世代で、主に公園で活動していたのだが、声をかけると皆小さな子供がいるにもかかわらず、手を止めて非常に熱心に話を聞いてくれた。中には、「今どのステージにいるの?」とスタートアップの資金調達状況に興味を持つ人までいた。

実践方法は超シンプル

ちなみにオフラインでユーザーをスカウトする方法は至極シンプルである。用意したものはサービスのコンセプトを書いたチラシとサービスロゴを入れて作った粗品。これらを携え、公園に赴き、親子連れを見かけると「ちょっと今お話ししてもいいですか?」と声をかけ、サービス内容に関するピッチを繰り返した。 また、親をターゲットにしたミートアップイベントにも参加し、隣合わせた人から「何のお仕事をされているんですか?」と聞かれた際に「実はこういうことをしておりまして…」とサービスの説明を行った。 こうして獲得した彼らはテストユーザーとして、サービス改善に関する貴重なインサイトを提供してくれたのだが、この方法はもしかしたらサンフランシスコ・ベイエリアだからこそ成り立つ方法なのかもしれない。ここは街全体でスタートアップに協力的で、住人は新サービスが生まれる場に立ち会うことに慣れていて好奇心旺盛だ。 知らない人に声をかけづらい空気があり、初対面の人にネガティブなフィードバックを出すのを憚る日本では少しハードルが高いかもしれないが、やってみる価値はあるだろう。

まとめ

今回ご紹介した事例はどれも全く新しいものではなく、むしろ非常に古典的な方法だ。しかしオンラインで広告が溢れる時代に、意外と有効であるというのはおわかりいただけたのではないだろうか。btraxでは新サービス・プロダクト開発のみならずその後の初期ユーザー獲得まで一貫してサポートできるのがbtraxの強みだ。ご興味のある方は是非お問い合わせを。

銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)

銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)

銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)

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銀行での楽しい体験をしたことのある人は一体どのくらいいるであろうか? 様々なビジネスにおけるユーザー体験が改善される現代において、おそらく銀行は最も質の低い体験を提供していると言わざるを得ないだろう。 確かに、入り口にいる紳士が整理券を丁寧に手渡ししてくれるところまでは良い。しかし、そのあとの待ち時間、面倒な書類、短い営業時間、いちいち発生する手数料、融通の利かない担当者など、顧客がそこで体験する時間のクオリティーは非常に低いと感じる人も多いはず。 そして、その訪問が融資目的だったとしたら、上記の体験に加え、たらい回しにされた挙句「断られる」という体験も加わる可能性が高い。そうなって来ると時間の無駄&高いストレスという、なるべくなら経験したくない状態を体験することとなる。これは、UXデザインの概念でいうと、おそらく最低レベルだろう。 参考: UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 –

日本とは大きく違ったアメリカの銀行での体験

上記のエピソードは日本の銀行でのことであるが、これが自分が住むアメリカだとかなり異なっていた。 今回紹介するのは、法人口座で融資枠を作っておこうと思い店舗に出向いてみた際の経験。すぐに担当者を紹介され、要件を伝えると「10万ドル (約1千万円)までなら店舗じゃなくてオンラインでリクエストできますよ」との事。その場でリクエストを出してくれ、数日以内にNYの融資担当から電話が来て45分ほどの質疑で終了。簡単な書類をメールで提出した数週間後に枠が承認され、プロセスが終了した。 日本と比べ金利は高いものの、体験が非常にスムーズで、ストレスも少ない。そして何よりもスピードが早い。おそらく銀行としても、低額の融資枠の審査プロセスにあまりリソースを割くことをしていないのだろう。そのリスクの分を金利でバランスをとっていると感じる。

個人レベルだと店舗すら必要ない

そして、個人口座に関していうと、店舗に行くことはほとんどない。オンラインバンキングかモバイルアプリで事が済むから。ちなみに、アメリカでは、2014年の時点ですでに店舗やATMよりも、モバイルバンキングを活用しての銀行とのやりとり量が多くなっている。 統計的にも店舗に行くのが年間平均1-2回なのに対して、モバイルバンキングには月平均でも20-30回アクセスしている。単純に考えても、それの方が時間も手間もかからないからである。逆に店舗に行かなければならない状況を作り出している時点でユーザー体験が下がっているとも言える。 例えば、Bank of Americaのモバイルアプリでは、最近"Erica"と呼ばれるチャットボットベースのバーチャルアシスタントが様々な質問やリクエストに答えてくれるようになった。これによって、銀行のサポートに"電話"することすら、ほぼゼロになっている。 Bank of Americaのアプリに実装されているバーチャルアシスタント bofa-erica 参考: 【2018年】金融業界のAI最新動向4選

そして、フィンテックサービスはより進んでいた

この銀行に加えて、ノンバンクのフィンテック系のサービスだとこの体験はどのように違うのか。それを試すために、Funding CircleとOnDeckというサービスを試してみた。この二つはいくつかあるP2Pレンディング (ユーザー同士でお金を貸し合う) サービスを提供している。 もちろん店舗はなく、プロセスは全てオンラインで行われる。そして驚くことに、必要な情報を入力し、送信した数分後次のページに、融資可能な金額と金利手数料が表示された。これは、入力情報を元にAIが融資判断を行い、最終的には人力で確認する仕組み。リスクよりもスピードと効率性を最優先している。 自分はそこでページを閉じてみたが、その後担当者からメールが届き「いつでも借りられますよ」との催促を受けた。店舗に行くこともなく、待ち時間もほぼ数分。銀行よりも、よりスムーズな体験になっている。 参考: フィンテック (FinTech) 10の最新トレンド予測 ~改革は既に始まっている~

フィンテックの一番のメリットは優れたユーザー体験

ここ10年ほどでスマホやシェアリングエコノミー、ソーシャルメディアなどの普及で、日々の生活が著しく変化しているのにも関わらず、いまだに銀行の業務と顧客へのサービス価値は大きな変化をしていない気がする。それに対して、多くの企業、主にスタートアップが、フィンテックと呼ばれる新たな概念で、打開策を生み出そうとしている。 そもそもフィンテックがなぜここに来てそこまで注目されているのであろうか?まず、理解しておくべきは、”フィンテック”の”テック”という言葉。もちろんテクノロジーの意味であるが、それが最も威力を発揮するのが、より良いユーザー体験の実現である。 具体的には、スピードアップや、便利性の向上、そして高い透明性の実現など、これまで銀行の顧客が不安に感じていた要素を大きく改善してくれる。 その顧客体験の改善を達成するために、人工知能、ブロックチェーン、ビッグデータなどのテクノロジーを活用し、 P2Pレンディング、チャットボット、モバイルバンキング、クラウドファンディング、デジタルペイメントなどのそリュ0ションを実現している。 bank-diagram 参考: 2018年にUXデザインを取り巻く7つの変化

そもそもユーザー体験ギャップが大きすぎる

日常生活の中で、現在の銀行ほど顧客が求める体験の期待値と、銀行が提供するそれとの差が大きい業界もない。様々なプロダクトのサービス化が進み、多くの事柄がテクノロジーで解決され始めている現代において、安心、安全、セキュリティー、法令遵守を重んじなければならない金融業界は、どうしてもユーザーにより良い体験を届けにくくなる。 その一方で、スタートアップを中心としたテクノロジー系のサービスを提供している企業は、新たなことへのチャレンジや、既存の概念や規制にとらわれない方法でのサービス提供を行なっている。それにより、消費者側はより良い体験を受け取ることができるようになっている。 例えば、日本から海外に送金するだけでも、既存の銀行のシステムを利用するよりも、Transferwiseなどの、送金に特化したスタートアップのサービスを利用した方がスピードも早く、コストも安く目的が達成できる。同じく、カード決済に関してもSquareやStripeが提供する仕組みを活用しない理由が見つからない。 参考: DESIGN Shift: これからのビジネスはモノより体験が価値になる

既存の銀行の92%は10年以内に消滅する?

そんな状況の中で、Harverd Business Reviewが驚くべきリサーチを発表している。今後新たなサービス構築やイノベーションを起こせない場合、向こう10年間で既存の銀行の92%は消滅するというのだ。(出典: The Future and How to Survive It) イノベーションのスピードがどんどん加速する中で、消費者に対しての価値が提供出来ない金融機関は、フィンテック革命下においては滅びるしか道は無くなってしまうという。 その一番の理由がユーザー体験を主な原因とする顧客満足度の低さである。多くの金融サービスが提供側の目線で提供されており、デザイン思考などで考えられるような、顧客目線でのサービス設計がほとんどされていないのが現状で、世の中の様々な体験が改善される中で、銀行は大きく置いていかれている。 参考: デザイン思考入門 Part 1 – デザイン思考の4つの基本的な考え方

ディスラプトされる4要素をしっかりと兼ね備えた銀行業務

新規参入の企業によって、既存の業態が破壊される事を、スタートアップ界隈では、”ディスラプト”されるという。主にテクノロジーを活用したサービスより、これまでユーザーが感じていた不満を解決する事で一気に市場に大きな変化が生まれる事が増えている。 最近の例だとUberなどのライドシェアサービスによるタクシー業界の変革や、Netflixなどのオンライン動画配信によるビデオレンタル業界の縮小などもそれに当たる。 では、どのような業界がディスラプトされやすいのか?そしてその理由とは。まず理由としては、下記の4つがあげられる。 ディスラプトされる理由
  1. 複雑な体験
  2. 透明性の低さによる不信感
  3. 多すぎる中間業者
  4. アクセス性の悪さ (店舗の数など)
この4つの理由を見てみるだけでも、これまでの銀行が抱える問題と合致するような気がする。では、どのような業界がディスラプトされやすいのかを見てみよう。 ディスラプトされやすい業界ランキング
  1. データ, 情報, コンテンツ
  2. 音楽, メディア, 映画, テレビ, 印刷物
  3. 都市, 交通, 自動車
  4. 店舗, 商業
  5. 金融サービス
  6. 保険
  7. 薬品, 医療
  8. エネルギー, ユーティリティー
  9. 水, 食品
このように、様々な業界の変革・再編が進む中で、金融サービスにもそろそろ大きな変革の波が訪れようとしている。 参考: ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素

銀行がいらないと答えるミレニアル達

アメリカでは、個人の送金はFacebookメッセンジャーやWeChatを使ってサクッと行うことが可能である。難しいテクノロジーやセキュリティーの事はわからなくても、何が便利で使いやすいかは日常生活の中でしっかりと認識している。 このような時代には、資本力や規模よりもユーザーの数や、データ、そして優れたユーザー体験を提供できる企業の方がよっぽど構想力が高い。実際のところ、アメリカ国内の調査では、ミレニアル世代の約3分の1が5年以内に銀行の必要性がなくなるとも答えている。 そして驚くべきに、彼らの71%が銀行員と話すぐらいであれば、歯医者にいく方がマシと答えている。それだけ銀行は若者にとって体験の悪い場所になってしまっているのである。そして、彼らの40%は店舗の無い銀行でも構わないと答えている。 参考: ミレニアル世代に効果的なブランド構築方法

中国では物乞いもキャッシュレス

キャッシュレスが急激に進んでいる中国では、なんと物乞いやホームレスが"お恵み"を貰う際にも、自身のアリペイやWeChat PayのQRコードを記載されたボードを提示して、"集金"している。これは、本来であれば銀行口座を持つことが難しいとされる住所不定無職の人々でも、テクノロジーの恩恵を受けている一つの例であろう。 QRコードとスマホ決済で"集金"を行う中国の物乞い chinese-beggers

銀行の敵はすでに銀行ではない

これはすでに金融関係の人々の間では常識になってきているが、彼らが恐れるのは同業者ではない。GoogleやAmazon, Apple, Facebookといった巨大テクノロジー企業である。 なぜか?理由は簡単で、彼らはユーザーからの信頼と優れたユーザー体験を提供しているから。ちなみにこの4社はすでにペイメント系のサービスを提供しているし、Amazonはローンサービスも始めている。 現にメッセンジャー上で個人間送金を可能にするために、Facebook社はアメリカ国内だけでも金融サービスに関する50以上のライセンスを取得している。ことからもわかるとおり、今の時代は、企業を”業界別”で区切る事自体がナンセンスである。 米国ではFacebook Messenger経由でお金が送れる 8

初めての銀行口座がGoogleやAmazonになる可能性も

おそらく現在の子供達は最初に口座を持つのは既存の銀行ではなく、FacebookやGoogleになる可能性が非常に高いだろう。明らかに彼らの方がユーザーに対してのタッチポイントを多く持っているし、優れたユーザー体験を提供できているからである。 そして何より、生まれた時からデジタルデバイスとデジタルメディアに触れて育った人たちにしてみると、店舗に行くよりアプリ上で目的を達成する方がナチュラルに感じてもおかしくはない。 ユーザー全体から見ても下手な銀行よりも、例えばGoogleのような企業の方が信頼ができるだろう。なんせ、毎日使っているサービスなのだから。 Facebookに関しても、自分の大切な個人情報を惜しげも無くアップできるぐらいの信頼関係が成り立っている。もちろんAmazonにはクレジットカードの情報を預けっぱなしである。優れたユーザー体験を得られるのが理由で。 現に、TIME Magazineの調査によると、75%のミレニアルが、既存の金融機関よりも、GoogleやAmazon, PayPalといったテクノロジー企業からのサービスを受けたいと答えている。 この点に関しては、金融企業がどれだけセキュリティーを重要視したところで太刀打ちできない。ユーザー体験が悪いし、定期的に浮き彫りになる不祥事で、信頼性も決して高くはないのが理由。これからはデジタル上での体験の方が顧客にとってのスタンダードにもなり得る。 参考: これからの企業に不可欠な三種の神器とは

日本の銀行はこのままだと確実に滅びる

では日本の銀行はどうなのか?おそらく国内の銀行のイノベーションはまだまだ始まってすらいいないだろう。世界規模では、生き残りのために必死になっているこの時代に実に驚くべき状態である。それも、市場の展望が必ずしも良くないのにである。 そして、業界の歴史に裏打ちされた実績に合わせて、しがらみもしっかりと続いており、加えて規制や法的な事情でできない、もしくはできないと思い込んでいることが多すぎる。 ちなみに、日本の金融関係の方々とお話しすると、一番すごいと思うのは、できない理由がサッと出てくるところである。お決まりのフレーズは「わかってるんですけど、金融庁が…」 その割には海外のスタートアップ企業を中心に、できないとされているはずの事をテクノロジーの力や裏技を活用して、成し遂げているケースが後をたたない。そして、その一番の目的は、ユーザーメリットを高めるためである。 参考: アメリカ企業が日本企業に勝っている一つの事

生き残れるとしてもスタートアップ企業の下請け業務

既存の金融機関は、すぐさまユーザー体験を改善しなければ、今後は生き残れるとしても、フィンテック企業の下請けとしてお金の管理をする業務だけしかその価値はなくなるだろう。言い換えると、既存の金融サービスはどんどんコモディティー化が進み、その価値は加速度的に下がっていく。 顧客との接点に関する部分は、スタートアップなどの新規参入の企業か、もしくは既存の大手テクノロジー企業に根こそぎ持っていかれるのは、ほぼ間違いない。それでも、金融庁との関係や、既存の認可の関係で完全になくなる事はないにせよ、その多くが存続の危機にひんしている。 現に、CitiBankは向こう10年以内に現在の行員の1/3が必要なくなると試算している。これが50%だと予測している専門家もいるくらいである。なぜなら、未だに金融業界におけるコスト全体のおおよそ30%がオペレーションとコンプライアンスに関する人件費であるからである。 これは、全世界で13兆円以上のマーケット規模を誇る金融業界で見たとしても非常に大きなインパクトを生み出す。金融ビッグバン以上の衝撃と言っても過言ではないかもしれない。

エリートの定番キャリアから最も将来性の危ぶまれる業種へ

その昔、銀行員になるというのは誰もが羨むエリートのキャリアとされていた。これは、1989年の世界企業時価総額ランキンを見てもわかる。なんせ、Top 5のうち、4社が日本の銀行なのだから。 しかし残念なことに、その4つの銀行もすでに存在していない。もしかしたら、これから銀行に就職するのは、よっぽどの世間知らずに限られてくるかもしれない。それぐらいその存在が危ない。 1989年と2017年での企業時価総額の違い valuation-ranking 参考: 近い将来テクノロジーが葬る10の産業

銀行が真っ先に行うべきはユーザー体験改善のためのテクノロジー活用

では、そうならないためにはどうすれば良いのだろうか? ついついテクノロジー自体にフォーカスがあたりがちであり、フィンテックトレンドを追いかけてしまいがちであるが、重要なのは顧客のニーズを理解する事である事は間違いない。 例えば世界中にはいまだに20億人以上の銀行口座を所有していない人々がいる。この数字は必ずしも発展途上国だけではない。アメリカの国内にもまだまだ口座を持たない人がいる。例えばデトロイトやマイアミといった大都市のおおよそ20%がそうである。彼らは、銀行での預貯金ができないだけではなく、ローンを受けることも不可能だ。銀行との付き合いが全くないのが理由。 今後は、それら人々に対して、例えばモバイルテクノロジーを通じて新しいタイプの金融サービスを提供したりする事で、社会問題の解決と新たな顧客開拓の糸口にもなり得る。すでにその動きは始まっており、世界銀行の発表によると、2011年か2016年の間だけでも、約7億人がテクノロジーの恩恵を受け、銀行口座の開設をしている。 ここでやはり強調したいのは、主役はあくまでユーザーであり、テクノロジーはあくまでその目的を達成するためのツールであるということ。 ユーザーが欲しいのはより改善された体験である。そのためには、銀行員でも、金融に関する知識だけではなく、デザイン思考UXデザインなどの、ユーザー目線でクリエイティブな考えができる人材と、教育が不可欠となるだろう。 それを実現するために、どのように金融におけるユーザー体験をできるのか、我々btraxでも、今後金融業界向けのUXデザインサービスとプログラムを通じて、世の中に貢献したいと考えている。  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは