シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の早さ

bikeshare-in-sanfrancisco
サンフランシスコ市では2013年より市交通局を主体として、『ベイエリア・バイクシェア・パイロットプロジェクト』を実施している。 このプロジェクトでは、サンフランシスコ市交通局と民間のシェアサイクル運営会社である「Motivate」が提携し、シェアサイクルの普及・拡大を促進させ、
  • 交通渋滞の緩和
  • 移動効率の改善
  • 市民の健康管理
などを目的としている。 2017年の夏には、「Ford Mortor Company」によるスポンサーシップなどにより、「Ford GoBike」として、320ほどのステーションと4,500台ほどのシェアサイクルが導入されている。 fordgobikestation 「Ford GoBike」のステーションマップ - 公式サイトより こうして現在シェアサイクルはサンフランシスコ市民にとって馴染みのあるものになっているのだが、2018年に入り、
  • どこでも乗り捨て可能なステーションレス型のシェアサイクルである「JUMP Bike」(1月)
  • 同様に乗り捨て可能な電動シェアスクーターの「LimeBike」「Bird」 「Spin」(4月)
が突如として市街地に現れた。 「Ford Gobike」と同様に、「JUMP Bike」はサンフランシスコ市交通局と協力体制を得て実証実験を行っているが、電動シェアスクーターの運営会社である「LimeBike」、「Bird」、「Spin」の3社は市の許可を得ずに運営を始めた。 サンフランシスコ市民は新しいテクノロジーやモノに寛容なため、すぐにサービスを利用するユーザーが多く、それが違法だということにもかかわらず、あたかも電動シェアスクーターが数年前から存在していたように錯覚してしまう。 「さすがはサンフランシスコ。日本とは違ってそういったことには行政も寛容なのだろう。」と思われるかもしれないが、当初サンフランシスコ市は怒っていた。 その後裏側でしっかりとしたプロセスを踏み、驚異的な早さで意思決定と法整備を行った。 では具体的にどういった問題が発生し、市としてどのような問題解決を行っているのだろうか?また、これらの問題からシェアサイクル事業の課題点について言及したい。

ステーションレス型電動シェアスクーター「LimeBike」「Bird」「Spin」とは

limebikes-bird奥からLimeBike、Bird 現在、サンフランシスコ市街では上記の画像のようなステーションレス型の電動シェアスクーターが点在している。乗り方はとてもシンプルで、アプリを起動し、近くのスクーターを探し、QRコードをかざすだけだ。

ステーションレス型は投資評価額が高い

electricscooter-company 引用: CB insights 「LimeBike」「Bird」「Spin」3社はともに投資を受けている。 「LimeBike」はすでに世界各国でシェアサイクル事業を展開しており、投資額が高い。同様に「Bird」も巨額の投資を受けている。ちなみに同社のCEOはTravis VanderZanden氏であり、過去には「Lyft」のCOO、「Uber」ではVP of Global Driver Growthを経験した人物だ。 bike-share-funding引用: CB insights 上記のグラフのように、2017年はシェアサイクル業界への関心が高く、全体の投資額が上昇したことも各社が巨額の投資を受けたの要因となっている。 その中でも、ステーションレス型のシェアサイクルは、コストの削減や、地理的なサービス展開の容易さ、ユーザビリティの観点から特に注目を集めている。「Bird」が2018年に入ってから巨額投資を受けたことからも、この傾向は続くと言えるだろう。 では、実際にユーザビリティが優れているのかを検証するために、一般的なステーション型のシェアサイクルである「Ford GoBike」を利用したことのある筆者が「LimeBike」「 Bird」「Spin」を利用してみた。 limebikes-testdrive アプリをダウンロードしたあと、実際にQRコードをスキャンし、各社の電動シェアスクーターに試乗してみた。最初のひと蹴りのあとに、アクセルとなるハンドル部のレバーを親指で押すだけでスムーズに加速するのは確かに心地が良く、本体も小さく軽いため、とても軽快に感じた。 ステーション型よりもはるかに楽で、ステーションを探す手間や、ステーションの空きがないなどの心配をすることがなく、完全なストレスフリーであった。

「LimeBike」「 Bird」「Spin」の3社の違い

limebikes-bird-spin-uiホーム画面 左からLimeBike, Bird, Spin limebikes-bird-lime-menuメニュー画面 左からLimeBike, Bird, Spin アプリのUI, UXデザインにはすぐに改善できるような違いしかなかった。さらに、3社とも、シェアリング・エコノミー業界を牽引してきたUberのアプリUIデザインに影響を受けていた。 また、料金設定や最高時速の制限も同様に3社ともに、
  • 最高時速 22km毎時
  • 基本料金1ドル + 1分毎に15セント
と設定されていた。さらには、「Bird」「Spin」の2社は「Xiaomi M365」という電動スクーターを流用しているため、スクーター本体の性能は完全に同じであった。

なぜ3社が同時にサンフランシスコ市に現れたのか?

「Bird」はサンフランシスコ市に進出する以前に同カリフォルニア州内のサンタモニカ市でも市の承認なしにサービスを提供していた。現在は和解金(300,000ドル)を支払い、正式にサービスを運営している。 こういった動きは、初期の「Uber」を思い浮かばせる。 「市にも交通緩和などの利点があり、ユーザーにとっても便利であれば、市の承認なしでもサービスが受け入れられるだろう。なおかつこれが一番手っ取り早い」というスタンスは、おそらく、CEOのTravis VanderZanden氏の「Uber」での経験からきたものだろうと筆者はみている。 そうしてサンフランシスコ市にも承認なしで進出し、「LimeBike」「Spin」の2社はこの動きを察知し「Bird」と同時に現れたのではないだろうか。 もしも、「Bird」の1社が市の正式な許可を得てサービスを先行した場合、ユーザー数との適切な電動シェアスクーターの個体数を設置されることで、完全にサンフランシスコ市という市場をコントロールされてしまうためである。 中国のシェアサイクルの廃棄が問題になっていたように、行政が個数を管理しなければ二の舞になりかねないため、おそらくサンフランシスコ市は次の電動シェアスクーター運営会社の承認を出さないか、個体数を制限する可能性があるからだ。 実際にサンフランシスコ市交通局が18ヶ月間のテストプログラムの期間中の現在、「Jump Bikes」以外のステーションレス型のシェアサイクルを認めないとしている。

ステーションレス型電動シェアスクーターの問題

電動シェアスクーターでは、
  • 18歳以上である事
  • 免許証の所持
  • ヘルメットの着用
  • 車道を走る
  • 駐車は歩道の妨げにならないように
などが義務付けられており、乗車する際は必ずアプリ内に注意事項として表示される。 electricscooter-problem路上に横たわる「Spin」- 引用:SF Examiner しかし、実際には「ヘルメットを着用しない、歩道を走っている、歩道の中心に駐車する、二人乗り」などが見られ、市民から苦情が出ている。特に上記の画像のような状態はよくみられ、車椅子の妨げになるなどの問題がある。 「Bird」では安全の呼びかけや、ユーザーに無料でヘルメットを配るなどを行っているが、現段階では問題解決にはつながっていない。

ユーザーのサービス利用意識はシェアリング・エコノミー型サービスの共通の問題

そもそもシェアリング・エコノミーとは個人の所有物を個人間で共有するという意味合いが強く、企業が所有しているシェアサイクルや、電動シェアスクーターをシェアする場合は、レンタルの要素が強い。 レンタルの場合は、貸主個人の顔が見えないために使用者の意識が下がり、いたずらや問題が起きてしまう可能性が高くなる。 例えば実際に時間貸しのカーシェアリングを行っていた「RelayRides」という会社は、2011年当初はオーナーと顔を合わせることなく車に搭載されたカードリーダーに会員証をかざすだけで利用できるという仕組みだったが、当時はオーナーからの損害請求等が多かったという。 しかし、2012年に別の理由でカードリーダーを廃止し、借り手とオーナーが直接キーを渡したり、車両を点検するように変更した。 その結果、オーナーからの損害請求は減り、借り手もオーナーに対し、満足度の高い評価をつけるようになったという。 また、シェアリング・エコノミー業界を牽引する「Lyft」では、乗客に後部座席ではなく、助手席に座ることを推奨していたり、「Airbnb」では、ホストに対してプロフィールに自身が大きく写った写真を載せることを推奨し、必ずゲストと宿泊前にコミュニケーションを取るように求めている。 これらのことから、フェイストゥフェイスでコミュニケーションをとることで、ユーザーに対して「サービスを正しく利用する」という意識を高められることがわかる。 実際に中国のシェアサイクルでは、いたずらや破損の多発が相次いで問題になっていたが、サンフランシスコでも同様に起きており、ステーション型であるFord GoBikeが放置されていたり、電動シェアスクーターが海に投げ捨てられたりしている。 fordgobike-problem放置されている「Ford GoBike」 scooter-problem海に投げ捨てられている「Spin」「LimeBike」 引用: @SRobertsKRON4 こうした問題をサンフランシスコ市と企業が連携し、解決していくことが重要な課題といえる。

電動シェアスクーターに対するサンフランシスコ市の対応

electric-scooter-track回収される電気シェアスクーター 4月中旬にサンフランシスコ市は「LimeBike」「Bird」「Spin」の3社に対し、公共への安全性を配慮していないとした上で法に違反しているとし、一時的に電気シェアスクーターを回収した。 それに対し、「Bird」はユーザーに利用後の電動シェアスクーターの写真を撮るよう求めることを検討しているなど、前向きな解決姿勢を見せていた。 それが4月下旬になり、サンフランシスコ市の関係者が新しいガイドラインを提案し、「電子シェアスクーター5社の運営を許可する。ただし、台数は各社500台までとし、2年間のテストプログラムを行う」と発表した。つまり、サンフランシスコ市内では2500台以下の電子シェアスクーターが許可されることになった。 しかし、いくつか条件があり、
  • ユーザーに安全の配慮を呼びかけ
  • 手数料(5,000ドル + 1年ごとに25,000ドル)の支払い
  • 不適切に駐車された電子シェアスクーターの保管や、公共物の損害などをカバーするためのメンテナンス費用として10,000ドルの支払い
  • 低所得者のための計画を提供する
などの必要があるとしている。 サンフランシスコ市もサンタモニカ市と同様に、サービスの承認に対して前向きな姿勢を見せているが、あくまでテストプログラムであるため、これから市民に受け入れられるかが重要である。

まとめ

ステーションレス型のシェアサイクルは、歩道や駐輪スペースを埋め尽くしてしまうなどしないように配慮する必要があるほか、ステーション型の場合はステーションの密度が重要になるため、行政と協力することは不可欠であると考えられる。 日本では行政と協力となると手が出しづらいイメージがあるが、今回ご紹介したようにサンフランシスコ市は、承認をしていない電動シェアスクーターが現れた同月に一時規制を行い、新たなテストプログラムの提案を行うなど、意思決定が早く、法律に影響を与えるサービスなどでも柔軟に法整備をしていることがわかる。 サンフランシスコ市で新たなサービスが次々と生まれる背景には、このような行政対応もあることがおわかりいただけたのではないだろうか。今後、サンフランシスコ市がどのようにシェアサイクル事業の問題解決を行っていくか動向をチェックしていきたい。

【デジタル広告最新トレンド2018】今アメリカで起きている4つの現象

digital ads
あらゆる業界でデジタル化が進んでいるように、広告もその例外ではない。むしろテクノロジーの進化とともに、いち早くデジタル化が進んだ業界の内の1つと言っても過言ではないだろう。 昨今、インタラクティブな広告を目にすることが多くなったように思える。インタラクティブとは双方向で情報のやりとりができる状態を指し、このトレンドはSNSやスマートフォンによって急速に推し進められた。そして、ビジネスにおけるソーシャルメディアの活用によって、企業とユーザーがお互い気軽にコミュニケーションがとれる場所ができた。 こうした環境に慣れてしまったユーザーにとっては、一方的な商品やサービスの宣伝を超えた体験が重要になってきている。 また、後から説明する"広告嫌い”の若い世代やネットへの信頼を失っている人にも受け入れられるような新しい広告の在り方が求められてきている。こうした点を踏まえると、今後デジタル広告はユーザーが「違和感を感じない」だけでなく「主体的に楽しめる」ことが求められるのではないだろうか。 今回は、今アメリカで起きている4つの現象に触れながらデジタル広告の最新トレンドをご紹介したい。 関連記事:2018年にUXデザインを取り巻く7つの変化

1. デジタル広告費 > テレビ広告費

デジタル広告の市場は急速に成長しており、アメリカでは昨年の2017年に遂にデジタル広告費がテレビ広告費を上回った。その要因としては、効果的なチャンネルを通して目標とするセグメントにリーチできる、広告の効果を瞬時に測定できる、自動化もできてコストが抑えられるなど、様々な要因はあると思う。 ただ、最も大きかったのはテクノロジーの発達による、人々の生活の変化だろう。人々はテレビを見るよりスマートデバイスを使っている時間が長くなり、動画コンテンツもネットフリックスやユーチューブで見るようになってきている。こうした変化を考えると、日本のデジタル広告費がテレビの広告費を追い越す日も遠くないかもしれない。

2. 新しい広告の出現

Googleが始める"遊べる広告”

デジタル広告は、ネイティブ広告のような一貫性がありユーザーが違和感を感じないものが増えてきており、冒頭でも述べたように最近はよりインタラクティブなものにシフトしている。 その一例にGoogleのプレイアブル広告(遊べる広告)を挙げたい。Googleがエイプリル・フールの週にマップ上に「ウォーリーを探せ」のキャラクターを出現させたことで話題となったが、このゲームとは内容が少し異なる。 google_find_waldo 画像転載元:Google Japan アプリのゲームをしていたら、動画広告が流れ始めたことはないだろうか?通常の動画広告は、決められた時間の広告動画を観ることで何らかの報酬(ゲーム内でのポイントなど)が得られる。 しかし、プレイアブル広告は、動画を観る代わりに別のゲームのミニゲームをプレイすることができるのだ。Googleはこの広告の時間をただ鑑賞のために使うのではなく、よりインタラクティブなものにしようとしている。実際にプレイしてそのゲームが気に入ればゲームのダウンロード画面に進むことだってできる。 不思議に思うかもしれないが、簡単に言うとあるゲーム上で別のゲームをしていることになる。動画広告と違って、ユーザーの操作に反応するので、自然と広告に対する興味を高めることができるのも特徴だ。フェイスブックも最近テストを始めたようで、今後見かける機会が増えるだろう。 Playable_ads 画像転載元:glispa

コアなファンへのリーチ

NikeはNBAとのパートナーシップ提携に伴い、2016年、2017年のシーズンからNBAのユニフォームの製造もしている。ユニフォームにはNikeのロゴだけでなくNikeConnect(ナイキコネクト)のロゴも付いており、スマートフォンをナイキコネクトのロゴに近づけると、限定コンテンツやレアな商品にアクセスできるようになっている。 これまではユニフォームのみだったが、今年の4月にナイキコネクトを搭載したスニーカーを限定販売した。購入者は今後数ヶ月に亘ってニューヨークで実験的に行われる取り組みに参加することができる。まだその詳細は明かされてないが、月に一度2つの限定モデルから1つだけ購入するスニーカーを選ぶことができるようだ。 このように、限定的な情報を逐一チェックしてくれる熱烈なファンであれば、広告であっても関心を持って見てくれる可能性が高く、インフルエンサーとしてブランドに良い影響を与えてくれる可能性も十分にある。 彼らのようなコアなファンにパーソナライズした広告を届けるためには、電子デバイスだけでなく身の回りのあらゆるものがデジタル広告への入り口として使われるようになるのではないだろうか。 nike-air-force-1-nyc 画像転載元:HYPEBEAST

3. ネット・SNSへの信頼の低下

最近大きな話題となっているのは、ネットにおける信頼性である。フェイスブックの個人情報流出騒動で起きたSNSなどの無料プラットフォームにおける個人情報の取り扱いやフェイクニュースの問題など、こうした危険性は常に騒がれてきた。 PR会社エデルマンの調査によると、メディアやサーチエンジン、SNSプラットフォームへの信頼が昨年に比べて低下している。年代別で見ると、若い世代の方が低下率が高くなっている。 2018_Edelman_Trust_Barometer 画像転載元:2018 Edelman Trust Barometer Global Report こうしたネット全般への信頼性・信憑性への懸念は企業側にもあるようで、P&Gやユニリーバといったこれまで広告の大口クライアントであったグローバル企業は昨年デジタル広告費の削減を発表していた。 こうした問題の原因の一つは、誰もが簡単に情報の発信者になれるようになった(参入コストが下がった)ことで、広告の信憑性だけでなく広告が表示される場所などを含めた統括的な質の担保が難しくなっているからだと考えらえる。 広告収入が9割のGoogleでは、ネット上のユーザー体験を損なわないよう同社が提供するブラウザのGoogleクロームでは勝手にポップアップが表示されるなど著しくユーザー体験を損ねる広告に関してはスクリーニングする取り組みを行い、広告主の自主的な規制を促している。

4. 広告嫌いのミレニアル世代

録画したテレビ番組のCMをボタン一つで飛ばしてしまうように、デジタルではアドブロックという広告を表示させないサービスが増加している。なんとアメリカでは3割以上のインターネットユーザーがアドブロックを使用しているとされている。 これに対応するためにアドブロッカー・ウォールと呼ばれるアドのブロックを無効にしないとページ内容が表示できないサイトもある。一方で、アドブロッカー・ウォールのせいで、ユーザーがサイトから離れてしまう問題もある。 スマートフォン用のアプリなどは、クックパッドのプレミアムサービスのように基本的に無料だがアップグレードにはお金がかかるといったフリーミアム(フリーとプレミアムを合わせた造語)のサービスが半ばデフォルトの状態だ。こうしたサービスは広告収入によって支えられているので、若いユーザーは煩雑な広告の表示や「売り込み」感の強い広告にうんざりしているのかもしれない。 以下、ユーザー体験を損ねるデスクトップ、スマートフォン上の広告の例である。

デスクトップ:

  • ポップアップ広告
  • 音声付きの自動再生広告
  • カウントダウン付きのプリスティシャル広告(コンテンツ表示前に表示される広告)
  • 大きなスティッキー広告(スクロールしてもついてくる広告)
desktop_ads 画像転載元:Coaliation for Better Ads

スマートフォン:

  • ポップアップ広告
  • プリスティシャル広告
  • 画面の30%を占める広告
  • 点滅アニメーション付きの広告
  • 音声付きの自動再生広告
  • カウントダウン付きのポストスティシャル広告(リンクをフォローした後に表示される広告)
  • フルスクリーン・スクロールオーバー広告(スクロールするとコンテンツ上に表示される広告)
  • 大きなスティッキー広告
smartphone_ads 画像転載元:Coaliation for Better Ads

まとめ

デジタル広告の市場は急速に成長し、テレビへの広告費用も上回るほどになった。GoogleやNikeが行なっている取り組みは、常にデジタルな環境に囲まれているユーザーにも訴求できる新しい広告の形なのかもしれない。また、デジタル広告が載せられるプラットフォームへの信頼の低下は問題であるが、インタラクティブな広告のトレンドは、広告を嫌う若い層への対策とも取れる。 このように、これからの時代はユーザー体験を重視し、いかにユーザーに広告を広告と感じさせないか工夫していく必要があるだろう。そしてユーザーが価値を感じる対象がモノから体験にシフトした今、広告一つに取ってもユーザーの思考や行動を分析して体験を設計し、ユーザの反応に対しても様々な視点で潜在的なニーズや抱えている問題を読み取っていくことが求められるのだ。 参考:

営業しない営業?デザイン思考を営業に活用する海外トレンド

sales-design thinking
昨年末、Salesforceよりある興味深い統計レポートが発表された。このレポートではグローバル企業3100社に対するリサーチから、最新のセールストレンドや営業の役割の変化について深い考察を示している。その中でも特に目を引いた報告が、セールスにおいて今カスタマーエクスペリエンス(CX)が非常に重要視されているという内容だ。 CXとは弊社btraxが強みとするUXやデザイン思考と同様、プロダクトやサービス開発における必要不可欠な考え方である。つまりこのレポートでは、セールスにおいて最も重要なKPI指標は売上やプロセスの改善ではなく、顧客満足度やネット・プロモーター・スコアなどのCXであるということを提唱しているのだ。 関連記事:デザイン思考を組織イノベーションに活用する10の方法 その理由のひとつに『ニーズの変化』がある。モノづくり大国の日本もそうだが、いいモノを作れば売れるという価値観の時代から今やモノが売れずサービスに価値が移り変わった現代となり、クライアントやユーザーのニーズそのものがより表面化しにくくかつ複雑化しているのだ。 まさに企業が解くべき問題が分からなくなった今、クライアントやユーザー体験の根本的な理解が必要不可欠で、クライアントさえも気づかない本質的な課題や価値を把握することが、顧客に最前線で接するセールスにも重要とされてきているのである。 そこで今回は、CX/UX・デザイン思考の観点でクライアントに新たな価値を届けるために抑えておくべきセールスの海外トレンドを3つお伝えしたい。

1. 課題の発見はお客様と一緒に

Sales 2.0から3.0の時代へ

日本の場合、例えば東京の会社が大阪から問い合わせを受けた際、日帰りで出張営業に行けてしまうが、アメリカではそのような営業をする企業は少ない。なぜならアメリカでは国土が広く営業の為の移動が非効率であるからだ。 また加えてSNS、Skype・Google HangoutのようなミーティングツールやCRMツールも普及した為、アメリカではインサイドセールスが今や当たり前となっている。つまり、直接クライアントに会い営業をすることに注力した時代から、ITを駆使し潜在顧客からのリードをどう集めるかといったSales 2.0の時代に移行したのだ。 そこに今、新たにデザイン思考の考え方を活用しMicrosoftやOracle, IBM等の競合他社を大きくしのぐ成長率を誇る、まさに新世代(Sales 3.0)のセールス手法を行う企業がアメリカで存在感を示している。欧州最大の企業向けソフトウェア会社のSAPだ。 ドイツに本社を置くSAPは1988年に米国へ進出し、現在は世界第4位の売上を誇るソフトウェア会社である。つまりSAPはアメリカで成功を遂げた数少ない外国企業とも言える。2005年にはデザイン思考を体系的に普及させる為、米国スタンフォード大学にd.schoolを設立したことでも有名な企業だが、同社はデザイン思考の考え方をクライアントへの提案力向上に活かしている。

グローバルで成功する企業は営業しない!?

私も以前、シリコンバレーでSAPの社員の方とミーティングをする機会を頂いたのだが、約8万人いるSAP社員のほとんどがデザイン思考を学び、顧客の本質的な課題やニーズはなにかという思考プロセスを各業務に活用しているという。 もちろんセールスを担当する社員も同様で、クライアントと接する際はサービス/プロダクト提案やソリューション方法を単に提示するのではなく、まずは顧客理解を徹底している。セールスが財務や経営企画など複数の部署をひとつひとつ回り、部門や部門間の課題、現場と管理職の見解の違い、個人単位の悩みまでもをヒアリングする。 また、時には課題を導き出すファシリテーターとしてクライアントの経営層と共にデザイン思考ワークショップを行い、クライアント企業と一緒になって経営課題の発見と明確化を行っている。 つまり課題解決そのものではなく、課題発見に焦点を当てたセールス活動、いわゆる課題のリフレーミングを行っているのだ。このアプローチにより、クライアントとはプレゼンを受ける側↔︎する側、決済側↔︎ソリューション提供側という関係性ではなく、課題を共に見出して解決を目指すひとつのチームという関係性を構築できている。この関係性を築く為のマインドセットが今後より求められるのである。

2. セールスは言わばCxO

前述のSAPはERPソフトが主軸の事業の為、セールス社員に必要とされるスキルや知識は当然IT関連のものであった。しかし、クライアントに新たな価値を提供する為には顧客の人事やマーケティング・経営企画に対する横断的な理解が必要である。 その意識改革までもをデザイン思考を用いて行っているのだ。この変革に供ない、セールスの評価基準も大きく変わった。ERPソフトの販売実績や売上をKPIとしていた過去から、人事・経営・マーケティング・IT部門までバリューチェーン全体との関係性構築がセールスの新たな評価基準に変わった。営業部門はまさに上流から下流までのプロセスを理解し新たなサービスを開発するサービス責任者(CSO)のようなポジションになりつつある。 なお、弊社btraxでもセールス部門のスタッフは私も含めBusiness Producerという役職名で業務をしており、デザイン思考やユーザー中心設計の考え方をセールス活動にフル活用し常にクライアントと接している。クライアント自身、まだ表面化できていない課題をデザイン的プロセスを通して明確化することに努めているのだ。 そしてBusiness Producerは売上や受注件数を追いかけるのではなく、どれだけ深くクライアントの課題を把握・理解できるかに注力し、プロジェクトを推し進めている。例えば、課題を引き出す為にクライアントとは対等な目線でディスカッションを行う。 その際、重要な事は我々が課題に対する答えやアイデアを提示をするのではなく、クライアント自身が課題認識と解決方法を見出せるようコミュニケーションを取ることである。デザイン思考でいうエンパシーマップ等のフレームワークを用いてクライアントの顧客理解などを共に行うのだ。 またクライアントとの対等な議論の為には、有価証券報告書などのIR資料の読み込みやミッションやビジョンといった経営理念・価値観の理解が必要不可欠なので、もし自分自身がクライアント企業の経営者(CEO)だとしたら何をすべきかという考えを常に持って活動をしているのである。 WS image クライアントとのディスカッションの様子

3. 最新テクノロジーを駆使したセールスツール

ここまで、アメリカのセールスにおけるマインドセットの特徴について述べたが、最後にセールス活動を支援するイノベーティブなセールスツールを紹介したいと思う。 冒頭で紹介したSalesforceのレポートによると、企業3100社に対する「セールス・営業業務の中でどのようなタスクにどの程度の時間を使っているか」という調査で、なんと業務時間のうち64%もの時間が直接のセールスの時間として使われていない、ということだ。セールスをミッションとした立場であるはずなのに、実質的なセールスを実施できていないという現状なのだ。 だからこそ、昨今MAやCRMツールを用いて営業や業務の効率化を図る動きが積極的なのもうなずける。今後ITやテクノロジーをセールスの業務にも活用する事がより当たり前になってくるであろう。 sales-statistics---how-reps-spend-time-compressor 画像転載元:15 Sales Statistics That Prove Sales Is Changing ここで、セールス活動をバックアップするサンフランシスコのスタートアップ、Chorusを事例として紹介したい。同社は会議の音声データを記録、文字起こし、要約を自動かつリアルタイムで行うAI議事録ツールを提供。昨年シリーズAで1600万ドルを調達、ガートナーによる『Cool Vendors in AI Core Technologies, 2017』にも選ばれている注目のスタートアップだ。彼らの顧客の中にはMarketo等の有名企業も名を連ねている。 既にミーティングの動画データを記録するオンライン会議システム等のサービスは存在するが、ミーティング内容をまとめ、『次回アクション』や『課題』といった重要コメントを自動把握・分類し、議事録にまとめあげてくれるサービスは革新的である。 また、分析機能としてミーティング参加者の誰がどれだけ発言をしていたか、または聞き手側だったかというようなパフォーマンスに関する分析データまでを得ることができる。 chorus Chorusのダッシュボード 以前、全米では毎日11億時間が会議の時間として使われているという記事を書いたが、このサービスでは会議つまり営業業務の効率化を図れ、ミーティングで議論した内容をクライアントと共有し認識を合わせることができる優れたツールだと感じる。私自身、セールス活動においてぜひ活用をしたいサービスだ。 そんなセールスにイノベーションを起こす、または起こそうとしている企業がアメリカ・サンフランシスコにはまだまだ存在しており、そしてなにより、デザイン思考を根底とした先進的なマインドセットとITツールを駆使したイノベーティブなセールスがアメリカでは実施されているのである。 Market-Map-Template-3.8.17-compressor 画像転載元:CB Insights

まとめ

最新テクノロジーや革新的なスタートアップの情報が注目されがちなサンフランシスコだが、サービス/プロダクトをユーザーにどう本質的な価値として届けるか、というセールスのマインドセット自体も先進的でイノベーティブなことがわかる。まさにクライアントのニーズの変化に順応したセールス手法を取っていると言えるであろう。 新規ビジネス開発の目的だけにとどまらない、CX/UX・デザイン思考を用いたセールスの手法やマインドセットのイノベーションという点において、サンフランシスコ・アメリカは最適な環境と言えるのではないだろうか。 本記事が、グローバル展開に課題を抱えていらっしゃる企業にとって少しでも営業・セールスのマインドセットの重要性のご理解に繋がり、課題解決の糸口としてなり得えたら幸いである。

2018年のIT動向を読み解く7つのキーワード

it keywords
先週ラスベガスでCES 2018が開催され、今年もスマート家電や自動車、IoT製品など多岐にわたるテクノロジーが公表された。 以前リリースした【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジーでも紹介させて頂いたが、2017年はIoTとスマートホームテクノロジー、ブロックチェーン、機械学習が世界中で注目を浴びたが、今年はテクノロジーの領域が更に拡大しているのかもしれない。 そこで今回は2018年に抑えておくべきITの重要キーワードを7つご紹介したい。

キーワード①:すべてのものがIoTとなる

BI Intelligenceのレポートによると、2020年までに34億ものデバイスがインターネットに繋がること、そして5年の間にIoT(Interne of Things)に支出額が6兆ドルになることが予測されている。 既にスマートウォッチやスマートスピーカー、スマート家電などテクノロジーを駆使したプロダクトが世に出回っているが、今後は鍵や美容製品、ペット用品などあらゆるものがインターネットに繋がれていき、私たちの生活になくてはならない存在になるだろう。

【事例】Petrics

今年のCESでも注目されたPetricsのペット用スマートベッドは、犬や猫といったペットの健康状態を管理することができる。米国では自宅で飼われている犬や猫の数は8,000万匹ほどいるとされ、そのうちの53%が肥満というデータがある。 この事態を解決するために開発されたPetricsのスマートベッドは、ペットがベッドの上に乗ると運動量や体重といった健康状態を把握することができる。また、連動アプリを使用すると健康状態に合った食事量や運動量を知ることができるので、効果的なダイエットが可能になる。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=gjCrWGS7LfI[/embed]

キーワード②:ブロックチェーンの台頭

ブロックチェーンの概要に関してはブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界でも紹介させて頂いたが、2018年はブロックチェーン技術が更に浸透していくだろう。 ブロックチェーン技術を応用した代表例にビットコインが挙げられるが、今後はフィンテックに限らず様々な業界で活用されると言われている。 現に、シリコンバレー発のゲーム会社Gameflipは昨年ブロックチェーンの活用を開始し、仮想通貨を扱うSparkleCoinはブロックチェーン技術を応用してAmazonやWalmart、Targetなどのリテールでオンラインショッピングすることを可能するなど、多くの企業がブロックチェーン技術を積極的に使い始めている。

キーワード③:VR・ARが本格的に普及していく

ここ2、3年でVR・ARの技術がどんどん進化していく中、2018年はVR・ARが様々な業界で主流となる可能性が高い。 市場調査企業IDCのリサーチによると、世界のVR・AR関連の支出は、2021年まで毎年倍増していくとの見方がある。具体的には、総支出額は2017年の114億ドルから2021年には2150億ドルに増加し、年間平均成長率は約113%になる見込みだ。 以前VR (仮想現実) を活用すると可能になる10の体験VR、AR、ドローンで体験する次世代アートとはでも紹介させて頂いたが、今年は今まで以上にVR・ARを身近に感じることになるのかもしれない。

【事例】IKEA Place

昨年の10月にIKEAがローンチしたARkit搭載アプリ『IKEA Place』を事例に挙げたい。既にご存知の方もいるかもしれないが、このアプリを使うことで家具の配置をバーチャル上で行うことができる。 すべての家具を空間に合わせて自動でサイズ調整、3D表示することで、今まで時間がかかっていた部屋のアレンジを効率的にするという画期的なアプリを開発した。また、実際にバーチャル上で作った部屋のアレンジを画像や動画で保存、シェアすることも可能。今後は、このように私達の生活によりVR・ARが浸透していくだろう。 ikea ↑上記画像はApp storeより引用

キーワード④:サブスクリプション・サービス(定期購読サービス)

Forbesによると、2017年4月時点でサブスクリプション・サービスをビジネスにしている会社のウェブサイトに訪問したユーザー数が3700万人であり、これは2014年と比較して800%増加していることが分かった。 最も訪問ユーザー数が多かった順に見ていくと、美容関係の商品を扱うIPSY、レシピ付きのフードデリバリーサービスを提供するBlue Apron、男性ユーザーをターゲットにしたシェービングアイテムを扱うDollar Shave Clubなど、様々な業界に亘っていることがわかる。 stat 2018年は従来の「必要に応じて商品を購入する」から「商品を月毎、週毎に届けてもらう」という新しい購買フローに変わっていくのかもしれない。 ↑上記グラフは、Forbesの記事より転載

キーワード⑤:更に高まるEコマースの需要

Forresterのレポートによると、昨年米国の成人ユーザーの83%がAmazonを利用していたことが分かった。このことから、オンラインで商品を購入するユーザーは益々増えていき、Eコマースの需要は今まで以上に高まると予想される。 また、アパレル業界を席巻する新勢力 – Direct to Consumer (D2C) で成功した7つのブランドでもご紹介したが、昨今アメリカのリテール業界ではD2C(Direct to customers)と呼ばれる、自ら企画・製造した商品を自社運営のECサイト上でのみ販売するビジネスモデルが注目されている。2018年はD2C型のスタートアップを目にすることが多くなるかもしれない。

キーワード⑥:ボットを介したインタラクション

2018年は様々な企業がユーザとのタッチポイントとしてボット(チャットボット)を導入していく傾向にある。Grand View Researchのレポートによると、グローバル規模で見るボットのCAGR(年平均成長率)は24.3%、マーケットサイズは2025年までに1.23億ドルとの見方がある。また、ボットを実際に使っているエンドユーザーの45%はボットでのインタラクションを好む傾向にあるというデータもある。 なお、ボットの役目はウェブサイトへの流入やカスタマーサポートだけではなくユーザーのインサイト獲得も挙げられるので、モバイルユーザーの属性や嗜好を知りたい企業はボットの導入を検討するべきなのかもしれない。 関連記事:【ユーザー視点で考えるAI】チャットボットのUX設計実験を通してわかったこと

【事例】Aerie(American Eagle Outfitters)

昨今アメリカの大手アパレル企業はボットでのカスタマーサポートを積極的に採用しており、AEO(American Eagle Outfitters)もそのうちの一つ。自社のランジェリーブランドAerie用にボットサービスをKik、Facebook Messengarで開発し、商品のレコメンドやお得なキャンペーン情報の配信、ヘルプセンターへの連動などを可能とした。 なお、アメリカのティーンエイジャーの40%はKikを利用しており、メッセンジャーユーザーの70%は25歳以下というデータがあることから、10代後半〜20代前半をメインターゲットにするAEOにとって、このボットサービスはユーザーとのエンゲージメントを高める効果的なインタラクションなのだろう。 aeo

キーワード⑦:AIや機械学習を駆使したサイバーセキュリティ

世界におけるサイバー攻撃による損失が2021年までに毎年6兆ドルという見方があるように、多くの企業がサイバー攻撃の驚異にさられようとしている。そんな中、2018年はサイバー攻撃対策にAI技術や機械学習が大いに役立つと考えられる。 その理由として、AIを使ったサイバー防御法を生み出すことで、後に機械学習で様々なパターンを覚えさせることができ、より良いサイバーセキュリティの仕組みを構築できるからだ。今後はAIの活用がサイバー攻撃対策の鍵となっていくだろう。 参考: ・"8 Tech Trends to Keep Your Eye on in 2018""Top 10 Technology Trends for 2018: IEEE Computer Society Predicts the Future of Tech"

CES 2018で見た3つのパラダイムシフト

ces-main
1月の7日からラスベガスにて開催されたCES に3年ぶりに参加した。一般公開は9日からであるが、メディア向けのイベントが7日からあったので、今回はキーノートやメディアセッションを中心に見ることにした。 狙いとしてはそれぞれの企業が未来に向けてどのようなビジョンを持って取り組んでいるのかを知ること。

巨大すぎる展示会

通常、CESといえば「世界最大の家電市」とも言われ、巨大なコンベンションセンターに加え、複数のホテル会場を貸切裏、20万人以上の来客と4,000近い出展企業がひしめき合う「巨大展示会」のイメージであるが、実は一番興味深いのは、展示会よりも個々の企業によるメディア向けのセッションである。 展示場で展示してあるプロダクトは近い将来に販売される商品か、「こんなこともできますよ」的なコンセプトモデルである。その一方で、セッションで発表されるのは、それぞれの企業が掲げている将来へのビジョンと、それを具現化するためのアクションアイディアであるからだ。

未来を語るメディアセッション

それも多くの場合、TOYOTAの豊田章男社長に代表される企業のトップが情熱を持って未来を語る。そこから伝わってくる熱量が非常に心を揺さぶるので、見てみて非常にワクワクする。それに加え、家電、自動車、サプライヤー、ネット系など、異なる業界をまたいで、それぞれのメディアセッションをみて見ると、世界全体の未来が包括的に見えてくる。 ちなみに、今回の1/7-8のCESでメディアセッションおよびキーノートで発表された企業は下記の通り
  • Dynamics
  • Byton
  • LG
  • Bosch
  • Monster
  • Toyota
  • BrainCo
  • Panasonic
  • Continental Automotive
  • MobileHelp
  • Hisense
  • Ripple
  • Valeo
  • ZF
  • Royal
  • TCL
  • Nucalm
  • Samsung
  • Qualcomm
  • Hyundai
  • Faurecia
  • Kia
  • Sony
  • Intel

はっきりと見えてきたパラダイムシフト

これらのセッションを見た感想を中心に、これからの世の中にはどのような変化が訪れてくるのかを、自分なりに考察してみた。

1. 裏方、下請けが主役の時代に

上記の企業名リストをみてみても、一般消費者に馴染みのある名前が意外と少ない。一方で、パーツのサプライヤーや下請け業者といった「裏方」的な企業の方が多い。ここで注目すべきは、新しいテクノロジーやイノベーションを作り出す主導権が、はっきりと消費者ブランドから、いわゆるBtoBと呼ばれる裏方の企業に移ってきているということ。 例えば自動車業界であれば、ValeoやZF、Boschといったサプライヤーが次世代のモビリティ体験を生み出すべく、自動運転、コネクテッド、パーソナル、デジタルをキーワードに、様々なコンセプトを打ち出してきている。場合によっては自動車の車体のプロトタイプも作っているケースもあった。 家電系もまた然りで、テレビのブランドのTCLの成功の裏にはスマートTVプラットフォームのRokuが紹介され、サムスンはこれまでに投資、買収してきた複数のBtoB系スタートアップが提供するハードウェアやインフラをつなぎ合わせて生み出されるサービスを紹介。 半導体業界においての最強のサプライヤーを誇るIntelに至っては、そのキーノートのステージにて、データカンパニーへの変換、そしてデータとAI技術を活用することで実現可能なプロダクトのデモの一環としてAIロボットとのジャムセッションや、自動運転ヘリコプターやGPS無しのドローン100台をシアター内に飛ばすパフォーマンスを見せることで、彼らの底力を見せた。 これは企業の立場になって考えると、どういうことかというと、例えこれまでBtoBや下請け的な業種だったとしても、これからは最新テクノロジートレンドや、消費者の理解が非常に重要になってくる。 そして、今まではOEM業者からの発注内容に合わせて要件定義をしてきたとしても、今後は自らが企画し、新しいサービスを自ら考えることで、提供先の企業の新たなビジネスモデルを創造するぐらいのクリエイティビティが必要となってくるだろう。 これは大きなシフトで、これまで何十年間も常識とされいた産業構造に大きな変化がすでに始まっているということ。おそらく今後は発注先の「指示待ち」をしてる企業はどんどん置いていかれることになるだろう。 ces-intel

2. プラットフォーム至上主義

そして、その裏方の最たるものがプラットフォームを提供する企業であろう。今回特に目立ったのはAmazonとGoogle、そしてMicrosoftである. 彼らが提供するデータを元にしたサービスプラットフォームは、TOYOTAをはじめ、本当に多くのセッションにて紹介されていた。Amazon Alexa, Google Assist, Microsoft Cortanaといったサービスは特に家電やモビリティ業界との親和性が非常に高く、音声認識をインターフェースとしたインテリジェントシステムを提供するためには無くてはならない存在にもなってきているようだ。 以前に「これからの企業に不可欠な三種の神器とは」でも紹介したように、彼らの強みは今までに蓄積してきた膨大なデータを元にAIを活用したプラットフォームをしっかりと作り上げているところ。そしてより生身のユーザーに違和感のないシステムが提供できていることであろう。 これが可能なのは、もちろん上記の企業が長い年月をかけて多大なる量のユーザーとの接点をじっくりと構築し、データを収集し、それを解析するシステムを構築をしてきた事実。そして、もっともユーザー体験として正しいカタチでのアウトプットを行い、そして常にシステムがユーザーを学び続けるというプラットフォームをオープンに提供できていることで、究極のプラットフォーム業者になった。 おそらく今後は上記のような企業は電気や水道のようなもっとも根本的なインフラとして多くの産業にもどんどん活用されることになるであろうし、今から似たようなサービスを作ろうとしても、ユーザー数やデータ量、そしてシステムの複雑さを考えてみると現実的には全く太刀打ちができない状態まできていると思われる。逆に考えると、今後はGoogleやAmazonが提供するようなプラットフォームと連動していないサービスを探すのが難しいぐらいの時代になるだろう。 一方で、サムソンだけは"Bixby"と呼ばれる独自のAIベースの音声インテリジェントシステムを開発し、全ての消費者向けプロダクトへの実装を試みている。これは彼らが掲げる"Intelligent of Things"構想の中核を担う役割であるが、以前に日本企業が試みて失敗した「全て自前主義」の二の舞になる可能性もある。 そして、このプラットフォーム至上主義を大きく逆手に取ったのが、通信技術と半導体メーカーのクアルコム。彼らはGoogle Assistant、Amazon Alexa、Microsoft Cortana, Alibaba AI Voice Cloud, BaiduDuerOSなどの複数のプラットフォームと繋がるスマートスピーカーを発表した。ここまでくるとGoogleやAmazonが本当にやりたいのはやはりプラットフォーム業であり、ハードウェアの提供は単なるデータ集めのための手段にしかすぎないことが理解できる。 そう考えてみると、これまで家電や自動車を中心に、ハードウェアデバイスを製造、販売していた企業はしっかりとプロダクトのサービス化を進めない限り、プラットフォーム業者のための「かませ犬」的存在に成り下がってしまう可能性すら感じた。 ces-qualcomm

3. 多国籍企業から無国籍企業に

これまではその企業名を聞くと"どこ"の企業かがある程度わかったし、"日本企業"の状況とか、"韓国企業"の活躍とか、"中国系"の勢いなどの話が多く出てきていた。しかし、今年は"これって結局どこの国の企業?"という感じのところが多かった。そして、例えそれが元々どこかの国から始まったとしても、世界中に拠点があり、異なる人種や国籍の人が働いていることからも、"多国籍企業"がどんどん増えている感じがした。それはまるで、"オールジャパン"とか"Made in Japan"という言葉が恥ずかしく思えるぐらいのレベルである。 そして実は、このような企業は全世界市場をターゲットに、それぞれの拠点にもっとも得意な役割を与え、場合によっては経営トップを含めたマネージメント層にも"外国人"を躊躇なく抜擢している。 Bytonを例に取ってみよう。実はこの企業、CESに来るまでは知らなかった。彼らは新進気鋭の自動車メーカーで、コネクテッド、EV, 自動運転、デジタルなどの次世代の車両を開発している。2019年を目標にアメリカ市場での販売を狙っているTeslaキラー。そしておそらく最終的にはそれぞれの機能をモジュール化し、たの自動車メーカーにも販売することを狙っている感じである。 この会社のメディアイベントは他のものに比べてもかなりクールで、黒を基調としたステージに客席中央のランウェイから自動運転の同社車両に乗った2名の白人男性が登場。彼らは同社CEOのCarsten BreitfeldとPresidentのDaniel Kirchertである。その英語発音からすぐに「ヨーロッパの会社だな」と思ったのであるが、後半のグローバル拠点の紹介の際に「本社のある中国」と「巨大な北京工場」が登場した。すぐに調べてみると、おおもとは中国の自動車系のホールディングス会社で、今回のBytonはその傘下ブランドの一つ。しかし、非常に興味深いのは、このCEOは元々BMWに20年間勤務し、i8モデルの開発にも携わった。そしてPresidentは日産の中国オペレーションの責任者であったという事実。 実に彼らは、デザインの拠点をヨーロッパに、ソフトウェア系の研究をシリコンバレーで、マスプロダクションを中国で行なっているという。実はこれは珍しくもないケースで、Byton以外にも、フランスの企業と中国の企業がジョイントで作った企業や、ヨーロッパ、中国、アメリカの三つの国をまたぐことで実現しているソフトウェア/ハードウェア連動がたプロダクトも多くあった。 もう一つ面白かった例としてはファーウェイがある。彼らはもちろん中国の企業であるが、でもの際に紹介していたプロモーションビデオやユーザーインタビューにはアジア人が一人も出てこない。えげつないぐらいに白人ばかりである。これはおそらくグローバル市場むけに、"中国っぽさ"や"アジアっぽさ"をあえて払拭しようとしているのであろう。「ぶっちゃけ中国で効率よく生産するけど、ブランドイメージのためにはやっぱ白人っしょ」という彼らの狙いが直球で伝わって来る。そして、反則だなー。と思ったのは、プロダクトのデザインをよくするためにポルシェデザインとパートナーシップを結び、カメラのクオリティーを伝えるために、ライカとタイアップまでしている。 ここまで行くと、もう「死角なし」と思わせてくれるぐらいの勢である。おそらく最近の日本企業でここまでお金と勢を武器に攻めまくれるところがいくつ残ってるんだろうちう感じもする。 グローバルに戦うには今の時代、国籍や民族のアイデンティティーにこだわるのは制限でしかない。そして、多国籍企業という表現すら時代遅れで、もう「どこの国かわかんない」ぐらいの無国籍さが一つのバロメーターになるかもしれない。ちなみに今の時代"Made in Japan"の威厳は1mmもなくなってしまったと思ってしまうくらい、日本をバイパスした企業形態のところが非常に多かったのも残念。 ces-byton

これからの日本企業がするべき5つの事

今回のCESでの勢のある企業の発表を見ていると今後企業がやるべきことが明確にわかってきた。具体的には下記の5つに集約されるだろう。

1. クリエイティブ人材の獲得&育成

イケている企業は何が違うのか? ことCESのようなイベントに関していうと、おそらくクリエイティブであるということ。これは、オーディエンスに未来を感じさせる、予想させる、期待させることができるぐらいのコンセプトやマテリアルが作れるかどうか。これを実現するためには、見ている人の想像力を掻き立てる創造力のあるスタッフがいることが不可欠である。 今の時代、デザイナーかデザイナーでないか、クリエイターであるか、クリエイターではないかなどは全く関係ない。どのような役職の人でもクリエイティブな感覚は不可欠で、特に経営陣は幅広い視野で、ワクワクすることを常に考えることができなければ未来に生き残って行くことは難しくなって来るだろう。

2. グローバルな視点と接点を持つ

特にこれは日本企業の最大の弱点であるが、言語や文化から来るグローバル性の低さより、現代のエコシステムにかなり置いていかれている感があった。上記の通り、数多くの企業が世界に複数の拠点を持ち、世界でもっとも優れているパートナー企業と縦横無尽に取引やパートナーシップを結び、経営陣にも多種多様な人材を配置している。その一方で、多くの日本企業のその多くは社内スタッフも下請け先も多くが日本国内に止まっているケースが多い。そうなって来ると海外の企業から声がかかることもどんどん少なくなってきてしまう。 その一方で今回のTOYOTAのe-Pallet構想で見られたようなコンセプトは、やはり彼らのもつToyota Research Instituteをはじめとした、複数のグローバルなR&D拠点と、Microsoftとのジョイントベンチャー、UberやDidi, Amazonなどのテクノロジー企業とのパートナーシップの賜物であろう。

3. 未来にしっかりと投資する

これもまた日本企業の大きな弱点であるが、未来への投資額が少なすぎる。言い換えるとR&D予算が世界の他の国の企業と比べて見ても桁違いに少ない。既存のビジネスや儲かることにはお金とリソースを費やすが、将来どうなるかわからないものに関しては、あくまで「実験」としての予算感しか割り当てないケースが少なくない。世界規模で見てみると、例えばこの5年間で半導体の会社からデータの会社に変革したし、nVidiaもチップメーカーから自動運転向けテクノロジーカンパニーに転身したことで、株価も事業的にも大きな成長を達成した。 今でこそ多くの人がAIや人工知能に関して進んでいる企業に対して羨望の眼差しを向けるが、実はその裏には水面下で数年に及ぶ多額の投資とR&Dが進められている。サムソンの発表でも彼らはIntelligent of Things (全てがAIにつながる製品)を達成するために65,000人のデザイナーとエンジニアを採用、総額140億ドルの投じているという。これは中途半端な覚悟ではない。しかし、そのリターンは確実に望めるであろう。現在、スマホメーカーに日本企業がほとんどないのは、そこにしっかりと投資してこなかったからだろう。未来に投資するのはいつなのか?「今でしょ!」

4. ユーザーをしっかりと理解する

今後「裏方の企業」の重要性がどんどん高まるにつれ、彼らにとってユーザーを理解することが今までにないほどに重要になって来る。これまでは下請け業者やSI業者である、という理由だけでエンドユーザーの顔すら見たことがない、どんなシーンで使われているかもわからない、という声を何度か聞いたことがある。しかし、これからは自らが新しいサービスの企画を考え、提案して行く時代になって来る。 これまでの士農工商の構造がひっくり返るようなものである。BtoB業者で今後成長したいのであれば、ユーザーをしっかり理解すること。それも可能であればグローバル規模でのユーザー理解がこれまでと比べ物にならないくらい重要になって来ると思われる。

5. グローバルブランド構築を真剣にする

ユーザーを理解するとともに重要なのがブランドを構築すること。多くの中国企業がグローバル企業としてのブランドを作るために、アジアっぽさをあえて払拭するブランド施策を進めているように、どれだけ"from Japan"感をなくせるかが重要だろう。もちろん日本の良さをアピールするのは良いが、日本人のためのブランドではなく、グローバルに通用する無国籍企業としてのブランド戦略が求められるだろう。 サプライヤーのようないわゆる「下請け業」であってもそのブランド力は非常に重要になって来る。今回のCESではフランス系のBtoB系企業が多く発表、展示されていたが、彼らは非常に良いブランドポジションを構築し始めている感じがした。
これらのミッションを達成するべく、我々btrax (ビートラックス)では2018年も引き続き価値のあるサービスを提供したいと考えています。みなさま今年もよろしくお願いします。

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

【2018年】マーケティングの未来はITトレンドの先にあり?マーケティング施策7つのまとめ

2018 marketing trends
2017年のマーケティング施策の結果はいかがだっただろうか。反省・改善点を踏まえ、2018年のマーケティングトレンドをキャッチし、新たな戦略へのヒントにしていただきたい。 そこで今回は2018年マーケティングトレンドを様々な分野と関連してまとめた。一見マーケティングには関係ないと思えるような最新技術の活用や、そこにある潜在的なマーケットのチャンスなど、業界関係なく検討すべき把握しておきたいものばかりとなった。 関連記事:【2018年】ITの最新トレンド10大予測

自動車産業、音声認識、iPhoneの技術進歩から見えるトレンド

1. 自動運転車の未来には新しいメディアチャネルの機会があり?

自動運転業の勢いはマーケターもマークしておくべきことがある。まずはその勢いについて例をあげると、自動運転車開発会社であるWaymoは400百マイル(644㎞)もの自動運転車の試運転をアメリカの一般道で実施済みであり、Tesla、Audi、Mercedes-Benz、BMWなど多くの高級車が自動運転機能を持ち始め、大手自動車配給サービス会社Uberは約19億ドル(1900億円)ものVolvoを購入したというのである。 現在市場に出ている機能はクルーズコントロールや自動ブレーキなど部分的な自動機能であるが、先に述べた勢いを踏まえると、今後かなりのスピートで全自動へシフトしていくことなる。そしてこの進歩が進むにつれ、運転手が運転に集中する必要が無くなってくるはずだ。 そうなると、彼らはその代わりに他に何をするのか。何かしらのコンテンツを消費するという選択肢が考えられないだろうか。つまり乗客は自動運転車のカーナビに流れる映像を見たり、スマートフォンをいじったりする時間が増えるということである。UberやLyftなど商用の自動運転車に関しては車内広告などが普及してくるかもしれない。 map of Autonomous Vehicle Industry ↑の写真はリンクより引用。大手メーカーがテクノロジーを強みとした新興企業とタイアップしていることがわかる

2. 音声検索のための最適化がSEOの勝ち組に残る鍵?

Googleによると2016年にあった検索の約20%が音声認識を使ったものだったという。また、アメリカ国内のアンドロイドユーザーに絞ると25%という驚きの数字がある。これは2020年までに50%にまで上昇するとも予測されており、ウェブマーケティング従事者にとって、音声による検索のためのウェブサイト最適化が必要になると言える。 なお、音声による入力はタイピングより簡単なので、1回の検索でたくさんの単語が入ると予想される。つまり、一般的に少数の単語を検索キーワードとするのではなく、より具体的かつ多くの単語に引っ掛けてコンバージョンを稼ぐようなロングテールなキーワード設定が必要になるのではないだろうか。

3. 新型iPhoneのおかげでARはユーザー、マーケターにとって身近なものになる

まだ記憶にも新しいiOS11には、「ARKit」というAR(拡張現実)アプリ開発フレームワークが搭載されている。ARを使ったアプリやコンテンツ作成のオープンソース化がいよいよAppleからなされたのである。また企業のARコンテンツ開発にも開発の進捗が見られる。例えばメジャーリーグベースボール(MLB)のiPhoneアプリは試合中にiPhoneを通してコートを見ると、画面上に打率や選手の情報が出てくるという。また大手家具小売店、IKEAはスマートフォンを通して、実際に家の中に家具を配置してみた様子がわかるARアプリを開発してる。 iPhoneにAR機能が加わったのはただの新機能ではなくコンテンツマーケティングなどにおいてゲームチェンジャーととらえるべきだろう。もしかしたらインスタ映えではなくAR映えといったコンテンツが人気になることもありえるかもしれない。 AR MLB case ↑の写真はEngadgetより引用

まだマーケティング実務に時間を費やしているの?人工知能によるスマートな処理

4. マシーンラーニングによるマーケティングオートメーション

技術的には目新しくはないが、マシンラーニングはマーケティング分野でも実用レベルで使えるところまできている。使ってから短期間でもその導入効果がわかりやすかったり、最近では低額で始められるプランもあるので気軽さが高くなってきている。代理店に高いお金払う必要なく、マーケターは基本設定だけ登録しておけば良いのでミスや人件費の削減、的確な分析に基づく効果が期待できるためさらに浸透していきそうである。

5. AIによるメッセージ管理

業界全体を通してこの機能のROIはまだないが、期待値は高い。特にオンラインビジネスにおいてメッセージ機能の重要性が高くなっていることは下記に挙げるデータからも言える。   1)世界で使われているアプリ上位10個のうち、6つがメッセージングアプリである 2)消費者の65%は企業に問い合わせをするよりメッセージングアプリを使うことを好む また、AIを使ったチャットボットによる顧客サポートで大幅に業務のコストを減らせるという点や迅速で的確な対応によるサービスの向上ができる点を達成できれば、売上利益に大いに貢献できる要素なのでは。 関連記事:人工知能(AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル

ソーシャルメディアマーケティングの重点チャネルを見極めよう

6. インスタグラムの台頭

インスタグラムは2017年9月時点で毎月のアクティブユーザーが8億人に達したと発表した。ソーシャルメディアの重鎮、Fecebookは20億人なので数字的には差はあるものの、インスタグラムの勢いと今後の期待値は高い。2016年下半期に追加となったインスタグラムのストーリー機能は、類似機能の先駆けであったスナップチャットを1年足らずであっさり抜いた。またブランドエンゲージが他のチャネルより高かったり、広告の規制などもよりソーシャルメディアマーケティングに注力をしているブランドを呼び込む要素になっているという。 またEコマースプラットフォームがインスタグラムフィードから商品詳細情報やそのまま買い物ページに飛ぶことができるような機能を始めたり、インスタグラム側もショッピング機能を強化したりと、ビジュアルからブランドの確率と、購買に繋げるルートが確立されていきそうである。 snapchat vs instagram stories ↑の写真はrecodeより引用

7. Twitterは落ち込み気味

Twitterはユーザー獲得に苦しんでいるようだ。2017年の第二四半期にはマンスリーアクティブユーザー数が全く増えなかったという事実もある。そのため2018年はユーザー獲得に手を焼き、広告機能や劇的な新機能の追加などは期待できなさそうである。 関連記事:オンラインブランドのソーシャルメディア活用事例ー成功の秘訣は”ユーザーを巻き込む”こと

まとめ

今回は自動車産業、音声認識、新型iPhone(AR)、人工知能、ソーシャルメディアなど一見マーケティングに関係ないように思える最新技術のトレンドを列挙した。しかし、これらは今後マーケティング活動に大きな影響を与える可能性がある。今までの成功事例や経験を元に作り出すマーケティング施策の実行も大事だが、投資家が最新技術に出資をするようにマーケターも新しい技術を意識したチャレンジングな投資的マーケティングも必要なのかもしれない。 参考:18 Marketing Trends to Watch in 2018

【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジー

2017 IT trends
テクノロジーの発展、加速率は消費者をたびたび驚かせる。こうした技術の進歩は、生産性、コスト効率、ブランド認知度の向上のために、より多くの機会を提供する。 そのため、技術者やマーケティング担当者は技術の進歩について、常に動向を把握することが必要となるだろう。今回は2017年に世界中で話題となったテクノロジーを振り返りたいと思う。

1. IoTとスマートホームテクノロジー

Iot(Internet of things)の発展・普及に伴い、スマートホームテクノロジーの相互接続性について、数年前から注目されている。様々なスマートホームデバイスが、統合・制御されることで、効率的かつ快適な自動化された暮らしが実現できる可能性があるからだ。 しかし、販売されている多くのスマートホームデバイス、アプリケーションは、全てを1つにまとめてシームレスなユーザー体験ソリューションを提供するものはほとんどない。 だが、2017年、Google, Amazon, Appleなどのユーザー体験に精通している企業がスマートスピーカーを発表した。 スマートスピーカーは音声コマンドと応答によって、日々の生活をアシストし、様々なサービスを提供する新しい方法を導入し、様々なデバイスをインターネットで統合するための大きな前進となった。 また、それに伴い、音声認識の技術は非常に洗練されており、音声認識システムのエラー率が5%未満のエラーレートに下がり、人間と同等レベルまでに正確となっている。 これまでIoTとスマートホームテクノロジーの分野に参入している会社はスタートアップが多かったが、Google, Amazon, Appleなどの巨大IT企業が参入したことで、2018年以降はさらなる技術の進歩が期待できる。

Amazon Echo

米国のスマートスピーカーの市場シェアの76%を占めるAmazon Echoの販売数は今年1,500万を超え、スマートスピーカー全体の販売数は2000万を超えた。 Alexa(アレクサ)と呼ばれる人工知能(AI)が搭載され、「何か音楽をかけて」と指示をすると音楽を流してくれる。「音量を上げて」などの細かい指示調整も可能だ。その他にも、ラジオを聞いたり、Amazonで注文したり、計算や、「btraxってどんな会社?」などの質問を答えてくれる。 関連記事【AIスピーカー入門】Amazon EchoとGoogle Home amazon echo

2. ブロックチェーン

ブロックチェーン技術はまさに今年、2017年に活用され始めたデータ管理システムにおける技術である。 従来のデータ管理システムと比べ、維持費が低コスト、セキュリティに強い、データをオープンにできるといったメリットがある。 そのため、『ブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界』でもご紹介したが、銀行や決済、送金、チャリティー、保険、ヘルスケア、IoT、Eコマース、政府・公的記録、選挙、教育、著作権など多岐にわたる分野でブロックチェーンシステムの活用が見出された1年だった。

仮想通貨

仮想通貨は、その名の通りブロックチェーン技術によって管理されている仮想上の通貨だ。 正確な例えではないので注意をしてもらいたいが、簡単に説明すると、各国に通貨が存在するように、「インターネットという国の通貨」と想像してもらうと容易に把握しやすい。送金や決済手数料が格段に安く済むという点で注目されている。 現代では、ほとんどの国でインターネットが使えるため、各国に法規制がない場合は、「金(ゴールド)」のように各国の通貨に代替できたり、実際の通貨のように使用することができる。 「ビットコイン」と呼ばれる仮想通貨を聞いたことがあるだろうか? 仮想通貨はいくつもの種類が存在するが、最も代表的なものが「ビットコイン」である。日本ではすでに一部の店舗で、ビットコインなどの仮想通貨による支払いが可能となっている。 日本では仮想通貨が、投資対象として注目されている要因が強いため、実際に多く普及しているというわけではないが、元となっているブロックチェーン技術は、2017年に大きく注目された。 bitcoin

3. 機械学習

ここ数年、機械学習は大きな進歩を遂げており、2016年にGoogleの「AlphaGo」プログラムが人間のプロ囲碁棋士に勝利したことが記憶に新しい。 そして、この「AlphaGo」は、2017年には世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した。 他にも、ガートナーの予測ではEコマースにおいて、顧客とのインタラクションの85%が2020年までに人間なしで管理されると予測されている。 機械学習は、あらゆる分野で一般的に普及しつつあるが、今後も主流な技術として注目されるのは間違いないだろう。

AlphaGo Zero

2017年に世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した「AlphaGo」に対して、わずか5ヶ月ほどの期間で、全勝できるまでに強くなった「AlphaGo Zero」が開発された。 「AlphaGo Zero」は、過去の人間の棋譜から学習するのではなく、人工知能同士の対戦から学習することで、以前の性能を追い抜いた。つまり、プロの人間の過去の行動データなどの良質なデータを準備する必要がなく、人工知能同士で学習したということになる。 人工知能という言葉がたびたび使用されているが、これらは機械学習の技術の進歩によって実現されている。 関連記事人工知能(AI)のできることとは?歴史から学ぶ現状と未来予測 [embed]https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=tXlM99xPQC8[/embed]

まとめ

テクノロジーの未来の経緯を予測することは、1年後でさえ難しいとされる。現に2016年に、音声によって生活をアシストする、人工知能同士で学習し、新たな人工知能を開発、仮想通貨に価値が生まれる、など想像できただろうか? 新たに開発された技術は実際に活用されないことも多い。しかし、次に話題となるものを予測し、ユーザーの行動の変化を読み解いていくことがマーケティング戦略を練る上で最も重要だと考えられる。