イノベーションのプロセスを学ぶ記事まとめ【デザイン思考編】

非デザイナーも読んでおきたい経営に役立つ記事まとめ【ビジネス編】

プロのデザイナーになるために読んでおきたい記事まとめ【キャリア編】

デザインを学ぶために読んでおきたい記事まとめ【デザイン教育編】

デザイナーを目指す人は読んでおきたい記事まとめ【基本編】

多様なキャリアを持つUXデザイナーが語る「ユーザー中心デザインの重要性」【btrax voice #11 KJ Kim】

インスパイアとパクリの境界線とは?

文系、理系、オレ何系?

college-main
タイトルのフレーズは先日、後輩の起業家でGoodpatchのCEOでもある土屋尚史とのPodcast対談で思わず口走ってしまった一言。 日本の高校に行っていた頃、いわゆる進路を決める際に自分が文系か理系かのどちらかを選択し、それに合わせて受験する学部を決めるわけだが、その当時の自分といえば、まさに「で、オレ何系?」という感じだった。 そもそも興味があるのは音楽。得意なのは美術。誰よりも優れていたのが自由研究と、入試には全く関係のない科目ばかり。特に苦手だったのが選択問題で、事前に答えが決まっている問題には全く興味がわかない。マークシートに至っては、ドットの集合がどんな柄になるかを重要視して選んでいたりしたため、ほとんど得点を取ることができない始末。 そんな状況で文系か理系かなんてのはどうでも良い。結局、圧倒的に女子の少ない理系を選んで大失敗だったが。そうなると大学受験も圧倒的に不利なのは当たり前。

日本では結果的に大学に入れない始末

そもそも入りたい大学も学んでみたい専攻も無い。まあ、無いというか、はっきりわからない。せっかく入るなら好きなことを学びたい。でも、日本の受験制度だとまずは文系か理系で分けて、その後偏差値に応じて、A大学の文学部、B大学の法学部、C大学なら商学部という形で受けるのが一般的とされていた。 自分にとっては極まりなく謎な仕組みだが、常識だった。じゃあ、本当に好きなことで受ければ良いかというと、音大に入るほどピアノはうまくないし、ロックバンドをやってるか入れる大学も見当たらない。

クリエイティブなことにしか興味がないハンデ

最終的に自分が専門としたのがデザインであるが、ではデザインやものづくりに興味があるタイプの人は文系なのか理系なのか?多分どちらでもあり、どちらでもない。文系と理系の両方の知識と感覚が必要なのだが、日本の高等教育で教えられる内容ほどの浅く広く意味なく学ぶのはちょっと違うと思う。 そうなってくると、本当に「オレ何系?」と言ってしまいたくなる気持ちもわかる。現在の日本ではクリエイティブ系の人が学びたくなるようなカリキュラムがまだまだ少ない。じゃあ美大に行けば良いのか?でも、最近注目されているような、UXデザインデザイン思考などの経営とデザインを融合させるための分野などは、日本の学校では絶対に教えてくれない。

アメリカでは入試のない大学も多い

もちろんハーバードやスタンフォードなどの名門校は、SATやらGMAPやらのテストに加えて、エッセーや面接、過去のボランティア活動など様々な側面から生徒を評価し、合否が決まる。その一方で、自分が行っていた公立のカレッジなんかは、入試がない。 日本の大学にことごとく落ちたこともあり、運良くサンフランシスコのカレッジに行き始めたのがその後の自分の人生を決定付けたのは間違いないだろう。あのまま受験に成功して日本の大学に入っちゃったりなんかしたら、正直これほどまでに熱中できる事に出会えていかの自信が無い。 参考: 米国のデザイン教育から学んだこと

専攻を決めるのも3年目から

自分の好きな事に出会えた一番の理由は、専攻を決めるのが一通り様々なクラスを受けてからの3年生になってからという仕組み。1-2年の頃はとりあえず必要な科目と興味のある科目を自分で選んで受けられた。そうする事によって、一般教養、音楽系のクラスに加えて、デジタルデザインのクラスを取ったことでその後のフォーカスを決めることができた。 これがもし入学時から専攻が決まっていて、途中で他のことに興味が湧いても、なかなか変換するのが難しいだろう。もしくは、自分の中でこっそり諦めて地道に学ぶべきことを学んでいたのかもしれない。 でも、好きでもないことを学ぶのはかなりしんどい。そもそも興味がなければ深掘りもしないだろうし、単位を取る以上の労力をかける必要すら感じなくなってしまう。 自分の場合は、運よくデザインに出会えたことで、他の教科が単位ギリギリでも、デザインのクラスでは誰にも負けないレベルで頑張れた。そもそも、4年制の総合大学にしっかりとデザイン科があり、現役バリバリのデザイナーが先生になっているのもありがたかった。

最近注目されているのはデザインやリーダーシップなどの分野

で、日本の場合であるが、現在教えていることのその多くが、暗記や計算などコンピューターやネットが得意とする分野が多い気がする。例えば「そんなことGoogleに聞けばすぐわかるよ。」的な内容だったりする。 その一方で、現実の世の中でどんどん必要とされてきているエリアは、クリエイティブ系の能力だったり、リーダーシップだったりするのではないかと思う。頭の良い人より賢い人。個人の処理能力よりもチーム全体のパフォーマンスをあげれる人など。 これは、特にアメリカでは顕著で、最近の従業員の待遇や給与水準にも反映されてきている。その理由の一つがおそらくそれらのスキルがGoogle検索やAIで代用しにくいエリアなのではないかと思う。 近いうちに単純作業や、知識重視の仕事、難しい計算などは殆どAIやロボットに取って代わられるのが目に見えているため、日本の受験勉強で費やすエネルギーの98%ぐらいは無駄になってしまうだろう。 それよりも面白いアイディアを出せることや、ユーザーを理解できること、そして多くの人を巻き込むことのできる能力の方が世の中では必要とされる。皮肉なことにこれらのほとんどが学校ではなかなか学ぶことができない。もちろん日本の入試で試されることは皆無だろう。 参考: 人工知能 (AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル

最近のMBAではデザインを学ぶことも

アメリカだと、最近ではビジネス系の専攻でもデザインやプログラミングのカリキュラムを導入しているケースが少なくない。例えば、ハーバード大学のMBAプログラムでもデザイン思考のクラスを履修するようになってきている。 そして、一般的には文系とされているデザイン科も、数字やデータ的な側面から学ぶことで理系に分類される学位も増えてきている。ようなスキルを身につけ、今後のキャリアに活用するのかに重点がおかれるため、専攻、カリキュラム、学位全てがかなり臨機応変に構成され始めている。 参考: なぜアメリカのエリート大学生は起業を選ぶのか

文系と理系の2つに分ける限界

そもそも人間の属性を文系か理系かの二つに分けることに限界がある。冒頭でもある通り、今後注目されるクリエイティブ系の場合は、どちらに属すのだろうか?文系的な知識や能力も必要になれば、データやAIを活用する必要性を考えると理系的なスキルも必要になる。 では、理系の代表とも言えるエンジニア系はゴリゴリ理系を突っ走るのが良いのか?実はエンジニアとして会社から高く評価される人たちには、自分が作り出すものを相手にわかりやすく説明するための高いコミニュケーションが不可欠だし、ネット上で情報を配信し、注目されたければ優れた文章力もかなり役立つ。 したがって、一見理系だと感じる分野で、文系的能力が求められるケースも少なくはないと感じる。

文系ですがエンジニアになっても良いですか?

例えば高校生の段階で文系・理系に分けてしまうことでの一番の被害者は生徒自身だと思う。日本の学生からよく相談される質問の一つに「僕は文系なのですが、やっぱエンジニアを目指すのは無理ですよね?」がある。僕の答えは「Why not?」 どちらに分類されるかでその後のキャリアが決まってしまう。これは、選択肢を減らし、未来への可能性も下げてしまう。文系の人はエンジニアに向いていない、というしょーもないレッテルを貼ってしまう仕組みは罪である。そもそも、今後増えてくると思われるような、現在存在していない職業などはどのように解釈すれば良いのか? 例えば、UXデザイナー、なんて仕事が出てきたのはここ10年以内。果たしてこの役職に向いているのは、文系なのか理系なのか?答えはシンプルで、両方であり、逆にそれだけでは足りないこともある。ロジカル的な考え方と、ユーザーを理解するコミュニケーション能力、そして新しい事を想像できるクリエイティブの能力も必要になってくる。

このままだと世界的に見ても日本の教育制度はリアルにヤバイ

めまぐるしく変化する現在の世の中において、数十年間もあまり大きく変化していない日本の教育制度は、世界的に見てもとても異質なものだと思われる。いまでもテストで電卓もパソコンも使えないカンニングはNGなんていうのは、信じられない。 実社会では、テクノロジーをどれだけ活用できるか、どれだけ効率よく裏技を使えるか、そしてクリエイティブな発想ができるかが勝負の中で、それを絶対的に否定して評価しているのは、優等生になればなるほど人間の可能性を押さえつけられてしまっているとすら感じる。 現に、うちのインターンを経て立派にデザイン会社を経営しているGoodpatchの土屋もINFOCUSの井口も両方大学を卒業してないしね。それ以外の子達は超高学歴だったのを考慮しても、今の日本の高等教育は、やっぱ時代に合ってないのかな、って思ってしまう。 参考: レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

サンフランシスコのUXデザイナーが語る UXの基本とこれからのトレンド【btrax Voice #9 Mimi Yu】

mimi_btrax_voice
btrax社員の生の声をお届けする「btrax voice」シリーズ。 今回のインタビューは、btraxのサンフランシスコオフィスで活躍するUXデザイナーのMimi Yuさんです。今回は彼女がデザイナーになるまでの道のりや、彼女の考える最新のデザイントレンド、また彼女が今後どのようにデザインの世界で成長し続けていきたいかについて語ってもらいました。 関連記事:2018年にUXデザインを取り巻く7つの変化

Who is Mimi?

mimi Mimi Yu 役職:UX Designer 所属:btrax カリフォルニア大学デービス校卒業。専攻は社会学、副専攻は哲学。卒業後はマーケティングや営業の仕事に従事するもUXデザインには常に興味を持ち続け、その後本格的にUXデザイナーへとキャリアチェンジをするためにサンフランシスコのGeneral AssemblyにてUXデザインを学ぶ。 コース終了後、btraxにてUXデザイナーとしてのキャリアをスタート。コリアン・アメリカンとしてのバックグラウンドから異文化間の橋渡しをすることを目指している。    

まず、UXデザインに興味を持ったきっかけを教えてください

無意識のうちにUXデザインにはずっと興味を持っていたように思うのですが、振り返ってみると、2つのきっかけがありました。 1つは、私がスタートアップの営業として働いてた時のことです。私がその会社で働き始めたときは、ターゲットカスタマーが複数設定されていて、どのカスタマーも同じくらい重要視されていました。 しかしリサーチを行った結果、私たちはターゲットを自社商品のソフトウェアを導入できるだけの資金力がある層に絞ることを決断したのです。それからはプロダクトデザインも含めた全てにおいて、「このターゲットカスタマーが何を求めているか」を中心に考えるようになりました。この経験は本当に面白いものでした。 プロダクトの変更が決まったとき、プロダクトデザイナーはそれについて私たち営業チームに説明してくれたのですが、プロダクトや会社の方向性に影響するインサイトやデータ、営業としての知識がそこに反映されていくプロセスを目の当たりにするなかで、私は「そっち側に行きたい」と思うようになりました。それは言わばコックピットであり、私もその中心部にいたいという気持ちが強くなったのです。 もう1つのきっかけはプロダクトデザイナーをしている友達のMikeの影響です。彼はとても魅力的な人で、営業というポジションで働く中でキャリアの方向性の岐路に立っていた私は、彼と接するうちに営業よりもMikeのような人になりたいと思うようになったのです。 彼や彼の友達は常にもデザインのことを考えていて、バーにいる時でさえ、いつもデザインの話をしていました。そんなMikeの情熱や、彼らのコミュニティーはとても魅力的で、彼らの姿を見て私はデザインの世界に惹かれていったのです。 mimi-interview-min

「UXデザイナー」と言ってもその内容は会社によって異なるものだと思いますが、btraxではどういう仕事をしているのでしょうか?

ほとんどの会社でUXと言うと、それは1つのプロダクトのデザインプロセスにフォーカスする場合が多いです。しかしbtraxでは、UXに関するあらゆる業務に関わっています。 btraxは大企業ではなくデザインチームも小さいので、私はプロダクトデザインのあらゆる側面に対処できる必要があります。あるプロジェクトでは、リサーチや仮説検証のためのユーザーテストを行う一方で、ユーザーフローやインタラクションデザインについての検討も行います。 日本企業と仕事をする機会が多いこともbtraxならではです。私たちが当たり前だと思うことが、アメリカとは異なる文化にいる彼らにとって必ずしもそうだとは限りません。デザイナーとして、前提が常に疑われるような場所にいることはとても難しいけれど重要なことです。 そしてそれは物事に対する意識を、自分が思う「真実」の限界を超えて広げることに繋がります。これはbtraxにいるからこそ得られる貴重な経験です。 これまでサンフランシスコで働いてきた中でも、人種やジェンダーあるいはセクシャル・アイデンティティの多様性に欠けた企業をたくさん見てきました。しかしbtraxでは同僚やクライアントが持つ多様な価値観に触れることができるのです。

普段のデザインプロセスを教えてください

私はいつもこんな問いからスタートします。
  • ユーザーは誰か?
  • ユーザーが持っている課題は何か?
  • その課題がなぜユーザーにとって重要なのか?
  • ユーザーについて知っていることは何か?
  • 私たちの仮説は何か?
  • 私たちのソリューションはその問題解決において、どれだけユニークあるいは効果的なのか?
このプロセスを実践した事例としては、ある自動車会社のプロジェクトがあります。その会社はカスタマーに関する膨大なデモグラフィックデータを持っていたのに、カスタマーのニーズに関する実際のインサイトはほとんど得られていませんでした。 そこで私たちは上記の6つの問いから始め、フォーカス・グループ・インタビューを実施して、ユーザーのライフスタイルやモチベーション、ニーズに関する仮説検証を行いました。それは現在のカスタマーエクスペリエンスをどのように改善し強化すべきかを明確にすることにも繋がったのです。 これらの質問に答えることは、デザインプロセスにおいて最も難しい部分の1つです。しかし一度知識を身につけてしまえば、企業のビジネスゴールとユーザーのニーズが交わるポイントを簡単に見つけられるようになります。そしてその後どのようにソリューションを展開しユーザーを巻き込んでいくかについても考えられるようになるのです。 私は一度質問に対して答えを出した後も、全プロセスを通して同じ質問を問い続けるようにしています。時にはわざと反対の立場を取ってみることもあります。 よくあるのが、プロジェクトの始まりの段階で、みんなとにかく前に進みたがることです。私ももちろん進みたいのですが、ブレーキを踏んで「ユーザーの何が本当に知りたいのか?」「真実であって欲しいと私たちが望んでいるだけのものは何か?」と問う人も必要なのです。 btraxで部署を超えて色々な立場の人と働く良さはこの部分に出ると思っています。特にイノベーション・ブースターを行うチームのメンバーはいつもあらゆることに質問してくる人たちです。それこそが私がまさに自分のプロセスに取り入れたいと思っている部分です。 mimi

UXは日々変化していますが、Mimiさんはどのように最新のUXを学んでいるのでしょうか?

とにかく本を読んで、人と話すことです。特に影響を受けているのはデザインコミュニティですね。私が入っているのはデザインに関する投稿をしたり質問したりし合うFacebookのグループです。 今何が流行っているのかを知るのにはミートアップがいいですね。特に私が好きなのはDesigners + Geeksというミートアップでフォローしています。 あと、私には幸運にもデザインや人生についてコーチングを行ってくれるメンターがいます。あとは、ただサンフランシスコ・ベイエリアに住んで同じ業界の友達と過ごすだけでも刺激を受けます。この街で得られるアイデアや、イノベーション、情熱はもう本当に面白いです。ここが私がエネルギーを得られる中心なのです。

そんなMimiさんが注目する最近のUXのトレンドを教えてください

私が最近感じている最大のトレンドは、ユーザーエクスペリエンスが実生活に入ってきていることです。たとえば音声アシスタントやスマートウォッチなど、考えられて設計されたUXは今や生活のどこにでも存在しています。 これはトレンドというにはもはや当たり前で、普段これらのUXについて意識することすらなくなっています。このことが何を意味するかというと、ユーザーの行動やライフスタイル、ニーズを知ることが間違いなく今以上に重要になるだろうということです。 また、ゆくゆくはこれらのテクノロジーが私たちの生活と密接に融合していくだろうとも言えます。例えばGoogle HomeやAmazon Echoなどは寝室やリビングに置かれ、私たちのプライベートな会話にアクセスできてしまいます。 私たちはデザイナーである以上、いかにこちらが想定した方法で行動するようユーザーを促していくのかをしっかり考えなくてはいけません。それには、倫理面で問題がないようにする視点も忘れてはならないのです。 また私がbtraxで働く中で経験し感じているトレンドとしてはConversational UIが挙げられます。私はもともと文を書いていた経験があり、btraxでもよくインターフェースにマイクロコピーを書いていますが、それは自ずと画面上での対話やそれがどのようにユーザーエクスペリエンスに関係するかを考えることに繋がります。そうすると、会話(conversation)、つまりインターフェイスが質問を投げかけこちらがそれに答えるというやりとりとしてのフローを考えるようになるのです。 関連記事:今さら聞けないユーザーインターフェイス (UI) の基本

このトレンドはこれからどう進化すると見ていますか?

私自身を含めたミレニアル世代は自分たちについて多くの情報を発信しています。私たちは「自分ブランドの発信者」として優れていて、オンラインでもオフラインでも、常にどのように自分たちが映るかを考えて生活しているのです。そのために、あらゆるものが非常にパーソナライズされたものとなってきています。 たとえばiPhoneの登場がいい例です。iPhoneは好みのアプリをダウンロードして、個人のライフスタイルや好みに合わせたアプリのコレクションを作ることを可能にしたパーソナライズド・デバイスです。それはいわば、自分だけのデジタルな領域を作り上げるようなものです。 私たちはもはや日常のどの場面でもテクノロジーが常にあることを期待しているため、今後インターフェイスが音声のようなより形のない経験へと変わっていくことは間違いないでしょう。今後このような期待が高まるにつれて、テクノロジーは、AR/VRに代表されるような「没入型」が中心になっていくだろうと思います。 Conversational UIもまた、そのような期待の高まりを反映したものだと言えます。例えば物理的ボタンからタップできるフラットボタンへの変化は、テクノロジーがより人間に近づいていくことを示しています。 過去には、テクノロジーは切り離されたツールとしてみなされてきました。しかし今では、私たちはインターフェースが個人の要求を満たした個人仕様になっていることを求めています。それはまさに「会話」を使って私たちの言葉でコミュニケーションすることが期待されているアシスタントです。

これからbtraxのUXデザイナーとしてどのように成長していきたいのか、Mimiさんの展望を教えてください

改善したいと思ってることはたくさんあります。自分の専門スキルを磨くとともに他分野からも学んで幅広い知識を身につけていきたいし、それにプロトタイプのスキルも伸ばしたいし、ゆくゆくはインタラクションデザインももっとできるようにもなりたいです。 同時に、デザインの効果やインパクトを測れるようになるために、リサーチをより深く学びたいとも思っています。btraxのサービスチームは分析能力に長けています。私ももっとリサーチスキルをつけて、ユーザーの行動分析の経験をもっと積みたいと思っています。 あと、個人的に可能性を感じていてこれから勉強していきたいと思っているのはARです。UXプロセスを通じてARがどのように実現されてきたかについて今までたくさんの本を読んできましたが、非常に面白いと思っています。ARで解決できる課題にはどのようなものがあるのか興味がありますし、それらの課題の1つに取り組んでみたいと思っています。 また文化を超えたエクスペリエンス・デザインについてももっと知りたいです。これはbtraxで時間を過ごす中で学んでいけるものだとわかっているので、これからがとても楽しみですね。

なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?

designer-salary-main
最近は海外を中心にエンジニアと共に、デザイナーの需要が高まっている。理由はシンプルで、プロダクトに加え、企業経営にとってデザイン思考やサービスデザインなど、「デザイン」の言葉で表現されるマインドセットやスキルが求められているからでる。 実際に、O’Reilly Mediaが2015年に世界のデザイナー324人を対象に行ったリサーチによるデザイナーの給与調査レポートでもそれは顕著になっている。 このレポートでは世界中のデザイナーにアンケートを取り、デザイナーの待遇や地位に関するデータをまとめた。この膨大なデータの中でも特筆する点としては下記があげられる。

デザイナーの待遇調査結果 (中間値による算出):

  • 世界のデザイナー平均年収額は$91,000
  • アメリカのデザイナー平均年収額は$99,000
  • カリフォルニア州のデザイナー平均年収額は$128,000
  • アメリカ国内デザイナーの1週間の平均労働時間: 42
  • 29歳以下のデザイナーの平均年収額は$71,000
  • 30-50歳のデザイナーの平均年収額は$116,000
  • 51歳-のデザイナーの平均年収額は$94,000
  • 10年以上経験のあるデザイナーの平均年収額は$114,000
  • 年間平均昇給額は$2,890

1

 

役職別デザイナー待遇調査結果:

  • 最も平均年収の低いデザイナーはグラフィックデザイナーで$49,000
  • UXデザイナーの世界的平均年収は$91,000
  • UXデザイナーのアメリカ国内平均年収は$99,000
  • 肩書きに”マネージャー”がつくデザイナーの平均年収は$126,000
  • 肩書きに”ディレクター”がつくデザイナーの平均年収は$116,000
  • コーディングができるデザイナーは平均年収が$16,000高くなる
  • マネージメントができるデザイナーは平均年収が$10,000高くなる
2

日本でのデザイナーの待遇の悪さは世界的に見ても異質

上記のデータをご覧になってどう思っただろうか?もし、現在日本国内のデザイナーで上記の結果とあまり大きく差がない待遇の方がいたとしたら、おそらくかなり恵まれているだろう。 と、いうのも、日本国内におけるデザイナーの待遇および地位が世界水準と比べるとかなり低いと感じるからである。例えば下記のような記事からもわかるとおり、日本ではデザイナーに対して劣悪な労働環境と低い待遇になっていることがわかる。

”大手広告代理店の場合は30代で年収1000万円ということもありますが、中小の代理店やプロダクションの場合は初年度300万円を切ることも往々にしてあります。

ある調査では、グラフィックデザイナーの年収の平均値は300〜430万円。「手に職がある」割には大差ないのが実状です。

中には年俸制のためたとえ徹夜作業になったとしても残業代がつかず、労働時間に対して給料が見合わないという声も多く挙がり、その格差が問題視されています”

グラフィックデザイナーの給料・年収 - Career Garden

日本でデザイナーの地位がこれほどまでに低い理由

では、どうしてこのような差がついてしまっているのか?むしろ、なぜ日本ではデザイナーの待遇がまだこんなにも悪いのか?自分なりに、企業側、デザイナー側、そして社会的な仕組みのそれぞれの角度から、いくつかその理由を考えて見た。

【企業側の問題】

1. デザインを上手にお金に変換できていない

そもそもなぜアメリカ、特にカリフォルニア州でデザイナーの待遇が良いのか。答えは簡単で、デザインをビジネスに最大限活用できているから。言い換えると、デザイナーの能力を経営側がビジネス=お金に変換することを知っているからにほからならない。 その一方で、日本はまだまだデザインを小手先のテクニックとしてしか認識していないケースや、場合によってはその重要性をほぼ理解していないこともあるだろう。 最近でこそデザイン思考などのフレームワークを経営に取り入れる動きもあるが、全体的に見るとまだまだメインストリームではなく、営業力に頼りすぎている懸念がある。 その点においては、国土の広いアメリカなどは営業のゴリ押しで顧客を獲得することが難しく、あくまでプロダクトやサービスの品質、それもデザイン的魅力で顧客獲得をする必要性が高く、デザイナーの重要性も自ずと高まっている。 イタリアなんかも、優れたデザイン性をもとにグローバルブランドを構築している。フェラーリの創設者のエンツォ・フェラーリもデザインの重要性の一つとして"高く売れるから"を宣言している。 しかし、日本ではやはり今だに多くの企業が経営にデザインを導入できてなく、経営側がデザインをビジネスに活用し、お金に変換する術を身につけていないと思われる。自ずと、デザイナーの地位がないがしろにされてしまいがちなのであろう。 参考: プロのデザイナーにとって、最も美しい曲線とは?

2. 組織の中でデザイナーのポジションが確立されていない

ビジネスにおいてデザインの重要性を理解していない場合、企業の中でのデザイナーの立ち位置が非常に難しくなる。デザインチームが存在していないどころか、デザイン作業を他の業務と一緒に”片手間"で行っているケースすらある。もしくは、絵を描くのが上手なスタッフがそれだけの理由でデザイン業務をやらされている事もあったりする。 そうなってくると、デザイナーが経営の根幹に関わることは難しく、結果的にデザインバックグランドを持つスタッフが組織において重要なポストにつきにくくもなってしまうだろう。 むしろ、日本企業でデザイナーは、ある意味孤立していて、他の部署との連動がうまくできていない。結果的にデザイナー職が確立していないどころか、組織内にデザイナーの居場所がなくなってしまう事もあるだろう。 その一方で、サンフランシスコ・シリコンバレーのスタートアップの経営陣の中にはデザイナー出身の人が多くおり、Twitter, Airbnb, Pinterest, Dropboxなどのデザインオリエンテッドな会社=デザインの力を活用してビジネスを成長させることに成功している会社が多く存在している。彼らはもちろん強いデザインチームを有しているだけでなく、デザインを会社のカルチャーとしても導入している。 デザインを会社のカルチャーにすることで、1. ユーザー視点でプロダクトを作ることができる。2. 最適な方法で問題解決が可能になる。3. 将来に必要とされるイノベーションの原動力なる。と言ったメリットをあることができる。 しかし、現在の日本で、デザイン力を武器に勝負している企業がいくつあるだろうか?もちろん見た目の素晴らしさを重要視しているケースはあるだろうが、会社全体でデザインの重要性を真剣に考えていると思われるところはあまり多くないと考えられる。 参考: 時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職

3. ビジネスをグローバルに展開していない

実はいくら素晴らしいデザイン力を持っていたとしても、それが日本国内だけで展開されている場合、企業の売り上げも限定的になり、スタッフの待遇も頭打ちになるだろう。 単純に計算してみても、世界で日本語を話す人口は2%に満たない。もし提供しているプロダクトやサービスが日本国内向けに限定している場合は、どんなに頑張っても、これを超えるシェアを取ることは不可能なのだ。日本国内シェア100%は世界でのシェアの2%に到達しない。 そうなってくると、デザイン力を武器に勝負したところで、その”あがり"は知れている。デザイナーに良い待遇を与えられない理由が実はここにある。 言い換えると、デザイナー達がどんなに頑張ってプロダクトづくりをしたり、経営にデザイン思考を導入したところで、そのビジネスが国内専用なのであれば、作り上げたデザインを使う人は世界の2%もいないのだ。 そうなろうと自ずと売り上げも儲けにも限界が生じ、デザイナーの待遇を改善するのはやはり難しい。また、せっかく頑張って作っても日本国内のユーザーにしか使ってもらえないとなると、デザイナーとしても頑張るモチベーションが湧きにくくもなるだろう。 参考: 日本の企業が海外進出するべき3つの理由

4. ユーザー体験を真剣に追求できていない

冒頭のリサーチ結果からも分かる通り、最も待遇が良いデザイナー職の一つが”UXデザイナー”である。正しいユーザー体験を設計するのが彼らの仕事なのであるが、プロダクトのサービス化が進むここ数年で、最も注目されているデザイナー職の一つと言える。 UXデザイナーは、マーケティング、営業、ブランディング、プロダクト、サポートなど、異なるタッチポイントにおいて一貫した体験をユーザーに提供することゴールになる。 これは、デジタル化とコネクテッド化が進む中で、見た目のかっこよさだけで顧客からの支持を得る時代から、総合的な体験への変化の中で、正しいユーザー体験の提供することが企業の利益に直結しているからだろう。 また、UXデザインはユーザーとブランドのそれぞれの目的を達成する役割を果たすために、最も重要なデザイン領域になっている。それもあってか、世界の多くの企業が率先してUXデザイナーやUXデザインチームの採用を進めている。 Amazon, Google, Appleなどの代表されるような世界的に活躍している会社は全て共通して、UXデザインに対しての意識が高く、そこに対してしっかりとした予算を組んでいる。 その一方で、UXデザインの概念、およびその言葉自体が日本企業にはまだ浸透している感が少なく、あったとしてもまだまだ、”UI/UXデザイナー”とUIデザインとの掛け持ちになっているケースが多くみられる。 また、UXデザイナーはその特性上、企業内の複数の部署と連動することでユーザーに一貫した体験を提供するのだが、まだまだ独立したチームが作れないため、結局どの部署に配属して良いかわからないという状況も発生している。 これからの時代は見た目に加えて、体験のデザインも非常に重要になってくる。もしこれがちゃんと行われないと、ブランド価値も生み出せなくなるため、最終的に安売り競争に巻き込まれてしまう。その辺が理解できれば、UXデザイナーの重要性が高まると思うのだが、日本ではまだまだその概念は浸透しづらいのが現状である。 参考: Amazonを成功に導いたユーザーを夢中にさせる4つのUXデザイン要素

5. デザイン“サービス”に対しての正当な対価を払う気がない

これまでは主に企業の内部のデザイナーとしての話であったが、現在の日本の商習慣では、多くの企業がデザイン機能を外部の会社に委託している。 それ自体は大きな問題ではないのであるが、その契約方法と価格帯がデザイナー達を苦しめている。そもそも今の時代にデザインの仕事を”納品型”で受発注しているのは非常にナンセンスである。 これは、グラフィックデザインなどの、作って収めるタイプのものから、サービスデザインに代表されるような、常に改善し続けるものへの価値のシフトが進んでいるため、その仕事に終わりはない。 アメリカではすでに納品型の契約、支払いプロセスを廃止しているデザイン会社が増えてる。契約内容は期間とプロジェクの内容ベースで行い、支払いもプロジェクトの進み具合にかかわらず、時期が来たら支払いが行われるというのが、業界の一つのスタンダードとなっている。 しかしながら、日本ではいまだに悪しき納品文化が横行しており、時代に全く合っていない。納品型のいちばんの問題は、クライアントが気にいるまでやり直しをさせられるため、デザイン会社は下請け的動きしかできなくなり、ブラック企業を生み出しやすくなる。そうなるとデザイナーの労働環境の改善は難しくなる。 加えて、発注する側もまだまだデザインに対して適切な予算が組まれていないと思われる。表面のデザインしか発注しないのが一つの理由で、真剣にデザインに対して向き合い、そのエキスパートに対して対等な予算を組んでいるケースはまだまだ少ないだろう。 場合によっては、デザインに関する予算を広告費やR&D予算から捻出してる事もあるが、これだとどうしても規模が限定的で、デザインが”片手間”な存在にならざるを得ないだろう。 参考: 見積もりはどのように出すのが最も合理的なのか?

【デザイナー側の問題】

実は日本でデザイナーの地位が向上しないのにはデザイナー達自身にも責任があるのではないかと思わざるを得ない。自分たちの価値をしっかりと理解していないことと、キャリアアップにたんと取り組んでいないのが大きな理由。

1. デザインを安売りしすぎ

まずいちばんの問題が、自分たちの正当な価値を知らなさすぎる。日本ではデザインというサービスをあまりにも安く提供しているデザイナーが多すぎて、自分たちの首をしめてしまっている。 ありえないほど安い制作会社や、場合によっては無料でサービスを提供しちゃうフリーランスデザイナーなど、自らが自分たちの地位を下げてしまう事がまだまだ多い。 ビジネスに対して大きなインパクトを与える事も可能なデザインなのに、それを安売りしてしまうのは、自分たちの正当な価値を理解していないからなのかもしれない。 参考: デザイナーという人達の仕事

2. 時代に合わせたスキルを身につけていない

もう一つの問題が、時代とともに変化するデザイナーに求められるスキルや考え方に追いついていない事。以前の記事「デザイナーに必要なのはスキルアップではなくスキルチェンジ」からも分かる通り、デザイナーは新しいスキルをどんどん導入していく必要がある。 しかし、どうしても日本でデザイナーの仕事は”職人的”になりがちで、新しいデザイン領域にチャレンジしていっているデザイナーはまだまだ少ないように思われる。 そうなると結局、デザイナーという名のオペレーターになってしまうか、デザイナーと名乗っていながら実はイラストレーターであるケースが多発し、その価値が限定的になってしまう。 参考: 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる

3. “好きを仕事”にしてる意識が高すぎる

デザイナーの安売りの元凶がこれ。自分がやりたいことをさせてもらってるから、安くてもやりたい、という考えが値引き競争が横行してしまっている原因。 なぜか日本では「好きなことを仕事にする=お金を儲けてはいけない」の概念があり、デザイナーにも浸透している。デザインは趣味の延長なので、待遇がよくなくても構わない、という考えをしてしまうと、プロとして正当な評価を受けにくくなってしまう。 また、デザインは自己表現だと考え、アーティストとデザイナーを履き違えているケースもある。そうなってしまうと、職業としてのデザイナーが成り立たなくなる。 参考: やりたいことが見つからない人にセルフ鎖国のススメ

4. 専門性が高く、ユニーク性が低すぎる

日本のデザイナーは総じてスキルレベルが高い。これはおそらく世界的に見ても間違いなく、細部にまでこだわる事のできる日本のデザイナーの能力はもっと評価されるべきである。 その一方で、一般的なデザイン能力は高いのであるが、他にまねのできないユニークな価値が提供できているケースはまだまだ少ない。優秀なデザイナーは多いのだが、どうしても似たり寄ったりになってしまい、自分にしかないスタイルやスキルが保持できていない。 どうしてもデザイン的専門性は高いのであるが、ユニークさに欠けるタイプのデザイナーばかりになり、差別化ができずに結果として価格競争に巻き込まれてしまいがちである。 参考: 最近のスタートアップのロゴのスタイルが似通ってきている問題について

5. プロとしてのビジネスディールができていない

歌手の矢沢永吉は以前に”アーティストのくせに金儲けを考えるな”と言われたらしい。しかし、ビートルズやローリングストーンズなど、西洋ではアーティストでもしっかりとビジネスディールをし、その地位が確立されていることを知り、音楽をお金に変換する事に真剣に取り組んだという。 デザイナーも同様で、デザインの仕事をすると同じぐらい、デザインをちゃんと一つのビジネスとして提供する必要がある。しかし、まだまだ多くの場合、"デザイナーなのでビジネスのことはよくわかりません"的なニュアンスで、しっかり対価を払ってもらうことから逃げている気がする。 そして、結果的には金額と契約内容が客の言いなりになり、”下請け業者”の一つでしかなくなってしまう。それではデザイナーの地位は一向に改善されないであろう。今後はデザイナーもコミュニケーションスキルをはじめとしたビジネスの仕方を学んでいく必要があるだろう。 参考: アメリカのデザイン会社で実際に利用されている1ページだけの契約書

【社会的仕組みの問題】

最後に日本社会全体の問題も考えてみたい。おそらく以前よりは格段に改善が進んでるとは思われるが、世界規模で見てみると、どうしてもデザイナーを取り巻く環境にまだまだ改善の余地があると思われる。

1. 価値のあるデザイン教育がされていない

例えばサンフランシスコの凄さの一つが、デザインスクールの数と質だろう。それも、最新のスキルを即戦力で使える人材が街にゴロゴロいる。これは、現役のデザイナーがビジネスとデザインの両方の側面で教えているのが理由。 日本ではまだまだデザインに関する適切な教育を受けられるところが少ないように思われる。もちろん美大とかでも学べるのであるが、例えばよく「UXデザインはどこでも学んだら良いですか?」の質問に対しては適切な答えが見つからない。 そもそもデザイナーはどこから出てくるのか?彼らは文系?理系?実はどっちでもなく、どっちでもある。日本の学校教育だとデザイナーが生まれる仕組みはほぼ存在しておらず、無理やり文系か理系を選択させる仕組みでは、デザイナーになりたくても、どこから始めて良いかがわからない。 アメリカだったらどこの大学でもちゃんと”デザイン学科"が存在するし、社会人でも通える教育機関があるのであるが、日本だとまだまだその環境が整っていない。 参考: 【給与差1.4倍】グラフィックデザイナーがUXデザイナーになる方法

2. 人材の流動性が低い

これはデザイナーに限ったことではないが、終身雇用の概念からくる人材の流動生の低さが、待遇の悪さに繋がっている。本来優秀な人材は年齢や経験年数に関係なく、どんどんキャリアアップができるべきなのであるが、日本だとまだその感覚は低い。 海外では、プロのデザイナーとして自分のスキルを武器に企業を渡り歩くケースや、プロジェクトごとに高いギャラで結果にコミットするデザイナーも多くいるが、一部の著名クリエイティブ・ディレクターを除くと、日本では以前としてレアなケースであろう。 そうなると、どうしても現状の地位と待遇で甘んじてしまうことも多い。まあ、一部のベンチャー企業などでは最近ヘッドハンティングも増えているようではあるが、今後に期待したい。 参考: 【ワークライフバランスはもう古い】新しい働き方、ワークライフインテグレーションとは

3. いまだに広告代理店至上主義

現在の日本の産業構造では、予算の組み方や取引方法が偏っており、デザイナーの地位向上の妨げになっている。その一つが、広告代理店が多くの予算を牛耳っている事実。 そもそも”広告”は一つのデザインのフィールドでしかなく、そこに様々なデザイン案件を丸投げしている時点で、価値のあるデザインの提供は難しくなる。 代理店としても、下請けのデザイン会社に仕事は流すが、プロジェクトのイニシアチブを握ってしまっているため、実際に手を動かすデザイナーたちが、経営に直結したデザインの仕事をすることがほぼほぼ不可能になってしまう。 また、コンサル業界でも、まだまだ「経営コンサル > システムコンサル > デザインコンサル」の概念が強く、デザイン会社の地位が低い。 参考: アメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由

4. ユーザーが我慢強い

電化製品を使うときにまずマニュアルを読む。こんな消費者は日本にしかいない。最近では直感的に使えるプロダクト以外は、ユーザーに相手にされないのであるが、教育レベルの高い日本のユーザーは、我慢強く取説を読んでくれる。 そうなると、ユーザビリティーを追求しなくても使ってくれるし、UXデザインをしっかりとやらなくても、顧客が離れなかったりする。 これがアメリカだったら、わがままなユーザーが多すぎて、極限まで使いやすいプロダクトを作らない限り、ヒット商品は生み出せない。結果として、ビジネスにおいて優れたデザイナーの重要性が高まる。 しかし、日本では適切なデザインをしていない、非常に使いにくいソフトウェアでも会社都合で使ってくれたりするので、デザインの追求がされずに、デザインの価値も理解してもらえてなかったりする。 参考: 【UXデザイン】コンバージョン率を向上させる7つの方法

これからのデザイナーの地位向上を目指して

我々、btraxは、クライアントと共にデザインのチカラを最大活用してイノベーティブなプロダクトを世界に広げることをミッションとしており、それを達成するためには、デザインの価値を最大限にアップさせることが重要だと考えている。 これからも、様々なビジネスにおけるデザイナーの重要性と地位の向上を目指してサンフランシスコと東京で働くスタッフが日々真剣に取り組んでいる。  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

【2018年版】ウェブデザインの最新トレンド5選

【2018】最新のウェブデザイントレンド
Windows8が登場した2012年以降、ウェブデザインに関する話題においてフラットデザインという用語をよく耳にするようになった。 AppleもiOS7を発表した2013年からは、従来使われていたスキューモーフィズム、つまり物理的なアイテムに似せたデザインをやめ、フラットデザインを採用している。 iOS6,7

iOS6, 7

これらにより多くのウェブサイトに影響を与えたフラットデザインは、現在多くのウェブサイトで見かけるようになったが、ウェブデザイン界ではこれに限らず毎年クリエイティブなデザインが生まれ続けている。 この記事では、2017年後半に見られたクリエイティブなウェブデザインのうち、2018年も引き続きトレンドとして見られるであろうものを紹介する。

【トレンド①】モバイルファースト

アクセス解析ソフトを提供しているStarCounterによる世界のブラウザ定点観測の調査によると、2016年11月にモバイルブラウザーの利用率がブラウザ利用率の全体の「50.62%」を占め、モバイルの利用率が従来のコンピューター利用率を超えたことが明らかになっている。 弊社、btraxの当ブログであるfreshtraxでも読者のおおよそ半数がモバイルからアクセスしている。 このモバイル利用率増加を背景に、デバイスに依存しないレスポンシブデザインがトレンドとなり、相性の良いフラットデザインも同時によく見かけるようになった。 何年も前から言われていることではあるが、2018年以降はこれまで以上にモバイルファーストを意識しなくてはならない。 モバイルファーストなウェブデザインの特徴としては、アイコンを多用して少ないスペースで効率よくシンプルに情報を見せていることだ。 例えば横線を縦に3つ並べたハンバーガーメニューなどは非常に一般的なアイコンとして浸透しており、今では多くのユーザーにとってその機能が馴染みのあるものとなっている。 RestuarantFinder

Nutrition app design by Masum R.

g-star.growing

Home growing app design by Typelab D

【トレンド②】フラットデザイン2.0

フラットデザインが進化し、シャドウやグラデーションによってより奥行きのあるフラットデザイン2.0とも呼ばれるセミフラットデザインがトレンドとなっている。 scale

scale

fireworks.prayer

Fire Works mobile app by Samuel.Z, Mobile app by M. Tony for Elmurz

bubblewits

Bubblewits

従来のフラットデザインでは余分な装飾やグラフィックを省いたがゆえに、クリックできる箇所がわかりづらいなどといった課題があった。 しかし、フラットデザイン2.0は上記のデザインのようにドロップシャドウやグラデーション、効果的なアニメーションを一部に取り入れることで、従来よりもわかりやすい、つまりユーザビリティの高いデザインを実現している。 ちなみに冒頭で紹介したiOS7のアイコンにもグラデーションが効果的に使用されていることがわかる。

【トレンド③】鮮やかな配色

adobe

Adobe

spotify.egwineco

Spotify, Eg WineCo

ariellecareers

Colorful landing page design by Adam Bagus for Arielle Careers

2018年にはビビッドカラーなどの鮮やかな色合いがトレンドになると言われている。 これはスクリーンやモニターなどの装置の技術的進歩により、豊かな色を再現することが可能になったことで結果的にデザインの可能性が広がったゆえのトレンドだ。 色はブランディングにおいて重要性が高く、色の知覚は感情に結びつくため、効果的にユーザーにアピールすることができる。ターゲットとなるユーザーがどのような感情を欲しているか、国や文化によって色に対するイメージが異なることを理解することが重要である。

【トレンド④】アニメーション

loadgif

GiFs – such as this one by Chris Gannon – are back in favour

gifアニメーションが再起しつつある。 gif規格は現在ほとんどのデバイスで読み込むことができ、ロード中に表示するなど効果的に使用することができる。 アニメーションロゴなどは、少ない時間で効果的に情報をユーザーに伝えることが可能で、企業のブランドをさらに強化するために大きな可能性を与えるかもしれない。 zendesk

Zendesk

digitalasset

Digital Asset

また上記のように、スクロールアニメーションやパララックス、つまり視差を利用した演出によってユーザーの理解を高めたり、効果的なブランディングが可能になる。 alarm_material_ui

dribbble

さらに、クリックやタップ時のアニメーションを効果的に利用し、ユーザビリティを向上させることも可能だ。 上記の例では、タップしたアクションボタンを起点としたアニメーションが、ユーザーに自身が行っている操作と、その結果が結びついていることを理解するために役立たせることができるなど、細かなアニメーションがユーザビリティ向上に役立つことがわかる。 ブラウザの進歩によって様々なアニメーションが実装できる今、シンプルなデザインであっても効果的に印象を与えることができる。

【トレンド⑤】オリジナルイラスト

dropboxbrand

Dropbox.design

craterlabs.zingle

Web page illustrated and designed by SixDesign, Zingle

1960年代後半まで広告の世界を支配していたイラストレーションだが、ウェブの世界で再起しつつある。 イラストは、ウェブサイトに個性を見いだす画期的な方法であり、機能性とシンプルさを損なうことなく企業の目指すブランドのトーンに合わせた性格を表現できる。 形、大きさ、スタイルなど無限の可能性があるイラストは、ユーザーエクスペリエンスという名目で遊び心を失うことなく個性を出すことができるだろう。

まとめ

上に挙げたトレンドに共通するのは、ユーザーファーストでありつつも大胆かつ的確にユーザーに伝えるための手法であるということだ。 2018年は最近のウェブの記憶の中でもっとも楽しい年になりつつあると言えるだろう。

design, Design, DESIGNの違いを知っていますか?

design-main-pic
デザイン”という言葉を聞いてどのような事柄を思い浮かべるであろうか?ファッション?建築?グラフィック?そう、どの分野でも最近はデザインの重要性が語られている。その一方で、この言葉が示す定義が人や業界、状況によって大きくことラルことも増えてきている。 特に最近ではデジタルメディアや複数のデバイスで異なる”カタチ”のデザインが出現。そしてデザイン思考などの概念的な意味でデザインという言葉を使うシーンも増えてきてる。

多種多様になったデザイナー職

これはもう一つの単語で表現するには限界があるほどのレベルになってきているのではないだろうか?それもそのはずで、デザインに関連する職業名”〇〇デザイナー"を見ても、下記の様に軽く十種類以上もある。
  • グラフィックデザイナー
  • Webデザイナー
  • UIデザイナー
  • UXデザイナー
  • ヴィジュアルデザイナー
  • コミュニケーションデザイナー
  • ロゴデザイナー
  • プロダクションデザイナー
  • パッケージデザイナー
  • ファッションデザイナー
  • モーショングラフィックデザイナー
  • インテリアデザイナー
参考: 時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職 これに加え、アートディレクターやイラストレーター、そしてチーフ・クリエイティブ・オフィサーなど、ありとあらゆる仕事に”デザイン的”要素が散りばめられている。ちなみに、本来はイラストレーターはむしろアーティスト寄りの仕事であり、厳密にいうところのデザイナー職ではないのであるが、日本ではデザイナーの一人に数えられたりもしている。 参考: デザインとアートの違い

経営にもデザインを活用する時代

そして最近では経営者にもデザイン的な考え方が求められ、デザイン思考やサービスデザインといった非デザイナー向け、デザインスキルというものまで存在する。ここまで来るとすでに”デザイン”という言葉の表す概念と、適用される領域が多種多様になりすぎて、”デザイン”の意味が広すぎて非常にややこしくなってしまっている。そして、"デザインできます”の意味もちゃんと詳しく聞いてみないと特定しにくい。既存のデザイナーからしてみると、”それ、デザイナーじゃないよ”と言われる様な内容でも、ちゃんとデザインとして成り立つ時代になっているのだ。 参考: デザイナーとは職種ではなくマインドセットである

design, Design, DESIGN

そんなどんどん広がるデザインという言葉の概念をなんとか識別するために、英語での表記方法を変えて表現するケースが増えている。カバーする領域とユーザー数、そしてそのインパクトのスケールに合わせて、design, Design, DESIGNとなる。では、それぞれの表記方法の意味合いと、その場合のデザイナーの仕事内容を見てみよう。

1. design: 見た目のデザインが中心

おそらく”デザイン”と聞いて最も多くの人々がイメージするのが、この小文字のdesign. いわゆる、”見た目”の良さを追求し、商品やサービスの良さを届けるのが役割。ある意味で、昔からあるデザインの概念と役割。デザインの種類例としては下記が挙げられる:
  • グラフィックデザイン
  • 工業デザイン
  • 広告デザイン
などが代表的で、その特徴としては:
  • 特定のユーザー向け
  • 完成させることが目的
  • 職人的仕事内容
となる。このdesignにおいては、ターゲットの顧客が誰であるかが、ある程度想定され、そのユーザーに対してできるだけ”完璧な”デザインを施す。例えば、お菓子のパッケージは、そのターゲット顧客向けのグラフィックデザインが施され、自動車のデザインも、特定のユーザー層を想定して設計される。もちろん広告作成はターゲット割り出しが肝心だ。 その仕事内容から、デザインを完成させることが一番の目的となり、1mm単位のズレや予定外の色のムラも許されない。おのずとデザイナーの仕事は極めることが重要で、かなり職人的な内容になってくる。

2. Design: 利用することを目的としたデザイン

次に来るのが、インターネットやモバイル、そしてデジタルメディアの発達から生まれた比較的新しいタイプのデザイン領域。これまでは紙媒体や物体など、手に取れるものをデザインしていたのに対し、このタイプのデザインのその多くが画面の中に存在する。 具体的な例として下記がある:
  • Webデザイン
  • UIデザイン
  • デジタルコンテンツ
多くがデジタル媒体向けで、一昔前は紙媒体を経由してからこのタイプのデザイナーになっていることが多かったが、最近では最初からデジタルオンリーのデザイナーも少なくない。一つ前のdesignと比べるとその役割と仕事内容に下記のような大きな変化が見られる:
  • 不特定のユーザー向け
  • 完成してからも改善
  • 進化し続ける仕事内容
これはどういうことかというと、デジタルxインターネットという特性上、いつどこで誰がどのような方法でアクセスするかが予想しにくくなった。そして一つ前のデザイン領域とは比べ物にならないほど多くのユーザーに利用される可能性が高まった。それにより、完璧なデザインをするよりも、より多くのユーザーに使ってもらいやすいデザインを施す必要が出てきている。 Webサイト1つとってみても、世界中からアクセス可能で、そのデザインが表示されるデバイスもPCやモバイル、タブレットなど複数。そして、画面の大きさや解像度、発色具合などを考えると、全くズレのない”完璧な”デザインを届けることがほぼ不可能になっている。したがって、"完璧"を目指すことがほぼほぼ不可能。むしろ、完成という概念がなく、最大公約数でより多くのユーザーに使いやすいデザインを行うことの優先順位が上がる。 そして、一度デザインしたとしても、そこで仕事は終わらない。テクノロジーやデバイスの進化に合わせて常にデザインもアップデートする必要があるからだ。これにより、デザイナーの仕事も常に進化し、新しい技術や知識を常に習得する必要がある。これは、職人的デザイナーから進化型デザイナーへの変化でもある。

3. DESIGN: 経営に対するデザイナー的考え方

そして最近アメリカ西海岸を中心に最も話題になっているデザインが、この全て大文字のDESIGNである。このタイプのデザインは見た目の美しさよりも、概念的側面が強く、主に経営や問題解決のプロセスとしての役割を果たす。それゆえに、ビジネスの結果に対するインパクトも非常に大きい。その守備範囲が広くなり、役割も増えたために、広い意味でのデザインとも称される。 種類としては:
  • サービスデザイン
  • UXデザイン
  • デザイン思考
などが代表的。これらの広義でのデザインの特徴は:
  • ユーザー選定が重要
  • リリース後からが勝負
  • ビジネスとデザインの融合
ここにきてまたユーザーの割り出しがとても重要になる。と、いうのも、”デザイン的考え方でビジネスを成功させる”がゴールとなるDESIGNにおいては、主役は企業ではなく、あくまでユーザー。したがって、どのようなユーザーにどのようなニーズがあるのかという、ユーザー中心の考え方が求められる。 それも一つ目のdesignではユーザーの年齢や性別などの属性でざっくりとターゲットを定めていたのに対し、ここでは商品やサービスが利用されるシーンや体験を設計する。誰がだけをターゲットにするわけではなく、どの様なシーンで利用されるかをしっかりと想定する。 そして、ビジネス的価値を生み出す際に最も重要なのが、プロダクトのサービス化。言い換えると、ビジネスの勝負は商品を売ってから始まる。良い例えばスマホ。購入後も定期的にOSがアップデートされ、ユーザーに価値を提供し続ける。コネクテッドカーのTeslaも同様のコンセプトでデザインされている。いわゆる、モノから体験のビジネスモデルを作り出すのがDESIGNの役割でもある。 最終的なゴールがビジネスへの貢献であることから、デザインとビジネスの融合を行うことが目標となり、経営陣に対しデザイナー的感覚のインストールをインストールし、ユーザーにより良い体験を提供することで、企業の成長を生み出す。これは元々Appleが得意としてる手法でもある。 関連記事: DESIGN Shift: これからのビジネスはモノより体験が価値になる

デザイナーとしてのスキルを身につけるかマインドセットを持つか

ここまでデザインの領域が広がった今、いきなり全てのデザインを網羅するのは難易度が高い。その一方で、まずはデザインを活用するその目的を理解することで、自分が必要なデザインの役割を見つけることができるであろう。必ずしもデザイナーを目指していなかったとしても、デザイナーてきマインドセットを持つだけでも、様々な仕事に活用することができるだろう。

デザイナー的マインドセットとは

では、”デザイナー的マインドセット”の実態は何であろうか?これはデザイナーの人たちが普段問題解決を行う際に利用している考え方やプロセスを元にしている。感覚的には下記の要素になるだろう。 デザイナー的考え方:
  • クリアにコミュニケーションを行なう
  • 正しいものを正しいところに
  • 自由な発想からスタート
  • 制限をクリエイティブの源に
  • 顧客/ユーザー視点で考える
  • 仮説 > コンセプト > プロトタイプ > 検証 > 改善のプロセス
  • 失敗から学ぶ
  • 心地よさを優先する
  • ロジックと感覚の両方を活用
  • 分かりやすく使いやすくを優先
  • Less is more
  • 相手の気持ちを理解する
  • 細部にこだわる
  • 本当の目的を見つけるために自問自答する
  • 一つの問題に対して複数の解決方法を考える
  • 前例のとらわれずに未来を考える
  • 全ては世の中をよくするために
  • 企業の利益よりユーザーのメリットを優先

デザイナーの究極的な役割は未来を作り出すこと

今後もデザイナーに求められる領域がどんどん広がり、ビジネスにおけるデザインの重要性も拡大する中で、これからは"デザイン"がデザイナー職以外の人にも必要なマインドセットとなっていく可能性も高い。 重要なのは、ユーザーニーズの理解、そこから導きだされる仮説、コンセプト作成、検証、改善のプロセスを通じた未来を作り出す考え方で、今までの過去のデータとロジックだけに頼ったビジネスのプランからは現在存在していない新しいサービスを生み出すことはほぼ不可能になるだろう。そこに必要になってくるのが"デザイン"の役割である。  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.