ベンチャー企業のプロスポーツ支援「成功する支援/成果が出ない支援」の違いは?~ゼロスタート代表取締役社長・山崎徳之氏に聞きました

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2020年に東京オリンピックを控えて、いま企業のスポーツ支援への関心が高まっています。

とはいえ、これまでスポーツ支援を行ったことがない企業や、PR活動の経験が浅い中小企業、ベンチャー企業にとっては、興味はあっても何をどうすればいいかわからない、きっかけや情報の糸口が掴めないといった場合が多いのではないかと思います。

そこで、東京オリンピックの追加種目に選ばれ注目度急上昇中の競技、スポーツクライミングのスポンサー支援活動を2012年より行ってきた株式会社ゼロスタートの代表取締役社長・山崎徳之氏に、お話を伺いました。

お話を伺った方
山崎 徳之氏 株式会社ゼロスタート 代表取締役社長

支援のきっかけは、知人からの紹介

──ゼロスタートでは、2012年からプロフリークライマー野口啓代(のぐち・あきよ)さんのスポンサー支援を開始して、2015年からはスポーツクライミング日本代表選手のサポートもしてきました。また、2016年からは、冒険家の南谷真鈴(みなみや・まりん)さんの公式サイトのサポートもしていらっしゃいます。こうしたスポーツ支援を始めるきっかけをお聞かせください。

山崎(以下敬称略):きっかけは、知人の紹介です。スポーツクライミングがオリンピック競技に選ばれたのは昨年(2016年)の夏ですが、2012年当時はまだぜんぜん知名度がなくて、世界大会で1位の選手でもプロ活動だけで生活を成り立たせるのは難しい状況でした。

当時日本人選手で純粋にプロ活動だけで食べていける人は3人ほどで、そのうち2人は現役を引退して指導や育成的な活動をしていて、現役では1人ぐらいしかいなかったようです。そういった現状を聞いて、支援を申し出た形ですね。

──具体的に、どのような支援を行ったのでしょうか。

山崎:野口選手は、2012年の時点ですでに世界1位だったので、スポンサー企業が5、6社ついていましたが、ほとんどが物資の提供だったそうです。

例えばシューズを提供しますとか、ウエアを提供しますとか。競技を行う上でそれは非常に助かりますしありがたいのですが、物資の支援だけでなく現金の支援もあればより競技に集中しやすい環境になると思いましたので、少額ではありますが年間いくらで金銭的な支援をしましょう、ということになりました。

その後、日本代表も支援

山崎:フリークライミング日本代表選手についても、渡航費の問題で海外の大会に参加することを断念したり、行けたとしてもコーチが帯同できないといった状況だったそうです。

プロの世界大会でコーチが一緒に行けるか行けないかは、戦績に大きく影響します。その上、日本の選手が優勝して世界一になっても記者会見を開く予算がないというお話でした。記者会見を開くのはそこまで費用がかからないのですが、当時はそれほど金銭的に厳しい状況にありました。

そういった苦労話を聞いて、2015年からは日本代表も支援することになりました。こちらも年間いくらという固定のスポンサー費です。

2012年当時、日本人選手では野口選手と安間佐千(あんま・さち)選手が世界トップレベルで活躍していたのですが、その後日本のレベルはさらに上がり、現在の日本代表にはオリンピックでメダルが狙える選手が何人もいます。

東京オリンピックの種目に選ばれてから

──支援の成果があって、東京オリンピックの追加種目に選ばれたんですね。

山崎:うちが支援したこともありコーチが帯同できるようになったことや、記者会見が開けたことなど役に立った面はあると思いますが、もともとオリンピックの種目になることを期待して支援していたわけではないので、選ばれたことは予想外の結果でした。

オリンピック競技となったことで注目度が一気に高まって、他の競技と同様にフリークライミングにも代理店が入り、大きな企業がスポンサーにつくようになったのを機に、当社の支援は一応の役割を終えたと考えています。

──終えたんですか!?

山崎:他の企業やみんなが支援してくれるようになったので、CSRとしての当社の支援の役割は終了ということですね。オリンピック競技になっていなかったら、まだまだ支援を続けたかもしれませんが。

企業のスポーツ支援の2つの役割

──「CSRとしての支援」の役割とは?

山崎:企業のスポーツ支援には、2つの役割があると考えています。支援することによって企業のロゴが出て、自社の知名度やイメージアップにつながったり、売上が上がったりといった効果を狙って行うのはマーケティングです。そういったリターンがなくても、社会貢献のために行うのであれば純粋なCSRだと思います。

──そこは明確に線引きをして判断していると。

山崎:はっきりと線を引いているわけではありませんが、マーケティングが目的になってしまうと、費用対効果についても考えなければならなくなってしまうので、話が変わってしまいますよね。

支援した額に対してリターンが少ないと、「そこにこれだけ支援するなら、こちらのイベントに出展したほうがリターンが大きいのではないか」という見方も出てきてしまいます。

リターンが明確ならば、支援に名乗りを上げる企業は多いですけれど、リターンがあるかどうかわからないときに支援するのがCSRなのではないかと思います。

スポーツ支援のPR的な旨みは?

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──とはいえ、純粋なCSRとして支援を行っていたとしても、今回のようにスポーツクライミングがオリンピック競技に選ばれて脚光を浴びたことで、何かPR的な旨みというのはなかったのでしょうか?

山崎:まったくないですね。それによって当社の検索エンジンが売れたわけではないですし、会社のイメージアップ等につながって採用率が上がったりもしていません。強いてメリットを挙げるとすれば、ニュースリリースの話題がないときにスポーツ支援の件でリリースが出せたことです。

──冒険家の南谷真鈴さんが、日本人最年少で7大陸最高峰登頂を達成したときの報告リリースは、ものすごい反響がありました。

山崎:はい。リリース経由でマスコミの方たちから当社にたくさんお問い合わせがありましたが、うちは公式サイトの運営をサポートしているだけなので、お問い合わせへの回答など実対応はすべて代理店の方で行なっています。

南谷さんサポートのきっかけ

──ちなみに、南谷さんの支援をするきっかけはなんだったのですか?

山崎:南谷さんも知人の紹介です。実は、それ以前に一度、八ヶ岳のとある山で偶然会っていたんです。珍しく山に若い女の子がいるなと思ったら、下山後にその同じ山で「女子高生滑落」というニュースがあり驚きました。その際非常に気になっていたのですが、翌日無事が確認されたので安心しまして、以降はそのときの女の子のことは忘れていました。その後、知人に紹介されたとき彼女は7大陸最高峰制覇にトライしていて、すでに5つクリアしていました。

共通の知人に「山崎さんは、クライミングの支援をしていることですし、南谷さんの支援もしませんか?」とお話をいただいたのですが、ご本人にお会いしたら、金銭的な支援はスポンサーがしっかりついているので大丈夫ですとのことだったので、ならばメディア周りの支援をしましょうという話になりました。公式のホームページを当社で立ち上げたり、Webでの問い合わせの対応をしたりしています。

決め手があるから支援する

 ──野口選手やフリークライミング日本代表選手、南谷真鈴さん、みなさん知人からの紹介で支援を始められたんですね。支援を判断するにあたって、決め手のようなものはあったのでしょうか?

山崎:支援することでより大きな成果を出せるのではないかと思えるので支援するわけです。

野口選手は支援を開始したときにはすでに世界1位でしたが、その後も2度世界一になりましたし、スポーツクライミングも去年(2016年)ボルダリングのワールドカップ・世界選手権の男子1位は日本人でした。

南谷さんも、7大陸のうち5大陸制覇していましたし、この人なら頑張ってくれるだろうと思ったから支援しました。

実際に、南谷さんが最後に挑んだのは北米大陸のデナリという山で、そこは相当に難しい山として知られており7人ぐらいで入山したそうなのですが、一番標高が高いキャンプで暴風雨に見舞われて、1週間ほど粘った結果天候が回復しないため一旦下山したそうです。でも、翌日一人だけ戻って登頂してしまった。そういったポテンシャルがある女性です。

──有望だから、支援する。

山崎:「有望だけど、認知されていない」ところを支援するからCSRとしての意味があるのだと思います。

自分が知っている分野だから可能性を見極められる

──こういうスポーツ支援のお話とは、いったいどこで出合うのでしょうか?

山崎:自分自身もクライミング・登山はしていますが、野口選手の支援を開始した2012年当時のクライミングの世界は本当に狭くて、ある程度本気でクライミングをやっている人なら、通っているジムに行ったらそこに野口選手がいる、みたいな感覚でした。

ですから知人に紹介してもらったのも、ごく自然な流れです。

──個人の趣味や人脈だけで支援を決めているわけではなく、その人たちが出すであろう成果に価値があると感じているから支援する。

山崎:それが社会貢献だと思うんです。個人貢献ではなく、あくまで社会貢献としてであり、個人的に気に入ったから支援するということではないです。

──これからも、そういった支援は続けていくおつもりですか?

山崎:そうですね、良いお話があればこれからも続けていきたいと思います。とはいえ、世界でトップになるポテンシャルがあって、企業に注目されていないケースはそれほど転がってはいません。だからこそ、たまにそういう選手やスポーツが見つかったら、すごく支援する意義はあると思います。

企業には潜在的に社会貢献のモチベーションがある

──今回、山崎さんに取材させていただこうと思ったのは、2020年の東京オリンピックを前に、いろいろな企業がスポーツ支援への興味・関心を高めているのではないかと思ったからなんです。ですが、お話を聞いてみると、すでに代理店がついていて、活躍が期待されている分野にベンチャーや中小企業が支援で参加するのは難しそうですね……。

山崎:そういった支援は金額も大きいですしね。ですが本来、どんな企業も社会に貢献したいというモチベーションを潜在的に持っていると思うんです。

スポーツ支援に限らず、例えば、震災のときに寄付や社会貢献活動を行った企業もたくさんあります。そういった数々の活動は、PRやマーケティングのためではなく、純粋な社会貢献活動としてごく自然に行われました。その潜在的なモチベーションを平時からどのように使うかだと思います。

ただ、自分にとって全然興味のない分野だと、支援する相手が本当にすごいポテンシャルを秘めているかどうかわからないですよね。スポーツクライミングや登山は、自分もやっているから彼らの活動を見て、感じることができたというのは言えると思います。

「成功する支援/成果が出ない支援」の違いとは?

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──そうですね、ただ人から話を聞いただけではわかりませんよね。

山崎:自分がある程度真剣に取り組んでいるジャンルでないと、成果が出せるかどうか見極められないと思います。自分がそんなに詳しくない、打ち込んでいないジャンルに支援すると、単に他人の経済活動に利用されてしまうだけという可能性もあり、結果的にCSRにならないこともあります。

CSRとして支援するなら、自分もある程度目が利くジャンルに限らないと上手くいかない気がします。

スポーツ支援には3パターンあるのだと思います。1つは「結果が出ているから支援します。」というもの。有名選手の支援など、スポーツ支援で一番わかりやすいパターンですね。

2つめは「結果はまだ出ていないけれど、自分にはポテンシャルがわかるから支援します。」というもの。これがCSRとして最も有意義なのではないかと思います。

3つめは、「結果はまだ出ていないし、自分にはポテンシャルはわからないけれど、チャレンジへの意気込みを買って支援します。」というもの。こういう判断で支援すると、結果が出ない可能性もあるわけで、それは「貢献」ではなく「寄付」ですよね。最悪お金を騙し取られる可能性もあるわけです。

ですから、企業活動としてスポーツやアートの支援をするのであれば、自分もそれに打ち込んでいて、ある程度目利きになっている分野で行うのがいいと思います。

昔のパトロンって、そういうことですよね。パトロンになるような王様や貴族は、一般庶民よりも芸術や学問の素養が高いから、将来の偉大な芸術家や音楽家、学者の卵を見抜く目がある。紹介されただけで「いいよ、気に入ったからお金を出そう。」ということではなかったはずです。もちろん、見込みがハズレることもあったとは思いますが。

──「才能も実力もあって、この人が成功するために必要なものがあるとすれば…」というところを支援する。

山崎:そうですね。資金とか、環境を提供するということですね。

──なるほど。これからスポーツ支援を考えている人にとって、良いヒントになりそうです。ありがとうございました。


山崎氏は謙遜して語ってくれましたが、2012年からのゼロスタートの野口啓代選手ならびにスポーツクライミング日本代表選手への支援の道程、さらに南谷真鈴さんのオフィシャルサイトサポートの経緯は、同社が発表してきたニュースリリースで追うことができます。

そこから伝わる先見性やベンチャースピリッツは、見る人に企業に対する信頼感を与え、狙ってはいなくてもPRやブランディングの効果があることは間違いありません。

これからスポーツ支援を考えている企業の一助になれば幸いです。

「パンツ」に新しい価値をもたらした、ワコールのソーシャル企画の優れた戦略~ワコールの担当者に取材しました

担当者に聞きました

ワコールでは、さまざまなキャンペーンを通じて、パンツで親しい人にエールを送ったり、頑張る人のゲン担ぎアイテムとしての新たな価値を提案しています。

今回、そうした“パンツPR施策”を振り返ってお話を伺ったら、ソーシャルで話題化させるいくつものポイントや、リリースの情報価値の高め方など、ネットPRに生かせるさまざまな知見が得られました。

お話を伺った方々

株式会社ワコール
布川 篤氏(総合企画室 広報・宣伝部 京都広報・宣伝課)
北見 裕介氏(総合企画室 広報・宣伝部 WEB・CRM企画課)
(※役職は2016年8月現在)

8月2日「パンツの日」企画に込めた想いとは?

──ワコールでは今年、申年に赤い下着を身につける「申赤」キャンペーンや「パン捨離」など、楽しい企画をいろいろ打ち出していらっしゃいます。今回は、そうしたさまざまなパンツ企画を改めて振り返ってお話を伺いたいと思います。

北見(以下、敬称略):最初にご説明させていただくと、当社ではレディースアイテムは基本的に「ショーツ」と表現しています。

ですが年に一度、8月2日の「パンツの日」前後だけは「パンツ」という表現を期間限定で使っています。そのほうが男性にも女性にも幅広い人たちに楽しんでもらえる企画になるからです。

布川:ワコールは女性の下着だけではなく、男性用の下着も取り扱っています。「パンツ」という共通のワードならば、すべての方に話題が提供できる。

8月2日の「パンツの日」はパンツの話題が最も拡散しやすいタイミングですので、女性はもちろん、ワコールは男性用のパンツもやっているんだよ、ということも知ってもらうためにいろいろとネタを考えています。

北見:「パンツの日」は語呂合わせなので、「8月2日はパンツの日」と聞くだけで面白味がありますし、盛り上がりやすい。

記念日では他にも、2月12日の「ブラジャーの日」がありますが、1914年にブラジャーが世界で始めて特許申請された記念日で、当社ではその日は「自分のカラダに合ったブラジャーを身につけましょう」という啓蒙的な企画を主に行っています。

由来が真面目だと、記念日企画も比較的真面目なトーンになりやすいというのはあると思います。

「キーワード化」するとシェアされやすい

株式会社ワコール 北見 裕介氏

株式会社ワコール 北見 裕介氏

──なるほど、「パンツの日」はそういう意味ではソーシャルメディア向けの記念日ですね。ネットで話題化しやすい企画はどうやって生み出しているのですか?

北見:2014年に「あなたのBlogで、『私はパンツ』というテーマで短編小説を書きませんか?」という企画を行ったとき、最初は「パンツで小説!?ワコールは突然何を言い出したんだ?」という反応だったんですが(笑)、応募してくれた方々がみなさんアイデアを練ってきちんと書いていただけたおかげで、面白がりながらも好意的な雰囲気で話題が広まったと思います。

その延長線上で2016年は、「クラウドパンツィング!?」という公募企画を行いましたが、これまでソーシャルメディアでキャンペーン企画をいくつか行ってきた経験から、まず一つは「キーワード化」するとシェアしてもらいやすくなるというのは言えると思います。

「身内ウケ」で盛り上がれる話題を提供

──「クラウドパンツィング!?」という造語はユニークでした。

北見:「クラウドパンディング!?」と「クラウドパンツィング!?」ならどっちのネーミングのほうがわかりやすいかという社内議論も途中にはありました(笑)

2つめは、「身内ウケ」をできるだけ多く作ることを心掛けました。企業がソーシャルメディアで情報発信すると、大量投下でマス広告と変わらなくなりがちなので、ソーシャルで話題にしてもらいたいときは、身内で盛り上がれるネタやワードをいくつも提供することが大事だと考えています。

「クラウドパンツィング!?」は、応募してくださった団体の活動に「いいね!」やRTで応援してもらい、シェア数を独自集計して「パンツポイント」と名付け、そのパンツポイントを82集めたらパンツをプレゼントします!という企画です。

まずは応募団体の方たちが「私たちこの企画に参加しています!」とシェアしてくれる動線ができ、それを見た知り合いの方たちが反応してくれる。そんなふうに小さな応援の輪をたくさん作れたらいいなと。

──知り合いのツイートやFacebookなら気軽に反応できますね。

北見:ただ、一つだけ今回の反省点としては、ほぼ一瞬で全チームが82パンツポイントを達成してしまったのがちょっと早すぎたな、と。

布川:そういう意味では、ネット上の反応はものすごくよかったと思います。達成するパンツポイント数をいくつにするか話し合ったときに、「パンツの日」と同じ語呂合わせで「82」がいいだろうということになりまして。

パンツポイントを獲得するには、団体のメンバー以外の人にシェアしてもらわないといけないので、82でも少しハードルが高いのではないかと思っていたんです。ですが結果的には、クリア目標の2倍近くシェアが集まりました。

マスコミ関係者に響く仕掛けを組み込む

株式会社ワコール 布川 篤氏

株式会社ワコール 布川 篤氏

──不思議だったのは「クラウドパンツィング!?」の企画と、しりあがり寿氏の関係です。今回、キャンペーンページのタイトルとイラストをしりあがり寿氏が手掛け、ワコールはしりあがり寿氏の個展「回・転・展」を応援していました。

布川:「パンツの日」は、たくさんの方にパンツを楽しんでもらうことを目的に企画を立てていますので、しりあがり寿さんのお名前はこれ以上ないくらい最適ではないかと思っています。英語にすると「ヒップ・アップ・ハッピー」ですから(笑)。我々がお伝えしたい「パンツでハッピーに」そのままです。

──「“しりあがり寿さん”を英語にすると?」は、周囲の編集者やライターの人たちが反応していました。

北見:当社はこうしたWeb企画を社内で考えることが多くて、部署内の雑談レベルでいろいろなアイデアが飛んできたり、社内ですれ違いざまに意見交換したりする中で企画が固まっていきます。しりあがり寿さんも、そうした中から飛び出したアイデアです。

しりあがり寿さんはお仕事柄、出版や広告といった業界の人たちに非常にウケがよくて、そういう方たちはソーシャルでの発信力やメディアへの影響力があります。「しりあがり寿さん+ワコール」という組み合わせの意外性のほかに、そういった影響力を狙ったというのはやはりありますね。

というのも、これまでのワコールの認知の高さは「ブラジャーの会社」というイメージがメインです。それは僕らの先輩たちがずっと作り上げてきた大切なブランドイメージでもありますが、一方でメンズパンツもやっていることは、まだあまり知られていません。

「ワコール」と「メンズパンツ」という2つのワードを上手くつなぐために、消費者間で情報を流通させるにはどうしたらいいだろう?と考えて、いろいろなルートで意外性というか、ちょっと違和感のある話題を投げかけるということをここ数年やっています。

2つの言葉を組み合わせた「違和感」が楽しさを生む

──違和感のある話題というと?

北見:「私はパンツ」企画は「パンツ+小説」。「クラウドファンディング+パンツ」もそうですし、2015年のバレンタインデー企画は「バレンタイン+パンツフラワー」でした。それぞれ2つのワードを足してみたら、すごい違和感がある。それでいて、情報を目にした人がすぐに趣旨を理解できて、話題にしやすい。

理解されやすいメッセージにするために、余計な要素は足さずに中心となるメッセージをストレートに伝える配慮もしています。

例えば、バレンタインデー企画では「パンツをまるめたら 花になる」というアスキーアートをソーシャルメディア上に置いたんですが、アスキーアート自体はネット上でよく使われているものを2つ組み合わせただけで、新しいものを創り出しているわけではありません。

でも、ネットでよく目にするものだからメッセージがすんなり伝わった。

Web企画はリアルとの連動が必要

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──組み合わせの妙ということですね。ソーシャルメディア企画は、そのくらいの気楽さで行ったほうがいいのかもしれないと思いました。

北見:とはいえ、Webの中だけで完結するような情報は、あまりウケないと自分は思っているんです。ネットはリアルの出来事が情報化されて反映される場だと思っていて、情報のもとにはリアルな出来事があるはずです。

Instagramは、まさにそういう文化ですよね。企業が発信する情報やWeb上のキャンペーンも、リアルのファクトやイベントと連動しているほうがいいと僕は思っているんです。まあ、企画でそれをやるのは大変ですけど(笑)

──今回の「クラウドパンツィング!?」は、そのリアルの部分を参加チームの活動が担っていたわけですね。

北見:そうです。

他にも、Web企画とリアルの連続性を示すためによくやるのは、面白さを狙った企画でも、そのリリースは真面目に調査データなどを交えて企画の背景を説明するという方法です。

>>次ページ「リリースで真面目さとのバランスを取る

急成長するスタートアップがPRでやっていることは?~Viibarの広報担当者に聞きました

株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

スタートアップ企業や、これからネットPRを始める企業はどのようなことに目を配って広報活動を行えばいいのか? そのポイントを、国内外で3000人を超える動画クリエイターを擁し、動画制作と動画マーケティングをワンストップで提供する注目のスタートアップ企業「Viibar」(ビーバー)の広報ご担当者、近江晶子氏に伺いました。

お話を伺った方
株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

前任者は広報勉強会でノウハウを積極的に吸収

──これから広報活動に取り組もうと考えているスタートアップや中小企業のために、Viibarでどのような広報活動を行ってきたかお聞かせください。

近江(以下、敬称略):私がViibarにジョインしたのは2015年8月頃からなので、それまでの広報活動については前任者にヒアリングしたことをお話させていただきます。

当社は2013年4月設立で、広報の専任はおらず、営業の女性が広報も兼任していました。広報経験はなかったため、最初はスタートアップ広報の勉強会や記者懇親会などに出かけてプレスリリースを手渡ししていたそうです。

プレスリリースは月に1、2本書いて、勉強会で学んだことを参考にメディアが記事にしやすいニュースを作ることを意識していたそうです。さらに、広報勉強会やオフ会などに積極的に出かけて、知り合った記者の方にアポイントを取って会いに行ったりもしていたと聞きました。

まずは「業界ナンバーワン」を数字で示すことから

──近江さんは広報経験者としてジョインされたのですね。

近江:前職はサイバーエージェントで広報とIRを12年担当していました。動画の業界は今が黎明期で、ちょうどインターネットの黎明期と雰囲気が似ていて面白いです。

──広報経験のある近江さんから見て、参画した当時の広報活動の課題はどういうところでしたか?

近江:まずは数字ですね。それまでのプレスリリースには具体的な数字の記載がほとんどなかったので、クリエイターの登録者数や制作した動画の本数、取引社数からパッケージの金額に至るまで、数字をきちんと精査して、インパクトのある数字とともに「業界ナンバーワン」と言えるようにしようと思いました。

また、そうした数字が社内でうまく共有されておらず、ブログやインタビューなどで言う人によってバラバラだったので、社内で統一するとともに社員にも数字の重要性を伝えることから始めました。

Viibarのプロダクトが提供する価値をコンテンツ化する

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──社内で統一するというのは案外重要ですよね。ほかにはどのようなことを?

近江:広報でどういった方向性を打ち出していくかを経営者と話し合い、広報の目標を決めました。

Viibarのビジネスについて、現状はまだなんとなく動画を作っている会社だという程度にしか世の中に認知されていないので、まずはプロダクト広報を中心に据えてViibarがどのような価値をお客様に提供しているかを市場に知らせることをメインに取り組む方針に決めました。

また、これまで作ってきた動画がお客様企業にどのような満足をもたらしているのかという実績が外部に見えていなかったので、事例を掘り起こしてコンテンツ化し、記者に伝えるということを行いました。

──こちらの「Viibar動画研究所」の事例インタビューですね。

動画マーケティング・動画広告の事例ノウハウ | 動研 | Viibar

動研ことViibar動画研究所。企業様のケーススタディを中心に、マーケティングに役立つ動画の活用例を詳しくご紹介。

近江:はい。記者に伝えるためにもまずは会社の引き出しを増やし、ネタをためていくことが重要だと考えています。

このコンテンツは私の提案で始まり、私自身がインタビューをして書いています。いい事例がたくさんあるのに、外部にあまり伝わっていないのがもったいなかったので。そういった有益なネタを社内から集めてコンテンツ化する取り組みは精力的に行っています。

──コンテンツマーケティングですね。

近江:実は今、広報とマーケティングを兼務していまして、事例コンテンツはマーケティングの仕事としてやってはいますが、それを記者の方に伝えるのは広報の仕事なので結局は両方の領域にかかっている感じですね。

社内から広報ネタを提供してもらえる環境づくり

──ほかにはありますか?

近江:あとは社内への働きかけです。「こういうネタが出たら広報に知らせよう」という情報の共有体制がまだ整っていないので、社内のいろいろなミーティングに顔を出したり、気になる動画があったらすぐに営業にヒアリングをしたりして、こちらからこまめに情報を拾いにいくことを心がけています。

前職は広報的な考え方が全社的に理解されていたのですが、それと比較するとViibarはまだ何が広報のネタになるのかが社員に浸透していない状況です。ですので、少しずつわかってもらえるように競合他社のネタを社内に共有したり、新聞で動画が取り上げられた記事を共有して「今、動画はこんなに注目されているんだよ」ということを伝えたりしています。

自分たちが面白いことをやっていても、それを外部に知ってもらう努力をしないと報道される機会を逃してしまうということをわかってもらいたくて(笑)。そういった社内コミュニケーションを通して、どういった情報が広報ネタになるのかみんなに理解してもらえるように努力しているところです。

──ちなみに、前職のサイバーエージェントではどのように全社に広報感覚を広めていたのでしょうか?

株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

近江:もともと藤田社長ご自身が広報をとても重要視していて、社員も広報に取り上げてもらうことを誇りに感じる雰囲気をつくっていました。仕事で成果を出した人を積極的に広報していく方針でしたし、広報に露出することがうまくインセンティブにつながっていたんだと思います。

Viibarの社員は裏方に徹するタイプが多いので、どうしたら社員も喜ぶ広報活動ができるか試行錯誤しています。

社内への取り組みではもう一つ、部署ごとに提供してもらったリリースネタの数を表にして公表することもしています。数字で見せるとわかりやすいので、「どんなネタを出せばいいでしょう?」と声をかけてもらえたりもします。今はどんなネタでも可能性があれば教えて欲しいので、最終的にプレスリリースに使ったかどうかは別にして、単純に提供してくれたネタの数をカウントしています。

プレスリリースの6つの軸

──そこからどういうネタをプレスリリースにするのかという指針はありますか?

近江:一応、広報でいくつか軸を考えています。

まず一つは、大企業と共同リリースを出せるニュースは必ずプレスリリースを出そうと思っています。例えば、Viibarの資本業務提携先であるヤフー株式会社との取り組みなどです。

2つ目が、新しい商品やサービスについてのリリース。

3つ目は、動画制作のクリエイティブの質と幅が広がることが訴えられるニュース。

4つ目は、業界トレンドに絡んだ話題。今ならVR動画や360°動画に関する取り組みなどですね。

5つ目は、これはまだ実現できていないのですが、「クラウド×地方自治体」に関する話題です。地方在住のクリエイターが活躍している話題や、地方自治体の動画制作に関するトピックですね。今、地方活性化の話題は新聞でも取り上げられやすいですから。

それから6つ目が、今一番うまくいっている「データ×クリエイティブ」の話題です。これに関しては『宣伝会議』や『MarkeZine』などでも注目されているので、関連する話題があれば必ずリリースを出そうと思っています。ですから、これら6つのネタにひっかかりそうなものがあったら必ず教えて欲しいと社内に伝えています。

企業事例の次はクリエイターや働き方の情報も充実化させたい

──「クラウド×地方自治体」の話題で今何か準備していることはありますか?

近江:Viibarに登録しているクリエイターに取材して、紹介記事をWebコンテンツ化して記者の人たちにも伝えていく取り組みを準備しています。地方在住のクリエイターもいますし、海外在住でViibarの仕事だけで1000万円ぐらい稼いでいるクリエイターもいるんです。

ほかにも子育てしながらクラウドソーシングで動画制作を請け負って自立しているママクリエイターの方ですとか、学生から本格的に動画で稼げるようになった方など、Viibarを通じて活躍の場を広げているクリエイターの方々がたくさんいるのになかなかお伝えしきれていないので、きちんと情報発信しなければと思っています。

──それは興味深いですね。

近江:クラウドソーシングは一時期とても注目されましたが、結局は小銭しか稼げないと思われている現状があります。そうした風潮に対し、Viibarでは実力さえあればどんなクリエイターでも活躍できるオープンな機会を提供しているということをお伝えしていきたいと思っています。

今まで、映像クリエイターはテレビCMなどで大きな実績を出せないと、クリエイターとして独立し、継続した受注が取れるということはあり得なかったのですが、それが変わってきています。

Viibarが存在することによって、若手でも実力があれば大手企業と組むことができるようになってきたので、そういう新しい才能や新しい働き方をお伝えすることもニュース性があると思っています。

「データ×クリエイティブ」で差異化できた今がビジネスステージの転換期

──スタートアップ企業が急成長していくと、広報活動にも転換期が訪れるポイントがあると思います。御社では、会社としてのステージの変化やそれにともなう広報活動の変化はありましたか?

近江:今がちょうど変化の最中だと思っています。これまでクラウドソーシング市場や動画市場の盛り上がりの波に乗ってメディアに取り上げられてきましたが、最近は一歩抜けて、データ×クリエイティブの取り組みのプレスリリースなどViibarならではの独自性を打ち出し始めています。

──データドリブンな動画制作は、もともと創業時から考えていたことなのでしょうか。

近江:創業時からではありません。BtoBビジネスにはやはり何か新規性のある軸が必要だということで、まだ誰もできていない分野で本気でデータを生かした動画作りをやり切れたらすごいよね、という話がある時期から社内で盛り上がってきたんです。

もともと動画制作の市場は、テレビCMなど数千万円規模の動画を制作する映像会社と、企業の会社説明会などで流れるような数十万円規模の動画を制作する会社に二極分化していて、その中間がぽっかり空いていました。

そうした状況がずっと続いていたところに、近年新たにオンライン動画の市場ができつつあるのですが、適正な価格で提供できるプレーヤーがいなかった。そこでViibarは数百万円規模のオンライン動画をメインで行うビジネスを拡張させています。

ですが、オンライン動画の市場はまだ始まったばかりで、作りたくてもどうすればいいかわからないと言う企業のご担当者が多くいらっしゃいます。作った動画をFacebookに投稿したほうがいいのか、Twitterに投稿したほうがいいのか、YouTubeにチャンネルを作ったほうがいいのか、どういう動画ならブランド力が高まるのか、といったノウハウが溜まっていません。

ですから、まずどういう目的で、何を解決するために動画を作りますか? といったコンサルティングから行っているのが今のViibarのビジネスの流れです。

Viibarでは動画制作、配信、効果検証までワンストップでオンライン動画のすべてを承ります。インターネットでバズっても、本当にその動画を見て購入につながったのか、認知は拡大したのか、好感度は上がったのかというところまで企業の担当者は厳しくチェックしますので、動画配信後の効果まで一緒に考えることが必要だと考えています。

動画制作に迷っている企業の背中を押す情報発信を

株式会社Viibar 広報 近江 晶子氏

──ビジネスの変化やプレスリリースをはじめとする情報発信を通じて動画マーケティングをリードしていく姿勢がとても伝わってきます。

近江:プロダクト広報は特に、最終的に受注につながらないと意味がないと私は思っています。

こうした成功事例や動画制作のノウハウ、注目のクリエイター情報などをコンテンツ化して積極的に発信することで、オンライン動画の必要性を感じていながら「どうやって作ればいいかわからない」という企業が、一歩足を踏み出すための環境を作っていきたいと思っています。

コンテンツ化しておけば、メディアや記者の方にもまとまった情報としてお伝えできます。

さらに、企業向けには季節に合わせた動画事例のお知らせなども積極的に発信していきたいですね。例えば、新卒採用の時期にはそのテーマにあった動画事例をご紹介して、「うちもやってみよう!」と思っていただけるような。CMは作っているけれどオンライン動画はまだやっていない企業や、テレビCMは予算的に作れないけれどオンライン動画なら手が届きそう…とお考えの企業はとても多いので、そういった企業に「これならできそう!」と背中を押すようなコンテンツを作っていければと思っています。

──とても参考になるお話を多岐にわたってしていただき、ありがとうございました!

オウンドメディアやSNSを活用したネットPRで企業は何をどう伝えればいい?話題を体系的に組み立てている株式会社TOLOTのノウハウを取材しました

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少し前に、「2016年のネットPRで押さえておきたい3つのポイント」の記事で、「PESO」というキーワードを紹介して、ペイドメディア、アーンドメディア、ソーシャルメディア、オウンドメディアを活用した多角的な情報発信が重要であるとお伝えしました。

でも複数のメディアを管理・運営するのは大変で、「どれかがつい疎かになってしまう」、または「ネットPRを始めたいが何から手をつけていいかわからない」という声が多く寄せられてもいます。

そこで今回は、ニュースリリース、Twitter、Facebook、Instagram、ブログメディアなど、いくつものメディアを使って円滑に情報発信を行っている株式会社TOLOTのPR・マーケティングご担当者様に、どのようにネットPR活動に取り組んでいるのかを伺いました。

TOLOTサービス画像

スマートフォンアプリで簡単にオリジナルフォトブックが作成できるTOLOT

お話を伺った方
田崎 豪介氏 株式会社TOLOT セールスプロモーション

ワンソース・マルチユースで、メディアごとに情報量と表現を変えて発信

──多角的な情報発信を行おうと思っても、複数のメディアをなかなか使いこなせないと感じているPR担当者が多い中で、TOLOTではどのようにメディアを使い分けているのでしょうか?

田崎(以下、敬称略):今、企業がパブリックリレーションズやマーケティングで活用できるメディアが多数ある中で、重要なのは、伝える情報に関して「誰に向けて」「何を伝えるのか」をきちんと意識的に組み立て、それを各メディアの特性に応じて割り振っていく包括的な視点だと思います。

当社では、メディアごとに別々に運用するのではなく、ワンソース・マルチユースの考え方で、例えば情報のボリュームを分けて発信しています。具体的には、ブログの情報を100%だとすると、お客様にお送りするニュースレターはそのうちの30%ぐらいのサマリーを記して、ソーシャルメディアではフックになる10%だけをお伝えする。コンテンツの構成もそれを前提に作ります。

各メディアの特性については大まかに、ブログは自分たちの伝えたいことが、演出も含めて100%表現できる場所で、ニュースリリースは、演出要素を省いた最もプレーンで純度の高い情報。ソーシャルメディアは、Twitterは140文字という制限の中できちんと言葉が立っていることが重要で、Facebookは画像とテキストのバランスが大事、Instagramは写真の質と捉えています。

またInstagramに関しては、当社からの情報発信だけでなく、たくさんのユーザーの方々が「#TOLOT」のハッシュタグで自作のフォトブックの写真を投稿してくださっていて、それが最も訴求力の高い情報になっています。非常にありがたいことだと思っています。

TOLOT様が運営するオウンドメディア・ソーシャルメディア

スタッフ全員がすべてのメディアに携わり、効果測定を共有

──スタッフ何人ぐらいで運用しているのでしょうか?

田崎:6人です。男女はちょうど半々ぐらい。ソーシャルメディア担当やニュースリリース担当というふうにメディア別に役割分担しているのではなく、コンテンツごとに責任者を決めて、ブログ記事の執筆からソーシャルメディアでの情報発信まで全体的にコーディネートするようにしています。

というのも、メディア別に担当を割り振ると、例えばFacebook担当者はFacebookのことしか考えなくなってしまう。

責任者がまずやることは、伝えたい情報を、コンテンツとして成立させ、伝えたい人に届ける最適な手段を考えること。大まかな内容は全員で練りますが、具体化な作業は、ほぼ一人で行います。

ネットのメディアは情報発信の結果がすべて数字で見えるので、各自が仮説を立てて試した結果は必ずグループ内で共有するようにしています。その過程は社内ナレッジを高めるために非常に重要で、これをくり返すことでPDCAが機能します。

大事なのは文脈とその組み立て方

──一人一人が全体を見られるような仕事の配分にして、なおかつフィードバックを必ずみんなで共有しているんですね。

田崎:情報を届けるためには、当然いろいろなメディアのことを知っていなければなりませんが、メディアをめぐる状況は数年のスパンで激変していて、個々のメディアを深く研究しても2、3年後には何の役にも立たなくなってしまう可能性がある。

ですから、伝えたい情報を対象の文脈に合わせて体系的に導き出し、それをコンテンツにできる能力があれば、FacebookやTwitterなどに変わる新たなメディアが出てきた際も対応することが可能になります。

ターゲットごとに「主語」と「結論」を設定

──重要なのは、発信する情報の組み立て方。一体どのように組み立てているのでしょうか。

田崎:例えば、ターゲットによって「主語」と「結論」が異なるという原理原則が、まずはあると考えています。すでにTOLOTの会員になっていただいているお客様にお伝えする情報の主語は「TOLOT」でかまいませんが、競合他社を含めて情報を求めている方にとっての主語は市場をさす「フォトブック」になります。

さらに、フォトブックサービスを知らない潜在層に向けた情報では、主語は「TOLOT」でも「フォトブック」でもなく、その人たちの生活シーンの中にある“何か”になって、結論としてフォトブックというサービスに関心が湧くような話題が提供できればいいと思っています。

情報発信するコンテンツの考え方(TOLOT様ご提供資料)

情報発信するコンテンツの考え方(TOLOT様ご提供資料)

印象に残してほしい象徴的なキーワードを定める

──誰に伝えるか? によって「主語」と「結論」を明確に分けているんですね。

田崎:サービス側の都合としては「自分たちのお客様になってほしい」「買ってほしい」という結論にすぐ飛びついてしまいがちですが、長期的に段階を踏んで最終的なゴールに至っていただくことも戦略的に必要です。

コンテンツの目的設定も低くなることで営業的な影響も低くなりますが、その代わり主語の対象が増えれば多数の人と接点を設けることが可能になります。ソーシャルメディアはそれを自分たちでコントロールできることが最大の魅力です。

また、情報は必ずしも「TOLOT」というサービス名を覚えてもらう必要はないと考えます。

例えば外食するとき、よく行くお店でも店名を覚えていないことって多いんですよ。けれど、人を食事に誘うときに「あのハンバーグのお店に行こうよ」と言うだけでお互い把握できることもある。名称を知らなくても、自社のサービスを象徴するキーワードを2つか3つ覚えてもらえば、検索でかなりの確度でたどり着いてもらえる。

ですからコンテンツを作るときは、カギとなるワードをいくつか定めて、文章を書くときもほぼすべての単語に対して定義が適正か検討しています。実際、弊社サイトの検索流入キーワードで「500円」「スケジュール帳」「アルバム」などサービス名やフォトブック以外のワードが上位にいます。

情報の受け手との距離感や関係の深さを見極める

──カギとなるワードを定めて、道順にビスケットの欠片を撒くみたいに段階的に情報発信を重ねているんですね。

田崎:情報発信の対象を「潜在的な顧客」「顧客」「ロイヤルカスタマー」に分けて考えると、対象によって有益な情報は異なります。対象人数は「潜在的な顧客」が最も多く、必然的に主語はサービス名とはかけ離れていきます。

反対に「ロイヤルカスタマー」の方々に向けた情報の主語はサービスと直結したワードになります。そのように、情報の受け手にとって「有益な情報とは何か?」ということを、顧客ステータスを軸にしたマトリックスを作ってコンテンツを企画しています。

会員数100万人を超えたら情報発信に変化が必要に

──かなりシステマチックに情報の組み立てを行っているんですね。

田崎:当社のサービスも、おかげさまで会員が200万人を超えました。サービスの黎明期は、とにかく一人でも多くの方に知っていただくことが目的で、情報発信もシンプルだったのですが、会員数が100万人を超えたあたりから新規のお客様を増やすための話題だけでなく、既存のお客さまとのエンゲージメントを高めることも重要になってきました。そのあたりから、体系的に考える必要性が出てきたんです。

有益な情報を定義していくと、サービス以外の情報も必然的にコンテンツになっていきます。私たちのサービスはスマートフォンを使ったサービスで、なおかつ写真が必要なので、スマートフォンの操作でわからないことがある人に向けたお役立ち情報や、写真の撮り方に悩んでいる人に向けてのハウツー情報などがそれに当たります。

赤ちゃんをかわいく撮るための「10の基本」画像

赤ちゃんの写真のかわいさをもっと引き出せる!スマホで撮影「10の基本」撮影編など、ハウツー情報を発信している

新規開拓は伝える相手の日常の関心事を基点に話題を提供

また、新規のお客様を増やすための情報発信では、サービスが直接的にもたらす価値だけでなく、間接的な付加価値を伝えていかなければと思っています。

コミュニケーションツールとして語るのであれば、お母さんがお孫さんの写真をフォトブックにしてプレゼントすることでお姑さんとの関係構築にもなりえます。それがプリントせずとも見られる写真をあえて形にする目的になると考えます。

──先ほど、ターゲットによって「主語」と「結論」が異なるというお話で、潜在的なお客様に向けては「その人たちの生活シーンの中にある“何か”」が主語になると言っていたのは、具体的にはそういうことなのですね。

フォトブックサービスの機能強化と情報発信の相乗効果

田崎:そうです。その延長で主語をコンテンツだけでなく、サービスとして提供することもあります。今年の2月からスタートした、赤ちゃんの成長を月齢ごとに記録できる「マンスリーベビーアルバム」です。おかげさまで、これが非常に大きな反響をいただいたのですが、それだけでなく、これによって「成長記録」というワードでマーケティングができるようになったのが非常に意味のあることだと思っています。フォトブック以外でTOLOTのサービスを知っていただく入り口になりますし、提供できる情報の幅が広がってきました。

マンスリーベビーアルバム画像

赤ちゃんの成長を月齢ごとに記録できるマンスリーベビーアルバム

──情報発信とサービスの企画がそのような相乗効果を生んでいるんですね。このたびはいろいろと貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

お話いただいたポイントをまとめると、

  1. まずは「誰に、何を伝えるか」を、情報の「主語」と「結論」を定めてしっかり組み立てる
  2. それをブログ記事やニュースリリースの文章にする
  3. 情報をもとにマルチユースでメルマガやFacebook、Twitterに活用する

という手順でネットPRを行うと良いようです。

さらに、まだ接点がない潜在的なお客様に向けた情報発信では、主語は「その人の生活の中にある“何か”(興味関心があること)」とし、結論は自社の製品・サービスを含む市場の有益性に導く。受け手に覚えてもらいたい象徴的なワードを2つか3つ設定する、というようにシステマチックにトピックを組み立てる方法も参考になります。

というより参考にしたいお話が満載すぎて、上のように簡単にまとめてしまうのはもったいないほどです。時間を置いて何度か読み返し、じっくり吸収していきたいと思いました。

以上、みなさまのネットPRにもお役立ていただけると幸いです。

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか?東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか? ~東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか? ~東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ソーシャルメディアで自社の話題がバズったとき、広報担当はどう対応すればいいのか?

さまざまなケースがあるため一概に「これが正解」とは言えませんが、ポジティブな事例のひとつとして、2016年2月に学生がTwitterに投稿した卒業制作の「書き時計」(正式作品名:Plock[プロック])が大反響を呼んだ東北芸術工科大学のご担当者様に、当時の広報現場についてお話を伺いました。

お話を伺った方
滝口慶太氏 東北芸術工科大学 入学広報課(※2016年3月時点)

Yahoo!リアルタイム検索の通知で2時間後には情報をキャッチ

──ネットで「書き時計」が話題になっているのを知ったのは、いつ、どのようにでしたか?

滝口氏(以下、敬称略):制作した学生がTwitterに「書き時計」の動画を投稿したのが2月7日の16時頃。日曜日で大学は休みでしたので私は家にいて、たまたま18時ぐらいにネットを見たらYahoo!のリアルタイム検索の通知がきていました。滅多にはないんですが、大学の先生がテレビ出演したときなどに大学名が注目ワードに上ることがあるので、キーワード登録していまして。当日は、その時点ですでに1万5千以上リツイートされていた記憶があります。

書き時計

書き時計(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

──大学の話題でバズが起きたときの対策は、事前に決められていましたか?

滝口:今回の件は、いわゆる危機管理ともちょっと違って、対応に関してはまったくの手探りでした。翌日どのように対応するか、大まかなプランは日曜の夜に考え、月曜の朝8時頃には大学の上層部や彼の担当教員と話し合い、これからメディア対応をお願いする可能性がある旨を本人に伝えてもらったのが一つ。もう一つは、朝イチで広報のスタッフに、メディアに提供できる写真と動画を撮ってもらいました。

「書き時計」の動画は、本学のキャンパス(山形市)で2月9日(火)から開催される「卒業/修了研究・制作展」の一般公開前々日となる7日日曜日に投稿され、8日月曜日は学校関係者だけの内覧日だったので、多少余裕を持って対応の準備ができたのはタイミング的に助かりましたね(笑)

──バズが起きた翌日のメディア対応では、どのようなことを行いましたか?

滝口:地元の山形新聞さんが午前中すぐに取材と動画撮影にいらしたのと、学生が宮城県の出身なので、河北新報さんにちょうど別件でご連絡差し上げたついでにお話してすぐに来ていただきました。それから9時半ぐらいにwithnews(ウィズニュース)さんから電話をいただき、本人に電話取材をして昼までに記事を上げたいというお話だったので、学生へつないで写真はこちらが用意したものを提供しました。その記事をきっかけにバズがさらに加速して、NHKさんからも夜の「NEWS WEB」で放送したいとご連絡いただき、朝撮影した動画を提供してその日じゅうに放送されたのが月曜日の流れです。

写真に関しては、朝イチで撮ったものだけでなく、大学のパンフレット用に卒業制作の過程を写真に収めていた中に、たまたま彼の制作中の様子が何枚かあったので助かりました。

制作中の様子

制作中の様子(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

卒展の来場者は例年の約3倍近くに

──卒展の来場者数も、かなり増えたのではないでしょうか。

滝口:例年5,000人ぐらいだったのが、今年は1万4,000人ほどでした。駐車場に入るのに1時間待ちになるなど大学側も初めての体験ばかりでした。来場者は毎年地元の方が多いのですが、名古屋から時計を見にいらした方や、中には「僕が商標登録してあげるから」と名刺を置いていかれる方も。でも意匠等の登録は常日頃の授業でも学生に指導しています。

──マスコミの取材は、最終的にどのくらいになりましたか?

滝口:山形の地方局はNHK山形を含め全局。テレビのキー局は民放4局とNHKさん。番組名で言うと、「めざましテレビ」が土日の2日間来てくださって、それから「月曜から夜ふかし」と「Nスタ」、あとは大学が提供した画像・動画や、地方局が撮った映像を使って紹介してくれる形で「とくダネ!」「スーパーニュース」「スッキリ!!」「サンデーモーニング」等々、本当にたくさんのメディアで取り上げていただきました。とはいえ、現状まだすべて整理しきれていないのですが。

マスコミ対応では投稿した学生の負担軽減を配慮

──本当にものすごい反響だったんですね。

書き時計

書き時計(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

滝口:ですから今回最も気をつけたのは、「書き時計」を制作した学生本人に負担をかけすぎないことでした。やはり大学としては学生を守らなければいけませんので。本人に直接話を聞きたいというご依頼が殺到しましたが、彼に取材が集中しすぎないよう、ある程度のことは広報スタッフでお答えできる体制にしたり、Twitterなどで本人に直接依頼が来たときの返信用の定型文をこちらで用意して、必ず大学に連絡してもらうようにしていました。

本学には第一線で活躍する現役のメディア関係者やクリエイターの方々が教員に大勢いますので、イザというときは相談できる安心感はありました。今回も広報部長で企画構想学科准教授の片岡(※企画家・コラムニスト・戦略PRプロデューサーの片岡英彦氏)に報告と相談はしていましたので。特にバラエティ番組に取り上げていただく際の線引きのバランスと言いますか、許容できる脱線の按配のようなことは片岡とも話し合いました。

──「書き時計」が話題になって、地元での大学の評価などに変化はありましたか?

滝口:地元のメディアでは毎日のように芸工大(※東北芸術工科大学の地元での呼び名)のニュースが出ているので、特別に注目が高まるようなことはなかったんです。ところが今回、キー局で地元の大学が紹介されているのを観て、黒船効果で改めて見直されたというのはあると思います。キー局でテレビ放送されるたびに、「ネットで見たこの時計は、芸工大だったのか!」という驚きの声が、地元の方からよく聞こえてきました。ネットのソーシャルメディアで一気に広まった話題ではありますが、そういう意味ではやはり従来からのマスコミの力はものすごく大きいということを改めて感じました。

──2月9日(火)~14日(日)の山形キャンパスでの卒展終了後、2月23日(火)~28日(日)東京都美術館で開かれた美術科の卒業制作展で再展示しました。その決定はすぐに行われたのですか?

滝口:東京で開かれた卒展は、芸術学部美術科(日本画・洋画・版画・彫刻・工芸・テキスタイル・総合美術)が対象で、「書き時計」を制作した学生が所属するデザイン工学部の作品は本来展示しないのですが、再展示する話は山形展開催中の早い段階で行われていました。というのも、「東京でも見られますか?」という問い合わせの電話が鳴り止まなかったので。美術科の学生たちも「彼は作品の力でたくさんの人の心を惹きつけたのだから」と快く承諾してくれました。

東京展での再展示では実演時間をリリースで事前告知

──東京展での再展示は、「News2uリリース」でも告知されました。

ネット上で大きな話題となった卒業制作作品「書き時計」を2月23-28日に東京都美術館で再展示|東北芸術工科大学のニュースリリース

東北芸術工科大学のニュースリリース(2016年02月18日)ネット上で大きな話題となった卒業制作作品「書き時計」を2月23-28日に東京都美術館で再展示

滝口:地元メディアには直接告知を流しましたが、東京圏に対してどのように伝えようかということで、ニュースリリースを出させていただきました。Webメディアが取り上げてくれたり、インフルエンサーの方がTwitterでリツイートしてくれたりして認知の効果はあったと思います。リリースには「書き時計」の会期中の実演時間の予定も記載しました。あの時計は彼でないと動かせないので、本人の負担を減らすために書いておいたのですが、リリースで事前にスケジュールも広められたのは結果的に非常に良かったです。

他の学生や他大学の卒業制作にも取材の波及効果が

──「書き時計」が話題になったことで、大学の認知やメディアリレーションにどのような変化がありましたか?

滝口:地元での認知に関しては、東京のテレビ局で取り上げていただいたことで、地元の人たちが大学を再評価してくれたというのが大きいですね。メディアリレーションでは、今までつながりがなかったたくさんのメディアの方々とつながりを持つことができましたし、さまざまな波及効果もありました。

「書き時計」とともに他の卒業生の作品も取材していただいて、その中のある作品が企業の目に留まって商品化の話が具体化したり、また別の学生はメディアから卒業後もぜひ取材をさせて欲しいとお話があったり。「めざましテレビ」では、美大の卒業制作が大変面白いからぜひコーナー化したいと、他の芸術系・美術系大学への取材へと広がっていきました。本学だけにとどまらず、他の大学も含めて美大の卒業制作そのものにメディアが注目するひとつのきっかけになったのは嬉しいですね。

スタッフの情報共有と協力体制を日頃から整えておくことの大切さを実感

──ネットで突然バズが起きたことによるこのたびの広報対応を振り返って、浮かび上がった今後の課題などはありますか?

東北芸術工科大学 滝口慶太氏

滝口:今回たまたまバズが起きたのが日曜日で、かなり早い段階でネットの動きをキャッチでき、事前の心構えと準備の時間が持てたのは幸いでした。これがもし平日の昼間で、メディアからの問い合わせで初めて知ったという順序だったら、とても対応が追いつかなかったと思います。広報スタッフや上層部を含め、ソーシャルメディアに明るい方ばかりではないですので、ネットの動きを日頃どのようにチェックして情報を共有しておくかは課題のひとつですね。

広報体制としては、このたびのような大きな動きがあったときにヘルプしてもらえる人員が確保できるかも考えさせられました。本学では入学広報課の4人が他業務と合わせてWeb運営やメディア対応を担当しています。4人いたからなんとか回せましたが、広報担当が1人か2人という大学や企業でバズったらとても回せないと思います。2-3月で通常業務だけでも多忙な年度末に、希望にはできるだけ応じようと取材が一日に5社重なったりして、それに対応しつつ事務局にはその間も問い合わせの電話がひっきりなしに来る。そんな状況でしたので。日頃から部署内はもちろん、他部署の人たちとも業務の平準化や情報共有を意識的に行っておくことが必要かもしれないと思いました。

また私たち入学広報課は、ネットを通じてこれから大学受験を迎える高校生にいかにリーチするかを常に探っています。高校への出張説明会などを通じて、「書き時計」の話題をどのように知ったかアンケートを取るなどして、高校生がネットで情報をどのように取り入れているかこれから探ってみたいとも考えています。

滝口様、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

グループ企業のCSR活動のニュース発信で実った従業員の意識改革【ツネイシホールディングス株式会社のオウンドメディア活用インタビュー】

常石グループとして造船事業、海運事業を中心に、環境事業、エネルギー事業、レジャー施設やホテル・マリーナ運営などのサービス事業を展開しているツネイシホールディングス様では、グループのCSR活動に関するニュースリリースを数多く発信しています。

常石グループのCSRリリースは写真が豊富に掲載されているのが特徴的で、特に地域の子供たちが参加するイベントのニュースには写真が10点ほど添えられ、当日の楽しそうな様子がダイレクトに伝わってきます。

常石グループの工場・施設見学に、福山市内の小学校6校の児童250人が参加~ツネイシホールディングス|ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース

常石グループは、CSR活動の柱として、子どもの健全育成および地域の活性化に向けた支援を毎年継続しています。2015年度も、日本財団のご支援を受けている、一般社団法人日本中小型造船工業会との共催で、地元小学校6校の児童250人(小学5~6年生)を招待し、常石グループの施設見学を実施しました。 ・ツネイシホールディングス株式会社 http://www.tsuneishi-g.jp …

“ツネイシベースボールクリニック2015″に小・中学生ら160人が参加~ツネイシ硬式野球部|ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース

ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース(2016年01月18日)”ツネイシベースボールクリニック2015″に小・中学生ら160人が参加~ツネイシ硬式野球部


グループ各社からどのようにニュースを集めているのか? また、魅力的なCSR活動報告リリースをつくる秘訣、さらにCSR活動をニュース発信し始めて約2年で見えてきたメリットについて、CSV推進部 マーケティング コミュニケーショングループの大西 好樹氏に伺いました。

毎月のグループ報とイントラネットで集まった情報から、ニュース性があるものをリリース配信

──グループ各社からどのようにニュースを集めているのでしょうか?

大西(以下敬称略):主にグループ報とイントラネットです。常石グループでは毎月20ページのグループ報を発行しています。各社にグループ報の担当者や通信員がいて、掲載するための情報を毎月送ってくれるのが一つ。

もう一つのイントラネットは、各事業会社の担当者がソーシャルメディアのように気軽に写真と記事をアップできる体制を構築している最中で、今のところ年間400件ほどの記事や画像が投稿されています。その2つのルートで集まる情報の中から、ニュース性があるものを私どもの部署でブラッシュアップしてニュースリリース発信しています。

──ニュース性があるかどうかは、どのような観点で選んでいるのですか?

大西:CSR活動の情報に関して言えば、「切り口が良い」「会社のよさが表れている」と感じる情報です。グループ報向けのネタやイントラネットに投稿された情報は、原稿のクオリティとしてはやや荒削りですが、事業所のちょっとした報告書や担当者とのメールでのやり取りなども含めて情報を膨らませて、対外的に発信できる原稿に仕上げます。

自社サイトに新設した「ニュースセンター」(*)が社内外のニュースコミュニケーションの要

ツネイシホールディングス株式会社 常石グループ ニュースセンター

ツネイシホールディングス株式会社 常石グループ ニュースセンター

──いつ頃からそのような体制でニュース発信を行っているのでしょうか?

大西:イントラネットでグループ各社の情報を集めて、その中からニュースを選んで対外的に発信していく体制ができたのは2014年からです。それまでは常石造船を中心に広報活動を行っていたのですが、2年前にツネイシホールディングスのウェブサイトを常石グループのニュースセンターとしてリニューアルし、グループの各事業会社の細かな情報についてもニュースセンターで紹介する仕組みに改めました。

常石グループのニュースセンター公開~常石グループ企業からの情報を集約してお伝えします|ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース

ツネイシホールディングス株式会社のニュースリリース(2014年05月02日)常石グループのニュースセンター公開~常石グループ企業からの情報を集約してお伝えします

常石グループでは、イントラネットで社内向けに発信する情報と、ニュースセンターで社会に向けて発信する情報を分けて考えていません。対外的に発信する情報は、いの一番に従業員に伝えたい。ただし、社内向けの情報と対外向けの発信では情報の受け手が異なりますので、タイトルなどはそれぞれ変えています。

また、対外向けも、全国向けと地元メディア向けで表現を変えます。全国に向けたニュースでは、常石グループのことをご存じない方にも伝わるように補足説明を入れますが、地元向けには補足は省略してタイトルも短くしています。

CSR情報は従業員向けのコミュニケーションが第一義。だから必然的に画像が多くなる

──CSR活動のリリースにたくさん掲載されている魅力的な写真は、各事業会社の担当者の方が撮影しているのでしょうか? グループで共有しているルールなどはありますか?

大西:一部の事業会社には写真が上手な方がいるので、その方にお任せしていますが、基本的には我々マーケティングコミュニケーショングループの者が出向いて撮影するようにしています。ルールはありませんが、イントラネットに投稿するときに見出しと写真とキャプションだけでニュースの内容が伝わるように工夫はしています。

従業員の方々には業務が忙しいときもイントラネットに目を通していただきたいので、原稿を読まなくても写真だけでわかるように。ですから必然的に写真の点数が多くなるのですが、それがニュースリリースでもプラスに働いているのなら喜ばしいですね。

情報の好循環が生まれてグループ全体の意識が高まり、採用活動にも好影響が

──CSR活動のニュースを社内外に発信しはじめて約2年で、どのような変化がありましたか?

大西:一番大きな変化としては、「地域貢献」に対する各事業会社の意識の変化が挙げられると思います。常石グループはサービス業を含む幅広い事業を展開していますが、全体としてはBtoB事業が多く、事業会社は業務に集中するあまり自分たちのお客様企業に視野が固定されてしまいがちでした。これはおそらく、多くのBtoB企業に共通の課題かと思います。

ツネイシホールディングスとしては、「地域と共に発展する」という理念を創業以来のDNAとして持っているのですが、各事業会社がそれを同じように共有しているかというと、やはり地域貢献は本業の余力でやるものという意識がありました。

ですが、イントラネットを通じて各社が地域貢献活動のニュースをアップし、それがグループ全体に共有されるだけでなく、ニュースセンターでも対外的に情報発信されています。取引先や地域の人々といった外部のステークホルダーの方々がそれを話題にし、良いコミュニケーションができたという体験の積み重ねで、CSR活動の意義を実感してもらえ、事業会社がいろいろな情報を積極的に送ってくれるようになりました。2年経って、そのような情報発信の好循環ができてきたことを実感しています。

もうひとつ、採用活動にも効果の兆しが現れています。常石グループは地元の広島県周辺ではよく知られていますが、それでも常石造船以外は新卒の人材が集まりにくい状況があります。ところが最近は、学生さんから「WEBを拝見しました」とコンタクトしてくれたり、ニュースセンターのトピックスを見て「企業としての社会貢献への積極的な姿勢に好感が持てました」と言ってくれたり、Uターン就職の学生さんが関心を持ってくれるケースが増えてきました。

──そのような情報発信の好循環を、今後どのように発展させていこうとお考えですか?

大西:常石グループでは「子どもの健全育成」「地域活性化」「郷土の文化・伝統の継承」の3つの柱を掲げて、社会貢献活動を地元である備後地域、広島県へと広げてきましたが、この3つの柱は日本全体の課題でもありますので、さらに視野を広げて取り組んで行きたいと考えております。

もっと言えば、日本だけでなく世界にも意識を広げて、造船会社の海外拠点があるフィリピン、中国、パラグアイでも同じ3本の柱で活動のネットワークを広げる活動を今後も積極的に行っていきたいと考えています。

大西様、貴重なお話をいただきありがとうございました!


(*)ニュースセンターの企画/開発/構築は、株式会社ニューズ・ツー・ユーのグループ会社である株式会社パンセが担当。リリース配信とそのリリースを自動的に自社サイトへ掲載できるオウンドメディアプラスを実装し、約30社あるグループ各社からの活動をニュースセンターにまとめ、掲載するだけでなく、海外も含めあらゆるステークホルダーへの情報伝達を考慮して日本語、英語、中国語の3カ国語に対応しています。


お手本になるニュースリリース活用事例12選

集客からブランディングまでNews2uリリース活用事例を12社ご紹介します。