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レガシー金融機関がフィンテック企業と上手に付き合う方法 (金融革命 Part 2)

レガシー金融機関がフィンテック企業と上手に付き合う方法 (金融革命 Part 2)

レガシー金融機関がフィンテック企業と上手に付き合う方法 (金融革命 Part 2)

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日本国内でフィンテック企業とコラボしているレガシー金融機関はまだわずか30%にすぎない。これは先進国のスタンダードでいうと最低のレベルになっている。他の国の、ドイツが70%, シンガポール62%, アメリカの54%と比較してもかなり低いと言えるだろう。

テクノロジー活用に遅れをとる既存金融機関

セキュリティーとプライバシー、そして法規コンプライアンスを最優先するその特性上、既存の金融機関はどうしても新規テクノロジーの導入に対して慎重にならざるを得ない。スタートアップのような”実験的”な取り組みをすることは容易ではない。

金融機関が注目しているテクノロジー

  • ブロックチェーン
  • 人工知能
  • バイオメトリックによるプライバシー管理
新しいビジネスモデルを模索するスタートアップは、より早いスピードでリスクを取りやすく、革新的なテクノロジーと顧客サービスを短時間で作りやすい。加えて、データの取得と分析、活用の仕方が上手で、既存の金融機関よりもデータから導き出されたロジックでリスクを取りやすいという側面もある。

銀行のライバルはテクノロジー企業

その一方で、もともと”IT企業”や”ネット系サービス”を生業にしてきた企業の金融への進出が目覚ましい。日本国内の例では、楽天、LINE、ヤフー&ソフトバンク、ドコモ、そしてauといった企業が、既存の金融機関を脅かす存在にまでなってきている。 その理由は前回の「銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)」でも紹介した通り、デジタルを中心とした卓越したユーザー体験の設計だろう。それにく和え、データの収集、人工知能(AI)によるビッグデータ分析と加工、そしてそれをパーソナルな提案やビジネスモデル変革へ進化することのできるテクノロジーの最大活用も重要なファクターである。 gafa-finance 海外テクノロジー企業の金融系サービス一覧

ミレニアルから支持を得ていない既存銀行

この状況はユーザーからの反応を見ても理解できる。例えば、既存の銀行は特にミレニアルを中心とした若者達からの支持はかなり低く、むしろテクノロジー企業による金融サービス参入を望んでるといった声も出ている。
  • 75%: Google, Amazon, PayPalなどのテクノロジー企業の金融サービスの方を支持する
  • 71%: 銀行員の話を聞くぐらいであれば歯医者に行った方がマシだ
  • 60%: スタートアップ企業に銀行業務を改善してほしい
  • 63%: クレジットカードを持っていない
  • 53%: 全ての銀行は同じである
  • 33%: 向こう90日以内に銀行を変える可能性がある
参照元: Time Magazine

危機感を感じている既存の金融機関

もちろんこの動きに対して、既存の金融機関が気づいていない訳はなく、下記の意識調査でもその結果は明らかである。特に日本国外の金融機関での危機意識は非常に高いと言える。

世界の金融機関に対する意識調査結果:

  • 88%: 新規参入サービスによって売り上げが減ると危惧している
  • 82%: 向こう3年から5年以内にフィンテック企業とのコラボを増やそうとしている
  • 77%: 社内でのイノベーション創出への取り組みへの投資を増やしている
  • 77%: 2020年までにブロックチェーンテクノロジーの業務活用を予定している
  • 54%: データ管理とプライバシー保護に関する規制がイノベーションの妨げになっている
  • 30%: AIに関しての投資を行なっている
  • 20%: フィンテックへの投資から期待されているROI
参照元: PwC Global FinTech Survey 2017

キーワードはテクノロジー活用とユーザーとの接点における体験設計

上記のGAFAような企業が今後、デザインとテクノロジーの活用を推し進め、よりユーザーに喜ばれるサービスを追求していくと、近いうちにメガバンクでも太刀打ちできないレベルまで到達すると考えられる。

サービス別顧客維持に重要だと考えられる要素:

  • ペイメント系: 1位: 使いやすさ, 2位: サービスの速さ, 3位: 利用可能時間
  • 銀行業務系: 1位: 使いやすさ, 2位: 利用可能時間, 3位: サービスの速さ
  • 保険系: 1位: 使いやすさ, 2位: カスタマーサービス, 3位: 利用可能時間
  • 資産運用系: 1位: 使いやすさ, 2位: 利用コスト, 3位: 利用可能時間
元々エンドユーザーとの接点、特にデジタルチャンネルにおけるユーザー体験の設計が上手なテクノロジー企業は、今後様々な業界への進出が予測されており、次のターゲットは明らかに金融業である。 これは世界的に見ると、Google, Apple, Facebook, Amazonといった、いわゆるGAFAや、PayPal, Square, Spripeといったメガフィンテックスタートアップが金融サービスにおける主導権を握り始めたことでも明らかである。 逆に考えると、既存の金融機関は、今後顧客とのタッチポイントの設計やノウハウ、戦略が不可欠な要素になってくるのは間違いない。それに加え、フィンテック企業とのコラボも重要なファクターとなるだろう。

レガシー金融機関とフィンテック企業のそれぞれの強み

その一方で、新規参入の企業は認可の問題や、資金的な限界、そして顧客獲得の面でのハンデが存在する。そうなってくると、レガシー金融機関とフィンテック企業がまともにぶつかるよりも、上手に協業する方が得策なのは間違いない。

レガシー金融機関の強み

  • 既存の顧客ベース
  • 広い商品ラインアップ
  • コンプライアンス
  • 金融庁との関係性
  • 融資に対する金利の低さ

フィンテック企業の強み

  • 新たなサービスアイディア
  • アジャイルなプロセス
  • データ収集・分析力
  • デジタルチャンネルにおける顧客獲得
  • 高いユーザー体験クオリティ

金融機関とフィンテックがコラボする際のハードルは?

しかし、既存の金融機関とフィンテック企業のコラボはそこまで簡単ではない。テクノロジー的な側面に加え、企業カルチャーとスピード感の違いが大きな壁になっており、まだまだお互いの歩み寄りが必要である。

レガシー金融機関が感じるコラボに対しての課題:

  • ITセキュリティー: 56%
  • 法規コンプライアンス: 54%
  • 企業カルチャーの違い: 40%
  • ビジネスモデルの違い: 35%
  • IT互換性: 34%

フィンテック企業が感じるコラボに対しての課題:

  • ITセキュリティー: 28%
  • 法規コンプライアンス: 48%
  • 企業カルチャーの違い: 55%
  • ビジネスモデルの違い: 40%
  • IT互換性: 34%

レガシー金融機関がフィンテック企業とコラボするための5つのステップ

では今後フィンテックとのコラボを実現した金融機関は、いったい何から始めれば良いのだろうか?その言葉から「テクノロジー」にフォーカスしがちであるが、実はそれを実現するためには「ヒト (従業員)」の変革から始まり「ヒト (顧客)」へのより良い体験提供につなげていくイメージが必要だと思う。 ちなみに、下記のプロセスは、btraxが提供するプログラムでも採用しているステップなので、参考になれば幸いです。 fintech-process

ステップ1. 人材教育

おそらく現在の金融機関で働く方々は、スタートアップのそれとは対局のマインドセットを持っており、今のままではその意識もコミュニケーション手法も大きく異なっている。相手の立場から物事を理解し、行動に移すためには、まずは既存の考え方から抜け出す必要があるだろう。 そのためには、ちょっとしたITリテラシーから、デザイン思考、サービスデザイン、リーンスタートアップ、マーケティングなどの基礎知識と、フラットな組織でのリーダーシップとチームワークを学ぶと良いと思われる。

ステップ2. カルチャー変革

個々のスタッフのマインドセットがある程度調整できたら、次は組織や会社全体のカルチャーを変革させていく。下記のようなスタートアップではスタンダードとされるカルチャーを導入していくことで、新しいイノベーションが生み出しやすい土壌が整うであろう。
  • クリエイティブな発想
  • 速いスピード
  • リスクをコントロール
  • 仕事を楽しむ
  • ユーザーを最優先に考える
ちなみに、スタートアップと金融系で最もギャップがあることの一つが服装。かたやジーンズ&Tシャツなのに対して、金融はバッチリスーツ。この違いもカルチャー的なギャップを生み出していると考えられる。 参考: シリコンバレーに来るならスーツは着ない事

ステップ3. 組織変革

人材とカルチャーを変革させるには、組織や人事のシステムを見直す必要がある。既存の減点方式の人事評価基準や、属人的なプロセスにメスを入れ、新しい発想、そしてアクションを取ることのできる人材の評価軸を新たに設けたり、本社と切り離した特殊部隊の組織を作るなどの方法もあるだろう。 例えば、アメリカの大手金融機関のCapital Oneは、サンフランシスコにデザインチームだけの専属オフィスを設け、本社業務には一切関わらない環境と、組織づくりを行っている。そうすることで、セキュリティーに関する過剰な規制から解き放たれ、スタートアップ的発想でプロダクトづくりを進めている。 そこで働く友人も以前に「デザイナーとして、金融機関で働くことはあり得ないと思っていたが、ここであれば十分に自分のやりたいことができるし、それが評価の対象になっている」と語っていた。これは、銀行の本社オフィスでは絶対に実現できなかった組織形態である。

ステップ4. テクノロジー活用

そしてここでやっとテクノロジーの活用、および適用のプロセスが始まる。なぜなら、既存の組織やカルチャーだと、活用したくてもできない社内ルールが沢山のあるからだ。 例えば、おそらく現在でもスタートアップの間では標準とされているような、Google Apps, Dropbox, Slackなどのクラウド系サービスが、金融機関のセキュリティールール上はまだ、利用不可能だろう。 通常、スタートアップが外部とコラボする際には、上記のようなツールを最大活用し、効率化の最大化とスピードアップを図るのであるが、それが不可能な場合、コラボどころか、日常のやりとりもままならない。 以前に日本のとある金融機関とやりとりした際に「それでは必要な書類のリストを後日郵送します」と言われ「いや、メールで送っていただければ大丈夫ですよ」と伝えると「いえ、社内規定でメールで送ることはできません」と言われた。なかなか昭和の風情があったが、現代にはふさわしくない仕組みだなとも感じた。 最近流行りのAIやブロックチェーンの活用云々も良いが、レガシー金融機関として、まずは基本的なテクノロジーツールが利用できる状況に整えていく必要があるだろう。それができて初めて、スタートアップとのやり取りをする下準備ができたと言えるだろう。

ステップ5. ユーザー体験改善

そして最後に何よりも大切なユーザー体験の改善。これは、小手先のインターフェース (UI) 改善とかでは顧客ニーズに対応するのは限定的で、プロダクトとサービスの包括的な見直しから行う必要があるだろう。 なにせ、現在の多くの金融系サービスが提供側ありきで設計されており、ユーザー体験の品質が非常に低いケースが後を絶たない。そこに改善の提案をしても「社内規定だ」「自分の範疇ではない」「セキュリティーが犠牲になるのでMacはNG」などの理由でなかなか物事が進まない。 だからこそ、顧客により良い体験を提供したければ、一見遠回りだと思われがちであるが、人材教育からはじめ、カルチャー変革、組織変革、テクノロジー活用、そしてユーザー体験の改善の順番で進める必要があるのである。

参考: フィンテックと金融機関のコラボ事例

それでも、世界レベルで見るとすでにレガシー金融機関とフィンテック企業とのコラボ事例がいくつか存在している。これらの例から日本でも今後どのようなコラボが実現しそうかを考えてみるのも面白いだろう。

BBVA Compass x OnDeck

個人事業主やスモールビジネス向けにP2Pレンディングを通じたローンを提供するノンバンクのOnDeckに対して、BBVA Compassは既存の規定では承認されない顧客の紹介を行っている。 データ活用によってよりリスクをとり、幅広い顧客そうに融資が可能なOnDeckとコラボすることによいr、コンサバな既存の金融機関が顧客ニーズに対応している例。

Fidelity Investment x Betterment

AIを活用したスマート投資サービスを提供するBettermentのサービスを、既存の大手資産運用グループのFedelity Investmentが自社顧客に対して提供している例。 既存の人的サービスと、フィンテック企業のAIサービスを連動させることで、より幅広いサービス提供が可能になっている。

Sandander x Tradeshift

ヨーロッパ地域における大手金融機関のSandanderは、サンフランシスコに本社を置くフィンテック企業のTradeshiftとパートナーシップを結び、全世界にいるおおよそ1,500万の法人顧客に対してのサービス展開を行っている。 Tradeshiftは法人むけにサプライチェーンの管理をクラウドベースのプラットフォームを通じて提供している。このプラットフォームにSandanderの提供する法人むけ金融サービスを連動させることにより、受発注プロセス、在庫管理、進捗管理に加え、運転資金の運用に関するサービスも提供可能にするのが狙い。 また、Sandanderとしても、デジタルチャンネルを通じた法人顧客の獲得にも期待を寄せている。 関連: 銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

店舗はもう不要!? 自宅で試着し放題の新サービストレンド

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試着をし、気に入った商品のみを購入をする 普段衣料品を購入する際に当たり前に行う試着というプロセス。これこそが、衣料品のオンラインショッピングにおける一番の課題であった。 確かに、オンラインショッピングで、1つの商品のサイズや色を複数注文して、自宅で試着し、返品をするという方法も無くはない。しかし、この場合、カスタマーは試着するために、一旦全商品を購入しなければならない。後々返品すれば返金されるとしても、試着をするために商品を全て購入するというのは、現実的にはやや厳しい話である。

購入前に自宅で試着可能! Amazon Prime Wardrobeとは?

Amazon Prime wardrobeamazon.comより引用

そんなオンラインショッピングの試着問題を解決し、オンラインショッピングをオフラインのリアルなショッピング体験に限りなく近づけるためのサービスAmazon Prime Wardrobeが、 米Amazonより登場した。 同サービスは、Amazon Prime会員向けに提供されているサービスで、気になる商品を購入前に自宅で試着し、気に入った商品のみ購入することができるサービスだ。キャンペーンのタグラインとして、「Try Before You Buy」と表現されている。1回の注文で、最大8点まで1週間試すことができ、必要のないものは送料無料で返品をすることができる。そして、手元に残した商品のみ、代金が請求される仕組みになっている。

Prime Wardrobeを試してみた

米国のAmazonプライム会員数は、1億人を超え、50%の家庭がプライム会員と言われている。もちろん、筆者もプライム会員であり、生活や仕事で必要なものは大抵Amazon.comから購入している。Amazon Prime Wardrobeの使い方は、通常のamazon.comでのショッピングと変わりはなく、基本的には、欲しい商品をキーワードで検索することになる。 今回注文したのは、ヒールの高さが違う2足の黒のサンダルと、色違いのベージュのサンダル。もともと黒の2インチ(5cm)程度の低めのヒールサンダルを購入予定であったが、4インチ(10cm)ヒールのサンダルも目に留まり、オーダーすることにした。また、同じ型の商品でベージュもあることが分かり、色違いも試してみたくなった。また、買う予定は全くなかったが、以前から気になっていたバッグも、折角なので注文をすることにした。

試着はカスタマーをその気にさせる

実はこの記事を書いているのが丁度お試し期間の7日目なのだが、買うかどうかの判断をするのに、7日間は十分な期間であった。 商品到着後、数日に亘って何度か試着をするうちに商品を気に入ってしまい、お試し7日目現在で全て購入したい気持ちになってしまっている。普段は履かないが、たまたま目に留まった高めのヒールも、履いてみたら意外に良い感じであったし、前から気になっていたバッグはやっぱり素敵で、さらに欲しくなってしまった。 手持ちの服と実際にコーディネートができたり、家族や友人のフィードバックを得られることもメリットであるように感じた。 以前、筆者がアパレルの店舗で販売の仕事をしていた時、店長から「買う気がそれほど無い人にも、まずは試着をおすすめしなさい」と、口酸っぱく言われていた。なぜなら、試着をして案外似合うと、人は買いたくなってしまうからだ。商品を手に取って見るのと、着てみるのでは全然違う。それが、オンラインの画像であればなおさらである。画面の商品写真と実際に着用してみるのでは、天と地ほど違いがある。

まだまだある、Try Before You Buyサービス

切り口や方法は様々であるが、複数の商品を送り、自宅でじっくり試着してもらい、気に入った商品のみを購入してもらう、というショッピング体験が、Eコマースのトレンドとなりつつあるようだ。最近、アメリカで増えつつある、3つのTry Before You Buy型のサービスを紹介する。

スタイリストが選ぶ服を無料でお試し

サンフランシスコ発のスタートアップStitch Fixは、好みのフィットやスタイル、希望予算などに関する事前のアンケート結果をもとに、スタイリストがユーザーの希望に合った商品を厳選し、自宅まで届けてくれるサービスを提供している。 関連記事:イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

Stitch Fix unboxing

特徴は、商品のセレクトにデータサイエンスの力を使っている点だ。サイズはもちろん、好みのフィット感、スタイルの情報をデータ化し、同じくデータ化された商品在庫と適任のスタイリストがマッチングされる。そして、生身のスタイリストが最終的な商品のセレクトやスタイリングのおすすめ(写真下)を行う仕組みになっている。 Stitch Fix Styling note ↑Stitchの箱に同封されていたスタイリングノート。今回筆者のためにセレクトされた商品を使った、おすすめのコーディネートが記載されている。 大手百貨店のNordstromも、Trunk Clubという同様のサービスを提供している。Stich Fixと同様、好みのフィットやスタイル、希望の予算などに関する事前の調査に基づき、スタイリストがユーザーの希望にあった商品を選んでくれるのだが、加えて、電話もしくはテキストメッセージでさらに詳しい希望をスタイリストに直接相談することができるのが特徴だ。カスタマーサービスを重視するNordstromらしく、よりパーソナルなスタイリングサービスを提供している。 どちらのサービスも登録の際にスタイリング費が必要だが、それ以外には費用は一切掛からず、手元に残した気に入った商品代金のみを支払いをするだけ。なお、スタイリング費は、商品購入の際のクレジットして使用することができるようになっているので、購入さえすれば実質無料でサービスを受けることができる。 プロのスタイリングアドバイスは欲しいが、「接客をされるのは嫌だ!」「自分のペースで試着をしたい」という人にはぴったりのサービスだ。

高額商品もサンプル貸し出しでお試し可能に

ファインジュエリー、特に婚約指輪と結婚指輪の無料トライアルサービスも増えている。サステイナブルなダイヤモンドのリングを販売するMia Donnaは、3種類のリングを5日間無料※で自宅で試すことができるHome Try-Onサービスを提供している。

Home Try On Mia_Donna Mia Donnaのウェブサイトより引用

ウェブサイト上で、気に入ったデザインのリングを選ぶと、サンプルリングが送られる。このサンプルリングは、本物のダイヤモンドやゴールドではなく、合金とキュービックジルコニアが使用されている。クオリティーではなく、あくまでデザインを確認することが目的だ。 サンプルのリングを参考に、ダイヤモンドの大きさや、カット、クラリティー、またリングのサイズ、素材などをカスタマイズし、最終的に好みのリングをオーダーすることができるという仕組みとなっている。 ※注文の際には、返品後に返金される$75のセキュリティーデポジットが必要

リスクフリーで後払いサービスを提供:Klarna

自社でTry Before You Buyサービスの提供が難しい場合は、後払いサービスを提供する他の企業とコラボレーションをする、という手もある。

Klarna pay laterKlarnaのウェブサイトより引用

Eコマース決済のソリューションを提供するKlarnaの提携企業のオンラインストアでは、カスタマーは購入から最大30日後まで、利息無しに商品の支払いを先延ばしすることができる。この期間にカスタマーは、商品を試着し、気に入った商品代金のみ支払うことができるようになっている。 一方で、提携企業には、商品が注文された時点で商品代金がKlarnaから全額支払われる。仮に、カスタマーが商品代金を踏み倒した場合も、Klarnaが債務不履行のリスクを負ってくれる仕組みになっている。

顧客満足度だけじゃない!購入前試着サービスのメリット

企業がTry Before You Buyサービスを提供するメリットは、カスタマーが金銭的負担なく自分のペースで複数のサイズや色を試してから購入できるという顧客満足度の向上のみに留まらない。

カスタマーインサイトの取得:

Stitch FixやTrunk Clubなど、カスタマーの好みにあった商品をキュレートしてお届けるするタイプのサービスが実施する事前アンケートに対する回答には、今後の商品開発やプロモーションに生かすことができるカスタマーインサイトが溢れている。返品された商品からも、ユーザーのインサイトを分析することが可能だ。 好きなブランドや、商品が気に入らなかった理由、どんな時に着る服を探しているのか、などの情報は、企業にとっては喉から手が出るほど欲しい情報ではないだろうか。

コンバージョン率の向上

前半のAmazon Prime Wardrobeを使った感想の中でも述べた通り、試着は購入意欲を促進する。カスタマーは、買うつもりが無くても、意外にも似合うと買いたくなってしまうのだ。 また、支払い期間に猶予があることで、「今は買えないけど、来週なら買える」というようなカスタマーの購入を後押しすることができる。実際に、Klarnaの発表によると、同社の後払いサービスを提供する企業は、通常のクレジットカード決済の時よりも、平均して15%も売り上を上げることに成功したという。

まとめ

カスタマーは、オンラインストアでの買い物においても、実店舗と同じショッピング体験を期待している。 Try Before You Buy、すなわち購入前の試着サービスはその期待に応えるための解決策として生まれ、EC先進企業を中心に広まりつつある。オンラインショッピングの体験は、ますますリアル店舗における体験に近いもの、もしくはそれ以上の価値を提供できるものになってきている。 日本では、送料を往復どちらも負担する企業すら少ない印象を受けるが、もしグローバルで勝負をするなら、そのスタンスは変える必要がある。もし、他の企業に一層差をつけるのであれば、このTry Before You buyサービスの波にのるべきである。 btraxでは、ユーザーのインサイトに基づいたD2Cサイトの構築から、ブランド認知拡大のためのマーケティング戦略立案まで、グローバルで戦う日本企業のサポートを行っている。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせを。

銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)

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銀行での楽しい体験をしたことのある人は一体どのくらいいるであろうか? 様々なビジネスにおけるユーザー体験が改善される現代において、おそらく銀行は最も質の低い体験を提供していると言わざるを得ないだろう。 確かに、入り口にいる紳士が整理券を丁寧に手渡ししてくれるところまでは良い。しかし、そのあとの待ち時間、面倒な書類、短い営業時間、いちいち発生する手数料、融通の利かない担当者など、顧客がそこで体験する時間のクオリティーは非常に低いと感じる人も多いはず。 そして、その訪問が融資目的だったとしたら、上記の体験に加え、たらい回しにされた挙句「断られる」という体験も加わる可能性が高い。そうなって来ると時間の無駄&高いストレスという、なるべくなら経験したくない状態を体験することとなる。これは、UXデザインの概念でいうと、おそらく最低レベルだろう。 参考: UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 –

日本とは大きく違ったアメリカの銀行での体験

上記のエピソードは日本の銀行でのことであるが、これが自分が住むアメリカだとかなり異なっていた。 今回紹介するのは、法人口座で融資枠を作っておこうと思い店舗に出向いてみた際の経験。すぐに担当者を紹介され、要件を伝えると「10万ドル (約1千万円)までなら店舗じゃなくてオンラインでリクエストできますよ」との事。その場でリクエストを出してくれ、数日以内にNYの融資担当から電話が来て45分ほどの質疑で終了。簡単な書類をメールで提出した数週間後に枠が承認され、プロセスが終了した。 日本と比べ金利は高いものの、体験が非常にスムーズで、ストレスも少ない。そして何よりもスピードが早い。おそらく銀行としても、低額の融資枠の審査プロセスにあまりリソースを割くことをしていないのだろう。そのリスクの分を金利でバランスをとっていると感じる。

個人レベルだと店舗すら必要ない

そして、個人口座に関していうと、店舗に行くことはほとんどない。オンラインバンキングかモバイルアプリで事が済むから。ちなみに、アメリカでは、2014年の時点ですでに店舗やATMよりも、モバイルバンキングを活用しての銀行とのやりとり量が多くなっている。 統計的にも店舗に行くのが年間平均1-2回なのに対して、モバイルバンキングには月平均でも20-30回アクセスしている。単純に考えても、それの方が時間も手間もかからないからである。逆に店舗に行かなければならない状況を作り出している時点でユーザー体験が下がっているとも言える。 例えば、Bank of Americaのモバイルアプリでは、最近"Erica"と呼ばれるチャットボットベースのバーチャルアシスタントが様々な質問やリクエストに答えてくれるようになった。これによって、銀行のサポートに"電話"することすら、ほぼゼロになっている。 Bank of Americaのアプリに実装されているバーチャルアシスタント bofa-erica 参考: 【2018年】金融業界のAI最新動向4選

そして、フィンテックサービスはより進んでいた

この銀行に加えて、ノンバンクのフィンテック系のサービスだとこの体験はどのように違うのか。それを試すために、Funding CircleとOnDeckというサービスを試してみた。この二つはいくつかあるP2Pレンディング (ユーザー同士でお金を貸し合う) サービスを提供している。 もちろん店舗はなく、プロセスは全てオンラインで行われる。そして驚くことに、必要な情報を入力し、送信した数分後次のページに、融資可能な金額と金利手数料が表示された。これは、入力情報を元にAIが融資判断を行い、最終的には人力で確認する仕組み。リスクよりもスピードと効率性を最優先している。 自分はそこでページを閉じてみたが、その後担当者からメールが届き「いつでも借りられますよ」との催促を受けた。店舗に行くこともなく、待ち時間もほぼ数分。銀行よりも、よりスムーズな体験になっている。 参考: フィンテック (FinTech) 10の最新トレンド予測 ~改革は既に始まっている~

フィンテックの一番のメリットは優れたユーザー体験

ここ10年ほどでスマホやシェアリングエコノミー、ソーシャルメディアなどの普及で、日々の生活が著しく変化しているのにも関わらず、いまだに銀行の業務と顧客へのサービス価値は大きな変化をしていない気がする。それに対して、多くの企業、主にスタートアップが、フィンテックと呼ばれる新たな概念で、打開策を生み出そうとしている。 そもそもフィンテックがなぜここに来てそこまで注目されているのであろうか?まず、理解しておくべきは、”フィンテック”の”テック”という言葉。もちろんテクノロジーの意味であるが、それが最も威力を発揮するのが、より良いユーザー体験の実現である。 具体的には、スピードアップや、便利性の向上、そして高い透明性の実現など、これまで銀行の顧客が不安に感じていた要素を大きく改善してくれる。 その顧客体験の改善を達成するために、人工知能、ブロックチェーン、ビッグデータなどのテクノロジーを活用し、 P2Pレンディング、チャットボット、モバイルバンキング、クラウドファンディング、デジタルペイメントなどのそリュ0ションを実現している。 bank-diagram 参考: 2018年にUXデザインを取り巻く7つの変化

そもそもユーザー体験ギャップが大きすぎる

日常生活の中で、現在の銀行ほど顧客が求める体験の期待値と、銀行が提供するそれとの差が大きい業界もない。様々なプロダクトのサービス化が進み、多くの事柄がテクノロジーで解決され始めている現代において、安心、安全、セキュリティー、法令遵守を重んじなければならない金融業界は、どうしてもユーザーにより良い体験を届けにくくなる。 その一方で、スタートアップを中心としたテクノロジー系のサービスを提供している企業は、新たなことへのチャレンジや、既存の概念や規制にとらわれない方法でのサービス提供を行なっている。それにより、消費者側はより良い体験を受け取ることができるようになっている。 例えば、日本から海外に送金するだけでも、既存の銀行のシステムを利用するよりも、Transferwiseなどの、送金に特化したスタートアップのサービスを利用した方がスピードも早く、コストも安く目的が達成できる。同じく、カード決済に関してもSquareやStripeが提供する仕組みを活用しない理由が見つからない。 参考: DESIGN Shift: これからのビジネスはモノより体験が価値になる

既存の銀行の92%は10年以内に消滅する?

そんな状況の中で、Harverd Business Reviewが驚くべきリサーチを発表している。今後新たなサービス構築やイノベーションを起こせない場合、向こう10年間で既存の銀行の92%は消滅するというのだ。(出典: The Future and How to Survive It) イノベーションのスピードがどんどん加速する中で、消費者に対しての価値が提供出来ない金融機関は、フィンテック革命下においては滅びるしか道は無くなってしまうという。 その一番の理由がユーザー体験を主な原因とする顧客満足度の低さである。多くの金融サービスが提供側の目線で提供されており、デザイン思考などで考えられるような、顧客目線でのサービス設計がほとんどされていないのが現状で、世の中の様々な体験が改善される中で、銀行は大きく置いていかれている。 参考: デザイン思考入門 Part 1 – デザイン思考の4つの基本的な考え方

ディスラプトされる4要素をしっかりと兼ね備えた銀行業務

新規参入の企業によって、既存の業態が破壊される事を、スタートアップ界隈では、”ディスラプト”されるという。主にテクノロジーを活用したサービスより、これまでユーザーが感じていた不満を解決する事で一気に市場に大きな変化が生まれる事が増えている。 最近の例だとUberなどのライドシェアサービスによるタクシー業界の変革や、Netflixなどのオンライン動画配信によるビデオレンタル業界の縮小などもそれに当たる。 では、どのような業界がディスラプトされやすいのか?そしてその理由とは。まず理由としては、下記の4つがあげられる。 ディスラプトされる理由
  1. 複雑な体験
  2. 透明性の低さによる不信感
  3. 多すぎる中間業者
  4. アクセス性の悪さ (店舗の数など)
この4つの理由を見てみるだけでも、これまでの銀行が抱える問題と合致するような気がする。では、どのような業界がディスラプトされやすいのかを見てみよう。 ディスラプトされやすい業界ランキング
  1. データ, 情報, コンテンツ
  2. 音楽, メディア, 映画, テレビ, 印刷物
  3. 都市, 交通, 自動車
  4. 店舗, 商業
  5. 金融サービス
  6. 保険
  7. 薬品, 医療
  8. エネルギー, ユーティリティー
  9. 水, 食品
このように、様々な業界の変革・再編が進む中で、金融サービスにもそろそろ大きな変革の波が訪れようとしている。 参考: ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素

銀行がいらないと答えるミレニアル達

アメリカでは、個人の送金はFacebookメッセンジャーやWeChatを使ってサクッと行うことが可能である。難しいテクノロジーやセキュリティーの事はわからなくても、何が便利で使いやすいかは日常生活の中でしっかりと認識している。 このような時代には、資本力や規模よりもユーザーの数や、データ、そして優れたユーザー体験を提供できる企業の方がよっぽど構想力が高い。実際のところ、アメリカ国内の調査では、ミレニアル世代の約3分の1が5年以内に銀行の必要性がなくなるとも答えている。 そして驚くべきに、彼らの71%が銀行員と話すぐらいであれば、歯医者にいく方がマシと答えている。それだけ銀行は若者にとって体験の悪い場所になってしまっているのである。そして、彼らの40%は店舗の無い銀行でも構わないと答えている。 参考: ミレニアル世代に効果的なブランド構築方法

中国では物乞いもキャッシュレス

キャッシュレスが急激に進んでいる中国では、なんと物乞いやホームレスが"お恵み"を貰う際にも、自身のアリペイやWeChat PayのQRコードを記載されたボードを提示して、"集金"している。これは、本来であれば銀行口座を持つことが難しいとされる住所不定無職の人々でも、テクノロジーの恩恵を受けている一つの例であろう。 QRコードとスマホ決済で"集金"を行う中国の物乞い chinese-beggers

銀行の敵はすでに銀行ではない

これはすでに金融関係の人々の間では常識になってきているが、彼らが恐れるのは同業者ではない。GoogleやAmazon, Apple, Facebookといった巨大テクノロジー企業である。 なぜか?理由は簡単で、彼らはユーザーからの信頼と優れたユーザー体験を提供しているから。ちなみにこの4社はすでにペイメント系のサービスを提供しているし、Amazonはローンサービスも始めている。 現にメッセンジャー上で個人間送金を可能にするために、Facebook社はアメリカ国内だけでも金融サービスに関する50以上のライセンスを取得している。ことからもわかるとおり、今の時代は、企業を”業界別”で区切る事自体がナンセンスである。 米国ではFacebook Messenger経由でお金が送れる 8

初めての銀行口座がGoogleやAmazonになる可能性も

おそらく現在の子供達は最初に口座を持つのは既存の銀行ではなく、FacebookやGoogleになる可能性が非常に高いだろう。明らかに彼らの方がユーザーに対してのタッチポイントを多く持っているし、優れたユーザー体験を提供できているからである。 そして何より、生まれた時からデジタルデバイスとデジタルメディアに触れて育った人たちにしてみると、店舗に行くよりアプリ上で目的を達成する方がナチュラルに感じてもおかしくはない。 ユーザー全体から見ても下手な銀行よりも、例えばGoogleのような企業の方が信頼ができるだろう。なんせ、毎日使っているサービスなのだから。 Facebookに関しても、自分の大切な個人情報を惜しげも無くアップできるぐらいの信頼関係が成り立っている。もちろんAmazonにはクレジットカードの情報を預けっぱなしである。優れたユーザー体験を得られるのが理由で。 現に、TIME Magazineの調査によると、75%のミレニアルが、既存の金融機関よりも、GoogleやAmazon, PayPalといったテクノロジー企業からのサービスを受けたいと答えている。 この点に関しては、金融企業がどれだけセキュリティーを重要視したところで太刀打ちできない。ユーザー体験が悪いし、定期的に浮き彫りになる不祥事で、信頼性も決して高くはないのが理由。これからはデジタル上での体験の方が顧客にとってのスタンダードにもなり得る。 参考: これからの企業に不可欠な三種の神器とは

日本の銀行はこのままだと確実に滅びる

では日本の銀行はどうなのか?おそらく国内の銀行のイノベーションはまだまだ始まってすらいいないだろう。世界規模では、生き残りのために必死になっているこの時代に実に驚くべき状態である。それも、市場の展望が必ずしも良くないのにである。 そして、業界の歴史に裏打ちされた実績に合わせて、しがらみもしっかりと続いており、加えて規制や法的な事情でできない、もしくはできないと思い込んでいることが多すぎる。 ちなみに、日本の金融関係の方々とお話しすると、一番すごいと思うのは、できない理由がサッと出てくるところである。お決まりのフレーズは「わかってるんですけど、金融庁が…」 その割には海外のスタートアップ企業を中心に、できないとされているはずの事をテクノロジーの力や裏技を活用して、成し遂げているケースが後をたたない。そして、その一番の目的は、ユーザーメリットを高めるためである。 参考: アメリカ企業が日本企業に勝っている一つの事

生き残れるとしてもスタートアップ企業の下請け業務

既存の金融機関は、すぐさまユーザー体験を改善しなければ、今後は生き残れるとしても、フィンテック企業の下請けとしてお金の管理をする業務だけしかその価値はなくなるだろう。言い換えると、既存の金融サービスはどんどんコモディティー化が進み、その価値は加速度的に下がっていく。 顧客との接点に関する部分は、スタートアップなどの新規参入の企業か、もしくは既存の大手テクノロジー企業に根こそぎ持っていかれるのは、ほぼ間違いない。それでも、金融庁との関係や、既存の認可の関係で完全になくなる事はないにせよ、その多くが存続の危機にひんしている。 現に、CitiBankは向こう10年以内に現在の行員の1/3が必要なくなると試算している。これが50%だと予測している専門家もいるくらいである。なぜなら、未だに金融業界におけるコスト全体のおおよそ30%がオペレーションとコンプライアンスに関する人件費であるからである。 これは、全世界で13兆円以上のマーケット規模を誇る金融業界で見たとしても非常に大きなインパクトを生み出す。金融ビッグバン以上の衝撃と言っても過言ではないかもしれない。

エリートの定番キャリアから最も将来性の危ぶまれる業種へ

その昔、銀行員になるというのは誰もが羨むエリートのキャリアとされていた。これは、1989年の世界企業時価総額ランキンを見てもわかる。なんせ、Top 5のうち、4社が日本の銀行なのだから。 しかし残念なことに、その4つの銀行もすでに存在していない。もしかしたら、これから銀行に就職するのは、よっぽどの世間知らずに限られてくるかもしれない。それぐらいその存在が危ない。 1989年と2017年での企業時価総額の違い valuation-ranking 参考: 近い将来テクノロジーが葬る10の産業

銀行が真っ先に行うべきはユーザー体験改善のためのテクノロジー活用

では、そうならないためにはどうすれば良いのだろうか? ついついテクノロジー自体にフォーカスがあたりがちであり、フィンテックトレンドを追いかけてしまいがちであるが、重要なのは顧客のニーズを理解する事である事は間違いない。 例えば世界中にはいまだに20億人以上の銀行口座を所有していない人々がいる。この数字は必ずしも発展途上国だけではない。アメリカの国内にもまだまだ口座を持たない人がいる。例えばデトロイトやマイアミといった大都市のおおよそ20%がそうである。彼らは、銀行での預貯金ができないだけではなく、ローンを受けることも不可能だ。銀行との付き合いが全くないのが理由。 今後は、それら人々に対して、例えばモバイルテクノロジーを通じて新しいタイプの金融サービスを提供したりする事で、社会問題の解決と新たな顧客開拓の糸口にもなり得る。すでにその動きは始まっており、世界銀行の発表によると、2011年か2016年の間だけでも、約7億人がテクノロジーの恩恵を受け、銀行口座の開設をしている。 ここでやはり強調したいのは、主役はあくまでユーザーであり、テクノロジーはあくまでその目的を達成するためのツールであるということ。 ユーザーが欲しいのはより改善された体験である。そのためには、銀行員でも、金融に関する知識だけではなく、デザイン思考UXデザインなどの、ユーザー目線でクリエイティブな考えができる人材と、教育が不可欠となるだろう。 それを実現するために、どのように金融におけるユーザー体験をできるのか、我々btraxでも、今後金融業界向けのUXデザインサービスとプログラムを通じて、世の中に貢献したいと考えている。  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジー

2017 IT trends
テクノロジーの発展、加速率は消費者をたびたび驚かせる。こうした技術の進歩は、生産性、コスト効率、ブランド認知度の向上のために、より多くの機会を提供する。 そのため、技術者やマーケティング担当者は技術の進歩について、常に動向を把握することが必要となるだろう。今回は2017年に世界中で話題となったテクノロジーを振り返りたいと思う。

1. IoTとスマートホームテクノロジー

Iot(Internet of things)の発展・普及に伴い、スマートホームテクノロジーの相互接続性について、数年前から注目されている。様々なスマートホームデバイスが、統合・制御されることで、効率的かつ快適な自動化された暮らしが実現できる可能性があるからだ。 しかし、販売されている多くのスマートホームデバイス、アプリケーションは、全てを1つにまとめてシームレスなユーザー体験ソリューションを提供するものはほとんどない。 だが、2017年、Google, Amazon, Appleなどのユーザー体験に精通している企業がスマートスピーカーを発表した。 スマートスピーカーは音声コマンドと応答によって、日々の生活をアシストし、様々なサービスを提供する新しい方法を導入し、様々なデバイスをインターネットで統合するための大きな前進となった。 また、それに伴い、音声認識の技術は非常に洗練されており、音声認識システムのエラー率が5%未満のエラーレートに下がり、人間と同等レベルまでに正確となっている。 これまでIoTとスマートホームテクノロジーの分野に参入している会社はスタートアップが多かったが、Google, Amazon, Appleなどの巨大IT企業が参入したことで、2018年以降はさらなる技術の進歩が期待できる。

Amazon Echo

米国のスマートスピーカーの市場シェアの76%を占めるAmazon Echoの販売数は今年1,500万を超え、スマートスピーカー全体の販売数は2000万を超えた。 Alexa(アレクサ)と呼ばれる人工知能(AI)が搭載され、「何か音楽をかけて」と指示をすると音楽を流してくれる。「音量を上げて」などの細かい指示調整も可能だ。その他にも、ラジオを聞いたり、Amazonで注文したり、計算や、「btraxってどんな会社?」などの質問を答えてくれる。 関連記事【AIスピーカー入門】Amazon EchoとGoogle Home amazon echo

2. ブロックチェーン

ブロックチェーン技術はまさに今年、2017年に活用され始めたデータ管理システムにおける技術である。 従来のデータ管理システムと比べ、維持費が低コスト、セキュリティに強い、データをオープンにできるといったメリットがある。 そのため、『ブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界』でもご紹介したが、銀行や決済、送金、チャリティー、保険、ヘルスケア、IoT、Eコマース、政府・公的記録、選挙、教育、著作権など多岐にわたる分野でブロックチェーンシステムの活用が見出された1年だった。

仮想通貨

仮想通貨は、その名の通りブロックチェーン技術によって管理されている仮想上の通貨だ。 正確な例えではないので注意をしてもらいたいが、簡単に説明すると、各国に通貨が存在するように、「インターネットという国の通貨」と想像してもらうと容易に把握しやすい。送金や決済手数料が格段に安く済むという点で注目されている。 現代では、ほとんどの国でインターネットが使えるため、各国に法規制がない場合は、「金(ゴールド)」のように各国の通貨に代替できたり、実際の通貨のように使用することができる。 「ビットコイン」と呼ばれる仮想通貨を聞いたことがあるだろうか? 仮想通貨はいくつもの種類が存在するが、最も代表的なものが「ビットコイン」である。日本ではすでに一部の店舗で、ビットコインなどの仮想通貨による支払いが可能となっている。 日本では仮想通貨が、投資対象として注目されている要因が強いため、実際に多く普及しているというわけではないが、元となっているブロックチェーン技術は、2017年に大きく注目された。 bitcoin

3. 機械学習

ここ数年、機械学習は大きな進歩を遂げており、2016年にGoogleの「AlphaGo」プログラムが人間のプロ囲碁棋士に勝利したことが記憶に新しい。 そして、この「AlphaGo」は、2017年には世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した。 他にも、ガートナーの予測ではEコマースにおいて、顧客とのインタラクションの85%が2020年までに人間なしで管理されると予測されている。 機械学習は、あらゆる分野で一般的に普及しつつあるが、今後も主流な技術として注目されるのは間違いないだろう。

AlphaGo Zero

2017年に世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した「AlphaGo」に対して、わずか5ヶ月ほどの期間で、全勝できるまでに強くなった「AlphaGo Zero」が開発された。 「AlphaGo Zero」は、過去の人間の棋譜から学習するのではなく、人工知能同士の対戦から学習することで、以前の性能を追い抜いた。つまり、プロの人間の過去の行動データなどの良質なデータを準備する必要がなく、人工知能同士で学習したということになる。 人工知能という言葉がたびたび使用されているが、これらは機械学習の技術の進歩によって実現されている。 関連記事人工知能(AI)のできることとは?歴史から学ぶ現状と未来予測 [embed]https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=tXlM99xPQC8[/embed]

まとめ

テクノロジーの未来の経緯を予測することは、1年後でさえ難しいとされる。現に2016年に、音声によって生活をアシストする、人工知能同士で学習し、新たな人工知能を開発、仮想通貨に価値が生まれる、など想像できただろうか? 新たに開発された技術は実際に活用されないことも多い。しかし、次に話題となるものを予測し、ユーザーの行動の変化を読み解いていくことがマーケティング戦略を練る上で最も重要だと考えられる。