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企業文化を保つためにAirbnbが取り組んだオフィス拡張計画とは?

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スタートアップがひしめく街、サンフランシスコにはユニークなオフィスが多く存在する。 その中でもここ1年で特に大きな注目を浴びているのが、民泊サービスを中心に提供するAirbnbである。今回は彼らが2017年7月にオープンした、14,000ft²(約1,300m²)に及ぶ新社屋の中身をご紹介する。 注目するのは999 Brannanという場所にあるオフィス。その住所からわかる通り、1ブロック離れた888 Brannanに建つ本社ビルの拡張プロジェクトとしてデザインが施された。 これは同社のオフィスを担当する環境チームが取り掛かる最大のプロジェクトで、サンフランシスコのオフィスデザイン事務所、WRNS Studioと行った。

新たなオフィスが必要となったAirbnbの急激な成長スピード

2008年8月の創業以降、Airbnbは10年足らずで192カ国65,000の都市にサービスを展開。昨年の投資ラウンドでも資金調達に成功し、その時の企業価値は310億ドル以上と多くのメディアで取り上げられた。 企業価値の予測を行うTrefisは今年5月に同社価値を最低380億ドル以上としており、今も右肩上がりの様子だ。 そんなAirbnbは社員の約半数に当たる1,500人をサンフランシスコ本社に置いている。今回の新社屋である999 Brannanオフィスは800人から最大1,000人を収容できるスペースとなっており、同社は今後サンフランシスコの社員数を現在の2倍の3,000人にまで増やしていくとのこと。 この新社屋がオープンした翌月8月には、これまでソーシャルゲーム最大手のZynga本社だったオフィスビルを新たにリース契約した。99 Rhode Islandにあるオフィスも含めると、Airbnbは現時点で4つのオフィス、総面積で650,000ft²(約60,390m²、約18,270坪)ものスペースをサンフランシスコ市内で持つことになる。 Airbnbオフィスは今まさに「都市型コーポレートキャンパス」形成の真っ只中にあり、今後も成長が窺える。 関連記事: airbnb-map-fr

すでに立派なAirbnb本社オフィス:888 Brannan

『ブランド戦略 × オフィスデザイン ー 成功事例に見る企業ブランド構築手法』でも紹介したように、888 BrannanにあるAirbnb本社は企業理念である「暮らすように旅しよう」を表現した特徴のあるオフィスデザインが有名である。 下の写真のように、世界中にある掲載物件をイメージした空間づくりを徹底して行っている。このように実際にAirbnbのサービスを利用するユーザーと同じ環境を作ることで、社員に向けて常にユーザー視点に立ったサービス設計を行う姿勢作りを促しているのである。 airbnb-lobby-fr airbnb1-fr airbnb2-fr888 BrannanにあるAirbnb本社(写真はMark Mahaney)

本社拡張でAirbnbが見据えた3つのポイント

先に挙げたようにAirbnbの「都市キャンパス」化を進める上で通過点の1つとなる今回の999 Brannanオフィスだが、オフィスを拡大させていく上で同社が特に注意を払っていたポイントは次の3つだと見ている。

1. 立地は本社の近く

都市型コーポレートキャンパスを形成する上でオフィス間の距離を近くすることは尤もであるが、その背景に「社員の協業をより促すことができる」というポイントがあることは常に覚えておきたいところ。 近年リモートワークを可能にするテクノロジーが増えていく中で、企業がオフィスに求める役割のうち、「社員同士の協業・コラボレーション」が以前にも増して大きくなりつつある。 実際に今回の新社屋は本社から1ブロック離れた立地に存在し、新たに契約したZynga本社ビルもさらに1ブロック離れた地域に存在。オフィスが市内の1箇所に集中する様子は記事冒頭で紹介した地図にある通りだ。 今回の新社屋デザインに際し、Airbnbの環境チームは社員の提案や意見に積極的に耳を傾け、ブートキャンプスペースやヨガスペース、日本の禅をテーマとしたフィットネスセンター等、新たに必要とされたスペースをこの新社屋に導入した。 キャンパス内にいる社員全員にこれらのサービスを提供し、全オフィスを通してワークスペースの機能を高めることができるのも、すべての社屋が徒歩圏に立地しているからならではである。

2. 1人あたりのデスクスペースは縮小

今回の新社屋では、1人あたりのデスクスペースが通常のオフィスよりも小さく、社員1人あたり220ft²(約20.4m²)から150ft²(約14m²)となっている。これは近年成長を見せるテクノロジー企業に共通して見られる特徴である。 つい最近までは社員1人ひとりに幅広いスペースを提供するというのがオフィストレンドの主流であったが、サンフランシスコを中心に高騰を続ける賃貸料は、オフィス拡張を行いたい企業の1番の悩みのタネとなっている。Airbnb広報のMattie Zazueta氏は「オフィススペースの効率利用に最善を尽くしている」と語る。 ともなると、オフィススペースの密度が課題となりそうだが、この新社屋では建物の特徴であるガラスのフレームワークを上手に活用し、開放感のある空間作りに注力している。建物の特徴を活かしたデザインを施すのが西海岸デザインの特徴であるが、この新社屋はその好例の1つでもある。 airbnb-new1 airbnb-new2 airbnb-new3 オフィススペースはビル全体で16の空間に分かれており、それぞれ50人ほど収容できるようになっている。 各空間にはオーダーメイドのテーブルやスタンディングデスク、3つの通話ブース、そしてオープン/クローズ両方に対応可能なガレージ型ドアを備えた最大30人収容可能なミーティングルームを入れている。様々な働き方に対応できるスペースを用意しているのだ。 airbnb-amsterdam-fr airbnb-floormap-fr airbnb-sketch-fr

3. 全オフィス一貫した空間づくり

888 Brannanの本社オフィスの拡張計画として始まったこの999 Brannanオフィスだが、本社同様、各スペースは世界中にある建物空間の特徴を捉えた様相になっている。そのような統一感を複数のオフィスで持たせることが同社環境チームの仕事の1つだ。 日本の京都やアルゼンチンのブエノスアイレス、インドのジャイプルにオランダ・アムステルダムは実際にこの新社屋で取り入れられたテーマだ。その文化や色彩パターンが各フロアにあるカフェに反映されている。 また世界にある空間の再現を行うだけでなく、「社員のためのオフィス作り」や「企業ブランドの統一」を図るための取り組みも同チームは行っている。 Employee Design Experience (EDX) というプログラムを通じて、実際に社員を最後のデザインタッチ作業に巻き込む。そうして、Airbnbという同社ブランドの一貫性を全オフィスで保つように、社員のアイデンテティが刷り込まれた空間作りを行っている。 airbnb-office1-fr airbnb-office2-fr airbnb-office3-fr写真はMariko Reed 実際に同社は2016年に宿泊場所だけでなく、旅行ツアーや体験を提供するサービスも始めていることから、社員がオフィス体験を向上させる取り組みに加わることはユーザー体験を大事にする同社にとって大きな意味を持つのだ。 このような空間で、Airbnb社員は今日も顧客をイメージしたサービス設計に携わっている。

オフィス拡張?コーポレートキャンパス?それとも第2本社?

今回の999 Brannan新社屋はAirbnb本社の拡張案件として完成したが、同社が周辺物件の契約を結んでいることから、都市型コーポレートキャンパスを形成しつつあるのは記事冒頭で触れた通り。 近年大企業になるほどオフィスに求める機能というのは個別化し、オプションは多岐にわたる。コーポレートキャンパスを都市部に作るか、それとも郊外に作るか、はたまた第2本社オフィスを建設するか。オフィスは今まで以上に企業の成長戦略と密接した存在になりつつある。 今後会社が成長するにつれて自分のところではどのようなオフィスを持つべきなのか?本ブログでは、今後も海外事例を取り上げていきたい。 *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

サンフランシスコのUXデザイナーが語る UXの基本とこれからのトレンド【btrax Voice #9 Mimi Yu】

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btrax社員の生の声をお届けする「btrax voice」シリーズ。 今回のインタビューは、btraxのサンフランシスコオフィスで活躍するUXデザイナーのMimi Yuさんです。今回は彼女がデザイナーになるまでの道のりや、彼女の考える最新のデザイントレンド、また彼女が今後どのようにデザインの世界で成長し続けていきたいかについて語ってもらいました。 関連記事:2018年にUXデザインを取り巻く7つの変化

Who is Mimi?

mimi Mimi Yu 役職:UX Designer 所属:btrax カリフォルニア大学デービス校卒業。専攻は社会学、副専攻は哲学。卒業後はマーケティングや営業の仕事に従事するもUXデザインには常に興味を持ち続け、その後本格的にUXデザイナーへとキャリアチェンジをするためにサンフランシスコのGeneral AssemblyにてUXデザインを学ぶ。 コース終了後、btraxにてUXデザイナーとしてのキャリアをスタート。コリアン・アメリカンとしてのバックグラウンドから異文化間の橋渡しをすることを目指している。    

まず、UXデザインに興味を持ったきっかけを教えてください

無意識のうちにUXデザインにはずっと興味を持っていたように思うのですが、振り返ってみると、2つのきっかけがありました。 1つは、私がスタートアップの営業として働いてた時のことです。私がその会社で働き始めたときは、ターゲットカスタマーが複数設定されていて、どのカスタマーも同じくらい重要視されていました。 しかしリサーチを行った結果、私たちはターゲットを自社商品のソフトウェアを導入できるだけの資金力がある層に絞ることを決断したのです。それからはプロダクトデザインも含めた全てにおいて、「このターゲットカスタマーが何を求めているか」を中心に考えるようになりました。この経験は本当に面白いものでした。 プロダクトの変更が決まったとき、プロダクトデザイナーはそれについて私たち営業チームに説明してくれたのですが、プロダクトや会社の方向性に影響するインサイトやデータ、営業としての知識がそこに反映されていくプロセスを目の当たりにするなかで、私は「そっち側に行きたい」と思うようになりました。それは言わばコックピットであり、私もその中心部にいたいという気持ちが強くなったのです。 もう1つのきっかけはプロダクトデザイナーをしている友達のMikeの影響です。彼はとても魅力的な人で、営業というポジションで働く中でキャリアの方向性の岐路に立っていた私は、彼と接するうちに営業よりもMikeのような人になりたいと思うようになったのです。 彼や彼の友達は常にもデザインのことを考えていて、バーにいる時でさえ、いつもデザインの話をしていました。そんなMikeの情熱や、彼らのコミュニティーはとても魅力的で、彼らの姿を見て私はデザインの世界に惹かれていったのです。 mimi-interview-min

「UXデザイナー」と言ってもその内容は会社によって異なるものだと思いますが、btraxではどういう仕事をしているのでしょうか?

ほとんどの会社でUXと言うと、それは1つのプロダクトのデザインプロセスにフォーカスする場合が多いです。しかしbtraxでは、UXに関するあらゆる業務に関わっています。 btraxは大企業ではなくデザインチームも小さいので、私はプロダクトデザインのあらゆる側面に対処できる必要があります。あるプロジェクトでは、リサーチや仮説検証のためのユーザーテストを行う一方で、ユーザーフローやインタラクションデザインについての検討も行います。 日本企業と仕事をする機会が多いこともbtraxならではです。私たちが当たり前だと思うことが、アメリカとは異なる文化にいる彼らにとって必ずしもそうだとは限りません。デザイナーとして、前提が常に疑われるような場所にいることはとても難しいけれど重要なことです。 そしてそれは物事に対する意識を、自分が思う「真実」の限界を超えて広げることに繋がります。これはbtraxにいるからこそ得られる貴重な経験です。 これまでサンフランシスコで働いてきた中でも、人種やジェンダーあるいはセクシャル・アイデンティティの多様性に欠けた企業をたくさん見てきました。しかしbtraxでは同僚やクライアントが持つ多様な価値観に触れることができるのです。

普段のデザインプロセスを教えてください

私はいつもこんな問いからスタートします。
  • ユーザーは誰か?
  • ユーザーが持っている課題は何か?
  • その課題がなぜユーザーにとって重要なのか?
  • ユーザーについて知っていることは何か?
  • 私たちの仮説は何か?
  • 私たちのソリューションはその問題解決において、どれだけユニークあるいは効果的なのか?
このプロセスを実践した事例としては、ある自動車会社のプロジェクトがあります。その会社はカスタマーに関する膨大なデモグラフィックデータを持っていたのに、カスタマーのニーズに関する実際のインサイトはほとんど得られていませんでした。 そこで私たちは上記の6つの問いから始め、フォーカス・グループ・インタビューを実施して、ユーザーのライフスタイルやモチベーション、ニーズに関する仮説検証を行いました。それは現在のカスタマーエクスペリエンスをどのように改善し強化すべきかを明確にすることにも繋がったのです。 これらの質問に答えることは、デザインプロセスにおいて最も難しい部分の1つです。しかし一度知識を身につけてしまえば、企業のビジネスゴールとユーザーのニーズが交わるポイントを簡単に見つけられるようになります。そしてその後どのようにソリューションを展開しユーザーを巻き込んでいくかについても考えられるようになるのです。 私は一度質問に対して答えを出した後も、全プロセスを通して同じ質問を問い続けるようにしています。時にはわざと反対の立場を取ってみることもあります。 よくあるのが、プロジェクトの始まりの段階で、みんなとにかく前に進みたがることです。私ももちろん進みたいのですが、ブレーキを踏んで「ユーザーの何が本当に知りたいのか?」「真実であって欲しいと私たちが望んでいるだけのものは何か?」と問う人も必要なのです。 btraxで部署を超えて色々な立場の人と働く良さはこの部分に出ると思っています。特にイノベーション・ブースターを行うチームのメンバーはいつもあらゆることに質問してくる人たちです。それこそが私がまさに自分のプロセスに取り入れたいと思っている部分です。 mimi

UXは日々変化していますが、Mimiさんはどのように最新のUXを学んでいるのでしょうか?

とにかく本を読んで、人と話すことです。特に影響を受けているのはデザインコミュニティですね。私が入っているのはデザインに関する投稿をしたり質問したりし合うFacebookのグループです。 今何が流行っているのかを知るのにはミートアップがいいですね。特に私が好きなのはDesigners + Geeksというミートアップでフォローしています。 あと、私には幸運にもデザインや人生についてコーチングを行ってくれるメンターがいます。あとは、ただサンフランシスコ・ベイエリアに住んで同じ業界の友達と過ごすだけでも刺激を受けます。この街で得られるアイデアや、イノベーション、情熱はもう本当に面白いです。ここが私がエネルギーを得られる中心なのです。

そんなMimiさんが注目する最近のUXのトレンドを教えてください

私が最近感じている最大のトレンドは、ユーザーエクスペリエンスが実生活に入ってきていることです。たとえば音声アシスタントやスマートウォッチなど、考えられて設計されたUXは今や生活のどこにでも存在しています。 これはトレンドというにはもはや当たり前で、普段これらのUXについて意識することすらなくなっています。このことが何を意味するかというと、ユーザーの行動やライフスタイル、ニーズを知ることが間違いなく今以上に重要になるだろうということです。 また、ゆくゆくはこれらのテクノロジーが私たちの生活と密接に融合していくだろうとも言えます。例えばGoogle HomeやAmazon Echoなどは寝室やリビングに置かれ、私たちのプライベートな会話にアクセスできてしまいます。 私たちはデザイナーである以上、いかにこちらが想定した方法で行動するようユーザーを促していくのかをしっかり考えなくてはいけません。それには、倫理面で問題がないようにする視点も忘れてはならないのです。 また私がbtraxで働く中で経験し感じているトレンドとしてはConversational UIが挙げられます。私はもともと文を書いていた経験があり、btraxでもよくインターフェースにマイクロコピーを書いていますが、それは自ずと画面上での対話やそれがどのようにユーザーエクスペリエンスに関係するかを考えることに繋がります。そうすると、会話(conversation)、つまりインターフェイスが質問を投げかけこちらがそれに答えるというやりとりとしてのフローを考えるようになるのです。 関連記事:今さら聞けないユーザーインターフェイス (UI) の基本

このトレンドはこれからどう進化すると見ていますか?

私自身を含めたミレニアル世代は自分たちについて多くの情報を発信しています。私たちは「自分ブランドの発信者」として優れていて、オンラインでもオフラインでも、常にどのように自分たちが映るかを考えて生活しているのです。そのために、あらゆるものが非常にパーソナライズされたものとなってきています。 たとえばiPhoneの登場がいい例です。iPhoneは好みのアプリをダウンロードして、個人のライフスタイルや好みに合わせたアプリのコレクションを作ることを可能にしたパーソナライズド・デバイスです。それはいわば、自分だけのデジタルな領域を作り上げるようなものです。 私たちはもはや日常のどの場面でもテクノロジーが常にあることを期待しているため、今後インターフェイスが音声のようなより形のない経験へと変わっていくことは間違いないでしょう。今後このような期待が高まるにつれて、テクノロジーは、AR/VRに代表されるような「没入型」が中心になっていくだろうと思います。 Conversational UIもまた、そのような期待の高まりを反映したものだと言えます。例えば物理的ボタンからタップできるフラットボタンへの変化は、テクノロジーがより人間に近づいていくことを示しています。 過去には、テクノロジーは切り離されたツールとしてみなされてきました。しかし今では、私たちはインターフェースが個人の要求を満たした個人仕様になっていることを求めています。それはまさに「会話」を使って私たちの言葉でコミュニケーションすることが期待されているアシスタントです。

これからbtraxのUXデザイナーとしてどのように成長していきたいのか、Mimiさんの展望を教えてください

改善したいと思ってることはたくさんあります。自分の専門スキルを磨くとともに他分野からも学んで幅広い知識を身につけていきたいし、それにプロトタイプのスキルも伸ばしたいし、ゆくゆくはインタラクションデザインももっとできるようにもなりたいです。 同時に、デザインの効果やインパクトを測れるようになるために、リサーチをより深く学びたいとも思っています。btraxのサービスチームは分析能力に長けています。私ももっとリサーチスキルをつけて、ユーザーの行動分析の経験をもっと積みたいと思っています。 あと、個人的に可能性を感じていてこれから勉強していきたいと思っているのはARです。UXプロセスを通じてARがどのように実現されてきたかについて今までたくさんの本を読んできましたが、非常に面白いと思っています。ARで解決できる課題にはどのようなものがあるのか興味がありますし、それらの課題の1つに取り組んでみたいと思っています。 また文化を超えたエクスペリエンス・デザインについてももっと知りたいです。これはbtraxで時間を過ごす中で学んでいけるものだとわかっているので、これからがとても楽しみですね。

D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン

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人の第一印象は、最初の10秒以内で決まると言われているが、これはブランド体験においても同じである。オフラインの世界に実店舗を持つブランドであれば、店舗空間全体を利用し、カスタマーが店に足を踏み入れた瞬間に彼らをブランドの世界観に浸らせることができる。 一方、店舗を持たないD2Cブランドにとって、オフラインにおけるカスタマーの最初のタッチポイントは、カスタマーサポートに問い合わせる時でも、プロダクトを初めて使う時でもない。それは、配達された箱を開ける瞬間だ。 「どうせ捨てられてしまうものに金など掛けられん!」と思うブランド担当者も多いかもしれない。そんな方にこそ、D2Cブランドの『開封体験作り』への力の入れようを見て欲しい。 店舗を持たない彼らにとって、カスタマーがパッケージを開ける瞬間こそが、カスタマーとの最初の「リアル」なタッチポイントであり、彼らは開封体験をブランドの価値や世界観を伝えるための重要なコミュニケーションの一つとして位置づけているからだ。

ブランドの第一印象を決めるパッケージ

ブランドの第一印象を決定する10秒のカウントダウンは、家に届いた商品を開ける瞬間からスタートする。Dotcom Distributionが2016年に実施したEコマースのパッケージングに関する調査によると、しっかりとブランディングされたプレゼントようなプレミアム感のあるパッケージは、ブランドに対するロイヤリティーを上げ、さらにクチコミを促進するという。 同調査によると:
  • 40%の消費者がプレミアムなパッケージングを提供する会社に対して高いロイヤリティーを抱くと回答。
  • オンラインストアで注文した商品がプレゼントのように包装されていた場合、40%の消費者が「同じショップで再び購入するだろう」と答えている。この数字は、2015年の調査の29%から大きく伸びている。
  • 40%の消費者が、「ブランディングされたパッケージ、もしくはプレゼントのように綺麗に包装されたパッケージは、ブランドに対するイメージに影響を与える」と答えている。
  • 「プレゼントのように綺麗に包装されたパッケージは、ブランドに対するイメージに影響を与える」と答えた人のうち、2/3以上の人が「ブランドに対してラグジュアリーな印象を持つ」と答えたのに加え、60%の人が「商品を受取ったときに、期待感を抱く」と答えている。
  • しっかりブランディングされ、さらにプレゼントの様に包装されたパッケージは、クチコミを促進する。「ブランディングされたパッケージ、もしくはプレゼントのように綺麗に包装されたパッケージは、ブランドに対するイメージにプラス影響を与える」と答えた消費者の50%以上が、「該当ブランドを友人におすすめする」と回答し、その割合は2015年に行った同調査結果の40%から大きく伸長している。

開封動画の流行

開封体験の重要性を押し上げたきっかけとして、英語圏における“Unboxing”と呼ばれる動画コンテンツの流行がある。Unboxing Video(開封動画)とは、購入したばかりの商品を文字通り開封、商品のレビューを行う動画コンテンツのジャンルのことである。 Youtubeを中心に、instagram、Snapchatなど各ソーシャルメディアチャネルで公開され、人気を博している。商品が届いた状態から、箱を開け、商品を取り出し、その場で使ってみて、その感想を述べるというのが、 一般的なUnboxing動画の流れだ。
[embed]https://youtu.be/tybe9qhjQ4E[/embed]
Unboxing動画では、最新デバイスから、コスメ、ファッション、子供用の玩具、食べ物に至るまで、業種問わず多岐に渡る商品が開封されている。 また、インスタグラムで#unboxingと検索すると、人気の動画として、『Omega』や『Louis Vuitton』『GUCCI』など丁寧に包装された高級ブランドのギフトボックスを開封する動画がたくさん紹介されている。つまり、それだけ幅広いオーディエンスがいるということになる。

ブランドがUnboxing動画へ寄せる期待

Google トレンドによると、「Unboxing」というキーワードが使われ始めたのは、2006年で、その検索数は年々増加している。2015年の12月をピークに、最近はややダウントレンドでになりつつあるが、依然としてかなりの検索ボリュームがある。むしろ、コンテンツとして定番化した感がある。 Youtubeで”Unboxing”と検索すると、なんと7600万件、instagramでは、67万件のもの検索結果表示される。(2018年6月現在) unboxing google trend これだけ人気のあるUnboxing動画。今、多くのブランドがPRのチャンスと捉えている。シェアしたくなるような開封体験の提供は、かなりの母数の潜在カスタマーにリーチできる(しかも無料で)大きな可能性を秘めているのだ。 2014年10月に実施されたGoogleの消費者調査によると、回答者の5人に1人が開封動画を見たことがあると答えている。また、開封動画を見たことがある人の62%が、特定の商品について調べる際に開封動画を見ると答えている。 加えて、実店舗に代わるショッピング体験を提供する手段としても、ユーザーがソーシャルメディアに投稿するunboxing 動画にブランドは期待を寄せている。なぜなら、unboxing動画は、オンラインストアの画面では十分に伝えることができない、商品の感触、機能性、使ってみた感じなど、消費者が購入するかどうか決めるのに必要な情報を提供してくれるからだ。 ユーザーが投稿する開封動画は、潜在カスタマーにリーチし、彼らの期待感を高めるのに一役買っているのみならず、商品に関する情報を伝えるための有効な手立てとなっている。そのため、ブランドはますます開封体験を重視するようになってきているというわけだ。

開封体験ベストプラクティス

ブランディングされ、プレゼントのようなプレミア感のあるなパッケージを使用するブランドに対して、消費者はポジティブな印象を抱くことが分かった。また、シェアしたくなる開封体験を提供することは、ユーザーによるunboxing動画の投稿を促す。 その結果として、潜在顧客に対して、オンラインストアでは伝えきれない商品の魅力を発信することが可能になるということも明らかになった。開封体験をデザインすることは、ビジネスにとって良い事ばかりのようであるが、効果的な開封体験とは、一体どういうものなのだろうか? 充実した開封体験を提供するブランドの共通点を見つけるべく、筆者自ら様々なD2Cブランドで商品を購入し、開封体験を検証してみた。その結果、魅力的な開封体験を支える3つの特徴が見えてきた。

(1) パッケージそのものが、ブランドコンセプトを体現

allbirds unboxing エコ・フレンドリーなシューズブランド『Allbirds』は、ボックスで目一杯ブランド価値を表現している。Allbirdsが使用している配送用の箱は、配送の役目を終えたらシューズボックスとして使えるようなデザインとなっているのだ。 かさばるシューズボックスをさらに大きな配送用の箱に詰めるのではなく、シューズボックスそのものを配送用にしてしまうという発想の転換だ。 allbirds unboxing 箱を開けると箱の内側にまず、『WE ARE ALLBIRDS』という自己紹介が。配送中に箱の中でシューズが動き回らないよう固定する仕切りには、ブランドのバリューが記載されている。(写真上)さらに、シューズの中からは、かわいい顔つきのシューズキーパーが入っており、そこにも商品の特徴が書いてある。少しのスペースも無駄にすることなく、ブランディングを行っている。 allbirds unboxing 加えて、発送に使われる箱にはリサイクルダンボールと大豆ベースのインクが使われており、100%リサイクル可能とのこと。パッケージそのものがブランドのコンセプトを体現するものとなっている。

(2) 配送手段としての機能性(商品の保護、返品への配慮)

せっかくブランディングされた素敵なパッケージを用意しても、発送の途中でダメージを受けたり、汚れてしまったりしていては元も子もない。Eコマースビジネスを行う以上、カスタマーの元に商品を万全な状態で届けることは大前提である。 bloomthat uunboxing 花束の配送サービスを提供する『BloomThat』は、花束の形を活かした円錐形のパッケージを採用。花を傷めることなく、商品が配達された瞬間から花束を受取ったときの喜びを体験できるようにしている。そして、円錐型のパッケージを開けると、リサイクル麻布でラッピングされた花束が現れるようになっている。 unboxing_bloomthat2 また、配送で使われる箱の役割は、必ずしもそれで終わりではない。ペットボトルをリサイクルした素材を使ったシューズブランドの『Rothy’s』の配送用の箱には、未使用の両面テープが予めセットされている。カスタマーが商品を気に入らなかった場合、そのまま箱に入れて返送してもらえるようにするためだ。 配送用の箱を返送用に再利用することでゴミを減らせるし、梱包用の箱やテープをカスタマーに用意してもらう手間も省ける。ほんのちょっとした気遣いではあるが、開封の瞬間に留まらず、ショッピング体験全体をより快適なものにする、スマートな仕組みである。

(3) シェアを促す、サプライズ

unboxing barkbox 愛犬用のサブスクリプションサービスの『barkbox』は、思わずシェアをしたくなる仕掛けが豊富だ。 Barkboxを購読すると、毎月テーマに沿った愛犬用のオモチャとおやつが届くのだが、ボックスに同封されている商品を解説する「お品書き」には、毎回クスッと笑ってしまうような(多くが犬に関連したダジャレだ)コピーが採用されている。 例えば、アートがテーマのボックスであれば、「The Academy of Fine Arfs」、(犬の鳴き声を表現する擬音語”Arf”と「Art」を文字ったダジャレ)恐竜がテーマのボックスには「ジュラシック・パーク」を文字った「CHEW RASSIC BARK」(Chewは「噛む」、Barkは「吠える」)というタイトルがつけられている。 シェアを促す仕掛けは、コピーライティングだけではない。ボックスに同封された商品の説明が書かれたお品書きが撮影用の小道具として利用できるようになっているのだ。お品書きの一部を切り取り線に沿ってくり抜くと、アートがテーマのボックスであれば、アートフレームに、プロムがテーマのボックスであれば、首輪に着けることができるリボンが完成する。 barkbox photo unbox barkbox

photo credit:@tobeyandpercy

  さらに、箱の中敷きに使われている紙にすらシェアさせる仕掛けが隠されている。アートがテーマの月なら、塗り絵ができる仕様に、プロムがテーマの月であれば、裏面が壁に貼り付けて撮影をすることのできるバナーとなっていた。 unbox barkbox

phot credit:@happyhuskyhiro

Allbirdsの例とも共通するが、BarkBoxは、パッケージのスペースを上手く活用し、ユーザーがソーシャルメディアに開封体験を共有するのを促す仕掛け作りに力を入れていることがわかる。

まとめ

オンラインで商品を販売する限り、必要となる発送用のパッケージ。「包んで、送って完了」ではなく、「何で」、「どのように」包むか、そして「どのような行動をカスタマーに期待するのか」を考えでデザインを行うことで、カスタマーのショッピング体験、さらにはブランド体験を向上させることができる。 日本では、商品のラッピングサービスは商慣習として根付いているし、素敵なパッケージを使用しているブランドも多い。また、ブランドのオリジナルのハッシュタグを作り、ユーザーにシェアを促すことも、一般的に行われている。その一方で、もし海外展開を行う場合、果たしてその開封体験は、ターゲットとなるユーザーに正しく響くものだろうか? 例えば、商品を保護するために、何重にも梱包することは、一見開封体験の向上に貢献しているように見える。しかし、もしエコフレンドリーが売りの商品を販売するブランドがこのようなパッケージを採用したらどうだろうか?ユーザーにとっては、過剰包装と捉えられてしまい、逆にブランドにネガティブな印象を与えてしまう可能性がある。 また、開封体験のシェアを促すために作成したキャンペーンハッシュタグが、全く別のことを意味するキャンペーンであったら?イギリス発のファッションブランド「Dorothy Perkins」は、リサーチを怠った結果、かなり恥ずかしいキャンペーンハッシュタグを約1年間に渡り使い続けてしまうという大失態を犯してしまった。 ブランドの頭文字を使った#LoveDPいうキャンペーンハッシュタグを作りったものの、「DP」という略語は、なんとハードコアなポルノ用語だったのだ! パッケージから始まる開封体験には、カスタマーと繋がり、ブランドの価値を高める可能性が詰まっている。そのためには、ターゲットとなるユーザーを理解し、彼・彼女たちに響く開封体験をデザインすることが重要だ。btraxでは、アメリカ市場における、ユーザーを起点としたマーケティングサポートを行っている。ご興味のある方は是非お問い合わせを

アパレル業界の未来を紐解く6つの最新トレンド 【後編】

fashion
今までの常識が塗り替えられるような「イノベーション」が様々な業界で起こると予想されている時代において、ファッション業界はどのような歴史を刻んでいくことになるのだろうか。 前半の記事ではそれを紐解く手がかりになりそうなトピックとして、「ウェアラブルデバイス」・「実店舗」・「ラグジュアリー」という3つの言葉が再定義されることについて言及した。 後半となるこの記事では、ファッション業界が抱えている問題について注目したい。労働搾取や大量廃棄といったこの業界が長らく解決出来ずに抱え込んでいるものから、Amazonなどのプラットフォーマーとの協業という近年に急速に重要性が高まってきたものまで、3つの問題についてファッションブランドがどのような答えを出し始めているのかをまとめた。

【4. 社会問題解決こそが次世代のブランディング】

ブランドを構築する3つの要素

それがボールペンのような手に触れられるものであれ、アプリのような手では触れられないものであれ、ブランドを構成する要素は3つである。機能性・デザイン性・ストーリー性だ。 機能性とはそれはユーザーに何をもたらすのか、デザイン性とはそれがどれだけカッコいいのかまた使いやすいのか、そしてストーリー性とはそのモノに一体どんなストーリーが隠れているのか。バランスはそれぞれの製品によってまちまちであるが、この3つがいくらかの形で合わさってその商品の価値となる。 これはアパレル製品の制作においても同じである。こちらのNikeのAIR MAX 1 を例にあげれば、機能性はクッション性が高く足に負担が掛からないソール、デザイン性は名前の由来にもなっているミッドソールに搭載されている空気を可視化した「Visible Air」、そしてストーリー性はNikeが掲げてきた「Just Do It」というスローガンを中心に取り組んできた「保守的な社会への対抗心」や「本当の自分の開放」というメッセージだろうか。 Nike Airmax 1 ↑Nikeの代表的な製品となったAIR MAXシリーズの第1モデル。

社会問題を解決しているストーリー

今後は、この3つの要素の中でもストーリー性の性質に大きな変化が見られるようになるだろう。興味を引くようなストーリーだけ不十分になり、そのストーリーが社会問題を解決しているかどうかがより重要となる。そして、ストーリー性の重要性が他の2つを大きく上回る時代が到来するだろう。

サステイナビリティーの欠如

そこにはファッション業界が長い間直面してきたある問題が関係している。それがサステイナビリティー(持続可能性)の欠如である。 サステイナブルな状態とは、簡略に言えば需要と供給がマッチしている状態であるが、ファッション業界は大きく2つの面でサステイナブルな仕組みをデザイン出来ていない。労働のサステイビリティーと環境のサステイナビリティーである。 労働のサステイナビリティーの欠如については、死者が1,000人を超えたファッション業界最悪の事故がそれを象徴している。この根本的な原因は、先進国の生み出した大量生産・大量消費あきりにビジネスモデルが経済的弱者である供給側に限度の超えた負荷を与えていたことだろう。詳しくは以前の記事(いまブランドが捉えるべきは“ユーザーの意識変化” – サステイナビリティーが重要視される理由とは)を参考にして頂きたい。 ranapraza ↑『Rana Praza』崩壊は死者1,000人を超えるファッション業界最悪の事故となった 環境のサステイナビリティーの欠如については、ファッション業界は全産業の中で3番目に環境に悪い産業であるとされているのはご存知だろうか。例えば、衣服の製造には大量の水を消費する必要がある。1つのジーンズを作るだけでも、通常の製法で作るとその量は3,800リットル以上(シャワー53回分)もの水が使われるという。またThe World Bankは世界の20%の海洋汚染が衣服の染料によって引き起こされていると発表している。 reformation eco ↑米ロサンゼルス発のブランドReformationはECサイト上には、環境問題への喚起を促すページがある。同ブランドのキャッチコピーは”Being naked is the #1 most sustainable option. We’re #2. : 一番環境に優しいのは何も着ないこと。私たちは2番目ね ”だ。

購買基準は会社のビジョンが自分と重なるかどうか

今まで見えなかった情報に対する透明性が徐々に高まってきている現代において、以前よりも多くの消費者がこのような社会問題に対して当事者意識を持ち始めている。またミレニアル世代やその次のジェネレーションZ世代は「その会社のビジョンやミッションが自分と重なるかどうか」をモノを買う際の大きな判断軸にしているという。 問題意識が高い消費者に対して、社会問題を解決しているというストーリー性は機能性やデザイン性よりも重要性の高い項目として評価されることになるだろう。

サステイナビリティーによるブランディング

労働のサステイナビリティーがブランド構築の際に大きな役割を果たしたのが米ブランドEverlaneである。“Radical Trasnparency : 徹底的な透明性”という信念のもと、原価だけではなく値段の内訳をすべて公開している。 このような透明性の他、製品そのものの質や優れたマーケティングにより、Everlaneは今やアメリカにおいて最も人気のあるブランドの1つとなっている。先日サンフランシスコに店舗をオープンしたが、オープン日には店に入るだけでも2時間並ぶほどの大行列だった。オンライン上と取り扱っている商品はほとんど同じなのにもかかわらず、行列を作る老若男女達の存在が、Everlaneのブランド力を証明していると言ってよいだろう。 everlane eco ↑Everlaneは自社のEC上に世界各地の工場の様子を公開。誰がどのように製造されているのかを確認することが出来る。 環境のサステイナビリティーに挑戦しているのはドイツのスポーツブランドのアディダスである。海洋環境保護団体「Parley for the Oceans」協力のもと、海に廃棄されたプラスチックゴミを利用して作ったランニングシューズの販売を開始した。更に“Z.N.E ZERO DYE”と呼ばれる、染色をしない素材本来の風合いを生かした新商品を開発。染色をしないことで、出来るだけ水資源を節約することが狙いだという。これらの例に代表されるように、アディダスは自然環境に配慮した製品づくりを推進し、”サステイナビリティーカンパニー”としてのブランドを作りあげつつある。 adidas eco ↑左:Z.N.E ZERO DYE”を使用しているパーカー 右:海に廃棄されたプラスチックゴミを利用して作られたランニングシューズ 21世紀や22世紀において、これらのようなサステイナビリティーに対して強い問題意識を持った消費者の割合は今と比べられない程高くなるだろう。また機能性やデザイン性にも限界が来る。彼らにとって重要なのは、機能性やデザイン性ではなく、社会問題を解決しているというストーリー性だ。

【5. ファッション業界もユーザー中心のモノづくり】

大規模セールが象徴する業界の抱える闇

いろいろな分野で毎年行われる初売りセール。その中でも一番の盛り上がりを見せるのがファッションブランドやセレクトショップによるものだ。多くの人が行列を作り、開店と共に店の中に駆け込んでいく様子はもはや年始の恒例行事である。 しかしこの様子こそがファッション業界が抱えている闇を象徴しているといえる。それが、「大量の売れ残りが前提の価格設定」である。大量に売り残る前提で価格設定をし、定価で売れなかったらすぐセールに回す、という負のサイクルが、この業界において常態的に発生してしまっているのだ。 ラグジュアリーブランドの収益モデルからもこれは明らかだと言える。利益率の低いファッション部門はブランドアイデンティティを訴求する為に使われ、そのブランド力を活用し革製品のような定番商品が多い部門で利益を獲得するモデルが一般的である。ラグジュアリーブランドの革製品がセール対象外になることが多いのはその為だ。

「散弾銃商法」

このように「顧客が必要としていないものを作ってしまう」という問題が発生してしまっている本質的な原因は、そもそもの商品製造の仕組み自体にあるのではないだろうか。「流行を生み出す」という目的に対してとっているアプローチが今の時代とマッチしていないように思える。 現在多くのブランドは、消費者の理解を深めることなくとにかく数を撃てば当たると大量の種類の商品を生産するすることでヒット商品を見つけ流行を生み出そうとしているのではないだろうか。アパレルブランドのセールが大規模なのは、そのほとんどの”当たらなかった”商品がそのままセールに回されるからだとすれば辻褄が合う。ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏の言葉を借りれば、「散弾銃を色々な方向に振り回しながら撃っている」状態なのではないだろうか。

衣服もユーザー中心のデザインに

しかし現代は様々なデータが蓄積され分析ができる情報化社会であり、この流れはこれからも間違いなく加速する。そんな時代において、そのような「数を撃てば当たる」というやり方はあまりにも時代遅れである。 これからは消費者のデータを商品化することが求められるだろう。消費者に関する情報を集め、分析し、衣服へと変換していくのだ。いかに「データ」を起点に衣服を作れるかどうかが、これからのファッション業界で生き残れるかどうかの分かれ目と言っても過言ではないだろう。 それはつまり、ファッション業界にもユーザー中心のモノづくりの考え方が必要になってくるとも言い換えられるだろう。これから必要になるのは「アイデア」や「テクノロジー」ではなく、あくまでユーザー起点でのデザインである。「ユーザーのニーズを理解し、研ぎ澄ませた商品だけを生産する」というライフルを撃ち抜くような生産体制を敷くことが重要となる。

必要なのはサプライチェーンの再構築

しかしこれは現在のファッションブランドの体制のままで導入することは難しいかもしれない。なぜなら、企画・構想から実際に棚に並ぶまでに時間がかかり過ぎているからだ。通常の工程で服を生産すれば、実際に消費者の手元に届くのに約2年ほどかかってしまうという。これでは消費者のニーズに刺さる商品の製造は難しい。 その為まずはサプライチェーンの再構築を行い、企画者と生産者の距離を近くする必要がある。しかしだからといって企画までもをOEMへ投げてしまうのは本末転倒だ。その結果起こったのが「タグだけ違って他はほぼ一緒」のチェックシャツが様々なセレクトショップで販売されたことである。 あくまで必要なのは、ブランドのアイデンティティを保持しつつより早くスピードで商品を生産出来るサプライチェーンを整えることではないか。

サプライチェーンの再構築に挑むGucci

この重要性を認識し変革に動いているラグジュアリーブランドがある。それがAlessandro Michele体制になってから絶好調のGucciである。Gucciを傘下に収めるKeringのCEOであるJean-Marc Duplaix氏によると、グループとして最も優先順位が高いのはGucciのサプライチェーンの再構築だと話す。 その試みの1つとして、同社はGucci Art Lab を今年中にオープンする予定だ。イタリアに建設予定のこのLabでは、革製品の製造だけではなく、顧客トレンドの調査や新しい素材の開発を行う機関になる。製品開発の上流工程から下流工程までの距離を短くし、発表出来るコレクションの数を多くすることが狙いだという。 Gucci Art Lab ↑イタリアに建設されているGucci Art Lab の様子

セールが無くなりファッションショーのあり方が変わる

この流れがアパレル業界全体に浸透すれば、大量の売れ残りが減るだろう。その結果、「セール前提の価格設定」が見直され、正常なプロパーの価格で売られることになる。それに伴いセールの規模も縮小されていくだろう。 またこの仕組みの変革はファッションショーのあり方をも大きく変えることになるかもしれない。オートクチュールのコレクションは例外的な扱いで継続されるだろうが、より大衆向けのプレタポルテのコレクションは現在と同じ体制でずっと行われるとは考えづらい。2〜3月に来年の秋冬、9〜10月に来年の春夏に店頭に並ぶコレクションを行い続けるのは、21世紀・22世紀においてはあまりにも時代とのすれ違いが大き過ぎるだろう。

【6. プラットフォーマーと協業せざるを得ない時代】

ファッションブランドにとって長らく議論が続いていたのが、「Amazonのようなプラットフォームは協業すべき味方なのか、それとも競争相手になり得る敵なのか」である。 しかしこの議論の論点は今後変わることになるだろう。もはや議論すべきは、プラットフォームと協業するかどうか、ではなく、どのようにプラットフォームを協業するかになる。

プラットフォームとの協業によるデメリット

プラットフォームとの協業は様々な面でデメリットが生じることは事実である。その中でも特に顕著なのは、ブランディングへの影響だろう。ブランドを築くこととは顧客との関係性を築くことに他ならないが、プラットフォームに卸してしまうと、顧客との接点を減らしてしまうことになる。これはブランディングの観点から見ると大きな機会損失に他ならないだろう。 更に顧客データの蓄積という面でも大きなデメリットがある。以前の記事(これからの企業に不可欠な三種の神器とは)でも紹介したように、21世紀における良い企業と素晴らしい企業を分ける一つの指標がデータの取得量と活用方法である。柳井正氏がこれからの産業について「すべての産業は、情報を商品化する新しい業態に変わる」と話すように、ファッション業界も同様にデータの重要性は日に日に増していくだろう。 gafa-graph ↑GAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple) は膨大なユーザーデータを武器に従来の産業分類の枠を超えたビジネスを展開し始めている。 プラットフォームに販売を委託するということは、そんな重要な顧客データの取得のいくらかを諦めることになる。裏返せば、Amazon等プラットフォームにとっての大きな武器とはそのデータである。この状況はファッションブランドにとっては、決して歓迎されることではない。

これからはプラットフォームと「どのように」協業するのかという時代

しかし、そのようなデメリットを考慮したとしても、やはりこれからはプラットフォームと”どのように”協業するのかという時代に突入しているように思う。その理由はプラットフォーマー達が築き上げる圧倒的な規模と顧客へのリーチ、そしてただのプラットフォームではなく、ブランディングプラットフォームへと変革しつつあることだ。 プラットフォームの代表格がAmazonである。Whole Foods Marketの買収やAmazon Goのオープン等生鮮食品に力を入れていると思われがちであるが、ファッション分野の成長も著しい。アパレル業界において、売上げトップの座を守り続けてきたのが、大手百貨店チェーンのMacy'sであった。 しかし、2018年にその座はAmazonに明け渡すことが決定的になっている。また成長率に関しても、Amazonのファッション部門が30%近いのに対してMacy’sは-4%が見込まれている等、両者の差はどんどん開いていく一方だろう。 Retail Sales Graph ↑長らく売上1位を維持してきたMacy'sが遂にその座をAmazonに奪われる。ECサイトが百貨店よりも服を売る時代を誰が想像出来ただろうか。

1日で約3兆円の取り引き

アメリカや日本よりも、オンライン上での購入に対して抵抗が無いとされている中国では、プラットフォーマーの影響力は更に大きいと言えるかもしれない。中国版アマゾンとも呼ばれているAlibaba が毎年11/11に行う Single’s Day Sale はたった1日で、約2.7兆円もの取り引きが発生したという。これは2018年現在、世界中で最も大きなオンラインショッピングイベントである。 Alibaba Single's Day ↑Single Day Sale に合わせて開催されたイベントの様子 このようなプラットフォーマー達の圧倒的なサプライチェーンと顧客へのリーチは、単独のブランドだけで築き上げるのは難しい。今後消費者達は何か欲しいものがあるととりあえずAmazonやAlibabaを開くことが増えるだろう。そのようなプラットフォームで自社の商品を扱ってもらうことは、多くのブランドにとって魅力的であることは間違いない。

ラグジュアリーブランド専用のオンラインプラットフォーム

しかしいくら多くの顧客にリーチ出来るとはいえ、多くのラグジュアリーブランドにとっての悩みの種は、プラットフォームで購買可能になることによるブランド力低下である。現在もAmazonで購入出来る洋服は比較的カジュアルで安いものが多い。 そこで生まれたのがラグジュアリーブランド専用のオンラインプラットフォームである。そこで扱われている商品は高級百貨店で扱われているようなブランドばかりであり、近所のモールに入っているブランドと混合されることはない。これならラグジュアリーブランドも、ブランドイメージの低下を気にすることなく扱ってもらえる。 ブランド力の低下どころか、このようなラグジュアリーブランド専用のオンラインプラットフォームとの協業がブランディングの一貫になっているケースもある。例えば、そのようなプラットフォームの代表格であるFafetchはGucciとパートナーシップを結び、「Store to Door in 90 Minutes (90分配送サービス)」を提供している。FarfetchでGucciの商品を購入すると90分でユーザーのもとに届けられるのである。これはGucci単独ではなし得なく、Farfetchのような強力なサプライチェーン網を持つプラットフォームとのパートナーシップでだからこそ実現出来たサービスだと言えるだろう。 Farfetch Gucci 長らく議論になってきたファッションブランドとプラットフォームと関係性であるが、確かにブランディングや顧客データの面でデメリットはある。しかし圧倒的な規模と成長速度、またブランディングプラットフォームとしての役割を担いつつあることを考えると、協業しない手はないだろう。プラットフォーム上に取り上げられないデメリットが協業するデメリットをはるかに凌ぐ時代はすぐそこまで迫ってきている。

【最近アメリカで話題】ブランド認知に効果的なポッドキャスト広告とは

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「Good morning, Google!」筆者の1日は、この一言で始まる。今日のニュースと天気予報、購読中のポッドキャストの最新のエピソードを聞きながら、仕事に行くための身支度をする。そして、オーディオブックを聞きながら、サンフランシスコ市内の職場に向かう。 今、音声メディアが再注目されている。かつては、ラジオがほぼ唯一の音声メディアであったが、今では音楽ストリーミングサービス、ポッドキャスト、オーディオブックなど、様々な選択肢が存在する。

なぜ今、音声メディアが再注目されているのか?

音声メディアの最大の特徴は、他の作業をしながらコンテンツを消費できることだろう。通勤中、家事をする時、またはランニング中など、目は忙しいが、耳が空いている時間は多く存在する。忙しい我々社会人にとって「ながら作業」を可能にする音声メディアは、限られた時間を有効に使うのに打ってつけだ。 近年の音声メディアの盛り上がりには、様々な要因があるが、まず、2014年に登場した『Amazon Eco』や2016年に発売された『Google Home』等のスマートスピーカーの普及があげられるだろう。 米公共ラジオ局『NPR』とリサーチ会社『Edison Research』が2017年に実施したスマート・オーディオに関する調査結果によると、18歳以上のアメリカ人の16%、人数にして約3900万人がスマートスピーカーを保有しているという。2017年のクリスマス商戦では、様々な小売店が挙ってスマートスピーカーのセールを行っていたことは記憶に新しい。 実際にこのホリデーシーズンで、7%のアメリカ人がスマートスピーカー購入またはギフトとして貰い、さらに4%のアメリカ人が初めてのスマートスピーカーを手に入れたという。そしてスマートスピーカーを持っている人の71%が、以前に比べてオーディオコンテンツを頻繁に聞くようになっており、そのうちの28%が以前よりもポッドキャストを聞く機会が増えたと答えている。 2つ目の要因としては、良質なコンテンツの増加が挙げられる。オーディオブックの年間発行タイトル数は、ここ数年で急増しており、大手出版社も続々とオーディオブック市場に参入している。さらに、最近では著名人をオーディオブックの読み手に起用するなど、エンターテイメントとしての幅が広がっている。 アメリカ オーディオブック 発行数 参照元: "US audiobook titles published per year" また、アメリカの主要メディアの多くが独自のポッドキャストチャンネルを保有している点にも注目したい。Web解析サービスを提供する『SimilarWeb』が公開したアメリカのメディアランキング(2017年第4期)にランクインした100のメディアのポッドキャスト運用状況を調査したところ、更新頻度や保有番組数にばらつきはあるものの、合計74のメディアが独自のポッドキャストチャンネルを持っていることが分かった(2018年5月現在)。 以上のような、大手企業の音声メディアへの参入は、コンテンツの多様性を増やし、ユーザーの増加に貢献しているだろう。 最後に、テクノロジーの発展が音声メディアをさらに便利に、より身近なものにしたと言って間違いない。最近の音声コンテンツはオンデマンド配信が主流となっており、いつでもどこでも聞く事ができる。 また、多くのスマートフォンには標準機能として、音声コンテンツを楽しむためのアプリが入っているし、再生速度の調整やスキップ、ブックマークを追加、興味のありそうなコンテンツのリコメンドなど、便利な機能を装備したアプリも多数存在している。 「限られた時間を有効に使いたい」という、"ながら作業”に対する潜在的な需要が、これらの事象によって満たされた結果、音声メディアユーザーが増え、音声メディアが再び注目されているのだ。

前年対比85%増、拡大中のポッドキャスト広告市場

ポッドキャストとは、インターネットからダウンロード可能なオンデマンド音声コンテンツで、通常シリーズとなって定期的に配信されている。 ポッドキャストを「購読」すると、スマートフォンやパソコンなど手持ちのデバイスに、自動的に最新エピソードが自動的にダウンロードされ、いつでも(オフライン環境でも)、どこでも、しかも無料で音声コンテンツを楽しむことができる。 また、テレビやラジオとは違い、誰でもポッドキャストを作成し、世界に向けて発信することができるので、大手メディアのみならず、趣味でポッドキャストの配信を行っている人も多い。その結果、ニュースやスポーツ、カルチャー、トークショーなど様々なジャンルのコンテンツが存在している。 2018年4月に公開されたFastCompanyの記事によると、252,000以上のアクティブなポッドキャスト番組が存在しており、1億8500万本のエピソードを聞くことが可能だという。 リサーチ会社の『Edison Research』が2018年1月から2月にかけて実施した、アメリカにおけるデジタルメディアの消費者行動に関する調査結果『Infinite Dial 2018』によると、ポッドキャストを聞いたことがある人の数は、なんと1億1200万人にのぼる。 日本の人口とほぼ同じ人数のユーザーがいることから、いかに大きな市場であるかが分かる。さらに、ポッドキャストを聞いたことがある人の人口は、2006年度から増加し続けている。 ポッドキャストユーザー数 参照元: "The Podcast Consumer 2018" 同調査結果によると、4,200万人が毎週ポッドキャストを聞いているという。割合に換算すると、アメリカ人口の15%が習慣的にポッドキャストを聞いていることになる。ちなみに、映画を見にいく人はアメリカ人口の3%であることから、ポッドキャストがいかに気軽な娯楽で、かなりの数のポッドキャストリスナーがいることが分かる。 リスナーのなかには何かしらの企業のターゲットカスタマーとなりうる人が当然存在する。ターゲットカスタマーがいる場所に企業が広告を出すのは、実に自然な流れだ。 オンライン広告における技術的標準規格の策定を始め、動向調査や法整備などを行う『IAB』と『PwC』が2017年6月に発表した『IAB Podcast Advertising Revenue Study』によると、2017年のポッドキャスト広告収入は、2.2億ドルに達する見込みで、2016年から85%の増加となる。 広告主がポッドキャストを重要なメディアとして注目し始めたのは、ポッドキャストユーザーが増えているからではない。むしろ、ポッドキャストユーザーの属性とメディアとしてポッドキャストの特徴にある。 ポッドキャスト広告 推移 参照元:"IAB Podcast Advertising Revenue Study"

ポッドキャストが理想的な広告媒体である3つの理由

1) エンゲージメントの高さ

上述のEdison Researchの調査によると、85%のポッドキャストユーザーが番組のほとんど、もしくは最後まで聞くと回答している。また、ポッドキャスト広告ネットワークを運営する『Midroll media』が2015年10月から2016年3月にかけて11,123人のポッドキャストユーザーに対して実施した調査によると、回答者の80%が番組内広告のブランド名を純粋想起することができたそうだ。 さらに、67%の回答者が広告内で取り上げられた商品名を答えることができたという。 別の調査によると、モバイルデバイスにおけるディスプレイ広告の想起率は45%、記事広告に至っては、7.3%だ。この結果から、いかにポッドキャスト広告が効果的であるかが分かる。加えて、Midroll mediaが行った別の調査によると、なんと61%のユーザーがポッドキャスト広告の中で紹介された商品またはサービスを購入したことがあると答えたそうだ。 ポッドキャストユーザーのエンゲージメントが他のメディアに比べ高い理由の一つとして、番組ホストとユーザーの信頼関係が影響する。通常ポッドキャストを聞く時は、ひとりでヘッドフォンを着用した状態だろう。 そんな環境の下、番組ホスト対ユーザーは一対一のコミュニケーションを行い、30分ないし60分、もしくはそれ以上の番組放送時間中、ユーザーはホストの話に集中していることになる。また、ポッドキャストは定期的に配信されるメディアであるため、ホストとユーザーは長い期間に渡って信頼関係を築いていることになる。 さらに、ポッドキャストは、ユーザー自ら購読することを選んでいるので、YouTubeの広告のように強制的に見せられるコンテンツとはわけが違う。ユーザーは能動的にポッドキャストのコンテンツを消費しているのだ。配信される情報に対して消費者がオープンな状態において、信頼しているホストが広告主の商品について番組内で自然に語るポッドキャスト広告は、影響力がないはずがない。

2) 高学歴かつ高収入なユーザー

ポッドキャストを注目すべき広告媒体もするもう一つの理由が、ユーザーの質だ。Edison Researchの調査によると、毎月ポッドキャストを聞くユーザーの45%が収入$75,000以上世帯であり、34%が修士以上の学位を保有している。 なお、アメリカ人口に対するそれぞれの割合は、$75,000以上の世帯収入家庭が全体の35%、修士以上の学位保有者が23%となっている。以上から、ポッドキャストユーザーは、高学歴かつ高収入な傾向にあるこいうことがわかる。

3) ニッチな層にリーチ可能

上述の通り、現在252,000以上のポッドキャスト番組が公開されている。ニュース、ビジネス、教育、コメディー、インタビュー、カルチャー、科学などそのジャンルは多岐に渡り、各ジャンルごとに、さらにニッチなトピックへと枝分かれする。 テレビやラジオの様に巨額の投資やライセンス等を必要とせず、また放送禁止用語などもないので、誰でも気軽に自分の番組を持つことができる。その結果、専門家が自身のプロモーションのために専門領域について解説する番組や、一般人が自分の趣味についてひたすら語るような、非常にニッチなトピックを扱う番組も少なくない。 トピックがニッチになればなる程、そのトピックに興味があるユーザーのみが、コアなリスナーとして残ることになる。その結果、従来のマス広告ではターゲティングしきれなかったニッチなユーザーに対して、ポッドキャストはリーリすることが可能になるというわけだ。

正しい番組選びと、番組ホストの率直な感想が鍵。

『GirlBoss Radio』にみるポッドキャスト広告の活用法

企業が実際にどのようにポッドキャスト広告を利用しているか、またポッドキャスト広告がどのようにユーザーの行動に影響するのかを、筆者の実体験をもとに考察したい。ミレニアルズ世代から支持を得ている女性起業家Sophia Amorusoによるメディア、『GirlBoss』が配信する『GirlBoss Radio』を例に取り上げよう。 GirlBoss Radioは「女性にとっての『成功』を再定義」することをテーマに、毎週各業界で活躍する女性をゲストに招き、キャリアやライフスタイルについてSophiaがインタビューを行う、対談形式の番組だ。約一時間の各エピソードの冒頭と中盤に広告が挟まれ、その配信時間は1、2分程。多くのスポンサー企業が、複数のエピソードにわたって広告を配信しているようである。 例えば、ベッド・バス用品メーカーである『Parachute home』や、サブスクリプション型パーソナルスタイリングサービスの『Stitch Fix』、発送業務サポートサービスの『Ship station』、ワインの定期購読サービス『Wink』、スタイリッシュな電動歯ブラシの『quip』などが過去に広告を配信していた。 ちなみに、これらの企業・サービス名を挙げるのに、筆者は自身の記憶だけに頼り、何も参照していない。これが、ポッドキャスト広告の実力である。消費者向けの商品のみならず、B2B、特にスモールビジネス向けサービスの広告も配信されているのは、番組のメインユーザーがキャリア志向で、自分のビジネスを持っている人、または起業をしたいと思っている人が多く、起業家であるSophiaに憧れたり共感したりしているからであろう。 GirlBoss Radio内で配信される広告の一番の特徴は、広告のように感じない、という点だろう。なぜなら、番組ホストであるSophia Amorusoが自らスポンサー企業の商品やサービスを試し、実際に使ってみた感想を、彼女の言葉で語っているからである。 GirlBossの他のエディターを交えてSophiaと二人でサービスを紹介する場合もあり、まるでオフィスで同僚の話を聞いている感覚で、彼女達がおすすめするなら試してみたい、という気持ちになる。 時たま、企業からもらった情報を棒読みしているように感じる場合があるが、それが逆に彼女が熱を込めて語る商品を引き立たせている。棒読みされてしまったスポンサーには申し訳ないが...これは企業が番組のオーディエンスを正しく理解していなかった結果であるとも言えるだろう。多くの場合、番組リスナー限定で使えるクーポンコードがスポンサー企業のウェブサイトURLとともに口頭で伝えられる。 筆者の場合、1回目の広告配信で企業のウェブサイトを訪問する場合もあれば、何度か広告を聞いた後で改めて企業名を検索してサイトを訪問することもある。多くの場合、広告を聞いた直後、忘れないうちにスマートフォンのブラウザを立ち上げ、サイトのURLを入力している。 番組ホストが語る広告は、オーセンティックで試してみたくなるのである。

まとめ

年々拡大を続ける音声メディア市場。特に、ポッドキャストにおいては、様々なジャンル及び、トピックを扱う良質な番組が存在しており、他のメディアではリーチすることが難しい、ニッチなオーディエンスにもリーチできる可能性が広がった。さらに、ポッドキャスト広告がユーザーの行動に及ぼす影響は、絶大だ。 信頼をおく番組ホストによって、パーソナルでオーゼンテックな視点で語られる商品の魅力は、ユーザーの記憶に残り、試してみたいと思わせる。ただし、ポッドキャスト広告で成功をするには、正しい番組選が非常に重要であることを、忘れてはならない。 参考:

アパレル業界の未来を紐解く6つの現象 【前編】

fashion future trend
音楽や映画と並び、ファッションは「時代を映す鏡」としての役割を担ってきた。川久保玲氏や山本耀司氏がパリコレデビューし全身真っ黒のカラス族が現れたのは80年代であり、藤原ヒロシ氏らによって裏原系と呼ばれるジャンルが誕生したのは90年代だ。「A BATHING APE / アベイシングエイプ」や「NUMBER (N)INE / ナンバーナイン」などの人気ブランドが次々と誕生し、国内のファッション業界に最も活気があった時代ともいえる。 そんなファッション業界は2000年代に大きな転換期を迎えることになる。その起爆剤となったのは、より早くかつ安い洋服の製造・販売に成功したファストファッションブランドの誕生である。ユニクロの打ち出した1900円のフリースは、ファッション業界人だけでなく、多くの消費者にも衝撃を与えた。ユニクロを始めとしたファストファッションブランドは、ストリートの様子だけではなくファッションに対する価値観そのものを大きく変えたのだ。 では、これから続く21世紀・22世紀において、ファッション業界はどのような歴史を刻んでいくことになるのだろうか。今までの常識が塗り替えられるような「イノベーション」が様々な業界で起こると予想されている時代において、ファッション業界にはどのような変革が起こるのだろうか。それを紐解く手がかりになりそうな6つのトピックをまとめた。その前半となる今回の記事では近い未来にファッション業界で起こるであろう、3つの言葉の再定義に注目する。

【 1. ウェアラブルデバイスの再定義 - テクノロジーが”溶け込んだ”服 】

人間とWatson - 2人のデザイナー

毎年ニューヨークで開催され、ファッション界のアカデミー賞とも称されるのがMET Galaだ。COMME des GARÇONSのデザイナーである川久保玲氏も2017年に取り上げられ、日本のメディアでも大きく取り上げられたことは記憶にも新しい。 そんな2016年のMET Galaのセレモニーパーティーにおいて、錚々たるデザイナーが作り上げたドレスの中に、1つだけ”人間とAIの共同作業”によって作られたドレスを身に纏ったモデルが居たことはご存知だろうか。

コグニティブ(認識する)ドレス

英ブランドMarchesaによって初めて発表されたこのドレスは、「コグニティブ(認識する) ドレス」と呼ばれている。最大の特徴はLEDライトが取り付けられていることである。もちろんただのLEDライトではない。ライトの色はIBMのAIであるWatsonがその場観客のリアクションに応じて変更することが出来るのだ。人工知能であるWatsonは視覚を持っている訳ではない。しかし、データを感情に変換することで人の気持ちを汲み取ることが出来るようになったと言えるだろう。 cognitive dress ↑ 超一流デザイナーの作り上げたドレスの中でも際立つ”人間とAI”によってデザインされたドレル

欠点は明らかな”テクノロジー”感

しかし、そんな最先端の技術を駆使して作られた”コグニティブドレス”であるが、最先端であるが故の欠点が1つある。それは明らかに”テクノロジー”であるということだ。大きな祭典の場では話題性を持って受け入れられるかもしれないが、日常生活では着ることはとてもじゃないが難しい。

テクノロジーに気付かなくなる現象

これからテクノロジーの存在はもはや当たり前に時代になる。そんな時代においては論点はテクノロジーの存在に有無ではなく、そのテクノロジーをいかに生活の中に溶け込ませるかにあるのではないだろうか。 Apple の iPad Pro のCMはまさにこの例だといえるだろう。以前の記事(【2017年】社会への問題提起を行ったブランドプロモーション4選)で、AppleはこのCMで「コンピューターが私たちの生活に完全に溶け込んだ世界」を描いている可能性があることを示した。このテクノロジーが生活に溶け込む現象について、Xerox のパロアルト研究所のマーク・ワイザーは自身の論文の中で、「最も革新的なテクノロジーとは消滅するものである。日常生活に溶け込こんでいき、次第に生活の一部として当たり前の存在となる。」と説明している。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=sQB2NjhJHvY[/embed] ↑このCMに付けられた名前は『What's a Computer』

GoogleとLevi'sが提案する未来の洋服の形

この「テクノロジーに触れていることに気付かなくなる現象」は今後様々な業界で起こることになるだろう。もちろんファッション業界も例外ではない。 GoogleがLevi’sと共同で取り組んでいるプロジェクトが「Project Jacquard」である。作っているのは一見普通のデニムジャケットであるが、もちろんただのジャケットではない。使われている織り糸にセンサー機能を持つ極細のコードが紡がれているのだ。 これにより服をウェアラブルデバイス化することが可能となる。スマホとBluetoothで繋げば、スクリーンだけではなく服もスマホ操作の際のインターフェイスになるのである。 例えば、服を触るだけで、聞いている音楽を操作したり、かかってきた電話に対応したりすることが出来る。スマホをいちいち取り出すという手間が省ける為、特に自転車に乗っている時などに便利だろう。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=yJ-lcdMfziw[/embed] これはよくあるプロモーションムービーのような「将来的にこうなります」といった類いのものではない。先日ついに一般にも販売が開始され、誰でも購入することが出来るのだ。遠い未来の話ではなく、既に実現されていることなのである。

テクノロジーが衣服に「溶けている」状態

注目すべき点は、これは一見普通のデニムジャケットにしか見えないことである。IBMによる「コグニティブドレス」と比較するとその差は明瞭だ。両者とも最先端のテクノロジーを用いているのにもかかわらず、GoogleとLevi'sによって開発されたこの服は「テクノロジー感」は皆無だと言っていい。 これはつまりテクノロジーが衣服に「溶けている」状態の1つであると言ってもよいだろう。この「Project Jacquard」により、GoogleとLevi’sは全く新しいウェアラブルデバイスの形を示した。Fitbit等の今までのウェアラブルデバイスと比べても、ガジェット感は弱く、より生活に溶け込んでいることがわかる。 現在はシンプルな操作のみしか行えないが、この技術を応用することで実現可能なことはどんどん増えていくことは間違い無い。近い未来に、心拍数からカロリー消費まで、あらゆる身体データを取得出来る服が開発されてもおかしくない。 そうなれば、自転車を乗る人に限らず、ダイエット中の人から持病持ちの人まで、あらゆる人にとって、今までの服には無い価値を持つものになっていく。何かしらのテクノロジーが埋め込まれている衣服の方が当たり前になる時代が来るのかもしれない。もっともそんな時代では、それはもはやテクノロジーという呼び名では呼ばれていないだろう。

【 2. 実店舗の再定義 - D2Cブランドが生み出した新潮流 】

ファッション業界を席巻するD2Cブランド達

様々な業界において店舗数の削減に踏み切る企業が後を絶たないことはご存知だろう。もちろんファッション業界も例外ではない。大手百貨店チェーンの Macy’s はここ数年で63店舗を閉鎖し、1万人以上の社員を解雇した。Ralph Laurenは4年前にオープンしたばかりのニューヨーク5番街にある旗艦店の閉店を発表。Abercrombie & Fitchも60店舗の閉鎖を決定した。 そんな重苦しい状況の中、ファッション業界を中心に消費財全体を席巻しているのが、Direct to Consumer (D2C) と呼ばれる新しいビジネスモデルである。以前の記事(Direct to Consumer (D2C) 躍進の理由と大企業のジレンマ)で紹介したように、その特徴は自ら企画・製造した商品をどこの店舗に介すことなく主に自社のECサイト上で販売していることだ。 d2c brands ↑ファッション業界を中心に消費材業界でD2Cブランド達の勢いが止まらない

ロイヤリティ構築の為だけの店舗

D2Cブランドの成長において大きな役割を担ったのが「実店舗の再定義」である。従来の商品を販売するという役割はECサイト上で代替し、販売場所ではなくブランドロイヤリティの構築場所として実店舗の再定義を行ったのである。 従来考えられてきた実店舗の役割を大きく以下の3つにわけられるだろう。
  1. 商品の購入場所としての役割
  2. 広告としての役割
  3. 顧客とのロイヤリティ構築としての役割
このうち、購入場所としての役割は消費者行動の変化により拡大したEC市場により代替され、広告としての役割はSNSがその役割の一部を担うようになった。これは私たちの生活の中でも実感できる。Instagramについ先日から追加された、商品にタグ付けをすることでダイレクトにオンラインサイトへ行ける機能はこの動きを象徴している。日本への導入も時間の問題だろう。 しかし、そんな2つの役割とは裏腹に代替が難しかったのが、顧客とのロイヤリティ構築としての役割である。基本的にロイヤリティは顧客とのコミュニケーションと通して構築される。そのコミュニケーションにはSNSやニュースレター等すべてのタッチポイントが含まれるのだが、いくらテクノロジーが進化しようとも「直接会って話す」ことよりも優れたコミュニケーション方法は今のところ存在していない。そこで行ったのが、ブランドロイヤリティの構築場所としてリアル店舗の出店だったという訳だ。 guide shop ↑ Bonobosは自らの実店舗を販売を一切行わない「Guide Shop」として出店。予約すれば担当のスタッフがコーディネートの相談に乗ってくれる。 店舗数の削減を余儀なくされているファッションブランドであるが、もしECサイト売上げの比率の上昇に対応して店舗を減らしているのだとすれば、それは不十分だろう。ただ単純に売上げ比率の比重をECサイトにもってくるだけではなく、戦略的な店舗の役割を再定義をする必要があるのではないだろうか。 それには根本的な仕組みの変革までもが必要になるだろう。確かに、既存ブランドであれ、D2Cブランドであれ、ECサイトのデザインはオシャレでカッコ良い。しかしそれはあくまで表面的でしかなく、一番の違いは仕組みの部分にあるからだ。

大企業のジレンマ

しかし、これは歴史の長いブランドであればあるほど難しいものなのかもしれない。私たち消費者からすれば洋服という大きなくくりで見れば作っているものは一緒である。しかし同じファッションブランドであっても、D2Cとラグジュアリーブランドでは、サプライチェーンや収益のモデルが異なる。 真似しようとするのであれば、すべてを変えてしまうか、全く参考にならないかのどちらかになってしまうだろう。一部だけを取り入れようとしようものなら、過去のやり方と現在のやり方が混在した複雑で負担の大きいシステムになってしまう可能性が高い。 更に仮に改革を決めたとしても、現在のブランドの上に積み重ねる以上は、ブランドイメージとの兼ね合いに細心の注意を払わなければならない。下手に改革を進めてしまうと、今まで築いてきたブランドさえも損なってしまうかもしれないからだ。このような状況では、例え変化が必要なのはわかっていてもその決断は難しくなる。これこそが現在大手ファッション会社が抱いているジレンマではないだろうか。

治外法権を与え従来の管轄権から離した組織

ではそんな大企業はどうすればよいのか。その1つの答えとなるのが、従来の管轄の範囲から外し、治外法権のような権利を与えた組織を作ることだろう。治外法権とは、ある国の領土にいながらその国の統治権の支配を受けない特権のことである。 つまり大企業においての文脈において翻訳すると、大企業の中に所属しながらその会社のしがらみや風習・仕組み等の支配を受けない特権ということになる。これにより、予算の使い道を細かく稟議回に通す必要や、イノベーションの種になるような画期的なアイデアが中間管理職達によって潰される可能性が低くなる。その結果、大企業の抱えるジレンマに取り憑かれることなく、自由にその時代に最適な仕組みを作ることが出来るようになるのではないだろうか。 そしてここサンフランシスコやシリコンバレーはそんな治外法権を与えられた部門の集まりである。例えばAmazonの本社はシアトルであるが、Amazon Lab126 と呼ばれるラボはベイエリアにある。これは本社と組織的にも距離的にも離すことで、比較的自由な裁量権を与えることが狙いだろう。 現在は自動車や家電製品のメーカー企業に特に多いように見受けられるが、このような流れはこれからファッション企業にも生まれてくるかもしれない。21世紀や22世紀は様々な産業で既存の当たり前が壊される時代である。もちろんファッション業界も例外ではなく、また店舗の再定義はその当たり前の一部でしかない。

【 3. ラグジュアリーの再定義 - シェアリングエコノミーブーム後の世界 】

現代はシェアリングエコノミー全盛期

世界中でシェアリングエコノミーが業界を席巻している。シェアリングエコノミーとは、基本的には供給者と需要者を結びつけるプラットフォーム提供のサービスのことである。代表的な例はAirbnbとUberだ。Airbnbは空いている部屋を旅行者に貸し出すというサービスを始め、その領域は今や旅行先での体験全体まで広がっている。Uberも同様だ。その領域はタクシー業だけに留まらず、公共交通機関全体に及んでいる。 いかに時代に受け入れられているかは時価総額を見れば明瞭だ。Uberに対しては680億ドル(約7兆円)Airbnbに対しては310億ドル (約3兆5000億円) もの値段が付けられている。日本企業全体を見ても、時価総額が7兆円を超えている会社は両手で数えられる程度しかない。 uber and airbnb このシェアリングエコノミーは空いている部屋や座席だけに留まらず、所有物のレンタルという新しい潮流をも生み出している。今やサンフランシスコでは定番となったGetaroundは所有している車を他人に貸し出せるサービスであり、Armaiumではスタイリストがその人に向けて選んだ洋服やバッグをレンタル出来る。とてもじゃないが購入出来ない憧れの高級車やブランド品も、レンタルであれば気軽に使用することが出来る。この流れは業界を問わずあらゆる分野で加速することになるだろう。

シェアリングエコノミーが浸透し切った後の世界

では、いったいこのようなシェアリングエコノミーが世の中へ浸透し切った後の世界はどのようなものなのだろうか。1つ言えることは何もかもシェア出来る時代においては「所有する」ということに対しての価値は今よりも薄れるということである。以前のような高級車・高級ブランドバッグ=ステータスという概念は消え去るどころか、「お金の使い方が微妙」とさえ思われる可能性さえもある。 更にそのような時代において、ラグジュアリーという言葉の定義が見直されることになるだろう。何でもシェア出来る時代において、シェア出来るもののブランド価値は薄れていくだろう。ブランド構築において希少性には大きな役割を果たす。シェアが当たり前になれば、その希少性はおのずと下がり、その結果ブランド価値が薄れるという訳だ。 では一体どのようなものがラグジュアリーと呼ばれるものになるのだろうか。それは「シェア出来ないもの」である。では「シェア出来ないもの」とは一体なにか。その人の為だけに作られた製品、はその象徴的な例だろう。

ラグジュアリー = シェア出来ないもの

zozosuit そんな「シェア出来ないもの」の販売に挑戦している例がスタートトゥデイのプライベートブランドである「ゾゾ(ZOZO)」である。大きな話題となった採寸用のボディスーツである「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」は、着用者の身体の詳細な採寸データを数値化することが出来る。これにより従来のS・M・Lのサイズ展開ではなし得なかった、その人だけの為の洋服を作り上げることが出来るのである。現在はTシャツとデニムだけの展開であるが、その数はどんどん増えていくことになるだろう。 今までラグジュアリーの意味してきたものとは、素材や機能、デザイン性に優れた商品であった。高級車や高級ブランドバッグ等がその例である。しかし、これからは「シェア出来るものはシェアする」時代である。ミレニアル世代やジェネレーションZ世代の「所有しない”贅沢”」という価値感も合わさり、所有することに対する価値はどんどん薄れていくだろう。そんな時代においてのラグジュアリーとは、「決して他人にシェア出来ないもの」になる。まさに、ラグジュアリーの再定義が起ころうとしているのだ。 今回の記事では「ウェアラブルデバイス」・「実店舗」・「ラグジュアリー」という3つの言葉の再定義に注目した。後半では、労働搾取や大量廃棄といった長らく抱えているものから、プラットフォーマーとの協業という近年に急速に重要性が高まってきたものまで、ファッション業界が抱えている問題について注目したい。 参考記事 ・Cognitive Marchesa dress lights up the nightJACQUARD AND LEVI’S. A PERFECT FIT.Uber’s latest valuation: $72 billionCompany value and equity funding of Airbnb from 2014 to 2017 (in billion U.S. dollars)ZOZOSUIT

経験価値マーケティング【入門編】消費者の思い出に残るブランド体験を

experiential marketing
経験価値マーケティング(Experiential Marketing)とは、インタラクティブなブランド体験を通して消費者との関係性を構築するマーケティング手法である。 従来のマーケティングが一方的にブランドや商品のベネフィットを幅広いオーディエンスに向けて発信するのに対し、経験価値マーケティングはブランドやプロダクトのコアバリューが凝縮されたオフライン空間の中で、消費者と一対一のパーソナルなコミュニケーションを行うことに焦点を当てている。 そして、忘れられないブランド体験を提供し、消費者と感情的な繋がりを持つことによって、カスタマーロイヤリティーを構築し、顧客生涯価値を上げることを究極的な目的としている。 アプローチ方法の例としては、下記のものが挙げられる。
  • ポップアップストア
  • インスタレーション
  • ブランドの世界観に没入できるVR体験
  • インタラクティブな屋外広告
  • 最新テクノロジーを使った実験的体験
  • アートプロジェクト
  • オフラインのゲーミフィケーション体験
経験価値マーケティングの正攻法というものは存在しない。しかし、成功する経験価値マーケティングは、五感を駆使し、忘れられない体験に消費者に浸らせる仕組みを取り入れている。

なぜ今、経験価値マーケティングなのか?

1) 経験に価値を置くミレニアル世代

イベント・プラットフォームを運営するEventbriteが全米のミレニアルズ世代(1980年から1996年に生まれた、2018年現在で22歳から38歳の層)を対象を行った調査によると、この世代は経験を非常に重視している。さらに、彼らのイベントに対して使うお金と時間は年々増えているという。コンサートから、ネットワーキングイベント、フェス、スポーツイベントに、体験型アート、文化体験など、彼らはありとあらゆるイベントに参加する。 この世代にとって重要な価値観である、「ハッピーで充実した人生を送る」という目的のもと、様々なイベント通して思い出を作り、仲間と共有しているのだ。回答者のうち78%、すなわち4人に3人が欲しいものを買うより理想的なイベントに対してお金をつぎ込むと回答している。また55%のミレニアルズ世代は、イベントや経験に対して今までにない程にお金を使っている。 さらに82%のミレニアルズ世代が、過去1年以上になんらかのイベントに参加しており、その割合は彼らの上の世代よりも12%も高くなっている。にもかかわらず、72%のミレニアルズ世代は、今後イベントに使うお金をもっと増やしたいと思っている。ミレニアルズ世代は、とにかくイベントが大好きなのだ。

2) スルーされ続ける広告

消費者はいまだだかつてないほどの量の広告を浴びている。デジタルマーケティングの専門家による調査によると、平均的なアメリカ人は一日4,000から10,000の広告もの広告に触れているという。多すぎる、と感じるかもしれないが、自分の1日の生活スタイルを一度思い返して欲しい。 朝起きて一番に確認するソーシャルメディア上の広告やインフルエンサーによるスポンサードポスト、通勤途中に見る屋外広告や電車内広告、Eメールの受信箱に送られるブランドやお店からのニュースレター。 そして、仕事上のリサーチに使用するGoogle検索結果(Adwords広告)、ディナーのレストランを探すためにチェックをするレビューサイトの広告、自宅郵便受けに溜まったダイレクトメールの山、癒やしを求めてたどり着いた猫がじゃれるYouTube動画の前に自動再生される動画広告。 最後は、寝る前に再びソーシャルメディアを開き、目にする広告....一日をざっと振り返っただけで、いかに我々の生活が広告に囲まれているかを、再確認することができる。 しかし、消費者はこれらの広告を覚えているだろうか?そもそも、彼・彼女達は本当にこれらの広告を目にしているのだろうか?広告を強制的に非表示にする「アドブロック」機能を使っている人も少なくないし、動画であれば簡単に広告をスキップし、目的のコンテンツだけを消費することも容易だ。 一方的に商品のベネフィットを叫ぶ従来の広告では、消費者から支持を得るどころか、アテンションを得ることすら難しくなっている。従来の広告を使って、ブランドの認知を上げ、商品の魅力を伝えるには、繰り返しかつ継続的なコミュニケーションが必要となる。 その一方で、経験価値マーケティングは消費者と一対一のコミュニケーションを行うとこによって、短時間で効果的にブランドの認知やロイヤリティーを高めることできる。なぜなら、経験価値マーケティングは、五感を使ったブランド体験を提供し、感情を刺激し、長期的な記録として残る思い出の中に自然に入りこむことができるからだ。 学生時代の楽しい思い出は、大人になった今でも詳細を覚えているように、ブランディングされたエキサイティングな体験ができれば、消費者はその記憶をポジティブなブランドイメージとともに記憶する。そして、いざ消費者がブランドのサービスや商品が必要な場面に遭遇した際に、一番にそのブランドのことが記憶のなかで喚起されるのだ。

3) FOMOと#インスタ映え

FOMO(fear of missing out)とは、友達が参加している楽しいイベントに自分が参加しそこなってしまうことを恐れる感情のことである。友達の体験がソーシャルメディアで簡単に覗けるようになった今、多くのミレニアルズ世代がこの感情に振り回されている。 また、FOMOと切っても切り離せない関係にあるのが、インスタ映えである。なぜなら、クールな体験には「証拠写真」が必要だからだ。逆も然りで、友達が羨望するような写真や動画をソーシャルメディアに投稿するために、クールなイベントに参加をする必要がある。 このFOMOとインスタ映えへの執着が、ユニークな体験を提供するイベントへとミレニアルズ世代を呼び込み、新しいことにチャレンジさせ、ソーシャルメディアでのシェアを促すのだ。彼らはフォトブースだけではもはや満足できず、インスタ映えする新しい体験を求め続けている。

Glossierポップアップショップの成功と失敗

経験価値マーケティングの形態は様々であるが、btraxがオフィスを構えるサンフランシスコでは、ポップアップストアが多く登場する。そのなかでも、アメリカのミレニアルズ世代からカルト的な支持を得ているオンライン発D2CコスメブランドのGlossierが、期間限定のポップアップカフェをオープンしたということで、早速足を運んでみた。 glossier1 場所はオシャレなカフェやブティックが立ち並ぶミッションエリアの少し外れ。バターミルク・フライドチキンサンドイッチが人気のカフェ「Rhea Cafe」とコラボレートしたこのポップアップストアは、お店全体がGlossierカラーである「ミレニアルピンク」で染められている。 現在ニューヨークに1店舗ショールームがあるのみで、西海岸でGlossierの商品を試すことができるのは、このポップアップカフェのみということで連日大盛況。筆者が訪れたのは平日であったにもかかわらず20分待ち、週末となれば1時間待ちもざらだという。 Glossierのコスメのテクスチャを背景に「HAVE A NICE DAY」と書かれた外壁一面のペイント、パステルピンクで塗られた店内の壁、スタッフがユニフォームとして着用しているピンクのつなぎ、カウンター席を改造したドレッサー等...どこをとってもインスタ映えするものばかり。そして、その世界観はGlossierのオンラインストアやソーシャルメディアから配信されるもの、そのまま。 心躍るキュートなインテリアを目で楽しみ、普段は試すことができないコスメを試し、スタッフからアドバイスをもらい、新発売の香水の香りを楽しむ。まさに、五感をフル活用したブランド体験である。 glossier2 その一方で、残念な点も少なからずあった。まず、フライドチキンの香りがブランドのイメージに合っていないこと。 コスメと飲食という意外なコラボレーションを賞賛する声もある一方で、店内に漂うチキンの匂いがGlossierのガーリーな世界観と合っていないように思えた。チキンの匂いではなく、新発売の香水の香りが店内に漂うことを期待していた。 glossier4 また、入場制限をしていたにも関わらず、店内は大混雑。コスメを試すだけでなく、店内でイートインをすることも出来るので、メイクをしている人と食事をしている人が混在している状況であった。 経験価値マーケティングは、ブランドやプロダクトのコンセプトが凝縮されたオフラインの場において、消費者の思い出に残るパーソナルな体験を提供することに尽きる。見て、聴いて、嗅いで、触って、感じて、体を動かして、時には頭を使わせる....オフライン環境だからこそ実現可能な五感を活かした体験を提供し、ブランドの世界観を表現することが重要である。 このポップアップの最大の目的は、Glossierの世界観の中でコスメを試すことであるはずなのに、飲食というイベント追加することで、本来の目的を阻害している感が否めなかった。 Uberやairbnbの成功から分かるように、消費者が商品から体験に対して価値を置きつつある今、マーケティング手法としてのみならず、ビジネスにおける全ての側面においてユーザーを起点とした体験をデザインすることが重要となっている。 例えばbtraxが日本のクライアント様のアメリカ展開をお手伝いする際には、まず多角的な視点を持ったユーザー・市場リサーチから始め、対象となるユーザーを徹底的に理解した上で、オンライン・オフライン双方を使ったブランド体験作りを行っている。 今回ご紹介した経験価値マーケティングも、上記で紹介したユーザーの価値観と行動を変化を前提として行うマーケティング手法である。もしあなたのターゲットユーザーがそれらの価値を保有していない、もしくはそのような行動をとらないのであれば、せっかく経験価値マーケティングを行っても、望んだ通りの結果は見込めないだろう。まずは、ユーザーを正しく理解し、彼・彼女たちにとって、最も響く体験を提供することが重要である。

ユーザーの心を掴むヒントは“ハイパー・パーソナライゼーション“にあり

hyper-personalization
hyper-personalizationGoogleによると、過去2年間でモバイル上でのGoogle検索内において”Best”という単語がなんと80%も増加したという。 またアクセンチュアによると、アメリカとイギリスにて1,500人のユーザーを対象に行った調査でユーザーの75%はパーソナライズされた情報やコンテンツを提供してくれるブランドから商品を購入する傾向にあることがわかってきた。 この2つのレポート結果から言えることは、ユーザーがオンラインで買い物をする際、購入前にベストなものをリサーチすることが当たり前になった、そしてユーザーはパーソナライズされたコンテンツに価値・魅力を感じるようになったということだ。 つまり、スマホが普及して欲しい情報を簡単に手に入れることができるようになったからこそ、ユーザーは商品購入前の情報収集を大切にし、より満足のいく購入体験(購入前から後まで)を求めるようになったのかもしれない。 ということは、ユーザーにオンリーワンなコンテンツを提供することさえできれば、商品購入までの道のりはぐっと縮まるはず。そうしてユーザー体験を向上させることで、ひいてはブランドへのロイヤリティ醸成にもつながるだろう。 では実際に成功しているブランドはどのように「オンリーワンなコンテンツ」をユーザーに提供しているのだろうか? 関連記事:未来のユーザー体験をつくり出す「未来予測」のすすめ

グローバル企業に学ぶ”一歩進んだコンテンツ作り”

まずは以下のグラフを見てもらいたい。これは企業が実践しているパーソナライゼーションの領域と収益の相関を示したもので、多くの企業が実践しているのはSingle Message Mailing(簡素なメッセージでのメール配信)からSegmentation Rules Based(ターゲットのセグメント)に留まることがわかる。 それに比べて収益が好調なAmazonやStarbucks、Spotifyが行っているのは、さらに一歩踏み込んだPredictive Personalization(ユーザー行動を予期したパーソナライゼーション)だ。ユーザー行動を制するものはビジネスも制するのかもしれない。 personalization 画像転載元:こちらの記事より それではグラフにも出ているAmazonとSpotifyの事例を見てみよう。

1. Amazon:レコメンデーションで潜在的な購買欲を掻き立てる

Amazonはユーザー行動のデータを巧みに操り、ユーザー1人1人に合ったレコメンデーションのシステムを生み出した。一番売れている商品をランキング形式で表示したり、新着商品のラインナップを表示する一方的なレコメンデーションとは異なり、ユーザーが起こした行動を元にコンテンツをキュレートしていくので、よりユーザーのニーズに基づく。 例えば、過去にPumaの靴を購入し、且つ検索クエリに「Puma」があると下記のようなレコメンデーションがメールで届くようになっている。これにより、ユーザーの潜在的な興味や購買欲を掻き立て、商品の購入に繋げることができるのだ。 amazon case study 画像転載元:こちらの記事より それぞれのユーザー行動をマッチング AmazonはItem-to-item collaborative filtering(アイテムベースの協調フィルタリング)というレコメンデーション・エンジンを生み出したことでも有名だが、実はAmazonのコンバージョンの35%以上はこのエンジンからきている。 この機能を簡単に説明すると、①似ているユーザー同士をマッチさせるのではなく、②購入/閲覧される商品の類似パターンをマッチさせてレコメンデーションを作るというもの。下記の画像を参照していただきたい。 ① この商品を買った人はこんな商品も買っています ➡︎あなたと似た関心を持つユーザーをマッチさせてレコメンド amazon2 ② あなたの購入品に基づくおすすめの商品 ➡︎あなたが購入した商品と似ている商品をマッチさせてレコメンド amazon ①だと日々趣味や嗜好が変わるユーザーの変動を追うことになるのに対し、②は商品という普遍的なモノを組み合わせることになるので、より正確なレコメンドになるということ。自分が欲しい商品だけが並び、そこから選ぶことができるMeコマースの時代が着実に浸透していっているのかもしれない。

2. Spotify:ユーザー行動と自然言語をマッチさせたオンリーワンなプレイリスト

1億4千万人のアクティブユーザーを抱える音楽ストリーミングプラットフォームSpotifyが生み出したハイパー・パーソナライゼーションは、AIを活用してユーザー好みの曲をキュレートした”あなただけのプレイリスト”Dicover Weeklyだ。 discovery week 一昔前は音楽のエキスパート達によってマニュアルでキュレートされたプレイリストや曲に関連するタグ(Hiphopなど)を付けて同じタグを持つ曲をマッチさせるような技術があったが、ユーザーの潜在的なニーズを引き出すまでには至らなかった。 しかし、Spotifyが作ったDicover Weeklyは多数のアルゴリズムを組み合わせることにより、ユーザー好みの曲をレコメンドすることができる。 spotify Discover Weeklyの仕組みを図式化したもの(画像転載元:Quartzの記事より) 複数のアルゴリズムの中でも特に注目してもらいたいのが以下の2つである。 Collaborative Filtering ユーザーの視聴記録、プレイリストへの追加、アーティストページへの移動といったユーザ行動を元に似ている行動パターンを取るユーザー同士をマッチさせ、”まだ聞いたことないけど聞いたら好きになるであろう曲”をレコメンドするアルゴリズム。 NLP(自然言語処理) Spotifyは日々、AIを通してそれぞれの曲やアーティストに付随する自然言語(人間が日常的に用いる言語)を集めている。具体的には検索エンジン、ブログ、SNSなどで使われている言葉を細かくデータ取りして、曲同士をマッチさせる時の指標にしている。 これらのアルゴリズムがあって初めてユーザー好みのコンテンツを提供することができるのだ。SpotifyがDiscover Weeklyだけで70億以上(2016年時点)もの曲のストリーミング実績を持つのも頷ける。 なお、Spotifyは昨年新たなレコメンドプレイリストTime Capsuleをローンチしている。これは16歳から85歳までのユーザーに昔聴いていた懐メロをレコメンドしてくれるもので、アカウント登録時の生年月日やユーザー行動のデータを元に選曲しているようだ。 このようにSpotifyは現在だけではなく過去と未来という別の時間軸でもコンテンツを提供することで、継続的にユーザーの興味を掻き立てることができる。

ハイパー・パーソナライゼーション=究極のユーザー体験

上記の事例のように、ターゲットユーザーの興味や関心、行動データを元に最適化した情報を提供することはハイパー・パーソナライゼーションと呼ばれている。 では従来のパーソナライゼーションとの違いは何だろうか。 <パーソナライゼーションの具体例> ターゲットユーザーの名前を宛名にしたニュースレターを配信する、SNSの投稿を地域や言語で分けて投稿するなど、最低限の情報量(ユーザーの基本情報や趣味、関心など)だけでユーザーに合ったコンテンツを提供する。 <ハイパー・パーソナライゼーションの具体例> ユーザーに関する最低限の情報+ユーザーの行動を把握してよりユーザー観点に近いコンテンツを提供する。例えば、あなたはオンラインショッピングでBというブランドの靴を見ているとする。 【行動①】過去に同じブランドの靴の検索・購入履歴がある 【行動②】オンラインショッピングは大体19時〜21時に買う傾向にある この2つの行動からブランドのBがあなたに対して19時〜21時の間にディスカウントの案内をプッシュ通知で送るというのがハイパー・パーソナライゼーションだ。ユーザーが提供する情報だけではなくユーザーの行動も上手く活用することで、ユーザーは「そうそう、こういう商品が欲しかった!」と感じ、彼らの心をくすぐることができるのだ。

まとめ

ハイパー・パーソナライゼーションを極めるためにまず必要なこと、それは多角的な視点を持ちユーザーを理解すること、これに尽きると思う。ユーザーの日々の動きや見るもの、触れるもの、感じることに目を向け、様々な仮説を立てて実際に検証する、この一見簡単なように思えて奥が深いプロセスをどう活用していくかが鍵となる。 弊社では、そんなサービスデザインを通して日本企業のグローバル展開を支援しているので、今回の記事が新たなサービス/プロダクト開発プロジェクトに関わる方々にとって有益な情報であると有り難い。 参考: