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ミレニアル世代のマインドセットを捉えて成功したスタートアップ事例

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資産運用会社であるAlliance Bernsteinのアナリストによると、2018年の今年にミレニアル世代(1980-2004年ごろ生まれ)の購買力は、ベビーブーマー世代を超えると見られている。 そのため、ミレニアル世代のマインドセットを理解することが世の中のマインドセットの変化を捉えるために重要だと言える。 特に食習慣は顕著にマインドセットの変化が現れやすく、他の世代とも比較しやすい。現にミレニアル世代の食習慣に関するマインドセットは今のフード業界のトレンドの要因となっている。 この記事ではそんなミレニアル世代の食にまつわるマインドセットの変化と、それらをうまく捉えているスタートアップの事例を紹介したい。

ミレニアル世代は健康意識が高い

米マーケティング会社CBDの行った調査によると、ミレニアル世代の健康意識が他の世代に比べて高いことがわかっている。これ以外にもミレニアル世代に関する調査は多く発表されているが、総じてミレニアル世代の健康意識は高く、ヨガや運動に積極的で、アルコールもあまり摂取しなくなったと言われている。

野菜・オーガニック食品が人気。食品選びも健康を意識

また、食事に対しても健康意識が現れており、米マーケティング会社NPDの行った調査によると、米国の40歳以下の1人あたりの生野菜、冷凍野菜の消費量がともにこの10年で50%以上増加していることがわかっている。NPDのリサーチアナリストによると、今後もミレニアル世代以下による野菜消費量が増えていくとしている。 実際に、北米のオーガニック食品促進団体のOTAの調査によると、米国のオーガニック食品を最も購買している世代がミレニアル世代ということがわかっている。さらに子を持つ親となったミレニアル世代は子どもの健康にも気を遣いオーガニック食品を選ぶ傾向があるということが明らかになった。 同調査によると、アメリカでのオーガニック食品消費は過去最大になっており、売上高では約5兆円規模に拡大しているという。調査ではこれらの主な要因はミレニアル世代だと指摘されている。 これらの傾向から今後もオーガニック食品などの健康意識にマッチした食品ニーズが高まっていくと言える。 現に、アメリカの主なオーガニック系スーパーであるTrader Joe’sWhole Foodsなどは売上を伸ばしている。グローバル市場調査会社のResearch and Marketsの調査によると、従来のスーパーマーケットが2007年以来顧客ベースの年平均成長率で減少傾向にあるにもかかわらず、Trader Joe’sは5.9%、Whole Foodsは4.9%の年平均成長率を達成しており、オーガニック食品への意識の高まりがうかがえる。

Plentyはオーガニック野菜の栽培・流通を効果的に行う

agritech-plenty 上記のようなフードトレンドがある中で、生産性の高い屋内での水耕栽培を実現させたPlentyは、農業スタートアップとして約250億円という過去最高の資金調達を行った。 屋内での水耕栽培のメリットは、何と言ってもクリーンな野菜を効率よく生産できる点だ。Plentyでは独自に設計されたポール状のタワーで栽培を行うことで、従来の農法と比較した場合、同じ面積で350倍の生産を可能にし、95%も少ない水で葉物野菜の他、イチゴなどを栽培している。将来的には、従来生産コストが高く栽培難易度の高い野菜や果物も栽培可能になる見込みだという。 また、赤外線センサーを張り巡らして作物をモニタリングすることで得られたビッグデータから機械学習を行い、アルゴリズムが光、温度、水などを調節することでより美味しい作物の生産が可能になっている。 都市近郊に工場を建設し、オーガニック野菜という価値だけでなく、
  • 物流コストの削減および都市部に供給するためにかかる環境負担の軽減
  • 新鮮
  • ローカルで作られた野菜
という価値を前面に押し出している。 同社はサンフランシスコ以外にも日本や、他の国と比べて農薬が2倍ほど使用されていると言われている中国でも事業拡大を目指している。

たんぱく質も重要視している

米広告マーケティング会社のAcostaの調査によると、ミレニアル世代の約80%が、食品購買時にたんぱく質が含まれているかを非常に重要であると回答していることがわかっている。また、ミレニアル世代より上の世代に上がるにつれて減少していることもわかっている。 健康志向の強いミレニアル世代間で増えているベジタリアンやヴィ―ガンといわれる菜食主義者もたんぱく質を重要視しており、植物性の代用肉からたんぱく質を摂取している。世界的な市場調査・コンサルティング会社であるMarkets and Marketsの調査によると、代用肉市場は今年2018年に約4,700億円に達し、2023年には約6,500億円に拡大すると見ており、急成長する市場の一つとして注目されている

Memphis Meatsは動物を殺さない人工肉を実現する

https://www.youtube.com/watch?v=Y027yLT2QY0 サンフランシスコに拠点を置くMemphis Meatsは、牛からとった幹細胞を培養して牛肉を作っている。Microsoftのビル・ゲイツや世界的な実業家として知られるリチャード・ブランソンら、その他著名な投資家が同社に総額約18.5億円を出資している。 リチャード・ブランソンは、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、
「向こう30年ほどで、私たちは動物を殺す必要がなくなり、(供給される)全ての食肉は現在と同じ味を保ったまま、クリーンな肉、または植物原料の肉になるだろう。それらは同時に、私たちにとってより健康的なものになるはずだ」
と述べている。 持続可能なオーガニック食品として、上記のようなミレニアル世代のマインドセットをうまく捉えつつ、人間の長期的な課題を解決しようと試みている。

ミレニアル世代は外食・デリバリーが好き

アメリカ農務省のレポートによると、ミレニアル世代の外食頻度が他の世代に比べて多いことがわかっている。同調査の分析によると、ミレニアル世代は約2週間に1回の割合で外食をするという。 また、アメリカ合衆国労働省労働当局の調査によると、ミレニアル世代はベビーブーマー世代(団塊の世代)に比べ、総支出が14%下回っているにもかかわらず、ベビーブーマー世代は外食、デリバリーに週平均$47.65支出するのに対し、ミレニアル世代は週平均$50.75と多く支出することがわかっている。 ミレニアル世代の健康志向や、外食・デリバリーが多い傾向からSakara LifeProvenance Mealといったオーガニック食品によるフードデリバリーや菜食主義者のためのフードデリバリーを行うサービスが増えている。

Zume Pizzaは焼き上がりのピザをデリバリーする

https://www.youtube.com/watch?v=VKlvVTgOCEA シリコンバレーにあるZume Pizaは、人が移動中に調理するという法律違反を、移動中に車内でロボットがピザを焼き上げることで解決している。 この一連の「移動中に調理する」という特許により、食べる2分前に焼きあがるピザをデリバリーしている。 多くのピザ屋では、チーズが配達中に溶けた状態になるように保存料などの化学調味料を使用するが、Zume Pizzaでは保存料を使う必要がないため、健康的であるということもアピールしている。 Zume Pizza Pod また、100%リサイクル可能なサトウキビ繊維でできたピザのパッケージは、保湿性が高く、特殊な形状により、残ったピザのサイズに合わせて折りたためるようにもなっている。 こうした画期的なユーザーエクスペリエンスと要所要所にユーザーのマインドセットを反映させることで、他社との差別化を図り、ミレニアル世代の支持を得ることができる。

まとめ

小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」という記事でも紹介したように、今回の事例でも、世の中の変化に対応するためにはまず、ユーザー中心のマインドセットが必要となることがわかる。 ではそのようなマインドセットはどうしたら身につくのだろうか?btraxでは、スタートアップとデザインの本場サンフランシスコにて、イノベーションブースターというワークショップ型プログラムを通じてそうしたマインドセットを習得する機会を企業向けに提供している。ご興味のある方は是非お問い合わせを。

ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦

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大手企業の強みの一つにブランド力があげられるが、昨今、それだけでは勢いのある新興ブランドに顧客をどんどん取られていく傾向にある。例えば、老舗ショッピングモールなどはECサイトに取って代わり、自動車メーカーはUberやLyftなどライドシェアサービスの台頭により、車をシェアするという新しい潮流に直面している。 この流れには生活習慣や消費者が求めるものの変化、そして技術の進歩などが大きく関わっており、ブランドにとってその変化に沿った商品やサービスの開発が必要になってくるということだ。すでにブランドバリューのある企業であればその価値を大いに活用し、新しい商品やサービスを生み出して厳しい競争を勝ち抜いていくことも可能だろう。 では果たして大手ブランドは、そのブランドバリューと資金にものを言わせておけば顧客を掴み続けられるのだろうか。答えはNOだろう。 特にアメリカのミレニアル世代にとってはそのブランドが大手なのか否かよりも、そのブランドを使うことによってどんな体験ができるのか、自己形成ができるのかということの方が重視されているように思う。実際にEventbriteのリサーチによると、ミレニアル世代の78%がモノよりも体験を選び、さらに72%が今後もモノより体験にお金をかけたいと思っていることがわかっている。 さらにミレニアル世代が体験を重視することを根拠づける事象として、今回は飲料業界大手のコカコーラとペプシが挑む新たな挑戦と飲料スタートアップを事例に挙げ、ユーザー体験を重視したマーケティング手法をご紹介したい。 関連記事:若者が車を所有しなくなった6つの理由

コカ・コーラとペプシの異変

アメリカで人気のソフトドリンクと言ったらコカ・コーラやペプシコーラ(ペプシ)を想像するのではないだろうか。それもそのはず、コカ・コーラ社とペプシは世界のソフトドリンク市場でマーケットシェア70%(2015年時点)を誇るブランドとして確立し続けてきたまぎれもない大手企業なのである。 しかしながらその事実とはうって変わり、2018年冬に彼らが発売した新商品に込められたメッセージや背景を探ると、危機感を抱いているかのような変化が見られた。その危機感というのも他の新興ブランドに置いてかれないように模索しているようであった。 まずはコカ・コーラとペプシが発売した商品を見ていただきたい。

コカ・コーラ新商品:Diet Coke (新しい味の追加)

Diet Coke 4 new flavors (写真はダイエットコークポートフォリオサイトより転載) ターゲット:ミレニアル フレーバー:ジンジャーライム、チェリー、ブラッドオレンジ、マンゴー デザイン:細身・銀色の缶で従来のDiet Cokeにコンテンポラリーさを加えている。タイポグラフィーも今までのコカ・コーラのブラント感を残しつつ、どこかスタイリッシュでスッキリした部分がある。また、デザインカラーは新しい冒険や体験となる味を思わせるような、目を引く(Boldな)色使いを試みた。 開発秘話:2年の歳月をかけ、1万人ものユーザーによるテストから、味やデザインを決めていったという。また、コカ・コーラ自身がターゲットはミレニアルだと公言し、新しい冒険や体験を求める彼らに寄り添っていきたいと話していた。 常に新しいものを試すことが好きなミレニアルに向けて、従来のDiet Cokeとフルーツ味をミックスした全部で4つの味の提供と、その冒険を助長するアピアランスで発信している。(ちなみに筆者は先日Ginger Limeを飲んでみたところ、”サイゼリアのドリンクバーでコーラにライムを混ぜちゃった感”を覚えた)

ペプシ新商品:bubly

bubly pepsi sparkling water (写真はペプシ公式サイトより転載) ターゲット:ミレニアルを中心とした遊び心溢れる体験を求める人 フレーバー:ライム、グレープフルーツ、ストロベリー、レモン、オレンジ、アップル、マンゴー、チェリー デザイン:明るくてポップな配色。複数のデザインの笑顔マークが缶に描かれ、開け口や缶自体に遊び心のあるメッセージがあしらわれている。 開発秘話:ペプシは”2025年までに健康志向が高まる消費者のニーズに応えるため、グローバルで展開する商品の最低でも3分の2は100キロカロリーもしくはそれ以下にする”ということを企業目標に挙げている。bublyはこの目標へ大きな期待を背負い、誕生した。 また甘味料は含まないけど風味にバラエティーを持たせることで、健康需要を満たし、なおかつ遊び心を書き立てている。健康・楽しさ・親近感のあるスバークリングウォーターブランドという新しい分野にチャンスを見出したのである。

コカコーラ VS ペプシ

どちらの新商品も炭酸系飲料ではあるものの、それぞれの看板商品と比較すると様々な点で変化が見られる(看板商品の対象はコカ・コーラとペプシ)。 ・ターゲット コカ・コーラやペプシは今やビッグブランドであり、そのターゲットは老若男女と言えるだろう。一方、Diet Cokeの新しい味とbublyは開発段階からミレニアルを強く意識し、プロモーションも行なっている。 ・ブランドアイデンティティ コカ・コーラもペプシも100年以上愛され続けているブランドであり、今更味に関するアピールをする必要がないので飲み物の枠を超えて、スポーツ大会等のスポンサーや社会奉仕活動、音楽業界とのコラボなど世界規模で露出をしている。一方、新商品は、ミレニアルを意識したブランド構築の様子が見られる。Diet Cokeの場合、プロモーションビデオにNetflixドラマで人気が出てきた女優を起用した。 これはハリウッド級のセレブを起用するよりは、ミレニアルがより親近感を感じるとされるアイコンを選択したと見られる。また、ビデオの中で「人生短いので(健康的な飲み物とは言えないけど)なんだかんだ飲む!」といったようなある種、開き直りとも取れる正直なメッセージングをしたり、別のビデオでは実際にミレニアルに飲んでもらって正直な感想が取り上げられている。をビデオにしてプロモーションしている。 一方bublyは第90回オスカー授賞式の放送中の30秒のテレビコマーシャル枠で華々しくデビューを飾った。ビデオはポップな仕上がりで、こちらもテレビドラマで人気となっている俳優を起用したGIFアニメもあり、ジョーク混じりの楽しいブランドを演出している。 ちなみにどちらも起用したタレントが映画俳優ではなくテレビドラマで浸透した人であるという部分は、ネームバリューよりも親近感を意識した結果とも思われる。 [embed]https://youtu.be/zVlfWLO-cjM[/embed] ・商品デザイン コカ・コーラやペプシは赤、青、白といった色やロゴを長年にわたり定着差せてきた。もはやそのデザインはシンボルともなっているため、大幅変更の必要もなければ、そうすることはリスクともなる。一方、両社の新商品は浸透しきっているブランドの色・姿かたちからはどちらかというと離れ、どのような感情をもたらせたいかを中心にデザインされたと言える。 スタイリッシュな缶や遊び心、様々な味のラインナップを表す配色でいろんな味に挑戦する冒険を促している。新商品はターゲット(ミレニアル)にどのような感情になって欲しいか、醸し出したい雰囲気を中心によりデザインされているのではないだろうか。

ウィスコンシン州出身、LaCroix(ラクロワ)の台頭と人気の理由

コカコーラとペプシが、新商品に託した狙い・特徴をみると、彼らが意識していると思われる新興ブランドの存在が見えてくる。それはウィスコンシン州生まれのLaCroix(ラクロワ)という飲料ブランドである。

ラクロワとは?

ラクロワは1981年創業のスパークリングウォーターに特化したブランドで、1990年代は打倒ペリエを掲げ、ペリエとは異なるターゲットで独自のブランディング施策を行なってきた。その後、ナショナルビバレッジコーポレーションに買収され、同社の売上は、2010年から2015年の間に6500万ドルから2億2600万ドルまで増加し、2倍以上の利益を上げている

ラクロワが受け入れられた3つの理由

ではなぜ100年以上も多くの人に愛され続けているコカ・コーラやペプシがラクロワをベンチマークするまでになったのか。ラクロワの成功の背景には、アメリカの食に対する意識・生活習慣の変化や消費者(特にミレニアル)が好むもの、ブランドを巻き込んだ環境の構築が絡んでいるようである。

1. アメリカで起きている健康志向の高まり

アメリカ全土で起きている健康志向の上昇が大きく影響したことは明らかである。肥満や生活習慣病といった深刻な問題に対して、現在ニューヨークやシカゴをはじめとする都市ではソーダなどの炭酸飲料を制限する規則の制定が計画されている。 実際、ソーダやカロリーゼロのソーダなどの炭酸飲料の売上はここ12年連続で減少し、一方でボトルウォーターの売上は急上昇しているのである。この健康志向ブームが、砂糖や人工甘味料を一切使わないラクロワにとっても追い風となったのでは。 stat (グラフはNYタイムズより転載)

2. エンゲージメントを中心としたオンラインマーケティングに集中

『ミレニアル世代に効果的なブランド構築方法』でも述べているように、ミレニアルは広告の美辞麗句に敏感で疑い深く、Authenticity(信頼性)を大切にする傾向にある。この点においては、ラクロワはどちらもクリアしたといえるだろう。なぜならラクロワはトラディショナルマーケティングと言われるテレビやプリント広告を一切使わず、インスタグラムを中心としたオンラインマーケティングを重要視したからだ。 具体的には影響力のあるブロガーやフィットネス業界のアイコン的人物にラクロワを飲んでもらい、SNSでポストしてもらうことに投資したのである。テレビや雑誌などのマスメディアでは宣伝されていないため、ミレニアルがインスタグラムやインフルエンサーのポストを通してラクロワを発見した時には、まだ世に知られていないものを発見した!という高揚感と信頼感が湧き、同時にマイナーブランドの支持という特別感も生まれる。 これがさらにインフルエンサーを含む知り合いの間で広がっていくと自分もシェアしたいという感情に繋がっていくのではないだろうか。さらにシェアやポストを啓蒙する働きかけとして、ラクロワはハッシュタグを使った。ラクロワ独自のハッシュタグでフォロワーにラクロワ好きを自由に表現してもらい、ラクロワ自身がリポストするだけでなく、健康意識の高い人たちの中でよく使われているハッシュタグなどとも絡めたエンゲージメントを続けた。 とにかく定番の広告媒体という表玄関ではなく、じわじわとオンラインで根ざし、ユーザーに寄り添って広まっていったのである。 lacroix (写真はラクロワインスタグラムより転載)

3. ユーザーと一緒に作り上げるブランド構築手法

ユーザー(主にミレニアル)とのエンゲージメントに妥協がなかったラクロワだが、このエンゲージメントはブランディング形成にも一役買っている。ラクロワは終始”イケてる”ブランドとしてユーザーと一緒にブランドを作ってきた。時にはユーザーが有機的にコンテンツを作り、広がっていったものさえもある。その結果、ラクロワというもの自体だけでなく、ラクロワを飲むということがステータスシンボルにさえなっているのである。 実際に、ラクロワは”イケてる”ブランドになるべく、カリフォルニア州で毎年行われる音楽イベントのコーチェラのパーティーに商品を出展。同イベントには毎回多くのアーティストやセレブ、モデル、インフルエンサーが集まる。このイベントは音楽だけでなく”ボホチック”と呼ばれるファッションにも注目が集まり、まさに”イケてる”人のみぞ集まるお祭りなのである。このイベントで、ラクロワはインフルエンサーを雇い、彼らがソーシャルメディアにポストする写真に商品をさりげなく写してもらうことを行った。 結果、このインフルエンサーたちは自分たちを”Sparkle Squad”(スパークル軍団)と称して盛り上がり、ラクロワのソーシャルメディアフォロワーは10万人以上増えたという。また、”LaCroix over boys”(男子よりラクロワを選ぶ!)と書かれたTシャツがバズになるになるあたりも、ラクロワがイケてる女子から好かれていることがわかる。 lacroix-tshirt (写真はラクロワインスタグラムより引用) ラクロワのネオンの缶はソーシャルメディア映えし、多くのファンがラクロワと一緒に映るポストを見る。それに加えて、ポートランドやサンフランシスコといったアートやデザインの感度の高いエリアで活躍しているアーティストがアート作品としてラクロワを使っていることも、さらにファンのロイヤリティを助長したと考えられる。 サンフランシスコで人気が出ているストリートアーティストfnnchは、ミレニアルズ版アンディーウォーホルのキャンベルスープ缶とも称された、ラクロワを扱ったアート作品を手がけた。彼のような作品が、ラクロワとそれを取り巻く魅力的でおしゃれなも空間のイメージを作り出し、ファンもアーティスティックなポストをしたり、まるで自分もそのデザインの中に入ると思わせる”イケてる”環境を作ってきたと言えるのではないだろうか。 andy (写真はこちらのサイトより転載)

まとめ

今回アメリカの炭酸飲料業界で起きている変革について紹介させていただいた。ブランドが生き残っていくためには健康志向という表面的な流れだけを掴むのではなく、魅力的な体験が何なのか、感情レベルで察知していく必要があることをおわかり頂けたと思う。 特にミレニアルから支持されるブランドになるには、健康的な飲み物であるという事実だけでなく、それを飲むことで”イケてる”体験を創造できるパッケージを提供していかなくてはいけないということがラクロワの成功事例からわかった。 大手なのかどうかは、特にミレニアルにとっては魅力とはならない。大事なのはそのブランドを通して消費者がどんな体験をするか、そしてそれをイメージできるように伝えていくことである。そのためにはエンゲージメントの量や質を高め、ブランドをユーザーと作るというスタンスで一度ブランディング・マーケティング戦略を見直してみてはいかがだろうか。 参考: Diet Coke's new cans and flavors are Millennial-friendly Bottled Water Continues to Take the Fizz Out of Diet Soda How LaCroix Bear Coke and Pepsi in the Sparkling Water Wars Here's Why It Feels Like You're the Only Millennial Not Drinking La Croix Why LaCriox sparking water is suddenly everywhere MERIDIAN ASSOCIATES INC. Summary List LaCroix Uses This Brilliant Tactic to Win Over Millennials by the Droves Have we reached peak sparkling water? La Croix launches boozy new cocktail menu Sales are exploding for a little-known soda brand with a cult following These ‘9 Cans of LaCroix’ paintings are Warhol’s ‘soup cans for millennials’