「刺さるリリース」を書くために必要なたった2つのこと~インプレスの安田英久氏に聞きました

刺さるリリースを書くために必要なたった2つのこと

「刺さるリリース」「響くリリース」って、どうしたら書けるの?

リリースの書き方は覚えたけれど、いまひとつ何かが足りない。目につきやすいリリースとの違いはいったい何だろう?

初心者からステップアップするためには何が必要なのか。「Web担当者Forum」編集長の安田英久氏に伺いました。

お話を伺った方
安田 英久氏(株式会社インプレス Web担当者Forum編集長、ネットショップ担当者フォーラム編集統括)

リリースの「守破離」

──出版とWebメディアに長年携わっている安田さんに今回お聞きしたいのは、基本的なリリースの書き方は覚えたけれど、それだとまだ凡庸でパッとしない、キラリと光るポイントが作れない。そういった壁を感じている広報担当者に、何かブレイクスルーのアドバイスをいただけないかと思いまして。

安田(以下敬称略):けっこう無理言うなぁ(笑)

──すみません(笑)

安田:どんな仕事でも同じなんですけれども、スキルというのは必ず「守破離」という段階を経て磨かれていく。お手本通りにリリースを書くのは、基本を守っている「守」の段階ですよね。

そこから基本の型を破って、自分のオリジナルの技にしていくのが「破」と「離」なわけですが、ブレイクスルーで「守」から「破」にステップアップするにはどうすればいいか?

それには、次の2つのことを明確にする必要があります。

「ゴール」と「ターゲットセグメント」

──2つのこと。それはなんでしょうか?

安田:「ゴール」と「ターゲットセグメント」の2つです。

リリースのお手本というのは、どんな要素をどんな順番でどう書くかは示していますが、あくまでも一般論なんですよね。「守破離」の「守」から「破」に行くということは、このお手本どおりではなく、「そのリリースのネタに最適な伝え方」に変えていくということ。

では、何をもとにやり方を変えたらいいのかを考えていくときに大切なのが、「ゴール」と「ターゲットセグメント」の2つなんです。

まず、ゴールというのは「どうなったら成功と見なすのか」、また逆に「どうならなかったら失敗と見なすのか」ということです。

何のためにリリースを出すのか?という質問をすると、多くの人は「記者に取り上げてもらって記事にしてもらうため」と答えると思います。

でも、記事にしてもらったらそれでOKなんでしょうか。記事になった後はどうなればいいのか? 記事を見た人にどういう行動を取ってほしいのか?

「誰に」動いて欲しいのか?

──記事になった後に何が起きてほしいかまで考える。

安田:メディアに載ることがゴールではないですからね。それによってどんな効果を出したいかがあるはずですよね。

たとえば、「記事を見てくれた人に自社の製品やサービスを買ってもらうこと」をゴールにしたとします。でも、ビジネスってそんなに単純ではなくて、エンドユーザーの手に渡るまでに、いくつか段階があるわけです。

そこで、もう1つの「ターゲットセグメント」が重要になってきます。「誰に、そのゴールを達成してもらうのか?」という問いがセットになっていないと意味がないんです。

たとえば、BtoCの一般消費財で考えてみましょう。わかりやすい例で言うと、日用品などはスーパーの店頭で手に取ってもらうのが一般的ですよね。じゃあ、自社の商品を仕入れているのは誰なのか、スーパーの棚に並べているのは誰で、その人はどういう考え方で棚に並べる商品を選んでいるのか? どうやったら棚の良い場所に置いてもらえるのか?

「そんなの営業や販促の仕事だから、広報ではわからない」じゃなくて、たくさん棚に並べてもらうことで売り上げを伸ばしたい場合は、スーパーなどのマーチャンダイジングの担当者が見て「コレいいかも!」と思ってくれる文章をリリースに入れ込むことで、狙ったゴールを達成できるかもしれない。

すると先ほどの「誰に」は、「小売業のマーチャンダイジングの担当者」ということになります。

相手のニーズに刺さるコミュニケーションとは?

株式会社インプレス 安田 英久氏

株式会社インプレス 安田 英久氏

──ゴールを達成するために動かしたい相手を、より具体的に絞るわけですね。

安田:ターゲットセグメントというと、多くの人が「女性、20代」といったデモグラフィックなターゲティングを考えると思います。もちろん、そういう属性的なことも大切ですが、たとえば20代の女性でも、独身か子どもを持つ母親かで生活上の課題やニーズは違います。さらに母親でも専業主婦か働いているかでまた違う。

マーケティングの基本は、ターゲットを明確にして、そのターゲットのニーズ──わかりやすく言うと、欲求、願望、不安、不満、困ったなど──を把握して、そこに刺すコミュニケーションを作っていくことです。それは我々がコンテンツを作るときも、企業がリリースを書くときも同じはずです。

ターゲットが具体的にどんなことに困っているのか? それがどうなったらうれしいのか? といったことを明確にしていくと、「守破離」の「破」に向う考え方が見えてくるのではないでしょうか。

──「刺さるリリース」を書くには、ターゲットが置かれたシチュエーションや意思決定の動きをより具体的にイメージすればいいということですね。

安田:そうですね。ただし、そのとき忘れてはいけないのが、ターゲットはあくまでも「ゴール」を達成するために動いて欲しい「誰か」だということです。

ゴールを達成するには、リリースを通じてコミュニケーションをして人を動かさなければいけない。人を動かすには、相手にとって良いもの、相手が動く気になる情報を伝えなければ動いてくれない。

では、どういう情報を伝えたら相手は動いてくれるのか?

それには、相手が気にしていること、その人が困っていること、悩んでいることにスポットを当てればいい。そのニーズを明確にするためにターゲットセグメントを明確にするんです。

ユーザーはなぜ自社商品にお金を払ってくれるのか?

──ゴールを達成するために、誰にどのように動いてもらいたいか? そこをリサーチして明確にしていけば、ブレイクスルーできるわけですね。

安田:相手が動く気になってくれる情報というのは、企業や商品、サービスによっていろいろあると思います。自社の商品を買ってくれる人は、なぜそれにお金を払ってくれるのか? それを把握していったら、自社のニュースネタはいろいろ掘り起こせるはずです。

たとえば、その会社には150年の歴史があって、その実績を信用してもらっているからビジネスが成り立っているのだとしたら、広報の仕事としてその信頼をさらに厚くするために、自社の歴史にまつわるエピソードを掘り起こすことがプラスになるかもしれない。

社内の製品開発の人たちが優秀で、その人たちのモチベーションが上がることで売り上げが伸びる製品につながるのなら、開発者にスポットを当てた情報発信をすることが結果として売上を高めることになるかもしれない。

──そのように商流や情報の流れやお金の流れを具体的にイメージすることで、広報の情報発信の幅が広がっていく、と。

安田:営業や商品開発の人たちは、日々そうしたことをやっているわけです。広報の仕事のベースも同じということです。

……とはいえ。

──とはいえ?

ゴールとターゲットセグメントを明確にして、狙う人たちに「刺さるリリース」を自分なりに作れたとしても、リリースですからやはり記者に記事として取り上げてもらったり、番組で使ってもらわなければ情報を広く拡散することは難しい。

記者が「タイトル」を見るのは2秒以下

──そうですね。

安田:そのときに大事なことが、大きく2つあります。「タイトル」と「リード」です。そこがダメなら、どんなに中身が良くできていても、記者は見てくれません。

基本的に、記者って忙しいんです。想像以上に忙しいから、個々の情報にそれほど手間をかけてくれないんですよ。

昔は、リリースはファックスか郵送で届いたので、パッと見たら全体像が見えて、写真も目に入りました。でも、今はほとんどがメールで届きます。

メールでリリースを受け取る記者が、どんな環境でそれらを目にしているのかイメージしてみてください。

最初に目に入るのは、メールの一覧ですよね。少なくともそこには本文は出ていません。画像も出ていません。昔と違って、本文も写真もまったく目に入らないんです。

しかもメール配信になってから届く量が爆発的に増えて、1日500~600通は来ています。そのうち9割は、自分が携わっているメディアとは関係ない情報です。

すると、どうなるか。1日に500通チェックするとして、1通あたり10秒かけたら全部確認するのに83分かかります。

株式会社インプレス 安田 英久氏

──そんなに時間はかけませんよね。

安田:はい。1通2秒なら16分で済みます。まぁ、そのくらいが妥当ですね。

我々はどうやって見ているかというと、タイトルだけザーッと見て、「ん?」と思ったものは30秒かけて本文を見る。さらに「これはどうだろう?」と思ったら10分かけて調べる。そんな感じです。

ですから、サブジェクトで「ん?」と思わせるには、先頭の20文字でその媒体にとって有益な情報であることがわかるようにする必要があります。それだけで見てもらえる確率が上がります。

「リード」というのは、全体の要点をまとめた冒頭の文章です。30秒かけてチェックするときに最初に見る部分。ここに「平素より大変お世話になっております」なんていうご挨拶はいりません。端的に、要点を伝えてくれればいい。

その上で、中身は先ほど言ったように、ターゲットセグメントの人に響く内容で、かつそのメディアの特性にマッチしていればゴールは達成できるのではないでしょうか。

もっと言うと、リリースが「どんな人にどんな価値を提供する内容か」がわかりやすく作られていれば、記者もどう伝えるといいのかをイメージしやすくなっていいですしね。

SNSでシェアされる文字列にも配慮を

──メールのサブジェクトの部分が、リリースの「タイトル」に当たるわけですね。

安田:イメージとしては、本屋さんの棚に大量の書籍が並んでいる中で、背表紙のタイトルだけで手に取ってもらうにはどうしたらいいか? そのくらいタイトルはよく考えたほうがいい。

また、タイトルを考えるに当たっては、メディアの記者に見てもらうためのタイトルのほかに、ソーシャルメディアでシェアされるためのタイトルという考え方もあります。たとえば、TwitterやFacebookでシェアしたときに、タイムラインにどんな文字列が表示されるか。

このときも、タイトルとリードだけで内容がわかってシェアしたくなるくらいわかりやすいほうがいい。特に若い人にシェアしてもらいたいなら、本文を読み込まなくてもパッと内容がわかることが大切です。

ソーシャルメディアの拡散でもう一つ考えたいのが、ユーザーがどういうコメントをつけてシェアするかをイメージすることです。

「すごーい!」「待ってました!」なのか。

「いや、ちょっと待てw」といったツッコミ系のコメントなのか。

「○○ちゃんに教えてあげよう」なのか。

それによって、書くときの文体や情報の味付けが変わってくると思います。

もちろん、ソーシャルメディアでも最初に言った「ゴール」と「ターゲットセグメント」の2つを明確にするのは変わりません。というより、コミュニケーションの基本は何でも一緒なんです。相手が何を気にしていて、どうなれば喜ぶのかですね。

これを押さえておけば、実は社内コミュニケーションにも使えます。

相手に「刺さる」=「効くコミュニケーション」

──社内コミュニケーションにも?

安田:自分が求めるゴールを達成するために、事業部や経営層に納得してもらって動いてもらわなければいけないことって、多々ありますよね。でも、なかなか思ったように動いてくれない。

そういうときも、「相手が一番気にしているのは何か、何を理解できるのか、何をよくわかってないのか」を考え、それを中心にコミュニケーションを考えます。

たとえば、相手が売上ベースで物事を考えている人だったとします。そういう人にPVやコンバージョンの話をしても通じません。そういう場合は「売上」という共通のテーマでコミュニケーションするのが大切です。

そうやって「効くコミュニケーション」を身につけていくことで、リリースの質は上がるし、仕事自体がどんどん面白くなっていくんですよ。

──「ゴール」と「ターゲットセグメント」を明確にすることが、リリースの質を高めるだけでなく、ソーシャルメディアでのコミュニケーションや社内コミュニケーションにも役立つというお話、大変ためになりました。

貴重なお話をありがとうございました!

株式会社インプレス 安田 英久氏

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ネットで話題になるユニークなニュースを仕掛けるアイデアとは?~「品川経済新聞」「和歌山経済新聞」などを手掛ける有限会社ノオトの宮脇氏に聞きました

Interview_note

Webメディアに記事にしてもらうには?というPR担当者の声に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材するメディアインタビュー第4回。

今回は、「品川経済新聞」「和歌山経済新聞」の2つのエリア媒体を運営する有限会社ノオトの宮脇 淳氏にお話を伺いました。エリア媒体ならではのニュースの集め方、ヤフトピ掲載を意識した画像とタイトル作りなどネットで話題になるニュースの仕掛け方のコツから、ソーシャルメディアでファンを増やす方法まで幅広いアドバイスが聞けました。

お話を伺った方

有限会社ノオト 代表取締役 宮脇 淳氏

毎週5本の記事ネタはみんなで足で探す

──「品川経済新聞」や「和歌山経済新聞」のようなネットのエリア媒体では、どのように地域のニュースを集めているのでしょうか?

宮脇(以下、敬称略):基本的には足で探しています。街を歩いて、建物や店舗の入れ替わりのような変化を探す感じで。他に、Twitterで誰かが今品川駅でこんなイベントをやっているとツイートしているのを見かけて、面白そうなら取材に行ったりもしています。

品川エリアのホテルや商業施設で開催されるイベントは、プレスリリースで情報をキャッチすることも多いですね。でも、そのまま記事にするのではなく、何かしらユニークなポイントを見つけて取材記事に仕上げるようにしています。

「和歌山経済新聞」は品川と違って、地方なのでプレスリリースはほぼ来ません。ですので、編集スタッフが自分たちで歩き回って探したり、知り合いが独立して新しいお店をオープンするとか、シャッター商店街を利用してみんなで綱引き大会を開催するとか、そういうローカルな記事を口コミで得たりして記事にしています。

──記事はどのくらいの頻度で更新していますか?

宮脇:どちらも月曜から金曜まで、平日は毎日1本ずつ記事を上げています。新聞としては、それほど頻度は高くないんですけれど。

──平日毎日となると、ネタ探しは大変そうですね。

宮脇:本当に大変です(笑)。「品川経済新聞」はノオトの若手編集スタッフがネタ探しから記事の執筆、更新まで行っていますが、「和歌山経済新聞」の場合は、和歌山にあるコワーキングスペースの会員さんたちが情報を集めてくれて、毎週1回みんなで持ち寄ったネタをホワイトボードに書きながら編集会議を開いています。みなさん本業は別にあって、ボランティアで記者として活動しています。まあ、私もボランティア編集長なんですけどね。もう3年近く継続しているので、創刊当初から書いている記者の実力はかなりついてきていますね。

記事はYahoo!ニュースにも掲載

──今、地方の自治体や企業でも、ネットで情報発信を積極的に行おうという気運が高まっています。そうした流れの中で「みんなの経済新聞ネットワーク」のようなエリア媒体はとても興味深い存在だと思います。実際に「品川経済新聞」や「和歌山経済新聞」は、どういう人たちにどのくらい読まれているのでしょうか?

宮脇:実は我々もよくわかっていないんですよね(笑)。そう言うと、「じゃあ、なんでやってるんですか?」とよく聞かれるんですけれど……。

──なぜ、やっているのでしょうか?(笑)

宮脇:「品川経済新聞」は、私が東京で会社を興して、今年でちょうど12年になりますが、たまたま品川エリアにいいオフィスを見つけて品川が拠点になったから始めたんです。

和歌山は私の出身地で、妻子が和歌山に住むことになってしばらく東京との2拠点生活を送っていたとき、ちょうど地元のコワーキングスペースに集まっている人たちと親しくなったので立ち上げました。3年前ぐらいです。

当時、和歌山ではネットでの情報発信メディアがほとんどなかったんですよ。せっかくいろいろなコンテンツがあるのにもったいないと思いまして。そういう話をしたら、情報発信で地元を盛り上げたいと言う人たちが他にもたくさんいて、協力者が集まってくれた。

みんなの経済新聞ネットワーク」はYahoo!ニュース提供社のひとつなので、記事を上げるとYahoo!ニュースに配信されるようになっています。地元の人たちにとってYahoo!ニュースに記事が出るのはNHKに取り上げられたぐらいのインパクトがあって、みんなものすごく喜んでくれるんですよ。だから完全に地元への善意だけでやっているメディアです。

「ヤフトピを取れるか?」は企画アイデア次第

有限会社ノオト 代表取締役 宮脇 淳氏

有限会社ノオト 代表取締役 宮脇 淳氏

──「品川経済新聞」や「和歌山経済新聞」で取り上げるニュースの選定基準について教えてください。

宮脇:絵作りができるかを、まず基本的には判断します。

例えばプレスリリースは他の媒体も見ているので、同じ内容をそのまま記事に書き起こして出すことに価値を見出しにくい。ですからプレスリリースの情報をベースに、うちはこういう切り口で取材できるかな、という何かしらのひねりや付け足しが思い浮かべば記事にしやすいですね。ニュースに“花を添える”と言いますか。本来、それは編集者が考えるべきことではありますが、そういったプラスアルファの報道がしやすいリリースの中身になっているといいのかなと思います。デキるPRの人は、そういう仕込みが上手ですよね。

──やはり絵作りは重要なんですね。

宮脇:エリア媒体でも他のメディアでも、ニュースを探すときはヤフトピを取れるくらいのインパクトがあるかどうかを常に意識していますから。

──ヤフトピに載るくらい大きなニュースですか?

宮脇:大きいというより、アイデアです。記事にしたときに目を引く絵が作れるかというのと、もう一つはタイトルで文字のインパクトが出せるかどうか。

例えば、和歌山県に三段壁(さんだんべき)という波に侵食された断崖絶壁があって、地元では有名な自殺の名所でもあるんですが、今年の10月にそこで高飛び込みの世界大会が開催されるんです(笑)。そういうイベント告知がプレスリリースで送られてくると、絵も浮かぶし、インパクトありますよね。自殺の名所で飛び込み大会をして安全なの? みたいな疑問はみんな当然気になるから取材要素になる。いかにも「火曜サスペンス」のクライマックスシーンに出てきそうな崖から参加者が飛び込む瞬間をカメラで押さえたら、Yahoo!の写真ニュースに来そうだな、とか。

そんなふうに絵柄と取材内容がパッと浮かぶ企画モノの情報が入ってくると、メディアは食いつきやすいんです。もちろん、あまりヤラセの臭いがするとダメですけれど、“ニュースを作る”という概念はもっとあっていいと思います。

「誰もやっていない」「珍しい」要素をプラスする

──自殺の名所というネガティブ要素を、楽しいイベントで逆手に取る発想が面白いですね。

宮脇:ネガティブな要素をポジティブに塗り替えてしまうPR発想は、最近手法として多いじゃないですか。

たとえば、青森県が平均寿命の短さを掲げて「短命県体験ツアー」を企画したり。そういうのはネタになりやすい。

中には、そういうふざけたPRを嫌がる担当者も当然います。ですが、誰にも見られないよりは100倍マシだと私は思っているので。自虐の入ったPRは匙加減とセンスの問題だと思います。

──自虐でなくても、何かしらユニークな要素を盛り込めれば面白くできそうですよね。

宮脇:まだ誰もやっていないとか、こういうのは珍しいんじゃないかという要素を積極的に取り入れて、それをニュース化するとメディアは取り上げやすいと思います。

地元向けの記事が全国に広まることも

──そうした記事作りをする中で、エリア媒体の小さな記事が全国に広まった事例はありますか?

宮脇:エリア媒体は基本的に地元の人に響く記事作りを心掛けていますが、それが結果的に全国にも広まることはあります。最近もありました。

和歌山県には日本で初めて抹茶のアイスクリームを作ったと言われている玉林園という会社があって、そこが抹茶を使ったコンビニスイーツを共同開発したんです。県内で大人気なので取材したところ、通常のスイーツの10倍の個数が毎日完売になり、あまりの人気で店長はまだ味見すらできていないという話が聞けまして。「和歌山・玉林園の「グリーンソフト」がコンビニスイーツに 店長はまだ食べられず」というタイトルで記事を出しました。出したときは地元の人にしかウケないと思っていたんですよ。東京の人が見ても、おそらく何のことかわからないだろうと。それがたまたま全国の人が読んでも面白いと思ってもらえたようで。そういうケースもありますね。

記事へのエンゲージメントを上げる工夫

──基本的には地元の人に響く記事を書いているわけですね。

宮脇:「品川経済新聞」は東京のメディアということもあって、多少ネットを意識した記事作りをしてはいます。

例えば、有限会社ノオトが2016年7月に「コワーキングスナック」をオープンしまして、そのボトルキープチケットをイベントチケットの販売サイト「Peatix」で売ってみたんです。手数料もかかるのになぜわざわざPeatixを使ったかというと、たぶん誰もやったことがないと思ったから。

そうやって人々が「えっ!?」と思うようなフックになる要素を加えると、「コワーキング“スナック”ってなんだよ」とか「わざわざPeatixで売るのかよw」といったツッコミが入ったりする。都心部の人たちはこういうちょっとしたところをよく見ています。ただ、和歌山で「Peatix」と言っても、なかなか地元のみなさんには伝わりづらいと思います(笑)。

コワーキングスナック

有限会社ノオトが2016年7月にオープンした「コワーキングスナック」

──企画を工夫することで、記事に対するエンゲージメントが得られるわけですね。そのようにニュースを面白く書くコツはありますか?

宮脇:これを言うと身も蓋もないんですけれども、結局、面白くないことはどんなリリースを打ったって面白くないんですよ。本当にもう、残念ながら。だったら、もともと面白くないことをどうやって面白くするのかということを考えるのが、編集者やPR担当の仕事だと思うんです。

──書き方の問題というより、元のファクトを工夫するということですね。

宮脇:もう数年前の話ですが、iPadが日本に初上陸したとき、一足先に輸入品を仕入れて十数万円で先行販売しようとした中古PCショップがあったんです。日本発売の1カ月ぐらい前に。当時iPadは大注目されていたので、店の経営者は「iPad先行販売!」と宣伝するだけで売れるだろうと思ったら、2週間過ぎてもまったく売れない。

そこで、仕入れたiPadを1台開封して、「iPadおさわりできます。3分間100円」というふうに店頭に飾ってニュース記事にしたら、途端に客が大勢訪れて2日間ほどで仕入れた十数台が完売した事例がありました。少し待てば数万円で買えるiPadが十数万円で売れちゃったわけです。

さらに、iPad上陸前夜だったこともあって、この店にラジオやテレビ番組の取材が殺到しました。お店にとってはいいPRですよね。 このケースでは「おさわり」というキーワードと、「金取るのかよ!」というツッコミどころにネット民が反応したわけですが、ニュースの元となるファクトを工夫するというのはこういうことだと思います。

(元記事:「武蔵小山の中古PC店、iPadを輸入販売-3分100円でおさわりも」)

楽しい気持ちを共有して生活者とつながる

──企業や自治体の中にいると、PR施策でツッコミどころを作るのが難しい空気もありそうです。

宮脇:そうなんですよね、たぶん。でも企業の中にいる真面目そうだったり偉そうだったりする部長でも、お酒を飲みに行くとけっこうふざけて冗談言ったりするじゃないですか。本当はみんな楽しいことが好きで、面白い情報を見つけたら笑って手を叩いて喜ぶんですよ。そういう出来事を世の中に広めていけばいい。

真面目ぶって外面を良く見せようとして、楽しい気持ちに蓋をしてしまったら、生活者の気持ちとつながることはできません。世の中には、もうちょっとひねれば面白くなるニュースってたくさんあると思いますよ。

──ニュースを楽しい情報や出来事にして発信する、と。

宮脇:今のパブリックリレーションズの大部分はメディアリレーションズで、いかにメディアに取り上げられるかを課題にするPR担当の方が多いですよね。けれど、メディアを通さずに企業の誠実さや真面目さを生活者に直接伝えられるTwitterやFacebookのようなツールが充実しているので、メディアにこだわる必要はないと思うんですよね。ということをメディア側の人間が言うのもどうかと思いますが(笑)

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企業ニュースのユニークポイントをメディアはどう見つける?~「ITmedia ニュース」編集部に聞きました

Interview_ITmedia

「Webメディアに記事にしてもらうには?」というPR担当者の疑問に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材するメディアインタビューの第3回。

今回は、IT分野のトレンドをいち早く伝える「ITmedia ニュース」編集長の本宮 学氏と、編集記者の片渕 陽平氏にお話を伺いました。

お話を伺った方

ITmedia ニュース
編集長 本宮 学氏
編集記者 片渕 陽平氏

一日に届くリリースは600通以上

──企業からのプレスリリースは、編集部にどのように届いていますか?

本宮(以下、敬称略):アイティメディア株式会社には、プレスリリース受付専用のメールアドレスが複数あります。IT総合情報ポータル「ITmedia」に属しているメディア宛てのほか、ネット上の旬な情報を幅広く扱う「ねとらぼ」宛てやITエキスパートのための技術情報メディア「@IT」など窓口は10ほどあります。(※)毎日プレスリリースが届く量は膨大で、600、700通ぐらい。多い日はもっと来ます。

片渕:多いときは1000通以上届くかな、というくらいですね。

本宮:その多くはニューズ・ツー・ユーさんのようなリリース配信サービス経由で届いたもので、企業から直接送られてくるものもあります。

我々の媒体は「ITmedia ニュース」という名前の通り速報媒体ですので、情報をいかに早くキャッチして記事を出せるかを媒体価値の1つに置いています。プレスリリースはそのための良い情報ソースの1つではありますね。

──1日数百通もの膨大なプレスリリースの中から、記事にする情報をどのように拾い上げているのでしょうか。

片渕:スピードが求められるので、選定に何十分もかけられるわけではありません。メールのタイトルをざっと見て媒体に合いそうなものをピックアップし、さらにメールの中身を見て記事の形に落としこめるかを検討するという2段階でセレクトしています。

──毎日リリースをチェックする時間は決めていますか?

片渕:入社して最初の頃は、意図的にプレスリリースをチェックする時間を作っていましたが、慣れてきてからは空き時間に目を通す感じです。

本宮:私も空き時間ですね。よく「いつ送ったら拾われやすいですか?」とか、「どういうタイトルにしたら目につきやすいですか?」という質問を受けますが、あまり関係ないと思っています。

重要なのは、単純に情報の中身と媒体に親和性があるかどうか。我々のような専門媒体にとって、毎日膨大に届くリリースの多くは自分たちの領域以外のもの、悪く言えばノイズです。ニュースソースはプレスリリースだけではありませんし、世の中のあらゆる事象に目を配っている中で、記事にするネタを探すのは砂の中から砂金を見つけるようなものです。

明確なメディアポリシーに照らし合わせて情報を取捨選択

──情報の中身と媒体の親和性については、具体的にどのように判断されるのでしょうか。

ITmedia ニュース 編集長 本宮 学氏

ITmedia ニュース 編集長 本宮 学氏

本宮:ITmedia ニュースは、「テクノロジーで世の中が変わっていく」という視点でITやインターネットのさまざまなニュースを伝え、ITへのさらなる関心や期待をもたらすことを目指してメディアを運営しています。

ITを取り巻く状況はものすごいスピードで変化していて、何をニュースとして取り上げるべきかは日単位や時間単位で刻々と変わります。その中で我々は、今このタイミングでどういう情報をどのような切り口で伝えたら世の中にインパクトを与えられるか、ということを第一に考えています。

片渕:ですからニュースリリースを拝見して記事にするかを判断するときに、いま本宮が申し上げたメディアポリシーと照らし合わせて合致するかどうかを考えることが多いです。

──記事にする情報を選ぶときに、他媒体で取り上げられているかは考慮しますか?

本宮:それは実際に記事を書く記者にもよると思いますが、これだけネットメディアが多様化した中、毎回確実に一番乗りの記事を出し続けるのは難しいとも思います。SmartNewsやGunosyをはじめとするニュースアグリゲーションサービスもいくつもありますし。

ただ、それらのキュレーションメディアに拾われたからといって、世の中すべてに伝播するわけではありません。仮に一番乗りでなくても、我々は自分たちならではの切り口で読者に向けて記事を出す価値はあると思っています。ニュースソースは同じでも、どのようにバリュー付けするかで媒体による記事の差は出てくるはずです。

新たにオリジナル特集企画の取り組みをスタート

──ITmedia ニュースらしい切り口で勝負ということですね。

本宮:はい。とはいえ、プレスリリースの情報に基づくニュース記事ばかりだと媒体の独自色が薄くなってしまうので、そういった速報ニュースもきちんと伝えつつ、最近ではITmedia ニュースならではの取材記事やオリジナリティのある特集企画を増やす取り組みも強化しています。

──オリジナルの特集に力を入れ始めたんですね。どのような取り組みか、ぜひ聞かせてください。

本宮:私は今年4月に編集長になったのですが、ITmedia ニュースはこれまで速報主体の新聞メディア的な文化で運営されていました。今、そこに雑誌的なコンテンツ作りを取り入れる試みを始めていて、6月に第一弾の「スタートアップ特集」を公開しました。

──特集用のネタはどういったところから探してくるのですか?

本宮:特集テーマがそのまま切り口になっているので、今回で言うと「“未来IT”で世界を変える すごい国産スタートアップ」というタイトルに沿った情報を編集者や記者が各々集めてきます。

例えば、最近よく目にする「IoT」(Internet of Things)や「VR」(Virtual Reality)といった新しいITで世の中を変えようとしている日本のスタートアップに関するホットな情報があれば、届けていただけると編集部としても嬉しいですね。

片渕:そうですね。僕の場合は、リリースを見て伺った発表会で名刺交換した方から、関係者や企業を紹介していただき、取材をしながら繋がっていくことが多いです。リリースや名刺交換がなくても、アタックしたい企業にはこちらから声を掛けることもあります。

──過去のリリースが、しばらくしてから特集の取材のきっかけにつながったりもしているんですね。

本宮:過去にプレスリリースで面白い情報を出していた企業に電話して、最新情報をヒアリングすることはしばしばあります。

「面白そうだけどわからない」リリースが気になる!?

──「面白い情報」というのは、どういうところがフックになるのでしょうか?

本宮:媒体の特性や特集テーマに合った情報というのは大前提ですが、私個人としての感じ方で言うと、プレスリリースは内容が乏しいほうがワクワクするんですよ。

──内容が乏しいほうが!? どういうことですか?

本宮:内容がきちんとしていて、これを元にすれば誰でもある程度の記事が書けそうなリリースって、どこの媒体でも似たような記事になるじゃないですか。でも、情報が全然足りてないのになんだか面白そうなリリースだと「片渕君、これ電話してちょっと詳しく聞いてみようよ」となりますね(笑)

片渕:そういうこと、よくありますね(笑)

本宮:面白そうなのによくわからないと、そのわからないところを確認したくなるんですよ。だから、あえてちょっと足りないくらいの情報量にしてみるのも1つの方法としてアリじゃないかと思いますけどね。

プレスリリース未満の情報に意外な面白さが

──なるほど。わからないと知りたくなるというのはジャーナリストらしいですね(笑)

本宮:プレスリリースって基本的に書き方がきっちりしていますよね。でも、おそらくプレスリリース未満の小ネタ情報のほうが我々としては面白いんですよ。

我々がある情報を記事にするかしないか判断するのと同じように、企業でもどのような情報をプレスリリースにするか判断していると思いますが、その判断から漏れたような情報も見えるようにしたらきっと面白いのではないかと。

例えば、うちの社長は毎日セグウェイで出社しています、みたいな情報ってわざわざプレスリリースにはしませんよね。でも、メディアがそれを知ったら「なんでなの?」と聞いてみたくなるかもしれない。

片渕:そういう話題は、取材で広報の方とお話ししているときに出てくるんですよね。取材では、そういった余白から顔を覗かせるちょっとした話題が大事です。

ソーシャルメディアの情報発信にも注目

本宮:今はソーシャルメディアで気軽に情報発信できますし、我々もTwitterで見つけたトピックを取材して記事にすることも少なくありません。メディアに取り上げられるかどうかを問わず、ぜひ何らかの形で発信したほうがいいと思います。

片渕:Twitterはよくチェックしますね。企業アカウントに限らず一般のアカウントも含めて。

今は一般ユーザーの一人一人がメディアになれる時代で、スマホがあれば誰でもニュースを全世界に発信できる。NHKの記者が全国にいるのと同じように、Twitterのユーザーも一人一人が記者だと考えると、ものすごいメディアソースになると思うんです。

それぞれの人がリアルタイムで見聞きした情報を発信して、大勢の人が共感しているなら、それは十分ニュースとして成立している。ですので、TwitterやYouTubeなどの情報は特に注目しています。

──TwitterやYouTubeでの情報発信なら、ベンチャー企業や中小企業でもできることがたくさんありそうですね。

本宮:そうですね。例えば片渕がTwitter経由で取材をしたものに、新しく決まった五輪エンブレムのデザインを幾何学的に分析したツイートを報じた記事があります。これを企業が参考にするとしたら、世の中でそのとき話題になっている事柄に対して、その企業ならではの知見や技術で絡んでみるというのも1つの方法ではないでしょうか。

取材対象が個人アカウントだと記事にするに当たって裏取りや信頼性の担保にかなり気を遣いますが、企業や大学のアカウントならばある程度信頼を置けて、記事も書きやすいと思います。

電話取材のしやすさもカギに

──これまでのお話を聞いていて、とても基本的だけど案外見落としがちな点として、メディアからの連絡のしやすさも重要だと感じました。

ITmedia ニュース 編集記者 片渕 陽平氏

ITmedia ニュース 編集記者 片渕 陽平氏

片渕:面白そうな情報を発見してこちらから企業に連絡を取りたいときに、電話番号がなかなか見つからないケースはありますね。プレスリリースを見て一歩踏み込んだ取材をしたいときに、電話で直接お話を聞くのは非常に大事なことですので。連絡先の電話番号が見つからないとけっこう困ります。

本宮:企業サイトに電話番号が載っていないこともありますし、ベンチャー企業などの場合は固定電話がないこともあります。そうすると手間がかかりますね。メールで連絡してもいいのですが、それだといつ返事をいただけるかわからないので。

片渕:速報性を考えると、やはり早く連絡が取れるに越したことはないですし、電話なら分からないことはその場で聞き返すこともできます。メールだと何往復もやり取りする必要が出てしまいますので。それに電話で直接お話をうかがえば、先ほど申し上げたようなリリースに書いていない面白い小ネタも聞き出せますから。

本宮:プレスリリースにない追加情報のほうが、記事タイトルにしたときに人を引きつけるフックになることも多いですからね。

ユニークさは外部との視点のギャップによって見つかる

──プレスリリース未満のネタにも、そのように目を配っているんですね。

本宮:わけがわからないことって面白いじゃないですか。

我々は新しいトレンドや、まだ世の中にないものを発信していく専門メディアとしての視点を持っているので、新しい何かを生み出しているところに注目するんです。

新しい物事って、最初はだいたい他人が見ても何なのかよくわからないですよね。ですから、全ての人に理解されなくてもいいから何か新しさのエッセンスを感じさせるような情報の種があるといいなと思いますね。

──そういうニュースはどのように作って、メディアの方々に知ってもらえばいいのでしょう。

本宮:「作る」と言うと難しいですね。ナチュラルにやってほしいんです。

やり手のPRマンが練った“記者が食いつきやすい企画”に対して「据え膳食わぬは…」みたいに食いつくばかりというのも、ねえ。そういうものもけっして悪くはないですし、中には面白いものもありますが、どちらかというと企業が日々ナチュラルに情報発信している中で、我々から見たらそれ面白いじゃん! というネタを追わせていただいたほうが、媒体のオリジナリティにもつながりますし、かつ読者にとって有益な情報になるのではないかという思いがありますね。

──作為的にならないのが一番難しいですね(笑)

本宮:そうですよね。だからこそ、御社のようなプレスリリース配信サービスやPR代理店に期待するのは、クライアント企業とコミュニケーションして第三者的な視点でその企業のユニークさを見つけてもらうことです。

社内の人たちは普通だと思ってやっていることでも、第三者から見るとヘンで面白いことっていろいろあるじゃないですか。そういった情報を見つけて、完全な情報でなくてもいいので見えるところに出してくれたら、我々はそれを見つけに行きます。

ITmedia3

──外部から見たギャップによってユニークポイントは見つかる。おっしゃる通りですね。楽しいお話をありがとうございました!

取材したくなるリリースの特徴はなんですか?朝日新聞出版「dot.(ドット)」に聞きました

取材したくなるリリースの特徴はなんですか? ~朝日新聞出版「dot.(ドット)」に聞きました

取材したくなるリリースの特徴はなんですか? ~朝日新聞出版「dot.(ドット)」に聞きました

「Webメディアにニュースとして取り上げてもらうには?」というPR担当者の声に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材して効果的なメディアリレーションのあり方を探るメディアインタビュー。

2回目は、朝日新聞出版が運営するニュースサイト「dot.」のプロデューサー・北元 均氏と、記者&編集者の金子 哲士氏にお話を伺いました。

お話を伺った方
ニュースサイト「dot.」
プロデューサー 北元 均氏
記者&編集者 金子 哲士氏

スタッフは週刊誌や雑誌で活躍するベテラン揃い

──dot.でオリジナル記事を制作している編集者や記者の方は、何人ぐらいいらっしゃいますか?

北元(以下、敬称略):社内の編集者と外部スタッフの編集・ライターさん合わせて、だいたい10人ぐらいですね。人数は流動的ではありますが。

金子:ライターさんは私が『週刊朝日』編集部にいたときにお付き合いがあった方々や、専門分野の記事は、例えばサッカーならサッカージャーナリストの編集長レベルの方に書いていただいています。予算的に大人数を抱えられず、人員は少ないですが、いずれも実力のあるベテランの方々ばかりです。

──ベテランの方々も、プレスリリースから記事のネタを拾うことはあるのでしょうか?

金子:企画記事をつくるときの参考にはすごくしています。リリースの情報をそのまま記事にするのではなく、あるテーマで3本ぐらいのリリースに横串を通して記事化したり。

例えば季節のテーマで「お花見」の記事を書くときに、花見で使える新商品をいくつか集めて紹介するような形です。Webの記事は紙媒体と違って文章が長いと読んでもらいにくい傾向がありますが、グッズなどを3つぐらいポンポンポンと配置するとテンポがよくなって読みやすくなるので、そういった記事の作り方はわりと多いですね。

北元:製品発表会や記者会見などのリリースは、内容を見て取材モノとして成立すると思ったら、まずは記者に行ってもらいます。

ニュースサイト「dot.」 プロデューサー 北元均氏

ニュースサイト「dot.」 プロデューサー 北元 均氏

──dot.の編集部には毎日どのようにプレスリリースが届いていますか?

北元:ニューズ・ツー・ユーさんのようなリリース配信サービスから編集部のメールアドレスに送られてくるものと、編集部のFAXに流れてくるもの、郵送で届くもの。ほかに、名刺交換させていただいた方が直接個人宛に送ってくださることもあります。

金子:一度お会いした方だと、顔が浮かぶので目にとまりやすいですね。お電話いただいて、ご挨拶で一回お会いしてからメールで送っていただくこともけっこうあります。

──郵送のプレスリリースもまだありますか?

北元:今も必ず郵送で送ってこられる会社が2、3社あります。映画の試写状やイベント招待なども郵送が多い。でも、ほとんどはリリース配信サービス経由のメールで、1日に100通、200通という量ですね。

金子:そういう状況なので埋もれて見逃しているリリースも多いんですよねぇ。

タイトルは包装紙のようなもの。人目を引く工夫を

──その中でも思わず開いてしまうリリースは何が違うのでしょうか?

金子:タイトルが面白いかですね。リリースも記事と同じで見出しは大事ですよね、包装紙みたいなものですから。PR会社の方からよく同じ質問をされますが、全体的にタイトルが長すぎて何が言いたいのか一目で掴みにくいものが多いので、タイトルをもっと工夫されると良いのではと、いつもお話させていただいています。

──タイトルをつけるときのコツを教えていただけますか?

北元:記事につける見出しは、だいたい三十数文字ぐらいまでが一般的。リリースのタイトルも、Webやメールで見られることを考えれば同じくらいがいいと思います。メールはメーラーで見るので、デバイスや画面設定によって件名に表示される文字数は違いますが、それでもやはり三十数文字以上は読んでもらえないのではないでしょうか。

金子:タイトルは「短く、わかりやすく」が基本ですが、記事の場合は「全部言い切らない」という方法がよく使われます。見出しで全部言い切ってしまうと記事を見ずに満足されてしまうので、「何だろう?」と思って中身を確認したくなるタイトルを心掛ける。そういうのはニュースリリースにも応用できるのではないかと思います。
ただし、顔見知りの担当者から届いたリリースのタイトルが思わせぶりだったら、ちょっとイヤかもしれません(笑)。その場合はストレートにわかりやすい件名で送ってもらったほうがいい。ですので、そこは書き分けが必要かもしれませんね。

社会性と結びついたリリースに注目

ニュースサイト「dot.」 記者&編集者 金子哲士氏

ニュースサイト「dot.」 記者&編集者 金子 哲士氏

──記事として取り上げやすいのはどのようなリリースでしょうか?

金子:季節や時流を捉えたものですね。上手な人は、そのとき最もタイムリーなキーワードと絡めてリリースを送ってきます。最近の話題で言うと「保活」とか。タイトルにそういう文字が入っていると中身が気になりますし、先ほどお話した企画記事の参考になるかもしれないので目を通す可能性が高い。

北元:客観的な調査データが織り込まれたリリースも取り上げやすいですね。ただし、最初から結論ありきで取ったアンケートではなく、社会性と客観性があるデータに限ります。露骨に宣伝っぽいと、僕らの立場では取り上げにくいんですよ。

金子:2月に掲載して反響が大きかったマスクの意外な着用理由の記事は、リリースが元で生まれたものですよね。

“伊達マスク”着用理由1位は「顔が隠せる」ではない! 意外な1位とは? 〈dot.〉|dot.ドット

じわじわと増え続けている”伊達マスク”愛好者。そもそも伊達マスクとは、本来の衛生上の理由とは異なる目的で常にマスクを着用することを指す。いわゆる伊達メガネと同じカテゴリーとしての伊達マスクだが、伊達…

北元:あれは季節性があり結果が意外だったことと、客観性のあるデータだったので、記事に使ってもいいだろうと判断して書き起こしてもらいました。
ほかにも定期的に調査を行っている企業があれば、記事のネタ探しで見に行くライターさんは多いですよ。ミキハウスさんやベネッセさんが子どもに関するアンケートを定期的に行っていますし、最近は旅行予約サイトが旅に関するアンケートをよく行っていて、「○○に行ったら何を食べたいですか?」みたいな話題は記事に使いやすいですね。

──季節や時流と結びついていたり、社会性のある調査データなど、自社の宣伝にとどまらず公共性が感じられることが重要なんですね。

金子:今はよほどニュース性が高い話題でないと、一社だけではなかなか記事にしにくいんですよ。

北元:ステマ問題があるので、リリースを見て記事にしたいと思っても、単独で取り上げると広告と間違えられるかもしれないということを最近は意識するようになりましたね。ニュース性が高ければ一社だけでも取り上げますが、コモディティ化した分野などは単体で記事に取り上げにくくなっています。

金子:こちらで面白いと思って取材して書いた通常の記事でも、コメントにステマと書かれたりするんですよ。ステマじゃないのに。

北元:お金いただけるなら欲しいですよ(笑)。でも本当に最近そういうケースが増えて、読者の方々が広告記事かどうかをとても気にして見ているのがわかります。

“現場の声”を拾って取材のきっかけづくりに

──ところでdot.では、どのような視点で記事の企画を考えていらっしゃるのでしょうか?

北元:分野を絞らずに幅広い人たちが興味を持ちそうな話題を取り上げています。新製品や新オープンなどのインフォメーション記事ではなく、そこに専門家の分析が加わったり、開発の裏話やストーリーを伝えて読み応えのある記事を多く出すようにしています。

金子:開発に成功するまでにどういう紆余曲折があったかといった現場の話はおもしろいですよね。そういう秘話をいろいろ仕込んで、リリースにひと言添えるといいのではないでしょうか。詳しく説明しなくても、一文程度でいいので。

北元:我々は広く一般の方が読まれるメディアですので、専門誌や業界誌が取り上げるようなレベルの難しい話ではなく、開発秘話といっても一般の人が興味を持って理解できる話題ですね。

速報メディア、深掘りメディア、専門(業界)メディアに分けてリレーションを

プロデューサー 北元均氏と 記者&編集者 金子哲士氏

金子:ですから、メディアのカテゴリーごとにリリースを書き分けたほうが本当はいいんでしょうね。とても手間がかかると思いますが、実際にやっているPRの方はいらっしゃいますから。

北元:例えば、リリースに書かれた内容をそのままインフォメーション的に報じる速報主体のWebメディアには、見てすぐ記事が書けるようなリリースを送るといいのだと思います。
我々のように企画や取材で深掘りして伝えるメディアには、裏話や取材できる人物に関する情報をひと言添える。業界向けの専門メディアには、より専門的な情報を書くというふうに、上手く書き分けられるなら2段階、3段階に分けて考えるといいのかもしれません。

──なるほど。ほかにも記事にしやすいリリースの書き方のアドバイスがあれば教えてください。

金子:リリースに盛り込む情報は絞ったほうがいいと思います。上手な方は、メディアが取り上げやすいポイントの目星をつけて、そこをギュッとわかりやすく書いています。情報を盛り込みすぎるとピントがぼやけて結局何が言いたいかわからなくなり、どこにも刺さらなくなってしまう。

北元:反対に書くことが見つからず、知らせたいことはタイトルですべて言い切っていて、前文も本文もタイトルの内容を膨らませて同じ話をくり返しているリリースも少なくないですよね。何を書いていいかわからないのだと思いますが。

金子:そういう場合は、市場の話題や業界事情を書くといいかもしれません。新商品の市場規模が今このくらいで、どのように拡大していて……という俯瞰的な情報ですね。ある商品やサービスを紹介するときに、メディアは競合や市場の動向、海外事情の話題をよく記事に入れ込みますし、そういった情報がリリースにあれば取材の参考にもなります。

北元:ベンチャー企業や中小企業で、大手企業のように年に何本もニュースになるような話題がない場合は、経営者の人柄がおもしろくて記事になる場合がありますので、その方面をアピールしてもいいかもしれませんね。今なら大手の電機メーカーからスピンアウトして会社を興された方の話などは記事になりやすいと思います。

北元様、金子様、ありがとうございました!

まとめ

今回の取材で伺った、記事に取り上げられやすいリリースの書き方のポイントを以下にまとめます。

1. タイトルで読んでもらえるのは三十数文字ぐらいまで。短く、わかりやすく。
2. 一斉送信リリースのタイトルは、「何だろう?」と思わせる書き方も有効
3. 季節や時流のキーワードと掛け合わせて話題性をつくる
4. 調査リリースは社会性、客観性のあるデータを提供
5. 開発秘話や開発者情報をひと言添える
6. リリースの訴求ポイントを絞り、情報を盛り込みすぎない
7. 市場や業界動向、海外事情も織り交ぜるとニュース性が高まりやすい
8. ベンチャーや中小企業は経営者の人柄がニュースになることも
9. メディアの特性に合わせてリリースを2、3パターン書き分ける

市場調査は、潜在顧客の発見とメディアへの話題提供に活用できて一石二鳥。Webサービスやアプリを提供している会社は、自社データの知見をリリースで告知して社会に役立てることが有効なメディアリレーションにつながります。

以上、みなさまのWebメディアリレーション活動にぜひお役立てください。

Webメディアに記事化してもらうには、どうすればいい? ~メディアジーン「gene」と「ギズモード・ジャパン」に聞きました

Media Interview "gene" & "ギズモード・ジャパン"

Media Interview "gene" & "ギズモード・ジャパン"

Webメディアの爆発的な発展にともない、「Webメディアに記事を書いてもらいたい」という企業のPR担当者からの声が急増しています。

そこでネットPR.JPでは、これからさまざまなWebメディアを訪問して、プレスリリースはWebメディアにどう届いているのか? Webメディアに記事にしてもらうにはどのようなメディアリレーションが有効か? を取材します。

第1回は、ライフスタイルや趣味などにこだわりを持つコアな読者に向けて多彩なメディアを運営するメディアジーンを訪問。女性メディアgene(「cafeglobe」、「MYLOHAS」、「GLITTY」)とギズモード・ジャパンの編集者お二方にお話を伺いました。

お話を伺った方

cafeglobe編集長代理 藤島 由希氏
キズモード・ジャパン編集部 鈴木 康太氏

編集部宛てのリリースはスタッフ全員でシェアし合う

──企業から届くプレスリリースは、ご覧になりますか?

藤島(以下、敬称略):私の場合、届いたリリースは自動的にフォルダに振り分けられるように設定していて、毎朝ひと通り件名に目を通します。そのほかに、過去に取材をしたり、名刺交換をした方から個人のアドレス宛てに届いたものは、午前に1回、午後1回チェックする感じですね。

鈴木:僕は日中デスクにいることが多いので、逐一メールフォルダをチェックして、目を引いたタイトルがあればちらっと内容を見ます。基本的には編集部宛てに送っていただくことが多いので、僕だけでなく一応スタッフ全員に届いています。

藤島:geneも、編集部のアドレスに送っていただいたリリースはスタッフみんなが見ていて、誰かが「これ、いいんじゃない?」とレコメンドしてくれたりします。

当社が運営する女性メディアgeneには、40代のラグジュアリーなキャリア女性を読者ターゲットとしたcafeglobe、ナチュラルなライフスタイルを志向する女性のためのMYLOHAS、東京で暮らすアラサーのトレンドリーダーに向けたGLITTYの3つのメディアがあります。

自分が担当するメディアのテイストとは違っても、「これ、GLITTYにいいんじゃない?」とか、「これはMYLOHASっぽいよね」と、メディアの特徴に合わせてスタッフ同士でリリースをシェアし合っています。

リリースの件名でクリックする/しない、その分かれ目は?

cafeglobe編集長代理 藤島 由希氏

cafeglobe編集長代理 藤島 由希氏

──メールで届いたリリースの件名にまずは目を通して、そこから開いて見たくなるリリースと、スルーしてしまうリリースの違いは何でしょうか?

藤島:読者が憧れるブランドやショップなどの固有名詞が入っているリリースは、名前が目に入った瞬間クリックします。「期間限定」「新」の文字が入った情報も、やはり気にはなります。

それ以外では、画像のクオリティやテイストがかなり重要ですね。女性メディアはビジュアルが勝負なので、リリースに添付されている画像のクオリティが高ければそのまま使えますし、ほかの画像をお借りするときも良い写真が借りられる可能性が高いですから。

鈴木:ギズモード・ジャパンの場合は、他のところにまだ出ていない独自の情報であるという点が最も重要です。

こう言ってはなんですが、リリースの情報はいろいろな媒体社さんに一斉送信されていたり、Web掲載されていたりして、もうすでに知られている情報なので、ギズモード・ジャパンでわざわざ記事にする必要がないわけです。

ですから、発表前に教えていただける独自のソースや、リリースには書いていないけれどギズモード・ジャパンのために特別にネタを用意しました、というようなエクスクルーシブな情報でないと正直、土俵にも上がらないと言えると思います。

逆に言うと、リリースの情報がマス向けであればあるほど我々には刺さらなくなってしまうので、他のメディアとちょっと違っていて、もしかしたら今回のインタビューの参考にはならないかもしれません。

藤島:geneでも、パッと見て「これはいろいろなメディアに載りそうだな」と思ったネタはやめています。情報のスピードよりも「らしさ」のほうを優先しているので、リリースを受け取って情報をそのまま記事化するのではなく、一拍置いてきちんと作り込んだ記事を提供するよう心掛けています。

ただ、GLITTYはトレンドネタをいち早くみんなで共有して楽しみたい世代が読者層なので、内容次第ではリリースの情報をもとに速報的な記事を作ることもあります。

──なるほど。配信されたリリースを受け取ってそのまま記事にすることはあまりないのですね。では企業のPR担当は、御社のメディアに対してどのようにメディアリレーションを行えばいいのでしょうか。

記者が体験・撮影できる場を提供してほしい

キズモード・ジャパン編集部 鈴木 康太氏

キズモード・ジャパン編集部 鈴木 康太氏

鈴木:プレスリリースの中でも別枠というか、送っていただけるとありがたいリリースもあります。イベントの招待や記者向けの取材会などのリリースです。そういう情報は、編集部内のメッセージングサービスで共有して、スタッフをアサインすることもありますので。

藤島:記者が実際に体験したり、撮影したりできる場をつくっていただけるとありがたいですね。

先ほど、女性メディアではリリースの添付画像が重要と言いましたが、例えば、ホテルの春のデザートフェアなどのリリース写真はどれも美しいけれど、できればそのまま掲載するのではなく、オリジナルの写真を掲載したいんです。小さな会場でかまわないので、撮影できて商品に触れられる取材会を開いていただけると、メディア側としては非常に助かります。

複数メディアが集まる会でもかまいません。撮影する角度が少し違うだけでも、他媒体とは違う切り口の記事が載せられますから。ショップなども、オープン前にプレス内覧会を開いて、その情報を事前に送っていただけるとありがたいですね。最近は、実際にそういう取材の場が増えています。

鈴木:大々的なイベントでなく、小規模でいいんです。小さな会場を借りて、体験コーナーがいくつかあって、我々がちゃんと時間を取って触ったり撮影したりできる空間を提供していただければ。

一つだけ注文を付けさせていただくとしたら、ちゃんとした写真が撮れるようにロケーションと照明に配慮していただけるともっとうれしいです(笑)

リリースの文面よりも画像のクオリティに凝ってほしい

藤島:ファッションやジュエリー、コスメなど、撮影するのが難しいものについては、画像のクオリティが高くてバリエーションがいろいろあると非常に助かりますし、掲載の確度が上がります。商品のテイストがメディアとマッチするかも、世界観がわかる写真が添えられていれば感覚的にすぐにわかります。

鈴木:リリースの文面に凝るよりも、画像を1枚増やしたほうがお得ですね。

藤島:その通りです。特に女性メディアには、情報が可視化されているほうが響くと思います。

動画が付いていると二重に助かる

──写真だけでなく、今は動画付きのリリースも増えています。

藤島:動画付きは最近よく見ますね。最近も、ぺんてるさんが配信したリリースに、自社の折れないシャープペンシルの芯で人気イラストレーターさんにイケメンゴリラのシャバーニを描いてもらった動画が添付されていて、ユニークな動画だったので、GLITTYで記事として掲載しました。プロモーション動画でも、こういった驚きのあるものは読者にも喜ばれますね。

え? こんなイケメン初めて会ったかも(しかも絶対やさしい) | GLITTY

え? こんなイケメン初めて会ったかも(しかも絶対やさしい)。コンセプトは「ガールズ サヴァイバル」。だれよりも早くトレンドをおさえたい、いつもおしゃれできれいでいたい女性のためのメディアです。

鈴木:動画はあると助かります。1分半~2分ぐらいの短い動画を見れば、それがどういうもので、どういう大きさで、どう動いて、どんな人の役に立って、といったことがわかる内容なら、我々も商品の特性を理解できますし、Youtubeなどに上がっていれば記事にそのまま埋め込めるので、二重に助かります。

メディアの特性にマッチしたネタを個別に届けてほしい

藤島:でも、やはり一番確度が高いのは、geneの各メディアの特性を理解して、それぞれに合った情報を届けていただくことだと思います。

例えば先日、企業のご担当の方から直接電話で、商品を作っている女性社長が南米から来日するので、インタビューにいらっしゃいませんか?とオファーをいただきました。「cafeglobeは、素敵なキャリア女性をよく取材されているので、合うんじゃないかと思いまして」と言われたので、概要を伺ったら「まさにぴったりです! よろしくお願いします」という内容で(笑)。そんなふうに、個別にぴったりの話題を紹介していただくと、こちらとしても大変ありがたいです。

鈴木:ギズモード・ジャパンでも、いつも読んでくださっているメーカーの製品担当の方から、こういう情報があるんですけれどギズモードさんに合うのではないかと思って、とネタを直接持ち込んでいただくことがあります。そういう個別情報は強いですね。こちらとしても、この人はギズモード・ジャパンのことをちゃんとわかってくれていて、情報をくれたんだと思うと嬉しいですし。

──いきなり連絡しても、大丈夫なものでしょうか?

鈴木:見せていただけるモノやサービスが面白ければ、面識がなくても構いません。ベンチャーや中小企業のようにメディアリレーションの経験がないところは、自社のプロダクトに最もマッチするメディアを選んで、決め打ちでアプローチしてみるといいのではないでしょうか。ギズモード・ジャパンは、そういった方々からの連絡もわりと多いです。

リリースを送るタイミングは?

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藤島:女性誌などの紙の雑誌の場合は、だいたい1ヵ月半から2ヵ月前ぐらいにリリースを送るといいと言いますよね。Webメディアの場合は、記事をアップする日の1週間~10日前ぐらいには取材をさせていただきたいので、掲載日の2~3週間ぐらい前に届くのがちょうどいいのではないでしょうか。

鈴木:内覧会や記者発表会の場合は、もっと早くてもいいですね。早いほうが確実に記者の予定を入れられるので。

藤島様、鈴木様、どうもありがとうございました!大変参考になりました。

まとめ

お二人から伺った有効なメディアリレーションのポイントは、以下の5つ。

  1. 女性メディア向けの情報は画像のクオリティが大事
  2. 記者が体験&撮影できる取材会を開催してリリースでお知らせ
  3. 動画リリースは情報が伝わりやすく、掲載もしやすいので有効
  4. 載りたいメディアの特性に応じて、個別にネタを用意してアプローチ
  5. リリースを送るタイミングは、掲載日の2~3週間が理想的

以上、みなさまのWebメディアリレーション活動にお役立ていただければ幸いです。