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すべての業界がチャットボットを活用すべき7つの理由とブランド事例

chatbot
どの業界のどの会社も、いつかIT企業にならなければいけない。そうでなければ、これからの時代は生き残っていけない
昨年サンフランシスコで開催されたドリームフォースで、アディダスのブースの方が言っていた印象的な言葉である。アディダスはデジタルチャンネルの強化を推し進める一環としてチャットボットを導入し、パーソナライズされたユーザー体験を作り出そうとしている。 日進月歩するAIによって、これまでになかったITと他分野とのコラボレーションも進んでいる。実際に、フィンテックのような「テック」と、スマート家電のような「スマート」がついた言葉がどんどん身の回りに広がってきている。 これにより、これまであまり「テック」や「スマート」と言った言葉と馴染みの薄かった消費財メーカーなどにも、テック化しスマートになっていくことが求められる。スマートなUXがユーザーにとってのディファクトになっていくからである。 一方で、AIがどんどん進化していく中で、逆にどうやってAIを活用していったらいいか、そもそもそんなに必要なものなのか疑問に思っている人も増えているのではないだろうか。 AIとなると、技術の部分が注目されがちだが、見落とされがちなのはUX的観点を持ったデザインをサービスに落とし込めるかということである。これがなければせっかくチャットボットを導入してもカスタマーエクスペリエンスの向上には繋がらない。 この記事では、比較的身近にあるAIの事例としてチャットボットを取り上げ、それを導入している消費財メーカーがどのようにしてカスタマーエクスペリエンスを向上させたかについてご紹介したい。

なぜチャットボットが必要なのか?

チャットボット(以下ボット)はオムニチャンネル化が加速する消費財マーケティングで、今後も需要の成長が見込まれているサービスである。そもそもなぜ近年ボットの需要が高まっているのだろうか。Digital Doughnutではボットが企業にもたらす利点として次の7つをあげている:

1. トレンドである

多くの企業がFacebook MessengerやKikといったメッセージングアプリや自社のアプリにボットを導入し始めている。ボットというチャンネルがユーザーの中でディファクト化すれば、ボットを持っていないことがマイナスになってしまう。

2. カスタマーサービスの向上

営業時間や場所を選ばないので、いつでもどこからでも利用でき、カテゴリーや管轄部署に関係なく、広範囲の質問に瞬時に回答できる。また、担当者の経験値に関係なく、均質なサービスが提供できる。

3. カスタマーエンゲージメントの向上

同サイトが紹介する調査では、ボット導入後、ソーシャルメディアにおけるカスタマーエンゲージメント率が導入前に比べて20%上昇したという。また、プッシュ通知などを通じて、カスタマーに企業側からリーチできるという点も大きい。消費者意思決定プロセスにおいて、消費者が「情報収集」の段階に入る前の段階で、問題提起をして購買意欲を刺激することができるからだ。

4. インサイト情報の取集・分析

ボット上でのやり取りから得たデータをもとにパーソナライズされた内容を表示・提案できるだけでなく、商品に合わせたマーケティング戦略を練り直すこともできる。

5. より良いリードの創出・絞り込み・育成

見込み客に対してパーソナライズされたメッセージとともに、自然な流れで必要な情報を尋ねることができるため、インサイトを得やすい。それにより、リードの創出やリードを次のステージに進めることが容易になる。

6. グローバル市場へのリーチ

ボットなら、24/7で利用できるだけでなく、基本的な質問なら多言語にも対応できる。ただし、商習慣や文化の違いによって、ローカリゼーションが必要になってくることを忘れてはならない。

7. グローバル市場へのリーチ

独自に複数のモバイルプラットフォームに対応したアプリを開発したり、専門の人材を採用するより安い。また、1つのシステムで1対多数のユーザーを同時に24/7で対応できる。

チャットボットで何が提供できるのか

では実際に、ボット活用方法にはどのようなパターンがあるのだろうか。ボットに最終的によってもたらされるのはカスタマーエクスペリエンスの向上だが、その内容は様々だ。企業が提供する一般ユーザー向けのボットサービスを見ていくと、大まかに次の5つに識別できそうだ:

1. 探す(検索)・提案

ユーザーへの質問や過去のデータをもとに、その人の嗜好に適したものを探して提案。商品だけでなく、天気予報の通知や関心のあるニュースなどもピックアップしてくれる。

2. コンシェルジュ / 予約・購入

予約やオンラインショッピング時の面倒な入力作業を必要とせず、簡単なやり取りでボットがレストランの予約やチケットの購入を代行。Google Duplexでは自分の代わりに電話もかけてくれる。他には、Siriに代表されるように、ユーザーの司令に応じてスケジュールを作ったり管理したりしてくれるものもある。

3. カスタマーサービス

簡単な質問やよくある質問に対して、即座に回答または目的のページに誘導。必要であれば、人間のエージェントに繋ぐこともできる。

4. アドバイザー / 講師

健康管理や金融といった専門的な知識を必要とする分野へのアドバイスを提供。学習用のサービスでは、ユーザーの理解を促す手助けをしてくれる。

5. 会話の相手

おもちゃや、Softbankのペッパーのような、コミュニケーションそのものを目的にしているもの。

チャットボットの実用例

上記のパターンはあくまで目安であって、機能をこれらだけに限定する必要はないし、1つに絞る必要もない。実際に企業はどのようにボットを使っているのだろうか。

カバーガール

covergirl_bot <画像引用元:Kik: Kalani Hilliker’s Bot> カバーガールは1950年代から続くコスメティックブランドで、長らくP&Gの傘下に収められていた。数年前に別の企業に売却されたのを機に、ミレニアル世代やそれに続くジェネレーションZを主なターゲットとした新興のライバルに対抗するべく、デジタル化に注力している。 その1つがインスタグラムで480万人のフォロワーがいるカラニ・ヒリカーという2000年生まれの芸能人(ダンサー・女優・モデル)の名を冠したボットだ。言葉遣いや絵文字を通して、彼女のパーソナリティーをボットに反映させることで、より若い世代が関心を抱きやすくなっている。彼女と会話を続けるとクーポンをゲットできるという「おもしろ要素」も組み込まれている。

H&M

h&m_bot <画像引用元:Kik: H&M> ファストファッション・ブランドのH&Mでは、ボットがユーザーとの初めのやりとりにおいて、スタイルの異なる洋服の写真を直感的に選択させることで、各自の好みに合ったスタイルを探っていく。ある程度スタイルが確定すると、ユーザーの好みに適したものを優先的に提案することで、小さなスマホの画面から何度もページを読み込むという面倒な作業が減る。

ジョニーウォーカー

johnnie_walker_bot <画像引用元:Facebook Messenger: Johnnie Walker> 約200年の歴史を誇るウイスキーブランドのジョニーウォーカーは、ブランドの歴史や商品の紹介、ウイスキー全般に関する知識を教えることでブランド・ロイヤリティを高めようとしている。また、サードパーティーと協力することで、ジョニー・ウォーカーを使ったカクテルのレシピや近所で商品が買える場所の紹介など、幅広いサービスを提供している。

アブソルート

lyft_absolut <画像引用元:Lyft Blog> 同じくリカーメーカーのアブソルート ウォッカは、ボットを通して、ユーザーがバーに行くのを促すキャンペーンを行った。無料でアブソルートウォッカが体験できるバーを告知し、実際に行ってくれた人には、シェアライドサービスのLyftのクーポンを配布して安全に帰ってもらうという一連の流れによって、バーを介したO2O(Online to Offline)体験を作り出した。このキャンペーンでは4.7倍の売上増加に成功した。

ドミノピザ

[embed]https://www.youtube.com/watch?v=aec24EU6MOk[/embed] ドミノピザは、Facebook MessengerだけでなくAmazon EchoやTwitterなど、あらゆるソーシャルメディアやメッセージングプラットフォームからピザの注文を可能にしている。 彼らのボットは、ピザのカスタマイズはもちろん、注文した品が今どの工程にあるのか(トッピングしているのか、焼いているのか、など)、配達までどのくらい時間がかかるのかまで分かるようになっている。これによってユーザーは、ちゃんとオーダーが通っているのか、時間通りに配達されるのか余計な心配をしなくても良い。

チャットボットを作るときに注意すること

最後に、チャットボットを導入するにあたって、考える必要があることは何だろうか。チャットボットの開発自体は、作成サービスなどを利用してコーディングなしに行うことも可能だ。 しかし、もっとも重要なのがそれより前の段階におけるUXデザインの設計である。対象は誰で、何の目的のために使ってもらうのか。どのようにその目的を達成するのがユーザーにとって最適なのかといったことからコンセプトを考えていく必要がある。 関連記事:チャットボット (Chatbot) とは? 【ChatBot入門編】 PwCのレポートでは、チャットボットのようなデジタルアシスタントへの認識を調査したところ、「スマートで友好的」に対して「ロボットっぽく(人間味がなく)て限定的」と感じる人がほぼ同率だった。 同じテクノロジーでもユーザーが受け取る印象がポジティブにもネガティブにもになりうるということである。ユーザーが「親切なサービス」と感じるか「どこか違和感があるな」と感じるかは、UXデザインが大切になる理由である。

まとめ

AIから電話がかかってくる時代が来ようとしている。どの業界であっても、テック化していくことがユーザーから当然のように考えられる中で、チャットボットは身近なAIとして、今後も広がっていくことが予想されている。 チャットボットは単なるメッセージングサービスではなく、カスタマーサービスの向上やインサイトの分析に活かせるなど利点も多い。例としてあげたように、あらゆる業界でチャットボットの利用が広がってきている。その使われ方は、用途に応じて様々だ。 しかし、ユーザー視点に立ったUXデザインがなされなければ、せっかくカスタマーエクスペリエンスの向上のために導入したチャットボットも、ユーザーにかえって悪い印象を与えかねないので、注意しなければならない。 参考:

ユーザーの心を掴むヒントは“ハイパー・パーソナライゼーション“にあり

hyper-personalization
hyper-personalizationGoogleによると、過去2年間でモバイル上でのGoogle検索内において”Best”という単語がなんと80%も増加したという。 またアクセンチュアによると、アメリカとイギリスにて1,500人のユーザーを対象に行った調査でユーザーの75%はパーソナライズされた情報やコンテンツを提供してくれるブランドから商品を購入する傾向にあることがわかってきた。 この2つのレポート結果から言えることは、ユーザーがオンラインで買い物をする際、購入前にベストなものをリサーチすることが当たり前になった、そしてユーザーはパーソナライズされたコンテンツに価値・魅力を感じるようになったということだ。 つまり、スマホが普及して欲しい情報を簡単に手に入れることができるようになったからこそ、ユーザーは商品購入前の情報収集を大切にし、より満足のいく購入体験(購入前から後まで)を求めるようになったのかもしれない。 ということは、ユーザーにオンリーワンなコンテンツを提供することさえできれば、商品購入までの道のりはぐっと縮まるはず。そうしてユーザー体験を向上させることで、ひいてはブランドへのロイヤリティ醸成にもつながるだろう。 では実際に成功しているブランドはどのように「オンリーワンなコンテンツ」をユーザーに提供しているのだろうか? 関連記事:未来のユーザー体験をつくり出す「未来予測」のすすめ

グローバル企業に学ぶ”一歩進んだコンテンツ作り”

まずは以下のグラフを見てもらいたい。これは企業が実践しているパーソナライゼーションの領域と収益の相関を示したもので、多くの企業が実践しているのはSingle Message Mailing(簡素なメッセージでのメール配信)からSegmentation Rules Based(ターゲットのセグメント)に留まることがわかる。 それに比べて収益が好調なAmazonやStarbucks、Spotifyが行っているのは、さらに一歩踏み込んだPredictive Personalization(ユーザー行動を予期したパーソナライゼーション)だ。ユーザー行動を制するものはビジネスも制するのかもしれない。 personalization 画像転載元:こちらの記事より それではグラフにも出ているAmazonとSpotifyの事例を見てみよう。

1. Amazon:レコメンデーションで潜在的な購買欲を掻き立てる

Amazonはユーザー行動のデータを巧みに操り、ユーザー1人1人に合ったレコメンデーションのシステムを生み出した。一番売れている商品をランキング形式で表示したり、新着商品のラインナップを表示する一方的なレコメンデーションとは異なり、ユーザーが起こした行動を元にコンテンツをキュレートしていくので、よりユーザーのニーズに基づく。 例えば、過去にPumaの靴を購入し、且つ検索クエリに「Puma」があると下記のようなレコメンデーションがメールで届くようになっている。これにより、ユーザーの潜在的な興味や購買欲を掻き立て、商品の購入に繋げることができるのだ。 amazon case study 画像転載元:こちらの記事より それぞれのユーザー行動をマッチング AmazonはItem-to-item collaborative filtering(アイテムベースの協調フィルタリング)というレコメンデーション・エンジンを生み出したことでも有名だが、実はAmazonのコンバージョンの35%以上はこのエンジンからきている。 この機能を簡単に説明すると、①似ているユーザー同士をマッチさせるのではなく、②購入/閲覧される商品の類似パターンをマッチさせてレコメンデーションを作るというもの。下記の画像を参照していただきたい。 ① この商品を買った人はこんな商品も買っています ➡︎あなたと似た関心を持つユーザーをマッチさせてレコメンド amazon2 ② あなたの購入品に基づくおすすめの商品 ➡︎あなたが購入した商品と似ている商品をマッチさせてレコメンド amazon ①だと日々趣味や嗜好が変わるユーザーの変動を追うことになるのに対し、②は商品という普遍的なモノを組み合わせることになるので、より正確なレコメンドになるということ。自分が欲しい商品だけが並び、そこから選ぶことができるMeコマースの時代が着実に浸透していっているのかもしれない。

2. Spotify:ユーザー行動と自然言語をマッチさせたオンリーワンなプレイリスト

1億4千万人のアクティブユーザーを抱える音楽ストリーミングプラットフォームSpotifyが生み出したハイパー・パーソナライゼーションは、AIを活用してユーザー好みの曲をキュレートした”あなただけのプレイリスト”Dicover Weeklyだ。 discovery week 一昔前は音楽のエキスパート達によってマニュアルでキュレートされたプレイリストや曲に関連するタグ(Hiphopなど)を付けて同じタグを持つ曲をマッチさせるような技術があったが、ユーザーの潜在的なニーズを引き出すまでには至らなかった。 しかし、Spotifyが作ったDicover Weeklyは多数のアルゴリズムを組み合わせることにより、ユーザー好みの曲をレコメンドすることができる。 spotify Discover Weeklyの仕組みを図式化したもの(画像転載元:Quartzの記事より) 複数のアルゴリズムの中でも特に注目してもらいたいのが以下の2つである。 Collaborative Filtering ユーザーの視聴記録、プレイリストへの追加、アーティストページへの移動といったユーザ行動を元に似ている行動パターンを取るユーザー同士をマッチさせ、”まだ聞いたことないけど聞いたら好きになるであろう曲”をレコメンドするアルゴリズム。 NLP(自然言語処理) Spotifyは日々、AIを通してそれぞれの曲やアーティストに付随する自然言語(人間が日常的に用いる言語)を集めている。具体的には検索エンジン、ブログ、SNSなどで使われている言葉を細かくデータ取りして、曲同士をマッチさせる時の指標にしている。 これらのアルゴリズムがあって初めてユーザー好みのコンテンツを提供することができるのだ。SpotifyがDiscover Weeklyだけで70億以上(2016年時点)もの曲のストリーミング実績を持つのも頷ける。 なお、Spotifyは昨年新たなレコメンドプレイリストTime Capsuleをローンチしている。これは16歳から85歳までのユーザーに昔聴いていた懐メロをレコメンドしてくれるもので、アカウント登録時の生年月日やユーザー行動のデータを元に選曲しているようだ。 このようにSpotifyは現在だけではなく過去と未来という別の時間軸でもコンテンツを提供することで、継続的にユーザーの興味を掻き立てることができる。

ハイパー・パーソナライゼーション=究極のユーザー体験

上記の事例のように、ターゲットユーザーの興味や関心、行動データを元に最適化した情報を提供することはハイパー・パーソナライゼーションと呼ばれている。 では従来のパーソナライゼーションとの違いは何だろうか。 <パーソナライゼーションの具体例> ターゲットユーザーの名前を宛名にしたニュースレターを配信する、SNSの投稿を地域や言語で分けて投稿するなど、最低限の情報量(ユーザーの基本情報や趣味、関心など)だけでユーザーに合ったコンテンツを提供する。 <ハイパー・パーソナライゼーションの具体例> ユーザーに関する最低限の情報+ユーザーの行動を把握してよりユーザー観点に近いコンテンツを提供する。例えば、あなたはオンラインショッピングでBというブランドの靴を見ているとする。 【行動①】過去に同じブランドの靴の検索・購入履歴がある 【行動②】オンラインショッピングは大体19時〜21時に買う傾向にある この2つの行動からブランドのBがあなたに対して19時〜21時の間にディスカウントの案内をプッシュ通知で送るというのがハイパー・パーソナライゼーションだ。ユーザーが提供する情報だけではなくユーザーの行動も上手く活用することで、ユーザーは「そうそう、こういう商品が欲しかった!」と感じ、彼らの心をくすぐることができるのだ。

まとめ

ハイパー・パーソナライゼーションを極めるためにまず必要なこと、それは多角的な視点を持ちユーザーを理解すること、これに尽きると思う。ユーザーの日々の動きや見るもの、触れるもの、感じることに目を向け、様々な仮説を立てて実際に検証する、この一見簡単なように思えて奥が深いプロセスをどう活用していくかが鍵となる。 弊社では、そんなサービスデザインを通して日本企業のグローバル展開を支援しているので、今回の記事が新たなサービス/プロダクト開発プロジェクトに関わる方々にとって有益な情報であると有り難い。 参考:

【2018年】マーケティングの未来はITトレンドの先にあり?マーケティング施策7つのまとめ

2018 marketing trends
2017年のマーケティング施策の結果はいかがだっただろうか。反省・改善点を踏まえ、2018年のマーケティングトレンドをキャッチし、新たな戦略へのヒントにしていただきたい。 そこで今回は2018年マーケティングトレンドを様々な分野と関連してまとめた。一見マーケティングには関係ないと思えるような最新技術の活用や、そこにある潜在的なマーケットのチャンスなど、業界関係なく検討すべき把握しておきたいものばかりとなった。 関連記事:【2018年】ITの最新トレンド10大予測

自動車産業、音声認識、iPhoneの技術進歩から見えるトレンド

1. 自動運転車の未来には新しいメディアチャネルの機会があり?

自動運転業の勢いはマーケターもマークしておくべきことがある。まずはその勢いについて例をあげると、自動運転車開発会社であるWaymoは400百マイル(644㎞)もの自動運転車の試運転をアメリカの一般道で実施済みであり、Tesla、Audi、Mercedes-Benz、BMWなど多くの高級車が自動運転機能を持ち始め、大手自動車配給サービス会社Uberは約19億ドル(1900億円)ものVolvoを購入したというのである。 現在市場に出ている機能はクルーズコントロールや自動ブレーキなど部分的な自動機能であるが、先に述べた勢いを踏まえると、今後かなりのスピートで全自動へシフトしていくことなる。そしてこの進歩が進むにつれ、運転手が運転に集中する必要が無くなってくるはずだ。 そうなると、彼らはその代わりに他に何をするのか。何かしらのコンテンツを消費するという選択肢が考えられないだろうか。つまり乗客は自動運転車のカーナビに流れる映像を見たり、スマートフォンをいじったりする時間が増えるということである。UberやLyftなど商用の自動運転車に関しては車内広告などが普及してくるかもしれない。 map of Autonomous Vehicle Industry ↑の写真はリンクより引用。大手メーカーがテクノロジーを強みとした新興企業とタイアップしていることがわかる

2. 音声検索のための最適化がSEOの勝ち組に残る鍵?

Googleによると2016年にあった検索の約20%が音声認識を使ったものだったという。また、アメリカ国内のアンドロイドユーザーに絞ると25%という驚きの数字がある。これは2020年までに50%にまで上昇するとも予測されており、ウェブマーケティング従事者にとって、音声による検索のためのウェブサイト最適化が必要になると言える。 なお、音声による入力はタイピングより簡単なので、1回の検索でたくさんの単語が入ると予想される。つまり、一般的に少数の単語を検索キーワードとするのではなく、より具体的かつ多くの単語に引っ掛けてコンバージョンを稼ぐようなロングテールなキーワード設定が必要になるのではないだろうか。

3. 新型iPhoneのおかげでARはユーザー、マーケターにとって身近なものになる

まだ記憶にも新しいiOS11には、「ARKit」というAR(拡張現実)アプリ開発フレームワークが搭載されている。ARを使ったアプリやコンテンツ作成のオープンソース化がいよいよAppleからなされたのである。また企業のARコンテンツ開発にも開発の進捗が見られる。例えばメジャーリーグベースボール(MLB)のiPhoneアプリは試合中にiPhoneを通してコートを見ると、画面上に打率や選手の情報が出てくるという。また大手家具小売店、IKEAはスマートフォンを通して、実際に家の中に家具を配置してみた様子がわかるARアプリを開発してる。 iPhoneにAR機能が加わったのはただの新機能ではなくコンテンツマーケティングなどにおいてゲームチェンジャーととらえるべきだろう。もしかしたらインスタ映えではなくAR映えといったコンテンツが人気になることもありえるかもしれない。 AR MLB case ↑の写真はEngadgetより引用

まだマーケティング実務に時間を費やしているの?人工知能によるスマートな処理

4. マシーンラーニングによるマーケティングオートメーション

技術的には目新しくはないが、マシンラーニングはマーケティング分野でも実用レベルで使えるところまできている。使ってから短期間でもその導入効果がわかりやすかったり、最近では低額で始められるプランもあるので気軽さが高くなってきている。代理店に高いお金払う必要なく、マーケターは基本設定だけ登録しておけば良いのでミスや人件費の削減、的確な分析に基づく効果が期待できるためさらに浸透していきそうである。

5. AIによるメッセージ管理

業界全体を通してこの機能のROIはまだないが、期待値は高い。特にオンラインビジネスにおいてメッセージ機能の重要性が高くなっていることは下記に挙げるデータからも言える。   1)世界で使われているアプリ上位10個のうち、6つがメッセージングアプリである 2)消費者の65%は企業に問い合わせをするよりメッセージングアプリを使うことを好む また、AIを使ったチャットボットによる顧客サポートで大幅に業務のコストを減らせるという点や迅速で的確な対応によるサービスの向上ができる点を達成できれば、売上利益に大いに貢献できる要素なのでは。 関連記事:人工知能(AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル

ソーシャルメディアマーケティングの重点チャネルを見極めよう

6. インスタグラムの台頭

インスタグラムは2017年9月時点で毎月のアクティブユーザーが8億人に達したと発表した。ソーシャルメディアの重鎮、Fecebookは20億人なので数字的には差はあるものの、インスタグラムの勢いと今後の期待値は高い。2016年下半期に追加となったインスタグラムのストーリー機能は、類似機能の先駆けであったスナップチャットを1年足らずであっさり抜いた。またブランドエンゲージが他のチャネルより高かったり、広告の規制などもよりソーシャルメディアマーケティングに注力をしているブランドを呼び込む要素になっているという。 またEコマースプラットフォームがインスタグラムフィードから商品詳細情報やそのまま買い物ページに飛ぶことができるような機能を始めたり、インスタグラム側もショッピング機能を強化したりと、ビジュアルからブランドの確率と、購買に繋げるルートが確立されていきそうである。 snapchat vs instagram stories ↑の写真はrecodeより引用

7. Twitterは落ち込み気味

Twitterはユーザー獲得に苦しんでいるようだ。2017年の第二四半期にはマンスリーアクティブユーザー数が全く増えなかったという事実もある。そのため2018年はユーザー獲得に手を焼き、広告機能や劇的な新機能の追加などは期待できなさそうである。 関連記事:オンラインブランドのソーシャルメディア活用事例ー成功の秘訣は”ユーザーを巻き込む”こと

まとめ

今回は自動車産業、音声認識、新型iPhone(AR)、人工知能、ソーシャルメディアなど一見マーケティングに関係ないように思える最新技術のトレンドを列挙した。しかし、これらは今後マーケティング活動に大きな影響を与える可能性がある。今までの成功事例や経験を元に作り出すマーケティング施策の実行も大事だが、投資家が最新技術に出資をするようにマーケターも新しい技術を意識したチャレンジングな投資的マーケティングも必要なのかもしれない。 参考:18 Marketing Trends to Watch in 2018

【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジー

2017 IT trends
テクノロジーの発展、加速率は消費者をたびたび驚かせる。こうした技術の進歩は、生産性、コスト効率、ブランド認知度の向上のために、より多くの機会を提供する。 そのため、技術者やマーケティング担当者は技術の進歩について、常に動向を把握することが必要となるだろう。今回は2017年に世界中で話題となったテクノロジーを振り返りたいと思う。

1. IoTとスマートホームテクノロジー

Iot(Internet of things)の発展・普及に伴い、スマートホームテクノロジーの相互接続性について、数年前から注目されている。様々なスマートホームデバイスが、統合・制御されることで、効率的かつ快適な自動化された暮らしが実現できる可能性があるからだ。 しかし、販売されている多くのスマートホームデバイス、アプリケーションは、全てを1つにまとめてシームレスなユーザー体験ソリューションを提供するものはほとんどない。 だが、2017年、Google, Amazon, Appleなどのユーザー体験に精通している企業がスマートスピーカーを発表した。 スマートスピーカーは音声コマンドと応答によって、日々の生活をアシストし、様々なサービスを提供する新しい方法を導入し、様々なデバイスをインターネットで統合するための大きな前進となった。 また、それに伴い、音声認識の技術は非常に洗練されており、音声認識システムのエラー率が5%未満のエラーレートに下がり、人間と同等レベルまでに正確となっている。 これまでIoTとスマートホームテクノロジーの分野に参入している会社はスタートアップが多かったが、Google, Amazon, Appleなどの巨大IT企業が参入したことで、2018年以降はさらなる技術の進歩が期待できる。

Amazon Echo

米国のスマートスピーカーの市場シェアの76%を占めるAmazon Echoの販売数は今年1,500万を超え、スマートスピーカー全体の販売数は2000万を超えた。 Alexa(アレクサ)と呼ばれる人工知能(AI)が搭載され、「何か音楽をかけて」と指示をすると音楽を流してくれる。「音量を上げて」などの細かい指示調整も可能だ。その他にも、ラジオを聞いたり、Amazonで注文したり、計算や、「btraxってどんな会社?」などの質問を答えてくれる。 関連記事【AIスピーカー入門】Amazon EchoとGoogle Home amazon echo

2. ブロックチェーン

ブロックチェーン技術はまさに今年、2017年に活用され始めたデータ管理システムにおける技術である。 従来のデータ管理システムと比べ、維持費が低コスト、セキュリティに強い、データをオープンにできるといったメリットがある。 そのため、『ブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界』でもご紹介したが、銀行や決済、送金、チャリティー、保険、ヘルスケア、IoT、Eコマース、政府・公的記録、選挙、教育、著作権など多岐にわたる分野でブロックチェーンシステムの活用が見出された1年だった。

仮想通貨

仮想通貨は、その名の通りブロックチェーン技術によって管理されている仮想上の通貨だ。 正確な例えではないので注意をしてもらいたいが、簡単に説明すると、各国に通貨が存在するように、「インターネットという国の通貨」と想像してもらうと容易に把握しやすい。送金や決済手数料が格段に安く済むという点で注目されている。 現代では、ほとんどの国でインターネットが使えるため、各国に法規制がない場合は、「金(ゴールド)」のように各国の通貨に代替できたり、実際の通貨のように使用することができる。 「ビットコイン」と呼ばれる仮想通貨を聞いたことがあるだろうか? 仮想通貨はいくつもの種類が存在するが、最も代表的なものが「ビットコイン」である。日本ではすでに一部の店舗で、ビットコインなどの仮想通貨による支払いが可能となっている。 日本では仮想通貨が、投資対象として注目されている要因が強いため、実際に多く普及しているというわけではないが、元となっているブロックチェーン技術は、2017年に大きく注目された。 bitcoin

3. 機械学習

ここ数年、機械学習は大きな進歩を遂げており、2016年にGoogleの「AlphaGo」プログラムが人間のプロ囲碁棋士に勝利したことが記憶に新しい。 そして、この「AlphaGo」は、2017年には世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した。 他にも、ガートナーの予測ではEコマースにおいて、顧客とのインタラクションの85%が2020年までに人間なしで管理されると予測されている。 機械学習は、あらゆる分野で一般的に普及しつつあるが、今後も主流な技術として注目されるのは間違いないだろう。

AlphaGo Zero

2017年に世界チャンピオンである中国の囲碁棋士に3連勝した「AlphaGo」に対して、わずか5ヶ月ほどの期間で、全勝できるまでに強くなった「AlphaGo Zero」が開発された。 「AlphaGo Zero」は、過去の人間の棋譜から学習するのではなく、人工知能同士の対戦から学習することで、以前の性能を追い抜いた。つまり、プロの人間の過去の行動データなどの良質なデータを準備する必要がなく、人工知能同士で学習したということになる。 人工知能という言葉がたびたび使用されているが、これらは機械学習の技術の進歩によって実現されている。 関連記事人工知能(AI)のできることとは?歴史から学ぶ現状と未来予測 [embed]https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=tXlM99xPQC8[/embed]

まとめ

テクノロジーの未来の経緯を予測することは、1年後でさえ難しいとされる。現に2016年に、音声によって生活をアシストする、人工知能同士で学習し、新たな人工知能を開発、仮想通貨に価値が生まれる、など想像できただろうか? 新たに開発された技術は実際に活用されないことも多い。しかし、次に話題となるものを予測し、ユーザーの行動の変化を読み解いていくことがマーケティング戦略を練る上で最も重要だと考えられる。