時代の岐路に立つ自動車業界を大きく変革させる9つのスタートアップ

automotive-main
ここ数年で最も大きな変化が訪れる産業の一つが自動車業界だろう。btraxでも複数の自動車ブランドに対して次世代のユーザー体験の設計や、新たな事業づくりに関する取り組みを提供させていただいているが、今後数年は自動車産業にとって、今までにない規模でのパラダイムシフトが起こることに確信を得ている。

業界を取り巻く3つの大きな変化

20世紀の代表的な産業とも言える自動車はしばらくリニアな成長が続いていたが、ここにきて下記の3つのファクターにより、かなり大きな変革が訪れようとしている。
  • 自動運転テクノロジーの進化
  • 電気自動車 (EV) の普及
  • シェアリングエコノミーの成長
この3つが発展し、世界のリードをとっているのは間違いなくシリコンバレーだろう。それも、既存の自動車会社よりも新規参入した企業やスタートアップがその主導権を握っていることは間違いない。 参考: シリコンバレーが自動車業界に与える3つのインパクト

なぜスタートアップが自動車産業に有利なのか

大きな時代の変化が訪れる時、必ずと言って良いほど大企業は不利な立場になる。動きが遅く、無駄なしがらみが多いエンタープライズはまるで、気候の変化に素早く対応できない恐竜のように、身動きが取りにくくなる。 特に自動車業界では、これまで数十年間の歴史の中で熟成されたサプライ・チェーンの仕組みや製造工程が逆に足かせとなり、動きが遅くなる。そして最も危険なのが、特に日本の企業のその多くが、地方都市の有力企業として鎮座し、その危機に鈍感になっている点だろう。 その一方で、世界で最も変化が激しく、日々激しい競争が行われているこちらシリコンバレー地域では、昨日は存在していなかった新しいコンセプトやプロセスが日々実験、検証され、最先端のテクノロジーを活用し、ユーザーに最も適した商品やサービスが生み出されている。それが次のイノベーションに繋がっており、これに対して業界の壁は全くないと言って良いだろう。 参考: 日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事 そのような環境で生まれたのがTeslaであり、その他多くの自動車業界に変革をもたらすスタートアップであろう。彼らのミッションは既存の概念を打ち砕くことであり、しがらみが全くない状況で、心置き無くやるべきことを進めている。このような状況下では今後自動車関連のサプライヤーがどんどん打ち砕かれてもなんら不思議ではないだろう。 参考: シリコンバレーが自動車業界に与える3つのインパクト

ユーザーが自動車に求める体験も大きく変化してきている

ここで自動車というプロダクトを考える際に、考えなければいけないのが、現代のユーザーにとって”それ"はどのような存在であるかということ。特にミレニアル世代をはじめとした、若者たちにとっては、これまでの自動車、および自動車を所有することに対しての概念が大きく変化してきている。 参考: 若者が車を所有しなくなった6つの理由 当然のことであるが、消費者が魅力的と感じるプロダクト体験も大きく変化し始めてきており、”性能が良い=良いプロダクト” と言った単純な方程式が通用しなくなり始めているのも事実。実はこの辺に気づいている自動車メーカーは意外と少なかったりする。 参考: 変化する自動車に関する5つのユーザー体験

自動車業界注目のスタートアップ

これから紹介するのは自動車産業を大きく変革させると思われれるスタートアップ。B2Bという特性上派手さはないが、おそらく世界中の自動車メーカーが注目するべき対象となり、既存のサプライヤーを脅かす存在にもなり得ると考えられる。

1. Nuro

Eコマースの配送におけるラストワンマイルのニーズに合わせた自動運転車両を製造する。物流サービスに特化させ、ヒトではなくモノの移動にフォーカスさせることで、小型車両にプロダクトを収納し、購入者の家まで届けるのがコンセプト。プロトタイプのdubbed R1は見た目も可愛い。 nuro_web_usecases-715

2. Neteera

セキュリティーやヘルスケア領域でも活用されているセンサリングテクノロジーを自動車に適応することで、これまで以上の制度での物体検知が可能になり、自動運転車両の安全性をよりアップさせるテクノロジーを提供している。

3. GhostWave

自動運転を実現させるために最も重要なテクノロジーの一つであるレーダーを提供している。より高度なセンサリング技術で車両の周りにある物体を感知し、事故を未然に防ぐ。

4. Clear Motion

ソフトウェアとハードウェアのテクノロジーを融合させることで、極端なでこぼこ道などでも車両が揺れないようにする自動車のサスペンションを開発製造している。今後の自動運転時代には、車内がリビングルームのような存在になる可能性もあり、乗り心地は最優先事項の一つとなる。また、乗り心地が格段に改善されるだけでなく、旋回時やブレーキング時の性能のアップにも繋がる。 https://youtu.be/mdlpRAB0Guc

5. Mighty AI

画像認識と機械学習によるデータ分析テクノロジーを通じ、自動運転用ソフトウェア開発者向けプラットフォームを提供。車両が感知した画像データに対してメタ情報を付随させることで、物体の属性を定め、より深いレベルでの物体認識を可能にする。

6. Nauto

主に商業用車両を対象に、既存の車両に装着可能なデバイスとAIを活用したソフトウェアプラットフォームにより、車両の周りの状況と運転手の動きをリアルタイムで感知し、事前の事故防止を実現する。 AIを使った双方向カメラの車載器。前方を見る車外カメラと車内の様子を撮影する車内カメラでドライバーの煽り運転や脇見運転、居眠り運転、その他危険運転を察知し、運転後にフィードバックを行うだけでなく、商業用車両の場合には車両管理側がその様子を確認できるようになっている。 また、複数の車両管理にも対応しており、より効率的なオペレーションを実現する。日本市場進出に対してはbtraxがサービスを提供している。 nauto

7. Cognata

ディープラーニングとマッピングのテクノロジーを活用することで、既存の都市をヴァーチャルにCG化する。これにより、自動運転車両が実際の走行実験をする前にソフトウェアレベルでの走行実験に役立てることができる。

8. WayRay

AR技術を活用したフロントガラスに投影される形のナビゲーションデバイスを提供。リアルタイムで車両の周りの環境データを取り入れ、レンダリングすることで、情報の精度をアップさせ、より安全な運転と快適なドライビング体験を実現する。 https://youtu.be/7JWjesx7TZA

9. EV Safe Charge

EV車両を自宅やオフィスにてより効率的に充電するためのデバイスを製造している。既存の建物に後付けできる形になっているため、手軽にチャージングステーションを増やすことが可能になる。  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

アテンション・エコノミーの時代に求められるUXデザインとは

attention-economy
まずは下記のインフォグラフィックをご覧ください。100年の間にトップの座に君臨する企業が大きく変わっているのがわかるかと思います。 1917年の頃は、鋼鉄や石油など「モノ」に価値がある企業がトップにその座を置いていました。それに比べて2017年はと言うと、トップにいる企業は殆どがFacebookやGoogleなど、モノではなく情報を提供しているIT企業です。 関連記事:サービスデザイン入門編【モノからサービスへ】 stat 過去100年間でトップに君臨したアメリカ企業のインフォグラフィック(画像転載元:howmuchより) この事実を踏まえると、過去100年間でモノから人のアテンション(関心)に力が働いているということでしょう。石油を例に挙げると、供給に対して資源が少ない場合(またはその資源の確保が困難な場合)石油の価値が高くなり、ガソリンや航空券の値段も高くなります。 しかし一方で情報を提供するIT企業の場合、情報が有り余る社会の中でその企業の価値を上げる資源とは何でしょうか?それは、私たちのアテンションです。 そして、昨今このアテンションを取り巻く社会「アテンション・エコノミー」がIT企業の中で台頭し初めているのです。今回はその概念やインパクト、そしてアテンション・エコノミーの時代に求められるUXデザインとは何か、事例を交えながらご説明します。

アテンション・エコノミーとは

アテンション・エコノミーとは一説によると、アメリカの経営学者ハーバート・サイモン氏によって提唱され始めたようです。 「情報が有り余る社会で不足する資源とは一体何なのか。それは人々のアテンションである。しかし、情報が豊かなものであればあるほどアテンションの度合いが低下するため、膨大な情報量の中からいかに人々のアテンションを集めるかが大切である」 それでは、人々のアテンションを集めるためにデザインされたテクノロジーはどんなものが挙げられるか見てみましょう。

事例1:Facebook

皆さんも馴染みがあるFacebookですが、普段メールの受信箱に下記のようなメッセージが届くことがあるかと思います。件名には『〇〇さんが写真にあなたをタグ付けしました』とあり、メールの本文にはその写真をすぐ見れるようにリンクボタンが設置されています。 fb このようなメールが届くと、自分がどんな写真にタグ付けされたのかが気になり、無意識についFacebookへのボタンを押してしまうかと思います。そしてFacebookページに飛んだ後に他の写真を見たり、タイムライン上でフィードを確認したりと、気がついたら多くの時間を費やしてしまっていた・・・なんて経験はないでしょうか? このように、Facebookは他の企業が欲しがる私たちのアテンションを掴む力があります。昨今、多くの企業の成功指数が「どれだけ多くのアクティブユーザーを長時間繋ぎとめるか」で計られてる中、Facebookはデザインを通じて私たちのアテンションを上手に引き寄せているのです。

事例2:LinkedIn

Facebookに限らず他のSNSでもアテンション・エコノミーは活用されています。ビジネス特化型SNSのLinkedIn(リンクトイン)を例に挙げましょう。LinkedInは就職や転職、仕事上のコミュニケーションなどを通じて人と仕事を繋げるプラットフォームを提供しています。そのため、友人達との写真を載せるFacebookとは異なり、通知内容はいたってシンプルです。 ユーザーがLinkedInに求める通知は、「〇〇企業から面接のリクエストが来ています」といったビジネスライクな内容でしょう。しかしそれだけではユーザーのアテンションを十分に集めることはできないので、「今日は知り合いの〇〇企業勤続2年目の記念日です!一緒にお祝いしましょう」というような、少し違和感のある通知もしばしばあります。 企業がいかに私たちのアテンションを集めることに注力しているのかが窺える内容かと思います。

事例3:Snapchat

もう一つユーザーを逃さないために画期的なデザインをしている事例として、Snapchat(スナップチャット)をご紹介します。Snapchatには‘Communication Streaks’と呼ばれる、友人同士が何日連続でスナップチャットを利用して会話したかを数値化する機能があります。 こうすることで、友人同士がまるで特別な関係を築いているかのような感覚になり、その関係を示す記録を途切れさせたくないがゆえに特に理由がなくてもメッセージを送る傾向にあるようです。 ここで考えなければいけないのは、友情を深めることが目的だとしたら、実際に友人に会うのではなくアプリ上だけでコミュニケーションを取るのが果たして本人の意思になるのか、それともSnapchatのデザインに自然とコントロールされているだけなのか。 今後私たちはテクノロジーに費やす時間をどれだけ自分たちでコントロールできるのかを考えるべきなのかもしれません。

テクノロジーへの依存がアテンション・エコノミーを加速

現代のミレニアル世代は一昔前と違って、実際に身体を動かすことよりもゲームやスマートフォンといったテクノロジーに依存しがちで、鬱傾向にあるとも言われています。 特にスマートフォンへの依存に関しては以前からメディアでも取り上げられており、その中でも最近よく聞くのはそのデザインがスロットマシンと同様の依存性効果を持つという内容です。 スロットマシンの依存性については「見返りのランダム化」がもたらす効果に着目した研究があります。この研究はスキナー箱とも呼ばれていて、箱の中にネズミと押すと餌がランダムに分配されるボタンを入れ、ネズミがボタンをどう押すのか確認します。ネズミがこのボタンを押すたびに出てくる餌の量が同じだった場合、ネズミは必要に応じてボタンを押します。 しかし、餌の量をランダム化(微量にしたり大量にしたり調節する)した場合、ネズミはもう食べる必要がないのにボタンを押し続ける行為に至った、という研究結果が出ています。つまり、スロットマシンのデザインはスキナー箱の条件付けと同じ効果を果たしているので、多くの人が依存傾向にあるのです。そしてスマートフォンも同様の条件付けのデザインがほどこされているのです。 特に結果のランダム化という面では、GmailやFacebook、その他アプリに導入されているPull-to-Refresh機能(引っ張って更新する機能)がまさにその役割を果たしています。メールやアプリを更新する度に脳がランダム化された見返りを求めて「次は何が表示されるのか」と感じ、同じ行動を続ける行為に走ります。 その結果、たとえ通知が来なくても自然とスマートフォンに手が伸びてしまい、新しいメールが来ていないかを確認したくなってしまうのです。 テクノロジーの普及と共に欲しい情報がいとも簡単に手に入るような時代になっています。しかし、その一方で企業はいかにユーザーの時間やアテンションを得るか、躍起になっているようにも思えます。上記に挙げた事例のようなデザインが多くなればなるほど、ユーザーはテクノロジーにコントロールされることになるので、私たち自身もアテンション・エコノミーについて深い知識を得るべきでしょう。

アテンションエコノミーの台頭によって見えてきた問題

それでは、アテンションエコノミーが広がっていくとどのような問題が起きるのでしょうか。
  • 日々の生活、仕事中における注意散漫
  • 思考時間を奪う、イノベーション創出やクリエイティビティへの妨げ
  • 依存や鬱に繋がる可能性
  • 孤立感
  • 個人の意思で何かを選択するHuman willの侵害

人々の意思を尊重したUXデザイン事例

テクノロジーは素晴らしいものですが、本来人々の生活をより良くするために生み出されたものなので、人々の生活をコントロールするようなことがあってはいけません。それでは人の意思を尊重したデザインとはどんなものがあるでしょうか。事例を2つご紹介します。

事例1:iOS

先日iPhoneを新しいiOSに更新したところ、運転中における新着通知の有無を問われ、これこそユーザーの意思を尊重したデザインだと感じました。なぜなら、私は普段運転中はiPhoneをGPSとして使っているため、今まで電話やテキストが来るたびに画面の1/4がその通知で覆われ、つい通知に促されるままに電話に出たりテキストを読んでしまっていたからです。 近年ドライバー・ディストラクションが大問題となっている中、新しいiOSのデザインは素晴らしいソリューションです。自動で運転していることを感知し、運転中は通知が来ない設定に。また、設定次第では「運転中なのであとで返信します」と自動で返信することも可能です。 apple 画像転載元:Appleより

事例2:Hipmunk

もう一つの事例にトラベルサイトのHipmunkを挙げたいと思います。Hipmunkでは他のフライト検索サイトとは異なり、「価格」と「時間」の上にもう一つ「Agony」フィルターを設けています。 本来Agonyとは肉体的・精神的に感じる激しい苦痛を指しますが、Hipmunkでは「価格、乗り換え数、飛行時間を組み合わせたもの」 であると定義しています。 hipmunk また、検索結果の画面では旅程が一目でわかるようなデザインにしています。確かに、ユーザーが探しているのは「価格か時間」なのではなく「価格と時間」なので、ユーザー観点なデザイン且つとても理にかなっています。 hipmunk2

まとめ

アテンション・エコノミーは新しい概念ではありません。しかし、ネガティブなニュアンスを持つ一方でテクノロジーと人間の関係性を見つめ直すきっかけとなり、昨今バズワードとして注目されています。 そして、欲しい情報がいとも簡単にインターネットで手に入る時代、多くの企業が人のアテンションを得ようと躍起になっています。一時的なユーザー獲得であればその方法でも良いかもしれませんが、やはり人の意思を尊重したUXデザインこそが良いサービスとして存続できるのではないでしょうか。 再度となりますが、今後はアテンションを得るためではなくユーザーが本当に求めていることを実現させるためのUXデザインを設計していく必要があるでしょう。 関連記事:誰にでも分かるUXの基本

経験価値マーケティング【入門編】消費者の思い出に残るブランド体験を

experiential marketing
経験価値マーケティング(Experiential Marketing)とは、インタラクティブなブランド体験を通して消費者との関係性を構築するマーケティング手法である。 従来のマーケティングが一方的にブランドや商品のベネフィットを幅広いオーディエンスに向けて発信するのに対し、経験価値マーケティングはブランドやプロダクトのコアバリューが凝縮されたオフライン空間の中で、消費者と一対一のパーソナルなコミュニケーションを行うことに焦点を当てている。 そして、忘れられないブランド体験を提供し、消費者と感情的な繋がりを持つことによって、カスタマーロイヤリティーを構築し、顧客生涯価値を上げることを究極的な目的としている。 アプローチ方法の例としては、下記のものが挙げられる。
  • ポップアップストア
  • インスタレーション
  • ブランドの世界観に没入できるVR体験
  • インタラクティブな屋外広告
  • 最新テクノロジーを使った実験的体験
  • アートプロジェクト
  • オフラインのゲーミフィケーション体験
経験価値マーケティングの正攻法というものは存在しない。しかし、成功する経験価値マーケティングは、五感を駆使し、忘れられない体験に消費者に浸らせる仕組みを取り入れている。

なぜ今、経験価値マーケティングなのか?

1) 経験に価値を置くミレニアル世代

イベント・プラットフォームを運営するEventbriteが全米のミレニアルズ世代(1980年から1996年に生まれた、2018年現在で22歳から38歳の層)を対象を行った調査によると、この世代は経験を非常に重視している。さらに、彼らのイベントに対して使うお金と時間は年々増えているという。コンサートから、ネットワーキングイベント、フェス、スポーツイベントに、体験型アート、文化体験など、彼らはありとあらゆるイベントに参加する。 この世代にとって重要な価値観である、「ハッピーで充実した人生を送る」という目的のもと、様々なイベント通して思い出を作り、仲間と共有しているのだ。回答者のうち78%、すなわち4人に3人が欲しいものを買うより理想的なイベントに対してお金をつぎ込むと回答している。また55%のミレニアルズ世代は、イベントや経験に対して今までにない程にお金を使っている。 さらに82%のミレニアルズ世代が、過去1年以上になんらかのイベントに参加しており、その割合は彼らの上の世代よりも12%も高くなっている。にもかかわらず、72%のミレニアルズ世代は、今後イベントに使うお金をもっと増やしたいと思っている。ミレニアルズ世代は、とにかくイベントが大好きなのだ。

2) スルーされ続ける広告

消費者はいまだだかつてないほどの量の広告を浴びている。デジタルマーケティングの専門家による調査によると、平均的なアメリカ人は一日4,000から10,000の広告もの広告に触れているという。多すぎる、と感じるかもしれないが、自分の1日の生活スタイルを一度思い返して欲しい。 朝起きて一番に確認するソーシャルメディア上の広告やインフルエンサーによるスポンサードポスト、通勤途中に見る屋外広告や電車内広告、Eメールの受信箱に送られるブランドやお店からのニュースレター。 そして、仕事上のリサーチに使用するGoogle検索結果(Adwords広告)、ディナーのレストランを探すためにチェックをするレビューサイトの広告、自宅郵便受けに溜まったダイレクトメールの山、癒やしを求めてたどり着いた猫がじゃれるYouTube動画の前に自動再生される動画広告。 最後は、寝る前に再びソーシャルメディアを開き、目にする広告....一日をざっと振り返っただけで、いかに我々の生活が広告に囲まれているかを、再確認することができる。 しかし、消費者はこれらの広告を覚えているだろうか?そもそも、彼・彼女達は本当にこれらの広告を目にしているのだろうか?広告を強制的に非表示にする「アドブロック」機能を使っている人も少なくないし、動画であれば簡単に広告をスキップし、目的のコンテンツだけを消費することも容易だ。 一方的に商品のベネフィットを叫ぶ従来の広告では、消費者から支持を得るどころか、アテンションを得ることすら難しくなっている。従来の広告を使って、ブランドの認知を上げ、商品の魅力を伝えるには、繰り返しかつ継続的なコミュニケーションが必要となる。 その一方で、経験価値マーケティングは消費者と一対一のコミュニケーションを行うとこによって、短時間で効果的にブランドの認知やロイヤリティーを高めることできる。なぜなら、経験価値マーケティングは、五感を使ったブランド体験を提供し、感情を刺激し、長期的な記録として残る思い出の中に自然に入りこむことができるからだ。 学生時代の楽しい思い出は、大人になった今でも詳細を覚えているように、ブランディングされたエキサイティングな体験ができれば、消費者はその記憶をポジティブなブランドイメージとともに記憶する。そして、いざ消費者がブランドのサービスや商品が必要な場面に遭遇した際に、一番にそのブランドのことが記憶のなかで喚起されるのだ。

3) FOMOと#インスタ映え

FOMO(fear of missing out)とは、友達が参加している楽しいイベントに自分が参加しそこなってしまうことを恐れる感情のことである。友達の体験がソーシャルメディアで簡単に覗けるようになった今、多くのミレニアルズ世代がこの感情に振り回されている。 また、FOMOと切っても切り離せない関係にあるのが、インスタ映えである。なぜなら、クールな体験には「証拠写真」が必要だからだ。逆も然りで、友達が羨望するような写真や動画をソーシャルメディアに投稿するために、クールなイベントに参加をする必要がある。 このFOMOとインスタ映えへの執着が、ユニークな体験を提供するイベントへとミレニアルズ世代を呼び込み、新しいことにチャレンジさせ、ソーシャルメディアでのシェアを促すのだ。彼らはフォトブースだけではもはや満足できず、インスタ映えする新しい体験を求め続けている。

Glossierポップアップショップの成功と失敗

経験価値マーケティングの形態は様々であるが、btraxがオフィスを構えるサンフランシスコでは、ポップアップストアが多く登場する。そのなかでも、アメリカのミレニアルズ世代からカルト的な支持を得ているオンライン発D2CコスメブランドのGlossierが、期間限定のポップアップカフェをオープンしたということで、早速足を運んでみた。 glossier1 場所はオシャレなカフェやブティックが立ち並ぶミッションエリアの少し外れ。バターミルク・フライドチキンサンドイッチが人気のカフェ「Rhea Cafe」とコラボレートしたこのポップアップストアは、お店全体がGlossierカラーである「ミレニアルピンク」で染められている。 現在ニューヨークに1店舗ショールームがあるのみで、西海岸でGlossierの商品を試すことができるのは、このポップアップカフェのみということで連日大盛況。筆者が訪れたのは平日であったにもかかわらず20分待ち、週末となれば1時間待ちもざらだという。 Glossierのコスメのテクスチャを背景に「HAVE A NICE DAY」と書かれた外壁一面のペイント、パステルピンクで塗られた店内の壁、スタッフがユニフォームとして着用しているピンクのつなぎ、カウンター席を改造したドレッサー等...どこをとってもインスタ映えするものばかり。そして、その世界観はGlossierのオンラインストアやソーシャルメディアから配信されるもの、そのまま。 心躍るキュートなインテリアを目で楽しみ、普段は試すことができないコスメを試し、スタッフからアドバイスをもらい、新発売の香水の香りを楽しむ。まさに、五感をフル活用したブランド体験である。 glossier2 その一方で、残念な点も少なからずあった。まず、フライドチキンの香りがブランドのイメージに合っていないこと。 コスメと飲食という意外なコラボレーションを賞賛する声もある一方で、店内に漂うチキンの匂いがGlossierのガーリーな世界観と合っていないように思えた。チキンの匂いではなく、新発売の香水の香りが店内に漂うことを期待していた。 glossier4 また、入場制限をしていたにも関わらず、店内は大混雑。コスメを試すだけでなく、店内でイートインをすることも出来るので、メイクをしている人と食事をしている人が混在している状況であった。 経験価値マーケティングは、ブランドやプロダクトのコンセプトが凝縮されたオフラインの場において、消費者の思い出に残るパーソナルな体験を提供することに尽きる。見て、聴いて、嗅いで、触って、感じて、体を動かして、時には頭を使わせる....オフライン環境だからこそ実現可能な五感を活かした体験を提供し、ブランドの世界観を表現することが重要である。 このポップアップの最大の目的は、Glossierの世界観の中でコスメを試すことであるはずなのに、飲食というイベント追加することで、本来の目的を阻害している感が否めなかった。 Uberやairbnbの成功から分かるように、消費者が商品から体験に対して価値を置きつつある今、マーケティング手法としてのみならず、ビジネスにおける全ての側面においてユーザーを起点とした体験をデザインすることが重要となっている。 例えばbtraxが日本のクライアント様のアメリカ展開をお手伝いする際には、まず多角的な視点を持ったユーザー・市場リサーチから始め、対象となるユーザーを徹底的に理解した上で、オンライン・オフライン双方を使ったブランド体験作りを行っている。 今回ご紹介した経験価値マーケティングも、上記で紹介したユーザーの価値観と行動を変化を前提として行うマーケティング手法である。もしあなたのターゲットユーザーがそれらの価値を保有していない、もしくはそのような行動をとらないのであれば、せっかく経験価値マーケティングを行っても、望んだ通りの結果は見込めないだろう。まずは、ユーザーを正しく理解し、彼・彼女たちにとって、最も響く体験を提供することが重要である。

営業しない営業?デザイン思考を営業に活用する海外トレンド

sales-design thinking
昨年末、Salesforceよりある興味深い統計レポートが発表された。このレポートではグローバル企業3100社に対するリサーチから、最新のセールストレンドや営業の役割の変化について深い考察を示している。その中でも特に目を引いた報告が、セールスにおいて今カスタマーエクスペリエンス(CX)が非常に重要視されているという内容だ。 CXとは弊社btraxが強みとするUXやデザイン思考と同様、プロダクトやサービス開発における必要不可欠な考え方である。つまりこのレポートでは、セールスにおいて最も重要なKPI指標は売上やプロセスの改善ではなく、顧客満足度やネット・プロモーター・スコアなどのCXであるということを提唱しているのだ。 関連記事:デザイン思考を組織イノベーションに活用する10の方法 その理由のひとつに『ニーズの変化』がある。モノづくり大国の日本もそうだが、いいモノを作れば売れるという価値観の時代から今やモノが売れずサービスに価値が移り変わった現代となり、クライアントやユーザーのニーズそのものがより表面化しにくくかつ複雑化しているのだ。 まさに企業が解くべき問題が分からなくなった今、クライアントやユーザー体験の根本的な理解が必要不可欠で、クライアントさえも気づかない本質的な課題や価値を把握することが、顧客に最前線で接するセールスにも重要とされてきているのである。 そこで今回は、CX/UX・デザイン思考の観点でクライアントに新たな価値を届けるために抑えておくべきセールスの海外トレンドを3つお伝えしたい。

1. 課題の発見はお客様と一緒に

Sales 2.0から3.0の時代へ

日本の場合、例えば東京の会社が大阪から問い合わせを受けた際、日帰りで出張営業に行けてしまうが、アメリカではそのような営業をする企業は少ない。なぜならアメリカでは国土が広く営業の為の移動が非効率であるからだ。 また加えてSNS、Skype・Google HangoutのようなミーティングツールやCRMツールも普及した為、アメリカではインサイドセールスが今や当たり前となっている。つまり、直接クライアントに会い営業をすることに注力した時代から、ITを駆使し潜在顧客からのリードをどう集めるかといったSales 2.0の時代に移行したのだ。 そこに今、新たにデザイン思考の考え方を活用しMicrosoftやOracle, IBM等の競合他社を大きくしのぐ成長率を誇る、まさに新世代(Sales 3.0)のセールス手法を行う企業がアメリカで存在感を示している。欧州最大の企業向けソフトウェア会社のSAPだ。 ドイツに本社を置くSAPは1988年に米国へ進出し、現在は世界第4位の売上を誇るソフトウェア会社である。つまりSAPはアメリカで成功を遂げた数少ない外国企業とも言える。2005年にはデザイン思考を体系的に普及させる為、米国スタンフォード大学にd.schoolを設立したことでも有名な企業だが、同社はデザイン思考の考え方をクライアントへの提案力向上に活かしている。

グローバルで成功する企業は営業しない!?

私も以前、シリコンバレーでSAPの社員の方とミーティングをする機会を頂いたのだが、約8万人いるSAP社員のほとんどがデザイン思考を学び、顧客の本質的な課題やニーズはなにかという思考プロセスを各業務に活用しているという。 もちろんセールスを担当する社員も同様で、クライアントと接する際はサービス/プロダクト提案やソリューション方法を単に提示するのではなく、まずは顧客理解を徹底している。セールスが財務や経営企画など複数の部署をひとつひとつ回り、部門や部門間の課題、現場と管理職の見解の違い、個人単位の悩みまでもをヒアリングする。 また、時には課題を導き出すファシリテーターとしてクライアントの経営層と共にデザイン思考ワークショップを行い、クライアント企業と一緒になって経営課題の発見と明確化を行っている。 つまり課題解決そのものではなく、課題発見に焦点を当てたセールス活動、いわゆる課題のリフレーミングを行っているのだ。このアプローチにより、クライアントとはプレゼンを受ける側↔︎する側、決済側↔︎ソリューション提供側という関係性ではなく、課題を共に見出して解決を目指すひとつのチームという関係性を構築できている。この関係性を築く為のマインドセットが今後より求められるのである。

2. セールスは言わばCxO

前述のSAPはERPソフトが主軸の事業の為、セールス社員に必要とされるスキルや知識は当然IT関連のものであった。しかし、クライアントに新たな価値を提供する為には顧客の人事やマーケティング・経営企画に対する横断的な理解が必要である。 その意識改革までもをデザイン思考を用いて行っているのだ。この変革に供ない、セールスの評価基準も大きく変わった。ERPソフトの販売実績や売上をKPIとしていた過去から、人事・経営・マーケティング・IT部門までバリューチェーン全体との関係性構築がセールスの新たな評価基準に変わった。営業部門はまさに上流から下流までのプロセスを理解し新たなサービスを開発するサービス責任者(CSO)のようなポジションになりつつある。 なお、弊社btraxでもセールス部門のスタッフは私も含めBusiness Producerという役職名で業務をしており、デザイン思考やユーザー中心設計の考え方をセールス活動にフル活用し常にクライアントと接している。クライアント自身、まだ表面化できていない課題をデザイン的プロセスを通して明確化することに努めているのだ。 そしてBusiness Producerは売上や受注件数を追いかけるのではなく、どれだけ深くクライアントの課題を把握・理解できるかに注力し、プロジェクトを推し進めている。例えば、課題を引き出す為にクライアントとは対等な目線でディスカッションを行う。 その際、重要な事は我々が課題に対する答えやアイデアを提示をするのではなく、クライアント自身が課題認識と解決方法を見出せるようコミュニケーションを取ることである。デザイン思考でいうエンパシーマップ等のフレームワークを用いてクライアントの顧客理解などを共に行うのだ。 またクライアントとの対等な議論の為には、有価証券報告書などのIR資料の読み込みやミッションやビジョンといった経営理念・価値観の理解が必要不可欠なので、もし自分自身がクライアント企業の経営者(CEO)だとしたら何をすべきかという考えを常に持って活動をしているのである。 WS image クライアントとのディスカッションの様子

3. 最新テクノロジーを駆使したセールスツール

ここまで、アメリカのセールスにおけるマインドセットの特徴について述べたが、最後にセールス活動を支援するイノベーティブなセールスツールを紹介したいと思う。 冒頭で紹介したSalesforceのレポートによると、企業3100社に対する「セールス・営業業務の中でどのようなタスクにどの程度の時間を使っているか」という調査で、なんと業務時間のうち64%もの時間が直接のセールスの時間として使われていない、ということだ。セールスをミッションとした立場であるはずなのに、実質的なセールスを実施できていないという現状なのだ。 だからこそ、昨今MAやCRMツールを用いて営業や業務の効率化を図る動きが積極的なのもうなずける。今後ITやテクノロジーをセールスの業務にも活用する事がより当たり前になってくるであろう。 sales-statistics---how-reps-spend-time-compressor 画像転載元:15 Sales Statistics That Prove Sales Is Changing ここで、セールス活動をバックアップするサンフランシスコのスタートアップ、Chorusを事例として紹介したい。同社は会議の音声データを記録、文字起こし、要約を自動かつリアルタイムで行うAI議事録ツールを提供。昨年シリーズAで1600万ドルを調達、ガートナーによる『Cool Vendors in AI Core Technologies, 2017』にも選ばれている注目のスタートアップだ。彼らの顧客の中にはMarketo等の有名企業も名を連ねている。 既にミーティングの動画データを記録するオンライン会議システム等のサービスは存在するが、ミーティング内容をまとめ、『次回アクション』や『課題』といった重要コメントを自動把握・分類し、議事録にまとめあげてくれるサービスは革新的である。 また、分析機能としてミーティング参加者の誰がどれだけ発言をしていたか、または聞き手側だったかというようなパフォーマンスに関する分析データまでを得ることができる。 chorus Chorusのダッシュボード 以前、全米では毎日11億時間が会議の時間として使われているという記事を書いたが、このサービスでは会議つまり営業業務の効率化を図れ、ミーティングで議論した内容をクライアントと共有し認識を合わせることができる優れたツールだと感じる。私自身、セールス活動においてぜひ活用をしたいサービスだ。 そんなセールスにイノベーションを起こす、または起こそうとしている企業がアメリカ・サンフランシスコにはまだまだ存在しており、そしてなにより、デザイン思考を根底とした先進的なマインドセットとITツールを駆使したイノベーティブなセールスがアメリカでは実施されているのである。 Market-Map-Template-3.8.17-compressor 画像転載元:CB Insights

まとめ

最新テクノロジーや革新的なスタートアップの情報が注目されがちなサンフランシスコだが、サービス/プロダクトをユーザーにどう本質的な価値として届けるか、というセールスのマインドセット自体も先進的でイノベーティブなことがわかる。まさにクライアントのニーズの変化に順応したセールス手法を取っていると言えるであろう。 新規ビジネス開発の目的だけにとどまらない、CX/UX・デザイン思考を用いたセールスの手法やマインドセットのイノベーションという点において、サンフランシスコ・アメリカは最適な環境と言えるのではないだろうか。 本記事が、グローバル展開に課題を抱えていらっしゃる企業にとって少しでも営業・セールスのマインドセットの重要性のご理解に繋がり、課題解決の糸口としてなり得えたら幸いである。

ユーザーの心を掴むヒントは“ハイパー・パーソナライゼーション“にあり

hyper-personalization
hyper-personalizationGoogleによると、過去2年間でモバイル上でのGoogle検索内において”Best”という単語がなんと80%も増加したという。 またアクセンチュアによると、アメリカとイギリスにて1,500人のユーザーを対象に行った調査でユーザーの75%はパーソナライズされた情報やコンテンツを提供してくれるブランドから商品を購入する傾向にあることがわかってきた。 この2つのレポート結果から言えることは、ユーザーがオンラインで買い物をする際、購入前にベストなものをリサーチすることが当たり前になった、そしてユーザーはパーソナライズされたコンテンツに価値・魅力を感じるようになったということだ。 つまり、スマホが普及して欲しい情報を簡単に手に入れることができるようになったからこそ、ユーザーは商品購入前の情報収集を大切にし、より満足のいく購入体験(購入前から後まで)を求めるようになったのかもしれない。 ということは、ユーザーにオンリーワンなコンテンツを提供することさえできれば、商品購入までの道のりはぐっと縮まるはず。そうしてユーザー体験を向上させることで、ひいてはブランドへのロイヤリティ醸成にもつながるだろう。 では実際に成功しているブランドはどのように「オンリーワンなコンテンツ」をユーザーに提供しているのだろうか? 関連記事:未来のユーザー体験をつくり出す「未来予測」のすすめ

グローバル企業に学ぶ”一歩進んだコンテンツ作り”

まずは以下のグラフを見てもらいたい。これは企業が実践しているパーソナライゼーションの領域と収益の相関を示したもので、多くの企業が実践しているのはSingle Message Mailing(簡素なメッセージでのメール配信)からSegmentation Rules Based(ターゲットのセグメント)に留まることがわかる。 それに比べて収益が好調なAmazonやStarbucks、Spotifyが行っているのは、さらに一歩踏み込んだPredictive Personalization(ユーザー行動を予期したパーソナライゼーション)だ。ユーザー行動を制するものはビジネスも制するのかもしれない。 personalization 画像転載元:こちらの記事より それではグラフにも出ているAmazonとSpotifyの事例を見てみよう。

1. Amazon:レコメンデーションで潜在的な購買欲を掻き立てる

Amazonはユーザー行動のデータを巧みに操り、ユーザー1人1人に合ったレコメンデーションのシステムを生み出した。一番売れている商品をランキング形式で表示したり、新着商品のラインナップを表示する一方的なレコメンデーションとは異なり、ユーザーが起こした行動を元にコンテンツをキュレートしていくので、よりユーザーのニーズに基づく。 例えば、過去にPumaの靴を購入し、且つ検索クエリに「Puma」があると下記のようなレコメンデーションがメールで届くようになっている。これにより、ユーザーの潜在的な興味や購買欲を掻き立て、商品の購入に繋げることができるのだ。 amazon case study 画像転載元:こちらの記事より それぞれのユーザー行動をマッチング AmazonはItem-to-item collaborative filtering(アイテムベースの協調フィルタリング)というレコメンデーション・エンジンを生み出したことでも有名だが、実はAmazonのコンバージョンの35%以上はこのエンジンからきている。 この機能を簡単に説明すると、①似ているユーザー同士をマッチさせるのではなく、②購入/閲覧される商品の類似パターンをマッチさせてレコメンデーションを作るというもの。下記の画像を参照していただきたい。 ① この商品を買った人はこんな商品も買っています ➡︎あなたと似た関心を持つユーザーをマッチさせてレコメンド amazon2 ② あなたの購入品に基づくおすすめの商品 ➡︎あなたが購入した商品と似ている商品をマッチさせてレコメンド amazon ①だと日々趣味や嗜好が変わるユーザーの変動を追うことになるのに対し、②は商品という普遍的なモノを組み合わせることになるので、より正確なレコメンドになるということ。自分が欲しい商品だけが並び、そこから選ぶことができるMeコマースの時代が着実に浸透していっているのかもしれない。

2. Spotify:ユーザー行動と自然言語をマッチさせたオンリーワンなプレイリスト

1億4千万人のアクティブユーザーを抱える音楽ストリーミングプラットフォームSpotifyが生み出したハイパー・パーソナライゼーションは、AIを活用してユーザー好みの曲をキュレートした”あなただけのプレイリスト”Dicover Weeklyだ。 discovery week 一昔前は音楽のエキスパート達によってマニュアルでキュレートされたプレイリストや曲に関連するタグ(Hiphopなど)を付けて同じタグを持つ曲をマッチさせるような技術があったが、ユーザーの潜在的なニーズを引き出すまでには至らなかった。 しかし、Spotifyが作ったDicover Weeklyは多数のアルゴリズムを組み合わせることにより、ユーザー好みの曲をレコメンドすることができる。 spotify Discover Weeklyの仕組みを図式化したもの(画像転載元:Quartzの記事より) 複数のアルゴリズムの中でも特に注目してもらいたいのが以下の2つである。 Collaborative Filtering ユーザーの視聴記録、プレイリストへの追加、アーティストページへの移動といったユーザ行動を元に似ている行動パターンを取るユーザー同士をマッチさせ、”まだ聞いたことないけど聞いたら好きになるであろう曲”をレコメンドするアルゴリズム。 NLP(自然言語処理) Spotifyは日々、AIを通してそれぞれの曲やアーティストに付随する自然言語(人間が日常的に用いる言語)を集めている。具体的には検索エンジン、ブログ、SNSなどで使われている言葉を細かくデータ取りして、曲同士をマッチさせる時の指標にしている。 これらのアルゴリズムがあって初めてユーザー好みのコンテンツを提供することができるのだ。SpotifyがDiscover Weeklyだけで70億以上(2016年時点)もの曲のストリーミング実績を持つのも頷ける。 なお、Spotifyは昨年新たなレコメンドプレイリストTime Capsuleをローンチしている。これは16歳から85歳までのユーザーに昔聴いていた懐メロをレコメンドしてくれるもので、アカウント登録時の生年月日やユーザー行動のデータを元に選曲しているようだ。 このようにSpotifyは現在だけではなく過去と未来という別の時間軸でもコンテンツを提供することで、継続的にユーザーの興味を掻き立てることができる。

ハイパー・パーソナライゼーション=究極のユーザー体験

上記の事例のように、ターゲットユーザーの興味や関心、行動データを元に最適化した情報を提供することはハイパー・パーソナライゼーションと呼ばれている。 では従来のパーソナライゼーションとの違いは何だろうか。 <パーソナライゼーションの具体例> ターゲットユーザーの名前を宛名にしたニュースレターを配信する、SNSの投稿を地域や言語で分けて投稿するなど、最低限の情報量(ユーザーの基本情報や趣味、関心など)だけでユーザーに合ったコンテンツを提供する。 <ハイパー・パーソナライゼーションの具体例> ユーザーに関する最低限の情報+ユーザーの行動を把握してよりユーザー観点に近いコンテンツを提供する。例えば、あなたはオンラインショッピングでBというブランドの靴を見ているとする。 【行動①】過去に同じブランドの靴の検索・購入履歴がある 【行動②】オンラインショッピングは大体19時〜21時に買う傾向にある この2つの行動からブランドのBがあなたに対して19時〜21時の間にディスカウントの案内をプッシュ通知で送るというのがハイパー・パーソナライゼーションだ。ユーザーが提供する情報だけではなくユーザーの行動も上手く活用することで、ユーザーは「そうそう、こういう商品が欲しかった!」と感じ、彼らの心をくすぐることができるのだ。

まとめ

ハイパー・パーソナライゼーションを極めるためにまず必要なこと、それは多角的な視点を持ちユーザーを理解すること、これに尽きると思う。ユーザーの日々の動きや見るもの、触れるもの、感じることに目を向け、様々な仮説を立てて実際に検証する、この一見簡単なように思えて奥が深いプロセスをどう活用していくかが鍵となる。 弊社では、そんなサービスデザインを通して日本企業のグローバル展開を支援しているので、今回の記事が新たなサービス/プロダクト開発プロジェクトに関わる方々にとって有益な情報であると有り難い。 参考:

【農業 × テクノロジー】食の未来を変革する最新アグリテックサービスまとめ5選

agritech-top
2050年に我々は何を食べているだろうか?世界人口は現在の1.3倍となる96億人を超えると予想され、国連はカロリーベースで少なくとも70%以上の食料増産が必要であると発表した。農地や水、化石エネルギーなど食料生産に必要な資源には限界があり、アメリカをはじめ各国で農業スタートアップがたくさん生まれている。 インドア・ファーミングは次世代のオーガニック農法とも言われ、ソフトウェアやLED、ロボティクス技術やAIを活用した室内農場である。葉物野菜の生産量は、今後10年ほどでインドア・ファーミングが露地栽培のものと同じ生産量になると言われており、その規模は420億ドル(約4.5兆円)にもなると言われている。 また、インドア・ファーミングは都市近郊にもつくることができるため、物流コストや都市部への供給によってこれまでかかっていた環境負荷も下げられると期待されており、ビル自体を農場にするバーティカル・ファーミングともよばれている。日本では植物工場とも呼ばれ、京都に本社を置くSpreadが開発する全自動植物工場Techno Farmも世界的に注目されている。 過去5年ほどアメリカでは倒産するインドア・ファーミング企業が相次ぎ、なかなかビジネス化が難しいとされてきたが、2017年にはインドア・ファーミングのスタートアップPlentyが過去最大規模の資金調達に成功し転換点を迎えたのではないかと注目されている。 本記事では食の未来を担う可能性に満ちたスタートアップをいくつかご紹介したい。 関連記事:

1. Plenty 農業スタートアップとして過去最高の資金調達を実施

agritech-plenty 主要投資家:SoftBank Vision Fund, Innovation Endeavors, Bezos Expeditions, Chinese VC DCM, Data Collective, and Finistere Ventures 調達額:$226M サービス概要: 生産性の高い水耕栽培を実現させたバーティカル・ファーミングのスタートアップ。多くのバーティカル・ファーミングの取り組みでは、水平に設置されたトレーを使用して栽培を行うが、Plentyでは独自に設計されたポール状のタワーで栽培を行う。 各タワーは約10cm間隔で設置され、植物はそこから水平に成長し、さながら植物の壁のようになる。こうすることでこれまでの農法と比較して同じ面積で350倍の生産を可能にした。現在は葉物野菜の他、イチゴが栽培されており、将来的には根菜や木になるフルーツを除く多種多様な野菜・果物が栽培可能になる計画である。 都市近郊に工場を設置し、オーガニックのみならずローカルでつくられた野菜であるという価値を前面に押し出しながら事業展開を行っている。現在はサンフランシスコ市南部につくられた工場が稼働しており、2018年にはシアトルで新工場が予定されている。 注目の理由: これまで収量不足・流通量不足やテクノロジーコストが高いことから多くのバーティカルファーミングのスタートアップが倒産してきた。そんな中、2017年に農業関連スタートアップとしては過去最高となる200億円を調達し、この新しい食料生産方法を一般化する可能性がある企業として注目されている。 また、調達した資金を活用して今後数年間で世界展開を実施することが計画されており、最終的には100万人以上の人口を持つ500の都市に展開する目標が発表されている。

2. Freshbox Farms 短期間に黒字化したインドア・ファーミング

agritech-freshbox 主要投資家:Band of Angels, SQN Venture Partners, Chalsys LLP 調達額:$12.7M サービス概要: ボストン郊外のmillesという街で創業された、コンテナで展開するバーティカル・ファーミングのスタートアップ。使われている栽培技術はコンテナの中に水平に設置されたトレーによる水耕栽培。 現在はコンテナ12台と1台の"Mod"(9台のコンテナで構成されるFreshbox Farmsが独自開発したモデュラーシステム)で12種の野菜を育て、ボストン市内の37のスーパーマーケットに商品を提供している。通常の農法で7.7ヘクタール必要になる生産量をわずか約30m2のスペースで生産している。 今後5年間でアメリカ国内25カ所に展開し、それぞれ1〜3トンの生産量を目指す。 注目の理由: 野菜を育てるための独自テクノロジー開発に集中するスタートアップが多い中、Freshbox Farmではコンテナを活用したモデュラーシステムの改善に経営資源を振り向けている。 コンテナを利用するため大型工場による集中生産よりも短期間に事業開始が可能であるほか、他の同業スタートアップに比べ投資回収サイクルが非常に早い。2015年の創業から23ヶ月で黒字化を達成し、ビジネスの持続性の高さが注目されている。

3. Iron Ox ロボットで生産コストの50%を削減

agritech-ironox 主要投資家:Y Combinator, Eniac Ventures, Amplify Partners 調達額:$5M サービス概要: ロボットアームを活用して完全自動化を目指すインハウス・ファーミングのスタートアップ。野菜の生育段階にあわせて用意された各トレイに対して、ロボットアームが播種、散水の他、野菜の大きさに合わせた植え替え、収穫まで行う。 また、ロボットアームに組み込まれた高精度のカメラで野菜の状態を確認し、病気にかかったものがあれば間引く作業を行い、マシンラーニングで野菜の理想的な生育状態を学習していく。2018年にはサンフランシスコ・ベイエリアに約750m2の工場が完成予定されている。 注目の理由: バーティカル・ファーミングやインドア・ファーミングで最大の事業リスクとされるのが生産にかかるコストがある。多くのスタートアップが、主にLEDのコスト削減等に取り組む中、同社は野菜生産コストの50%にあたると言われる人件費の削減にロボットを活用して取り組み、他社とは一線を画すアプローチを取っている。 アメリカの農業界では労働力の高齢化と人手不足が予測されており、それにかかるコスト増が見込まれるが、同社の技術で農作業をロボットが代行することでその課題解決に取り組みより持続可能な農業の実現を目指している。 ちなみに共同創業者の1人、Brandon Alexanderは過去にGoogle Xでドローン・デリバリー・プログラムに携わっており、もう1人のJon Binneyはホテルで使われるルームサービスロボットの開発に携わっていた経験を持つ。

4. Square Roots 未来の食をつくるスタートアップ・インキュベーター

agritech-squarerobot 主要投資家:Powerplant Ventures, GroundUp, Lightbank, FoodTech Angels 調達額:不明 サービス概要: 2016年にニューヨーク、ブルックリンで始まった都市農業と起業家育成のためのプラットフォーム。未来の食に関連する起業家を育成する場となることを目的としている。 同社はファイザーの工場跡地の駐車場に設置された10台のインドア・ファーミング用コンテナで構成するアーバン・ファーミング・キャンパス、各コンテナを起業家に提供するレジデント・アントレプレナー・プログラム、近隣レストランとの連携やファーマーズマーケットとのコネクションを提供するコミュニティ・ネットワークで構成されている。 起業家たちはこのキャンパスにおいて13ヶ月間のレジデント・アントレプレナー・プログラムを通して農法、ビジネス、コミュニティ、リーダーシップに関して学習。さらに農業関連の企業やレストランオーナー、エネルギー専門家など多様なメンターたちとのネットワークや、主催するファーマーズマーケットやニューヨーク市内のレストランとのパートナーシップなど広く深いネットワークを得ることができる。 注目の理由: 共同創業者の1人であるKimbal Musk(Eron Muskの弟)はFarm to TableをテーマにしたレストランチェーンThe KitchenやNext Door、学校に「食べられる校庭」をつくるNPO・Big Greenなどを手がけており、フード業界で成功した起業家として影響力をもっている。 バーティカル・ファーミングという新しい食料生産方法が利用者に受け入れられるためには、それをいちはやく取り入れ、トレンドを作っていくアーリアダプターが重要になるが、創業者やメンターなど、Squarerootsの創業に関わる多くの人々自身がそういったアーリーアダプターであることが、その他の多くの取り組みと比較してSqaure Rootsをユニークなものにしている。

5. Row 7 Seed Company 有名シェフと種苗家がつくる未来の野菜

agritech-row7 主要投資家:Walter Robb, Richard Schnieders 調達額:不明 サービス概要: ニューヨークの著名なレストレランBlue HillのシェフであるDan Barberと種苗家であるMichael Mazourekによって設立された種苗スタートアップ。モンサントのような種苗企業が遺伝子組み換え種子などで高収量、鮮度保持性能を目指すのに対して、同社は美味しさを重視して品種交配を行う。 Mazourekが開発したハニーナッツ・スカッシュという新しい野菜は、一般的なバターナッツ・スカッシュよりも小さいが栄養価が高く、砂糖などを加えなくても十分に甘い。Barberと出会いさらに工夫を重ねてBlue Hillでメニュー化したところ、多くのレストランでも取り入れられた。現在はWhole FoodsやCostcoなどでも買うことができる。 なお2017年秋には食材宅配サービスのBlue Apronが950トンも購入し、ユーザーへの提供を開始。Row 7では多くのシェフ、種苗学者が協働してさらに多様な野菜の開発に挑戦しており、それぞれの自然環境にあった食物生産と食文化が結びつく地域主義的な食環境の実現を目指している。 将来的にはウォールマートでの販売でも視野に入れており、ホールフーズ前共同CEOであるWalter Robb、食料サービス企業であるSysco Foodsの前CEO、Richard Schniedersからの出資を得て、事業の拡大を計画している。 注目の理由: 近現代の農業が目指した野菜の均一化に一石を投じる新しい試み。アメリカのレストラン業界では、生産の現場から食卓までを近づけることで、より健康で正しく美味しい食事を実現しようとするFarm to Tableが大きな流れになっている。 Row 7の取り組みは、これまで市場性を得られなかった商品作物が、有名レストランのシェフというインフルエンサーを介して商品開発とマーケティングを実施し顧客獲得した事例であり、新しい食料生産の可能性を感じさせるものである。

まとめ

今回紹介したインドア・ファーミングの企業は都市内あるいは都市近郊での野菜生産を目指しており、地元でつくられた食材を食べることを推奨するFarm to Tableと世界観を多分に共有している。 近現代の大規模農業では食料生産とその消費の場所は遠く離れていることが多く、保存方法や流通、卸や小売などもその遠距離輸送に適応してつくられているが、今後は今回紹介したようなスタートアップによって食料生産に変革が起き、結果的に食・農業をとりまくより広い領域のビジネスがディスラプトしていく可能性がある。

最近のスタートアップのロゴのスタイルが似通ってきている問題について

logo-main
お気に入りのスタートアップやサービスのロゴがいつの間にか変わっている。このような事が最近増えている。少し前までであれば、「ロゴのリデザイン ー なぜGapが失敗しAirbnbが受け入れられたのか」でも見られるように、ロゴの変更やリブランディングは一つのトピックとして、多くの人たちからの反響が得られていた。 しかし、最近ではなぜか”しれっと"変わっているケースが後を絶たない。それも新しいロゴのデザインが”ある一定の”共通パターンをなぞっていて、特にロゴタイプの部分はどのロゴもかなり似通ってきている。

スタートアップのビジョンをロゴで表現

スタートアップを始めた当初には一体何があるであろうか?ファウンダー達の理想的な未来へのビジョン、名前、そしてロゴぐらいだろう。プロダクトもほぼ無い状態の場合、見た人の印象に残るのはその名前とロゴぐらいしか無い。そのために、自分たちのビジョンをロゴに込めて表現するケースは珍しく無い。

会社のフェーズによってロゴの役割が変化する

スタートアップは、急激に成長することをゴールとしていることから、短期間のうちに会社のフェーズがどんどん変化する。最初は、既存の常識に囚われたくない反逆精神を持った若者たちの社会への挑戦から、ユーザーを獲得。大きな資金を調達し、多くの人が関わることで、バランスのとれた”まじめにな”企業へと成長する。 ユーザーのターゲットも特定の考えを持ったアーリーアダプター獲得から、世間一般の人々へのサービスの浸透を目指すためのゴールのシフトする。知名度が低いうちはロゴも他とは異なる奇抜なデザインで目立つことで覚えてもらう事を目的としていたのが、徐々に市民権を得て、一般ウケするものへと変貌を遂げる。まるでこれはデビュー当時は奇抜なメイクで目立っていたビジュアル系バンドが売れてくるにつれて、地味な服装とスッピンになっていくのに近い感覚だろう。 logo-before-after もちろんこの変化には、当初は自分たちで未熟なデザインをしていた時代から、徐々に専属のデザイナーやデザインチームを要するようになった事も大きいだろう。そうなってくると、ロゴもセオリーに合ったデザインが施される事となる。 このロゴの変革は、既存の概念を破壊するユニークなサービスから、日々使いたくなるシンプルで使いやすく分かりやすいサービス体験をビジュアルとして表現しているのである。スターアップの存在としても、ユニークなサービスを通じて世の中に変革をもたら役割から、ユーザーの生活の一部に欠かせない存在になる事に変貌をとげ、それを具現化する方法の一つとしてロゴが存在している。

実はロゴタイプよりもアイコンの方が重要な時代に

ちなみに、スタートアップの"ロゴ"と言った場合、最近ではその多くが"アイコン"をイメージする事が多いだろう。その理由は単純で、アプリのアイコンそのものがロゴの役割をしているから。厳密に言うと、ロゴはアイコン部分のロゴシンボルと文字の部分のロゴタイプに分けられるのであるが、現代においてはとりあえず"アイコン = ロゴ"の認識が一般的になりつつある。 logo-body この辺の変化は、経験豊富なベテランデザイナーなどからすると"邪道だ!"と叱責されるかもしれないが、これも時代の変化によるもので、それに順応できない方がデザイナーとしての能力が低いと言わざるを得ない。

トレンドはサンセリフ書体を使ったシンプルスタイル

では最近のロゴ共通するパターンとは何なのか?ロゴタイプの部分が丸みを帯びたサンセリフの書体を利用し、余計なエフェクトやアクセントを廃し、全体的にシンプルにまとめ上げられている。まるで社名をデザインソフトで”サクッと"タイプしただけのように見える。 ちなみに”サンセリフ”とは、文字の書体の一つの種類。「サン」とは、フランス語で「〜のない」という意味で文字にとめ、はね、はらい、などのが無いタイプのもの。日本語だと”ゴシック"と呼ばれるものに近い。代表的なフォントとしてHelveticaやFuturaがあげられる。 fonts 参考: タイポグラフィーとブランディングの密接な関係 もちろん文字と文字との間のカーニングの調整や、全体的なバランスも考慮されているが、どれも同じようなパターンを踏襲しているようにも見える。

一番の原因はスマホなどのデジタルデバイス

アメリカのデザインスクールでは、原則的にセリフ書体は印刷媒体、サンセリフ書体はデジタル表示用に使い分けろと教えられる。これは、人間の目の性質と解像度との関係が理由。 新聞などの紙媒体では、メリハリの多いセリフ書体の方が文字を識別しやすいが、解像度の低いデジタル画面では、セリフの細い線が見えにくくなってしまう特性があるため、サンセリフを使う事がセオリーとされている。 参考: 米国のデザイン教育から学んだこと それに加えてWebやスマホアプリなどのデジタル系のサービスを提供することの多いスタートアップの場合、ロゴを見られる場所が圧倒的にデジタルになるため、おのずとセリフ書体を利用する事が多くなる。特にスマホなどの小さい画面の場合、セリフの細い線は画面が小さくなると表示に限界が生じるので、デザインの幅が限られてしまう。 様々な大きさやスペックのデジタルデバイスに対応するには、小手先の装飾は通用しない。よりシンプルでわかりやすいデザインが必要とされてくる。フラットデザインやマテリアルデザインなどが普及したのにはそのような背景もある。ロゴにおいても、GoogleのようにCSSでも書き出せる仕組みにしたのもまさにデジタル化の流れの一つだろう。

メルカリもアメリカでリブランディング

日本発のユニコーン企業として注目されているメルカリであるが、実は先日アメリカ版のロゴを一新した。それもかなり大きな変更を行った。メルカリのこのリブランディング施策は、実は上記のトレンドとは全くをもって逆行する形である。 mercari-redesign もともとメルカリのロゴは、可愛いアイコンと丸みを帯びた整ったサンセリフ書体のロゴタイプで、最近のトレンドに沿ったデザインだったのが、まるで立ち上げ期のワンパクなスタートアップっぽいロゴに変化したのだ。もしかしたら彼らはアメリカではまだまだ"とんがった"存在でいたいという事なのだろうか?

これからはロゴもユーザー体験の一部になる

ここまで説明してきた"ロゴ"であるが、一般的にブランディング要素の一つとして考えられる事が多い。しかし、デジタルサービスが主流になった現代では、それに加えてサービスにおける体験をはじめとして、複数のタッチポイントでのUXがブランド構築の役割を担うようになってくる。そうなると、ロゴ単体での役割は限定的になるだろう。言い方を変えると、ユニークな体験が提供し続けることができれば、ロゴはコンサバティブになっても問題はないのである。 加えて、最近話題のスマートスピーカーをはじめとする音声認識型サービスなどにおいては、まさに"音声"がそのサービスのアイデンティとなるわけで、"ロゴ"の概念が大きく変わってきてる。現に、AlexaやSiriといったサービスにはロゴはほぼ無いと言っても良い。"音"を通じたユーザー体験が価値となっているので、ビジュアル要素が極力少なくなっているのも理解できる。 ちなみにComScoreの調査によると、2020年までには検索のおおよそ50%は音声によるものになるとのことで、ロゴに合わせて社名自体もユーザー体験において重要な役割を果たすようになるだろう。発音のしやすさや覚えやすさから始まり、下記のように"動詞"として定着するかが勝負となる。
  • Google it - 検索する
  • Tweet it - ツイートする
  • Instagram it - インスタでシェアする
参考: スタートアップやプロダクト名を考える際に重要な6のポイント

ユーザー体験がブランド構築のコアになる

このように、ロゴをはじめとして、企業やブランドが一方的に発信する「ブランディングメッセージ」というものはすでに時代に適合しておらず、過去の異物になり得る。これまでは、企業のロゴやコーポレートI.D.、広告やマーケティングキャンペーンなどを通じて、消費者やユーザーに対してのブランド形成が一般的であった。 しかし、ふと考えてみると「うちのブランドはこれを強みとしており、貴方にこんな価値を届けます」と表現するだけでは、あまり意味がない。 消費者としてはむしろ「では、実際にそれを体験させてみてよ」と言いたくなる。これは、ミレニアル世代をはじめとして、誰もが簡単に体験を受け取ることのできるこの時代に生きる人たちの視点からすると当たり前の価値観だろう。 ブランド構築の側面を考えてみても、UXデザインのプロセスをしっかりと取り入れることで次世代の企業やサービスの価値を向上させる事ができると考えている。 参考: UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 –  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

【2018年版】ウェブデザインの最新トレンド5選

【2018】最新のウェブデザイントレンド
Windows8が登場した2012年以降、ウェブデザインに関する話題においてフラットデザインという用語をよく耳にするようになった。 AppleもiOS7を発表した2013年からは、従来使われていたスキューモーフィズム、つまり物理的なアイテムに似せたデザインをやめ、フラットデザインを採用している。 iOS6,7

iOS6, 7

これらにより多くのウェブサイトに影響を与えたフラットデザインは、現在多くのウェブサイトで見かけるようになったが、ウェブデザイン界ではこれに限らず毎年クリエイティブなデザインが生まれ続けている。 この記事では、2017年後半に見られたクリエイティブなウェブデザインのうち、2018年も引き続きトレンドとして見られるであろうものを紹介する。

【トレンド①】モバイルファースト

アクセス解析ソフトを提供しているStarCounterによる世界のブラウザ定点観測の調査によると、2016年11月にモバイルブラウザーの利用率がブラウザ利用率の全体の「50.62%」を占め、モバイルの利用率が従来のコンピューター利用率を超えたことが明らかになっている。 弊社、btraxの当ブログであるfreshtraxでも読者のおおよそ半数がモバイルからアクセスしている。 このモバイル利用率増加を背景に、デバイスに依存しないレスポンシブデザインがトレンドとなり、相性の良いフラットデザインも同時によく見かけるようになった。 何年も前から言われていることではあるが、2018年以降はこれまで以上にモバイルファーストを意識しなくてはならない。 モバイルファーストなウェブデザインの特徴としては、アイコンを多用して少ないスペースで効率よくシンプルに情報を見せていることだ。 例えば横線を縦に3つ並べたハンバーガーメニューなどは非常に一般的なアイコンとして浸透しており、今では多くのユーザーにとってその機能が馴染みのあるものとなっている。 RestuarantFinder

Nutrition app design by Masum R.

g-star.growing

Home growing app design by Typelab D

【トレンド②】フラットデザイン2.0

フラットデザインが進化し、シャドウやグラデーションによってより奥行きのあるフラットデザイン2.0とも呼ばれるセミフラットデザインがトレンドとなっている。 scale

scale

fireworks.prayer

Fire Works mobile app by Samuel.Z, Mobile app by M. Tony for Elmurz

bubblewits

Bubblewits

従来のフラットデザインでは余分な装飾やグラフィックを省いたがゆえに、クリックできる箇所がわかりづらいなどといった課題があった。 しかし、フラットデザイン2.0は上記のデザインのようにドロップシャドウやグラデーション、効果的なアニメーションを一部に取り入れることで、従来よりもわかりやすい、つまりユーザビリティの高いデザインを実現している。 ちなみに冒頭で紹介したiOS7のアイコンにもグラデーションが効果的に使用されていることがわかる。

【トレンド③】鮮やかな配色

adobe

Adobe

spotify.egwineco

Spotify, Eg WineCo

ariellecareers

Colorful landing page design by Adam Bagus for Arielle Careers

2018年にはビビッドカラーなどの鮮やかな色合いがトレンドになると言われている。 これはスクリーンやモニターなどの装置の技術的進歩により、豊かな色を再現することが可能になったことで結果的にデザインの可能性が広がったゆえのトレンドだ。 色はブランディングにおいて重要性が高く、色の知覚は感情に結びつくため、効果的にユーザーにアピールすることができる。ターゲットとなるユーザーがどのような感情を欲しているか、国や文化によって色に対するイメージが異なることを理解することが重要である。

【トレンド④】アニメーション

loadgif

GiFs – such as this one by Chris Gannon – are back in favour

gifアニメーションが再起しつつある。 gif規格は現在ほとんどのデバイスで読み込むことができ、ロード中に表示するなど効果的に使用することができる。 アニメーションロゴなどは、少ない時間で効果的に情報をユーザーに伝えることが可能で、企業のブランドをさらに強化するために大きな可能性を与えるかもしれない。 zendesk

Zendesk

digitalasset

Digital Asset

また上記のように、スクロールアニメーションやパララックス、つまり視差を利用した演出によってユーザーの理解を高めたり、効果的なブランディングが可能になる。 alarm_material_ui

dribbble

さらに、クリックやタップ時のアニメーションを効果的に利用し、ユーザビリティを向上させることも可能だ。 上記の例では、タップしたアクションボタンを起点としたアニメーションが、ユーザーに自身が行っている操作と、その結果が結びついていることを理解するために役立たせることができるなど、細かなアニメーションがユーザビリティ向上に役立つことがわかる。 ブラウザの進歩によって様々なアニメーションが実装できる今、シンプルなデザインであっても効果的に印象を与えることができる。

【トレンド⑤】オリジナルイラスト

dropboxbrand

Dropbox.design

craterlabs.zingle

Web page illustrated and designed by SixDesign, Zingle

1960年代後半まで広告の世界を支配していたイラストレーションだが、ウェブの世界で再起しつつある。 イラストは、ウェブサイトに個性を見いだす画期的な方法であり、機能性とシンプルさを損なうことなく企業の目指すブランドのトーンに合わせた性格を表現できる。 形、大きさ、スタイルなど無限の可能性があるイラストは、ユーザーエクスペリエンスという名目で遊び心を失うことなく個性を出すことができるだろう。

まとめ

上に挙げたトレンドに共通するのは、ユーザーファーストでありつつも大胆かつ的確にユーザーに伝えるための手法であるということだ。 2018年は最近のウェブの記憶の中でもっとも楽しい年になりつつあると言えるだろう。

アパレル業界が挑む新たな変革 – 消費者がブランドに求める“透明性”とは?

fashion-industry
ハイウエストスキニージーンズ - $95 従来の小売価格 - $225 アメリカのDirect to Consumer (D2C)系ファッションブランドで、最近よく見かけるようになったこの表記。D2Cとは、自社で企画、製造した製品を実店舗や小売店を介さずに、自社のオンラインストアのみで販売するビジネスモデルである。 削減した中間コストや小売マージンを販売価格に反映させることで、消費者は高品質の商品を従来価格の約半額もしくはそれ以上で購入することができるというわけだ。 dstld (画像転載元:DSLTDのウェブサイトより) 消費者がこれらのブランドを支持する理由は、安いから、だけではない。自分が支払った金額は適正か、そのお金は何に使われているのか知りたい、自分が賛同できる取り組みや方針を掲げる企業から商品を買いたい、という意識の変化が起こってきている。

66%の消費者は多少高くても、サステイナブルなブランドを選ぶ

ニールセンが60ヵ国の30,000人の消費者に対して行った、サステイナビリティーに関する調査、2015 Global Corporate Sustainability Reportでは、66%の消費者がサステイナブルなブランドに対して、積極的にお金を出すと答えた。2013年の調査では50%、2014年の調査では55%、とその割合は年々増加している。 世代別に見るとミレニアル世代では73%もの人がサステイナブルな商品に対して余計にお金を払うと答えており、2014年の50%から大きく上昇している。Z世代として知られてている1995年生〜2012年生まれの層においても、同様の結果となっている。 サステイナブルな商品に対して積極的にお金を払うのは富裕層だけではない。むしろ、社会や環境に貢献している企業が提供する商品やサービスに対して余計にお金を出すを答えたのは、年収$50,000以上の層よりも、年収$20,000以下の層が5%も多いという結果が出ている。 さらに、これらの「サステイナブルな商品に対して進んで多く払う」人たちの50%以上が、サステイナビリティー要因が購買行動に影響を与えると答えている。一方で、割引やクーポン等の金銭的要因はトップ5にすら入っていないことが今回の調査で明らかになった。つまり、利便性やコストよりも個人の価値観の方が、購買行動に大きな影響を与えるのだ。 nielsen-stat (画像転載元:ニールセンの本記事より)

明るみになったファッション業界における非人道的な労働環境

このようにサステイナビリティ―への関心を高めたきっかけとなった事件がある。2013年4月24日、バングラディッシュ。グローバルファッションブランドの生産を請け負っている多数の工場が入居していた『Rana Plaza』が倒壊した。 倒壊の数日前に建物に亀裂が入っていたことが確認されていながらも、工場の経営者たちは従業員に労働を強要。その結果、1,100人以上が命を落とし、2,500人以上が怪我を負うという、ファッション業界最悪の事故となった。 Rana Plaza ↑Rana Plaza倒壊の様子 ©rijans 商品を低価格で提供するため、または企業の利益を拡大するため、多くのファッションブランドが開発途上国の工場にて生産を行っている。下請け工場で働く労働者の多くは、若い女性や子どもたちで、彼女たちは驚くほど低賃金で、長時間、危険で暴力が蔓延る非人道的な労働環境で働いていることが、この事故が明るみになった。

私の服はどこから来たの?#whomademyclothesキャンペーンの広がり

ラナ・プラザ倒壊事故をきっかけに、ファッション業界の透明性と持続可能性を高め、非人道的な労働環境を改善するべく、民間団体『Fashion Revolution』が発足。そして、今着ている服のラベルの写真と、ハッシュタグ #whomademyclothes を付けて、その服がどのように作られたかをブランドに直接問いかけるキャンペーンを開始した。 現状を理解することが、ファッション業界における搾取的なビジネスを変える1歩に繋がるからだ。この#whomademyclothesキャンペーンの参加者は、2015年は4万人、2016年は7万人と、2017年は10万人と、年々増加し、キャンペーンの盛り上がりを覗うことができる。 FRW17 (画像転載元:Fashion Revolutionのウェブサイトより)

トランスパレンシー先端企業の取り組み

今自分が買おうとしている商品は、誰がどんな環境で作ったのか?どんな原材料が使用されているか、それは地球環境に優しいものか?販売している企業は、社会に対して貢献をしようしているか? ニールセンの調査結果や#whomademyclothesキャンペーンの盛り上がりから見受けられるように、サプライチェーンや企業のビジネスのあり方に対する透明性を求める声が高まってきている。 これらの消費者のニーズに応えることができなければ、消費者の気持ちは簡単に離れてしまうだろう。逆に、ブランド側はビジネスの透明性を高め、社会への貢献を世界に向けてアピールすることで、長期的な消費者の信頼を勝ち取ることができるのだ。 では、トランスパレンシー先端企業は、一体どのような取り組みを行っているのだろうか。面白い取り組みを行っている3つの企業を紹介する。

1.コストの内訳を公開

透明性で有名なブランドとして一番に挙げられるのが、”Radical Tranceparency”(徹底的な透明性)を信念として掲げるサンフランシスコ発のブランド『Everlane』であるが、テック企業版のEverlaneとも言えるのが、ソーシャルメディアのコンテンツ管理ソフトウエアを提供する『Buffer』だ。 "Default to Transparency" (透明性をデフォルトとする)を自社のバリューに組み込み、サービス価格の内訳やリアルタイムの収益情報、社員の給料、社内の多様性の状況、資金調達状況、プロダクトロードマップ、さらにはBufferの社員が読んでいる本に至るまで。一般的な企業であればトップシークレットとなり得る様々な情報を包み隠さず公開している。 buffer-pricing ↑Bufferのサービスコスト内訳(画像転載元:Bufferのウェブサイトより) Bufferのブログでは、コスト内訳の詳細な情報を知ることができる。例えば、Bufferが製品開発やマーケティング、ビジネスオペレーションで使用しているサービスの一覧とその費用や、企業文化を高めるために行われている施策とそのコスト、マーケティング費用と施策、そしてこれらの費用をどのように算出したかについても触れている。 また、非常に興味深いのは、全社員の給与とどのようにしてその給与額が決められたかというメトリクスを公開している点である。これは、消費者に対して透明性を高めるのみならず、社内における透明性の向上にも大きく貢献している。 Buffer_Metrics ↑給与を計算するためのメトリクス(画像転載元:Bufferのウェブサイトより)

2.生産者のサステイナビリティーを支援

生産工場の情報を開示するブランドは増えてきているが、その1歩先を行くブランドが、シューズブランドの『Nisolo』だ。Nisoloは、エシカルな方法で運営されている工場とパートナーシップを結ぶだけでなく、生産者が持続可能な方法で働き、長期的に彼らの生活の質が向上するような取り組みに力を入れている。そして、これらの取り組みについての詳細と結果を、Impact Reportとして、自社のウェブサイト上で公開している。 Nisoloの製品は主に、ペルー、メキシコ、ケニアにある自社工場、パートナー工場、および、個人経営の職人によって作られている。いずれの形態であろうと、Nisoloの生産者には、フェアトレードで定められた最低賃金を大幅に上回る給料が支払われるよう徹底していることに加え、業態に合わせて下記の取り組みが行われている。 Nisolo (画像転載元:Impact Reportより) 自社工場: ペルーにあるNisoloの自社工場で働く生産者には、フェアトレードで定められている賃金を33%も上回る賃金が支払われていることに加え、全額会社負担の健康保険と年間15日以上の有給休暇が与えられている。また、生産者の金融リテラシーを上げるためのトレーニングプログラムを実施。その結果、現在では生産者の100%が銀行口座を持ち、49%が長期預金を行うことができるようになったという。 2年前の生産者の銀行口座保有率は10%で、生産者のほとんどがNisoloで働くまでは、口座を持っていなかったことを考えると、これがいかに大きな変化かわかるだろう。その他にも、英語のクラスやメンタルヘルス、コミュニケーション能力向上のためのクラスなどを提供し、生産者の長期的な生活の質の向上につながるプログラムを提供している。 パートナー工場: Nisoloの生産パートナーになるには、Nisoloが定める厳しいサステイナビリティーの基準を満たす必要がある。例えば、生産者は18歳以上であること、フェアトレードが定める最低賃金を超える賃金を支払うこと、健康保険を提供すること、安全な労動環境を整えること、などが条件となっている。また、Nisoloのスタッフが自ら現場に足を運び、パートナー工場との信頼関係を強めているという。 個人経営の職人: 途上国で事業を営む職人の多くは、ビジネスを成長させるのに必要な知識やリソースの不足に直面している。現地の職人とパートナーシップを結ぶことは、雇用の創出及び、クラフトマンシップの保全にも繋がる。 そこで、Nisoloは、ケニア及びペルーの職人とパートナーシップを結び、継続的な商品の注文とビジネスコンサルティングを行っている。例えば、2016年にオペレーションの専門家をケニアのナイロビに派遣。現地職人達に対してメンタリングを提供した結果、生産性や組織マネジメント、在庫管理の改善することに成功した。 また、職人達の労働環境を向上させるべく、パートナーの職人達に対して聞き取り調査を行っている。2017年に行った調査の結果、政府の援助を受けるのに必要な身分証明書の不足により、誰も保険医療を受けられない状況にあることが判明した。 そこでNisoloは、出生証明書や、政府の保険医療を受けるために必要なその他の書類集めを積極的に支援。その結果、現在パートナーの職人たちのとその家族の100%が保険医療を受けられるようになったという。

3.消費者から投資者に

2014年にスタートした『DSTLD』は、人道的な方法で丁寧に作られた高品質な商品を、デジタルプラットフォームを使って直接消費者に販売している。注目すべきは、クラウドファンディングを使用してファンから資金調達をしているという点だ。 そして、投資者がアクセスすることができるポータルサイト『Invester Portal』にて、リアルタイムの売上データ、経営分析やマーケティング計画などを公開。さらに、投資者が次期商品のプロトタイプにフィードバックを行ったり、新商品の開発に携わることができるようになっている。また、クラウドファンディング・プラットフォームの『Seed invent』のウェブサイトでは、ピッチ資料を含む様々な情報を、DSLTDに投資をせずとも手に入れることができる。 InvestorPortal (画像転載元:DSLTDのウェブサイトより) 消費者から投資を受けている以上、売上や今後の計画について開示することは義務である一方で、情報開示によってロイヤリティーの高いファンからフィードバックを得て、それを成長戦略に活用いる点は注目に値する。実際、前回のクラウドファンディングでは、$170万ドルを1700人のカスタマーから調達し、収益を3倍に伸ばしている。

まとめ

世界で高まりつつあるビジネスへの透明性、さらにはサステイナビリティーへの関心の高まり。この意識の変化の波は、早かれ遅かれ日本にやってくることが予想される。企業の取り組みについてオープンにすることは、消費者の長期的な信頼とロイヤリティーを得ることができるだろう。 ちなみに、上述の世界的なキャンペーン『Fashion Revolution Week』が今年も4月23日から29日の日程で開催される。もし、ファッション関連の仕事に従事しているならば、トランパレンシーへの取り組みの第一歩として参加してみてはいかかだろうか? imadeyourclothes (画像転載元:Fashion Revolutionのウェブサイトより) 消費者が投げかける、#whomademyclothesの質問に #imadeyourclothesのハッシュタグを付けて答えてみよう。過去には、『marimekko』や『American Apparel』、『G-star Raw』等のグローバルブランドを始め、多くのブランドが参加をしている。 上の写真の「I made your clothes」ポスターはFashion Revolutionのウェブサイトからダウンロードすることも可能。もちろん、自社でオリジナルのサインを作ったり、生産工場にフォトブームなんかを設けてもいいかもしれない。 参考:

世界4大IT企業“GAFA”に学ぶ次世代の働き方 (前編) -コーポレートキャンパスの実態を探る

corporate campus
仕事の作業スペースに留まらず、生活に必要なほぼすべての機能を広大な敷地に内包するコーポレートキャンパス。 スポーツ設備や娯楽施設、カフェテリア、ヘルスケア施設に移動手段となる通勤バス等をすべて無料で社員に提供し、カジュアルな格好に自由な就労時間という環境を整えたこの「キャンパス型オフィス」は、今日のワークスペースの中でも最高レベルの施設だろう。 今回はそんなコーポレートキャンパスについて、前後編の2部作にわたってお送りする。世界の大企業が社員の働き方改善のために取り入れたワークプレイスとはどのようなものだろうか。本記事では、コーポレートキャンパスの紹介とその歴史について触れていく。 関連記事:これからの企業に不可欠な三種の神器とは

コーポレートキャンパスとは

googleplex 「コーポレートキャンパス」と聞いた時に一番に思い浮かぶのが、カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle本社のGoogleplexだろう。「キャンパス」という言葉が入っているように、コーポレートキャンパスには大きく次の3つの特徴がある。

1. 広大な敷地と仕事用作業スペース

「キャンパス」と呼ばれる所以は、ある程度の人数がそこで共同作業を行えるというところにあり、実際にここで紹介する企業も1つのキャンパスに数万人単位の作業スペースを充実させている。比較的に大きなワークスペースになるので最低でも数百人単位になる。 郊外にあるキャンパスならばそれを実現しやすいし、都市部にあるものでも高層ビルや近い建物とのツギハギでキャンパス化を行うことができる。この広いスペースはもちろん仕事の作業以外のスペースにも充てられる。

2. 娯楽・生活スペース

次にキャンパス要素として挙げられるのは、生活スペースや、それを通じて人とのつながりを作る社交的な環境だ。大きな企業になればなるほど社員同士のコラボレーションや共働というのは大きな課題となる。 カフェテリアやジム、運動場等が学校キャンパスにあるように、社員が集まってミーティングをする場所だけではなく、予期せぬ場所での社員同士の偶然の出会いが起こるような動線設計も必要だ。またクリニックのように、社員の健康維持をサポートする施設もコーポレートキャンパスに見られる特徴の1つである。

3. 自然豊かな公園施設

他の単なる巨大オフィスには無くてコーポレートオフィスにある特徴は、庭があること。室内や室外にかかわらず、自然豊かな公園スペースを確保し、社員のインスピレーションの源となるような環境があることもコーポレートキャンパスと呼ばれる条件の1つだ。 google-newcampus BIG & Heatherwick StudioによるGoogleの新キャンパスのデザイン こうして他に類を見ない充実した施設とそこでの社員の自由な働き方はこの種のオフィスの最大の特徴だ。そして、先述のGoogleを含めた世界の4大テクノロジー企業と言われているGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の本社はすべてこのコーポレートキャンパスの形態を取っている。 そんなコーポレートキャンパスはどのように成り立ってきたのだろうか?

コーポレートキャンパスの歴史

BL-TransitorTeam Bell Labsのトランジスタチーム(写真はComputer History Museumより) もともとコーポレートキャンパスは、アメリカ国内においてリサーチサイエンティストやエンジニアのための研究開発施設として誕生した。最初に作られたのは、アメリカ最大手の電話会社、AT&Tがニュージャージー州に1942年に建てたとされるBell Labs。 初期のコーポレートキャンパスはアイビーリーグの大学キャンパスのように、草木が生える自然豊かな中庭が存在し、穏やかで安全な場所で研究開発に集中できるように設計されたワークプレイスだった。 当時のコーポレートオフィスは、インダストリアルパーク、リサーチパーク、もしくはテクノロジーパークと呼ばれ、その名が表す通り産業と科学の融合を実現させる先進的な設備であると同時に、自然を享受する場所であった。 このBall Labsに続き、1950年代にはGeneral Motors、General Electric、IBMそしてGeneral Life Insuranceといった企業が、広い敷地が確保できる郊外に同様のコーポレートキャンパスを建設した。 bell-labs Bell Labs(写真はTypology: Corporate campusより) radcllife-quad アイビー・リーグを代表するハーバード大学の中庭、ラドクリフクアッド それまで都市部にオフィスを持っていた大企業が少し離れた郊外にコーポレートキャンパスを建てたことは、当時の人口移動問題に繋がった。1950年代、戦後のアメリカにおいて都市部の人口は溢れ、さらに市民は人種ごとに分かれて暮らし、不安定な治安状態であった。その中で中流・上流階級の白人が、非白人の多い都市部から郊外へ移る、いわゆる「ホワイトフライト」が発生。 コーポレートキャンパスには高学歴の白人研究員が多く集められたこともこのホワイトフライトを起こした要因の1つとなった。

キャンパスで育まれる企業文化

その後、コーポレートキャンパスは物理的に設備の整ったワークプレイスであるという点以外にも、「文化的、そして社交的な場所」、つまり社員同士が仕事以外にもつながりを構築できる場所だという認識が形成されていった。 アメリカの大学キャンパスが単に勉学を行うだけの場所ではなく、時には課外活動や、スポーツ、社交的活動を通じて学生生活そのものを豊かにする場所であるように、コーポレートキャンパスもただ仕事をするためだけの場所ではなかった。社員の共同体意識や地域社会的意識を育むには最適で、彼らの生活全般を良くするものだったのである。 関連記事:オフィスデザインの軸となる“企業文化への理解”とは 実はコーポレートキャンパスが持つ文化的な側面は、今日テクノロジー企業が多く集まるサンフランシスコ・ベイエリアの文化と密接な関係があると言われている。それはコーポレートキャンパスの誕生の背景が、1960年代にサンフランシスコで発祥したヒッピー文化の考え方に非常に近いということ。 当時ヒッピー達はすでに文化が出来上がっている先進地域から離れて、自然のある場所で近しいマインドセットをもつ人々と独自の集落を作り、自らのルームを決め、自分を解放した。その姿が、テクノロジー企業が郊外に自らの企業文化で固めたキャンパスを作る姿と重なるというのである。 機能的な部分で評価されることが多いコーポレートキャンパスだが、実は企業のマインドセットを社員に反映させる上でも重要な役割を担うことが時代とともに認識されるようになった。このように社員の包括的なオフィス体験を高め社員の成長を実現させるにつれて、コーポレートキャンパスは進化を遂げながら、研究職以外の一般社員用のオフィスにも適用されていった。 オフィスはそれまであった従来のワークプレイスの常識から抜け出し、レクリエーション施設やカフェテリア、ソーシャルスペース、簡単な買い物やサービス施設を含むところまで拡大。社員がコーヒーを飲んだりテニスをしたりすることはあくまで企業が提供するワークスタイルをこなしているに過ぎない、という考え方が一般的になっていった。

21世紀のキャンパス

そのように少しずつ改善を続けてきたコーポレートキャンパスだったが、1990年代から在宅勤務の考え方や一部作業のオフショアリングが少しずつ広まるようになり、「社員が常にオフィスにいる」こと自体が少なくなった。それに合わせ、コーポレートキャンパスの機能にも変化が見られるようになった。 企業は社員にオフィスに来たいと思わせるような工夫として、上に挙げた施設以外に実際に食事を作れるスペースやリビングルームのような生活空間を漂わせるような空間づくりを行った。 さらに自身で運転する代わりにインターネットに接続可能な企業専用通勤バスも提供し、自宅にいてもオフィスにいても時間を有効に使いながら仕事と生活行動のほぼ全てを行うことが可能になった。そして今日のコーポレートキャンパスは私たちがGoogleplex等で知る仕様になっている。 企業が現代のコーポレートキャンパスに求めるものは、最終的には社員同士の出会いと共働である。今キャンパスに置かれている公園や娯楽施設、生活スペースは自宅にいても同機能を利用することができる。しかし、同僚に会えるのはこのコーポレートキャンパスなのだ。 これこそ今日のコーポレートキャンパスがワークライフインテグレーションを支える理由であり、そのキャンパスがオフィスの仕様を超える目的である。仕事と生活の一体化こそ、コーポレートキャンパスが実現する新たなワーク/ライフスタイルだ。 lego-campus デンマーク・ビルンに2019年完成予定のLEGO Campus ここに現時点で企業のコーポレートキャンパスが提供する施設・スペースを並べてみた。このリストを見てみると、現代のコーポレートキャンパスがもはや単純に「オフィス」とは呼べないほどの施設になっているのがわかる。
  • カフェテリア
  • バー
  • 保育施設
  • 美容室・ヘアスタイリングルーム
  • ランドリールーム・クリーニングサービス
  • 温泉・スパ・サウナ
  • 病院
  • ゲームルーム
  • 仮眠ルーム
  • マッサージルーム
  • ジム
  • スイミングプール
  • バスケットボールコート
  • ハイキング・ジョギングコース
  • 自転車修理
  • 公園
  • 映画館
  • 植物用温室
このような巨大キャンパスを持てるのは世界でも一握りの企業ではあるが、世界的に著名なテクノロジー企業GAFAを中心とした資金力のある企業は次々と建設を進めている。彼らが持つコーポレートキャンパスから見えてくるものは何か?後編で触れていくことにする。 参考: "The New Corporate Campus" "Modernism, Postmodernism, and corporate power: historicizing the architectural typology of the corporate campus" "The rise of the corporate campus" "Upbeat Site Furnishing – A LOOK INSIDE WHAT’S SHAPING THE NEW CORPORATE CAMPUS" *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

ブランド戦略 × オフィスデザイン ー 成功事例に見る企業ブランド構築手法

instacart-yoga
企業・組織の成長に欠かせないとされるブランディング。特にビジネスにおいては企業と顧客の接点を作る上で非常に重要になるものだが、そのブランディングをオフィスでも行う企業は増えている。なぜオフィスがブランディングの舞台となりうるのか。5つのアメリカ企業の例を紹介する。 関連記事:UNIQLOも導入!日本の働き方を変えるアメリカ西海岸のオフィスデザイン

なぜブランディングをオフィスで行うのか?

まず念頭に置いていただきたいのが、本記事で取り上げるブランドとは数あるブランドの中でも「企業ブランド」であること。企業ブランディングとは自社企業に対して顧客に持ってもらいたい感情やイメージを設計することであり、その結果生まれる「企業ブランド」が企業と顧客との感情的な接点となる。 特にオフィスは企業・顧客間の物理的な接点になる場所の1つであるのはもちろんだが、また社員と企業の重要な交流の場でもある。このように様々な接点を生むオフィスは企業のブランドやそのストーリーを伝えるのに最適な場所の1つなのである。 オフィスでブランドを表現する際、それは「ロゴや色だけで完結するもの」だと思いがちだ。しかしこれは大きな間違いで、企業の芯となるオフィスだからこそ、むしろ企業のカルチャーや社員の働き方を的確に表現する必要がある。ときには企業の経営戦略やビジネスにおける包括的なゴールを見据えながら、なりたいと思う将来の像を具現化することで、顧客や社員に魅力を与え続けるブランドを確立することが可能になる。 brand-expression ↑Steelcaseによるレポート”Brand, culture and the workplace”より引用。やはりロゴを散りばめる等でブランドを表現している企業は70%と多くいるが、それで十分なブランディングができているとは言えない オフィスにおいて企業のカルチャーとブランドは混同してしまいがちだが、カルチャーが社員のアイデンティティだとするならば、ブランドは企業のアイデンティティだと捉えられる。オフィスはこの両方をバランスよく表現するべきで、ブランドを通して企業がなりたいと思う理想と近しいカルチャーを構築できる人材を獲得し、そこでできたカルチャーでブランドをさらに強化していくという相互間の関係性が大切になる。 それではそのブランドを上手にオフィスに落とし込んでいる企業5つを紹介しよう。

ブランドを巧みに表現したオフィスを持つ企業5選

1. Airbnb: 暮らすように旅しよう

airbnb-lobby 話題の「民泊」サービスで世界を牽引するスタートアップ、Airbnb。サンフランシスコでも特に名の知れた企業であるが、その本社オフィスは彼らが提供するサービスとそれを実現する企業のビジョンを明確に表現している。 倉庫跡を利用した広々としたスペースのオフィス建物には大小いくつものミーティングスペースが用意されているが、その中で1つとして同じデザインのものはない。それぞれのミーティングルームは実際にAirbnbで掲載されているスペースを再現しているのである。 フロアやエリアごとに「ブエノスアイレス」「京都」「アムステルダム」といった世界の都市をテーマに掲げ、色のパターン、材質等でローカルの雰囲気を表現。社員はオフィスにいながら世界中に登録されている物件を味わうことができる。 airbnb2 このようにAirbnbの本社オフィスは彼らが提供するグローバルスケールなサービスをデザインで表現している一方で、それを利用する社員の「ローカルとしての意見」にも気を配った。同社は今回デザインを決定する前段階で、社員に”Employee Design Exeperience”と呼ばれるプログラムを提供。世界にある実際のスペースを再現しながら、同時に本社にいる社員にデザインの最終的なタッチを手伝ってもらい、彼らのアイデンティティを落とし込んでいった。 「暮らすように旅しよう」という同社のステートメントにあるように、「現地の住民のような生活で得られるリアルな体験」と「ユーザーが持つ独特な視点」の調和で限りない体験価値を提供していくという彼らの姿勢が、オフィス全体で強く伝えたいメッセージとなっている。 airbnb1 今回画像を用意することはできなかったが、社内には人を撮った写真がいくつも飾られており、その被写体は実際にスペースを貸し出しているユーザーだ。Airbnbは彼らあってのサービスであるため、「そのユーザーのためにサービス開発を行っていく」という思いを常に持ち続けるようにしているという。 誰のためにより良いサービスを求めていくのか、社員全員が常にその意識を持って仕事に取り組めるよう、オフィス環境からその風土を整えている。ユーザーとの接点を常に意識する姿勢を表現しているAirbnbオフィス。この場所は訪れる人すべてに、彼らがいかによりよいサービスを追求しているのかを強く伝えている。

2. Ancestry: 科学とテクノロジーで自己発見を

ancestry Ancestryは戸籍制度のないアメリカにおいて、ユーザーに自分の先祖やルーツを調べることができるサービスを提供している。入国記録や移民記録、婚姻記録に兵役記録に至るまで様々なデータを活用し、家系を辿っていく。そうすることで「人のつながり」を見ていくことを可能にしている。 だからこそAncestryがこのオフィスを作る上で重視したのが、彼らが持つテクノロジーを通じていかに人間味を表現できるか、というところだった。その背景から、オフィスの壁には自社サービスを通じて社員自身が見つけた、まだ見ぬはるか遠い親戚の写真と社員自身の写真が2つ並んで掲示されている。 こうして写真を2枚並べることで、扱うものはテクノロジーだが、それを使って提供したいことは「人のつながり」を見つけ出しユーザーの感情に訴えかけるもの、という企業の想いが強く伝わるようになっている。 ancestry2 またオフィス建物の入り口には複数の色、層で作られたグラフィック作品が展示してあり、異なる色が様々な人々のそれぞれの先祖を表現。色を重複して使うことで、世界の歴史は私たちが気づかぬところでも強いつながりを持って構築させていったものであることを表し、企業としてこのように大きなビジョンを持ってサービスを提供してきたことを伝えている。 ancestry3 オフィスの機能面でも「人間のつながり」を意識しているため、休憩用の部屋やファミリールームといった場所は人が集まる場所としてオフィスの中心に存在し、そこで生まれる社員の交流をAncestryは何よりも大切にしている。 このように企業が人間のつながりというものに対しどのような視点で取り組んでいるのかが見えてくると、彼らが提供する価値の重みも自然と感じられるようになる。

3. Instacart: ユーザーの日々の生活改善を行う、人々にとって身近な企業に

instacart1 買い物代行プラットフォームのInstacartはサンフランシスコで急成長を遂げてきたスタートアップの1つ。スーパーやドラッグストアなど複数の小売店と提携し、ユーザーが買いたいものをオンラインで指定すると、ショッパーと呼ばれる個人がユーザーの代わりにそれらを買って即日配達するサービスを実現している。そのオフィスデザインは先日インタビューを行ったSeth Hanley氏によるものだ。 関連記事:オフィスデザインの軸となる“企業文化への理解”とは Instacartの本社は居心地の良いアットホームなデザインが特徴的。これは起業時のスタートが決して派手なものではなかったことと、「人々の生活を改善したい」という想いのもと顧客に寄り添うことを重点に置いた企業ミッションを反映している。 オフィスにあるカフェは同社創業者が起業当時に住んでいたアパート近くのお気に入りのお店から影響を受け、その小売店での体験をオフィス訪問者に与えたいという意志が表現されている。特に6階にあるカフェは受付の隣にあり、オフィスに訪れたその瞬間から創業者が一番伝えたいと考える温かいイメージを来る人すべてに与えるような設計が施されている。 instacart2 instacart4 また、食料品配送ボックスで作られたオーダーメイドのスタンディングデスクや、野菜が一面に広がる壁で買い物の体験シーンを表現。企業が常にユーザーの一般的な生活と隣り合わせでサービスを提供していることを表している。実際に社内ではショッパー向けに食料品のレプリカを並べ、良い野菜や果物の見分け方をレクチャーする空間も用意されている。 ユーザーに寄り添うブランドをもつ企業にこそ参考にしてほしいオフィスだ。

4. adidas: スポーツを通じて人々の生活を変えていく

adidas1 誰もが知るスポーツブランドのadidasだが、ロシア・モスクワにあるこのオフィスは特徴的だ。全6階の建物のうちの3フロアはオフィス、2フロアはフィットネスセンターで、残る1フロアはプロトレーナーが最新トレーニングプログラムを提供する「adidas Academy」用の施設となっている。このように異なる機能と目的を同時にもつ複雑な作りになっており、だからこそここを訪れる人には分かりやすく、伝わりやすいメッセージが必要だった。 このオフィスでadidasは企業としてアクティブなライフスタイルに注目する姿勢とスポーツそのものへの愛情を表現。すべての階でキックボードでの移動を可能にするため専用のトラックと保管場所を用意している。 また天井の照明部分にはサッカーボールを彷彿とさせるデザインを施し、オフィスにあるほとんどの仕切りは透明で広がりを見せることでスポーツ競技場のような広々とした空間を演出。白一面の壁にはアスリートの写真とモチベーションを上げる言葉が書かれている。 adidas2 adidas3 建物中央にある受付ホールは本物のスポーツスタジアムの見た目に近づけている。例えば、大きなメディアスクリーンにテキストが流れる電子掲示板やビデオ映像を流すスクリーンに2つの大きな照明塔がそうだ。受付デスクはこのホールの奥にあり、一般的なオフィスのように一目でわかる場所には置かれていない。 圧倒的な世界観を表現したadidasのモスクワオフィスは、人々がもつ同社へのイメージを一層強化するような仕組みが施されている。スポーツで人々の生活を変え、アスリートの不可能を可能にするという企業理念の実現は環境づくりから徹底して行われている。

5. Zynga: 皆がプレーできるゲームを通じて人をつなぎ、多くの人に愛される企業に

zynga1 ソーシャルゲームの最大手企業として有名なZyngaは、これまで農場管理を他のユーザーと一緒に行うFarmVilleやFacebook上で他のプレーヤーとポーカーが遊べるZynga Pokerといった、誰でも簡単に遊べて人と交流できるゲームの開発を行ってきたスタートアップ。そのゲームを通じて人をつなげることを企業理念に掲げている。創業者のMark Pincus氏はこれを元に創業間もない頃からブランディング戦略を重視していた。 彼が抱くブランドイメージを最も明確に体現したのが、企業名やそのロゴの由来ともなった彼の愛犬、Zingaである。遊ぶのが大好きでありながら忠誠心は強く、皆に愛され、何かをするときには常に中心的存在になりたがった性格が、企業が提供するゲームだけでなく、社員の行動規範としても大事な見本となった。オフィスには今も社員のペットが多く集まり、その光景は「誰にでも愛されながら人の交流を手助けする」環境づくりの大事な要素と一つとなっている。 zynga2 また彼はビジネス分野がソーシャルゲームということもあって社員の社交性を重要視しており、今では無料カフェテリアを置くところが多いスタートアップ業界内でも、特に早いうちから従業員に無料の食事プランの提供を始めた。現在でも昼だけでなく、朝食や夕食まで提供しているところはZynga以外になかなか見られない。また創業時のジムのメンバーシップ制度から始まり、後に社内でフィットネス設備を自前で設置するなど、社員には積極的に手厚いサポートを行ってきた。 「世界をゲームでつなげる」というミッションステートメントを掲げる以上は、まずは社員がつながっていなければいけない。ゲームの世界を表現したオフィスで社員が固まって活気あるミーティングを行う姿はユーザーにも他の社員にもポジティブな印象を与える。 ゲーム業界により多くの人を巻き込んで盛り上げていくZyngaの姿勢の裏には、こういった社内の環境作りがある。「人をつなげる」という理念をどこでも実現させていこうするその努力はブランドに説得力を持たせるのだ。 zynga3 本記事で掲載した写真はOffice snapshot、Office lovinよりダウンロード *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

2018年のIT動向を読み解く7つのキーワード

it keywords
先週ラスベガスでCES 2018が開催され、今年もスマート家電や自動車、IoT製品など多岐にわたるテクノロジーが公表された。 以前リリースした【2017年】世界中で話題となった3つの最新テクノロジーでも紹介させて頂いたが、2017年はIoTとスマートホームテクノロジー、ブロックチェーン、機械学習が世界中で注目を浴びたが、今年はテクノロジーの領域が更に拡大しているのかもしれない。 そこで今回は2018年に抑えておくべきITの重要キーワードを7つご紹介したい。

キーワード①:すべてのものがIoTとなる

BI Intelligenceのレポートによると、2020年までに34億ものデバイスがインターネットに繋がること、そして5年の間にIoT(Interne of Things)に支出額が6兆ドルになることが予測されている。 既にスマートウォッチやスマートスピーカー、スマート家電などテクノロジーを駆使したプロダクトが世に出回っているが、今後は鍵や美容製品、ペット用品などあらゆるものがインターネットに繋がれていき、私たちの生活になくてはならない存在になるだろう。

【事例】Petrics

今年のCESでも注目されたPetricsのペット用スマートベッドは、犬や猫といったペットの健康状態を管理することができる。米国では自宅で飼われている犬や猫の数は8,000万匹ほどいるとされ、そのうちの53%が肥満というデータがある。 この事態を解決するために開発されたPetricsのスマートベッドは、ペットがベッドの上に乗ると運動量や体重といった健康状態を把握することができる。また、連動アプリを使用すると健康状態に合った食事量や運動量を知ることができるので、効果的なダイエットが可能になる。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=gjCrWGS7LfI[/embed]

キーワード②:ブロックチェーンの台頭

ブロックチェーンの概要に関してはブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界でも紹介させて頂いたが、2018年はブロックチェーン技術が更に浸透していくだろう。 ブロックチェーン技術を応用した代表例にビットコインが挙げられるが、今後はフィンテックに限らず様々な業界で活用されると言われている。 現に、シリコンバレー発のゲーム会社Gameflipは昨年ブロックチェーンの活用を開始し、仮想通貨を扱うSparkleCoinはブロックチェーン技術を応用してAmazonやWalmart、Targetなどのリテールでオンラインショッピングすることを可能するなど、多くの企業がブロックチェーン技術を積極的に使い始めている。

キーワード③:VR・ARが本格的に普及していく

ここ2、3年でVR・ARの技術がどんどん進化していく中、2018年はVR・ARが様々な業界で主流となる可能性が高い。 市場調査企業IDCのリサーチによると、世界のVR・AR関連の支出は、2021年まで毎年倍増していくとの見方がある。具体的には、総支出額は2017年の114億ドルから2021年には2150億ドルに増加し、年間平均成長率は約113%になる見込みだ。 以前VR (仮想現実) を活用すると可能になる10の体験VR、AR、ドローンで体験する次世代アートとはでも紹介させて頂いたが、今年は今まで以上にVR・ARを身近に感じることになるのかもしれない。

【事例】IKEA Place

昨年の10月にIKEAがローンチしたARkit搭載アプリ『IKEA Place』を事例に挙げたい。既にご存知の方もいるかもしれないが、このアプリを使うことで家具の配置をバーチャル上で行うことができる。 すべての家具を空間に合わせて自動でサイズ調整、3D表示することで、今まで時間がかかっていた部屋のアレンジを効率的にするという画期的なアプリを開発した。また、実際にバーチャル上で作った部屋のアレンジを画像や動画で保存、シェアすることも可能。今後は、このように私達の生活によりVR・ARが浸透していくだろう。 ikea ↑上記画像はApp storeより引用

キーワード④:サブスクリプション・サービス(定期購読サービス)

Forbesによると、2017年4月時点でサブスクリプション・サービスをビジネスにしている会社のウェブサイトに訪問したユーザー数が3700万人であり、これは2014年と比較して800%増加していることが分かった。 最も訪問ユーザー数が多かった順に見ていくと、美容関係の商品を扱うIPSY、レシピ付きのフードデリバリーサービスを提供するBlue Apron、男性ユーザーをターゲットにしたシェービングアイテムを扱うDollar Shave Clubなど、様々な業界に亘っていることがわかる。 stat 2018年は従来の「必要に応じて商品を購入する」から「商品を月毎、週毎に届けてもらう」という新しい購買フローに変わっていくのかもしれない。 ↑上記グラフは、Forbesの記事より転載

キーワード⑤:更に高まるEコマースの需要

Forresterのレポートによると、昨年米国の成人ユーザーの83%がAmazonを利用していたことが分かった。このことから、オンラインで商品を購入するユーザーは益々増えていき、Eコマースの需要は今まで以上に高まると予想される。 また、アパレル業界を席巻する新勢力 – Direct to Consumer (D2C) で成功した7つのブランドでもご紹介したが、昨今アメリカのリテール業界ではD2C(Direct to customers)と呼ばれる、自ら企画・製造した商品を自社運営のECサイト上でのみ販売するビジネスモデルが注目されている。2018年はD2C型のスタートアップを目にすることが多くなるかもしれない。

キーワード⑥:ボットを介したインタラクション

2018年は様々な企業がユーザとのタッチポイントとしてボット(チャットボット)を導入していく傾向にある。Grand View Researchのレポートによると、グローバル規模で見るボットのCAGR(年平均成長率)は24.3%、マーケットサイズは2025年までに1.23億ドルとの見方がある。また、ボットを実際に使っているエンドユーザーの45%はボットでのインタラクションを好む傾向にあるというデータもある。 なお、ボットの役目はウェブサイトへの流入やカスタマーサポートだけではなくユーザーのインサイト獲得も挙げられるので、モバイルユーザーの属性や嗜好を知りたい企業はボットの導入を検討するべきなのかもしれない。 関連記事:【ユーザー視点で考えるAI】チャットボットのUX設計実験を通してわかったこと

【事例】Aerie(American Eagle Outfitters)

昨今アメリカの大手アパレル企業はボットでのカスタマーサポートを積極的に採用しており、AEO(American Eagle Outfitters)もそのうちの一つ。自社のランジェリーブランドAerie用にボットサービスをKik、Facebook Messengarで開発し、商品のレコメンドやお得なキャンペーン情報の配信、ヘルプセンターへの連動などを可能とした。 なお、アメリカのティーンエイジャーの40%はKikを利用しており、メッセンジャーユーザーの70%は25歳以下というデータがあることから、10代後半〜20代前半をメインターゲットにするAEOにとって、このボットサービスはユーザーとのエンゲージメントを高める効果的なインタラクションなのだろう。 aeo

キーワード⑦:AIや機械学習を駆使したサイバーセキュリティ

世界におけるサイバー攻撃による損失が2021年までに毎年6兆ドルという見方があるように、多くの企業がサイバー攻撃の驚異にさられようとしている。そんな中、2018年はサイバー攻撃対策にAI技術や機械学習が大いに役立つと考えられる。 その理由として、AIを使ったサイバー防御法を生み出すことで、後に機械学習で様々なパターンを覚えさせることができ、より良いサイバーセキュリティの仕組みを構築できるからだ。今後はAIの活用がサイバー攻撃対策の鍵となっていくだろう。 参考: ・"8 Tech Trends to Keep Your Eye on in 2018""Top 10 Technology Trends for 2018: IEEE Computer Society Predicts the Future of Tech"

【2018年】btraxが注目する10のスタートアップ

2018-theme
2017年は前年同様、人工知能(AI)やドローン、ヘルスケア分野での最新テクノロジーへの注目が高く、また日本では新たにスマートスピーカーをはじめとしたバーチャルアシスタントも大きな話題を呼んだ。いずれのサービスも私たちの生活を変える実用的なものが増えてきたのではないだろうか。 関連記事:2017年に終わりを告げたスタートアップ5社に学ぶ教訓 btraxでは今年も注目のスタートアップを選出。私たちの生活に変化をもたらすと期待される10のスタートアップを紹介する。

1. Lisnr: 超音波技術を駆使したチケット認証、デバイス間接続、メッセージ

lisnr1 主要投資家: Synchrony Financial, Intel Capital, Progress, Ventures 調達額: $14.35M

サービス概要:

超音波技術を駆使した音声データ通信システムを提供。「音声のインターネット Internet of Sound」とも呼ばれる自社開発の”Smart Tone”技術を使い、スマートフォンを通じて人間には聞こえない超音波を発することで、インターネット接続なしに近距離でのデータ通信を行えるようにする。これをチケットの認証やデバイス間接続、メッセージの送受を含む様々な用途で利用する。 このSmart Tone技術はスマートフォンで利用されるため個人との紐付けが可能。最近アーティストのコンサートやスポーツの試合でのチケットの高額転売やダフ行為が問題視されているが、そういった偽ユーザーの識別から不正なチケットの複製・転売行為まで防ぐと期待されている。またこの認証プロセス自体もシンプルなもので、イベント会場に入るまでの長い行列の解消にも繋がると言われている。

注目の理由:

先述したように、近年チケットの転売行為があまりに多いことからそれに対する対策が各業界、個人で行われている。アメリカのスポーツ観戦チケットでは転売容認の方向に向かい、2次、3次の流通マーケットが拡大している一方で、音楽業界では転売防止対策が積極的に行われている。 特にアーティストが自身のコンサートであらゆる工夫を行っており、例えばビリー・ジョエルのコンサートで最前列の席を通常券購入者にランダムで提供する取り組みや、テイラー・スウィフトの新チケット購入プログラムであるTaylor Swift Tixの導入等が行われている。 これらの取り組みを受けてアーティスト以外にもその動きは広がり、昨年アメリカ大手チケット販売会社のTicketmasterがSmart Tone技術を導入し、それまで使っていたQRコードによる認証を置き換え始めている。今後あらゆるイベントで利用されていきそうだ。 またSmart Toneはイベントのみならず他のセキュリティ認証にも次々と導入されている。Lisnrは昨年、自動車会社のJaguar Land Roverとパートナーシップを締結。同社の自動車のアンロックシステム等に導入される見通しだ。この超音波を使った音声データ通信技術がさらにどのような形で私たちの生活に影響するのか注目だ。

2. Nurx: ピル配送サービス

nurx1 主要投資家: Lowercase Capital, Y Combinator, Union Square Ventures 調達額: $5.42M

サービス概要:

「ピル用ウーバー」。アプリで医師の診察を受けることでクリニックに行かずともピルを受け取れるサービス。ピルは望まない妊娠を予防する以外に生理不順や生理痛を緩和するものとしてアメリカでは一般的に利用されている。 ユーザーはアプリをダウンロードし、複数の質問に答える。あとは州のライセンスを持つ医師がその回答のレビューを行い、ユーザーに合ったピルと使用方法を提供。ピルは自宅もしくは指定する場所に配達され、その費用はかからない。Nurxはピル適用の保険有無にかかわらず対応し、女性がピルを受け取るまでのプロセスの改善を徹底して行う。 またNurxはピル以外にHIV感染予防、PrEPに効果のある医療薬も同様に簡単なプロセスで提供している。

注目の理由:

スタートアップ養成スクールで有名なベンチャーキャピタル、Y Combinatorを卒業し、2015年に設立したばかりのスタートアップだが、カリフォルニア州から着々と活動の幅を広げ今ではアメリカ国内の16の州に展開。この展開スピードから、これまでのピルの受け取りプロセスがユーザーにとっていかに不便だったかがわかる。 またこのサービスに対する高い注目の背景には政治的な理由もある。トランプ政権がオバマケアを変えることで、今まで保険が適用されていたピルがそうでなくなることが懸念されており、ピルを服用する女性へのサポートが縮小されかねない風潮にある。 このように国として女性のピル使用を支持しない方向にあるなかで、Nurxのように女性のピル受け取りを支援するサービスが注目を浴びているのだ。いずれにせよNurxは先に挙げたように保険の有無にかかわらず対応が可能なのでその使いやすさが注目を集めている。 昨年12月の連邦裁判所の判断でトランプ政権の動きにストップがかかったが、依然としてピルを利用する女性の生活が変わりかねない緊張状態が続いている。もしかしたら今後ピルの継続が難しくなる女性も出てきかねない状況のなか、今年このサービスがどこまで女性の生活改善に貢献するか注目だ。

3. Payjoy: スマートフォン用ローンサービス

payjoy 主要投資家: Santander InnoVentures, Union Square Ventures, ITOCHU Corporation 調達額: $29.15M

サービス概要:

「すべての人がスマートフォンを入手可能に」をモットーに掲げる2015年誕生のスタートアップ。通常の通信会社が提供するローンを組めない低所得者層向けにフェイスブックアカウント、国の発行する身分証明書、電話番号の3つだけでスマートフォンを提供する。支払い方法には柔軟に対応しており、支払いが滞った際はPayjoy Lockと呼ばれる専用アプリを通じてスマートフォンを使用できないようにする。 市場には低価格のスマートフォンがあるが、アメリカの低所得者層にはあまり利用されていない。その理由として「故障の多さや動きの遅さでほとんど役に立たず、安いスマホを買うぐらいなら高い方を持つ」という声が多かったことから生まれたサービスである。

注目の理由:

昨年9月に新たに$6Mの資金調達に成功。これまでアメリカとメキシコで展開し、2017年にはアジア諸国、2018年にはラテンアメリカとアフリカに展開、とグローバル進出に勢いを見せている。これまでスマホを持ってこなかった層にどれだけ浸透するかが見所。 このサービス利用者数の増加がスマホの全体利用者数にどう影響するのかも注目ポイントの1つ。シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるKPCBでパートナーを務めるメアリー・ミーカー発表の2017年のインターネット・トレンドレポートにおいても、ユーザーのデジタルメディアの利用はデスクトップでは変化がないものの、モバイルでは2011年から2016年の5年間でおよそ4倍増だった。 今ではデスクトップよりもスマホを利用する時間が長く、その利用時間は今後も伸びると予想される。同レポート内ではスマホユーザーの伸び率は急減速しているとも書かれていたが、Payjoyがこの状況にどのような変化をもたらすのか見ていきたい。

4. Citizen: リアルタイム犯罪通知アプリ

citizen 主要投資家: Sequoia Capital, Peter Thiel’s Founders Fund, Slow Ventures, RRE Ventures, Kapor Capital 調達額: $13M

サービス概要:

リアルタイムで近辺の犯罪や事故をユーザー同士で報告・通知するアプリ。もともと”Vigilante(自警団員)”と別名でサービスを展開していたが、その名の通り一般人が犯罪等の問題を警察に伝える前に「自警」し結果的に犠牲者が増加すると議論を呼びアップルストアから削除された。 今回は警察への通報機能を加え、ユーザーには危険を知らせるだけでなく彼らの安全を守るという目的で新たに再スタートを切った。現在ニューヨークとサンフランシスコで展開。

注目の理由:

アメリカでは無差別の銃乱射事件、日本でも通り魔的な犯罪は今日もよく取り上げられ、世界的に見てもテロ行為が後を絶たず私たちの安全は脅かされている。世界テロリズム指数の2017年レポートによると、世界的にテロによる死亡数は2006年から2016年までの10年間で67%上昇した。 こういった犯罪行為の撲滅は必須であるが、同時にそのような事件に巻き込まれないようできるだけ市民の安全を守る取り組みも必要である。Citizenはそれに貢献できると期待されている。

5. Nauto: AI搭載の車載器

nauto 主要投資家: General Motors, Greylock Partners, Softbank, Toyota AI Ventures 調達額: $173.85M

サービス概要:

AIを使った双方向カメラの車載器。前方を見る車外カメラと車内の様子を撮影する車内カメラでドライバーの煽り運転や脇見運転、居眠り運転、その他危険運転を察知し、運転後にフィードバックを行うだけでなく、商業用車両の場合には車両管理側がその様子を確認できるようになっている。また事故時の保険対応も双方向のビデオ映像を使うことでスムーズかつ正確なものになると期待されている。 このようにドライバーの運転データをビッグデータとして蓄積していくことで、将来AIによる事故の分析・予知が可能になる。最終的なゴールとしてNautoは安全な完全自動運転の実現を目指している。

注目の理由:

自動車メーカーによる自動運転技術の開発は今も積極的に進められているが、その技術はまだ限定的であり、今はより多くの実際の運転データ収集が必要な段階である。Nautoの車載器は現在すでに危険運転抑止と事故防止というメリットをユーザーに届けながら、リアルな運転データを集められるサービスとして非常に貴重な存在になっている。未来の自動走行に向けて大きな前進が期待できる。 日本でも昨年煽り運転が特に問題視されドライブレコーダーが売れたが、AIを駆使した車載器はこれまで出ていなかった。運転手にとってより安全な交通社会が作られていく上でNautoは特に大きな貢献が期待されるサービスである。

6. Holberton School: 授業料の用意なしで入学できるコーディングスクール

holbertonschool 主要投資家: Ne-Yo, Jerry Yang, Jerry Murdock, Reach Capital, Daphni 調達額: $4.3M

サービス概要:

今日ではコーディングを勉強できるスクールは身近に存在し、特にサンフランシスコでは気軽に通えるものが多い。その中でもこのHolberton Schoolは独特で、学費を事前に納めることなく授業を受けることができる。「生徒が給料を得られるまで授業料を取らないスタイル」なのだ。 スクールでは2年に及ぶプログラムを提供。9ヶ月のサンフランシスコでのトレーニング、6ヶ月のインターンシップ、さらに最後の9ヶ月でサンフランシスコ、もしくはリモートでの学習、という内容になっている。フォーマルな教授たちが授業を行う形式ではなく、講師側はGoogle、Uber、Facebook、Linkedin、Salesforce等サンフランシスコ・ベイエリアを代表するテクノロジー企業で働くエンジニアたちだ。 コースで扱う内容も生徒側が実際に取り組んでいるプロジェクトや講師が過去に行ってきた案件をベースに学び、実際に現場で使えるスキルや経験を積んでいく。 生徒は卒業後3年間の仕事もしくはインターンシップの給料の17%を授業料として支払うことに同意した上で入学となる。そのため生徒向けに均一な授業料というのは存在しない。

注目の理由:

卒業生たちはすでにGoogleやNASAと行った企業で実際にエンジニアとして働き始めており、成果は着々と表れている。エンジニアは世界的に人材不足、サンフランシスコでも優秀なエンジニアは次々と特定の大企業に引き抜かれ、その他企業が太刀打ちできない実態もあるが、このHolberton Schoolはその問題を解消してくれそうだ。 生徒からしても、今からでも始められるコーディング専門スクールが存在するのは大きなメリットである。実施にHolberton Schoolはテック業界に多様性をもたらすことを1つの目標に掲げており、それを実現しようとする姿勢はすでに高い評価を得ている。 生徒の中には今までエンジニアとは縁のなかった人もいるが、スクールはそんな彼らでもエンジニアの道を選ぶことができるという勇気を与えている。2015年設立とまだまだ若いスクールだが、これからテック業界に大きな変革をもたらすと期待できる。

7. Qadium: IoT向けセキュリティプラットフォーム

qadium-expander 主要投資家: Founders Fund, New Enterprise Association, Susa Ventures, Institutional Venture Partners 調達額: $65.97M

サービス概要:

元CIAエージェントが政府関連のサーバーの脆弱性を発見した経験から立ち上げたスタートアップ。ネットワークに接続されたデバイスをすべて調べ、ハッキングされる恐れのある問題やその他あらゆる脆弱性を検知しユーザーに警告するプラットフォームサービスを提供。 この防御システムを支えるのは”Expander”と呼ばれるソフトウェアプログラムで、IoTシステムのインターネット接続をマッピングした上で調べ上げることから「IoTのグーグルストリートビュー」とも呼ばれる。 顧客にはアメリカサイバー軍やアメリカ海軍といった政府機関や銀行のCapital One、その他金融系の企業が並ぶ。価格が非常に高額な分、導入できる企業や組織は限られてくるが、その信頼性は高く評価されている。

注目の理由:

毎年10月に業界最大手のIT調査機関、Gartnerによって発表されるITトレンドの2017年版でも触れられていたが、IoT製品の急速な普及により、サイバーセキュリティの脆弱性は早急な対策が必要になるほど重要な問題になる。Qadiumはこの深刻な問題に対処できる役割を担っている。

8. Gladly: 一括管理のカスタマーサービスプラットフォーム

gladly 主要投資家: Jerry Chen, GGV Capitals, Greylock Partners 調達額: $63M

サービス概要:

音声通話、メール、チャット、ソーシャルメディア等の複数チャネルでコンタクトのあった同一の顧客を認識するカスタマーサービスシステムを提供。これまでクレーム電話や問い合わせメールはそれぞれ1つの案件として処理されていたが、同社のソフトウェアでは同一人物によるものか認識する。それによって企業側は顧客が過去にどのような内容で連絡を取ってきたか確認でき、それに合わせた顧客対応が可能になる。

注目の理由:

顧客第一を謳う企業はますます増え、顧客の声は改善の何よりの材料として貴重なものになっている。昨年8月にGladlyとのパートナーシップを発表した航空会社のJetblueでも早速導入されたが、飛行機の遅れや荷物紛失等に関するクレームが一定数起きるこの業界において、同社は複数チャネルからの顧客のコンタクトをこのGladlyシステムで全て管理。 それぞれの顧客との会話を全て記録し、また過去の全てのサービス利用履歴も管理して紐付けることで、遅延等によって利用客に迷惑がかかった場合にはその記録から保証内容を決める等、個別のカスタマーサービスを充実させている。 昨年の顧客満足度指数において、Southwest AirlinesやAlaska Airlinesを超え、業界内で一番となったJetblueが行う取り組みの1つという立ち位置から、Gladlyへの今後も注目はさらに高まるだろう。丁寧な個別の顧客対応を追い求める企業こそ必見なサービスになっていくと予想される。

9. Knotel: 中小企業向け本社型コワーキングスペース

knotel 主要投資家: Invest AG, 500 Startups, Bloomberg Beta 調達額: $25M

サービス概要:

ビルオーナーとプロフィットシェアを行う形でコワーキングスペースサービスを提供するスタートアップ。WeWorkの競合として紹介されることも多い。今日のコワーキングサービス市場の成長を支えるスタートアップの1つとして世界中に展開している。 本来オフィスビルの賃貸には長期的な契約期間が必要とされていたが、Knotelはその期間を柔軟に対応。従来のコワーキングスペースは今まで通りフリーランサーやスタートアップ社員向けに、現在コワーキング市場を牽引するWeWorkは大企業社員向けにサービスを展開しているのに対し、Knotelは50−200人程度の中小企業向けに「本社として利用できるコワーキングサービス」を提供。 企業側はオフィスにかける費用を抑えながら、カスタマイズ可能な中規模スペースを利用できるので、クリエイティブな職場と自由な働き方を社員に手軽に提供することが可能だ。

注目の理由:

今では企業の大きさにかかわらずスタートアップ企業の職場環境を参考にするところは多く、手軽に利用できるコワーキングスペースと契約し様々な交流を図れるフリーアドレス制度を社員に提供する企業が増えている。実際に昨年IBMはWeWorkが持つニューヨーク・88 Universityのコワーキングスペースのビル全てのデスク契約を決めた。 今後コワーキングサービスはこれまで利用してこなかった層を取り囲んで利用者数を増やしていくが、その中でもKnotelはまだ穴場とされている中小企業向けのサービスをカバーし成長を遂げていくと予想される。 今や働き方改革においてコワーキングスペースの存在は大きなものになりつつある。東京でもついにコワーキングサービスを開始するWeWorkが世界的に大企業の社員に自由な働き方を提供していく裏で、Knotelも中小企業の社員の働き方を少しずつ変えていきそうだ。

10. Hudl: スポーツ用パフォーマンス分析プラットフォーム

hudl 主要投資家: Accel Partners, Jeff Raikes, Nelnet 調達額: $108.9M

サービス概要:

練習や試合の動画をアップロードし、コーチングポイントを動画上にマークし、コメントを残すことで、オンラインで選手・コーチ間で改善ポイントの共有ができるプラットフォーム。通常の動画編集プラットフォームとは異なり、1つのプレーを様々な角度から見られるようにしたり、プレー毎に動画を区切り瞬時に確認したりできるようにして、あらゆるスポーツにおけるミーティングの効率化を図ってくれる。 さらにこのプラットフォームは選手のリクルーティングの機会の場としても利用されている。選手は自身を売り込む新たなツールとしてパフォーマンス動画を掲載し、高校、大学、そしてプロチームはそれを閲覧して選手獲得に動く。アメリカは国土が広く、リクルーティングチームは選手を直接見に行くことに限界がある。そんな背景から、今まで埋もれていた優秀な選手の発掘するツールとしても利用されている。

注目の理由:

テクノロジーがスポーツ業界全般に導入された良い例の1つとして以前から注目を浴びており、これまで30のスポーツ、キッズからプロまで15万以上のチームに導入されている。最初はアメリカンフットボールから始まったこのサービスだが、2017年末にはバレーボール用のコーチング・分析プラットフォームを提供するスタートアップ、VolleyMetricsを買収。 今後ますますあらゆるスポーツを支えるテクノロジーとして活用されていくと期待。スポーツの世界でもこのようなテクノロジーが活用されていると理解しておくと面白い。何かしらのスポーツをやっているのであれば使ってみると良いだろう。スポーツにおける体験もきっと変わるはずだ。

企業の「性格」を表すブランドパーソナリティとは?

brand-personality1
ユーザーや顧客との接点を大切にするためにブランディングを強化する企業はますます増えている。顧客が商品1つを選ぶにしても機能面だけを見て決めることは今ではほとんどなく、商品そのものやそれを売り出している企業が持つイメージも顧客の購買意欲に大きく影響している。 関連記事:ブランドをビジネス価値に変換させる5つの構成要素【ブランディングの教科書 Pt.1】 そのブランド力を支える上で、顧客に与えるブランドイメージの根幹となる「ブランドパーソナリティ」はブランディングの中でも重要項目の1つとなっている。実際に多くの企業のブランドガイドラインではそれが明確に記載されている。今回はそのブランドパーソナリティの意味を確認し、筆者が実際にインタビューを行ったアメリカの大手地銀であるCapital Oneと日本に進出したばかりのQuoraという対照的な2社の事例を紹介する。

ブランドパーソナリティとは

ブランドパーソナリティは、パーソナリティ(性格)が含まれているように、企業の人格的な「個性」を表す。優れたブランドを持つ企業こそ印象に強く残る、統一されたブランドイメージを顧客に常に発信している。またその顧客もその商品を買うことでブランドイメージを自分のイメージに繋げ、自分としての個性を表現するものになる。 実際に、エッジの効いたブランドとして名が挙がるオートバイメーカーのHarley-Davidsonのパーソナリティは「荒削りで無骨な男らしさ」。そのバイクに跨がることで「ライダーの男らしさに磨きをかける」というイメージを浸透させた。そのブランドはアメリカ中西部から始まり、次第に世界中で大人気となった。今でもブランドロゴのタトゥーをいれるライダーもいるほど一定層の強い支持者がいる。 harley 「ハーレー好き」のライダーがコミュニティを形成し、お揃いの決まった格好をしてツーリングをする姿は、企業がブランドパーソナリティを巧みに顧客の感情に浸透させていった良い例だ。 そのほかにもユニリーバが持つ製品ブランドの1つであるDoveは「健全さ」「道義的」「純真さ、清潔さ」を商品パッケージから広告、SNS上でのメッセージまで巧みに表現。同社の男性用化粧品ブランドのAXEでは逆に「誘惑」「男らしさ」「常識にとらわれない自由さ」を表し、タバコブランドのMalboroも「男らしさ」に「自由さ」さらに「冒険的」といったパーソナリティが付随している。ここに挙げたブランドは読者の多くが目にしたことあるブランドだと思うが、このような特定のイメージはみなさんの多くが持つ共通イメージとしてあるはずだ。 dove-ad axe-ad malboro-adCMには多くのクレームが入るというAXEだが、ユーザーの「モテたい」というシンプルなニーズにマッチしたブランド・パーソナリティを上手く表現している このようにブランドがパーソナリティを持ち自己表現を行うことで、ユーザーとの関係性に強い影響を与え、顧客に対するブランドの立ち位置を明確に表現するのである。人で考えてみると、どんな振る舞いをするかでその人の性格が分かるように、ブランドとしての活動指針の軸となる性格を表現することがブランドパーソナリティの一番の役目である。 各企業は顧客との様々なタッチポイントにおいて、このようなパーソナリティを基に伝えるメッセージングにも統一性を見せていく。今回はその企業の数あるタッチポイントの1つに焦点を当てて、そこから考えるブランドパーソナリティを見ていく。

従来の銀行のイメージを改革するCapital Oneと日本進出で話題のスタートアップQuoraの事例を紹介

ブランドパーソナリティの実例を紹介するべく、今回Capital OneとQuoraの2社にインタビューを実施。彼らは先述したように堅い業界イメージのある銀行と人気スタートアップという、一見対照的な企業だが、どちらもユニークな形で自社のブランドパーソナリティの表現を巧みに行っている。そんな彼らが掲げるパーソナリティとその表現方法について話を聞いた。

1. Capital One

バージニア州に本社を置く大手地銀のCapital Oneは、堅いイメージが強い傾向にある金融界でも、クリエイティブな環境と新テクノロジーを積極的に駆使したイノベーションが特徴的な銀行である。実際にサンフランシスコには彼らのアクセラレーター・インキュベーター施設として最新テクノロジー開発を行うCapital One Labsが存在。彼らの取り組みは他の歴史ある銀行とは一味違う。 関連記事:【HBRが予測】既存の銀行の92%は10年以内に消滅する そんな彼らがブランドガイドラインで掲げているパーソナリティは以下の4つである。
  • Bold Challenger:勇敢なチャレンジャー
 イノベーティブリーダーとして良い変化をもたらすために業界に挑戦する
  • Straightforward:率直
 真正で、信用・信頼できる存在に
  • Advocate:顧客の代弁者
 自社だけでなく、常に顧客の興味を探し出す。未来に楽観的になり、顧客の成功をサポートする
  • Engaging:魅力的
 示唆に富むユーモア、ウインク、そして笑顔を持った親しみやすさを 1988年創業のCapital Oneは、創業者が未だに現CEOとして活躍しており、業界内でも非常に若い銀行である。その若さを生かし、率直さや親しみやすさといった従来金融界のキーワード以外にも、Bold Challengerといったイノベーション要素を取り入れ、業界の積極的な改革者という立場を貫いている。そんな彼らの独特なパーソナリティを体現した施策を2つ紹介しよう。

Capital One Cafe

capitalone-cafe1 Capital One CafeはCapital One銀行の支店兼カフェとなる施設で、口座を持っていない一般の人向けにもオープンされている。普通にカフェとして利用する客や、外でのミーティングを行う場所として、またコワーキングスペースのように作業をしに訪れる利用客も多く見かける。 クラスルームやワークショップルームも用意しており、定期的に一般向けにファイナンシャルプランの立て方や子供向けに賢いお金の使い方を教える講座等も行っている。 Capital One Cafeの特徴の1つは「アンバサダー」と呼ばれる案内・サポートスタッフの存在である。従来の銀行だとスタッフは窓口にいるが、アンバサダーはアパレル店員のように店内を自由に歩いている。丁寧かつ押しの強くない接客で利用客に圧迫感を与えないようにすることで、ユーザーに銀行との心理的な距離を縮めてもらうのが狙いだ。 capitalone-cafe 彼らは「企業の顔」として、接客から無料のクレジットスコア分析まで幅広くサポートを行う。”Straightforward”、”Advocate”、”Engaging”といったパーソナリティは顧客との人間的な接点で表現できると考え、体験型のブランディングを重視しているのだという。目指すものは新規顧客の獲得から既存顧客のサービス体験向上まで、と一見他の銀行と変わらない目的ではあるが、その方法は独特である。 「お金というのは非常に個人的なもので、それを話しやすいと思わせることはCapital One Cafeが提供できる体験価値の1つです」とアンバサダーの1人は語る。顧客に「個別の体験」を提供することを心がけ、それまで堅いイメージのある業界イメージを払拭しようとする心意気が表現されている。パーソナリティにある人間的な特徴をユニークに表現した事例だ。 従来の”お堅い金融業界”の殻を破り、銀行とカフェを融合させたCapital One Cafeは顧客への提供価値を上げるために単純に面白い試みを行っているのではなく、パーソナリティが背景に強く存在しているのである。このブランディング施策は着実にユーザーniCapital Oneのユニークかつフレンドリーな印象を与えている。

積極的なアプリ開発

2008年の金融危機がもたらした大きな影響の1つとして、アメリカの多くのミレニアル世代がこれまでの伝統的な銀行への信頼を失っていると言われている。この世代は古く堅牢なイメージのある銀行よりも、テクノロジーでお金の管理を求める傾向が強い。実際に最近ではオンラインバンキングが主流になりつつあるほか、DigitやMint、Chimeといった、スタートアップによる口座管理・貯金管理アプリを通じて自身の預貯金管理を行うことが人気になっている。 従来の銀行に逆風が吹く中でCapital Oneは社内で積極的にスタートアップのように新規アプリ開発を行っている。実際にカフェスペースとなる建物1階以外の階では”Capital One Labs”として常に自社アプリやAIの開発場所となっている。実際にインタビューで訪れた時も、開発段階中のクレジットスコア分析を行う「瞑想アプリ」を見せてもらった。従来の銀行としての立場を保ちながら積極的にテクノロジーをサービスに落とし込み顧客に提供している。 col-1 col-2Capital One Labs(写真はOffice Snapshotより引用) 関連記事:スタイリッシュなオフィスが企業に与える5つの価値 – イノベーションはオフィス環境から – もともとアンバサダーの立ち位置も従来の対面での手続き以外に、オンラインバンキングのサポートやこういった新しいテクノロジーサービスを紹介するという意味でも活躍している。顧客とのタッチポイントと近い場所で開発を行い、彼らのニーズに応えるサービスを提供しようとする姿勢が伺える。 Capital Oneがここまでテクノロジーに積極的になれるのは先述した企業の若さもあるが、社員にもその秘訣がある。Vice PresidentはPixar出身、他にもApple出身の社員もいるなどテクノロジー企業での経験豊富なスタッフが在籍しており、テクノロジー好きな人たちが集まるカルチャーができている。テクノロジーを積極的にバンキングに持ち込みたいという社員の気持ちが業界でチャレンジャー精神を持ちたいCapital Oneのパーソナリティを支えているのだ。

2. Quora

先日の記事でも紹介したナレッジ共有プラットフォームを提供するQuoraは著しい成長を遂げるスタートアップだが、彼らもまたブランディングに積極的に取り組んでいる。今回カリフォルニア州マウンテンビューにあるQuora本社にて、海外展開担当のトップであるシュレーヤス・セーシャサイさん、そして日本語コミュニティー担当のトップのフリーデンバーグ・桃紅さんに話を聞いた。 彼らのユーザーとのタッチポイントは何と言ってもユーザー同士が質問を行うプラットフォーム。「世界中の知識を共有し、深める」ことをミッションに掲げるQuoraも既存のQ&Aサービスとの差別化を図るために以下の2つをパーソナリティとして掲げている。
  • クオリティ重視
  • 丁寧さ
これらのパーソナリティーが彼らのサービスにおいてどう体現されているのか見ていこう。 quora1 ↑QuoraのHead of Internationalization シュレーヤスさんとHead of Community Japanese フリーデンバーグ・桃紅さん

クオリティを左右する“実名登録”

Quoraのブランドを語る上で一番重要なのはクオリティ重視の姿勢である。日本進出に伴い、Quoraについて取り上げるメディアは多くあるが、その内容について共通しているのが「質の高い回答が得られること」である。 そのためにQuoraが実施しているのは、他のQ&Aサイトとの差別化として同社が強く推している「実名登録」だ。これは本名の登録だけでなく、プロフィール画面で自身の経歴や背景の記入も求めている。そうすることで、記入者は自分の回答に責任を持ち、クオリティの担保につながるという仕組みだ。 また本名の使用は「丁寧さ」も体現している。相手を傷つけるような発言防止にも役立つため、結果的に様々なユーザーがプレットフォーム上でポジティブな体験を得られるようになっている。そうすることで、Quoraのポリシーでもある「他人へのリスペクト」を体現することができるのだ。他人の心無い回答を撲滅し、害となる情報やユーザーを排除した上で、本当のユーザーが求めている「正確で質の高い情報」を得られるようにしている。 この実名の使用により、政治家のバラク・オバマやヒラリー・クリントン、また業界を変えてスタートアップのCEOやその他各業界の著名な専門家まで回答を行っていることがわかる。このように著名な人物が回答を行っていることを可視化することで、ますますクオリティ重視を体現していることを伝えることができる。 quora2

クオリティ担保のための機能

Quoraではクオリティ担保のためにさまざまな機能が用意されている。その1つが「高評価システム」だ。これは、ある回答について正しいと思えば、それに高評価もしくは同意見(”Vote”)という形で投票することができるというもの。著名な専門家からそれが集まるほど信ぴょう性の高い情報ということになるわけだ。 人によって同じ質問でも違う回答があること、そして多くのユーザーがそういった様々な視点からの回答を期待することは事実である。1つの質問に対し1つの回答を選ぶのではなく信ぴょう性の高い回答を複数並べることで、ユーザーは「多くの考え方を学ぶ」ことが可能になる。同意見システムはそれを実現するために様々なクオリティの高い回答を残すことにおいて重要なシステムになっている。それに加え機械学習を使って情報の正しさや整合性も常に確認している。 また表示される質問のパーソナライズ化を行っているのもクオリティ重視を体現したポイントの1つ。ユーザーの居住地や興味を事前に把握することで、それぞれのユーザーに個別のフィードを表示するようにしている。 ちなみにこういったハイクオリティな情報を共有する姿勢は社内でも行われている。Quora本社では社員同士が集まって情報共有ができるように月曜日と金曜日のランチタイム後にカジュアルな全社ミーティングを行い、CEOにも直接質問ができるようになっている。企業としてのパーソナリティの一貫性が見えるストーリーだ。

遊び心の過ぎないデザイン

「丁寧さ」はプラットフォームのデザインからも見て取れる。信頼性の高い情報を共有することを一貫するために、あまり遊び心の過ぎないようなデザインや構成が施され、ブランドのトーンを統一させている。実際にこのプラットフォームを使うユーザー同士のインタラクションは見知らぬ人同士で行われるため、このようなイメージをビジュアルから演出していくことは実は大事なのだ。 quora-jpQuora日本語版ウェブサイト

まとめ

ブランドパーソナリティはこの2つの例のようにブランドと顧客の間に立つ重要な役割を担っている。逆にこのブランドパーソナリティが確立されてされていないと同じ取り組みを行なっていても顧客が受け取るイメージはぞれぞれ変わってきてしまう。 例えばCapital Oneが同じように実直で信頼できるような存在になろうとしても、フレンドリーさの代わりに真面目さをパーソナリティにした場合、顧客に与える印象は一気に変わる。最新テクノロジーを顧客に使いやすい形で提供する優しいイメージの企業になるか、それともそういったテクノロジーの最新性を常に追い求める貪欲なイメージを持つ企業になるか。どちらが正しいという話ではなく、企業が顧客に受け取ってもらいたいパーソナリティはこれだ、という意思表示と行動の軸になるのだ。 ブランドを構築する要素はパーソナリティに限らず他にも存在するし、ブランドガイドラインにはパーソナリティに触れない企業もある。しかし、このブランドパーソナリティはブランディングを考え直す企業にとってぜひ考慮すべき要素の1つだろう。

サンフランシスコが取り組む通勤イノベーション

commute1
長時間に及ぶ通勤時間は誰にとっても疲れるものだが、実際にそれが従業員の健康と生産性に大きな影響を与えていることが明らかになってきた。今回はその影響の大きさと、それに対するサンフランシスコ・ベイエリアでの取り組みに注目してみたい。

長い通勤時間が社員に与える影響とは

今年5月、社員の通勤時間と健康、そして生産性の関係についてイギリスの保険会社VitalityHealth、ケンブリッジ大学、ランド・ヨーロッパ研究所、さらに人事マネジメントコンサルティング会社のマーサーにより興味深い調査結果が発表された。イギリスで働く従業員34000人以上を対象にしたこの研究結果によると、通勤に長時間を費やす人はそうでない人に比べて鬱に苦しむ傾向が33%、金銭的な心配事を持つ傾向が37%、そして仕事関連のストレスが複数あると答える傾向が12%高くなり、精神健康上ネガティブな効果があると発表された。 加えて、欧米で推奨されている7時間睡眠を取れていないと回答する傾向は46%、そして肥満になる傾向は21%高いという結果も出た。最終的に通勤時間を30分以内で収めている従業員は1時間以上かけている人に対し、生産性が年間7日間分高い、と結論づけている。 同様に西イングランド大学でも通勤時間の長さと幸福感の減少についての研究がつい先日発表されたばかり。研究を率いたキロン・チャタジー准教授は、特に自由時間の損失が幸福感減少に影響していると論文内で述べている。 一方、長時間通勤が仕事や自由時間への満足度に影響しているのに対し、生活全般での満足度が下がることがなかったという。これは、仕事や家族のために長時間通勤は必要なものとして従業員が理解しているから、だとされている。 通勤に時間がかかってしまうほど、その悪影響が仕事に返ってくる。この悪循環を解決するためにも対処法が求められている。

地域全体で取り組むサンフランシスコ・ベイエリアの施策

日本ではこれまで住宅手当や最近では在宅勤務等、社員の通勤時間に配慮した取り組みが企業で行われてきた。しかし、満員電車に乗って体力をすり減らしながら出勤する姿は今でも日本のサラリーマンを思い浮かべるときの代表的なものであり、改善はこれからも必要である。 似たような状況はアメリカ、特にサンフランシスコ・ベイエリアでも起きている。サンフランシスコ周辺は最新テクノロジーの中心地として世界中から人が集まり、その人口は年々増加。電車通勤を行う人の数ももちろんだが、車で通勤する人が多いこともあり、朝の通勤時の交通渋滞は以前から問題視されてきた。INRIXによる交通渋滞ランキングにおいて、サンフランシスコはデータを集めた世界の38カ国、計1064都市の中で4位と高い順位にある。 2015年のアメリカ合衆国国勢調査局の調査結果によると、サンフランシスコの平均通勤時間は片道で31.7分。同年のNHK放送文化研究所の調査結果では、日本の平均通勤時間は1時間19分、片道で39.5分となっており、東京だとその数字は1時間42分(片道51分)まで伸びる。 一概に時間を比べるだけの単純な問題ではないが、人口密度が東京よりも高いサンフランシスコでこれだけの時間差があるのは興味深い。サンフランシスコでは一体どのような方法で東京の半分程度の通勤時間が実現しているのだろうか。 commute-timeBusiness Insiderの記事より引用 ちなみにアメリカでは日本のように通勤手当や住宅補助といった福利厚生は基本的に存在しない。一般的にアメリカ企業では、通勤時間は個人的な時間とされているのが理由である。そのような環境で従業員はどのように通勤時間を短縮しているか。サンフランシスコ・ベイエリアで見られる施策をいくつか紹介する。

1. 通勤車・社員専用バス

これを知っている読者の方は多くいるかもしれないが、Googleの社員専用シャトルバスは有名である。車内ではWiFiを提供し、社員はそれまで運転していた時間をそのまま仕事に回すことができる。普段は渋滞なしでも1時間ほどかかるサンフランシスコ市内ーシリコンバレー区間を運行することで、高給料を得るテック企業の社員がシリコンバレーから離れた地域にも住めるようになった。 結果的にバスが停まる他の地域のアパート賃料が高騰し、4年前には市民による抗議活動が起こる社会問題にまで発展。比較的貧しい層が多く住む地域に、経済的に豊かな人々が流入する人口移動問題(ジェントリフィケーション)だという話にまで膨らんだが、現在は落ち着きを取り戻し、今も特定企業の社員の通勤の足として利用されている。 このように特定の企業だけでなく、一般利用者向けにシャトルバスを提供するサービスもいくつか存在する。Chariotもその内の1つ。バスのようにそれぞれ特定のルートを走る小型シャトルが用意されており、利用者はその中から1つ選びそのルートに沿って自身の乗降場所を決める。チケットは低価格で事前購入でき、あとは当日決められた場所と時間に行くだけ。支払いの手間もなく、席も確保されているのでスムーズな通勤が可能である。
chariot3
chariot4Chariotウェブサイトより引用

2. カーシェアリング

世間一般的に知られるようになったカーシェアリングである。サンフランシスコ生まれのUberLyftと呼ばれる配車サービスにはもともとベイエリアの渋滞問題の解決を期待されて誕生した背景があることから、通勤時に利用する客も多い。基本的にタクシー感覚で必要な時にその都度車を呼ぶ、というのが基本的な使い方であるが、事前に行き先と時間を登録した上で通勤用の予約を入れられるサービスも提供している。 出勤時に同じ方向に向かう、全くの他人同士を独自のアルゴリズムでマッチングさせ、効率の良い通勤を実現させた点はサンフランシスコらしさを感じる点だ。 似たような形でScoopと呼ばれる、通勤自動車の乗り合いサービスを提供するアプリも存在する。このアプリでは勤務先の住所やエリア、時間を事前登録することで特定のコミュニティに参加し、それから同乗者のマッチングを行うサービスを提供している。UberやLyftは運転手がドライバーとして収入を得るのに対し、Scoopは運転手自身も通勤に行くところが違いだ。 こういったアプリの他に、「タクシー乗り場」ならぬ「カープール乗り場」という形で、オフラインで同乗者・車を探す方法も存在する。下のように「カープール」と書かれた標識の場所には乗り合わせで通勤したい人が列をなし、そこへ同乗者を必要とする自動車が随時ピックアップに来る、というシステムになっている。 行き先は通常1カ所のみ、オフィス街で市が定めたカープール専用の乗降場所で乗客は降りる。同乗者は運転手に1ドルを渡す、という「暗黙の了解」もあるほど、この制度は市民に浸透している。 carpool1 通勤に向かう運転手にもメリットを与えることで、このカープールシステムは成立している。車で通勤する人が他の同乗者を乗せることで、車は州が定めた同乗者専用レーンの走行が可能。カリフォルニア州では、ひし形のマークが書かれた走行レーンは「カープールレーン」と呼ばれ、2人もしくは3人以上乗せた自動車の専用レーンとなっている。特に渋滞がひどくなる箇所に導入されており、特に平日の通勤時間では1台につき3人以上を乗せた車だけが通れるようになっている。 運転手へのメリットは他にもあり、カープールレーンを走ることでサンフランシスコを繋ぐ2つの橋、オークランド・ベイブリッジとゴールデン・ゲート・ブリッジの通行料金も安くなる。ベイエリアから毎日車で通勤する人にとって時間とお金を節約できるシステムを提供しており、交通渋滞問題も緩和されるようになる、という仕組みだ。

3. レンタルスクーター・自転車

サンフランシスコを歩いていると同ブランドのスクーターや自転車で通勤している人を多く見かける。これはレンタルのもので、スクーターだとScoot、自転車だとFordのロゴが大きく入ったFord GoBikeをみる。市内に数多くのステーションが設置されており、手軽に利用・返却ができる点が魅力的だ。 rental ちなみにNinebotというサービスでは車や自動車以外の通勤手段としてセグウェイや電動一輪車を提供。市や企業がこういった乗り物での通勤を許容している点も興味深い。 ninebot1Ninebotウェブサイトより引用

4. 総合交通拠点となるSalesforce Transit Centerの建設

欧米では地球環境やエネルギーの節約を考慮した都市計画が進んでおり、社会貢献の意識が強いサンフランシスコではその姿勢が特に見受けられる。現在建設中のSalesforce Transit Centerはサンフランシスコで走っている様々なバスや鉄道路線、上に挙げたカーシェアリングの自動車やその他交通手段が集まる場所としての役割が期待されており、市民が自動車以外でも通勤できるよう整備が進められている。 これまでサンフランシスコーシリコンバレー間を結んでいた高速鉄道、CalTrainのサンフランシスコ側の終着地点はこの施設まで延伸する予定。さらにこれとは別にロサンゼルスーサンフランシスコ間を結ぶ予定のカリフォルニア高速鉄道もこの施設に乗り入れるように開発が進んでいる。 このトランジットセンターでは他にも商業施設やレクリエーション機能を持たせ、市民のコミュニティ形成が活発になるような取り組みが行われている。このように総合的に公共交通の集約を行うことで市民の通勤の効率改善を行い、また国際的都市としての都市機能の見本市にもなろうとしている。 stc3 stc4Salesforce Blogより引用

5. フレキシブルなワークスタイル

ラッシュ時の通勤で受けるストレスを回避する解決策の1つはその時間を避けること。サンフランシスコでフレキシブルなワークスタイルが推奨されている理由の1つは、このように渋滞に巻き込まれて本来仕事ができる時間を無駄にしてしまうことを避けるためである。 ちなみにベイエリアの東、イーストベイと市内を結ぶように鉄道路線が敷かれており通称BARTと呼ばれているが、この鉄道では昨年8月末から今年2月までの半年間試験的に利用者に混雑時の利用を避けてもらう施策、BART Perksを実施。 Clipper Cardと呼ばれる、日本でいうSuicaやPasmoといった電子カードを使い、混雑のピークとなる7時半から8時半の利用を避け、6時半から7時半、もしくは8時半から9時半の利用者にポイントを付与。それを貯めることで抽選に応募でき、キャッシュバックが行われるシステムとなっている。プログラムには約18000人が参加、うち67%がこのプログラムに満足しているというアンケート結果も出ており、市民の通勤姿勢に変化をもたらしている。 bart1 記事冒頭で紹介したVitalityHealthらによる研究結果でも、フレキシブルなワークスタイルの提供はいくつかある通勤ストレス回避の中でも比較的導入のしやすい施策であり、企業としても実践するべきだと述べられている。また、その実施によるストレスの減少と健康的な生活の提供は従業員に提供できる会社としての大きな価値である、としている。

まとめ

アメリカは日本よりも自動車志向型で車通勤も多いことから、日本でも上記全てをそのまま真似できるということはない。しかし、社会全体が一丸がより多くの交通手段を提供し、企業が労働時間の柔軟性を許容して混雑を分散させることで通勤時間問題は改善が見られそうである。すべてが一丸となって取り組まねばならないからこそ、この通勤時間問題は働き方改革の重要な側面の1つであるように思う。 「仕事は私たちが行う活動のことであって、『行く場所』ではない。」イギリスでスマートワークスタイルを推進する非営利組織、Work Wise UKのフィル・フラックトン氏の言葉にもあるように、この記事が働き方を見直す1つのきっかけとなれば幸いだ。 *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。