D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン

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人の第一印象は、最初の10秒以内で決まると言われているが、これはブランド体験においても同じである。オフラインの世界に実店舗を持つブランドであれば、店舗空間全体を利用し、カスタマーが店に足を踏み入れた瞬間に彼らをブランドの世界観に浸らせることができる。 一方、店舗を持たないD2Cブランドにとって、オフラインにおけるカスタマーの最初のタッチポイントは、カスタマーサポートに問い合わせる時でも、プロダクトを初めて使う時でもない。それは、配達された箱を開ける瞬間だ。 「どうせ捨てられてしまうものに金など掛けられん!」と思うブランド担当者も多いかもしれない。そんな方にこそ、D2Cブランドの『開封体験作り』への力の入れようを見て欲しい。 店舗を持たない彼らにとって、カスタマーがパッケージを開ける瞬間こそが、カスタマーとの最初の「リアル」なタッチポイントであり、彼らは開封体験をブランドの価値や世界観を伝えるための重要なコミュニケーションの一つとして位置づけているからだ。

ブランドの第一印象を決めるパッケージ

ブランドの第一印象を決定する10秒のカウントダウンは、家に届いた商品を開ける瞬間からスタートする。Dotcom Distributionが2016年に実施したEコマースのパッケージングに関する調査によると、しっかりとブランディングされたプレゼントようなプレミアム感のあるパッケージは、ブランドに対するロイヤリティーを上げ、さらにクチコミを促進するという。 同調査によると:
  • 40%の消費者がプレミアムなパッケージングを提供する会社に対して高いロイヤリティーを抱くと回答。
  • オンラインストアで注文した商品がプレゼントのように包装されていた場合、40%の消費者が「同じショップで再び購入するだろう」と答えている。この数字は、2015年の調査の29%から大きく伸びている。
  • 40%の消費者が、「ブランディングされたパッケージ、もしくはプレゼントのように綺麗に包装されたパッケージは、ブランドに対するイメージに影響を与える」と答えている。
  • 「プレゼントのように綺麗に包装されたパッケージは、ブランドに対するイメージに影響を与える」と答えた人のうち、2/3以上の人が「ブランドに対してラグジュアリーな印象を持つ」と答えたのに加え、60%の人が「商品を受取ったときに、期待感を抱く」と答えている。
  • しっかりブランディングされ、さらにプレゼントの様に包装されたパッケージは、クチコミを促進する。「ブランディングされたパッケージ、もしくはプレゼントのように綺麗に包装されたパッケージは、ブランドに対するイメージにプラス影響を与える」と答えた消費者の50%以上が、「該当ブランドを友人におすすめする」と回答し、その割合は2015年に行った同調査結果の40%から大きく伸長している。

開封動画の流行

開封体験の重要性を押し上げたきっかけとして、英語圏における“Unboxing”と呼ばれる動画コンテンツの流行がある。Unboxing Video(開封動画)とは、購入したばかりの商品を文字通り開封、商品のレビューを行う動画コンテンツのジャンルのことである。 Youtubeを中心に、instagram、Snapchatなど各ソーシャルメディアチャネルで公開され、人気を博している。商品が届いた状態から、箱を開け、商品を取り出し、その場で使ってみて、その感想を述べるというのが、 一般的なUnboxing動画の流れだ。
[embed]https://youtu.be/tybe9qhjQ4E[/embed]
Unboxing動画では、最新デバイスから、コスメ、ファッション、子供用の玩具、食べ物に至るまで、業種問わず多岐に渡る商品が開封されている。 また、インスタグラムで#unboxingと検索すると、人気の動画として、『Omega』や『Louis Vuitton』『GUCCI』など丁寧に包装された高級ブランドのギフトボックスを開封する動画がたくさん紹介されている。つまり、それだけ幅広いオーディエンスがいるということになる。

ブランドがUnboxing動画へ寄せる期待

Google トレンドによると、「Unboxing」というキーワードが使われ始めたのは、2006年で、その検索数は年々増加している。2015年の12月をピークに、最近はややダウントレンドでになりつつあるが、依然としてかなりの検索ボリュームがある。むしろ、コンテンツとして定番化した感がある。 Youtubeで”Unboxing”と検索すると、なんと7600万件、instagramでは、67万件のもの検索結果表示される。(2018年6月現在) unboxing google trend これだけ人気のあるUnboxing動画。今、多くのブランドがPRのチャンスと捉えている。シェアしたくなるような開封体験の提供は、かなりの母数の潜在カスタマーにリーチできる(しかも無料で)大きな可能性を秘めているのだ。 2014年10月に実施されたGoogleの消費者調査によると、回答者の5人に1人が開封動画を見たことがあると答えている。また、開封動画を見たことがある人の62%が、特定の商品について調べる際に開封動画を見ると答えている。 加えて、実店舗に代わるショッピング体験を提供する手段としても、ユーザーがソーシャルメディアに投稿するunboxing 動画にブランドは期待を寄せている。なぜなら、unboxing動画は、オンラインストアの画面では十分に伝えることができない、商品の感触、機能性、使ってみた感じなど、消費者が購入するかどうか決めるのに必要な情報を提供してくれるからだ。 ユーザーが投稿する開封動画は、潜在カスタマーにリーチし、彼らの期待感を高めるのに一役買っているのみならず、商品に関する情報を伝えるための有効な手立てとなっている。そのため、ブランドはますます開封体験を重視するようになってきているというわけだ。

開封体験ベストプラクティス

ブランディングされ、プレゼントのようなプレミア感のあるなパッケージを使用するブランドに対して、消費者はポジティブな印象を抱くことが分かった。また、シェアしたくなる開封体験を提供することは、ユーザーによるunboxing動画の投稿を促す。 その結果として、潜在顧客に対して、オンラインストアでは伝えきれない商品の魅力を発信することが可能になるということも明らかになった。開封体験をデザインすることは、ビジネスにとって良い事ばかりのようであるが、効果的な開封体験とは、一体どういうものなのだろうか? 充実した開封体験を提供するブランドの共通点を見つけるべく、筆者自ら様々なD2Cブランドで商品を購入し、開封体験を検証してみた。その結果、魅力的な開封体験を支える3つの特徴が見えてきた。

(1) パッケージそのものが、ブランドコンセプトを体現

allbirds unboxing エコ・フレンドリーなシューズブランド『Allbirds』は、ボックスで目一杯ブランド価値を表現している。Allbirdsが使用している配送用の箱は、配送の役目を終えたらシューズボックスとして使えるようなデザインとなっているのだ。 かさばるシューズボックスをさらに大きな配送用の箱に詰めるのではなく、シューズボックスそのものを配送用にしてしまうという発想の転換だ。 allbirds unboxing 箱を開けると箱の内側にまず、『WE ARE ALLBIRDS』という自己紹介が。配送中に箱の中でシューズが動き回らないよう固定する仕切りには、ブランドのバリューが記載されている。(写真上)さらに、シューズの中からは、かわいい顔つきのシューズキーパーが入っており、そこにも商品の特徴が書いてある。少しのスペースも無駄にすることなく、ブランディングを行っている。 allbirds unboxing 加えて、発送に使われる箱にはリサイクルダンボールと大豆ベースのインクが使われており、100%リサイクル可能とのこと。パッケージそのものがブランドのコンセプトを体現するものとなっている。

(2) 配送手段としての機能性(商品の保護、返品への配慮)

せっかくブランディングされた素敵なパッケージを用意しても、発送の途中でダメージを受けたり、汚れてしまったりしていては元も子もない。Eコマースビジネスを行う以上、カスタマーの元に商品を万全な状態で届けることは大前提である。 bloomthat uunboxing 花束の配送サービスを提供する『BloomThat』は、花束の形を活かした円錐形のパッケージを採用。花を傷めることなく、商品が配達された瞬間から花束を受取ったときの喜びを体験できるようにしている。そして、円錐型のパッケージを開けると、リサイクル麻布でラッピングされた花束が現れるようになっている。 unboxing_bloomthat2 また、配送で使われる箱の役割は、必ずしもそれで終わりではない。ペットボトルをリサイクルした素材を使ったシューズブランドの『Rothy’s』の配送用の箱には、未使用の両面テープが予めセットされている。カスタマーが商品を気に入らなかった場合、そのまま箱に入れて返送してもらえるようにするためだ。 配送用の箱を返送用に再利用することでゴミを減らせるし、梱包用の箱やテープをカスタマーに用意してもらう手間も省ける。ほんのちょっとした気遣いではあるが、開封の瞬間に留まらず、ショッピング体験全体をより快適なものにする、スマートな仕組みである。

(3) シェアを促す、サプライズ

unboxing barkbox 愛犬用のサブスクリプションサービスの『barkbox』は、思わずシェアをしたくなる仕掛けが豊富だ。 Barkboxを購読すると、毎月テーマに沿った愛犬用のオモチャとおやつが届くのだが、ボックスに同封されている商品を解説する「お品書き」には、毎回クスッと笑ってしまうような(多くが犬に関連したダジャレだ)コピーが採用されている。 例えば、アートがテーマのボックスであれば、「The Academy of Fine Arfs」、(犬の鳴き声を表現する擬音語”Arf”と「Art」を文字ったダジャレ)恐竜がテーマのボックスには「ジュラシック・パーク」を文字った「CHEW RASSIC BARK」(Chewは「噛む」、Barkは「吠える」)というタイトルがつけられている。 シェアを促す仕掛けは、コピーライティングだけではない。ボックスに同封された商品の説明が書かれたお品書きが撮影用の小道具として利用できるようになっているのだ。お品書きの一部を切り取り線に沿ってくり抜くと、アートがテーマのボックスであれば、アートフレームに、プロムがテーマのボックスであれば、首輪に着けることができるリボンが完成する。 barkbox photo unbox barkbox

photo credit:@tobeyandpercy

  さらに、箱の中敷きに使われている紙にすらシェアさせる仕掛けが隠されている。アートがテーマの月なら、塗り絵ができる仕様に、プロムがテーマの月であれば、裏面が壁に貼り付けて撮影をすることのできるバナーとなっていた。 unbox barkbox

phot credit:@happyhuskyhiro

Allbirdsの例とも共通するが、BarkBoxは、パッケージのスペースを上手く活用し、ユーザーがソーシャルメディアに開封体験を共有するのを促す仕掛け作りに力を入れていることがわかる。

まとめ

オンラインで商品を販売する限り、必要となる発送用のパッケージ。「包んで、送って完了」ではなく、「何で」、「どのように」包むか、そして「どのような行動をカスタマーに期待するのか」を考えでデザインを行うことで、カスタマーのショッピング体験、さらにはブランド体験を向上させることができる。 日本では、商品のラッピングサービスは商慣習として根付いているし、素敵なパッケージを使用しているブランドも多い。また、ブランドのオリジナルのハッシュタグを作り、ユーザーにシェアを促すことも、一般的に行われている。その一方で、もし海外展開を行う場合、果たしてその開封体験は、ターゲットとなるユーザーに正しく響くものだろうか? 例えば、商品を保護するために、何重にも梱包することは、一見開封体験の向上に貢献しているように見える。しかし、もしエコフレンドリーが売りの商品を販売するブランドがこのようなパッケージを採用したらどうだろうか?ユーザーにとっては、過剰包装と捉えられてしまい、逆にブランドにネガティブな印象を与えてしまう可能性がある。 また、開封体験のシェアを促すために作成したキャンペーンハッシュタグが、全く別のことを意味するキャンペーンであったら?イギリス発のファッションブランド「Dorothy Perkins」は、リサーチを怠った結果、かなり恥ずかしいキャンペーンハッシュタグを約1年間に渡り使い続けてしまうという大失態を犯してしまった。 ブランドの頭文字を使った#LoveDPいうキャンペーンハッシュタグを作りったものの、「DP」という略語は、なんとハードコアなポルノ用語だったのだ! パッケージから始まる開封体験には、カスタマーと繋がり、ブランドの価値を高める可能性が詰まっている。そのためには、ターゲットとなるユーザーを理解し、彼・彼女たちに響く開封体験をデザインすることが重要だ。btraxでは、アメリカ市場における、ユーザーを起点としたマーケティングサポートを行っている。ご興味のある方は是非お問い合わせを

スタートアップと中小企業との違い

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以前に日本で会社を経営する友人から、 「この前のセミナーを聞いてスタートアップっていうのが理解できたつもりなのですが、ぶっちゃけ自分の会社がスタートアップなのか中小企業なのかイマイチわかってません」 と言われた。これは今年の年初に開催された、第2回Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKAの最終報告会における孫 泰蔵さんとの対談セッションの中で触れられた下記のポイントについての質問であった。

ベンチャー企業だからと言って、スタートアップであるとは限らない。英語では緩やかな成長を目指す場合はスモールビジネス (中小企業), 急激な成長とスケールを目的としてするのがスタートアップと呼ばれており、その2つはその成り立ちとゴールが大きく異なる。

参考: 【対談】孫 泰蔵氏 x Brandon Hill -スタートアップがグローバルに展開するための5つの秘訣-

スタートアップと呼ばれる企業には1つの明確なゴールがある

そもそも”スタートアップ"とは何なのか?”シリコンバレー”と同様、この定義が曖昧な名称を定義する際に一つだけ確実に他の企業と異なる点がある。それは「急成長」である。サービスを作り、会社を作り急激な成長を成し遂げる。それこそがスタートアップの使命であり、そのゴールを達成するために全ての仕組みが生み出されていると言っても良いだろう。 以前の記事「ベンチャー企業とスタートアップの違い」でも下記のように記載されている。
新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体
例えば、一部のハードウェアスタートアップを除き、デジタル化が進む今の時代に、特に大きな工場や立派な設備もないのに多額の資金を調達する。一体なんのためにそのお金を使うのだろう?と疑問に思うケースもあるのだが、その答えは”人”である。この”人”というのは二つの意味が隠されていて、一つめが従業員。そして二つ目がユーザー。 実は、この「短期間で急激な成長」の「成長」という言葉がトリックで、実は売り上げや利益ではないことが多い。では何をもってスタートアップの「成長」と読んでいるのか。その答えはユーザー数であり、従業員数なのである。 なぜ売り上げよりもそっちを優先するのか?その理由は意外と単純で、その二つの数字がM&AやIPOなどの最終的なエクジット額に大きな影響を与えるから。もう少し細かく言うと、それに紐づいた形で、会社の評価額 (バリュエーション)や次の資金調達に影響する。 例え経営が大赤字だったとしても、調達したお金を躊躇なくユーザー獲得施策や従業員獲得に使いまくるのがスタートアップの流儀。この辺は日本の感覚だとちょっと理解しにくいかもしれないが、シリコンバレー界隈のスタートアップで黒字の会社はむしろ珍しい。 短期間で急激な成長を遂げ、一攫千金を達成する。これがスタートアップが持つ大きな命題である。

着実な成長と永続性を重視する中小企業

その一方で、スモールビジネス、いわゆる中小企業はなるべく早い段階での黒字化と着実な成長、そして末長くしっかりと続くための仕組みづくりを行う。そこで重要になるのは、なるべく借入金を少なくして、会社規模も最小限で回せる効率性の高さ。そして、会社も従業員もじっくりと成長できるための戦略である。 これは全ての新規企業を”ベンチャー企業”と呼んでしまっている日本の感覚だと若干ややこしくなってしまうだろう。なぜならば、日本国内には”スタートアップ”っぽいベンチャー企業もあれば、”中小企業"っぽいベンチャー企業もあって、その両方が混在しちゃっているのが現状だから。 そして事をよりややこしくしちゃってるのが、成長の度合いにも限度があるので、日本国内でスタートアップを始めても、ターゲットを国内に絞ってしまっている場合は、どうしても中小企業的動きをせざるを得なくなってしまう。 参考: 日本の企業が海外進出するべき3つの理由 growth

例えるならバケツリレー vs 水道管

この二つの違いは、バケツリレーと水道管に例えるとわかりやすいだろう。同じ”水”を運ぶという目的を果たすにも、2つの大きく異なる方法がある。

手法1: バケツリレー

A地点からB地点に水を運ぶ際に最も確実な方法である。距離が伸びれば人を増やせば良いし、一定のスピードでしっかりと目的を果たすことが可能だ。バケツリレーでは高い確率で水を確実に供給できるし、そのための戦略も立てやすい。リスクも最小限である。 その一方で、距離が伸びるごとに必要となる人員もコストも比例して上がるので、上記のグラフの青い線で見られるような、確実だが地道な成長しか期待するこが難しくなるし、人が欠けると水の供給も途絶えてしまう。

手法2: 水道管

もう一つの方法として、水道管を作ると言うやり方がある。これは、最初にその仕組みを作るために膨大な資金と労働力が必要とされるが、一旦それが完成し、水源に当たれば爆発的な量の水を一気に多くの場所に提供が可能になる。 そして、何が素晴らしいかというと、一度水道管を作ってしまえば、あくせく働かなくても水は流れ続ける。その規模を大きくしたければ水道管を延長すれば良いわけで、拡張性も高い。 その一方で、この方法はリスクがかなり高い。せっかく頑張って水道管を作ったのに、水源がない可能性もある。なので、まずは早いスピードでサクッとパイプを作って見てそこに水源があるかどうかを探ってみる。それがいわゆる"デザイン思考"や”リーンスタートアップ”の手法である。 j

始めるときにどっちにするかを考える

この水を運ぶ際の二つの手法。最初からどちらの作戦でいくかを決めた方が良い。その存在意義も、ゴール設定も全く変わってくるから。そうでもしないと、経営戦略もフラフラしてしまうし、何より従業員が混乱してしまう。バケツリレーする人とパイプを汲み出す人が混在することになってしまうのだ。 堅実な収益を重視した仕組みと動きをするべきなのか、それとも一攫千金狙いのぶっ込み型神風チームを作るのか。これは経営者がしっかりと考え決めなければならない。そして、それぞれに最適化された戦略と組織を作る必要がある。 もしくは、福岡のNulabみたいに、最初はバケツリレーのSI業から始め、余力でプロダクトづくりを進めて、見事に水道管に変換した例もある。これは、平日にパケツリレーしながら、週末にパイプを組んでみるタイプのやり方で、面白い。

スタートアップの条件は”同じことで100倍の規模になる可能性があるか"

上記の例えでも分かる通り、中小企業は労働集約型になりがちで拡張性 (スケール) が低いケースがほとんど。しかし確実な成長と永続的な存在を期待しやすいメリットがある。一方、スタートアップはリスクを取ってプロダクトを作り、早いスピードで急成長を目指すスケール重視のビジネスなのである。 これは言い換えると、今現在と同じ事をしていても、効率的に100倍の規模にスケールアップできるかどうかにかかっている。 このスケールにこだわったのが、映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」でも有名になったフランチャイズの仕組み。もともとマクドナルドは地方に根ざした、品質重視のバーガーショップだった。一度店舗数の拡張を試みてみたのだが、品質に影響が出るという事で、創始者のマクドナルド兄弟の目の届く範囲での堅実な経営を行なっていた。 それに対して、アメリカ全土への爆発的な成長を目指した起業家、レイ・クロックがフランチャイズの仕組みを利用して、オリジナル店の同じ仕組みを多店舗に”複製"する事で、急激なスケールを成し遂げ、世界一のハンバーガーチェーンにした。 これはまさにバケツリレー型経営から水道管型ビジネスモデルに変換した例である。しかし皮肉にもその経営方針の相違から、創始者のマクドナルド兄弟とレイ・クロックが対立し、最終的には規模に勝るレイ・クロックが勝利したというアメリカらしいストーリー。ちなみにこのレイ・クロックは、Amazonの創始者ジェフ・ベゾスが最も尊敬する人物の一人でもある。 これが現代だとユーチューバーになるのか、YouTubeというプラットフォームを作るのか。ブロガーになるのかブログプラットフォームを作るのか。Uberドライバーになるのか、Uberアプリを作るのか。などの差になってくるのであろう。地道に働くのか仕組みを作るのかに近い。

"地方に根ざしたスタートアップ"なんてあり得ない

ここまで読んでわかった方もいるかもしれないが、このスタートアップの使命である急成長=スケールを成し遂げるためには、その市場規模が大きくなければならない。マクドナルドも一号店のあるカリフォルニア内だけでの展開だとスケールに限界があるため、アメリカ全土、そして世界にビジネスを展開した。 したがって、たまに聞くことのある、地元の地域に密着したタイプのスタートアップサービス、なんていうものは実現しようがない。その都市や地域に限定した時点でスケールしないからである。これは日本国内だけで展開する場合でも同じで、やるならメルカリのように最初から世界を狙って始めるべきである。 参考: どんだけ頑張ってもお前がカバーできるのは世界の2%

なぜスケールする必要があるのか

そもそもなぜスタートアップはスケールをそこまで重要視するのか。理由はいくつかあるが、おそらく一番大きいのは、”世の中へのインパクト"であろう。言い換えると、サービスを通じて世界を変えられるかどうか。 サンフランシスコやシリコンバレーなんかでは、社会問題や現在の状況を打破するべくスタートアップを始める事が一般的で、お金儲けよりもどれだけ世の中をよくできるか、世界を変えられるかがスタートアップに関わる人々のモチベーションになる。 そのためには、世界的に受け入れられる仕組みを提供する必要があり、自ずとスケールが重要視される。 さて、あなたのやろうとしているビジネスはバケツリレーなのか水道管なのか?これを機会に、今一度考えて見ても良いかもれしない。  

■ お知らせ:

なお、この辺の違いやスタートアップとしての心得、手法などは、冒頭でも紹介した「Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA」のプログラム内でもどんどん伝授する予定です。 当プログラムは福岡在住の方々、および将来福岡での起業を検討している方々を対象に、福岡市が全面的にサポートし、我々btraxが運営を提供させていただいている、日本でも数少ないグローバル起業家育成プログラムですので、是非ご参加ください。 応募・参加は無料で、アメリカへの渡航滞在費以外の費用はかかりません。締め切りまであと3日です。応募はこちらから

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

世界が憧れるサンフランシスコ・シリコンバレーの3つの魅力

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サンフランシスコ・シリコンバレーには、世界中のスタートアップが集まっている。ここには、 最先端の技術を操るエンジニアや有数のデザイナーがおり、さらにハングリー精神と野心に燃えた人々が常に「自分たちこそが世界を変えてやる」と、革新的なアイデアを出し合っている。 また、この地にはグローバルな視点や起業家マインドを習得できる環境、そしてネットワークを構築するシーンが様々あるので、将来世界を舞台に自身のビジネスを拡大したい方にはうってつけの場所だろう。 現在弊社では福岡市のサンフランシスコ・シリコンバレー研修『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』のプログラム設計及び運営に携わっており、まさに上記に述べた環境下で起業家を目指す方々の支援を行なっている。 関連記事:福岡スタートアッププログラムに学ぶ起業家に必要な4つの基本事項  そこで今回は、世界中から人が集まるサンフランシスコ・シリコンバレーの魅力に迫りたいと思う。

1. サンフランシスコが生み出す独自の環境

サンフランシスコに根付いた人々のマインドセットは、サンフランシスコが世界から注目され続ける原動力になっている。そして、それらは様々なかたちで彼らの生活の中に浸透している。 その1つの例が、ハッカソンだ。ハッカソンとは、エンジニアたちが集まり、そのスキルを使って新たなサービスやソフトウェア開発を行い競い合うコンテストのことだ。 しかし、サンフランシスコで開催されるハッカソンの多くでは、非エンジニアたちの参加が少なくない。だからこそ、今までにない角度からのアイデアが生まれ、イノベーションが次から次へと起こっている。 関連記事:【コーディング禁止?】非エンジニア大歓迎!サンフランシスコのハッカソンで垣間見るイノベーションの源流 また、ハッカソンだけではなく彼らのフレキシブルな通勤スタイルも世界から注目を集めている。日本では通勤は非常にストレスフルなものであるが、サンフランシスコでは人々が新たなテクノロジーやサービスを次々にとり入れ、通勤にでさえもイノベーションが起こっているのだ。 ある調査結果によると、サンフランシスコの平均通勤時間は片道で31.7分となり、日本の平均通勤時間は1時間19分(片道39.5分)、東京だと1時間42分(片道51分)まで伸びる。 人口密度が東京よりも高いサンフランシスコでこれだけの時間差があるのは興味深い。それでは、サンフランシスコではどのような方法で東京の半分程度の通勤時間が実現しているのだろうか。 関連記事:サンフランシスコが取り組む通勤イノベーション

2. 成長を遂げるスタートアップ、ユニコーン、そしてデカコーン

サンフランシスコには数多くのスタートアップが存在しているが、同時に多くのユニコーンも生まれ、Airbnb、Uber、DropboxやPinterestなど誰もが知るような数々のユニコーン企業が成長を続けている。 そもそも「ユニコーン」とは、未上場企業の中で、評価額が10億ドルを超えるスタートアップのことであり、いわゆるメガスタートアップである。最近では10億ドル以上どころか、100億ドルを超える企業もある。 これは日本円にして実に1兆円を超える評価額であり、日本だと上場企業の時価総額でもその規模の会社は百数十社程度でしかない。 関連記事:未上場で評価額10億ドル以上のユニコーンTop10 ちなみに、最近ではユニコーンの上をいく「デカコーン」と呼ばれる企業まで生まれている。「デカコーン」とは、未上場にも関わらず、評価額1兆円を超える時価総額のユニコーンのことだ。 驚くことに、実際にこのような企業が世界にいくつも存在している。そしてサンフランシスコには、この「デカコーン」の多くが存在しているのだ。 関連記事:2017年スタートアップトレンド – ユニコーンの次はデカコーン

3. サンフランシスコで浸透する次世代の働き方

サンフランシスコの人々のワークスタイルは、勤務時間だけでなく、在宅勤務や有給まで自由であることが、当たり前となってきている。 彼らの働き方は、驚くほどフレキシブルなのだ。ストレスのない、「遊ぶように働く」事ができる環境を提供することで、優れた人材を確保し、クリエイティブなチームを組織するのだ。 現在日本でもワークライフバランスをキーワードに働き方改革が行われている。しかし、ワークライフバランスのように仕事とプライベートを分けることは実質不可能であり、かえってストレスを生むことも多い。 そこで、サンフランシスコでは「ワークライフインテグレーション」という、仕事とプライベートを分けるのではなく、むしろ仕事と私生活を無理なく連動させるという考え方が浸透しつつあるのだ。 仕事以外の時間の使い方が仕事の結果に繋がるため、プライベートの交友関係が仕事にも繋がることも珍しくない。このようなワークスタイルが、今のサンフランシスコを作り上げているのかもしれない。 関連記事:【ワークライフバランスはもう古い】新しい働き方、ワークライフインテグレーションとは

最後に

いかがだっただろうか?サンフランシスコ・シリコンバレーは、今や世界が注目せざるを得ない、革新的且つ最先端をいく都市である。そして、その理由は街のいたるところに見られるほど、サンフランシスコ・シリコンバレーの人々や生活に浸透している。 今もこの街の文化やテクノロジーは進化を続けており、可能性に溢れている。きっとこれからも世界を牽引する都市であり続けるであろう。