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人生を何に捧げるべきかを見つける方法

人生を何に捧げるべきかを見つける方法

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日常生活の中でどのように自分が好きなこと、やりたいことを見つけることができるのか?「やりたい事が見つからない本当の理由 – そして見つけるための4つの方法」ではそんな多くの人々が感じる疑問に対して、下記の4つの方法で情熱とモチベーションを見つける方法を説明している。

やりたい事を見つける4つの方法

  • やっていて楽しいことをやる (What)
  • なぜやるかにフォーカスする (Why)
  • どうやるかにこだわる (How)
  • 誰のためにやるかを考えてみる (Who)
では、これが「人生」と言う壮大なるテーマになったらどうなるだろうか?自分の人生でどのような事を実現するべきなのか。ここで一つの興味深いエピソードを紹介したい。

ノーベル賞ができた意外なきっかけ

おそらくノーベル賞が何かは多くの人が知っているだろう。では、どのようなきっかけでノーベル賞が生まれたかをご存知だろうか?実は、その裏にはノーベルの価値観を変えた偶然の出来事が隠されていた。 ノーベル賞設立者のアルフレッド・ノーベルはダイナマイトをはじめとする様々な爆薬の開発・生産によって巨万の富を築いた。テクノロジーの力でイノベーションを生み出し成功した起業家の一人である。 しかし、彼の発明は多くの爆薬や兵器に利用され、多くの人々の命を奪うことになった。その罪悪感に苛まれてノーベル賞を設立した、と言うのが定説であるが、実はもう一つのあまり知られていないエピソードがあった。 1888年に彼の実兄であるリュドビックがカンヌにて死去する。この際にフランスの新聞が誤ってアルフレッド・ノーベルが死去したとの記事を報道した。 自分の死亡記事を何の気なしに見つけた本人のノーベルは驚愕した。なぜならその見出しはこう書かれていたからである。 「死の商人、死す」

その時彼は人類の平和と発展のために人生を捧げると決めた

その記事には、ノーベルが人々の命と引き換えに巨額のお金を荒稼ぎしたと書かれていたのだ。富豪にはなったが、世の中の多くの人々を不幸にした。と。 その報道を目の当たりにしたノーベルは、今もし自分が死んだとしたら、世の中にこのように記憶される事を実感し、自分は人生を通じて何を残すべきかを考えるようになったと言われる。 そして彼が選んだ人生のミッションは「自分の人生を人類のために捧げる事。」その後、1896年12月10日に63歳で死去する1年ほど前にノーベルは、下記の遺書を残している。 「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする」 これが後にノーベル賞を生み出した。

あなたの葬式で泣く人の平均数は?

このように、ノーベルはもし今自分が死んだとしたら?とう命題を目の前に突きつけられ、それに対して考える事を余儀なくされた。それにより「自分が本当に人生を掛けるべき事」を見つけ出し、そこからバックトラック (逆算) する形で、何を基準に生きていくべきかを決めた。 ところで、もし今あなたが死んだとしたら、そのお葬式でいったい何人の人たちが泣いてくれるだろうか?アメリカの研究機関による調査によると、お葬式で泣く平均人数はわずか10人であることがわかった。 どんな生き方をしたって、もしかしたら、あなたがいなくなった事を悲しんでくれるのは10人ほどしかいないかもしれない。

あなたの人生はあなたのもの

もしそうだったとするならば、世の中でどう評価されるか、他人にどう評価されるかに左右されるべきではない。周りの評価や地位や名声、富の大きさだけにとらわれるよりも、自分の人生において本当に自分が達成するべき事を見つけ、それに強烈なフォーカスを当てるべきなのかもしれない。
自分の心に素直にならない理由はない。あなたは、他人の人生を生きる事に時間を無駄にするべきではないのである。 - Steve Jobs

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

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皆さんはサンフランシスコに住む人々の生活を明確に描けるだろうか?どのように生活し、どのように仕事しているか、想像できるだろうか。今回は、我々サンフランシスコで働く人の生活の中に浸透しているテクノロジーを、衣食住(仕事)という切り口で紹介し、サンフランシスコがイノベーションを生み出し続ける街である所以をお伝えしたいと思う。
  • 衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力
  • 食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある
  • 住(働く):サンフランシスコのイノベーションを生む、自分にあった仕事環境と通勤スタイルの選択

サンフランシスコは今もなお最新テクノロジーの発信源

btraxではイノベーションブースタープログラムを提供しているが、参加者には最長2ヶ月間サンフランシスコに滞在していただいている。その滞在のなかではプログラムに参加する以外にも、サンフランシスコの色々な最新サービスを自ら試し、自分たちのサービスアイデアに活かしている。 たとえば同プログラムに参加された日本の大手シンクタンクの社員の方々はサンフランシスコ市内で利用したUberの乗車時に、思いの外ドライバーと会話を楽しんだようで、サンフランシスコに住む人のようにサービスの価値を体験したようだった。 関連記事:日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント サンフランシスコでは生活のあちこちにテクノロジーが浸透している。大手スタートアップの本社があったり、新しいスタートアップが次々と生まれたりする環境ということもあり、最新のサービスのテストマーケットとなることも少なくない。 また、ここで暮らす人の最新サービスに対する関心が高く、アーリーアダプターも多いため、新しいサービスが生活の一部になる速度が早い

サンフランシスコから離れて初めて気付く、テクノロジーと隣り合わせの生活

筆者はサンフランシスコに3年ほど住んでいるが、恥ずかしながら自分の生活にそこまでテクノロジーが浸透しているとは思わず、自分が依存しているとも思っていなかった。しかしその認識が間違っていたことに気付かされたきっかけとなったのは、先日休暇兼リモートワークで訪れたハワイである。 ハワイ、オアフ島は言わずと知れた観光業の盛んな土地であり、特にテクノロジーが盛んなイメージは当然ながらない。とはいってもアメリカ国内なのである程度はサンフランシスコで使ってるサービスも浸透していると思っていた。 しかしながらハワイに2週間ほど滞在して、普段のように生活、仕事ができずに不便を感じることが多かった。そしてその不便の多くはサンフランシスコのテクノロジーによって成り立っていた生活体験ができなかったからである。 一方で、ハワイならではのテクノロジーの使われ方も垣間見ることができたのも事実である。 Hawaii sharing bike (ハワイにあったシェアリング自転車のbiki) そこで今回は筆者のような文系サラリーマンでさえもサンフランシスコではテクノロジーに生活を支えられているという点をあたらめてまとめてみた。 また今回筆者はサンフランシスコを離れて暮らしてみてどれだけサンフランシスコが特別な環境なのかを実感したわけなのだが、特にスタートアップ、新しいビジネスアイデア、サービスを考えている人に、ここにどんな特別な環境があるのかということを知っていただければ幸いである。

衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力

サンフランシスコはデザインやアートが盛んだったり、ヒップスターやヒッピーなど個性的なスタイルが根付いていたり、ファッション感度が比較的高い都市だ。ファッション業界の中でもテクノロジーという切り口でトレンドの勢いを増している。

買い物不要!便利などころか、専属スタイリストがつくサブスクリプションサービス

サンフランシスコの生活の中に浸透してきているファッション業界のスタートアップの中に、サブスクリプションやキュレートボックスなどの形態でおしゃれさと便利さを追求しているブランドがある。 2011年創業のStitch Fixはユーザーの好みやサイズを元に、パーソナライズされたスタイリングをキュレートしてユーザーに届けるサービスだが、2017年にはアメリカで11番目に大きいアパレル・靴のオンライン小売ブランドとまでなった。その成長率はAmazonを超える。 stitch fix (Stitck Fixから届く箱の中身のイメージ。写真は公式サイトより転載) ユーザーに届けられる5セットのスタイリングはStitch Fix独自のアルゴリズムから選ばれたものだが、スタイリストからのコメントもついており、テクノロジーとマニュアルのバランスが取られている。 好みに沿った服が届くのは大前提だが、ユーザーは数日間のうちに試着をしてみてサイズが合わなかったり、好みでなかったりしたら返却することができる。もちろん気に入れば購入ができる。 実店舗が次から次へと閉店して数が少なくなりつつある昨今、オフラインで購入をしようとすると消費者は店舗に行くまでに以前よりも時間をかけ、さらにその中から自分の好きな服、サイズを探さなくてはいけなくなった。 一方Stitch Fixは探すという行為を無くしてくれた。買い物をする時間があまりないけどテキトーな服でいいわけじゃない、もしくは何を着るべきかの助言が欲しかったりする人は、うってつけのサービスなのだ。 またテック企業を中心に女性起業家などの活躍が目立ってきている中、彼女たちの仕事ぶりだけでなくライフスタイルも注目されてきており、特に働く女性にとってファッションは忙しくても妥協したくないという思いが強くなってきているのではないだろうか。

購入だけじゃなく試着から返品までも自宅で完結できるようになる

さらに衣類のオンライン購入で消費者の悩みのポイントのひとつになっているのが、事前に本物の商品をみて試着ができないという点だが、返却サービスの提供、簡易化をすることでこのハードルを下げている。 大手Amazonに至ってはAmazon Prime会員限定で、Amazon Prime Wardroabというサービスを開始した。ユーザーが購入を考えている商品を選択すると、その商品が届き、自宅で購入前に試着ができるという仕組みである。 同封されている返却用の伝票を使えば、無料で返却商品の引き取りをしにきてくれたり、試着した商品の中から購入をすればさらに割引が得られたりと、事前に試着ができないという悩みの解決以上にお得なサービスを提供しているのである。 服だけに限らないアメリカの返品文化というのはオンラインでも同様に存在しているようだ。むしろオンラインでの返品サービスには今までより便利に使い続けられる工夫がみえる。 関連記事:アパレル業界の未来を予測!知っておくべき6つの現象【前編】

食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある

探す・予約・注文・受け取り。あらゆる外食体験がシームレスになりつつある

サンフランシスコは山手線内回り約2個ぶん程の大きさ*でありながら約4,400のレストランがあるという。当然レストランなどの飲食店の口コミサイトというのはサンフランシスコでもよく使われている。 その中でもYelpは有名で、実名による口コミだけではなく持ち帰りやデリバリーのオーダー、席の予約もアプリ内で行うことができる。本来はデリバリーを行っていないレストランの代わりにデリバリーするサービスはGrubHubPostmatesUberEatsなどかなり主流になってきた。 さらに最近ではGoogle Mapsがロケーションと時間に応じてレストランやオススメのアクティビティなどを地図上に表示してくるようになった。自分が検索してから決定までの操作を繰り返すうちに、より個人にあったオススメを表示してくれるようになるのであろう。 関連記事:小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題

オンラインは便利だけどお値段高めなんてことはなくなってきている

また、サンフランシスコの物価の高さはいつも悩みの一つで、外食も例外ではない。平日のランチであっても10〜15ドルかかるのが普通で、お財布に優しいオプションはいつも歓迎される。 そこに目をつけたのがMealPalというサービスである。日々のランチ(もしくはディナー)をサブスクリプション式で購入して、各レストランが1種類ずつ提供しているメニューから好きなものを事前に選び、自分でお店まで取りに行くというもの。 お店側にとっては決まったメニューを決まった量分作りやすいので1食5〜6ドル程度で提供ができるのである。サンフランシスコ界隈で働く人の間で広がりを見せている。 また日々の食材の買い物についてもAmazonFreshInstacartといったオンライングローサリーデリバリーサービスが、便利かつ、店頭販売価格とさほど変わらないお得さをメリットに浸透してきている。 sf food price table (食材価格サンフランシスコとアメリカの比較。こちらのサイトより転載) オンラインの注文は配達までに時間がかかる、店舗の方が安いというような消費者の心配はどんどんなくなってきていると言えるだろう。

住(働く):サンフランシスコのイノベーションを生む、自分にあった仕事環境と通勤スタイルの選択

住宅よりも働く空間によりサンフランシスコらしさが垣間見られると思うのでオフィススペースについても述べておく。

働く場所はどこでも良いけどどこでも同じという訳ではない

まずサンフランシスコではリモートワークは主流であることが街を歩いていてもわかる。日中カフェに入れば仕事をしている人を多く見かけるし、「今日はカフェで仕事してから午後オフィスにちょっと寄る予定」といったようなパターンをよく聞く。 会社のデスク以外で仕事ができるというのは会社の規則によって許可されているということだけでなく、サンフランシスコの多くのカフェなどでWiFiやコンセントなど働くことを前提にした場所がたくさんあるということでもある。 カフェなどの飲食店だけでなく、日本にも進出したWeWorkImpact Hubなどのコワーキングスペースも多くみられる。 利用者が自分の執務スペースだけでなくネットワークの構築やそこから起こりうるコラボレーションの機会を求めていることもこのようなコワーキングスペースが流行る理由であり、そのようなマインドを持つ人が多いこともまたサンフランシスコならではだ。

みんな同じである必要はない、通勤スタイル

また、通勤においてサンフランシスコ界隈で働く人の多くに利用されているのはシェアリングサービスである。 関連記事:【2017年最新版】コワーキングスペース 世界の8トレンド ドライバーの自家用車に相乗りしてライドをシェアをするUberは通勤ではさほど主流ではないものの、特定のルートを走る小型シャトルをシェアするChariotや、通勤者同士で運転手、乗客をマッチングするScoopFord GoBikeJUMP Bikesの提供する自転車もサンフランシスコ市内で展開されており、激戦区となっている。 ちなみに以前フライング気味でサービスが一部始まってしまったBirdLimeBikeSPINといったシェアキックスクーターも、2018年8月現在はサンフランシスコ市交通局の許可待ちの状態ではあるが各社資金調達に成功しており、勢いを増している。 テクノロジーとは少し離れるが、ローラーブレードやスケートボードで出勤をする人も見かけるあたり、サンフランシスコでは通勤においてもダイバーシティが認められ、それぞれが自分にあったスタイルを選択していることがわかる。 こういった姿もサンフランシスコのライフスタイルを形成する重要な要素と言わざるを得ない。 関連記事:サンフランシスコが取り組む通勤イノベーション

サンフランシスコのどういった人がこのような生活をしているのか

ここまで紹介したサービスは何も特別なものではなく、むしろサンフランシスコに長く住んでいる人であれば聞いたこと、使ったことのあるようなものばかりである。 エンジニアでも投資家でも起業家でもない筆者のような文系サラリーマンでも最新テクノロジーの情報が耳に入り、実際に見てその広がりを実感している。 (実際にアメリカ国内でもベイエリアのスタートアップは一番多くの投資を受けて拡大していることがわかるこちらのサイトより転載) これは間違いなくサンフランシスコ唯一無二の特徴だ。そして各サービスの広がりを見ているとサンフランシスコの以下のようなユーザーが、サービス拡大の根源を支えてくれていることがわかった。 まず、サンフランシスコ界隈にいる利用者の最新サービスに対する関心が高いので、新しいサービスへの抵抗が低い。人は得てして今まで使っていたものに慣れているから現状維持を選びがちだが、テック企業で働いている人や投資家などは新しいサービスを聞きつけるのも早いし、まずは使ってみたいという精神が強いアーリーアダプターが比較的多い。 この人たちによって、さらにそのサービスの情報や評判が広まっていく。 そしてさらに、アーリーアダプターを中心に使ってくれるので改善点がより早い段階で出てサービスの改善へと繋がっていくというサイクルがある。サンフランシスコはよく新サービスの試運転対象エリアとなることが多いのもそれが理由であろう。 btraxが日本の大手電機メーカー向けに行ったプロジェクトでも新規ユーザーを探すために、街で開発段階のサービスをテストしてもらえる人を探し、ユーザーインタビューを行った。 全く知らないサービスをテストして見知らぬ我々に協力してくれる人が少なからずいるということ、そして彼らが具体的にそのサービスを使うシーンを想定して共有してくれるフィードバックの質の良さは、やはりサンフランシスコならではでないかと改めて実感した。 関連記事:マジックなんてなかった!スタートアップ企業の初期ユーザー獲得方法

まとめ

今回、サンフランシスコを出てハワイで生活をしている時に感じたことをきっかけに、こういったテクノロジーを中心としたライフスタイルについて振り返ったわけだが、やはりアメリカ国内とはいえサンフランシスコは他の都市とは全く異なる特徴がある。 筆者はテクノロジーを追い求めてサンフランシスコにきたわけではないが、そんな筆者の生活にもあらゆる面でテクノロジーが浸透してきていた。 ハワイでUberを使った際には、サンフランシスコで主流である1台のUberを他のユーザーと相乗りすることで安価に乗車できるUber Poolというプランがなかったため、毎回ひとりでも1台をチャーターしなければならず、非常にお金がかかってしまった。 またハワイ、特にワイキキ周辺は働きにくるような場所ではないので当たり前かもしれないが、WiFiやコンセントのあるカフェがほとんどなく、コワーキングスペースもなかなかの過疎っぷりだった(事実、筆者が訪れたハワイのコワーキングスペースは訪問後数日後にクローズした)。 またサンフランシスコで新サービスの拡大を目の当たりにしたり、btraxプロジェクトで実際にサービス開発のサポートをしたりしたことを振り返ってみると、やはりサンフランシスコがどれだけ特別な場所なのかがわかる。 シリコンバレーを中心に世界トップレベルの技術力を持っているということはサンフランシスコ、ベイエリアの特徴の一部でしかない。 起業家精神のある人や最新サービスに対する感度の高い人が集まり、時には彼らが交わりながらまた新しいアイデアが生まれ育っている。こういった環境の中、ビジネスアイデアを作って育てて行けることがどれほど有効かは、先に紹介したサービスの例からもわかっていただけると思う。 サンフランシスコ、シリコンバレーだけが起業をできる唯一の環境というわけではないが、ここで暮らし、この環境にふれ、ここで試しながらサービスを発展させていくということはどの都市で行うよりも濃いイノベーションが起こせるのではないだろうか。 参考: ・Stitch Fix Proves Again That Data Is The New Hit FashionMealPal gobbles $20M for its restaurant meal subscription serviceShared electric scooters probably won’t return to SF until August *サンフランシスコ面積山手線内回り大きさ

やりたい事が見つからない本当の理由 – そして見つけるための4つの方法

やりたい事が見つからない本当の理由 – そして見つけるための4つの方法

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どうしたら好きなことが見つかりますか?
これまでの経験上、起業を目指している人や、これからの進路を考えている学生に聞かれる質問で一番多いのがおそらくこれだろう。自分自身の場合、子供の頃からの物作りに対する興味と、大学生時代に強烈に好きになった「デザイン」という世界を知ることができたため、そこまで悩む必要がなかった。 それもそのはずで、高校生になる頃には自分が興味のない事を学ぶことに対してエネルギーを注ぐ事を諦めてしまったから。それ故日本の大学に入ることは出来なかったが…。 関連: 文系、理系、オレ何系?

エリートの方が好きな事が見つかりにくい?

その一方で、上記の相談される多くの方々は、世の中では「エリート」のくくりに入る。ということは、学校での成績も良く、受験にも成功しているだろう。おそらく学校での面白くない授業に耐え、上手に得点を取る能力がついてるはず。そうなると、やりたくない事でも我慢出来るように育って来てしまっている可能性が高い。 強烈に好きなことを見つけるために、自分が嫌いな事や、やりたくない事をはっきりとさせ、好きなことだけを抽出する方法がある。 もし、日本の学校教育の中で、好きじゃない事を我慢してやる習慣を作っちゃってるとすれば「なんとなく良いなと」は思う事があっても、「強烈に没頭したくなるもの」が見つかりにくくなってる可能性もあるのではないかと感じた。

好きと言っている割には...

逆に、「これが好きです!」とはっきりと言える人の中にも、実は「本当?」と思ってしまうケースも少なくない。例えば、デザインがめちゃ好きだと言っている割には、これまでに少しもデザイン的なことを一切やっていない場合だったり、スタートアップに興味があるらしいのに、バリュエーションの意味を知らなかったりなどがそうだ。 これはもしかしたら、これまで育ってくるプロセスの中であまり好きではないことでも、本能的に我慢する事を覚えてしまって、逆に強烈に興味の湧く事柄にも反応しにくくなってきている可能性がある。一言で言うと「我慢しすぎ症候群」なのかもしれない。 参考: それは本当に自分が好きな事ですか?

起業はやりたくない事から逃げ出すための一つの手段

これは自分の場合も含め、多くの起業家にありがちなケースなのだが、会社を始める理由自体が、自分のやりたいことの実現、もしくはやりたくない事を避けるための手段だったりもする。しかし、実はビジネスを行う際には、強烈にそれに対して誰にも負けないぐらいの情熱がなければ続かない。 それに関して、スティーブ・ジョブスが下記の様に答えている:

“物事を成功させるには、情熱が必要だと言われているが、これには完全に同意する。なぜならば、強烈な情熱が無ければ、真っ当な人であれば途中で投げ出してしまいたくなるぐらいに、しんどいからである。”

参考: Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学

LikeではなくLoveを見つける

ジョブスが語る通り、もしあなたがこれからビジネスを始めようと思っているのであれば、それに対しての強烈な愛情 (Love) を持つ必要があるだろう。これは、漠然とした好き (Like) では成功するのは非常に難しいだろう。なぜならば、同じ様なビジネスをやっている人がいる場合 (珍しいケースではない) 愛情の強さの差が命運を分ける事が多々あるからだ。

やりたい事を見つける4つの方法

ではどの様にしてLoveを感じる事柄を見つける事ができるのであろうか?実はその方法は1つではない。ついついその内容に注目しがちであるが、実は他の方法を含めると意外な所に”やる気”が隠されていたりする。

1. やっていて楽しいことをやる (What)

好きを仕事にするを実現するための方法。趣味を仕事にするのもこれ。自分自身もこのケースで、元々デザイナーとして働き、大好きなデザインを仕事にするためにデザイン会社を始めた。やる事自体が自分が好きな事であるので、当然の様に仕事にも高い情熱を持って取り組める。と思いがちなのであるが、ここに一つの落とし穴がある。 好きな事を仕事にしたとしても、現実的には好きなことは5%程度で、残りの95%はやりたくない事の連続である事が多い。 例えば、デザインがやりたくてデザイン会社を始めてみたら、好きなデザインをできる時間は5%もなく、ほとんどが経理や人事などの経営に関するタスクに時間が取られ、純粋に好きなことに没頭できる時間は少ない。 それでも、その5%ぐらいの快楽のために、その他の95%の時間が苦にならない状態を維持することは可能である。その一方で、この強烈に好きな5%がなければ、到底続かないだろう。加えて、これだけでは情熱を維持し続けることは至難の技であり、下記のその他の理由もモチベーションになるべきであると感じる。

2. なぜやるかにフォーカスする (Why)

何を仕事にするかよりも、なぜそれをやりたいかに注目することで、やりたい事を見つける方法。そのビジネス、もしくはサービスを通じて自分の周り、そして世の中がどの様に変わるのか、を重要視する事で、手段よりも目的を明確にする事が可能になる。 例えば、先週、サンフランシスコでコオロギを原材料にしたチップスを製造販売するスタートアップのファウンダーに会った。そう、昆虫のコオロギ。通常であれば誰もが一瞬で"ありえない"と思える様なアイディアである。 しかし26歳の彼女は、コオロギに含まれる豊富なタンパク質と、それによる世界的なエネルギー問題の軽減、そして、今後確実に発生すると思われる食糧危機を救うために、そのビジネスに対して誰よりも強い情熱を持っている。 この様に、特にプロダクト自体に強烈な情熱を持っていなくても、それが生み出す世の中に対してのポジティブな影響に強い意識が働けば、それが大きなやる気に繋がり、自分の人生を捧げる価値のある事柄を見つけ出すこともできる。

3. どうやるかにこだわる (How)

意外と盲点なのが、仕事のやり方にこだわることでやりたい事が見つかると言うパターン。これはむしろ見つかると言うよりも、見出すと言った方が正しいかもしれない。どんなに単純な作業や、一般的には退屈だと思われている仕事内容だったとしても、そのサービスレベルやプロセスにこだわりを持つことで、やりがいを感じる方法。 例えば、毎日工場での単純作業だったとしても、どれだけ正確に仕事をこなせるのか。機械にもわからない方どの繊細なズレを認識し、世界最高峰の製品を作り出すことに強い情熱を注ぐ事ができるのであれば、それは天職になるかもしれない。 逆に考えると、仕事が楽しくないのではないく、楽しいやり方をしていないだけなのかもしれない。どんな仕事であったとしても、最高品質を目指す事で、それがいつの間にかやりたいことになるケースもあるだろう。 そして、一つの事をひたむきに続けていれば、周りから声がかかり、大きな仕事に繋がるかもしれない。見ている人は見ているので、チャンスの方からやってくる事もあるだろう。 参考: 日本の技術力が世界的にすごい本当の理由

4. 誰のためにやるかを考えてみる (Who)

そして重要な最後の一つ。それは、誰のためにその仕事をやるかと言うこと。自分以外に助けたい人や、救いたい人、そして、この人とだったらとことん一緒にやっていきたいと思わせる人がいるなどの、”だれ”がモチベーションの根源にあるケース。 例えば、病気がちな家族で育った人が世の中の病気を減らすために医者になったりするものこのタイプ。必ずしも自分自身がやりたいことでなかったとしても、誰かために情熱を傾ける事が可能である。 もう一つの”Who”でやりたい事を見つける方法に、誰と仕事をするかががあるだろう。その例が、本田宗一郎と二人三脚で本田技研 (HONDA) を作り上げた藤沢武夫だろう。本田宗一郎に惚れ込んだ彼は、HONDA共同創業者として経営全般の業務を行なっていた。 そのおかげで、本田宗一郎は工場で自分の好きなことだけに没頭する事ができた。その藤沢が本田の人間性を目の当たりにし「その瞬間、彼は私の人生を支配したのだ。」と語っているほどである。本田宗一郎の存在が藤沢の生きがいとなったのだろう。 たとえ自分が一番やりたい事でなかったとしても、自分の家族を喜ばせたいとか、愛する者たちのために命をかけるのもありかもしれない。

まとめ:「やりたい事 = 好きな事」じゃなくても良い

以外にも、やりたい事を見つける方法は複数ある。ついつい”何 (What)”にフォーカスしがちであるが、それ以外にも、なぜやるか、どうやるか、誰のためにやるか、もモチベーションを上げるための重要な要素であり、これらを複合的に見つける事ができれば、強い情熱を持つことも可能かもしれない。 ちなみに、これがスタートアップの創業チームの場合は、その一人一人のモチベーションの根源が下記の様に異なっている事も有りである。 例:ファウンダーたちのモチベーションの根源が違うのもあり
  • CEO (ハスラー) : ビジネスを通じて社会的問題の解決 (Why)
  • エンジニア (ハッカー) : 世界最高レベルのテクノロジーを活用てプロダクトを作ってみたい (How)
  • デザイナー (ヒップスター) : 世の中の多くの人が使ってくれるサービスを提供したい (What)
しかし、彼らファウンダー達には「サービスを通じで世の中を変える」と言う共通のビジョンがあるからこそ、一つのチームとして機能する事が可能になっている。 冒頭のジョブスの言葉にもある通り、高いレベルで何かを成し遂げるには、それに対しての強烈な情熱が必要になる。もしかしたら、それは探すものではなく、自分の中にすでに存在しているのかもしれない。 それを見つけるための方法も一つだけでは無い。何をやりたいかに迷っている場合は、複合的な角度から考えてみるのも一つの方法だと思う。  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家

designer founder startup
私たちの生活の中にはスタートアップによって生み出されたサービスが溢れている。TwitterやAirbnb、YouTubeはその一例だ。これらのサービスを今まで一度も使ったことが無い人が居れば、逆に興味深い。それくらい世の中へと急激に浸透した。 そんな上記の3つのスタートアップに、ある共通点があることをご存知だろうか。それが「創業者がデザインバックグラウンドを持つ」という点である。 「デザイナーがビジネスを興すなんて。」そんな風に思う人も居るかもしれない。しかしデザイナーが起業することはむしろ自然な流れだと言って良いだろう。なぜならスタートアップは「ある問題を解決する」というところから始まる、と同時に私たちbtraxの定義するデザインの意味は「問題解決」であるからだ。 これらのスタートアップの急成長はビジネス的に解く価値のある問題に対してデザインプロセスが大いに有用だということの証明でもあるだろう。 そこで今回の記事では、デザインバックグラウンドを持ちながら起業し、成功した人物を7人紹介したい

Brian Chesky / Joe Gebbia

Airbnb

airbnb founders デザイナーが立ち上げた会社としておそらく一番有名なのが「Airbnb」だろう。「Airbnb」とは世界中の人と部屋の貸し借りが出来るコミュニティー・マーケットプレイスだ。今や旅行を決めたらまず訪れるのはホテル比較サイトではなく「Airbnb」のウェブサイトという方も多いだろう。 創業者のBrian Chesky / Joe Gebbia / Nathan Blecharczyk のうち、Brianと Joe は RISD(リズディ:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)出身のデザイナーである。美大のハーバードとも呼ばれる有名校であるRISDで出会った2人に、本家ハーバード大学でコンピュターサイエンスを学んだNathanが加わり、「Airbnb」は生まれたのだ。 「Airbnb」はUberらと共に、近年最も注目されているシェアリングエコノミー市場を確立した。彼らは「信頼関係のデザイン」によって、「現地の人の家に泊まる」という今までに無い体験を実現したのだ。 この体験設計は創業者がデザイナーだったからこそ実現出来たということに疑いは無いだろう。詳しい内容は以前の記事(デザインがビジネスに与える影響 〜収益週200ドルのAirbnbが急成長した秘訣とは〜)に譲りたい。 airbnb UI 関連記事: ロゴのリデザイン ー なぜGapが失敗しAirbnbが受け入れられたのか デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス

Evan Sharp

Pinterest

evan sharp FacebookにTwitter、最近はInstagramが大流行中。そんなSNS全盛の時代に、特にデザイナーから圧倒的な支持を得るSNSがある。それがここサンフランシスコ発の「Pinterest」だ。 まるで写真をアルバムに貼っていくように、ネットで見つけたお気に入りの写真を保存、分類、共有することの出来る「Pinterest」の魅力は何と言ってもそのデザイン性。ファッション雑誌のようなインターフェイスは多くのデザイナーをユーザーとして獲得してきた。 pinterest UI ↑まるでファッション雑誌のような「Pinterest」のインターフェイス そんな「Pinterest」の共同創業者であるEvan Sharpもデザインバックグラウンドを持ち、「デザイン経営」を実践する1人。コロンビア大学院で建築を学んだ後に、Facebookでデザイナーとして活躍してたEvanは、勤務時間外の空いている時間にあるサービスを仲間と作っていたという。そのサービスが後に「Pinterest」となったのだ。 関連記事: 優れたUXを生み出す鍵はオフィスにある【インタビュー】Pinterest ケイティ・バルセロナ氏

Chad Hurley

YouTube

chad hurley もはや我々の生活に無くてはならないサービスとなった「YouTube」。「YouTuber」と呼ばれる新しい職種をも生み出し、小学生のなりたい職業ランキングで堂々の6位にランクインしたことは記憶にも新しい。また今や大手企業でYouTube上でチャンネルを持っていない企業を探す方が難しくなった。大人から子どもまで、非常に馴染みの深いサービスであることの証明である。 そんな「YouTube」の創業メンバーの1人もデザイナーである。共同創業者のChad Hurley は大学で美術を専攻した後、「YouTube」の立ち上げ前まではPayPal でデザイナーとして活躍していた。Paypalのオリジナルのロゴは彼によるデザインだ。その後、PayPalでの同僚であった、Steve ChenとJawed Karim と共に「YouTube」を立ち上げたのだ。 「YouTube」誕生のきっかけはあるパーティーでの出来事だという。ある日ChadはSteveと共に自宅でパーティーを開いていた。そのパーティーでビデオ撮影をしていChadはそれを参加者全員に送ろうとしたのだが、彼のビデオは高性能だったが故に容量が多く、何度やってもエラーになってしまったという。 そんな問題を解決する為にウェブサイト上で動画をシェア出来るようなサービスを思い付いたのだ。もし彼がそのパーティーで動画撮影をしていなかったらそんな問題にも気付かなかっただろう。 そして仮に同じ問題に気付いたといたしても、彼がデザイナーでなければ、ここまで成長するサービスになっていなかったかもしれない。YouTubeが爆発的に普及した2006年に執筆されたTime誌の記事によると、世の中に受け入れられた理由は「簡単さ」と「格好良さ」のバランスが良かったことだったという。 更に、「必要な動画はそこに存在しており、ユーザーはそれを探すだけ」という体験は、まるで大型スーパーマーケットを訪れる体験を想起させた。これらはデザイナーだからこそ設計出来た体験だと言えるだろう。 余談であるがこの頃のPayPalには今や世界を代表する起業家が多く在籍していた。TeslaやSpace Xの創業者であるElon MuskやLinkedinを作ったReid Hoffmanなど今のスタートアップ業界の重鎮たちが多数。彼らはPayPalマフィアと呼ばれている。もちろん、「YouTube」を立ち上げた3人もそのメンバーだ。 PayPal mafia ↑PayPalマフィアたち。世界を代表する起業家たちであることに気が付く。

Stewart Butterfield

Flicker / Slack

Stewart Butterfield オンライン写真の保存・共有サービスの草分け的な存在である「Flickr」 。すべての写真をクラウド上で管理し、友達同士でフォローし合うことでタイムライン上に表示される仕組みは今でこそ見慣れたものになったが、誕生当初は画期的であった。 競合であったSmugMugに買収されるなど、FacebookやInstagramの勢いに押されて衰退を余儀なくされたが、「Flickr」は写真共有サービスというジャンルを築いた会社であることは間違い無い。 企業向けチャットツールの「Slack」。ベイエリアでは導入していない会社を探す方が難しいほど普及率の高いチャットツールだ。その魅力はなんと言っても「手軽さ」と「便利さ」で、業務効率を上げたければ何をするよりもまず「Slack」を導入しろ、という声があがるほど。最も成長速度の早いスタートアップだと言われており、デイリーでのアクティブユーザーは800万人、課金ユーザーも300万人にも及んでいる。 slack graph 「Flickr」と「Slack」、この一見何の関連性のないサービスの共通点は何か。それはどちらのサービスもStewart Butterfieldという男が創業者であるという点だ。そしてそんな彼もデザインバックグラウンドを持つ経営者である。 特に「Slack」で実現した「ビジネスコラボレーションハブ」としてのチャットツールのデザインは、UXの観点から見ても非常に優れている。メールよりも簡単で、Lineよりもビジネスマンにとっては使いやすいUIと高い機能性は「Slack」を使ったことがある人は誰しもが頷いてくれるのではないだろう。 関連記事: Slack成長物語 〜世界のユーザーに愛されるプロダクト舞台裏〜

David Karp

Tumblr

daivd karp 手軽におしゃれなブログを楽しめると特にアメリカの若者の間で人気なのが「Tumblr」。デザイン性に加えて、リブログというTwitterでいうところのリツート機能をブログにも持ち込んだことで話題となり、一時期はブログもTwitterも「Tumblr」のせいで衰退してしまうのではないかという声も上がったほどのサービスだ。2013年に米Yahoo!に11億ドル(約1200億円)で買収されてからはパッとしないが、未だに根強い固定ファンがサービスを支えている。 tumblr UI ↑直感的にわかりやすい「Tumblr」のインターフェイス。「手軽さ」と「おしゃれさ」を兼ね備えたデザインだ。 そんな「Tumblr」を作ったのがDavid Karpだ。彼の経歴は有名創業者の中でも一際ユニークである。幼い頃からHTMLを学び、なんと11歳でビジネス向けのウェブサイトを立ち上げたのだ。そして14歳時には、ニューヨークを拠点とするアニメーションスタジオでデザイナーインターンとして働き初めている。その後高校を中退し、子育てサイトサービスの責任者になると、同会社が買収されたことをきっかけに独立。 ソフトウェアコンサルティングの会社を経て、「Tumblr」を創業する。デザインだけではなく、ビジネス・テクノロジーの知識も備えたまさに「天才」であると言えるだろう。

Jack Dorsey

Twitter / Square

Jack Dorsey Jack Dorseyはべイエリアで最も著名な起業家の1人だ。SNSサービスの「Twitter」とモバイル決済サービスの「Square」を創業した彼の名前は、たとえ起業やスタートアップに興味が無くとも一度は聞いたことがあるのではだろうか。 今では起業家としての側面が強い彼も、「Twitter」を始めた当初は実はファッションデザイナーになりたかったという。結局ファッション業界へと進むことはなかったが、PradaやDior Hommeのスーツ、そしてRick Owensのレザージャケットを愛する彼のコーディネートから溢れる美意識は、Tシャツにジーンズの多いシリコンバレーの起業家の中で一層際立っている。 Jack Dorsey fashion ↑ 彼のコーディネートはメンズファッション雑誌GQにも取り上げられるほど 厳密にはデザイナーではないJack Dorseyであるが、昔からデザイン思考実践者だったという意味ではビジネスにおけるデザイナーの考え方の重要性を理解していたといえる。デザイン思考の重要性を伝える1つの要素としてあげられるプロトタイプの実用例は彼の作った「Square」を用いて説明されるとわかりやすい。 btraxのSFオフィスから歩いて5分ほどのカフェでナプキンに書かれたこのペーパープロトタイプが「Square」の一番初めのプロトタイプと言われている。1枚のナプキンから、今や40,000店舗以上で導入されることになったサービスは生まれたのだ。 square prototype

まとめ

デザインバックグラウンドを持つ7人の偉大な起業家を紹介した。これらの成功例を知ると、デザイナーが会社を立ち上げることに対して特別な違和感を抱くことも無くなるだろう。近年急激に高まりを見せる、デザイン思考などのデザインをビジネスの文脈で語る場面にも辻褄が合う。 現代のビジネスにおいて、デザインは無視出来ない。それどころか、むしろ必要不可欠な要素なのだ。 参考記事: 10 Co-Founders Of Tech Companies Who Began As Designers The Designers-Turned-Founders Behind 5 Successful Startups Chad Hurley Story The fabulous life of Jack Dorsey, Twitter's billionaire CEO The YouTube Gurus  

世界が憧れるサンフランシスコ・シリコンバレーの3つの魅力

sf
サンフランシスコ・シリコンバレーには、世界中のスタートアップが集まっている。ここには、 最先端の技術を操るエンジニアや有数のデザイナーがおり、さらにハングリー精神と野心に燃えた人々が常に「自分たちこそが世界を変えてやる」と、革新的なアイデアを出し合っている。 また、この地にはグローバルな視点や起業家マインドを習得できる環境、そしてネットワークを構築するシーンが様々あるので、将来世界を舞台に自身のビジネスを拡大したい方にはうってつけの場所だろう。 現在弊社では福岡市のサンフランシスコ・シリコンバレー研修『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』のプログラム設計及び運営に携わっており、まさに上記に述べた環境下で起業家を目指す方々の支援を行なっている。 関連記事:福岡スタートアッププログラムに学ぶ起業家に必要な4つの基本事項  そこで今回は、世界中から人が集まるサンフランシスコ・シリコンバレーの魅力に迫りたいと思う。

1. サンフランシスコが生み出す独自の環境

サンフランシスコに根付いた人々のマインドセットは、サンフランシスコが世界から注目され続ける原動力になっている。そして、それらは様々なかたちで彼らの生活の中に浸透している。 その1つの例が、ハッカソンだ。ハッカソンとは、エンジニアたちが集まり、そのスキルを使って新たなサービスやソフトウェア開発を行い競い合うコンテストのことだ。 しかし、サンフランシスコで開催されるハッカソンの多くでは、非エンジニアたちの参加が少なくない。だからこそ、今までにない角度からのアイデアが生まれ、イノベーションが次から次へと起こっている。 関連記事:【コーディング禁止?】非エンジニア大歓迎!サンフランシスコのハッカソンで垣間見るイノベーションの源流 また、ハッカソンだけではなく彼らのフレキシブルな通勤スタイルも世界から注目を集めている。日本では通勤は非常にストレスフルなものであるが、サンフランシスコでは人々が新たなテクノロジーやサービスを次々にとり入れ、通勤にでさえもイノベーションが起こっているのだ。 ある調査結果によると、サンフランシスコの平均通勤時間は片道で31.7分となり、日本の平均通勤時間は1時間19分(片道39.5分)、東京だと1時間42分(片道51分)まで伸びる。 人口密度が東京よりも高いサンフランシスコでこれだけの時間差があるのは興味深い。それでは、サンフランシスコではどのような方法で東京の半分程度の通勤時間が実現しているのだろうか。 関連記事:サンフランシスコが取り組む通勤イノベーション

2. 成長を遂げるスタートアップ、ユニコーン、そしてデカコーン

サンフランシスコには数多くのスタートアップが存在しているが、同時に多くのユニコーンも生まれ、Airbnb、Uber、DropboxやPinterestなど誰もが知るような数々のユニコーン企業が成長を続けている。 そもそも「ユニコーン」とは、未上場企業の中で、評価額が10億ドルを超えるスタートアップのことであり、いわゆるメガスタートアップである。最近では10億ドル以上どころか、100億ドルを超える企業もある。 これは日本円にして実に1兆円を超える評価額であり、日本だと上場企業の時価総額でもその規模の会社は百数十社程度でしかない。 関連記事:未上場で評価額10億ドル以上のユニコーンTop10 ちなみに、最近ではユニコーンの上をいく「デカコーン」と呼ばれる企業まで生まれている。「デカコーン」とは、未上場にも関わらず、評価額1兆円を超える時価総額のユニコーンのことだ。 驚くことに、実際にこのような企業が世界にいくつも存在している。そしてサンフランシスコには、この「デカコーン」の多くが存在しているのだ。 関連記事:2017年スタートアップトレンド – ユニコーンの次はデカコーン

3. サンフランシスコで浸透する次世代の働き方

サンフランシスコの人々のワークスタイルは、勤務時間だけでなく、在宅勤務や有給まで自由であることが、当たり前となってきている。 彼らの働き方は、驚くほどフレキシブルなのだ。ストレスのない、「遊ぶように働く」事ができる環境を提供することで、優れた人材を確保し、クリエイティブなチームを組織するのだ。 現在日本でもワークライフバランスをキーワードに働き方改革が行われている。しかし、ワークライフバランスのように仕事とプライベートを分けることは実質不可能であり、かえってストレスを生むことも多い。 そこで、サンフランシスコでは「ワークライフインテグレーション」という、仕事とプライベートを分けるのではなく、むしろ仕事と私生活を無理なく連動させるという考え方が浸透しつつあるのだ。 仕事以外の時間の使い方が仕事の結果に繋がるため、プライベートの交友関係が仕事にも繋がることも珍しくない。このようなワークスタイルが、今のサンフランシスコを作り上げているのかもしれない。 関連記事:【ワークライフバランスはもう古い】新しい働き方、ワークライフインテグレーションとは

最後に

いかがだっただろうか?サンフランシスコ・シリコンバレーは、今や世界が注目せざるを得ない、革新的且つ最先端をいく都市である。そして、その理由は街のいたるところに見られるほど、サンフランシスコ・シリコンバレーの人々や生活に浸透している。 今もこの街の文化やテクノロジーは進化を続けており、可能性に溢れている。きっとこれからも世界を牽引する都市であり続けるであろう。

スタートアップのアイディアを考える際の意外な落とし穴

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ここサンフランシスコでは、常に新たなスタートアップやユニコーン企業が生み出されているのは今や言わずと知れた事実になってきている。日本でも耳にすることの多い、UberAirbnbPinterestSlackなどは、まさにサンフランシスコを代表するユニコーン企業である。最近でも世界の常識を覆すようなサービスがスタートアップ企業から次から次に生まれている。 参考: サンフランシスコの主なユニコーン企と評価額 (2018年現在)
  • Uber: $68b (約7兆円)
  • Airbnb: $29.3b
  • Pinterest: $12.3b
  • Lyft: $11.5b
  • Infor: $10b
  • Stripe: $9.2b
  • Slack Technologies: $5.1b
そんなスタートアップがひしめくサンフランシスコにて、先日もスタートアップや起業家の集まるピッチイベントに参加してきた。ピッチイベントとはスタートアップ企業、または起業家が投資家たちに対してアイデアをプレゼンする場である。イベントの規模にもよるが、一晩で数万ドルから数百万ドルと言うお金が動き、スタートアップ企業はそれだけの資金を調達することも可能である。 日本でのイベントと一味違う、その夢と情熱に満たされた会場にはとても興奮した。このようなイベントはサンフランシスコのいたる所で常に行われており、サンフランシスコのスタートアップを生み出す源になっている。 しかし数多くのスタートアップ企業による自慢のプレゼンを目の前で見て、ふと疑問が浮かんだ。果たしてこれらのアイディアは本当に革新的で、どこにも無いすごいアイディアなのだろうか?このような疑問を持ったことのある人は、おそらく私だけではないはずだ。 実はここには、スタートアップが陥りがちなアイデアに関する大きな2つの間違いが潜んでいるように思われる。

間違い1:すごい「アイディア」に過剰に反応してまう

アイデア(idea)という英単語のニュアンスは実は、日本語での「アイディア」と聞いて持つ感覚とは少し異なるように思う。 と言うのも、日本では「アイディア」という言葉を美化し拡大して解釈してしまいがちなのだ。 試しに英和辞書で「idea」と引いてみると、「心に浮かんだ考え」と書かれている。アイディアとは、単に「考えや案」のことであり、必ずしも「スゴい」「革新的な」ものだけではない。あなたが時として考えたり、感じたりする全てがアイデアなのではないだろうか。 日本人はアイデアと言う言葉を耳にした時に、とにかくスゴいものをイメージしてしまう。そして、自分も何かすごいことを思いつかないといけない!と頭を抱え込んでしまうのだ。これは日本人特有な症状のように感じる。 実はアイディア自体がそこまで凄くなくても、すごい結果を生み出すことも多々あるのだ。 参考: クリエイティブな事がそんなにも凄いのか

超巨大IT企業を生んだ些細なアイディア

アイディアとは決して、私たちがイメージしてしまうほど輝かしいものである必要はない。それどころか、もっと単純で、些細なものであることも多い。 今や世界中で21億人(2018年1月時点)という人が利用する、Facebookはもともとマーク・ザッカーバーグが大学内で女の子と繋がるために作った、face mashと言うアプリから始まった。私たちが毎日音楽を聞いたり、動画を観たりしてるYouTubeも最初は創業者の2人がセクシーな動画を送り合いたいために始めたクラウドサービスのようなものだった。 これらはとても「スゴいアイディア」とは、言えるようなものではないことは確かだ。少し偏った例にはなったかもしれないが、これは紛れもない事実なのである。 参考: 小さく始める事の重要さ【Amazon, Facebook, YouTube等】大人気サービスの初期バージョンとは

間違い2:オリジナルのアイディアを必死に探すこと

ところで、こんな経験をしたことはないだろうか。アイディアや意見などを発言しようとして、他の人に先に言われてしまった!なんて経験だ。 このような経験はきっと学校や職場など、人生の様々な場面で誰にでもある経験だろう。こういった場面では「先に言ったもの勝ち」のような風潮がある。まるで山手線ゲームのようだ。 しかし、ここにスタートアップビジネスで陥りがちな、2つ目の落とし穴が潜んでいる。 と言うのも、これはスタートアップにおいて、全く異なるからだ。スタートアップ企業にとって、ビジネスアイディアは必ずしもオリジナルの、世界でたった1つのものである必要は全くない。言い換えれば、スタートアップのアイディアは「先にやったもの勝ち」ではないのだ。

アイディアの被りは関係ない

そのアイディアが自分だけのものかどうかや、それが今までにないビジネスであるか。実はそれらは決して問題ではない。なぜだろうか。その答えはとてもシンプルだ。この世の中に競合のないビジネスなどないからである。 仮にとても革新的なアイデアがあったとして、果たしてそこに競合がいないだろうか?答えは間違いなく「No」である。そのアイディアが狙う市場には、すでに様々な企業やビジネスが存在している。狙う市場の中だけではない。ターゲットの周りには、数え切れないほどのサービスと企業が存在している。あなたはその数多くの企業の競合になる。 これはそのビジネスがすでに存在していても、していなくても変わらぬ事実だ。 少しばかり特殊な例にはなることを承知で言えば、飲食店は非常にわかりやすい。例えばイタリアンレストランがすでにあるからと言って、イタリアンレストランの出店を諦める人はまずいないだろう。 どのようなターゲットを想定していくら位の価格帯に設定して、どのような質なのか、どのように知ってもらい、来てもらうか。その1つ1つが、そのビジネスを成功に導くのであり、アイディアのユニーク性はそこまで関係ない。

むしろ有利な後出しビジネス

もし、同様のコンセプトのビジネスが既に存在していたならば、むしろそれはチャンスである。 なぜなら、あなたはその企業やビジネスが上手くいかなかった、または上手くいっていない理由を分析し知ることができるからだ。 またそのビジネスが過去に存在し、既にサービスを終了しまっているか、どうかも重要な情報だ。あなた自身がもしくはあなたの友人が今そのサービスや製品を利用していないのはなぜだろうか。そこにはあなたのビジネスを成功に導いてくれる、最大の鍵があるかもしれない。 後出しのビジネス例:
  • Google after Yahoo
  • Facebook after Friendster
  • Sketch after Photoshop

スタートアップでアイディアよりも重要な2つのこと

確かにビジネスアイディアは、スタートアップにおいて大切な要素の1つであるし、先行者利益なるものがあることも事実だろう。しかしそれらは大した問題ではないと述べた。 では何が重要なのだろうか?その答えは2つある。

ユーザーニーズを中心にサービスアイディアを考えよう

誰しもビジネスを展開する際には、必ずマーケットやターゲットのリサーチを行うだろう。しかし、これをアイデアの段階で実行できる人は少ない。どんなスゴいアイディアにしようか思い悩むのではなく、簡単なアイディアをいくつか吟味してみることが重要なのだ。 リサーチのコツは、想定されるターゲットにビジネスアイディアを話すのではなく、自ら足を運び、耳を傾けることだ。ターゲットを知ることができれば、どこに競合がいて、どこにチャンスがあるのかを知ることができるだろう。そうすれば、アイディアが既に存在するかなどは、全く気にならなくなるはずだ。 これはデザイン思考のプロセスであり、btraxが企業に提供するワークショップの中でも多く用いられている。

何をよりも、どうやるか

そして何よりも大事なのは、あなたのアイディアをいかに成功へ導くかである。当然だと言われてしまいそうだが、これは意外とちゃんと理解されていないことも多い。 アイディアは時として、いとも簡単に模倣されてしまう。特に強いブランドを持った大企業などにマネされてしまえば、あっと言う間にビジネスチャンスを奪われてしまうかもしれない。つまりアイディアはアイディアでしかないし、それ自体に大きな価値はない。 これに対し、あなたが行ったやり方、戦略はあなたにしかできないやり方になる。全てはあなたが、どうやったか次第なのである。

最後に

ここで最後に、Dropboxの創業者が実際にピッチイベントで投資家と行ったやりとりを、1つ引用したい。

投:他にも似たような企業がある中で、なぜ私はこの企業に(Dropbox)に投資したらいいのですか? 創:確かに他に似たような企業はたくさんあります。しかしあなたはそれらを使っていますか? 投:いいえ 創:それはなぜですか? 投:良いサービスではないから。 創:OK。それがDropboxが解決する課題です。 (*投資家:投 創業者:創)

そしてご存知であろうようにDropboxは、現在日本を含む世界中の国と地域で、5億人を超える人に利用されるサービスとなっている。このやりとりからDropboxが成功した理由に、アイディア自体がそこまで重要ではないことがわかる。 今回はスタートアップの話を中心に取り上げたが、これらはスタートアップに限った話ではない。アイディアを求められる場面は、ごく頻繁に訪れる。しかしどのような時であれ、アイディアとの向き合い方をもう一度考え直すことは、今までになかった可能性とチャンスを、あなたにもたらすかもしれない。 ちなみに、弊社では昨年、一昨年に引き続き今年も福岡市のスタートアップ育成事業に携わっているので、世界を舞台に新しいことにチャレンジしたい方はぜひウェブサイトをチェックして頂きたい。 参考: Startup Ideas: How do you know if your startup idea already exists? (Quora)

福岡スタートアッププログラムに学ぶ起業家に必要な4つの基本事項

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素晴らしいビジネスアイデアがあっても、「起業など自分にできるのか」と自信が持てなかったり、「そもそも何をしたらいいのかわからない」とそのエネルギーを持て余したりしている人は多いのではないだろうか。リスクを恐れる風潮が根強い日本ではその傾向が尚更強いように感じる。 しかし日本にもスタートアップが次々と生まれている地がある。福岡だ。外国人のためのスタートアップビザの発行や、東アジアや欧州のスタートアップ支援機関との提携など、日本のなかでもスタートアップ誘致を積極的に進めている代表的な都市である。 同時に福岡在住の起業家予備軍とのコラボレーションを進めることで福岡発のグローバル企業を生まれやすくする土壌の創生を積極的に進めている。 この動きに大きく貢献しているのが、グローバルスタートアップ育成事業「Global Challenge!! STARTUP TEAM FUKUOKA」だ。これは福岡市主催で2年前にスタートした起業家を育てるプログラムで、起業を真剣に考える起業家予備軍の発掘や、福岡発のスタートアップの輩出、そして福岡発の起業ムーブメントの醸成という目に見える成果を実際に出している。 btraxでは、福岡市からの委託を受けて、2年前のスタート時点からこの事業の企画・運営を担い、多くの起業家、あるいはその予備軍の方々と関わってきた。この記事では、起業家にとって必要な4つの基本について、福岡スタートアップ事業の事例をご紹介しながらお伝えしたい。 関連記事:開業率日本一! スタートアップ・ムーブメントを生み出す福岡市の取り組み【DFI2017より】

1.自分でも起業できると思う

雲の上のような超有名企業の社長さんの講話を聴くことは、それはそれで一理あるかも知れない。しかしそれよりも実際に自ら起業し成功した経験者から、起業に至るまでのプロセスを聞いて学ぶということが重要だ。 そして、その学びを通じて起業を現実的に捉え、「自分にもできる」という自信を持つことがまずは起業のスタート地点である。 実際に福岡のプログラムでは、地元で成功している起業家はもちろん、東京やサンフランシスコから招聘した起業家によるパネルディスカッションを実施。ノートとペンを持った座学ではなく、起業家と言われる人たちや専門家の人たちと実際に話してもらうため、モデレータによるQ&Aセッションも導入した。 fukuoka global challenge1 ↑国内研修にて行った福岡にゆかりのある起業家の皆さんとのパネルディスカッション。左からbtrax Japanの多田、ドレミングの桑原氏、スカイディスクの橋本氏、しくみデザインの中村氏、ヌーラボの橋本氏 fukuoka global challenge2 ↑市民報告会にて行ったマネーフォワードの瀧氏とBrandonによるパネルディスカッション 結果として、参加者は起業をより身近に感じた、あるいは「自分にもできそうだ」と感じたことがアンケート結果からわかった。また、この段階で得た多くの経験談は今後起業の過程で参考になることも多いだろう。その意味でもできるだけ多くの経験者の話を聞いておくことをおすすめする。

2.短時間でビジネスアイデアを説明できるようになる

せっかく素晴らしいビジネスアイデアを持っていても、それを上手く人に伝えられない人は多い。ビジネスは一人で出来るものではない。手伝ってくれる仲間も必要だし、起業するためには資金も必要だ。いくらアイデアが素晴らしくてもそれをうまく伝えられないのでは起業への道のりはかなり険しくなる。 起業家に不可欠なのは効果的なプレゼンテーション方法の体得だ。ビジネスアイデアをまとめ、短時間でアイデアのエッセンスをどのように伝えるか、そして聞く人の共感をどのように得るか。 これらの習得のため、プログラムではサンフランシスコからbtraxのファシリテーターを呼び、「デザイン思考」を取り入れたセッションを前後2回に亘って実施した。このあたりで、「アイデアが素晴らしければ、起業は簡単だ」と思っている人は最初の挫折感を味わったようだが、案外、最初の挫折がかえって良い効果をもたらすこともある。 workshop ↑プログラム参加者が英語でピッチの練習を行っている様子 ちなみにグローバルを視野に入れているのであればプレゼンテーションでの使用言語はもちろん英語だ。そのため、英語力というよりも、まずは「英語なんて怖くない」という意識を持つことが重要になる。 実際、英語が流暢ではない参加者がプログラムの最後にサンフランシスコでのピッチコンテストで優勝を果たせたのは快挙であった。

3.スタートアップの聖地で度胸とフィードバックを得る

スタートアップの聖地、世界中のVC投資が集まる場所、世界をリードする最先端企業が集まる場所と言えば、サンフランシスコ・シリコンバレーだ。グーグル本社やフェイスブック本社の看板の前でピースサインで記念写真。そして聖地の空気を味わう。そんなことを期待しているのであれば行っても無駄である。 企業を訪問したりイベントに参加したりして、実際にサンフランシスコ・シリコンバレーの起業家や起業家予備軍と話す。また、ピッチイベントに参加して投資家からフィードバックを得る。これらの経験を得ることは自らのスタートアップを始めるうえで何物にも代えがたい財産となる。 ただ、これらを個人で行うのはかなりハードルが高いだろう。実際に個人が企業に訪問しようとしても受け入れてもらえるケースはほとんどない。 btraxにはサンフランシスコでのネットワークがある。プログラムではLinkeIn、Airbnb、Frogなど現地の約16社程度のスタートアップ・ユニコーン企業に協力してもらい、ハードウェア系、アプリケーション系、最新サービス系などを1日に4社程度訪問できる4種類の訪問コースを設定。 訪米研修参加者はあらかじめ行きたいコースを選択し、btraxスタッフアテンドのもと各社を訪問した。大人数で訪問する企業訪問とは違い、それぞれの訪問先で各自が聞きたいことを聞くこともでき、参加者からの評判は非常に良かった。 openhouse-airbnb ↑Airbnbの本社を訪問し、オフィスツアーやAibnb社員との質疑応答を行った さらにサンフランシスコでは頻繁にピッチイベントが開催されているが、btraxもピッチイベントAsianNightを主催している。 現地のスタートアップが参加するイベントだが、ここで訪米研修参加者用の枠を設定した。英語で、ピッチを聞くのに慣れた現地の観客の前でのピッチである。福岡からの参加者にとっては度胸付けという意味でも最高の場だ。 結果として、プログラム参加者のなかからこのAsianNightで準優勝者、翌日に飛び入りで参加したShark Tankという別のピッチイベントで優勝者を出したことは我々運営側にとっても嬉しいことであった。 Asian-night ↑Asian Nightのピッチ登壇者たち

4.起業に必要な事務知識を身につける

ビジネスアイデアとプレゼンテーションスキルだけではまだ起業できない。会社設立のための法務知識や資金集めについての知識が不可欠になる。 もちろん、起業のための法務や資金集めのノウハウについての書籍などは多く出版されているので、自身でコツコツと勉強するのも良いかも知れない。しかしながら、起業というのはスピードとの勝負でもある。 そこで「必要な知識を素早く理解する」ことが重要になってくる。特にスタートアップ支援専門の弁護士や第一線で活躍する投資家に直接質問できる機会は貴重だ。 プログラムではそんなエキスパートを招き、「弁護士への相談シミュレーション」や「投資家の前でのエレベータピッチ」の時間を多く取ることでそのような機会を提供した。 参加者は彼らが弁護士や投資家に対して持っていた、「直接話す機会がない」「知識が無い状況では相談しづらい」「そもそも相談の仕方がわからない」といったハードルを払拭できたようだ。セッション後のネットワーキングでは、彼らの前に名刺交換ための長蛇の列ができていた。

まとめ

一昨年、昨年と企画・運営を担い、福岡には積極的で物怖じしない、そしてフレンドリーな方々が多いと感じた。起業家にはとても重要な気質である。サンフランシスコ・シリコンバレーのスタートアップを知る我々が福岡はすごいと思った2年間であった。 嬉しいことに、引き続き本年度も「Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA 2018」の企画・運営をさせていただくことになった。本年度はさらにパワーアップしたプログラムを企画中である。 すでに本年度の公募が始まっている。スタートアップを興したい方、すでに起業したものの迷走中の方は、是非とも応募してほしい。プログラムの詳細や応募方法などは、ウェブサイトに記載しているので、ご参照いただきたい。

やりたいことが見つからない人にセルフ鎖国のススメ

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「自分の本当にやりたいことが見つからない」おそらく今まで相談された中で最も多い質問。相手が起業家であれば、「このビジネスモデル、グローバルで通用すると思いますか?」というのも多い。 実はこの二つの質問に共通する第一のアドバイスとしては「とことん自分と向き合うこと」 結構意外かもしれないが、何をするべきかに迷ったときは、外からの情報を遮断して自分との対話をする必要がある。あまりにも多くの情報が縦横無尽に手に入ってしまう現代においては、自分の人生にとって価値よりもノイズになるものの方が多いような気がする。 自分が本当に好きなことは何か, 自分が今やるべきことは何か、そして過度に周りの評価を気にしすぎていないかを定期的に見直す必要があるだろう。

君、明日死んでもやりますか?

以前に孫 泰蔵が起業家に最初に聞く質問は「そのビジネス、君が明日死ぬとなってもやり続けたいですか?」である。投資家が起業家にもっとも求める資質の一つが「やり切る覚悟があるか」これは、裏を返すとそこまで情熱があるかということ。世界中で同じビジネスを始めても、生き残るかどうかは情熱の強さ = 好き度の差である。

価値観も発言も誰かの使い回し

ソーシャルメディアがこれほどまでに発達した現代、主要ニュースメディアだけではなく、個々の人たちが発する情報も容易に手に入れることができるようになった。その一方で、知らず知らずのうちに周りの情報に影響されていることも多いだろう。自分が気づかないうちに、いつの間にか誰かの発言の使い回しをし、考えたビジネスモデルもどこかで聞いたことのある内容になってしまうことも少なくはない。

無意識のうちに行動も左右される

周りからの情報が手に入りやすいということは、自分からの情報発信も容易にでき、その反響も即座に得られるわけで、それが行動指針の一つの軸になってしまう危険性もある。周りからの評価が無駄に気になりすぎて、オーディエンスウケする行動を最優先してしまう。そして、周りの動きが気になりすぎて本当に自分がやりたいことが見つからないというケースも意外と少なくない。

インスタ映えを最優先した行動パターンになっていないか?

日々の行動に影響を与えるのは受け取る情報だけではない。自分の言動が周りからどのような反応を得られるかを意識し、場合によっては優先してしまうこともある。行く場所、会う人、食べる物など、インスタ映えを大切にしすぎると、世の中に注目させることが目的になってしまい、いつの間にか他人のための人生になる危険性もある。なんちゃってリア充感至上主義の弊害であろう。

日本特有のユニークさを生み出した鎖国制度

そんな現代の状況で注目したいと思っているのが、日本が17世紀中頃から約200年間行っていた鎖国制度。江戸時代に醸成された文化や風習は、現在も非常にユニークなものとして世界中から注目されている。その一番の理由が、海外 (外部) からの影響が極力少なかったこと。ある意味、日本としてもっとも自分たちらしい文化を作り上げた貴重な期間だったような気がする。

必要なのは自分と向き合う時間

この鎖国制度から学べることとしては、外侮からの情報にあまり気を取られない、周りからの評価を気にしない考え方とその環境づくり。自分自身と向き合う時間を定期的に作り、自分らしさを追求するプロセスを設けることで、ユニークなアイディアや本当にやりたいことが見つかる気がする。 外部と触れることでインスパイアされるのも非常に重要であるが、自分を知ることも同じく大切。常にインプットし続けるのは息を吸い続けるぐらいに苦しい。そして、アウトプットをする前に自分というフィルター作りをする必要がある。

周りからの批判にエネルギーを無駄にしない

メディアで叩かれる。ソーシャルでディスられる。批判的なコメントが気になる。目立つ行動をすると必ずぶつかる精神的なハードルだろう。しかし、批判する人の8割以上はコンテキストをしっかりと理解していない。残りの2割は状況が全くわかっていない。おそらくそれが現状だとおもう。そんなことに大切な自分の時間も意識も費やす必要はない。

本当の自由とは他人と比べないこと

以前読んだ本にこんなフレーズを見つけた。 「人間は生まれた時が一番自由で、育っていくうちにどんどん不自由になっていく」 人生の最終的な目標が自由になることであるとすれば、それはいったいどうゆう状態なのだろうか。おそらく好きなことをして、周りからどう思われるか気にならない。そして、他人と比べることがない状態なんだと思う。周りを気にせずに好きなことをとことん追求する能力が備われば、どんな状態にあったとしても、精神的に自由と呼べるのかもしれない。

自分のユニークさは自分でしか作れない

これはごく当たり前のことであるが、意外と見落としがちである。外への探究心は内なる自分を知ることから始める必要がある。そのためには自分自身ととことん向き合う必要がる。一週間に1日でもセルフ鎖国する期間を設けることをおすすめする。本当にやりたいことは自分の中にある。
何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことである。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わない。 And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary - Steve Jobs
 

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

2017年に終わりを告げたスタートアップ5社に学ぶ教訓

startupfail 2017
早いものでもう2017年を振り返る時期となった。年々スタートアップの勢いが増していく中、大手企業はスタートアップへの投資や共創、そして買収に力を注いでいる。それだけスタートアップの存在が大きいということなのかもしれない。 弊社CEO Brandon K. Hillが2017年スタートアップトレンド – ユニコーンの次はデカコーンでも述べているように、未上場で評価額が10億ドルを超えるスタートアップは”ユニコーン”、10億ドルどころか100億ドルを超える評価額を持つスタートアップは”デカコーン”と呼ばれ、大成功を収めている。 しかしここで忘れてはいけないのが、その一方で急成長を遂げたが何らかの要因によって終了したスタートアップも数多くあるということ。 今回は、資金調達に成功したのにもかかわらず残念ながら2017年に終わりを告げたスタートアップ5社と彼らから学ぶべき教訓を紹介したい。 関連記事:ベンチャー企業とスタートアップの違い

成長企業の70%が失敗に終わる

まず念頭に置いてほしいのがスタートアップの消滅率。サービスの終了に追い込まれた理由は様々だが、リサーチ会社CB Insightsは成長スタートアップの70%が失敗するというデータを公表している。たとえばB2Cのハードウェアスタートアップについてシードレベルのクラウドファンディングキャンペーンを見てみると、その97%が失敗に終わるようだ。 この事実を考えるとむしろ失敗するのは当たり前のようにも思える。Statistaによるとスタートアップが失敗する理由は20ほどあるが、最大の要因はNo market need、つまり「もうマーケットにニーズがない」(42%)となっている。 Infographic: The Top Reasons Startups Fail | Statista↑上記のグラフは、Statistaより引用 それではこの事実を踏まえ、実際に今年終了することになったスタートアップの事例を見ていこう。

1. Jawbone

サービス概要:フィットネス・トラッキング・デバイス 投資家:DST Global、SV Angel、Wells Fargo & Companyなど 資金調達額:$590.8M 1999年に創業しかつてはBluetoothスピーカーのメーカーとして人気を集め、2011年にウェアブル市場に進出して注目を集めたJawboneが2017年7月にその幕を閉じた。 最大の要因としてはウェアラブル市場規模の縮少と言っても過言ではないだろう。2013年から2014年にピークを迎えたウェアラブル系ビジネスだったが、当時話題となったGoogle Glassはそのわずか2年後の2015年に消費者向けの提供を終了し、クラウドファンディングの王者PebbleはFitbitに買収されてしまったのだ。 ウェアラブル市場が縮小してしまった原因は、フィットネスバンドの必要性を感じるユーザーがあまりにも少なかったからだ。そこに拍車をかけたのがApple Watchで、トラッキングシステムを搭載したスマートウォッチの進出によりユーザーはフィットネスバンドを買うことに疑問を抱き始めたのだ。 そしてAppleの美しいデザインも大きな魅力となりウェアラブル市場のシェアを一気に獲得した。 ちなみに、Jawbone Co-founder兼CEOのHosain Rahmanは現在新たな会社Jawbone Health Hubの立ち上げ準備をしている。サービスモデルの領域をフィットネスからヘルステックに移行し、糖尿病や高血圧の改善、不整脈の発見、そしてストレスマネージメントなどを目的としたアプリケーションを開発中。まだ確定はしていないが、2018年の上旬頃にはソフトローンチが予定されている。

2. Beepi

サービス概要:中古車マーケットプレイス・サービス 投資家:DST Global、SAIC Capital、Sherpa Capitalなど 資金調達額:$150M 2013年に創業した車の所有者と中古車の販売人を繋げるプラットフォーム、Beepiは2017年2月に終了した。Beepiの大きな特徴は、売り手と買い手の間に入ることでフェアな取引を実現したこと。これにより、中古車業者の不透明な価格提示を回避することできるため、当初は大きなマーケットになることが予測された。 倒産の要因はお金の使い方がスマートではなかったこと。当時従業員の給料が異様に高かったこと、多くの残業代が支払われていたこと、そしてミーティングルームのソファに$10,000費やすなど金遣いが荒かったことが挙げられる。最終的にBeepiは約200人の従業員をレイオフすることになった。 また、ファウンダー達の気が変わりやすく将来の方向性が見えづらかったことも要因にあるそうだ。Fair.comと中古車ディーラーDGDGによる買収の話も一時上がったが、最終的には帳消しになった。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=eMbwUEzPB7Q[/embed]

3. Yik Yak

サービス概要:匿名のソーシャルメディア・サービス 投資家:Sequoia Capital、Draper Associates、DCM Venturesなど 資金調達額:$73M Yik Yakは特定の地域内で匿名のユーザーがチャットを楽しめるソーシャルメディアアプリを展開していた会社だ。こちらも2013年の創業だったが、4月にサービスを終了した。 失敗の要因はユーザーの行動を予測しきれなかったことにある。サービスをローンチした当初はターゲットである大学生達にうけたのだが、次第に”匿名を逆手にとった”オンライン上でのイジメが多発したことから、多くの学校でYik Yakの利用が禁じられたのだ。これを機に2016年のアプリのダウンロード数が2015年同時期比で76%も落ち込み、最終的には従業員を一時解雇せざるを得ない事態となった。 また、同年にニューヨーク大学と提携したセキュリティ・リサーチャー達が、アプリ上の個人情報がハッキング可能な状態だということを突き止め、Yik YakのCTOが会社を去ることになった。

4. Sprig

サービス概要:フードデリバリー・サービス 投資家:Accel Partners、Greylock Partners、CAA Venturesなど 資金調達額:$57M 2013年に創業し、フードデリバリーサービスを展開していたSprigも今年5月にサービスを終了した。実は昨年寄稿したこちらの記事でSprigをとりあげていたこともあり、まさかの急展開にスタートアップの生き残りがいかに大変かを実感した。 サンフランシスコにはフードデリバリーサービスが数多くある中、Sprigは「クリーンでシンプルな食事を通して健康に」というミッションのもと、ユーザーの健康に対する意識を変えるために、専属シェフによって生み出されたヘルシー料理を提供していた。そして特殊なデータサイエンスを活用して、なんとオーダー後およそ30分以内に配達を開始するという仕組みも構築したのだった。 しかし、健康志向のユーザー達は配達の時間よりも食材の質にこだわりを持つことを知り、新しいメニューを開発したり、カフェを開設したりと軌道修正に取り掛かった。試行錯誤を繰り返したが、ユーザーが求める食のクオリティに到達することはできなかったようだ。 Founder兼CEOのGagan Biyaniは「ユーザーが求めるクオリティが非常に高く、その期待に応えるためのクオリティを維持しながら大量生産をするのがとても難しかった」というコメントを残している。

5. Hello

サービス概要:睡眠トラッキング・デバイス 投資家:Temasek Holdings、Horizons Ventures、Acequia Capital 資金調達額:$40.5M 2012年創業、睡眠時間をトラッキングできるデバイスを開発したHelloが2017年6月に終わりを告げた。Helloのデバイスは腕に装着するのではなく部屋に置くだけで睡眠習慣を改善できるというもの。Kickstarterで資金調達に成功した後TargetやBest Buy等リテールでも陳列されていたほど話題となった。 今年の1月には25歳のFounder兼CEOJames ProudがForbes 30 Under 30の表紙を飾り、ネット上では様々なメディアがJamesを取り上げた。少し余談にはなるが、彼は9歳の頃独学でHTMLを学び、12歳の頃にはプロ顔負けのウェブサイトを制作していたという天才少年であった。 会社の閉鎖に追い込まれた要因は明確に公表されていないが、恐らくハードウェアをビジネスにする難しさにあるのではないだろうか。睡眠習慣の改善を図るデバイスはHello以外にも数多くあり、FitbitやApple WatchなどのウェアラブルデバイスやiPhoneのiOS上にさえ搭載されはじめた。これにより睡眠改善ツールがコモディティ化し、Helloの付加価値を生み出すことができなかったと思われる。 hello ↑上記画像はKickstarterのページより引用

スタートアップ5社から学ぶ教訓とは?

教訓① ピボットで軌道修正(Jawbone)

Jawboneから学べること、それは失敗を糧にプロダクトをフィットネス・トラッキング・デバイスからヘルステック・デバイスに変えてサービスをピボットさせたこと。 例として、フードレビューサイトのYelpの原点はEメールレコメンドサービス、SNSプラットフォームのTwitterの原点はブログサイトと当初は全く違うサービスを提供していたのだ。しかし、ユーザーのニーズやマーケットの変化に合わせてピボットさせたことで現在大きな成功を遂げている。このようにマーケットに合わせた軌道修正も時には必要となる。

教訓② 未来の消費者ニーズを見据えた思考(Hello, Yik Yak)

Yik YakやHelloからはどんなことが学べるだろうか。この2社に共通すること、それは未来のユーザー行動を予測できなかったことだと思う。 Yik Yakは大学生をターゲットにした匿名ソーシャルメディアを提供し当初は話題となったが、使い方を間違えると悪用されてしまうことまで思いつかなかった。そしてHelloは睡眠習慣の改善デバイスの重要が膨らんだ時にどう差別化を図るか想定できなかった。 変化し続けるユーザー行動やマーケットを読み解くカギとなるのは未来予測(Future forcasting)だと考える。未来予測とはただ未来を予知するのではなく、未来を生きる人たちの苦痛や問題を感じとり、何が必要となるかを予測するUXを起点とした思考プロセスである。 「データから予測される変化」と「人々のコアとなる価値観」を見出し、交差する部分をプロダクトやサービスに転換させる。こうすることで現在進行形のマーケットに依存することなく、常に未来を見据えたプロダクトやサービスを生み出していけるのだ。 現に、Teslaの生みの親Elon Muskは、無人運転車が当たり前になることを予測して自動運転車を作り、Airbnbのファウンダー達は宿泊施設・民宿のシェアの次に体験のシェアをはじめている。成功している起業家達は常に未来を見据えながらユーザーのニーズを模索し、自ら未来を切り開いているのだ。

教訓③ 資金管理はスマートに(Beepi)

Beepiから学べることは資金管理の仕方そのものだろう。おそらく良い人材を雇うためにありえないような額の給料を支払っていたのだと思うが、従業員の給料や経費は本来セールス状況を把握できる人間がきちんと管理すべきである。 当たり前のように思えるが、CFO(Chief Financial Officer)などの資金調達・運用・財務・経理の分野に特化した人材をしっかり確保することが大切だ。

教訓④ ユーザー視点を忘れない(Sprig)

Sprigに学ぶこと、それはサービスやプロダクトのクオリティとユーザーが求めるニーズを合致させること。そのためには技術ファーストではなく必ず顧客ファーストで物事を考える必要がある。 Sprigはオーダー後30分以内に配達を開始するという画期的な技術を生み出したが、ユーザーが求めていたのは「時間」ではなく「料理の質」であったことを見逃していた。フォーカスインタビューやユーザーテストなどを通して顧客が求めていることを常に探り、サービスの改善をしていくことが最も重要となる。 参考: ・"10 of the most-funded startups to fail in 2017""7 startups that were massively funded that died in the first half of 2017"