「メゾン マルジェラ」の2022年“アーティザナル”コレクション 2年半ぶりのリアル発表は演劇と映画を一体化させたスペクタクル パリ現地取材リポートVOL.6

 「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」を率いるジョン・ガリアーノ(John Galliano)が約2年半ぶりとなるリアル発表の会場に選んだのは、シャイヨー宮の地下にある大きな劇場。コロナ禍には、長編映像作品を通してオートクチュールラインに相当する“アーティザナル”コレクションを発表してきたが、今回の発表にもその要素を盛り込んだ。

 勾配のある会場に入ると、すでに舞台袖には何人かのモデルがスタンバイ。複数のスクリーンが設置された舞台からも、これがただのファッションショーではないことがうかがえる。今回ジョンが挑んだのは、演劇と映画を一体化させた新たなフォーマットのリアル発表。観客の目の前で繰り広げられる演劇を多彩なカメラワークを生かして撮影し、その映画のようなライブ映像を会場中央のスクリーンに映し出すとともに、デジタルでも同時配信するというものだ。「シネマ インフェルノ(Cinema Inferno)」と題した同作は、独創的な視点をもつ彼自身が構想し、イギリスの劇団イミテイティング・ザ・ドッグ(Imitating the Dog)とのコラボレーションによって実現。事前に収録された声に合わせて舞台で演じるモデルたちが、2022年”アーティザナル”コレクションをまとう。

 アメリカの古い西部劇やサスペンス、ロードムービーなどを想起させるストーリーの主人公となるのは、若いカップル。不幸な運命に苛まれ、銃撃で負傷しながらも車で逃亡する姿を、過去のフラッシュバックシーンを交えながら描いていく。それは、「“アーティザナル”のアトリエで開発された素材とカッティング技術を用いて、親、法律、教育、宗教、医療に見られる男性支配社会の権力乱用の表現を探求する」ものだという。

 冒頭から何度も登場するカップルを追う不気味なカウボーイたちや、ガリアーノの「メゾン マルジェラ」に欠かせないモデルのレオン・デイム(Leon Dame)扮する主人公が身に着けるのは、まるで砂が吹き付けられたようなウエアやアクセサリー。これは“サンドストーミング”と呼ばれるメゾンの新たな表現で、フロック加工やニードルパンチ、ジャカード、ビーズ刺しゅうなどで生み出されている。そして、もう一人の主人公を務めたルル・テニー(Lulu Tenney)は、淡いグリーンのチュールドレスを軸にしたレイヤードスタイル。ほかにも、今季は複数のチュールドレスを切り裂いて再構築した幻想的なプロムドレスを、ラベンダーやピーチピンクなどの綺麗なシャーベットカラーで提案している。

 また、終盤に登場するナースたちがまとうのは、往年のオートクチュールと手術着を掛け合わせたかのようなテントラインのドレスコート。テーラリングには、歴史的に権力の象徴だったネックウエアのジュネーブバンドから着想を得たカットや、粗い白ステッチ、カットアウト&カットオフディテールを施している。さらに、ビンテージアイテムや余剰素材をアップサイクルして提案する“レチクラ”では、19世紀のアンティークベッドリネンやビンテージのハンカチから「ペンデルトン(PENDELTON)」のチェックシャツ、20世紀のパンプスまでが、新たな姿に生まれ変わった。

 30分以上におよぶスペクタクルは、観るものを物語の世界へと引き込む完成度の高さだった。それは、コロナ禍にクリエイティビティーを表現するフィールドをさらに広げたジョンだからこそ成し得たことであり、フィナーレに会場は大きな拍手で包まれた。ただ、心を痛める事件や出来事が多い今を生きる中で、フィクションといえどもその強烈で残虐とさえ言える表現はショッキングでもあった。それを目の当たりにして、複雑な気持ちが残ったのもまた事実だ。


 2022-23年秋冬オートクチュール・ファッション・ウイークが7月4日から7日までに開催された。今季からは、ついに公式スケジュールに名を連ねる全てのブランドがリアル発表を再開。世界中からVIP顧客やセレブリティーもパリに戻り、華やかなムードに包まれた4日間のファッションの祭典から、注目ブランドのショーリポートをお届け!

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「キャンメイク」のリップティントにベージュ系の限定カラーが登場

 

 「キャンメイク(CANMAKE)」は、唇につけるとツヤ膜を形成する“ジューシーリップティント”(税込660円)の限定色を7月下旬に発売する。

 同製品は、ウォーターインオイル処方であることから時間が経つにつれてツヤ感がジュワッと溢れ出し、グロスをつけたような仕上がりが特徴。今回登場したカラーはベージュ系の2色で、血色感のあるローズベージュとヌーディーなヘーゼルミルクを用意する。

 そのほか、みずみずしいツヤを与える“クリームチーク”(同638円)にはコーラルオレンジのアプリコットシェルをラインアップ。さらにネイルカラー“カラフルネイルズ”からは、パープルとブラウン、抹茶グリーン、オレンジブラウンのシアーなくすみカラー4色(同396円)をそろえる。

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雑誌編集とアパレル、巨匠二人からのメッセージとは? 【UA重松理×石川次郎対談 最終回VOL.5】

 ユナイテッドアローズの名誉会長で、日本服飾文化振興財団の理事長を務める重松理が、「ポパイ」「ブルータス」「ターザン」などの創刊編集長を務めた雑誌の編集者である石川次郎氏と組み、今年3月に「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」(発行・講談社エディトリアル)を発行した。二人のレジェンドは、なぜタッグを組み、書籍を発行したのか。最終回のテーマは、「過去とこれからのムーブメントの作り方」。二人からこれからを担う若い世代へのメッセージとは?

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――今の流れからすると、これはもう、書籍の第2弾、もしかしたら、第3弾もありそうですね(笑)。

重松:(笑)。自分は本当に、遊び場のこともやりたいし、インフルエンサーの変遷もやりたいんですよね。裏原宿から生まれたインフルエンサーが今のランウェイを引っ張っているなんて、本当に面白いですよね。そこもまとめたいなとか。大変なんですけど、それを全部やってから引退しようかなと思っています。

――今、インフルエンサーの話が出てきましたが、お二人が考えるムーブメントのつくり方とは?

石川:雑誌編集者の立場でいうと、ムーブメントを作ろうと思って仕事をしたことはないんですよ。外国のムーブメントをそのまま紹介することが大切だと。日本で同じようなことを巻き起こしたいといった大それた考えはとくになかったんです。僕たちがやったことをもとに、その道のプロが「じゃあ、日本でもロックコンサートをしよう」とか、「この街をもっと面白くしよう」という動きはありましたけどね。雑誌の編集者はそこまでは考えられないですし、見せちゃったら終わりというか。常に新しいものを探して、知らせて、終わり。そこから先のムーブメントは結果的に起きても、自分たちがやった仕事ではないという思いはどこかにあるんですね。

――意図していなかったけれども、結果としてムーブメントになったということはありますが、それは結果論であって、スタンスは異なる、ということですね。では、特に注目してきたインフルエンサーとは?

重松:たくさんいますよね。今、あげきれないので、一つのものにまとめたほうがいいと思っているぐらいなので(笑)。われわれの時代には、ビートルズもいたし、ジョン・レノンのメガネも買いましたし。だからミュージシャンはかなり多いと思うんです。今はミュージシャンもあると思いますが、女優さんやアイドルグループだったり、多種多様で商業的に売らんかなという仕組みを作る人たちが考えることなので、多岐にわたっていますね。

石川:これまで自分が面白がって取材した人たちは、今でいうインフルエンサーなんだなという気がしますね。僕が興味を持ってアプローチをして、取材させてください、一緒になんかやりましょう、といった人はけっこうインフルエンサーでしたね。自分がインフルエンサーではないから、インフルエンサーと一緒に仕事をしたいんです。編集者になってすぐに会いたかった人は何人かいましたが、その中の一人が伊丹十三さんでした。当時は伊丹一三という名前で。映画はまだ撮っていなかったけれど、書いているエッセーがすごく面白かった。世の中に広く影響を与えはしないかもしれないけれど、この人の面白さはわかる人にはわかるだろうなと。それでいきいなり公衆電話から電話をした。「平凡パンチですが」「取材ですか?」「取材させてもらいたいです」「僕、高いですよ」と。一瞬、えっと思ったけれど、「高くても僕がお金払うわけではないから大丈夫です。いくらでもいってください」みたいな感じで。そうしたらあちらも面白がってくれて、すぐ会ってくれた。案の定、面白い人でしたね。

 小林泰彦さんとは僕が編集者になって1カ月後に、それまで全く知らなかった彼にアプローチをしました。彼が描いたものを見た瞬間に、「この人と仕事がしたい」「この人と一緒に外国に行きたい」と思ったから。それは一種の彼にインフルエンサーとしての要素を感じたんでしょうね。片岡義男さんもテディ片岡という名のコラムニストだったけど、言うことはすごく面白かったし、アメリカの面白い話をたくさん知っていました。言われてみれば、自分の編集者人生はインフルエンサーとのつきあいだったなと思いますね。本当に親しくしていただいた方はその後みんな活躍された。横尾忠則さんもデビューしたばかりでまだ有名ではなかったけど、編集会議で「横尾忠則さんをフィーチャーしたい」と話したら、「俺もそう思う」と手を挙げたいという人が2人いた。同期の編集者の椎根和と今野雄二。それを見て木滑編集長が、「そんな面白いと思うんだったら3人で付き合って、それぞれの視点で取り上げろ」と。それで、横尾さんに「毎週パンチに出てもらいますよ」とお願いして本当に毎週取り上げた。あんな大きな存在になっちゃうとは思わなかったけれど、彼も大変なインフルエンサーですよね。

――インフルエンサーや面白い人の見つけ方とは?

石川:いつもキョロキョロしていましたよ。自分にないものを持っている、自分が逆立ちしても出来ないことをやる人は面白いですよ。小林さんのように絵は描けないし、横尾さんの発想は、僕の中からは絶対に生まれない。編集者というのは真っ白でいいと思っている。そういう人たちといかに付き合うか。自分がお願いしたときに、手伝ってくれる人が何人いるかが、一種の編集者が持つべき力じゃないかなと思っています。

――今回のコラムを書いていただいた方々、イラストを描いていただいた方々、提供いただいた方々もめちゃめちゃ贅沢ですね。小林さんに穂積さん、大橋歩さん、カメラマンの立木義浩さん、片岡義男さん、甘糟りり子さんなどなど。

石川:皆さん、すぐにOKしてくれた。編集者としての財産ですよね。最初はあまり外部の方々の原稿を入れる予定はなくて、編集部で全部書こうと思っていたんですが、このテーマに関してはやっぱりこの人に書かせたいな、という気がどんどん出てきてしまった。

――この本は、ファッションに携わってきた方々や若い方々に、ファッションの歴史を後世に残したい、伝えていきたいという、ある種、お二人の遺言のようなものだととらえています。最後に、改めてメッセージをお願いします。

重松:自分はあんまりないんですよね。若い人にどうだとかこうだとか。でも、もっと勇気をもって、もっと冒険をしてほしいと思っています。そういうことを言うとダサイと言われるかもしれないし、今はそういう時代なのかもしれないけれど、車も欲しくない、海外も行きたくないんだろうから、何したいんだろうなと思いますよね。でも、世代が違うから仕方ないし、否定はしませんが。もう一つ、これまでやり残したこととして、副代表理事を務める日本和文化振興プロジェクトをはじめとしていまいくつか取り組んでいることでもあるのですが、和文化をもっと意識してほしい、興味をもってほしいですね。それだけです。

石川:僕はもう82歳になるのですが、80歳を超えて、しかもコロナ禍真っ最中という大変な時期に、こういった面白い仕事をいただいたのはとてもありがたくて、幸せを感じました。つくづく思ったのは、紙の印刷の本はやっぱり面白い。本を作る仕事をあまりされてきたことがない財団の方々と一緒に仕事をしましたが、校正刷りの段階では順番が滅茶苦茶に出てきて、財団の皆さんもページを見開きごとに順不同でチェックしていた。だから作っている最中は本全体の構成や流れはわかんないわけですよ。でも、それが一冊の本になって出てきたときに、みなさんが驚きを感じられているな、ということがよく伝わってきた。あぁ、本の面白さを感じていただけているな、とすごく嬉しかったですね。本をパラパラとめくっていくと、流れや、本独特の感覚が間違いなく存在しているんです。本や雑誌が古いメディアだととらえられて、デジタルやSNSの時代になっていると言われかもしれないけれど、そんなことはない。これがまた新しく感じる逆転現象が生まれています。僕の一番小さな孫が今11歳で、女の子なんだけれど、生まれたときからスマートフォンがあり、周りはデジタルだらけという環境にいます。取り扱い説明書なんてなくてもスマホもパソコンもタブレットもどんどん触って使っている。それを見ると、じいさんは一種不思議な感覚がするけれど、逆にその子たちからしてみると、紙の本は新しいメディアなんです。本屋に連れていくと、夢中になって本を見ている。アナログな本の方が新しさを感じるという逆転現象が起きているんでしょうね。だから、本や雑誌がただの古臭いメディアになるなんていうことを考えたくない。新しさは出せるはず。「時代が違うから」とか「デジタルにやられている」とか言わないこと。編集者なんだから、雑誌づくりの楽しさを体験してほしいですね。


「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」

【Contents】
1. 1945-1950年 貧しい時代でもお洒落がしたかった
2. 1950-1959年 ファッションが動き出した
3. 1960-1969年 ファッションに自由がやって来た
4. 1970-1979年 経済成長が支えたファッション
5. 1980-1989年 おしゃれのエネルギーが頂点に!
6. 1990-2000年 流行はストリートから生まれてくる
7. 2000-2009年 誰もがセレブ気分になれた時代
8. 2010-2021年 ファッションの多様化は続く

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