パリコレのショー音楽ができるまで 「服を聴かせる」黒瀧節也の仕事

 音楽家や選曲家、イベントのサウンドプロデュースなど、主に音楽に関わるフィールドで幅広く活動する黒瀧節也が、初となる著書「みえないものをデザインする」をアチーブメント出版から10月17日に発売する。同氏はこれまで数々のファッションショーの音楽も手掛けており、2023年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークでは「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」と「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」のサウンドも手掛けた。現在は1シーズンに5、6ブランドの作曲を行う。ランウエイショーの現場は、コレクションを目で見る場所であると同時に、音や雰囲気、人の熱気を五感で感じる場でもある。特に音楽は、使う曲一つでコレクションの印象を左右するといっても過言ではないほど重要な役割を占める。コム デ ギャルソン(COMME DES GARCON)を率いる川久保玲も信頼を置く、黒瀧の“音”とは。見えないもののデザインには「自分が作曲するというより、デザイナーが作っている感覚。デザイナーへのリスペクトが深いから」という、どこまでも謙虚な姿勢があった。

デザイナーを志した過去

WWD:音楽に興味を持ち始めたのはいつごろ?

黒瀧節也(以下、黒瀧):母親がレコードコレクターで家にレコードがたくさんある環境で育ち、子どもの頃からアートワークを見たり、一日中レコードをかけて遊んだりしていた。だから、自然と目覚めていたという感覚。母親がディスコでよく踊っていたそうで、ファンクやソウルから、プログレッシブ、クラシックまでいろいろ聴いていた。ただ音楽はあくまで好きな趣味の一つで、仕事にしたいとは考えていなかった。

WWD:ファッションデザイナーを目指していた時期があるのだとか?

黒瀧:テレビ番組の「ファッション通信」が好きで、高校生時代に「コム デ ギャルソン」のショーを見て「なんて素敵なんだ」と衝撃を受けた。川久保さんのデザインで洋服が持つ力を感じ、自分でもそんな服が作りたくてデザイナーを目指そうと決めた。自分で着る服も、それまではオアシス(Oasis)やブラー(Blur)といったブリットポップに影響を受けた古着メインのスタイルだったのが、衝撃以降は全身黒い服を着るようになり、「コム デ ギャルソン」も頑張って買っていた。

WWD:当時からショーの音楽には注目していた?

黒瀧:服に集中していたので、最初はほぼ気にしていなかった。でもいろいろな縁で恵比寿のクラブ「みるく」でDJをすることになり、ショーの音楽にも徐々に興味を持つようになっていった。クラブでの出会いがきっかけで、DJと音楽制作のために渡英し、帰国後にファッションに関わる音楽の仕事をやり始めてからは、音楽的な観点から服を見ることを意識し始めた。菊地成孔さんの著書「服は何故音楽を必要とするのか?」にも感銘を受けた。

WWD:初めてファッションショーの音楽に携わった仕事は?

黒瀧:「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」が「メゾン マルタン マルジェラ」だったころ、店で買い物をしていたら店長から「VIP向けトランクショーの音楽に挑戦してみない?」と誘ってもらった。約1時間のショーの選曲をしたら顧客からの評判が良かったらしく、2シーズン任せてもらえた。

WWD:当時から意識していたことは?

黒瀧:あくまで服のための音楽であって、音楽が邪魔をしないようにすること。音楽に意識が向くと、服を見る視覚がおろそかになってしまう。視覚に神経を集中させるために音楽は主張しすぎず、同時に世界観を作り出すバランス感を大切だ。テンポや音量を調整し、何体目にどんなルックがくるのか、素材は何なのか、軽いのか、重いのかなどを考えて音で表現していくと、ゲストは服を聴いている感覚になれる。私にとって素晴らしいショーとは、音楽が思い出せないショー。デザイナーの思いと、目に見える服の間をつなぐ空気の震えを作り上げることが私の役割だ。言葉や音を超越して、デザイナーが表現したい服をショーで感じてほしいから。

パリコレ「マメ」の作曲の裏側

WWD:これまで作曲したショーで印象に残っているブランドは?

黒瀧:「ノワール ケイ ニノミヤ」との初めての仕事で、ブランドがパリコレに本格デビューする18-19年秋冬シーズン。「どんな曲があるのか分からないので、いくつか提案してほしい」と依頼されたので、先入観を与えないためにタイトルやアーティスト名を伏せて10数曲を用意した。まだ服が完成する前だったので、素材感やルック数、ショーの長さなど最低限の情報を聞き、3部構成にしたいというリクエストに合わせて選曲や作曲をした。返事が届くと、二宮さんが選んだ曲は全て私が作曲したものだった。そのときは本当にうれしかった。

WWD:そのショーは現地で見た?

黒瀧:最初は音源の提供だけでいいと言われていたけれど、ブランド初のパリコレだったし、自腹でもいいからと現地に飛んだ。会場に行き、リハーサルを見て、ルックの順番が変われば音楽も変えたかったから。すると案の定、私が到着する前のリハーサルで音が膨張し、どうしようもない状態だったのを、ギリギリに到着した私が間に合わせた。ショーが終わると、特に海外のゲストから「音楽良かったよ」と声をかけてもらえたし、普段は掲載されない雑誌のコレクション紹介のページに、音楽担当としてクレジットもしてもらえた。現場で音楽を完成させる大切さを改めて感じたショーだった。

WWD:23年春夏のパリコレでは「マメ クロゴウチ」の音楽も作曲していた。

黒瀧:「マメ クロゴウチ」とは今シーズンが初めて仕事で、デザイナーの黒河内(真衣子)さんが何を考えながらデザインで表現しているのかをインタビューし、デモをどんどん作っていった。最初は繊細でエレガントなイメージが浮かび、そのような音楽を提案したが「もっと激しくしてほしい」というリクエストがあり、徐々に完成に近づけていった。今シーズンは竹や⽵かごに着想した“バンブー グルーブ(Bamboo Groove)”がテーマだったので、音楽のキーをBにしたり、⽵かごをイメージした網み目に合わせてリズムを不均衡にしたり――楽曲を解き明かしていくと、実は服の模様と同じパターンになっているなどの工夫もしている。

WWD:ショーの作曲をする上で大切にしていることは?

黒瀧:デザイナーとの対話だ。コレクションについてのインタビューや、サンプル曲をたくさん作って生まれる会話を大切にしている。私が話すというよりほぼ聞くことに徹して、質問攻めはせず、会話の中で私が感じたピュアな部分と相手の考えとの差異をコミュニケーションで埋めていく。だから失敗することもたくさんあるけれど、そこから生まれる会話が大事。一度でOKをもらう方が逆に不安になる。音楽は目に見えないものなので、デザイナーにどう質問すればイメージが湧き出て答えやすいかを常に考えている。あとは、きれいな言葉遣い。声で空気を震わせている以上、私の声も一つの音だから、自分から発する音は美しいものでありたいし、その方がデザイナーにも伝わりやすい。

運命に身を委ねながら向かう先

WWD:修正のリクエストは具体的な方がやりやすい?

黒瀧:どちらかというと、感覚的な方がうれしい。ただ「これは好きじゃない」「もっとこうしてほしい」と引き出す音楽を作るのも私の仕事。だから自分が作曲するというより、デザイナーが作っている感覚だ。全ては服から生まれた曲なので、デザイナーが作曲したサウンドだと思ってほしい。ブランドが半年かけて作り上げたクリエイションをショーのたった10数分で表現するわけだから、そのためには何度でも作り直したいし、作り手の思いに応えるために中途半端なことは絶対にできない。

WWD:そこまでデザイナーに寄り添えるのはなぜ?

黒瀧:私自身もデザイナーを目指した時期があったので、ファッションデザイナーに対して深いリスペクトがあるから。この仕事をしていて一番やりがいを感じるのは、ショーが終わった後でも、作曲し終えた後でもなく、最初の打ち合わせのとき。デザイナーの頭の中を知れただけでもうれしいし、そのクリエイションが広がっていくのを一緒に想像するときが興奮のピークだ。

WWD:今後挑戦したいことは?

黒瀧:一つが、海外ブランドのショー音楽。パリにはフレデリック・サンチェス(Frederic Sanchez)や、ミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)という有名なサウンドデザイナーがいる。だから「東京には黒瀧がいる」と言われるぐらい認知度を高めたい。そのために自分で限界を決めず、さまざまな表現に挑んでいきたい。思い返せば、ファッションデザイナーを目指していた頃から、周りに流されるがまま音楽がいつの間にか仕事になっていた。その音楽のおかげでパリに行くことができ、気が付いたら憧れだった川久保さんがそばにいる運命をたどっていた。さらに、シーズンの変わり目の時期だけ「コム デ ギャルソン」のショップで流す音楽も任せてくれるようになった。もしファッションデザイナーを目指し続けていたら、川久保さんはずっと遠い存在のままだったかもしれない。だから運命的な何かを感じたら、これからも逆らわず流されようと思う。

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【スナップ】「ラフ・シモンズ」ロンドンでのショーは個性派ぞろい 強力アイテムで際立つユース感

 

 「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」は、2023年春夏コレクションをロンドンのクラブ、プリント・ワークス(Printworks London)で現地時間13日に発表した。当初はロンドン・ファッション・ウイーク期間中の9月18日にロンドンで初のショーを行う予定だったが、同月8日に逝去したエリザベス女王(Queen Elizabeth II)の国葬で日程を延期した。

 来場者の服装は、全身黒一色のハードな着こなしや、MA-1×ピンヒールのバランス感が巧みなスタイル、パープルの輝かしいヘアアクセサリーが目を引くヒョウ柄のスーチングなど。小物も毛足の長いファーブーツや、足袋を彷ふつとさせるパンプスと靴下のタッグ、デフォルメされた大きなバッグなど、存在感があるものを取り入れていた。

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「アグ」が新作ブーツ発売 定番のショートブーツを環境配慮素材に

 「アグ(UGG)」はこのほど、定番のショートブーツ“クラシック ミニ”で環境配慮素材を使用した新作“クラシック ミニ リジェネレート”を発売した。価格は、メンズが税込2万6400円、ウィメンズが2万5300円、キッズが1万8700円。キービジュアルには、モデルで環境アクティビストとして活動するクアナ・チェイシングホース(Quannah ChasingHorse)を起用した。

 アッパーには、環境再生型農業を実践する農場から調達したことを証明する「ランド・トゥ・マーケット」認証を取得したシープスキンを使用した。ソールはサトウキビ由来の素材で、従来のアウトソールと同様に、高いクッション性とグリップ力、耐久性を持つという。

 環境再生型農業とは、土壌の質の修復を目的とし、肥料や殺虫剤の使用を減らしながらその土地の生物多様性や働く人々の人権などを尊重した包括的な農法を指す。健康な土壌は、より多くの炭素を吸収できるため、気候変動対策の観点からも注目を集めている。

 「アグ」は、環境再生型農業の普及に取り組む世界的非営利団体セイボリー研究所(Savory Institute)と長期的なパートナーシップを締結し、2025年までに100万エーカーの牧草地を環境再生型に転換していくことに取り組む。

 また、北米とヨーロッパの「アグ」取扱店舗と公式ECサイトでの同アイテムの販売総数から、1足あたり6ドル(約892円)をセイボリー研究所に寄付する。加えて、日本では音楽家の坂本龍一が代表を務める森林保全団体、一般社団法人モア・トゥリーズ(more trees)とのパートナーシップの下、同アイテムを含むサステナブルコレクションの売上の一部を寄付する。

UGG®/ Deckers Japan

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「ラフ・シモンズ」はレイブで若者の反骨精神を解き放つ ロンドンで見せた「最も素朴でミニマルなコレクション」

 「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」は、2023年春夏コレクションをロンドンで現地時間10月13日に発表した。突き刺すようなネオンの光、骨の髄まで響く爆音のテクノミュージック、押し合いながら人混みの中で踊るゲストたち――ショー会場となったクラブ“プリントワークス(Printworks)”に定刻通りに到着すると、すでにアフターパーティーのような熱気に包まれていた。

 同ブランドは、ロンドン・ファション・ウイーク(London Fashion Week)の公式スケジュールで9月中旬にショー開催を予定していたが、エリザベス女王の逝去を理由に初となるロンドンでのショーを延期した。会場に選んだ“プリントワークス”は、旧新聞印刷工場をナイトクラブに変えた場所で、コンクリートむき出しのインダストリアルな雰囲気だ。4000人収容可能なダンスフロアの半分が、バーカウンターと総スタンディングのゲストスペースとなり、一般公募者も含め約1000人がショー開始まで音楽に身を委ねた。空気が薄い密集状態のゲストスペースで50分間待機していると、バーカウンターのアルコールやテーブルクロスが片付けられ、キャットウオークへと変わっていく。左右両側から人の圧を感じるカオスな状態で、照明と音楽が切り替わってショーが開幕した。

よみがえるダンスフロア

 ゲストとキャットウオークの距離は近く、手を伸ばせばモデルの足をつかめそうなほどだった。男女のルックに共通して登場した鮮やかなネオンカラーのレギンス、ドット柄のボディースーツ、肌が透けるフィッシュネットタンクトップから、1990年代レイブカルチャーの断片がよみがえる。ボトムスのサイドに切り込みを入れたマイクロミニのスーツスカートの下にはショーツを忍ばせ、ほかのピース同様に男女で共有してジェンダーニュートラルを推し進める。

 コットン地のタンクトップやジャージーのロンパースにペイントした走り書きのデザインは、ベルギー人現代美術家フィリップ・ヴァンデンバーグ(Philippe Vanderberg)の手描き作品だ。抑圧や原理主義、一次元的思考を風刺的に表現した“Let’s Drink the Sea and Dance”や、インビテーションにも用いた“Station”の文字に加え、ダスターコートとライダースをドッギングしたオーバーサイズのアウターには80年代パンクのムードを詰め込み、「ラフ・シモンズ」らしい若者の反骨精神が感じられた。

ミニマルさににじむ激情

 昨今の「プラダ(PRADA)」を彷彿とさせるシルエットも際立った。ニットのアンサンブルやジャストフィットのテーラードスーツ、ワークウエアに着想したプラットフォームのブーツなどだ。ラフは、ショー前に公開された英カルチャー誌「ESマガジン(ES Magazine)」で「これまでの中で最も素朴でミニマルなコレクション」と答えている。装飾は最小限にし、ウエラブルなピースで構成したコレクションには、彼のシグネチャーである特大サイズのニットウエアも、トレンドのY2Kも見当たらない。社会の閉塞状態が加速した時代を象徴する80〜90年代レイブカルチャーを反映させ、現代を生きる若者の自由を求める声をくみ取った。

 フィナーレに登場したラフがランウエイから飛び降り、友人らと熱い抱擁を交わしている間に、キャットウオークは再びバーカウンターへと戻り、DJクララ3000(Clara 3000)が登場してそのままアフターパーティーへと移行していった。熱気の立ち込める暗く霞んだ会場で、享楽を解き放つように若い男女が踊り続けた。実際、イギリスやフランスを中心とするヨーロッパでは、立入禁止区域で開催するレイブが密かなブームとなっている。「ラフ・シモンズ」は若者の声をファッションを通して代弁するオピニオンリーダーであり、つかの間のユートピアを提供する存在として、ロンドンでの株をさらに上げただろう。

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「ビューティフルピープル」は独自のコンセプトを探求しつつ、調和や平和を表現 パリコレで勝負する日本人デザイナーVol.11

 2019年春夏シーズンから洋服の内部に隠れている空間に着目する“サイドシー(SIDE-C)”という独自の考え方を掲げている「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」は、「A NEW WAY OF CONNECTING(つながるための新たな方法)」と題したコレクションで断絶や対立が多い世界へのメッセージを放った。ベースとなるのは、軍服を想起させるカーキグリーンのウエア。人が関わり合うパフォーマンスを通して、それが軽やかな衣服へと変わるさまを描き、調和や喜び、平和を表現した。

 フラップポケットの付いたミリタリージャケットは、上下をひっくり返すことでボレロのようなデザインに。パラシュートパンツは、ファスナーを開き、逆さにしてファスナーを閉めたりボタンを留めたりすることでケープ付きのドレスへと形を変える。2021年秋シーズンから探求している“ダブルエンド(両頭の意)”のアイデアを発展させたものだが、中には着方の変化と呼ぶには不自然な提案もあった。最後には、モデルがボディースーツのヒップ部分に収納されていたパラシュートを広げ、風をまといながら会場を駆け巡った後、それを頭からすっぽり被ってドレスに。登場したルックの数はかなり少なかったものの、メッセージ性の強い今季のストーリーを完結させた。

 着方の変化を実演するのは、一発勝負かつ編集のできないリアルショーではなかなか難しい。過去にはそれが間伸びしているように感じたショーもあったが、今回はそのプロセスにコンテンポラリーダンスの要素を取り入れることで、テンポ良く見せているのが印象的だった。

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「ビューティフルピープル」は独自のコンセプトを探求しつつ、調和や平和を表現 パリコレで勝負する日本人デザイナーVol.11

 2019年春夏シーズンから洋服の内部に隠れている空間に着目する“サイドシー(SIDE-C)”という独自の考え方を掲げている「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」は、「A NEW WAY OF CONNECTING(つながるための新たな方法)」と題したコレクションで断絶や対立が多い世界へのメッセージを放った。ベースとなるのは、軍服を想起させるカーキグリーンのウエア。人が関わり合うパフォーマンスを通して、それが軽やかな衣服へと変わるさまを描き、調和や喜び、平和を表現した。

 フラップポケットの付いたミリタリージャケットは、上下をひっくり返すことでボレロのようなデザインに。パラシュートパンツは、ファスナーを開き、逆さにしてファスナーを閉めたりボタンを留めたりすることでケープ付きのドレスへと形を変える。2021年秋シーズンから探求している“ダブルエンド(両頭の意)”のアイデアを発展させたものだが、中には着方の変化と呼ぶには不自然な提案もあった。最後には、モデルがボディースーツのヒップ部分に収納されていたパラシュートを広げ、風をまといながら会場を駆け巡った後、それを頭からすっぽり被ってドレスに。登場したルックの数はかなり少なかったものの、メッセージ性の強い今季のストーリーを完結させた。

 着方の変化を実演するのは、一発勝負かつ編集のできないリアルショーではなかなか難しい。過去にはそれが間伸びしているように感じたショーもあったが、今回はそのプロセスにコンテンポラリーダンスの要素を取り入れることで、テンポ良く見せているのが印象的だった。

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