ピザとパスタを食べ続けてそろそろ体重増加が気になる2023-24年ミラノ・コレクション3日目。1日の取材件数は10~15件、結果1万歩以上を歩いているのでカロリーを相殺している信じて取材を続けます。「トッズ」の職人技や「グッチ」のデザインチームなど、色々な意味でミラノファッションの底力を感じた1日となりました。
9:30 「トッズ」
百貨店などの店頭でも売り上げが好調な「トッズ(TOD‘S)」。今回もブランドの持ち味である上質素材や職人による加工技術を用いつつ、ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)が“ちょうど良い感じ”にモダンに仕上げるそのさじ加減が絶妙です。
“Tタイムレス”のバッグなど、ブランドの頭文字“T”をアクセントにしたアクセサリーのシリーズに加え、たとえばピーコートの革のくるみボタンは、「トッズ」のアイコンであるペブル(ドライビング シューズのソールのゴム突起)に由来するなど謎解きのようにブランドのエッセンスが随所に入っています。
後日訪れたショールームは壁一面に、レザー職人の手仕事を想起させる写真や銀色に輝くミシンなどのオブジェが展示されており、レザーの国、イタリアのプライドをそこに見ました。
10:30「ブルガリ」
「ブルガリ(BVLGARI)」は毎シーズン、ブルガリホテルを会場にバッグの展示会を行います。瀟洒なホテルに入った瞬間にほのかに漂う緑茶ベースの香水の香りにホッとします。今季のトレンドカラー、水色とピンクをここでも発見。シンボルである蛇をアクセントにした“セルペンティ”シリーズからポップな水色やオレンジ、ピンクのハンドバッグが登場。ゴールドのチェーンストラップ使いもトレンド入りしております。
廊下には歴代のセレブリティとホテルの関係を伝える写真が飾られていて、若きオードリー・ヘップバーンの写真が愛らしいです。
11:30「スポーツマックス」
裸電球の光がカワイイ会場にはデザインが全部異なるヴィンテージのソファや椅子がずらりと並びガレージ風。取材も3日目となりダメージを受け始めた身体には大きなソファが心底嬉しいです。
会場演出はほっこりだけど、登場したルックはロックが効いたアイテムぞろい。テーマは「BARE」。“余分なものを取り除いて本質的要素を剥き出しにすることにより、物事の原点に 立ち返る”とのことで、結果、テーラードをベースに両性具有なアイテムが並びます。肩幅は広く強くマスキュリンに、ウエストはきゅっと絞ってフェミニンに。布をねじることで形作るドレスなど実験的なアイテムも加わりパンチが効いています。ただし色はベージュやキャメルなどニュートラルカラーで結果、全体的には優しい印象に。
14:00「グッチ」
トム・フォード(Tom Ford)時代に大ヒットしたペンシルスカートをはじめ90年代~2000年代前半の「グッチ(GUCCI)」の要素が髄所に。ペンシルパンツのシルエットやベルベットの使い方はまさに当時と同じだけど、あの頃の緊張感はいい意味で、ない。それは軽やかな素材やどこか緩いシルエット、カラフルな色使いによるものです。つまりアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が残したポップで自由な現在の「グッチ」と融合しているから。丸いシルエットのスカートはトムの後任だったアレッサンドラ・ファッキネッティ(Alessandra Facchinetti)の作風も思い出します。
最後に登場したスタッフがおしゃれだった!アトリエスタッフの中には20年以上在籍している人も多く、彼らの目線と若いスタッフの目線がそこには共存しているとか。デザイナー交代の端境期というこのタイミングでのコレクションは、先に発表したメンズのように“大人しめ”に留める、という選択肢もあったはず。でもそれをせず、一度総括し、先へ進む素地を整える。そこに歴史あるブランドの余裕を感じます。総括後の次のステップが楽しみです。
セレブリティも多数来場。日本からは三吉彩花さん、橋本愛さんなどが出席していました。
15:00「コルミオ」
若手ブランド「コルミオ(CORMIO)」の会場に入ると、そこは屋内のフットサルコートでした。子どもたちが(結構本気で)ボールを追いかけていて、ショーが始まるまで彼らのゲームを保護者のように見守りました。そんなユニークな演出の背後に込められていたのは、サッカーを男社会の象徴として捉え、性差別社会で何度転んでも立ち上がり、走り続ける人々を鼓舞したいというメッセージ。リボンのあしらいが可愛いニットのセットアップやバラクラバ、ロングスリーブなどは、Z世代のティックトッカーたちが着ていそう。スタイリングからもボーダーレスなジェンダー観が伝わります。
16:30「プランC」
「プラン C(PLAN C)」は、「マルニ(MARNI)」創業デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)の長女、カロリナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)が手がけるブランド。ママでもあるカロリナの日常生活を反映した等身大のデザインが魅力です。中でも今季気になったのがシューズのデザイン。靴下をはいたようなレースアップシューズや厚底のバイカラーのローファーなどがはき心地がよさそう。スニーカー一辺倒からレザーシューズも、へトレンドが揺り戻しつつある今、こういう履きやすい革靴が必要です。ボウタイ風のニットもカワイイ。
17:30「ロロ・ピアーナ」
「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」のテーマは、「素材の原産地を巡る旅」。同社とゆかりのあるペルーやオーストラリア、モンゴル、ニュージーランドなどの地を巡ります。例えばペルーでは、同地に生息するラクダ科のビキョーナの保護に長年取り組んできました。ビキョーナの毛は非常に柔らかく高品質で、一時は乱獲の影響で9000頭にまで減少してしまったそうですが、同社の取り組みで今では20万頭に増えたそうです。今回のコレクションにビキョーナの毛は用いられていませんが、柄やシルエットで各地とのつながりを表現しています。会場の2階では、溢れんばかりのカシミアが展示されていました。あらためて、「ロロ・ピアーナ」のカシミアは本当に柔らかい!同社のテキスタイルへの愛と情熱を感じました。
18:30「ジャンヴィト ロッシ」
今季のシューズは、パンクなムードがトレンドのようです。「ジャンヴィト ロッシ(GIANVITO ROSSI)」もパンクがテーマ。チャンキーヒールのメリージェーンやリサイクルレザーにパイソン柄をプリントしたサイハイブーツ、厚底ローファーなどが登場しました。
ちなみに、写真に写り込んでいるのはイベントの来場者たち。カフェのテーブルを什器としており、どう撮っても誰かが写り込むのです。きっと我々もどこかの媒体の写真に写り込んでいるでしょうからお互いさまということで!
19:00「ジル サンダー」
「ジル サンダー(JIL SANDER)」と言えば、テーラードのジャケットやコート、ですが、今回はちょっと様子が違いました。まずレザーのバイカーという、ファーストルックにびっくり。続くルックの多くにエンボス加工で「JIL SANDER」のロゴを浮かびあがるなどここまでロゴを強調するのも珍しい。ディテールにはファスナーが目立ち、ここにも「ん?」ひっかかりを覚えます。
大胆なサクランボのプリントは自由の象徴だとか。どうやら、クリエイティブ・ディレクターであり夫婦のルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)は今季、より“自分たちらしさ”を押し出したようです。ルーシーはストリート、ルークはオートクチュールでそれぞれ経験豊かであり、その融合こそが「ジル・サンダー」の魅力ですが、その融合の色がジワリ強まっております。ルークが得意とするクチュール感は後半のラブリーなドレスのシルエットや刺しゅう使いなどに見て取れます。2人の世界は文字で書くと異なりますが、驚くほど自然に溶け込み結果、ひとつの「ジル サンダー」となっています。
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