皮膚科学に基づいたスキンケアブランド「シェノン」からクレンジングと洗顔料が登場

シェノンは、スキンケアブランド「シェノン(CHAINON)」から“ブラッククレンジングバーム”と“ホワイトホイップウォッシュ”を発売した。オンラインストアやクリニックなどで展開する。「シェノン」は、美容皮膚科医である酒井知子医師が立ち上げたスキンケアブランドだ。

“ブラッククレンジングバーム”(120g、3280円)は、炭と泥の力で皮脂や汚れも吸着&オフするクレンジング。カードハウス構造で、肌にのせた瞬間にとろけ、ウォータープルーフのメイクや毛穴の汚れまでしっかりと絡め取る。肌のバリア機能にアプローチするパンテノールやヒト型セラミド、ターンオーバーに働きかける酢酸トコフェロールを配合している。

“ホワイトホイップウォッシュ”(180g、3080円)は、摩擦レスを追求した濃密泡でしっとり洗い上げる洗顔料。低刺激で肌に優しいアミノ酸系界面活性剤を使用し、肌のバリア機能を壊さずに洗浄する。肌のバリア機能に働きかけるヒト型セラミドやナイアシンアミドを配合している。

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皮膚科学に基づいたスキンケアブランド「シェノン」からクレンジングと洗顔料が登場

シェノンは、スキンケアブランド「シェノン(CHAINON)」から“ブラッククレンジングバーム”と“ホワイトホイップウォッシュ”を発売した。オンラインストアやクリニックなどで展開する。「シェノン」は、美容皮膚科医である酒井知子医師が立ち上げたスキンケアブランドだ。

“ブラッククレンジングバーム”(120g、3280円)は、炭と泥の力で皮脂や汚れも吸着&オフするクレンジング。カードハウス構造で、肌にのせた瞬間にとろけ、ウォータープルーフのメイクや毛穴の汚れまでしっかりと絡め取る。肌のバリア機能にアプローチするパンテノールやヒト型セラミド、ターンオーバーに働きかける酢酸トコフェロールを配合している。

“ホワイトホイップウォッシュ”(180g、3080円)は、摩擦レスを追求した濃密泡でしっとり洗い上げる洗顔料。低刺激で肌に優しいアミノ酸系界面活性剤を使用し、肌のバリア機能を壊さずに洗浄する。肌のバリア機能に働きかけるヒト型セラミドやナイアシンアミドを配合している。

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「ウカ」がおみくじキャンペーンを実施 運勢ごとに施術やプロダクトをプレゼント

ヘアサロン「ウカ(uka)」を展開するウカは、2025年の幕開けとともに、ビューティーメンバーズクラブ「ukainn(ウカイン)」限定のおみくじキャンペーンを実施する。超大吉から末吉までをそろえ、それぞれの運勢ごとに施術・プロダクト、またはウカインポイントのどちらか好きなプレゼントを選ぶことができる。

施術・プロダクトはエステメニューやヘッドスパ、ヘアカットなどの施術を中心に、持ち運びにも便利なヘアケアサンプルセットをそろえた。ウカインポイントは直営サロンやストア、カフェでも使用できる共通のポイント。買い物や食事を楽しむことができる。

おみくじチャレンジ期間は1月1日~6日。期間中にマイページにアクセスすれば、一人一回、おみくじを引くことができる。プレゼントの利用可能店舗などは公式サイト参照。

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若手7人が決める!ファッション&ビューティ業界の金メダル 2024年にヒットした人・モノ・コトは?

2024年も残りわずかとなった某日、「WWDJAPAN」の若手記者たちは記者歴約30年のベテランデスクから、「ヒット番付を作るように」と司令を受けた。あの日経MJやSMBCコンサルティングが毎年、年の瀬に発表しているアレだ。

ただ、日々取材現場を回る中でさまざまな“界隈”を目の当たりにしていると、多種多様な商品やサービス、人、イベントに出合う、それらを一括りにしたランキングを作ることは容易ではない。そもそも “個”の時代を担う私たち若手としては、番付のように上下を決めつけるのではなく、フラットな視点でそれぞれのすばらしさを認めることが必要なのではないだろうか、と考えた(デスクごめんなさい)。

そこで、パリ五輪の金メダルラッシュから今年の漢字が「金」になったことにちなみ、「ファッション」「ビューティ」「セレブリティー」の3ジャンルで金メダルを決めた。ただしそれぞれのジャンルで、金メダリストは1人ではない。今年の業界を最も席巻したモノ・コトは「メジャー」部門として文句なしの金メダルだが、一方でまだ局所的なトレンドであっても、今後のポテンシャルに期待を込めて「アップカミング」部門の金メダルを贈呈。というわけで、計6人の金メダリストが誕生した。

審査員は7人の若手記者とソーシャルエディターだ。ファッション分野からは、ウィメンズアパレルや百貨店などを専門にする本橋涼介シニアエディター、ロンドン&ミラノ・ファッション・ウイークを取材する木村和花記者が参加し、ビューティ分野からは韓国コスメを中心にビューティ情報全般をカバーする遠藤里紗記者が参戦。加えて、日頃からSNS起点のブームを追うソーシャルデスクの浅野ひかるとエディターの松村風斗、セレブリティー情報やマストレンドに強い関戸和記者と戸松沙紀記者も交えて1年を振り返った。トークセッションの最後には、25年の金メダルをまとめた。

「ミュウミュウ」「クロエ」強し!
厚底シューズにバリエーション

本橋:僕たちはウィメンズアパレルを取材することが多いですが、木村さんは今年どんなモノ・コトがヒットしたと思いますか?

木村:ブランド力という観点では、「ミュウミュウ(MIU MIU)」や「クロエ(CHLOE)」が強かったですね。特に「ミュウミュウ」はバッグがよく売れています。パンツをレイヤードするスタイルや、下着をあえて見せるコーディネート、ボーホーロマンチックなムードは、「フリークスストア(FREAK'S STORE)」や「シップス(SHIPS)」といった日本のセレクトショップもスタイリングに取り入れているようでした。

松村:欧米圏では、他人の評価を気にせず己を貫く反抗的なスタイル「ブラット(BRAT=悪ガキ)」がトレンドとして浮上する中、それと対極的なミニマルなスタイル「デミュア(DEMURE =控えめ、上品)」も話題になりました。シャツにタイを合わせるといった「ミュウミュウ(MIU MIU)」のグッドガールなスタイルが引き続き人気なのも、「デミュア」の影響だと思います。

浅野:厚底シューズもさまざまなブランドが発売していましたよね。ただの厚底シューズではなく、スニーカーやブーツ、メリージェーンなどとハイブリッドになっていた。

戸松:坂部三樹郎デザイナーのスニーカーブランド「グラウンズ(GROUNDS)」の人気も、その影響が顕著な例として考えられるのではないでしょうか。日本人だけでなくインバウンド需要も高く、街のあちこちで履いている若者を見かけました。今年だけで実店舗が3つオープンしています。

本橋:となると、ファッション・メジャー部門の金メダルは「ミュウミュウ」や「クロエ」、変化系厚底シューズで決まりですね。アップカミング部門はどうでしょう?
関戸:日本の若者の間では、昨年からY2Kトレンドが継続しています。古着を今っぽく着こなしながら、自分の好きなスタイルを取り入れている。

浅野:Y2K文脈でギャルカルチャーが再注目されているからか、制服っぽいスタイルをしている人も少なくなかったです。特にグレーのプリーツスカートをレイヤードしている男女はホットアイテムだったと言えるかもしれない。

本橋:僕はガジェットが好きなのでつい目についてしまうのですが、「コス(KOSS)」や「マーシャル(MARSHALL)」のヘッドフォンを付けた人も多かったです。レトロブームを象徴した現象のように思えました。

松村:若者の好みは細分化していますが、アップカミング部門には「ジョーツ」(デニムショーツ)が当てはまるのではないでしょうか。昨年から引き続きの流行ではありますが、ストリートスナップでも見かける場面が激増した。男女問わず幅広い年代の人がスタイリングに取り入れていました。ストリートにもきれい目にも着こなしやすいのがポイントです。「シーイン(SHEIN)」も、いろんなジョーツを販売していました。

木村:この流れを汲むと、来年はやはり「インディ・スリーズ(indie sleaze)」が勢いを増すのでは。古着をうまく取り入れつつ、さまざまなジャンルをミックスする“ヒップスター”のようなスタイルで、1980〜90年代にロンドンで流行ったものがリバイバルしています。

コスメはアクセとして持ち運ぶ!
じゃら付け文化がカムバック

遠藤:ビューティ分野では、やはり韓国コスメがとどまるところを知らない人気でした。メイクアップでは分かりやすいコントゥアリングではなく、さりげなく陰影を仕込んでメリハリをつけるためのアイテムが目立ったように思います。今までは血色感を持たせるために濃いピンクやオレンジが主流でしたが、頬に乗せているかどうか分からないような淡いカラーの“ステルスチーク”が話題になりました。皆さんは今年のコスメ事情をどう見ますか?

戸松:個人的には、韓国コスメの「フィー(FWEE)」を推したいです。キーリングでカバンなどにつけて持ち運べるリップ&チークの“プリンポット”が大ヒット。新大久保に旗艦店「フィーアジト東京」がオープンしたのは記憶に新しいですし、日本の芸能人の使用率も高いイメージがあります。

本橋:確かに、チャームをじゃら付けするなど、バッグをデコる文化が再燃していますね。コスメがアクセサリー化している。

浅野:きっと「タンバリンズ(TAMBURINS)」が火付け役でしょう。コロンとした卵形のリップバームを付属のシリコンケースに入れて持ち運ぶのがブームになりました。同様の商品として、「ブレイ(BRAYE)」も大ヒットしていた印象です。リップやチークがスライド式のメタルケースに入っており、チェーンをつけるとチャームになる。今年のビューティ・メジャー部門は、現象としての“コスメのアクセサリー化”が金メダルと言えそうですね。

他の動きとしては、成分ブームが美容医療領域まで近づいたことが挙げられます。これまでは、シカやレチノールなどが配合されていることが謳い文句になっていましたが、今年は美容医療レベルのPDRNやグルタチオンといった玄人受けする成分を使ったアイテムが多数発売されました。

戸松:「メディキューブ(MEDICUBE)」の“ピンクペプチドアンプル”とか、「ナンバーズイン(NUMBUZIN)」の“白玉グルタチオンC美容液”とか。

浅野:日本上陸済みの売れている韓国コスメブランドは、ほとんどそういった成分を配合していますよね。「ランコム(LANCOME)」も成分ブームに注目しているようなので、2025年はこの波がさらにラグジュアリーブランドまで波及すると思います。

XGとMrs.GREEN APPLEが大躍進
ジャパンカルチャーの逆輸入が加速

関戸:2024年はジャパンカルチャーが再注目された1年だったと思います。これまでは、“カワイイ”文化やアニメなど、いわゆる日本的なサブカルチャーを海外に輸出してきましたが、今年はその毛色が変わり、Netflixの時代劇「SHOGUN 将軍」や、ミーガン・ザ・スタリオン(Megan Thee Stallion)に見出されたラッパーの千葉雄喜などが飛躍しました。中でも特筆すべきはXG。彼女たちが日本のアーティストが世界進出するための道を作ったように感じています。その世界観は若者のファッションにも影響を与えていますし、セレブリティー・メジャー部門で文句なし金メダルです。

浅野:SNS担当としてはロックバンドのMrs. GREEN APPLEもそこに加えたいです。昨年、「GQ MEN OF THE YEAR」でベスト・アーティスト賞を受賞し、若い人を中心に高い支持を得ているとは知っていたのですが、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」のジャパンアンバサダーになったニュースをSNSアカウントで取り上げた際、インプレッションが爆発的に伸びた。楽曲の良さだけでなく、メンバーのルックスを推す女性ファンが多くアイドルに限りなく近い存在になっている気がします。

本橋:25年春夏(9月開催)ニューヨーク・ファッション・ウイークの「トミー ヒルフィガー」のショー会場で、彼らをキャッチしました。その際に撮影した動画も、韓国のセレブを優に超えるような視聴数だったんです。正直ここまでとは思っていませんでした。世間での人気の高まりを実感しました。ロックバンドのメンバーがファッション業界からラブコールを受けるのは、面白い流れですね。

木村:「WWDJAPAN」として忘れてならないのはラウールさんです。Snow Manとしての活躍が世間では取り沙汰されがちですが、ショーモデルを目指してファッションブランドのオーディションを受け、結果的に「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」と「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のランウエイを歩いたことは特筆すべきでしょう。彼のモデルとしたの本気度を深掘りした「WWDJAPAN」2月5日号は、業界外からも反響が大きく、紙面が完売するほどでした。ファッション業界でのさらなる飛躍を期待する意味で、セレブリティー・アップカミング部門はラウールさんに贈りたいですね。

関戸:海外で賞賛を浴びたセレブリティーが日本に逆輸入され、さらに熱狂を生み出す現象は今後ますます著しくなると思います。音楽プロデューサーも世代交代が起き、SKY-HIさんやちゃんみなさんのような若手アーティストが辣腕を振るっていますから、世界で戦えるジャパンカルチャーが育っていきそうです。

ファッション&ビューティトレンド
2024年の金メダルは君たちだ!

・ファッション
メジャー:変化系厚底シューズ
アップカミング:ジョーツ

・ビューティ
メジャー:コスメのアクセサリー化
アップカミング:成分ブームの発展

・セレブリティー
メジャー:XG、ミセスグリーンアップル
アップカミング:ラウール

25年の金メダル候補はキミたちだ!

1. インディスリーズ
2. 成分ブームの波がラグジュアリーブランドにも
3. ジャパンカルチャーの再評価

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CEOの就任&退任で振り返る2024年 ラグジュアリーブランドなどトップ交代まとめ

2024年は、欧州や中東などで続く地政学上の先行き不透明感に加えて、米国におけるインフレの加速、中国の景気減退などマクロ経済の悪化などの影響により、海外のファッション業界では業績が低迷する企業が続出した。コロナ禍後の爆発的な需要増に支えられていた高級ブランド消費も“正常化”し、ラグジュアリー企業も一部を除いて軒並み減収に。中でも、主力の「グッチ(GUCCI)」の不調が続くケリング(KERING)は苦戦しており、立て直しが急務となっている。こうした経済的な要因のほか、世代交代などの理由により、今年もさまざまな企業で最高経営責任者(CEO)の交代が見られた。ここでは、ラグジュアリー各社をはじめ、主要なブランドにおけるCEOの就任(IN)と退任(OUT)をまとめて振り返る。

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン
(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)

ウオッチ部門

IN:フレデリック・アルノー(Frederic Arnault)
※新設された役職

ワイン&スピリッツ部門

OUT:フィリップ・シャウス(Philippe Schaus)
※グループ内の別の役職に就任予定
IN:ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)

フェンディ(FENDI)

OUT:セルジュ・ブランシュウィッグ(Serge Brunschwig)
IN:ピエール・エマニュエル・アンジェログロウ(Pierre-Emmanuel Angeloglou)

ジバンシィ(GIVENCHY)

OUT:ルノー・ド・レスケン(Renaud de Lesquen)
IN:アレッサンドロ・ヴァレンティ(Alessandro Valenti)

アー・ペー・セー(A.P.C.)

IN:ピエール・アルノー・グレネード(Pierre-Arnaud Grenade)
※同ブランドはLVMH系の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)が保有

ケリング
(KERING)

グッチ(GUCCI)

OUT:ジャン・フランソワ・パリュ(Jean-Francois Palus)
IN:ステファノ・カンティーノ(Stefano Cantino)

サンローラン(SAINT LAURENT)

 
OUT:フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)
※23年から兼任しているケリングのブランド開発担当副CEO職に専念
IN:セドリック・シャルビ(Cedric Charbit)

バレンシアガ(BALENCIAGA)

OUT:セドリック・シャルビ
IN:ジャンフランコ・ジャナンジェリ(Gianfranco Gianangeli)

クレージュ(COURREGES)

OUT:アドリアン・ダ・マイア(Adrien Da Maia)
IN:マリー・ルブラン(Marie Leblanc)
※同ブランドはフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)の一族の持株会社アルテミス(ARTEMIS)が保有

コンパニー フィナンシエール リシュモン
(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)

OUT:ジェローム・ランバート(Jerome Lambert)
IN:ニコラ・ボス(Nicolas Bos)

カルティエ(CARTIER)

OUT:シリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)
IN:ルイ・フェルラ(Louis Ferla)

ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)

IN:ローラン・ペルヴェ(Laurent Perves)

ジャガー・ルクルト(JAEGER LECOULTRE)

IN:ジェローム・ランバート

▼以下、アルファベット順▼

オールバーズ(ALLBIRDS)

OUT:ジョーイ・ズウィリンガー(Joey Zwillinger)
IN:ジョー・ヴァーナチオ(Joe Vernachio)

バリー(BALLY)

OUT:ニコラ・ジロット(Nicolas Girotto)

バルマン(BALMAIN)

OUT:ジャン・ジャック・ゲヴェル(Jean-Jacques Guevel)
IN:マテオ・スガルボッサ(Matteo Sgarbossa)

バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)

OUT:サンドラ・スタングル(Sandra Stangl)

ベネトン グループ(BENETTON GROUP)

OUT:マッシモ・レノン(Massimo Renon)
IN:クラウディオ・スフォルツァ(Claudio Sforza)

バーバリー(BURBERRY)

OUT:ジョナサン・エイクロイド(Jonathan Akeroyd)
IN:ジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)

ドクターマーチン(DR.MARTENS)

OUT:ケニー・ウィルソン(Kenny Wilson)
IN:イジェ・ンワーコリー(Ije Nwokorie)

ファーフェッチ(FARFETCH)

OUT:ジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)
※現在は親会社クーパン(COUPANG)のボム・キム(Bom Kim)CEOとファーフェッチのエグゼクティブチームが事業を率いている

ガニー(GANNI)

OUT:アンドレア・バルドー(Andrea Baldo)
IN:ローラ・デュ・リュスケック(Laura du Rusquec)

H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)

OUT:ヘレナ・ヘルマーソン(Helena Helmersson)
IN:ダニエル・エルヴェール(Daniel Erver)

ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)

OUT:リズ・フレイザー(Liz Fraser)
IN:エヴァ・アードマン(Eva Erdmann)

リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)

OUT:チップ・バーグ(Chip Bergh)
IN:ミシェル・ガス(Michelle Gass)

マルニ(MARNI)

OUT:バーバラ・カロ(Barbara Calo)
IN:ステファノ・ロッソ(Stefano Rosso)
※親会社OTBが擁する「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の会長職と兼任

マイケル・コース(MICHAEL KORS)

OUT:セドリック・ウィルモット(Cedric Wilmotte)
IN:ジョン・アイドル(John Idol)
※親会社カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)の会長兼CEOと兼任

マルベリー・グループ(MULBERRY GROUP)

OUT:ティエリー・アンドレッタ(Thierry Andretta)
IN:アンドレア・バルドー(Andrea Baldo)

ナイキ(NIKE)

OUT:ジョン・ドナホー(John Donahoe)
IN:エリオット・ヒル(Elliott Hill)

プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)

OUT:ケイ・ホン(Kay Hong)
IN:シーラ・スヴェイケ・スナイダー(Shira Suveyke Snyder)

サロモン(SALOMON)

OUT:フランコ・フォリアート(Franco Fogliato)
IN:ジェームズ・チェン(James Zheng)
※親会社アメアスポーツ(AMER SPORTS)のCEOと暫定的に兼任

トッズ・グループ(TOD’S GROUP)

OUT:ディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)
※会長職に専念
IN:ジョン・ギャランティック(John Galantic)

トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)

OUT:マルタイン・ハグマン(Martijn Hagman)
IN:リー・リッツ・ゴールドマン(Lea Rytz Goldman)

アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)

OUT:ステファニー・リナーツ(Stephanie Linnartz)
IN:ケビン・プランク(Kevin Plank)

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CEOの就任&退任で振り返る2024年 ラグジュアリーブランドなどトップ交代まとめ

2024年は、欧州や中東などで続く地政学上の先行き不透明感に加えて、米国におけるインフレの加速、中国の景気減退などマクロ経済の悪化などの影響により、海外のファッション業界では業績が低迷する企業が続出した。コロナ禍後の爆発的な需要増に支えられていた高級ブランド消費も“正常化”し、ラグジュアリー企業も一部を除いて軒並み減収に。中でも、主力の「グッチ(GUCCI)」の不調が続くケリング(KERING)は苦戦しており、立て直しが急務となっている。こうした経済的な要因のほか、世代交代などの理由により、今年もさまざまな企業で最高経営責任者(CEO)の交代が見られた。ここでは、ラグジュアリー各社をはじめ、主要なブランドにおけるCEOの就任(IN)と退任(OUT)をまとめて振り返る。

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン
(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)

ウオッチ部門

IN:フレデリック・アルノー(Frederic Arnault)
※新設された役職

ワイン&スピリッツ部門

OUT:フィリップ・シャウス(Philippe Schaus)
※グループ内の別の役職に就任予定
IN:ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)

フェンディ(FENDI)

OUT:セルジュ・ブランシュウィッグ(Serge Brunschwig)
IN:ピエール・エマニュエル・アンジェログロウ(Pierre-Emmanuel Angeloglou)

ジバンシィ(GIVENCHY)

OUT:ルノー・ド・レスケン(Renaud de Lesquen)
IN:アレッサンドロ・ヴァレンティ(Alessandro Valenti)

アー・ペー・セー(A.P.C.)

IN:ピエール・アルノー・グレネード(Pierre-Arnaud Grenade)
※同ブランドはLVMH系の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)が保有

ケリング
(KERING)

グッチ(GUCCI)

OUT:ジャン・フランソワ・パリュ(Jean-Francois Palus)
IN:ステファノ・カンティーノ(Stefano Cantino)

サンローラン(SAINT LAURENT)

 
OUT:フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)
※23年から兼任しているケリングのブランド開発担当副CEO職に専念
IN:セドリック・シャルビ(Cedric Charbit)

バレンシアガ(BALENCIAGA)

OUT:セドリック・シャルビ
IN:ジャンフランコ・ジャナンジェリ(Gianfranco Gianangeli)

クレージュ(COURREGES)

OUT:アドリアン・ダ・マイア(Adrien Da Maia)
IN:マリー・ルブラン(Marie Leblanc)
※同ブランドはフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)の一族の持株会社アルテミス(ARTEMIS)が保有

コンパニー フィナンシエール リシュモン
(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)

OUT:ジェローム・ランバート(Jerome Lambert)
IN:ニコラ・ボス(Nicolas Bos)

カルティエ(CARTIER)

OUT:シリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)
IN:ルイ・フェルラ(Louis Ferla)

ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)

IN:ローラン・ペルヴェ(Laurent Perves)

ジャガー・ルクルト(JAEGER LECOULTRE)

IN:ジェローム・ランバート

▼以下、アルファベット順▼

オールバーズ(ALLBIRDS)

OUT:ジョーイ・ズウィリンガー(Joey Zwillinger)
IN:ジョー・ヴァーナチオ(Joe Vernachio)

バリー(BALLY)

OUT:ニコラ・ジロット(Nicolas Girotto)

バルマン(BALMAIN)

OUT:ジャン・ジャック・ゲヴェル(Jean-Jacques Guevel)
IN:マテオ・スガルボッサ(Matteo Sgarbossa)

バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)

OUT:サンドラ・スタングル(Sandra Stangl)

ベネトン グループ(BENETTON GROUP)

OUT:マッシモ・レノン(Massimo Renon)
IN:クラウディオ・スフォルツァ(Claudio Sforza)

バーバリー(BURBERRY)

OUT:ジョナサン・エイクロイド(Jonathan Akeroyd)
IN:ジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)

ドクターマーチン(DR.MARTENS)

OUT:ケニー・ウィルソン(Kenny Wilson)
IN:イジェ・ンワーコリー(Ije Nwokorie)

ファーフェッチ(FARFETCH)

OUT:ジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)
※現在は親会社クーパン(COUPANG)のボム・キム(Bom Kim)CEOとファーフェッチのエグゼクティブチームが事業を率いている

ガニー(GANNI)

OUT:アンドレア・バルドー(Andrea Baldo)
IN:ローラ・デュ・リュスケック(Laura du Rusquec)

H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)

OUT:ヘレナ・ヘルマーソン(Helena Helmersson)
IN:ダニエル・エルヴェール(Daniel Erver)

ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)

OUT:リズ・フレイザー(Liz Fraser)
IN:エヴァ・アードマン(Eva Erdmann)

リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)

OUT:チップ・バーグ(Chip Bergh)
IN:ミシェル・ガス(Michelle Gass)

マルニ(MARNI)

OUT:バーバラ・カロ(Barbara Calo)
IN:ステファノ・ロッソ(Stefano Rosso)
※親会社OTBが擁する「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の会長職と兼任

マイケル・コース(MICHAEL KORS)

OUT:セドリック・ウィルモット(Cedric Wilmotte)
IN:ジョン・アイドル(John Idol)
※親会社カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)の会長兼CEOと兼任

マルベリー・グループ(MULBERRY GROUP)

OUT:ティエリー・アンドレッタ(Thierry Andretta)
IN:アンドレア・バルドー(Andrea Baldo)

ナイキ(NIKE)

OUT:ジョン・ドナホー(John Donahoe)
IN:エリオット・ヒル(Elliott Hill)

プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)

OUT:ケイ・ホン(Kay Hong)
IN:シーラ・スヴェイケ・スナイダー(Shira Suveyke Snyder)

サロモン(SALOMON)

OUT:フランコ・フォリアート(Franco Fogliato)
IN:ジェームズ・チェン(James Zheng)
※親会社アメアスポーツ(AMER SPORTS)のCEOと暫定的に兼任

トッズ・グループ(TOD’S GROUP)

OUT:ディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)
※会長職に専念
IN:ジョン・ギャランティック(John Galantic)

トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)

OUT:マルタイン・ハグマン(Martijn Hagman)
IN:リー・リッツ・ゴールドマン(Lea Rytz Goldman)

アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)

OUT:ステファニー・リナーツ(Stephanie Linnartz)
IN:ケビン・プランク(Kevin Plank)

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【総括:2024】中国は「ラグジュアリー失速」「AI制作コンテンツ」「越境EC新兵器」「POPMART株の爆騰」

世界第2位の経済大国となった中国は、生産拠点、マーケット、そしてイノベーション・トレンドの参照軸として見逃すことはできない存在だ。中国専門ジャーナリストの高口康太が、2024年のホットトレンドをファッション&ビューティと小売りの視点からまとめてお届けする。

中国ラグジュアリー市場の失速

2024年は中国ラグジュアリー市場の減速が注目された。LVMH、ケリング、バーバリーなど国際ラグジュアリー大手の中国市場における低迷が注目されているが、それだけではない。

最初にネガティブ・トレンドに突入したのが高級時計の「ロレックス」だ。高級時計情報サイト「ウォッチチャート(WatchCharts)」のロレックス・インデックス・バリューを見ると、2022年3月に3万ドルの最高値をつけた後に下落が始まり、直近では2万ドルにまで落ち込んでいる。当時はまだ他のラグジュアリーは堅調で「ロレックス」だけが下落していたため、「コロナで建設プロジェクトがストップしたため、賄賂に使われるロレックスの価値が下落した」という珍説も聞かれた。その後、女性向けのラグジュアリーや宝飾品などに影響は拡大している。

意外なところでは中国を代表する高級酒マオタイ酒の価格も下がっている。新酒二次流通価格は今年初頭の2700人民元(約5万8000円)から現在では2000人民元(約4万3000円)にまで下落した。ロレックス同様、時間が経てば値上がりする投資商品として扱われていたため、これ以上価格が下落すれば投資家の投げ売りが始まるのではとの不安が広がっている。転売目当てで購入されていた商品は、今後も価格調整が続きそうだ。

AIGCが変える中国のマーケティング

AIGCとはAI Generated Content(人工知能が作ったコンテンツ)の略語だ。テキスト、画像、動画、音楽などのコンテンツがAIによって短時間ローコストで作り出せる世界が到来している。日本でも活用が進むが、中国の歩みは少し異なる。

そもそも、中国のマーケティングは既存メディアからインフルエンサーやKOC(キー・オピニオン・コンシューマー、発信力のある消費者)の口コミへと大きく転換していた。いわゆるUGC(User Generated Content、ユーザーが作ったコンテンツ)だが、ここにAIが入り込みつつあるのだ。

低コストでもプロ並みの美しい画像や動画が作成できるようになったという正しい道もあれば、商品をほめたたえる書き込みをAIで粗製濫造する、動画を加工しロシア美女インフルエンサーと偽って宣伝を行うという悪の道まで振れ幅は大きい。報道によると、たったの2元(約40円)でロシア美女の顔は買えるのだとか。おじさんが40円で美女の顔を購入し、「中国人の男の人ってステキ」などとコメントを添えてSNSに投稿してファンを集めて行くという新時代が到来しているのだ。

実は中国は世界に先駆けてAI規制、ディープフェイク規制を法制化している。AIが作ったコンテンツにはマークをつけて明示すること、国民IDによる認証がサービス利用の前提になるなどの規制を設けているが、現時点では抑止力とはなっていない。

インフルエンサーとKOCを中心に組み立てられてきた中国マーケティングの世界が、AIによって大きく塗り替えられることは間違いなさそうだ。

アリババが銀泰百貨(インタイム)を売却

インタイム(銀泰百貨)は1998年、浙江省杭州市で創業した百貨店チェーン。2017年にEC大手アリババグループに買収された。その後は、デジタル技術で小売業のアップグレードを目指す「新小売」の旗手として活躍する。対面販売とECの統合、特典でロイヤルカスタマーを集める有料会員制度、アプリによる顧客との接点確保、D2Cブランドと海外ブランドの「中国初オフライン店舗」の積極招致、売り場からのライブコマース販売などの施策を次々打ちだし、中国のみならず、日本の小売業関係者からも注目される存在となった。

ところが12月、アリババはインタイムを売却した。インタイムの業績は非公開で経営状況は明らかになっていないが、取得費用の半額以下となる74億元(約1590億円)で売却したことを考えると、厳しい状況に置かれていたことは間違いなさそうだ。

ただし、売却の理由はアリババの戦略転換にある。小売業を革新する「新小売」を断念し、祖業のECに集約する方針を打ち出している。今年3月には中小店舗向けのB2Bプラットフォーム「LST」も停止。スーパーチェーンのフーマーフレッシュやサンアートも売却対象と噂されている。

コロナの流行や中国経済の低迷といった外部環境の変化があるとはいえ、デジタル技術で既存産業が変革する、壮大な未来図を描いたアリババの大戦略が静かに終焉を迎えたことには一抹の寂しさも禁じ得ない。

「TEMU」などの中国越境EC、新トレンドは「海外倉庫」

中国発の越境ECプラットフォームといえば、「普通のネットショッピングよりも配送時間がかかるがともかく安い」がこれまでの相場だったのだが、状況が変わりはじめている。大手越境ECプラットフォームの「TEMU」を見ると、一部の商品には「国内配送」のタグがついており、最短で1営業日で配送される。

よりスピーディーに配送するために海外倉庫に在庫を置くトレンドが広がっているのだ。今年6月には中国政府は「越境EC輸出開拓に関する海外倉庫建設推進に関する意見」という政策文書を発表し、海外倉庫の拡充を国としても推進している。越境ECとは異なり関税を支払う必要はあるものの、スピーディーに配送できるのが強みだ。また、郵便や宅配便では扱えない家具やマッサージ椅子などの大型商品も扱うことができる。

中国国営テレビ局CCTVの今年9月の報道によると、すでに全世界に2500以上もの海外倉庫が運用されている。プラットフォーム企業が倉庫を持つケースもあれば、メーカーが独自に倉庫を持つケースもあるという。報道ではショベルカーやロードローラーなどを製造する重機メーカーまでもが、海外倉庫を使った越境ECに取り組んでいることが紹介されている。

販売サイトは中国だが、在庫は日本に置いている。このケースを越境ECと言っていいのかどうか、定義すらあいまいになるほどの変化だが、アパレルやコスメ、プラスチック製品などの“軽いもの“中心だった越境ECが、海外倉庫によってカバーする範囲を大きく広げることになりそうだ。

中国発フィギュア「POPMART」株が爆騰、時価総額は2.4兆円に

中国発のフィギュア企業「ポップマート」の成長がすさまじい。株価は年初から4倍以上に高騰し、直近の時価総額は1170億香港ドル(約2兆4000億円)に達した。あの好調サンリオでさえ1兆3000億円で、今年8月に「時価総額でサンリオに肉薄」という記事を書いただが、それから4カ月で追い抜くどころか、1兆円以上も差をつけている。

株価が上げ潮の要因は、海外事業の好調さにある。特にタイを中心とした東南アジアでは、韓国ガールズグループ「BLACKPINK」のリサがインスタグラムで紹介したことで爆発的な人気になったという。8月記事の取材では「2023年は日韓、2024年は東南アジアが主要ターゲット」と聞いていた。その時点ですでに東南アジアで一定の知名度を得ていたが、ブラックピンクの投稿で最後の仕上げに成功したということなのだろう。

世界的スターの投稿でバズらせたように見えるが、着実なマーケティングの勝利というわけだ。

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箱根駅伝だけがなぜ特別? 有識者が語る、“厚底旋風”以降の箱根とシューズの関係

PROFILE: 藤原岳久/FS☆ランニング代表

藤原岳久/FS☆ランニング代表
PROFILE: (ふじわら・たけひさ):1971年1月3日(箱根の復路!)生まれ、神奈川県出身。箱根駅伝出場を目指して東海大学に入学し、陸上部に所属。大学卒業後に営業職として就職し、その後1年間ニュージーランドに滞在。現地でのランニング体験が忘れられず、帰国後はナイキ、アシックス、ニューバランスでシューズの販売員を経験。2013年に独立し、シューズ選びや走り方のコンサルタント、スポーツシューフィッター講師などとして活躍中 PHOTO:KAZUO YOSHIDA

年が明けたら、1月2、3日は箱根駅伝!選手の活躍はもちろん、近年は選手がどのブランドのどんなランニングシューズを履いているかも、メディアやSNSで大きな話題を呼ぶ。箱根路の神奈川・平塚でシューズ選びのコンサルタントをしている藤原岳久FS☆ランニング代表は、ここ10年ほど選手の着用シューズをブランド別に計測・分析しており、ランニング業界ではよく知られた人物。藤原代表に、近年の各社の傾向と2025年のシューズ争いの行方を聞いた。

WWD:藤原代表は箱根駅伝の選手のシューズ動向について、「アルペン グループ マガジン」上などで毎年分析をしている。他はどういった活動をしているのか。

藤原岳久FS☆ランニング代表(以下、藤原):もともとスポーツメーカーでランニングシューズの販売員をしており、独立後は平塚で、ランニングシューズの選び方や走り方のコンサルタントをしている。YouTubeやnoteでランニング業界の動向やシューズの新製品についての発信もしているほか、スポーツシューフィッターという資格講座の講師も10年ほど務めている。

箱根の選手の着用シューズを計測し始めたのは10年ほど前から。地元である往路の3、4区と、復路の7、8区を妻と手分けして現場で見て、それ以外はテレビ中継で計測。10年前は計測している人はわれわれ以外にあまりいなかった印象だが、17年に「ナイキ(NIKE)」が“ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%”を発売し、21年に箱根での「ナイキ」着用率が95.7%を記録したあたりから、急激にシューズに着目する人が増えたように感じる。

WWD:21年の「ナイキ」厚底シューズ旋風は一般メディアでも大きく取り上げられた。まずはおさらいとして、「ナイキ」のシューズは何がすごかったのか。

藤原:「ナイキ」は速く走るという概念自体を変えた。それまでの薄底のシューズは接地感覚があって、自身の力を地面に伝えられる選手が速く走れるもの。一方、厚底のカーボンプレート入りシューズは、走り方や道具(シューズ)に対する考え方、接地感覚などが従来とは全く違うものだ。衝撃を受けた競合各社は、「ナイキ」の速く走るためのロジックを後追いで研究。まずは模倣から始め、徐々に個性あるシューズや素材の開発を進めてきた。

厚底のカーボン入りシューズが広がったことで、選手のランニングフォームはダイナミックになった。以前は独特な走り方をする有力選手もおり、それも個性だったが、スーパーシューズは靴に合わせた走り方が要求されるため、フォームの個性は無くなってきたと感じる。ケガもしやすくなった。それらはスーパーシューズの功罪の罪の部分だ。一方で、一昔前と比べて駅伝は非常に高速化している。世界で戦える選手の土壌ができてきたというのは、間違いなく功の部分だ。

「『アディダス』が
一歩抜きん出ている印象」

WWD:開発競争激化の中で、「ナイキ」は21年をピークに徐々にシェアを落としつつ、24年も着用率は42.6%で首位を維持した。ズバリ、25年のブランド別の着用率はどうなると予想するか。

藤原:「アディダス(ADIDAS)」「アシックス(ASICS)」「ナイキ」がそれぞれ30%前後となるんじゃないかと見ている。もしかしたら、「ナイキ」は一気に三番手になるかもしれない。各社拮抗しているが、個人的にはシリーズ最軽量を実現した“アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1”を開発した「アディダス」が一歩抜きん出ている印象だ。三つ巴の次が「プーマ(PUMA)」。「プーマ」は学生とのコミュニケーションを深めており、ブランドがサポート契約している大学の選手は皆他社のシューズに浮気せず、「プーマ」を履きそうだといった噂も耳にしている。その次は昨年、全230人の出場選手の中、3人の着用者が出た「オン(ON)」と予想。「オン」は、どの区間でも誰かしらが履いているといったレベルのサプライズを起こすかもしれない。ただし、最終的に験担ぎを重視してシューズを決める選手もいるし、予想はあくまで予想だ。

WWD:箱根で選手に履いてもらうために、ブランド側はどのような取り組みをしているのか。

藤原:日本では箱根に合わせて11〜12月にシューズの新モデルを発売するブランドが多いが、選手は夏合宿の段階でいいと思わなければ履いてくれない。そのために、ブランド側の仕込みは春ごろから始まる。大学の合宿所を行脚してとにかく試着してもらう。例えば「プーマ」は、学生の夏の合宿のメッカである菅平高原(長野)に、無料で利用できるリカバリーステーションを24年夏に開設したが、それも学生と接点を広げるのが狙い。シューズは提供するが、学生とブランドとの間にお金のやり取りはなく、お金が発生するのはブランドが大学陸上部に対してサポート契約を結んでいるケース。その場合はブランドが大学側に強化費を支払う。そのように大学とブランドが契約していても、レースでどこのブランドのシューズを履くかの選択権は選手にある。

WWD:箱根駅伝は、シューズについての決まりごとなどはあるのか。

藤原:五輪や世界陸上では、世界陸連(ワールドアスレティックス)のシューズ規則に則ったシューズしか履くことができない。一般向けに発売している製品で、世界陸連に登録しているシューズでないとダメ、といったものだ。しかし、箱根は世界陸連の規制の範囲外であり、それゆえまだ発売されていないプロトタイプ(試作品)を履いた選手が多数登場する。“プロトタイプ天国”というのも、箱根駅伝の側面の一つ。メーカーにとってのテストの場であり、プロトタイプを履かせてもらえることに気概を持って走っている選手ももちろんいる。メーカー側はプロトタイプを提供していることがあからさまになることに配慮してか、プロトタイプであっても色合いやデザインを発売済みのモデルとあえて似せて、見分けがつきにくくしていることもある。

「市民ランナーは
ソール60ミリが当たり前になる」

WWD:箱根には規制が適用されないとのことだが、なぜ世界陸連は「一般発売している製品でないといけない」などのシューズ規制を設けているのか。

藤原:「ナイキ」が17年に“ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%”を発売する前年の16年のリオ五輪で、ケニアのキプチョゲ選手ら有力選手が「ナイキ」のプロトタイプで出走し、キプチョゲ選手は男子マラソンで金メダルに輝いた。その後、20年に予定されていた東京五輪に向けて規制の議論が活発化した流れだ。一般販売していないプロトタイプでは、入手できる選手とできない選手とで不公平になってしまう。厚底やカーボンプレートについても、水着の“レーザーレーサー”のように可否が議論されたが、結果的にロードランではソールの厚さが40ミリまで、プレート1枚までならば世界陸連はオッケーとした。

ただし、規制があると発想やデザインは画一的になりがち。がんじがらめの規制を破ってランナーの可能性を広げるという意気込みで、世界陸連の規制外のスーパーシューズを作っているブランドもある。そもそも、大会で優勝や入賞に関わらない市民ランナーならば、どんな靴を履いていたって問題はない。将来的には市民ランナーは、ソール60ミリ前後のクッション性が非常に大きいシューズを履くようになるんじゃないかと僕は思っている。有力選手の履くシューズだけが規制に縛られ、かごの鳥であるというように見ることもできる。

WWD:話を箱根に戻すと、学生駅伝には出雲(10月)や全日本(11月)もあるが、一般知名度は箱根だけが段違いだ。何が違うのか。

藤原:日本人初の五輪マラソン選手であり、日本マラソンの功労者の金栗四三が考案して1920年に始まったのが箱根駅伝だ。ただ、箱根はあくまで関東地方のローカル大会で、87年にテレビ中継が開始されるまではそこまでの注目度はなかったと認識している。テレビ中継以降は人気が異常に高まって、高校ラグビーの選手が花園を目指すように、全国から有力選手が関東ローカル大会の箱根に集まってくるようになった。人気や注目度の高さゆえ、ブランドは箱根の出場選手にマーケティングの照準を合わせる。出雲や全日本で選手の着用シューズを計測すると、箱根の結果とは結構違っており、市民ランナーの着用率と近い。それは、関東以外の大学の選手は箱根の出場機会がないため、ブランドからシューズの提供を受けるといったことがなく、自分でシューズを買っているケースが多いからだ。

海外に目を向けると、アフリカや米欧の有力選手は、大学の段階ではシニアのステージに向けて無理せず準備をしているということも多い。一方で、日本は箱根で良くも悪くもかなり注目されてしまう。テレビで特番が組まれ、ブランドからシューズが提供され、選手を推す“駅女(エキジョ)”から黄色い声援も飛んでくる。選手にかかるプレッシャーはかなり大きい。箱根があれだけ盛り上がるのに、シニアで有力な結果を残す選手がそれほどは出てこないというのは、箱根以上の舞台がなかなか見つからないという面もあるのかもしれない。

「もっと気軽に走ることを楽しんで」

WWD:選手が箱根で履いたシューズは、実際に市民ランナーにも売れるのか。

藤原:箱根が終わると、スポーツ量販店では選手の履いていたシューズが売れるし、それを履いて普段のジョギングをしている市民ランナーをここ平塚ではよく見掛ける。レース用のスーパーシューズは耐久性もないため、ジョグで使うのはもったいないし、うまく走ることもできないと思う。僕自身もトレーニングでスーパーシューズは選ばない。ちゃんと自分のレベルに合ったシューズを選んでもらうため、ブランド側は駅伝向けパックとして発売する製品群にトレーニングシューズを含めている。色やデザインは選手用のレースシューズと似せることで、同じ気分を味わえるように工夫している。

WWD:選手が箱根の主役であることは大前提だが、改めてシューズを切り口にした箱根観戦の楽しみ方や、ランニングへの取り組み方などについて教えてほしい。

藤原:選手が履くシューズのために開発された最先端技術は、ゆくゆくは必ず一般向けのシューズに落とし込まれていく。ランナーではない人が履いている普段履きスニーカーのソールのフォーム素材が、実はスーパーシューズ用に開発されたものだった、ということがあり得る。誰もが必ず技術を満喫する日が訪れるので、無関係ではない。そう思って箱根の選手たちのシューズを観察すると、これまでとは違う興味もわいてくるのでは。

皆さんにはもっと気軽に走ることを楽しんでほしい。日本人は走るとなったらいきなりフルマラソン!という感じで、走ることのハードルが高い。5キロメートルの大会なら、練習不要で多くの人が明日にでも完走できるが、5キロの大会に出ることがどうも共感されづらいのが日本。24年の東京マラソンの参加人数は約3万7000人だったが、ぜひ6万人規模の大会になっていってほしいし、5キロの部も設けてほしい。ゴール地点をフルマラソンと同じに設定した5キロだったら、応援に来た人が思わず走ってしまうなんてことがあると思う。走ること自体は心にも体にもとてもいい。僕自身が、日々それを深く実感している。ランニングが選手や一部の人だけのものではなく、草の根のカルチャーとして日本に根付いていけばいいなと思っている。

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PROFILE: 藤原岳久/FS☆ランニング代表

藤原岳久/FS☆ランニング代表
PROFILE: (ふじわら・たけひさ):1971年1月3日(箱根の復路!)生まれ、神奈川県出身。箱根駅伝出場を目指して東海大学に入学し、陸上部に所属。大学卒業後に営業職として就職し、その後1年間ニュージーランドに滞在。現地でのランニング体験が忘れられず、帰国後はナイキ、アシックス、ニューバランスでシューズの販売員を経験。2013年に独立し、シューズ選びや走り方のコンサルタント、スポーツシューフィッター講師などとして活躍中 PHOTO:KAZUO YOSHIDA

年が明けたら、1月2、3日は箱根駅伝!選手の活躍はもちろん、近年は選手がどのブランドのどんなランニングシューズを履いているかも、メディアやSNSで大きな話題を呼ぶ。箱根路の神奈川・平塚でシューズ選びのコンサルタントをしている藤原岳久FS☆ランニング代表は、ここ10年ほど選手の着用シューズをブランド別に計測・分析しており、ランニング業界ではよく知られた人物。藤原代表に、近年の各社の傾向と2025年のシューズ争いの行方を聞いた。

WWD:藤原代表は箱根駅伝の選手のシューズ動向について、「アルペン グループ マガジン」上などで毎年分析をしている。他はどういった活動をしているのか。

藤原岳久FS☆ランニング代表(以下、藤原):もともとスポーツメーカーでランニングシューズの販売員をしており、独立後は平塚で、ランニングシューズの選び方や走り方のコンサルタントをしている。YouTubeやnoteでランニング業界の動向やシューズの新製品についての発信もしているほか、スポーツシューフィッターという資格講座の講師も10年ほど務めている。

箱根の選手の着用シューズを計測し始めたのは10年ほど前から。地元である往路の3、4区と、復路の7、8区を妻と手分けして現場で見て、それ以外はテレビ中継で計測。10年前は計測している人はわれわれ以外にあまりいなかった印象だが、17年に「ナイキ(NIKE)」が“ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%”を発売し、21年に箱根での「ナイキ」着用率が95.7%を記録したあたりから、急激にシューズに着目する人が増えたように感じる。

WWD:21年の「ナイキ」厚底シューズ旋風は一般メディアでも大きく取り上げられた。まずはおさらいとして、「ナイキ」のシューズは何がすごかったのか。

藤原:「ナイキ」は速く走るという概念自体を変えた。それまでの薄底のシューズは接地感覚があって、自身の力を地面に伝えられる選手が速く走れるもの。一方、厚底のカーボンプレート入りシューズは、走り方や道具(シューズ)に対する考え方、接地感覚などが従来とは全く違うものだ。衝撃を受けた競合各社は、「ナイキ」の速く走るためのロジックを後追いで研究。まずは模倣から始め、徐々に個性あるシューズや素材の開発を進めてきた。

厚底のカーボン入りシューズが広がったことで、選手のランニングフォームはダイナミックになった。以前は独特な走り方をする有力選手もおり、それも個性だったが、スーパーシューズは靴に合わせた走り方が要求されるため、フォームの個性は無くなってきたと感じる。ケガもしやすくなった。それらはスーパーシューズの功罪の罪の部分だ。一方で、一昔前と比べて駅伝は非常に高速化している。世界で戦える選手の土壌ができてきたというのは、間違いなく功の部分だ。

「『アディダス』が
一歩抜きん出ている印象」

WWD:開発競争激化の中で、「ナイキ」は21年をピークに徐々にシェアを落としつつ、24年も着用率は42.6%で首位を維持した。ズバリ、25年のブランド別の着用率はどうなると予想するか。

藤原:「アディダス(ADIDAS)」「アシックス(ASICS)」「ナイキ」がそれぞれ30%前後となるんじゃないかと見ている。もしかしたら、「ナイキ」は一気に三番手になるかもしれない。各社拮抗しているが、個人的にはシリーズ最軽量を実現した“アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1”を開発した「アディダス」が一歩抜きん出ている印象だ。三つ巴の次が「プーマ(PUMA)」。「プーマ」は学生とのコミュニケーションを深めており、ブランドがサポート契約している大学の選手は皆他社のシューズに浮気せず、「プーマ」を履きそうだといった噂も耳にしている。その次は昨年、全230人の出場選手の中、3人の着用者が出た「オン(ON)」と予想。「オン」は、どの区間でも誰かしらが履いているといったレベルのサプライズを起こすかもしれない。ただし、最終的に験担ぎを重視してシューズを決める選手もいるし、予想はあくまで予想だ。

WWD:箱根で選手に履いてもらうために、ブランド側はどのような取り組みをしているのか。

藤原:日本では箱根に合わせて11〜12月にシューズの新モデルを発売するブランドが多いが、選手は夏合宿の段階でいいと思わなければ履いてくれない。そのために、ブランド側の仕込みは春ごろから始まる。大学の合宿所を行脚してとにかく試着してもらう。例えば「プーマ」は、学生の夏の合宿のメッカである菅平高原(長野)に、無料で利用できるリカバリーステーションを24年夏に開設したが、それも学生と接点を広げるのが狙い。シューズは提供するが、学生とブランドとの間にお金のやり取りはなく、お金が発生するのはブランドが大学陸上部に対してサポート契約を結んでいるケース。その場合はブランドが大学側に強化費を支払う。そのように大学とブランドが契約していても、レースでどこのブランドのシューズを履くかの選択権は選手にある。

WWD:箱根駅伝は、シューズについての決まりごとなどはあるのか。

藤原:五輪や世界陸上では、世界陸連(ワールドアスレティックス)のシューズ規則に則ったシューズしか履くことができない。一般向けに発売している製品で、世界陸連に登録しているシューズでないとダメ、といったものだ。しかし、箱根は世界陸連の規制の範囲外であり、それゆえまだ発売されていないプロトタイプ(試作品)を履いた選手が多数登場する。“プロトタイプ天国”というのも、箱根駅伝の側面の一つ。メーカーにとってのテストの場であり、プロトタイプを履かせてもらえることに気概を持って走っている選手ももちろんいる。メーカー側はプロトタイプを提供していることがあからさまになることに配慮してか、プロトタイプであっても色合いやデザインを発売済みのモデルとあえて似せて、見分けがつきにくくしていることもある。

「市民ランナーは
ソール60ミリが当たり前になる」

WWD:箱根には規制が適用されないとのことだが、なぜ世界陸連は「一般発売している製品でないといけない」などのシューズ規制を設けているのか。

藤原:「ナイキ」が17年に“ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%”を発売する前年の16年のリオ五輪で、ケニアのキプチョゲ選手ら有力選手が「ナイキ」のプロトタイプで出走し、キプチョゲ選手は男子マラソンで金メダルに輝いた。その後、20年に予定されていた東京五輪に向けて規制の議論が活発化した流れだ。一般販売していないプロトタイプでは、入手できる選手とできない選手とで不公平になってしまう。厚底やカーボンプレートについても、水着の“レーザーレーサー”のように可否が議論されたが、結果的にロードランではソールの厚さが40ミリまで、プレート1枚までならば世界陸連はオッケーとした。

ただし、規制があると発想やデザインは画一的になりがち。がんじがらめの規制を破ってランナーの可能性を広げるという意気込みで、世界陸連の規制外のスーパーシューズを作っているブランドもある。そもそも、大会で優勝や入賞に関わらない市民ランナーならば、どんな靴を履いていたって問題はない。将来的には市民ランナーは、ソール60ミリ前後のクッション性が非常に大きいシューズを履くようになるんじゃないかと僕は思っている。有力選手の履くシューズだけが規制に縛られ、かごの鳥であるというように見ることもできる。

WWD:話を箱根に戻すと、学生駅伝には出雲(10月)や全日本(11月)もあるが、一般知名度は箱根だけが段違いだ。何が違うのか。

藤原:日本人初の五輪マラソン選手であり、日本マラソンの功労者の金栗四三が考案して1920年に始まったのが箱根駅伝だ。ただ、箱根はあくまで関東地方のローカル大会で、87年にテレビ中継が開始されるまではそこまでの注目度はなかったと認識している。テレビ中継以降は人気が異常に高まって、高校ラグビーの選手が花園を目指すように、全国から有力選手が関東ローカル大会の箱根に集まってくるようになった。人気や注目度の高さゆえ、ブランドは箱根の出場選手にマーケティングの照準を合わせる。出雲や全日本で選手の着用シューズを計測すると、箱根の結果とは結構違っており、市民ランナーの着用率と近い。それは、関東以外の大学の選手は箱根の出場機会がないため、ブランドからシューズの提供を受けるといったことがなく、自分でシューズを買っているケースが多いからだ。

海外に目を向けると、アフリカや米欧の有力選手は、大学の段階ではシニアのステージに向けて無理せず準備をしているということも多い。一方で、日本は箱根で良くも悪くもかなり注目されてしまう。テレビで特番が組まれ、ブランドからシューズが提供され、選手を推す“駅女(エキジョ)”から黄色い声援も飛んでくる。選手にかかるプレッシャーはかなり大きい。箱根があれだけ盛り上がるのに、シニアで有力な結果を残す選手がそれほどは出てこないというのは、箱根以上の舞台がなかなか見つからないという面もあるのかもしれない。

「もっと気軽に走ることを楽しんで」

WWD:選手が箱根で履いたシューズは、実際に市民ランナーにも売れるのか。

藤原:箱根が終わると、スポーツ量販店では選手の履いていたシューズが売れるし、それを履いて普段のジョギングをしている市民ランナーをここ平塚ではよく見掛ける。レース用のスーパーシューズは耐久性もないため、ジョグで使うのはもったいないし、うまく走ることもできないと思う。僕自身もトレーニングでスーパーシューズは選ばない。ちゃんと自分のレベルに合ったシューズを選んでもらうため、ブランド側は駅伝向けパックとして発売する製品群にトレーニングシューズを含めている。色やデザインは選手用のレースシューズと似せることで、同じ気分を味わえるように工夫している。

WWD:選手が箱根の主役であることは大前提だが、改めてシューズを切り口にした箱根観戦の楽しみ方や、ランニングへの取り組み方などについて教えてほしい。

藤原:選手が履くシューズのために開発された最先端技術は、ゆくゆくは必ず一般向けのシューズに落とし込まれていく。ランナーではない人が履いている普段履きスニーカーのソールのフォーム素材が、実はスーパーシューズ用に開発されたものだった、ということがあり得る。誰もが必ず技術を満喫する日が訪れるので、無関係ではない。そう思って箱根の選手たちのシューズを観察すると、これまでとは違う興味もわいてくるのでは。

皆さんにはもっと気軽に走ることを楽しんでほしい。日本人は走るとなったらいきなりフルマラソン!という感じで、走ることのハードルが高い。5キロメートルの大会なら、練習不要で多くの人が明日にでも完走できるが、5キロの大会に出ることがどうも共感されづらいのが日本。24年の東京マラソンの参加人数は約3万7000人だったが、ぜひ6万人規模の大会になっていってほしいし、5キロの部も設けてほしい。ゴール地点をフルマラソンと同じに設定した5キロだったら、応援に来た人が思わず走ってしまうなんてことがあると思う。走ること自体は心にも体にもとてもいい。僕自身が、日々それを深く実感している。ランニングが選手や一部の人だけのものではなく、草の根のカルチャーとして日本に根付いていけばいいなと思っている。

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早稲田大学繊維研究会がファッションショーを開催 「みえないものをみるとき」

1949年創立の国内最古のファッションサークル、早稲田大学繊維研究会がファッションショーを実現させるまでの道のりを全4回の連載で紹介する。最終回では、代表の井上航平さんと、小山萌恵さんが12月22日に代官山ヒルサイドプラザで開催したショーを振り返る。

WWD:コンセプト「みえないものをみるとき」に沿ってショーを作り上げた。

小山萌恵(以下、小山):今回のショーは19人の服造(ルックを製作する部門)による25ルックを発表しました。シアー素材や光を反射する素材を多用することで、今回のコンセプトの世界観を作り出しつつ、一つ一つのルックをコンセプトから設けたテーマの上にデザインしています。

WWD:井上さんが製作したルックは?

井上:2ルック製作し、1ルック目は実験音楽家であるジョン・ケージの代表曲「4分33秒」をモチーフに作りました。この楽曲の譜面は4分33秒間の休符のみで構成されており、4分33秒間無音が続くということを意味します。演奏会では、聴衆が「作られた無音」に耳を澄ますことで、逆に聴衆自らから発せられる音に意識が向く、いわば主体と客体の逆転現象が発生します。この「聴覚を通しての逆転現象」を視覚に置き換えることに取り組んだのが今回のルックです。このルックでは前後に鏡を配することで、モデルを見ていたはずなのにいつの間にかそこに映る自分の姿を見ていた、という現象の誘起を試みました。

WWD:2ルック目はルネ・マグリットの作品「世界大戦」をモチーフにした。

井上:マグリットは作品内で、まさに今回のテーマである「みえないもの」に取り組んできました。「世界大戦」は、一見すると青空の下で日傘をさす貴婦人の姿が描かれた美しい作品ですが、彼女の顔はなぜか急に現れたスミレの花束で隠されており、表情が判然とせず、どこか不穏な空気が漂います。「あえて隠す」部分を含んだ絵画作品は数あれど、この作品のように文脈を無視した全くの別レイヤーのモチーフで覆い隠す作品はそう多くはありません(普通であれば、この貴婦人に顔の前で花束を持たせて表情を見えないようにするはずです)。この手法によって、より「みえない度」は高まり鑑賞者による想像の幅の拡大に成功しています。今回はこの作品のように、どこか不穏な美しさを表現すべく、全身白のドレスを制作しました。前面にはフリルフラワーを100個近く取り付けることで華やかさを表現した一方、肩パッドを6個重ねて生み出したパワーショルダーで不穏さを表しました。

WWD:小山さんの1ルック目は?

小山:タイトルは「but I can hug you」という作品です。「みえないもの」として表面からはみえない、計り知れない他者の痛みにフォーカスしています。他者が抱える痛みを理解し尽くすことの難しさと、それでも相手を分かりたいと思うこと、相手の影の面まで知りたいと思うことの美しさ、そしてそのような感情があふれたとき私たちが衝動的に取ってしまう行動であると共に、私たちに取り得る最大の行動とも考える「抱擁」をテーマとしています。抱擁したときの、言葉では語り尽くせない心の深層が体温を通して伝達するイメージ、また抱擁によって痛みが融解されるイメージを、「氷染め」という染色手法で表現することを試みました。氷の上に複数の色の染料をまぶし、氷がゆっくりと解けていくことで染料が混ざり合って、じんわりとまだらに生地が染まっていく、過程そのものも含めてテーマを落とし込んでいます。

WWD:もう一つのルックタイトルは「that afterimage」。

小山:大切な人を失ったあとの残像をテーマとしており、複数の「喪失と再生」が主題の作品などがインスピレーションにありつつ、最大のデザインモチーフとなったのはバンド「フィッシュマンズ」のとあるライブ映像です。

80年代結成のフィッシュマンズはフロントマンであったボーカルの佐藤伸治が活動の最中で急逝してしまいます。約6年の活動休止を経て2005年バンドは佐藤不在のフィッシュマンズを再開する決断を下し、以来現在に至るまでさまざまな方法で「佐藤不在のフィッシュマンズ」を音楽的に意義あるかたちで続け、ライブを通して多くの人の心を震わせ続けています。再開後のライブ映像を見て、激しくドラムを叩きながら佐藤に代わって歌まで歌唱するドラマーの茂木欣一の姿から感じた悲壮感の中の覚悟や、そのとき印象的だった一点だけ簡素に光る照明が星になった佐藤のように捉えられたこと、そして、亡き人の軌跡が残された者の中で息づき続けるイメージを、胸元中心の星のような刺繍とそこから広がるように施したギャザーで表現しました。

WWD:小山さんがルックブックの装丁デザインを手掛けた。

小山:表紙に冠したモチーフは「」です。本来何かが介入されるはずの「」の間に何もない、という部分で、これから始まるのはみえないものを見出すことについてのショーである、というスタンスをはじめに表明する意図を込めています。“ない”方の部分を想像させることを誘発したいという思惑で、かぎかっこは写真を切り抜くことで描いています。さらに透明の素材で本冊にカバーをかけているのですが、こちらはそれ以外の全面に白のプリントを施すことで逆説的にかぎかっこを浮かび上がらせ“余白で描く”ことをここでも再現しました。本体のかっこの位置とあえてずらして配置することで、焦点が合わないけれど主体的に合わせようとする思考の動きを促せたら、と考えた装丁になります。タイトルなどのテキストはシルバーでプリントし、角度によって煌めくところもこだわりです。

WWD:ルックブックの中身のこだわりは?

井上:視覚上・触覚上での楽しさを重視し、ルックブックの内部には、ベースとなる厚めのマット紙に加えてポイント使いで2種類の素材を採用しました。水面や鏡など、反射をテーマにした写真の前に透明PET素材を挟み込むことによって、鋭すぎない、水面のような柔らかな反射を可能にしつつ、触覚上での変化を生み出しました。連続した動きのうち2つを切り取ったスナップショット的なページを並べ、その2ページを半透明のトレーシングペーパーに印刷することで、ページをめくる毎に被写体が動いて見える、パラパラ漫画のような仕組みを取り入れました。

WWD:会場の演出にも注力した。

井上:今回はテーマの「透き間」を生かした空間づくりに注力しました。三次元的なランウェイを作りたかったため、2フロア構成の代官山ヒルサイドプラザを会場に選びました。初の試みとして、壁2面へのオープニング映像を投影しました。オープニング映像は江ノ島の風景をメインとした構成となっており、今回のショーのファーストルックを着用した状態のモデルに出演してもらっています。モデルが光に向かって去って行くシーンで映像が終了し、シームレスにショーに移行後、彼女がファーストルックとして現れることで、まるで映像内のコンセプチュアルな空間からそのまま出てきたかのような演出を施しました。また、「みえないもの」の表現として、ランウェイのスタート位置である2階部分に白い布を垂らすことで、布越しにモデルのシルエットが浮かび上がる工夫をしました。

一般的なファッションショーでは、モデルが出口から歩いてきて客席前を通過後また戻っていく、という一方向的な構成が多いですが、オープニング映像の投影面、モデルの出口、1周目のモデルはけ口、フィナーレのモデルはけ口を横にも縦にもバラバラに配置することで「正面を決めない」三次元的なショー構成を実現させました。お客さまそれぞれが別の方向に顔を向けている、というのは他のファッションショーでは見られない光景でした。

WWD:ショーを振り返ると。

小山:当初はとりとめのない文章でしかなかったイメージが、部員、外部の方、みなさま、一人一人の力によって、大きく広がりを持って一つのショーとしてかたちにすることができたこと、発案者として心からうれしく、何度でも感激してしまいます。

私自身を含め部員の多くは、ショーをはじめとした繊維研究会がこれまで作り上げてきた作品、先輩から感銘を受けて入部しています。先輩に感じていた確固たるかっこよさのようなものを、私たちの代は持ち合わせてはいない、という自負をどこかにずっと抱いていたのですが、そんな私たちで、繊維研究会の名に値するまでのショーを作り上げることができたのではないかと、今は思えます。かつて自分が繊維研究会に心をつかまれ、自分もこれを作り上げる側になってみたい!と突き動かされたように、このショーを見て何か心を動かしてくださった人が一人でもいたとしたら、そんなにうれしいことはありません。

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江戸時代後期の着物の柄をメタバースで楽しむ 大丸松坂屋が新春を彩る3D着物を発売

大丸松坂屋百貨店は、オリジナル3Dアバター用の新作衣装として3D着物を発売した。J.フロント リテイリング史料館が所蔵する、江戸時代以前の染織工芸品群「松坂屋コレクション」の衣裳を基に、メタバース空間のファッション文化に合わせてアレンジ。1611年に呉服屋として創業した松坂屋の歴史を汲んだユニークなアイテムが誕生した。

12月26日に発売した第1弾は、伝統的なデザインを現代風に再構築しており、女性用の振袖と帯、男性用の着物と帯をそれぞれ2種類ずつそろえた。振袖は江戸時代後期の振袖の貝合(かいあわ)せ模様と梅に冊子散らし模様を参照。帯も江戸時代の着物の柄をアレンジした。男性用は江戸時代中〜後期の小袖の雪持ち南天に鶏模様と江戸時代後期の夜着の松竹梅に鶴亀柄をアレンジして、粋なスタイルを作った。それぞれ大丸松坂屋のオリジナル3Dアバターに対応し、草履と足袋もセットで3500円。創作物の総合マーケットプレイス「ブース(BOOTH)」で販売中だ。

また、第2弾として、「ロリータ」と「忍者」をコンセプトに、現代風にリメイクしたスタイルを25年1月1日に発売する。

この3D着物を企画する際、大丸松坂屋のメタバースチームは松坂屋名古屋店にある史料館の倉庫に出張。学芸員から各着物の歴史や色柄に込められた意味を学び、発売時期も鑑みて、新春を祝うべく、縁起物が含まれる吉祥をテーマに選定したという。

着物は奥が深く、専門の知識を要する。衣装制作にあたっては、京都室町で呉服商として創業し、京都の伝統文化をアップデートするコーディネーターとして活躍する宮川徳三郎商店の四代目店主、宮川徳三郎に監修を依頼。日本が誇る文化としての着物への敬意を表しながらも、第2弾のアグレッシブなデザインについても同氏のアイデアを多く反映したという。宮川は「伝統と革新が融合するメタバースで、着物業界に新たなマーケットが生まれることを期待している」と語る。

3D化にあたっては、制作を担当したV社が生地の柄やテクスチャーの再現にとことんこだわったという。

着物は形が決まっており、柄の載せ替えで、新作を提案できる。3Dでもサステナブルだ。また、メタバースはさまざまな国からのアクセスがあり、日本文化および大丸松坂屋のアピールにもなる。企業の歴史的資産、文化財クラスの衣裳の新たな活用法としても有効だ。シリーズ継続に期待したい。

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資生堂魚谷雅彦会長CEO、本日付で退任  資生堂での10年間を振り返る

資生堂の魚谷雅彦会長CEOは2024年12月31日に任期満了を迎え、2025年1月1日には藤原憲太郎・代表執行役社長COOに自らの職と経営権を譲る。退任を目前に控える中、魚谷氏がニューヨークで米「WWD」のインタビューに応じた。

同氏は11月から上海、ソウル、台北、香港を巡り、12月初旬に最終地としてニューヨークを訪問したが、これは退任を労う送別の旅ではなかった。以前から社交的な人として知られる魚谷氏にとって、3万6000人の従業員や美容部員と­­コミュニケーションを図るため、定期的に行ってきたタウンホールミーティングの一環だ。自らの哲学について、「CEOとして突然目の前に現れ、『私たちが直面している問題について話してほしい』と語りかけるだけではダメだ。常に情熱と熱意を持って共通の言語で人々と話し、真につながる必要がある」と説く。

1983年にコロンビア大学経営大学院で経営学を学んでMBAを取得し、デール・カーネギー(Dale Carnegie)の講義でリーダーシップのスキルを磨いた魚谷氏は、日本コカ・コーラで社長、会長を歴任後、2014年に初の外部出身者として資生堂の社長CEOに就任した。日本最大のビューティ企業である資生堂を、日本企業として世界中に商品を販売する会社から、市場のダイナミズムと多様性を反映したグローバル企業へと変革させるというミッションを掲げた。「真のグローバル企業とは、金融アナリストのように国内外のビジネスを数字で分析する企業ではない。人材と文化の多様性が欠かせない。さまざまな場所で、異なる背景を持つ者たちが一緒に働く時、革新的なイノベーションが生まれると信じている」と魚谷氏はいう。

魚谷氏の功績には、同社の公用語を英語にしたことや、日本の官僚主義的なビジネス文化や制約を解体し、経営幹部にグローバルな人材を起用したことも含まれる。例えば、アンジェリカ・マンソン(Angelica Munson)=グローバル最高デジタル責任者は、ニューヨークでeコマースのグローバル上級副社長として入社し、5年後に東京への移住を経て経営幹部となった。現在はインド、ブラジル、中国の幹部を含むチームを統括している。また、資生堂は中途採用を強化し、美容業界内外から毎年約200人の新しい人材を積極的に採用している。「資生堂は学びを共有できる、興味深い文化を築き上げた。他社とは一線を画すハイブリッドな文化が生まれている」と魚谷氏はいう。

就任時、資生堂は低迷の最中だった。その後10年間で魚谷氏は資生堂を中国で重要なプレーヤーに育て上げ、クリーンビューティブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」を買収するなどいち早く急成長するカテゴリーに着目し、次世代につなぐ未来への基盤を築いた。

在任期間の最初の5年間で同社の業績は改善したものの、特にコロナの影響でここ3年間は苦戦を強いられていた。その後国内事業はパンデミックを経て回復したが、中国市場の減速により同社の営業利益は急落した。だが魚谷氏は、中国事業は今後2〜3年で回復すると信じており、中国でのプレステージブランド事業は依然として好調で、「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」や「ナーズ(NARS)」などが売り上げをけん引していることを強調している。

パンデミック以降は、資生堂を世界最高のスキンビューティカンパニーに育成するための戦略投資を強化し、戦略に不要な資産の売却にも徹した。「厳しい状況にある時は、自分の強みと弱みを俯瞰し、自分の強みに集中する必要がある。研究開発、テクノロジー、科学、美容部員、消費者とのつながり、約1億人のデータベースなど、スキンケアは当社が最も強みを持つ分野であることは明らかだ。私はスキンビューティと名付けたが、これはウェルビーイングの概念にも通ずるだろう。体の健康状態、肌の状態、良好な精神状態、これら3つの要素は相互に関連している」。

現職を退任後も、その活躍の勢いは止まることを知らない。日本経済団体連合会(経団連)のダイバーシティ推進委員会委員長を務め、女性活躍を推進するために選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める提言書を提出。また、次世代のビジネスリーダーを育成するための教育機関「Shiseido Future University」で講義も行い、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、美容師を養成する資生堂ビューティアカデミーの理事長も務めている。2月にはダートマス大学とハーバードビジネススクールでの講演も依頼され、デジタル領域で多くの支援実績を持つアクセンチュア(ACCENTURE)の取締役にも就任するなど精力的だ。時代や形が変わっても彼のビジョンは決して変わらない。

魚谷氏は最後に、「私は後継者に、グローバルな専門知識のファシリテーターになるように伝えた。われわれが築き上げたグローバルな組織をとても誇りに思っている。国や文化の垣根を越えた人々がグローバルチームとして協力し合えば、素晴らしい多くのアイデアが生まれる。そしてそれが新しい未来を切り開くことになる」と語った。

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資生堂魚谷雅彦会長CEO、本日付で退任  資生堂での10年間を振り返る

資生堂の魚谷雅彦会長CEOは2024年12月31日に任期満了を迎え、2025年1月1日には藤原憲太郎・代表執行役社長COOに自らの職と経営権を譲る。退任を目前に控える中、魚谷氏がニューヨークで米「WWD」のインタビューに応じた。

同氏は11月から上海、ソウル、台北、香港を巡り、12月初旬に最終地としてニューヨークを訪問したが、これは退任を労う送別の旅ではなかった。以前から社交的な人として知られる魚谷氏にとって、3万6000人の従業員や美容部員と­­コミュニケーションを図るため、定期的に行ってきたタウンホールミーティングの一環だ。自らの哲学について、「CEOとして突然目の前に現れ、『私たちが直面している問題について話してほしい』と語りかけるだけではダメだ。常に情熱と熱意を持って共通の言語で人々と話し、真につながる必要がある」と説く。

1983年にコロンビア大学経営大学院で経営学を学んでMBAを取得し、デール・カーネギー(Dale Carnegie)の講義でリーダーシップのスキルを磨いた魚谷氏は、日本コカ・コーラで社長、会長を歴任後、2014年に初の外部出身者として資生堂の社長CEOに就任した。日本最大のビューティ企業である資生堂を、日本企業として世界中に商品を販売する会社から、市場のダイナミズムと多様性を反映したグローバル企業へと変革させるというミッションを掲げた。「真のグローバル企業とは、金融アナリストのように国内外のビジネスを数字で分析する企業ではない。人材と文化の多様性が欠かせない。さまざまな場所で、異なる背景を持つ者たちが一緒に働く時、革新的なイノベーションが生まれると信じている」と魚谷氏はいう。

魚谷氏の功績には、同社の公用語を英語にしたことや、日本の官僚主義的なビジネス文化や制約を解体し、経営幹部にグローバルな人材を起用したことも含まれる。例えば、アンジェリカ・マンソン(Angelica Munson)=グローバル最高デジタル責任者は、ニューヨークでeコマースのグローバル上級副社長として入社し、5年後に東京への移住を経て経営幹部となった。現在はインド、ブラジル、中国の幹部を含むチームを統括している。また、資生堂は中途採用を強化し、美容業界内外から毎年約200人の新しい人材を積極的に採用している。「資生堂は学びを共有できる、興味深い文化を築き上げた。他社とは一線を画すハイブリッドな文化が生まれている」と魚谷氏はいう。

就任時、資生堂は低迷の最中だった。その後10年間で魚谷氏は資生堂を中国で重要なプレーヤーに育て上げ、クリーンビューティブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」を買収するなどいち早く急成長するカテゴリーに着目し、次世代につなぐ未来への基盤を築いた。

在任期間の最初の5年間で同社の業績は改善したものの、特にコロナの影響でここ3年間は苦戦を強いられていた。その後国内事業はパンデミックを経て回復したが、中国市場の減速により同社の営業利益は急落した。だが魚谷氏は、中国事業は今後2〜3年で回復すると信じており、中国でのプレステージブランド事業は依然として好調で、「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」や「ナーズ(NARS)」などが売り上げをけん引していることを強調している。

パンデミック以降は、資生堂を世界最高のスキンビューティカンパニーに育成するための戦略投資を強化し、戦略に不要な資産の売却にも徹した。「厳しい状況にある時は、自分の強みと弱みを俯瞰し、自分の強みに集中する必要がある。研究開発、テクノロジー、科学、美容部員、消費者とのつながり、約1億人のデータベースなど、スキンケアは当社が最も強みを持つ分野であることは明らかだ。私はスキンビューティと名付けたが、これはウェルビーイングの概念にも通ずるだろう。体の健康状態、肌の状態、良好な精神状態、これら3つの要素は相互に関連している」。

現職を退任後も、その活躍の勢いは止まることを知らない。日本経済団体連合会(経団連)のダイバーシティ推進委員会委員長を務め、女性活躍を推進するために選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める提言書を提出。また、次世代のビジネスリーダーを育成するための教育機関「Shiseido Future University」で講義も行い、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、美容師を養成する資生堂ビューティアカデミーの理事長も務めている。2月にはダートマス大学とハーバードビジネススクールでの講演も依頼され、デジタル領域で多くの支援実績を持つアクセンチュア(ACCENTURE)の取締役にも就任するなど精力的だ。時代や形が変わっても彼のビジョンは決して変わらない。

魚谷氏は最後に、「私は後継者に、グローバルな専門知識のファシリテーターになるように伝えた。われわれが築き上げたグローバルな組織をとても誇りに思っている。国や文化の垣根を越えた人々がグローバルチームとして協力し合えば、素晴らしい多くのアイデアが生まれる。そしてそれが新しい未来を切り開くことになる」と語った。

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名鉄百貨店も閉店へ 電鉄系「大衆百貨店」の黄昏

名古屋駅に直結する名鉄百貨店本店が2026年春に閉店すると複数のメディアが報じた。12月末時点で正式な発表はされていない。だが親会社である名古屋鉄道(名鉄)のターミナル再開発に伴い、コロナ前から閉店が取り沙汰されており、小売関係者の多くは既定路線と見る。近年は同店に限らず、電鉄系百貨店の事業縮小が相次ぐ。電鉄系が担ってきた“大衆百貨店”が岐路に立っている。

同店は名鉄名古屋駅直結の百貨店として1954年開業。名古屋の百貨店では長らく松坂屋、三越、丸栄(18年に閉店)と並ぶ“4M”の一角を占めた。73年から設置された巨大マスコット「ナナちゃん」も市民に愛されてきた。

転機は2000年、隣り合うJR名古屋駅の再開発によってジェイアール名古屋タカシマヤ(JR名古屋高島屋)が開業したことだ。JR名古屋高島屋は広域から集客できるJR直結の強みと若い世代の取り込みによって、エリアの最大の百貨店へと成長した。23年度の売上高は名鉄百貨店本店が352億円であるのに対し、JR名古屋高島屋が1891億円(タカシマヤゲートタワーモール含む)と5倍以上の差をつけられてしまった。

名古屋鉄道は同店周辺のビルを取り壊して、商業施設、オフィス、ホテルなどが入る高層ビルを3棟建てる。駅のプラットフォームの移設も含むため、最終的な工事終了は40年になる。

東急、小田急、京王、東武も

電鉄系百貨店の事業縮小は名古屋に限った話ではない。

東京・渋谷駅の東急百貨店は、駅直結の東急東横店を20年に閉めた。親会社・東急の再開発に伴うものだ。跡地には東急が主体で運営し、商業やオフィスが入る渋谷スクランブルスクエアの2期棟(中央棟、西棟)が27年の完成を目指して建設中だ。東急百貨店は渋谷駅から徒歩圏にあった東急本店も23年に閉店している。こちらの跡地には東急、東急百貨店、LVMHグループのLキャタルトンによる複合ビルが建設中だ。低層部は商業施設の予定だが、東急百貨店になるかは不透明だ。

新宿駅の小田急百貨店は、駅直結の本館を22年に閉めた。これも親会社・小田急電鉄の再開発に伴う措置だった。現在は別館(ハルク)でラグジュアリーブランド、化粧品、食品の3分野に特化した8割減の売り場で営業している。本館の跡地には29年に複合ビルが完成し、低層部に商業施設が入る予定だが、小田急百貨店が入るかは言及されていない。

同じく新宿駅では京王百貨店を含む周辺エリアの再開発も発表されている。親会社・京王電鉄とJR東日本などによる大規模プロジェクトで、28年から段階的に開業して完成は40年代になる。やはり低層部は商業施設になる見通しだが、そこに京王百貨店が入るかは決まっていない。

池袋駅西口でも再開発が予定されており、現在の東武百貨店の建物が対象エリアになる。親会社の東武鉄道の動向に注目が集まる。

いずれも再開発後に新しい商業施設が入ることは決まっている。商業施設は集客装置として欠かせないからだ。しかし大家である鉄道会社は消化仕入れで売れ行きに大きく左右される百貨店よりも、テナントから安定した家賃収入が得られるショッピングセンターを選ぶ公算が高い。本業の鉄道が少子高齢化で長期的に利用減が避けられない中、百貨店に固執する理由はない。

富裕層に強い「呉服系」、大衆に支持される「電鉄系」

電鉄系百貨店の事業縮小は鉄道会社の構造改革だけの話ではない。日本の社会構造の変化の反映ともいえる。

日本の百貨店には2つの系統がある。一つは呉服屋を祖業とする「呉服系」。三越、伊勢丹、高島屋、大丸、松坂屋、そごう、松屋などである。もう一つが鉄道会社が沿線価値を高めるためターミナルに作った「電鉄系」。こちらは阪急、東急、近鉄、西武、小田急、京王、東武、阪神、名鉄などである。企業再編もあって現在は必ずしも呉服系・電鉄系に二分できるわけではない。たとえば西武は発祥こそ電鉄系だが、そごうとともに06年にセブン&アイ ホールディングス傘下になり、23年には米投資ファンドに売却された。

呉服系の多くは江戸時代や明治時代に創業し、昭和初期に百貨店に業態転換している。電鉄系の元祖である阪急百貨店は1929年開店、それに触発された東急百貨店は34年開店(後に合併した白木屋は除く)だが、それ以外のほとんどの電鉄系は戦後の高度成長期に豊かになった大衆に向けて百貨店に進出した。

戦前からある呉服系は富裕層の顧客基盤を保ちつつ、戦後豊かになった大衆にウイングを広げた。一方、後発の電鉄系は当初から大衆からの支持を集めて発展した歴史がある。ターミナルに立地するため客層も幅広い。所得が上昇し、背伸びした消費を楽しめるようになった大衆にとっての「ハレの場」だった。

これも明確に二分できるわけではないが、歴史のDNAは案外いまも継承されている。関西で圧倒的なブランド力を誇り、百貨店売上高で国内2位の位置にある阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)でさえ、「長年、富裕層向けの外商に関しては呉服系にかなわない部分があった。外商で戦えるようになったのは12年に建て替え開業してからだ」(関係者)と振り返る。

百貨店は「一億総中流」と呼ばれた時代に全盛期を迎えた。全国百貨店売上高は91年に9.7兆円をピークに2023年には5.4兆円まで下がった。この30年間で「ユニクロ」に代表されるカテゴリーキラーが台頭。また2000年の規制緩和によって全国に大型のショッピングセンターが乱立した。特に百貨店の最大の稼ぎ頭だった衣料品は競争力を削がれていった。百貨店の店舗数は直近の20年間で4割も減っている。

一方で、コロナ後に大都市の旗艦店ではバブル期を越える過去最高売上高が相次いでいる。24年度の見通しでは、売上高1位の伊勢丹新宿本店は4240億円(20年度は2740億円)、2位の阪急本店が3588億円(同2412億円)と大きく伸びる。JR名古屋高島屋、松屋銀座本店、三越銀座店、高島屋新宿店、大丸神戸店なども過去最高を更新する見通しだ。

東京に関しては東急や小田急の事業縮小に伴う受け皿になった面もあるが、好調を支えているのは国内と海外の富裕層である。国内の富裕層は株高の恩恵、海外の富裕層は円安の恩恵を受けて、ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品などの高額品を旺盛に消費する。カテゴリーキラーやショッピングセンターと競合しない百貨店独自のマーケットである。

社会構造の変化と百貨店の進む道

UBS証券の風早隆弘氏は「日本は人口減少のイメージばかりが先行するが、富裕層の増加では世界をリードする。UBS証券では、100万ドル以上の資産保有者が2028年に2023年比で28%増 の362.5万人となり、国・地域別では、米国、中国に続き、世界で3位となると予想している」と述べる。

「マス(大衆)から個へ」を掲げる三越伊勢丹ホールディングスの細谷敏幸社長は、こうした変化に自覚的だ。「日本の個人消費が280兆円といわれている中、百貨店の市場規模は5兆円で、割合では2%しかない。われわれは超ニッチなビジネスをしていることを自覚しなくてはならない」「目下好調のラグジュアリーブランド、宝飾・時計、美術などをはじめ、背後にクラフツマンシップや哲学があり、お客さまが納得した上で買われるものについては優位性を持っている。百貨店での買い物はそういったストーリーや特別感を楽しむ、一種のエンターテインメントであるべきだ」。伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店では、外商を中心に富裕層のニーズに徹底的に応える道を選ぶ。

百貨店の現実的な勝ちパターンは、富裕層や訪日客の顧客基盤を持ち、高額品の品ぞろえを拡充することへと変化した。ただし、これに対応できるのは大都市の一部店舗に限られる。電鉄系が得意としてきた、幅広い大衆に手を伸ばせば届く上質な商品を提案する手法は通じにくくなっているのだ。分厚い中間層という日本の百貨店マーケットの前提は崩れつつある。ターミナルの再開発を機に、電鉄系はビジネスモデルの見直しを迫られる。

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