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沖縄の食のシンボルである山羊を、豚を。いのちをいただく一皿に。[DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS/沖縄県南城市]
ダイニングアウト琉球南城食文化に深く結びついた食材をコースのハイライトに。
琉球神話はじまりの地といわれる沖縄県南城市を舞台に2018年11月23日、24日に開催された『DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS』。神聖なる祈りの地・知念城跡に出現したレストランは、厳かさとなごやかさが入り混じる空気の中、大成功のうちに幕を閉じました。琉球創生の女神「アマミキヨ」の神話にならい、『DINING OUT』史上初の女性シェフとして厨房を預かった樋口宏江シェフ。「Origin いのちへの感謝と祈り」というテーマの下、地域の伝統的な食習慣や食文化を鮮やかに映し出した料理でゲストを魅了しました。3皿目に供された「ヒージャーのロワイヤル」とメインの「黒金豚の伊勢志摩備長炭焼き」は、ゲストを深い感動へ導くコースのハイライトに。山羊と豚。いずれも沖縄の食文化とは切っても切り離せない食材です。初の沖縄訪問でもあった視察からわずか2カ月足らずで、この2皿をどのように完成させたのか。樋口シェフのアプローチに迫ります。
▶詳細は、DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS
ダイニングアウト琉球南城「いのちを、余すところなく頂く」という食のあり方に学ぶ。
台風25号直撃というアクシデントに見舞われた10月初旬の第1回目の食材視察。奇しくもこの機が初の沖縄訪問となった樋口シェフは、初めて出会う沖縄の食材、食文化に驚くばかりでした。野菜やハーブ、紅茶にシークヮーサー、山羊に豚とさまざまな農畜産物の生産者を訪ね、琉球料理や、久高島に伝わるイラブー(ウミヘビ)料理も試食。「すべてが忘れがたい」という3日間で特に心に残ったのが山羊、そして沖縄の在来種であるアグー種の豚・黒金豚だと話してくれました。
「生産者の方が、まるで自分の子供を可愛がるように愛情を持って接していらっしゃる姿がとても印象的で。飼育環境も清潔で、山羊や豚たちもとても健やかで、幸せそうに見えました」。
沖縄は、古くから山羊が家畜として重宝されてきた歴史があります。台風や干ばつなどの影響で食糧の安定確保が難しい中、山羊は貴重なタンパク源でした。家の上棟式や結婚式など、祝いの席で振る舞われる料理でもあり、今でも一部の地域にはその習慣が残っています。
豚もまた、沖縄の食を語る上で欠かせない食材です。豚肉の消費量は全国屈指。ばら肉を使った角煮のラフテーやスペアリブの煮込み・ソーキなど、さまざまな郷土料理が今も日常的に親しまれています。コラーゲンたっぷりの豚足はテビチという煮付けに、ミミガーと呼ばれる耳たぶは酢の物に。「鳴き声以外はすべて食べる」という言葉があるほど、一頭を余すところなく頂く食習慣が今も根付いているのです。
ダイニングアウト琉球南城静かな器の中に、山羊の命がよみがえる一皿。
「視察を終えて最初にイメージが浮かび、メニュー作りに着手したのが、山羊の一皿でした」。
訪問した『株式会社大地』のハーブ山羊を試食し、その味わいに驚いたと話します。
「非常にクセの強い食材ですが、特有の匂いは控えめで、繊細な旨みがあり、香りは子羊のよう」。
シンプルに焼くだけで十分おいしい山羊を、ホテルでフランス料理を作り続けてきた自分がどう料理すべきか。考えたときに、コンソメを思い付いたといいます。
「郷土料理の山羊汁もヒントになりました。山羊汁に親しんでこられた地元の方々が驚くような山羊のスープをお出ししたいと思ったのです」。
器の中に敷かれたコンソメロワイヤルは、ブイヨンに卵を合わせて蒸したものをコンソメの浮き身にした、クラシックなフランス料理。コンソメは、骨とミルポワでひいただしをベースに、皮付きモモ肉のミンチを加えた贅沢なダブルコンソメに仕上げました。タイムやローリエなど、臭い消しの役目を果たすハーブ類はあえて使わず、力強く、それでいて雑味のないハーブ山羊の風味を活かします。丁寧に下処理した内臓はブイヨンで炊き、フランの中にしのばせました。
山羊の肉はもちろん、骨も、皮も、内臓もすべて。卓上でコンソメが注がれて完成する黄金色の一皿は、一服の茶のような静けさの中に、山羊の命が丸ごと詰まっていたのです。
ダイニングアウト琉球南城ほかの豚にはない、生命力あふれる味を表現するために。
沖縄の人々の日常に欠かせない豚もまた、樋口シェフが必ず『DINING OUT』で使いたいと考えていた食材のひとつ。視察時に琉球在来豚・アグー種のブランド豚「黒金豚」の生産者・我喜屋宗一さんに出会い、その想いをいっそう強くします。
アグーの肉質は非常に優れているものの、体が小さく、成長に時間がかかるため、生産性の高い西洋種やF1種の増加とともに、絶滅の危機にさらされてきました。また、現在流通している「アグー」ブランド豚は、西洋種の雌を交配した交雑種(混血)がほとんどいう現実があります。そのような状況下で、純血のアグー種を守ろうと、循環型農業をベースにした飼育方法で、繁殖飼育を一貫して手掛けるのが我喜屋さん。我喜屋氏は、「戻し交配」という技術を用い、交雑種を純血種に近付ける取り組みも続けています。
我喜屋氏は言います。
「自然の中で、昔と同じように育てる。やりたいことはシンプルだけれど“自然”を取り巻く環境が変わる中で、ほおっておくだけでは、昔と同じにはならない。豚の味は嘘をつかないからすぐわかる。抗生物質やホルモン剤などの薬を使わない。豚の足元にあるもの、つまり国産の飼料で育てる。昔なら“当たり前”な環境を作ってあげれば、肉はちゃんとアグー種本来の味になる」。
「豚は沖縄の人にとってだけでなく、我々日本人誰にでも馴染みのある食材ですが、我喜屋さんの黒金豚の味わいには圧倒的な個性を感じました。脂身が非常に厚く、しっかりとしたテクスチャーとクリアな甘みがある。肉は赤身が強く、旨みも濃厚。初めての味わいでした」と樋口シェフ。
脂の旨みをシンプルに生かす一皿に仕上げるために。バラ肉はスパイスと一緒に真空調理で12時間かけて優しく火を入れ、ロースは伊勢志摩から持ち込んだとびきりの備長炭で、香ばしく焼き上げました。しっとりと火が入りながらも、嚙めば弾力がある。肉と脂、それぞれの旨みに、アグー種の生命力がみなぎります。
ダイニングアウト琉球南城食べるものが命を作る。その連なりに感謝を捧げて。
樋口シェフは「ぬちぐすい」という沖縄の言葉に非常に感銘を受けたといいます。「ぬち」は命、「ぐすい」は薬。そこから命の薬になるようなおいしい食べ物、飲み物、あるいはそれらと同様に心を温める愛情などを指す言葉とされています。コースの5皿目に用意した、沖縄在来の野菜約30種を盛り込んだ一皿は、そのまま「ぬちぐすい」と名付けました。その言葉に託した想いは、山羊や豚の料理にも貫かれています。
▶詳細は、沖縄の食文化を尊び、地元生産者、料理人すべての想いを一皿にした「ぬちぐすい」。
「食べるものが体を調え、命を繋いでいく。それは、人間も動物も同じです。ハーブ山羊も、アグー種の黒金豚も、生産性ではなく、命の健やかさを第一に考えた飼料で育てられている。我が子のような愛情をたっぷりと注がれて。その命が、今度は私たち人間の糧となる。“ぬちぐすい”の連なりが、沖縄の人たちの暮らしとともにあった独自の食文化を、未来へとつなげていくんです」。
「Origin いのちへの感謝と祈り」をテーマにした今回の『DINING OUT』。「ヒージャーのロワイヤル」と「黒金豚の伊勢志摩備長炭焼き」は、食べ手の記憶にそのテーマを強く焼き付ける2皿となったはずです。
三重県四日市市生まれ。1991年、志摩観光ホテルに入社。2014年には、同ホテルで初めての女性総料理長に就任。2016年に、「G7 伊勢志摩サミット」のディナーを担当し、各国首脳から 称賛を受けた。翌年、第8回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」のブロンズ賞を、三重県初、女性としても初めて受賞。今、最も世界から注目を集めている女性シェフである。
志摩観光ホテルHP:https://www.miyakohotels.ne.jp/shima/index.html
沖縄の食のシンボルである山羊を、豚を。いのちをいただく一皿に。[DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS/沖縄県南城市]
ダイニングアウト琉球南城食文化に深く結びついた食材をコースのハイライトに。
琉球神話はじまりの地といわれる沖縄県南城市を舞台に2018年11月23日、24日に開催された『DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS』。神聖なる祈りの地・知念城跡に出現したレストランは、厳かさとなごやかさが入り混じる空気の中、大成功のうちに幕を閉じました。琉球創生の女神「アマミキヨ」の神話にならい、『DINING OUT』史上初の女性シェフとして厨房を預かった樋口宏江シェフ。「Origin いのちへの感謝と祈り」というテーマの下、地域の伝統的な食習慣や食文化を鮮やかに映し出した料理でゲストを魅了しました。3皿目に供された「ヒージャーのロワイヤル」とメインの「黒金豚の伊勢志摩備長炭焼き」は、ゲストを深い感動へ導くコースのハイライトに。山羊と豚。いずれも沖縄の食文化とは切っても切り離せない食材です。初の沖縄訪問でもあった視察からわずか2カ月足らずで、この2皿をどのように完成させたのか。樋口シェフのアプローチに迫ります。
▶詳細は、DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS
ダイニングアウト琉球南城「いのちを、余すところなく頂く」という食のあり方に学ぶ。
台風25号直撃というアクシデントに見舞われた10月初旬の第1回目の食材視察。奇しくもこの機が初の沖縄訪問となった樋口シェフは、初めて出会う沖縄の食材、食文化に驚くばかりでした。野菜やハーブ、紅茶にシークヮーサー、山羊に豚とさまざまな農畜産物の生産者を訪ね、琉球料理や、久高島に伝わるイラブー(ウミヘビ)料理も試食。「すべてが忘れがたい」という3日間で特に心に残ったのが山羊、そして沖縄の在来種であるアグー種の豚・黒金豚だと話してくれました。
「生産者の方が、まるで自分の子供を可愛がるように愛情を持って接していらっしゃる姿がとても印象的で。飼育環境も清潔で、山羊や豚たちもとても健やかで、幸せそうに見えました」。
沖縄は、古くから山羊が家畜として重宝されてきた歴史があります。台風や干ばつなどの影響で食糧の安定確保が難しい中、山羊は貴重なタンパク源でした。家の上棟式や結婚式など、祝いの席で振る舞われる料理でもあり、今でも一部の地域にはその習慣が残っています。
豚もまた、沖縄の食を語る上で欠かせない食材です。豚肉の消費量は全国屈指。ばら肉を使った角煮のラフテーやスペアリブの煮込み・ソーキなど、さまざまな郷土料理が今も日常的に親しまれています。コラーゲンたっぷりの豚足はテビチという煮付けに、ミミガーと呼ばれる耳たぶは酢の物に。「鳴き声以外はすべて食べる」という言葉があるほど、一頭を余すところなく頂く食習慣が今も根付いているのです。
ダイニングアウト琉球南城静かな器の中に、山羊の命がよみがえる一皿。
「視察を終えて最初にイメージが浮かび、メニュー作りに着手したのが、山羊の一皿でした」。
訪問した『株式会社大地』のハーブ山羊を試食し、その味わいに驚いたと話します。
「非常にクセの強い食材ですが、特有の匂いは控えめで、繊細な旨みがあり、香りは子羊のよう」。
シンプルに焼くだけで十分おいしい山羊を、ホテルでフランス料理を作り続けてきた自分がどう料理すべきか。考えたときに、コンソメを思い付いたといいます。
「郷土料理の山羊汁もヒントになりました。山羊汁に親しんでこられた地元の方々が驚くような山羊のスープをお出ししたいと思ったのです」。
器の中に敷かれたコンソメロワイヤルは、ブイヨンに卵を合わせて蒸したものをコンソメの浮き身にした、クラシックなフランス料理。コンソメは、骨とミルポワでひいただしをベースに、皮付きモモ肉のミンチを加えた贅沢なダブルコンソメに仕上げました。タイムやローリエなど、臭い消しの役目を果たすハーブ類はあえて使わず、力強く、それでいて雑味のないハーブ山羊の風味を活かします。丁寧に下処理した内臓はブイヨンで炊き、フランの中にしのばせました。
山羊の肉はもちろん、骨も、皮も、内臓もすべて。卓上でコンソメが注がれて完成する黄金色の一皿は、一服の茶のような静けさの中に、山羊の命が丸ごと詰まっていたのです。
ダイニングアウト琉球南城ほかの豚にはない、生命力あふれる味を表現するために。
沖縄の人々の日常に欠かせない豚もまた、樋口シェフが必ず『DINING OUT』で使いたいと考えていた食材のひとつ。視察時に琉球在来豚・アグー種のブランド豚「黒金豚」の生産者・我喜屋宗一さんに出会い、その想いをいっそう強くします。
アグーの肉質は非常に優れているものの、体が小さく、成長に時間がかかるため、生産性の高い西洋種やF1種の増加とともに、絶滅の危機にさらされてきました。また、現在流通している「アグー」ブランド豚は、西洋種の雌を交配した交雑種(混血)がほとんどいう現実があります。そのような状況下で、純血のアグー種を守ろうと、循環型農業をベースにした飼育方法で、繁殖飼育を一貫して手掛けるのが我喜屋さん。我喜屋氏は、「戻し交配」という技術を用い、交雑種を純血種に近付ける取り組みも続けています。
我喜屋氏は言います。
「自然の中で、昔と同じように育てる。やりたいことはシンプルだけれど“自然”を取り巻く環境が変わる中で、ほおっておくだけでは、昔と同じにはならない。豚の味は嘘をつかないからすぐわかる。抗生物質やホルモン剤などの薬を使わない。豚の足元にあるもの、つまり国産の飼料で育てる。昔なら“当たり前”な環境を作ってあげれば、肉はちゃんとアグー種本来の味になる」。
「豚は沖縄の人にとってだけでなく、我々日本人誰にでも馴染みのある食材ですが、我喜屋さんの黒金豚の味わいには圧倒的な個性を感じました。脂身が非常に厚く、しっかりとしたテクスチャーとクリアな甘みがある。肉は赤身が強く、旨みも濃厚。初めての味わいでした」と樋口シェフ。
脂の旨みをシンプルに生かす一皿に仕上げるために。バラ肉はスパイスと一緒に真空調理で12時間かけて優しく火を入れ、ロースは伊勢志摩から持ち込んだとびきりの備長炭で、香ばしく焼き上げました。しっとりと火が入りながらも、嚙めば弾力がある。肉と脂、それぞれの旨みに、アグー種の生命力がみなぎります。
ダイニングアウト琉球南城食べるものが命を作る。その連なりに感謝を捧げて。
樋口シェフは「ぬちぐすい」という沖縄の言葉に非常に感銘を受けたといいます。「ぬち」は命、「ぐすい」は薬。そこから命の薬になるようなおいしい食べ物、飲み物、あるいはそれらと同様に心を温める愛情などを指す言葉とされています。コースの5皿目に用意した、沖縄在来の野菜約30種を盛り込んだ一皿は、そのまま「ぬちぐすい」と名付けました。その言葉に託した想いは、山羊や豚の料理にも貫かれています。
▶詳細は、沖縄の食文化を尊び、地元生産者、料理人すべての想いを一皿にした「ぬちぐすい」。
「食べるものが体を調え、命を繋いでいく。それは、人間も動物も同じです。ハーブ山羊も、アグー種の黒金豚も、生産性ではなく、命の健やかさを第一に考えた飼料で育てられている。我が子のような愛情をたっぷりと注がれて。その命が、今度は私たち人間の糧となる。“ぬちぐすい”の連なりが、沖縄の人たちの暮らしとともにあった独自の食文化を、未来へとつなげていくんです」。
「Origin いのちへの感謝と祈り」をテーマにした今回の『DINING OUT』。「ヒージャーのロワイヤル」と「黒金豚の伊勢志摩備長炭焼き」は、食べ手の記憶にそのテーマを強く焼き付ける2皿となったはずです。
三重県四日市市生まれ。1991年、志摩観光ホテルに入社。2014年には、同ホテルで初めての女性総料理長に就任。2016年に、「G7 伊勢志摩サミット」のディナーを担当し、各国首脳から 称賛を受けた。翌年、第8回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」のブロンズ賞を、三重県初、女性としても初めて受賞。今、最も世界から注目を集めている女性シェフである。
志摩観光ホテルHP:https://www.miyakohotels.ne.jp/shima/index.html