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冬のツアーは美味しい会津を体験!収穫し、食べて、学ぶ。[NEW GENARATION HOPPING AIZU/福島県会津若松市]
ニュージェネレーションホッピング南会津調味料ひとつにも表れる会津の豊かな食卓。
南会津の四季を体感していただくONESTORYのツアーもひとまず最終回。今回の旅のガイドを務めてくださるのは、本格ナポリピッツァや会津の食材を使った料理が評判の『ピッツェリア&トラットリア フェリーチェ』を営むシェフの矢澤直之氏です。
冴え渡る青空の下、バスに乗り込んだ参加者が最初に向かったのは1834年創業の『満田屋』です。こちらは江戸末期から続くお味噌屋さんで、味噌蔵を改築した店内で味噌田楽をいただくことができます。先ほど顔を合わせたばかりの面子ですが、「この竹串、具材によって形が違うね」「お店の方が1本1本削っているみたいだよ」などと会話を交わすうちに打ち解けたムードに。まだ明るいうちからビールなどいただきつつ、2種類に焼き分けたこんにゃくは甘味噌と柚子味噌で、外はカリッと中はふわふわのおもちは甘味噌で。大豆のうま味がしっかり残る豆腐には山椒味噌。うるち米を使ったしんごろうは、荏胡麻を使ったじゅうねん味噌をたっぷり、と4種類の味噌を使い分けながら様々な具材を楽しみました。冬場の食卓に彩りを添える味噌に、会津の方の丁寧な暮らしが表れているようです。
次に向かったのは磐梯山系に囲まれた気持ちのいい畑。あぜ道を歩いていると、前方で満面の笑顔の矢澤氏が手を振っています。「会津の美味しい旅ということで、ここではネギの収穫体験を楽しんでいただけたらと思います」と矢澤氏。その隣で我々を出迎えてくれたのは、農家の佐藤忠保氏とトマト農家の大友佑樹氏です。「ここ一帯は冬になるとネギの頭が少し見えるぐらいまで雪が積もります。ネギを傷めないよう雪をほぐしてから1本1本手で抜くのですが、今年はその手間がない分ラクですね」と佐藤氏。鮮やかな手つきでネギを抜いてみせてくださったのを機に、参加者も次々に収穫を体験しました。試しに1本抜いてみると、ずっしりと重量があり、たっぷりと水分を蓄えていることが伺えます。「この辺りの土は水分を多く含んでいるので、1本あたりの重さは300g~400gほど。うちはこのネギを“とろねぎ”と名付けて独自にブランド化しています」。収穫したネギを軽トラで作業場に運び込み、切った根の先を見ると、蜜のような粘度のつゆがとろり。香りも力強く、食材を見る矢澤氏の目も真剣です。その様子から、このネギを使うという今宵のディナーへの期待が高まります。
農作業の後は松本養蜂総本場に立ち寄り、国産オーガニックはちみつを使ったレモネードをいただきました。稼業を継いで5代目という松本高明氏の蜂蜜は、樹種によって全く味が異なり、どれも天然由来のワイルドさを秘めています。矢澤氏もさまざまな料理に用いるのだそう。蕎麦や栗などレアなはちみつを試食させていただいた後は温泉タイムです。訪れた会津若松の奥座敷・東山温泉は、約1300年前に行基上人によって発見されたとされている、さらさらの硫酸塩泉。日帰り湯でお世話になった『くつろぎの宿 新滝』の露天風呂からは、渓流を見下ろすことができ、農作業による心地よい疲労感がするすると湯の中に溶け出していくようでした。
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ニュージェネレーションホッピング南会津イタリアン×日本酒=魅惑のコラボレーション。
街に夜の帳が下りる頃、お楽しみのディナータイムです。迎えてくださった矢澤氏とマダムの未来さん、ピザ職人の林添氏は満面の笑顔。宴には、今までの取材でお世話になった会津木綿の新しい価値を提案する「IIE Lab.」の谷津拓郎氏と千葉崇氏、先ほどお世話になった農家の佐藤氏と大友氏も参加してくださり、賑々しいスタートとなりました。そしてもうひとり、重要な役目を担ってくださったのは、酒舗『植木屋商店』十八代目の白井與平氏。今回のディナーは、矢澤氏の料理と白井氏セレクトの日本酒をペアリングさせたディナーになっているのです。
乾杯は大友氏が作ったトマトを使ったクラフトビール。春のツアーでお邪魔した会津田島『Taproom Beer Fridge』併設の醸造所『南会津マウンテンブルーイング』で醸造した冬場限定のトマトセゾンです。矢澤氏と白井氏から挨拶があり、一皿目の「イチゴのカプレーゼ」が供されました。詰めたバルサミコと松本氏の上澄桜のはちみつがいちごの甘みと酸味を増幅させ、ミルキーなモッツァレラと絡み合います。ここには福島県喜多方にある大和川酒造と植木屋で特別につくられた「爆発!やまヨ別品大和川おりざけ」自社田栽培喜多方産夢の香45%の純米大吟醸の直汲み無濾過にごり生酒を合わせました。2品目は「馬肉のタルタル」。雌の太もものみを使用したシルキーな舌触りのタルタルは、庄内の板麩と合わせることで触感の違いを楽しむことができます。ここで供されたのは蔵付き酵母のみで醸した生酛の「弥右衛門」。キレイな酸を輪郭とした酒からは米のうま味もしっかり感じられ、馬肉と好相性です。3番目は「会津地鶏の白レバーのペースト」。生のマスカルポーネとセミドライにした見知らず柿を合わせた一皿には、震災で福島県浪江町から山形県長井市に移転した磐城寿の「黄金蜜酒」を。こちらは上品な舌触りの本みりんで、全ての食材と酒が口中でトロリと溶け合うのを楽しみました。
ここで、東山温泉の置屋で芸妓をしている月乃さんと千代乃さんが登場するサプライズがありました。芸妓さんというと敷居が高いイメージですが、なかには年末の時代劇『白虎隊』の主題歌にもなった堀内孝雄さんの代表曲『愛しき日々』に合わせたオリジナルの舞もあり、伝統芸を身近に感じることができました。
このタイミングで運ばれてきたのは、収穫したばかりのとろねぎを使った「とれたてネギのアフォガード」。3種類の調理法のネギが複雑に重なり合いながらも上品に纏まった旨味が沁みる一皿。ここでの日本酒は、土産土法の酒造りをモットーとする高橋庄作酒造の「会津娘」雄町の純米吟醸。デキャンタージュを繰り返すことで広がりが生まれた一杯が、料理と共鳴しあいます。滲み出る甘みとかすかな苦みが春の訪れを告げる喜多方産の「ホワイトアスパラのロースト」は趣向を変えてシャトーメルシャンの白ワイン「新鶴シャルドネ2014」と共に。濃い旨味が口中に広がる会津地鶏の胸肉とモモを使った「会津地鶏の食べ比べ」は、ほまれ酒造の「からはし」山田錦純米吟醸無濾過生原酒と合わせていただきました。完熟したフルーツを思わせる吟醸香とイキイキした酸が、山ざんしょうなど調味料でメリハリを利かせた料理とぴったりです。締めのパスタは「会津地鶏と打ち豆のボロネーゼ」。打ち豆とは、青大豆を水で戻して臼で潰した後に乾燥させた会津の伝統的な半加工豆。「このお料理に関してはあえてペアリングをしません。今日、飲んで美味しかったお酒と合わせていただければ」と白井氏。ここでは先ほどのお酒だけでなく、「写楽」や「飛露喜」といった人気銘柄のレア酒も登場し、会場内が色めき立ちました。
会津の自然が育んだ食材、風土を背景に生まれた知恵、そこで育った人々が思いを込めた料理と日本酒……その全てに思いを馳せつつ、ペアリングディナーは大満足のままフィニッシュに。最後に「IIE Lab.」さんから酒袋やあずま袋のプレゼントがあり、カラフルな袋をぶら下げた参加者は、意気揚々と二次会へ繰り出しました。
ニュージェネレーションホッピング南会津ホッピングで酒処・会津の奥深さを知る。
エプロンを脱いだ矢澤氏に先導され、向かった先は『時さえ忘れて』です。雑居ビルの2階にある看板の無いこのバーは、店主の鈴木啓介氏偏愛のお酒が楽しめる場所。今日は特別に『Baku table』(2020年現在、イベント出店、ケータリングで活動中)のシェフであり、「南会津の秋のツアー」でスペシャルディナーを担当してくれた山門夢実さんが地元食材を使ったおばんざいなどをご用意してくださり、2次会のスタートです。アンダーな照明と肩の力を抜いてリラックスできるムード、心温まる料理と心づくしの酒によって場の空気は一層打ち解けたムードに。そこに『塗師一富』の3代目・冨樫孝男氏の下で研鑽を積んだ菊池遥香さんや、大内宿でカフェ兼雑貨屋を営む『茶房 やまだ屋』の諸岡康之氏も加わり、観光ガイドには載っていない会津の話や街の移り変わりなど話題は多岐に及んでいきます。あれだけ飲んで食べたのに、胃の深いところにすとんと落ちていくのですから、郷土料理って不思議です。ここでも食べて、飲んで、「オータムポエムとニシンの山椒漬けの玄米おむすび」で締めて。多くの方々のおもてなしで心に灯った温かなものを感じながら、楽しい夜を過ごしました。
ニュージェネレーションホッピング・南会津城下町に息づく老舗と和菓子と麦とろと。
翌朝は『植木屋商店』でお土産を物色しました。一同、DJブースのある店内に驚きつつ、昨晩美味しかった銘柄を思い出しながら、これはと思う日本酒を選びます。個人的に気になったのが、自社田のなかでも特に特徴的な7枚の田んぼを選び、1枚の田んぼごとに獲れた米で仕込んだ会津娘の純米吟醸「穣(じょう)」。ひとつひとつのお酒にストーリーがあり、気持ちを込めてそれを伝えてくださる白井氏の話や素敵な酒器で試飲させていただき、あれもこれもと目移りしてしまいました。その後、矢澤氏が幼少期から通っているお店『麦とろ』でランチとなりました。店内には既に、湯気を立てたおかずや炊き立ての麦飯がセットされています。「さぁさぁ」と促され、山で採ってきたという菜の花のお味噌汁や磐梯筍をいただきました。栽培ものと違って、味も香りも力強い天然もののうま味は身体に染み込むよう。働き者のオヤジさんによると、この味をお客さんに味わってもらうため、4月は毎日山に入るそう。それでも昨年休んだのは1日だけというから恐れ入ります。
本日の最終目的地・大内宿へ移動するバスのなかでは、『日本一本店』という不思議な店名の和菓子屋で買ったあわまんじゅうをいただきました。くちどけのよいあんを鮮やかな黄色い粟の実で包んだシンプルなまんじゅうは、淡雪のように口の中で溶けていきます。「このお店は、早い時間からご主人が丁寧にあんを練っているから口どけが違うんですよ」と矢澤氏もえびす顔。熱い緑茶を飲みながら、車窓から雪のない磐梯山を眺めます。茅葺屋根の商店が軒を連なる大内宿を歩き、最後は『茶房 やまだ屋』へ。店内には諸岡氏とお母さまの久美子さんのセンスでセレクトした会津や福島で研鑽を積む若いアーティストや職人の民芸品が並び、さながらギャラリーのよう。天井の高い店内はリラックスした空気が流れ、曳きたてのコーヒーの香りが漂っています。淀みない矢澤氏の話に耳を傾けながら、ゆったりした時を過ごし、お別れの時間がやってきてしまいました。バスが走り出しても、しばらく手を振り続けてくれた矢澤氏に会釈しつつ、会津の美味を満喫するツアーは終了となりました。
住所:〒965-0042 福島県会津若松市大町1-2-55 MAP
電話:0242-36-7666
http://www.pizzeria-felice.jp/
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